説明

冷陰極管の電極とその製造方法

【課題】 本発明の課題は、大型液晶テレビのような表示装置用の大型冷陰極管用の電極を開発することにある。
【解決手段】 カップ状の本体(10)と、本体底部(11)から一体的に延出された給電部(14)とで構成されており、主材がタングステンで、バインダがニッケルの焼結体で、その線膨張率が、0.045×10-4×K-1〜0.055×10-4×K-1であることを特徴とするもので、その線膨張率が安価な例えばコバールガラスとほぼ等しいため、Wを主材とするにも拘わらずコバールガラスのような安価な素材を使用することができる且つ大型の長寿命冷陰極管を大量生産することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷陰極管の新規な電極とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷陰極管は、円筒状の細長い直管型封体と、直管型封体の両端に取り付けられた一対の電極と、直管型封体内に封入された必要ガスその他の必要物質とで構成されている。従来の冷陰極管は細く短い直管型の光源で、小型のパーソナル複写機や小型薄型テレビなど小画面の光源に使用されていた。それ故、電極に印加される電力はさほど大きいものでなく、耐熱性に優れた材質のもの使用する必要がないので専ら加工性を重視した材質のもの、例えば後述するようにNiが使用されていた。このような従来の電極(B)には種々の形状のものがあるが(特許文献1;特開2002−110087号)、例えば、図6のようにカップ状電極本体(20)と、カップ状電極本体(20)の電極底部(21)に溶接された給電部(22)及びカップ状電極本体(20)の近傍位置にて給電部(22)の周囲を取り囲むように取り付けられたガラスビーズ(25)とで構成されたものがある。
【0003】
このカップ状電極本体(20)はNi製で、深絞りプレス加工により形成された、たとえば外形サイズ(直径)が0.9mm、長さが3mm程度の有底筒状のものである。また、給電部(22)はカップ状電極本体(20)の電極底部(21)に直接溶接されるコバール製の給電部基部(23)(溶接箇所を(26)で示す)と、この給電部基部(23)に突き合わせ溶接されるNi製の給電部先端部(24)(溶接箇所を(17)で示す)とで構成されている。前記ガラスビーズ(25)はコバール製の給電部基部(23)とほぼ同じ熱膨張係数を有しており、給電部基部(23)を取り巻くように設けられている。これら電極(B)は、前記ガラスビーズ(25)が冷陰極低圧放電灯用の細い直管型封体(図示せず)の両端に融着されて使用される。
【0004】
このようにして形成された細い小型の冷陰極放電灯は、前述のように小画面のワードプロセッサー、パソコンなどの液晶ディスプレイや小画面の液晶テレビを始めとする液晶表示装置のバックライト用として使用されているが、最近では特に液晶テレビの大型化が著しく、冷陰極放電灯に対しても液晶テレビのような表示装置の大型化に対応できるようなもの、即ち、冷陰極放電灯の大型化・高電力化、長寿命化(特に、液晶テレビのような民生機器においては冷陰極放電灯の長寿命に対する要求は絶対的で寿命が短い場合は液晶テレビそのものの品質に直結する)等が要求されるようになってきた。
【0005】
特に、電極本体(20)については、高電力化に対応するためには点灯時の高温に十分に耐える必要があり(高耐熱性)、電極本体(20)の材質がNiでは形状変形や消耗などによりその劣化やこれに伴う黒化(電極物質が蒸発してこれが封体の内表面に付着し、封体全体の光通過度を大きく損なう現象)が激しく、長寿命を望むことは到底不可能であった。
【0006】
そこで、電極本体(20)の材質をタングステンやモリブデンのような高融点金属に切り替えることが検討されたが、モリブデンの場合、モリブデンの板材を高温で金型に巻き付けて成形しているが、この方法では金型の摩耗腐食が激しくしかもモリブデンの端材が大量に発生し、加えてこの端材は再利用できず材料コストが大きいという問題点がある。
【0007】
一方、タングステンのような高融点金属をカップ状に成形することが不可能或いは非常に困難であり、しかも仮にカップ状に形成することができたとしても、カップ状の電極本体(20)しか出来ず、電極(B)とするにはカップ状の本体底部(21)に前述同様給電部基部(23)を溶接しなければならないが、給電部基部(23)との溶接部位(26)である電極底部(21)の再結晶化(溶融接合部分の周囲の結晶が成長してその部分から破断してしまう現象)のために高融点金属製のカップ状電極本体(20)の電極底部(21)とコバール製の給電部基部(23)とを溶接することができず、これまではタングステン製電極を実現することができなかった。
【0008】
そこで、発明者らは鋭意研究した結果、射出成形方法を利用して、カップ状電極本体を有し、カップ状電極本体の底部から給電部が一体的に伸びたタングステン製一体型電極(図示せず)を開発するに至った(特許文献2;特開2005-71972号)。このタングステン製一体型電極は直接直管型封体の端部に封着されるため、使用される直管型封体の熱膨張率とタングステン製一体型電極の熱膨張率とをほぼ等しくしておかなければならず、直管型封体には高価なタングステンガラスを使用しなければならないという制約があった。また、電極にタングステン単体を使用する場合、焼結タングステン結晶粒の粒界を通って封体内に極微量の外部空気が流入し続け、ランプ性能を低下させるというスローリークの問題もあった。その他、点灯時の熱電子の衝突のため、カップ状電極本体の底部とその近傍部分(以下、本明細書では底部近傍部分を含めて「底部」という。)が長時間の使用中に変形するという問題点や、電極本体の開口がラッパ状に開いていないと熱電子の電極本体の開口から底部への入射が阻害されると言うような問題もあった。
【0009】
【特許文献1】特開2002−110087号
【特許文献2】特開2005−071972号
【0010】
その後、大型液晶テレビの普及とその販価の下落につれ、その主要構成部品である冷陰極管に対しても大幅なコストダウンが要求されるようになってきた。そこで、電極サイドに対しても焼結タングステンの使用に伴うスローリーク問題の解決やタングステン電極では使用できない安価なコバールガラスを使用することが要求されるようになってきた。
【0011】
更に冷陰極管の大型・高出力化に伴い、Ni製カップ型電極本体(20)を使用した場合、その電極底部(21)に電子が直線衝突して電極底部(21)を侵食してしまい、冷陰極管寿命の短命化の原因ともなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のような経緯に鑑みてなされたもので、本発明は、液晶テレビのような表示装置の大型化と共にそのコストダウンの要求に対応することができる電極、即ち、冷陰極管のコストダウンが可能であり、更に冷陰極管の大型・高出力化並びに長寿命化に対応可能である電極とその製造方法を新たに開発することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の冷陰極放電灯の電極(A)はその第1実施例で、「カップ状の電極本体(10)と、本体底部(11)から一体的に延出された給電部(14)とで構成されており、主材がタングステンで、バインダがニッケルの焼結体で、その線膨張率が、0.045×10-4×K-1〜0.055×10-4×K-1であることを特徴とする。
【0014】
請求項2の冷陰極放電灯の電極(A)は「カップ状の本体(10)或いは給電部(14)の封体(19)との封着部分に封止用凸条部(13)又は(13')が全周にわたって凸設されている」ことを特徴とする。
【0015】
請求項3の冷陰極放電灯の電極(A)は「本体底部(11)の肉厚(t)が、カップ開口縁(10b)の肉厚(u)より厚く形成され、本体底部(11)からカップ開口縁(10b)に向かってカップ側面(10a)の肉厚が内側から次第に薄くなるように形成されている」ことを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の冷陰極放電灯の電極(A)は「タングステンとニッケルの配合量が、W;99〜97質量%、Ni;1〜3質量%である」ことを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の冷陰極放電灯の電極(A)は「電子放出性材料としてSc,Y,La,Ce,Gd,Lu,Th,U,Nbのグループから選ばれる少なくとも1つの元素が更に混入されている」ことを特徴とする。
【0018】
請求項6は前記冷陰極放電灯の電極(A)の製造方法に関し、
(a) タングステン微細焼結粉末とニッケル微細焼結粉末の配合量がW;99〜97質量%、Ni;1〜3質量%で構成された混合焼結粉末、或いは前記混合焼結粉末に添加された請求項5に記載の少なくともいずれかの1の微量添加物とを2液性熱可塑性バインダ樹脂に投入して混練し、この混練体を射出成形して焼成による収縮量を見込んだ大きさの給電部付きのカップ状電極のグリーン体を形成し、
(b) 溶剤により一方の熱可塑性バインダ樹脂を溶出させ、他方の残留熱可塑性バインダ樹脂により保形されたポーラスな脱脂グリーン体とし、
(c) この脱脂グリーン体を焼成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施例の電極(A)によれば、
(イ) 本体底部(11)の肉厚(t)が、カップ開口縁(10b)の肉厚(u)より厚く形成されているので、冷陰極管が大型化し、本体底部(11)に高出力の電子が直線衝突したとしても、短時間で変形することがなく、大型冷陰極管の長寿命化を実現することができる。なお、本体底部(11)とは、半球状或いはこれに近似した形状に形成された底部近傍部分を含に、本体底部(11)の肉厚(t)とは、前記半球状或いはこれに近似した形状に形成された底部近傍部分を含む本体底部(11)の最も肉厚の薄い部分での厚みをいう。
(ロ) 本体底部(11)からカップ開口縁(10b)に向かって内側のカップ側面(10a)の肉厚が次第に薄くなるように形成されているので、カップ状電極本体(10)の内面の面積が大きくなり、電子のカップ状電極本体(10)内への入射が円滑に行われる。
(ハ) ●電極(A)全体の主材がタングステンで、バインダ (副主材)がニッケルであるから、耐熱性を大幅に向上させることができ、前述の電子の直線衝突による損傷を防ぐことができ、大型冷陰極管の長寿命化を実現することができるだけでなく、●ニッケルが添加されているので、電極(A)が十分に稠密状態となり、外気の封体(19)内へのスローリークが防止できる。●加えて、ニッケルをタングステンに加えることによって、その熱膨張率が封体の線膨張率に殆ど等しい値「0.045×10-4×K-1〜0.055×10-4×K-1」或いは「タングステンとニッケルの配合量が、W;99〜97質量%、Ni;1〜3質量%」としたので、タングステンを主材とする電極(A)であるにもかかわらず、安価なコバールガラス封体(19)を電極(A)のカップ状本体(10)或いは給電部(14)の封着部分に直接封止することができ、大幅なコストダウンを図ることができる。
(ニ) 封止用凸条部(13)を封体融着封止部分の全周に凸設した場合、封体(19)との封着部分が明瞭に示されているので、封体(19)との封着が正確に行われる。
(ホ) なお、電子放出性材料としてSc,Y,La,Ce,Gd,Lu,Th,U,Nbのグループから選ればれる少なくとも1つの元素を更に混入した場合には、電極(A)の点灯性が向上する。
(へ) 冷陰極放電灯の電極(A)の製造を、以下のようにした場合、即ち、
(a) タングステン微細焼結粉末とニッケル微細焼結粉末の配合量がW;99〜97質量%、Ni;1〜3質量%で構成された混合焼結粉末、或いは前記混合焼結粉末に添加された請求項5に記載の少なくともいずれかの1の微量添加物とを2液性熱可塑性バインダ樹脂に混練し、この混練体を射出成形して焼成による収縮量を見込んだ大きさの給電部付きのカップ状電極のグリーン体を形成し、
(b) 溶剤により一方の熱可塑性バインダ樹脂を溶出させ、他方の残留熱可塑性バインダ樹脂により保形されたポーラスな脱脂グリーン体とし、
(c) この脱脂グリーン体を焼成した場合、
主材がタングステンであるにも拘わらず、カップ状の電極は勿論、自由な形状の高精度電極が形成できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を図示実施例に従って詳述する。本発明の実施例にかかる冷陰極放電灯の電極(A)は、タングステン製(タングステンを主材とし、バインダ(副主材)としてニッケルを添加し、更に必要に応じて電子放出性材料などが混入される。)のカップ状電極本体(10)と、カップ状電極本体(10)の本体底部(11)から一体的に延出されている給電部(14)とで構成されている。タングステンとニッケルの割合は、W;99〜97質量%、Ni;1〜3質量%である。その線膨張率は、0.045×10-4×K-1〜0.055×10-4×K-1で、一例として、タングステンが98質量%、ニッケルが2質量%の場合、線膨張率は0.046×10-4×K-1である。
【0021】
本発明の最も重要な点は、タングステンを主材とするにも拘わらず、その線膨張率が従来のコバール程度となるようにし、安価なコバールガラス封体を使用できるようにすること、及び、外気が電極(A)を通って封体(19)内に侵入するスローリークを防止することである。W;99質量%以上、Ni;1質量%以下の場合はW焼結体の微細間隙を完全に閉塞できず、スローリークを防止できない。逆に、W;97質量%以下、Ni;3質量%以上の場合は、スローリークを完全に排除できるが、線膨張率がコバールガラス封体に対して過大となり、融着封止部分からクラックが出来、ランプ破損に繋がるという問題がある。
【0022】
同様に線膨張率が0.045×10−4×K-1以下の場合、コバールガラスの線膨張率と殆ど同じであり、融着封止部分での破損は解消されるが、Ni含有量を過小とせざるを得ず、従ってスローリークの問題が発生する。一方、0.055×10−4×K-1以上場合は、コバールガラスの線膨張率に比べて過大となるので、融着封止部分でのクラック発生や破損が生じる。
【0023】
ここで使用されるカップ状電極本体(10)の形状は、従来のNi製のものに比べて大型で、例えば直径が1〜3mm[本実施例ではφ2]、長さが4〜6mm[本実施例では5mm程度]の一端開口、他端閉塞の筒状部材で、前記閉塞端(即ち、本体底部(11))は半球状となっている。そして、この半球状の本体底部(11)から給電部(14)が一体的に突設され、必要に応じてNiリード(14a)が溶接されるようになっている。
【0024】
給電部(14)は図1(a)のようにカップ状電極本体(10)の本体底部(11)に至るまで同じ太さのものであってもよいが、次に述べるようにカップ状電極本体(10)の底部に近づくにつれて次第に太くなるように形成してもよく、このようにすることにより給電部のカップ状電極本体(10)の底部(11)の近傍部分の機械的強度を大きくすることができる。この場合、給電部(14)全体をテーパー状にしてもよいし、図1(a)に破線で示すように、底部近傍部分をテーパー状にし、テーパー状部分から先端の部分を直線状にしてもよい。
【0025】
また、カップ状電極本体(10)の内側のカップ側面(10a)の肉厚、換言すれば、カップ側面(10a)の内側の肉が削がれていてカップ開口縁(10b)に近づくに連れて薄肉となっており、更にカップ開口縁(10b)は断面半円形状に丸く形成されている。カップ状電極本体(10)の開口先端の肉厚は通例t0.2〜t0.1程度となる。なお、本発明のカップ状電極本体(10)から給電部(14)に至る一体成形体(a)は、後述するように射出成形によって形成されたグリーン体を焼結して成形されるものであるから、給電部(14)の形状は勿論、カップ状電極本体(10)の形状も自由に成形することができるが、若干の抜け勾配を必要とすること及び本体底部(11)の強度を高めるため、前述のようにカップ側面(10a)のテーパーや本体底部(11)の厚肉化を行うことが好ましい。
【0026】
カップ状電極本体(10)から給電部(14)の材質は、前述のようにタングステンを主材とし、これにNiが添加され、必要に応じて点灯性向上のため電子放出性材料としてSc,Y,La,Ce,Gd,Lu,Th,U,Nbのグループから選ばれる少なくとも1つの元素が極く微量混入される。
【0027】
図2〜4は本発明にかかる第1、2実施例の他の電極(A)の断面図で、電極(A)の封体融着封止部分に全周に亘って封止用凸条部(13)又は(13')が凸設されている。この封止用凸条部(13)又は(13')は図1のように外周面が平坦な曲面になっていてもよいし、図3にように1重の凸畝状に形成されていてもよいし、図4のように2重の凸畝状に形成されていてもよい。このように封止用凸条部(13)又は(13')が形成されていると位置決めが簡単になり封体(19)の封着が容易になる。特に、2重の凸畝状の封止用凸条部(13)又は(13')の場合、の封止用凸条部(13)又は(13')間に封体(19)の融着部分が入り込み、より封止を完璧に行うことが出来る。
【0028】
次に、当該カップ状電極本体(10)と給電部(14)との一体物の製造方法について説明する。0.2〜0.5μm程度の平均粒径を持つサブミクロンのタングステン焼結用微細粉末を用意し、このタングステン焼結用微細粉末にNi焼結用微細粉末(同様、0.2〜0.5μm程度の平均粒径を持つサブミクロンのものが好ましい。)や前記電子放出性材料(同様、0.2〜0.5μm程度の平均粒径を持つサブミクロンのものが好ましい。)の少なくとも1つを混入し(即ち、その組成は、W+Ni又はW+Ni+電子放出性材料の少なくとも1つということ)、この焼結用微細混合粉末を分子レベルで分散担持する熱可塑性の2液性バインダ樹脂に投入し、均一且つ十分に混練し、前記焼結用微細粉末の偏在がないようにする。換言すれば、焼結用微細粉末のすべてがバインダ樹脂内に十分に分散するように混練する。この混練物をペレタイザにかけてペレット状にし、これを射出成形装置の加熱シリンダーのホッパーに投入し、通常の射出成形を行う。
【0029】
一方、射出成形装置の金型成形部に搭載された金型には、カップ状の電極本体用型窩とその底部に連なる給電部形成用型窩とで形成されている金型キャビティが1乃至複数個(複数の場合にはツリー状に形成される)凹設されており、前記加熱シリンダーにて混練計量された焼結用微細粉末含有混練樹脂が前記金型キャビティに従来方法にて充填される。射出充填工程→保圧工程→冷却工程と通常の射出成形工程を経て給電部基部付きのカップ状電極本体のグリーン体が形成される。
【0030】
給電部付きカップ状電極本体のグリーン体が形成されると、バインダ樹脂の溶剤に前記グリーン体を浸漬して脱脂を行う。前記バインダ樹脂は2液性で互いに微細な状態で完全に混ざり合っており、一方のバインダ樹脂が溶剤で溶けるが他のバインダ樹脂は当該溶剤で溶けずに残留しており、非溶バインダ樹脂が微細焼結用微細粉末を担持した状態で完全な形を保つ。一方のバインダ樹脂が溶出すると、残留した非溶バインダ樹脂とこれに担持された微細焼結用微細粉末により構成されたグリーン体は溶出バインダ樹脂の抜けた跡が全体に微細な連通孔として残留したポーラスな状態となる。このグリーン体は、後述する焼結工程において発生する収縮量を見込んで最終形状より大きい形(一般的には略相似形)に形成されることになる。
【0031】
続いて、この多孔質グリーン体を焼成炉に入れ、室温から700℃の温度に昇温して多孔質脱脂品を加熱し、まず残留していた溶剤不溶性樹脂(離型材及び可塑剤を含む)を熱分解・消失させ、然る後更に温度を上げ、粉末材料の焼結温度で加熱してタングステンとNi(及び電子放出物質)の焼結用粉末に同士を稠密一体化させ焼結を完了する。なお、タングステン(主材)の焼成の場合、WCの形成を避けるため炭素の存在しない水素雰囲気中で行うことが好ましい。焼結が完了すると給電部付きカップ状電極本体は、所望の寸法となっている。
【0032】
このようにして形成された冷陰極管用の電極(A)は、通常の手法により直管型封体(19)の内部に必要充填物及び必要充填ガスが封入され且つ直管型封体(19)の両端(16)に直接融着・一体化されることになる。このようにして形成された大型冷陰極放電灯は、長さ1,000〜2,000mm、直径4〜6mm(本実施例ではφ5)の大型のもので、これまでにない大型の冷陰極放電灯である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の電極は、特に大型の液晶表示装置のバックライト用光源として使用される大型の冷陰極管用電極として使用され、コスト削減、ランプの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明にかかる第1、2実施例の電極の断面図
【図2】本発明にかかる第1、2実施例の他の電極の断面図
【図3】本発明にかかる第1、2実施例の更にその他の電極の断面図
【図4】本発明にかかる第1、2実施例の更にその他の電極の断面図
【図5】本発明の電極の封止部分の断面図
【図6】従来例の電極の断面図
【符号の説明】
【0035】
(A) 本発明の冷陰極放電灯の電極
(10) カップ状電極本体
(11) 本体底部
(14) 給電部
(15) ガラスビーズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状の本体と、本体底部から一体的に延出された給電部とで構成されており、主材がタングステンで、バインダがニッケルの焼結体で、その線膨張率が、0.045×10-4×K-1〜0.055×10-4×K-1であることを特徴とする冷陰極放電灯の電極。
【請求項2】
カップ状の本体或いは給電部の封体との封着部分に封止用凸条部が全周にわたって凸設されていることを特徴とする請求項1に記載の冷陰極放電灯の電極。
【請求項3】
本体底部の肉厚が、カップ開口縁の肉厚より厚く形成され、
本体底部からカップ開口縁に向かってカップ側面の肉厚が内側から次第に薄くなるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に冷陰極放電灯の電極。
【請求項4】
タングステンとニッケルの配合量が、W;99〜97質量%、Ni;1〜3質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の冷陰極放電灯の電極。
【請求項5】
電子放出性材料としてSc,Y,La,Ce,Gd,Lu,Th,U,Nbのグループから選ばれる少なくとも1つの元素が更に混入されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の冷陰極放電灯の電極。
【請求項6】
(a) タングステン微細焼結粉末とニッケル微細焼結粉末の配合量がW;99〜97質量%、Ni;1〜3質量%で構成された混合焼結粉末、或いは前記混合焼結粉末に添加された請求項5に記載の少なくともいずれかの1の微量添加物とを2液性熱可塑性バインダ樹脂に投入して混練し、この混練体を射出成形して焼成による収縮量を見込んだ大きさの給電部付きのカップ状電極のグリーン体を形成し、
(b) 溶剤により一方の熱可塑性バインダ樹脂を溶出させ、他方の残留熱可塑性バインダ樹脂により保形されたポーラスな脱脂グリーン体とし、
(c) この脱脂グリーン体を焼成したことを特徴とする冷陰極放電灯の電極の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−87752(P2007−87752A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274686(P2005−274686)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(591109751)有限会社コーキ・エンジニアリング (9)
【出願人】(390006426)オー・エム・シー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】