説明

凝固組織の制御のための超音波発生装置

鋳造金属の凝固組織を制御するために、冷却流体と鋳型の間の境界面で反射された超音波を再度反射させて溶融金属の内部に伝達される効率を増加させることを目的とする。また、冷却流体が超音波トランスデューサーの性能が落ちないように十分に冷却させることを目的とする。また、超音波トランスデューサーから発生された超音波が鋳造金属の内部に入射されることができずに界面で反射された超音波を、放物線状の反射板で界面に垂直の方向に反射させることを目的とする。さらに、超音波が反射された界面上の地点から放物線状を有する反射板内の反射地点を経て、再度界面に入射される地点までの経路が一波長または波長長さの整数倍になるようにすることを目的とする。超音波を発生させて鋳型の内部に印加する超音波トランスデューサーと前記鋳型の表面で反射された超音波の強度を増加させて、前記鋳型の内部に反射させる反射板とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は凝固組織の制御のための超音波発生装置に関し、特に、超音波トランスデューサーから発生された強力超音波が溶融金属の内部に伝達される過程で、超音波入射界面の反射によって消失される現象を防止するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造工程は、産業に活用される構造物を作るための母材である1次素材を生産したり、母材を溶融させて求める形状で凝固させる工程である。溶融金属が冷却されると固体は求める寸法の形状で凝固されて、温度が低い外表面から急速に固まる。相対的に熱伝逹が遅い鋳物の内部は、外表面が凝固されていても液状に維持されて、遅い熱伝逹によって徐々に凝固される。早い冷却速度を有する鋳物の表面では、多量の結晶粒が生成されて微細な組織構造が形成されるが、鋳物の内部は少数の結晶粒が徐々に成長して、粗大な組織構造が形成される。
【0003】
粗大な組織構造を有する素材は、強度が低く、必要な物性を得るための追加的な加工で多くのエネルギーが必要となる。例えば、連続鋳造工程によって生産された鋳片から自動車用の高級鋼板を生産する場合、粗大な結晶構造を有する鋳片は再圧下の割合を高めて圧延過程で組織を微細化する必要があり、このような追加的な工程で、再加熱または高い圧下率による多くのエネルギーが必要となる。これに代替する新技術で、凝固中に強力超音波を印加して、溶融金属の結晶粒を微細化させることができる。このために、できるだけ高いエネルギーの強力超音波を鋳造工程で凝固中の溶融金属の内部に伝達させなければならないが、発生させることができる強力超音波のエネルギー量にも制限があるため、発生された強力超音波の伝達効率を増加させることも凝固組織の結晶粒の微細化において重要な要素技術となる。
【0004】
既存の超音波振動子は超音波溶接器と超音波洗浄器で活用されて、超音波伝達が直接的になされている。一方、金属の凝固組織の制御では、超音波伝達対象が数百℃以上の高温であるため、超音波の直接的な伝達が困難であり、冷却流体の内部で超音波を発生させて、凝固中の鋳造金属の内部に入射させなければならない。冷却流体の内部に超音波振動子を入れて超音波を発生させて、凝固中の鋳造金属に超音波を入射させる場合、冷却流体と鋳造金型の間の大きい音響インピーダンス差により高い割合の超音波が反射されて、冷却流体の内部で散乱されたり、消失される非効率的な現象が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一側面は、鋳造金属の凝固組織を制御するために、冷却流体と鋳型の間の境界面で反射された超音波を再度反射させて溶融金属の内部に伝達される効率を増加させることを目的とする。
【0006】
本発明の他の側面は、冷却流体が超音波トランスデューサーの性能が落ちないように十分に冷却させることを目的とする。
【0007】
本発明のまた他の側面は、超音波トランスデューサーから発生された超音波が鋳造金属の内部に入射されることができずに界面で反射された超音波を、放物線状の反射板で界面に垂直の方向に反射させることを目的とする。
【0008】
本発明のまた他の目的は、超音波が反射された界面上の地点から放物線状を有する反射板内の反射地点を経て、再度界面に入射される地点までの経路が一波長または波長長さの整数倍になるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、超音波を発生させて鋳型の内部に印加する超音波トランスデューサーと、前記鋳型の表面で反射された超音波の強度を増加させて、前記鋳型の内部に反射させる反射板とを含むことを特徴とする凝固組織の制御のための超音波発生装置を提供する。
【0010】
本発明の一実施例において、前記超音波トランスデューサーを包んだ状態で流動されて、前記超音波トランスデューサーを既設定された温度以下に維持させる冷却流体をさらに含むことを特徴とする凝固組織の制御のための超音波発生装置を提供する。
【0011】
本発明の他の実施例において、前記超音波トランスデューサーは、発生された超音波を増幅させるトランスデューサーホーンを含み、前記トランスデューサーホーンの先端から前記反射板までの距離と、前記反射板から前記鋳型までの距離の合は、半波長の整数倍であることを特徴とする凝固組織の制御のための超音波発生装置を提供する。
【0012】
本発明のまた他の実施例において、前記反射板は放物線状であることを特徴とする凝固組織の制御のための超音波発生装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面によると、強力超音波を用いて凝固組織を制御するため、発生された超音波が散乱されて消失されることを抑制する。
【0014】
本発明の他の側面によると、強力超音波を用いて超音波の伝達能力を向上させることにより、凝固組織を効果的に微細化することができるため、経済的な利益が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の凝固組織の制御のための超音波発生装置の構成図である。
【図2】図1の超音波トランスデューサーの周り部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付された図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができて、本発明の範囲が以下に説明する実施形態にのみ限定されるものではない。図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素と見なす。
【0017】
図1は本発明の凝固組織の制御のための超音波発生装置の構成図である。図1を参照すると、鋳型200の内部には凝固中の溶融金属100が満たされていて、その反対面、即ち、鋳型200の外部には超音波を発生させて鋳型200の内部に印加する超音波トランスデューサー400が位置する。
【0018】
超音波トランスデューサー400の構造を説明すると、超音波振動子410とトランスデューサーホーン420とで構成されている。超音波振動子410は超音波を一定の波長間隔で発生させて、トランスデューサーホーン420は超音波振動子410の下部に取付けられ、超音波振動子410で発生した超音波を増幅させる。
【0019】
超音波は空気を通じて伝達されにくいため、液体を媒介体にして鋳型200の表面に高い出力の超音波を伝達させる。そして、内部の溶融金属100から高い熱が伝達されているため、超音波トランスデューサー400を高熱から保護して性能を維持することができるように、この液体は冷却機能を遂行する。
【0020】
一般的に、圧電材料は最高300℃以内でのみその特性が維持されるため、圧電性質が破壊されないように、冷却させなければならない。そして、超音波トランスデューサー400の温度が上昇すると、電気的インピーダンスが変わるだけではなく、出力が減少するようになるため、常に最適の出力を維持するためには、一定の温度以下に維持させる必要がある。このために、鋳型200の外部の超音波トランスデューサーを包んだ状態で流動される冷却流体600がその機能を十分に遂行し、一定の温度以下に維持されるために、低温で冷却された冷却流体600がハウジング300の入水口310に流入されて超音波トランスデューサー400を冷却させて、ハウジング300の出水口320に排出されなければならない。
【0021】
強力超音波の音場内ではキャビテーション現象が発生されて気泡が伴うようになる。超音波の伝達経路上に存在する気泡は、超音波の伝達を邪魔して鋳型200の内部への超音波の伝達率を減少させるようになる。キャビテーション現象による気泡生成の副作用を抑制するために、冷却流体600の流動によって気泡を除去させなければならない。一般的に、強力超音波の音場内の気泡及び浮遊物質は超音波の定常波現象によるノード地点に集まるようになって、超音波の伝達方向に対する拘束力が形成される。従って、超音波の伝達方向の側面に拘束力が弱いため、入水口310に流入された冷却流体600を超音波の伝達の側面方向に流動させて、超音波トランスデューサー400のまわりの気泡を出水口320を通じて排出されるようにする。
【0022】
図2は図1の超音波トランスデューサーのまわり部分の拡大図である。図2を参照すると、トランスデューサーホーン420のまわりに放物線状の反射板500が位置し、この反射板500は鋳型200の表面で反射された超音波の強度を増加させて、鋳型200の内部に反射させる。反射板500はトランスデューサーホーン420の先端420aと鋳型200に向けている。トランスデューサーホーン420の先端420aから反射板500までの距離と、反射板500から鋳型200までの距離の合計は半波長の整数倍である。
【0023】
超音波トランスデューサー400で発生された超音波は、トランスデューサーホーン420の先端420aから放出されて、冷却流体600を通過して鋳型200の表面に伝達される。冷却流体600と鋳型200の音響インピーダンス差によって一部超音波は鋳型200の内部に伝達されることができず、再度冷却流体600に反射されて発生された一部の超音波は冷却流体600の中で散乱されて消滅される。
【0024】
しかし、本発明ではトランスデューサーホーン420のまわりに設けられた放物線状の反射板500が鋳型200の表面で反射される超音波を再度反射するようにして、鋳型200の内部に伝達される超音波の強度を向上させるようにする。鋳型200の内部に再反射される効率を増大させるために、反射板500はトランスデューサーホーン420の先端420aで反射された超音波が反射板500の内面に反射される時、その反射角が鋳型200の表面に垂直になる放物線状の構造である。そして、超音波トランスデューサー400の先端420aから、超音波が反射板500に反射された後に伝達する鋳型200の界面までの経路の長さは波長長さの整数倍になり、超音波の干渉による補強現象が起きるようになり、超音波の出力が上昇するようになる。
【0025】
本発明は上述の実施形態及び添付の図面により限定されない。添付の請求範囲により限定しようとし、請求範囲に記載された本発明の技術的思想を外れない範囲内で様々な形態の置換、変形及び変更が出来るということは当技術分野の通常の知識を有する者には明白であろう。
【符号の説明】
【0026】
100 溶融金属
200 鋳型
300 ハウジング
310 入水口
320 出水口
400 超音波トランスデューサー
410 超音波振動子
420 トランスデューサーホーン
500 反射板
600 冷却流体
700 反射された超音波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を発生させて鋳型の内部に印加する超音波トランスデューサーと
前記鋳型の表面で反射された超音波の強度を増加させて、前記鋳型の内部に反射させる反射板と
を含むことを特徴とする凝固組織の制御のための超音波発生装置。
【請求項2】
前記超音波トランスデューサーを包んだ状態で流動されて、前記超音波トランスデューサーを既設定された温度以下に維持させる冷却流体をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の凝固組織の制御のための超音波発生装置。
【請求項3】
前記超音波トランスデューサーは、
発生された超音波を増幅させるトランスデューサーホーンを含み、前記トランスデューサーホーンの先端から前記反射板までの距離と、前記反射板から前記鋳型までの距離の合計は、半波長の整数倍であることを特徴とする請求項1に記載の凝固組織の制御のための超音波発生装置。
【請求項4】
前記反射板は放物線状であることを特徴とする請求項1に記載の凝固組織の制御のための超音波発生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2011−507704(P2011−507704A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540558(P2010−540558)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006930
【国際公開番号】WO2009/084817
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(592000691)ポスコ (130)
【Fターム(参考)】