冷間ゲル化ペーストリー・グレーズ
本発明は、土台と接触してゲル化する液体または半液体のペーストリー・グレーズ、特に、Ca2+反応性低メトキシ化ペクチン、好適には低メトキシ化−アミド化ペクチンを可溶化することにより、またブリックス、pHおよび/または、食品上に塗布する前に、例えばCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のゼリー化イオンの余分の量の供給がなければゲル化することができない、準至適のCa+2イオンレベルまたは他のゼリー化イオンの条件を適用することにより得られる冷間ゲル化ペーストリー・グレーズに関する。本発明のゲル溶液は、典型的には、約35°〜約55°のブリックス、酸性pH(例えば、4未満のpH)、および/または約15ppmのレベルの天然の遊離Ca2+を有する。
本発明は、さらに、優れた切断性およびテクスチャーを保持するそのようなペーストリー・グレーズのペーストリーのような食品上での使用に関する。本発明によるグレーズは、有利には、正確に塗布することができ、冷間ゲル化するが、標準的なチキソトロピック・グレーズの欠点を有さない即時使用可能なグレーズである。このグレーズは、フルーツ・タルトのような酸性食品にグレーズするのに非常に適している。
本発明は、さらに、優れた切断性およびテクスチャーを保持するそのようなペーストリー・グレーズのペーストリーのような食品上での使用に関する。本発明によるグレーズは、有利には、正確に塗布することができ、冷間ゲル化するが、標準的なチキソトロピック・グレーズの欠点を有さない即時使用可能なグレーズである。このグレーズは、フルーツ・タルトのような酸性食品にグレーズするのに非常に適している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間ゲル化ペーストリー・グレーズ、その調製およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ペーストリー・グレーズは、フルーツ・パイ、ヴィエノワズリ、デニッシュ等のようなペーストリー製品に、艶を出し、空気から保護し、フレーバー層を追加する等の目的で塗布されるゼリー溶液である。
【0003】
元来、グレーズは、パン製造者自身が、フルーツ・ピューレ、砂糖および水から作っていた。現在では、それらは、砂糖(サッカロース、グルコース等)、水、フルーツ(フルーツ・ピューレ、フルーツ・ジュースまたはエキス等)、およびゲル化剤(ペクチン、カラギーナン等)、酸、塩、防腐剤等から作られる。
【0004】
主に3種のペーストリー・グレーズが現在市場にある。
−熱可逆性濃縮グレーズ
−熱可逆性の即時使用のスプレー可能なグレーズ
−冷間使用のチキソトロピック・グレーズ
【0005】
濃縮グレーズは、最も古くから使用されているものである。それらは、約60°〜約70°のブリックスを有し、pH<4である。約60°〜約70°のブリックスとは、これらのグレーズが、約50%〜75%の可溶性固体を含むことを意味する。
【0006】
濃縮グレーズは、使用する前に水(グレーズの重量の10%から最大100%)で希釈されなければならない。濃縮グレーズは、熱可逆性である。これは、それらが、高温(通常、60℃以上)では液体であり、低温(通常50℃以下)では固体になることを意味する。液化および固化の温度サイクルは、無限に反復することができる。
【0007】
以下に、そのような濃縮グレーズの標準的な組成を示す(表1)。
【0008】
【表1】
【0009】
上記グレーズは、ペクチンおよび他のゲル化剤および/または増粘剤を含む。
【0010】
ペクチンは、いくつかの理由から、グレーズの製造のためのゲル化剤として最もよく選択される。第一に、それは、フルーツ内に天然に存在し、それ故グレーズの調整に使用されるフルーツ・ピューレ内に存在する。第二に、ペクチンは、系の所望の熱可逆性を提供することができる。第三に、ペクチンの使用は、通常4未満のpHを有するグレーズのような酸性製品に適している。
【0011】
ペクチン分子は、α−1,4−グリコシド結合した200〜1000のD−ガラクツロン酸ユニットを含む直鎖からなる。分子内のガラクツロン酸ユニットのうちのいくつかは、エステル化されていて、そのため、ガラクツロン酸メチル・エステルの形で存在している。エステル化度(D.E.)は、分子内に含まれるガラクツロン酸ユニットの全数に対するエステル化されたガラクツロン酸ユニットの比率により定義される。市販のペクチンは、高エステル(H.M.,高メトキシ化)ペクチンおよび低エステル(L.M.,低メトキシ化)ペクチンに分けられる。ここで、「エステル化」は「メトキシ化」と同義語である。
【0012】
高エステル・ペクチンまたは高メトキシ化(H.M.)ペクチンは、エステル化の比率が50%を超えるペクチンである。H.M.ペクチンは、高ブリックス(ブリックス>55°)かつ低pH(pH約3)の系においてのみゼリー化する。高ブリックスの系は、疎水性結合領域を形成しやすく(favorize)、一方、H+は、(負に帯電している)ペクチン分子を中和し、それによりそれらの間に存在するすべての反発力を低減する。得られたゲルは、加熱しても完全には溶融しないという点で熱的に安定している。
【0013】
低エステル・ペクチンまたは低メトキシ化(L.M.)ペクチンは、エステル化の比率が50%未満のペクチンである。これらのペクチンは、H.M.ペクチンを穏やかに酸性処理またはアルカリ性処理することにより得られる。アルカリ脱エステル化プロセス中にアンモニアを使用すると、ペクチンは、アミド化されて、アミド化低エステル・ペクチンになる。アミド化度(D.A.)は、分子内に存在するガラクツロン・ユニットの全数に対するアミド化されたガラクツロン基の比率として定義される。ヨーロッパにおいては、アミド化のレベルは、法律により、最大25%に制限されている。
【0014】
L.M.ペクチンのゲル化機構は、H.M.ペクチンのゲル化機構とは異なる。ブリックスおよびpHは、依然としてゲル化機構の重要な要因であるが、カルシウム・イオン(Ca2+)および他の二価または一価のイオンもまた、この機構において非常に重要な役割を担う。D.M.(メトキシ化度)が低ければ低いほど、Ca2+の反応性は高くなる。D.A.(アミド化度)が高ければ高いほど、Ca2+の反応性は高くなる。低エステル・ペクチンは、高エステル・ペクチンよりも低いブリックスおよび高いpHでゲルを形成することができる。得られたゲルは、しばしば、加熱されて完全に再溶解する、すなわち、このようなゲルは、高エステル・ペクチンから得られたゲルとは対照的に、熱可逆性ゲルである(上記参照)。
【0015】
ペクチンを処理する場合には、ブリックスおよび特にpHを正確に制御しなければならない。ブリックスを+/−1°、pHを+/−0.1pHユニットに制御しなければならない。
【0016】
ペクチンは、グレーズの調製に最も頻繁に使用されるゲル化剤であるが、他のゲル化剤も、熱可逆性および/またはチキソトロピー特性を有しているので使用することができる。
【0017】
ペクチンの次に、グレーズで使用される最も普通のゲル化剤は、カラギーナンである。カラギーナンは、紅藻から抽出され、3つの主なグループ、すなわち、カッパ・カラギーナン、イオタ・カラギーナンおよびラムダ・カラギーナンに分類される。
【0018】
カッパ・カラギーナンは、不安定な熱可逆性ゲルを形成する。ゲルの形成はイオンにより誘起される。その影響力はK+>Ca2+>Na+である。カリウム・イオンが、最大の影響力を有し、次がカルシウム・イオン、最後がナトリウム・イオンである。カッパ・カラギーナンは、グレーズ製造のための2番目の候補であると見なされる。何故なら、カッパ・カラギーナンは、フルーツ内に天然には存在しないもので、一般的に、艶の良くないグレーズしか供給せず、カッパ・カラギーナンから作ったゲルの口当たりはあまり快適なものではなく、最後に、カッパ・カラギーナンは、加水分解に非常に敏感であるからである(このことは、このカッパ・カラギーナンが、使用中、より容易に破壊される恐れがあることを意味する)。
【0019】
イオタ・カラギーナンは、同様にカチオンにより誘起されるチキソトロピック・ゲルを形成する。影響力は、Ca2+>K+>Na+の順であり、この場合、カルシウム・イオンが最大の影響力を有し、次がカリウム・イオン、次がナトリウム・イオンである。
【0020】
ラムダ・カラギーナンは、ゼリー化せず、粘性を有する溶液を形成するだけである。
【0021】
使用することができるもう1つのゲル化剤は寒天である。寒天は、赤紫の海草の抽出物である。寒天は、また、溶融温度とゲル化温度の差が大きい熱可逆性ゲルを形成する。カチオンは、そのゲル化特性に影響を与えない。寒天は、柔軟で広がることができるテクスチャーを有するゲルを形成する。
【0022】
アルギン酸塩も、グレーズ製造産業で使用される。アルギン酸塩は、ゲル化剤であると見なされているが、ゲル化剤として使用されない。実際、アルギン酸塩は、Ca2+イオンにより耐熱性のゲルを形成する。Ca2+が存在していない場合には、アルギン酸塩は、単に増粘剤としての働きをする。アルギン酸塩は、低D.E.(エステル化度)ペクチンと一緒に使用することができる。しかし、アルギン酸塩は、高D.M.ペクチンとともに熱可逆性ゲルを形成することができる。
【0023】
増粘剤は、水に溶解された場合、硬化したりゲルを形成したりせずに溶液の粘度を増大させるという点でゲル化剤とは異なる。溶液は液体のままである。
【0024】
最も普通に使用される増粘剤としては、グァー・ガム、ローカスト・ビーン・ガム、キサンタン・ガム、加工セルロース、アラビアゴム等があるが、これらに限定されない。
【0025】
その粘性プロファイルは温度の関数である。通常、温度が上がると粘度は低減する。
【0026】
増粘剤は、場合によっては、ゼリー化が起こる前に製品上に留まることができるように、その液状のグレーズに十分な粘度を与えるためにグレーズで使用される。ゲル化剤(ペクチンまたはカラギーナン等)と増粘剤との組合せも、異なるテクスチャーを形成することができる。さらに、場合によっては、(例えば、カラギーナンをローカスト・ビーン・ガムと一緒に使用した場合;キサンタン・ガムをローカスト・ビーン・ガムと一緒に使用した場合;高D.M.ペクチンをアルギン酸塩と一緒に使用した場合;およびキサンタンをグァー・ガムと一緒に使用した場合)相乗効果が認められた。
【0027】
パン製造者が使用する場合には、従来の濃縮グレーズは、平鍋内で80℃以上に加熱される。この温度で、グレーズは溶解する。次に、溶液が、製品上に例えばブラシにより塗布される。冷却すると、溶液は、ゲル化して製品上で硬化する。硬化すると、グレーズは、ゲル化し、切断可能であるから、タルトのようなグレーズしたペーストリー製品を容易に切ることができる。このグレーズは、最も昔ながらのものであるが、一連の欠点を有する。第一に、このグレーズは希釈しなければならない。この操作は、(グレーズおよび水の)重量の測定に加えて、グレーズを分散させるための攪拌を必要とする。第二に、このグレーズは、最低でも80℃まで加熱しなければならない。ある種のグレーズはなかなか溶解しない。ゲルを溶解するのに長い時間がかかり、ゲルが平鍋の中で燃える恐れがある。従来のゲルは、それがまだ液体であるときにしか使用することができないから、使用できる時間は非常に短い。ゼリー状になる前にパン製造者が全部のグレーズを使用しなかった場合には、パン製造者は、再度使用する前にゲルを再溶解させるために再度加熱しなければならない。そうすると、水分の蒸発および/または後のグレーズのテクスチャーの変化につながる。フルーツ(特に、ストロベリー、ラズベリー等)は、またその上に温かい溶液をかけると傷む恐れがある。
【0028】
即時使用のスプレー可能なグレーズは、第二世代のグレーズである。このグレーズは、濃縮グレーズから得られるが、約45°〜50°のブリックスにすでに希釈されているから、そのままスプレー機械で塗布される。
【0029】
低D.M.−高D.A.ペクチンおよび/またはカラギーナンは、即時使用の熱可逆性グレーズの製造のために使用される最も普通のゲル化剤である。この場合も、製品を安定化するために、ゲル化剤と一緒に増粘剤を使用することができるが、この場合には、優れたスプレー特性を確保するために、製品がより高い温度(>60℃)で液体であることが重要である。
【0030】
この場合も、適切な機能を保証するためには、グレーズのブリックスおよびpHを厳しく管理する必要がある。
【0031】
即時使用のスプレー可能なグレーズは、例えば、60℃〜90℃の湯浴内の螺旋循環を通ってスプレー機械に注入される。この温度で、グレーズはくずれたゲルの希釈による液体のように見える(一方、周囲温度または35℃以下の温度では、グレーズはゲルのように見える)。スプレーの後、グレーズの硬化温度以下の温度に温度が急激に下がり、タルト上でグレーズはゲル化する。グレーズは、また、切断することができるゲルを形成し、グレーズが垂れ下がることなく、製品を容易に分割することができる。このグレーズは、希釈する必要がなく、平鍋の中で作ることができるから、濃縮グレーズよりも容易に使用することができる。しかし、このグレーズは、また、その熱可逆性に関連する欠点もある。使用温度が非常に重要である。よい結果を得るためには、スプレー機械の適切な制御、使用および保守がさらに重要である。いくら正確にしても正確すぎるということはない。スプレー・ガンのスプレー面は非常に広いので、タルトのある部分だけにグレーズを塗布し、その周囲にはスプレーしないということ(例えば、クリームケーキを飾っているフルーツだけにグレーズを塗布し、クリームにはグレーズしないということ)はほとんど不可能である。
【0032】
熱可逆性グレーズ(濃縮グレーズまたはすぐに使用することができるグレーズ両方)のもう1つの大きな欠点は、それを使用するパン製造者または作業者が火傷を受ける危険があることである。
【0033】
使用するために加熱しなくてもよいチキソトロピック・グレーズも市販されている。このグレーズは、攪拌した場合、壊れやすく、周囲温度で光ゲルのように見える。これらのグレーズの外見を液体または半液体にするには、攪拌しなければならない(せん断応力を加えなければならない)。そのブリックスは通常55°を超え、そのpHは4未満である。機能を保証するためには、ブリックスおよびpHの厳格な管理が同様に必要である。
【0034】
攪拌後、チキソトロピック・グレーズは、食品に十分塗布することができる液体である。塗布の後で攪拌をしない場合には、これらグレーズは、その粘性を回復し、そのためグレーズは製品上に留まることができる。しかし、このグレーズは、うまく切断できるほどにゲル化することは決してない。このグレーズは、いつでも粘り気のあるゼリーのままであり、指で触れると湿り気を有する。それ故、このグレーズは、ババロアの頂部に塗布するには理想的なものであるが、フルーツ・タルト、ヴィエノワズリ、デニッシュ、ケーキ等の上に塗布するのには適していない。
【0035】
国際公開パンフレットWO01/74176号は、ずり流動化後、食品に添加したときに液体であるチキソトロピックずり流動化組成物に関する。この組成物は、肉、鶏肉または海水魚のような調理していない食品に加えた場合だけゲルを形成する。これらのその場でゲルとなる組成物は、液体の浸出が少ない食品を製造するために食品に添加される。開示のゲルは、ゲル化することができる多糖類およびチキソトロピック・ゲルを形成するある量の少なくとも1つのゲル化カチオンの混合物を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
本発明の目的は、3つの上記グレーズ、すなわち熱可逆性濃縮グレーズ、熱可逆性の即時使用可能なグレーズ、および冷間チキソトロピック・グレーズの利点を併せ持っているグレーズ製品を提供することである。
【0037】
濃縮グレーズのように、本発明のグレーズは、タルトの指定の部分だけにグレーズを塗布することができるように、正確に食品にグレーズすることができる、ブラシで塗布することができるものでなければならない。スプレー可能なグレーズのように、製品は、即時使用可能でなければならない。チキソトロピック・グレーズのように、製品は、加熱を必要とするものであってはならないが、チキソトロピック・グレーズとは異なり、また熱可逆性グレーズのように、本発明のグレーズは、タルト上に塗布した後で、硬化し、切断することができるゲルを形成するものでなければならない。ゼリー化またはゲル化した後で、本発明のゲルまたはグレーズは、固体のように挙動を示すものでなければならないし、容易に切断することができるものでなければならないし、切り口が完全なものでなければならない。このような特性を有しているので、グレーズは、フルーツ・タルト、ヴィエノワズリ、ケーキ等を含むがこれらに限定されないすべてのタイプのペーストリー製品上で使用するように設計されている。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明は、ペーストリー・グレーズ、有利には、50%未満のメトキシ化度を有する、より好適には、50%未満のメトキシ化度および30%までのしかし0%を含まない(すなわち、約0%から約30%の間で0%を含まない)アミド化度を有するCa2+反応性低メトキシ化−アミド化ペクチンを可溶化することにより得られる即時使用可能なペーストリー・グレーズに関し、ペーストリー・グレーズを形成するためには、
−有利には、塗布する前、(その最終的な形で)周囲温度においてその外観が液体または半液体であり、有利には、ゲル化しておらず、
−塗布する前のゼリー化に対して不十分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを含み、
余分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを供給する食品土台(food product support)に塗布したときだけにグレーズがゼリー化する。
【0039】
有利には、本発明によるグレーズ溶液の塗布条件(ブリックス、pHおよび/または添加するCa2+または他のゲル化剤の量)は、塗布する前にグレーズがゼリー化するためには不十分なものである。それ故、有利には、本発明によるグレーズ溶液またはグレーズ製品には余分のCa2+は添加されず、または添加されるCa2+の量は非常に少なく、これらの準至適pHおよび/またはブリックス条件ではゲルは硬化できない。
【0040】
本発明は、例えば、ペーストリー・グレーズ、有利には、50%未満のメトキシ化度を有する、より好適には、50%未満のメトキシ化度および30%までのしかし0%を含まない(すなわち、約0%から約30%の間で0%を含まない)アミド化度を有するCa2+反応性低メトキシ化−アミド化ペクチンを可溶化することにより得られる即時使用可能なペーストリー・グレーズに関し、ペーストリー・グレーズを形成するためには、
−有利には、塗布する前、(その最終的な形で)周囲温度においてその外観が液体または半液体であり、有利には、ゲル化しておらず、
−約30°〜約60°のブリックス、好適には約35°〜約55°のブリックスを有し、
−酸性pH、好適には4.5未満のpH、より好適には4未満のpHを有し、
−塗布する前のゼリー化に対して不十分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを含み、
余分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを供給する食品土台(food product support)に塗布したときだけにグレーズがゼリー化する。
【0041】
有利には、本発明によるグレーズは、周囲温度において性質/外観が液体または半液体であり、有利には、液体または半液体になるのに加熱を必要としない。有利には、本発明によるグレーズは、冷間ゲル化グレーズであり、これは、それが食品土台(food product support)に塗布されると周囲温度(35℃以下の温度)でゲル化することを意味する。有利には、硬いゲルを得るのに(予備)加熱ステップまたは冷却ステップを必要としない。
【0042】
有利には、本発明によるグレーズは、ゲル化していないチキソトロピック・グレーズである。
【0043】
有利には、本発明によるグレーズは、最高約50ppmまで、好適には約15ppm、より好適には約5〜約15ppmのレベルの天然の遊離Ca2+を含む。
【0044】
有利には、本発明によるグレーズ内に含まれるCa2+反応性ペクチンは、当該技術分野において周知の低メトキシ化高アミド化ペクチンである。
【0045】
有利には、本発明によるグレーズ内に含まれるCa2+反応性ペクチンは、約20〜約40%、好適には約25〜約37%のメトキシ化度、および約10〜約25%、好適には約14〜約22%のアミド化度を有する低メトキシ化高アミド化ペクチンである。
【0046】
本発明による好適な実施形態の場合には、本発明によるグレーズ内に含まれるCa2+反応性ペクチンは、約28%のメトキシ化度、および約22%のアミド化度を有する。
【0047】
本発明による他の好適な実施形態の場合には、本発明によるグレーズ内に含まれるCa2+反応性ペクチンは、約36%のメトキシ化度、および約14%のアミド化度を有する。
【0048】
本発明の他の好適な実施形態の場合には、本発明によるグレーズ内に含まれるCa2+反応性ペクチンは、約25%のメトキシ化度、および約21%のアミド化度を有する。
【0049】
本発明の他の好適な実施形態の場合には、本発明によるグレーズ内に含まれるCa2+反応性ペクチンは、約32%のメトキシ化度、および約18%のアミド化度を有する。
【0050】
本発明のさらに他の好適な実施形態の場合には、本発明によるグレーズ内に含まれるCa2+反応性ペクチンは、約37%のメトキシ化度、および約15%のアミド化度を有する。
【0051】
有利には、本発明によるグレーズにおいては、すでに定義したような低メトキシ化ペクチンは、すでに定義したような低メトキシ化−アミド化ペクチンと一緒に使用することができ、および/または好適には、すでに定義したような低メトキシ化−高アミド化ペクチンと一緒に使用することができる。
【0052】
有利には、本発明によるゲル化グレーズ、有利には、冷間ゲル化グレーズの硬さは、有利には、食品土台(food product support)と接触した後(その上に塗布した後)、少なくとも2倍になる。
【0053】
有利には、本発明によるグレーズは、食品土台(food product support)と接触した後(その上に塗布した後)、切断することができるゲルになる。有利には、食品に天然に含まれるCa2+イオン等(他のゲル化カチオン、上記参照)の量はゼリー化を誘起し、所望の最終製品を作るのに十分な量である。食品は、有利には、所望の結果を達成するために、Ca2+イオンと(予備)混合する必要がない。うまく切断することができる硬いゲルが形成されると、有利には、完全に切断することができ、グレーズが下方に垂れることなく(食品)製品を容易に分割することができる。
【0054】
有利には、ゲル化を誘起するのに必要な余分の量のCa+2イオン等を供給する食品は、ベーカリー・クリーム、ケーキ、パン、デニッシュ・ペーストリー、パフ・ペーストリーおよびフルーツおよび/またはこれらの任意の組合せからなるリストから選択したものである。フルーツは、例えば、アプリコット、パイナップル、ナシ、キーウィおよびオレンジからなるリストから選択したフルーツであってもよい。
【0055】
有利には、本発明によるグレーズを使用すれば、例えば、ブラシで食品に正確にグレーズすることができる。
【0056】
本発明によるグレーズは、さらに、他のゲル化剤および/または増粘剤を含むことができる。他のゲル化剤および/または増粘剤を本発明によるグレーズ製品に入れた場合には、これらのゲル化剤および増粘剤の量は、食品に塗布する前は、本発明によるグレーズのゲル化を誘起するには不十分な量である。
【0057】
他のまたはさらなるゲル化剤は、他のペクチン、ゲラン・ガム、カラギーナン、寒天およびアルギン酸塩からなるグループから選択したものであってもよい。
【0058】
増粘剤は、グァー・ガム、ローカスト・ビーン・ガム、キサンタン・ガム、加工セルロース、アラビアゴムからなるグループから選択したものであってもよい。
【0059】
低Ca2+反応性ペクチンを使用する場合には、CaCl2を、本発明による(初期の)ペーストリー・グレーズまたはグレーズ溶液に加えることができる(下記の例参照)。この場合、添加するCa+2イオンの量は、やはり、食品土台(food product support)に塗布する前はゲル形成を誘起するには不十分な量である。
【0060】
(上記どれかの)本発明によるグレーズは、食品にグレーズするのに非常に適している。
【0061】
これらのグレーズは、食品上で容易に切断することができるゲルを形成するのに非常に適していて、完全に切断することができ、グレーズが下方に垂れることなく食品を容易に分割することができる。ゲルは、食品土台(food product support)上に液体から半液体グレーズを塗布するだけで得られる。この場合、硬いゲルを得るために(事前の)加熱および/または冷却ステップを行う必要はない。有利には、ゲル形成は周囲温度で起きる。
【0062】
他の態様によれば、本発明は、(上記グレーズのうちの任意の)本発明によるグレーズでグレーズされた食品に関する。すでに説明したように、形成されたグレーズは、有利には、容易に切断することができ、有利には、切り口が完全であり、グレーズが下方に垂れることなく食品を容易に分割することができる。
【0063】
本発明によるグレーズは、任意の食品特に、ベーカリー・クリームで飾られているタルトまたはペーストリー、フルーツ・タルト、ケーキ、ヴィエノワズリ、デニッシュおよびババロアからなるグループから選択した食品にグレーズするのに非常に適している。
【0064】
本発明は、食品土台(food product support)のような土台(support)と接触したときにだけゲル化する液体または半液体ペーストリー・グレーズに関する。本発明は、ゲル化グレーズ、またはCa2+反応性ペクチン:低メトキシ化、好適には、低メトキシ化−アミド化ペクチン、より好適には低メトキシ化−高アミド化ペクチンおよび/またはこれらの任意の組合せ(定義については下記参照)を使用または可溶化することにより得られたまたは得ることができるグレーズ製品に関する。本発明によるグレーズ溶液の塗布条件(ブリックス、pHおよび/またはCa2+または追加した他のゲル化剤の量)は、塗布する前にはグレーズのゼリー化には不十分なものである。
【0065】
「半液体」という用語は、有利には、ブラシで、および/または冷間スプレーにより食品上に塗布することができる粘性液を意味する。
【0066】
それ故、有利には、余分なCa2+は、本発明によるグレーズ溶液またはグレーズ製品に添加されないか、または添加するCa2+の量は非常に少なく、これらの準至適pHおよび/またはブリックス条件でゲルの硬化は起こらない。
【0067】
驚いたことに、本発明者は、高品質の硬いゲル(下記参照)がそのようなものとして得られることが分かり、そのため、本発明によるグレーズのカルシウム感度は、ゼリー化を誘起するのに必要なCa+2イオン等の余分な量を(天然に)供給する食品土台(food product support)に接触したゲルが硬化するのに十分な程高い。硬いゲルを得るために、食品に余分な量のCa+2イオン等を含ませる必要はない。
【0068】
それ故、本発明は、ペーストリー・グレーズ、有利には、50%未満のメトキシ化度のCa2+反応性低メトキシ化ペクチン、より好適には、50%未満のメトキシ化度および30%までのしかし0%を含まない(すなわち、約0%から約30%の間で0%を含まない)アミド化度のCa2+反応性低メトキシ化−アミド化ペクチンを可溶化することにより得られる即時使用可能なペーストリー・グレーズに関し、ペーストリー・グレーズを形成するためには、
−有利には、塗布する前、(その最終的な形で)周囲温度においてその外観が液体または半液体であり、ゲル化しておらず、
−塗布する前にゼリー化に対して不十分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを含み、
余分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオン(K+、H+等)を供給する食品土台(food product support)に塗布したときだけにグレーズがゼリー化する。
【0069】
好適には、本発明のグレーズは、約30°〜約60°、より好適には約35°〜約55°のブリックス、および/または4.5未満、より好適には4未満の酸性pHを有することが好ましい。
【0070】
それ故、本発明は、特に、ペーストリー・グレーズ、有利には、50%未満のメトキシ化度のCa2+反応性低メトキシ化ペクチン、より好適には、50%未満のメトキシ化度および30%までのしかし0%を含まない(すなわち、約0から約30%の間で0%を含まない)アミド化度のCa2+反応性低メトキシ化−アミド化ペクチンを可溶化することにより得られる即時使用可能なペーストリー・グレーズに関し、ペーストリー・グレーズを形成するためには、
−有利には、塗布する前、(その最終的な形で)周囲温度においてその外観が液体または半液体であり、ゲル化しておらず、
−約30°〜約60°、好適には、約35°〜約55°のブリックスを有し、
−酸性pH、好適には、4.5未満のpH、より好適には4未満のpHを有し、
−塗布する前にゼリー化に対して不十分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを含み、
余分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオン(K+、H+等)を供給する食品土台(food product support)に塗布した場合だけにグレーズがゼリー化する。
【0071】
有利には、本発明によるグレーズは、周囲温度において性質/外観が液体または半液体である。有利には、本発明によるグレーズは、冷間ゲル化グレーズである。これは、それが、食品土台(food product support)に塗布されると、周囲温度、すなわち、35℃以下の温度、好適には約4℃〜約20℃、より好適には約15℃〜約25℃の温度でゲル化することを意味する。有利には、硬いゲルを得るのに(予備)加熱ステップまたは冷却ステップを必要としない。
【0072】
有利には、本発明によるグレーズは、ゲル化していないチキソトロピック・グレーズである。
【0073】
塗布する前、周囲温度において液体から半液体のテクスチャーを有する本発明によるグレーズは、ゼリー化のために必要な余分なCa2+イオン(または、他のイオン:K+、H+)を供給する食品土台(food product support)に塗布されたときに硬化する。この硬化は周囲温度で起こる。それ故、本発明によるグレーズは冷間ゲル化グレーズである。任意のタイプのペーストリーのような普通(regular)の食品内のCa+2イオンの量は、本発明によるグレーズのゼリー化を誘起するのに十分な量である。
【0074】
有利には、本発明によるグレーズは、例えば、水でさらに希釈する必要がなく、および/または当該技術分野において周知のある種のグレーズ製品が必要とするのとは異なり、周囲温度(35℃以下の温度)でゼリー化した構造体を含む製品を溶解するための加熱ステップを必要としない。
【0075】
使用する前の、すなわち食品または食品土台(food product support)に塗布する前の本発明によるグレーズは、有利には、周囲温度で「液体」または「半液体」のテクスチャーを有する。
【0076】
本発明によるグレーズは、フルーツ・フレーバーのようなフレーバーを含むことができる。しかし、フルーツ・ジュース、フルーツ・エキス、および/またはフルーツ片を添加することは推奨されず、そこから利用できるCa2+イオンが、グレーズ製品のゲル化が食品上に塗布する前に始まる程の量では全く駄目である。
【0077】
本発明によるグレーズは、その場でゲル化するグレーズまたはその場でゲル化する組成物の例である。
【0078】
本発明によるグレーズは、ずり流動化されてもよいが、有利には、当該技術分野において周知のある種のチキソトロピック・グレーズ製品とは異なり、塗布する前にずり流動化される必要がない。最終的には、せん断応力が本発明によるグレーズ組成物に加えられてもよく、それにより、せん断応力が加わる前に性質が液体から半液体であるグレーズ組成物は、上記せん断応力が加わる前よりももう少し液体または流動体になる。
【0079】
本発明による液体または半液体グレーズは、有利には、例えば、食品上にそれをブラシで、または冷間スプレーにより塗布することにより、食品に正確に容易に塗布することができる。
【0080】
好適には、本発明によるグレーズの成分は、約0〜50ppm(最高約50ppmまでの)、好適には、約15ppm、典型的には、約5〜約15ppmのレベルの天然の遊離Ca2+を有する。存在する/利用可能なカルシウム・イオンの量は、燐酸塩およびクエン酸塩のような錯化剤により制御することもできる。カルシウム反応性ペクチンがCa+2以外のイオンにも反応することは周知である。
【0081】
上記組合せにより、使用または塗布する前、および塗布しただけでグレーズのゼリー化の前の、グレーズの液体から半液体のテクスチャーを保持することができる。
【0082】
食品上に塗布すると、より多くのイオン(Ca2+、H+、K+等)がペクチンに使用可能になり(食品土台(food product support)とグレーズ間の移動により)、グレーズ製品がゼリー化することができる。それ故、ゼリー化のために必要なCa2+の余分な量は、食品土台(food product support)により供給される。食品土台(food product support)は、また、グレーズのゲル化を促進するpHおよび/または他の条件を変えることもできる。また、有利には、ゲル形成を誘起するために冷蔵または冷却ステップを必要としない。
【0083】
Ca2+反応性ペクチンの他に、他のゲル化剤および/または増粘剤を、本発明によるグレーズ溶液または組成物に加えることができる。そのようなゲル化剤としては、他のタイプのペクチン、カラギーナン、ゲラン・ガム、寒天、アルギン酸塩等があるがこれらに限定されない。これらのゲル化剤を添加した場合には、これらゲル化剤は、塗布または使用する前にグレーズのゼリー化を誘起するには不十分な量で添加される。適当な増粘剤としては、グァー・ガム、ローカスト・ビーン・ガム、キサンタン・ガム、加工セルロース、アラビアゴム等があるが、これらに限定されない。本発明によるグレーズ組成物は、さらに、フレーバーを含むことができる。
【0084】
本発明による好適な実施形態の場合には、本発明のグレーズ内に存在するCa2+反応性ペクチンは、低メトキシ化(L.M.)ペクチンおよび/または低メトキシ化−アミド化ペクチンである。好適には、低メトキシ化−アミド化ペクチンが使用される。このようなペクチンは、50%未満のメトキシ化度を有し、0%を含まない約0%から約30%、好適には0%を含まない約0%〜25%、より好適には約10%〜約25%のアミド化度を有する。後者は、低メトキシ化−アミド化ペクチン(D.M.50%未満、D.A.最高30%(0%を含まない))の例である。
【0085】
グレーズのカルシウム感度は、低メトキシ化ペクチン自身、非アミド化低メトキシ化ペクチンを使用して入手することができる。次に、好適には、メトキシ化度は、約15%以下、好適には約10%以下、より好適には約7%以下であり、または約5%以下でもよい。ペクチンのD.M.が低ければ低いほど、グレーズのCa2+反応性は高くなる。
【0086】
低メトキシ化−アミド化ペクチン、すなわち、50%未満のメトキシ化度、および約0%〜約30%(0%を含まない)、好適には約0%〜約25%(0%を含まない)、約5%〜約25%、より好適には約10%〜約25%のアミド化度のペクチンをグレーズに混合することにより本発明によるグレーズのカルシウム感度を誘起することが好ましい。低メトキシ化−アミド化ペクチンを含むグレーズにより得られるゲルの品質は、低メトキシ化ペクチンより得られるゲルの品質より優れている。これは、例えば、切断特性が優れている。低メトキシ化−アミド化ペクチンは、もっと容易に溶解、処理することができ、より優れた品質のグレーズ(例えば、より優れた粘性および優れたゲル化等)になる。
【0087】
約10%〜約50%、約15〜約45%、より好適には約20%〜約40%、最も好適には約24%〜約38%、約25%〜約37%のメトキシ化度、および約0%〜約30%(0%を含まない)のアミド化度の低メトキシ化−アミド化ペクチンが好ましい。
【0088】
当該技術分野において周知の低メトキシ化−高アミド化ペクチンが特に好ましい(工業ゴム(Industrial gums)第3版、ロイ・ホイッスラー(Roy Whistler)およびジェームス・ベミラー(James Bemiller)編、1993年、261ページ、268ページ、通常のアミド化度)。低メトキシ化−高アミド化ペクチンのメトキシ化度は、例えば、約20%〜約40%、最も好適には約24%〜約38%、約25%〜約37%であり、アミド化度は、約10%〜約25%、約11%〜約24%、より好適には約13%〜23%、最も好適には、約14%〜約22%である。
【0089】
ペクチンのD.M.が低ければ低いほど、および/またはD.A.が高ければ高いほど、このようなペクチンを含むグレーズのCa2+反応性は高くなる。以下に説明するように、本発明によるグレーズ内で低メトキシ化−高アミド化ペクチンを使用すると非常に有利である。好適には、低D.M.は、45%未満、44%、43%、42%、41%以下、より好適には40%、39%、38%未満、最も好適には37%または36%以下の低D.M.であり、高D.A.は、約10%を超え、好適には約11%、12%、13%を超え、より好適には約14%を超えるD.A.である。
【0090】
本発明によるグレーズで使用するには、D.M.が約25%〜約37%で、D.A.が約14%〜約22%のペクチンが特に好ましい。D.M.が約28%でD.A.が約22%のペクチン;D.M.が約36%でD.A.が約14%のペクチン;D.M.が約37%でD.A.が約15%のペクチン;D.M.が約32%でD.A.が約18%のペクチン;D.M.が約25%およびD.A.が約21%のペクチンが非常に有利である。
【0091】
塗布する前に、本発明によるグレーズは硬化したりゲル化したりしない。これは、土台(support)に接触した後にだけ、例えば、約5分から数時間(最高24時間)、典型的には30分から2時間の間にゲル化が起こる。その場でしかゲル化しないのは、土台(support)とグレーズとの間のイオン(Ca2+、Mg2+、H+、K+、Na+等)の移動、または蒸発によるイオンの濃縮による乾燥状態が原因だと考えられる。
【0092】
この反応を引き起こす、すなわち、必要なゲル化イオンを含む土台(support)または食品土台(food product support)は、タルトおよび他のタイプのペーストリーを飾るアプリコット、パイナップル、ナシ、キーウィ、オレンジ等のようなフルーツを含むことができる。ベーカリー・クリーム、およびペーストリーで使用する他のタイプの土台(support)も同じ効果をあげることができる。
【0093】
アプリコットのような適当な土台(support)とは対照的に、本発明による冷間ゲル化グレーズの固さ(グラムによる)は、土台(support)との最小接触時間、例えば、1時間または数時間(最高24時間)の後、少なくとも2、3、4、5、10または20倍になる。
【0094】
Ca2+反応性がより低いペクチンを使用した場合には、余分なCa2+の添加および/またはより高いブリックスおよび/またはより低いpHが非常にしばしば必要になる。例えば、類似の製品を得るために、最高約50ppmのCa2+を、好適にはCaCl2の形で、グレーズ組成物に添加しなければならない場合がある。本発明によるグレーズの最も重要な特性は、下地(substrate)または土台(support)に接触しない限り製品がゲル化しないことである。カルシウム以外のイオン(例えば、Na+、K+、Mg++およびH+)を使用することができる。
【0095】
有利には、ペクチンのD.M.が低ければ低いほど、および/またはD.A.が高ければ高いほど、Ca2+反応性が高くなる。L.M.ペクチンのD.M.が高ければ高いほど、および/またはL.M.−アミド化ペクチンのD.A.が低ければ低いほど、Ca2+反応性が低くなる。表3は、Ca2+反応性がより低いペクチンおよびCa+2反応性がより高いペクチンの一例を示す。例えば、28M−22Aペクチンを使用する場合には、グレーズに余分なCa+2を添加しなかったが、一方、36M−14Aペクチンを使用した場合には、Ca+2源を添加した。当業者であれば、望む結果を得るために、Ca+2のような余分なゲル化イオンをいつ添加したらよいのか、ブリックスをいつ増大したらよいのか、および/またはpHをいつ低くしたらよいのかを知っているだろう。本発明によるグレーズのメトキシ化度、アミド化度およびブリックスの関数としての低D.M.−高D.A.ペクチンをゼリー化するために必要な余分のCa+2の量のいくつかの例を以下に示す。
表2:システムのブリックスの関数としての低D.M.−高D.A.ペクチンをゼリー化するために必要な(ペクチン1g当たりのCa2+をmgで表した)余分なCa2+の量。余分なCa+2は、土台(support)からの移動により供給される。
【0096】
【表2】
【0097】
有利には、本発明によるグレーズは、フルーツ・タルトまたはpHの低い他のペーストリー製品のようなペーストリーにグレーズするのに非常に適している。
【0098】
グレーズが塗布される食品またはフルーツ製品土台(fruit product support)は、フルーツ・タルト、ババロア、ヴィエノワズリ、デニッシュ、ケーキでもよい。
【0099】
本発明によるグレーズが使用された食品またはペーストリー製品は、非常に切断特性がよく、切断したとき、および/または数時間から数日貯蔵したときでも、グレーズが下方に垂れ下がりにくく、湿ったり、および/または不安定になったりしない。
【0100】
有利には、本発明によるグレーズは、即時使用可能であり、容易にスプレーしたり、広げたり、塗布したりできるので、正確に作業をすることができ、望むなら、食品(例えば、フルーツ)の特定の一部だけをグレーズで覆うことができる。
【0101】
本発明は、さらに、上記グレーズの調製するための製造プロセスに関する。この製造プロセスは、少なくともCa2+反応性ペクチン、好適には低メトキシ化ペクチン、より好適には低メトキシ化−アミド化ペクチン、最も好適には低メトキシ化−高アミド化ペクチンであって、好適には約35°〜約55°のブリックス、および酸性pH、好適には4.5未満、より好適には4未満のpHを有する、(冷間の)その場でゲル化するグレーズを形成するために、製品と接触する前はそのゼリー化に不十分な条件(ブリックス、pH、添加するCa2+または他のゲル化イオンの量)で、上記のメトキシ化度およびアミド化度を有するものを、水中で可溶化するステップを含む。
【0102】
好適な製造プロセスは、下記のステップを含む。
−グルコース・シロップを砂糖および塩および水と混合する、
−砂糖を溶かすために、70〜90℃、70〜80℃、例えば、85℃にする、
−使用するCa+2反応性ペクチン(好適には、低メトキシ化−アミド化ペクチン、最も好適には低メトキシ化−高アミド化ペクチン、上記参照)を高せん断ミキサーにより分散させる、
−ペクチン溶液を砂糖溶液に添加し、均質になるまで混合する、
−約60℃に冷却し、容器に入れる。
【0103】
上記製造プロセスは、本発明によるグレーズの製造の一例にしか過ぎない。
【0104】
ここで添付の図面を参照しながら、下記の例および実施形態により本発明をさらに詳細に説明するが、この説明は特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0105】
本発明のグレーズの利点の1つは、容易に使用し塗布することができること、およびグレーズした食品の切断特性が非常に優れていることである。本発明によるグレーズで予見された(forseen)製品の切断特性が優れていることは、図1からはっきり分かる。図1Aは、そのようなグレーズが標準的なチキソトロピック・グレーズ(図1B)と比較して、全く下方に垂れないことをはっきり示し、完全にきれいに切れていることを示す。
【0106】
そのようなグレーズを使用したフルーツ・タルトは、優れたテクスチャーおよび外観を保ち、このグレーズは、下方に垂れることがなく、湿らず、および/または不安定にならない(図2A〜図2C)。
【0107】
グレーズの非常に優れた切断特性は、製品の上に塗布した後のそのテクスチャー(固さ)の変化によって説明することができる。テクスチャーの経時変化を調査するために、120gのグレーズをプラスチック・ビーカ内の約46〜約48gのアプリコットに注ぎ、次に、冷蔵庫内に入れた。初期(t=0)の固さを、25℃で測定し(図3A)、一方、それぞれ24時間および48時間後(t=24h、t=48h)の固さを10℃〜12℃で測定した(図3Cおよび図3E)。同量のグレーズを、アプリコットなしでビーカに注ぎ、カバーをかけて、冷蔵庫内に入れ、対照とした(図3Bおよび図3D)。
【0108】
上記測定はテクスチャー測定装置(ステイブル・マイクロシステムズ(Stable Microsystems)社のTAXT−2)を用いて、直径2.54cmのプローブ、5.0mmの圧縮目標、1.0gのトリガー、120mm/分の速度、20秒の保持時間、0秒の回復で行った。
【0109】
図3A〜図3EのY軸は、ゲルの固さの測定値としての貫通力(グラム単位の力)に対するゲルの抵抗を示す。ピークは、ここで最大抵抗を示し、5mmの圧縮での力を表す。t=0の時点において、11.8gの最大ピークが液体または半液体のペーストリー・グレーズで測定された。48時間経過後、28.4gの最大ピークが対照で記録され、一方アプリコット上にのせたゲルの場合には、48時間の接触時間の後で139.2gの最大ピークが記録された。それ故、アプリコットのような適当な土台(support)の上にのせたゲルの固さの増大は有意なものである。
【0110】
同じ条件下の標準チキソトロピック・ゲルの振舞いと比較した場合、ゲルのゲル化能力および固さの差は顕著なものであった。例えば、アプリコット上に塗布された標準チキソトロピック・グレーズの場合には、48時間後の最大ピークはたったの30gであった。
【0111】
本発明の冷間ゲル化グレーズは、t=0の時点ではゼリー化しないが、製品(この場合にはアプリコットである)と接触すると、テクスチャーが、すでに説明したように、硬いゲルへと変化する。これは、アプリコットまたは他の適当な土台(support)に接触しない限りは起こらない。この結果は、おそらく、土台(support)とグレーズとの間でのイオン(Ca2+、Mg2+、H+、K+、Na+等)の移動によるものと思われる。同じ効果をもたらすことができる他の土台(support)としては、パイナップル、ナシ、キーウィ、オレンジ等のようなフルーツがあるが、これらに限定されない。また、ベーカリー・クリーム、ケーキ、パン、デニッシュ・ペーストリー、パフ・ペーストリーおよび他のタイプの土台(support)も同じ効果をもたらすことができる。
【0112】
これとは対照的に、冷間チキソトロピック・グレーズは、最初からゼリー化したテクスチャーを示すが、これは、製品と接触した場合ですら、経時変化はほとんどない。ゲルのテクスチャーの固さは製品と接触した後若干低下する。
【0113】
実際には、土台(support)にもよるが、ゼリー化が1時間後に起きるように、遥かに薄い層のグレーズが食品の上に塗布されることに注意すべきである。
【0114】
下記(表3)は、本発明による冷間ゲル化グレーズを調製するためのいくつかの可能なレシピを示す。しかし、本発明の範囲は、これら特定のレシピに限定されない。表3は、さらに、いくつかのグレーズのテクスチャー(固さ)の経時変化の要約を示す。
【0115】
例
例1:レシピおよびテクスチャーの経時変化の例
製品(レシピ)1および2で測定した全Ca2+レベルは、約15ppm、例えば、約5〜約15ppmであった。このCa2+レベルは、当然レシピで使用した成分からのものである。レシピ3および4の場合には、カルシウムへの反応性がより低いペクチンを使用し、30ppmのCa2+をCaCl2の形で添加して、類似の製品を得た。
【0116】
例2:本発明による冷間ゲル化ペーストリー・グレーズの調製用のプロセス
本発明によるこれらグレーズを調製するためのプロセスは、下記のステップを含む。
−グルコース・シロップを砂糖、塩および水と混合する、
−砂糖を溶かすために、70〜90℃、70〜80℃、例えば、85℃に加熱する、
−使用するペクチンを高せん断ミキサーにより分散させる、
−ペクチン溶液を砂糖溶液に添加し、均質になるまで混合する、
−約60℃に冷却し、容器に入れる。
【0117】
表3の例から、下記の結論に達することができる。
【0118】
第一に、所望の特性を有する約35°〜最大約60°のブリックスを有する冷間ゲル化グレーズを得ることができる。このブリックス(約60°ブリックス)において、テクスチャーはほとんど変化せず、むしろ24時間後より48時間後の方が弱いが、これは、おそらくフルーツからグレーズへの非常に急速な水の移動によるものと思われる。
【0119】
第二に、この場合のアプリコットのような土台(support)とは対照的に、約35°〜約50°のブリックスを有する冷間ゲル化グレーズのテクスチャーは大きくなり、好適には5倍になる。これとは対照的に、チキソトロピック・グレーズの固さは、アプリコットの存在にほとんど影響されず、この場合には、少し低くさえなった。(図4参照)。
【0120】
第三に、塗布する前は完全な液体である約35°のブリックスを有する冷間ゲル化グレーズが得られる。
【0121】
第四に、異なるエステル化度およびアミド化度を有するペクチンを使用することができる。Ca2+への反応性がより低いペクチンを使用する場合には、添加したCa2+および/またはより高いブリックスおよび/または、より低いpHが必要になる。当業者であれば、土台(support)と接触させずにゲルの固さが増大しないようにこれらパラメータを適応させることができる。
【0122】
最後に、上記ペクチンを他のハイドロコロイドと組み合わせることができる。
【0123】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1A】図1Aは、本発明による低温ゲル化グレーズで24時間前に予見された(forseen)アプリコット・タルトの優れた切断特性を示す(図1B)。
【図1B】図1Bは、市場にでている冷間チキソトロピック・グレーズを使用したアプリコット・タルトの切断特性を示す。
【図2A】図2Aは、完全な切断および優れた一般的テクスチャーを示す、本発明による冷間ゲル化グレーズで予見された(forseen)混合フルーツ・タルトの完全な切断を示すタルトの断面である。
【図2B】図2Bは、完全な切断および優れた一般的テクスチャーを示す、本発明による冷間ゲル化グレーズで予見された(forseen)混合フルーツ・タルトの詳細な頂面図である。
【図2C】図2Cは、完全な切断および優れた一般的テクスチャーを示す、本発明による冷間ゲル化グレーズで予見された(forseen)混合フルーツ・タルトの詳細な側面図である。
【図3A】図3Aは、冷間ゲル化グレーズの0時間の最大ピーク:11.8のテクスチャー(固さ)の経時変化を示す。
【図3B】図3Bは、冷間ゲル化グレーズの24時間の最大ピーク:19.4のテクスチャー(固さ)の経時変化を示す。
【図3C】図3Cは、アプリコット上の冷間ゲル化グレーズの24時間の最大ピーク:118.4のテクスチャー(固さ)の経時変化を示す。
【図3D】図3Dは、冷間ゲル化グレーズの48時間の最大ピーク:28.4のテクスチャー(固さ)の経時変化を示す。
【図3E】図3Eは、アプリコット上の冷間ゲル化グレーズの48時間の最大ピーク:139.2のテクスチャー(固さ)の経時変化を示す。
【図4】図4は、アプリコットに接触したときの冷間ゲル化グレーズおよび標準的なチキソトロピック・グレーズの固さ(グラム単位の)の経時変化を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間ゲル化ペーストリー・グレーズ、その調製およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ペーストリー・グレーズは、フルーツ・パイ、ヴィエノワズリ、デニッシュ等のようなペーストリー製品に、艶を出し、空気から保護し、フレーバー層を追加する等の目的で塗布されるゼリー溶液である。
【0003】
元来、グレーズは、パン製造者自身が、フルーツ・ピューレ、砂糖および水から作っていた。現在では、それらは、砂糖(サッカロース、グルコース等)、水、フルーツ(フルーツ・ピューレ、フルーツ・ジュースまたはエキス等)、およびゲル化剤(ペクチン、カラギーナン等)、酸、塩、防腐剤等から作られる。
【0004】
主に3種のペーストリー・グレーズが現在市場にある。
−熱可逆性濃縮グレーズ
−熱可逆性の即時使用のスプレー可能なグレーズ
−冷間使用のチキソトロピック・グレーズ
【0005】
濃縮グレーズは、最も古くから使用されているものである。それらは、約60°〜約70°のブリックスを有し、pH<4である。約60°〜約70°のブリックスとは、これらのグレーズが、約50%〜75%の可溶性固体を含むことを意味する。
【0006】
濃縮グレーズは、使用する前に水(グレーズの重量の10%から最大100%)で希釈されなければならない。濃縮グレーズは、熱可逆性である。これは、それらが、高温(通常、60℃以上)では液体であり、低温(通常50℃以下)では固体になることを意味する。液化および固化の温度サイクルは、無限に反復することができる。
【0007】
以下に、そのような濃縮グレーズの標準的な組成を示す(表1)。
【0008】
【表1】
【0009】
上記グレーズは、ペクチンおよび他のゲル化剤および/または増粘剤を含む。
【0010】
ペクチンは、いくつかの理由から、グレーズの製造のためのゲル化剤として最もよく選択される。第一に、それは、フルーツ内に天然に存在し、それ故グレーズの調整に使用されるフルーツ・ピューレ内に存在する。第二に、ペクチンは、系の所望の熱可逆性を提供することができる。第三に、ペクチンの使用は、通常4未満のpHを有するグレーズのような酸性製品に適している。
【0011】
ペクチン分子は、α−1,4−グリコシド結合した200〜1000のD−ガラクツロン酸ユニットを含む直鎖からなる。分子内のガラクツロン酸ユニットのうちのいくつかは、エステル化されていて、そのため、ガラクツロン酸メチル・エステルの形で存在している。エステル化度(D.E.)は、分子内に含まれるガラクツロン酸ユニットの全数に対するエステル化されたガラクツロン酸ユニットの比率により定義される。市販のペクチンは、高エステル(H.M.,高メトキシ化)ペクチンおよび低エステル(L.M.,低メトキシ化)ペクチンに分けられる。ここで、「エステル化」は「メトキシ化」と同義語である。
【0012】
高エステル・ペクチンまたは高メトキシ化(H.M.)ペクチンは、エステル化の比率が50%を超えるペクチンである。H.M.ペクチンは、高ブリックス(ブリックス>55°)かつ低pH(pH約3)の系においてのみゼリー化する。高ブリックスの系は、疎水性結合領域を形成しやすく(favorize)、一方、H+は、(負に帯電している)ペクチン分子を中和し、それによりそれらの間に存在するすべての反発力を低減する。得られたゲルは、加熱しても完全には溶融しないという点で熱的に安定している。
【0013】
低エステル・ペクチンまたは低メトキシ化(L.M.)ペクチンは、エステル化の比率が50%未満のペクチンである。これらのペクチンは、H.M.ペクチンを穏やかに酸性処理またはアルカリ性処理することにより得られる。アルカリ脱エステル化プロセス中にアンモニアを使用すると、ペクチンは、アミド化されて、アミド化低エステル・ペクチンになる。アミド化度(D.A.)は、分子内に存在するガラクツロン・ユニットの全数に対するアミド化されたガラクツロン基の比率として定義される。ヨーロッパにおいては、アミド化のレベルは、法律により、最大25%に制限されている。
【0014】
L.M.ペクチンのゲル化機構は、H.M.ペクチンのゲル化機構とは異なる。ブリックスおよびpHは、依然としてゲル化機構の重要な要因であるが、カルシウム・イオン(Ca2+)および他の二価または一価のイオンもまた、この機構において非常に重要な役割を担う。D.M.(メトキシ化度)が低ければ低いほど、Ca2+の反応性は高くなる。D.A.(アミド化度)が高ければ高いほど、Ca2+の反応性は高くなる。低エステル・ペクチンは、高エステル・ペクチンよりも低いブリックスおよび高いpHでゲルを形成することができる。得られたゲルは、しばしば、加熱されて完全に再溶解する、すなわち、このようなゲルは、高エステル・ペクチンから得られたゲルとは対照的に、熱可逆性ゲルである(上記参照)。
【0015】
ペクチンを処理する場合には、ブリックスおよび特にpHを正確に制御しなければならない。ブリックスを+/−1°、pHを+/−0.1pHユニットに制御しなければならない。
【0016】
ペクチンは、グレーズの調製に最も頻繁に使用されるゲル化剤であるが、他のゲル化剤も、熱可逆性および/またはチキソトロピー特性を有しているので使用することができる。
【0017】
ペクチンの次に、グレーズで使用される最も普通のゲル化剤は、カラギーナンである。カラギーナンは、紅藻から抽出され、3つの主なグループ、すなわち、カッパ・カラギーナン、イオタ・カラギーナンおよびラムダ・カラギーナンに分類される。
【0018】
カッパ・カラギーナンは、不安定な熱可逆性ゲルを形成する。ゲルの形成はイオンにより誘起される。その影響力はK+>Ca2+>Na+である。カリウム・イオンが、最大の影響力を有し、次がカルシウム・イオン、最後がナトリウム・イオンである。カッパ・カラギーナンは、グレーズ製造のための2番目の候補であると見なされる。何故なら、カッパ・カラギーナンは、フルーツ内に天然には存在しないもので、一般的に、艶の良くないグレーズしか供給せず、カッパ・カラギーナンから作ったゲルの口当たりはあまり快適なものではなく、最後に、カッパ・カラギーナンは、加水分解に非常に敏感であるからである(このことは、このカッパ・カラギーナンが、使用中、より容易に破壊される恐れがあることを意味する)。
【0019】
イオタ・カラギーナンは、同様にカチオンにより誘起されるチキソトロピック・ゲルを形成する。影響力は、Ca2+>K+>Na+の順であり、この場合、カルシウム・イオンが最大の影響力を有し、次がカリウム・イオン、次がナトリウム・イオンである。
【0020】
ラムダ・カラギーナンは、ゼリー化せず、粘性を有する溶液を形成するだけである。
【0021】
使用することができるもう1つのゲル化剤は寒天である。寒天は、赤紫の海草の抽出物である。寒天は、また、溶融温度とゲル化温度の差が大きい熱可逆性ゲルを形成する。カチオンは、そのゲル化特性に影響を与えない。寒天は、柔軟で広がることができるテクスチャーを有するゲルを形成する。
【0022】
アルギン酸塩も、グレーズ製造産業で使用される。アルギン酸塩は、ゲル化剤であると見なされているが、ゲル化剤として使用されない。実際、アルギン酸塩は、Ca2+イオンにより耐熱性のゲルを形成する。Ca2+が存在していない場合には、アルギン酸塩は、単に増粘剤としての働きをする。アルギン酸塩は、低D.E.(エステル化度)ペクチンと一緒に使用することができる。しかし、アルギン酸塩は、高D.M.ペクチンとともに熱可逆性ゲルを形成することができる。
【0023】
増粘剤は、水に溶解された場合、硬化したりゲルを形成したりせずに溶液の粘度を増大させるという点でゲル化剤とは異なる。溶液は液体のままである。
【0024】
最も普通に使用される増粘剤としては、グァー・ガム、ローカスト・ビーン・ガム、キサンタン・ガム、加工セルロース、アラビアゴム等があるが、これらに限定されない。
【0025】
その粘性プロファイルは温度の関数である。通常、温度が上がると粘度は低減する。
【0026】
増粘剤は、場合によっては、ゼリー化が起こる前に製品上に留まることができるように、その液状のグレーズに十分な粘度を与えるためにグレーズで使用される。ゲル化剤(ペクチンまたはカラギーナン等)と増粘剤との組合せも、異なるテクスチャーを形成することができる。さらに、場合によっては、(例えば、カラギーナンをローカスト・ビーン・ガムと一緒に使用した場合;キサンタン・ガムをローカスト・ビーン・ガムと一緒に使用した場合;高D.M.ペクチンをアルギン酸塩と一緒に使用した場合;およびキサンタンをグァー・ガムと一緒に使用した場合)相乗効果が認められた。
【0027】
パン製造者が使用する場合には、従来の濃縮グレーズは、平鍋内で80℃以上に加熱される。この温度で、グレーズは溶解する。次に、溶液が、製品上に例えばブラシにより塗布される。冷却すると、溶液は、ゲル化して製品上で硬化する。硬化すると、グレーズは、ゲル化し、切断可能であるから、タルトのようなグレーズしたペーストリー製品を容易に切ることができる。このグレーズは、最も昔ながらのものであるが、一連の欠点を有する。第一に、このグレーズは希釈しなければならない。この操作は、(グレーズおよび水の)重量の測定に加えて、グレーズを分散させるための攪拌を必要とする。第二に、このグレーズは、最低でも80℃まで加熱しなければならない。ある種のグレーズはなかなか溶解しない。ゲルを溶解するのに長い時間がかかり、ゲルが平鍋の中で燃える恐れがある。従来のゲルは、それがまだ液体であるときにしか使用することができないから、使用できる時間は非常に短い。ゼリー状になる前にパン製造者が全部のグレーズを使用しなかった場合には、パン製造者は、再度使用する前にゲルを再溶解させるために再度加熱しなければならない。そうすると、水分の蒸発および/または後のグレーズのテクスチャーの変化につながる。フルーツ(特に、ストロベリー、ラズベリー等)は、またその上に温かい溶液をかけると傷む恐れがある。
【0028】
即時使用のスプレー可能なグレーズは、第二世代のグレーズである。このグレーズは、濃縮グレーズから得られるが、約45°〜50°のブリックスにすでに希釈されているから、そのままスプレー機械で塗布される。
【0029】
低D.M.−高D.A.ペクチンおよび/またはカラギーナンは、即時使用の熱可逆性グレーズの製造のために使用される最も普通のゲル化剤である。この場合も、製品を安定化するために、ゲル化剤と一緒に増粘剤を使用することができるが、この場合には、優れたスプレー特性を確保するために、製品がより高い温度(>60℃)で液体であることが重要である。
【0030】
この場合も、適切な機能を保証するためには、グレーズのブリックスおよびpHを厳しく管理する必要がある。
【0031】
即時使用のスプレー可能なグレーズは、例えば、60℃〜90℃の湯浴内の螺旋循環を通ってスプレー機械に注入される。この温度で、グレーズはくずれたゲルの希釈による液体のように見える(一方、周囲温度または35℃以下の温度では、グレーズはゲルのように見える)。スプレーの後、グレーズの硬化温度以下の温度に温度が急激に下がり、タルト上でグレーズはゲル化する。グレーズは、また、切断することができるゲルを形成し、グレーズが垂れ下がることなく、製品を容易に分割することができる。このグレーズは、希釈する必要がなく、平鍋の中で作ることができるから、濃縮グレーズよりも容易に使用することができる。しかし、このグレーズは、また、その熱可逆性に関連する欠点もある。使用温度が非常に重要である。よい結果を得るためには、スプレー機械の適切な制御、使用および保守がさらに重要である。いくら正確にしても正確すぎるということはない。スプレー・ガンのスプレー面は非常に広いので、タルトのある部分だけにグレーズを塗布し、その周囲にはスプレーしないということ(例えば、クリームケーキを飾っているフルーツだけにグレーズを塗布し、クリームにはグレーズしないということ)はほとんど不可能である。
【0032】
熱可逆性グレーズ(濃縮グレーズまたはすぐに使用することができるグレーズ両方)のもう1つの大きな欠点は、それを使用するパン製造者または作業者が火傷を受ける危険があることである。
【0033】
使用するために加熱しなくてもよいチキソトロピック・グレーズも市販されている。このグレーズは、攪拌した場合、壊れやすく、周囲温度で光ゲルのように見える。これらのグレーズの外見を液体または半液体にするには、攪拌しなければならない(せん断応力を加えなければならない)。そのブリックスは通常55°を超え、そのpHは4未満である。機能を保証するためには、ブリックスおよびpHの厳格な管理が同様に必要である。
【0034】
攪拌後、チキソトロピック・グレーズは、食品に十分塗布することができる液体である。塗布の後で攪拌をしない場合には、これらグレーズは、その粘性を回復し、そのためグレーズは製品上に留まることができる。しかし、このグレーズは、うまく切断できるほどにゲル化することは決してない。このグレーズは、いつでも粘り気のあるゼリーのままであり、指で触れると湿り気を有する。それ故、このグレーズは、ババロアの頂部に塗布するには理想的なものであるが、フルーツ・タルト、ヴィエノワズリ、デニッシュ、ケーキ等の上に塗布するのには適していない。
【0035】
国際公開パンフレットWO01/74176号は、ずり流動化後、食品に添加したときに液体であるチキソトロピックずり流動化組成物に関する。この組成物は、肉、鶏肉または海水魚のような調理していない食品に加えた場合だけゲルを形成する。これらのその場でゲルとなる組成物は、液体の浸出が少ない食品を製造するために食品に添加される。開示のゲルは、ゲル化することができる多糖類およびチキソトロピック・ゲルを形成するある量の少なくとも1つのゲル化カチオンの混合物を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
本発明の目的は、3つの上記グレーズ、すなわち熱可逆性濃縮グレーズ、熱可逆性の即時使用可能なグレーズ、および冷間チキソトロピック・グレーズの利点を併せ持っているグレーズ製品を提供することである。
【0037】
濃縮グレーズのように、本発明のグレーズは、タルトの指定の部分だけにグレーズを塗布することができるように、正確に食品にグレーズすることができる、ブラシで塗布することができるものでなければならない。スプレー可能なグレーズのように、製品は、即時使用可能でなければならない。チキソトロピック・グレーズのように、製品は、加熱を必要とするものであってはならないが、チキソトロピック・グレーズとは異なり、また熱可逆性グレーズのように、本発明のグレーズは、タルト上に塗布した後で、硬化し、切断することができるゲルを形成するものでなければならない。ゼリー化またはゲル化した後で、本発明のゲルまたはグレーズは、固体のように挙動を示すものでなければならないし、容易に切断することができるものでなければならないし、切り口が完全なものでなければならない。このような特性を有しているので、グレーズは、フルーツ・タルト、ヴィエノワズリ、ケーキ等を含むがこれらに限定されないすべてのタイプのペーストリー製品上で使用するように設計されている。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明は、ペーストリー・グレーズ、有利には、50%未満のメトキシ化度を有する、より好適には、50%未満のメトキシ化度および30%までのしかし0%を含まない(すなわち、約0%から約30%の間で0%を含まない)アミド化度を有するCa2+反応性低メトキシ化−アミド化ペクチンを可溶化することにより得られる即時使用可能なペーストリー・グレーズに関し、ペーストリー・グレーズを形成するためには、
−有利には、塗布する前、(その最終的な形で)周囲温度においてその外観が液体または半液体であり、有利には、ゲル化しておらず、
−塗布する前のゼリー化に対して不十分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを含み、
余分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを供給する食品土台(food product support)に塗布したときだけにグレーズがゼリー化する。
【0039】
有利には、本発明によるグレーズ溶液の塗布条件(ブリックス、pHおよび/または添加するCa2+または他のゲル化剤の量)は、塗布する前にグレーズがゼリー化するためには不十分なものである。それ故、有利には、本発明によるグレーズ溶液またはグレーズ製品には余分のCa2+は添加されず、または添加されるCa2+の量は非常に少なく、これらの準至適pHおよび/またはブリックス条件ではゲルは硬化できない。
【0040】
本発明は、例えば、ペーストリー・グレーズ、有利には、50%未満のメトキシ化度を有する、より好適には、50%未満のメトキシ化度および30%までのしかし0%を含まない(すなわち、約0%から約30%の間で0%を含まない)アミド化度を有するCa2+反応性低メトキシ化−アミド化ペクチンを可溶化することにより得られる即時使用可能なペーストリー・グレーズに関し、ペーストリー・グレーズを形成するためには、
−有利には、塗布する前、(その最終的な形で)周囲温度においてその外観が液体または半液体であり、有利には、ゲル化しておらず、
−約30°〜約60°のブリックス、好適には約35°〜約55°のブリックスを有し、
−酸性pH、好適には4.5未満のpH、より好適には4未満のpHを有し、
−塗布する前のゼリー化に対して不十分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを含み、
余分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを供給する食品土台(food product support)に塗布したときだけにグレーズがゼリー化する。
【0041】
有利には、本発明によるグレーズは、周囲温度において性質/外観が液体または半液体であり、有利には、液体または半液体になるのに加熱を必要としない。有利には、本発明によるグレーズは、冷間ゲル化グレーズであり、これは、それが食品土台(food product support)に塗布されると周囲温度(35℃以下の温度)でゲル化することを意味する。有利には、硬いゲルを得るのに(予備)加熱ステップまたは冷却ステップを必要としない。
【0042】
有利には、本発明によるグレーズは、ゲル化していないチキソトロピック・グレーズである。
【0043】
有利には、本発明によるグレーズは、最高約50ppmまで、好適には約15ppm、より好適には約5〜約15ppmのレベルの天然の遊離Ca2+を含む。
【0044】
有利には、本発明によるグレーズ内に含まれるCa2+反応性ペクチンは、当該技術分野において周知の低メトキシ化高アミド化ペクチンである。
【0045】
有利には、本発明によるグレーズ内に含まれるCa2+反応性ペクチンは、約20〜約40%、好適には約25〜約37%のメトキシ化度、および約10〜約25%、好適には約14〜約22%のアミド化度を有する低メトキシ化高アミド化ペクチンである。
【0046】
本発明による好適な実施形態の場合には、本発明によるグレーズ内に含まれるCa2+反応性ペクチンは、約28%のメトキシ化度、および約22%のアミド化度を有する。
【0047】
本発明による他の好適な実施形態の場合には、本発明によるグレーズ内に含まれるCa2+反応性ペクチンは、約36%のメトキシ化度、および約14%のアミド化度を有する。
【0048】
本発明の他の好適な実施形態の場合には、本発明によるグレーズ内に含まれるCa2+反応性ペクチンは、約25%のメトキシ化度、および約21%のアミド化度を有する。
【0049】
本発明の他の好適な実施形態の場合には、本発明によるグレーズ内に含まれるCa2+反応性ペクチンは、約32%のメトキシ化度、および約18%のアミド化度を有する。
【0050】
本発明のさらに他の好適な実施形態の場合には、本発明によるグレーズ内に含まれるCa2+反応性ペクチンは、約37%のメトキシ化度、および約15%のアミド化度を有する。
【0051】
有利には、本発明によるグレーズにおいては、すでに定義したような低メトキシ化ペクチンは、すでに定義したような低メトキシ化−アミド化ペクチンと一緒に使用することができ、および/または好適には、すでに定義したような低メトキシ化−高アミド化ペクチンと一緒に使用することができる。
【0052】
有利には、本発明によるゲル化グレーズ、有利には、冷間ゲル化グレーズの硬さは、有利には、食品土台(food product support)と接触した後(その上に塗布した後)、少なくとも2倍になる。
【0053】
有利には、本発明によるグレーズは、食品土台(food product support)と接触した後(その上に塗布した後)、切断することができるゲルになる。有利には、食品に天然に含まれるCa2+イオン等(他のゲル化カチオン、上記参照)の量はゼリー化を誘起し、所望の最終製品を作るのに十分な量である。食品は、有利には、所望の結果を達成するために、Ca2+イオンと(予備)混合する必要がない。うまく切断することができる硬いゲルが形成されると、有利には、完全に切断することができ、グレーズが下方に垂れることなく(食品)製品を容易に分割することができる。
【0054】
有利には、ゲル化を誘起するのに必要な余分の量のCa+2イオン等を供給する食品は、ベーカリー・クリーム、ケーキ、パン、デニッシュ・ペーストリー、パフ・ペーストリーおよびフルーツおよび/またはこれらの任意の組合せからなるリストから選択したものである。フルーツは、例えば、アプリコット、パイナップル、ナシ、キーウィおよびオレンジからなるリストから選択したフルーツであってもよい。
【0055】
有利には、本発明によるグレーズを使用すれば、例えば、ブラシで食品に正確にグレーズすることができる。
【0056】
本発明によるグレーズは、さらに、他のゲル化剤および/または増粘剤を含むことができる。他のゲル化剤および/または増粘剤を本発明によるグレーズ製品に入れた場合には、これらのゲル化剤および増粘剤の量は、食品に塗布する前は、本発明によるグレーズのゲル化を誘起するには不十分な量である。
【0057】
他のまたはさらなるゲル化剤は、他のペクチン、ゲラン・ガム、カラギーナン、寒天およびアルギン酸塩からなるグループから選択したものであってもよい。
【0058】
増粘剤は、グァー・ガム、ローカスト・ビーン・ガム、キサンタン・ガム、加工セルロース、アラビアゴムからなるグループから選択したものであってもよい。
【0059】
低Ca2+反応性ペクチンを使用する場合には、CaCl2を、本発明による(初期の)ペーストリー・グレーズまたはグレーズ溶液に加えることができる(下記の例参照)。この場合、添加するCa+2イオンの量は、やはり、食品土台(food product support)に塗布する前はゲル形成を誘起するには不十分な量である。
【0060】
(上記どれかの)本発明によるグレーズは、食品にグレーズするのに非常に適している。
【0061】
これらのグレーズは、食品上で容易に切断することができるゲルを形成するのに非常に適していて、完全に切断することができ、グレーズが下方に垂れることなく食品を容易に分割することができる。ゲルは、食品土台(food product support)上に液体から半液体グレーズを塗布するだけで得られる。この場合、硬いゲルを得るために(事前の)加熱および/または冷却ステップを行う必要はない。有利には、ゲル形成は周囲温度で起きる。
【0062】
他の態様によれば、本発明は、(上記グレーズのうちの任意の)本発明によるグレーズでグレーズされた食品に関する。すでに説明したように、形成されたグレーズは、有利には、容易に切断することができ、有利には、切り口が完全であり、グレーズが下方に垂れることなく食品を容易に分割することができる。
【0063】
本発明によるグレーズは、任意の食品特に、ベーカリー・クリームで飾られているタルトまたはペーストリー、フルーツ・タルト、ケーキ、ヴィエノワズリ、デニッシュおよびババロアからなるグループから選択した食品にグレーズするのに非常に適している。
【0064】
本発明は、食品土台(food product support)のような土台(support)と接触したときにだけゲル化する液体または半液体ペーストリー・グレーズに関する。本発明は、ゲル化グレーズ、またはCa2+反応性ペクチン:低メトキシ化、好適には、低メトキシ化−アミド化ペクチン、より好適には低メトキシ化−高アミド化ペクチンおよび/またはこれらの任意の組合せ(定義については下記参照)を使用または可溶化することにより得られたまたは得ることができるグレーズ製品に関する。本発明によるグレーズ溶液の塗布条件(ブリックス、pHおよび/またはCa2+または追加した他のゲル化剤の量)は、塗布する前にはグレーズのゼリー化には不十分なものである。
【0065】
「半液体」という用語は、有利には、ブラシで、および/または冷間スプレーにより食品上に塗布することができる粘性液を意味する。
【0066】
それ故、有利には、余分なCa2+は、本発明によるグレーズ溶液またはグレーズ製品に添加されないか、または添加するCa2+の量は非常に少なく、これらの準至適pHおよび/またはブリックス条件でゲルの硬化は起こらない。
【0067】
驚いたことに、本発明者は、高品質の硬いゲル(下記参照)がそのようなものとして得られることが分かり、そのため、本発明によるグレーズのカルシウム感度は、ゼリー化を誘起するのに必要なCa+2イオン等の余分な量を(天然に)供給する食品土台(food product support)に接触したゲルが硬化するのに十分な程高い。硬いゲルを得るために、食品に余分な量のCa+2イオン等を含ませる必要はない。
【0068】
それ故、本発明は、ペーストリー・グレーズ、有利には、50%未満のメトキシ化度のCa2+反応性低メトキシ化ペクチン、より好適には、50%未満のメトキシ化度および30%までのしかし0%を含まない(すなわち、約0%から約30%の間で0%を含まない)アミド化度のCa2+反応性低メトキシ化−アミド化ペクチンを可溶化することにより得られる即時使用可能なペーストリー・グレーズに関し、ペーストリー・グレーズを形成するためには、
−有利には、塗布する前、(その最終的な形で)周囲温度においてその外観が液体または半液体であり、ゲル化しておらず、
−塗布する前にゼリー化に対して不十分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを含み、
余分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオン(K+、H+等)を供給する食品土台(food product support)に塗布したときだけにグレーズがゼリー化する。
【0069】
好適には、本発明のグレーズは、約30°〜約60°、より好適には約35°〜約55°のブリックス、および/または4.5未満、より好適には4未満の酸性pHを有することが好ましい。
【0070】
それ故、本発明は、特に、ペーストリー・グレーズ、有利には、50%未満のメトキシ化度のCa2+反応性低メトキシ化ペクチン、より好適には、50%未満のメトキシ化度および30%までのしかし0%を含まない(すなわち、約0から約30%の間で0%を含まない)アミド化度のCa2+反応性低メトキシ化−アミド化ペクチンを可溶化することにより得られる即時使用可能なペーストリー・グレーズに関し、ペーストリー・グレーズを形成するためには、
−有利には、塗布する前、(その最終的な形で)周囲温度においてその外観が液体または半液体であり、ゲル化しておらず、
−約30°〜約60°、好適には、約35°〜約55°のブリックスを有し、
−酸性pH、好適には、4.5未満のpH、より好適には4未満のpHを有し、
−塗布する前にゼリー化に対して不十分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを含み、
余分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオン(K+、H+等)を供給する食品土台(food product support)に塗布した場合だけにグレーズがゼリー化する。
【0071】
有利には、本発明によるグレーズは、周囲温度において性質/外観が液体または半液体である。有利には、本発明によるグレーズは、冷間ゲル化グレーズである。これは、それが、食品土台(food product support)に塗布されると、周囲温度、すなわち、35℃以下の温度、好適には約4℃〜約20℃、より好適には約15℃〜約25℃の温度でゲル化することを意味する。有利には、硬いゲルを得るのに(予備)加熱ステップまたは冷却ステップを必要としない。
【0072】
有利には、本発明によるグレーズは、ゲル化していないチキソトロピック・グレーズである。
【0073】
塗布する前、周囲温度において液体から半液体のテクスチャーを有する本発明によるグレーズは、ゼリー化のために必要な余分なCa2+イオン(または、他のイオン:K+、H+)を供給する食品土台(food product support)に塗布されたときに硬化する。この硬化は周囲温度で起こる。それ故、本発明によるグレーズは冷間ゲル化グレーズである。任意のタイプのペーストリーのような普通(regular)の食品内のCa+2イオンの量は、本発明によるグレーズのゼリー化を誘起するのに十分な量である。
【0074】
有利には、本発明によるグレーズは、例えば、水でさらに希釈する必要がなく、および/または当該技術分野において周知のある種のグレーズ製品が必要とするのとは異なり、周囲温度(35℃以下の温度)でゼリー化した構造体を含む製品を溶解するための加熱ステップを必要としない。
【0075】
使用する前の、すなわち食品または食品土台(food product support)に塗布する前の本発明によるグレーズは、有利には、周囲温度で「液体」または「半液体」のテクスチャーを有する。
【0076】
本発明によるグレーズは、フルーツ・フレーバーのようなフレーバーを含むことができる。しかし、フルーツ・ジュース、フルーツ・エキス、および/またはフルーツ片を添加することは推奨されず、そこから利用できるCa2+イオンが、グレーズ製品のゲル化が食品上に塗布する前に始まる程の量では全く駄目である。
【0077】
本発明によるグレーズは、その場でゲル化するグレーズまたはその場でゲル化する組成物の例である。
【0078】
本発明によるグレーズは、ずり流動化されてもよいが、有利には、当該技術分野において周知のある種のチキソトロピック・グレーズ製品とは異なり、塗布する前にずり流動化される必要がない。最終的には、せん断応力が本発明によるグレーズ組成物に加えられてもよく、それにより、せん断応力が加わる前に性質が液体から半液体であるグレーズ組成物は、上記せん断応力が加わる前よりももう少し液体または流動体になる。
【0079】
本発明による液体または半液体グレーズは、有利には、例えば、食品上にそれをブラシで、または冷間スプレーにより塗布することにより、食品に正確に容易に塗布することができる。
【0080】
好適には、本発明によるグレーズの成分は、約0〜50ppm(最高約50ppmまでの)、好適には、約15ppm、典型的には、約5〜約15ppmのレベルの天然の遊離Ca2+を有する。存在する/利用可能なカルシウム・イオンの量は、燐酸塩およびクエン酸塩のような錯化剤により制御することもできる。カルシウム反応性ペクチンがCa+2以外のイオンにも反応することは周知である。
【0081】
上記組合せにより、使用または塗布する前、および塗布しただけでグレーズのゼリー化の前の、グレーズの液体から半液体のテクスチャーを保持することができる。
【0082】
食品上に塗布すると、より多くのイオン(Ca2+、H+、K+等)がペクチンに使用可能になり(食品土台(food product support)とグレーズ間の移動により)、グレーズ製品がゼリー化することができる。それ故、ゼリー化のために必要なCa2+の余分な量は、食品土台(food product support)により供給される。食品土台(food product support)は、また、グレーズのゲル化を促進するpHおよび/または他の条件を変えることもできる。また、有利には、ゲル形成を誘起するために冷蔵または冷却ステップを必要としない。
【0083】
Ca2+反応性ペクチンの他に、他のゲル化剤および/または増粘剤を、本発明によるグレーズ溶液または組成物に加えることができる。そのようなゲル化剤としては、他のタイプのペクチン、カラギーナン、ゲラン・ガム、寒天、アルギン酸塩等があるがこれらに限定されない。これらのゲル化剤を添加した場合には、これらゲル化剤は、塗布または使用する前にグレーズのゼリー化を誘起するには不十分な量で添加される。適当な増粘剤としては、グァー・ガム、ローカスト・ビーン・ガム、キサンタン・ガム、加工セルロース、アラビアゴム等があるが、これらに限定されない。本発明によるグレーズ組成物は、さらに、フレーバーを含むことができる。
【0084】
本発明による好適な実施形態の場合には、本発明のグレーズ内に存在するCa2+反応性ペクチンは、低メトキシ化(L.M.)ペクチンおよび/または低メトキシ化−アミド化ペクチンである。好適には、低メトキシ化−アミド化ペクチンが使用される。このようなペクチンは、50%未満のメトキシ化度を有し、0%を含まない約0%から約30%、好適には0%を含まない約0%〜25%、より好適には約10%〜約25%のアミド化度を有する。後者は、低メトキシ化−アミド化ペクチン(D.M.50%未満、D.A.最高30%(0%を含まない))の例である。
【0085】
グレーズのカルシウム感度は、低メトキシ化ペクチン自身、非アミド化低メトキシ化ペクチンを使用して入手することができる。次に、好適には、メトキシ化度は、約15%以下、好適には約10%以下、より好適には約7%以下であり、または約5%以下でもよい。ペクチンのD.M.が低ければ低いほど、グレーズのCa2+反応性は高くなる。
【0086】
低メトキシ化−アミド化ペクチン、すなわち、50%未満のメトキシ化度、および約0%〜約30%(0%を含まない)、好適には約0%〜約25%(0%を含まない)、約5%〜約25%、より好適には約10%〜約25%のアミド化度のペクチンをグレーズに混合することにより本発明によるグレーズのカルシウム感度を誘起することが好ましい。低メトキシ化−アミド化ペクチンを含むグレーズにより得られるゲルの品質は、低メトキシ化ペクチンより得られるゲルの品質より優れている。これは、例えば、切断特性が優れている。低メトキシ化−アミド化ペクチンは、もっと容易に溶解、処理することができ、より優れた品質のグレーズ(例えば、より優れた粘性および優れたゲル化等)になる。
【0087】
約10%〜約50%、約15〜約45%、より好適には約20%〜約40%、最も好適には約24%〜約38%、約25%〜約37%のメトキシ化度、および約0%〜約30%(0%を含まない)のアミド化度の低メトキシ化−アミド化ペクチンが好ましい。
【0088】
当該技術分野において周知の低メトキシ化−高アミド化ペクチンが特に好ましい(工業ゴム(Industrial gums)第3版、ロイ・ホイッスラー(Roy Whistler)およびジェームス・ベミラー(James Bemiller)編、1993年、261ページ、268ページ、通常のアミド化度)。低メトキシ化−高アミド化ペクチンのメトキシ化度は、例えば、約20%〜約40%、最も好適には約24%〜約38%、約25%〜約37%であり、アミド化度は、約10%〜約25%、約11%〜約24%、より好適には約13%〜23%、最も好適には、約14%〜約22%である。
【0089】
ペクチンのD.M.が低ければ低いほど、および/またはD.A.が高ければ高いほど、このようなペクチンを含むグレーズのCa2+反応性は高くなる。以下に説明するように、本発明によるグレーズ内で低メトキシ化−高アミド化ペクチンを使用すると非常に有利である。好適には、低D.M.は、45%未満、44%、43%、42%、41%以下、より好適には40%、39%、38%未満、最も好適には37%または36%以下の低D.M.であり、高D.A.は、約10%を超え、好適には約11%、12%、13%を超え、より好適には約14%を超えるD.A.である。
【0090】
本発明によるグレーズで使用するには、D.M.が約25%〜約37%で、D.A.が約14%〜約22%のペクチンが特に好ましい。D.M.が約28%でD.A.が約22%のペクチン;D.M.が約36%でD.A.が約14%のペクチン;D.M.が約37%でD.A.が約15%のペクチン;D.M.が約32%でD.A.が約18%のペクチン;D.M.が約25%およびD.A.が約21%のペクチンが非常に有利である。
【0091】
塗布する前に、本発明によるグレーズは硬化したりゲル化したりしない。これは、土台(support)に接触した後にだけ、例えば、約5分から数時間(最高24時間)、典型的には30分から2時間の間にゲル化が起こる。その場でしかゲル化しないのは、土台(support)とグレーズとの間のイオン(Ca2+、Mg2+、H+、K+、Na+等)の移動、または蒸発によるイオンの濃縮による乾燥状態が原因だと考えられる。
【0092】
この反応を引き起こす、すなわち、必要なゲル化イオンを含む土台(support)または食品土台(food product support)は、タルトおよび他のタイプのペーストリーを飾るアプリコット、パイナップル、ナシ、キーウィ、オレンジ等のようなフルーツを含むことができる。ベーカリー・クリーム、およびペーストリーで使用する他のタイプの土台(support)も同じ効果をあげることができる。
【0093】
アプリコットのような適当な土台(support)とは対照的に、本発明による冷間ゲル化グレーズの固さ(グラムによる)は、土台(support)との最小接触時間、例えば、1時間または数時間(最高24時間)の後、少なくとも2、3、4、5、10または20倍になる。
【0094】
Ca2+反応性がより低いペクチンを使用した場合には、余分なCa2+の添加および/またはより高いブリックスおよび/またはより低いpHが非常にしばしば必要になる。例えば、類似の製品を得るために、最高約50ppmのCa2+を、好適にはCaCl2の形で、グレーズ組成物に添加しなければならない場合がある。本発明によるグレーズの最も重要な特性は、下地(substrate)または土台(support)に接触しない限り製品がゲル化しないことである。カルシウム以外のイオン(例えば、Na+、K+、Mg++およびH+)を使用することができる。
【0095】
有利には、ペクチンのD.M.が低ければ低いほど、および/またはD.A.が高ければ高いほど、Ca2+反応性が高くなる。L.M.ペクチンのD.M.が高ければ高いほど、および/またはL.M.−アミド化ペクチンのD.A.が低ければ低いほど、Ca2+反応性が低くなる。表3は、Ca2+反応性がより低いペクチンおよびCa+2反応性がより高いペクチンの一例を示す。例えば、28M−22Aペクチンを使用する場合には、グレーズに余分なCa+2を添加しなかったが、一方、36M−14Aペクチンを使用した場合には、Ca+2源を添加した。当業者であれば、望む結果を得るために、Ca+2のような余分なゲル化イオンをいつ添加したらよいのか、ブリックスをいつ増大したらよいのか、および/またはpHをいつ低くしたらよいのかを知っているだろう。本発明によるグレーズのメトキシ化度、アミド化度およびブリックスの関数としての低D.M.−高D.A.ペクチンをゼリー化するために必要な余分のCa+2の量のいくつかの例を以下に示す。
表2:システムのブリックスの関数としての低D.M.−高D.A.ペクチンをゼリー化するために必要な(ペクチン1g当たりのCa2+をmgで表した)余分なCa2+の量。余分なCa+2は、土台(support)からの移動により供給される。
【0096】
【表2】
【0097】
有利には、本発明によるグレーズは、フルーツ・タルトまたはpHの低い他のペーストリー製品のようなペーストリーにグレーズするのに非常に適している。
【0098】
グレーズが塗布される食品またはフルーツ製品土台(fruit product support)は、フルーツ・タルト、ババロア、ヴィエノワズリ、デニッシュ、ケーキでもよい。
【0099】
本発明によるグレーズが使用された食品またはペーストリー製品は、非常に切断特性がよく、切断したとき、および/または数時間から数日貯蔵したときでも、グレーズが下方に垂れ下がりにくく、湿ったり、および/または不安定になったりしない。
【0100】
有利には、本発明によるグレーズは、即時使用可能であり、容易にスプレーしたり、広げたり、塗布したりできるので、正確に作業をすることができ、望むなら、食品(例えば、フルーツ)の特定の一部だけをグレーズで覆うことができる。
【0101】
本発明は、さらに、上記グレーズの調製するための製造プロセスに関する。この製造プロセスは、少なくともCa2+反応性ペクチン、好適には低メトキシ化ペクチン、より好適には低メトキシ化−アミド化ペクチン、最も好適には低メトキシ化−高アミド化ペクチンであって、好適には約35°〜約55°のブリックス、および酸性pH、好適には4.5未満、より好適には4未満のpHを有する、(冷間の)その場でゲル化するグレーズを形成するために、製品と接触する前はそのゼリー化に不十分な条件(ブリックス、pH、添加するCa2+または他のゲル化イオンの量)で、上記のメトキシ化度およびアミド化度を有するものを、水中で可溶化するステップを含む。
【0102】
好適な製造プロセスは、下記のステップを含む。
−グルコース・シロップを砂糖および塩および水と混合する、
−砂糖を溶かすために、70〜90℃、70〜80℃、例えば、85℃にする、
−使用するCa+2反応性ペクチン(好適には、低メトキシ化−アミド化ペクチン、最も好適には低メトキシ化−高アミド化ペクチン、上記参照)を高せん断ミキサーにより分散させる、
−ペクチン溶液を砂糖溶液に添加し、均質になるまで混合する、
−約60℃に冷却し、容器に入れる。
【0103】
上記製造プロセスは、本発明によるグレーズの製造の一例にしか過ぎない。
【0104】
ここで添付の図面を参照しながら、下記の例および実施形態により本発明をさらに詳細に説明するが、この説明は特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0105】
本発明のグレーズの利点の1つは、容易に使用し塗布することができること、およびグレーズした食品の切断特性が非常に優れていることである。本発明によるグレーズで予見された(forseen)製品の切断特性が優れていることは、図1からはっきり分かる。図1Aは、そのようなグレーズが標準的なチキソトロピック・グレーズ(図1B)と比較して、全く下方に垂れないことをはっきり示し、完全にきれいに切れていることを示す。
【0106】
そのようなグレーズを使用したフルーツ・タルトは、優れたテクスチャーおよび外観を保ち、このグレーズは、下方に垂れることがなく、湿らず、および/または不安定にならない(図2A〜図2C)。
【0107】
グレーズの非常に優れた切断特性は、製品の上に塗布した後のそのテクスチャー(固さ)の変化によって説明することができる。テクスチャーの経時変化を調査するために、120gのグレーズをプラスチック・ビーカ内の約46〜約48gのアプリコットに注ぎ、次に、冷蔵庫内に入れた。初期(t=0)の固さを、25℃で測定し(図3A)、一方、それぞれ24時間および48時間後(t=24h、t=48h)の固さを10℃〜12℃で測定した(図3Cおよび図3E)。同量のグレーズを、アプリコットなしでビーカに注ぎ、カバーをかけて、冷蔵庫内に入れ、対照とした(図3Bおよび図3D)。
【0108】
上記測定はテクスチャー測定装置(ステイブル・マイクロシステムズ(Stable Microsystems)社のTAXT−2)を用いて、直径2.54cmのプローブ、5.0mmの圧縮目標、1.0gのトリガー、120mm/分の速度、20秒の保持時間、0秒の回復で行った。
【0109】
図3A〜図3EのY軸は、ゲルの固さの測定値としての貫通力(グラム単位の力)に対するゲルの抵抗を示す。ピークは、ここで最大抵抗を示し、5mmの圧縮での力を表す。t=0の時点において、11.8gの最大ピークが液体または半液体のペーストリー・グレーズで測定された。48時間経過後、28.4gの最大ピークが対照で記録され、一方アプリコット上にのせたゲルの場合には、48時間の接触時間の後で139.2gの最大ピークが記録された。それ故、アプリコットのような適当な土台(support)の上にのせたゲルの固さの増大は有意なものである。
【0110】
同じ条件下の標準チキソトロピック・ゲルの振舞いと比較した場合、ゲルのゲル化能力および固さの差は顕著なものであった。例えば、アプリコット上に塗布された標準チキソトロピック・グレーズの場合には、48時間後の最大ピークはたったの30gであった。
【0111】
本発明の冷間ゲル化グレーズは、t=0の時点ではゼリー化しないが、製品(この場合にはアプリコットである)と接触すると、テクスチャーが、すでに説明したように、硬いゲルへと変化する。これは、アプリコットまたは他の適当な土台(support)に接触しない限りは起こらない。この結果は、おそらく、土台(support)とグレーズとの間でのイオン(Ca2+、Mg2+、H+、K+、Na+等)の移動によるものと思われる。同じ効果をもたらすことができる他の土台(support)としては、パイナップル、ナシ、キーウィ、オレンジ等のようなフルーツがあるが、これらに限定されない。また、ベーカリー・クリーム、ケーキ、パン、デニッシュ・ペーストリー、パフ・ペーストリーおよび他のタイプの土台(support)も同じ効果をもたらすことができる。
【0112】
これとは対照的に、冷間チキソトロピック・グレーズは、最初からゼリー化したテクスチャーを示すが、これは、製品と接触した場合ですら、経時変化はほとんどない。ゲルのテクスチャーの固さは製品と接触した後若干低下する。
【0113】
実際には、土台(support)にもよるが、ゼリー化が1時間後に起きるように、遥かに薄い層のグレーズが食品の上に塗布されることに注意すべきである。
【0114】
下記(表3)は、本発明による冷間ゲル化グレーズを調製するためのいくつかの可能なレシピを示す。しかし、本発明の範囲は、これら特定のレシピに限定されない。表3は、さらに、いくつかのグレーズのテクスチャー(固さ)の経時変化の要約を示す。
【0115】
例
例1:レシピおよびテクスチャーの経時変化の例
製品(レシピ)1および2で測定した全Ca2+レベルは、約15ppm、例えば、約5〜約15ppmであった。このCa2+レベルは、当然レシピで使用した成分からのものである。レシピ3および4の場合には、カルシウムへの反応性がより低いペクチンを使用し、30ppmのCa2+をCaCl2の形で添加して、類似の製品を得た。
【0116】
例2:本発明による冷間ゲル化ペーストリー・グレーズの調製用のプロセス
本発明によるこれらグレーズを調製するためのプロセスは、下記のステップを含む。
−グルコース・シロップを砂糖、塩および水と混合する、
−砂糖を溶かすために、70〜90℃、70〜80℃、例えば、85℃に加熱する、
−使用するペクチンを高せん断ミキサーにより分散させる、
−ペクチン溶液を砂糖溶液に添加し、均質になるまで混合する、
−約60℃に冷却し、容器に入れる。
【0117】
表3の例から、下記の結論に達することができる。
【0118】
第一に、所望の特性を有する約35°〜最大約60°のブリックスを有する冷間ゲル化グレーズを得ることができる。このブリックス(約60°ブリックス)において、テクスチャーはほとんど変化せず、むしろ24時間後より48時間後の方が弱いが、これは、おそらくフルーツからグレーズへの非常に急速な水の移動によるものと思われる。
【0119】
第二に、この場合のアプリコットのような土台(support)とは対照的に、約35°〜約50°のブリックスを有する冷間ゲル化グレーズのテクスチャーは大きくなり、好適には5倍になる。これとは対照的に、チキソトロピック・グレーズの固さは、アプリコットの存在にほとんど影響されず、この場合には、少し低くさえなった。(図4参照)。
【0120】
第三に、塗布する前は完全な液体である約35°のブリックスを有する冷間ゲル化グレーズが得られる。
【0121】
第四に、異なるエステル化度およびアミド化度を有するペクチンを使用することができる。Ca2+への反応性がより低いペクチンを使用する場合には、添加したCa2+および/またはより高いブリックスおよび/または、より低いpHが必要になる。当業者であれば、土台(support)と接触させずにゲルの固さが増大しないようにこれらパラメータを適応させることができる。
【0122】
最後に、上記ペクチンを他のハイドロコロイドと組み合わせることができる。
【0123】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1A】図1Aは、本発明による低温ゲル化グレーズで24時間前に予見された(forseen)アプリコット・タルトの優れた切断特性を示す(図1B)。
【図1B】図1Bは、市場にでている冷間チキソトロピック・グレーズを使用したアプリコット・タルトの切断特性を示す。
【図2A】図2Aは、完全な切断および優れた一般的テクスチャーを示す、本発明による冷間ゲル化グレーズで予見された(forseen)混合フルーツ・タルトの完全な切断を示すタルトの断面である。
【図2B】図2Bは、完全な切断および優れた一般的テクスチャーを示す、本発明による冷間ゲル化グレーズで予見された(forseen)混合フルーツ・タルトの詳細な頂面図である。
【図2C】図2Cは、完全な切断および優れた一般的テクスチャーを示す、本発明による冷間ゲル化グレーズで予見された(forseen)混合フルーツ・タルトの詳細な側面図である。
【図3A】図3Aは、冷間ゲル化グレーズの0時間の最大ピーク:11.8のテクスチャー(固さ)の経時変化を示す。
【図3B】図3Bは、冷間ゲル化グレーズの24時間の最大ピーク:19.4のテクスチャー(固さ)の経時変化を示す。
【図3C】図3Cは、アプリコット上の冷間ゲル化グレーズの24時間の最大ピーク:118.4のテクスチャー(固さ)の経時変化を示す。
【図3D】図3Dは、冷間ゲル化グレーズの48時間の最大ピーク:28.4のテクスチャー(固さ)の経時変化を示す。
【図3E】図3Eは、アプリコット上の冷間ゲル化グレーズの48時間の最大ピーク:139.2のテクスチャー(固さ)の経時変化を示す。
【図4】図4は、アプリコットに接触したときの冷間ゲル化グレーズおよび標準的なチキソトロピック・グレーズの固さ(グラム単位の)の経時変化を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーストリー・グレーズ、有利には、即時使用可能なペーストリー・グレーズであり、ペーストリー・グレーズを形成するために、50%未満のメトキシ化度および30%までのしかし0%を含まないアミド化度を有するCa2+反応性低メトキシ化−アミド化ペクチンを可溶化することにより得られ、
−塗布する前は、外観が液体または半液体であり、
−塗布する前、ゼリー化に対して不十分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを含み、
余分なCa2+イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを供給する食品土台に塗布したときにだけ前記グレーズがゼリー化する前記グレーズ。
【請求項2】
ペーストリー・グレーズ、有利には、即時使用可能なペーストリー・グレーズであり、ペーストリー・グレーズを形成するために、50%未満のメトキシ化度および30%までのしかし0%を含まないアミド化度を有するCa2+反応性低メトキシ化−アミド化ペクチンを可溶化することにより得られ、
−塗布する前は、外観が液体または半液体であり、
−約30°〜約60°、好適には約35°〜約55°のブリックスを有し、
−酸性pH、好適には、4.5未満のpH、より好適には4未満のpHを有し、
−塗布する前、ゼリー化に対して不十分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを含み、
余分なCa2+イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを供給する食品土台に塗布したときにだけ前記グレーズがゼリー化する前記グレーズ。
【請求項3】
周囲温度において、外観が液体または半液体である請求項1または2に記載のグレーズ。
【請求項4】
食品土台上に塗布すると、周囲温度においてゲル化する前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項5】
ゲル化していないチキソトロピック・グレーズである前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項6】
最高約50ppm、好適には約15ppmのレベルの遊離天然Ca2+を含む前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項7】
前記Ca2+反応性ペクチンが、低メトキシ化−高アミド化ペクチンである前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項8】
前記Ca2+反応性ペクチンが、約20〜約40%、好適には約25〜約37%のメトキシ化度、および約10〜約25%、好適には約14〜約22%のアミド化度を有する低メトキシ化−高アミド化ペクチンである前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項9】
前記Ca2+反応性ペクチンが、約28%のメトキシ化度および約22%のアミド化度を有する前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項10】
前記Ca2+反応性ペクチンが、約36%のメトキシ化度および約14%のアミド化度を有する前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項11】
前記Ca2+反応性ペクチンが、約25%のメトキシ化度および約21%のアミド化度を有する前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項12】
前記Ca2+反応性ペクチンが、約18%のアミド化度を有する前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項13】
前記Ca2+反応性ペクチンが、約37%のメトキシ化度および約15%のアミド化度を有する前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項14】
前記ゲル化グレーズの固さが、前記食品土台に接触した後、少なくとも2倍になる前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項15】
食品土台と接触した後、切断することができるゲルになる前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項16】
前記土台が、ベーカリー・クリーム、ケーキ、パン、デニッシュ・ペーストリー、パフ・ペーストリーおよびフルーツおよび/またはこれらの任意の組合せからなるリストから選択される前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項17】
前記フルーツが、アプリコット、パイナップル、ナシ、キーウィおよびオレンジからなるリストから選択される請求項16に記載のグレーズ。
【請求項18】
前記グレーズが、例えば、ブラシにより正確に食品にグレーズすることを可能にする前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項19】
さらに他のゲル化剤および/または増粘剤を含む前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項20】
前記他のゲル化剤が、他のペクチン、ゲラン・ガム、カラギーナン、寒天およびアルギン酸塩からなるグループから選択される請求項19に記載のグレーズ。
【請求項21】
前記増粘剤が、グァー・ガム、ローカスト・ビーン・ガム、キサンタン・ガム、加工セルロース、アラビアゴムからなるグループから選択される請求項19に記載のグレーズ。
【請求項22】
Ca2+反応性の低いペクチンを使用した場合に、CaCl2が前記ペーストリー・グレーズに添加される前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項23】
食品にグレーズするための前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズの使用。
【請求項24】
切断することができるゲルを前記食品上に形成するために、有利には、完全な切り口で、前記グレーズが下方に垂れることなく前記食品を容易に分割することを可能にする請求項23に記載の使用。
【請求項25】
請求項1〜22のいずれか1項に記載のグレーズでグレーズされた食品。
【請求項26】
その上に形成された前記グレーズが、容易に切断することができ、有利には、完全な切り口を有し、前記グレーズが下方に垂れることなく前記食品を容易に分割することができる請求項25に記載の食品。
【請求項27】
ベーカリー・クリームで飾られたタルトまたはペーストリー、フルーツ・タルト、ケーキ、ヴィエノワズリ、デニッシュおよびババロアからなるグループから選択された請求項26に記載の食品。
【請求項1】
ペーストリー・グレーズ、有利には、即時使用可能なペーストリー・グレーズであり、ペーストリー・グレーズを形成するために、50%未満のメトキシ化度および30%までのしかし0%を含まないアミド化度を有するCa2+反応性低メトキシ化−アミド化ペクチンを可溶化することにより得られ、
−塗布する前は、外観が液体または半液体であり、
−塗布する前、ゼリー化に対して不十分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを含み、
余分なCa2+イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを供給する食品土台に塗布したときにだけ前記グレーズがゼリー化する前記グレーズ。
【請求項2】
ペーストリー・グレーズ、有利には、即時使用可能なペーストリー・グレーズであり、ペーストリー・グレーズを形成するために、50%未満のメトキシ化度および30%までのしかし0%を含まないアミド化度を有するCa2+反応性低メトキシ化−アミド化ペクチンを可溶化することにより得られ、
−塗布する前は、外観が液体または半液体であり、
−約30°〜約60°、好適には約35°〜約55°のブリックスを有し、
−酸性pH、好適には、4.5未満のpH、より好適には4未満のpHを有し、
−塗布する前、ゼリー化に対して不十分な量のCa+2イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを含み、
余分なCa2+イオンおよび/またはゼリー化のために必要な他のイオンを供給する食品土台に塗布したときにだけ前記グレーズがゼリー化する前記グレーズ。
【請求項3】
周囲温度において、外観が液体または半液体である請求項1または2に記載のグレーズ。
【請求項4】
食品土台上に塗布すると、周囲温度においてゲル化する前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項5】
ゲル化していないチキソトロピック・グレーズである前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項6】
最高約50ppm、好適には約15ppmのレベルの遊離天然Ca2+を含む前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項7】
前記Ca2+反応性ペクチンが、低メトキシ化−高アミド化ペクチンである前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項8】
前記Ca2+反応性ペクチンが、約20〜約40%、好適には約25〜約37%のメトキシ化度、および約10〜約25%、好適には約14〜約22%のアミド化度を有する低メトキシ化−高アミド化ペクチンである前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項9】
前記Ca2+反応性ペクチンが、約28%のメトキシ化度および約22%のアミド化度を有する前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項10】
前記Ca2+反応性ペクチンが、約36%のメトキシ化度および約14%のアミド化度を有する前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項11】
前記Ca2+反応性ペクチンが、約25%のメトキシ化度および約21%のアミド化度を有する前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項12】
前記Ca2+反応性ペクチンが、約18%のアミド化度を有する前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項13】
前記Ca2+反応性ペクチンが、約37%のメトキシ化度および約15%のアミド化度を有する前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項14】
前記ゲル化グレーズの固さが、前記食品土台に接触した後、少なくとも2倍になる前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項15】
食品土台と接触した後、切断することができるゲルになる前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項16】
前記土台が、ベーカリー・クリーム、ケーキ、パン、デニッシュ・ペーストリー、パフ・ペーストリーおよびフルーツおよび/またはこれらの任意の組合せからなるリストから選択される前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項17】
前記フルーツが、アプリコット、パイナップル、ナシ、キーウィおよびオレンジからなるリストから選択される請求項16に記載のグレーズ。
【請求項18】
前記グレーズが、例えば、ブラシにより正確に食品にグレーズすることを可能にする前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項19】
さらに他のゲル化剤および/または増粘剤を含む前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項20】
前記他のゲル化剤が、他のペクチン、ゲラン・ガム、カラギーナン、寒天およびアルギン酸塩からなるグループから選択される請求項19に記載のグレーズ。
【請求項21】
前記増粘剤が、グァー・ガム、ローカスト・ビーン・ガム、キサンタン・ガム、加工セルロース、アラビアゴムからなるグループから選択される請求項19に記載のグレーズ。
【請求項22】
Ca2+反応性の低いペクチンを使用した場合に、CaCl2が前記ペーストリー・グレーズに添加される前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズ。
【請求項23】
食品にグレーズするための前記請求項のいずれか1項に記載のグレーズの使用。
【請求項24】
切断することができるゲルを前記食品上に形成するために、有利には、完全な切り口で、前記グレーズが下方に垂れることなく前記食品を容易に分割することを可能にする請求項23に記載の使用。
【請求項25】
請求項1〜22のいずれか1項に記載のグレーズでグレーズされた食品。
【請求項26】
その上に形成された前記グレーズが、容易に切断することができ、有利には、完全な切り口を有し、前記グレーズが下方に垂れることなく前記食品を容易に分割することができる請求項25に記載の食品。
【請求項27】
ベーカリー・クリームで飾られたタルトまたはペーストリー、フルーツ・タルト、ケーキ、ヴィエノワズリ、デニッシュおよびババロアからなるグループから選択された請求項26に記載の食品。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【公表番号】特表2007−521821(P2007−521821A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552427(P2006−552427)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【国際出願番号】PCT/BE2005/000019
【国際公開番号】WO2005/077195
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(505090469)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【国際出願番号】PCT/BE2005/000019
【国際公開番号】WO2005/077195
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(505090469)
【Fターム(参考)】
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