凝固遅れ抑制方法
【課題】鋳型直下B.O.を防止することを最終的な目標とするところ、この鋳型直下B.O.を引き起こす著しい凝固遅れを防止する方法を提供する。
【解決手段】C含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼を、鋳型幅W[mm]を1800以下とする鋳型を用い、鋳造速度Vc[m/min]を1.5以上として連続鋳造するに際し、鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差をΔH[mm]と、溶鋼過熱度をΔT[℃]とし、下記式(1)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させる。
【数1】
【解決手段】C含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼を、鋳型幅W[mm]を1800以下とする鋳型を用い、鋳造速度Vc[m/min]を1.5以上として連続鋳造するに際し、鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差をΔH[mm]と、溶鋼過熱度をΔT[℃]とし、下記式(1)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させる。
【数1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固遅れを抑制する方法、換言すれば著しい凝固遅れを防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、特許文献1は、「鋳造中の鋳型内の湯面レベル変動量の大きさに応じて、鋳型の冷却板内を溶鋼側から冷却水側に向かう熱流束を調整することにより、鋳片表面の縦割の発生を防止する」(段落番号0021)技術を開示する。この「熱流束を調整する」方法として、鋳造速度を調整する点が記載されている(段落番号0024、0026)。
【0003】
また、特許文献2は、湯面レベルの局所的な変動とスラブ品質との関係(第1頁第2カラム第17〜20行目)と、鋳造速度を一定量下げることにより湯面レベルの変動を迅速・確実に改善できる点(第4頁第3カラム、下から1〜5行目)と、が指摘されている。
【0004】
また、特許文献3は、「浸漬ノズルとその両端に鋳型短辺間にそれぞれ渦流式レベル計を各2個配設し、上記レベル計で測定される各レベル値の偏差を求めて溶鋼表面の隆起を検出し、前記隆起を抑制するよう鋳造速度を低速に制御」(第2頁第1カラム第48行目〜同第2カラム第2行目)すると、「下降流も品質上問題になる深部までの到達がなくなる」(第3頁第1カラム第2〜3行目)点が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001-179413号公報
【特許文献2】特開平1-284471号公報
【特許文献3】特公平7-61529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1〜3のように、鋳型内湯面レベルに着目し、所定の場合に鋳造速度を低下させることで鋳片品質を向上させようとする技術は多々あり、何れも有意なものと評価できる。
【0007】
ところで、鋳片品質を劣化させる原因の一つとして、鋳型直下で発生するブレークアウト(以下、単に「鋳型直下B.O.」と称する。)が挙げられ、この鋳型直下B.O.の原因を調査する一環として負偏析線を観察したところ、鋳型直下B.O.が発生したコーナーでは他のコーナーと比べて所謂凝固遅れが著しいことが判った。このことから、鋳型内で(即ち、鋳型高さ方向中途で)生じた凝固遅れが鋳型の下端に至るまでに回復されなかった場合に、該凝固遅れの発生した箇所に対応する凝固シェルの表面の高温な部位に応力集中が生じて所謂縦割となり、鋳型直下B.O.が発生してしまったのだろうと推測できる。
【0008】
この凝固遅れに起因する鋳型直下B.O.については上記特許文献1〜3には一切記載も示唆もされていない。
【0009】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、鋳型直下B.O.を防止することを最終的な目標とするところ、この鋳型直下B.O.を引き起こす著しい凝固遅れを防止する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
ここで、凝固遅れの程度の指標としての凝固遅れ度Cg[%]を定義する。図1を参照されたい。図1は、凝固遅れ度Cg[%]の説明図である。この凝固遅れ度Cg[%]は鋳片を鋳造方向に対して垂直に切断して得られる切断面に視認し得る負偏析線に基づき鋳片のコーナー部夫々において観念でき、その何れの凝固遅れ度Cg[%]は下記式(3)に基づいて求められる。ただし、下記式(3)中、A[mm]は狭面から5[cm]離れた地点における負偏析線と広面との間の距離であり、B[mm]は負偏析線が広面に最も接近する地点における負偏析線と広面との間の距離である。
【0011】
【数3】
【0012】
次に、図2を参照されたい。図2は、凝固遅れ度Cg[%]と鋳型直下B.O.発生頻度[%]との関係についての実績に基づくグラフである。即ち、溶鋼のC含有量C[wt%]を0.08〜0.20とし、鋳型幅W[mm]を1800以下とする鋳型を用い、鋳造速度Vc[m/min]を1.5以上として連続鋳造した際に、各チャージごとに、計3回、鋳片のコーナー部すべての凝固遅れ度Cg[%]を測定し、得られた12(=3×4)の凝固遅れ度Cg[%]のうち最も高い凝固遅れ度Cg[%]を横軸上で5[%]ごとに度数分けした。ここで、横軸上で「40」とあるのは、「40〜45」を意味するものとする。そして、各度数ごとに、サンプル数(データ数、度数分けされたチャージ数)が10以上となるように上記の連続鋳造を繰り返した。すべての度数について上記サンプル数が満たされたら、各度数ごとに、(当該度数に分類されたチャージ数)を分母とし(当該度数に分類されたチャージ数のうち、鋳型直下B.O.が発生したチャージ数)を分子とする比率を「鋳型直下B.O.発生頻度[%]」として縦軸に示す。本図によれば、凝固遅れ度Cg[%]が40未満となるように操業すれば、鋳型直下B.O.の発生を防止できることが判る。この意味で、上述した本発明の主な目的は、「鋳型直下B.O.を防止することを最終的な目標とするところ、この鋳型直下B.O.を引き起こす“凝固遅れ度Cg[%]が40以上である”凝固遅れを防止する方法を提供することにある。」と言い換えることができる。以下、本明細書中において「著しい凝固遅れ」とは、「“凝固遅れ度Cg[%]が40以上である”凝固遅れ」を意味するものとする。
【0013】
<本発明の第一の観点>
そして、本願発明者らは、鋭意研究の末、凝固遅れの発生メカニズムに関して以下の知見を得た。即ち、(i)凝固シェルのコーナー部は、鋳型の広面及び狭面に同時に接触して強力に抜熱されるため他の部位と比較して凝固収縮が著しく、該コーナー部において凝固シェルと鋳型の広面乃至狭面との間に空隙を生じ、抜熱能が低下して、凝固が阻害される。(ii)凝固シェルのコーナー部は、浸漬ノズルから吐出された溶鋼吐出流が鋳型の狭面と衝突することによって鉛直方向上向きに発生する所謂反転流によって、他の部位と比較して熱の供給が著しく、凝固が阻害される。
【0014】
上記の知見に基づき、更なる鋭意研究の末、C含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼を、鋳型幅W[mm]を1800以下とする鋳型を用い、鋳造速度Vc[m/min]を1.5以上として連続鋳造するに際し、著しい凝固遅れは、以下のような方法で防止できることを見出した。即ち、鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差をΔH[mm]と、溶鋼過熱度をΔT[℃]とし、下記式(1)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させる。
【0015】
【数1】
【0016】
上記発明のポイントは、以下の通りである。即ち、上記(ii)で言及した反転流は湯面レベル差ΔH[mm]として現れるところ、この湯面レベル差ΔH[mm]の大小は凝固遅れと密接な関係があり、更に、上記(ii)で指摘した「熱の供給」は溶鋼過熱度ΔT[℃]と密接な関係があると考えられるところである。なお、鋳型幅W[mm]が1800を超える鋳型を用いてする操業や、鋳造速度Vc[m/min]を1.5未満としてする操業を除外するのは、かかる場合、そもそも著しい凝固遅れが発生しないからである。
【0017】
<本発明の第二の観点>
そして、本願発明者らによる追加の鋭意研究の末、(i)上述した著しい凝固遅れの防止する方法は若干の過検知を含むこと、及び、(ii)C含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼を、鋳型幅W[mm]を1800以下とする鋳型を用い、鋳造速度Vc[m/min]を1.5以上として連続鋳造するに際し、著しい凝固遅れは、以下のような方法によれば過検知なく防止できることを見出した。即ち、鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差をΔH[mm]と、溶鋼過熱度をΔT[℃]と、鋳型幅方向中央における熱流束をQo[MW/m2]と、鋳型幅方向コーナーにおける熱流束をQc[MW/m2]とし、下記式(2)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させる。
【0018】
【数2】
【0019】
上記発明のポイントは、以下の通りである。即ち、凝固シェルに対する抜熱能は、鋳型の広面を介して為されるものと比較して、鋳型の狭面を介して為されるものの方が劣化し易いことを見出し、両者を極力同一にせしめんとするところである。
【0020】
なお、鋳片品質を劣化させる他の原因として、鋳型内において溶鋼がモールドパウダーを介することなく直接的に鋳型内壁面に対して接触することで発生するブレークアウト(以下、単に「拘束性B.O.」と称する。)が挙げられる。この拘束性B.O.は、鋳型内に埋設した熱電対の出力挙動を観察することにより容易に検知乃至予知できるものであって、これについては種々の有益な出願が既に為されているので、そちらを参考にされたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の第一実施形態を説明する。図3は、連続鋳造機の概略図である。先ず、本図に基づいて、連続鋳造機100の構成と作動を一例として簡単に説明する。
【0022】
連続鋳造機100は、注湯される溶鋼を冷却して所定形状の凝固シェルを形成するための鋳型1と、図略のタンディッシュに保持される溶鋼を鋳型1へ所定流量で滑らかに注湯するための浸漬ノズル2と、鋳型1の直下から鋳造経路Qに沿って複数で並設されるロール対3・3・・・と、を備える。本実施形態において前記の鋳造経路Qは、その上流側から順に、略鉛直方向に延びる垂直経路部と、この垂直経路部に接続され、円弧状に延びる円弧経路部と、更にその下流側に設けられ、水平方向に延びる水平経路部と、前記の円弧経路部及び水平経路部とを滑らかに接続するための矯正経路部と、から成る。
【0023】
また、前記のロール対3・3・・・の夫々は、鋳造対象としての鋳片を、両広面でもって挟持する一対のロール3a・3aから構成される。この一対のロール3a・3aのロール面間の最短距離としてのロールギャップ[mm]は適宜の手段により調節可能に構成される。
【0024】
また、前記の鋳造経路Qの上流には、鋳型1内で形成され、該鋳型1から引き抜かれる凝固シェルに対して所定の流量で冷却水を噴霧する冷却スプレー4・4・・・が適宜に設けられる。一般に、前記の鋳型1が1次冷却帯と称されるのに対して、この意味で、冷却スプレー4・4・・・が配される経路部は2次冷却帯と称される。
【0025】
鋳型1から引き抜かれ、鋳造経路Qに沿って搬送される凝固シェルは、自然放熱や、上記冷却スプレー4・4・・・などにより更に冷却されて収縮する。従って、上記のロール対3・3・・・のロールギャップ[mm]は、一般に、鋳造経路Qの下流側へ進むに連れて緩やかに狭くなるように設定される。
【0026】
以上の構成で、スラブ鋳片の連続鋳造を開始するときは、鋳型1へ溶鋼を注湯する前に予め図略のダミーバーを前記の鋳造経路Q内に挿入しておき、浸漬ノズル2を介して鋳型1へ溶鋼を所定流量で注湯し始めると共に上記ダミーバーを下流側へ所定速度で引き抜く。そして、このダミーバーは、所定のメニスカス距離に到達したときに、適宜の手段により回収する。これで、スラブ鋳片が連続的に鋳造されるようになる。
【0027】
次に、上記の連続鋳造機100の一般的な操業条件を簡単に紹介する。
・鋳型幅W[mm]は、800〜2100とする。
・鋳型厚みD[mm]は、230〜280とする。
・鋳型高さH[mm]は、800〜900とする。
・鋳造速度Vc[m/min]は、1.0〜2.0とする。
・溶鋼過熱度ΔT[℃]は、0〜40とする。
・比水量Wt[L/kgSteel]は、1〜3とする。
・鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[gauss]は、300〜800とする。
・溶鋼成分は、当事者間の協定に基づく。代表的な成分は、CやSi、Mnである。これに、CrやCuなどが適宜に添加される。P及びSは極力少なくなるように調整される。その他の不可避の不純物を含む。
【0028】
ここで、各用語を簡単に説明する。
・鋳型幅W[mm]及び鋳型厚みD[mm]は、鋳型1の上端で観念される。
・鋳造速度Vc[m/min]は、鋳片の引抜速度であって、前記複数のロール対3・3・・・のうち最上流に配されるロール対3の周速度で観念される。
・溶鋼過熱度ΔT[℃]は、鋳型1内へ注湯される溶鋼の温度の指標である。詳細は、後述する。
・比水量Wt[L/kgSteel]は、鋼1kgに対して用いられる冷却水の容積を意味する。
・鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[gauss]は、鋳型1内の溶鋼を攪拌するために作用される磁場の強度の指標である。詳細は、本明細書の末尾に記載する。
【0029】
次に、本実施形態に係る連続鋳造機100の具体的な操業条件を説明する。本実施形態に係る連続鋳造では、下記の通りとする。
・鋼種:C含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼
・鋳型幅W[mm]:1800以下とする。
・鋳造速度Vc[m/min]:1.5以上とする。
・そして、下記式(1)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させることとする。下記式(1)中、変数ΔH[mm]は、「鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差」を意味し、変数ΔT[℃]は、前述の通り「溶鋼過熱度」を意味する。
【0030】
【数1】
【0031】
次に、上記の湯面レベル差ΔH[mm]と溶鋼過熱度ΔT[℃]の測定方法を説明する。図4を参照されたい。図4は、図3のA線矢視図である。
【0032】
<湯面レベル差ΔH[mm]>
湯面レベル差ΔH[mm]は、前述したように「鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差」を意味し、「鋳型幅方向中央」は本図中符号10で示される領域内に存在する湯面のうち任意の点とし、「鋳型幅方向コーナー」は本図中符号11で示される領域内に存在する湯面のうち任意の点とする。領域10は、鋳型幅方向においては浸漬ノズル2の端面から鋳型幅方向に100[mm]以内とし、鋳型厚み方向においては中心から両広面へ向かってD/10[mm]の範囲内とする。領域11は、鋳型幅方向においては狭面から浸漬ノズル2へ向かって100[mm]以内とし、鋳型厚み方向においては中心から両広面へ向かってD/10[mm]の範囲内とする。湯面レベルの測定には例えば渦流式レベル計を用いる。上記の「湯面レベル差ΔH[mm]」は、これら領域10及び領域11で測定された湯面レベルの差の絶対値とする。なお、この湯面レベル差ΔH[mm]は、浸漬ノズル2から見て一の狭面側の湯面のみを測定対象としてもよいし、図5に示されるように、浸漬ノズル2から見て両狭面側の湯面を測定対象とし、得られた2つの湯面レベル差ΔH[mm]のうち大きい湯面レベル差ΔH[mm]を採用することとしてもよい。
【0033】
<溶鋼過熱度ΔT[℃]>
溶鋼過熱度ΔT[℃]は、「鋳型内へ注湯される溶鋼の温度の指標」であり、以下のようにして測定する。
(1)『測定時刻』は、所定の時間間隔(例えば1分ごと)とする。なお、前述の凝固遅れ度Cg[%]との対応を図るために、凝固遅れ度Cg[%]を測定する鋳片の断面と、当該断面に対応する溶鋼の溶鋼過熱度ΔT[℃]と、の対応関係が失われないように留意する。
(2)『測定地点』は、以下の通りとする。即ち、「水平位置」はタンディッシュの底面に備え付けられる浸漬ノズル2の軸心とし、「鉛直位置」はタンディッシュ内に保持されている溶鋼の湯面を基準として深さ200[mm]とする。
(3)『測定器具』は、消耗型熱電対を用いる構成とする。上記の通り、深さ200[mm]の地点に消耗型熱電対を浸漬させることから、適宜に用意した棒の先端に消耗型熱電対を取着した構成が適する。
(4)上記の『測定時刻』及び『測定地点』、『測定器具』に準じて測定した溶鋼の温度と、溶鋼の溶鋼成分により唯一に求められる液相線温度と、を比較する。そして上述した溶鋼過熱度ΔT[℃]は、前者から後者を引き、更に25を引いた残りとして求めることとする。
【0034】
以下、本実施形態に係る凝固遅れ抑制方法の技術的効果を確認するための試験に関して説明する。上述した各数値範囲などは、下記の確認試験により合理的に裏付けられている。
【0035】
各確認試験の試験条件と試験結果を下記表1及び表2、図6に示す。図6は、各確認試験の試験結果を示す散布図である。この散布図には、関数f(ΔH,ΔT)に湯面レベル差ΔH[mm]及び溶鋼過熱度ΔT[℃]を代入して得られた値を横軸として、これら湯面レベル差ΔH[mm]及び溶鋼過熱度ΔT[℃]の測定対象としての溶鋼(又は凝固シェル)に対応する鋳片部位について測定した凝固遅れ度Cg[%](ただし、一の切断面で得られる4つの凝固遅れ度Cg[%]のうち最大の凝固遅れ度Cg[%])と、の関係が示される。なお、浸漬ノズル2から見て両狭面側の湯面を測定対象とし、得られた2つの湯面レベル差ΔH[mm]のうち大きい湯面レベル差ΔH[mm]を採用することとした。下記表1及び表2、図6によれば、著しい凝固遅れは上記式(1)が満足されたときにのみ発生していることが判る。このことから、もし上記式(1)が満足されたら、殆どの場合、著しい凝固遅れが発生するものと見做してもよいだろう。そして、この著しい凝固遅れが鋳型1の下端に至るまでに消失されるよう、換言すれば少なくとも鋳型1の下端に至るまでには十分な凝固シェルが形成されるよう、できれば著しい凝固遅れそのものが発生することのないよう、鋳造速度Vc[m/min]を低下させ、著しい凝固遅れが発生したものと見做した凝固シェルが鋳型1の下端を通過するまでの時間を稼ぐとよい。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
以上説明したように本実施形態において、C含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼を、鋳型幅W[mm]を1800以下とする鋳型を用い、鋳造速度Vc[m/min]を1.5以上として連続鋳造するに際し、著しい凝固遅れは、以下のような方法で防止できる。即ち、鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差をΔH[mm]と、溶鋼過熱度をΔT[℃]とし、下記式(1)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させる。
【0039】
【数1】
【0040】
上記の説明に付記するかたちで、実際にどの程度、鋳造速度Vc[m/min]を減速させれば著しい凝固遅れが防止できるのかを調査し、その結果を下記表3及び図7に示すから、上記の方法を実施する際には下記の記載を十分に参考にされたい。
【0041】
【表3】
【0042】
先ず、表3を簡単に説明する。例として試験No.137を参照されたい。本試験における連続鋳造は、表3に記載の条件(C含有量C[wt%]及び鋳型幅W[mm]、鋳造速度Vc[m/min])に従って為され、その連続鋳造中において上記式(1)が満足されたとき、直ちに鋳造速度Vc[m/min]を表3中の減速幅ΔVc[m/min]に準じて減速させ、更に、上記式(1)が満足された時刻における鋳型内凝固シェルに対応する鋳片について凝固遅れ度Cg[%]を測定した。このとき得られる4つの凝固遅れ度Cg[%]のうち最大の凝固遅れ度Cg[%]を表3に記載した。なお、鋳造速度Vc[m/min]の減速は生産性の低下に直結するため、上記減速の時刻から所定時間(例えば300[sec])経過した時点で、鋳造速度Vc[m/min]は減速前の元の鋳造速度Vc[m/min]に戻しておいた。
【0043】
次に、図7を簡単に説明する。図7は、鋳造速度Vc[m/min]の減速幅ΔVc[m/min]と、凝固遅れ度Cg[%]の改善の程度と、の関係を示すグラフである。この図7は、表3に記載される試験結果に基づいて作成したものである。即ち、表3に記載の試験No.101〜137を減速幅ΔVc[m/min]に応じて横軸上に度数分けし、各減速幅ΔVc[m/min]ごとに、(度数分けされた試験の試験数)を分母とし(度数分けされた試験のうち、表3に記載の凝固遅れ度Cg[%]が40以上である試験の試験数)を分子とする、著しい凝固遅れの発生頻度を縦軸にとった。本図から判る通り、減速幅ΔVc[m/min]を0.3以上とすれば、著しい凝固遅れが発生するものとした場合でも確実にその発生を防止できた。このことから、著しい凝固遅れを完全に防止するには、上記式(1)が満たされたときに、少なくとも0.3[m/min]以上、鋳造速度Vc[m/min]を減速させればよいことが理解されよう。なお、生産性との兼ね合いから、鋳造速度Vc[m/min]の実際の減速幅ΔVc[m/min]は、図7を参照しつつ十分に検討した上で適宜に0.0〜0.3の範囲内で選択されたい。ただし、減速幅ΔVc[m/min]を0.4以上としても生産性の低下以外には特段の問題はないだろう。
【0044】
以上、本発明の第一実施形態を説明してきたが、前述した図6や図7に示されるように、上記式(1)は、実際には著しい凝固遅れが発生しないのに発生するものとする過検知を若干含むことが理解されよう。即ち、上記式(1)が満足されたときでも、凝固遅れ度Cg[%]が40未満となる場合が少なからず存在している。この点、本発明の第一実施形態に係る凝固遅れ抑制方法は、従来技術と比較して十分に有益な技術ではあるものの、若干の改善の余地が認められるものである。
【0045】
次に、本発明の第二実施形態を説明する。本実施形態に係る凝固遅れ抑制方法は、上記第一実施形態に係る凝固遅れ抑制方法に対して秀でた改善を為したものである。以下、本実施形態が上記の第一実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0046】
上記第一実施形態では、上記式(1)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして鋳造速度Vc[m/min]を低下させ、これにより著しい凝固遅れを防止する。これに対し本実施形態では、下記式(2)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させることとする。下記式(2)中、変数Qo[MW/m2]は「鋳型幅方向中央における熱流束」を、変数Qc[MW/m2]は「鋳型幅方向コーナーにおける熱流束」を意味する。
【0047】
【数2】
【0048】
次に、上記の熱流束Qo[MW/m2]と熱流束Qc[MW/m2]の測定方法を概説する。
【0049】
<熱流束Qo[MW/m2]と熱流束Qc[MW/m2]>
熱流束Qo[MW/m2]は、前述したように「鋳型幅方向中央における熱流束」を意味し、詳しくは、「図4に示される領域10内に存在する湯面のうち任意の点における湯面レベルを測定するために設置された湯面レベル計よりも更に鋳型幅方向中央側であって、メニスカスから鋳造方向に向かって20〜40[mm]の範囲内である、広面を通過する熱流束[MW/m2]を鋳造方向に10[mm]ピッチで測定したときに最大となる熱流束[MW/m2]」とする。この熱流束の測定は、公知の種々の方法により実現されよう。即ち、例えば、(i)熱流束計を鋳型広面に複数で埋設し、この熱流束計の出力をモニタリングする方法、(ii)熱電対を鋳型広面に複数で埋設し、この熱電対の出力、鋳型内を流通する冷却水の水温、その他種々の熱伝達係数などを総合的に考慮して数値計算により熱流束を求める方法、(iii)一対の熱電対を鋳型広面に複数対で埋設し、各対の熱電対によって測定した該鋳型1の温度対に基づいて熱流束を求める方法、の(i)〜(iii)が挙げられる。勿論、その他の公知の計算的乃至解析的手法も適用可能であって、その選択は操業条件や設備環境などに応じて適宜に選択されよう。一方、熱流束Qc[MW/m2]は、前述したように「鋳型幅方向コーナーにおける熱流束」を意味し、「図4に示される領域11内に存在する湯面のうち任意の点における湯面レベルを測定するために設置された湯面レベル計よりも更に鋳型幅方向コーナー側であって、メニスカスから鋳造方向に向かって20〜40[mm]の範囲内である、広面を通過する熱流束[MW/m2]を鋳造方向に10[mm]ピッチで測定したときに最大となる熱流束[MW/m2]」とする。この熱流束の測定は、上記同様、公知の種々の方法により実現されよう。
【0050】
以下、本実施形態に係る凝固遅れ抑制方法の技術的効果を確認するための試験に関して説明する。上述した各数値範囲などは、下記の確認試験により合理的に裏付けられている。
【0051】
先ず、各確認試験で採用した熱流束Qo[MW/m2]及び熱流束Qc[MW/m2]の測定方法を以下、説明する。
・鋳型銅板厚みdd(図8参照):20〜40[mm]
・鋳型高さ:900[mm]
・熱電対の種類:K熱電対(+:クロメル、-:アルメル)
・熱電対の埋設位置(鋳型幅方向):広面の鋳型全幅方向に10〜50[mm]ピッチ
・熱電対の埋設位置(鋳型高さ方向)及び本数:メニスカスから20〜40[mm]の位置に鋳造方向に10[mm]ピッチで10本
・熱電対の埋設深さ:鋳型銅板の表面から8[mm]
・上記「鋳型幅方向中央における熱流束」:鋳型幅方向でレベル計の設置位置より鋳型センター側にある熱電対の列の何れかで測定し、10本の熱流束の中で最大熱流束を示した熱流束のことを指す。
・上記「コーナー部熱流束」:鋳型幅方向でレベル計の設置位置より鋳型短辺側にある熱電対の列の何れかで測定し、10本の熱流束の中で最大熱流束を示した熱流束のことを指す。
・熱流束算出方法:鋳型全幅に亘って鋳造方向と垂直な方向に複数の熱電対を埋設し、これらの熱電対を用いて鋳型内壁の温度計測を行う。熱電対温度データは1秒ごとにコンピュータに取り込まれる。熱電対温度データ、鋳型冷却水温、鋳型銅板厚み、銅熱伝導度、鋳型背面とスリットを流れる冷却水との界面熱伝達係数(スリットを通過する水の流速から算出)から、スリットの形状を考慮して、コンピュータを用い、二次元の差分法で熱流束を算出する。差分法の詳細を下記に示す。鋳型銅板の形状は図8のように反復する形状である。反復形状なので図8の太線で示す領域のみを考えればよい。鋳型銅板表層側から入熱し(q1)、鋳型銅板背面側から抜熱する。銅板を1[mm]ピッチでメッシュ分割し、要素を作成し、図9に示すように要素の中心を通過する熱量の収支を計算する。計算の初期条件としてある熱流束を与え、熱電対実測温度T(i,j)と熱電対位置にあたる要素の計算温度T(i,j)とを比較し、その差が1%以下になるまで収束計算を行う。収束したときのq1の値を熱流束値とする。鋳型背面〜冷却水間熱伝達係数h1、鋳型背面〜SUSジャケット間熱伝達係数h2は同一とした。また、鋳型背面〜冷却水間熱伝達係数h1はスリットを流れる冷却水の流速から求めた。
・図8中、h1は鋳型冷却水孔部熱伝達係数を、q1は鋳片〜鋳型間熱流束を示す。銅熱伝導度λは0.849[cal/cm/sec/deg]と、鋳型背面〜冷却水間熱伝達係数h1は0.369[cal/cm/sec/deg]とする(日立造船技報、第34巻、第2号(1973))。鋳型冷却水温Twは鋳型出側水温測定値とする。
・計算式
境界条件(スリット側の鋳型銅板界面)は、下記式(4)のように、熱伝達係数で規定する。境界条件(鋳片側の鋳型銅板界面)は、下記式(5)のように、熱流束で規定する。銅板内部は、下記式(6)の通りとする。そして、式(4)〜(6)の各式を各要素について立て、温度T(I,J)の収支計算を実施する。なお、各式中、Δxは図8の奥行き(紙面厚み)のことである(例えば、1mmとする)。
【0052】
【数4】
【0053】
【数5】
【0054】
【数6】
【0055】
各確認試験の試験条件と試験結果を、上記表1及び表2、図10に示す。図10は、各確認試験の試験結果を示す散布図である。この散布図には、関数g(ΔH,ΔT,Qo,Qc)に湯面レベル差ΔH[mm]及び溶鋼過熱度ΔT[℃]、熱流束Qo[MW/m2]、熱流束Qc[MW/m2]を代入して得られた値が横軸として、これら湯面レベル差ΔH[mm]及び溶鋼過熱度ΔT[℃]、熱流束Qo[MW/m2]、熱流束Qc[MW/m2]の測定対象としての溶鋼(又は凝固シェル)に対応する鋳片部位について測定した凝固遅れ度Cg[%](ただし、一の切断面で得られる4つの凝固遅れ度Cg[%]のうち最大の凝固遅れ度Cg[%])と、の関係が示される。上記表1及び表2、図10によれば、上記式(2)が満足されないときは著しい凝固遅れは発生せず、一方、上記式(2)が満足されたときは著しい凝固遅れが常に発生していることが判る。このことから、著しい凝固遅れが発生するか否かの判断は、上記式(2)が満足されたか否かの判定に基づいて為すことができよう。そして、この著しい凝固遅れが鋳型1の下端に至るまでに消失されるよう、換言すれば少なくとも鋳型1の下端に至るまでには十分な凝固シェルが形成されるよう、できれば著しい凝固遅れそのものが発生することのないよう、鋳造速度Vc[m/min]を低下させ、著しい凝固遅れが発生したものと見做した凝固シェルが鋳型1の下端を通過するまでの時間を稼ぐとよい。
【0056】
特筆すべきは、上記式(2)が満足したときに鋳造速度Vc[m/min]を低下させるなどの手当てをしなかった場合、常に、凝固遅れの程度が著しいものとなった点にある。つまり、著しい凝固遅れが発生しないにも関わらず、著しい凝固遅れが発生するものとしてしまう過検知を排除できている(図6と図10を比較されたい。)。
【0057】
以上説明したように本実施形態において、C含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼を、鋳型幅W[mm]を1800以下とする鋳型を用い、鋳造速度Vc[m/min]を1.5以上として連続鋳造するに際し、著しい凝固遅れは、以下のような方法によれば過検知なく防止できる。即ち、鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差をΔH[mm]と、溶鋼過熱度をΔT[℃]と、鋳型幅方向中央における熱流束をQo[MW/m2]と、鋳型幅方向コーナーにおける熱流束をQc[MW/m2]とし、下記式(2)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させる。
【0058】
【数2】
【0059】
上記の説明に付記するかたちで、実際にどの程度、鋳造速度Vc[m/min]を減速させれば著しい凝固遅れが防止できるのかを調査し、その結果を下記表4及び図11に示すから、上記の方法を実施する際には下記の記載を十分に参考にされたい。
【0060】
【表4】
【0061】
上記の表4は前述の表3に類似するものであり、図11は前述の図7に類似するものである。本図から判る通り、減速幅ΔVc[m/min]を0.3以上とすれば、著しい凝固遅れが発生するものとした場合でも確実にその発生を防止できた。このことから、著しい凝固遅れを完全に防止するには、上記式(2)が満たされたときに、少なくとも0.3[m/min]以上、鋳造速度Vc[m/min]を減速させればよいことが理解されよう。なお、生産性との兼ね合いから、鋳造速度Vc[m/min]の実際の減速幅ΔVc[m/min]は、図11を参照しつつ十分に検討した上で適宜に0.0〜0.3の範囲内で選択されたい。ただし、減速幅ΔVc[m/min]を0.4以上としても生産性の低下以外には特段の問題はないだろう。
【0062】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記各実施形態は以下のようにして実施できる。
【0063】
即ち、湯面レベル差ΔH[mm]を測定するための渦流式レベル計や、溶鋼過熱度ΔT[℃]を測定するための熱電対、熱流束Qo[MW/m2]及び熱流束Qc[MW/m2]を測定するための熱電対などを適宜のA/Dコンバータなどを介して汎用PCに接続し、所定の時間間隔ごとに、これらの測定器からの出力結果を該汎用PCに取得させ、当該汎用PCに接続した表示器上に連続的に該出力結果を表示させたり、上記式(1)又は(2)が満足したか否かを当該汎用PCに判定させ、その判定結果に基づいて当該汎用PCに鋳造速度Vc[m/min]を適宜に変更させるように構成してもよい。
【0064】
以下、参考資料である。
【0065】
<鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[gauss]>
定義:鋳型1内の溶鋼を攪拌するために作用される磁場の強度の指標である。
(1)『測定時刻』は、任意である。
(2)『測定地点』は、以下の通りとする。即ち、「水平位置」は、(i)鋳型幅方向においては中央とし、(ii)鋳型厚み方向においては鋳型内壁面から中心へ向かって15[mm]とし、(iii)鋳型高さ方向においては鋳型に埋設される電磁コイルのコイル中心と揃えるものとする。
(3)『測定器具』は、適宜のガウスメータを用いる。
(4)上記の『測定時刻』及び『測定地点』、『測定器具』に準じて複数回測定する。そして上述した鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[gauss]は、上記複数の測定値を平均化して求めることとする。
(5)なお、種々の観点から、上記鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[gauss]は0〜1000が好ましいとされ、鋳型内の溶鋼に作用される磁場の周波数[Hz](「磁場の周波数」とは、上記電磁コイルに導通される電流が1秒間に向きを変える回数を意味する。)は1〜5が好ましいとされ、一般に、この磁場の周波数[Hz]として2が採用される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】凝固遅れ度Cg[%]の説明図
【図2】凝固遅れ度Cg[%]と鋳型直下B.O.発生頻度[%]との関係についての実績に基づくグラフ
【図3】連続鋳造機の概略図
【図4】図3のA線矢視図
【図5】図4に類似する図
【図6】各確認試験の試験結果を示す散布図
【図7】鋳造速度Vc[m/min]の減速幅ΔVc[m/min]と、凝固遅れ度Cg[%]の改善の程度と、の関係を示すグラフ
【図8】鋳型の平面視における部分断面図
【図9】熱の収支の説明図
【図10】図6に類似する図
【図11】図7に類似する図
【符号の説明】
【0067】
1 鋳型
2 浸漬ノズル
100 連続鋳造機
Cg 凝固遅れ度
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固遅れを抑制する方法、換言すれば著しい凝固遅れを防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、特許文献1は、「鋳造中の鋳型内の湯面レベル変動量の大きさに応じて、鋳型の冷却板内を溶鋼側から冷却水側に向かう熱流束を調整することにより、鋳片表面の縦割の発生を防止する」(段落番号0021)技術を開示する。この「熱流束を調整する」方法として、鋳造速度を調整する点が記載されている(段落番号0024、0026)。
【0003】
また、特許文献2は、湯面レベルの局所的な変動とスラブ品質との関係(第1頁第2カラム第17〜20行目)と、鋳造速度を一定量下げることにより湯面レベルの変動を迅速・確実に改善できる点(第4頁第3カラム、下から1〜5行目)と、が指摘されている。
【0004】
また、特許文献3は、「浸漬ノズルとその両端に鋳型短辺間にそれぞれ渦流式レベル計を各2個配設し、上記レベル計で測定される各レベル値の偏差を求めて溶鋼表面の隆起を検出し、前記隆起を抑制するよう鋳造速度を低速に制御」(第2頁第1カラム第48行目〜同第2カラム第2行目)すると、「下降流も品質上問題になる深部までの到達がなくなる」(第3頁第1カラム第2〜3行目)点が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001-179413号公報
【特許文献2】特開平1-284471号公報
【特許文献3】特公平7-61529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1〜3のように、鋳型内湯面レベルに着目し、所定の場合に鋳造速度を低下させることで鋳片品質を向上させようとする技術は多々あり、何れも有意なものと評価できる。
【0007】
ところで、鋳片品質を劣化させる原因の一つとして、鋳型直下で発生するブレークアウト(以下、単に「鋳型直下B.O.」と称する。)が挙げられ、この鋳型直下B.O.の原因を調査する一環として負偏析線を観察したところ、鋳型直下B.O.が発生したコーナーでは他のコーナーと比べて所謂凝固遅れが著しいことが判った。このことから、鋳型内で(即ち、鋳型高さ方向中途で)生じた凝固遅れが鋳型の下端に至るまでに回復されなかった場合に、該凝固遅れの発生した箇所に対応する凝固シェルの表面の高温な部位に応力集中が生じて所謂縦割となり、鋳型直下B.O.が発生してしまったのだろうと推測できる。
【0008】
この凝固遅れに起因する鋳型直下B.O.については上記特許文献1〜3には一切記載も示唆もされていない。
【0009】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、鋳型直下B.O.を防止することを最終的な目標とするところ、この鋳型直下B.O.を引き起こす著しい凝固遅れを防止する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
ここで、凝固遅れの程度の指標としての凝固遅れ度Cg[%]を定義する。図1を参照されたい。図1は、凝固遅れ度Cg[%]の説明図である。この凝固遅れ度Cg[%]は鋳片を鋳造方向に対して垂直に切断して得られる切断面に視認し得る負偏析線に基づき鋳片のコーナー部夫々において観念でき、その何れの凝固遅れ度Cg[%]は下記式(3)に基づいて求められる。ただし、下記式(3)中、A[mm]は狭面から5[cm]離れた地点における負偏析線と広面との間の距離であり、B[mm]は負偏析線が広面に最も接近する地点における負偏析線と広面との間の距離である。
【0011】
【数3】
【0012】
次に、図2を参照されたい。図2は、凝固遅れ度Cg[%]と鋳型直下B.O.発生頻度[%]との関係についての実績に基づくグラフである。即ち、溶鋼のC含有量C[wt%]を0.08〜0.20とし、鋳型幅W[mm]を1800以下とする鋳型を用い、鋳造速度Vc[m/min]を1.5以上として連続鋳造した際に、各チャージごとに、計3回、鋳片のコーナー部すべての凝固遅れ度Cg[%]を測定し、得られた12(=3×4)の凝固遅れ度Cg[%]のうち最も高い凝固遅れ度Cg[%]を横軸上で5[%]ごとに度数分けした。ここで、横軸上で「40」とあるのは、「40〜45」を意味するものとする。そして、各度数ごとに、サンプル数(データ数、度数分けされたチャージ数)が10以上となるように上記の連続鋳造を繰り返した。すべての度数について上記サンプル数が満たされたら、各度数ごとに、(当該度数に分類されたチャージ数)を分母とし(当該度数に分類されたチャージ数のうち、鋳型直下B.O.が発生したチャージ数)を分子とする比率を「鋳型直下B.O.発生頻度[%]」として縦軸に示す。本図によれば、凝固遅れ度Cg[%]が40未満となるように操業すれば、鋳型直下B.O.の発生を防止できることが判る。この意味で、上述した本発明の主な目的は、「鋳型直下B.O.を防止することを最終的な目標とするところ、この鋳型直下B.O.を引き起こす“凝固遅れ度Cg[%]が40以上である”凝固遅れを防止する方法を提供することにある。」と言い換えることができる。以下、本明細書中において「著しい凝固遅れ」とは、「“凝固遅れ度Cg[%]が40以上である”凝固遅れ」を意味するものとする。
【0013】
<本発明の第一の観点>
そして、本願発明者らは、鋭意研究の末、凝固遅れの発生メカニズムに関して以下の知見を得た。即ち、(i)凝固シェルのコーナー部は、鋳型の広面及び狭面に同時に接触して強力に抜熱されるため他の部位と比較して凝固収縮が著しく、該コーナー部において凝固シェルと鋳型の広面乃至狭面との間に空隙を生じ、抜熱能が低下して、凝固が阻害される。(ii)凝固シェルのコーナー部は、浸漬ノズルから吐出された溶鋼吐出流が鋳型の狭面と衝突することによって鉛直方向上向きに発生する所謂反転流によって、他の部位と比較して熱の供給が著しく、凝固が阻害される。
【0014】
上記の知見に基づき、更なる鋭意研究の末、C含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼を、鋳型幅W[mm]を1800以下とする鋳型を用い、鋳造速度Vc[m/min]を1.5以上として連続鋳造するに際し、著しい凝固遅れは、以下のような方法で防止できることを見出した。即ち、鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差をΔH[mm]と、溶鋼過熱度をΔT[℃]とし、下記式(1)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させる。
【0015】
【数1】
【0016】
上記発明のポイントは、以下の通りである。即ち、上記(ii)で言及した反転流は湯面レベル差ΔH[mm]として現れるところ、この湯面レベル差ΔH[mm]の大小は凝固遅れと密接な関係があり、更に、上記(ii)で指摘した「熱の供給」は溶鋼過熱度ΔT[℃]と密接な関係があると考えられるところである。なお、鋳型幅W[mm]が1800を超える鋳型を用いてする操業や、鋳造速度Vc[m/min]を1.5未満としてする操業を除外するのは、かかる場合、そもそも著しい凝固遅れが発生しないからである。
【0017】
<本発明の第二の観点>
そして、本願発明者らによる追加の鋭意研究の末、(i)上述した著しい凝固遅れの防止する方法は若干の過検知を含むこと、及び、(ii)C含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼を、鋳型幅W[mm]を1800以下とする鋳型を用い、鋳造速度Vc[m/min]を1.5以上として連続鋳造するに際し、著しい凝固遅れは、以下のような方法によれば過検知なく防止できることを見出した。即ち、鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差をΔH[mm]と、溶鋼過熱度をΔT[℃]と、鋳型幅方向中央における熱流束をQo[MW/m2]と、鋳型幅方向コーナーにおける熱流束をQc[MW/m2]とし、下記式(2)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させる。
【0018】
【数2】
【0019】
上記発明のポイントは、以下の通りである。即ち、凝固シェルに対する抜熱能は、鋳型の広面を介して為されるものと比較して、鋳型の狭面を介して為されるものの方が劣化し易いことを見出し、両者を極力同一にせしめんとするところである。
【0020】
なお、鋳片品質を劣化させる他の原因として、鋳型内において溶鋼がモールドパウダーを介することなく直接的に鋳型内壁面に対して接触することで発生するブレークアウト(以下、単に「拘束性B.O.」と称する。)が挙げられる。この拘束性B.O.は、鋳型内に埋設した熱電対の出力挙動を観察することにより容易に検知乃至予知できるものであって、これについては種々の有益な出願が既に為されているので、そちらを参考にされたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の第一実施形態を説明する。図3は、連続鋳造機の概略図である。先ず、本図に基づいて、連続鋳造機100の構成と作動を一例として簡単に説明する。
【0022】
連続鋳造機100は、注湯される溶鋼を冷却して所定形状の凝固シェルを形成するための鋳型1と、図略のタンディッシュに保持される溶鋼を鋳型1へ所定流量で滑らかに注湯するための浸漬ノズル2と、鋳型1の直下から鋳造経路Qに沿って複数で並設されるロール対3・3・・・と、を備える。本実施形態において前記の鋳造経路Qは、その上流側から順に、略鉛直方向に延びる垂直経路部と、この垂直経路部に接続され、円弧状に延びる円弧経路部と、更にその下流側に設けられ、水平方向に延びる水平経路部と、前記の円弧経路部及び水平経路部とを滑らかに接続するための矯正経路部と、から成る。
【0023】
また、前記のロール対3・3・・・の夫々は、鋳造対象としての鋳片を、両広面でもって挟持する一対のロール3a・3aから構成される。この一対のロール3a・3aのロール面間の最短距離としてのロールギャップ[mm]は適宜の手段により調節可能に構成される。
【0024】
また、前記の鋳造経路Qの上流には、鋳型1内で形成され、該鋳型1から引き抜かれる凝固シェルに対して所定の流量で冷却水を噴霧する冷却スプレー4・4・・・が適宜に設けられる。一般に、前記の鋳型1が1次冷却帯と称されるのに対して、この意味で、冷却スプレー4・4・・・が配される経路部は2次冷却帯と称される。
【0025】
鋳型1から引き抜かれ、鋳造経路Qに沿って搬送される凝固シェルは、自然放熱や、上記冷却スプレー4・4・・・などにより更に冷却されて収縮する。従って、上記のロール対3・3・・・のロールギャップ[mm]は、一般に、鋳造経路Qの下流側へ進むに連れて緩やかに狭くなるように設定される。
【0026】
以上の構成で、スラブ鋳片の連続鋳造を開始するときは、鋳型1へ溶鋼を注湯する前に予め図略のダミーバーを前記の鋳造経路Q内に挿入しておき、浸漬ノズル2を介して鋳型1へ溶鋼を所定流量で注湯し始めると共に上記ダミーバーを下流側へ所定速度で引き抜く。そして、このダミーバーは、所定のメニスカス距離に到達したときに、適宜の手段により回収する。これで、スラブ鋳片が連続的に鋳造されるようになる。
【0027】
次に、上記の連続鋳造機100の一般的な操業条件を簡単に紹介する。
・鋳型幅W[mm]は、800〜2100とする。
・鋳型厚みD[mm]は、230〜280とする。
・鋳型高さH[mm]は、800〜900とする。
・鋳造速度Vc[m/min]は、1.0〜2.0とする。
・溶鋼過熱度ΔT[℃]は、0〜40とする。
・比水量Wt[L/kgSteel]は、1〜3とする。
・鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[gauss]は、300〜800とする。
・溶鋼成分は、当事者間の協定に基づく。代表的な成分は、CやSi、Mnである。これに、CrやCuなどが適宜に添加される。P及びSは極力少なくなるように調整される。その他の不可避の不純物を含む。
【0028】
ここで、各用語を簡単に説明する。
・鋳型幅W[mm]及び鋳型厚みD[mm]は、鋳型1の上端で観念される。
・鋳造速度Vc[m/min]は、鋳片の引抜速度であって、前記複数のロール対3・3・・・のうち最上流に配されるロール対3の周速度で観念される。
・溶鋼過熱度ΔT[℃]は、鋳型1内へ注湯される溶鋼の温度の指標である。詳細は、後述する。
・比水量Wt[L/kgSteel]は、鋼1kgに対して用いられる冷却水の容積を意味する。
・鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[gauss]は、鋳型1内の溶鋼を攪拌するために作用される磁場の強度の指標である。詳細は、本明細書の末尾に記載する。
【0029】
次に、本実施形態に係る連続鋳造機100の具体的な操業条件を説明する。本実施形態に係る連続鋳造では、下記の通りとする。
・鋼種:C含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼
・鋳型幅W[mm]:1800以下とする。
・鋳造速度Vc[m/min]:1.5以上とする。
・そして、下記式(1)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させることとする。下記式(1)中、変数ΔH[mm]は、「鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差」を意味し、変数ΔT[℃]は、前述の通り「溶鋼過熱度」を意味する。
【0030】
【数1】
【0031】
次に、上記の湯面レベル差ΔH[mm]と溶鋼過熱度ΔT[℃]の測定方法を説明する。図4を参照されたい。図4は、図3のA線矢視図である。
【0032】
<湯面レベル差ΔH[mm]>
湯面レベル差ΔH[mm]は、前述したように「鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差」を意味し、「鋳型幅方向中央」は本図中符号10で示される領域内に存在する湯面のうち任意の点とし、「鋳型幅方向コーナー」は本図中符号11で示される領域内に存在する湯面のうち任意の点とする。領域10は、鋳型幅方向においては浸漬ノズル2の端面から鋳型幅方向に100[mm]以内とし、鋳型厚み方向においては中心から両広面へ向かってD/10[mm]の範囲内とする。領域11は、鋳型幅方向においては狭面から浸漬ノズル2へ向かって100[mm]以内とし、鋳型厚み方向においては中心から両広面へ向かってD/10[mm]の範囲内とする。湯面レベルの測定には例えば渦流式レベル計を用いる。上記の「湯面レベル差ΔH[mm]」は、これら領域10及び領域11で測定された湯面レベルの差の絶対値とする。なお、この湯面レベル差ΔH[mm]は、浸漬ノズル2から見て一の狭面側の湯面のみを測定対象としてもよいし、図5に示されるように、浸漬ノズル2から見て両狭面側の湯面を測定対象とし、得られた2つの湯面レベル差ΔH[mm]のうち大きい湯面レベル差ΔH[mm]を採用することとしてもよい。
【0033】
<溶鋼過熱度ΔT[℃]>
溶鋼過熱度ΔT[℃]は、「鋳型内へ注湯される溶鋼の温度の指標」であり、以下のようにして測定する。
(1)『測定時刻』は、所定の時間間隔(例えば1分ごと)とする。なお、前述の凝固遅れ度Cg[%]との対応を図るために、凝固遅れ度Cg[%]を測定する鋳片の断面と、当該断面に対応する溶鋼の溶鋼過熱度ΔT[℃]と、の対応関係が失われないように留意する。
(2)『測定地点』は、以下の通りとする。即ち、「水平位置」はタンディッシュの底面に備え付けられる浸漬ノズル2の軸心とし、「鉛直位置」はタンディッシュ内に保持されている溶鋼の湯面を基準として深さ200[mm]とする。
(3)『測定器具』は、消耗型熱電対を用いる構成とする。上記の通り、深さ200[mm]の地点に消耗型熱電対を浸漬させることから、適宜に用意した棒の先端に消耗型熱電対を取着した構成が適する。
(4)上記の『測定時刻』及び『測定地点』、『測定器具』に準じて測定した溶鋼の温度と、溶鋼の溶鋼成分により唯一に求められる液相線温度と、を比較する。そして上述した溶鋼過熱度ΔT[℃]は、前者から後者を引き、更に25を引いた残りとして求めることとする。
【0034】
以下、本実施形態に係る凝固遅れ抑制方法の技術的効果を確認するための試験に関して説明する。上述した各数値範囲などは、下記の確認試験により合理的に裏付けられている。
【0035】
各確認試験の試験条件と試験結果を下記表1及び表2、図6に示す。図6は、各確認試験の試験結果を示す散布図である。この散布図には、関数f(ΔH,ΔT)に湯面レベル差ΔH[mm]及び溶鋼過熱度ΔT[℃]を代入して得られた値を横軸として、これら湯面レベル差ΔH[mm]及び溶鋼過熱度ΔT[℃]の測定対象としての溶鋼(又は凝固シェル)に対応する鋳片部位について測定した凝固遅れ度Cg[%](ただし、一の切断面で得られる4つの凝固遅れ度Cg[%]のうち最大の凝固遅れ度Cg[%])と、の関係が示される。なお、浸漬ノズル2から見て両狭面側の湯面を測定対象とし、得られた2つの湯面レベル差ΔH[mm]のうち大きい湯面レベル差ΔH[mm]を採用することとした。下記表1及び表2、図6によれば、著しい凝固遅れは上記式(1)が満足されたときにのみ発生していることが判る。このことから、もし上記式(1)が満足されたら、殆どの場合、著しい凝固遅れが発生するものと見做してもよいだろう。そして、この著しい凝固遅れが鋳型1の下端に至るまでに消失されるよう、換言すれば少なくとも鋳型1の下端に至るまでには十分な凝固シェルが形成されるよう、できれば著しい凝固遅れそのものが発生することのないよう、鋳造速度Vc[m/min]を低下させ、著しい凝固遅れが発生したものと見做した凝固シェルが鋳型1の下端を通過するまでの時間を稼ぐとよい。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
以上説明したように本実施形態において、C含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼を、鋳型幅W[mm]を1800以下とする鋳型を用い、鋳造速度Vc[m/min]を1.5以上として連続鋳造するに際し、著しい凝固遅れは、以下のような方法で防止できる。即ち、鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差をΔH[mm]と、溶鋼過熱度をΔT[℃]とし、下記式(1)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させる。
【0039】
【数1】
【0040】
上記の説明に付記するかたちで、実際にどの程度、鋳造速度Vc[m/min]を減速させれば著しい凝固遅れが防止できるのかを調査し、その結果を下記表3及び図7に示すから、上記の方法を実施する際には下記の記載を十分に参考にされたい。
【0041】
【表3】
【0042】
先ず、表3を簡単に説明する。例として試験No.137を参照されたい。本試験における連続鋳造は、表3に記載の条件(C含有量C[wt%]及び鋳型幅W[mm]、鋳造速度Vc[m/min])に従って為され、その連続鋳造中において上記式(1)が満足されたとき、直ちに鋳造速度Vc[m/min]を表3中の減速幅ΔVc[m/min]に準じて減速させ、更に、上記式(1)が満足された時刻における鋳型内凝固シェルに対応する鋳片について凝固遅れ度Cg[%]を測定した。このとき得られる4つの凝固遅れ度Cg[%]のうち最大の凝固遅れ度Cg[%]を表3に記載した。なお、鋳造速度Vc[m/min]の減速は生産性の低下に直結するため、上記減速の時刻から所定時間(例えば300[sec])経過した時点で、鋳造速度Vc[m/min]は減速前の元の鋳造速度Vc[m/min]に戻しておいた。
【0043】
次に、図7を簡単に説明する。図7は、鋳造速度Vc[m/min]の減速幅ΔVc[m/min]と、凝固遅れ度Cg[%]の改善の程度と、の関係を示すグラフである。この図7は、表3に記載される試験結果に基づいて作成したものである。即ち、表3に記載の試験No.101〜137を減速幅ΔVc[m/min]に応じて横軸上に度数分けし、各減速幅ΔVc[m/min]ごとに、(度数分けされた試験の試験数)を分母とし(度数分けされた試験のうち、表3に記載の凝固遅れ度Cg[%]が40以上である試験の試験数)を分子とする、著しい凝固遅れの発生頻度を縦軸にとった。本図から判る通り、減速幅ΔVc[m/min]を0.3以上とすれば、著しい凝固遅れが発生するものとした場合でも確実にその発生を防止できた。このことから、著しい凝固遅れを完全に防止するには、上記式(1)が満たされたときに、少なくとも0.3[m/min]以上、鋳造速度Vc[m/min]を減速させればよいことが理解されよう。なお、生産性との兼ね合いから、鋳造速度Vc[m/min]の実際の減速幅ΔVc[m/min]は、図7を参照しつつ十分に検討した上で適宜に0.0〜0.3の範囲内で選択されたい。ただし、減速幅ΔVc[m/min]を0.4以上としても生産性の低下以外には特段の問題はないだろう。
【0044】
以上、本発明の第一実施形態を説明してきたが、前述した図6や図7に示されるように、上記式(1)は、実際には著しい凝固遅れが発生しないのに発生するものとする過検知を若干含むことが理解されよう。即ち、上記式(1)が満足されたときでも、凝固遅れ度Cg[%]が40未満となる場合が少なからず存在している。この点、本発明の第一実施形態に係る凝固遅れ抑制方法は、従来技術と比較して十分に有益な技術ではあるものの、若干の改善の余地が認められるものである。
【0045】
次に、本発明の第二実施形態を説明する。本実施形態に係る凝固遅れ抑制方法は、上記第一実施形態に係る凝固遅れ抑制方法に対して秀でた改善を為したものである。以下、本実施形態が上記の第一実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0046】
上記第一実施形態では、上記式(1)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして鋳造速度Vc[m/min]を低下させ、これにより著しい凝固遅れを防止する。これに対し本実施形態では、下記式(2)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させることとする。下記式(2)中、変数Qo[MW/m2]は「鋳型幅方向中央における熱流束」を、変数Qc[MW/m2]は「鋳型幅方向コーナーにおける熱流束」を意味する。
【0047】
【数2】
【0048】
次に、上記の熱流束Qo[MW/m2]と熱流束Qc[MW/m2]の測定方法を概説する。
【0049】
<熱流束Qo[MW/m2]と熱流束Qc[MW/m2]>
熱流束Qo[MW/m2]は、前述したように「鋳型幅方向中央における熱流束」を意味し、詳しくは、「図4に示される領域10内に存在する湯面のうち任意の点における湯面レベルを測定するために設置された湯面レベル計よりも更に鋳型幅方向中央側であって、メニスカスから鋳造方向に向かって20〜40[mm]の範囲内である、広面を通過する熱流束[MW/m2]を鋳造方向に10[mm]ピッチで測定したときに最大となる熱流束[MW/m2]」とする。この熱流束の測定は、公知の種々の方法により実現されよう。即ち、例えば、(i)熱流束計を鋳型広面に複数で埋設し、この熱流束計の出力をモニタリングする方法、(ii)熱電対を鋳型広面に複数で埋設し、この熱電対の出力、鋳型内を流通する冷却水の水温、その他種々の熱伝達係数などを総合的に考慮して数値計算により熱流束を求める方法、(iii)一対の熱電対を鋳型広面に複数対で埋設し、各対の熱電対によって測定した該鋳型1の温度対に基づいて熱流束を求める方法、の(i)〜(iii)が挙げられる。勿論、その他の公知の計算的乃至解析的手法も適用可能であって、その選択は操業条件や設備環境などに応じて適宜に選択されよう。一方、熱流束Qc[MW/m2]は、前述したように「鋳型幅方向コーナーにおける熱流束」を意味し、「図4に示される領域11内に存在する湯面のうち任意の点における湯面レベルを測定するために設置された湯面レベル計よりも更に鋳型幅方向コーナー側であって、メニスカスから鋳造方向に向かって20〜40[mm]の範囲内である、広面を通過する熱流束[MW/m2]を鋳造方向に10[mm]ピッチで測定したときに最大となる熱流束[MW/m2]」とする。この熱流束の測定は、上記同様、公知の種々の方法により実現されよう。
【0050】
以下、本実施形態に係る凝固遅れ抑制方法の技術的効果を確認するための試験に関して説明する。上述した各数値範囲などは、下記の確認試験により合理的に裏付けられている。
【0051】
先ず、各確認試験で採用した熱流束Qo[MW/m2]及び熱流束Qc[MW/m2]の測定方法を以下、説明する。
・鋳型銅板厚みdd(図8参照):20〜40[mm]
・鋳型高さ:900[mm]
・熱電対の種類:K熱電対(+:クロメル、-:アルメル)
・熱電対の埋設位置(鋳型幅方向):広面の鋳型全幅方向に10〜50[mm]ピッチ
・熱電対の埋設位置(鋳型高さ方向)及び本数:メニスカスから20〜40[mm]の位置に鋳造方向に10[mm]ピッチで10本
・熱電対の埋設深さ:鋳型銅板の表面から8[mm]
・上記「鋳型幅方向中央における熱流束」:鋳型幅方向でレベル計の設置位置より鋳型センター側にある熱電対の列の何れかで測定し、10本の熱流束の中で最大熱流束を示した熱流束のことを指す。
・上記「コーナー部熱流束」:鋳型幅方向でレベル計の設置位置より鋳型短辺側にある熱電対の列の何れかで測定し、10本の熱流束の中で最大熱流束を示した熱流束のことを指す。
・熱流束算出方法:鋳型全幅に亘って鋳造方向と垂直な方向に複数の熱電対を埋設し、これらの熱電対を用いて鋳型内壁の温度計測を行う。熱電対温度データは1秒ごとにコンピュータに取り込まれる。熱電対温度データ、鋳型冷却水温、鋳型銅板厚み、銅熱伝導度、鋳型背面とスリットを流れる冷却水との界面熱伝達係数(スリットを通過する水の流速から算出)から、スリットの形状を考慮して、コンピュータを用い、二次元の差分法で熱流束を算出する。差分法の詳細を下記に示す。鋳型銅板の形状は図8のように反復する形状である。反復形状なので図8の太線で示す領域のみを考えればよい。鋳型銅板表層側から入熱し(q1)、鋳型銅板背面側から抜熱する。銅板を1[mm]ピッチでメッシュ分割し、要素を作成し、図9に示すように要素の中心を通過する熱量の収支を計算する。計算の初期条件としてある熱流束を与え、熱電対実測温度T(i,j)と熱電対位置にあたる要素の計算温度T(i,j)とを比較し、その差が1%以下になるまで収束計算を行う。収束したときのq1の値を熱流束値とする。鋳型背面〜冷却水間熱伝達係数h1、鋳型背面〜SUSジャケット間熱伝達係数h2は同一とした。また、鋳型背面〜冷却水間熱伝達係数h1はスリットを流れる冷却水の流速から求めた。
・図8中、h1は鋳型冷却水孔部熱伝達係数を、q1は鋳片〜鋳型間熱流束を示す。銅熱伝導度λは0.849[cal/cm/sec/deg]と、鋳型背面〜冷却水間熱伝達係数h1は0.369[cal/cm/sec/deg]とする(日立造船技報、第34巻、第2号(1973))。鋳型冷却水温Twは鋳型出側水温測定値とする。
・計算式
境界条件(スリット側の鋳型銅板界面)は、下記式(4)のように、熱伝達係数で規定する。境界条件(鋳片側の鋳型銅板界面)は、下記式(5)のように、熱流束で規定する。銅板内部は、下記式(6)の通りとする。そして、式(4)〜(6)の各式を各要素について立て、温度T(I,J)の収支計算を実施する。なお、各式中、Δxは図8の奥行き(紙面厚み)のことである(例えば、1mmとする)。
【0052】
【数4】
【0053】
【数5】
【0054】
【数6】
【0055】
各確認試験の試験条件と試験結果を、上記表1及び表2、図10に示す。図10は、各確認試験の試験結果を示す散布図である。この散布図には、関数g(ΔH,ΔT,Qo,Qc)に湯面レベル差ΔH[mm]及び溶鋼過熱度ΔT[℃]、熱流束Qo[MW/m2]、熱流束Qc[MW/m2]を代入して得られた値が横軸として、これら湯面レベル差ΔH[mm]及び溶鋼過熱度ΔT[℃]、熱流束Qo[MW/m2]、熱流束Qc[MW/m2]の測定対象としての溶鋼(又は凝固シェル)に対応する鋳片部位について測定した凝固遅れ度Cg[%](ただし、一の切断面で得られる4つの凝固遅れ度Cg[%]のうち最大の凝固遅れ度Cg[%])と、の関係が示される。上記表1及び表2、図10によれば、上記式(2)が満足されないときは著しい凝固遅れは発生せず、一方、上記式(2)が満足されたときは著しい凝固遅れが常に発生していることが判る。このことから、著しい凝固遅れが発生するか否かの判断は、上記式(2)が満足されたか否かの判定に基づいて為すことができよう。そして、この著しい凝固遅れが鋳型1の下端に至るまでに消失されるよう、換言すれば少なくとも鋳型1の下端に至るまでには十分な凝固シェルが形成されるよう、できれば著しい凝固遅れそのものが発生することのないよう、鋳造速度Vc[m/min]を低下させ、著しい凝固遅れが発生したものと見做した凝固シェルが鋳型1の下端を通過するまでの時間を稼ぐとよい。
【0056】
特筆すべきは、上記式(2)が満足したときに鋳造速度Vc[m/min]を低下させるなどの手当てをしなかった場合、常に、凝固遅れの程度が著しいものとなった点にある。つまり、著しい凝固遅れが発生しないにも関わらず、著しい凝固遅れが発生するものとしてしまう過検知を排除できている(図6と図10を比較されたい。)。
【0057】
以上説明したように本実施形態において、C含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼を、鋳型幅W[mm]を1800以下とする鋳型を用い、鋳造速度Vc[m/min]を1.5以上として連続鋳造するに際し、著しい凝固遅れは、以下のような方法によれば過検知なく防止できる。即ち、鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差をΔH[mm]と、溶鋼過熱度をΔT[℃]と、鋳型幅方向中央における熱流束をQo[MW/m2]と、鋳型幅方向コーナーにおける熱流束をQc[MW/m2]とし、下記式(2)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させる。
【0058】
【数2】
【0059】
上記の説明に付記するかたちで、実際にどの程度、鋳造速度Vc[m/min]を減速させれば著しい凝固遅れが防止できるのかを調査し、その結果を下記表4及び図11に示すから、上記の方法を実施する際には下記の記載を十分に参考にされたい。
【0060】
【表4】
【0061】
上記の表4は前述の表3に類似するものであり、図11は前述の図7に類似するものである。本図から判る通り、減速幅ΔVc[m/min]を0.3以上とすれば、著しい凝固遅れが発生するものとした場合でも確実にその発生を防止できた。このことから、著しい凝固遅れを完全に防止するには、上記式(2)が満たされたときに、少なくとも0.3[m/min]以上、鋳造速度Vc[m/min]を減速させればよいことが理解されよう。なお、生産性との兼ね合いから、鋳造速度Vc[m/min]の実際の減速幅ΔVc[m/min]は、図11を参照しつつ十分に検討した上で適宜に0.0〜0.3の範囲内で選択されたい。ただし、減速幅ΔVc[m/min]を0.4以上としても生産性の低下以外には特段の問題はないだろう。
【0062】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記各実施形態は以下のようにして実施できる。
【0063】
即ち、湯面レベル差ΔH[mm]を測定するための渦流式レベル計や、溶鋼過熱度ΔT[℃]を測定するための熱電対、熱流束Qo[MW/m2]及び熱流束Qc[MW/m2]を測定するための熱電対などを適宜のA/Dコンバータなどを介して汎用PCに接続し、所定の時間間隔ごとに、これらの測定器からの出力結果を該汎用PCに取得させ、当該汎用PCに接続した表示器上に連続的に該出力結果を表示させたり、上記式(1)又は(2)が満足したか否かを当該汎用PCに判定させ、その判定結果に基づいて当該汎用PCに鋳造速度Vc[m/min]を適宜に変更させるように構成してもよい。
【0064】
以下、参考資料である。
【0065】
<鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[gauss]>
定義:鋳型1内の溶鋼を攪拌するために作用される磁場の強度の指標である。
(1)『測定時刻』は、任意である。
(2)『測定地点』は、以下の通りとする。即ち、「水平位置」は、(i)鋳型幅方向においては中央とし、(ii)鋳型厚み方向においては鋳型内壁面から中心へ向かって15[mm]とし、(iii)鋳型高さ方向においては鋳型に埋設される電磁コイルのコイル中心と揃えるものとする。
(3)『測定器具』は、適宜のガウスメータを用いる。
(4)上記の『測定時刻』及び『測定地点』、『測定器具』に準じて複数回測定する。そして上述した鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[gauss]は、上記複数の測定値を平均化して求めることとする。
(5)なお、種々の観点から、上記鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[gauss]は0〜1000が好ましいとされ、鋳型内の溶鋼に作用される磁場の周波数[Hz](「磁場の周波数」とは、上記電磁コイルに導通される電流が1秒間に向きを変える回数を意味する。)は1〜5が好ましいとされ、一般に、この磁場の周波数[Hz]として2が採用される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】凝固遅れ度Cg[%]の説明図
【図2】凝固遅れ度Cg[%]と鋳型直下B.O.発生頻度[%]との関係についての実績に基づくグラフ
【図3】連続鋳造機の概略図
【図4】図3のA線矢視図
【図5】図4に類似する図
【図6】各確認試験の試験結果を示す散布図
【図7】鋳造速度Vc[m/min]の減速幅ΔVc[m/min]と、凝固遅れ度Cg[%]の改善の程度と、の関係を示すグラフ
【図8】鋳型の平面視における部分断面図
【図9】熱の収支の説明図
【図10】図6に類似する図
【図11】図7に類似する図
【符号の説明】
【0067】
1 鋳型
2 浸漬ノズル
100 連続鋳造機
Cg 凝固遅れ度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼を、鋳型幅W[mm]を1800以下とする鋳型を用い、鋳造速度Vc[m/min]を1.5以上として連続鋳造するに際し、
鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差をΔH[mm]と、溶鋼過熱度をΔT[℃]とし、下記式(1)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させる、
ことを特徴とする凝固遅れ抑制方法
【数1】
【請求項2】
C含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼を、鋳型幅W[mm]を1800以下とする鋳型を用い、鋳造速度Vc[m/min]を1.5以上として連続鋳造するに際し、
鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差をΔH[mm]と、溶鋼過熱度をΔT[℃]と、鋳型幅方向中央における熱流束をQo[MW/m2]と、鋳型幅方向コーナーにおける熱流束をQc[MW/m2]とし、下記式(2)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させる、
ことを特徴とする凝固遅れ抑制方法
【数2】
【請求項1】
C含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼を、鋳型幅W[mm]を1800以下とする鋳型を用い、鋳造速度Vc[m/min]を1.5以上として連続鋳造するに際し、
鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差をΔH[mm]と、溶鋼過熱度をΔT[℃]とし、下記式(1)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させる、
ことを特徴とする凝固遅れ抑制方法
【数1】
【請求項2】
C含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼を、鋳型幅W[mm]を1800以下とする鋳型を用い、鋳造速度Vc[m/min]を1.5以上として連続鋳造するに際し、
鋳型幅方向中央と鋳型幅方向コーナーにおける湯面レベル差をΔH[mm]と、溶鋼過熱度をΔT[℃]と、鋳型幅方向中央における熱流束をQo[MW/m2]と、鋳型幅方向コーナーにおける熱流束をQc[MW/m2]とし、下記式(2)が満足されたら、著しい凝固遅れが発生するものとして、鋳造速度Vc[m/min]を低下させる、
ことを特徴とする凝固遅れ抑制方法
【数2】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−260045(P2008−260045A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104957(P2007−104957)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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