説明

冷間タンデム圧延機

【課題】この発明は4基以上の圧延スタンドからなり、金属ストリップを高張力圧延する冷間タンデム圧延機及び圧延方法において、板破断を防止する。
【解決手段】4基以上の圧延スタンドからなり、少なくとも1スタンド以上の圧延スタンドで金属ストリップを該金属ストリップの耐力の30%以上の入側およびまたは出側張力を負荷して高張力圧延する冷間タンデム圧延機において、該高張力圧延を行う圧延スタンドのワークロール径を300mm以下150mm以上とし、かつ、該ワークロールの垂直方向の撓みを制御するためのベンダー装置を具備する。目標の板端部の張力をベンダーで制御して得るためには、張力を形状検出器から測定しても、諸圧延因子から推定しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は4基以上の圧延スタンドからなる冷間タンデム圧延機またはこれを用いた圧延方法において、板破断を防止することができる冷間タンデム圧延機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に普通鋼やハイテンと呼ばれる高張力鋼板等の金属ストリップは、ワークロール径が400mm以上の圧延スタンドからなる冷間タンデム圧延機で大量に製造されている(例えば、非特許文献1参照)。この冷間タンデム圧延機における生産性を向上させるために、高張力圧延が注目されている。
【0003】
高張力圧延が行われると、より高速で圧延しても焼き付きを防止することができたり、より高圧下で圧延しても焼き付きを防止することができたり、圧延荷重が減少するのでエッジドロップが減少したり、ワークロールの寿命が延びる等の利点がある反面、金属ストリップに作用する張力が高くなるので板破断が生じやすくなるという欠点がある。
【0004】
この板破断を防止する従来の方法として、板破断が発生しやすい圧延スタンド直前に圧延鋼板の板側端部の増肉を行うための板厚制御端を持つ増肉圧延スタンドを配置する方法(例えば、特許文献1参照)やワークロールに逆テーパを設けて圧延する方法(例えば、特許文献2参照)や金属ストリップの板端部に過潤滑を行う方法(例えば、特許文献3参照)がある。
【0005】
しかしながら、増肉を行うための板厚制御端を持つ増肉圧延スタンドを配置する方法は板厚が厚い金属ストリップには有効であるものの板厚が薄い金属ストリップでは座屈が生じたり、増肉量が不足して圧延時の板端部の張力を十分に下げることができない場合があり、ワークロールに逆テーパを設けて圧延する方法では板幅に対応するためにワークロールをシフトするための高価な装置が必要である上に硬質材の金属ストリップの場合には逆テーパ部のワークロールと中間ロール間のヘルツ応力が高くなりすぎる場合があり、さらに、金属ストリップの板端部に過潤滑を行う方法は圧延後の金属ストリップの表面に光沢ムラが生じたりする場合があり、いずれの方法にもまだ改善の余地がある。
【特許文献1】特開平9-248610号公報
【特許文献2】特開平11-123431号公報
【特許文献3】特開2000-167609号公報
【非特許文献1】日本鉄鋼協会共同研究会鋼板部会コールドストリップ分科会/編 改訂 わが国におけるコールドストリップ設備仕様と工場レイアウト
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は4基以上の圧延スタンドからなる冷間タンデム圧延機において、少なくとも1スタンド以上の圧延スタンドで金属ストリップを該金属ストリップの耐力の30%以上の入側およびまたは出側張力を負荷して高張力圧延する際の板破断を防止し、高速でかつ大量に鋼板を製造する圧延機を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の冷間タンデム圧延機は、4基以上の圧延スタンドからなり、少なくとも1スタンド以上の圧延スタンドで金属ストリップを該金属ストリップの耐力の30%以上の入側およびまたは出側張力を負荷して高張力圧延する能力を有し、該高張力圧延を行う圧延スタンドのワークロール径を300mm以下150mm以上とし、かつ、該ワークロールの垂直方向の撓みを制御するためのワークロールベンダー装置を具備したことを特徴としている。
【0008】
また、この発明の冷間タンデム圧延機は、上記冷間タンデム圧延機において高張力圧延する圧延スタンドにてワークロールベンダー力を検出する装置を設けるとともに、該圧延スタンド出側に圧延後の板形状を検出する形状検出器を設け圧延時の板端部の張力を検出し、検出された板端部の張力値と目標とする板端部の張力値との偏差に基づき、該ワークロールベンダー力を制御すること、
また、高張力圧延する圧延スタンドが4重圧延機である場合、ワークロールベンダー力及び圧延荷重、または、これら並びにワークロールシフト量を検出する装置を設け、これらの圧延因子により、圧延時の板端部の張力を推定し、推定された板端部の張力値と目標とする板端部の張力値との偏差に基づき前記ワークロールベンダー力を制御すること、
また、高張力圧延する圧延スタンドが6重圧延機である場合、ワークロールベンダー力、圧延荷重、中間ロールベンダー力及び中間ロールシフト量、または、これら並びにワークロールシフト量を検出する装置を設け、これらの圧延因子により圧延時の板端部の張力を推定し、推定された板端部の張力値と目標とする板端部の張力値との偏差に基づき前記ワークロールベンダー力を制御すること、を特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明の冷間タンデム圧延機では、高張力圧延時に金属ストリップの板端部に作用する張力を比較的安価な設備投資で制御することが可能である。これにより、板破断を防止することが可能となり、生産性を阻害することなく、安定した金属ストリップを大量に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
一般に冷間タンデム圧延機の板形状は、圧延機に具備されたワークロールベンダーや中間ロールベンダー、中間ロールシフト、または、特殊なカーブが付与されたワークロールのワークロールシフトによって制御されている。しかしながら、一般に冷間タンデム圧延機のワークロール径(上下非対称の場合は等価ワークロール径)は300mmよりも大きい。この理由は、ワークロール冷却とワークロール寿命に起因するものと考えられる。
【0011】
このような大径のワークロールの撓みは従来から言われているように、4次式で近似されるパターンでしか変形しないため、圧延される金属ストリップの板端部のみの張力を制御することは原理的に不可能である。従って、上述した形状制御端は圧延される金属ストリップ全体の張力分布(板形状)を制御するのに用いられる。
なお、ワークロール径が300mmより小であるものとしてはクラスター型のゼンジミア圧延機が周知であるが、これは大量生産には不向きである。
【0012】
本発明の対象である高張力圧延時に圧延される金属ストリップの板端部の張力を制御するために上述した従来の形状制御端、例えばワークロールベンダー、を用いて板端部の張力値が通常圧延と同程度になるように形状制御をすると金属ストリップの板形状は大きな端伸びとなってしまう。急峻度レベルで言うと2%を軽く越えてしまう。通常、冷間タンデム圧延機における安定した圧延を達成するために許容される板形状は急峻度で2%程度まであると経験的に知られており、それ以上の急峻になると圧延時に金属ストリップが絞られて、ワークロールに絞りマークがついてそのマークが金属ストリップ表面に転写されたり、ひどい場合には板破断が生じる。また、全体的に大きな端伸びが生じた金属ストリップは冷間タンデム圧延後の次工程である連続焼鈍設備での通板性に悪影響を及ぼし、生産性を下げるという問題も新たに引き起こす。
【0013】
本発明では上記の問題を解決するために、ワークロール径に着目し、図1に示す圧延機を用いて基礎実験を行った。図1において、圧延機は、1基の圧延スタンド11から構成されており、この例では4重圧延機である。圧延機はワークロール16〜17およびバックアップロール21〜22から構成されている。バックアップ21〜22にはスピンドル(図示しない)が連結されており、電動機(図示しない)によって駆動されている。この圧延機ではロールチョックおよびワークロールを交換することによってワークロール径を変化させることが可能である。
【0014】
形状制御手段として上下ワークロールチョック(図示しない)を支点として上下ワークロール16〜17の垂直方向の撓みを制御するためのインクリースおよびディクリースベンダー力を付与することが可能なワークロールベンダー51が具備されている。
【0015】
上バックアップロールチョック(図示しない)の上部には、圧延荷重検出装置36が配置され、ワークサイドおよびドライブサイドの荷重が検出される。また、圧延荷重検出装置の上部には電動圧下装置37が配置されており、金属ストリップSを圧延する際のパスライン調整が行われる。さらに、下バックアップロールチョック(図示しない)の下部には、圧延力を付与するための油圧圧下装置31が配置されている。
【0016】
圧延機11の入側にペイオフリール61が圧延機11の出側にテンションリール62が配備されている。図示はしていないが、これらのリールは、電動機(図示しない)によって駆動され、圧延機入り側および出側の張力を目標値に制御している。また、圧延機11の入側に入側ブライドルロール41が、圧延機11の出側には出側ブライドルロール兼形状検出器42が配置されており、金属ストリップに作用する張力と圧延機出側の張力分布(形状)を測定している。圧延機11と入側には圧延潤滑油供給装置45〜46がそれぞれ配置され、圧延潤滑油(エマルション潤滑油:温度60℃)が供給されている。
【0017】
ワークロール径は、50mm、100mm、150mm、200mm、250mm、300mm、350mm、400mm、450mmの9水準に換えることが可能である。胴調は1500mmである。バックアップロールロール径は1450mmで胴長は1500mmである。この圧延機の圧延速度は最高速度で2000m/minである。
【0018】
まず、従来技術の圧延条件として金属ストリップとして普通鋼(板厚1mm、板幅1000mm、ノートリム材)を用い、張力(入側100MPa、出側100MPa)で、形状目標値(単純端伸びで端伸びの急峻度1%)でベンダーにより形状制御しながら、圧下率30%で、圧延速度を100〜2000m/minまでワークロール径450mmの条件で圧延した。この結果、圧延機出側の板端部の張力は50〜70MPaであり、板破断および絞りの発生はなかった。
この結果の通り、従来技術でも高張力ではないので問題なく圧延できたが、高張力圧延に比べて生産性は上がらなかった。
本発明の対象である高張力圧延条件(入側200MPa、出側250MPa)で、他の圧延条件は前記従来技術の圧延条件と同一で形状目標値(単純端伸びで端伸びの急峻度1%)でベンダーにより形状制御しながら圧延した結果、絞りは発生しなかったが、板破断が発生した。そこで、他の圧延条件は同一で圧延機出側の板端部の張力は40MPaになるようにベンダーにより形状制御しながら圧延した結果、板破断は生じなかったが大きな端伸び形状となり絞りが生じた。
【0019】
本発明の対象である高張力圧延条件(入側200MPa、出側250MPa)でワークロール径を250mmとし、圧延条件は上記と同一で形状目標値(単純端伸びで端伸びの急峻度1%)でベンダーにより形状制御しながら圧延した結果、板破断も絞りも生じなかった。
【0020】
このように本発明ではワークロール径を小さくすることによって形状制御端であるワークロールベンダーによりワークロール撓みを変えると、ワークロールが小径であるために垂直方向の撓みは従来の4次式からより高度な次数での変形パターンへ移行する。すなわち、大径ではベンダーを作用するとワークロール全体が変形するのに対し、小径ではベンダーを作用するとワークロールが局部的(特に板端部近傍が大きい)に変形する。このため、小径ワークロールでは金属ストリップの板端部だけ集中的に張力制御(形状制御)することができるため、板破断を防止できるのである。
【0021】
上述したように、高張力圧延における板破断防止として本発明の小径ワークロールが有効であるものの、逆にワークロール径が小さすぎると以下の問題を誘発することとなる。
1) ワークロール径が小さくなると圧延方向(水平方向)のロール撓みが大きくなり全体的に大きな端伸び気味となる。これを防ぐために圧延方向(水平方向)の撓みを制御する手段(例えばクラスタータイプすることやサポートロールをつける等)が必要となる。
2) ワークロール径が小さくなると冷却効果が小さくなるのでワークロールの温度が上昇する。このために焼き付きが発生しやすくなる。
【0022】
このような問題を明らかにするためワークロール径を換えて実験を行った。この実験は圧延速度が100m/minで、本発明の対象である高張力圧延条件(入側200MPa、出側250MPa)で圧延機出側の板端部の張力は40MPaになるようにして他の圧延条件は前記従来技術の圧延条件と同一で行ったものである。ただし、板端部の張力は、形状検出器の板端部の張力検出値(σexp)と目標とする板端部の張力値(σaim)との偏差(Δσ=σexp−σaim)を基にフィードバックによるベンダーでの形状制御(板幅方向張力制御)を行ったものである。図2は、このようにして100回圧延実験を行った場合の、板破断と絞りの発生率に及ぼすワークロール径の影響を示す。
この結果、板端部の張力(形状)制御が行われているために板破断率はワークロール径に関係なくさほど大きくないが、絞りはワークロール径が300mmを超すと、また、150mm未満になると発生した。なお、板破断の発生率が生じるのは、素材がノートリム材であるため、板端部のクラック状況が均一ではないためである。
【0023】
上記張力偏差△σを解消して目標とする板端部の張力を得るワークロールベンダー力の修正量(△Fwr)を求める方法としては、予め回帰式を求めておき、諸圧延因子をこれに代入して張力を推定する方法がある。例えば 4重圧延機の場合には板幅、板厚、板クラウン、圧下率、張力、ワークロールベンダー力、圧延荷重、ワークロールクラウン・寸法及びバックアップロールクラウン・寸法、またはこれら並びにワークロールシフト量を用い、板端部の張力に及ぼす上記圧延因子の影響を考慮した回帰式を作成する。必要に応じてテーブル化し、まとめても良い。
上記圧延因子は予めインプット可能かもしくは圧延時に検出可能であり、それを用いることによって板端部の張力に及ぼすワークロールベンダー力の影響係数を把握することが可能である。
【0024】
また、例えば予め実験を行い6重圧延機の場合には板幅、板厚、板クラウン、圧下率、張力、ワークロールベンダー力、圧延荷重、ワークロールクラウン・寸法、中間ロールベンダー力、中間ロールシフト量、中間ロールクラウン・寸法及びバックアップロールクラウン・寸法、またはこれら並びにワークロールシフト量を用い、板端部の張力に及ぼす上記圧延因子の影響を考慮した回帰式を作成する。必要に応じてテーブル化し、まとめても良い。
上記圧延因子は予めインプット可能かもしくは圧延時に検出可能であり、それを用いることによって板端部の張力に及ぼすワークロールベンダー力の影響係数を把握することが可能である。
なお、ワークロールシフト量は、4重圧延機及び6重圧延機ともに、エッジドロップ対策及び/またはスケジュールフリー対策の必要に応じて圧延因子として採り上げる。ワークロールシフト量を圧延因子として採り上げると回帰式やテーブルの精度が向上する反面複雑になる。
この影響係数が分かると、上記張力偏差△σを解消して目標とする板端部の張力を得るワークロールベンダー力の修正量(△Fwr)は簡単に求められる。
【0025】
図3は圧下率30%で、圧延速度を100m/minから2000m/minまで圧延速度を変え、本発明の対象である高張力圧延条件(入側200MPa、出側250MPa)で他の圧延条件は同一として圧延機出側の板端部の張力が60MPaになるように形状検出器の出力を基にフィードバックによるベンダーでの形状制御を行いながら圧延した際の、焼き付きに及ぼすワークロール径の影響を示す。潤滑油の濃度は故意に焼き付きを発生させるために、ワークロール径450mmでかつ圧延速度1800m/minの場合に焼き付きが発生する低濃度圧延を行い、圧延潤滑油の供給量は圧延速度1000m/minで各ワークロール径でのワークロール表面温度の低下が飽和する量で行った。従って、小径ワークロールの方がエマルション供給量は多くなっている。
ワークロール径が小さくなると、冷却効率が落ちるのとロールバイトに導入される油膜が薄くなるので焼き付きが生じやすくなるものの、小径効果による圧延荷重低減、接触長低減により発熱量が減少するので焼き付きは発生しにくくなる。これらの相乗効果で焼き付き発生速度は決定されるが、焼き付きが発生する圧延速度はワークロール径が150mm未満になると急激に低下した。
【0026】
以上の知見を基に、本発明のワークロール径の上限は絞りの観点からワークロール径が300mm、本発明のワークロール径の下限は焼き付きの観点からワークロール径が150mmとした。
【0027】
上述した張力(形状)制御は圧延機出側の形状検出器の出力を基にフィードバックで行われたが、形状検出器は高価なため必ずしも圧延機出側に設置されているわけでもなく、また、ロールバイトから形状検出器までの移送時間があるために無駄時間が生じてしまう。従って、高応答な張力(形状)制御を行うためには、圧延機直下の板端部の張力(板形状)を推定して制御することが好ましい。このためには、高張力圧延する圧延スタンドの圧延時の圧延荷重、ベンダー力を検出し、予め入力した該金属ストリップの板幅、板クラウン、ロール径、ロールクラウン、ロール寸法等の該金属ストリップおよび圧延スタンド情報を元に圧延時の該金属ストリップの板端部の張力を推定し、該推定値が予め設定された目標範囲内に収まるように、該ベンダー力を制御すれば良い。具体的な方法としては、予め実験を行い回帰式を作る方法や、より理論的な方法(例えば、メカニカル板クラウンを用いる方法)がある。
【実施例】
【0028】
図4は、この発明を実施する冷間タンデム圧延機の一例を示す構成図である。冷間タンデム圧延機は、5基の圧延スタンドから構成されており、この例ではすべて同じ型式の6重圧延機である。各圧延機はワークロール1a〜5a、1b〜5bおよび中間ロール1c〜5c、1d〜5dおよびバックアップロール1e〜5e、1f〜5fから構成されている。中間ワークロール1c〜5c、1d〜5dにはスピンドル(図示しない)が連結されており、電動機(図示しない)によって駆動されている。図示していないが、この冷間タンデム圧延機の上流にはコイル接合装置があり、酸洗後の耳付きコイル(ノートリム材)が接合され連続的に冷間タンデム圧延機に供給される。また、図示していないがこの冷間タンデム圧延機の出側にはカローゼルリールがあり、連続的に圧延された金属ストリップが巻き取られる。
【0029】
この冷間タンデム圧延機では、中間スタンド(第2〜第4スタンド)で高張力圧延が行われる。第1スタンド入側張力および第5スタンド出側張力は従来の冷間タンデム圧延と同様に低い。高張力圧延が行われる中間スタンド(第2〜第4スタンド)のワークロール径は150〜300mmのものが状況に応じて使用できる。中間ロール径は480〜500mm、バックアップロール径は1420〜1480mmで、胴長は2000mmである。
形状制御手段として上下ワークロールチョック(図示しない)を支点としてワークロール1a〜5a、1b〜5bの垂直方向の撓みを制御するためのインクリースおよびディクリースベンダー力を付与することが可能なワークロールベンダー(図示しない)が具備されている。
【0030】
上バックアップロールチョック(図示しない)の上部には、圧延荷重検出装置が配置され、ワークサイドおよびドライブサイドの荷重が検出される。また、圧延荷重検出装置の上部には電動圧下装置(図示しない)が配置されており、金属ストリップSを圧延する際のパスライン調整が行われる。さらに、下バックアップロールチョック(図示しない)の下部には、圧延力を付与するための油圧圧下装置(図示しない)が配置されている。
【0031】
各圧延スタンドの入側に圧延潤滑油供給装置(図示しない)が、また出側にはロール冷却装置(図示しない)がそれぞれ配置されている。最終圧延スタンド(第5スタンド)を除く各圧延スタンドの出側にはストリップ用洗浄兼潤滑油供給スプレー(図示しない)が配置されており、入側と同じエマルションが供給されている。
【0032】
第5圧延スタンドの出側に板厚検出装置(図示しない)と板形状検出装置(図示しない)が配置されている。金属ストリップは、低炭素鋼で板幅1200mm、板厚3.5mm、コイル短重20tonであり、冷間タンデム圧延機出側で板厚0.806mmまで圧延している。
【0033】
冷間タンデム圧延機の中間スタンド(第2〜第4スタンド)では、予め実験によって板端の張力推定回帰式が作られている。今回は板幅、鋼種、板厚毎の圧延スケジュールに応じて、ロールクラウン(C)、荷重(P)、ベンダー力(F)、中間ロールシフト量(S)から板端部の張力を求める回帰式を用いた。
この回帰式を用いて、ロールクラウン値を入力し、圧延時の荷重、中間ロールシフト量、ベンダー力を検出し、全体の形状は中間ロールシフト量で、板端部の張力はベンダー力で目標値になるように制御した。
【0034】
従来技術として、比較例として第2〜第4スタンドのワークロール径を大径にした場合の併せて行った。表1に圧延条件を示す。
【表1】

【0035】
圧延試験の結果、大径ワークロールを用いた従来の圧延では、中間スタンドで絞りが発生して、金属ストリップ表面に絞りマークが転写された。この絞りを解消するために全体の形状を目標値に設定した結果、板端部の張力が増加し板破断が多発した。これに対し、本発明では絞りも、板破断も焼き付きも発生することなく中間スタンドで安定した高張力圧延をすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に関する実験を行った圧延機を模式的に示す装置構成図である。
【図2】板破断と絞りの発生率に及ぼすワークロール径の影響を示す図である。
【図3】焼き付き発生圧延速度に及ぼすワークロール径の影響を示す図である。
【図4】本発明を実施する設備を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0037】
11 圧延機
16〜17 ワークロール
21〜22 バックアップロール
31 油圧圧下装置
36 圧延荷重検出装置
37 電動圧下装置
41 デフレクターロール
42 形状検出器
45〜46 潤滑油供給装置
51 ワークロールベンダー
61 ペイオフリール
62 テンションリール
S 金属ストリップ
1a〜5a、1b〜5b ワークロール
1c〜5c、1d〜5d 中間ロール
1e〜5e、1f〜5f バックアップロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4基以上の圧延スタンドからなる冷間タンデム圧延機において、少なくとも1スタンド以上の圧延スタンドで金属ストリップを該金属ストリップの耐力の30%以上の入側および/または出側張力を負荷して高張力圧延する冷間タンデム圧延機であって、該高張力圧延を行う圧延スタンドのワークロール径を300mm以下150mm以上とし、かつ、該ワークロールの垂直方向の撓みを制御するためのワークロールベンダー装置を具備したことを特徴とする冷間タンデム圧延機。
【請求項2】
高張力圧延する圧延スタンドにてワークロールベンダー力を検出する装置を設けるとともに、該圧延スタンド出側に圧延後の板形状を検出する形状検出器を設けて圧延時の板端部の張力を検出し、検出された板端部の張力値と目標とする板端部の張力値との偏差に基づき、前記ワークロールベンダー力を制御する制御装置を設けたことを特徴とする請求項1記載の冷間タンデム圧延機。
【請求項3】
高張力圧延する圧延スタンドが4重圧延機である場合、ワークロールベンダー力及び圧延荷重、または、これら並びにワークロールシフト量を検出する装置を設け、これらの圧延因子により、圧延時の板端部の張力を推定し、推定された板端部の張力値と目標とする板端部の張力値との偏差に基づき前記ワークロールベンダー力を制御することを特徴とする請求項1記載の冷間タンデム圧延機。
【請求項4】
高張力圧延する圧延スタンドが6重圧延機である場合、ワークロールベンダー力、中間ロールベンダー力、中間ロールシフト量及び圧延荷重、または、これら並びにワークロールシフト量を検出する装置を設け、これらの圧延因子により圧延時の板端部の張力を推定し、推定された板端部の張力値と目標とする板端部の張力値との偏差に基づき前記ワークロールベンダー力を制御することを特徴とする請求項1記載の冷間タンデム圧延機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−283320(P2007−283320A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110950(P2006−110950)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】