説明

冷蔵庫

【課題】OHラジカルを効率的に多く発生させる小型の脱臭除菌装置を備え、高い脱臭及び/又は除菌作用を奏する冷蔵庫を提供すること。
【解決手段】食品を保存する冷蔵温度帯室2,6と冷凍温度帯室4,5とを有する複数の貯蔵室と、冷媒を圧縮する圧縮機24と、冷媒により空気を冷却する冷却器7と、冷却器7で熱交換して冷やされた空気が各貯蔵室を巡る冷気流路と、を備えた冷蔵庫において、冷蔵庫内の各貯蔵室よりも温度と湿度の高い圧縮機24の配置された機械室19に、空気中から水分を収集し生成する水生成手段64を設け、冷気流路の内で、冷気流路内の温度と湿度の少なくともいずれかの変動が、冷気流路戻り口に対比して大きい冷気流路内67に、紫外線照射手段と、紫外線照射手段に対向した位置に配される保水材と、からなるOHラジカル発生装置27を設けること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭及び/又は除菌の機能をもつ冷蔵庫に係わり、特に、紫外線照射手段と保水材を備えて脱臭除菌を行う冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫内は様々な種類の食品を保存するため、臭い及び/又は菌が発生しやすくなっている。さらに、冷蔵庫を使用する年数が長くなるほど臭気及び/又は菌が蓄積し、除去が難しくなる。冷蔵庫内に臭い及び/又は菌が蓄積すると、新たに収納した食品の汚染が進行するおそれがある。そのため、この臭い及び/又は菌を除去する技術が数多く開発されている。
【0003】
特に、臭気は除去スピードが速いほど臭いの蓄積を抑制することができるため、臭い、菌の発生源を分解、変性する方法として、活性炭に吸着させる方法、光触媒を作用させる方法、プラズマ放電等で発生させたオゾンを作用させる方法等の様々な方法がある。その中でも、OHラジカルを作用させてエチレン並びに臭い、菌を除去する方法は、分解・変性の効果が高い反面、OHラジカルはすぐに消滅するため人体への影響が少なく、簡便に発生させることができるため、臭い及び/又は菌の除去に広く用いられている。
【0004】
このOHラジカルを発生させる方法のひとつとして、水にエネルギーを与え、水からOHラジカルを解離させることによりOHラジカルを得る方法がある(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
この特許文献1によると、貯蔵室内に光触媒を塗布した光触媒部材と、この光触媒部材に向かって320nm〜780nmの光を発生する光発生手段と、水分を結露させる結露手段と、を備え、光発生手段から発生する光と結露手段で結露した水分との反応によって発生するOHラジカルにより、野菜に付着した農薬等の有害物質を除去する冷蔵庫が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−101840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の特許文献1に示すように、水からOHラジカルを得る方法では、オゾンが発生せず、人体に対して安全な方法であるが、OHラジカルは発生後すぐに活性を失い、臭気物質を分解するエネルギーが無くなってしまう。そのため、臭気物質の分解能力を高めるためにはOHラジカル発生量を増加させることと、臭気物質とOHラジカルの接触効率を向上させることが必要となる。
【0008】
そして、上記の特許文献1においては、農薬等の有害物質を剥離させることを目的にしているため、食品に弊害が無く、農薬を分解できる光の波長として長波長の紫外線から可視光と限定されている。しかし、OHラジカルを作用させる対象が臭気物質や菌類の場合、有害物質の剥離よりも多くのOHラジカルを作用させなければ分解ができない。
【0009】
従って、多くのOHラジカルを発生させることで、脱臭及び/又は除菌の効果が出るので、高いエネルギーを持った光を水に照射することが望ましい。光は波長の短いか光の強度が高いほど高いエネルギーを持っている。しかし、波長の短い光は樹脂劣化を伴う危険性があるため、樹脂部品を多く備えた冷蔵庫内において波長の短い光を作用させるのは困難である。
【0010】
さらに、上記の特許文献1では、発生させたOHラジカルを広範囲の食品に作用させるために光触媒部材及び光発生手段を天井部に設け、食品が乾燥するのを防ぐために循環ファンを設け、比較的遅い風速で送風を行っている。臭気物質及び/又は菌類にOHラジカルを作用させる場合には、動きの無い食材とは異なり、OHラジカルが発生している空間を通る臭気物質及び/又は菌類の量を増やすことによって接触効率を向上させ、脱臭及び/又は除菌の効果を得るため、比較的風速が速い方が望ましい。しかし、風速を速くするためにファンを設けると装置全体の小型化が難しいという課題が生じる。
【0011】
さらに、上記の特許文献1では水の生成方法についても記述があるが、野菜室は無負荷の場合、平均温度5℃となっており、この平均温度をもとに湿り空気h−x線図を見ると、平均5℃で保持できる絶対水分量の限界値は0.0054kg/kgD.A.となる。従って、野菜室5℃環境の空気から得られる水分量はごく少量となる。また、5℃の環境においては湿度70%以上の環境でなければ露点がプラス温度帯にならないため、水の状態で結露を取り出すことが非常に困難な環境条件となる。
【0012】
上記の特許文献1には水の供給方法として、静電霧化により空気中の水分を得る方法、給水を行う方法、水収集板を設けて結露を得る方法を開示しているが、それぞれ、静電霧化の方法では得られる水分が少なくなるという課題があり、給水の方法では水を供給する設備にコストがかかることや使用者が水を供給しなければならないという使い勝手に課題が生じる。さらに、水収集板を用いて水分を得る方法においては、露点が氷点下となり、結露を水として利用することが困難であるという課題がある。このような露点と結露量に関する課題の解決方法について、上記の特許文献1には詳しく記載されていない。
【0013】
本発明の目的は、OHラジカルを多く発生させて、小型の脱臭除菌装置を備え、高い脱臭及び/又は除菌の効果を得ることが可能な冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
食品を保存する冷蔵温度帯室と冷凍温度帯室とを有する複数の貯蔵室と、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記冷媒により空気を冷却する冷却器と、前記冷却器で熱交換して冷やされた空気が各貯蔵室を巡る冷気流路と、を備えた冷蔵庫において、
前記冷蔵庫内の各貯蔵室よりも温度と湿度の高い前記圧縮機の配置された機械室に、空気中から水分を収集し生成する水生成手段を設け、前記冷気流路の内で、冷気流路内の温度と湿度の少なくともいずれかの変動が、前記冷気流路戻り口に対比して大きい冷気流路内に、紫外線照射手段と、前記紫外線照射手段に対向した位置に配される保水材と、からなるOHラジカル発生装置を設ける構成とする。
【0015】
また、前記冷蔵庫において、前記変動の大きい冷気流路は、前記冷蔵温度帯室である野菜室への吐出口を形成する流路であり、前記紫外線照射手段から放出された紫外線が、前記保水材に保持された水分に加えて、前記保水材から前記冷気流路に蒸散された水分に反応して、OHラジカルの発生量を増加させる構成とする。さらに、前記水生成手段は、前記高温度と高湿度の機械室内の空気中から、ペルチエ素子を用いて水分を収集し生成し、前記生成した水を前記保水材に供給する構成とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、貯蔵室内よりも温度が高くなる条件において水を収集し生成することによって、OHラジカルの拡散を促進し、野菜から発生するエチレン(野菜の劣化を進めるもの)又は臭い、及び/又は野菜に付着している菌との接触効率を増加させて、除去効果を高めることができる。このため、冷蔵庫内に保存している食品の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の正面外形を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る冷蔵庫の庫内の構成を表す図1のX−X断面図である。
【図3】本実施形態に係る冷蔵庫におけるOHラジカル発生装置と冷気流路の要部拡大図である。
【図4】水を保持する保水能力に差のある保水材と経時的な脱臭性能との関係を示す図である。
【図5】本実施形態に関する脱臭除菌装置としてのOHラジカル発生装置の保水材へ供給する水を生成する水生成手段を示す図である。
【図6】冷蔵室の冷却器入口側への冷気戻り口と野菜室への冷気吐出口の温度変化を示すグラフである。
【図7】冷蔵室の冷却器入口側への冷気戻り口と野菜室への冷気吐出口の湿度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る冷蔵庫について、図面を参照しながら以下詳細に説明する。まず、図1と図2を用いて本発明の実施形態に係る冷蔵庫の全体構成を説明する。図1は本発明の実施形態に係る冷蔵庫の正面外形を示す概略図であり、図2は本実施形態に係る冷蔵庫の庫内の構成を表す図1のX−X断面図である。図1と図2において、1は冷蔵庫、2は冷蔵室(冷蔵温度帯室)、3は製氷室(冷凍温度帯室)、4は上段冷凍室(冷凍温度帯室)、5は下段冷凍室(冷凍温度帯室)、6は野菜室(冷蔵温度帯室)、7は冷却器、8は冷却器収納室、9は庫内送風機(送風機)、10は断熱箱体、11は冷蔵室送風ダクト、12は上段冷凍室送風ダクト、13は冷気ダクト、15は冷蔵室ダクト、17は冷凍室戻り口、18は野菜室戻りダクト、19は機械室、20は冷蔵室冷却ダンパ、21は蒸発皿、22は除霜ヒータ、23は樋、24は圧縮機、27はOHラジカル発生装置、28,29は断熱仕切壁、31は制御基板、33は冷蔵室温度センサ、34は冷凍室温度センサ、35は冷却器温度センサ、50は冷凍室冷却ダンパ、59は野菜室冷却ダンパの開口部、60は冷凍室、61は野菜室冷却ダンパ、62はドレイン水排水路、63は水供給手段、64は水生成手段、をそれぞれ表す。
【0019】
図1において、本実施形態に係る冷蔵庫1は、上方から、冷蔵室2、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6から構成されている。なお、以下の説明では、製氷室3と上段冷凍室4と下段冷凍室5の総称として冷凍室60とも称する。
【0020】
冷蔵室2は前方側に、左右に分割された観音開きの冷蔵室扉2a,2bを備え、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6は、それぞれ引き出し式の製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、野菜室扉6aを備えている。以下の説明では、冷蔵室扉2a,2b,製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、野菜室扉6aを単に扉2a,2b,3a,4a,5a,6aと称する。
【0021】
また、冷蔵庫1は、扉2a,2b,3a,4a,5a,6aの各扉の開閉状態をそれぞれ検知する図示しない扉センサと、扉開放状態と判定された状態が所定時間、例えば、1分間以上継続された場合に、使用者に報知する図示しないアラームと、冷蔵室2及び野菜室6の温度設定と冷凍室60の温度設定をする図示しない温度設定器等を備えている。
【0022】
図2において、冷蔵庫1の庫外と庫内は、発泡断熱材(発泡ポリウレタン)を充填することにより形成される断熱箱体10により隔てられている。冷蔵庫1の断熱箱体10は複数の真空断熱材25を実装している。
【0023】
庫内は、断熱仕切壁28により、冷蔵室2と上段冷凍室4及び製氷室3(図1参照、図2中で製氷室3は図示されていない)とが隔てられ、断熱仕切壁29により、下段冷凍室5と野菜室6とが隔てられている。扉2a,2b(図1参照)の庫内側には複数の扉ポケット32が備えられている。また、冷蔵室2は複数の棚36により縦方向に複数の貯蔵スペースに区画されている。
【0024】
図2に示すように、上段冷凍室4、下段冷凍室5及び野菜室6は、それぞれの室の前方に備えられた扉3a,4a,5a,6aと一体に、収納容器3b,4b,5b,6bがそれぞれ設けられており、扉4a,5a,6aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより収納容器4b,5b,6bが引き出せるようになっている。図1に示す製氷室3にも同様に、扉3aと一体に、図示しない収納容器(図2で3bとして表示)が設けられ、扉3aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより収納容器3bが引き出せるようになっている。
【0025】
図2に示すように(適宜に図3を参照)、野菜室6への野菜室冷却ダンパ61の開口部59の下に脱臭除菌装置であるOHラジカル発生装置27を配置している。OHラジカル発生装置27の冷気取り入れ口は、野菜室冷却ダンパ61の開口部59と同等の広さになっており、さらに、OHラジカル発生装置27から野菜室6へ冷気が吹き出す際に、野菜室6の上方部からか下方部の全体に冷気が行き渡るように、図3に示す冷却流路67の水平長を短くすることが望ましい。
【0026】
また、冷却器7は下段冷凍室5の略背部に備えられた冷却器収納室8内に設けられており、冷却器7の上方に設けられた庫内送風機(送風機)9により冷却器7と熱交換して冷やされた空気(以下、冷却器7で冷やされてできた低温空気を冷気と称する)が冷蔵室送風ダクト11、上段冷凍室送風ダクト12、下段冷凍室送風ダクトである冷気ダクト13及び図示しない製氷室送風ダクトを介して、冷蔵室2、上段冷凍室4、下段冷凍室5、製氷室3の各室へ送られる。各室への送風は冷蔵室冷却ダンパ20と野菜室冷却ダンパ61と冷凍室冷却ダンパ50の開閉により制御される。野菜室6への送風の一例は、冷却器7、送風機7、不図示の送風ダクト、野菜室冷却ダンパ61、開口部59、冷気流路67(図3参照)、野菜室6、戻り流路6d、野菜室戻りダクト18、を順に流れて循環経路を形成する。
【0027】
冷却器7及びその周辺の冷却器収納室8の壁に付着した霜が除霜によって融解することで生じた除霜水は、冷却器収納室8の下部に備えられた樋23に流入した後に、ドレイン水排水路62を介して機械室19に配された蒸発皿21に達し、圧縮機24、及び機械室19内に配設される図示しない凝縮器の発熱により蒸発させられる。
【0028】
また、冷却器7を正面から見て上部には冷却器7に取り付けられた冷却器温度センサ35、冷蔵室2には冷蔵室温度センサ33、下段冷凍室5には冷凍室温度センサ34がそれぞれ備えられており、それぞれ冷却器7の温度(以下、冷却器温度と称する)、冷蔵室2の温度(以下、冷蔵室温度と称する)、下段冷凍室5の温度(以下、冷凍室温度と称する)を検知できるようになっている。さらに、冷蔵庫1は、庫外の温度を検知する図示しない外気温度センサを備えており、野菜室6にも野菜室温度センサ33aが配置されている。なお、本実施形態では、イソブタンを冷媒として用い、冷媒封入量は約80gであり少量にしている。
【0029】
冷蔵庫1の天井壁上面側にはCPU、ROM及びRAM等のメモリ、インターフェース回路等を搭載した制御基板31が配置されており(図2を参照)、制御基板31は、上述した外気温度センサと、冷却器温度センサ35と、冷蔵室温度センサ33と、野菜室温度センサ33aと、冷凍室温度センサ34と、扉2a,2b,3a,4a,5a,6aの各扉の開閉状態をそれぞれ検知する上述した扉センサと、冷蔵室2内壁に設けられた図示しない温度設定器と、下段冷凍室5内壁に設けられた図示しない温度設定器等と、それぞれ接続されている。さらに、制御基板31は、上記のROMにあらかじめ搭載されたプログラムにより、圧縮機24のON/OFF等の制御、冷蔵室冷却ダンパ20及び冷凍室冷却ダンパ50を個別に駆動するそれぞれのアクチュエータ(不図示)の制御、庫内送風機9のON/OFF制御と回転速度制御、上述した扉開放状態を報知するアラームのON/OFF等の制御を行う。
【0030】
次に、本発明の実施形態に係る冷蔵庫における紫外線照射による脱臭除菌を行うOHラジカル発生装置について、図3を参照しながら以下説明する。図3は本実施形態に係る冷蔵庫におけるOHラジカル発生装置と冷気流路の要部拡大図である。
【0031】
図3において、27はOHラジカル発生装置、63は水供給手段、65は保水材(保水手段)、66はガラスUVLED、67は冷気流路、68aは冷却器からOHラジカル発生装置内への冷気の流れ、68bはOHラジカル発生装置冷気流路内の冷気の流れ、69はレンズ型ガラス69、70はLED素子、をそれぞれ表す。
【0032】
図3において、野菜室5へ冷気を吹き出す野菜室冷却ダンパ61の開口部59の近傍に冷気流路67を設け、冷気が上から下へ流れるため、脱臭除菌装置であるOHラジカル発生装置27の冷気流路67の冷気取入れ口は上向きの構造を備えている。また、冷気流路67内にLED素子70をレンズ型ガラス69内に封入し、紫外線を発生させるLED66(以下、ガラスUVLEDと称する)と保水材65を備えている。
【0033】
ここで、脱臭と除菌の作用について述べると、レンズ型ガラス69含めた紫外線照射手段であるLED66が、保水材65に含まれる水に紫外線を照射して解離反応させることによって、OHラジカルを発生させ、このOHラジカルが冷気流れ68bとともに野菜室6の食品に注がれることでOHラジカルの分解力によって除菌並びに脱臭効果が奏されるのであり、さらに、冷気流路67を通る循環する冷気中の菌に対して紫外線照射による殺菌作用も奏させることができる。
【0034】
図3に示す本実施形態では、ガラスUVLED66の下方部に保水材65及び水供給手段63を備えた構成例を示しているが、これに限らず、水噴霧手段を備えてもよい。
【0035】
また、図3に示す冷気流路67を形成するプラスチック容器のLED66に対向する壁面に光触媒を塗布する構成(保水材に代えて)を採用すると、紫外線が光触媒にエネルギを与えることで、光触媒の主として脱臭機能を高めることができ、この光触媒近傍を通る循環する冷気に含まれる臭気を除去する脱臭機能を高めることができる。この際に、紫外線による除菌作用も奏し得る。また、光触媒を塗布した部材を冷気流路67用の容器に取り付ける構造であってもよい。さらに、光触媒を担持したフィルタを図3に示す冷気流路67中にに配置する構成(保水材を用いずに)を採用すると、紫外線の照射によってフィルタ中の光触媒の脱臭機能が一層向上し、フィルタ中を通過する循環冷気の脱臭機能を奏させることができる。このように、冷気流路67用の容器に塗布した光触媒又は光触媒を担持したフィルタを使用することで、野菜室の食品に対して脱臭と除菌作用を奏するのである。
【0036】
さらに、図3に示す少なくともLEDを含む冷却流路形成用容器を野菜室冷却ダンパ61の直下流側に配置することに代えて、冷却ファン9の近傍に配置して全貯蔵室の脱臭除菌を図るようにしてもよい。
【0037】
さらにまた、本実施形態ではレンズ型ガラスで紫外線を集光しているため、野菜室を循環する冷気流路67中であって、上述した保水材又は光触媒の配置の下流直後に、循環する冷気に含まれるエチレン、臭いおよび/又は菌を収集させる部材、例えばハニカム形状の部材又は布などをガラスUVLED66の集中照射範囲内に配置する構成をとると、紫外線を効率的に作用させることができるため、エチレン除去、脱臭及び/又は抗菌の効果をさらに向上させることができる。
【0038】
図4は水を保持する保水能力に差のある保水材と経時的な脱臭性能との関係を示す図である。図4にはガラスUVLED66の下方部に保水材を備えた場合に、保水材の保水能力の異なる3種類の保水材を備えたときのメチルメルカプタンの脱臭性能を示す。図4において、符号169は保水材1gあたり2.21gの水を保持する能力のある保水材を用いた場合の脱臭性能、符号170は保水材1gあたり3.41gの水を保持する能力のある保水材を用いた場合の脱臭性能、符号171は保水材1gあたり4.00gの水を保持する能力のある保水材を用いた場合の脱臭性能、をそれぞれ示している。
【0039】
図4からわかるように、1gあたりの保水能力が高い保水材ほど脱臭能力が高くなる傾向にある。さらに、脱臭除菌装置の空間内に存在している水蒸気も紫外線と反応し、OHラジカルを発生させて脱臭及び/又は除菌を行っているため、吸湿性の高い保水材を使用したとすると当該保水材が空気中の湿度も奪うおそれがあるため、吸水や保水能力は高いが、吸湿性が低い物質、例えばアクリル系の素材を主成分とした保水材を用いることが望ましい。
【0040】
また、保水材に光触媒を塗布すると、水と光触媒の2つの効果が得られるため、脱臭及び除菌効果が向上すると考えられる。また、紫外線吸収能力は色の濃いものほど強い傾向にあるため、薄い色や白に近い色に比べ、黒や濃紺色などの色の濃い保水材を用いると多くの紫外線と水が反応し、OHラジカルの発生量が増加するため、脱臭及び/又は抗菌効果が向上する。
【0041】
また、長波長の光はエネルギーが低いが、集光することによって光強度が高くなり、エネルギーが高くなるため、脱臭及び/又は除菌効果が高くなる。従って、紫外線照射手段が長波長のものに集光レンズなどの部材(例えば、図3に示すレンズ型ガラス69)を設け、集光レンズの光が作用する範囲に保水材を配置することによってさらに効果が向上する。その際、保水材を狭い範囲内に多く作用させるために、図3に図示した平板状のくし形の保水材を巻回した状態の形状とすることで、この巻回した保水材と紫外線が接触する面積を広くすることが望ましい。また、保水材と紫外線が接触する際、影になる部分では紫外線が作用しないため、できるだけ保水材に影ができないように、紫外線照射装置の真下近傍に保水材を配置することが望ましい。また、保水材の形状として、くし形形状、くし形を巻回した形状の外に、保水母材の平面上にマトリックス状に(縦横に)棒状部材を植立した形状としてもよい。
【0042】
次に、本実施形態に関する脱臭除菌装置としてのOHラジカル発生装置における保水材へ供給する水を生成する水生成手段について、図5を参照しながら以下説明する。図5の(1)は水生成手段を上方からみた平面図であり、図5の(2)はその斜視図である。図5において、72は周囲の空気を冷やすためのペルチェ素子(吸熱機能を奏させるもの)、73は生成した水、74は水受け部材、75は水受け部材74周囲のフランジ、76は毛細管現象で水を吸い上げる吸水手段、77は冷却板、78は冷却フィンを示している。吸水手段76は、例えばパイプの内側に樹脂繊維を充填して構成したものである。ここで、ペルチェ素子72はその周辺の空気を冷やすことによって空気中から水分を収集して水を生成するものであり、ペルチェ素子72を挟む冷却板77と冷却フィン78の金属板は空気を冷やす面積を増やして水分収集を効率的に行う機能を奏するものである。
【0043】
ところで、冷蔵庫内の貯蔵室温度は低温であるため、露点温度が非常に低くなり、水として結露を得ることが困難な環境となる。しかし、使用者に給水をさせることは使い勝手の悪化やコストが高くなる等の課題があるため、冷蔵庫内において温度と湿度の高い条件で水を収集し生成することが必要となる。
【0044】
図5に示した水生成手段64を圧縮機24の設置された機械室19に設けることで(図2を参照)、圧縮機24から発生する熱を利用することが可能となり、温度及び湿度の高い環境下の機械室19の空気中から生成した水を、機械室19から上方部の野菜室6へ毛細管現象で水を吸い上げる吸水手段76を用いて吸い上げ、保水材65(図3を参照)に直接供給する仕組みとなっている。冷蔵庫の通常運転時、機械室19は平均30℃となる。さらに、機械室19には除霜時に発生する水を落とすドレイン受け(蒸発皿21、図2を参照)が配置されているため高湿な条件となる。従って、機械室19でペルチェ素子72を稼働して機械室内の空気を冷やすことによって水を生成することが可能となる。
【0045】
さらに、水の供給にポンプなどの駆動系を用いようとすると、モーターや電気回路の変更が必要となり、消費電力量が増加してしまうため、本実施形態に示すように毛細管を用いることで駆動系を使用しないため、省エネや低コスト化につながる。また、別の方法として、ペルチェ素子72を冷却器7(図2を参照)の近傍に設置し、除霜ヒータ運転時のみ作動させることで、温度及び湿度が高い条件時に水を収集し、自然落下によって保水材65に給水を行ってもよい。
【0046】
図6は、冷蔵室の冷却器入口側への冷気戻り口と野菜室への冷気吐出口の温度変化を示すグラフである。図7は、冷蔵室の冷却器入口側への冷気戻り口と野菜室への冷気吐出口の湿度変化を示すグラフである。ここで、野菜室への冷気吐出口の温度と湿度に対する比較の対象として冷蔵室の冷気戻り口を取り上げるのは、冷蔵室の冷蔵温度帯が野菜室のそれと同様であり、さらに冷蔵室の戻り口が野菜室の吐出口とその口面積が同様であって、比較の条件が同様であるからである。
【0047】
図6において、符号179は冷蔵室の戻り口の温度変化、符号180は野菜室への吐出口の温度変化を示す。また、図7において、符号181は冷蔵室の戻り口の湿度変化、符号182は野菜室への吐出口の湿度変化を示す。
【0048】
図6及び図7からわかるように、野菜室6の方が冷凍室5に近いため、冷凍室5の温度と湿度の影響を受けて、野菜室6への冷気吐出口における温度180及び湿度181の変動が大きい傾向となる。このことから、冷気の温度及び湿度の変動が大きいと、保水材65から水分が蒸散しやすい条件となるため、紫外線と蒸散した水分との接触機会が増加することにより、紫外線による保水材からのOHラジカル発生に加えて、OHラジカルの発生量が増加し、効果がさらに増すこととなる。
【0049】
以上説明したように、本発明の実施形態に関する、図2、図3及び図5に示すOHラジカルを発生させる脱臭除菌装置によると、モータ等を用いた高いエネルギーを作用させること無く、無給水で多くの結露水を生成し、水分と紫外線の接触効率を向上させることができる。これによって、OHラジカルをより多く発生させて、安全かつ低コストで小型化を可能とする冷蔵庫を提供でき、さらに、高い脱臭及び/又は除菌の効果を得て食材の鮮度を保つ冷蔵庫を提供することができる。
【0050】
本発明の実施形態について、より好ましい具体的な構成例を説明すると、冷蔵庫内の各貯蔵室よりも温度が高い部位に保水材に水を供給する水供給手段を備え、冷気流路で温度又は湿度の少なくともいずれか1つの条件が変動する冷気流路内に紫外線照射手段と保水材を備えて、冷蔵庫内の脱臭又はエチレン、及び/又は除菌を行う冷蔵庫において、冷気流路口の通風面積は、OHラジカル発生装置への冷気口での冷気風速と冷気流路の風速が同等になるような大きさにすること。また、保水材及び紫外線照射手段は、冷気口から10cm以内の距離に配置すること。また、紫外線は370nm〜254nmの波長を含む光であること。また、紫外線照射手段は保水材の上部に備え、紫外線照射手段と保水材の間の距離は、紫外線を保水材に対して有効的に作用させるために20mm以内とすること。また、図6と図7に示す温度の変動は3℃以上の変動幅があり、湿度の変動は5%以上の変動幅があること。
【0051】
また、冷蔵庫内の冷気流路内に、紫外線照射手段と保水材と保水材への給水手段と水生成手段と除霜ヒータとを備え、温度または湿度の少なくともいずれか1つの条件が変動する冷気流路に紫外線発生手段と保水材を備えて、臭い及び/又は菌の除去を行う冷蔵庫において、水生成手段は冷気の供給量を制御するダンパよりも機械室に近い場所に設けること。また、水生成手段にペルチェ素子と金属板を用いること。また、水生成手段を除霜ヒータ付近に設置して、除霜時の空間温度が高い時間のみ使用する、もしくは、圧縮機を設置している空間内に設置することで、冷蔵室内よりも温度が高い場所で水を生成し、給水手段を用いて冷気流路に備えた保水材に水を供給する構造とすること。また、給水手段は毛細管とし、保水材は水生成手段よりも高い位置に備え、駆動系を不要と構造であること。
【符号の説明】
【0052】
1 冷蔵庫
2 冷蔵室(冷蔵温度帯室)
3 製氷室(冷凍温度帯室)
4 上段冷凍室(冷凍温度帯室)
5 下段冷凍室(冷凍温度帯室)
6 野菜室(冷蔵温度帯室)
7 冷却器
8 冷却器収納室
9 庫内送風機(送風機)
10 断熱箱体
11 冷蔵室送風ダクト
12 上段冷凍室送風ダクト
13 冷気ダクト
15 冷蔵室ダクト
17 冷凍室戻り口
18 野菜室戻りダクト
19 機械室
20 冷蔵室冷却ダンパ
21 蒸発皿
22 除霜ヒータ
23 樋
24 圧縮機
27 OHラジカル発生装置
28,29 断熱仕切壁
31 制御基板
33 冷蔵室温度センサ
33a 野菜室温度センサ
34 冷凍室温度センサ
35 冷却器温度センサ
50 冷凍室冷却ダンパ
59 野菜室冷却ダンパの開口部
60 冷凍室
61 野菜室冷却ダンパ
62 ドレイン水排水路
63 水供給手段
64 水生成手段
65 保水手段(保水材)
66 ガラスUVLED
67 冷気流路
68a 冷却器からOHラジカル発生装置内への冷気の流れ
68b OHラジカル発生装置の冷気流路内の冷気の流れ
69 レンズ型ガラス
70 LED素子
72 ペルチェ素子
73 生成した水
74 水受け部材
75 フランジ
76 吸水手段
77 冷却板
78 冷却フィン
179 冷蔵室の戻り口の温度変化
180 野菜室への吐出口の温度変化
181 冷蔵室の戻り口の湿度変化
182 野菜室への吐出口の湿度変化

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を保存する冷蔵温度帯室と冷凍温度帯室とを有する複数の貯蔵室と、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記冷媒により空気を冷却する冷却器と、前記冷却器で熱交換して冷やされた空気が各貯蔵室を巡る冷気流路と、を備えた冷蔵庫において、
前記冷蔵庫内の各貯蔵室よりも温度と湿度の高い前記圧縮機の配置された機械室に、空気中から水分を収集し生成する水生成手段を設け、
前記冷気流路の内で、冷気流路内の温度と湿度の少なくともいずれかの変動が、前記冷気流路戻り口に対比して大きい冷気流路内に、紫外線照射手段と、前記紫外線照射手段に対向した位置に配される保水材と、からなるOHラジカル発生装置を設ける
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1において、
前記変動の大きい冷気流路は、前記冷蔵温度帯室である野菜室への吐出口を形成する流路であり、
前記紫外線照射手段から放出された紫外線が、前記保水材に保持された水分に加えて、前記保水材から前記冷気流路に蒸散された水分に反応して、OHラジカルの発生量を増加させる
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】
請求項1において、
前記水生成手段は、前記高温度と高湿度の機械室内の空気中から、ペルチェ素子を用いて水分を収集し生成し、
前記生成した水を前記保水材に供給する
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項4】
請求項1、2または3において、
前記保水材は、櫛形の形状又は植立させた棒状の形状を有し、前記紫外線照射手段から放出された紫外線との接触面積を拡大する
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項5】
請求項3において、
前記水生成手段を前記機械室に設ける代わりに、前記水生成手段を前記冷却器の近傍に設け、
前記冷却器に対する除霜ヒータの運転時のみ前記ペルチェ素子を作動させることで、温度及び湿度が高い条件下で水を収集し生成し、自然落下によって前記保水材に給水する
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項6】
請求項1において、
前記冷蔵庫は、上方から順に、冷蔵室、冷凍室、野菜室が配置され、さらに、前記冷蔵庫の下方奥側に前記機械室が配置され、
前記野菜室への冷気供給量を調整する野菜室冷却ダンパに近接した冷気流路に、OHラジカル発生装置を設置し、
前記OHラジカル発生装置に前記紫外線照射手段と前記保水材を配置し、
前記機械室に設けられた前記水生成手段から前記保水材に水を供給する
ことを特徴とする冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−78054(P2012−78054A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225656(P2010−225656)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】