冷蔵庫
【課題】冷蔵庫内に保存する食品の乾燥を抑制することが可能な冷蔵庫を提供する。
【解決手段】食品を保存する切替室と、切替室内の空気温度を検出する庫内温度検出手段と、切替室に投入された食品を冷却すると共に、冷却能力を制御可能な冷却手段と、庫内温度検出手段にて検出された空気温度に基づいて冷却手段を制御し、切替室内を設定温度に維持する通常運転を行う制御装置とを備え、切替室の床面の温度が切替室の他の部分の空気温度よりも低くなる構成とし、制御装置は、通常運転中における温度変動速度が0.1K/分以下となるように冷却手段の冷却能力を制御する。
【解決手段】食品を保存する切替室と、切替室内の空気温度を検出する庫内温度検出手段と、切替室に投入された食品を冷却すると共に、冷却能力を制御可能な冷却手段と、庫内温度検出手段にて検出された空気温度に基づいて冷却手段を制御し、切替室内を設定温度に維持する通常運転を行う制御装置とを備え、切替室の床面の温度が切替室の他の部分の空気温度よりも低くなる構成とし、制御装置は、通常運転中における温度変動速度が0.1K/分以下となるように冷却手段の冷却能力を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存中の食品の乾燥を抑制することができる冷蔵庫に関わる。
【背景技術】
【0002】
食品を冷却、保存する際には、水分の蒸発や氷の昇華により、食品の水分が減ることで、食品の乾燥が起こる。乾燥により食品の重量が減るだけでなく、空気中の酸素が働き酸化作用を受けることから、品質の劣化が促進される。このような乾燥は、保存中の庫内の温度変動が大きくなると多くなることが知られている。このため、従来は庫内の温度変動、温度ムラをできるだけ小さくすることで乾燥の抑制を行っていた。
【0003】
そこで、冷凍サイクルにおける冷媒を通す流路を切り替える切替手段を設け、冷却能力を制御することで、冷却時の吐出冷気と冷蔵庫が設置される環境の室温との温度差を小さくし、庫内の温度ムラ、温度変動を抑え、乾燥を防止する技術があった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−283626号公報(第4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような構成である間冷式冷却では、ファンで冷気を庫内に送り庫内を冷却するため、温度変動をある程度まで抑制することはできても限度があり、完全になくすことは困難である。このため、保存中の食品は、乾燥により品質が低下する問題があることが実情である。
【0006】
本発明は、上記に示すような問題を解決するためになされたものであり、間冷式冷却を行いながらも、冷蔵庫内に保存する食品の乾燥を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る冷蔵庫は、食品を保存する貯蔵室と、貯蔵室内の空気温度を検出する貯蔵室温度検出手段と、貯蔵室に投入された食品を冷却すると共に、冷却能力を制御可能な冷却手段と、貯蔵室温度検出手段にて検出された空気温度に基づいて冷却手段を制御し、貯蔵室内を設定温度に維持する通常運転を行う制御手段とを備え、貯蔵室の床面の温度が貯蔵室の他の部分の空気温度よりも低くなる構成とし、制御手段は、通常運転中における温度変動速度が0.1K/分以下となるように冷却手段の冷却能力を制御するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通常運転中における温度変動速度が0.1K/分以下となるように冷却手段の冷却能力を制御するようにしたので、食品の乾燥を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】参考例1における冷蔵庫の正面図である。
【図2】参考例1における冷蔵庫の切替室部分の側断面図である。
【図3】参考例1における冷蔵庫の制御系統概略図である。
【図4】飽和水蒸気圧の差分の積算値ΣΔPと食品の水分喪失量との関係を示す図である。
【図5】7日間保存の牛肉における水分喪失量とメトミオグロビンの変化量との関係を示す図である。
【図6】参考例1における冷蔵庫の制御フローチャートである。
【図7】参考例2における冷蔵庫の切替室部分の側断面図である。
【図8】参考例2における冷蔵庫の制御系統概略図である。
【図9】参考例2における冷蔵庫の制御フローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態1に係る冷蔵庫の切替室部分の側断面図である。
【図11】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の切替室の温度の経時変化の例を示す図である。
【図12】庫内の温度変動速度と食品の水分喪失量(3週間目での水分喪失量)との関係を示したものである。
【図13】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の制御フローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態1に係る切替室の庫内温度(空気温度)とトレイ床面温度との比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
参考例1.
図1は、参考例1における冷蔵庫の正面図である。
冷蔵庫1は、冷蔵室100と、切替室200と、製氷室300と、冷凍室400と、野菜室500等を備えている。冷蔵室100は、最上部に開閉ドアを備えて配置されている。切替室200は、冷蔵室100の下方に配置され、冷凍温度帯(−18℃)から冷蔵(3℃)、チルド(0℃)、ソフト冷凍(−7℃)などの各温度帯に切り替え可能な部屋であり、引き出しドア2(図2参照)により開閉される。製氷室300は、切替室200と並列に配置され、引き出しドアにより開閉される。冷凍室400は、製氷室300の下方に配置され、引き出しドアにより開閉される。野菜室500は、最下部に配置され、引き出しドアにより開閉される。また、冷蔵室100の正面の扉表面には、各室の温度や設定を調節する操作スイッチと、各室の温度などを表示する液晶表示部などから構成される操作パネル1aが設けられている。切替室200は、操作パネル1aによって、冷蔵(約3℃)、チルド(約0℃)、ソフト冷凍(約−5、−7、−9℃)、冷凍(約−17℃)など、6通りの温度帯に切替可能となっている。
【0011】
なお、図1には図示されていないが、冷蔵庫1には冷媒を圧縮する圧縮機、冷媒を絞るキャピラリーチューブ、ガス状態の冷媒の熱を庫外に放熱して凝縮させる凝縮器、液状態の冷媒を気化させ得られる冷熱で庫内空気を冷却する冷却器(蒸発器)等を有する冷凍サイクルを備えている。また、冷蔵庫1には更に、この冷却器を通過し各室へ冷気を運ぶ通気ダクト、送風機及び各室への冷気供給量を調節するダンパー等の冷気循環装置を備えている。
【0012】
図2は、参考例1における冷蔵庫の切替室部分の側断面図である。なお、図2の左側が冷蔵庫1の正面、右側が背面であり、切替室200の正面には引き出しドア2が設けられ、切替室200の背面には、吹き出し口3と戻り口4とが開口されている。切替室200の背面側には、図示省略しているが冷気を運ぶ通気ダクトや冷却器に連通する風路が設けられており、冷気が吹き出し口3から切替室200内に流入し、切替室200内を冷却した後、戻り口4から冷却器へと戻るように構成されている。更に、切替室200内には食品を置くことができるトレイ5が設けられている。また、切替室200内には、庫内の空気温度(以下、庫内温度という)を検出する、例えばサーミスタで構成された庫内温度検出手段6が配置されている。更に、冷気の影響を受けにくい切替室200の天井面付近には、切替室200内に収納した食品の表面温度を検出する、例えば赤外線センサにより構成された食品温度検出手段7が配置されている。
【0013】
図3は、参考例1における冷蔵庫の制御系統概略図である。
冷蔵庫1は、マイクロコンピュータで構成された制御手段としての制御装置10を備えている。制御装置10は、CPUと、各種データを記憶するRAMと、運転制御を行うためのプログラム等を記憶するROM(何れも図示せず)とを備えており、ROM内のプログラムに従って冷蔵庫1全体を制御する。
【0014】
制御装置10には、貯蔵室に投入された食品を冷却すると共に、冷却能力を制御可能な冷却手段(圧縮機11、ダンパー12及びファン13等)14が接続されている。ダンパー12は、冷蔵庫1の背面側の風路内に風路を開閉可能に設けられ、ダンパー12の開閉により各部屋100〜500の温度調節が行われる。また、ファン13は、冷却器により冷却された冷気を各部屋100〜500に送風する。制御装置10は、各部屋100〜500のそれぞれに設けられた各温度検出手段(庫内温度検出手段6を含む)から温度情報を取得し、冷却手段14を制御して、各部屋を、それぞれ部屋対応の温度範囲に維持する運転(通常運転)を行っている。すなわち、制御装置10が圧縮機11のON・OFFの制御、ダンパー12の開閉制御、ファン13のON・OFF制御や回転数制御を行っている。例えば食品や食材の投入等によって庫内温度の上昇を検知した場合、制御装置10は、圧縮機11をONしてダンパー12を開き、逆に冷やしすぎた場合には、圧縮機11をOFFしてダンパー12を閉じる等の制御を行っている。また、制御装置10は、冷却器に付いた霜を溶かす霜取り動作や製氷、照明などの制御も行っている。
【0015】
制御装置10には、庫内温度検出手段6及び食品温度検出手段7が接続されており、それぞれの検出温度が制御装置10に入力される。制御装置10は、温度−飽和水蒸気圧力の関数を保持しており、庫内温度検出手段6により検出された庫内温度に基づいて庫内温度の飽和水蒸気圧P1を算出すると共に、食品温度検出手段7により検出された食品温度に基づいて食品温度の飽和水蒸気圧P2を算出する算出部10aを備えている。算出部10aは更に、P1とP2との差分ΔP(=P2−P1)を求め、その差分ΔPを積算する。制御装置10は、算出部10aで算出された一日当たりの差分ΔPの積算値が予め設定された一日あたりの許容積算値を超えないように冷却手段14を制御する制御部10bを備えている。制御部10bは、具体的には、単位時間内の差分ΔPの積算値に対して予め閾値を設け、単位時間の積算値が閾値を超えた場合、冷却手段14の冷却能力を弱める制御を行う。
【0016】
次に、保存中の食品が乾燥する仕組みについて述べる。食品は、通常、袋や容器、ラップなどに包装された状態で保存される。保存中の食品と、庫内温度とが同じ温度であるときは水分の移動は起きない。しかし、扉の開閉や霜取り動作などにより庫内温度が上昇すると、包装内の食品に接している空気温度と食品の温度も上昇する。庫内温度が元の温度へと下降すると、食品も冷却されて食品温度が下降するが、食品は空気より熱容量が大きいため、空気温度より遅れて下降する。このため、食品温度の方が空気温度よりも高い状態となる。このとき、食品温度の飽和水蒸気圧P2の方が、空気温度の飽和水蒸気圧P1よりも高い。水は飽和水蒸気圧の高いほうから低い方へと移動するため、食品中の水分が空気中へと移動し、食品の乾燥が起きる。単位時間(ここでは1時間)に食品から喪失する水分量W[kg/h]は、次式によって表されることが知られている。
【0017】
W=βF(P2−P1)
β:食品の表面の形状によって決まる蒸散率 [kg/m2h(mmHg)]
F:食品の表面積 [m2]
P1:食品に接している空気の飽和水蒸気圧 [mmHg]
P2:食品の表面の飽和水蒸気圧 [mmHg]
β、Fは、一定と考えられるため、水分喪失量Wは、P2−P1=ΔPで決まる。食品に接している空気温度は、庫内の空気温度とほぼ同じとみなせるので、水分喪失量Wは庫内温度の飽和水蒸気圧P1と食品温度の飽和水蒸気圧P2との差分ΔPで算出することができる。
【0018】
図4は、庫内温度の飽和水蒸気圧P1と食品温度の飽和水蒸気圧P2との差分ΔP=P2−P1の積算値ΣΔPと、食品の水分喪失量との関係を示したものである。積算値ΣΔPが多いほど、水分喪失量も多くなることがわかる。すなわち、食品の乾燥には、庫内温度の温度変動の幅ではなく、食品温度と庫内温度の飽和水蒸気圧の差が関与しているため、差分の積算値ΣΔPに基づいて温度制御を行うことで、食品の水分喪失量を抑制し、乾燥を防ぐことができる。従って、本例では、食品の温度が庫内温度よりも高く、庫内温度の飽和水蒸気圧P1と食品温度の飽和水蒸気圧P2の差分ΔPの単位時間内における積算値が予め設定した閾値以上となった場合、冷却能力を下げるように冷却手段14を制御し、一日の合計の積算値が予め設定された許容積算値を超えないように制御する。
【0019】
次に、許容積算値の決定方法について説明する。
水分喪失量が多くなると、食品の重量が減るだけでなく、食品のみずみずしさが失われ、食感が低下し、酸化作用が食品の深部まで及ぶことから、品質の劣化が促進される。以下、肉の例で説明する。
【0020】
肉の変色は、肉中の色素たんぱくであるミオグロビンが酸素と結びついてメトミオグロビンに変わる酸化反応であり、一般に消費者にも認識されている品質評価の一つである。図5は、7日間保存の牛肉における水分喪失量とメトミオグロビンの変化量との関係を示したものである。水分喪失量が大きくなると、酸化反応が進み、メトミオグロビンの変化量は多くなる。酸化が進み変色が著しくなると、ユーザーの消費意欲は低下する。
【0021】
次の表1は、一日あたりの積算値が異なる保存環境で、7日間保存した牛肉について、水分喪失量、色の変化、食味を評価し、それぞれ可食か否かを示した実験結果である。
【0022】
【表1】
【0023】
色評価から、水分喪失量が3[g/100g食品]以下であれば、変色は感知されない程度に小さく、ユーザーの消費意欲に影響しない範囲の品質となることがわかった。また食味評価では、水分喪失量5[g/100g食品]で食感の劣化を感じる被験者があり、水分喪失量10[g/100g食品]では、乾燥による食感の劣化を顕著に感じることがわかった。以上より、水分喪失量が3[g/100g食品]以下となる保存環境、すなわち一日あたりの積算値ΣΔPが150mmHg/日以下であれば、食品の品質を維持した保存が可能になる。よって、一日の許容積算値を150mmHg/日に設定する。
【0024】
図6は、上記のように構成した冷蔵庫の制御フローチャートである。なお、以下では、上記実験結果を踏まえ、一日の許容積算値を150mmHg/日に設定したものとして説明する。
まず、制御装置10は、冷却手段14を駆動し、切替室200の現在の設定温度に応じて予め設定された通常の冷却能力である冷却速度Vで運転し(S101)、同時に、時間の積算を開始する(S102)。
【0025】
庫内温度検出手段6により庫内温度T1を、食品温度検出手段7により食品温度T2を検出し(S103)、制御装置10は、食品温度T2が庫内温度T1よりも高いとき(S104)、庫内温度T1の飽和水蒸気圧P1と食品温度T2の飽和水蒸気圧P2とを算出する(S105)。次に、飽和水蒸気圧の差分ΔP=P2−P1を算出し(S106)、ΣΔPに積算する(S107)。
【0026】
制御装置10は、積算時間tが単位時間(ここでは、例えば1時間)に達するまでの間、ステップS103〜S107の処理を繰り返し、食品温度T2が庫内温度T1よりも高いときの飽和水蒸気圧の差分ΔPを積算する。そして、積算時間tが単位時間(例えば1時間)に達すると(S108)、積算値ΣΔPが予め設定された閾値以上であるか否かを判断し(S109)、積算値ΣΔPが閾値以上の場合、冷却能力を弱めるように冷却手段14を制御し、冷却速度V1(<V)で運転を行う(S110)。ここで、冷却能力を弱める際には、例えばダンパー12を閉じるか、又は、ダンパー12が閉じている時間を長くして冷気流入を抑えればよい。またダンパー12を制御する他に、圧縮機11の回転数やファン13の回転数を少なくしてもよい。食品の投入は、食品温度検出手段7による検出温度の変化や引き出しドア2の開閉によって検知したり、操作パネル1aの開閉ボタンを押すなどのユーザーの操作により検知してもよい。なお、上述したように、1日の許容積算値ΣΔPが150mmHg/日を超えないことを目標としているため、ここでの閾値は、一日の許容積算値(=150)を24時間で除算した値(150/24=6.2)に設定する。
【0027】
一方、ステップS109の判断において積算値ΣΔPが閾値未満の場合は、積算値ΣΔPをゼロリセットした後、ステップS101に戻り、通常の冷却速度Vでの運転を継続する。
【0028】
以上説明したように本参考例1では、食品の乾燥には、食品温度と庫内温度の飽和水蒸気圧の差が関与することに鑑み、庫内温度と食品温度のそれぞれから算出した各飽和水蒸気圧の差分を積算し、一日当たりの差分ΔPの積算値が予め設定された一日あたりの許容積算値を超えないように冷却手段14を制御するようにしたので、食品の乾燥を防止することが可能となる。また、許容積算値を実験により求めた150mmHg/日に設定したので、食品の品質を維持した保存が可能となる。
【0029】
ところで、飽和水蒸気圧は、温度の指数関数として表すことができ、同じ温度差であっても、温度帯が高い方が飽和水蒸気圧の差は大きくなる。切替室200は設定温度が可変であり、高い温度帯(冷蔵(3℃)、チルド(0℃)、ソフト冷凍(−7℃))に切り替えた場合、低い温度帯(冷凍(−18℃))の場合に比べて、同じ温度差であっても飽和水蒸気圧の差は大きくなり、乾燥が進むことが考えられる。すなわち、例えば冷蔵(3℃)において食品温度が3℃、庫内温度が2℃で温度差が1℃の場合と、冷凍(−18℃)において食品温度が−17℃、庫内温度が−18℃で温度差が同様に1℃の場合とを比較すると、温度帯が高い冷蔵の場合の方が飽和水蒸気圧の差は大きくなり、乾燥が進む。
【0030】
このため、設定温度を可変に設定できる切替室200に対し、本参考例1では、単に食品温度と庫内温度との温度差に基づいて冷却手段14を制御するのではなく、食品温度と庫内温度のそれぞれから求めた飽和水蒸気圧の差に基づいて冷却手段14を制御するようにしている。これにより、切替室200がどの温度帯に設定されても、同じ指標を用いた制御が可能となり、制御装置10を簡単にすることができる。
【0031】
また、切替室200をソフト冷凍に切り替えた場合、−5℃から−9℃での保存が可能となり、食品の乾燥を防止できる上、その食品を冷凍状態でも力を入れずに切断できるため、そのまま調理することができ、利便性が向上する。
【0032】
参考例2.
参考例2は、参考例1と制御方法の本質は同様であるが、参考例1と切替室200部分の構造が多少異なり、また、冷却手段14の制御を更に具体的に説明するものである。
【0033】
図7は、参考例2における冷蔵庫の切替室部分の側断面図である。図7において参考例1の図2と同一部分には同一符号を付す。
図7の左側が冷蔵庫1の正面、右側が背面であり、切替室200の正面には引き出しドア2が設けられ、切替室200の背面に吹き出し口3aが設けられている。また、切替室200の天井側にも吹き出し口3bが設けられており、複数の吹き出し口を有する構成となっている。吹き出し口3a、3bには、それぞれ専用ダンパー12a、12bが設けられ、ダンパー12a、12bを制御することで、吹き出し口3a、3bを開閉可能となっている。吹き出し口を複数設け、それぞれを開閉可能とすることで、切替室200に流入する冷気量を調整することが可能となっている。
【0034】
図8は、参考例2における冷蔵庫の制御系統概略図である。図8において参考例1の図3と同一部分には同一符号を付す。
参考例2の冷蔵庫1は、参考例1の冷却手段14のダンパー12を、吹き出し口3a、3bの個数に合わせてダンパー12a及びダンパー12bとしたもので、その他の構成は参考例1と同様である。
【0035】
図9は、上記のように構成した参考例2における冷蔵庫の制御フローチャートである。なお、以下では、上記参考例1で説明した実験結果を踏まえ、一日の積算値が150mmHg/日を超えないように冷却手段14を制御する場合について説明する。なお、切替室200は通常、全ての吹き出し口3a、3bが開いた状態である。
まず、制御装置10は、冷却手段14を駆動し、切替室200の現在の設定温度に応じて予め設定された通常の冷却能力である冷却速度Vで運転し(S201)、同時に、時間の積算を開始する(S202)。
【0036】
庫内温度検出手段6により庫内温度T1を、食品温度検出手段7により食品温度T2を検出し(S203)、制御装置10は、食品温度T2が庫内温度T1よりも高いとき(S204)、庫内温度T1の飽和水蒸気圧P1と食品温度T2の飽和水蒸気圧P2とを算出する(S205)。次に、飽和水蒸気圧の差分ΔP=P2−P1を算出し(S206)、ΣΔPに積算する(S207)。
【0037】
制御装置10は、積算時間tが単位時間(ここでは、例えば1時間)に達するまでの間、ステップS203〜S207の処理を繰り返し、食品温度T2が庫内温度T1よりも高いときの飽和水蒸気圧の差分ΔPを積算する。そして、積算時間tが単位時間(例えば1時間)に達すると(S208)、積算値ΣΔPが予め設定された閾値以上であるか否かを判断する(S209)。積算値ΣΔPが閾値以上の場合は、吹き出し口3aが開いているかどうかをチェックし(S210)、吹き出し口3aが開いている場合、ダンパー12aを閉じて吹き出し口3aを閉じ、切替室200への冷気流入を抑える。これにより、冷却速度を弱めることができる。また、吹き出し口3aが閉じている場合は、冷却手段14を制御して冷却能力を弱め、冷却速度V1(<V)で運転を行う(S212)。ここで、吹き出し口3aが開いている場合も閉じている場合も、結局のところ冷却速度を低下させる制御を行っているが、吹き出し口3aの開閉に応じて制御を分けたのは以下の理由による。すなわち、吹き出し口3aが開いている場合は、圧縮機11などの冷却手段14を調整せずに、単に吹き出し口3aを閉じることで簡単に冷却速度を低下させることができるため、吹き出し口3aを閉じる制御を行っている。一方、吹き出し口3aが既に閉じている場合は、圧縮機11又はファン13への印加電圧を抑え、圧縮機11の回転数やファン13の回転数を少なくするなどして冷却速度V1で運転する制御を行うようにしている。
【0038】
ステップS209の判断において積算値ΣΔPが閾値未満の場合は、積算値ΣΔPをゼロリセットした後、ステップS201に戻り、通常の冷却速度Vでの運転を継続する。
【0039】
以上説明したように、参考例2によれば、参考例1と同様の作用効果を得ることができる。また、参考例2では、開口している(開いている)吹き出し口の数を可変にすることにより、容易に冷却能力を変化させることができる。なお、本参考例2では、開口している吹き出し口の数を変更させる手段としてダンパーを用いた例を示したが、ダンパーに限られたものではなく、例えば電動シャッターとしても良い。
【0040】
実施の形態1.
図10は、本発明の実施の形態1に係る冷蔵庫の切替室部分の側断面図である。なお、図10において図2に示した参考例1と同じ部分にはこれと同じ符号を付す。また、実施の形態1の冷蔵庫1の制御系統は図3に示した参考例1の構成から食品温度検出手段7を省略した構成であり、その他は参考例1と同様である。以下、実施の形態1が参考例1と異なる部分を中心に説明する。
【0041】
図10に示すように、切替室200の側面下側に吹き出し口3が設けられ、この吹き出し口3からトレイ5の下側の切替室200の床面に沿って冷気が切替室200に流入する。また、切替室200の上方には切替室200よりも温度が高い設定の部屋である冷蔵室100が配置され、切替室200の下方には、切替室200よりも温度が低い設定の部屋である冷凍室400が配置されている。このような構成により、切替室200内の温度分布は、床面温度が空気温度よりも低くなっている。
【0042】
図11は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の通常運転中の切替室の温度の経時変化の一例を示す図である。図11において濃い線が食品温度、薄い線が庫内温度を示している。
冷蔵庫1では、通常運転中は切替室200内を現在の設定温度に維持する制御が行われており、扉の開閉や霜取り動作などにより温度変化が生じると、現在の設定温度に戻そうとする制御が行われる。例えば食品や食材の投入等によって庫内温度の上昇を検知した場合、制御装置10は、圧縮機11をONしてダンパー12を開き、逆に冷やしすぎた場合には、圧縮機11をOFFし、ダンパー12を閉じる等の制御を行う。制御装置10は、具体的な制御として、切替室200の現在の設定温度を中心として所定の温度変動幅を持ち、温度変動幅の上限温度を上回った場合に圧縮機11をONし、温度変動幅の下限温度を下回った場合に圧縮機11をOFFする制御を行っている。このような制御により、切替室内の温度は図11に示すような温度変動が生じている。
【0043】
図12は、庫内の温度変動速度と食品の水分喪失量(3週間目での水分喪失量)との関係を示したものである。これにより、温度変動速度が速いほど水分喪失量は多くなることが分かる。温度変動速度が遅ければ(ここでは0.1K/分以下)、3週間後の水分喪失量を3[g/100g食品]以下に抑えることができ、水分量を維持した保存ができることがわかる。
【0044】
ここで、制御装置10は、温度変動幅を大きく設定している場合(例えば、2K)において、庫内温度を上限温度から設定温度に戻そうとする際に冷却能力を仮に最大限にして庫内を急激に冷却すると、上述した原理から食品の乾燥が進むおそれがある。このため、本実施の形態1では、庫内温度を下げる際の温度変動速度を0.1K/分以下とし、ゆっくりとしたスピードで庫内温度を下げていくようにする。そして、食品温度と庫内温度との温度差をできるだけ小さく保つようにしながら庫内温度を設定温度に到達するようにすることで、食品の乾燥抑制を図る。
【0045】
図13は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の制御フローチャートである。
まず、制御装置10は、冷却手段14を駆動し、切替室200の現在の設定温度に応じて予め設定された通常の冷却能力である冷却速度Vで運転し(S301)、同時に、時間の積算を開始する(S302)。
【0046】
庫内温度検出手段6により庫内温度T1を検出し(S303)、所定時間Δt(例えば5分)経過後(S304)、再び庫内温度T1を検出し(S305)、温度変動速度ΔT/Δtを算出する(S306)。温度変動速度が0.1K/分以上の場合(S307)、冷却能力を弱めるように冷却手段14を制御し、冷却速度V1(<V)で運転を行う(S308)。冷却能力を弱める際には、ダンパー12を閉じるか、又はダンパー12が閉じている時間を長くして、切替室200内への冷気流入を抑えればよい。またダンパー12を制御する他、圧縮機11又はファン13への印加電圧を抑えて圧縮機11の回転数やファン13の回転数を少なくしてもよい。温度変動速度が0.1K/分未満のときは、ステップS301に戻って冷却速度Vでの運転を継続する。
【0047】
ここで、冷却能力を決定する際には、予め設定された制御テーブルに従って決定するようにしてもよい。制御テーブルには、庫内温度と、その庫内温度が検出されたときの冷却能力(具体的には、例えば圧縮機11やファン13への印加電圧、ダンパー12の開閉等)とを対応付けて登録しておく。なお、制御テーブルに登録する冷却能力は温度変動速度が0.1K/分となるように予測して設定されたものとする。
【0048】
以上説明したように本実施の形態1によれば、温度変動速度が0.1K/分以下となるように冷却手段14を制御するようにしたので、温度変動幅が大きく設定されている場合であっても、ゆっくりとした庫内温度の変化に食品の温度を追随させることができる。このとき、庫内温度と食品温度との温度差が小さくなるため、庫内温度の飽和水蒸気圧と食品温度の飽和水蒸気圧の差分ΔPも小さくなり、食品の乾燥を抑制することができる。
【0049】
ところで、実施の形態1の冷蔵庫1は、図10に示した構造により、切替室200内の温度分布が、次の図14に示すように空気温度よりもトレイ5の床面温度の方が低くなっている。
【0050】
図14は、本発明の実施の形態1に係る切替室の庫内温度(空気温度)とトレイ床面温度との比較例を示す図である。
図14に示すように庫内の空気温度よりも床面温度の方が低い温度分布により、飽和水蒸気圧差による水分移動は、食品から飽和水蒸気圧の低いトレイ5の床面へ、下方へ向かって起きる。食品は袋や容器に入れられた状態でトレイ5に載せられており、食品の下方は、食品と包装との隙間しか空間がないため、すぐに飽和に達し、それ以上水分移動しない。このため、図14に示す温度分布の切替室200の場合、水分喪失量を抑制することができる。
【0051】
また、トレイ5の床面からの直接冷却と、吹き出し口3から流入する冷気による間接冷却が行われるため、庫内温度の温度変動速度を0.1K/分以下とし、ゆっくりとした冷却を行っても、食品を効率的に冷却することができる。このため、食品の温度が庫内温度よりも高い状態の時間を短くでき、水分喪失抑制に効果的である。
【0052】
なお、実施の形態1では、図10に示したように吹き出し口3が1箇所の例を示したが、複数箇所設けても良く、この場合、複数の吹き出し口のそれぞれに対応してダンパーを設け、各ダンパーを制御するなどして温度変動速度が0.1K/分以下となるようにすればよい。
【符号の説明】
【0053】
1a 操作パネル、2 ドア、3 吹き出し口、3a 吹き出し口、3b 吹き出し口、4 戻り口、5 トレイ、6 庫内温度検出手段、7 食品温度検出手段、10 制御装置、10a 算出部、10b 制御部、11 圧縮機、12 ダンパー、12a ダンパー、12b ダンパー、13 ファン、14 冷却手段、100 冷蔵室、200 切替室、300 製氷室、400 冷凍室、500 野菜室。
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存中の食品の乾燥を抑制することができる冷蔵庫に関わる。
【背景技術】
【0002】
食品を冷却、保存する際には、水分の蒸発や氷の昇華により、食品の水分が減ることで、食品の乾燥が起こる。乾燥により食品の重量が減るだけでなく、空気中の酸素が働き酸化作用を受けることから、品質の劣化が促進される。このような乾燥は、保存中の庫内の温度変動が大きくなると多くなることが知られている。このため、従来は庫内の温度変動、温度ムラをできるだけ小さくすることで乾燥の抑制を行っていた。
【0003】
そこで、冷凍サイクルにおける冷媒を通す流路を切り替える切替手段を設け、冷却能力を制御することで、冷却時の吐出冷気と冷蔵庫が設置される環境の室温との温度差を小さくし、庫内の温度ムラ、温度変動を抑え、乾燥を防止する技術があった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−283626号公報(第4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような構成である間冷式冷却では、ファンで冷気を庫内に送り庫内を冷却するため、温度変動をある程度まで抑制することはできても限度があり、完全になくすことは困難である。このため、保存中の食品は、乾燥により品質が低下する問題があることが実情である。
【0006】
本発明は、上記に示すような問題を解決するためになされたものであり、間冷式冷却を行いながらも、冷蔵庫内に保存する食品の乾燥を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る冷蔵庫は、食品を保存する貯蔵室と、貯蔵室内の空気温度を検出する貯蔵室温度検出手段と、貯蔵室に投入された食品を冷却すると共に、冷却能力を制御可能な冷却手段と、貯蔵室温度検出手段にて検出された空気温度に基づいて冷却手段を制御し、貯蔵室内を設定温度に維持する通常運転を行う制御手段とを備え、貯蔵室の床面の温度が貯蔵室の他の部分の空気温度よりも低くなる構成とし、制御手段は、通常運転中における温度変動速度が0.1K/分以下となるように冷却手段の冷却能力を制御するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通常運転中における温度変動速度が0.1K/分以下となるように冷却手段の冷却能力を制御するようにしたので、食品の乾燥を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】参考例1における冷蔵庫の正面図である。
【図2】参考例1における冷蔵庫の切替室部分の側断面図である。
【図3】参考例1における冷蔵庫の制御系統概略図である。
【図4】飽和水蒸気圧の差分の積算値ΣΔPと食品の水分喪失量との関係を示す図である。
【図5】7日間保存の牛肉における水分喪失量とメトミオグロビンの変化量との関係を示す図である。
【図6】参考例1における冷蔵庫の制御フローチャートである。
【図7】参考例2における冷蔵庫の切替室部分の側断面図である。
【図8】参考例2における冷蔵庫の制御系統概略図である。
【図9】参考例2における冷蔵庫の制御フローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態1に係る冷蔵庫の切替室部分の側断面図である。
【図11】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の切替室の温度の経時変化の例を示す図である。
【図12】庫内の温度変動速度と食品の水分喪失量(3週間目での水分喪失量)との関係を示したものである。
【図13】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の制御フローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態1に係る切替室の庫内温度(空気温度)とトレイ床面温度との比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
参考例1.
図1は、参考例1における冷蔵庫の正面図である。
冷蔵庫1は、冷蔵室100と、切替室200と、製氷室300と、冷凍室400と、野菜室500等を備えている。冷蔵室100は、最上部に開閉ドアを備えて配置されている。切替室200は、冷蔵室100の下方に配置され、冷凍温度帯(−18℃)から冷蔵(3℃)、チルド(0℃)、ソフト冷凍(−7℃)などの各温度帯に切り替え可能な部屋であり、引き出しドア2(図2参照)により開閉される。製氷室300は、切替室200と並列に配置され、引き出しドアにより開閉される。冷凍室400は、製氷室300の下方に配置され、引き出しドアにより開閉される。野菜室500は、最下部に配置され、引き出しドアにより開閉される。また、冷蔵室100の正面の扉表面には、各室の温度や設定を調節する操作スイッチと、各室の温度などを表示する液晶表示部などから構成される操作パネル1aが設けられている。切替室200は、操作パネル1aによって、冷蔵(約3℃)、チルド(約0℃)、ソフト冷凍(約−5、−7、−9℃)、冷凍(約−17℃)など、6通りの温度帯に切替可能となっている。
【0011】
なお、図1には図示されていないが、冷蔵庫1には冷媒を圧縮する圧縮機、冷媒を絞るキャピラリーチューブ、ガス状態の冷媒の熱を庫外に放熱して凝縮させる凝縮器、液状態の冷媒を気化させ得られる冷熱で庫内空気を冷却する冷却器(蒸発器)等を有する冷凍サイクルを備えている。また、冷蔵庫1には更に、この冷却器を通過し各室へ冷気を運ぶ通気ダクト、送風機及び各室への冷気供給量を調節するダンパー等の冷気循環装置を備えている。
【0012】
図2は、参考例1における冷蔵庫の切替室部分の側断面図である。なお、図2の左側が冷蔵庫1の正面、右側が背面であり、切替室200の正面には引き出しドア2が設けられ、切替室200の背面には、吹き出し口3と戻り口4とが開口されている。切替室200の背面側には、図示省略しているが冷気を運ぶ通気ダクトや冷却器に連通する風路が設けられており、冷気が吹き出し口3から切替室200内に流入し、切替室200内を冷却した後、戻り口4から冷却器へと戻るように構成されている。更に、切替室200内には食品を置くことができるトレイ5が設けられている。また、切替室200内には、庫内の空気温度(以下、庫内温度という)を検出する、例えばサーミスタで構成された庫内温度検出手段6が配置されている。更に、冷気の影響を受けにくい切替室200の天井面付近には、切替室200内に収納した食品の表面温度を検出する、例えば赤外線センサにより構成された食品温度検出手段7が配置されている。
【0013】
図3は、参考例1における冷蔵庫の制御系統概略図である。
冷蔵庫1は、マイクロコンピュータで構成された制御手段としての制御装置10を備えている。制御装置10は、CPUと、各種データを記憶するRAMと、運転制御を行うためのプログラム等を記憶するROM(何れも図示せず)とを備えており、ROM内のプログラムに従って冷蔵庫1全体を制御する。
【0014】
制御装置10には、貯蔵室に投入された食品を冷却すると共に、冷却能力を制御可能な冷却手段(圧縮機11、ダンパー12及びファン13等)14が接続されている。ダンパー12は、冷蔵庫1の背面側の風路内に風路を開閉可能に設けられ、ダンパー12の開閉により各部屋100〜500の温度調節が行われる。また、ファン13は、冷却器により冷却された冷気を各部屋100〜500に送風する。制御装置10は、各部屋100〜500のそれぞれに設けられた各温度検出手段(庫内温度検出手段6を含む)から温度情報を取得し、冷却手段14を制御して、各部屋を、それぞれ部屋対応の温度範囲に維持する運転(通常運転)を行っている。すなわち、制御装置10が圧縮機11のON・OFFの制御、ダンパー12の開閉制御、ファン13のON・OFF制御や回転数制御を行っている。例えば食品や食材の投入等によって庫内温度の上昇を検知した場合、制御装置10は、圧縮機11をONしてダンパー12を開き、逆に冷やしすぎた場合には、圧縮機11をOFFしてダンパー12を閉じる等の制御を行っている。また、制御装置10は、冷却器に付いた霜を溶かす霜取り動作や製氷、照明などの制御も行っている。
【0015】
制御装置10には、庫内温度検出手段6及び食品温度検出手段7が接続されており、それぞれの検出温度が制御装置10に入力される。制御装置10は、温度−飽和水蒸気圧力の関数を保持しており、庫内温度検出手段6により検出された庫内温度に基づいて庫内温度の飽和水蒸気圧P1を算出すると共に、食品温度検出手段7により検出された食品温度に基づいて食品温度の飽和水蒸気圧P2を算出する算出部10aを備えている。算出部10aは更に、P1とP2との差分ΔP(=P2−P1)を求め、その差分ΔPを積算する。制御装置10は、算出部10aで算出された一日当たりの差分ΔPの積算値が予め設定された一日あたりの許容積算値を超えないように冷却手段14を制御する制御部10bを備えている。制御部10bは、具体的には、単位時間内の差分ΔPの積算値に対して予め閾値を設け、単位時間の積算値が閾値を超えた場合、冷却手段14の冷却能力を弱める制御を行う。
【0016】
次に、保存中の食品が乾燥する仕組みについて述べる。食品は、通常、袋や容器、ラップなどに包装された状態で保存される。保存中の食品と、庫内温度とが同じ温度であるときは水分の移動は起きない。しかし、扉の開閉や霜取り動作などにより庫内温度が上昇すると、包装内の食品に接している空気温度と食品の温度も上昇する。庫内温度が元の温度へと下降すると、食品も冷却されて食品温度が下降するが、食品は空気より熱容量が大きいため、空気温度より遅れて下降する。このため、食品温度の方が空気温度よりも高い状態となる。このとき、食品温度の飽和水蒸気圧P2の方が、空気温度の飽和水蒸気圧P1よりも高い。水は飽和水蒸気圧の高いほうから低い方へと移動するため、食品中の水分が空気中へと移動し、食品の乾燥が起きる。単位時間(ここでは1時間)に食品から喪失する水分量W[kg/h]は、次式によって表されることが知られている。
【0017】
W=βF(P2−P1)
β:食品の表面の形状によって決まる蒸散率 [kg/m2h(mmHg)]
F:食品の表面積 [m2]
P1:食品に接している空気の飽和水蒸気圧 [mmHg]
P2:食品の表面の飽和水蒸気圧 [mmHg]
β、Fは、一定と考えられるため、水分喪失量Wは、P2−P1=ΔPで決まる。食品に接している空気温度は、庫内の空気温度とほぼ同じとみなせるので、水分喪失量Wは庫内温度の飽和水蒸気圧P1と食品温度の飽和水蒸気圧P2との差分ΔPで算出することができる。
【0018】
図4は、庫内温度の飽和水蒸気圧P1と食品温度の飽和水蒸気圧P2との差分ΔP=P2−P1の積算値ΣΔPと、食品の水分喪失量との関係を示したものである。積算値ΣΔPが多いほど、水分喪失量も多くなることがわかる。すなわち、食品の乾燥には、庫内温度の温度変動の幅ではなく、食品温度と庫内温度の飽和水蒸気圧の差が関与しているため、差分の積算値ΣΔPに基づいて温度制御を行うことで、食品の水分喪失量を抑制し、乾燥を防ぐことができる。従って、本例では、食品の温度が庫内温度よりも高く、庫内温度の飽和水蒸気圧P1と食品温度の飽和水蒸気圧P2の差分ΔPの単位時間内における積算値が予め設定した閾値以上となった場合、冷却能力を下げるように冷却手段14を制御し、一日の合計の積算値が予め設定された許容積算値を超えないように制御する。
【0019】
次に、許容積算値の決定方法について説明する。
水分喪失量が多くなると、食品の重量が減るだけでなく、食品のみずみずしさが失われ、食感が低下し、酸化作用が食品の深部まで及ぶことから、品質の劣化が促進される。以下、肉の例で説明する。
【0020】
肉の変色は、肉中の色素たんぱくであるミオグロビンが酸素と結びついてメトミオグロビンに変わる酸化反応であり、一般に消費者にも認識されている品質評価の一つである。図5は、7日間保存の牛肉における水分喪失量とメトミオグロビンの変化量との関係を示したものである。水分喪失量が大きくなると、酸化反応が進み、メトミオグロビンの変化量は多くなる。酸化が進み変色が著しくなると、ユーザーの消費意欲は低下する。
【0021】
次の表1は、一日あたりの積算値が異なる保存環境で、7日間保存した牛肉について、水分喪失量、色の変化、食味を評価し、それぞれ可食か否かを示した実験結果である。
【0022】
【表1】
【0023】
色評価から、水分喪失量が3[g/100g食品]以下であれば、変色は感知されない程度に小さく、ユーザーの消費意欲に影響しない範囲の品質となることがわかった。また食味評価では、水分喪失量5[g/100g食品]で食感の劣化を感じる被験者があり、水分喪失量10[g/100g食品]では、乾燥による食感の劣化を顕著に感じることがわかった。以上より、水分喪失量が3[g/100g食品]以下となる保存環境、すなわち一日あたりの積算値ΣΔPが150mmHg/日以下であれば、食品の品質を維持した保存が可能になる。よって、一日の許容積算値を150mmHg/日に設定する。
【0024】
図6は、上記のように構成した冷蔵庫の制御フローチャートである。なお、以下では、上記実験結果を踏まえ、一日の許容積算値を150mmHg/日に設定したものとして説明する。
まず、制御装置10は、冷却手段14を駆動し、切替室200の現在の設定温度に応じて予め設定された通常の冷却能力である冷却速度Vで運転し(S101)、同時に、時間の積算を開始する(S102)。
【0025】
庫内温度検出手段6により庫内温度T1を、食品温度検出手段7により食品温度T2を検出し(S103)、制御装置10は、食品温度T2が庫内温度T1よりも高いとき(S104)、庫内温度T1の飽和水蒸気圧P1と食品温度T2の飽和水蒸気圧P2とを算出する(S105)。次に、飽和水蒸気圧の差分ΔP=P2−P1を算出し(S106)、ΣΔPに積算する(S107)。
【0026】
制御装置10は、積算時間tが単位時間(ここでは、例えば1時間)に達するまでの間、ステップS103〜S107の処理を繰り返し、食品温度T2が庫内温度T1よりも高いときの飽和水蒸気圧の差分ΔPを積算する。そして、積算時間tが単位時間(例えば1時間)に達すると(S108)、積算値ΣΔPが予め設定された閾値以上であるか否かを判断し(S109)、積算値ΣΔPが閾値以上の場合、冷却能力を弱めるように冷却手段14を制御し、冷却速度V1(<V)で運転を行う(S110)。ここで、冷却能力を弱める際には、例えばダンパー12を閉じるか、又は、ダンパー12が閉じている時間を長くして冷気流入を抑えればよい。またダンパー12を制御する他に、圧縮機11の回転数やファン13の回転数を少なくしてもよい。食品の投入は、食品温度検出手段7による検出温度の変化や引き出しドア2の開閉によって検知したり、操作パネル1aの開閉ボタンを押すなどのユーザーの操作により検知してもよい。なお、上述したように、1日の許容積算値ΣΔPが150mmHg/日を超えないことを目標としているため、ここでの閾値は、一日の許容積算値(=150)を24時間で除算した値(150/24=6.2)に設定する。
【0027】
一方、ステップS109の判断において積算値ΣΔPが閾値未満の場合は、積算値ΣΔPをゼロリセットした後、ステップS101に戻り、通常の冷却速度Vでの運転を継続する。
【0028】
以上説明したように本参考例1では、食品の乾燥には、食品温度と庫内温度の飽和水蒸気圧の差が関与することに鑑み、庫内温度と食品温度のそれぞれから算出した各飽和水蒸気圧の差分を積算し、一日当たりの差分ΔPの積算値が予め設定された一日あたりの許容積算値を超えないように冷却手段14を制御するようにしたので、食品の乾燥を防止することが可能となる。また、許容積算値を実験により求めた150mmHg/日に設定したので、食品の品質を維持した保存が可能となる。
【0029】
ところで、飽和水蒸気圧は、温度の指数関数として表すことができ、同じ温度差であっても、温度帯が高い方が飽和水蒸気圧の差は大きくなる。切替室200は設定温度が可変であり、高い温度帯(冷蔵(3℃)、チルド(0℃)、ソフト冷凍(−7℃))に切り替えた場合、低い温度帯(冷凍(−18℃))の場合に比べて、同じ温度差であっても飽和水蒸気圧の差は大きくなり、乾燥が進むことが考えられる。すなわち、例えば冷蔵(3℃)において食品温度が3℃、庫内温度が2℃で温度差が1℃の場合と、冷凍(−18℃)において食品温度が−17℃、庫内温度が−18℃で温度差が同様に1℃の場合とを比較すると、温度帯が高い冷蔵の場合の方が飽和水蒸気圧の差は大きくなり、乾燥が進む。
【0030】
このため、設定温度を可変に設定できる切替室200に対し、本参考例1では、単に食品温度と庫内温度との温度差に基づいて冷却手段14を制御するのではなく、食品温度と庫内温度のそれぞれから求めた飽和水蒸気圧の差に基づいて冷却手段14を制御するようにしている。これにより、切替室200がどの温度帯に設定されても、同じ指標を用いた制御が可能となり、制御装置10を簡単にすることができる。
【0031】
また、切替室200をソフト冷凍に切り替えた場合、−5℃から−9℃での保存が可能となり、食品の乾燥を防止できる上、その食品を冷凍状態でも力を入れずに切断できるため、そのまま調理することができ、利便性が向上する。
【0032】
参考例2.
参考例2は、参考例1と制御方法の本質は同様であるが、参考例1と切替室200部分の構造が多少異なり、また、冷却手段14の制御を更に具体的に説明するものである。
【0033】
図7は、参考例2における冷蔵庫の切替室部分の側断面図である。図7において参考例1の図2と同一部分には同一符号を付す。
図7の左側が冷蔵庫1の正面、右側が背面であり、切替室200の正面には引き出しドア2が設けられ、切替室200の背面に吹き出し口3aが設けられている。また、切替室200の天井側にも吹き出し口3bが設けられており、複数の吹き出し口を有する構成となっている。吹き出し口3a、3bには、それぞれ専用ダンパー12a、12bが設けられ、ダンパー12a、12bを制御することで、吹き出し口3a、3bを開閉可能となっている。吹き出し口を複数設け、それぞれを開閉可能とすることで、切替室200に流入する冷気量を調整することが可能となっている。
【0034】
図8は、参考例2における冷蔵庫の制御系統概略図である。図8において参考例1の図3と同一部分には同一符号を付す。
参考例2の冷蔵庫1は、参考例1の冷却手段14のダンパー12を、吹き出し口3a、3bの個数に合わせてダンパー12a及びダンパー12bとしたもので、その他の構成は参考例1と同様である。
【0035】
図9は、上記のように構成した参考例2における冷蔵庫の制御フローチャートである。なお、以下では、上記参考例1で説明した実験結果を踏まえ、一日の積算値が150mmHg/日を超えないように冷却手段14を制御する場合について説明する。なお、切替室200は通常、全ての吹き出し口3a、3bが開いた状態である。
まず、制御装置10は、冷却手段14を駆動し、切替室200の現在の設定温度に応じて予め設定された通常の冷却能力である冷却速度Vで運転し(S201)、同時に、時間の積算を開始する(S202)。
【0036】
庫内温度検出手段6により庫内温度T1を、食品温度検出手段7により食品温度T2を検出し(S203)、制御装置10は、食品温度T2が庫内温度T1よりも高いとき(S204)、庫内温度T1の飽和水蒸気圧P1と食品温度T2の飽和水蒸気圧P2とを算出する(S205)。次に、飽和水蒸気圧の差分ΔP=P2−P1を算出し(S206)、ΣΔPに積算する(S207)。
【0037】
制御装置10は、積算時間tが単位時間(ここでは、例えば1時間)に達するまでの間、ステップS203〜S207の処理を繰り返し、食品温度T2が庫内温度T1よりも高いときの飽和水蒸気圧の差分ΔPを積算する。そして、積算時間tが単位時間(例えば1時間)に達すると(S208)、積算値ΣΔPが予め設定された閾値以上であるか否かを判断する(S209)。積算値ΣΔPが閾値以上の場合は、吹き出し口3aが開いているかどうかをチェックし(S210)、吹き出し口3aが開いている場合、ダンパー12aを閉じて吹き出し口3aを閉じ、切替室200への冷気流入を抑える。これにより、冷却速度を弱めることができる。また、吹き出し口3aが閉じている場合は、冷却手段14を制御して冷却能力を弱め、冷却速度V1(<V)で運転を行う(S212)。ここで、吹き出し口3aが開いている場合も閉じている場合も、結局のところ冷却速度を低下させる制御を行っているが、吹き出し口3aの開閉に応じて制御を分けたのは以下の理由による。すなわち、吹き出し口3aが開いている場合は、圧縮機11などの冷却手段14を調整せずに、単に吹き出し口3aを閉じることで簡単に冷却速度を低下させることができるため、吹き出し口3aを閉じる制御を行っている。一方、吹き出し口3aが既に閉じている場合は、圧縮機11又はファン13への印加電圧を抑え、圧縮機11の回転数やファン13の回転数を少なくするなどして冷却速度V1で運転する制御を行うようにしている。
【0038】
ステップS209の判断において積算値ΣΔPが閾値未満の場合は、積算値ΣΔPをゼロリセットした後、ステップS201に戻り、通常の冷却速度Vでの運転を継続する。
【0039】
以上説明したように、参考例2によれば、参考例1と同様の作用効果を得ることができる。また、参考例2では、開口している(開いている)吹き出し口の数を可変にすることにより、容易に冷却能力を変化させることができる。なお、本参考例2では、開口している吹き出し口の数を変更させる手段としてダンパーを用いた例を示したが、ダンパーに限られたものではなく、例えば電動シャッターとしても良い。
【0040】
実施の形態1.
図10は、本発明の実施の形態1に係る冷蔵庫の切替室部分の側断面図である。なお、図10において図2に示した参考例1と同じ部分にはこれと同じ符号を付す。また、実施の形態1の冷蔵庫1の制御系統は図3に示した参考例1の構成から食品温度検出手段7を省略した構成であり、その他は参考例1と同様である。以下、実施の形態1が参考例1と異なる部分を中心に説明する。
【0041】
図10に示すように、切替室200の側面下側に吹き出し口3が設けられ、この吹き出し口3からトレイ5の下側の切替室200の床面に沿って冷気が切替室200に流入する。また、切替室200の上方には切替室200よりも温度が高い設定の部屋である冷蔵室100が配置され、切替室200の下方には、切替室200よりも温度が低い設定の部屋である冷凍室400が配置されている。このような構成により、切替室200内の温度分布は、床面温度が空気温度よりも低くなっている。
【0042】
図11は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の通常運転中の切替室の温度の経時変化の一例を示す図である。図11において濃い線が食品温度、薄い線が庫内温度を示している。
冷蔵庫1では、通常運転中は切替室200内を現在の設定温度に維持する制御が行われており、扉の開閉や霜取り動作などにより温度変化が生じると、現在の設定温度に戻そうとする制御が行われる。例えば食品や食材の投入等によって庫内温度の上昇を検知した場合、制御装置10は、圧縮機11をONしてダンパー12を開き、逆に冷やしすぎた場合には、圧縮機11をOFFし、ダンパー12を閉じる等の制御を行う。制御装置10は、具体的な制御として、切替室200の現在の設定温度を中心として所定の温度変動幅を持ち、温度変動幅の上限温度を上回った場合に圧縮機11をONし、温度変動幅の下限温度を下回った場合に圧縮機11をOFFする制御を行っている。このような制御により、切替室内の温度は図11に示すような温度変動が生じている。
【0043】
図12は、庫内の温度変動速度と食品の水分喪失量(3週間目での水分喪失量)との関係を示したものである。これにより、温度変動速度が速いほど水分喪失量は多くなることが分かる。温度変動速度が遅ければ(ここでは0.1K/分以下)、3週間後の水分喪失量を3[g/100g食品]以下に抑えることができ、水分量を維持した保存ができることがわかる。
【0044】
ここで、制御装置10は、温度変動幅を大きく設定している場合(例えば、2K)において、庫内温度を上限温度から設定温度に戻そうとする際に冷却能力を仮に最大限にして庫内を急激に冷却すると、上述した原理から食品の乾燥が進むおそれがある。このため、本実施の形態1では、庫内温度を下げる際の温度変動速度を0.1K/分以下とし、ゆっくりとしたスピードで庫内温度を下げていくようにする。そして、食品温度と庫内温度との温度差をできるだけ小さく保つようにしながら庫内温度を設定温度に到達するようにすることで、食品の乾燥抑制を図る。
【0045】
図13は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の制御フローチャートである。
まず、制御装置10は、冷却手段14を駆動し、切替室200の現在の設定温度に応じて予め設定された通常の冷却能力である冷却速度Vで運転し(S301)、同時に、時間の積算を開始する(S302)。
【0046】
庫内温度検出手段6により庫内温度T1を検出し(S303)、所定時間Δt(例えば5分)経過後(S304)、再び庫内温度T1を検出し(S305)、温度変動速度ΔT/Δtを算出する(S306)。温度変動速度が0.1K/分以上の場合(S307)、冷却能力を弱めるように冷却手段14を制御し、冷却速度V1(<V)で運転を行う(S308)。冷却能力を弱める際には、ダンパー12を閉じるか、又はダンパー12が閉じている時間を長くして、切替室200内への冷気流入を抑えればよい。またダンパー12を制御する他、圧縮機11又はファン13への印加電圧を抑えて圧縮機11の回転数やファン13の回転数を少なくしてもよい。温度変動速度が0.1K/分未満のときは、ステップS301に戻って冷却速度Vでの運転を継続する。
【0047】
ここで、冷却能力を決定する際には、予め設定された制御テーブルに従って決定するようにしてもよい。制御テーブルには、庫内温度と、その庫内温度が検出されたときの冷却能力(具体的には、例えば圧縮機11やファン13への印加電圧、ダンパー12の開閉等)とを対応付けて登録しておく。なお、制御テーブルに登録する冷却能力は温度変動速度が0.1K/分となるように予測して設定されたものとする。
【0048】
以上説明したように本実施の形態1によれば、温度変動速度が0.1K/分以下となるように冷却手段14を制御するようにしたので、温度変動幅が大きく設定されている場合であっても、ゆっくりとした庫内温度の変化に食品の温度を追随させることができる。このとき、庫内温度と食品温度との温度差が小さくなるため、庫内温度の飽和水蒸気圧と食品温度の飽和水蒸気圧の差分ΔPも小さくなり、食品の乾燥を抑制することができる。
【0049】
ところで、実施の形態1の冷蔵庫1は、図10に示した構造により、切替室200内の温度分布が、次の図14に示すように空気温度よりもトレイ5の床面温度の方が低くなっている。
【0050】
図14は、本発明の実施の形態1に係る切替室の庫内温度(空気温度)とトレイ床面温度との比較例を示す図である。
図14に示すように庫内の空気温度よりも床面温度の方が低い温度分布により、飽和水蒸気圧差による水分移動は、食品から飽和水蒸気圧の低いトレイ5の床面へ、下方へ向かって起きる。食品は袋や容器に入れられた状態でトレイ5に載せられており、食品の下方は、食品と包装との隙間しか空間がないため、すぐに飽和に達し、それ以上水分移動しない。このため、図14に示す温度分布の切替室200の場合、水分喪失量を抑制することができる。
【0051】
また、トレイ5の床面からの直接冷却と、吹き出し口3から流入する冷気による間接冷却が行われるため、庫内温度の温度変動速度を0.1K/分以下とし、ゆっくりとした冷却を行っても、食品を効率的に冷却することができる。このため、食品の温度が庫内温度よりも高い状態の時間を短くでき、水分喪失抑制に効果的である。
【0052】
なお、実施の形態1では、図10に示したように吹き出し口3が1箇所の例を示したが、複数箇所設けても良く、この場合、複数の吹き出し口のそれぞれに対応してダンパーを設け、各ダンパーを制御するなどして温度変動速度が0.1K/分以下となるようにすればよい。
【符号の説明】
【0053】
1a 操作パネル、2 ドア、3 吹き出し口、3a 吹き出し口、3b 吹き出し口、4 戻り口、5 トレイ、6 庫内温度検出手段、7 食品温度検出手段、10 制御装置、10a 算出部、10b 制御部、11 圧縮機、12 ダンパー、12a ダンパー、12b ダンパー、13 ファン、14 冷却手段、100 冷蔵室、200 切替室、300 製氷室、400 冷凍室、500 野菜室。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を保存する貯蔵室と、
前記貯蔵室内の空気温度を検出する貯蔵室温度検出手段と、
前記貯蔵室に投入された食品を冷却すると共に、冷却能力を制御可能な冷却手段と、
前記貯蔵室温度検出手段にて検出された空気温度に基づいて前記冷却手段を制御し、前記貯蔵室内を設定温度に維持する通常運転を行う制御手段とを備え、
前記貯蔵室の床面の温度が前記貯蔵室の他の部分の空気温度よりも低くなる構成とし、
前記制御手段は、通常運転中における温度変動速度が0.1K/分以下となるように前記冷却手段の冷却能力を制御することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記貯蔵室は設定温度が可変であることを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記貯蔵室の設定温度が−5℃から−9℃であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記貯蔵室内に冷気を流入させるための吹き出し口を複数設け、吹き出し口はそれぞれ開閉可能であり、開口する吹き出し口の数を可変にして冷却能力を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の冷蔵庫。
【請求項1】
食品を保存する貯蔵室と、
前記貯蔵室内の空気温度を検出する貯蔵室温度検出手段と、
前記貯蔵室に投入された食品を冷却すると共に、冷却能力を制御可能な冷却手段と、
前記貯蔵室温度検出手段にて検出された空気温度に基づいて前記冷却手段を制御し、前記貯蔵室内を設定温度に維持する通常運転を行う制御手段とを備え、
前記貯蔵室の床面の温度が前記貯蔵室の他の部分の空気温度よりも低くなる構成とし、
前記制御手段は、通常運転中における温度変動速度が0.1K/分以下となるように前記冷却手段の冷却能力を制御することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記貯蔵室は設定温度が可変であることを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記貯蔵室の設定温度が−5℃から−9℃であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記貯蔵室内に冷気を流入させるための吹き出し口を複数設け、吹き出し口はそれぞれ開閉可能であり、開口する吹き出し口の数を可変にして冷却能力を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の冷蔵庫。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−63131(P2012−63131A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245839(P2011−245839)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【分割の表示】特願2009−190223(P2009−190223)の分割
【原出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【分割の表示】特願2009−190223(P2009−190223)の分割
【原出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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