説明

冷間圧延における板圧延機の形状制御方法

【課題】圧延荷重変動に起因する板形状不良、特に加減速時の板形状、およびスキッドマーク部の板形状不良を良好に制御することができる冷間圧延における板圧延機の形状制御方法を提供する。
【解決手段】実測のメカニカル板クラウン比率変化βおよび線荷重pから、板形状(形状評価パラメータλ)を推定し、基準状態からの、メカニカル板クラウン比率変化βの偏差Δβおよび線荷重変化の偏差△pから形状評価パラメータλの偏差Δλを計算し、この形状評価パラメータ偏差Δλから前記βとλとの重回帰モデルから求めた式を用いて、該形状評価パラメータ偏差Δλを相殺するワークロールベンダー力制御量を計算し、線荷重が基準線荷重から変動しても所望とする板形状が得られるように、ワークロールベンダー力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷間圧延における板圧延機の形状制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板形状制御はオペレータが圧延機出側の形状を目視して、あるいは形状検出器の検出値を目視して、ワークロールベンダー力を手動あるいは自動で変更して行っている。しかしながら、手動では例えば加減速時の早い板形状変化にはオペレータがついて行けない状況にあり、自動でもハンチングが起こりやすいため制御ゲインを下げざるを得ない状況にありその結果、応答性が遅いという問題がある。また、双方の形状制御方法も圧延機出側から形状検出器までの移送の無駄時間があり、このため大きな形状不良が生じた際には絞りや板破断を招くことになる。このため、無駄時間の少ない高精度な形状制御が望まれていた。
【0003】
これを解決するため、形状推定モデルに基づいた形状制御が行われてきた。形状推定モデルとしては、厳密モデル(非特許文献1)を用いて予め鋼種、板幅、板厚、伸び率(圧下率)ごとに板形状を計算し、それを重回帰して求めたモデル(以降、重回帰モデルと記す)を用いる方法や、メカニカル板クラウンモデルを用いる方法(特許文献1〜3)がある。重回帰モデルは簡易的で取り扱いが容易な反面、多くの条件で網羅的に予め厳密モデルを用いて計算し、その回帰結果を鋼種や板幅ごとにテーブルとして多く保有する必要がある。
【0004】
一方、メカニカル板クラウンモデルは重回帰モデルよりも取り扱いが複雑である反面、圧延条件と圧延荷重を入力するだけで広範囲な計算か可能であり、テーブルは基本的には不要である。しかしながら、メカニカル板クラウンモデルは、板とワークロール間の荷重分布が均一であるという仮定で導出される。しかし、冷間圧延のようなワークロール径が直径400〜600mmで胴長が2000mm程度の板圧延機では、板とワークロール間の荷重分布の不均一性が強いため、メカニカル板クラウンが一定になるように上記メカニカル板クラウンモデルを単純に用いてワークロールベンダー力を制御しても板形状は一定にはならないという問題がある。
【非特許文献1】板圧延の理論と実際、日本鉄鋼協会編集(昭和59年9月1日発行) 「板クラウン及び平坦度に関する理論」、89〜102頁
【特許文献1】特開昭62−57704号公報
【特許文献2】特開平10−5837号公報
【特許文献3】特開2005−118840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のメカニカル板クラウン項のみでの形状制御モデルでは、上述したようにワークロール間の荷重分布の不均一性が強いため、メカニカル板クラウンが一定になるようにワークロールベンダー力を制御しても板形状は一定にはならない。荷重分布の不均一性を厳密モデルで解析し重回帰して考慮すればこの問題は解消するものの、上記重回帰モデルと同様に荷重分布に関しての回帰結果を鋼種や板幅ごとにテーブルとして多く保有する必要があるので、結局は同じ問題を抱えることとなる。
【0006】
また、従来の一般的な形状推定モデルは,圧延機の形状制御端と圧延条件を単独に変化させ形状状解析モデルから得られた形状評価パラメータとの重回帰式が用いられていた。しかしながら,この方法では圧延機や圧延条件毎に重回帰をする必要があり、汎用性に乏しいという問題もある。
【0007】
本発明は、メカニカル板クラウンモデルを用いた、汎用性とモデル精度に優れた形状推定モデルにより,圧延荷重変動に起因する板形状不良、特に加減速時の板形状、およびスキッドマーク部の板形状不良を良好に制御することができる冷間圧延における板圧延機の形状制御方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の形状制御方法は、金属ストリップを冷間圧延する板圧延機でメカニカル板クラウンモデルを使用して圧延時の形状制御を行う方法において、
下記式(1)により、
λ=f(β,L,p) (1)
ここで、λ:形状評価パラメータ
β=C/H−c/h:メカニカル板クラウン比率変化
C、c:板端部の入・出側板クラウン
H、h:入・出側板厚
L=W/2(mm):板幅Wの半幅
p=P/W(kN/m):線荷重(Pは正味圧延荷重であり、圧延 時の圧延荷重からワークロールベンダー力を除いた値)
基準圧延条件からの、メカニカル板クラウン比率変化の偏差Δβおよび線荷重変化の偏差△pから形状評価パラメータの偏差Δλを計算し、この形状評価パラメータ偏差Δλから前記式(1)に基づき、該形状評価パラメータ偏差Δλを相殺するワークロールベンダー力制御量を計算し、線荷重が基準線荷重から変動しても所望とする板形状が得られるように、ワークロールベンダー力を制御することを特徴としている。
上記基準圧延条件の線荷重からの線変動として、加減速(摩擦係数変化)、スキッドマーク(変形抵抗変化)、およびワークロール摩耗(摩擦係数変化)、熱間圧延時の温度変化による長手方向の変形抵抗変化などがある。
【0009】
上記形状制御方法において、基準圧延条件を圧延開始時に予め設定した設定条件とし、圧延開始後はオペレータによるワークロールベンダー力修正後の圧延条件に随時更新することができる。
【0010】
上記形状制御方法において、形状評価パラメータλとメカニカル板クラウン比率変化βとの線形重回帰モデルから前記式(1)を求めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、板形状(形状評価パラメータλ)の推定にメカニカル板クラウン比率変化βおよび線荷重pを用いる。これにより、板とワークロール間の荷重分布を一定として取り扱った従来の方法よりも簡便かつ高い精度で板形状を推定することができ、冷間圧延時の板形状を高い精度で制御することが可能となった。この結果、従来、加減速時やスキッドマーク等で形状不良が発生し、絞りや板破断あるいは後工程での生産速度の低下による生産性を悪化させていた鋼種で生産速度を上げることができ生産性が向上することができる。さらに、板形状不良のために従来必要とされていた再ホットスキンパス圧延が不要となり、これによっても生産性が向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
板圧延中に入・出側板クラウンC、c、入・出側板厚H、h、圧延荷重P、およびワークロールベンダー力を検出または計算する。これら検出値または計算値に基づいて、形状評価パラメータλを式(1)にて推定する。なお、入側板クラウン(ボディークラウン)は熱間圧延時の素材クラウンを圧延機入側板厚で相似則により求めた値を使用してもよい。
λ=f(β,L,p) (1)
ここで、λ:形状評価パラメータ
β=C/H−c/h:メカニカル板クラウン比率変化
C、c:板端部の入・出側板クラウン
H、h:入・出側板厚
L=W/2(mm):板幅Wの半幅
p=P/W(kN/m):線荷重(Pは正味圧延荷重であり、圧延 時の圧延荷重からワークロールベンダー力を除いた値)
【0013】
そして、基準圧延条件からの、メカニカル板クラウン比率変化の偏差Δβおよび線荷重変化の偏差△pから形状評価パラメータの偏差Δλを計算し、この形状評価パラメータ偏差Δλから前記式(1)に基づき、該形状評価パラメータ偏差Δλを相殺するワークロールベンダー力制御量を計算し、線荷重が基準線荷重から変動しても所望とする板形状が得られるように、ワークロールベンダー力を制御する。なお、板圧延機がタンデム仕上圧延機列からなる場合、圧延機列の最終スタンドはもちろん、第1スタンドや中間スタンドでも板形状を制御することが望ましい。
【0014】
以下、板〜ワークロール間に均一荷重がかかっている(板幅方向の伸び率分布が等しい)場合の板クラウン変化量と実圧延における形状評価パラメータとの相関を回帰するモデルについて説明する。
【0015】
形状評価パラメータは板端部と板中央部の張力差を示すパラメータであり、張力として応力の次元を持っていても、板クラウンとして長さの次元を持っていても構わない。ここでは板クラウンもしくは張力としての定義の例を下記に示す。なお、形状評価パラメータは、急峻度、伸び歪差にも変化できるパラメータでもある。
板クラウンおよび張力分布は4次式で近似することとし、板端部のエッジドロップの影響を受けなくて、実際の板クラウンおよび張力分布を正確に模擬する板幅方向の位置を検討した結果、板クラウンの代表点として規格化された板幅方向の位置としては、
0:板幅中央
1/SQRT(2):板幅中央から板端までの約7割離れた位置 および
1/SQRT(3/2):板幅中央から板端までの約8割離れた位置
の3点が好ましいことが明らかとなった。
【0016】
板中央および上記2点の位置における板クラウン、張力を表1のように表すと従来の形状評価パラメータ位置における板クラウン、張力は次式で表される。
【表1】

【0017】
本発明の1例として、単スタンドからなるスキンパスミルを用い、圧延荷重に及ぼす圧延速度の影響が大きい鋼種であるコルテン(JIS G3114 SMAシリーズ:「溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材」に相当)を例に説明する。基準圧延条件を表2に示す。
【表2】

【0018】
以下、形状推定モデルについて説明する。板端部における圧延前後のクラウン変化を、メカニカル板クラウン比率変化β=C/H−c/h(c:メカニカル板クラウンモデルから上記の方法で求めた圧延後の板端部のクラウン、h:出側板厚、C :圧延前の板端部のクラウン、H:入側板厚)と定義する。
【0019】
図1a)に非特許文献1に記載された厳密計算に基づいて求めた形状評価パラメータλに及ぼすワークロールベンダー力と圧延荷重の影響、および、図1b)に特許文献1に記載されたモデルに基づいて求めたメカニカル板クラウン比率変化βに及ぼすワークロールベンダー力と圧延荷重の影響を示す。いずれもワークロールベンダー力が増大するにつれて形状評価パラメータλおよびメカニカル板クラウン比率変化βは単調に減少している。ワークロールベンダー力の増加による形状評価パラメータλの減少率は、圧延荷重の影響を受ける(圧延荷重により勾配が変化する)のに対して、ワークロールベンダー力の増加によるメカニカル板クラウン比率変化βの減少率は圧延荷重の影響はあまり受けない(圧延荷重により勾配が変化しない)。厳密モデルより求めた形状評価パラメータから、ワークロールベンダーが0MN/chock、圧延荷重が5.73MNの形状と同一な板形状を圧延荷重7.31MNにおいて得るためにはワークロールベンダー力を0.20MN/chockにすれば良いことが分かる。しかし、メカニカル板クラウン比率変化βからではワークロールベンダー力が0MN/chock、圧延荷重が5.73MNの形状と同一な板形状を圧延荷重7.31MNにおいて得るためにはワークロールベンダー力は0.40MN/chockと必要以上に判断されることとなる。
【0020】
図2には非特許文献1に記載された厳密計算に基づいて計算されたa)張力分布およびb)板〜ワークロール間荷重分布を示す。
上記の差異の原因としては、上述したように、メカニカル板クラウンモデルでは板〜ワークロール間の荷重分布は一定であり、ワークロール〜バックアップロール間の荷重分布は放物線分布と仮定されているのに対し、表2に示すような条件では、実際は図2に示すように必ずしも上述の仮定が満たされていないためと考えられる。したがって、メカニカル板クラウン比率変化βは一定ではなく、形状一定でワークロールベンダー力を制御する必要があるために、メカニカル板クラウン比率変化βを用いた形状推定モデルが必要となる。
【0021】
図3に、圧延荷重とワークロールベンダー力および板幅を変化させた場合のメカニカル板クラウン比率変化βと形状評価パラメータλの関係を示す。図3より、メカニカル板クラウン比率変化βと形状評価パラメータλは線形関係であること、板幅と圧延荷重によってレベルが変化することが分かる。メカニカル板クラウン比率変化βを半幅の平方根で除すことによって、板幅の影響をほぼ無くすことが可能であり、線荷重とメカニカル板クラウン比率変化βを半幅の平方根で除した値で形状評価パラメータを表せる可能性があることが分かる。
【0022】
図4に形状評価パラメータλ(張力)の回帰結果を示す。回帰モデルは式(3)で表される。
λ=3871.9β/√L−0.013790745p+0.58653766 (3)
上述の回帰モデルは回帰範囲内では厳密モデルと比較的良く一致していること、誤差は+2.0〜−4.0N/mmであることが分かる。本モデルでは、通常の回帰モデルと異なり、板幅、ベンダー、ワークロールおよびバックアップロール径の影響を単独で考慮する必要は無い。
【0023】
メカニカル板クラウンを用いた形状推定モデルを用いて、圧延時の圧延荷重Pを検出または計算し、低速基準圧延条件P0からの荷重変化偏差△P(=P−P0)による、基準圧延条件からの形状評価パラメータの偏差△λを相殺するようにワークロールベンダー力を制御する。
【0024】
ここで、表2に示した板幅1200mmの条件について検討する。メカニカル板クラウンモデルを用いて各圧延荷重における板メカニカル比率変化βに及ぼすワークロールベンダー力の影響係数を図5に示す。図5より、影響係数は圧延荷重と線形の関係があり、圧延荷重が低い方がワークロールベンダー力の効きが良いことが分かる。厳密には影響係数は圧延荷重に基づいて求めるべきではあるが、影響係数の最大値と最小値とでは10%程度の差であるので、予想される圧延荷重変化の平均値(−0.0007734)を用いて計算する。
【0025】
式(3)より、低速時のワークロールベンダー力をFWL、圧延荷重をPその際のメカニカル板クラウン比率変化βをβ、ワークロールベンダー力はそのままで、任意の圧延速度時の圧延荷重Pその際のメカニカル板クラウン比率変化をβとすると、圧延速度(圧延荷重)が変化したことによる、低速時(基準時)形状評価パラメータλ2からの増分(偏差)△λ2
式(4)で表される。
△λ=3871.9(β−β)/√L−0.013790475(P−P)/W (4)
また、圧延荷重が同じ場合に、ワークロールベンダーFを操作した際のメカニカル板クラウン比率変化の偏差Δβ(=β−β)に基づく形状評価パラメータ変化△λ′は前述の影響係数γを用いて、式(5)で表される。
△λ=3871.9△β/√L
=3871.9γ(F−FWL)/√L (5)
したがって、式(4)、(5)より形状を一定に保つためのワークロールベンダー力制御量F−FWLは式(6)で表される。
−FWL=−△λ/3871.9/γ*√L (6)
本発明の本実施形態においては、この式(6)で得られた制御量に基づいてワークロールベンダー力を制御する。式(6)は圧延荷重が同じ場合から求めたが、実際の制御の際では、線荷重Δpが生じており、これによってメカニカル板クラウン比率変化の偏差Δβが生じ、これらによってΔλも変化する。したがって、式(4)及び式(6)等の展開によって、Δp、Δβ、Lより、Δλが求まり、さらに、Δλよりワークロールベンダー力制御量F−FWLが求まり、このワークロールベンダー制御によって、本発明の形状制御方法が実現されることになる。
式(6)に基づいて各圧延速度での形状を一定とするようにワークロールベンダーの操作量を求めて形状制御した場合の計算結果を図6に示す。なお、形状評価パラメータλ2は、前記ワークロールベンダーの操作量を用いて非特許文献1に記載の厳密モデルから求めた。
【0026】
図6より、伸び率一定制御で本発明の形状制御をしない場合には圧延荷重が増大して板形状が端伸びへと変化するのに対し、本発明の形状制御がある場合には板形状はほぼ一定に保たれていることが分かる。必ずしも一定値に保たれていない理由は、形状推定モデル誤差と板メカニカル板クラウン比率変化βに及ぼすワークロールベンダー力の影響を荷重にかかわらず一定として取り扱ったためと考えられる。
【0027】
以上の計算では、金属ストリップの長手方向の変形抵抗は一定としているけれども、圧延荷重を直接検出して制御する形状制御方法では変形抵抗の変化(バラツキ)も考慮できるので有効である。具体的な方法としては
1)予めワークロール径、バックアップロール径、ワークロールクラウン、バックアップロールクラウン、板厚、板幅、板クラウンの実測値と、設定荷重および設定ワークロールベンダー力を用いてメカニカル板クラウン計算を行い、メカニカル板クラウン比率変化βに及ぼす圧延荷重の影響係数γ(ワークロールベンダー力は設定値)とメカニカル板クラウン比率変化βに及ぼすワークロールベンダー力の影響係数γ(圧延荷重は設定値)をそれぞれ求める。
2)低速圧延時の伸びと形状設定後の状態をロックオンし、その時の圧延荷重、ワークロールベンダー力の実績値を記憶する。
3)ロックオン後の荷重変化を検出し、形状評価パラメータ変化量△λを前記影響係数γと式(3)に示した回帰モデルの線荷重項を用い式(4)に基づいて計算する。
4)メカニカル板クラウン比率変化βに及ぼすワークロールベンダー力の影響係数γを用いて、式(6)に基づいて、ワークロールベンダーの操作量Fを求め制御する。
5)サーマルクラウンや入側板クラウン等の変動により、圧延時にオペレータが板形状をみてワークロールベンダー力を修正する場合があるので、手動介入が入った場合には形状制御を切り、手動介入終了時にはその値を再度ロックオンし直す。
【実施例】
【0028】
表1に示した圧延条件で、板幅1200mmの材料について本発明の実施例を示す。外欄としては圧延速度を変更させた。すなわち圧延速度50m/minから440m/minまで約20秒間で線形に速度上昇させた。従来技術としては、検出器として棒状光源を設置し、鋼板に映し出された光源の直線性をみて、オペレータが手動でワークロールベンダーを制御した。
本発明では、圧延速度50m/minの基準圧延状態からのメカニカル板クラウン比率変化の偏差Δβおよび線荷重変化の偏差△pから形状評価パラメータの偏差Δλを計算し、この形状評価パラメータ偏差Δλから前記式(1)に基づき、該形状評価パラメータ偏差Δλを相殺するワークロールベンダー力制御量を計算し、線荷重が基準線荷重から変動しても所望とする板形状が得られるように、ワークロールベンダー力を制御した。
これらの、圧延速度50m/minから440m/minまでの加速部を10分割し、それぞれの圧延速度での板形状を定盤上で巻きほぐして測定した。
従来技術も本発明も、圧延速度50m/min時は板形状が急峻度0.3%の端伸びであった。加速するにつれて従来技術では、板形状の端伸びが大きくなり、圧延速度450m/min時到達時は板形状が急峻度1.5%の端伸びであった。これに対し、本発明では加速中の板形状の端伸びはあまり変化せず、圧延速度450m/min時到達時でも板形状が急峻度0.8%の端伸びであった。この製品では急峻度1%未満である必要があるため、従来技術では形状不良部として切り捨てるか、もしくは別ライン(例えばテンションレベラーライン)で矯正なければならなかったものを省略することが可能となり、歩留まりもしくは生産性を大幅に救済することができた。
【0029】
本発明は、上記最良の形態に限定されるものではない。例えば、板形状測定位置は前記式(2)に記載された位置に限られるものではく、エッジドロップがない板端寄りの部分であればよい。また、板形状は圧延機の形式、圧延条件などのよっても変り、形状評価パラメータを示す式は、式(3)に限られるものではない。例えば、板端部の形状よりも板クォータ部の形状を重視したい場合には、(1)のλ代わりにλについて同様の回帰式を求めてベンダー力を制御すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】形状評価パラメータとメカニカル板クラウン比率変化に及ぼす圧延荷重とワークロールベンダー力の影響を示すグラフである。
【図2】張力と圧延荷重分布に及ぼす圧延荷重とワークロールベンダーの影響(厳密モデル)を示すグラフである。
【図3】形状評価パラメータとメカニカル板クラウン比率変化を示すグラフである。示すグラフである。
【図4】形状評価パラメータの回帰精度を示すグラフである。
【図5】各圧延荷重におけるメカニカル板クラウン比率変化に及ぼすワークロールベンダー力の影響係数を示すグラフである。
【図6】スキンパス圧延において形状制御有無による圧延速度に対する形状評価パラメータおよびワークロールベンダー力、ならびに圧延荷重の変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストリップを冷間圧延する板圧延機でメカニカル板クラウンモデルを使用して圧延時の形状制御を行う方法において、
下記式(1)により、
λ=f(β,L,p) (1)
ここで、λ:形状評価パラメータ
β=C/H−c/h:メカニカル板クラウン比率変化
C、c:板端部の入・出側板クラウン
H、h:入・出側板厚
L=W/2(mm):板幅Wの半幅
p=P/W(kN/m):線荷重(Pは正味圧延荷重であり、圧延 時の圧延荷重からワークロールベンダー力を除いた値)
基準圧延条件からの、メカニカル板クラウン比率変化の偏差Δβおよび線荷重変化の偏差△pから形状評価パラメータの偏差Δλを計算し、この形状評価パラメータ偏差Δλから前記式(1)に基づき、該形状評価パラメータ偏差Δλを相殺するワークロールベンダー力制御量を計算し、線荷重が基準線荷重から変動しても所望とする板形状が得られるように、ワークロールベンダー力を制御することを特徴とする冷間圧延における板圧延機の形状制御方法。
【請求項2】
基準圧延条件を圧延開始時に予め設定した設定条件とし、圧延開始後はオペレータによるワークロールベンダー力修正後の圧延条件に随時更新することを特徴とする請求項1に記載の板圧延機の形状制御方法。
【請求項3】
形状評価パラメータλとメカニカル板クラウン比率変化βとの線形重回帰モデルから前記式(1)を求める請求項1または請求項2記載の板圧延機の形状制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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