説明

凍結乾燥抗原組成物

本発明は、抗原とToll様受容体(TLR)9アゴニストとを含む凍結乾燥組成物を提供する。そのような組成物を、リポソーム、鉱物塩、乳濁液、ポリマーおよびISCOMからなる粒子状担体の群より選択される担体を用いて、ワクチン接種における使用のための免疫原性組成物中で再構成することができる。本発明の凍結乾燥組成物から免疫原性組成物を作製する方法および免疫におけるその使用も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された抗原組成物および免疫原性組成物を作製するためのその使用方法に関する。具体的には、本発明は、抗原とToll様受容体(TLR)9アゴニストとを含む凍結乾燥組成物に関する。そのような組成物を、リポソーム、鉱物塩、乳濁液、ポリマーおよびISCOMからなる粒子状担体群より選択される担体を用いて、ワクチン接種における使用のための免疫原性組成物中で再構成することができる。本発明の凍結乾燥組成物から免疫原性組成物を作製する方法および免疫におけるその使用も本発明の一部である。
【背景技術】
【0002】
アジュバントは、任意の所与の抗原に対する免疫応答を改善するために用いられることがある。しかしながら、ワクチンまたは免疫原性組成物へのアジュバントの含有は、成分の調製の複雑性ならびにワクチン組成物の分配および製剤化の複雑性を増加させる。調剤者は、それぞれのアジュバント成分ならびに抗原性成分の調製を考慮しなければならない。例えば、溶液中のアジュバント成分のpHは、所与の抗原に関する最適pHとは大きく異なり、これらの差異を注意深く制御および管理して、例えば、成分の沈降またはその所望の特性の喪失を防止する必要があるため、これは特に真実である。注入用の水の中での抗原のpHは、例えば、約pH7であるか、またはそれよりわずかに高くてもよく、アジュバントを添加する場合、pHはpH6.3の低さであってもよい。抗原は、例えば、このpHで長期間保存する場合、安定でなくてもよい。
【0003】
次いで、ヒトでの使用のための医薬品は、それらが市場化のために認可される前に、よく特性評価され、安定かつ安全でなければならないため、前記成分を、できるだけ安定な形態で製剤化し、分配しなければならない。この理由のため、長期安定性試験を最終的な製剤に対して実施して、それが関連する基準を満たすことを確保する必要がある。そのような長期試験において生成された情報を用いて、製品がヒトでの使用にとって好適であることを示すためにFDA(食品医薬品局-米国における医薬品の認可を担う機関)などの規制当局への提出を支援する。
【0004】
凍結-乾燥または凍結乾燥は、一般的には、ワクチン中で用いられる抗原などの医薬材料を含む材料の安定性および従って貯蔵寿命を増加させるために用いられる。
【0005】
凍結乾燥抗原組成物は、患者への投与直前に希釈剤(例えば、注入用の水[WFI]またはいくつかの場合、液体アジュバント製剤)を用いて再構成するために医療関係者に提供されることが多い。このように、最終的なワクチンの種々の成分がごく接近して維持される時間を最小化する。
【0006】
抗原を凍結乾燥して凍結ケーキ(凍結乾燥から得られる乾燥生成物)を形成する場合、多くの因子を考慮しなければならない。例えば、抗原の抗原性/免疫原性を、凍結乾燥形態でも維持すべきである。抗原は凍結乾燥形態にある間に凝集または分解してはならない。凍結ケーキは良好に形成される必要があり、崩壊してはならない。最後に、抗原は勿論、再構成される場合に迅速に溶解する形態にある必要がある。再構成のための溶液が単なるWFIではない場合、例えば、抗原を液体アジュバントを用いて再構成する場合、再構成される生成物の特性に対する溶液成分の影響を考慮する必要がある。
【0007】
記載のように、アジュバントはワクチンの抗原成分に対する免疫応答を改善するために、長い間用いられてきた。特定の強力なアジュバント組合せ物は、3脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)とサポニン、具体的には、キラヤ・サポナリア・モナラ(Quillaja saponaria Monara)の樹皮から抽出されたサポニンの精製画分であるQS21とを含むものである。この組合せ物を、例えば、水中油型乳濁液、リポソーム製剤などとして提供することができる。
【0008】
抗原、例えば、RTS,Sなどのマラリア抗原を用いる以前の臨床試験において、凍結乾燥抗原を提供し、抗原を再構成するための個別のバイアルの液体アジュバント、例えば、MPLとQS21の水中油製剤またはMPLとQS21のリポソーム製剤も提供する。個々の成分を混合して、投与直前に最終ワクチン組成物を形成する。
【0009】
非メチル化CpGジヌクレオチドを含む特定の免疫刺激オリゴヌクレオチド(「CpG」)はTLR9リガンドであり、全身および粘膜経路の両方により投与する場合、アジュバントであると同定されている(WO 96/02555, EP 468520, Davisら、J.Immunol, 1998, 160(2):870-876; McCluskieおよびDavis, J.Immunol., 1998, 161(9):4463-6)。CpGは、DNA中に存在するシトシン-グアノシンジヌクレオチドモチーフの省略形である。歴史的には、BCGのDNA画分が抗腫瘍効果を示すことが観察された。さらなる研究において、BCG遺伝子配列から誘導された合成オリゴヌクレオチドが、免疫刺激効果を誘導することができる(in vitroおよびin vivoの両方で)ことが示された。これらの研究の著者らは、中央のCGモチーフを含む特定のパリンドローム配列がこの活性を担持すると結論付けた。免疫刺激におけるCGモチーフの中心的な役割は、Kriegによる刊行物、Nature 374, p546, 1995で後に解明された。詳細な分析により、CGモチーフが特定の配列文脈にある必要があり、そのような配列が細菌DNA中では一般的であるが、脊椎動物DNA中では稀であることが示された。免疫刺激配列は、プリン、プリン、C、G、ピリミジン、ピリミジンであることが多い;ジヌクレオチドCGモチーフはメチル化されていないが、他の非メチル化CpG配列は免疫刺激的であることが知られており、本発明において用いることができる。
【0010】
また、免疫刺激オリゴヌクレオチドは、グアノシンを7-デアザグアノシンモチーフに突然変異させた場合、免疫活性を保持し得ることも示された(WO 03057822)。
【0011】
これらの免疫刺激オリゴヌクレオチドは、溶液中で酸性pH、例えば、6.3、6.1以下などのpH 7未満を有すると考えられる。それらは製剤中で他の成分と類似していないため、液体ワクチン製剤中にそれらを組み入れることが困難になる。考察されたように、これは沈降および/または長期安定性の問題を引き起こし得る。
【0012】
これらの免疫刺激オリゴヌクレオチドは、特に、3D-MPLおよびQS21などの存在するアジュバント組合せ物と共に用いる場合、非常に有効なアジュバントである可能性が高いと考えられる。そのようなアジュバントを、HIV、癌およびおそらくマラリアなどの、有効なワクチンを提供するのが今まで困難であった疾患において用いることができると期待される。
【0013】
アジュバントをワクチンに含有させることができるいくつかの異なる方法が存在するが、それらを、それ自身または抗原組成物の安定性に影響しない方法で、またワクチンを再構成する医療関係者に過度の負担を強いることのない方法で含有させなければならない。これを達成する最も単純な方法は、それらを再構成の直前まで別々に維持することによって、成分が互いに影響し得る時間を最小化するように、追加成分を追加のバイアルに入れることであろう。これは、抗原と免疫刺激オリゴヌクレオチドをそれぞれ別のバイアル中に提供することを意味する。次いで、MPLおよびQS21などのさらなるアジュバント成分を用いる場合、これらを第3のバイアル中に液体混合物として提供することができる。しかしながら、多数のバイアル中の多数の成分は、費用、廃棄物の増加をもたらし、重要なことに、構成中の誤りの可能性の増加をもたらす。
【発明の概要】
【0014】
本発明者らは、CpG免疫刺激オリゴヌクレオチドなどのTLR9リガンドがアジュバントとして免疫原性組成物の一部である場合、1つの凍結ケーキ中に抗原とTLR9リガンドアジュバントとを一緒に含有する1個のバイアルが提供されるように、該TLR9リガンドを抗原と一緒に凍結乾燥することができることを見出した。
【0015】
従って、本発明は、抗原とTLR9アゴニストとを含む凍結乾燥組成物を提供する。一実施形態においては、前記TLR9アゴニストは、免疫刺激オリゴヌクレオチド、おそらくCpG含有オリゴヌクレオチドである。一態様においては、前記CpG含有オリゴヌクレオチドは、プリン、プリン、C、G、ピリミジン、ピリミジン配列を含む。別の態様においては、前記免疫刺激オリゴヌクレオチドを、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5からなる群より選択する。
【0016】
理論によって束縛されることを望むものではないが、抗原とTLR9アゴニストとの同時提供は、MPLとQS21の液体製剤にTLR9を単に添加したものよりも安定な成分を提供すると考えられる。
【0017】
本発明は、抗原とTLR9アゴニストとをWFIを用いて再構成する場合、その中に凍結乾燥製剤を含む1個だけのバイアルを提供することができるという利点を提供する。さらに、抗原とTLR9アゴニストとを、液体アジュバント製剤などの液体製剤を用いて再構成する場合、成分の(3個よりもむしろ)2個のみのバイアルを提供することができるのが有利である。これは同様に、一度再構成されたワクチンを使用するのに好適な製品を提供しながら、費用便益を有する。
【0018】
さらに、本発明者らは、再構成バッファー中で全体として正の電荷を有さない抗原とCpGとの同時凍結乾燥により、注入用の水または液体アジュバントを用いる再構成の際のこれらの抗原の可溶性が増加し得ることを見出した。従って、本発明はまた、抗原が再構成バッファー中で正味の正の電荷を有さない場合に、再構成の際の凍結乾燥抗原の溶解性を増加させる方法であって、TLR9アゴニスト、好ましくは、免疫刺激オリゴヌクレオチド、より好ましくはCpGオリゴヌクレオチドと、抗原とを同時凍結乾燥する工程を含む前記方法も提供する。本発明はまた、再構成の際に凍結乾燥された正に荷電していない抗原の溶解性を増加させるための、TLR9アゴニスト、好ましくは、免疫刺激オリゴヌクレオチド、より好ましくはCpGオリゴヌクレオチドの使用も提供する。「正に荷電していない」とは、タンパク質の全体としての電荷が正ではないことを意味する。タンパク質は正と負の両方の電荷を含んでもよいが、該タンパク質の全体としての電荷は中性または負である。
【0019】
本発明はまた、好適な担体を用いて本明細書に記載の凍結乾燥組成物を再構成する工程を含む免疫原性組成物の作製方法を提供する。一実施形態においては、そのような担体は、リポソーム溶液または水中油型乳濁液である。該担体は必要に応じて、TLR4アゴニスト、TLR4アンタゴニスト、サポニン、TLR7アゴニスト、TLR8アゴニスト、TLR9アゴニストからなる群より選択することができる1種以上の免疫刺激剤を含んでもよい。一実施形態においては、前記担体は、2種以上の免疫刺激剤を含み、一態様においては、これらは3-脱アシル化MPLとQS21であってよい。
【0020】
本発明はまた、1種以上の所望の抗原、TLR9リガンドおよび好適な賦形剤を混合し、得られる混合物を凍結乾燥することを含む、本発明の凍結乾燥組成物を作製する方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】CPC-P501S抗原を示す図である。
【図2】実施例1における凍結乾燥サイクルを示すグラフである。
【図3】実施例1における37℃でT0、1週間、2週間、3週間、および4週間のケーキを示す写真である。
【図4】実施例1におけるアジュバントAサイズに対する賦形剤の影響を示すグラグである。
【図5】PD-Mage3-Hisタンパク質を示す図である。
【図6】実施例2における凍結乾燥サイクルを示すグラフである。
【図7】実施例2におけるT0〜4時間および24時間でのPDMAGE3/ASAの効力を示すグラフである。
【図8】実施例3におけるアジュバント系Aを用いて再構成したWT1-A10の2種の製剤の遠心分離されない液体(NC)、上清(SN)およびペレット(P)に関するウェスタンブロットの結果を示す写真である。
【図9】実施例3におけるアジュバント系Aを用いて再構成したPRAMEの2種の製剤の遠心分離されない液体(NC)、上清(SN)およびペレット(P)に関するウェスタンブロットの結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者らは、CpGオリゴヌクレオチドなどのTLR9リガンドを、目的の抗原の抗原性または安定性に影響することなく該抗原を用いて凍結乾燥することができることを見出した。TLR9リガンドとは、TLR9受容体と相互作用することができる化合物を意味する。
【0023】
ショウジョウバエにおいて最初に発見された、Toll様受容体(TLR)ファミリーのメンバーは、それぞれのメンバーが様々な微生物成分を認識し、これに応答して、侵入微生物を制限/根絶する、パターン認識受容体であることが示された。TLRへの病原体結合分子パターン(PAMP)の結合は、反応性酸素および窒素中間体の産生、前炎症性サイトカインネットワークの開始、ならびに適応免疫に対する迅速な先天性応答に関連する共刺激分子の上方調節を誘導する。多くのTLRリガンドは、アジュバントとして有用であることが知られている。TLR9は、オリゴヌクレオチドアゴニストに応答することが示された。従って、本発明のTLR9リガンドは免疫刺激オリゴヌクレオチドである。本発明の一実施形態においては、そのようなTLR9リガンドはCpGモチーフを含む。代替的な免疫刺激オリゴヌクレオチドは、該ヌクレオチドに対する改変を含んでもよい。例えば、WO 0226757およびWO 03057822は、CpG含有免疫刺激オリゴヌクレオチドのCおよびG部分に対する改変を開示している。
【0024】
一実施形態においては、TLR9リガンドはCpGオリゴヌクレオチドである。この実施形態の一態様においては、CpGオリゴヌクレオチドは、少なくとも3個、おそらく少なくとも6個以上のヌクレオチドにより分離された2個以上のジヌクレオチドCpGモチーフを含む。本発明のオリゴヌクレオチドは、典型的にはデオキシヌクレオチドである。一実施形態においては、オリゴヌクレオチド中のヌクレオチド間結合は、ホスホロジチオエート、またはおそらくホスホロチオエート結合であるが、混合ヌクレオチド間結合を有するオリゴヌクレオチドなどの、ホスホジエステルおよび他のヌクレオチド間結合を用いることもできる。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドまたはホスホロジチオエートを製造する方法は、米国特許第5,666,153号、第5,278,302号およびWO 95/26204に記載されている。様々なヌクレオチド間結合を含むオリゴヌクレオチド、例えば、混合ホスホロチオエートホスホジエステルが意図される。オリゴヌクレオチドを安定化する他のヌクレオチド間結合を用いることができる。
【0025】
CpGオリゴヌクレオチドの例は、以下の配列を有する。一実施形態においては、これらの配列は、ホスホロチオエート改変ヌクレオチド間結合を含む:
OLIGO 1(配列番号1): TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT (CpG 1826)
OLIGO 2 (配列番号2): TCT CCC AGC GTG CGC CAT (CpG 1758)
OLIGO 3(配列番号3): ACC GAT GAC GTC GCC GGT GAC GGC ACC ACG
OLIGO 4 (配列番号4): TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT (CpG 2006)
OLIGO 5 (配列番号5): TCC ATG ACG TTC CTG ATG CT (CpG 1668)。
【0026】
代替的なCpGオリゴヌクレオチドは、それらがその中に重要でない欠失または付加を有する上記配列を含んでもよい。
【0027】
本発明において用いられるCpGオリゴヌクレオチドを、当業界で公知の任意の方法(例えば、EP 468520)により合成することができる。便利には、そのようなオリゴヌクレオチドを、自動化合成装置を用いて合成することができる。
【0028】
本明細書の文脈においては、用語「抗原」は、特定の免疫応答を生じさせるのに好適な、およびワクチンまたは免疫原性組成物への封入にとって好適な免疫原性成分、例えば、HIV-1ワクチン、癌ワクチン、マラリアワクチン、TBワクチンなどへの封入のための抗原を指すと意図される。特異的抗原の詳細を以下に与える。
【0029】
一実施形態においては、抗原は9.6以下の等電点を有する。一実施形態においては、抗原は9以下の等電点を有する。一実施形態においては、抗原は8.5以下の等電点を有する。一実施形態においては、抗原は8.0以下の等電点を有する。一実施形態においては、抗原は7.5の等電点を有する。一実施形態においては、抗原は7〜8の範囲の等電点を有する。
【0030】
バッファー中で再構成する場合、タンパク質の正味電荷は該タンパク質中の正電荷数対負電荷数に依存し、この電荷は勿論、再構成バッファーのpHに依存して変化するであろう。等電点は、タンパク質の正味電荷が中性であるpHである。再構成バッファーのpHが抗原の等電点より下である場合、このタンパク質は正味の正電荷を担持する傾向がある。再構成バッファーのpHが抗原の等電点より上である場合、該タンパク質は正味の負電荷を担持する傾向がある。本発明は、意図される再構成バッファー中で、タンパク質が正味の負電荷を担持するような等電点を有する抗原を凍結乾燥し、再構成する場合に特に有用である。そのような環境においては(実施例3を参照)、凍結乾燥組成物中のCpGの存在は、再構成バッファー中の抗原の溶解性を増強することができる。
【0031】
一実施形態においては、凍結乾燥抗原およびTLR9アゴニストを、1回用量として、例えば、1個のバイアル中で提供する。
【0032】
一実施形態においては、凍結乾燥抗原は、再構成される場合、10〜250μgの範囲の抗原濃度を提供する量で存在する。
【0033】
一実施形態においては、TLR9アゴニストは、再構成される場合、500μgなどの10〜1000μgの範囲の濃度を提供する量で存在する。
【0034】
本発明の一実施形態においては、凍結乾燥組成物中でTLR9リガンドと混合される抗原は、抗腫瘍抗原であってよい。従って、本発明の凍結乾燥抗原組成物を用いて作製された免疫原性組成物は、癌の免疫療法的治療にとって有用である。例えば、凍結乾燥組成物を、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌ならびに頭部および頸部癌などにおいて発現されるタンパク質などの本明細書に記載の癌抗原、腫瘍抗原または腫瘍拒絶抗原と共に調製することができる。
【0035】
本発明において用いることができる癌精巣抗原としては、MAGE Aファミリーの抗原、MAGE-A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11およびA12(MAGE-1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12としても知られる)、MAGE B抗原、MAGE B1、B2、B3およびB4、MAGE C抗原、MAGE-C1およびMAGE-C2、LAGE 1抗原、LAGE 2抗原(NY-ESO-1としても知られる)ならびにGAGE抗原が挙げられる。
【0036】
前立腺特異的抗原を本発明において用いることもできる。融合することができる前立腺特異的抗原の例としては、前立腺の6回膜貫通上皮抗原(STEAP)、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺酸ホスファターゼ(PAP)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)またはプロスターゼとして知られる抗原(P703Pとしても知られる)が挙げられる。
【0037】
一実施形態においては、前立腺抗原は、P501Sまたはその断片である。プロステインとも命名されたP501Sは、553アミノ酸のタンパク質である。少なくとも20、50、もしくは100個の連続するアミノ酸を含むP501Sの免疫原性断片および部分、または20〜50もしくは50〜100個の連続するアミノ酸を含む断片を、本発明の腫瘍関連抗原または誘導体として用いることができる。一実施形態においては、腫瘍関連抗原または誘導体は、PS108抗原(WO 98/50567に開示されている)または前立腺癌関連タンパク質(WO 99/67384を参照)である。いくつかの実施形態においては、断片は、完全長P501Sタンパク質のアミノ酸51〜553、34〜553または55〜553である。これらを酵母系において発現させることができ、例えば、そのようなポリペプチドをコードするDNA配列を酵母系において発現させることができる。
【0038】
一実施形態においては、抗原は、ウィルムス腫瘍遺伝子により発現されるWT-1、または約もしくはほぼアミノ酸1〜249を含むそのN末端断片WT-1Fを含むか、またはそれからなってもよい。WT1は元々、小児腎臓癌、ウィルムス腫瘍において過剰発現されることが見出されたタンパク質である。用いることができる抗原は、抗原としてほぼ完全長のタンパク質を含む。一実施形態においては、抗原は、12マーのトランケートされたtat配列とWT1配列のアミノ酸番号2〜281とからなる292アミノ酸の組換え融合タンパク質である、WT1-A10タンパク質を含むか、またはそれからなってもよい。
【0039】
本発明の一実施形態においては、腫瘍関連抗原または誘導体は、乳癌抗原、例えば、Her-2/neu、マンマグロビンまたはB305D抗原である。
【0040】
本発明における使用のためのHer-2/neu抗原は、全細胞外ドメイン(ECD;例えば、Her-2/neuのアミノ酸配列のほぼアミノ酸1〜645を含む配列)またはその断片を含んでもよい。あるいは、またはさらに、該構築物は、全細胞内ドメインの少なくとも免疫原性部分:例えば、Her-2/neu配列のC末端のほぼ580アミノ酸を含んでもよい。
【0041】
本発明の腫瘍関連抗原誘導体として用いることができる1つの構築物は、ECDと、Her-2/neuのリン酸化ドメイン(PD)との融合タンパク質(ECD-PD)である。用いることができるさらなる構築物は、ECDと、Her-2/neuのリン酸化ドメインの断片との融合タンパク質(ECD-ΔPD)である。記載のようなHer-2/neu融合タンパク質および構築物を、ヒト、ラット、マウスまたはサルのHer-2/neuから誘導することができる。Her-2/neuの例示的な配列および構築物は、WO 00/44899に記載されている。
【0042】
PRAME(DAGEとしても知られる)は、本発明の腫瘍関連抗原として用いることができる別の抗原である。PRAME抗原を含む本明細書に記載の融合タンパク質を用いることもできる。特に、本明細書に記載のPRAME抗原と、本明細書に記載のプロテインD融合パートナータンパク質または誘導体との融合物が、本発明における使用について意図される。
【0043】
PRAME抗原は、メラノーマならびに肺癌、腎臓癌ならびに頭部および頸部癌などの様々な腫瘍において発現されるいくつかの群により示されている。興味深いことに、それはまた、急性リンパ球性白血病および急性骨髄性白血病などの40〜60%の白血病において発現されるようであり、例えば、Exp Hematol. 2000 Dec;28(12):1413-22を参照されたい。患者においては、PRAMEの過剰発現は、該タンパク質を過剰発現しない人と比較して、より高い生存率およびより低い再発率と関連するようであることが観察された。
【0044】
前記抗原およびその調製は、米国特許第5,830,753号に記載されている。PRAMEは、アクセッション番号:U65011.1、BC022008.1、AK129783.1、BC014974.2、CR608334.1、AF025440.1、CR591755.1、BC039731.1、CR623010.1、CR611321.1、CR618501.1、CR604772.1、CR456549.1、およびCR620272.1の下でAnnotated Human Gene Database H-Inv DBに見出される。
【0045】
一態様においては、本発明の抗原は、PRAME抗原またはその免疫原性断片を含むか、またはそれからなってもよい。一般的には、PRAMEタンパク質は、509アミノ酸を有し、一実施形態においては、PRAMEの全部で509個のアミノ酸が前記抗原中に含まれていてもよい。
【0046】
結腸直腸抗原を、本発明の腫瘍関連抗原として用いることもできる。用いることができる結腸直腸抗原の例としては、C1585P (MMP 11)およびC1491 (E1Aエンハンサー結合タンパク質)、CASB618 (WO00/53748に記載); CASB7439 (WO01/62778に記載); ならびにC1584 (Cripto)が挙げられる。
【0047】
本発明の文脈において有用な他の腫瘍関連抗原としては、Plu-1 (J Biol. Chem 274 (22) 15633-15645, 1999)、HASH-1、HASH-2、Cripto (Salomonら、Bioessays 199, 21 61-70、米国特許第5,654,140号)、Criptin(米国特許第5,981,215号)が挙げられる。さらに、癌の治療におけるワクチンについて特に関連する抗原はまた、チロシナーゼおよびスルビビンを含んでもよい。
【0048】
Muc1などのムチン由来ペプチドについては、例えば、米国特許第5,744,144号、第5,827,666号、WO 8805054、米国特許第4,963,484号を参照されたい。具体的に意図されるのは、Muc1ペプチドの少なくとも1個の反復単位、少なくとも2個のそのような反復を含み、SM3抗体により認識されるMuc1由来ペプチドである(米国特許第6,054,438号)。他のムチン由来ペプチドとしては、Muc 5に由来するペプチドが挙げられる。
【0049】
他の腫瘍特異的抗原は、本発明の凍結乾燥組成物における使用にとって好適であり、限定されるものではないが、GM 2およびGM 3などの腫瘍特異的ガングリオシドもしくは担体タンパク質に対するそのコンジュゲートが挙げられる;または該抗原は、多くの癌の治療、もしくは免疫去勢において有用な、全長ゴナドトロフィンホルモン放出ホルモン(GnRH、WO 95/20600)、短い10アミノ酸長のペプチドなどの自己ペプチドホルモンであってよい。
【0050】
本発明はまた、上記抗原、免疫原性誘導体および免疫原性断片ならびに本発明の態様においてそれを含む融合タンパク質の使用にも拡張される。
【0051】
誘導体、断片および融合タンパク質
本発明の腫瘍関連抗原を、天然の抗原よりもむしろ、その誘導体または断片の形態で用いることができる。
【0052】
本明細書で用いられる用語「誘導体」とは、その天然形態と比較して改変された抗原を指す。誘導体は、突然変異、例えば、点突然変異を含んでもよい。一例においては、誘導体は、例えば、原核生物系における発現を改善するか、または望ましくない活性、例えば、酵素活性を除去することにより、該タンパク質の特性を変化させてもよい。本発明の誘導体は、天然抗原と十分に類似しており、抗原特性を保持し、天然抗原に対して生じる免疫応答を可能にする。所与の誘導体が生じるかどうかに関わらず、そのような免疫応答をELISAまたはフローサイトメトリーなどの好適な免疫学的アッセイにより測定することができる。
【0053】
本発明の一実施形態においては、本発明の腫瘍関連抗原の誘導体は、異種融合パートナータンパク質に連結された腫瘍関連抗原を含む融合タンパク質である。腫瘍関連抗原に関して「異種」とは、天然で腫瘍関連抗原に連結されていない、すなわち、意図的な人的介入により腫瘍関連抗原に連結されたタンパク質またはポリペプチド配列を意図する。
【0054】
前記抗原と異種融合パートナータンパク質を、化学的に結合させるか、または組換え融合タンパク質として発現させることができる。一実施形態においては、本発明の融合タンパク質は、非融合タンパク質と比較して、発現系において産生される融合タンパク質のレベルを増加させることができる。かくして、融合パートナータンパク質は、Tヘルパーエピトープ、例えば、ヒトにより認識されるTヘルパーエピトープの提供を支援することができる(すなわち、融合パートナータンパク質は免疫学的融合パートナーとして作用する)。融合パートナーは、天然の組換えタンパク質よりも高い収率でのタンパク質の発現を支援することができる(すなわち、融合パートナータンパク質は発現エンハンサーとして作用する)。一実施形態においては、融合パートナータンパク質は、免疫学的融合パートナーと発現増強パートナーの両方として作用することができる。
【0055】
融合パートナータンパク質を、例えば、プロテインDから誘導することができる。プロテインDは、リポタンパク質である(グラム陰性細菌のインフルエンザ菌(ヘモフィルス・インフルエンザ)の表面上に露出された42 kDaの免疫グロブリンD結合タンパク質)。このタンパク質は、細菌リポタンパク質の共通配列を含む、18アミノ酸残基のシグナル配列を有する前駆体として合成される(WO 91/18926を参照)。天然の前駆体プロテインDタンパク質は分泌の間にプロセッシングされ、シグナル配列が切断される。プロセッシングされたプロテインDのCys(前駆体分子の位置19にある)は、プロセッシングされたタンパク質のN末端残基になり、エステル結合された脂肪酸とアミド結合された脂肪酸の両方の共有結合により付随して改変される。次いで、アミノ末端のシステイン残基に連結された脂肪酸は膜アンカーとして機能する。
【0056】
一実施形態においては、本発明における使用のための腫瘍関連抗原は、融合パートナータンパク質としてプロテインDまたはその誘導体を含んでもよい。
【0057】
本明細書に記載のプロテインDまたはその誘導体は、例えば、プロセッシングされたプロテインDの最初の、もしくはN末端の1/3またはプロセッシングされたプロテインDのほぼ最初の、もしくはN末端の1/3を含んでもよい。一実施形態においては、プロテインDまたはその誘導体は、プロセッシングされたプロテインDの最初の、もしくはN末端の100〜115アミノ酸;またはプロセッシングされたプロテインDの最初の、もしくはN末端の109アミノ酸を含んでもよい。一実施形態においては、天然のプロセッシングされたプロテインDのアミノ酸2-Lysおよび2-Leuを、アミノ酸2-Aspおよび3-Proと置換することができる。
【0058】
一実施形態においては、プロテインDまたはその誘導体は、前駆体プロテインDの18または19アミノ酸のシグナル配列をさらに含んでもよい。一実施形態においては、プロテインDから誘導された融合パートナータンパク質は、前駆体プロテインDのアミノ酸20〜127を含むか、またはそれからなる。本発明の一実施形態においては、前駆体プロテインD融合パートナータンパク質の2個のアミノ酸21-Lysおよび22-Leuを、アミノ酸21-Aspおよび22-Proと置換することができる。
【0059】
本明細書に記載のプロテインD融合パートナータンパク質は、さらにまたはあるいは、野生型前駆体またはプロセッシングされたプロテインD配列と比較した場合、アミノ酸配列内に欠失、置換または挿入を含んでもよい。一実施形態においては、1、2、3、4、5、6、7、8、9個以上のアミノ酸を挿入し、置換するか、または欠失させることができる。アミノ酸を、本明細書に定義される保存的置換で置換するか、または他のアミノ酸を用いることができる。
【0060】
一実施形態においては、融合パートナータンパク質は、配列番号1に示されるプロテインD配列を含むか、またはそれからなってもよい。一実施形態においては、融合パートナータンパク質は、図1で下線を付けたアミノ酸、すなわち、配列番号12のアミノ酸残基20〜127を含むか、またはそれからなってもよい。一実施形態においては、本発明における使用のための抗原は、MAGE-3抗原がMAGE-3のアミノ酸3〜314からなり、プロテインD融合パートナータンパク質が図1に示されるアミノ酸配列からなる、プロテインD-MAGE-3であってよい。
【0061】
本発明の別の実施形態においては、融合パートナータンパク質を、以下に記載のNS1またはLytAまたはその誘導体から選択することができる。
【0062】
NS1は、インフルエンザウイルスに由来する非構造タンパク質である。一実施形態においては、本発明の腫瘍関連抗原誘導体は、融合パートナータンパク質としてNS1またはその誘導体を含んでもよい。NS1またはその誘導体は、そのN末端の1〜81アミノ酸を含んでもよい。
【0063】
LytAは、肺炎連鎖球菌に由来する。LytAタンパク質のC末端ドメインは、コリンまたはDEAEなどのいくつかのコリン類似体に対する親和性を担う。一実施形態においては、本発明の腫瘍関連抗原誘導体は、融合パートナータンパク質としてLytAまたはその誘導体を含んでもよい。LytAまたはその誘導体は、残基178で開始するC末端に見出されるLytA分子の反復部分を含んでもよい。一実施形態においては、LytAまたはその誘導体は、C-LytAの残基188〜305を含む。
【0064】
本発明における使用のための免疫原性ポリペプチドは、典型的には、例えば、細菌宿主、酵母または培養哺乳動物細胞などの異種宿主中での発現により産生された組換えタンパク質であろう。
【0065】
用語「腫瘍関連抗原誘導体」は、腫瘍関連抗原中で天然に生じるか、またはそれに対する高い程度の配列同一性(例えば、少なくとも10個、例えば、少なくとも20個のアミノ酸に渡る95%を超える同一性)を担持する配列を部分的または全体的に含むポリペプチドを意味する。また、誘導体は、保存的置換を有する配列も含む。保存的置換はよく知られており、一般的に、配列アラインメントコンピュータープログラム中のデフォルトスコアリングマトリックスとして設定される。
【0066】
一般的な用語では、以下の群の中にある置換は保存的置換であるが、以下の群の間にある置換は非保存的であると考えられる。その群とは、
i)アスパラギン酸/アスパラギン/グルタミン酸/グルタミン
ii)セリン/トレオニン
iii)リジン/アルギニン
iv)フェニルアラニン/チロシン/トリプトファン
v)ロイシン/イソロイシン/バリン/メチオニン
vi)グリシン/アラニン
である。
【0067】
本発明の誘導体はまた、アルデヒド(ホルムアルデヒドもしくはグルタルアルデヒドなど)を用いる処理、カルボキシメチル化、カルボキシアミド化、アセチル化および他の日常的な化学的処理などの化学的に処理された配列を含んでもよい。誘導体化された遊離チオール残基を有する本発明の構築物を、本発明において用いることもできる。特に、カルボキシアミド化またはカルボキシメチル化チオール誘導体を用いることができる。
【0068】
本発明の一実施形態においては、腫瘍関連抗原誘導体は、誘導体化された遊離チオール残基を有する本明細書に記載のMAGE抗原であってよい。誘導体化された遊離チオール残基は、カルボキシアミドまたはカルボキシメチル化誘導体であってよい。
【0069】
あるいは、本発明の腫瘍関連抗原誘導体は、2種以上の腫瘍関連抗原を含む構築物を含んでもよい。本発明の一実施形態においては、腫瘍関連抗原誘導体は、2種以上の腫瘍関連抗原を含んでもよい。
【0070】
本明細書で用いられる用語「断片」とは、少なくとも1個のエピトープ、例えば、CTLエピトープ、典型的には、少なくとも8アミノ酸のペプチドを含む腫瘍関連抗原の断片または該抗原の誘導体を指す。少なくとも8個、例えば、8〜10個のアミノ酸長または最大で20、50、60、70、100、150もしくは200個のアミノ酸長の断片は、その断片が抗原性を示す、すなわち、主要なエピトープ(例えば、CTLエピトープ)が該断片により保持され、該断片が天然の腫瘍関連抗原との交差反応する免疫応答を誘導することができる限り、本発明の範囲内にあると考えられる。断片の例は、長さ8〜10、10〜20、20〜50、50〜60、60〜70、70〜100、100〜150、150〜200アミノ酸残基であってよい(これらの範囲内の任意の値を含む)。
【0071】
本発明の一実施形態においては、Her2/neu抗原とCpGオリゴヌクレオチドを含む凍結乾燥組成物を、3D-MPLとQS21を含むリポソームまたは水中油型乳濁液担体を用いて再構成する。そのような再構成された製剤は、体液性および細胞性応答の両方を産生する。
【0072】
本発明の凍結乾燥組成物は、腫瘍支援機構(例えば、血管新生、腫瘍侵襲)に関連する抗原、例えば、tie 2、VEGFを含んでもよい。
【0073】
本発明の別の態様においては、本発明の凍結乾燥組成物内の抗原は、HIV由来抗原、特に、HIV-1由来抗原から選択される抗原である。以下の一節は、HIV-1から誘導することができる抗原を記載する。
【0074】
HIV TatおよびNefタンパク質は初期タンパク質であり、すなわち、それらは感染において初期に、および構造タンパク質の非存在下で発現される。
【0075】
Nef遺伝子は、いくつかの活性を有することが示された初期アクセサリーHIVタンパク質をコードする。例えば、Nefタンパク質は、細胞表面からの、CD4、HIV受容体の除去を引き起こすことが知られているが、この機能の生物学的重要性が議論されている。さらに、NefはT細胞のシグナル経路と相互作用し、活性状態を誘導し、次いで、より効率的な遺伝子発現を促進することができる。いくつかのHIV単離物はこの領域中に突然変異または欠失を有し、それらが機能的タンパク質をコードしない原因となり、in vivoでのその複製および発症において重篤に障害を受ける。
【0076】
Gag遺伝子は完全長RNAから翻訳されて、前駆体ポリタンパク質になった後、3〜5個のキャプシドタンパク質;マトリックスタンパク質p17、キャプシドタンパク質p24および核酸結合タンパク質に切断される(Fundamental Virology, Fields BN, Knipe DMおよびHowley M 1996 2、Fields Virology vol 2 1996)。
【0077】
Gag遺伝子は、スプライシングされないウイルスmRNAから発現される、p55とも呼ばれる55キロダルトン(Kd)のGag前駆体タンパク質を生じる。翻訳の間に、p55のN末端はミリストイル化され、細胞膜の細胞質面とのその結合を誘発する。膜に結合したGagポリタンパク質は、感染細胞の表面からのウイルス粒子の出芽を誘発する他のウイルスおよび細胞タンパク質と共に2コピーのウイルスゲノムRNAを動員する。出芽後、p55は、MA(マトリックス[p17])、CA(キャプシド[p24])、NC(ヌクレオキャプシド[p9])、およびp6と呼ばれる4個のより小さいタンパク質へのウイルス成熟のプロセスの間にウイルスにコードされたプロテアーゼ(Pol遺伝子の産物)により切断される。
【0078】
3個の主要なGagタンパク質(p17、p24およびp9)に加えて、全てのGag前駆体は、切断され、様々なサイズのペプチドとしてビリオン中に残存する、いくつかの他の領域を含む。これらのタンパク質は様々な役割を有し、例えば、p2タンパク質は、プロテアーゼ活性の調節において提唱された役割を有し、タンパク質溶解的プロセッシングの正確なタイミングに寄与する。
【0079】
MAポリペプチドは、p55のミリストイル化されたN末端から誘導される。多くのMA分子は、ビリオンの脂質二重層の内部表面に付着したままであり、粒子を安定化する。MAのサブセットはビリオンのより深い層の内側に動員され、そこでウイルスDNAを核に送り届ける複合体の一部となる。MA上の核親和性シグナルは細胞核輸送機構により認識されるため、これらのMA分子はウイルスゲノムの核輸送を容易にする。この現象により、HIVは非分裂細胞に感染することができ、これはレトロウイルスの独特の特性である。
【0080】
p24(CA)タンパク質はウイルス粒子の円錐コアを形成する。シクロフィリンAはp55のp24領域と相互作用し、HIV粒子へのその取込みを誘導することが示されている。GagとシクロフィリンAとの相互作用は、シクロスポリンによるこの相互作用の破壊がウイルス複製を阻害するため、必須である。
【0081】
GagのNC領域は、HIVのいわゆるパッケージングシグナルを特異的に認識する原因となる。パッケージングシグナルは、ウイルスRNAの5'末端の近くに位置する4個のステムループからなり、HIV-1ビリオンへの異種RNAの取込みを媒介するのに十分である。NCは2個のジンクフィンガーモチーフにより媒介される相互作用を介してパッケージングシグナルに結合する。NCはまた、逆転写を容易にする。
【0082】
p6ポリペプチド領域は、p55 Gagとアクセサリータンパク質Vprとの相互作用を媒介し、集合するビリオンへのVprの取込みを誘導する。p6領域はまた、感染細胞からの出芽ビリオンの効率的な放出にとって必要である、いわゆる後期ドメインを含む。
【0083】
Pol遺伝子は、初期感染においてウイルスにより必要とされる活性を有する3個のタンパク質、逆転写酵素(RT)、プロテアーゼ、および細胞DNAへのウイルスDNAの組込みにとって必要とされるインテグラーゼタンパク質をコードする。Polの一次産物はビリオンプロテアーゼにより切断されて、DNA合成にとって必要な活性(RNAおよびDNA指向性DNAポリメラーゼ、リボヌクレアーゼH)を含むアミノ末端RTならびにカルボキシ末端インテグラーゼタンパク質になる。HIVのRTは完全長RT(p66)と切断可能な産物(p51)とのヘテロダイマーであり、カルボキシ末端RNase Hドメインを欠く。
【0084】
RTは、レトロウイルスゲノムによりコードされる最も高度に保存されたタンパク質の1つである。RTの2つの主要な活性は、DNA PolおよびリボヌクレアーゼHである。RTのDNA Pol活性は、鋳型として互換的にRNAおよびDNAを使用し、公知の全てのDNAポリメラーゼと同様、de novoでDNA合成を開始することはできないが、プライマーとして役立つ予め存在する分子を必要とする(RNA)。
【0085】
全てのRTタンパク質に本来備わっているRNase H活性は、DNA合成が進行するにつれて、RNAゲノムを除去する複製初期において必須の役割を果たす。それは全てのRNA-DNAハイブリッド分子からRNAを選択的に分解する。構造的には、ポリメラーゼとリボHは、Pol内の別々の重複しないドメインを占有し、Polのアミノ酸の2/3に及ぶ。
【0086】
p66触媒サブユニットは5個の異なるサブドメインに折り畳まれる。これらのアミノ末端の23個は、RT活性を含む部分を有する。これらのカルボキシ末端はRNase Hドメインである。
【0087】
宿主細胞の感染後、レトロウイルスのRNAゲノムは、感染粒子中に存在する逆転写酵素により線状二本鎖DNAにコピーされる。インテグラーゼ(Skalka AM '99 Adv in Virus Res 52, 271-273に概説されている)は、ウイルスDNAの末端を認識し、それらを切り取り、宿主の染色体部位にウイルスDNAを同行させて、組込みを触媒する。宿主DNA中の多くの部位が組込みの標的となり得る。インテグラーゼはin vitroでの組込みを触媒するのに十分であるが、それはin vivoではウイルスDNAと結合する唯一のタンパク質ではなく、感染細胞から単離された巨大タンパク質-ウイルスDNA複合体は組込み前複合体と呼ばれている。これにより、子孫ウイルスゲノムによる宿主細胞遺伝子の獲得が容易になる。
【0088】
インテグラーゼは3個の異なるドメイン、N末端ドメイン、触媒コアおよびC末端ドメインから成る。触媒コアドメインは、ポリヌクレオチジル移動の化学のための全ての要件を含む。
【0089】
かくして、本発明における使用のためのHIV-1由来抗原を、例えば、Gag(例えば、完全長Gag)、p17(Gagの一部)、p24(Gagの別の一部)、p41、p40、Pol(例えば、完全長Pol)、RT(Polの一部)、p51(RTの一部)、インテグラーゼ(Polの一部)、プロテアーゼ(Polの一部)、Env、gp120、gp140もしくはgp160、gp41、Nef、Vif、Vpr、Vpu、Rev、Tatならびにその免疫原性誘導体および免疫原性断片、特に、Env、Gag、NefおよびPolならびにその免疫原性誘導体および免疫原性断片、例えば、p17、p24、RTおよびインテグラーゼから選択することができる。HIVワクチンは、複数の異なるHIV抗原、例えば、上記一覧から選択することができる2もしくは3もしくは4個以上のHIV抗原に対応するポリペプチドおよび/またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。例えば、いくつかの異なる抗原を、単一の融合タンパク質中に含有させることができる。それぞれ、HIV抗原または2個以上の抗原の融合物である、2個以上の第1の免疫原性ポリペプチドおよび/または2個以上の第2の免疫原性ポリペプチドを用いることができる。
【0090】
例えば、抗原は、融合タンパク質のGag部分がポリペプチドの5'末端に存在する、Nefまたはその免疫原性誘導体もしくは免疫原性断片に融合された、RTまたはその免疫原性誘導体もしくは免疫原性断片に融合された、Gagまたはその免疫原性誘導体もしくは免疫原性断片を含んでもよい。
【0091】
本発明に従う使用のためのGag配列は、Gagのp6ポリペプチドをコードする配列を含まなくてもよい。本発明における使用のためのGag配列の特定例は、p17および/またはp24をコードする配列を含む。
【0092】
RT配列は、任意の逆転写酵素活性を実質的に不活性化する突然変異を含んでもよい(WO 03/025003を参照)。
【0093】
RT遺伝子は、HIVゲノム中の大きい方のpol遺伝子の成分である。本発明に従って用いられるRT配列はPol、または少なくともRTに対応するPolの断片の文脈中に存在してもよいことが理解されるであろう。Polのそのような断片は、Polの主要なCTLエピトープを保持する。1つの特定例においては、RTはまさにp51として、またはまさにRTのp66断片として含まれる。
【0094】
本発明に従う融合タンパク質または組成物のRT成分は、必要に応じて、原核生物発現系において内部開始部位として役立つ部位を除去するための突然変異を含む。
【0095】
必要に応じて、本発明における使用のためのNef配列をトランケートして、N末端領域をコードする配列を除去する、すなわち、30〜85アミノ酸、例えば、60〜85アミノ酸、特に、N末端の65アミノ酸(後者のトランケーションを本明細書ではtrNefと呼ぶ)を除去する。あるいは、またはさらに、Nefを改変してミリストイル化部位を除去することができる。例えば、Gly 2ミリストイル化部位を、欠失または置換により除去することができる。あるいは、またはさらに、Nefを改変して、一方または両方のロイシンの欠失または置換により、Leu 174とLeu 175のジロイシンモチーフを変化させることができる。CD4の下方調節におけるジロイシンモチーフの重要性は、例えば、Bresnahan P.A.ら(1998) Current Biology, 8(22): 1235-8に記載されている。
【0096】
Env抗原は、gp160としてその完全長で存在するか、またはgp140以下のものとしてトランケートされたものであってよい(必要に応じて、gp120とgp41の間の切断部位モチーフを破壊する好適な突然変異を有する)。Env抗原はまた、gp120とgp41としてその天然のプロセッシングされた形態で存在してもよい。gp160のこれらの2個の誘導体を、個々に、または組合せとして一緒に用いることができる。上記のEnv抗原はさらに、欠失(特に可変ループの)およびトランケーションを示してもよい。同様にEnvの断片を用いることができる。
【0097】
例示的なgp120配列を、配列番号6に示す。例示的なgp140配列を配列番号7に示す。
【0098】
本発明に従う凍結乾燥組成物における使用のための免疫原性ポリペプチドは、これらの天然抗原のCTLエピトープの少なくとも75%、または少なくとも90%または少なくとも95%、例えば、96%が存在するGag、Pol、EnvおよびNefを含んでもよい。
【0099】
上記で定義されたp17/p24 Gag、p66 RT、およびトランケートされたNefを含む免疫原性ポリペプチドを含む凍結乾燥組成物中では、天然のGag、PolおよびNef抗原のCTLエピトープの96%が好適に存在する。
【0100】
本発明の一実施形態は、Gag、RT、Nefの順に、TLR9リガンドおよびp17、p24 Gag、p66 RT、トランケートされたNef(末端アミノ酸1〜85をコードするヌクレオチドを含まない-「trNef」)を含む免疫原性ポリペプチドを含む凍結乾燥組成物を提供する。
【0101】
本発明に従う凍結乾燥組成物における使用のための特定のポリヌクレオチドおよび対応するポリペプチド抗原としては、
1. p17、p24(コドン最適化)Gag-p66 RT(コドン最適化)-トランケートされたNef;
2. トランケートされたNef-p66 RT(コドン最適化)-p17、p24(コドン最適化)Gag;
3. トランケートされたNef-p17、p24(コドン最適化)Gag-p66 RT(コドン最適化);
4. p66 RT(コドン最適化)-p17、p24(コドン最適化)Gag-トランケートされたNef;
5. p66 RT(コドン最適化)-トランケートされたNef-p17、p24(コドン最適化)Gag;
6. p17、p24(コドン最適化)Gag-トランケートされたNef-p66 RT(コドン最適化)、
が挙げられる。例示的な融合物は、特に、Gag-RT-Nefの順序にあるGag、RTおよびNefの融合物である(例えば、配列番号8または配列番号9を参照)。別の例示的な融合物は、特に、p24-RT-Nef-p17の順序にあるp17、p24、RTおよびNefの融合物である。この融合物はF4と呼ばれており、WO2006/013106に記載されている。F4は本発明の凍結乾燥組成物中に認められるHIV抗原の好ましい例である。F4のヌクレオチド配列を、配列番号10に与える(p24配列を太字で示し、Nef配列に下線を付し、および囲みは遺伝子構築物により誘導されるヌクレオチドである)。F4のアミノ酸配列を、配列番号11に与えるが、その式中、
P24配列:アミノ酸1〜232(太字)
RT配列:アミノ酸235〜795
Nef配列:アミノ酸798〜1002
P17配列:アミノ酸1005〜1136
囲み:遺伝子構築物により誘導されるアミノ酸
K(リジン):トリプトファン(W)の代わり、酵素活性を除去するために導入された突然変異である。
【0102】
別の実施形態においては、凍結乾燥組成物は、特に、Gag-RT-インテグラーゼ-Nefの順に、Gag、RT、インテグラーゼおよびNefを含む(例えば、配列番号11を参照)。
【0103】
他の実施形態においては、HIV抗原は、Nefまたはその免疫原性誘導体もしくは免疫原性断片と、p17 Gagおよび/またはp24 Gagまたはその免疫原性誘導体もしくは免疫原性断片とを含み、p17およびp24 Gagが両方とも存在する場合、それらの間に少なくとも1個のHIV抗原またはその免疫原性断片が存在する融合ポリペプチドであってよい。
【0104】
例えば、Nefは好適には完全長Nefである。
【0105】
例えば、p17 Gagおよびp24 Gagは、好適には、それぞれ完全長p17およびp24である。
【0106】
一実施形態においては、凍結乾燥組成物は、p17およびp24 Gagの両方またはその免疫原性断片を含む免疫原性ポリペプチドを含む。そのような構築物中では、p24 Gag成分とp17 Gag成分は、Nefおよび/もしくはRTまたはその免疫原性誘導体もしくは免疫原性断片などの、少なくとも1個のさらなるHIV抗原またはその免疫原性断片により分離されている。さらなる詳細については、WO 2006/013106を参照されたい。
【0107】
p24およびRTを含む融合タンパク質においては、抗原を大腸菌中で単独で発現させる場合、RTよりも良好なp24の発現が観察されるため、該構築物中ではp24がRTよりも前にあることが好ましい。
【0108】
本発明に従う凍結乾燥組成物における使用のためのいくつかの構築物は、以下のものを含む:
1. p24-RT-Nef-p17
2. p24-RT*-Nef-p17
3. p24-p51RT-Nef-p17
4. p24-p51RT*-Nef-p17
5. p17-p51RT-Nef
6. p17-p51RT*-Nef
7. Nef-p17
8. Nef-リンカーを含むp17
9. p17-Nef
10. p17-リンカーを含むNef、
*はRTのメチオニン592のリジンへの突然変異を表す。
【0109】
別の態様においては、本発明は、少なくとも4個のHIV抗原またはその免疫原性断片を含むHIV抗原の融合タンパク質を含み、該4個の抗原または断片がNef、PolおよびGagから誘導される凍結乾燥組成物を提供する。好ましくは、Gagは、融合物中で少なくとも1個の他の抗原により分離された2個の別々の成分として存在する。好ましくは、Nefは完全長Nefである。好ましくは、Polはp66またはp51RTである。好ましくは、Gagはp17およびp24 Gagである。本発明のこの態様における融合物中の抗原成分の他の好ましい特徴および特性を、以下に記載する。
【0110】
本発明のこの態様の好ましい実施形態は、上記に既に列挙された4個の成分の融合物である:
1. p24-RT-Nef-p17
2. p24-RT*-Nef-p17
3. p24-p51RT-Nef-p17
4. p24-p51RT*-Nef-p17。
【0111】
本発明の凍結乾燥組成物内で用いられる免疫原性ポリペプチドは、Gag、RTおよびNefなどの特定の抗原に対応する配列間に存在するリンカー配列を有してもよい。そのようなリンカー配列は、例えば、長さ20アミノ酸であってよい。特定例においては、それらは1〜10アミノ酸、または1〜6アミノ酸、例えば、4〜6アミノ酸であってよい。
【0112】
そのような好適なHIV抗原のさらなる説明を、WO 03/025003に見出すことができる。
【0113】
本発明における使用のためのHIV抗原を、任意のHIVクレード、例えば、クレードA、クレードBまたはクレードCから誘導することができる。例えば、HIV抗原を、クレードAまたはB、特にBから誘導することができる。
【0114】
本発明の1つの特定の実施形態においては、凍結乾燥組成物は、2個以上の免疫原性ポリペプチドを含む。この実施形態の一態様においては、第1の免疫原性ポリペプチドは、Gagおよび/もしくはPolおよび/もしくはNefまたはそれらのいずれかの断片もしくは誘導体を含むポリペプチド(例えば、p24-RT-Nef-p17)である。本発明のこの実施形態の1つの特定の態様においては、第2の免疫原性ポリペプチドは、Gapおよび/もしくはPolおよび/もしくはNefまたはそれらのいずれかの断片もしくは誘導体を含むポリペプチド(例えば、Gag-RT-NefまたはGag-RT-インテグラーゼ-Nef)である。
【0115】
かくして、1つの特定の実施形態においては、Gapおよび/もしくはPolおよび/もしくはNefまたはそれらのいずれかの断片もしくは誘導体を含むポリペプチド(例えば、p24-RT-Nef-p17)が第1の免疫原性ポリペプチドであり、Gapおよび/もしくはPolおよび/もしくはNefまたはそれらのいずれかの断片もしくは誘導体を含むポリペプチド(例えば、Gag-RT-NefまたはGag-RT-インテグラーゼ-Nef)が第2の免疫原性ポリペプチドである。
【0116】
本発明の別の特定の実施形態においては、第1の免疫原性ポリペプチドは、Envまたはその断片もしくは誘導体、例えば、gp120、gp140またはgp160(特に、gp120)である。本発明の1つの特定の実施形態においては、第2の免疫原性ポリペプチドは、Gagおよび/もしくはPolおよび/もしくはNefまたはそれらのいずれかの断片もしくは誘導体を含むポリペプチド(例えば、p24-RT-Nef-p17)を含むポリペプチドである。
【0117】
かくして、1つの特定の実施形態においては、Envまたはその断片もしくは誘導体、例えば、gp120、gp140またはgp160(特に、gp120)が第1の免疫原性ポリペプチドであり、Gagおよび/もしくはPolおよび/もしくはNefまたはそれらのいずれかの断片もしくは誘導体を含むポリペプチド(例えば、p24-RT-Nef-p17)が第2の免疫原性ポリペプチドである。
【0118】
本発明の別の特定の実施形態においては、第1の免疫原性ポリペプチドは、Gagおよび/もしくはPolおよび/もしくはNefまたはそれらのいずれかの断片もしくは誘導体を含むポリペプチド(例えば、p24-RT-Nef-p17)である。本発明の1つの特定の実施形態においては、第2の免疫原性ポリペプチドは、Envまたはその断片もしくは誘導体、例えば、gp120、gp140またはgp160(特に、gp120)である。
【0119】
かくして、1つの特定の実施形態においては、Gagおよび/もしくはPolおよび/もしくはNefまたはそれらのいずれかの断片もしくは誘導体を含むポリペプチド(例えば、p24-RT-Nef-p17)が第1の免疫原性ポリペプチドであり、Envまたはその断片もしくは誘導体、例えば、gp120、gp140もしくはgp160(特に、gp120)が第2の免疫原性ポリペプチドである。
【0120】
凍結乾燥組成物は、1種の抗原を含むか、または2種以上の抗原を含んでもよい。
【0121】
本発明の一態様においては、TLR9リガンドを用いて、正に荷電していない抗原の溶解性を改善する。本発明者らは、特に負に荷電した抗原と、Cpgとの同時凍結乾燥により、再構成の際のその溶解性を改善することができることを見出した。TLR9リガンドが免疫刺激オリゴヌクレオチドである場合、前記抗原は正味の負電荷を有する分子であろう。このリガンドを正味の正電荷を有する抗原と同時凍結乾燥する場合、TLR9リガンドは凍結乾燥組成物の再構成の際に抗原と相互作用し、おそらく抗原の沈降を引き起こす可能性が存在する。これは望ましくないが、当業者であれば、例えば、L-アルギニンなどの、そのような状況で溶解性を増加させることが知られる凍結乾燥賦形剤のための組成物と共に含有させることにより回避することができる。
【0122】
TLR9リガンドと1種以上の抗原を好適な賦形剤と混合して、凍結乾燥することができる最終バルク製剤を形成する。最適には、賦形剤は凍結の初期段階の間の変性からタンパク質を保護するための凍結保護剤、および乾燥の間のタンパク質不活性化を防止するための凍結乾燥保護剤を含むであろう。2種の異なる分子を用いるか、またはジサッカリドなどの両方の特性を有する1種の分子を用いることができる。必要に応じて、マンニトールまたはグリシンなどの結晶性増量剤を添加してもよい。ポリソルベートまたはTween(登録商標)などの非イオン性界面活性剤を添加して、タンパク質の凝集の防止を助けることもできる。また、賦形剤は最終バルクのpHを改変するバッファー塩を含んでもよい。
【0123】
好適な賦形剤としては、以下のものが挙げられる:スクロース、トレハロース、ラフィノースなどの糖類およびマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオースもしくはマルトヘキサオースなどのマルトデキストリン;マンニトールもしくはソルビトールなどのポリオール;デキストラン、ポリエチレングリコール(PEG)、もしくはポリビニルピロリドン(PVP)などのポリマー;グリシン、アラニンもしくはアルギニンなどのアミノ酸。
【0124】
また、2種以上、例えば、3種もしくは4種の賦形剤を一緒に用いることができるように、賦形剤を混合することもできる。可能な組合せとしては、糖とデキストラン、例えば、スクロースとデキストランまたはトレハロースとデキストラン;糖とPEG、例えば、PEG8000とサッカリド;糖とPVP、例えば、スクロースとPVP;糖とアミノ酸、例えば、グリシンとスクロース;2種の糖、例えば、スクロースとグルコースもしくはスクロースとラフィノース;スクロースとポリオール、例えば、スクロースとソルビトールもしくはスクロースとマンニトール;ポリオールとアミノ酸、例えば、マンニトールとグリシンが挙げられる。
【0125】
ポリソルベートまたはTween(登録商標)などの界面活性剤を、任意の組合せの賦形剤に添加することができる。
【0126】
ワクチン接種のために用いることができる免疫原性組成物を形成するために、抗原とTLR9リガンドを含む凍結乾燥組成物を、製薬上許容し得る希釈剤を用いて再構成する。そのような希釈剤が、粒子状希釈剤、例えば、金属粒子の溶液、またはリポソーム、または水中油型乳濁液であるべきであることが本発明の好ましい態様である。
【0127】
一実施形態においては、希釈剤はさらに免疫刺激剤を含む。これは、最終的な再構成された免疫原性組成物が、凍結乾燥組成物中に認められるTLR9リガンドに加えて、他の免疫刺激剤を含むであろうことを意味する。
【0128】
単独で、または組合せでアジュバントであると知られるいくつかの公知の免疫刺激剤が存在する。生来の、または天然の免疫系は、予め曝露する必要なしに様々な病原体を認識する。自然免疫を担う主な細胞である単球/マクロファージおよび好中球は微生物病原体を貪食し、生来の炎症性および特異的免疫応答を誘発する。
【0129】
リポ多糖(LPS)は、グラム陰性細菌の外膜の外部小葉の主要な表面分子であり、専らその中に生じる。LPSはTLR4リガンドであることが示されている。LPSは血清補体および貪食細胞による細菌の破壊を阻害し、コロニー形成のための付着性に関与する。LPSは、約10,000ダルトンの大きさの構造的に関連する複合体分子の群であり、3個の共有結合した領域:
(i)外側領域のO-特異的多糖鎖(O-抗原)
(ii)コアオリゴ糖中心領域
(iii)リピドA-疎水性アンカーとして役立つ最も内側の領域(それは長鎖脂肪酸を担持するグルコサミンジサッカリドを含む)
からなる。
【0130】
致死毒性、発熱原性およびアジュバント原性などのLPSの生物学的活性は、リピドA部分と関連することが示されている。対照的に、免疫原性はO-特異的多糖成分(O-抗原)と関連する。LPSとリピドAは共に、その強いアジュバント作用について長く知られてきたが、これらの分子の高い毒性はワクチン製剤におけるその使用を不可能にしてきた。従って、そのアジュバント原性を維持しながら、LPSまたはリピドAの毒性を低下させることに対して著しい努力が払われてきた。
【0131】
サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)の突然変異体R595は、親株(スムース)の培養物から1966年に単離された(Luderitzら、1966 Ann. N. Y. Acad. Sci. 133:349-374)。選択されたコロニーを、ファージの一団による溶解に対するその罹りやすさについてスクリーニングし、狭い範囲の感度(1種または2種のファージのみに対する感受性)を示すこれらのコロニーのみを、さらなる研究のために選択した。この努力により、LPS生合成が欠損し、S. minnesota R595と呼ばれるディープラフ突然変異株の単離がもたらされた。
【0132】
他のLPSと比較して、S. minnesota R595突然変異体により産生されたものは比較的単純な構造を有する:
(i)それらはO-特異的領域を含まない-野生型スムース表現型から突然変異ラフ表現型へのシフトを担い、ビルレンスの喪失をもたらす特徴、
(ii)コア領域は非常に短い-この特徴は様々な化合物への株の感受性を増加させる、
(iii)リピドA部分は最大で7個の脂肪酸で高度にアシル化されている。
【0133】
グラム陰性細菌のディープラフ突然変異株から抽出されたLPSの酸加水分解により得られる4'-モノホスホリルリピドA(MPL)は、1000倍を超えて減少された毒性(孵化鶏卵中での致死用量により測定される)を示しながら、LPSのアジュバント特性を保持する(Johnsonら、1987 Rev. Infect. Dis. 9 Suppl:S512-S516)。典型的には、LPSを、約30分間、中程度の強度の鉱物酸溶液(例えば、0.1 M HCl)中で還流させる。このプロセスは、1位での脱リン酸化、および6'位での脱炭水化物化をもたらし、MPLが得られる。
【0134】
MPLの穏和なアルカリ加水分解により得られる3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)は、再度、アジュバント原性を維持しながらさらに低下した毒性を有する(米国特許第4,912,094号(Ribi Immunochemicals)を参照)。アルカリ加水分解を、pH 10.5の0.5 M炭酸ナトリウムなどの弱塩基の水性溶液を用いる飽和により、典型的にはクロロホルム/メタノールの混合物などの有機溶媒中で実施する。
【0135】
3D-MPLの調製に関するさらなる情報は、例えば、米国特許第4,912,094号およびWO 02/078637 (Corixa Corporation)中で入手可能である。
【0136】
TLRリガンドではないいくつかの分子が、アジュバント活性を有すると示されている。キラヤサポニンは、樹木キラヤ・サポナリアの樹皮から抽出されたトリテルペングリコシドの混合物である。粗サポニンは、動物用アジュバントとして広く用いられてきた。Quil-Aは、キラヤサポニン材料の部分精製された水性抽出物である。QS21は、Quil AのHPLC精製された非毒性画分であり、その製造方法は米国特許第5,057,540号に開示されている(QA21として)。
【0137】
本発明の一態様においては、希釈剤は1種のさらなる免疫刺激剤を含む。本発明の別の態様においては、希釈剤は2種以上のさらなる免疫刺激剤を含む。そのような免疫刺激剤は、TLR4リガンド、サポニン、TLR7リガンド、TLR8リガンドまたはTLR9リガンドであってよい。本発明の一実施形態においては、さらなる免疫刺激剤は、本明細書に記載の3D-MPLなどのTLR4リガンドである。本発明のさらなる実施形態においては、さらなる免疫刺激剤は、本明細書に記載のQS21である。本発明のさらなる実施形態においては、希釈剤はQS21と3D-MPLを含む。この実施形態の一態様においては、希釈剤はQS21と3D-MPLを含む水中油型乳濁液である。この実施形態の別の態様においては、希釈剤はQS21と3D-MPLを含むリポソームの溶液である。
【0138】
ここで、本発明を、以下の非限定例を参照してさらに説明する。
【0139】
(実施例)
【実施例1】
【0140】
CpGオリゴヌクレオチドと抗原としてのCPC-P501Sの凍結乾燥
用いた抗原はCPC-P501Sであった。この抗原を図1に図示するが、TM2〜TM12を示す区分はP501S抗原を表し、左手側の卵形の形状は、CPC融合パートナーを表し、His尾部を右手側に示す。
【0141】
抗原を、サッカロミセス・セレビシエ(S. cerevisiae)中で示されるHis尾部と共に産生させた後、Tris(5 mM pH 7.5)およびTween 80(0.3%)のバッファーを用いて700μg/mlの濃度にした。
【0142】
最終バルクを調製するために、スクロース(35%)を注入用の水に添加して、6.3%の最終濃度を達成した。次いで、Tris (1M pH 8.8)を添加した後、Tween 80(25%)を添加して、0.2%の最終濃度を達成した。この混合物を室温で5分間、磁気攪拌した。CPC-501Sを添加し、混合物を室温で4分間磁気攪拌した。次いで、配列番号4のCpGオリゴを添加し、得られる混合物を室温で15分間磁気攪拌したところ、最終バルクが得られた。組成物を以下のように分析した。
【0143】

【0144】
0.5 mlの組成物をガラスバイアル中に充填し、図2に示される凍結乾燥サイクルにかけた。
【0145】
ケーキの特性評価を、視覚的検査により実行し、組成物の3つのバイアル上、37℃でT0、1週間、2週間、3週間、および4週間で直径を測定した。残留湿度含量を、熱重量測定(TG)またはKarl Fischer (KF)を用いて、同じ時点および温度で測定した。以下に認められるように、ケーキは最大で2週間安定であった。
【0146】

【0147】
37℃で保存した最終容器中の湿度(安定性分析を加速するため)は、時間の間に増加する。37℃で1ヶ月後、ケーキは1.3%のH2Oを含み、収縮する。この実験においては、湿度の増加は、吸湿性粉末がストッパーから水を吸収するという事実に起因する。ストッパーを新型のストッパーと交換することにより、この収縮を防止するのを助けることができる。
【0148】
次いで、ケーキを注入用の水、または以下の担体液体:アジュバント系A (WO2005/112991に記載のように調製されたリポソームアジュバント)、アジュバント系E (WO2005/112991に記載のように調製された水中油型乳濁液アジュバント)またはアジュバント系F (WO2005/112991に記載のように調製された水中油型乳濁液アジュバント)を用いて再構成した。
【0149】
注入用の水、アジュバント系Eまたはアジュバント系Fについて、タンパク質凝集または分解が認められなかった。アジュバント系Aについては、いくらかの凝集および分解が認められた。これはCPC-P501Sの等電点以下のpHの減少に起因すると結論付けられた。Tris賦形剤の50 mMへの濃度の増加により問題が解決し、その後、アジュバント系Aについて凝集は認められなかった。凍結ケーキ(すなわち、抗原とCpGオリゴヌクレオチドの同時凍結乾燥)中のCpGの存在は、アジュバント系Aを用いて再構成した場合、抗原の凝集を防止するのを助けることも見出された。アジュバント系Aを用いるCpGを含むか、含まない凍結ケーキの再構成の比較により、同時凍結乾燥後の凝集が低下することが示された(データは示さない)。
【0150】
アジュバント系A中のリポソームのサイズの賦形剤の影響も研究したところ、アジュバントAのみのバイアル中に認められるリポソームと、抗原、CpG、TrisおよびTweenを含む凍結ケーキの再構成後のアジュバント系Aのバイアル中に認められるリポソームとの間のサイズの差異はないことがわかった。従って、本発明者は、凍結ケーキの成分がアジュバント系に影響しないと結論付けることができる(図4)。
【0151】
最後に、製剤の抗原性を研究したところ、リンパ増殖および細胞内サイトカイン(IFNγ)産生の点で、CPC-P501Sの液体と凍結製剤との間の差異はないことがわかった(データは示さない)。従って、本発明者らは、抗原の免疫原性はCpGとの同時凍結乾燥により影響されないと結論付けることができる。
【実施例2】
【0152】
CpGオリゴヌクレオチドと抗原としてのMage-3の凍結乾燥
用いた抗原は、順に精製を容易にするためにHis尾部に連結されたMAGE-3に連結されたプロテインDの一部(PD-Mage3-His)であった(図5:配列番号13を参照)。
【0153】
精製されたバルク抗原を、大腸菌中でHisタグと共に産生させた後、NaH2PO4・2H2O/K2HPO4・2H2O(2 mM)および約0.2%v/v(理論値)、pH 7.5のTween 80のバッファーを用いて750μg/mlの濃度にした。
【0154】
最終バルクを調製するために、スクロース(30%)を注入用の水に添加して、3.15%の最終濃度を得た。次いで、NaH2PO4・2H2O/K2HPO4・2H2O(100 mM pH 7.5)を添加して、抗原バッファー中に認められるリン酸を考慮に入れて5 mMの最終PO4濃度を得た。Tween 80(3%)も添加して、抗原バッファー中に認められるTweenを考慮に入れて0.15%の最終濃度を得た。この混合物を室温で5〜15分間磁気攪拌した。PD-Mage3-Hisを添加し(750μg/ml)、混合物を室温で5〜15分間磁気攪拌した。次いで、配列番号4のCpGオリゴを添加し、得られる混合物を室温で15分間(+/-5分間)磁気攪拌したところ、最終バルクが得られた。NaOH 0.05Mもしくは0.5M、またはHCl 0.03Mもしくは0.3Mを用いてpHをpH7.5+/-0.1に調整した。
【0155】
組成物を以下のように分析した。
【0156】

【0157】
0.5 mlのこの組成物をガラスバイアル中に充填し、図6に示される凍結乾燥サイクルにかけた。
【0158】
ケーキ組成物に対する賦形剤および凍結乾燥の影響を、37℃で7〜9日間、ケーキを保存した後に分析した。
【0159】

【0160】
ケーキは7日でいかなる崩壊も示さず、ストレス安定性の8日間を通して変化しないことが認められる。
【0161】
37℃で7〜9日間保存されたケーキの残留湿度は3%の仕様以下のままである。
【0162】
37℃で7〜9日間の保存後に直径の進化はなかった。
【0163】
次いで、アジュバント系A(WO2005/112991に記載のように調製されたリポソームアジュバント)を用いてケーキを再構成した。タンパク質の凝集の分解も認められず、それによって抗原を、再構成されるその能力に影響することなくCpGと共に同時凍結乾燥することができることが確認された。
【0164】
製材の抗原性を研究した。アジュバント系A中での再構成後に、24時間後に時間と共に抗原性が低下することが見出された。これは再構成後に認められる酸性pH (6.2+/-0.1)に起因すると考えられる。抗原性の低下を、pHを増加させることにより低下させることができることがわかった場合、これが確認された。しかしながら、長時間に渡って抗原性のいくらかの低下が依然として存在した。従って、製剤を試験して、この低下がin vivoでの効力試験に対する影響を有するかどうかを見た。ヒト用量の3/10、1/10および1/30の希釈液を、図7に示されるように1群あたり10匹のマウスの群に与えた。マウスを28日目に出血させた。
【0165】
T0、4時間および24時間が、アジュバント系Aを用いるケーキの再構成後の時間である。図7に認められるように、効力に対する影響はなかった。
【実施例3】
【0166】
再構成後の抗原溶解性に対するCpGの影響
1. WT1
WT1は、元々小児腎臓癌、ウィルムス腫瘍において過剰発現されることがわかったタンパク質である。本事例において用いられる候補抗原は、抗原としてほぼ完全長のタンパク質を用いる。WT1-A10タンパク質は、12マーのトランケートされたtat配列(リーダー配列)とWT1配列のアミノ酸番号2〜281とからなる、大腸菌中で発現される292アミノ酸の組換え融合タンパク質である。単独で凍結乾燥した後、アジュバント系AのpH(6.1)に近いその等電点(5.85〜7.5)およびアジュバント系A中の塩化ナトリウムの存在に起因して、アジュバント系Aを用いて再構成する場合、この抗原は沈降する。
【0167】
WT1-A10の2種の製剤を調製した。再構成された用量は、400μg/mlのWT1-A10抗原、10%スクロース、100 mM Tris、および0.2%Tween 80 +/- 840μg/mlのCpGを含んでいた。
【0168】
両製剤を、500μlのアジュバント系Aを用いて再構成した。得られる液体を遠心分離し、遠心分離されない液体(NC)、上清(SN)およびペレット(P)に対してウェスタンブロットを行った。結果を図8に示す。
【0169】
図8に認められるように、CpGの存在下では、再構成後の抗原の可溶性は、沈降ペレット中の抗原の欠如により証明されるように改善される。沈降した抗原は、凍結ケーキがCpGを含まない再構成された凍結乾燥組成物のペレット中に認められる。これは、正に荷電していない抗原の場合、CpGの同時凍結乾燥が再構成の際に抗原の可溶性を改善することの証拠である。
【0170】
2. PRAME
PRAMEの2種の製剤を調製した。再構成された用量は、1000μg/mlのPRAME抗原、3.15%スクロース、5 mMホウ酸、150 nM塩化ナトリウム、+/- 840μg/mlのCpGを含んでいた。両製剤を500μlのアジュバント系Aを用いて再構成した。得られる液体を遠心分離し、遠心分離されない液体(NC)、上清(SN)およびペレット(P)に対してウェスタンブロットを行った。結果を図9に示す(NC=非遠心分離、SN=上清およびP=ペレット)。
【0171】
図9に認められるように、CpGの存在下では、再構成後の抗原の溶解性は、沈降ペレット中の抗原の欠如により証明されるように改善される。沈降した抗原は、凍結ケーキがCpGを含まない再構成された凍結乾燥組成物のペレット中に認められる。これは、正に荷電していない抗原の場合、CpGの同時凍結乾燥が再構成の際に抗原の可溶性を改善することの証拠である。
【0172】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の抗原とTLR9アゴニストとを含む凍結乾燥組成物。
【請求項2】
前記TLR9アゴニストが免疫刺激オリゴヌクレオチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記免疫刺激オリゴヌクレオチドがCpG含有オリゴヌクレオチドである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記免疫刺激オリゴヌクレオチドが、プリン、プリン、C、G、ピリミジン、ピリミジン配列を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記免疫刺激オリゴヌクレオチドが、
TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT (配列番号1);
TCT CCC AGC GTG CGC CAT (配列番号2);
ACC GAT GAC GTC GCC GGT GAC GGC ACC ACG (配列番号3);
TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT (配列番号4);
TCC ATG ACG TTC CTG ATG CT (配列番号5)
を含む群から選択される、請求項2〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記免疫刺激オリゴヌクレオチドが、少なくとも3個のヌクレオチドにより分離される少なくとも2個の非メチル化CGリピートを含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記免疫刺激オリゴヌクレオチドが、6個のヌクレオチドにより分離される少なくとも2個の非メチル化CGリピートを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗原が正に荷電した抗原ではない、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
1種以上の前記抗原が腫瘍関連抗原である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記抗原が、MAGE-3、CPC-P501S、WT-1からなる群より選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1つの前記抗原が、HIV-1由来抗原である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗原の1つがF4である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗原がF4およびgp120である、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
所望の抗原およびTLR9リガンドを、好適な賦形剤と混合する工程、ならびに得られる製剤を凍結乾燥サイクルに供する工程を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の凍結乾燥組成物を作製する方法。
【請求項15】
好適な担体を用いて請求項1〜12のいずれか1項に記載の凍結乾燥組成物を再構成する工程を含む、免疫原性組成物を作製する方法。
【請求項16】
前記担体が鉱物塩、乳濁液、ポリマー、リポソーム、ISCOMを含む群から選択される粒子状担体である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記担体がリポソーム溶液または水中油型乳濁液である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記担体が1種以上の免疫刺激剤をさらに含む、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記1種以上の免疫刺激剤が、TLR4アゴニスト、TLR4アンタゴニスト、サポニン、TLR7アゴニスト、TLR8アゴニスト、TLR9アゴニストからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記TLR4アンタゴニストが3-脱アシル化MPLである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記サポニンがQS21である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項22】
前記担体が2種の免疫刺激剤を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記免疫刺激剤が3-脱アシル化MPLとQS21である、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−527964(P2010−527964A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508850(P2010−508850)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056305
【国際公開番号】WO2008/142133
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】