説明

凍結乾燥方法および凍結乾燥装置

【課題】凍結乾燥物を容易に粗砕できるうえ、その粗砕物の取扱いが容易であり、安価に実施できるようにする。
【解決手段】竪型チューブ(2)とその内面に液体を供給する噴霧装置(4)とを備える。噴霧装置(4)に給液装置(5)を接続して液状の被乾燥材料を供給する。竪型チューブ(2)の下部に上下方向のガイド筒(14)を接続する。ガイド筒(14)の中間部に粗砕装置(15)と第1開閉弁(18)とを上から順に配置する。ガイド筒(14)のうち第1開閉弁(18)よりも上方の部位と給液装置(5)とを液回収路(19)で接続し、余剰の被乾燥材料を給液装置(5)に回収する。液回収路(19)に第2開閉弁(20)を付設する。竪型チューブ(2)の周囲に加熱・冷凍装置(10)を配置して竪型チューブ(2)の内面の温度を制御する。竪型チューブ(2)を減圧装置(12)に接続して竪型チューブ(2)内を真空状態にできるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液などの液状の被乾燥材料を竪型チューブの内面に凍結させたのちこれを凍結乾燥する凍結乾燥方法とその装置に関し、さらに詳しくは、凍結乾燥物を容易に粗砕できるうえ、その粗砕物の取扱いが容易であり、安価に実施できる凍結乾燥方法および凍結乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品などを溶液にした液状の被乾燥材料を、効率よく凍結乾燥する方法としては、この被乾燥材料を竪型チューブの内面に供給して凍結し、これを減圧下で凍結乾燥させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記の従来技術は、竪型チューブと、この竪型チューブの上部に設けた噴霧手段と、この噴霧手段へ液状の被乾燥材料を供給する給液手段と、竪型チューブの下部に接続されて余剰の被乾燥材料を回収する液回収路と、竪型チューブの周囲に配置されて竪型チューブの内面の温度を制御する冷凍手段と、竪型チューブ内を真空状態にする減圧手段とを備えている。
【0004】
上記の給液手段から供給された液状の被乾燥材料は、上記の噴霧手段で散布されて竪型チューブの内面へ供給される。この竪型チューブの内面は上記の冷凍手段で冷却され、これにより上記の被乾燥材料がパイプ状に凍結される。このとき、竪型チューブの下部へ流下した余剰の被乾燥材料は、上記の給液手段へ液回収路を介して回収される。そして上記の被乾燥材料の凍結層が所定厚さになると、上記の給液手段からの被乾燥材料の供給が停止され、この竪型チューブ内を減圧して昇華熱を加えることにより、上記の凍結した被乾燥材料が凍結乾燥される。
【0005】
上記の竪型チューブの下端部には、ジェットノズルを組み込んだノズル付きフランジが組み付けてある。上記の竪型チューブ内の被乾燥材料は、パイプ状に凍結乾燥されると竪型チューブの内面から剥離して、上記のノズル付きフランジに受け止められるとともに、上記のジェットノズルから噴出されるエアーにより粗砕される。この粗砕された被乾燥材料は、上記のエアーによりジェットミルへ搬送され、さらに微細な粉末状に粉砕されたのち、サイクロン装置により捕集されてバルク缶などに回収される。
【0006】
【特許文献1】特開2004−330130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来技術では、竪型チューブ内へ供給された液状の被乾燥材料のうち、凍結されなかった余剰の被乾燥材料が竪型チューブの下部から液回収路を介して回収されるので、この被乾燥材料を循環使用することができ、効率がよい。しかしながら、上記の竪型チューブ内で凍結乾燥されたパイプ状の凍結乾燥物は、上記のノズル付きフランジでジェットノズルから噴出されるエアーにより粗砕されるため、次の問題点がある。
【0008】
(1)上記の凍結乾燥物はジェットノズルから噴出するエアーで粗砕されることから、このエアーの噴流に曝された部位が過剰に微粉化し易い。また粗砕により得られた粗砕物をジェットミルで粉砕する場合は、この粗砕物が一層微粉化し易い。このように凍結乾燥物が微粉化されると、粉立ちが生じやすくハンドリングなどの取り扱いが容易でないうえ、バイアルなどの容器への定量充填操作が容易でない問題がある。
【0009】
(2)上記のジェットノズルから噴出されるエアーは、凍結乾燥物を粗砕したのち系外へ排出しなければならず、この排気と上記の粗砕されて微粉化した粗砕物との分離が容易でない。特に、この粗砕物をジェットミルで粉砕する場合は、得られた粉粒体の粒子径が一層小さくなり、排気との分離がさらに困難となる。この微粉状の粉粒体の一部が排気に混入して系外へ排出されると、製品の歩留りを低下させるだけでなく、特に医薬品などの場合は系外を汚損する虞もある。
【0010】
(3)上記の排気と粉粒体との分離には、サイクロン装置やバッグフィルタなど大形の分離・捕集装置が必要とされ、装置全体が大形化し安価に実施できない問題があるうえ、このような装置を用いても、上記の排気から微粉化した粉粒体を確実に分離することは容易でない。
【0011】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、凍結乾燥物を容易に粗砕できるうえ、その粗砕物の取扱いが容易であり、安価に実施できる凍結乾燥方法および凍結乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記の課題を解決するため、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図5に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち本発明1は凍結乾燥方法に関し、給液手段(5)から供給された液状の被乾燥材料を竪型チューブ(2)の内面へ供給し、上記の竪型チューブ(2)の内面を冷却して上記の被乾燥材料をパイプ状に凍結させるとともに、竪型チューブ(2)の下部へ流下した余剰の被乾燥材料を上記の給液手段(5)へ液回収路(19)を介して回収し、次いで上記の給液手段(5)からの被乾燥材料の供給を停止したのち、この竪型チューブ(2)内を減圧して上記の凍結した被乾燥材料を凍結乾燥する、凍結乾燥方法であって、
上記の竪型チューブ(2)の下部にガイド筒(14)を上下方向へ接続し、このガイド筒(14)の上下方向中間部に粗砕手段(15)を設け、上記の竪型チューブ(2)内で凍結乾燥されたパイプ状の凍結乾燥物を、重力の作用で上記の粗砕手段(15)へ案内して粗砕し、得られた粗砕物をさらに重力の作用でガイド筒(14)の下端側へ案内することを特徴とする。
【0013】
また本発明2は凍結乾燥装置に関し、竪型チューブ(2)と、この竪型チューブ(2)の内面に液体を供給する噴霧手段(4)と、この噴霧手段(4)へ液状の被乾燥材料を供給する給液手段(5)と、竪型チューブ(2)の下部に接続されて余剰の被乾燥材料を回収する液回収路(19)と、竪型チューブ(2)の周囲に配置されて竪型チューブ(2)の内面の温度を制御する冷凍手段(10)と、竪型チューブ(2)内を真空状態にする減圧手段(12)とを備えた凍結乾燥装置であって、
上記の竪型チューブ(2)の下部に上下方向のガイド筒(14)を接続し、このガイド筒(14)の中間部に粗砕手段(15)と第1開閉弁(18)とを上から順に配置し、この粗砕手段(15)と第1開閉弁(18)との間で上記の液回収路(19)を分岐し、この液回収路(19)に第2開閉弁(20)を付設したことを特徴とする。
【0014】
ここで、上記の粗砕手段は、例えば上記のガイド筒の内部で移動可能な可動部材であってもよく、或いはガイド筒の内面に突設された固定刃などの固定部材であってもよい。さらに可動部材と固定部材との両者を組み合わせて構成することも可能である。
上記の粗砕手段が可動部材で構成された場合は、上記のパイプ状の凍結乾燥物がガイド筒内を重力の作用で案内される過程で、可動部材の移動により衝撃を受けて粗砕される。なお、この可動部材は、ガイド筒の内部で往復移動するものであってもよく、あるいは回転移動するものであってもよい。これに対し、上記の粗砕手段が固定部材で構成された場合は、上記のパイプ状の凍結乾燥物が、重力の作用で落下してこの固定部材に衝突することにより粗砕される。
【0015】
上記の竪型チューブは特定の寸法に限定されないが、この竪型チューブ内で凍結乾燥された被乾燥物は、横断形状の外寸が大きいほど上記の粗砕手段により容易に粗砕される。このためこの竪型チューブの横断形状の内寸は、好ましくは200mm以上に設定され、より好ましくは300mm以上に設定され、さらに好ましくは400mm以上に設定される。ここで、この竪型チューブの横断形状は、通常は円形に形成され、上記の内寸は内径をいうが、この横断形状は例えば多角形など他の形状であってもよく、この横断形状が多角形の場合の上記の内寸は、対角線の長さをいう。
【0016】
また、上記の竪型チューブ内でパイプ状に凍結される被乾燥材料の凍結厚さは、凍結乾燥物が上記の粗砕手段で粗砕可能な厚さであればよく、特定の厚さに限定されない。しかしこの凍結厚さは、薄いほど落下の衝撃で容易に粗砕されるので、好ましくは15mm以下に設定され、より好ましくは10mm以下に設定され、さらに好ましくは5mm以下に設定される。
【0017】
上記の粗砕手段の粗砕により得られた粗砕物は、上記のガイド筒の下方にバルク缶などの容器を配置して、このバルク缶に収容することで解砕・整粒工程などの次工程へ搬送してもよい。しかし、上記のガイド筒の下端部に解砕・整粒手段を接続して、この解砕・整粒装置により上記の粗砕物を所定の大きさの粒子に解砕し整粒すると、凍結乾燥工程から解砕・整粒工程までを一連の装置で行うことができるうえ、粗砕物を重力の作用で無駄なく搬送できるので好ましい。
【0018】
さらにこの場合、上記の解砕・整粒手段の下方に粉末充填手段を接続し、上記の解砕・整粒手段で所定の粒度に整粒された粉粒体が、重力の作用でこの粉末充填手段へ案内されるように構成すると、凍結乾燥工程から粉末充填工程までを一連の装置で行うことができるうえ、粗砕物や粉粒体を重力の作用で充填工程まで無駄なく搬送できるので、一層好ましい。
【0019】
また、上記の解砕・整粒手段と粉末充填装置との間に混合・供給手段を接続して、上記の解砕・整粒手段で所定の粒度に整粒された粉粒体が解砕・整粒手段から混合・供給手段を経て粉末充填手段へ重力の作用で案内されるように構成すると、凍結乾燥工程から粉末充填工程までを一連の装置で行うことができるうえ、上記の粉末充填手段へ供給される粉粒体が更に均一に混合されて分離することが無く、しかも粗砕物や粉粒体を重力の作用で充填工程まで無駄なく搬送できるので、一層好ましい。
【0020】
なお、上記の凍結乾燥工程は、通常、上記の解砕・整粒工程に比べて長時間を要する。このため上記の解砕・整粒手段の上面には、ラインバランスを考慮して、それぞれガイド筒を介して複数の竪型チューブを接続すると好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
(1)パイプ状に凍結乾燥された凍結乾燥物は、上記のガイド筒内を重力の作用で下方へ案内される間に上記の粗砕手段で粗砕されることから、前記の従来技術の噴出エアーによる粗砕と異なって、過剰に微粒化することが抑制され、粗砕後のハンドリングやバイアルなどの容器への定量充填操作を容易に行うことができる。
【0022】
(2)前記の従来技術と異なってジェットノズルから噴出されるエアーを使用する必要がないことから、この粗砕物が系外へ排出することを容易に防止でき、歩留りを高く維持できるうえ、従来必要とされた排気と粗砕物との分離が不要であり、サイクロン装置やバッグフィルタなど大形の分離・捕集装置が不要で、安価に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1および図2は本発明の第1実施形態を示し、図1は本発明の凍結乾燥装置の概略構成図、図2はこの凍結乾燥装置に接続された解砕・整粒装置と粉末充填装置の概略構成図である。
【0024】
図1に示すように、この凍結乾燥装置(1)は円筒状の竪型チューブ(2)を備えており、この竪型チューブ(2)の上部に気密室(3)が形成してある。この竪型チューブ(2)は特定の寸法に限定されないが、例えば内径は200mm以上に、好ましくは300〜600mmに、より好ましくは400〜600mmに形成される。またこの竪型チューブ(2)の高さは500〜4000mmに、好ましくは1000〜3000mmに形成される。
【0025】
上記の気密室(3)内には噴霧装置(4)が配置してある。この噴霧装置(4)は、給液装置(5)の精製水タンク(6)と給液タンク(7)とに給液路(8)を介して接続してある。この給液タンク(7)内には、例えば医薬品の水溶液など、液状の被乾燥材料が収容してある。上記の給液路(8)には給液バルブ(9)が付設してあり、この給液バルブ(9)と上記の精製水タンク(6)の取出しバルブ(6a)とを開くことにより、精製水が上記の噴霧装置(4)へ供給されて上記の気密室(3)内に散布され、給液バルブ(9)と上記の給液タンク(7)の取出しバルブ(7a)とを開くことにより、上記の被乾燥材料が上記の噴霧装置(4)へ供給されて上記の気密室(3)内に散布される。
【0026】
上記の竪型チューブ(2)の周囲には加熱・冷凍装置(10)が配設してあり、この竪型チューブ(2)の内面が、例えば上記の被乾燥材料の凍結温度より低い所定温度に制御される。上記の気密室(3)は減圧路(11)を介して減圧装置(12)に接続してあり、この減圧路(11)に減圧路開閉弁(13)が配設してある。この減圧路開閉弁(13)を開いて上記の減圧装置(12)を駆動すると、上記の竪型チューブ(2)内が真空状態にされる。
【0027】
上記の竪型チューブ(2)の下端部には上下方向のガイド筒(14)が接続してある。このガイド筒(14)は上部の大径部(14a)と、中間部の下方ほど小径となる縮径部(14b)と、下部の細径部(14c)とからなる。上記の大径部(14a)の内部には粗砕装置(15)の回転刃(16)が配置してあり、モータ(17)によりこの回転刃(16)が回動される。また上記の細径部(14c)には第1開閉弁(18)が付設してある。
なお、上記の縮径部(14b)の内面は、粗砕物が滞留しない程度に傾斜させてあればよいが、垂直に近いほど上下長さが長くなるので、例えば水平面に対し60〜80度、より好ましくは70〜80度に設定される。
【0028】
上記の第1開閉弁(18)の上方には液回収路(19)が分岐してあり、この液回収路(19)に第2開閉弁(20)と回収ポンプ(21)が付設してある。この液回収路(19)は、前記の給液タンク(7)に接続してあり、上記の竪型チューブ(2)内を流下した余剰の被乾燥材料が、上記の回収ポンプ(21)により液回収路(19)を経てこの給液タンク(7)へ戻される。
【0029】
図2に示すように、上記のガイド筒(14)の下端は、解砕・整粒装置(22)の上蓋(23)に接続してある。この解砕・整粒装置(22)は、解砕用モータ(24)で回動される解砕アーム(25)が内部に配置してあり、下部に所定メッシュのスクリーン(26)が付設してある。
なお、上記の上蓋(23)には3本のガイド筒(14…)が接続してあり、各ガイド筒(14)の上部にはそれぞれ竪型チューブ(2)が接続してある。ただし本発明でこの上蓋(23)に接続される竪型チューブ(2)は、凍結乾燥速度と、後述の粉末充填装置による充填速度とのバランスなどを考慮して設定され、1本や2本でもよく、或いは4本以上であってもよい。
【0030】
上記の解砕・整粒装置(22)の取出口(27)の下方には粉末充填装置(28)が配置してあり、この粉末充填装置(28)の上蓋(29)に開口した投入口(30)と上記の取出口(27)が、第2ガイド筒(31)を介して接続してある。この粉末充填装置(28)のファンネル(32)内には、上下方向にオーガスクリュウ(33)が配置してあり、このオーガスクリュウ(33)に撹拌アーム(34)が付設してある。上記のオーガスクリュウ(33)は、支持アーム(35)を介して支持台(36)に支持されており、図示しない伝動機構により間欠回転駆動される。上記のファンネル(32)は、上記の支持アーム(35)とその下方の補助アーム(37)とに支持されている。このファンネル(32)の下部には計量部(38)が付設してあり、この計量部(38)の下方にバイアルなどの所定の容器(39)の搬入搬出部(40)が設けてある。
【0031】
次に、上記の凍結乾燥装置(1)等の操作手順について説明する。
最初に、上記の竪型チューブ(2)の内面を上記の加熱・冷凍装置(10)で氷点下に冷却しておき、上記の減圧路開閉弁(13)と第1開閉弁(18)とを閉じた状態で、上記の精製水タンク(6)の取出しバルブ(6a)と給液バルブ(9)とを開く。これにより、精製水が上記の噴霧装置(4)へ供給されて上記の気密室(3)内に散布され、上記の竪型チューブ(2)の内面に沿って流下して竪型チューブ(2)の内面に氷結する。
【0032】
上記の氷層が、例えば2mm程度の所定厚さになると、上記の精製水タンク(6)の取出しバルブ(6a)を閉じて前記の給液タンク(7)の取出しバルブ(7a)を開く。これにより、この給液タンク(7)から液状の被乾燥材料が上記の噴霧装置(4)へ供給されて上記の気密室(3)内に散布され、上記の竪型チューブ(2)の内面に沿って流下しながらパイプ状に凍結する。このとき、竪型チューブ(2)内を下端まで流下した余剰の被乾燥材料は、前記の回収ポンプ(21)により、上記の第2開閉弁(20)から液回収路(19)を経て、上記の給液タンク(7)へ回収される。
【0033】
上記の竪型チューブ(2)の内面に形成される被乾燥材料の凍結厚さが、所定の寸法に、例えば10〜15mm程度になると、上記の取出しバルブ(7a)と給液バルブ(9)を閉じて噴霧装置(4)からの散布を停止する。そして竪型チューブ(2)の下端へ流下した余剰の被乾燥材料が液回収路(19)から給液タンク(7)へ回収されたのち、上記の第2開閉弁(20)を閉じる。その後、前記の減圧路開閉弁(13)を開いて前記の減圧装置(12)を駆動し、上記の竪型チューブ(2)内を所定の真空度に維持するとともに、上記の加熱・冷凍装置(10)により竪型チューブ(2)の内面に昇華熱を加える。これにより上記の凍結した被乾燥材料が凍結乾燥される。
【0034】
上記の凍結乾燥が終了すると、竪型チューブ(2)の内面に形成されていた前記の氷層も昇華して消失されるので、上記の凍結乾燥物は竪型チューブ(2)の内面から剥離し、前記のガイド筒(14)内を落下して前記の粗砕装置(15)の回転刃(16)に受け止められる。
【0035】
次いで、上記の減圧装置(12)を停止して減圧路開閉弁(13)を閉じ、さらにガイド筒(14)に付設された前記の第1開閉弁(18)を開いて、竪型チューブ(2)内やガイド筒(14)内を大気圧に戻す。そして上記のモータ(17)を駆動して回転刃(16)を回転させ、上記の凍結乾燥物に衝撃を加えて粗砕する。このとき、凍結乾燥物はガイド筒(14)の下部の細径部(14c)を通過できる程度に粗砕されればよく、過剰に細かく粉砕する必要はない。
【0036】
上記の回転刃(16)で粗砕された粗砕物は、上記の縮径部(14b)と細径部(14c)とを順に通過して前記の解砕・整粒装置(22)へ重力の作用で案内され、前記の解砕アーム(25)で細かく解砕されるとともに、前記のスクリーン(26)を透過することで所定の粒度に整粒される。
【0037】
上記の解砕・整粒装置(22)で整粒された粒状体は、前記の第2ガイド筒(31)内を重力の作用で案内されて、前記の粉末充填装置(28)のファンネル(32)内へ投入される。この粒状体はこのファンネル(32)内で撹拌アーム(34)により撹拌されるとともに、ファンネル(32)下端の計量部(38)でオーガスクリュウ(33)の回転に応じた所定量が計量され、この計量部(38)から下方へ送り出されて所定の容器(39)内へ充填される。
【0038】
上記の第1実施形態では、解砕・整粒装置(22)の取出口(27)を粉末充填装置(28)の投入口(30)に、第2ガイド筒(31)を介して直接接続した。しかし本発明では、例えば図3に示す第2実施形態のように、上記の解砕・整粒装置(22)と粉末充填装置(28)との間に混合・供給装置(42)を接続してもよい。
【0039】
即ち、この混合・供給装置(42)は、内部に上下方向の回転軸(43)とこれに付設された撹拌羽根(44)とを備えており、下部にスクリュウを内臓したオーガ供給部(45)を付設してある。上記の解砕・整粒装置(22)の取出口(27)はこの混合・供給装置(42)の上面に接続されており、上記のオーガ供給部(45)は、第2ガイド筒(31)を介して上記の粉末充填装置(28)の投入口(30)に接続してある。
【0040】
上記の解砕・整粒装置(22)で整粒された粉粒体は、この混合・供給装置(42)内へ案内されて上記の撹拌羽根(44)により撹拌され、均一に混合されて粒子径の相違による分離が防止される。そしてこの均一に混合された粉粒体が、上記のオーガ供給部(45)から上記の第2ガイド筒(31)を経て上記の粉末充填装置(28)の投入口(30)へ重力の作用で案内される。
【0041】
上記の各実施形態では、上記の粗砕装置(15)が回転刃(16)とこれを駆動するモータ(17)とで構成された場合について説明した。しかし本発明では、例えば図4に示す第1変形例のように、この粗砕装置(15)をガイド筒(14)の内面に突設された固定刃(41)で構成することができる。
即ち図4(a)に示すように、この粗砕装置(15)は、ガイド筒(14)の縮径部(14b)へ上下2段に装着された固定刃(41a・41b)からなる。各固定刃(41a・41b)は上端の刃が十字形に形成され、図4(b)に示すように、上段の固定刃(41a)と下段の固定刃(41b)とは平面視で互いに45度ずらせてある。そして凍結乾燥の終了により竪型チューブ(2)から剥離して落下した凍結乾燥物は、重力の作用で上記の固定刃(41)に衝突して粗砕され、粗砕物はガイド筒(14)内を重力の作用で下方へ案内される。
【0042】
また上記の粗砕装置は、図5に示す第2変形例のように、回転手段と固定手段の両者を備えることも可能である。即ちこの第2変形例の粗砕装置(15)は、案内筒(14)のうちの上部の大径部(14a)を角筒状に形成して、この大径部(14a)内に固定配置した互いに平行な複数の固定刃(46)と、その固定刃(46)間を通過する回転刃(47)とから構成してある。前記の凍結乾燥装置(1)の竪型チューブ(2)から落下した凍結乾燥物は、この回転刃(47)と固定刃(46)とで解砕され、固定刃(46…)間の隙間よりも小さい粗砕物となって案内筒(14)の縮径部(14b)から下方へ案内される。
【0043】
上記の各実施形態や変形例で説明した凍結乾燥装置は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、竪型チューブやガイド筒の形状、寸法、噴霧手段や給液手段、冷凍手段、減圧手段、あるいは粗砕手段などの構造や形状、配置等は、この実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものであり、また、上記の被乾燥材料の凍結厚さなども特定の寸法に限定されないことはいうまでもない。
【0044】
例えば上記の実施形態では、被乾燥材料を竪型チューブの内面へ供給するに先立って、精製水を供給したので、凍結乾燥が完了すると凍結乾燥物が竪型チューブの内面から剥離して落下する。しかし本発明では、被乾燥材料の凍結乾燥物が竪型チューブの内面から容易に剥離する場合は、上記の精製水による氷層の形成を省略することも可能である。
また上記の各実施形態や変形例では、上記のガイド筒を鉛直方向に配置したが、このガイド筒は粗砕物が落下する範囲内で、鉛直方向に対し傾斜させることも可能である。
【0045】
さらに上記の各実施形態や変形例では凍結乾燥装置の下方に解砕・整粒装置や混合・供給装置、粉末充填装置などを配置して接続したが、これらの装置は上記の実施形態の構造のものに限定されないことはいうまでもない。また、本発明の凍結乾燥装置は解砕・整粒手段のみを接続してもよく、或いはこれらの接続を省略してもよい。この場合は、粗砕物や整粒された粉粒体をバルク缶等で搬送することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の凍結乾燥装置は、凍結乾燥物を容易に粗砕できるうえ、その粗砕物の取扱いが容易であり、安価に実施できるので、医薬品の凍結乾燥粉末の製造に特に好適に用いられるが、他の分野の凍結乾燥粉末の製造にも好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態を示す、凍結乾燥装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態実施形態の凍結乾燥装置に接続された、解砕・整粒装置と粉末充填装置の概略構成図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示す、混合・供給装置の概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態の第1変形例を示し、図4(a)は粗砕装置近傍の縦断面図、図4(b)は図4(a)のB−B線矢視断面図である。
【図5】本発明の実施形態の第2変形例を示し、図5(a)は粗砕装置近傍の縦断面図、図5(b)は図5(a)のB−B線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1…凍結乾燥装置
2…竪型チューブ
4…噴霧装置(噴霧手段)
5…給液装置(給液手段)
10…加熱・冷凍装置(冷凍手段)
12…減圧装置(減圧手段)
14…ガイド筒
15…粗砕装置(粗砕手段)
16…回転刃(可動部材)
18…第1開閉弁
19…液回収路
20…第2開閉弁
22…解砕・整粒装置(解砕・整粒手段)
28…粉末充填装置(粉末充填手段)
39…容器
41…固定刃(固定部材)
42…混合・供給装置(混合・供給手段)
46…固定刃(固定部材)
47…回転刃(回転部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給液手段(5)から供給された液状の被乾燥材料を竪型チューブ(2)の内面へ供給し、上記の竪型チューブ(2)の内面を冷却して上記の被乾燥材料をパイプ状に凍結させるとともに、竪型チューブ(2)の下部へ流下した余剰の被乾燥材料を上記の給液手段(5)へ液回収路(19)を介して回収し、次いで上記の給液手段(5)からの被乾燥材料の供給を停止したのち、この竪型チューブ(2)内を減圧して上記の凍結した被乾燥材料を凍結乾燥する、凍結乾燥方法であって、
上記の竪型チューブ(2)の下部にガイド筒(14)を上下方向へ接続し、このガイド筒(14)の上下方向中間部に粗砕手段(15)を設け、上記の竪型チューブ(2)内で凍結乾燥されたパイプ状の凍結乾燥物を、重力の作用で上記の粗砕手段(15)へ案内して粗砕し、得られた粗砕物をさらに重力の作用でガイド筒(14)の下端側へ案内することを特徴とする、凍結乾燥方法。
【請求項2】
上記の粗砕手段(15)が、ガイド筒(14)の内部で移動する可動部材(16・47)を備え、この可動部材(16・47)の移動により衝撃を加えることで、上記の重力の作用で案内された凍結乾燥物を粗砕する、請求項1に記載の凍結乾燥方法。
【請求項3】
上記の粗砕手段(15)が、ガイド筒(14)の内面に突設された固定部材(41・46)を備え、上記の凍結乾燥物を、重力の作用で上記の固定部材(41・46)へ衝突させることで粗砕する、請求項1に記載の凍結乾燥方法。
【請求項4】
上記の竪型チューブ(2)内でパイプ状に凍結される被乾燥材料は、横断形状の外寸を200mm以上に形成する、請求項1から3のいずれか1項に記載の凍結乾燥方法。
【請求項5】
上記の竪型チューブ(2)内でパイプ状に凍結される被乾燥材料の凍結厚さを、15mm以下とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の凍結乾燥方法。
【請求項6】
上記のガイド筒(14)の下端部に解砕・整粒手段(22)を付設し、上記の粗砕手段(15)による粗砕で得られた粗砕物を、この解砕・整粒手段(22)へ重力の作用で案内する、請求項1から5のいずれか1項に記載の凍結乾燥方法。
【請求項7】
上記の解砕・整粒手段(22)の下方に粉末充填手段(28)を接続し、上記の解砕・整粒手段(22)で整粒された粉粒体を、この粉末充填手段(28)へ重力の作用で案内する、請求項6項に記載の凍結乾燥方法。
【請求項8】
上記の解砕・整粒手段(22)と粉末充填手段(28)との間に、混合・供給手段(42)を接続して、上記の粉粒体を解砕・整粒手段(22)から混合・供給手段(42)を経て粉末充填手段(28)へ重力の作用で案内する、請求項7に記載の凍結乾燥方法。
【請求項9】
竪型チューブ(2)と、この竪型チューブ(2)の内面に液体を供給する噴霧手段(4)と、この噴霧手段(4)へ液状の被乾燥材料を供給する給液手段(5)と、竪型チューブ(2)の下部に接続されて余剰の被乾燥材料を回収する液回収路(19)と、竪型チューブ(2)の周囲に配置されて竪型チューブ(2)の内面の温度を制御する冷凍手段(10)と、竪型チューブ(2)内を真空状態にする減圧手段(12)とを備えた凍結乾燥装置であって、
上記の竪型チューブ(2)の下部に上下方向のガイド筒(14)を接続し、このガイド筒(14)の中間部に粗砕手段(15)と第1開閉弁(18)とを上から順に配置し、この粗砕手段(15)と第1開閉弁(18)との間で上記の液回収路(19)を分岐し、この液回収路(19)に第2開閉弁(20)を付設したことを特徴とする、凍結乾燥装置。
【請求項10】
上記の粗砕手段(15)が、ガイド筒(14)の内部で移動可能な可動部材(16・47)を備える、請求項9に記載の凍結乾燥装置。
【請求項11】
上記の粗砕手段(15)が、ガイド筒(14)の内面に突設された固定部材(41・46)を備える、請求項9に記載の凍結乾燥装置。
【請求項12】
上記の竪型チューブ(2)の横断形状の内寸が、200mm以上である、請求項9から11のいずれか1項に記載の凍結乾燥装置。
【請求項13】
上記の竪型チューブ(2)の内面に形成される被乾燥材料の凍結厚さが、15mm以下である、請求項9から12のいずれか1項に記載の凍結乾燥装置。
【請求項14】
上記のガイド筒(14)の下方に、上記の粗砕手段(15)での粗砕により得られた粗砕物を所定の大きさの粒子に解砕し整粒する、解砕・整粒手段(22)を接続した、請求項9から13のいずれか1項に記載の凍結乾燥装置。
【請求項15】
上記の解砕・整粒手段(22)の上面には、複数の竪型チューブ(2…)がそれぞれガイド筒(14)を介して接続してある、請求項14に記載の凍結乾燥装置。
【請求項16】
上記の解砕・整粒手段(22)の下方に、この解砕・整粒手段(22)により整粒された粉粒体を所定の容器(39)内へ充填するための粉末充填手段(28)を接続した、請求項14または請求項15項に記載の凍結乾燥装置。
【請求項17】
上記の解砕・整粒手段(22)と粉末充填手段(28)との間に、上記の粉粒体を撹拌し混合する混合・供給手段(42)を接続した、請求項16に記載の凍結乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−20151(P2008−20151A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193741(P2006−193741)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(505180313)株式会社モリモト医薬 (9)
【出願人】(306008447)株式会社ユニテック (2)
【Fターム(参考)】