凍結乾燥免疫グロブリン製剤および調製方法
本発明は、概して免疫グロブリンの医薬製剤分野に関する。具体的には、本発明は、安定した、凍結乾燥された高濃度の免疫グロブリン製剤に関する。本発明は、組換えヒト化抗α4インテグリン抗体であるナタリズマブの安定化された凍結乾燥製剤によって例示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年6月14日出願の米国特許仮出願第60/929,133号、および2008年6月12日出願の米国出願公開第12/138,075号に対して、合衆国法典第35巻第119条に基づく優先権を主張し、その全体の内容は、参照としてその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して免疫グロブリンの医薬製剤分野に関する。具体的には、本発明は、安定した、凍結乾燥された高濃度の免疫グロブリン製剤に関する。本発明は、組換えヒト化抗α4インテグリン抗体であるナタリズマブの安定化された凍結乾燥製剤によって例示される。
【背景技術】
【0003】
ヒトへの投与を意図した薬剤調製物は、調製物の使用前の薬物の変化を防止するための安定剤を必要とし得る。タンパク質は、従来の有機および無機薬物より大きく、より複雑であるため(すなわち、タンパク質は複雑な三次元構造に加え、複数の官能基を有する)、タンパク質製剤は特別な問題が生じている。タンパク質の分解経路には、化学的不安定性(新しい化学物質がもたらされる結合形成または切断によるタンパク質の修飾を伴う任意のプロセス)、または物理的不安定性(タンパク質のより高次の構造における変化)を伴い得る。化学的不安定性は、アミド分解、ラセミ化、加水分解、酸化、β脱離、またはジスルフィド交換から生じ得る。物理的不安定性は、例えば変性、凝集、沈殿、または吸着から生じ得る。多くのタンパク質調製物は、非常に薄いまたは高濃度の溶液中で特に不安定であり、タンパク質調製物が保管あるいは出荷される際、しばしばこの不安定性が増す。したがって、タンパク質薬物分野において存在する大きな問題は、タンパク質の安定性および活性の両方を維持する製剤の開発にある。
【0004】
モノクローナル抗体を含む抗体は、製剤中のそれらの挙動および有効性に関連して、全て互いに様々に異なる。例えば、モノクローナル抗体は、等電点、溶解度、およびモノクローナル抗体が凝集する条件に関して互いに異なる。タンパク質は、製剤中のそれらの挙動および有効性に関して互いに異なり、ある製剤が特定の抗体に対して安定しているかどうかの予測を困難にする。タンパク質製剤における一般的な3つの課題には、タンパク質分解、凝集、アミド分解、および酸化が含まれる。さらに、製剤の安定性に影響を及ぼす多くの異なる反応が同時に生じ、どの反応がどの結果を引き起こしているのかの判断を困難にする。Cleland et al,“The Development of Stable Protein Formulations:A Close Look at Protein Aggregation,Deamidation,and Oxidation”,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,10(4):307−377(1993)(非特許文献1)を参照されたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,10(4):307−377(1993)
【発明の概要】
【0006】
具体的には、本発明は、安定した、凍結乾燥された高濃度の免疫グロブリン製剤に関する。本製剤の調製には、予備凍結乾燥水性製剤の調製、乾燥凍結工程、および再構成工程を含む、3つの工程が存在する。
【0007】
本発明は、水性製剤を凍結乾燥することによって調製される安定した凍結乾燥製剤を対象とし、水性製剤は、緩衝液、ポリソルベート、およびショ糖中の約40mg/ml〜約50mg/mlの免疫グロブリンを含有する。本発明の好ましい実施形態において、予備凍結乾燥水性製剤は、(a)約30mg/ml〜約60mg/mlのナタリズマブと、(b)約5.5〜約6.5のpHを有する緩衝液と、(c)約20mg/ml〜約50mg/mlのショ糖と、(d)約0.02%〜約0.08%のポリソルベートと、を含有する。より好ましい実施形態において、予備凍結乾燥水性製剤は、(a)約40mg/mlのナタリズマブと、約6mMのヒスチジン(pH約6.0)と、約41mg/mlのショ糖と、(d)約0.04%のポリソルベート80と、を含有する。
【0008】
凍結乾燥製剤は、免疫グロブリンの安定性を保持し、ヒト対象への投与を意図した免疫グロブリンが、最終生成物において凝集物および/または微粒子を形成するのを防止する。本凍結乾燥製剤は、室温で少なくとも3ヶ月間、好ましくは6ヶ月間、より好ましくは1年間安定である。また、凍結乾燥製剤は、1年間、好ましくは2年間、2〜8℃で安定である。本凍結乾燥製剤は、10分未満の短い再構成時間を有し、再構成後は筋肉内、皮下、静脈内、または腹腔内注射等の非経口投与に好適である。
【0009】
凍結乾燥製剤は、液体により、約80〜160mg/mlの免疫グロブリン濃度を含有する透明な溶液に再構成される。好ましい実施形態において、再構成製剤は、(i)約80mg/ml〜約160mg/mlのナタリズマブと、(ii)約6.0のpHの約18mMのヒスチジンと、(iii)約123mg/mlのショ糖と、(iv)約0.12%のポリソルベート80とを含有する。より好ましい実施形態において、再構成製剤は、約120mg/mlのナタリズマブを含有する。
【0010】
本発明の予備凍結乾燥製剤は、適切な乾燥パラメータを使用して凍結乾燥することができる。約−25℃の一次乾燥相温度および約80mTorr〜約120mTorrの圧力、ならびに約20℃の二次乾燥相および約80mTorr〜120mTorrの圧力の乾燥パラメータが好ましい。
本発明は、再構成製剤の作製および使用方法をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】30℃における高分子量種の形成を示す。
【図2】40℃における高分子量種の形成を示す。
【図3】予備凍結乾燥溶液中の、30℃における低分子量種の形成を示す。
【図4】予備凍結乾燥溶液中の、40℃における低分子量種の形成を示す。
【図5】高分子量種および低分量種の両方の形成による、5℃におけるモノマーの総消失率を示す。
【図6】高分子量種および低分量種の両方の形成による、30℃におけるモノマーの総消失率を示す。
【図7】高分子量種および低分量種の両方の形成による、40℃におけるモノマーの総消失率を示す。
【図8】5℃における凍結乾燥製剤中のモノマーの経時的消失を示す。
【図9】30℃における凍結乾燥製剤中のモノマーの経時的消失を示す。
【図10】40℃における凍結乾燥製剤中のモノマーの経時的消失を示す。
【図11】30℃における、各製剤に対する低分子量種の形成を示す。
【図12】40℃における、各製剤に対する低分子量種の形成を示す。
【図13】予備凍結乾燥製剤中の、40℃における高分子量種の形成を示す。
【図14】5℃における凝集物の形成によるモノマーの消失を示す。
【図15】30℃における凝集物の形成によるモノマーの消失を示す。
【図16】40℃における凝集物の形成によるモノマーの消失を示す。
【図17】40℃における予備凍結乾燥試料中の高分子量種の形成を示す。
【図18】40℃における予備凍結乾燥試料中の低分子量種の形成を示す。
【図19】高分子量種および低分量種の両方の形成による、40℃におけるモノマーの総消失率を示す。
【図20】40℃における再構成時間を示す。
【図21】40℃における凍結乾燥試料中の高分子量種の形成を示す。
【図22】40℃における凍結乾燥試料中の低分子量種の形成を示す。
【図23】高分子量種および低分量種の両方の形成による、40℃におけるモノマーの総消失率を示す。
【図24】(A)は5℃における予備凍結乾燥試料中の高分子量種の形成を示す。(B)は5℃における予備凍結乾燥試料中の低分子量種の形成を示す。(C)は5℃における予備凍結乾燥試料中のモノマーの消失を示す。
【図25】40℃における凍結乾燥試料中の高分子量種の形成を示す。
【図26】(A)は再構成試料中の、40℃における高分子量種の形成を示す。(B)は再構成試料中の、40℃における低分子量種の形成を示す。(C)は再構成試料中の、40℃におけるモノマーの消失を示す。(D)は再構成時間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.定義
本明細書で使用されるとき、「免疫グロブリン」という用語には、抗体および抗体断片(scFv、Fab、Fc、(Fab’)2等)、ならびに抗体の他の遺伝子操作された部分が含まれるが、それらに限定されない。その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの5つの主要なクラスがある。これらのうちのいくつかは、例えばIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4、ならびにIgAlおよびIgA2等の、サブクラス(アイソタイプ)にさらに分割することができる。
【0013】
「抗体」という用語は、最も広義の意味において使用され、具体的には、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、モノクローナル抗体(作動薬および拮抗薬抗体を含む)、ポリエピトープに特異性がある抗体組成物、および抗体断片(例えばFab、(Fab’)2、scFv、およびFv)を対象とする。「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、霊長類化抗体、および遺伝子操作を介して生成される他の抗体を含むことを意図する。
【0014】
本明細書で使用されるとき、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の固体群から得られる抗体を指し、すなわち、その個体群を構成する個々の抗体が、少量で存在し得る可能性がある自然発生的な一時変異またはグリコシル化変異形を除いて同一である。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均一な個体群から得られるという抗体の性質を表し、いずれかの特定の方法による抗体の生成を必要すると解釈されるものではない。また、「モノクローナル抗体」という用語には、重鎖および/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同であり、一方鎖の残りの部分は、別の種に由来するまたは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体、ならびにそれらが所望の生物学的活性を呈する限りそのような抗体の断片における、対応する配列と同一または相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)も含まれる。非ヒト(例えばマウス、ウサギ、ウシ、ウマ、ブタ等)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、もしくは抗体の他の抗原結合サブ配列等)である。
【0015】
「ナタリズマブ」という用語は、AN100226(抗体コード番号)としても知られる抗体を指し、TYSABRI(登録商標)(商標名、正式にはアンテグレン(登録商標))中の活性成分である。「ナタリズマブ」という用語は、米国一般名(USAN)(医薬用物質に与えられる正式な非専売名または一般名)である。ナタリズマブは、組換えヒト化抗α4インテグリン抗体である。ナタリズマブは、IgG4抗体である。参照として組み込まれる米国特許第5,840,299号は、日常的な合成および分子生物学的方法を用いた、ナタリズマブを含む組換えヒト化抗α4インテグリン抗体の作製方法を記述している。
【0016】
「凍結乾燥」、「凍結乾燥された」、および「フリーズドライされた」という用語は、乾燥する材料をまず凍結し、次いで真空環境中で昇華により氷または凍結した溶媒を除去するプロセスを指す。保管時に凍結乾燥された生成物の安定性を高めるために、1つ以上の賦形剤を予備凍結乾燥製剤に含むことができる。
「医薬製剤」という用語は、活性成分が有効であることを可能にする形態にあり、該製剤が投与される対象にとって毒性のあるさらなる成分を含有しない調製物を指す。
【0017】
「薬剤として許容される」賦形剤(媒体、添加物)とは、用いられる有効用量の活性成分を提供するために対象哺乳動物に合理的に投与することができるものである。
「再構成時間」とは、凍結乾燥製剤を溶液で粒子を含まない透明な溶液に再水和するために必要とされる時間である。
【0018】
「安定した」製剤とは、その中のタンパク質が、保管時にその物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物学的活性を本質的に保持するものである。タンパク質の安定性を測定するための種々の分析技術が当技術分野において利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery,247−301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)、およびJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29−90(1993)に概説される。安定性は、選択される時間の間、選択される温度で測定することができる。
【0019】
「安定した」凍結乾燥免疫グロブリン製剤とは、冷蔵温度(2〜8℃)で少なくとも12ヶ月間、好ましくは2年間、より好ましくは3年間、または室温(23〜27℃)で少なくとも3ヶ月間、好ましくは6ヶ月間、より好ましくは1年間、有意な変化が観察されない凍結乾燥された抗体製剤である。安定性の基準は、以下の通りである。SEC−HPLCで測定される抗体モノマーの10%以下が分解される。好ましくは、SEC−HPLCで測定される抗体モノマーの5%以下が分解される。再水和された溶液は、視覚分析で無色、または透明〜わずかに乳白色の間である。製剤の濃度、pH、および重量モル浸透圧濃度は、+/−10%以下の変化を有する。効力は、対照の70〜130%以内、好ましくは80〜120%以内である。10%以下のクリッピングが観察される。好ましくは、5%以下のクリッピングが観察される。10%以下の凝集が形成される。好ましくは、5%以下の凝集が形成される。
【0020】
免疫グロブリンは、色および/または透明度の目視検査時に、あるいはUV光散乱、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)、および動的光散乱によって測定される、凝集、沈殿、および/または変性に有意な増加が示されなければ、医薬製剤中で「物理的安定性を保持する」。タンパク質高次構造の変化は、タンパク質三次構造を決定する蛍光分光法、およびタンパク質二次構造を決定するFTIR分光法によって、評価することができる。
【0021】
免疫グロブリンは、有意な化学的変質を示さなければ、医薬製剤中で「化学的安定性を保持する」。化学的安定性は、タンパク質の化学的に変質した形態を検出および定量化することにより判断することができる。しばしばタンパク質の化学構造を変質する分解プロセスには、加水分解またはクリッピング(サイズ排除クロマトグラフィおよびSDS−PAGE等の方法によって評価される)、酸化(質量分析法またはMALDI/TOF/MSを併用するペプチドマッピング等による方法によって評価される)、アミド分解(イオン交換クロマトグラフィ、キャピラリー等電点電気泳動、ペプチドマッピング、イソアスパラギン酸の測定等の方法によって評価される)、ならびに異性化(イソアスパラギン酸含有量の測定、ペプチドマッピング等によって評価される)が挙げられる。
【0022】
免疫グロブリンは、所定の時点の免疫グロブリンの生物学的活性が、医薬製剤が調製された時点において呈される生物学的活性の所定の範囲内である場合、医薬製剤中で「その生物学的活性を保持する」。免疫グロブリンの生物学的活性は、例えば抗原結合検定によって決定することができる。
【0023】
「等張の」という用語は、該当する製剤がヒト血液と本質的に同一である浸透圧を有することを意味する。等張製剤は、概して約270〜328mOsmの浸透圧を有する。わずかに低張な圧力は250〜269mOsmであり、わずかに高張な圧力は328〜350mOsmである。浸透圧は、例えば蒸気圧、または氷凍結型の浸透圧計を使用して測定することができる。
【0024】
「緩衝液」という用語は、凍結乾燥前に溶液のpHを許容可能な範囲に維持する薬剤を包含し、ヒスチジン、コハク酸塩(ナトリウムまたはカリウム)、リン酸塩(ナトリウムまたはカリウム)、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、ジエタノールアミン、クエン酸塩(ナトリウム)、グルコン酸塩、および他の有機酸緩衝液が挙げられる。
【0025】
「張性調節剤」には、浸透圧を調節するために使用することができるNaCl、KCl、MgCl2、CaCl2等の塩が挙げられる。さらに、凍結保護剤(cryprotecant)、溶解保護剤(lyoprotectant)、および/またはショ糖、マンニトール、グリシン等の膨張性薬剤が、張性調節剤として機能し得る。
【0026】
本発明の文脈において、免疫グロブリンの「治療有効量」とは、免疫グロブリンが有効である治療に対して、疾患の予防または治療に有効な量を指す。「疾患」とは、免疫グロブリンを用いた治療から利益を得るであろう任意の状態である。これには、哺乳動物を問題の疾患に罹患しやすくする病態を含む、慢性および急性の疾患または疾病が含まれる。好ましくは、疾患とは、ナタリズマブ等のα4インテグリンを認識して結合する免疫グロブリンによって治療および/または予防され得るものである。
【0027】
「治療」とは、療法的治療、および予防または阻止措置の両方を指す。治療を必要とする者には、すでに疾患を有する者、ならびに疾患が予防されるべき者が挙げられる。
【0028】
「保存料」とは、製剤中に含むことができ、その中の細菌作用を本質的に減少させ、これにより例えば多用途製剤の生成を促進する化合物である。可能性のある保存料の例には、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物である塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物)、および塩化ベンゼトニウムが挙げられる。保存料の他の種類には、フェノール、ブチル、およびベンジルアルコール等の芳香族アルコール類、メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン類、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、およびm−クレゾールが挙げられる。
【0029】
「患者」または「対象」という用語は、任意の哺乳動物を含むことを意図する。「哺乳動物」は、治療を目的とする、哺乳動物として分類される任意の動物を指し、ヒト、家畜、および飼育動物、ならびにイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等の動物園、運動競技用、または愛玩動物を含むが、それらに限定されない。好ましくは、哺乳動物はヒトである。好ましくは、哺乳動物において治療される疾病または状態とは、治療有効用量のナタリズマブが投与されると調子が和らげられるものである。
【0030】
2.免疫グロブリン製剤
本発明の組成物は、凝集物および微粒子の形成を最小限に抑え、確実に溶液中の免疫グロブリンが長期間その免疫反応性を維持するようにする。該組成物は、中性または酸性pH(約5.5〜約6.5)を有する緩衝液中の免疫グロブリン、ショ糖、およびポリソルベートを含有する予備凍結乾燥水性製剤から調製される、無菌の薬剤として許容される凍結乾燥製剤を含む。
【0031】
好ましい実施形態において、免疫グロブリンは、約30〜約60mg/ml、より好ましくは約40〜約50mg/ml、さらに好ましくは約40mg/mlの濃度で予備凍結乾燥製剤中に存在する。好ましい免疫グロブリンは、IgG抗体、より好ましくはIgG4抗体、さらに好ましくはヒト化組換えIgG4抗体、最も好ましくはナタリズマブである。
【0032】
予備凍結乾燥製剤中では、pH約5.5〜約6.5の緩衝液が使用される。好ましくは、pHは約6.0である。好適な緩衝液の例には、ヒスチジン、コハク酸塩(コハク酸ナトリウム等)、グルコン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸緩衝液が挙げられる。好ましい予備凍結乾燥製剤は、ヒスチジン、好ましくは約1〜約12mMのヒスチジンを含有する。さらに好ましい予備凍結乾燥製剤は、約6mMのヒスチジンを含有する。
【0033】
また、予備凍結乾燥製剤はショ糖も含有する。ショ糖の好適な濃度は、約20〜約50mg/mlの範囲内、好ましくは約41mg/mlである。
また、予備凍結乾燥製剤は、ポリソルベート20またはポリソルベート80(すなわちそれぞれTween20およびTween80)、およびポロキサマー(例えばポロキサマー188)等のポリソルベートも含有する。好ましい実施形態において、ポリソルベートはポリソルベート80である。ポリソルベートは、好ましくは約0.02〜約0.08%、より好ましくは約0.04%の重量/容積濃度で存在する。
【0034】
予備凍結乾燥製剤中の免疫グロブリン対ショ糖の重量比は、好ましくは約2:1〜約0.5:1の範囲内、より好ましくは約1:1である。免疫グロブリン対ショ糖のモル比は、約300:1〜約500:1、好ましくは約400:1〜500:1、より好ましくは約450:1である。
【0035】
セリン、グリシン、およびマンニトール等の良好な凍結乾燥ケーキ特性を提供する膨張性薬剤を、本組成物に任意選択的に添加することができる。また、これらの薬剤は製剤の張性に寄与し、凍結融解プロセスに対して保護を提供し、長期的安定性を改善し得る。さらに、張性調節剤を製剤に添加して、浸透圧を調節することができる。製剤は、1つ以上の保存料をさらに含有し得る。
【0036】
好ましい予備凍結乾燥製剤とは、約40mg/mlのナタリズマブ、約6mMのヒスチジン(pH約6)、約0.04%のポリソルベート80、および約41mg/mlのショ糖を含有する製剤である。上記の予備凍結乾燥製剤は凍結乾燥されて乾燥かつ安定した粉末を形成し、これはヒトへの投与に好適な粒子を含まない溶液に容易に再構成され得る。
【0037】
凍結乾燥は、その生物学的活性を保存するために医薬生成物の調製においてしばしば使用されるフリーズドライプロセスである。液体組成物を調製し、次いで凍結乾燥させて、乾燥したケーキ状の生成物を形成する。該プロセスは、概して、氷を除去するために真空中で予め凍らせた試料を乾燥させ、非水成分を損なわずに、粉末状またはケーキ状の物質の形態に残す工程を伴う。凍結乾燥された生成物は、生物学的活性を消失することなく、長期に渡りかつ高温で保管することができ、適切な希釈剤を添加することにより、粒子を含まない溶液に容易に再構成することができる。適切な希釈剤は、生物学的に許容可能であり、凍結乾燥粉末が完全に溶解できる任意の液体であり得る。水、特に無菌の発熱物質を含まない水は、抗体の安定性に影響を及ぼし得る塩または他の化合物を含まないため、好ましい希釈剤である。凍結乾燥の利点は、含水量が、長期保管時の生成物の不安定性につながる種々の分子事象を大幅に減少する程度まで減少されることである。また、凍結乾燥された生成物は、出荷の物理的刺激を容易に耐えることができる。再構成された生成物は粒子を含まず、したがって事前に濾過せずに投与することができる。
【0038】
本発明の予備凍結乾燥製剤は、適切な凍結および乾燥パラメータを使用して凍結乾燥することができる。例えば、パラメータには、約10〜30分間、約10℃〜約−10℃を保持する予備凍結が含まれ得る。凍結パラメータには、約45分〜約75分の間に渡って−50℃〜−70℃の凍結が含まれ得る。さらなる凍結工程のためのパラメータには、−40℃〜約−60℃における凍結が含まれ得る。乾燥パラメータには、約−10℃〜−30℃、約40mTorr〜約120mTorrの圧力の一次乾燥相温度、ならびに約40mTorr〜120mTorrの圧力を用いる約10℃〜約25℃における二次乾燥相が含まれ得る。好ましい総周期時間は、約60〜100時間である。好ましい凍結乾燥周期には、予備凍結工程、凍結工程、一次乾燥工程、および二次乾燥工程が含まれ得る。凍結乾燥周期に関して考慮すべき事項には、凍結温度、圧力、一次乾燥、二次乾燥、および周期時間が挙げられる。
【0039】
例えば、好ましい凍結乾燥周期パラメータは、以下の通りであり得る。
まず、予備凍結として、0℃で15分間保持。
凍結するために、60分に渡って−60℃まで下降。−60℃で60分間保持。
さらなる凍結工程で、−50℃に上昇させて30分間保持。
一次乾燥のために、圧力を50mTorrに落として45分に渡って−15℃に上昇。−15℃および50mTの圧力で54時間保持。
二次乾燥のために、35分に渡って20℃に上昇させ、24時間保持。
総周期時間は82時間である。
【0040】
この凍結乾燥された生成物は、免疫グロブリンの免疫学的活性の安定性を保持し、ヒト対象への投与を意図した免疫グロブリンの最終生成物における物理的および化学的分解を防ぐ。
凍結乾燥された生成物は、粒子を含まない溶液を生じさせるために、使用時に希釈剤(例えば滅菌水または生理食塩水)中で再水和される。再構成された抗体溶液は、周囲温度で凍結乾燥ケーキを長期に渡って保管した後でさえも、粒子を含まない。再構成された溶液は、対象に非経口的に、好ましくは筋肉内もしくは皮下に投与することができる。
【0041】
凍結乾燥された生成物の重要な特徴は、再構成時間、または生成物を再水和するために要する時間である。非常に迅速かつ完全な再水和を可能にするためには、高度に多孔性の構造を持つケーキを有することが重要である。ケーキ構造は、タンパク質濃度、賦形剤の種類および濃度、ならびに凍結乾燥周期のプロセスのパラメータを含む、多くのパラメータの関数である。概して再構成時間はタンパク質濃度が増加するにつれて増加し、したがって短い再構成時間は高濃度の凍結乾燥抗体製剤の開発における重要な目標である。長い再構成時間は、タンパク質をより濃縮された溶液により長く曝露するため、生成物の品質を低下し得る。さらに、使用者側では、生成物が完全に再水和されるまで生成物を投与することができない。これは、生成物が微粒子を含まず、正しい薬用量が投与され、その無菌性が影響を受けないことを確実にするためである。したがって、10分未満の再水和時間等の迅速な再水和は、患者および医師により利便性を供する。
【0042】
凍結乾燥された生成物では、標的タンパク質濃度で製剤を凍結乾燥し、生成物を出発充填容積と同量で再構成することにより、所望の薬用量を得ることができる。また、所望の薬用量は、大量の希釈された製剤を凍結乾燥し、それをより少量で再構成することによって得ることもできる。例えば、所望の生成物薬用量が1mLの製剤中の100mgのタンパク質である場合、製剤は、1mLの100mg/mL、2mLの50mg/ml、または4mLの25mg/mLのタンパク質製剤の液体構成で凍結乾燥することができる。全ての場合において、最終生成物は、1mLの希釈剤で再構成し、100mg/mLの標的タンパク質濃度を得ることができる。しかしながら、予備凍結乾燥製剤中のタンパク質濃度が減少すると、充填容積は比例して増加する。これに付随して凍結乾燥周期(特に一次乾燥時間)の長さが増加し、したがって生成物の費用が著しく増大する。例えば、1mLの充填容積(バイアル中1mmの高さ)の凍結材料がその遊離水の昇華に約1時間を要する場合、10mLの充填容積(10mmの高さ)の凍結生成物は、約10時間の一次乾燥時間を要する。したがって、凍結乾燥プロセスがより効率的となるように、濃縮された予備凍結乾燥製剤(約40mg/ml〜約50mg/mlの免疫グロブリン濃度)を有することは有利である。
【0043】
本発明は、免疫グロブリンの生物学的、物理的、および化学的安定性を保持する乾燥製剤に効率的かつ効果的に凍結乾燥される、高濃度の予備凍結乾燥免疫グロブリン製剤(約40mg/ml〜約50mg/ml)を提供する。乾燥製剤は、室温で少なくとも3ヶ月間、好ましくは6ヶ月間安定である。乾燥製剤は、約80mg/ml〜約160mg/mlの免疫グロブリンを含有する粒子を含まない溶液に、10分未満の短時間で再構成することができる。そのような高濃度の抗体溶液は、静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下注射等の非経口投与ができる状態になっている。
【0044】
好ましい再構成された生成物は、約80mg/ml〜約160mg/mlのナタリズマブ、より好ましくは約120mg/mlのナタリズマブと、約123mg/mlのショ糖と、約0.12%のポリソルベート80と、約pH6.0の約18mMのヒスチジンとを含有する。
【0045】
3.分析方法
生成物の安定性を評価するための分析方法には、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)、動的光散乱試験(DLS)、示差走査熱量測定(DSC)、イソアスパラギン酸定量化、効力、340nmのUV、UV分光法、およびFTIRが挙げられる。SEC(J.Pharm.Scien.,83:1645−1650,(1994);Pharm.Res.,11:485(1994);J.Pharm.Bio.Anal.,15:1928(1997);J.Pharm.Bio.Anal.,14:1133−1140(1986))は、生成物中のモノマー率を測定し、可溶性凝集物の量の情報が得られる。抗体の効力または生物学的固有性は、その抗原に結合するその能力によって測定することができる。抗体のその抗原への特異的結合は、例えばELISA(酵素結合免疫吸着測定法)等の免疫測定法等の、当業者に既知である任意の方法により定量化することができる。以下の方法は、当業者に周知である生成物の安定性を評価するための、単に例示的方法であるにすぎない。一例として、340nmのUVで340nmの散乱光強度を測定し、可溶性および不溶性の凝集物の量に関する情報が得られる。UV分光法は278nmの吸光度を測定し、タンパク質濃度の情報が得られる。FTIR(Eur.J.Pharm.Biopharm.,45:231(1998);Pharm.Res.,12:1250(1995);J.Pharm.Scien.,85:1290(1996);J.Pharm.Scien.,87:1069(1998))は、アミド一領域のIRスペクトルを測定し、タンパク質二次構造の情報が得られる。特定の分析方法について、実験の項でさらに説明する(上記を参照)。
【0046】
4.再構成製剤の使用
本発明の再構成された免疫グロブリン製剤は、既知の方法に従って、免疫グロブリンを用いた治療を必要とする哺乳動物に投与することができる。これらの方法には、大量瞬時投与としての静脈内投与、または筋肉内、腹腔内、脳脊髄内(intracerobrospinal)、皮下、関節内、滑液嚢内、くも膜下腔内、経口、局所、もしくは吸入経路による、ある期間に渡る持続注入が挙げられるが、それらに限定されない。好ましい実施形態において、免疫グロブリン製剤は、筋肉内または皮下投与によって哺乳動物に投与される。典型的な日用量は、約1μg/kg〜約200mg/kg対象重量以上、より好ましくは約0.01mg/kg〜約150mg/kg対象重量、より好ましくは約0.1mg/kg〜約100mg/kg対象重量、より好ましくは約1mg/kg〜約75mg/kg対象重量、最も好ましくは約3mg/kg〜約6mg/kg対象重量の範囲であり得る。典型的には、医師は、所望の効果を達成する薬用量に到達するまで、免疫グロブリンを投与する。本療法の経過は、従来の方法および検定によって容易に監視することができる。
【0047】
免疫グロブリンの適切な薬用量は、例えば治療される状態、状態の重症度および経過、免疫グロブリンが予防目的あるいは治療目的で投与されるのか、以前の療法、患者の病歴および免疫グロブリンへの応答、使用される免疫グロブリンの種類、担当医の裁量に依存する。典型的には、臨床医は、所望の効果を達成する薬用量に到達するまで、免疫グロブリンを投与する。本療法の経過は、従来の検定によって容易に監視することができる。
【0048】
免疫グロブリンは、一度にまたは一連の治療に渡り、患者に好適に投与され、診断以降任意の時点で患者に投与され得る。免疫グロブリンは、単一治療として、または問題の治療に有用な他の薬物または療法と併用して投与され得る。本明細書で使用されるとき、場合、2つ(以上)の薬剤は、2つの薬剤が同時に投与されるか、または薬剤が同時期に作用するような様式で独立して投与される時、組み合わせて投与されるとされる。例えば、本発明のナタリズマブ製剤は、関節リウマチ、多発性硬化症(MS)、クローン病、および他のα4介在性疾病の治療のための他の治療薬または理学療法と組み合わせて投与することができる。
本発明を以下の実施例でさらに例証するが、本発明はそれらの中で記載される特定の手順の範囲に限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0049】
実施例1
ナタリズマブの、高濃度の再構成された凍結乾燥製剤と液体製剤との比較研究を、カニクイザルで行った。研究結果は、ナタリズマブの再構成された凍結乾燥製剤が、液体製剤と非常に類似した、予期された薬物動態学的および薬力学的プロファイルを生成したことを示した。
【0050】
ナタリズマブの高濃度の液体および再構成された凍結乾燥製剤を、それらのそれぞれの薬物動態/薬力学的プロファイル、相対的生物学的利用能、皮下(SC)および筋肉内(IM)投薬後の局所耐性を比較するように評価した。液体高濃度製剤(150mg/mL)および再構成された凍結乾燥(120mg/mL)高濃度製剤の両方を、1日目にそれぞれ血管外経路により投与し、それらの薬物動態/薬力学的プロファイルを36日目まで通して評価した。また、30mgの単一用量の市販の液体ナタリズマブも1日目に投与し、高濃度製剤の相対的生物学的利用能を決定した。36日目にSCおよびIM投与群の動物に2回目の注射を投与し、局所耐性を判定するために39日目に注射部位の生検を行った。
【0051】
被検物質の市販の液体ナタリズマブ、液体高濃度ナタリズマブ、および凍結乾燥高濃度ナタリズマブは、Biogen Idecにより供給された。再構成された凍結乾燥ナタリズマブの再構成流体、注射用滅菌水が、水溶液として供給された。各投薬日に保存被検物質の新しいバイアルを使用し、適切な濃度の投薬溶液を生じるように製剤化した。
30匹の実験的に無処置のカニクイザル(雄15匹および雌15匹)を、以下の表1に示すように5つの投与群に割り当てた。
【0052】
【表1】
【0053】
研究前のベースライン値と比較して、全ての群で、末梢血リンパ球(より少ない程度で、好酸球、好塩基球、および未分類細胞)における薬理学関連の増加が認められ、被検物質の予期された薬力学的効果であると見なされた。冒された白血球細胞のレベルの上昇は、概して、市販の製剤のより低いIV用量(典型的には8日目から15日目まで通して)に対して、ナタリズマブのより高いSCおよびIM用量(例えば8日目から36日目まで通して)を受けた個々の動物においてより長い期間持続した。しかしながら、被検物質、雌雄の別、または投与経路の、液体対凍結乾燥の高濃度製剤の関数としての、応答の規模または期間における一貫したまたは明白な差異はなかった。
【0054】
平均Tmaxは、市販の液体IV投与群で最も急速に達成され、高濃度製剤全体でSC群よりもIM群でより急速であった。平均Cmax値は、市販の液体IV投与群と比較すると、経路全体で用量比例よりも低く、血管外に投与された場合、高濃度製剤全体で一貫していた。平均tl/2値は、経路にかかわらず、全投与群に渡って一貫していた。
【0055】
平均AUClastおよびAUCinfの両方が、完全な吸収(すなわち100%の相対的生物学的利用能)を示し、製剤にかかわらず、SCおよびIM投与群において用量比例よりも高く、また、血管外に投与された場合、製剤全体で非常に一貫していた。
【0056】
循環リンパ球数、およびより低い程度で好酸球、好塩基球、および未分類細胞数において、予期された被検物質に関連する増加が見られ、研究前のベースラインと比較して全投与群に存在した。これらの結果は、α4インテグリン飽和プロファイルと一致し、ナタリズマブの薬理学的効果に起因する。冒された白血球細胞数の増加の期間は用量に依存し、典型的には、市販の液体製剤を静脈内に受けた群(典型的には8日目〜15日目)と比較して、液体高濃度ナタリズマブおよび凍結乾燥高濃度ナタリズマブ処理群(例えば8日目〜最高36日目)について高かった。ナタリズマブの高濃度液体と再構成された凍結乾燥製剤との間で、これらの白血球細胞個体群における変化に対して一貫した差異は観察されず、投与経路(皮下または筋肉内注射)もしくは動物の雌雄の別に関連すると見なされた差異は全くなかった。
【0057】
要約すれば、120mgの用量(再構成された凍結乾燥製剤)でのカニクイザルにおける皮下および筋肉内注射後、再構成された凍結乾燥高濃度ナタリズマブ製剤は、良好な耐性を示し、末梢血リンパ球数において予期された薬理学関連の増加を生成し、これは、市販の液体製剤の30mgの単回静脈内投与後と匹敵し、しかしわずかに長く持続した。
【0058】
実施例
ナタリズマブは、現在、1〜2時間かけてIV点滴で送達されている。これは、患者の病院または指定点滴センターへの訪問を必要とする。ナタリズマブの送達をより簡便にするためには、皮下投与が所望される。低濃度のバルク原薬から、次いで高濃度に再構成することができる凍結乾燥製剤を開発することは有利であった。本明細書に記載される本研究は、ショ糖を賦形剤として使用し、安定性に対する種々の出発および最終タンパク質濃度の効果をスクリーニングするために考案された(研究A)。本研究の第2部は、他の周知の溶解保護剤および賦形剤のタンパク質安定性に対する効果について、それらをスクリーニングするために考案された(研究B)。また、充填容積および再構成容積の観点からの製造可能性について実現可能である溶液を調べる努力もなされた。
【0059】
研究Aでは、4つの製剤を調製し、予備凍結乾燥バルクおよび凍結乾燥ケーキの双方について、出発タンパク質濃度および最終タンパク質濃度の実時間および加速安定性に対する効果を調べた。4つの全ての予備凍結乾燥製剤が、5℃において最長6ヶ月の保持時間の、予備凍結乾燥バルクとして使用されるのに十分な安定性を呈した。2つの凍結乾燥製剤が、さらなる製剤開発の候補として見なされるのに十分な製剤特徴および安定性を呈した。これらの製剤のうちの1つは、タンパク質対ショ糖の1:1の重量比を有する、40mg/mLの出発濃度および100mg/mLの再構成濃度から成った。第2の候補製剤は、タンパク質対ショ糖の2:1の重量比を有する、50mg/mLの出発濃度および200mg/mLの再構成濃度から成った。双方の製剤は、ヒスチジン緩衝液およびポリソルベート80を含有した。
【0060】
さらに、現在のナタリズマブ(Tysabri(登録商標))製剤と同一の賦形剤プロファイルを有する高濃度の液体製剤を調製した。この製剤は、アミド分解速度は凍結乾燥製剤においてよりも急速であったが、5℃で、さらなる開発の候補とみなされるのに十分な凝集物形成に対する安定性を示した。この製剤は、加速温度において、凍結乾燥製剤において同程度では観察されなかった、低分子量の分解生成物を形成する傾向を示した。
【0061】
実験計画
材料
本研究に使用されたナタリズマブは、Biogenldecにより供給され、2003年2月に製造されたナタリズマブから調製された。本材料は製剤化およびバイアル化されており、したがってこれらの製剤研究に使用する前に本材料を貯え、ポリソルベート80を除去する必要があった。手短に述べると、これは、低イオン強度、高pH(10mMのトリス、10mMのNaCl、pH8.5)の緩衝液へ膜分離することにより、達成された。本材料をこれらの条件下でDEAE−Sepharoseカラムに結合させ、次いでpH6で、10mMのリン酸ナトリウム、140mMのNaClを使用して溶出した。次いで、カラム溶出液を6mMのヒスチジン(pH6)に膜分離し、さらなる製剤化の前に70〜100mg/mLに濃縮した。
【0062】
化学物質および試薬
本研究で使用された全ての化学物質および試薬は、注記されていない限りVWRから購入し、ACS以上のグレードであった。入手可能である場合には、USPグレードの試薬を賦形剤として使用した。ポリソルベート80は、Sigma(目録番号P6474)から購入し、野菜由来および低過酸化物であった。
【0063】
研究Aの製剤
賦形剤および活性成分の保存液を希釈して表2:研究Aの製剤パラメータに示す所望の濃度にして、以下の製剤を調製した。全ての製剤をpH6に調製した。
【0064】
【表2】
【0065】
研究Bの製剤
賦形剤および活性成分の保存液を希釈して表3:研究Bの製剤パラメータに示す所望の濃度にして、以下の製剤を調製した。全ての製剤がpH6であった。
【0066】
【表3】
【0067】
方法
製剤の調製
溶液を滅菌濾過し、示される通りガラス製滅菌バイアルに充填した。予備凍結乾燥分析用の全ての試料および3944−18Lを2ccのバイアルに0.5mLで充填し、栓をし、キャップをした。凍結乾燥する調製物を5ccのKimbleバイアルに、製剤3944−18A―2.5mL、製剤3944−18B―1.25mL、製剤3944−18C―2mL、製剤3944−18D―1.5mLの容積に充填した。研究B用の全ての製剤を、5ccのKimbleバイアルに2mLで充填した。
【0068】
凍結乾燥周期
研究Aについて、バイアルを−20℃で凍結した。凍結乾燥器が正常に機能せず、温度が週末の間−70℃に落ちた。その後凍結乾燥周期の再開を試み、再凍結の前に3〜4℃へ温度が上昇した。凍結乾燥器を再起動し、周期を継続した。一次乾燥を、−20℃で20時間、100mTorrの真空で行った。次いで、温度を3時間に渡って20℃に上昇させ、二次乾燥のために30時間100mTorrで保持した。
【0069】
研究Bについて、確実に均一に凍結するように、バイアルを−50℃で2時間凍結した。次いで、100mTorrの真空下で20分間−40℃の温度にした。次いで、温度を100mTorrの真空で20分に渡って−25℃に上昇させ、20時間一次乾燥を続行した。棚温度を10時間に渡ってゆっくりと20℃に上昇させ、100mTorrで二次乾燥を開始し、次いで4時間20℃で保持した。
【0070】
研究設定
予備凍結乾燥液体のバイアル、高濃度液体対照、および凍結乾燥ケーキを、5、30、および40℃に置いた。40℃で保管した試料を2、4、8、および12週で検定した。30℃で保管した試料は3、6、9、および12週で検定した。5℃で保管した試料は4、8、および12週に検定した。一部の製剤について、30℃および5℃において追加のバイアルを6ヶ月および1年で分析した。全ての製剤を凍結乾燥前および後に、ゼロ時点で検定した。
【0071】
検定
試料は、以下の方法で検定した。全ての時点で全ての検定が行われてはいない。予備凍結乾燥試料のゼロ時点を除いて、各検定につき2組のバイアルを試料採取した。
【0072】
目視検査による外観
全ての試料を視覚的に検査し、その外観を記録した。凍結乾燥ケーキは、色、均一性、頑健性、および再融解の痕跡について調べた。液体および再構成試料は、色、透明度、および微粒子の存在について調べた。
【0073】
残留水分および再構成時間
凍結乾燥ケーキは、ゼロ時点でカールフィッシャーを用いて残留水分について検定した(BOP 000−01290)。再構成時間は、適量のDI水を添加し、その後静かにかき混ぜて測定した。ケーキが完全に溶解する時間を記録した(EOP 000−01292)。
【0074】
濃度
全ての試料の濃度を測定した。ナタリズマブ偽薬を使用して、試料を1mg/mLに希釈した。Varian 300Bio Spectrophotometerおよび200nm/分の1cmの光路長キュベットを使用して、UV吸光度を400〜240nmで走査した。ラムダ最大値の吸光度を記録し、その値を1.498(ナタリズマブの吸光係数)で割り、適切に希釈することで調整して濃度を測定した。
【0075】
混濁度
適切な試料の300〜400nmの吸光度を、10mmの小容量キュベット(Starna Cells Inc.目録番号16.160−Q−10\Z20)を使用して測定した。360nmで記録された値を報告した。
【0076】
サイズ排除クロマトグラフィ
モノマー、高分子量種、ダイマー、および低分子量種の量は、Biogen SOP 22d.505の修正形態を使用して測定した。試料を適切なカラムに充填し、充填容積はカラム上で約400μgの質量を配分するように調整した。また、参照材料の充填質量も同程度に調整した。215および280nmの両方の検出を記録したが、主ピークは215nmでは目盛りの範囲外であったため、本明細書で報告された計算には280nmの痕跡を使用した。
【0077】
陽イオン交換クロマトグラフィ
陽イオン交換クロマトグラフィを行った。クロマトグラフィシステムにおける差異のため、勾配を主ピークが9〜12分で溶出するようにわずかに修正した。使用されたシステムはバイナリポンプであったため、各組の分析後に高塩濃度洗浄のみ行った。いずれのピークの高塩濃度洗浄においても、遅い保持時間で溶出する証拠はなかった。高塩濃度洗浄は各試料後には行われなかったため、再平衡時間は7分に短縮した。
【0078】
効力
選択された試料の効力は、VCAM可溶化液検定(AAM 001−00965)、およびジャーカット細胞検定(AAM 001−00700)によって分析した。
【0079】
研究Aの結果
本研究は、凍結乾燥ケーキパラメータ、再構成時間、および安定性に対する初期タンパク質濃度および最終タンパク質濃度の双方の効果を調べるための、スクリーニング研究として設計された。予備研究は、ショ糖がナタリズマブに対する十分な短期的溶解保護特性を提供し、一方マンニトールはそうしないことを示していた。このため、初期スクリーニングはショ糖を溶解保護剤として用いて行った。また、初期の研究はナタリズマブの最適なpHがpH6であることも示していた。このpHで緩衝するためには、リン酸塩、クエン酸塩、およびヒスチジン緩衝液が最も一般的に使用される。リン酸緩衝液は、凍結時にpHが変化するため、タンパク質の凍結乾燥に使用するには最適ではない。クエン酸塩緩衝液は、一部の皮下製剤中での注射に際して、痛みに関与するとされている。その結果、好ましい緩衝液種としてヒスチジンを選択した。初期濃度は、製剤の調製を簡略化し、再構成後に最終濃度を30mM以下に維持するように6mMに固定した。研究3Aについて、タンパク質に十分な保護を与え、また最終濃度を0.1%以下に維持することが示されているため、ポリソルベート80の濃度は予備凍結乾燥溶液中0.02%に維持した。ショ糖の濃度は、等張に近い最終溶液をなお維持しながら、タンパク質対糖の1:1〜2:1の重量比を維持するように選択した。
【0080】
予備凍結乾燥および液体製剤
別表の表は、全ての製剤について記録された全ての結果を含む。目視検査では、全ての製剤の外観は、無色で透明から乳白色、目視による微粒子は全くなかった。予期された通り、乳白度はタンパク質濃度が上昇するにつれて幾分上昇した。分析の変動内でタンパク質濃度の変化を示した試料はなく、傾向は観察されなかった。360nmの吸光度で測定された混濁度は、研究の6ヶ月間(5℃)または12週間(30℃)に渡り、変化を示さなかった。40℃における予備凍結乾燥試料は、40、50、および75mg/mLの試料について、経時的に混濁度のわずかな上昇を示した。20mg/mLの予備凍結乾燥試料および高濃度液体は、40℃の試料中でこの傾向を示さなかった。
【0081】
全ての製剤についてダイマー、高分子量の凝集物、および低分子量種の形成を観測した。表形式の結果を、別表の表に示す。図1および2は、30℃および40℃における高分子量種の形成を示す。5℃では、6ヶ月間の保管の間、いずれの製剤においても高分子量種のレベルに変化はなかった。
【0082】
5℃のデータを本明細書に示す。30℃における結果は(図1)、12週間の保管後、いずれの予備凍結乾燥製剤についても高分子量種の形成における傾向を示さなかった。高濃度液体製剤は、30℃における6ヶ月間の保管期間に渡り、高分子量種の明確な増加を示した。
【0083】
40℃では、予備凍結乾燥製剤中、高分子量種の形成は4週間の保管後まで開始が見られなかった。その後、高分子量種の量は増加し続ける。高イオン強度の高濃度液体製剤は、高分子量種のより低い開始率を示したが、量は、40℃における3ヶ月の研究に渡って一定した割合で増加したようである。
【0084】
図3および4は、予備凍結乾燥溶液中の、30℃および40℃における低分子量種の形成を示す。3ヶ月間の保管の間、30℃における低分子量種のレベルにはごく小さな変化しかなかったが、明確な上昇傾向が見られた。6ヶ月では、高濃度液体のみを検定した。その時点では、ほぼ6%の、相当量の低分子量種が存在した。
【0085】
40℃における保管の間、低分子量種の形成には明確な傾向があった。この温度での形成率は、より高濃度の試料がより急速な形成を示し、幾分濃度依存性であると思われた。また、30℃および40℃における低分子量種の形成は、高分子量種の形成よりも速い速度で進行し、液体試料の重要な分解経路になっていると思われた。
【0086】
5℃で保管された試料について、6ヶ月の期間に渡り低分子量種の割合にはほとんど変化がなかった。本データは別表には示すが、本明細書には図示していない。全ての予備凍結乾燥製剤は、約0.6〜0.9%の初期レベルから6ヶ月で0.15%になった。高濃度液体は、5℃における6ヶ月間の保管後でさえも、いずれの低分子量種も示さなかった。
【0087】
図5、6、および7は、高分子量種および低分子量種の両方の形成により、それぞれの温度のモノマーの総消失率を示す。2〜8℃では、本質的にモノマー率に変化はなかった。これは、これらの製剤のいずれもが、2〜8℃における最長6ヶ月の保管の間、予備凍結乾燥製剤として好適に安定しているであろうことを示している。また、高濃度液体製剤も2〜8℃で変化を示さなかった。30℃における試料は、モノマーのほんのわずかな減少を示す。この変化は、低分子量種の形成によるものである。また、これは、これらの製剤のいずれもが、周囲温度でプロセシングを可能にする十分な安定性を呈することを示している。高濃度液体は、6ヶ月で、低分子量種の増加と同時であるモノマーの消失を示す。全ての製剤が、試験された3ヶ月間に渡って40℃においてモノマーの消失を示した。消失速度は、100mg/mLの液体および75mg/mLの予備凍結乾燥製剤が最も急速な消失速度を示し、タンパク質濃度と大まかに相関するようである。低分子量種の形成による分解機構のさらなる究明により、この分解経路のより良好な安定化が提供され得る。
【0088】
選択された試料を陽イオン交換クロマトグラフィで分析した。全ての場合で、結果は、時間および温度に基づく保管で、より酸性種(アミド分解)への変化を示した。種々の予備凍結乾燥製剤の間で差異はなかった。アミド分解は、概してpH、イオン強度、および特定の緩衝液種の影響を受けるため、この結果は予期される。高濃度液体製剤の分解は、5℃では予備凍結乾燥製剤と有意に異ならなかった。しかしながら、30℃および40℃の両方で有意に速い分解を示した。これは、恐らく高イオン強度およびリン酸塩緩衝液の存在によるものである。
【0089】
凍結乾燥製剤
表5〜12は、凍結乾燥製剤として5、30、および40℃で保管された試料の安定性についての結果を示す。全ての製剤を40℃で12週間、30℃および5℃で6ヶ月間保管した。さらに、製剤3944−18Bおよび3944−18Cは、30℃および5℃において1年後に分析した。
【0090】
残留水分について、初期時点で製剤を分析した。残留水分は、恐らく凍結乾燥周期中に遭遇した問題によって、所望よりも高かった。これらの試料の残留水分は、5〜6%の範囲であった。
【0091】
再構成時間が測定され、出発および最終タンパク質濃度と直接相関した。75mg/mLのタンパク質溶液から凍結乾燥されたケーキは、再構成に平均15〜20分を要した。50mg/mLから凍結乾燥された試料は、平均6〜7分を要し、40mg/mLからは5〜6分、20mg/mLからは4〜5分を要した。該値は不定であったが、保管時間または温度に関していずれの傾向も示さなかった。
【0092】
再構成バイアルを外観について調べた。全ての試料は透明から乳白色であり、無色で粒子を含まなかった。30℃で1年間保管された2つの製剤が、幾分わずかに黄色を示した。混濁度を、360nmの吸光度の関数として測定した。40℃で12週間保管された場合、全ての製剤が混濁度の上昇を示した。30℃で最長12ヶ月間保管された場合、全ての製剤が混濁度にそれほど有意ではない上昇を示した。製剤3944−18Cを除き、5℃で最長1年間保管された場合、全ての製剤が混濁度のわずかな上昇を示した。(別表E〜Hの表を参照)。材料の手充填および再構成に固有の正常な変動外には、タンパク質濃度における変化は観察されなかった。
【0093】
再構成試料を、低分子量および高分子量の両方の分解生成物の形成について、サイズ排除クロマトグラフィで分析した。低分子量の分解は一部の時点で明らかであったが、形成の傾向があるとは思われなかった。全ての時点での量はいずれの試料でも0.2%より低く、Biogenldecによる検定の検出限界であると見なされる。分解の主要な経路は、ダイマーおよび高次凝集物の形成を介してであった。経時的なモノマーの消失を図8、9、および10に示す。40℃における保管で幾分モノマーの消失があり、製剤3944−18Dおよび3944−18Cにおいて最も急速な消失であった。製剤39944−18Bおよび3944−18Aは、より目立たない減少傾向を示す。30℃で同位の傾向が見られ、3944−18Dおよび3944−18Cがより急速なモノマーの消失を示す。3944−18Aおよび3944−18Dについては最長6ヶ月間、ならびに3944−18Bおよび3944−18Cについては最長1年間、5℃でモノマーの消失を示した製剤はない。
【0094】
選択された試料を陽イオン交換クロマトグラフィで分析した。製剤の間ではいずれの差異も見られなかった。5℃で、71%の主ピークから66%の主ピークへの変化があった。酸性ピークの率は長期に渡りほぼ一定のままであったが、塩基性ピークの率は経時的に初期時点の8〜10%から1年後の14〜15%に増加した。30℃および40℃の試料は、同一傾向を呈し、塩基性ピークの率が30℃で1年後に18〜19%、40℃で3ヶ月後に22〜26%に到達した。この反応経路を特徴付け、分解種の起源を調べるためのさらなる作業が必要であろう。
【0095】
研究Bの結果
製剤の選択
ショ糖に加えて、ナタリズマブの安定性に対する賦形剤の効果を研究し、研究Aで見られた結果を検証するために、研究Bを設定した。研究Aからの結果に基づき、40〜50mg/mLの出発濃度が良好なケーキ形成および再構成特徴の双方に最適であると決定された。タンパク質対糖比は、50mg/mLの初期濃度で2:1の重量比に固定し、再構成濃度標的は200mg/mLとした。さらに、1つの製剤は、40mg/mLの出発濃度および160mg/mLの標的再構成濃度で調べた。また、この製剤は1.6:1の重量比のタンパク質対糖比を有した。
【0096】
製剤3976−4Cは、研究Aの3944−18Cと同じ製剤を含んだ。予備凍結乾燥溶液の安定性は研究Aで調べ、Bでは繰り返さなかった。文献からの報告では、高濃度のタンパク質溶液に添加した低レベルの塩化ナトリウムが、これらの溶液の粘度の低下を助け得ることが示されている。製剤3976−4Gは、NaClの効果を調べるために15mMのNaClを予備凍結乾燥調製物に添加した。ポリソルベート20(PS20)は、タンパク質製剤中で頻繁にポリソルベート80(PS80)の代わりに使用される。製剤3976−4Hでは、0.02%のPS80を当量のPS20に置き換えた。製剤3976−4Iでは、当量のトレハロースをショ糖に置き換えた。
【0097】
予備凍結乾燥製剤
予備凍結乾燥製剤を外観について分析した。保管温度に関わらず、いずれの溶液にも外観への有意な変化は生じなかった。これらは全て無色でわずかに乳白色であり、微粒子は現れなかった。いずれの製剤にもタンパク質濃度の変化はなかった。全ての時点で混濁度を測定した。製剤3976−4Gについて、初期混濁度測定値は高かったが、その後の時点でかなり一定のままであった。3976−4Gについて測定された値は他の製剤より全ての温度で高くあり続けたが、いずれの製剤においても混濁度における変化の傾向は観察されなかった。
【0098】
ダイマーおよび高分子量凝集物の形成、ならびに低分子断片によるモノマーの損失を観測した。先で見られたように、5℃において3ヶ月まで、いずれの試料についてもモノマー率に変化はなかった。また、製剤3976−4Kも5℃において6ヶ月で分析し、モノマー率に変化を示さなかった。図11および12は、それぞれ30℃および40℃における各製剤についての低分子量種の形成を示す。すでに見たように、全ての製剤中で、40℃で低分子量種の実質的な形成があり、より低いタンパク質濃度を有する3976−4K中でわずかに低い形成率であった。これらの結果は、研究Aで見られたものと同等であった。別様には、この反応に対する賦形剤の効果はないようであった。30℃で、低分子量種においてわずかな上昇があった。12週間後に0.2〜0.4%に到達するこの速度も、研究3Aですでに見たものと同等であった。
【0099】
PS20を含有した3976−4Hを除き、全ての製剤について40℃で高分子量種のわずかな増加があった(図13)。他の温度では、いずれの製剤についても高分子量における変化はなかった。全ての製剤が凝集物の形成に対して安定であり、主な分解経路は昇温での低分子量種の形成であるように思われた。これらの製剤のいずれもが、予備凍結乾燥バルク薬としてのさらなる開発に対して十分に安定であろう。
【0100】
全ての製剤に初期時点で陽イオン交換クロマトグラフィを行ったが、3976−4Kにだけは5℃における6ヶ月の保管後に行った。研究Aで見たように、保管に際し、より酸性種への変化があった。この分解は、pHおよび温度により促進される。
【0101】
凍結乾燥製剤
全ての試料を、初期時点で水分、ケーキの外観、および再構成時間について分析した。全てのケーキについて、ケーキの外観は許容可能であった。水分レベルは、5.4%の水分を有した製剤3976−4Iを除いて概して3〜4%であり、研究Aにおいてよりもわずかに低かった。全ての時点および温度での全ての試料についての再構成時間は概して許容可能であり、10〜14分を要する少数の例外を除いて10分未満であった。最も低い出発タンパク質濃度を有する製剤3976−4Kもより急速な再構成時間を示した。再構成時、3976−4Iおよび3976−4Gを除いた全ての試料が、全ての温度で最長12週間、無色でわずかに乳白色から乳白色であった。40℃における12週で、3976−4Iは非常に乳白色であった。30℃において6週および5℃および40℃において8週に始まり、3976−4Gは非常に乳白色であった。再構成中のより少ない起泡および気泡形成の傾向に見られるように、NaClの添加は製剤の粘度を低下するように思われたが、これは、溶液の乳白度の有意な上昇も示した。製剤3976−4Cは、5℃において6ヶ月および1年で分析した。5℃における1年後、3976−4Cはわずかに黄色を示した。製剤3976−4Kは、5℃および30℃における6ヶ月および1年で分析した。製剤3976−4Kは、30℃において6ヶ月間の保管後わずかに黄色を示したが、5℃における1年後は示さなかった。
【0102】
40℃において3ヶ月までサイズ排除クロマトグラフィで試料を分析した。5℃および30℃において試料は3ヶ月まで分析し、その後1年時点で分析を行った。さらに、製剤3976−4Cおよび3976−4Kも同様に6ヶ月で分析した。低分子量種の量は全ての試料中で0.2%未満であった。分解の主要な経路は、ダイマーおよび高分子量種の形成によった。図14、15、および16は、各温度の凝集物の形成によるモノマーの消失を示す。全ての温度において、トレハロースを含有する製剤3976−4Iにおけるモノマーの消失が、他の製剤よりも急速であることが明白である。PS20およびNaClを含有する製剤は、PS80と共にショ糖を含有する製剤と同等の分解を示した。製剤3976−4Kは、全ての温度において最も急速ではないモノマーの消失を示した。この製剤は、より低い出発タンパク質濃度、より低い再構成濃度、およびより高いショ糖対タンパク質比を有した。
【0103】
選択された試料を陽イオン交換クロマトグラフィで分析した。本検定からの結果は幾分不定であったが、全ての製剤が5℃における電荷分布における変化に対して安定なままであるように思われた。40℃で、全ての製剤が主ピークの減少、ならびに酸性および塩基性種の双方の増加を示した。この傾向は、30℃における1年間の保管後に分析された製剤3976−4Kからの試料中でも観察された。
5℃および40℃で保管された製剤3976−4Kは、8週時点で効力についてVCAM可溶化液およびジャーカット細胞検定の両方で分析した。結果を表に示す。
【0104】
【表4】
【0105】
結論
予備凍結乾燥バルク製剤
高濃度液体製剤では5℃において6ヶ月間までモノマーの消失がなかったが、恐らくアミド分解による、酸性種の増加があった。この製剤は、30℃において6ヶ月間、および40℃において3ヶ月間、高分子量および低分子量の両方の分解種の形成によりモノマーの消失を示した。現製剤の高タンパク質濃度の液体は、さらに最適化せずには市販の製剤として好適なものとしては十分な長期安定性を呈さない可能性がある。
【0106】
3〜6ヶ月間5℃で保管された場合、モノマーのいずれかの有意な損失を示す予備凍結乾燥製剤はなかった。これらの製剤についてのアミド分解の量における変化は、高濃度液体で見られたものと同等であった。30℃で保管された製剤は、3ヶ月までダイマーおよび高分子量凝集物の増加をほとんどまたは全く示さなかったが、形成された低分子量の断片化種の量の増加があった。40℃では、低分子量種の増加は高分子量種の増加よりも急速であった。低分子量種の増加の速度は、タンパク質濃度に相関すると思われた。
【0107】
一般に、ヒスチジン、ショ糖、およびPS80と共に50mg/mL以下のタンパク質濃度を含有する製剤は、予備凍結乾燥バルクとしての十分な安定性を示すように思われた。
【0108】
凍結乾燥製剤
50mg/mL以下から凍結乾燥され、100〜200mg/mLに再構成された製剤は、全ての温度および時点において、良好なケーキ形成および許容可能な再構成時間を示した。ヒスチジン、ショ糖、およびPS80を含有する製剤は、5℃において1年間までモノマー損失を有さなかった。これらの製剤の一部は、1年間の保管後に塩基性種のわずかな増加を示したが、この増加は、検定の変動性を鑑み、定量化し難い。昇温でのタンパク質分解の主要な経路は、ダイマーおよび高分子量凝集物の形成であった。NaClの添加は粘度を低下させたが、溶液の混濁度の上昇をもたらした。PS80のPS20への置き換えは、安定性に対して効果を有さないように思われたが、一方ショ糖のトレハロースへの置き換えは、凝集物の形成速度を増加した。
【0109】
ナタリズマブと共にショ糖、ヒスチジン、およびポリソルベート80を含有する凍結乾燥製剤は、前臨床および初期臨床研究へ移行するのに十分な安定性を示す。出発タンパク質濃度、ショ糖対タンパク質比、再構成タンパク質濃度、および凍結乾燥周期を最適化するためのさらなる研究を行う。さらに、再構成試料の安定性を調べる。
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
【表7】
【0113】
【表8】
【0114】
【表9】
【0115】
【表10】
【0116】
【表11】
【0117】
【表12】
【0118】
【表13】
【0119】
【表14】
【0120】
【表15】
【0121】
【表16】
【0122】
【表17】
【0123】
【表18】
【0124】
【表19】
【0125】
【表20】
【0126】
【表21】
【0127】
実施例3
以下に示すように、わずかに異なる初期タンパク質濃度を有する3つの製剤の凍結乾燥に成功し、5℃における6ヶ月間の保管時、優れた安定性を示した。40℃における8週間の保管時、これらの製剤の安定性は先に見られた安定性と同等のものだった。また、6ヶ月間5℃で保管された予備凍結乾燥製剤、および5℃または25℃のいずれかで1週間保管された再構成溶液の安定性も優れていた。40mg/mLの出発濃度は、他の製剤よりもわずかに良好な安定性および良好な再構成特徴を示した。しかしながらこの製剤の再構成は、150mg/mLの1mLの提供可能な用量を可能にした。
【0128】
材料
以下の表は、材料およびそれらの供給源を記載する。
【表22】
【0129】
【表23】
【0130】
ナタリズマブ
本研究に使用されたナタリズマブは、研究3Aおよび研究3Bで使用されたものと同じであった(AQS−2190)。これらの研究に使用したナタリズマブは、Biogenldecによって供給されたナタリズマブから調製した。本材料に含まれるポリソルベート80は、製剤化およびバイアル化されたもので、本製剤研究で使用前に除去した。手短に述べると、材料を低イオン強度、高pH(10mMのトリス、10mMのNaCl、pH=8.5)の緩衝液へ膜分離に供した。本材料をこれらの条件下でDEAE−Sepharoseカラムに結合させ、次いで10mMのリン酸ナトリウム、140mMのNaCl、pH6を用いて溶出した。次いで、カラム溶出液を6mMのヒスチジン(pH6)に膜分離し、さらなる製剤化の前に70〜100mg/mLに濃縮した。
【0131】
化学物質および試薬
本研究で使用された全ての化学物質および試薬は、注記されていない限りVWRから購入し、ACS以上のグレードであった。利用可能である場合、USPグレードの試薬を賦形剤として使用した。ポリソルベート80は、Sigma(目録番号P6474)から購入し、野菜由来および低過酸化物であった。
【0132】
製剤
賦形剤の保存液を希釈し、所望の濃度にして以下の製剤を調製した。全ての製剤がpH6であった。
【0133】
【表24】
【0134】
方法
製剤の調製
試料製剤を滅菌濾過し、示される通りガラス製滅菌バイアルに充填した。予備凍結乾燥分析用の全ての試料を3ccのバイアルに0.5mLで充填し、栓をし、キャップをした。凍結乾燥される調製物を5ccのKimbleバイアルに4.0mLで充填した。
【0135】
凍結乾燥周期
凍結相の間、試料を含むバイアルをまず5℃に冷却し、30分間保持した。次いで、温度を20分に渡って−5℃に下げ、−5℃で60分間保持した。凍結の最終段階には、45分に渡ってバイアルを−40℃に下げ、この温度で2時間保持し、そのうちの最後の20分は100mTorrの真空にかけた。次いで、100mTorrの真空下で温度を20分に渡って−25℃に取りながら一次乾燥を行い、そこで34時間保持した。棚温度を10時間に渡ってゆっくりと20℃に上昇させ、100mTorrで二次乾燥を開始し、次いで20℃で6時間保持した。
【0136】
研究設定
予備凍結乾燥液体および凍結乾燥ケーキのバイアルを5℃および40℃に置いた。40℃で保管された試料を2、4、および8週に検定した。5℃で保管された試料は4週および6ヶ月に検定した。4週時点で、各保管温度からの4本のバイアルを再構成し、その後再構成安定性に1週間、2本のバイアルを5℃に置き、2本のバイアルを25℃に置いた。全ての製剤を凍結乾燥前および後に、ゼロ時点で検定した。
【0137】
検定
試料を以下の方法で検定し、その結果を表27〜30に提示する。全ての時点で全ての検定が行われてはいない。予備凍結乾燥試料および凍結乾燥後試料のゼロ時点を除いて、各検定につき2組のバイアルを試料採取した。
【0138】
目視検査による外観
全ての試料を視覚的に検査し、その外観を記録した。凍結乾燥ケーキは、色、均一性、頑健性、および再融解の痕跡について調べた。液体および再構成試料は、色、透明度、および微粒子の存在について調べた。
【0139】
残留水分および再構成時間
ゼロ時点で、カールフィッシャー電量滴定装置を使用して残留水分について凍結乾燥ケーキを検定した。再構成時間は、適量のDI水を添加し、その後静かにかき混ぜて測定した。ケーキが完全に溶解する時間を記録した。
【0140】
濃度
ナタリズマブ偽薬を使用して試料を1mg/mLに希釈して、全ての試料の濃度を測定した。Varian Cary 300Bioおよび200nm/分の10mmの光路長キュベットを使用して、UV吸光度を400〜250nmで走査した。ラムダ最大値の吸光度を記録し、その値を1.498(ナタリズマブの吸光係数)で割り、適切に希釈することで調整して濃度を測定した。
【0141】
混濁度
適切な試料の300〜400nmの吸光度を、10mmの小容量キュベット(Starna Cells Inc.目録番号16.160−Q−10\Z20)を使用して測定した。360nmで記録された値を報告した。
【0142】
サイズ排除クロマトグラフィ
試料中のモノマー、高分子量凝集物、ダイマー、および低分子量種の量を、サイズ排除クロマトグラフィで測定した。手短に述べると、試料を適切なカラムに充填し、充填容積はカラム上で約400μgの質量を配分するように調整した。また、参照材料の充填質量も同程度に調整した。215および280nmの両方の検出を記録したが、主ピークは215nmでは目盛りの範囲外であったため、計算には280nmの痕跡を使用した。結果を表27〜30に示す。
【0143】
結果
予備凍結乾燥製剤
表27〜30は、全ての製剤について記録された結果を含む。目視検査では、全ての製剤の外観は、無色でわずかに乳白色、目視による微粒子は全くなかった。5℃または40℃では、外観は経時的に変化しなかった。分析の変動内でタンパク質濃度の変化を示した試料はなく、傾向は観察されなかった。360nmの吸光度で測定された全ての製剤の混濁度は、5℃において6ヶ月後わずかな上昇を示した。40℃の予備凍結乾燥試料は、3つの全ての製剤について経時的な混濁度の上昇を示した。
【0144】
全ての製剤について、ダイマー、高分子量(凝集物)、および低分子量種の形成を観測した。結果を表および図17〜19に示す。
【0145】
図17は、40℃における高分子量種の形成を示す。予備凍結乾燥製剤中では、高分子量種の形成は4週間の保管後まで開始が見られなかった。8週では、高分子量種の微増が明白であった。
【0146】
5℃では、6ヶ月の保管の間、いずれの製剤においても高分子量種のレベルに変化はなかった。本データは別表には示すが、本明細書には図示していない。
【0147】
図18は、40℃における低分子量種の形成を示す。40℃における保管の間、低分子量種の形成に明確な傾向があった。また、低分子量種の形成は、高分子量種の形成よりも速い速度で進行すると思われ、これにより液体試料の重要な分解経路になっている。
【0148】
5℃で保管された試料について、6ヶ月の期間に渡り低分子量種の割合にはほとんど変化がなかった。本データは別表には示されるが、本明細書には図示していない。全ての予備凍結乾燥製剤は、約0.11%の初期レベルから6ヶ月で0.18%になった。BiogenIdecは、この検定に対して0.2%のより低い定量限界を示した。そのレベル未満の値は、傾向情報のみのために報告する。
【0149】
図19は、高分子量種および低分子量種の両方の形成による、40℃におけるモノマーの総消失率を示す。5℃では、本質的にモノマー率の変化はなかった。これは、これらの製剤のいずれもが、予備凍結乾燥製剤として2〜8℃における最長6ヶ月の保管に好適に安定でしているであろうことを示している。
【0150】
選択された試料を陽イオン交換クロマトグラフィで分析した。全ての場合で、結果は、時間および温度に基づく保管で、より酸性種(アミド分解)への変化を示した。種々の予備凍結乾燥製剤の間で差異はなかった。アミド分解は、概してpH、イオン強度、および特定の緩衝液種の影響を受けるため、この結果は予期される。このデータを以下の表に示す。
【0151】
3つの全ての予備凍結乾燥製剤が、研究3Aおよび3Bでの予備凍結乾燥製剤と類似した結果を示した。
【0152】
凍結乾燥製剤
以下の表25は、150mg/mLのタンパク質濃度に到達するように試験された再構成容積を示す。そして、標的濃度に最も近いと判定された再構成容積を残りの研究に使用した。濃度は、各試料が完全に溶解してから確認した。4089−1L、4089−1M、および4089−1Nに使用された再構成容積は、それぞれ0.85、1.0、および1.1mLであった。
【0153】
【表25】
【0154】
以下の表26は、再構成試料から1mLの用量を除去する能力を示す。これは、1.1mLに再構成された4089−1Nについてのみ可能であった。これらのデータは、150mg/mLの1mLの提供可能な最終容積を生成するには、50mg/mLのタンパク質濃度で4mLの充填容積が必要であることを示している。
【0155】
【表26】
【0156】
安定性
目視検査では、全ての製剤が許容可能な凍結乾燥ケーキを有すると思われ、4mLの容積が5mLのバイアル中で凍結乾燥に成功し得ることを証明している。再構成後、全ての製剤の外観は、無色でわずかに乳白色、目視による微粒子は全くなかった。5℃または40℃では、外観は経時的に変化しなかった。分析の変動内でタンパク質濃度の変化を示した試料はなく、傾向は観察されなかった。360nmの吸光度で測定された全ての製剤の混濁度は、5℃において6ヶ月後、約0.099〜0.104から0.111〜0.116にわずかに上昇した。40℃における予備凍結乾燥試料は、全ての製剤について混濁度の経時的上昇を示した。
【0157】
凍結乾燥ケーキの水分率は、カールフィッシャー電量滴定装置の測定で4.3〜5.6の範囲であった。4089−1L、4089−1M、および4089−1Nの平均水分率は、それぞれ4.5、5.2、および4.9であった。これらの試料では水分が比較的高かった。
【0158】
本研究の再構成時間は、全て17分未満であった。図4は、40℃における再構成時間を示す。40℃における保管時、再構成時間のわずかな増加傾向があるようである。また、高出発タンパク質濃度の試料も再構成時間が長い傾向を示している。これは、前の研究(研究AおよびB)でも注目されたことである。
【0159】
全ての製剤についてダイマー、高分子量の凝集物、および低分子量種の形成を観測した。表形式の結果を、以下の表に示す。
【0160】
図5は、40℃における高分子量種の形成を示す。この温度での保管の間、明確な高分子量種の形成の傾向がある。凝集物の形成の速度は、製剤4089−1Lでわずかに遅いようであった。理論に束縛されるものではないが、これは、出発製剤の低タンパク質濃度またはわずかに高いショ糖対タンパク質比のいずれかによるものであり得る。
【0161】
5℃では、6ヶ月の保管の間いずれの製剤においても高分子量種のレベルに変化はなく、これは種々の時点のHMW%に示される。
【0162】
図6は、40℃における低分子量種の形成を示す。低分子量種の形成の急速な増加を呈した予備凍結乾燥試料とは対照的に、凍結乾燥試料は8週に渡り変化を示さなかった。5℃で保管された試料について、6ヶ月の期間に渡り、低分子量種の割合に変化はなかった。本データは別表に示すが、本明細書には図示していない。
【0163】
図7は、高分子量種および低分子量種の両方の形成による、40℃におけるモノマーの総消失率を示す。5℃では、本質的にモノマー率の変化はなかった。これは、これらの製剤のいずれもが、凍結乾燥製剤として2〜8℃における最長6ヶ月の保管に好適に安定でしているであろうことを示している。
【0164】
試料は、陽イオン交換クロマトグラフィでも分析した。全ての場合、結果は、40℃において8週間後、より塩基性種への変化を示した。電荷分布には検定の変動内のほんのわずかな変化しかなかった。また、選択試料は、その時点でより酸性種へのわずかな変化も示した。本データを以下の表の最後の欄に酸性%、主%、および塩基性%として示す。
【0165】
再構成安定性
5℃または40℃のいずれかにおける4週間の保管後、試料を再構成し、次いで再構成安定性に5℃および25℃に1週間置いた。初期時点および1週時に試験を行った。別表の表は、全ての製剤について記録された全ての結果を含む。目視検査では、全ての製剤の外観は無色でわずかに乳白色であった。2つを除く全ての試料が微粒子を含まないように思われた。「綿毛状」の白色微粒子を含む2本のバイアルを、再構成の前に40℃で保管し、次いで1週間25℃で保管した。初期時点の試験のために開封した際、分析者がこれらのバイアルを汚染した可能性がある。分析の変動内でタンパク質濃度の変化を示した試料はなく、傾向は観察されなかった。360nmの吸光度で測定された全ての製剤の混濁度は、5℃または25℃のいずれかにおける1週間後、分析の変動内で変化を示さなかった。
【0166】
全ての製剤について、ダイマー、高分子量(凝集物)、および低分子量種の形成を観測した。結果を以下の表に示す。再構成し、5℃または25℃に1週間置いた後、いずれの製剤においても高分子量種のレベルに変化はなかった。低分子量種のレベルは、再構成後25℃における保管時わずかに上昇したようであり、5℃における再構成後の保管後は本質的に同じであり続けた。これらの結果は、再構成し、その後5℃または25℃に1週間置いた場合、全ての製剤が安定なままであろうことを示している。
【0167】
再構成安定性用に5℃で保管された試料は、陽イオン交換クロマトグラフィでも分析した。3つの全ての製剤についての結果は、再構成前のそれらの保管温度に関わらず、1週間後、より酸性種のわずかな増加を示した。再構成前に5℃で保管されていた試料も、1週間の保管後、より塩基性種へのわずかな変化を示した。再構成の前に40℃で保管された試料は、5℃における1週間の保管後、それほどより塩基性種への変化を示さなかった。これらの変化は非常に軽微であり、タンパク質への実際の変化というよりも検定の変動性をより示している可能性がある。
【0168】
結論
前述の研究4は、4mLの容積が5mLのKimbleバイアル中での凍結乾燥に成功し得、許容可能なケーキ構造を有することを示した。
【0169】
150mg/mLの標的タンパク質濃度を生じると判定された再構成容積は、4089−1L(40mg/mLの予備凍結乾燥濃度)については0.85mL、4089−1M(45mg/mLの予備凍結乾燥濃度)については1.0mL、および4089−1N(50mg/mLの予備凍結乾燥濃度)については1.1mLであった。4089−1Nは、1mLの用量を提供できる唯一の製剤であり、1.1mLの水が必要とされる最小再構成容積であることを示している。これらの結果を用いて、充填容積、総固体および再構成容積に関して明らかになった最終提示を導くことができる。一般に、より低い初期タンパク質濃度およびより高いショ糖対タンパク質比を有する試料が、より短い再構成時間およびモノマーの消失に関してわずかに良好な安定性を示した。充填容積および再構成容積に基づき、これは、より低い最終タンパク質濃度がより望ましい生成物を生じ得ることを示している。
【0170】
再構成安定性は、5℃および25℃における1週間の保管時、モノマーの消失もなく、安定であることを示した。
【0171】
3つの全ての予備凍結乾燥製剤は、6ヶ月に渡り5℃で安定し続けた。しかしながら、40℃における保管時、全ての製剤が低分子量種の量の増加傾向を示した。その速い形成速度を鑑みると、低分子量種の形成が液体試料における重要な分解経路であると思われる。
【0172】
また、凍結乾燥製剤は、5℃で最長6ヶ月安定であることが判明した。40℃における保管時、高分子量種の量に明確な増加傾向があったが、一方低分子量種の量は同じままであった。これは、高分子量種の形成が凍結乾燥試料におけるより重要な分解経路であることを示している。残留水分レベルおよびショ糖対タンパク質比のさらなる最適化により、安定性が改善されるはずである。
【0173】
【表27】
【0174】
【表28】
【0175】
【表29】
【0176】
【表30】
【0177】
【表31】
【0178】
【表32】
【0179】
【表33】
【0180】
【表34】
【0181】
【表35】
【0182】
【表36】
【0183】
【表37】
【0184】
ナタリズマブ再製剤化の進展
【表38】
【0185】
実施例4
本研究の目的は、実験計画を用いて、ナタリズマブの凍結乾燥が凝集物の形成を防止および最小限に抑えるための、最終タンパク質濃度の効果、および最適なタンパク質対ショ糖比を決定することであった。
【0186】
実験計画パラメータ
40mg/mL〜160mg/mLの最終タンパク質濃度を1:100〜1:500のタンパク質対ショ糖比で調べた。ポリソルベート80の濃度は、10mg/mLのタンパク質当たり0.01%の量で一定に保持され、ヒスチジンは40mg/mLのタンパク質当たり10mMで一定に保持される。出発タンパク質濃度(予備凍結乾燥)は40mg/mLになる。バイアルを2mL充填で充填し、次いで所望の最終タンパク質濃度に再構成した。
摂氏40℃における短期安定性を0、2、4、および6週時に調べた。
手順:
1. 以下の緩衝液のうちの1つに対して現製剤を膜分離する。次いで、>40mg/mLのタンパク質濃度に限外濾過する。タンパク質濃度を測定し、40mg/mLに希釈する。
a. 製剤SA:100:1 ショ糖:タンパク質比―最終製剤7、8、9
b. 製剤SB:300:1 ショ糖:タンパク質比―最終製剤1、2、5、6、10
c. 製剤SC:500:1 ショ糖:タンパク質比―最終製剤3、4、11
2. 各製剤の20本のバイアルを2mL/バイアルで充填する。これを、40℃における安定性用に10本のバイアル、Tg、水分、FTIR分析、重量モル浸透圧濃度等用にさらなるバイアルに配分する。必要量:
a. 製剤SA:120mL
b. 製剤SB:200mL
c. 製剤SC:120mL
3. 水分を減少させるために保存的周期を用いてバイアルを凍結乾燥し、所望のタンパク質濃度に再構成する。
a. 製剤4、6、8―2mLで40mg/mLの最終濃度に再構成
b. 製剤1、2、5、6、10―0.8mLで100mg/mLの最終濃度を得るように再構成
c. 製剤1、3、9―0.5mLで160mg/mLの最終濃度を得るように再構成
4. 混濁度、濃度、外観、SECについて、2、4、および6週時に40度での安定性を調べる。0および6週時に、IEX、非還元SDS−PAGE、および酸化等の追加検定を行うことができる。
【0187】
【表39】
【0188】
【表40】
【0189】
【表41】
【0190】
【表42】
【0191】
【表43】
【0192】
【表44】
【0193】
【表45】
【0194】
【表46】
【0195】
【表47】
【0196】
【表48】
【0197】
【表49】
【0198】
【表50】
【0199】
【表51】
【0200】
【表52】
【0201】
【表53】
【0202】
【表54】
【0203】
【表55】
【0204】
【表56】
実施例25A、B、C、およびDも参照のこと。
【0205】
【表57】
【0206】
実施例5
本明細書に記載される製剤は、ナタリズマブ、ショ糖、ヒスチジン、およびポリソルベート80を含有する凍結乾燥ケーキである。予備凍結乾燥バルクは、40mg/mLの抗体、41mg/mLのショ糖、0.04%のポリソルベート80、および6mMのヒスチジンHCI(pH6.0)を含有する。これをバイアル当たり4mLで充填し、凍結乾燥し、1.0mLの水で120mg/mL、123mg/mLのショ糖、0.12%のポリソルベート80、および18mMのヒスチジンHCI(pH6.0)に再構成した。
【0207】
予備凍結乾燥ナタリズマブ組成物は、BiogenIdecにより提供された。それをリン酸緩衝生理食塩水に製剤化し、硫酸アンモニウム溶液に処理した。次いで、この材料を製剤緩衝液に膜分離し(ポリソルベートなしで)、40mg/mLに濃縮した。次いで、適当量のポリソルベート80を添加し、材料をポリプロピレンのビンに滅菌濾過し、充填および凍結乾燥前に2〜8℃で4週間保管した。充填および凍結乾燥は、書面によるバッチ記録を使用して非GMP室で行った。充填前に該室を衛生化し、全ての充填作業を層流フード下で行った。Virtis Gensis 25 EL凍結乾燥器を使用して凍結乾燥を行った。
【0208】
安定性研究は3部門からなり、1つでは推奨保管温度(2〜8℃)で最長1年間、および25℃の加速温度で最長6ヶ月、予備凍結乾燥ナタリズマブ組成物の安定性を調べた。凍結乾燥組成物のバイアルは、推奨保管温度(2〜8℃)で12ヶ月間、25℃で6ヶ月間、および40℃で3ヶ月間保管した。2〜8℃の部門からの種々の時点のバイアルを再構成し、2〜8℃(推奨温度)および25℃(加速)の両方で1週間保管した。
外観、A280、pH、非還元および還元SDS−PAGE、陽イオン交換クロマトグラフィ、およびサイズ排除クロマトグラフィについて、品質管理安定性試験を行った。
【0209】
材料、方法、および試験時点
以下の試料を試験する。
【表58】
【0210】
【表59】
【0211】
【表60】
【0212】
【表61】
【0213】
【表62】
【0214】
再構成安定性
以下の時点で4本のバイアルを2〜8℃から抜き、再構成し、次いで2〜8℃および25℃で1週間置き、再構成された材料の安定性を調べた。分析機器および時間を簡略化するために、これらの試料を予定された時点の1週間前に抜き、再構成し、所望の温度で置き、次いで他の試料と共に検定した。
【0215】
【表63】
【0216】
データ
別表A:各条件毎に置かれるバイアルの総数。注:2〜8℃の数字には、必要に応じて初期時点の試験が含まれる。
【表64】
【0217】
【表65】
【0218】
材料、方法、および試験時点
【表66】
【0219】
【表67】
【0220】
検定に必要な修正
サイズ排除クロマトグラフィは、データ収集がA280nmの波長で行われることを含むように修正する。
理由:約40μg〜400μgのカラム上の質量の増加は必然的に低感度の波長の使用を伴う。
第3.5節 表5:該表は、初期時点の試験、3ヶ月および12ヶ月もしくは研究終了時に合計4本のバイアルが必要であることを示すように修正される。
理由:この表は、水分試験のためにこれらの時点で2本の追加のバイアルが必要であったことを考慮に入れることを怠っている。本試験は破壊性であり、したがってバイアルの内容物をさらなる使用のために回復することはできない。
【0221】
【表68】
【0222】
【表69】
【0223】
【表70】
【0224】
【表71】
【0225】
【表72】
【0226】
【表73】
【0227】
【表74】
【0228】
【表75】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年6月14日出願の米国特許仮出願第60/929,133号、および2008年6月12日出願の米国出願公開第12/138,075号に対して、合衆国法典第35巻第119条に基づく優先権を主張し、その全体の内容は、参照としてその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して免疫グロブリンの医薬製剤分野に関する。具体的には、本発明は、安定した、凍結乾燥された高濃度の免疫グロブリン製剤に関する。本発明は、組換えヒト化抗α4インテグリン抗体であるナタリズマブの安定化された凍結乾燥製剤によって例示される。
【背景技術】
【0003】
ヒトへの投与を意図した薬剤調製物は、調製物の使用前の薬物の変化を防止するための安定剤を必要とし得る。タンパク質は、従来の有機および無機薬物より大きく、より複雑であるため(すなわち、タンパク質は複雑な三次元構造に加え、複数の官能基を有する)、タンパク質製剤は特別な問題が生じている。タンパク質の分解経路には、化学的不安定性(新しい化学物質がもたらされる結合形成または切断によるタンパク質の修飾を伴う任意のプロセス)、または物理的不安定性(タンパク質のより高次の構造における変化)を伴い得る。化学的不安定性は、アミド分解、ラセミ化、加水分解、酸化、β脱離、またはジスルフィド交換から生じ得る。物理的不安定性は、例えば変性、凝集、沈殿、または吸着から生じ得る。多くのタンパク質調製物は、非常に薄いまたは高濃度の溶液中で特に不安定であり、タンパク質調製物が保管あるいは出荷される際、しばしばこの不安定性が増す。したがって、タンパク質薬物分野において存在する大きな問題は、タンパク質の安定性および活性の両方を維持する製剤の開発にある。
【0004】
モノクローナル抗体を含む抗体は、製剤中のそれらの挙動および有効性に関連して、全て互いに様々に異なる。例えば、モノクローナル抗体は、等電点、溶解度、およびモノクローナル抗体が凝集する条件に関して互いに異なる。タンパク質は、製剤中のそれらの挙動および有効性に関して互いに異なり、ある製剤が特定の抗体に対して安定しているかどうかの予測を困難にする。タンパク質製剤における一般的な3つの課題には、タンパク質分解、凝集、アミド分解、および酸化が含まれる。さらに、製剤の安定性に影響を及ぼす多くの異なる反応が同時に生じ、どの反応がどの結果を引き起こしているのかの判断を困難にする。Cleland et al,“The Development of Stable Protein Formulations:A Close Look at Protein Aggregation,Deamidation,and Oxidation”,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,10(4):307−377(1993)(非特許文献1)を参照されたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,10(4):307−377(1993)
【発明の概要】
【0006】
具体的には、本発明は、安定した、凍結乾燥された高濃度の免疫グロブリン製剤に関する。本製剤の調製には、予備凍結乾燥水性製剤の調製、乾燥凍結工程、および再構成工程を含む、3つの工程が存在する。
【0007】
本発明は、水性製剤を凍結乾燥することによって調製される安定した凍結乾燥製剤を対象とし、水性製剤は、緩衝液、ポリソルベート、およびショ糖中の約40mg/ml〜約50mg/mlの免疫グロブリンを含有する。本発明の好ましい実施形態において、予備凍結乾燥水性製剤は、(a)約30mg/ml〜約60mg/mlのナタリズマブと、(b)約5.5〜約6.5のpHを有する緩衝液と、(c)約20mg/ml〜約50mg/mlのショ糖と、(d)約0.02%〜約0.08%のポリソルベートと、を含有する。より好ましい実施形態において、予備凍結乾燥水性製剤は、(a)約40mg/mlのナタリズマブと、約6mMのヒスチジン(pH約6.0)と、約41mg/mlのショ糖と、(d)約0.04%のポリソルベート80と、を含有する。
【0008】
凍結乾燥製剤は、免疫グロブリンの安定性を保持し、ヒト対象への投与を意図した免疫グロブリンが、最終生成物において凝集物および/または微粒子を形成するのを防止する。本凍結乾燥製剤は、室温で少なくとも3ヶ月間、好ましくは6ヶ月間、より好ましくは1年間安定である。また、凍結乾燥製剤は、1年間、好ましくは2年間、2〜8℃で安定である。本凍結乾燥製剤は、10分未満の短い再構成時間を有し、再構成後は筋肉内、皮下、静脈内、または腹腔内注射等の非経口投与に好適である。
【0009】
凍結乾燥製剤は、液体により、約80〜160mg/mlの免疫グロブリン濃度を含有する透明な溶液に再構成される。好ましい実施形態において、再構成製剤は、(i)約80mg/ml〜約160mg/mlのナタリズマブと、(ii)約6.0のpHの約18mMのヒスチジンと、(iii)約123mg/mlのショ糖と、(iv)約0.12%のポリソルベート80とを含有する。より好ましい実施形態において、再構成製剤は、約120mg/mlのナタリズマブを含有する。
【0010】
本発明の予備凍結乾燥製剤は、適切な乾燥パラメータを使用して凍結乾燥することができる。約−25℃の一次乾燥相温度および約80mTorr〜約120mTorrの圧力、ならびに約20℃の二次乾燥相および約80mTorr〜120mTorrの圧力の乾燥パラメータが好ましい。
本発明は、再構成製剤の作製および使用方法をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】30℃における高分子量種の形成を示す。
【図2】40℃における高分子量種の形成を示す。
【図3】予備凍結乾燥溶液中の、30℃における低分子量種の形成を示す。
【図4】予備凍結乾燥溶液中の、40℃における低分子量種の形成を示す。
【図5】高分子量種および低分量種の両方の形成による、5℃におけるモノマーの総消失率を示す。
【図6】高分子量種および低分量種の両方の形成による、30℃におけるモノマーの総消失率を示す。
【図7】高分子量種および低分量種の両方の形成による、40℃におけるモノマーの総消失率を示す。
【図8】5℃における凍結乾燥製剤中のモノマーの経時的消失を示す。
【図9】30℃における凍結乾燥製剤中のモノマーの経時的消失を示す。
【図10】40℃における凍結乾燥製剤中のモノマーの経時的消失を示す。
【図11】30℃における、各製剤に対する低分子量種の形成を示す。
【図12】40℃における、各製剤に対する低分子量種の形成を示す。
【図13】予備凍結乾燥製剤中の、40℃における高分子量種の形成を示す。
【図14】5℃における凝集物の形成によるモノマーの消失を示す。
【図15】30℃における凝集物の形成によるモノマーの消失を示す。
【図16】40℃における凝集物の形成によるモノマーの消失を示す。
【図17】40℃における予備凍結乾燥試料中の高分子量種の形成を示す。
【図18】40℃における予備凍結乾燥試料中の低分子量種の形成を示す。
【図19】高分子量種および低分量種の両方の形成による、40℃におけるモノマーの総消失率を示す。
【図20】40℃における再構成時間を示す。
【図21】40℃における凍結乾燥試料中の高分子量種の形成を示す。
【図22】40℃における凍結乾燥試料中の低分子量種の形成を示す。
【図23】高分子量種および低分量種の両方の形成による、40℃におけるモノマーの総消失率を示す。
【図24】(A)は5℃における予備凍結乾燥試料中の高分子量種の形成を示す。(B)は5℃における予備凍結乾燥試料中の低分子量種の形成を示す。(C)は5℃における予備凍結乾燥試料中のモノマーの消失を示す。
【図25】40℃における凍結乾燥試料中の高分子量種の形成を示す。
【図26】(A)は再構成試料中の、40℃における高分子量種の形成を示す。(B)は再構成試料中の、40℃における低分子量種の形成を示す。(C)は再構成試料中の、40℃におけるモノマーの消失を示す。(D)は再構成時間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.定義
本明細書で使用されるとき、「免疫グロブリン」という用語には、抗体および抗体断片(scFv、Fab、Fc、(Fab’)2等)、ならびに抗体の他の遺伝子操作された部分が含まれるが、それらに限定されない。その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの5つの主要なクラスがある。これらのうちのいくつかは、例えばIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4、ならびにIgAlおよびIgA2等の、サブクラス(アイソタイプ)にさらに分割することができる。
【0013】
「抗体」という用語は、最も広義の意味において使用され、具体的には、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、モノクローナル抗体(作動薬および拮抗薬抗体を含む)、ポリエピトープに特異性がある抗体組成物、および抗体断片(例えばFab、(Fab’)2、scFv、およびFv)を対象とする。「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、霊長類化抗体、および遺伝子操作を介して生成される他の抗体を含むことを意図する。
【0014】
本明細書で使用されるとき、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の固体群から得られる抗体を指し、すなわち、その個体群を構成する個々の抗体が、少量で存在し得る可能性がある自然発生的な一時変異またはグリコシル化変異形を除いて同一である。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均一な個体群から得られるという抗体の性質を表し、いずれかの特定の方法による抗体の生成を必要すると解釈されるものではない。また、「モノクローナル抗体」という用語には、重鎖および/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同であり、一方鎖の残りの部分は、別の種に由来するまたは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体、ならびにそれらが所望の生物学的活性を呈する限りそのような抗体の断片における、対応する配列と同一または相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)も含まれる。非ヒト(例えばマウス、ウサギ、ウシ、ウマ、ブタ等)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、もしくは抗体の他の抗原結合サブ配列等)である。
【0015】
「ナタリズマブ」という用語は、AN100226(抗体コード番号)としても知られる抗体を指し、TYSABRI(登録商標)(商標名、正式にはアンテグレン(登録商標))中の活性成分である。「ナタリズマブ」という用語は、米国一般名(USAN)(医薬用物質に与えられる正式な非専売名または一般名)である。ナタリズマブは、組換えヒト化抗α4インテグリン抗体である。ナタリズマブは、IgG4抗体である。参照として組み込まれる米国特許第5,840,299号は、日常的な合成および分子生物学的方法を用いた、ナタリズマブを含む組換えヒト化抗α4インテグリン抗体の作製方法を記述している。
【0016】
「凍結乾燥」、「凍結乾燥された」、および「フリーズドライされた」という用語は、乾燥する材料をまず凍結し、次いで真空環境中で昇華により氷または凍結した溶媒を除去するプロセスを指す。保管時に凍結乾燥された生成物の安定性を高めるために、1つ以上の賦形剤を予備凍結乾燥製剤に含むことができる。
「医薬製剤」という用語は、活性成分が有効であることを可能にする形態にあり、該製剤が投与される対象にとって毒性のあるさらなる成分を含有しない調製物を指す。
【0017】
「薬剤として許容される」賦形剤(媒体、添加物)とは、用いられる有効用量の活性成分を提供するために対象哺乳動物に合理的に投与することができるものである。
「再構成時間」とは、凍結乾燥製剤を溶液で粒子を含まない透明な溶液に再水和するために必要とされる時間である。
【0018】
「安定した」製剤とは、その中のタンパク質が、保管時にその物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物学的活性を本質的に保持するものである。タンパク質の安定性を測定するための種々の分析技術が当技術分野において利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery,247−301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)、およびJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29−90(1993)に概説される。安定性は、選択される時間の間、選択される温度で測定することができる。
【0019】
「安定した」凍結乾燥免疫グロブリン製剤とは、冷蔵温度(2〜8℃)で少なくとも12ヶ月間、好ましくは2年間、より好ましくは3年間、または室温(23〜27℃)で少なくとも3ヶ月間、好ましくは6ヶ月間、より好ましくは1年間、有意な変化が観察されない凍結乾燥された抗体製剤である。安定性の基準は、以下の通りである。SEC−HPLCで測定される抗体モノマーの10%以下が分解される。好ましくは、SEC−HPLCで測定される抗体モノマーの5%以下が分解される。再水和された溶液は、視覚分析で無色、または透明〜わずかに乳白色の間である。製剤の濃度、pH、および重量モル浸透圧濃度は、+/−10%以下の変化を有する。効力は、対照の70〜130%以内、好ましくは80〜120%以内である。10%以下のクリッピングが観察される。好ましくは、5%以下のクリッピングが観察される。10%以下の凝集が形成される。好ましくは、5%以下の凝集が形成される。
【0020】
免疫グロブリンは、色および/または透明度の目視検査時に、あるいはUV光散乱、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)、および動的光散乱によって測定される、凝集、沈殿、および/または変性に有意な増加が示されなければ、医薬製剤中で「物理的安定性を保持する」。タンパク質高次構造の変化は、タンパク質三次構造を決定する蛍光分光法、およびタンパク質二次構造を決定するFTIR分光法によって、評価することができる。
【0021】
免疫グロブリンは、有意な化学的変質を示さなければ、医薬製剤中で「化学的安定性を保持する」。化学的安定性は、タンパク質の化学的に変質した形態を検出および定量化することにより判断することができる。しばしばタンパク質の化学構造を変質する分解プロセスには、加水分解またはクリッピング(サイズ排除クロマトグラフィおよびSDS−PAGE等の方法によって評価される)、酸化(質量分析法またはMALDI/TOF/MSを併用するペプチドマッピング等による方法によって評価される)、アミド分解(イオン交換クロマトグラフィ、キャピラリー等電点電気泳動、ペプチドマッピング、イソアスパラギン酸の測定等の方法によって評価される)、ならびに異性化(イソアスパラギン酸含有量の測定、ペプチドマッピング等によって評価される)が挙げられる。
【0022】
免疫グロブリンは、所定の時点の免疫グロブリンの生物学的活性が、医薬製剤が調製された時点において呈される生物学的活性の所定の範囲内である場合、医薬製剤中で「その生物学的活性を保持する」。免疫グロブリンの生物学的活性は、例えば抗原結合検定によって決定することができる。
【0023】
「等張の」という用語は、該当する製剤がヒト血液と本質的に同一である浸透圧を有することを意味する。等張製剤は、概して約270〜328mOsmの浸透圧を有する。わずかに低張な圧力は250〜269mOsmであり、わずかに高張な圧力は328〜350mOsmである。浸透圧は、例えば蒸気圧、または氷凍結型の浸透圧計を使用して測定することができる。
【0024】
「緩衝液」という用語は、凍結乾燥前に溶液のpHを許容可能な範囲に維持する薬剤を包含し、ヒスチジン、コハク酸塩(ナトリウムまたはカリウム)、リン酸塩(ナトリウムまたはカリウム)、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、ジエタノールアミン、クエン酸塩(ナトリウム)、グルコン酸塩、および他の有機酸緩衝液が挙げられる。
【0025】
「張性調節剤」には、浸透圧を調節するために使用することができるNaCl、KCl、MgCl2、CaCl2等の塩が挙げられる。さらに、凍結保護剤(cryprotecant)、溶解保護剤(lyoprotectant)、および/またはショ糖、マンニトール、グリシン等の膨張性薬剤が、張性調節剤として機能し得る。
【0026】
本発明の文脈において、免疫グロブリンの「治療有効量」とは、免疫グロブリンが有効である治療に対して、疾患の予防または治療に有効な量を指す。「疾患」とは、免疫グロブリンを用いた治療から利益を得るであろう任意の状態である。これには、哺乳動物を問題の疾患に罹患しやすくする病態を含む、慢性および急性の疾患または疾病が含まれる。好ましくは、疾患とは、ナタリズマブ等のα4インテグリンを認識して結合する免疫グロブリンによって治療および/または予防され得るものである。
【0027】
「治療」とは、療法的治療、および予防または阻止措置の両方を指す。治療を必要とする者には、すでに疾患を有する者、ならびに疾患が予防されるべき者が挙げられる。
【0028】
「保存料」とは、製剤中に含むことができ、その中の細菌作用を本質的に減少させ、これにより例えば多用途製剤の生成を促進する化合物である。可能性のある保存料の例には、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物である塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物)、および塩化ベンゼトニウムが挙げられる。保存料の他の種類には、フェノール、ブチル、およびベンジルアルコール等の芳香族アルコール類、メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン類、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、およびm−クレゾールが挙げられる。
【0029】
「患者」または「対象」という用語は、任意の哺乳動物を含むことを意図する。「哺乳動物」は、治療を目的とする、哺乳動物として分類される任意の動物を指し、ヒト、家畜、および飼育動物、ならびにイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等の動物園、運動競技用、または愛玩動物を含むが、それらに限定されない。好ましくは、哺乳動物はヒトである。好ましくは、哺乳動物において治療される疾病または状態とは、治療有効用量のナタリズマブが投与されると調子が和らげられるものである。
【0030】
2.免疫グロブリン製剤
本発明の組成物は、凝集物および微粒子の形成を最小限に抑え、確実に溶液中の免疫グロブリンが長期間その免疫反応性を維持するようにする。該組成物は、中性または酸性pH(約5.5〜約6.5)を有する緩衝液中の免疫グロブリン、ショ糖、およびポリソルベートを含有する予備凍結乾燥水性製剤から調製される、無菌の薬剤として許容される凍結乾燥製剤を含む。
【0031】
好ましい実施形態において、免疫グロブリンは、約30〜約60mg/ml、より好ましくは約40〜約50mg/ml、さらに好ましくは約40mg/mlの濃度で予備凍結乾燥製剤中に存在する。好ましい免疫グロブリンは、IgG抗体、より好ましくはIgG4抗体、さらに好ましくはヒト化組換えIgG4抗体、最も好ましくはナタリズマブである。
【0032】
予備凍結乾燥製剤中では、pH約5.5〜約6.5の緩衝液が使用される。好ましくは、pHは約6.0である。好適な緩衝液の例には、ヒスチジン、コハク酸塩(コハク酸ナトリウム等)、グルコン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸緩衝液が挙げられる。好ましい予備凍結乾燥製剤は、ヒスチジン、好ましくは約1〜約12mMのヒスチジンを含有する。さらに好ましい予備凍結乾燥製剤は、約6mMのヒスチジンを含有する。
【0033】
また、予備凍結乾燥製剤はショ糖も含有する。ショ糖の好適な濃度は、約20〜約50mg/mlの範囲内、好ましくは約41mg/mlである。
また、予備凍結乾燥製剤は、ポリソルベート20またはポリソルベート80(すなわちそれぞれTween20およびTween80)、およびポロキサマー(例えばポロキサマー188)等のポリソルベートも含有する。好ましい実施形態において、ポリソルベートはポリソルベート80である。ポリソルベートは、好ましくは約0.02〜約0.08%、より好ましくは約0.04%の重量/容積濃度で存在する。
【0034】
予備凍結乾燥製剤中の免疫グロブリン対ショ糖の重量比は、好ましくは約2:1〜約0.5:1の範囲内、より好ましくは約1:1である。免疫グロブリン対ショ糖のモル比は、約300:1〜約500:1、好ましくは約400:1〜500:1、より好ましくは約450:1である。
【0035】
セリン、グリシン、およびマンニトール等の良好な凍結乾燥ケーキ特性を提供する膨張性薬剤を、本組成物に任意選択的に添加することができる。また、これらの薬剤は製剤の張性に寄与し、凍結融解プロセスに対して保護を提供し、長期的安定性を改善し得る。さらに、張性調節剤を製剤に添加して、浸透圧を調節することができる。製剤は、1つ以上の保存料をさらに含有し得る。
【0036】
好ましい予備凍結乾燥製剤とは、約40mg/mlのナタリズマブ、約6mMのヒスチジン(pH約6)、約0.04%のポリソルベート80、および約41mg/mlのショ糖を含有する製剤である。上記の予備凍結乾燥製剤は凍結乾燥されて乾燥かつ安定した粉末を形成し、これはヒトへの投与に好適な粒子を含まない溶液に容易に再構成され得る。
【0037】
凍結乾燥は、その生物学的活性を保存するために医薬生成物の調製においてしばしば使用されるフリーズドライプロセスである。液体組成物を調製し、次いで凍結乾燥させて、乾燥したケーキ状の生成物を形成する。該プロセスは、概して、氷を除去するために真空中で予め凍らせた試料を乾燥させ、非水成分を損なわずに、粉末状またはケーキ状の物質の形態に残す工程を伴う。凍結乾燥された生成物は、生物学的活性を消失することなく、長期に渡りかつ高温で保管することができ、適切な希釈剤を添加することにより、粒子を含まない溶液に容易に再構成することができる。適切な希釈剤は、生物学的に許容可能であり、凍結乾燥粉末が完全に溶解できる任意の液体であり得る。水、特に無菌の発熱物質を含まない水は、抗体の安定性に影響を及ぼし得る塩または他の化合物を含まないため、好ましい希釈剤である。凍結乾燥の利点は、含水量が、長期保管時の生成物の不安定性につながる種々の分子事象を大幅に減少する程度まで減少されることである。また、凍結乾燥された生成物は、出荷の物理的刺激を容易に耐えることができる。再構成された生成物は粒子を含まず、したがって事前に濾過せずに投与することができる。
【0038】
本発明の予備凍結乾燥製剤は、適切な凍結および乾燥パラメータを使用して凍結乾燥することができる。例えば、パラメータには、約10〜30分間、約10℃〜約−10℃を保持する予備凍結が含まれ得る。凍結パラメータには、約45分〜約75分の間に渡って−50℃〜−70℃の凍結が含まれ得る。さらなる凍結工程のためのパラメータには、−40℃〜約−60℃における凍結が含まれ得る。乾燥パラメータには、約−10℃〜−30℃、約40mTorr〜約120mTorrの圧力の一次乾燥相温度、ならびに約40mTorr〜120mTorrの圧力を用いる約10℃〜約25℃における二次乾燥相が含まれ得る。好ましい総周期時間は、約60〜100時間である。好ましい凍結乾燥周期には、予備凍結工程、凍結工程、一次乾燥工程、および二次乾燥工程が含まれ得る。凍結乾燥周期に関して考慮すべき事項には、凍結温度、圧力、一次乾燥、二次乾燥、および周期時間が挙げられる。
【0039】
例えば、好ましい凍結乾燥周期パラメータは、以下の通りであり得る。
まず、予備凍結として、0℃で15分間保持。
凍結するために、60分に渡って−60℃まで下降。−60℃で60分間保持。
さらなる凍結工程で、−50℃に上昇させて30分間保持。
一次乾燥のために、圧力を50mTorrに落として45分に渡って−15℃に上昇。−15℃および50mTの圧力で54時間保持。
二次乾燥のために、35分に渡って20℃に上昇させ、24時間保持。
総周期時間は82時間である。
【0040】
この凍結乾燥された生成物は、免疫グロブリンの免疫学的活性の安定性を保持し、ヒト対象への投与を意図した免疫グロブリンの最終生成物における物理的および化学的分解を防ぐ。
凍結乾燥された生成物は、粒子を含まない溶液を生じさせるために、使用時に希釈剤(例えば滅菌水または生理食塩水)中で再水和される。再構成された抗体溶液は、周囲温度で凍結乾燥ケーキを長期に渡って保管した後でさえも、粒子を含まない。再構成された溶液は、対象に非経口的に、好ましくは筋肉内もしくは皮下に投与することができる。
【0041】
凍結乾燥された生成物の重要な特徴は、再構成時間、または生成物を再水和するために要する時間である。非常に迅速かつ完全な再水和を可能にするためには、高度に多孔性の構造を持つケーキを有することが重要である。ケーキ構造は、タンパク質濃度、賦形剤の種類および濃度、ならびに凍結乾燥周期のプロセスのパラメータを含む、多くのパラメータの関数である。概して再構成時間はタンパク質濃度が増加するにつれて増加し、したがって短い再構成時間は高濃度の凍結乾燥抗体製剤の開発における重要な目標である。長い再構成時間は、タンパク質をより濃縮された溶液により長く曝露するため、生成物の品質を低下し得る。さらに、使用者側では、生成物が完全に再水和されるまで生成物を投与することができない。これは、生成物が微粒子を含まず、正しい薬用量が投与され、その無菌性が影響を受けないことを確実にするためである。したがって、10分未満の再水和時間等の迅速な再水和は、患者および医師により利便性を供する。
【0042】
凍結乾燥された生成物では、標的タンパク質濃度で製剤を凍結乾燥し、生成物を出発充填容積と同量で再構成することにより、所望の薬用量を得ることができる。また、所望の薬用量は、大量の希釈された製剤を凍結乾燥し、それをより少量で再構成することによって得ることもできる。例えば、所望の生成物薬用量が1mLの製剤中の100mgのタンパク質である場合、製剤は、1mLの100mg/mL、2mLの50mg/ml、または4mLの25mg/mLのタンパク質製剤の液体構成で凍結乾燥することができる。全ての場合において、最終生成物は、1mLの希釈剤で再構成し、100mg/mLの標的タンパク質濃度を得ることができる。しかしながら、予備凍結乾燥製剤中のタンパク質濃度が減少すると、充填容積は比例して増加する。これに付随して凍結乾燥周期(特に一次乾燥時間)の長さが増加し、したがって生成物の費用が著しく増大する。例えば、1mLの充填容積(バイアル中1mmの高さ)の凍結材料がその遊離水の昇華に約1時間を要する場合、10mLの充填容積(10mmの高さ)の凍結生成物は、約10時間の一次乾燥時間を要する。したがって、凍結乾燥プロセスがより効率的となるように、濃縮された予備凍結乾燥製剤(約40mg/ml〜約50mg/mlの免疫グロブリン濃度)を有することは有利である。
【0043】
本発明は、免疫グロブリンの生物学的、物理的、および化学的安定性を保持する乾燥製剤に効率的かつ効果的に凍結乾燥される、高濃度の予備凍結乾燥免疫グロブリン製剤(約40mg/ml〜約50mg/ml)を提供する。乾燥製剤は、室温で少なくとも3ヶ月間、好ましくは6ヶ月間安定である。乾燥製剤は、約80mg/ml〜約160mg/mlの免疫グロブリンを含有する粒子を含まない溶液に、10分未満の短時間で再構成することができる。そのような高濃度の抗体溶液は、静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下注射等の非経口投与ができる状態になっている。
【0044】
好ましい再構成された生成物は、約80mg/ml〜約160mg/mlのナタリズマブ、より好ましくは約120mg/mlのナタリズマブと、約123mg/mlのショ糖と、約0.12%のポリソルベート80と、約pH6.0の約18mMのヒスチジンとを含有する。
【0045】
3.分析方法
生成物の安定性を評価するための分析方法には、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)、動的光散乱試験(DLS)、示差走査熱量測定(DSC)、イソアスパラギン酸定量化、効力、340nmのUV、UV分光法、およびFTIRが挙げられる。SEC(J.Pharm.Scien.,83:1645−1650,(1994);Pharm.Res.,11:485(1994);J.Pharm.Bio.Anal.,15:1928(1997);J.Pharm.Bio.Anal.,14:1133−1140(1986))は、生成物中のモノマー率を測定し、可溶性凝集物の量の情報が得られる。抗体の効力または生物学的固有性は、その抗原に結合するその能力によって測定することができる。抗体のその抗原への特異的結合は、例えばELISA(酵素結合免疫吸着測定法)等の免疫測定法等の、当業者に既知である任意の方法により定量化することができる。以下の方法は、当業者に周知である生成物の安定性を評価するための、単に例示的方法であるにすぎない。一例として、340nmのUVで340nmの散乱光強度を測定し、可溶性および不溶性の凝集物の量に関する情報が得られる。UV分光法は278nmの吸光度を測定し、タンパク質濃度の情報が得られる。FTIR(Eur.J.Pharm.Biopharm.,45:231(1998);Pharm.Res.,12:1250(1995);J.Pharm.Scien.,85:1290(1996);J.Pharm.Scien.,87:1069(1998))は、アミド一領域のIRスペクトルを測定し、タンパク質二次構造の情報が得られる。特定の分析方法について、実験の項でさらに説明する(上記を参照)。
【0046】
4.再構成製剤の使用
本発明の再構成された免疫グロブリン製剤は、既知の方法に従って、免疫グロブリンを用いた治療を必要とする哺乳動物に投与することができる。これらの方法には、大量瞬時投与としての静脈内投与、または筋肉内、腹腔内、脳脊髄内(intracerobrospinal)、皮下、関節内、滑液嚢内、くも膜下腔内、経口、局所、もしくは吸入経路による、ある期間に渡る持続注入が挙げられるが、それらに限定されない。好ましい実施形態において、免疫グロブリン製剤は、筋肉内または皮下投与によって哺乳動物に投与される。典型的な日用量は、約1μg/kg〜約200mg/kg対象重量以上、より好ましくは約0.01mg/kg〜約150mg/kg対象重量、より好ましくは約0.1mg/kg〜約100mg/kg対象重量、より好ましくは約1mg/kg〜約75mg/kg対象重量、最も好ましくは約3mg/kg〜約6mg/kg対象重量の範囲であり得る。典型的には、医師は、所望の効果を達成する薬用量に到達するまで、免疫グロブリンを投与する。本療法の経過は、従来の方法および検定によって容易に監視することができる。
【0047】
免疫グロブリンの適切な薬用量は、例えば治療される状態、状態の重症度および経過、免疫グロブリンが予防目的あるいは治療目的で投与されるのか、以前の療法、患者の病歴および免疫グロブリンへの応答、使用される免疫グロブリンの種類、担当医の裁量に依存する。典型的には、臨床医は、所望の効果を達成する薬用量に到達するまで、免疫グロブリンを投与する。本療法の経過は、従来の検定によって容易に監視することができる。
【0048】
免疫グロブリンは、一度にまたは一連の治療に渡り、患者に好適に投与され、診断以降任意の時点で患者に投与され得る。免疫グロブリンは、単一治療として、または問題の治療に有用な他の薬物または療法と併用して投与され得る。本明細書で使用されるとき、場合、2つ(以上)の薬剤は、2つの薬剤が同時に投与されるか、または薬剤が同時期に作用するような様式で独立して投与される時、組み合わせて投与されるとされる。例えば、本発明のナタリズマブ製剤は、関節リウマチ、多発性硬化症(MS)、クローン病、および他のα4介在性疾病の治療のための他の治療薬または理学療法と組み合わせて投与することができる。
本発明を以下の実施例でさらに例証するが、本発明はそれらの中で記載される特定の手順の範囲に限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0049】
実施例1
ナタリズマブの、高濃度の再構成された凍結乾燥製剤と液体製剤との比較研究を、カニクイザルで行った。研究結果は、ナタリズマブの再構成された凍結乾燥製剤が、液体製剤と非常に類似した、予期された薬物動態学的および薬力学的プロファイルを生成したことを示した。
【0050】
ナタリズマブの高濃度の液体および再構成された凍結乾燥製剤を、それらのそれぞれの薬物動態/薬力学的プロファイル、相対的生物学的利用能、皮下(SC)および筋肉内(IM)投薬後の局所耐性を比較するように評価した。液体高濃度製剤(150mg/mL)および再構成された凍結乾燥(120mg/mL)高濃度製剤の両方を、1日目にそれぞれ血管外経路により投与し、それらの薬物動態/薬力学的プロファイルを36日目まで通して評価した。また、30mgの単一用量の市販の液体ナタリズマブも1日目に投与し、高濃度製剤の相対的生物学的利用能を決定した。36日目にSCおよびIM投与群の動物に2回目の注射を投与し、局所耐性を判定するために39日目に注射部位の生検を行った。
【0051】
被検物質の市販の液体ナタリズマブ、液体高濃度ナタリズマブ、および凍結乾燥高濃度ナタリズマブは、Biogen Idecにより供給された。再構成された凍結乾燥ナタリズマブの再構成流体、注射用滅菌水が、水溶液として供給された。各投薬日に保存被検物質の新しいバイアルを使用し、適切な濃度の投薬溶液を生じるように製剤化した。
30匹の実験的に無処置のカニクイザル(雄15匹および雌15匹)を、以下の表1に示すように5つの投与群に割り当てた。
【0052】
【表1】
【0053】
研究前のベースライン値と比較して、全ての群で、末梢血リンパ球(より少ない程度で、好酸球、好塩基球、および未分類細胞)における薬理学関連の増加が認められ、被検物質の予期された薬力学的効果であると見なされた。冒された白血球細胞のレベルの上昇は、概して、市販の製剤のより低いIV用量(典型的には8日目から15日目まで通して)に対して、ナタリズマブのより高いSCおよびIM用量(例えば8日目から36日目まで通して)を受けた個々の動物においてより長い期間持続した。しかしながら、被検物質、雌雄の別、または投与経路の、液体対凍結乾燥の高濃度製剤の関数としての、応答の規模または期間における一貫したまたは明白な差異はなかった。
【0054】
平均Tmaxは、市販の液体IV投与群で最も急速に達成され、高濃度製剤全体でSC群よりもIM群でより急速であった。平均Cmax値は、市販の液体IV投与群と比較すると、経路全体で用量比例よりも低く、血管外に投与された場合、高濃度製剤全体で一貫していた。平均tl/2値は、経路にかかわらず、全投与群に渡って一貫していた。
【0055】
平均AUClastおよびAUCinfの両方が、完全な吸収(すなわち100%の相対的生物学的利用能)を示し、製剤にかかわらず、SCおよびIM投与群において用量比例よりも高く、また、血管外に投与された場合、製剤全体で非常に一貫していた。
【0056】
循環リンパ球数、およびより低い程度で好酸球、好塩基球、および未分類細胞数において、予期された被検物質に関連する増加が見られ、研究前のベースラインと比較して全投与群に存在した。これらの結果は、α4インテグリン飽和プロファイルと一致し、ナタリズマブの薬理学的効果に起因する。冒された白血球細胞数の増加の期間は用量に依存し、典型的には、市販の液体製剤を静脈内に受けた群(典型的には8日目〜15日目)と比較して、液体高濃度ナタリズマブおよび凍結乾燥高濃度ナタリズマブ処理群(例えば8日目〜最高36日目)について高かった。ナタリズマブの高濃度液体と再構成された凍結乾燥製剤との間で、これらの白血球細胞個体群における変化に対して一貫した差異は観察されず、投与経路(皮下または筋肉内注射)もしくは動物の雌雄の別に関連すると見なされた差異は全くなかった。
【0057】
要約すれば、120mgの用量(再構成された凍結乾燥製剤)でのカニクイザルにおける皮下および筋肉内注射後、再構成された凍結乾燥高濃度ナタリズマブ製剤は、良好な耐性を示し、末梢血リンパ球数において予期された薬理学関連の増加を生成し、これは、市販の液体製剤の30mgの単回静脈内投与後と匹敵し、しかしわずかに長く持続した。
【0058】
実施例
ナタリズマブは、現在、1〜2時間かけてIV点滴で送達されている。これは、患者の病院または指定点滴センターへの訪問を必要とする。ナタリズマブの送達をより簡便にするためには、皮下投与が所望される。低濃度のバルク原薬から、次いで高濃度に再構成することができる凍結乾燥製剤を開発することは有利であった。本明細書に記載される本研究は、ショ糖を賦形剤として使用し、安定性に対する種々の出発および最終タンパク質濃度の効果をスクリーニングするために考案された(研究A)。本研究の第2部は、他の周知の溶解保護剤および賦形剤のタンパク質安定性に対する効果について、それらをスクリーニングするために考案された(研究B)。また、充填容積および再構成容積の観点からの製造可能性について実現可能である溶液を調べる努力もなされた。
【0059】
研究Aでは、4つの製剤を調製し、予備凍結乾燥バルクおよび凍結乾燥ケーキの双方について、出発タンパク質濃度および最終タンパク質濃度の実時間および加速安定性に対する効果を調べた。4つの全ての予備凍結乾燥製剤が、5℃において最長6ヶ月の保持時間の、予備凍結乾燥バルクとして使用されるのに十分な安定性を呈した。2つの凍結乾燥製剤が、さらなる製剤開発の候補として見なされるのに十分な製剤特徴および安定性を呈した。これらの製剤のうちの1つは、タンパク質対ショ糖の1:1の重量比を有する、40mg/mLの出発濃度および100mg/mLの再構成濃度から成った。第2の候補製剤は、タンパク質対ショ糖の2:1の重量比を有する、50mg/mLの出発濃度および200mg/mLの再構成濃度から成った。双方の製剤は、ヒスチジン緩衝液およびポリソルベート80を含有した。
【0060】
さらに、現在のナタリズマブ(Tysabri(登録商標))製剤と同一の賦形剤プロファイルを有する高濃度の液体製剤を調製した。この製剤は、アミド分解速度は凍結乾燥製剤においてよりも急速であったが、5℃で、さらなる開発の候補とみなされるのに十分な凝集物形成に対する安定性を示した。この製剤は、加速温度において、凍結乾燥製剤において同程度では観察されなかった、低分子量の分解生成物を形成する傾向を示した。
【0061】
実験計画
材料
本研究に使用されたナタリズマブは、Biogenldecにより供給され、2003年2月に製造されたナタリズマブから調製された。本材料は製剤化およびバイアル化されており、したがってこれらの製剤研究に使用する前に本材料を貯え、ポリソルベート80を除去する必要があった。手短に述べると、これは、低イオン強度、高pH(10mMのトリス、10mMのNaCl、pH8.5)の緩衝液へ膜分離することにより、達成された。本材料をこれらの条件下でDEAE−Sepharoseカラムに結合させ、次いでpH6で、10mMのリン酸ナトリウム、140mMのNaClを使用して溶出した。次いで、カラム溶出液を6mMのヒスチジン(pH6)に膜分離し、さらなる製剤化の前に70〜100mg/mLに濃縮した。
【0062】
化学物質および試薬
本研究で使用された全ての化学物質および試薬は、注記されていない限りVWRから購入し、ACS以上のグレードであった。入手可能である場合には、USPグレードの試薬を賦形剤として使用した。ポリソルベート80は、Sigma(目録番号P6474)から購入し、野菜由来および低過酸化物であった。
【0063】
研究Aの製剤
賦形剤および活性成分の保存液を希釈して表2:研究Aの製剤パラメータに示す所望の濃度にして、以下の製剤を調製した。全ての製剤をpH6に調製した。
【0064】
【表2】
【0065】
研究Bの製剤
賦形剤および活性成分の保存液を希釈して表3:研究Bの製剤パラメータに示す所望の濃度にして、以下の製剤を調製した。全ての製剤がpH6であった。
【0066】
【表3】
【0067】
方法
製剤の調製
溶液を滅菌濾過し、示される通りガラス製滅菌バイアルに充填した。予備凍結乾燥分析用の全ての試料および3944−18Lを2ccのバイアルに0.5mLで充填し、栓をし、キャップをした。凍結乾燥する調製物を5ccのKimbleバイアルに、製剤3944−18A―2.5mL、製剤3944−18B―1.25mL、製剤3944−18C―2mL、製剤3944−18D―1.5mLの容積に充填した。研究B用の全ての製剤を、5ccのKimbleバイアルに2mLで充填した。
【0068】
凍結乾燥周期
研究Aについて、バイアルを−20℃で凍結した。凍結乾燥器が正常に機能せず、温度が週末の間−70℃に落ちた。その後凍結乾燥周期の再開を試み、再凍結の前に3〜4℃へ温度が上昇した。凍結乾燥器を再起動し、周期を継続した。一次乾燥を、−20℃で20時間、100mTorrの真空で行った。次いで、温度を3時間に渡って20℃に上昇させ、二次乾燥のために30時間100mTorrで保持した。
【0069】
研究Bについて、確実に均一に凍結するように、バイアルを−50℃で2時間凍結した。次いで、100mTorrの真空下で20分間−40℃の温度にした。次いで、温度を100mTorrの真空で20分に渡って−25℃に上昇させ、20時間一次乾燥を続行した。棚温度を10時間に渡ってゆっくりと20℃に上昇させ、100mTorrで二次乾燥を開始し、次いで4時間20℃で保持した。
【0070】
研究設定
予備凍結乾燥液体のバイアル、高濃度液体対照、および凍結乾燥ケーキを、5、30、および40℃に置いた。40℃で保管した試料を2、4、8、および12週で検定した。30℃で保管した試料は3、6、9、および12週で検定した。5℃で保管した試料は4、8、および12週に検定した。一部の製剤について、30℃および5℃において追加のバイアルを6ヶ月および1年で分析した。全ての製剤を凍結乾燥前および後に、ゼロ時点で検定した。
【0071】
検定
試料は、以下の方法で検定した。全ての時点で全ての検定が行われてはいない。予備凍結乾燥試料のゼロ時点を除いて、各検定につき2組のバイアルを試料採取した。
【0072】
目視検査による外観
全ての試料を視覚的に検査し、その外観を記録した。凍結乾燥ケーキは、色、均一性、頑健性、および再融解の痕跡について調べた。液体および再構成試料は、色、透明度、および微粒子の存在について調べた。
【0073】
残留水分および再構成時間
凍結乾燥ケーキは、ゼロ時点でカールフィッシャーを用いて残留水分について検定した(BOP 000−01290)。再構成時間は、適量のDI水を添加し、その後静かにかき混ぜて測定した。ケーキが完全に溶解する時間を記録した(EOP 000−01292)。
【0074】
濃度
全ての試料の濃度を測定した。ナタリズマブ偽薬を使用して、試料を1mg/mLに希釈した。Varian 300Bio Spectrophotometerおよび200nm/分の1cmの光路長キュベットを使用して、UV吸光度を400〜240nmで走査した。ラムダ最大値の吸光度を記録し、その値を1.498(ナタリズマブの吸光係数)で割り、適切に希釈することで調整して濃度を測定した。
【0075】
混濁度
適切な試料の300〜400nmの吸光度を、10mmの小容量キュベット(Starna Cells Inc.目録番号16.160−Q−10\Z20)を使用して測定した。360nmで記録された値を報告した。
【0076】
サイズ排除クロマトグラフィ
モノマー、高分子量種、ダイマー、および低分子量種の量は、Biogen SOP 22d.505の修正形態を使用して測定した。試料を適切なカラムに充填し、充填容積はカラム上で約400μgの質量を配分するように調整した。また、参照材料の充填質量も同程度に調整した。215および280nmの両方の検出を記録したが、主ピークは215nmでは目盛りの範囲外であったため、本明細書で報告された計算には280nmの痕跡を使用した。
【0077】
陽イオン交換クロマトグラフィ
陽イオン交換クロマトグラフィを行った。クロマトグラフィシステムにおける差異のため、勾配を主ピークが9〜12分で溶出するようにわずかに修正した。使用されたシステムはバイナリポンプであったため、各組の分析後に高塩濃度洗浄のみ行った。いずれのピークの高塩濃度洗浄においても、遅い保持時間で溶出する証拠はなかった。高塩濃度洗浄は各試料後には行われなかったため、再平衡時間は7分に短縮した。
【0078】
効力
選択された試料の効力は、VCAM可溶化液検定(AAM 001−00965)、およびジャーカット細胞検定(AAM 001−00700)によって分析した。
【0079】
研究Aの結果
本研究は、凍結乾燥ケーキパラメータ、再構成時間、および安定性に対する初期タンパク質濃度および最終タンパク質濃度の双方の効果を調べるための、スクリーニング研究として設計された。予備研究は、ショ糖がナタリズマブに対する十分な短期的溶解保護特性を提供し、一方マンニトールはそうしないことを示していた。このため、初期スクリーニングはショ糖を溶解保護剤として用いて行った。また、初期の研究はナタリズマブの最適なpHがpH6であることも示していた。このpHで緩衝するためには、リン酸塩、クエン酸塩、およびヒスチジン緩衝液が最も一般的に使用される。リン酸緩衝液は、凍結時にpHが変化するため、タンパク質の凍結乾燥に使用するには最適ではない。クエン酸塩緩衝液は、一部の皮下製剤中での注射に際して、痛みに関与するとされている。その結果、好ましい緩衝液種としてヒスチジンを選択した。初期濃度は、製剤の調製を簡略化し、再構成後に最終濃度を30mM以下に維持するように6mMに固定した。研究3Aについて、タンパク質に十分な保護を与え、また最終濃度を0.1%以下に維持することが示されているため、ポリソルベート80の濃度は予備凍結乾燥溶液中0.02%に維持した。ショ糖の濃度は、等張に近い最終溶液をなお維持しながら、タンパク質対糖の1:1〜2:1の重量比を維持するように選択した。
【0080】
予備凍結乾燥および液体製剤
別表の表は、全ての製剤について記録された全ての結果を含む。目視検査では、全ての製剤の外観は、無色で透明から乳白色、目視による微粒子は全くなかった。予期された通り、乳白度はタンパク質濃度が上昇するにつれて幾分上昇した。分析の変動内でタンパク質濃度の変化を示した試料はなく、傾向は観察されなかった。360nmの吸光度で測定された混濁度は、研究の6ヶ月間(5℃)または12週間(30℃)に渡り、変化を示さなかった。40℃における予備凍結乾燥試料は、40、50、および75mg/mLの試料について、経時的に混濁度のわずかな上昇を示した。20mg/mLの予備凍結乾燥試料および高濃度液体は、40℃の試料中でこの傾向を示さなかった。
【0081】
全ての製剤についてダイマー、高分子量の凝集物、および低分子量種の形成を観測した。表形式の結果を、別表の表に示す。図1および2は、30℃および40℃における高分子量種の形成を示す。5℃では、6ヶ月間の保管の間、いずれの製剤においても高分子量種のレベルに変化はなかった。
【0082】
5℃のデータを本明細書に示す。30℃における結果は(図1)、12週間の保管後、いずれの予備凍結乾燥製剤についても高分子量種の形成における傾向を示さなかった。高濃度液体製剤は、30℃における6ヶ月間の保管期間に渡り、高分子量種の明確な増加を示した。
【0083】
40℃では、予備凍結乾燥製剤中、高分子量種の形成は4週間の保管後まで開始が見られなかった。その後、高分子量種の量は増加し続ける。高イオン強度の高濃度液体製剤は、高分子量種のより低い開始率を示したが、量は、40℃における3ヶ月の研究に渡って一定した割合で増加したようである。
【0084】
図3および4は、予備凍結乾燥溶液中の、30℃および40℃における低分子量種の形成を示す。3ヶ月間の保管の間、30℃における低分子量種のレベルにはごく小さな変化しかなかったが、明確な上昇傾向が見られた。6ヶ月では、高濃度液体のみを検定した。その時点では、ほぼ6%の、相当量の低分子量種が存在した。
【0085】
40℃における保管の間、低分子量種の形成には明確な傾向があった。この温度での形成率は、より高濃度の試料がより急速な形成を示し、幾分濃度依存性であると思われた。また、30℃および40℃における低分子量種の形成は、高分子量種の形成よりも速い速度で進行し、液体試料の重要な分解経路になっていると思われた。
【0086】
5℃で保管された試料について、6ヶ月の期間に渡り低分子量種の割合にはほとんど変化がなかった。本データは別表には示すが、本明細書には図示していない。全ての予備凍結乾燥製剤は、約0.6〜0.9%の初期レベルから6ヶ月で0.15%になった。高濃度液体は、5℃における6ヶ月間の保管後でさえも、いずれの低分子量種も示さなかった。
【0087】
図5、6、および7は、高分子量種および低分子量種の両方の形成により、それぞれの温度のモノマーの総消失率を示す。2〜8℃では、本質的にモノマー率に変化はなかった。これは、これらの製剤のいずれもが、2〜8℃における最長6ヶ月の保管の間、予備凍結乾燥製剤として好適に安定しているであろうことを示している。また、高濃度液体製剤も2〜8℃で変化を示さなかった。30℃における試料は、モノマーのほんのわずかな減少を示す。この変化は、低分子量種の形成によるものである。また、これは、これらの製剤のいずれもが、周囲温度でプロセシングを可能にする十分な安定性を呈することを示している。高濃度液体は、6ヶ月で、低分子量種の増加と同時であるモノマーの消失を示す。全ての製剤が、試験された3ヶ月間に渡って40℃においてモノマーの消失を示した。消失速度は、100mg/mLの液体および75mg/mLの予備凍結乾燥製剤が最も急速な消失速度を示し、タンパク質濃度と大まかに相関するようである。低分子量種の形成による分解機構のさらなる究明により、この分解経路のより良好な安定化が提供され得る。
【0088】
選択された試料を陽イオン交換クロマトグラフィで分析した。全ての場合で、結果は、時間および温度に基づく保管で、より酸性種(アミド分解)への変化を示した。種々の予備凍結乾燥製剤の間で差異はなかった。アミド分解は、概してpH、イオン強度、および特定の緩衝液種の影響を受けるため、この結果は予期される。高濃度液体製剤の分解は、5℃では予備凍結乾燥製剤と有意に異ならなかった。しかしながら、30℃および40℃の両方で有意に速い分解を示した。これは、恐らく高イオン強度およびリン酸塩緩衝液の存在によるものである。
【0089】
凍結乾燥製剤
表5〜12は、凍結乾燥製剤として5、30、および40℃で保管された試料の安定性についての結果を示す。全ての製剤を40℃で12週間、30℃および5℃で6ヶ月間保管した。さらに、製剤3944−18Bおよび3944−18Cは、30℃および5℃において1年後に分析した。
【0090】
残留水分について、初期時点で製剤を分析した。残留水分は、恐らく凍結乾燥周期中に遭遇した問題によって、所望よりも高かった。これらの試料の残留水分は、5〜6%の範囲であった。
【0091】
再構成時間が測定され、出発および最終タンパク質濃度と直接相関した。75mg/mLのタンパク質溶液から凍結乾燥されたケーキは、再構成に平均15〜20分を要した。50mg/mLから凍結乾燥された試料は、平均6〜7分を要し、40mg/mLからは5〜6分、20mg/mLからは4〜5分を要した。該値は不定であったが、保管時間または温度に関していずれの傾向も示さなかった。
【0092】
再構成バイアルを外観について調べた。全ての試料は透明から乳白色であり、無色で粒子を含まなかった。30℃で1年間保管された2つの製剤が、幾分わずかに黄色を示した。混濁度を、360nmの吸光度の関数として測定した。40℃で12週間保管された場合、全ての製剤が混濁度の上昇を示した。30℃で最長12ヶ月間保管された場合、全ての製剤が混濁度にそれほど有意ではない上昇を示した。製剤3944−18Cを除き、5℃で最長1年間保管された場合、全ての製剤が混濁度のわずかな上昇を示した。(別表E〜Hの表を参照)。材料の手充填および再構成に固有の正常な変動外には、タンパク質濃度における変化は観察されなかった。
【0093】
再構成試料を、低分子量および高分子量の両方の分解生成物の形成について、サイズ排除クロマトグラフィで分析した。低分子量の分解は一部の時点で明らかであったが、形成の傾向があるとは思われなかった。全ての時点での量はいずれの試料でも0.2%より低く、Biogenldecによる検定の検出限界であると見なされる。分解の主要な経路は、ダイマーおよび高次凝集物の形成を介してであった。経時的なモノマーの消失を図8、9、および10に示す。40℃における保管で幾分モノマーの消失があり、製剤3944−18Dおよび3944−18Cにおいて最も急速な消失であった。製剤39944−18Bおよび3944−18Aは、より目立たない減少傾向を示す。30℃で同位の傾向が見られ、3944−18Dおよび3944−18Cがより急速なモノマーの消失を示す。3944−18Aおよび3944−18Dについては最長6ヶ月間、ならびに3944−18Bおよび3944−18Cについては最長1年間、5℃でモノマーの消失を示した製剤はない。
【0094】
選択された試料を陽イオン交換クロマトグラフィで分析した。製剤の間ではいずれの差異も見られなかった。5℃で、71%の主ピークから66%の主ピークへの変化があった。酸性ピークの率は長期に渡りほぼ一定のままであったが、塩基性ピークの率は経時的に初期時点の8〜10%から1年後の14〜15%に増加した。30℃および40℃の試料は、同一傾向を呈し、塩基性ピークの率が30℃で1年後に18〜19%、40℃で3ヶ月後に22〜26%に到達した。この反応経路を特徴付け、分解種の起源を調べるためのさらなる作業が必要であろう。
【0095】
研究Bの結果
製剤の選択
ショ糖に加えて、ナタリズマブの安定性に対する賦形剤の効果を研究し、研究Aで見られた結果を検証するために、研究Bを設定した。研究Aからの結果に基づき、40〜50mg/mLの出発濃度が良好なケーキ形成および再構成特徴の双方に最適であると決定された。タンパク質対糖比は、50mg/mLの初期濃度で2:1の重量比に固定し、再構成濃度標的は200mg/mLとした。さらに、1つの製剤は、40mg/mLの出発濃度および160mg/mLの標的再構成濃度で調べた。また、この製剤は1.6:1の重量比のタンパク質対糖比を有した。
【0096】
製剤3976−4Cは、研究Aの3944−18Cと同じ製剤を含んだ。予備凍結乾燥溶液の安定性は研究Aで調べ、Bでは繰り返さなかった。文献からの報告では、高濃度のタンパク質溶液に添加した低レベルの塩化ナトリウムが、これらの溶液の粘度の低下を助け得ることが示されている。製剤3976−4Gは、NaClの効果を調べるために15mMのNaClを予備凍結乾燥調製物に添加した。ポリソルベート20(PS20)は、タンパク質製剤中で頻繁にポリソルベート80(PS80)の代わりに使用される。製剤3976−4Hでは、0.02%のPS80を当量のPS20に置き換えた。製剤3976−4Iでは、当量のトレハロースをショ糖に置き換えた。
【0097】
予備凍結乾燥製剤
予備凍結乾燥製剤を外観について分析した。保管温度に関わらず、いずれの溶液にも外観への有意な変化は生じなかった。これらは全て無色でわずかに乳白色であり、微粒子は現れなかった。いずれの製剤にもタンパク質濃度の変化はなかった。全ての時点で混濁度を測定した。製剤3976−4Gについて、初期混濁度測定値は高かったが、その後の時点でかなり一定のままであった。3976−4Gについて測定された値は他の製剤より全ての温度で高くあり続けたが、いずれの製剤においても混濁度における変化の傾向は観察されなかった。
【0098】
ダイマーおよび高分子量凝集物の形成、ならびに低分子断片によるモノマーの損失を観測した。先で見られたように、5℃において3ヶ月まで、いずれの試料についてもモノマー率に変化はなかった。また、製剤3976−4Kも5℃において6ヶ月で分析し、モノマー率に変化を示さなかった。図11および12は、それぞれ30℃および40℃における各製剤についての低分子量種の形成を示す。すでに見たように、全ての製剤中で、40℃で低分子量種の実質的な形成があり、より低いタンパク質濃度を有する3976−4K中でわずかに低い形成率であった。これらの結果は、研究Aで見られたものと同等であった。別様には、この反応に対する賦形剤の効果はないようであった。30℃で、低分子量種においてわずかな上昇があった。12週間後に0.2〜0.4%に到達するこの速度も、研究3Aですでに見たものと同等であった。
【0099】
PS20を含有した3976−4Hを除き、全ての製剤について40℃で高分子量種のわずかな増加があった(図13)。他の温度では、いずれの製剤についても高分子量における変化はなかった。全ての製剤が凝集物の形成に対して安定であり、主な分解経路は昇温での低分子量種の形成であるように思われた。これらの製剤のいずれもが、予備凍結乾燥バルク薬としてのさらなる開発に対して十分に安定であろう。
【0100】
全ての製剤に初期時点で陽イオン交換クロマトグラフィを行ったが、3976−4Kにだけは5℃における6ヶ月の保管後に行った。研究Aで見たように、保管に際し、より酸性種への変化があった。この分解は、pHおよび温度により促進される。
【0101】
凍結乾燥製剤
全ての試料を、初期時点で水分、ケーキの外観、および再構成時間について分析した。全てのケーキについて、ケーキの外観は許容可能であった。水分レベルは、5.4%の水分を有した製剤3976−4Iを除いて概して3〜4%であり、研究Aにおいてよりもわずかに低かった。全ての時点および温度での全ての試料についての再構成時間は概して許容可能であり、10〜14分を要する少数の例外を除いて10分未満であった。最も低い出発タンパク質濃度を有する製剤3976−4Kもより急速な再構成時間を示した。再構成時、3976−4Iおよび3976−4Gを除いた全ての試料が、全ての温度で最長12週間、無色でわずかに乳白色から乳白色であった。40℃における12週で、3976−4Iは非常に乳白色であった。30℃において6週および5℃および40℃において8週に始まり、3976−4Gは非常に乳白色であった。再構成中のより少ない起泡および気泡形成の傾向に見られるように、NaClの添加は製剤の粘度を低下するように思われたが、これは、溶液の乳白度の有意な上昇も示した。製剤3976−4Cは、5℃において6ヶ月および1年で分析した。5℃における1年後、3976−4Cはわずかに黄色を示した。製剤3976−4Kは、5℃および30℃における6ヶ月および1年で分析した。製剤3976−4Kは、30℃において6ヶ月間の保管後わずかに黄色を示したが、5℃における1年後は示さなかった。
【0102】
40℃において3ヶ月までサイズ排除クロマトグラフィで試料を分析した。5℃および30℃において試料は3ヶ月まで分析し、その後1年時点で分析を行った。さらに、製剤3976−4Cおよび3976−4Kも同様に6ヶ月で分析した。低分子量種の量は全ての試料中で0.2%未満であった。分解の主要な経路は、ダイマーおよび高分子量種の形成によった。図14、15、および16は、各温度の凝集物の形成によるモノマーの消失を示す。全ての温度において、トレハロースを含有する製剤3976−4Iにおけるモノマーの消失が、他の製剤よりも急速であることが明白である。PS20およびNaClを含有する製剤は、PS80と共にショ糖を含有する製剤と同等の分解を示した。製剤3976−4Kは、全ての温度において最も急速ではないモノマーの消失を示した。この製剤は、より低い出発タンパク質濃度、より低い再構成濃度、およびより高いショ糖対タンパク質比を有した。
【0103】
選択された試料を陽イオン交換クロマトグラフィで分析した。本検定からの結果は幾分不定であったが、全ての製剤が5℃における電荷分布における変化に対して安定なままであるように思われた。40℃で、全ての製剤が主ピークの減少、ならびに酸性および塩基性種の双方の増加を示した。この傾向は、30℃における1年間の保管後に分析された製剤3976−4Kからの試料中でも観察された。
5℃および40℃で保管された製剤3976−4Kは、8週時点で効力についてVCAM可溶化液およびジャーカット細胞検定の両方で分析した。結果を表に示す。
【0104】
【表4】
【0105】
結論
予備凍結乾燥バルク製剤
高濃度液体製剤では5℃において6ヶ月間までモノマーの消失がなかったが、恐らくアミド分解による、酸性種の増加があった。この製剤は、30℃において6ヶ月間、および40℃において3ヶ月間、高分子量および低分子量の両方の分解種の形成によりモノマーの消失を示した。現製剤の高タンパク質濃度の液体は、さらに最適化せずには市販の製剤として好適なものとしては十分な長期安定性を呈さない可能性がある。
【0106】
3〜6ヶ月間5℃で保管された場合、モノマーのいずれかの有意な損失を示す予備凍結乾燥製剤はなかった。これらの製剤についてのアミド分解の量における変化は、高濃度液体で見られたものと同等であった。30℃で保管された製剤は、3ヶ月までダイマーおよび高分子量凝集物の増加をほとんどまたは全く示さなかったが、形成された低分子量の断片化種の量の増加があった。40℃では、低分子量種の増加は高分子量種の増加よりも急速であった。低分子量種の増加の速度は、タンパク質濃度に相関すると思われた。
【0107】
一般に、ヒスチジン、ショ糖、およびPS80と共に50mg/mL以下のタンパク質濃度を含有する製剤は、予備凍結乾燥バルクとしての十分な安定性を示すように思われた。
【0108】
凍結乾燥製剤
50mg/mL以下から凍結乾燥され、100〜200mg/mLに再構成された製剤は、全ての温度および時点において、良好なケーキ形成および許容可能な再構成時間を示した。ヒスチジン、ショ糖、およびPS80を含有する製剤は、5℃において1年間までモノマー損失を有さなかった。これらの製剤の一部は、1年間の保管後に塩基性種のわずかな増加を示したが、この増加は、検定の変動性を鑑み、定量化し難い。昇温でのタンパク質分解の主要な経路は、ダイマーおよび高分子量凝集物の形成であった。NaClの添加は粘度を低下させたが、溶液の混濁度の上昇をもたらした。PS80のPS20への置き換えは、安定性に対して効果を有さないように思われたが、一方ショ糖のトレハロースへの置き換えは、凝集物の形成速度を増加した。
【0109】
ナタリズマブと共にショ糖、ヒスチジン、およびポリソルベート80を含有する凍結乾燥製剤は、前臨床および初期臨床研究へ移行するのに十分な安定性を示す。出発タンパク質濃度、ショ糖対タンパク質比、再構成タンパク質濃度、および凍結乾燥周期を最適化するためのさらなる研究を行う。さらに、再構成試料の安定性を調べる。
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
【表7】
【0113】
【表8】
【0114】
【表9】
【0115】
【表10】
【0116】
【表11】
【0117】
【表12】
【0118】
【表13】
【0119】
【表14】
【0120】
【表15】
【0121】
【表16】
【0122】
【表17】
【0123】
【表18】
【0124】
【表19】
【0125】
【表20】
【0126】
【表21】
【0127】
実施例3
以下に示すように、わずかに異なる初期タンパク質濃度を有する3つの製剤の凍結乾燥に成功し、5℃における6ヶ月間の保管時、優れた安定性を示した。40℃における8週間の保管時、これらの製剤の安定性は先に見られた安定性と同等のものだった。また、6ヶ月間5℃で保管された予備凍結乾燥製剤、および5℃または25℃のいずれかで1週間保管された再構成溶液の安定性も優れていた。40mg/mLの出発濃度は、他の製剤よりもわずかに良好な安定性および良好な再構成特徴を示した。しかしながらこの製剤の再構成は、150mg/mLの1mLの提供可能な用量を可能にした。
【0128】
材料
以下の表は、材料およびそれらの供給源を記載する。
【表22】
【0129】
【表23】
【0130】
ナタリズマブ
本研究に使用されたナタリズマブは、研究3Aおよび研究3Bで使用されたものと同じであった(AQS−2190)。これらの研究に使用したナタリズマブは、Biogenldecによって供給されたナタリズマブから調製した。本材料に含まれるポリソルベート80は、製剤化およびバイアル化されたもので、本製剤研究で使用前に除去した。手短に述べると、材料を低イオン強度、高pH(10mMのトリス、10mMのNaCl、pH=8.5)の緩衝液へ膜分離に供した。本材料をこれらの条件下でDEAE−Sepharoseカラムに結合させ、次いで10mMのリン酸ナトリウム、140mMのNaCl、pH6を用いて溶出した。次いで、カラム溶出液を6mMのヒスチジン(pH6)に膜分離し、さらなる製剤化の前に70〜100mg/mLに濃縮した。
【0131】
化学物質および試薬
本研究で使用された全ての化学物質および試薬は、注記されていない限りVWRから購入し、ACS以上のグレードであった。利用可能である場合、USPグレードの試薬を賦形剤として使用した。ポリソルベート80は、Sigma(目録番号P6474)から購入し、野菜由来および低過酸化物であった。
【0132】
製剤
賦形剤の保存液を希釈し、所望の濃度にして以下の製剤を調製した。全ての製剤がpH6であった。
【0133】
【表24】
【0134】
方法
製剤の調製
試料製剤を滅菌濾過し、示される通りガラス製滅菌バイアルに充填した。予備凍結乾燥分析用の全ての試料を3ccのバイアルに0.5mLで充填し、栓をし、キャップをした。凍結乾燥される調製物を5ccのKimbleバイアルに4.0mLで充填した。
【0135】
凍結乾燥周期
凍結相の間、試料を含むバイアルをまず5℃に冷却し、30分間保持した。次いで、温度を20分に渡って−5℃に下げ、−5℃で60分間保持した。凍結の最終段階には、45分に渡ってバイアルを−40℃に下げ、この温度で2時間保持し、そのうちの最後の20分は100mTorrの真空にかけた。次いで、100mTorrの真空下で温度を20分に渡って−25℃に取りながら一次乾燥を行い、そこで34時間保持した。棚温度を10時間に渡ってゆっくりと20℃に上昇させ、100mTorrで二次乾燥を開始し、次いで20℃で6時間保持した。
【0136】
研究設定
予備凍結乾燥液体および凍結乾燥ケーキのバイアルを5℃および40℃に置いた。40℃で保管された試料を2、4、および8週に検定した。5℃で保管された試料は4週および6ヶ月に検定した。4週時点で、各保管温度からの4本のバイアルを再構成し、その後再構成安定性に1週間、2本のバイアルを5℃に置き、2本のバイアルを25℃に置いた。全ての製剤を凍結乾燥前および後に、ゼロ時点で検定した。
【0137】
検定
試料を以下の方法で検定し、その結果を表27〜30に提示する。全ての時点で全ての検定が行われてはいない。予備凍結乾燥試料および凍結乾燥後試料のゼロ時点を除いて、各検定につき2組のバイアルを試料採取した。
【0138】
目視検査による外観
全ての試料を視覚的に検査し、その外観を記録した。凍結乾燥ケーキは、色、均一性、頑健性、および再融解の痕跡について調べた。液体および再構成試料は、色、透明度、および微粒子の存在について調べた。
【0139】
残留水分および再構成時間
ゼロ時点で、カールフィッシャー電量滴定装置を使用して残留水分について凍結乾燥ケーキを検定した。再構成時間は、適量のDI水を添加し、その後静かにかき混ぜて測定した。ケーキが完全に溶解する時間を記録した。
【0140】
濃度
ナタリズマブ偽薬を使用して試料を1mg/mLに希釈して、全ての試料の濃度を測定した。Varian Cary 300Bioおよび200nm/分の10mmの光路長キュベットを使用して、UV吸光度を400〜250nmで走査した。ラムダ最大値の吸光度を記録し、その値を1.498(ナタリズマブの吸光係数)で割り、適切に希釈することで調整して濃度を測定した。
【0141】
混濁度
適切な試料の300〜400nmの吸光度を、10mmの小容量キュベット(Starna Cells Inc.目録番号16.160−Q−10\Z20)を使用して測定した。360nmで記録された値を報告した。
【0142】
サイズ排除クロマトグラフィ
試料中のモノマー、高分子量凝集物、ダイマー、および低分子量種の量を、サイズ排除クロマトグラフィで測定した。手短に述べると、試料を適切なカラムに充填し、充填容積はカラム上で約400μgの質量を配分するように調整した。また、参照材料の充填質量も同程度に調整した。215および280nmの両方の検出を記録したが、主ピークは215nmでは目盛りの範囲外であったため、計算には280nmの痕跡を使用した。結果を表27〜30に示す。
【0143】
結果
予備凍結乾燥製剤
表27〜30は、全ての製剤について記録された結果を含む。目視検査では、全ての製剤の外観は、無色でわずかに乳白色、目視による微粒子は全くなかった。5℃または40℃では、外観は経時的に変化しなかった。分析の変動内でタンパク質濃度の変化を示した試料はなく、傾向は観察されなかった。360nmの吸光度で測定された全ての製剤の混濁度は、5℃において6ヶ月後わずかな上昇を示した。40℃の予備凍結乾燥試料は、3つの全ての製剤について経時的な混濁度の上昇を示した。
【0144】
全ての製剤について、ダイマー、高分子量(凝集物)、および低分子量種の形成を観測した。結果を表および図17〜19に示す。
【0145】
図17は、40℃における高分子量種の形成を示す。予備凍結乾燥製剤中では、高分子量種の形成は4週間の保管後まで開始が見られなかった。8週では、高分子量種の微増が明白であった。
【0146】
5℃では、6ヶ月の保管の間、いずれの製剤においても高分子量種のレベルに変化はなかった。本データは別表には示すが、本明細書には図示していない。
【0147】
図18は、40℃における低分子量種の形成を示す。40℃における保管の間、低分子量種の形成に明確な傾向があった。また、低分子量種の形成は、高分子量種の形成よりも速い速度で進行すると思われ、これにより液体試料の重要な分解経路になっている。
【0148】
5℃で保管された試料について、6ヶ月の期間に渡り低分子量種の割合にはほとんど変化がなかった。本データは別表には示されるが、本明細書には図示していない。全ての予備凍結乾燥製剤は、約0.11%の初期レベルから6ヶ月で0.18%になった。BiogenIdecは、この検定に対して0.2%のより低い定量限界を示した。そのレベル未満の値は、傾向情報のみのために報告する。
【0149】
図19は、高分子量種および低分子量種の両方の形成による、40℃におけるモノマーの総消失率を示す。5℃では、本質的にモノマー率の変化はなかった。これは、これらの製剤のいずれもが、予備凍結乾燥製剤として2〜8℃における最長6ヶ月の保管に好適に安定でしているであろうことを示している。
【0150】
選択された試料を陽イオン交換クロマトグラフィで分析した。全ての場合で、結果は、時間および温度に基づく保管で、より酸性種(アミド分解)への変化を示した。種々の予備凍結乾燥製剤の間で差異はなかった。アミド分解は、概してpH、イオン強度、および特定の緩衝液種の影響を受けるため、この結果は予期される。このデータを以下の表に示す。
【0151】
3つの全ての予備凍結乾燥製剤が、研究3Aおよび3Bでの予備凍結乾燥製剤と類似した結果を示した。
【0152】
凍結乾燥製剤
以下の表25は、150mg/mLのタンパク質濃度に到達するように試験された再構成容積を示す。そして、標的濃度に最も近いと判定された再構成容積を残りの研究に使用した。濃度は、各試料が完全に溶解してから確認した。4089−1L、4089−1M、および4089−1Nに使用された再構成容積は、それぞれ0.85、1.0、および1.1mLであった。
【0153】
【表25】
【0154】
以下の表26は、再構成試料から1mLの用量を除去する能力を示す。これは、1.1mLに再構成された4089−1Nについてのみ可能であった。これらのデータは、150mg/mLの1mLの提供可能な最終容積を生成するには、50mg/mLのタンパク質濃度で4mLの充填容積が必要であることを示している。
【0155】
【表26】
【0156】
安定性
目視検査では、全ての製剤が許容可能な凍結乾燥ケーキを有すると思われ、4mLの容積が5mLのバイアル中で凍結乾燥に成功し得ることを証明している。再構成後、全ての製剤の外観は、無色でわずかに乳白色、目視による微粒子は全くなかった。5℃または40℃では、外観は経時的に変化しなかった。分析の変動内でタンパク質濃度の変化を示した試料はなく、傾向は観察されなかった。360nmの吸光度で測定された全ての製剤の混濁度は、5℃において6ヶ月後、約0.099〜0.104から0.111〜0.116にわずかに上昇した。40℃における予備凍結乾燥試料は、全ての製剤について混濁度の経時的上昇を示した。
【0157】
凍結乾燥ケーキの水分率は、カールフィッシャー電量滴定装置の測定で4.3〜5.6の範囲であった。4089−1L、4089−1M、および4089−1Nの平均水分率は、それぞれ4.5、5.2、および4.9であった。これらの試料では水分が比較的高かった。
【0158】
本研究の再構成時間は、全て17分未満であった。図4は、40℃における再構成時間を示す。40℃における保管時、再構成時間のわずかな増加傾向があるようである。また、高出発タンパク質濃度の試料も再構成時間が長い傾向を示している。これは、前の研究(研究AおよびB)でも注目されたことである。
【0159】
全ての製剤についてダイマー、高分子量の凝集物、および低分子量種の形成を観測した。表形式の結果を、以下の表に示す。
【0160】
図5は、40℃における高分子量種の形成を示す。この温度での保管の間、明確な高分子量種の形成の傾向がある。凝集物の形成の速度は、製剤4089−1Lでわずかに遅いようであった。理論に束縛されるものではないが、これは、出発製剤の低タンパク質濃度またはわずかに高いショ糖対タンパク質比のいずれかによるものであり得る。
【0161】
5℃では、6ヶ月の保管の間いずれの製剤においても高分子量種のレベルに変化はなく、これは種々の時点のHMW%に示される。
【0162】
図6は、40℃における低分子量種の形成を示す。低分子量種の形成の急速な増加を呈した予備凍結乾燥試料とは対照的に、凍結乾燥試料は8週に渡り変化を示さなかった。5℃で保管された試料について、6ヶ月の期間に渡り、低分子量種の割合に変化はなかった。本データは別表に示すが、本明細書には図示していない。
【0163】
図7は、高分子量種および低分子量種の両方の形成による、40℃におけるモノマーの総消失率を示す。5℃では、本質的にモノマー率の変化はなかった。これは、これらの製剤のいずれもが、凍結乾燥製剤として2〜8℃における最長6ヶ月の保管に好適に安定でしているであろうことを示している。
【0164】
試料は、陽イオン交換クロマトグラフィでも分析した。全ての場合、結果は、40℃において8週間後、より塩基性種への変化を示した。電荷分布には検定の変動内のほんのわずかな変化しかなかった。また、選択試料は、その時点でより酸性種へのわずかな変化も示した。本データを以下の表の最後の欄に酸性%、主%、および塩基性%として示す。
【0165】
再構成安定性
5℃または40℃のいずれかにおける4週間の保管後、試料を再構成し、次いで再構成安定性に5℃および25℃に1週間置いた。初期時点および1週時に試験を行った。別表の表は、全ての製剤について記録された全ての結果を含む。目視検査では、全ての製剤の外観は無色でわずかに乳白色であった。2つを除く全ての試料が微粒子を含まないように思われた。「綿毛状」の白色微粒子を含む2本のバイアルを、再構成の前に40℃で保管し、次いで1週間25℃で保管した。初期時点の試験のために開封した際、分析者がこれらのバイアルを汚染した可能性がある。分析の変動内でタンパク質濃度の変化を示した試料はなく、傾向は観察されなかった。360nmの吸光度で測定された全ての製剤の混濁度は、5℃または25℃のいずれかにおける1週間後、分析の変動内で変化を示さなかった。
【0166】
全ての製剤について、ダイマー、高分子量(凝集物)、および低分子量種の形成を観測した。結果を以下の表に示す。再構成し、5℃または25℃に1週間置いた後、いずれの製剤においても高分子量種のレベルに変化はなかった。低分子量種のレベルは、再構成後25℃における保管時わずかに上昇したようであり、5℃における再構成後の保管後は本質的に同じであり続けた。これらの結果は、再構成し、その後5℃または25℃に1週間置いた場合、全ての製剤が安定なままであろうことを示している。
【0167】
再構成安定性用に5℃で保管された試料は、陽イオン交換クロマトグラフィでも分析した。3つの全ての製剤についての結果は、再構成前のそれらの保管温度に関わらず、1週間後、より酸性種のわずかな増加を示した。再構成前に5℃で保管されていた試料も、1週間の保管後、より塩基性種へのわずかな変化を示した。再構成の前に40℃で保管された試料は、5℃における1週間の保管後、それほどより塩基性種への変化を示さなかった。これらの変化は非常に軽微であり、タンパク質への実際の変化というよりも検定の変動性をより示している可能性がある。
【0168】
結論
前述の研究4は、4mLの容積が5mLのKimbleバイアル中での凍結乾燥に成功し得、許容可能なケーキ構造を有することを示した。
【0169】
150mg/mLの標的タンパク質濃度を生じると判定された再構成容積は、4089−1L(40mg/mLの予備凍結乾燥濃度)については0.85mL、4089−1M(45mg/mLの予備凍結乾燥濃度)については1.0mL、および4089−1N(50mg/mLの予備凍結乾燥濃度)については1.1mLであった。4089−1Nは、1mLの用量を提供できる唯一の製剤であり、1.1mLの水が必要とされる最小再構成容積であることを示している。これらの結果を用いて、充填容積、総固体および再構成容積に関して明らかになった最終提示を導くことができる。一般に、より低い初期タンパク質濃度およびより高いショ糖対タンパク質比を有する試料が、より短い再構成時間およびモノマーの消失に関してわずかに良好な安定性を示した。充填容積および再構成容積に基づき、これは、より低い最終タンパク質濃度がより望ましい生成物を生じ得ることを示している。
【0170】
再構成安定性は、5℃および25℃における1週間の保管時、モノマーの消失もなく、安定であることを示した。
【0171】
3つの全ての予備凍結乾燥製剤は、6ヶ月に渡り5℃で安定し続けた。しかしながら、40℃における保管時、全ての製剤が低分子量種の量の増加傾向を示した。その速い形成速度を鑑みると、低分子量種の形成が液体試料における重要な分解経路であると思われる。
【0172】
また、凍結乾燥製剤は、5℃で最長6ヶ月安定であることが判明した。40℃における保管時、高分子量種の量に明確な増加傾向があったが、一方低分子量種の量は同じままであった。これは、高分子量種の形成が凍結乾燥試料におけるより重要な分解経路であることを示している。残留水分レベルおよびショ糖対タンパク質比のさらなる最適化により、安定性が改善されるはずである。
【0173】
【表27】
【0174】
【表28】
【0175】
【表29】
【0176】
【表30】
【0177】
【表31】
【0178】
【表32】
【0179】
【表33】
【0180】
【表34】
【0181】
【表35】
【0182】
【表36】
【0183】
【表37】
【0184】
ナタリズマブ再製剤化の進展
【表38】
【0185】
実施例4
本研究の目的は、実験計画を用いて、ナタリズマブの凍結乾燥が凝集物の形成を防止および最小限に抑えるための、最終タンパク質濃度の効果、および最適なタンパク質対ショ糖比を決定することであった。
【0186】
実験計画パラメータ
40mg/mL〜160mg/mLの最終タンパク質濃度を1:100〜1:500のタンパク質対ショ糖比で調べた。ポリソルベート80の濃度は、10mg/mLのタンパク質当たり0.01%の量で一定に保持され、ヒスチジンは40mg/mLのタンパク質当たり10mMで一定に保持される。出発タンパク質濃度(予備凍結乾燥)は40mg/mLになる。バイアルを2mL充填で充填し、次いで所望の最終タンパク質濃度に再構成した。
摂氏40℃における短期安定性を0、2、4、および6週時に調べた。
手順:
1. 以下の緩衝液のうちの1つに対して現製剤を膜分離する。次いで、>40mg/mLのタンパク質濃度に限外濾過する。タンパク質濃度を測定し、40mg/mLに希釈する。
a. 製剤SA:100:1 ショ糖:タンパク質比―最終製剤7、8、9
b. 製剤SB:300:1 ショ糖:タンパク質比―最終製剤1、2、5、6、10
c. 製剤SC:500:1 ショ糖:タンパク質比―最終製剤3、4、11
2. 各製剤の20本のバイアルを2mL/バイアルで充填する。これを、40℃における安定性用に10本のバイアル、Tg、水分、FTIR分析、重量モル浸透圧濃度等用にさらなるバイアルに配分する。必要量:
a. 製剤SA:120mL
b. 製剤SB:200mL
c. 製剤SC:120mL
3. 水分を減少させるために保存的周期を用いてバイアルを凍結乾燥し、所望のタンパク質濃度に再構成する。
a. 製剤4、6、8―2mLで40mg/mLの最終濃度に再構成
b. 製剤1、2、5、6、10―0.8mLで100mg/mLの最終濃度を得るように再構成
c. 製剤1、3、9―0.5mLで160mg/mLの最終濃度を得るように再構成
4. 混濁度、濃度、外観、SECについて、2、4、および6週時に40度での安定性を調べる。0および6週時に、IEX、非還元SDS−PAGE、および酸化等の追加検定を行うことができる。
【0187】
【表39】
【0188】
【表40】
【0189】
【表41】
【0190】
【表42】
【0191】
【表43】
【0192】
【表44】
【0193】
【表45】
【0194】
【表46】
【0195】
【表47】
【0196】
【表48】
【0197】
【表49】
【0198】
【表50】
【0199】
【表51】
【0200】
【表52】
【0201】
【表53】
【0202】
【表54】
【0203】
【表55】
【0204】
【表56】
実施例25A、B、C、およびDも参照のこと。
【0205】
【表57】
【0206】
実施例5
本明細書に記載される製剤は、ナタリズマブ、ショ糖、ヒスチジン、およびポリソルベート80を含有する凍結乾燥ケーキである。予備凍結乾燥バルクは、40mg/mLの抗体、41mg/mLのショ糖、0.04%のポリソルベート80、および6mMのヒスチジンHCI(pH6.0)を含有する。これをバイアル当たり4mLで充填し、凍結乾燥し、1.0mLの水で120mg/mL、123mg/mLのショ糖、0.12%のポリソルベート80、および18mMのヒスチジンHCI(pH6.0)に再構成した。
【0207】
予備凍結乾燥ナタリズマブ組成物は、BiogenIdecにより提供された。それをリン酸緩衝生理食塩水に製剤化し、硫酸アンモニウム溶液に処理した。次いで、この材料を製剤緩衝液に膜分離し(ポリソルベートなしで)、40mg/mLに濃縮した。次いで、適当量のポリソルベート80を添加し、材料をポリプロピレンのビンに滅菌濾過し、充填および凍結乾燥前に2〜8℃で4週間保管した。充填および凍結乾燥は、書面によるバッチ記録を使用して非GMP室で行った。充填前に該室を衛生化し、全ての充填作業を層流フード下で行った。Virtis Gensis 25 EL凍結乾燥器を使用して凍結乾燥を行った。
【0208】
安定性研究は3部門からなり、1つでは推奨保管温度(2〜8℃)で最長1年間、および25℃の加速温度で最長6ヶ月、予備凍結乾燥ナタリズマブ組成物の安定性を調べた。凍結乾燥組成物のバイアルは、推奨保管温度(2〜8℃)で12ヶ月間、25℃で6ヶ月間、および40℃で3ヶ月間保管した。2〜8℃の部門からの種々の時点のバイアルを再構成し、2〜8℃(推奨温度)および25℃(加速)の両方で1週間保管した。
外観、A280、pH、非還元および還元SDS−PAGE、陽イオン交換クロマトグラフィ、およびサイズ排除クロマトグラフィについて、品質管理安定性試験を行った。
【0209】
材料、方法、および試験時点
以下の試料を試験する。
【表58】
【0210】
【表59】
【0211】
【表60】
【0212】
【表61】
【0213】
【表62】
【0214】
再構成安定性
以下の時点で4本のバイアルを2〜8℃から抜き、再構成し、次いで2〜8℃および25℃で1週間置き、再構成された材料の安定性を調べた。分析機器および時間を簡略化するために、これらの試料を予定された時点の1週間前に抜き、再構成し、所望の温度で置き、次いで他の試料と共に検定した。
【0215】
【表63】
【0216】
データ
別表A:各条件毎に置かれるバイアルの総数。注:2〜8℃の数字には、必要に応じて初期時点の試験が含まれる。
【表64】
【0217】
【表65】
【0218】
材料、方法、および試験時点
【表66】
【0219】
【表67】
【0220】
検定に必要な修正
サイズ排除クロマトグラフィは、データ収集がA280nmの波長で行われることを含むように修正する。
理由:約40μg〜400μgのカラム上の質量の増加は必然的に低感度の波長の使用を伴う。
第3.5節 表5:該表は、初期時点の試験、3ヶ月および12ヶ月もしくは研究終了時に合計4本のバイアルが必要であることを示すように修正される。
理由:この表は、水分試験のためにこれらの時点で2本の追加のバイアルが必要であったことを考慮に入れることを怠っている。本試験は破壊性であり、したがってバイアルの内容物をさらなる使用のために回復することはできない。
【0221】
【表68】
【0222】
【表69】
【0223】
【表70】
【0224】
【表71】
【0225】
【表72】
【0226】
【表73】
【0227】
【表74】
【0228】
【表75】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性製剤を凍結乾燥することによって調製される安定した凍結乾燥製剤であって、前記水性製剤は、
(a)約20mg/ml〜約80mg/mlのナタリズマブと、
(b)約5.5〜約6.5のpHを有する緩衝液と、
(c)約20mg/ml〜約80mg/mlのショ糖と、
(d)約0.02〜約0.08%のポリソルベートと、を含む、
安定した凍結乾燥製剤。
【請求項2】
前記水性製剤は、約30mg/ml〜約80mg/mlのナタリズマブを含む、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項3】
前記水性製剤は、約40mg/mlのナタリズマブを含む、請求項2に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項4】
前記緩衝液は、約6.0のpHを有する、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項5】
前記緩衝液は、ヒスチジンである、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項6】
前記ヒスチジンは、約1mM〜約12mMの濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項5に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項7】
前記ヒスチジンは、約6mMの濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項6に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項8】
前記ショ糖は、約20mg/ml〜約80mg/mlの濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項9】
前記ショ糖は、約41mg/mlの濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項8に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項10】
前記ポリソルベートは、ポリソルベート80である、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項11】
前記ポリソルベート80は、約0.02%〜約0.08%の濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項10に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項12】
前記ポリソルベート80は、約0.04%の濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項11に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項13】
前記水性製剤中のナタリズマブ対ショ糖の重量比は、約0.5:1〜約2:1である、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項14】
前記水性製剤中のナタリズマブ対ショ糖の重量比は、約1:1である、請求項13に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項15】
前記水性製剤中のショ糖対ナタリズマブのモル比は、約300:1〜約500:1である、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項16】
前記水性製剤中のショ糖対ナタリズマブのモル比は、約400:1〜約500:1である、請求項15に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項17】
前記水性製剤中のショ糖対ナタリズマブのモル比は、約450:1である、請求項16に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項18】
前記水性製剤は、膨張性薬剤をさらに含む、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項19】
前記水性製剤は、張性調節剤をさらに含む、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項20】
前記水性製剤は、
(a)約40mg/mlのナタリズマブと、
(b)約6mMのヒスチジン(pH約6.0)と、
(c)約41mg/mlのショ糖と、
(d)約0.04%のポリソルベート80と、を含む、
請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項21】
(i)約80〜約160mg/mlのナタリズマブと、
(ii)約6.0のpHの約18mMのヒスチジンと、
(iii)約123mg/mlのショ糖と、
(iv)約0.12%のポリソルベート80と、を含む、安定した再構成製剤であって、前記再構成製剤は、
(a)約40mg/mlのナタリズマブと、
(b)約6mMのヒスチジン(pH約6.0)と、
(c)約41mg/mlのショ糖と、
(d)約0.04%のポリソルベート80と、を含む、水性製剤を凍結乾燥することによって調製される安定した凍結乾燥製剤から調製されている、再構成製剤。
【請求項22】
前記安定した再構成製剤は、約120mg/mlのナタリズマブを含む、請求項21に記載の安定した再構成製剤。
【請求項23】
(a)約30〜約60mg/mlのナタリズマブと、
(b)約5.5〜約6.5のpHを有する緩衝液と、
(c)約20〜約50mg/mlのショ糖と、
(d)約0.02〜約0.08%のポリソルベートと、を含む、
水性製剤を凍結乾燥することによって調製されている凍結乾燥製剤を再構成する工程を含む、安定した再構成製剤を調製するための方法。
【請求項24】
前記水性製剤は、約40mg/ml〜約50mg/mlのナタリズマブを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項25】
前記水性製剤は、約40mg/mlのナタリズマブを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項26】
前記緩衝液は、約6.0のpHを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記緩衝液は、ヒスチジンである、請求項23記載の方法。
【請求項28】
前記ヒスチジンは、約1mM〜約12mMの濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項29】
前記ヒスチジンは、約6mMの濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項29に記載の方法。
【請求項30】
前記ショ糖は、約20mg/ml〜約50mg/mlの濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記ショ糖は、約40mg/mlの濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項31に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項32】
前記ポリソルベートは、ポリソルベート80である、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリソルベート80は、約0.02%〜約0.08%の濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリソルベート80は、約0.04%の濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記水性製剤中のナタリズマブ対ショ糖の重量比は、約0.5:1〜約2:1である、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
前記水性製剤中のナタリズマブ対ショ糖の重量比は、約1:1である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記水性製剤中のショ糖対ナタリズマブのモル比は、約300:1〜約500:1である、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
前記水性製剤中のショ糖対ナタリズマブのモル比は、約400:1〜約500:1である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記水性製剤中のショ糖対ナタリズマブのモル比は、約450:1である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記水性製剤は、膨張性薬剤をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項41】
前記水性製剤は、張性調節剤をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項42】
前記水性製剤は、
(a)約40mg/mlのナタリズマブと、
(b)約6mMのヒスチジン(pH約6.0)と、
(c)約41mg/mlのショ糖と、
(d)約0.04%のポリソルベート80と、を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項43】
対象を治療するための方法であって、前記対象に請求項23に記載の治療有効量の安定した再構成製剤を投与する工程を含み、前記対象は、ナタリズマブを投与することによって治療され得る疾患を有する、方法。
【請求項1】
水性製剤を凍結乾燥することによって調製される安定した凍結乾燥製剤であって、前記水性製剤は、
(a)約20mg/ml〜約80mg/mlのナタリズマブと、
(b)約5.5〜約6.5のpHを有する緩衝液と、
(c)約20mg/ml〜約80mg/mlのショ糖と、
(d)約0.02〜約0.08%のポリソルベートと、を含む、
安定した凍結乾燥製剤。
【請求項2】
前記水性製剤は、約30mg/ml〜約80mg/mlのナタリズマブを含む、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項3】
前記水性製剤は、約40mg/mlのナタリズマブを含む、請求項2に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項4】
前記緩衝液は、約6.0のpHを有する、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項5】
前記緩衝液は、ヒスチジンである、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項6】
前記ヒスチジンは、約1mM〜約12mMの濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項5に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項7】
前記ヒスチジンは、約6mMの濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項6に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項8】
前記ショ糖は、約20mg/ml〜約80mg/mlの濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項9】
前記ショ糖は、約41mg/mlの濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項8に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項10】
前記ポリソルベートは、ポリソルベート80である、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項11】
前記ポリソルベート80は、約0.02%〜約0.08%の濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項10に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項12】
前記ポリソルベート80は、約0.04%の濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項11に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項13】
前記水性製剤中のナタリズマブ対ショ糖の重量比は、約0.5:1〜約2:1である、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項14】
前記水性製剤中のナタリズマブ対ショ糖の重量比は、約1:1である、請求項13に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項15】
前記水性製剤中のショ糖対ナタリズマブのモル比は、約300:1〜約500:1である、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項16】
前記水性製剤中のショ糖対ナタリズマブのモル比は、約400:1〜約500:1である、請求項15に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項17】
前記水性製剤中のショ糖対ナタリズマブのモル比は、約450:1である、請求項16に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項18】
前記水性製剤は、膨張性薬剤をさらに含む、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項19】
前記水性製剤は、張性調節剤をさらに含む、請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項20】
前記水性製剤は、
(a)約40mg/mlのナタリズマブと、
(b)約6mMのヒスチジン(pH約6.0)と、
(c)約41mg/mlのショ糖と、
(d)約0.04%のポリソルベート80と、を含む、
請求項1に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項21】
(i)約80〜約160mg/mlのナタリズマブと、
(ii)約6.0のpHの約18mMのヒスチジンと、
(iii)約123mg/mlのショ糖と、
(iv)約0.12%のポリソルベート80と、を含む、安定した再構成製剤であって、前記再構成製剤は、
(a)約40mg/mlのナタリズマブと、
(b)約6mMのヒスチジン(pH約6.0)と、
(c)約41mg/mlのショ糖と、
(d)約0.04%のポリソルベート80と、を含む、水性製剤を凍結乾燥することによって調製される安定した凍結乾燥製剤から調製されている、再構成製剤。
【請求項22】
前記安定した再構成製剤は、約120mg/mlのナタリズマブを含む、請求項21に記載の安定した再構成製剤。
【請求項23】
(a)約30〜約60mg/mlのナタリズマブと、
(b)約5.5〜約6.5のpHを有する緩衝液と、
(c)約20〜約50mg/mlのショ糖と、
(d)約0.02〜約0.08%のポリソルベートと、を含む、
水性製剤を凍結乾燥することによって調製されている凍結乾燥製剤を再構成する工程を含む、安定した再構成製剤を調製するための方法。
【請求項24】
前記水性製剤は、約40mg/ml〜約50mg/mlのナタリズマブを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項25】
前記水性製剤は、約40mg/mlのナタリズマブを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項26】
前記緩衝液は、約6.0のpHを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記緩衝液は、ヒスチジンである、請求項23記載の方法。
【請求項28】
前記ヒスチジンは、約1mM〜約12mMの濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項29】
前記ヒスチジンは、約6mMの濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項29に記載の方法。
【請求項30】
前記ショ糖は、約20mg/ml〜約50mg/mlの濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記ショ糖は、約40mg/mlの濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項31に記載の安定した凍結乾燥製剤。
【請求項32】
前記ポリソルベートは、ポリソルベート80である、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリソルベート80は、約0.02%〜約0.08%の濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリソルベート80は、約0.04%の濃度で前記水性製剤中に存在する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記水性製剤中のナタリズマブ対ショ糖の重量比は、約0.5:1〜約2:1である、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
前記水性製剤中のナタリズマブ対ショ糖の重量比は、約1:1である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記水性製剤中のショ糖対ナタリズマブのモル比は、約300:1〜約500:1である、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
前記水性製剤中のショ糖対ナタリズマブのモル比は、約400:1〜約500:1である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記水性製剤中のショ糖対ナタリズマブのモル比は、約450:1である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記水性製剤は、膨張性薬剤をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項41】
前記水性製剤は、張性調節剤をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項42】
前記水性製剤は、
(a)約40mg/mlのナタリズマブと、
(b)約6mMのヒスチジン(pH約6.0)と、
(c)約41mg/mlのショ糖と、
(d)約0.04%のポリソルベート80と、を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項43】
対象を治療するための方法であって、前記対象に請求項23に記載の治療有効量の安定した再構成製剤を投与する工程を含み、前記対象は、ナタリズマブを投与することによって治療され得る疾患を有する、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
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【図10】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2010−530003(P2010−530003A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512402(P2010−512402)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/066990
【国際公開番号】WO2008/157409
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(399013971)エラン ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (75)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/066990
【国際公開番号】WO2008/157409
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(399013971)エラン ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (75)
【Fターム(参考)】
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