凝集パラメータの測定
反応チャンバ内で行われる1つ以上の磁性粒子による標的誘起凝集アッセイでの凝集を測定する方法及びシステムが記載されている。前記アッセイ内に、標的(5)と結合することのできる磁性粒子(3,15)が供された後、少なくとも1つの磁性粒子を含む粒子(100)が凝集する凝集プロセスが行われる。当該方法は、前記アッセイに交流磁場(HAC)を印加する手順、及び表面に付着しない1つ以上の前記磁性粒子(3,15)への前記HACの効果を測定する手順をさらに有する。前記の測定された効果は1つ以上の凝集パラメータを表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学、化学、又は生化学センシングの分野に関する。より詳細には本発明は、標的誘起アッセイにおいて磁気ラベルの1つ以上の凝集パラメータを定量的に測定する方法に関する。本発明は、対応する道具一式及び対応する装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年の努力は、粒子が中に存在するより大きな混合物又は溶液での標的の存在-場合によっては濃度のレベル-を決定する測定手法へ向けられてきた。通常は比較的低濃度のある特定の有機化合物を測定することが必要である。医療においては、たとえば、大抵の場合溶液中で所与の種類の分子濃度を決定することは非常に有用である。そのような分子は、たとえば血液や尿のような生理液中に自然に存在するものや、薬のような生体系へ導入されるものである。
【0003】
特定の関心化合物の存在を検出するのに用いられる一の一般的な方法はイムノアッセイ法である。この方法では、所与の分子種-一般的にはリガンドと呼ばれる-の検出は、関心リガンドに対して選択的に結合する第2分子種-通常は抗リガンド又はレセプタと呼ばれる-を用いることによって実現される。関心リガンドの存在は、抗リガンドに対するリガンドの結合程度を、たとえば光学的手法によって、直接的又は間接的に、測定又は推定することによって検出される。リガンドは標的又は検体と考えることができる。
【0004】
多数のイムノアッセイ法の方式が存在する。全ての方式は結合を含むが、全てが凝集を含むわけではない。凝集しない場合では、一のラベルが一の標的に付着する。凝集アッセイ法は迅速でかつ検出が容易である。よって、容易な検出及び迅速な-たとえばその場での-結果が必要なときには、凝集アッセイ法が用いられる。
【0005】
大きな粒子の光学検出に基づく定量的な検査はそれほど敏感ではない。なぜならそのような検査は、濁度(試料を透過する光)又は比濁(試料で散乱される光)の測定に依拠し、これらはいずれも特定物質からのバックグラウンド干渉による影響を受けるためである。従って、光学方法は、細胞を含む全血や、食物粒子を有している恐れのある唾液のような未処理試料での使用には適さない。
【0006】
その代わりに、マグネタイト及び不活性母体材料から作られる磁性粒子が、生化学の分野では長らく用いられてきた。係る磁性粒子のサイズは、直径にして数nmから最大数μmの範囲で、15%〜100%のマグネタイトを含んで良い。係る磁性粒子は通常、超常磁性粒子と表されるか、あるいは大きなサイズ範囲では磁気ビーズと表される。通常の方法は、粒子の表面を、ある生物学的に活性な材料でコーティングすることである。それにより、係る粒子は、特定の微視的対象物すなわち関心粒子-たとえばタンパク質、ウイルス、細胞、又はDNA断片-と強く結合する。磁性粒子は「ハンドル」と考えることができる。この磁性粒子が、磁気勾配-通常は強い永久磁場によって供される-を用いることによって、対象物を移動又は固定させることが可能だからである。
【0007】
これまで、そのような磁性粒子は、基本的には結合した対象物を固定するのに用いられてきた。しかし最近の研究では、結合した複合体の存在を検出するタグとしてその粒子が利用されてきている。歴史的には、結合した複合体の検出及び定量化は、関心複合体と結合する、放射性、蛍光性、又はリン光性分子の手段によって実現されてきた。しかしこれら従来のタグを付す手法は様々な周知の欠点を有している。
【0008】
他方、小さな体積の磁性粒子からの信号が非常に小さいため、研究者たちが、多く用途にとって最も磁場に対して敏感であることがよく知られている量子干渉素子(SQUID)に基づいて検出器を構築することを試みてきたのは当然のことである。しかしSQUIDは非常に敏感な測定素子であるが、とりわけ極低温当たりまで冷却されなければならないという欠点に悩まされる。
【0009】
最近、本願出願人によって、改善された磁性粒子センサデバイスが、特に特許文献1及び2において開示された。これらの磁性粒子センサデバイスは、測定を室温で行うことができる一方で、同時に十分高い信号対雑音比を有するという利点を有している。
【0010】
最近、特許文献3が、決定されるべき量又は他の固有な特徴を有する検体と磁性粒子の結合物を定量的に測定する装置を開示した。その磁性粒子はその決定されるべき検体と複合して、数百kHzの磁場中で励起される。それにより磁性粒子の磁化は、双極子が自身の磁場を生成するように、励起周波数で振動する。これらの磁場は、たとえばグラジオメータ内で作製されたセンシングコイルのような少なくとも1つのコイルと誘導結合する。センシングコイルからの出力信号は、磁性粒子の結合又は凝集にとって有用な出力信号を与えるように、適切に増幅及び処理される。しかしキロヘルツ領域振動の領域での動作は不必要な雑音の寄与を導入してしまう恐れがあり、さらには試料を移動-特に回転-させる用途では設計が複雑になる。なぜなら試料ホルダの回転は、その回転が測定と励起とを切り離すのに用いられるときには、相対的に精密でなければならなくなるからである。それに加えて、試料ホルダが回転することで、磁気測定直前、中、直後を問わず、試料操作の補助は容易ではなくなる。しかもサイモンド(Simmonds)他によって用いられたコイル技術はあまり敏感ではないので、検出のために相対的に多量の磁性材料が必要となる。その結果、試料容積を大きくすることが必要となる。結局サイモンド他は、クラスタ状態の磁性材料と単一粒子の磁性材料の両方の総量しか測定しておらず、実効的にはクラスタ状態の磁性材料と単一粒子の磁性材料を分けないので、凝集パラメータの測定は不可能である。
【0011】
磁性粒子は、ある周波数-所謂臨界滑り周波数-の回転磁場中で回転できることも知られている。臨界滑り周波数よりも高い周波数では、磁性粒子の回転は印加磁場の回転に追随できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2005/010542号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/010543号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6437563号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
たとえ凝集パラメータを測定する方法が多数存在するとしても、より効率的で、かつ/又はより信頼性が高く、かつ/又はより敏感な方法が必要である。たとえば、多くのクラスタを形成しない種のバックグラウンド内における少数のクラスタを形成する種の検出、及び/又は、多くのクラスタを形成する種のバックグラウンド内における少数のクラスタを形成しない種の検出は、凝集アッセイ法における課題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は凝集パラメータを測定する良好な方法及びシステムを供することである。本発明による実施例の利点は、上述した単独の従来技術又は従来技術の組合せによる欠点を緩和、又は解決することである。この目的は、本発明による方法及びデバイスによって実現される。本発明は、反応チャンバ内で実行される標的誘起アッセイにおいて1つ以上の粒子の凝集を測定する方法を供する。当該方法は、前記反応チャンバ内のアッセイに交流磁場(HAC)を印加する手順、及び、前記少なくとも1つのセンサ素子によって、前記反応チャンバの表面に付着していない磁性粒子に対する前記HACの効果を測定する手順をさらに有する。ここで測定された効果は1つ以上の凝集パラメータを表す。本発明による実施例の利点は高い処理能力を実現できることである。本発明による実施例の利点は高い感度を実現できることである。本発明による実施例の利点はクラスタの非選択的形成を最小限に抑制できることである。アッセイ、すなわちそのアッセイを維持できる反応チャンバは、センサ素子の付近に存在して良い。磁性粒子はセンシング方法によって直接的に検出されて良い。あるいは磁性粒子は検出前にさらに処理されても良い。さらなる処理の例は、材料を追加すること、又はその磁性粒子の(生)化学若しくは物理的特性を改質して検出を助けることである。
【0015】
当該方法は、センサ表面付近に磁性粒子を集中させる手順をさらに有して良い。前記集中は、磁性粒子を束縛するようにセンサ表面引き付けることによって実行されて良い。磁性粒子の検出は、回転磁場を印加し、かつたとえば光学イメージングによる回転するクラスタを特定することによって行われて良い。
【0016】
当該方法は、凝集した粒子のサイズに依存した分離プロセスを実行する手順をさらに有して良い。本発明による実施例の利点は、様々なサイズの粒子の評価を別個に行うことが可能なので、アッセイに対するクラスサイズの影響を緩和又は回避できるため、精度が改善される。本発明による実施例の利点は、複数のセンサ素子は、その各々がアッセイの付近にセンサ表面を有するように配置されることで、本発明の実施例による分離プロセスから得られる定量的な凝集パラメータが与えられることである。特に複数のセンサが、分離プロセスから得られる凝集粒子の様々なサイズの割合を測定する凝集アッセイに関して配置されて良い。
【0017】
交流磁場HACは、単一磁性粒子の臨界滑り周波数よりも顕著に高い周波数を有して良い。その周波数は、前記臨界滑り周波数の少なくとも10倍、100倍、又は1000倍よりも大きくて良い。あるいはその代わりにアッセイは、臨界滑り周波数(付近)で実行されても良い。本発明による実施例の利点は、当該方法が広範囲の印加磁場周波数で適用可能なことである。
【0018】
効果を測定する手順は、磁気信号、光信号、若しくは電気信号、又はこれらの結合を測定する手順を有して良い。光信号-たとえば発光信号-を測定する手順は、光学的手法-たとえば散乱、エバネッセント場技術、広視野可視化顕微鏡、共焦点レーザー走査顕微鏡等-を用いて粒子の光学特性を検出することであって良い。前記測定はたとえば磁気光学信号又は電磁信号の測定であっても良い。
【0019】
アッセイは少なくとも1つのセンサ素子表面付近に設置されて良い。
【0020】
生成された交流磁場HACの方向は少なくとも1つのセンサ素子表面に対して実質的に平行であって良い。実質的に平行とは、生成された交流磁場HACの方向とセンサ素子表面とのなす角が0°〜20°-たとえば0°〜10°-であって良い。
【0021】
磁気センサは、粒子の磁性の検出に基づいた如何なる適切なセンサであって良い。たとえば、コイル、ワイヤ、磁気抵抗センサ、巨大磁気抵抗センサ、磁歪センサ、ホールセンサ、平面型ホールセンサ、フラックスゲートセンサ、SQUID、磁気共鳴センサ等である。
【0022】
前記測定は、センサ素子表面から10μm未満の距離の領域で、好適には5μm未満の距離の領域で、より好適には1μm未満の距離の領域で実行されて良い。分離プロセスはアッセイの実質的に閉じこめられた容積内部実行されて良い。有利となるように、1つ以上の磁気ラベルの磁性に対するHACの効果をセンサ素子によって測定する手順は、そのセンサ素子付近の空間領域内で実行されて良い。よって本発明は表面上での測定とは異なるが、表面上での測定に適用されても良い。より具体的には前記測定は、前記センサ素子付近10μmの空間領域-より具体的には5μm及び1μm-内で実行されて良い。200μmの範囲-具体的には100μm又は50μm-でも適用されて良い。
【0023】
分離プロセスは、アッセイ中での磁性粒子の少なくとも一部に作用する磁力によって実行されて良い。前記磁力は分離用の不均一磁場(HSEP)を起源とする。
【0024】
分離用に用いられる磁場(HSEP)はAC磁場とは異なって良い。本発明による実施例の利点は、より選択的な分離プロセスを補助することである。
【0025】
凝集プロセスを改善するのに凝集改善磁場(HENH)が印加されて良い。その凝集改善磁場(HENH)は、分離用磁場(HSEP)の前及び/又はとHSEPと同時に印加されて良い。
【0026】
交流磁場HACの効果は長時間にわたって測定されて良い。1つ以上の磁性粒子への交流磁場HACの効果は、端点測定から導出されても良いし、信号を時間の関数として連続的又は断続的に記録して時間測定を行うことによって導出されても良い。時間間隔は1秒から最大で1時間の範囲であって良く、典型的には1〜10分で、特に1〜5分である。1つ以上の磁性粒子への交流磁場HACの効果を長時間にわたって測定するとき、たとえば凝集粒子のサイズ分布信号を得ることが可能であり、又は凝集プロセスの動力学に係る信号を得ることも可能である。
【0027】
当該方法は凝集粒子のサイズ分布を決定する手順をさらに有して良い。
【0028】
当該方法は、複数のセンサを用いて、前記分離の結果生じる凝集粒子の様々なサイズ割合を測定する手順を有して良い。
【0029】
アッセイは生化学アッセイであって良い。
【0030】
本発明はまた、上述の方法によって、標的誘起凝集アッセイにおいて粒子の1つ以上の凝集パラメータを定量的に測定する道具一式にも関する。当該道具一式は標的と結合する能力を有する少なくとも1つの磁性粒子を有する。
【0031】
本発明はまた標的誘起凝集アッセイにおいて1つ以上の凝集パラメータを測定するデバイスにも関する。当該デバイスは、少なくとも1つの磁性粒子を有するように粒子を凝集させる凝集プロセスを実行する凝集手段を有する。凝集した粒子は、任意の表面、少なくとも1つのセンサ素子、及びAC磁場をアッセイに印加する磁場発生手段に付着しない。前記センサ素子は、付着しない凝集粒子のうちの1つ以上の磁性粒子に対するAC磁場の効果を測定するように備えられて良い。測定された効果は1つ以上の凝集パラメータを表す。AC磁場の効果は1つ以上の磁性粒子の磁性に対する効果であって良い。当該デバイスは、官能化されていない表面を有して良いし、又はアッセイ非選択の官能化表面を有しても良い。
【0032】
当該デバイスは、センサ表面付近に粒子を集中させるプロセス、又は凝集粒子のサイズに依存した分離プロセスをさらに有して良い。
【0033】
当該デバイスは、単一磁性粒子の臨界滑り周波数よりもはるかに大きな、発生したAC磁場の周波数を制御する制御手段をさらに有して良い。その周波数は臨界滑り周波数の少なくとも10倍よりも大きくて良い。
【0034】
前記少なくとも1つのセンサ素子は、光センサ素子、磁気センサ素子-たとえばホールプローブ又は磁気抵抗センサに基づく素子-、音響センサ素子、電気センサ素子等のいずれであっても良い。
【0035】
本発明は特に、排他的ではないが、今まで開示されてきた方法よりも、より定量的に1つ以上の磁気ラベル又は磁性粒子を含む粒子の凝集を研究する方法を得るのに有利である。具体的には、用いられる磁気測定手法が低雑音であり、かつ/又は、1つ以上の磁性粒子の特性の測定前及び/若しくはその測定中での凝集した粒子の分離が改善されるために、このようなことが実現され、必要な凝集パラメータの感度が改善される。多数の測定可能粒子に関する感度については、行われた実験は、本発明が従来技術よりも少なくとも1桁高い感度を有することを示した。
【0036】
他の利点として、当該方法は、表面には結合していないがセンサ素子の付近-たとえばセンサ表面又は凝集アッセイが含まれる反応チャンバ表面-に存在する凝集粒子の特性の測定を補助する。表面への結合という制約のない粒子は特に有利である。なぜなら複雑な表面構造(表面パターニング及び表面改質)が不要であるため、センシングデバイス-たとえば磁気センシングデバイス-の製造が顕著に単純化されるからである。
【0037】
凝集パラメータは、生成される凝集体のサイズ、2つ以上の独立した粒子を有する凝集体での磁性材料の総量、凝集体のサイズ分布、凝集体を形成する個々の粒子の磁性粒子数分布、凝集した個々の粒子に対する凝集しない個々の粒子の比等を有して良いが、これらに限定されるわけではない。
【0038】
本発明の方法は、複数の種類の生化学アッセイと共に用いられて良い。そのような生化学アッセイとはたとえば、結合/未結合アッセイ、サンドイッチアッセイ、競合アッセイ、変位アッセイ、酵素アッセイ、増幅アッセイ等である。
【0039】
本発明の方法は、センサ多重化(つまり各異なるセンサ及びセンサ表面の並列使用)、ラベル多重化(つまり各異なる種類のラベルの並列使用)、及びチャンバ多重化(つまり各異なるチャンバの並列使用)に適している。本発明に記載された方法は、迅速で、耐久性を有し、かつ容易に使用できる、小さな試料体積用のポイントオブケアバイオセンサに用いられて良い。しかし本発明に記載された方法は実験室の器具で用いられても良い。
【0040】
本発明による実施例の利点は、検査中に試料を含む反応チャンバが、小型読み取り装置と共に用いられ、1つ以上の磁場発生手段を有し、かつ1つ以上の検出又は測定手段を有する使い捨て装置であって良いことである。また本発明の方法は、中央研究所での自動化された高処理能力検査で用いられても良い。この場合、反応チャンバはたとえばウエルプレート又はキューベットのような自動装置に適合したものである。
【0041】
本発明による実施例の利点は、サイズに依存した分離が実行されるとしても、その分離を別な試料格納容器又は異なるプロセス場所で行う必要がなく、測定が行われる場所で行うことができることである。
【0042】
本発明による実施例の利点は、印加されたAC磁場が、所与の状況下での所与の種類の磁性粒子の臨界滑り周波数よりも大きな周波数を有して良いことである。臨界滑り周波数の値は、当業者にとって知られた方法/本明細書に記載された方法によって得られて良い。
【0043】
本発明による実施例の利点は、磁気ラベルを含む凝集アッセイを行う試薬が、デバイス上で水を含まない状態で存在しうることである。固体試薬は流体試料を加えることによって溶解して分散することが可能である。これは使用しやすさ及びデバイスの保存にとって有利である。
【0044】
本発明の特別な態様及び好適な態様は、「特許請求の範囲」の独立及び従属請求項に記載されている。従属請求項の記載事項は、適切であれば請求項中に明示的に記載されていなくても、独立請求項の記載事項及び他の従属請求項の記載事項と組み合わせられて良い。
【0045】
本発明の上記及び他の特徴、事項、及び利点は、例示的に本発明の原理を図示している添付の図面と共に以降の詳細な説明から明らかとなる。本記載は例示を目的とするのみで、本発明の技術的範囲を限定するものではない。以降で引用される参照番号は添付の図面を指し示している。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例での使用が可能な凝集アッセイの概略的な反応である。
【図2】本発明の実施例での使用が可能な凝集アッセイの概略的な反応である。
【図3】本発明の実施例での使用が可能な凝集アッセイの概略的な反応である。
【図4】本発明の実施例の例示であって、磁性粒子が存在しない磁気センサを用いたセンサデバイスの断面図である。
【図5】本発明の実施例の例示であって、磁性粒子が存在する磁気センサを用いたセンサデバイスの断面図である。
【図6】磁気センサ面に対して実質的に垂直な方向での分解能が改善された磁気センサを用いる本発明のセンサデバイスに係る実施例の断面図である。
【図7】磁気センサ面に対して実質的に垂直な方向での分解能が改善された磁気センサを用いる本発明のセンサデバイスに係る実施例の断面図である。
【図8】磁気センサ面に対して実質的に垂直な方向での分解能が改善された磁気センサを用いる本発明のセンサデバイスに係る実施例の断面図である。
【図9】本発明の実施例による分離プロセスの概略図である。
【図10】本発明の実施例による分離プロセスの第1特定実施例である。
【図11】本発明の実施例による分離プロセスの第2特定実施例である。
【図12】本発明による実施例で使用可能な凝集の動力学的研究で測定されたGMR信号である。
【図13】本発明による実施例で使用可能である、本発明の実施例において印加されている時間依存する様々な磁場の概略図である。
【図14】本発明の実施例による方法のフローチャートである。
【図15】本発明の実施例による分離プロセスの一例である。ここでH1及びH2は凝集アッセイの対向する面に配置された2つの磁場発生手段を表す。
【図16】a及びbは、本発明による実施例で使用可能な永久磁性粒子の回転速度に対するHACの周波数及び強度の効果を図示している。
【図17】a及びbは、本発明による実施例で使用可能な非永久磁性粒子の回転速度に対するHACの周波数及び強度の効果を図示している。
【図18】本発明による実施例で使用可能な磁性粒子の2ビーズクラスタの回転速度に対するHACの周波数の効果を図示している。
【図19】凝集アッセイの一例の概略図である。ここで凝集は、本発明による実施例で使用可能な個々の独立したビーズが存在する状態で測定される。
【発明を実施するための形態】
【0047】
各異なる図中、同一の参照番号は同一又は同様の素子を指し示す。
【0048】
特定の図を参照しながら、具体的実施例について、本発明を説明する。しかし本発明は参照された具体的実施例によっては限定されず、「特許請求の範囲」に記載された請求項によってのみ限定される。示された図は単なる概略に過ぎず、非限定的である。図においては、例示目的のため、大きさが誇張され、かつ正しいスケールで描かれていない構成要素がある。
【0049】
さらに、明細書及び特許請求の範囲に記載されている第1、第2、第3等の語は、同様の構成要素を区別するために用いられており、必ずしも生起順序又は時系列順序を表すものではない。よって用いられているそれらの語は適切な状況下では同義であり、本明細書で説明されている本発明は、説明すなわち例示されている順序以外の順序での動作が可能であることに留意すべきである。
【0050】
しかも、明細書及び特許請求の範囲に記載されている上部、下部、上、下等の語は、説明目的で使用されており、必ずしも相対的位置を表すものではない。よって用いられているそれらの語は適切な状況下では同義であり、本明細書で説明されている本発明は、説明すなわち例示されている順序以外の順序での動作が可能であることに留意すべきである。
【0051】
しかも本明細書に記載されたある実施例がある事項を含み、かつ別な実施例が別の事項を含んでいるが、これらの異なる実施例の事項を組み合わせたものは本発明の技術的範囲内に属すると解され、この組み合わせたものは別な実施例を形成する。このことは当業者には明らかなことである。たとえば「特許請求の範囲」の請求項では、請求項に記載された発明の実施例はどのように組み合わせられても良い。
【0052】
本明細書において与えられた説明では、多数の具体的詳細が記載されている。しかし本発明の実施例はこれらの具体的詳細がなくても実施可能であることに留意して欲しい。他に、本説明の理解を曖昧にしないように、周知の方法、構造、及び手法は、詳細に示していない。
【0053】
「発生手段」という語と「発生装置」という語は同義的に用いられて良い。また「制御手段」という語と「制御装置」という語も同義的に用いられて良い。同様に、「センサ」という語と「センサ素子」という語も同義的に用いられて良い。
【0054】
本明細書で用いられている「時間の関数」又は「長時間にわたって」という語は、連続的な場合も不連続的な場合も意味する。不連続的な場合では、所定の時間間隔が規則的又は不規則的に設けられて良い。
【0055】
本発明のために本明細書で用いられている「凝集」又は「クラスタ化」という語は、少なくとも2つの構成要素が集合することによる、塊、群、又はクラスタの形成を意味する。「凝集」及び「クラスタ化」という語、及び同様に「凝集した」及び「クラスタ化した」という語は同義的に用いられて良い。特に「凝集」は、構成要素間での特定の相互作用による塊又は群に形成に関する。
【0056】
本発明の目的のため、「磁性粒子」という語は広義に解されるべきである。広義に解されるとはたとえば、如何なる種類の磁性粒子-たとえば強磁性、常磁性、超常磁性等-だけではなく、如何なる形式の粒子-たとえば磁性球、磁性棒、磁性粒子で構成される列、又は複合粒子-も磁性粒子に含まれることである。ここで複合粒子には、磁性材料と光学活性材料を含む粒子や非磁性母体内部に磁性材料を含む粒子がある。任意で、磁性物体又は磁化可能物体は強磁性粒子であって良い。そのような強磁性粒子は、磁気緩和時間の速い小さな強磁性グレインを有し、かつ単独での粒子の磁性のため凝集する危険性が低い。磁性粒子である磁性物体又は磁化可能物体の手段によって本発明を説明する。
【0057】
本発明の目的のため本明細書で用いられている「標的」という語は、本発明による方法で検出及び/又は定量化される構成要素-つまり本発明の実施例による凝集プロセスにおいて誘導的な役割を果たす構成要素-を意味する。本発明によって用いられる標的分子の例についての非限定的なリスト明細書中に与えられる。
【0058】
本明細書で用いられている「反応チャンバ」という語は、反応又は凝集アッセイを保持する格納容器として機能する任意の装置を意味する。前記格納容器は任意で、本発明の方法の実行に用いられるデバイス又は装置から取り外し可能である。つまり反応チャンバは、デバイス又は装置と一体化した一部分であっても良いし、それだけではなく、装置上、装置内、又は装置付近に設けられて、再度トリはず可能な独立部品であっても良い。
【0059】
本明細書に用いられている「付着していない」という語は、その物体が、特定の他の物体若しくは表面と付着、接続、又は相互作用しない状態を意味する。特にその物体が、物体に固有の付着、又は物体に固有な相互作用をしない状態で、特定の化学又は生化学結合又は相互作用によって付着しない状態である。
【0060】
第1態様では、本発明は、標的誘起凝集アッセイにおいて、1つ以上の磁性粒子を含む凝集を測定する方法を供する。そのようなアッセイは反応チャンバ内で実行されて良い。当該方法は、標的に結合する能力を有する磁性粒子をアッセイ内に供する手順を有する。前記の供する手順は、前記アッセイと磁性粒子とを互いに接触させる手順を有して良い。磁性粒子は、棚から得られて良いし、又はデバイス内にすでに存在してもいても良い。磁性粒子はデバイス内で如何なる状態で存在していても良い。試料は如何なる適切な方法で得られても良いし、かつ如何なる適切な方法-たとえばシリンジを介してキャビティを充填するような方法-で反応チャンバへ導入されても良い。本発明の実施例による方法は、複数の種類のアッセイ法と共に用いられて良い。そのようなアッセイ法はたとえば、結合/未結合アッセイ、サンドイッチアッセイ、競合アッセイ、変位アッセイ、酵素アッセイ等である。そのプロセスは様々な構成要素を含んで良い。その様々な構成要素は、様々な類の分子及び生体部分-たとえばDNA、RNA、タンパク質、小分子-を有する。分子アッセイに加えて、大きな部分-たとえば細胞、ウイルス、細胞若しくはウイルスの断片、組織片、又は組織片の抽出物等-が検出又は探索されても良い。分子標的は通常、大きな部分-たとえば細胞、ウイルス、細胞若しくはウイルスの断片、組織片、又は組織片の抽出物等-の濃度及び/又は存在を決定する。磁性粒子は小さな寸法を有して良い。たとえば磁性粒子はナノ粒子であって良い。ナノ粒子とは、少なくとも1つの寸法が0.1nmから10000nmの範囲であって、好適には3nmから3000nmの範囲であって、10nmから1000nmの範囲である粒子を意味する。磁性粒子は印加磁場による磁気モーメントを得ることができる(たとえば磁性粒子は常磁性であって良い)。あるいは磁性粒子は永久磁気モーメントを有しても良い。磁性粒子は複合体であって良い。たとえば磁性粒子は、非磁性材料内部又はそれに付着する1つ以上の小さな磁性粒子で構成されても良い。粒子がAC磁場の周波数に対してゼロではない応答を生じさせる限り、つまりその粒子が磁気感受性すなわち透磁性を有している限り、その粒子は使用されうる。様々な形式-たとえば球形状、棒形状、2ビーズクラスタ-の磁性粒子が用いられて良い。磁性粒子はさらなる特性-たとえば蛍光のような光学特性-を示しても良い。磁性粒子のこれらの異なる特性は、アッセイ内での多重化に用いられて良い。ラベル多重化は、同一のセンサ範疇内で各異なる粒子についての識別可能な特性-たとえば磁気センサ素子についての識別可能な信号を生じさせる各異なる磁性材料-を用いることによって、又は、異なるセンサ範疇から選ばれた特性-たとえば磁気センサ素子及び光学センサ素子によってそれぞれ選択的に測定された磁気ラベル及び光学ラベルを組み合わせたもの-を用いることによって実現可能である。
【0061】
当該方法は、磁性粒子が凝集した粒子となるアッセイの凝集プロセスを実行する手順をさらに有する。凝集した粒子は少なくとも1つの磁性粒子を有する。クラスタの生成すなわち凝集は試料中での標的の存在の指標となり得る。なぜなら標的が凝集を誘起するからである。本発明の実施例では、磁性粒子とアッセイ粒子との凝集が行われる。センサ信号及び標的の存在を容易に補正するため、2粒子のクラスタ化が、多粒子のクラスタ化よりも好ましいと考えられる。多粒子のクラスタ化よりも2粒子のクラスタ化を好ましくするため、たとえば最終的な標的濃度をはるかに超える粒子の濃度又は粒子上での捕獲分子の濃度が用いられて良い。また原則として3ユニット以上のクラスタ形成を許さない生化学的プロセスが用いられても良い。たとえばサンドイッチアッセイ法が用いられる。このアッセイ法では、一方で磁性粒子と複数の特定の抗体が結合し、かつ他方で1つの蛍光ラベルに対して1つの抗体のみが結合する。
【0062】
本発明の実施例によると、凝集は多量の溶液中で生じて、表面への結合を必要としない。これは、アッセイの単純性、アッセイの速度、製造の単純さ、及び低コストという点で有利となりうる。
【0063】
特に高速アッセイ法、及び低標的濃度のアッセイ法では、検出される事象数を非常に低くする必要がある。本発明の実施例によると、多くのクラスタ化していないバックグラウンド中で少数のクラスタを迅速かつ正確に測定すること、及び/又は、多数のクラスタのバックグラウンド中で少数のクラスタ化していない種を検出することは不可能となる。
【0064】
当該方法は任意で、前記凝集プロセス後であって測定前に、集中及び/又は分離プロセスを用いる手順を有して良い。
【0065】
分離プロセスは凝集した粒子のサイズに依存して良い。分離プロセスの適用は、粒子を分離するための磁場-たとえば不均一磁場-を印加する手順によって行われて良い。分離プロセスのさらなる例は以降でより詳細に説明される。あるいはその代わりに分離プロセスは実行されなくても良い。
【0066】
集中プロセスは特に、測定されるべき粒子をセンサ表面付近に集中させる効果を有して良い。この特別な実施例は、前記粒子の検出方法の感度を改善させるという利点を有することが可能である。
【0067】
当該方法はまたアッセイに交流(AC)磁場を印加する手順をも有する。そのため前記アッセイは効果を測定するのに用いられる少なくとも1つのセンサ素子付近に設けられて良い。そのような交流磁場は、如何なる適切な方法によって生成されても良い。そのような適切な方法とはたとえば、ワイヤの使用、コイルの使用、磁性材料の使用、電磁石の使用などである。交流磁場はオンチップで生成されても良いし、オフチップで生成されても良い。オンチップとは発生装置がデバイス内に集積されていることを意味する。他方オフチップとはデバイスの外部にある発生装置、又はそのデバイスとは独立した発生装置を意味する。本発明の本態様による実施例では、標的誘起凝集を測定する方法は、磁性粒子がAC磁場中で回転可能であるという発見を利用している。係る回転磁場中で、磁性粒子は、印加磁場の周波数から最大で所謂臨界滑り周波数と呼ばれるある特定の周波数で回転して良い。臨界滑り周波数を超えると、磁性粒子の物理的な回転は印加磁場の回転に追随できなくなる。さらに示すように、驚くべきことに、臨界滑り周波数よりも実質的に高い周波数で、磁性粒子の物理的回転が再度増大することが発見された。換言すると驚くべきことに、臨界滑り周波数よりも実質的に高い周波数を凝集パラメータの決定に用いることができることを発見した。印加したAC磁場HACの周波数はたとえば臨界滑り周波数の10倍よりも大きくて良い。HACの周波数は、臨界滑り周波数の少なくとも10倍で、少なくとも100倍で、又は少なくとも1000倍であって良い。臨界滑り周波数は典型的には数Hzである一方で、Neel緩和によって生じる回転-つまり回転磁場の周波数よりも実質的に高い周波数での回転-は数kHz超から最大で数MHzの周波数での回転が支配的となり始める。この実施例の目的にとっては、印加されたHACの周波数は約10Hzから約10MHzであって良く、より詳細には約100Hzから約1MHzであって良い。実際に望ましい周波数は用いられる磁性粒子のサイズ/種類に依存する。最大の信号を得るためには、印加されたAC磁場の測定された効果に関する第2最大値(図18に図示されている)に近い周波数を用いるのが有利である。図18に図示された実験で用いられたビーズにとっては、望ましい周波数は600kHz周辺である。用いられる粒子のアッセイ及び種類に依存して、これは顕著に高く/低くなりうる。なぜならたとえば用いられる磁性粒子のグレインサイズに対するNeel緩和の強い依存性があるためである。臨界滑り周波数は、印加磁場の回転周波数の関数として粒子の回転を調べることによって、光学的又は磁気的に測定することが可能である。本発明の枠内では、臨界滑り周波数を決定するには2つの可能性が存在する。第1の可能性は凝集アッセイの前にビーズのバッチを評価することである。よって臨界滑り周波数は、アッセイが行われる実際のデバイス内でビーズが用いられる前、又はそのビーズが本発明による方法に用いられる前に、既知となる。あるいはその代わりに、臨界滑り周波数は、凝集アッセイもが行われるデバイス中で決定される。周波数を0Hzから臨界滑り周波数よりも高い周波数まで掃引しながら、臨界滑り周波数は回転ビーズについて光学顕微鏡を用いて決定されて良い。臨界滑り周波数はまた、印加磁場の周波数を掃引しながら回転ビーズの双極子場を測定する磁場センサを用いて決定されても良い。出力信号のロックイン検出によって、印加磁場周波数でのセンサ出力が与えられる。一旦ビーズの永久磁気モーメントが印加磁場(臨界滑り周波数)に追随できなくなると、作動する周波数での信号は減少を示す。
【0068】
よってAC磁場HACを操作する周波数は臨界滑り周波数よりも高くて良い。高い周波数での動作は臨界滑り周波数での動作よりも有利となりうる。臨界滑り周波数よりもはるかに高い周波数での動作から複数の利点が生じる。高周波数での励起によって、磁性粒子間での双極子-双極子相互作用が減少して、センサの再現性が改善される。変調技術を用いるため、信号対雑音比及び検出感度が高くなる。アッセイに印加されるように-たとえばセンサ11付近で-生成されたAC磁場は、1つ以上の磁性粒子15の磁性によって誘起される効果の測定を可能にする。そのような磁性はAC磁場によって誘起される特性であって良い。
【0069】
当該方法はまた、反応チャンバの表面に付着しない1つ以上の磁性粒子に対するHACの効果を、少なくとも1つのセンサ素子によって測定する手順をも有する。前記の測定された効果は1つ以上の凝集パラメータを表す。交流磁場は1つ以上の磁性粒子の磁性に作用して良い。凝集を表すHACの効果の測定は、試料中での標的の存在に関する情報を供する。係る情報は定性的であっても定量的であっても良い。凝集の定性的測定は、試料中に存在する1つ以上の標的の性質すなわち素性を表す。凝集の定量的測定は、1つ以上の標的が試料中にどの程度存在するのかを表す。HACの効果の測定は、その効果の物理的性質に依存して、光学測定、音響測定、磁気測定、電気測定等であって良い。たとえば光学測定は、エバネッセント放射線の検出、蛍光放射線の検出、リン光の検出、散乱光の検出などに基づいて良い。測定された効果は磁性粒子数に関連づけられて良い。分離プロセスが行われる場合には、流指数はサイズ分布に変換されて良い。
【0070】
限定ではない例示として、本発明による、標的誘起凝集アッセイにおいて粒子の1つ以上の凝集パラメータを測定する方法のフローチャートが図14に示されている。このフローチャートは当該方法の標準的手順と任意手順を表す。よって当該方法は、手順S1、手順S2、手順S4、手順S5を有し、任意で手順S3を有する。手順S1は、標的5に結合する能力を有する磁気ラベル3、15をアッセイ中に供する手順に対応する。手順S2は、1つ以上の磁性粒子を有する凝集した粒子100を生成する凝集プロセスを実行する手順に対応する。任意の手順S3は、集中及び/又は分離プロセスを実行する手順に対応する。前記分離プロセスは、たとえば分離力FSEPを印加することによって凝集した粒子のサイズに依存して良い。手順S4はアッセイに交流磁場HACを印加する手順を有する。前記アッセイ、つまりは該アッセイが測定中に維持される反応チャンバが少なくとも1つのセンサ素子付近に存在することで、誘起される効果は前記少なくとも1つのセンサ素子によって測定される。手順S5は、センサ素子によって、反応チャンバの表面とは結合しない1つ以上の磁気ラベル又は粒子3、15に対するHACの効果を測定する手順を有する。前記の測定されたHACの効果は1つ以上の凝集パラメータを表す。
【0071】
限定ではない例示として、多数の例及び当該方法の多数の標準的又は任意の手順をより詳細に説明する。
【0072】
第1例では、凝集アッセイの概略的な反応が多数図示されている。これは本発明の実施例でも用いることができるものである。図1は、磁性粒子又は磁気ラベル15がサンドイッチ構造を介して磁性粒子15bに付着する凝集アッセイを図示している。そのサンドイッチ構造は、粒子15及び15bとそれぞれ付着する結合部分2及び2bによって取り囲まれた標的5で構成される。この形式は、標的が少なくとも2つの結合位置を有するときに用いられて良い。そのような標的とは典型的には、多数のパラトープを有するタンパク質若しくはペプチド抗原、核酸(DNA,RNA)、及び多数のエピトープを有する抗体等である。しかし場合によっては、標的はたとえば、ハプテン、小さな分子薬、ホルモン、代謝体等の相対的に小さなものであっても良い。磁性粒子15はサンドイッチ構造を介して磁性粒子15bに付着する。そのサンドイッチ構造は、粒子15及び15bとそれぞれ付着する結合部分2及び2bによって取り囲まれた標的5で構成される。そのように付着した結果、凝集粒子100が生成される。2つの結合位置は明確に異なっていて良い。その場合、結合部分2及び2bは異なっている。あるいはその代わりに、2つの結合位置は同一であっても良い。その場合、結合部分2及び2bは同一である。結合部分2及び2bは磁性粒子に直接付着しても良いし、又はある中間結合基を介して付着しても良い。そのような中間結合基とはたとえば、タンパク質G、ストレプトアビジン、ビオチン、タンパク質A、IgG抗体等である。しかし本発明はこれらに限定されるわけではない。結合部分2及び2bのうちの1つ以上は、すでに粒子に付着して状態で存在しても良いし、又はその粒子から独立して存在しても良い。それらの場合、結合部分と粒子のいずれも、粒子が結合部分2及び2bへ付着することを可能にする中間結合部分を有していなければならない。よって磁性粒子15と標的5の結合は本発明の文脈においては間接的といえる。小さくて1つしか結合位置を有してない標的5(たとえば小さな分子、ハプテン、薬、ホルモン及び代謝体)については、抑制又は競合形式が代わりに用いられて良い。
【0073】
図2は、磁性粒子3が、部分4と付着して、その部分4を介して、結合部分4bによって取り囲まれた粒子3bと凝集するアッセイを図示している。部分4は標的ホモログであって良い。標的が加えられるとき、その標的は部分4bと結合して、粒子の凝集を抑制する。凝集が始まる前に標的が加えられるのは有利である。その理由は、凝集は不可逆的、すなわち凝集体は分散するのが困難となるからである。このことは、部分4と4bとを空間的に分離して、標的と部分4bとを反応させるようにすることによって実現可能である。サンドイッチ形式と同様に、結合部分4bは粒子とは独立して良く、かつ中間結合部分による反応の間に付着して良い。結合部分は標的を認識するように特別に設計される。結合部分はたとえば、抗体、核酸、アプタマー、ペプチド、タンパク質、及びレクチンのような分子であって良い。作用させるために標的を露光する前に、すでに結合部分を粒子に付着させるのが好ましいとはいえ、その成分はどのような順序で結合しても良い。粒子は最大2μmであって良く、1μm未満であることが好ましい。1μm未満であることで、表面対体積比が大きくなり、ダイナミックレンジが大きくなる。凝集は多数の粒子が互いに結合して生じ、その結果凝集100となる。
【0074】
図3は、部分4が標的ホモログであって、標的5が加えられるときに、標的5が部分4bと結合して、粒子の凝集を抑制するアッセイを図示している。よって、本発明の文脈内においては、凝集プロセスは、凝集の抑制を調べるプロセスを有利に含む。
【0075】
第2の特別な組の例では、各異なる検出手法による効果の測定が図示されている。しかし本発明はこれらに限定されるわけではない。一例では、放射性ラベル-たとえば発光又は蛍光ラベル-が、用いられる磁性粒子内に埋め込まれているか、又はその磁性粒子に付着している。たとえば抗原は、蛍光磁性粒子と結合して良いし、又は蛍光粒子と非蛍光粒子の何れとも結合しても良い。蛍光磁性粒子の励起は、放射線源を用いることによって行われて良い。放射線源を用いるとはたとえば、前記ラベルの光学的な検出を可能にする集光レーザービームによるか、又はエバネッセント場励起によることである。検出は、如何なる適切な方法によって行われても良い。適切な方法とはたとえば、共焦点検出の使用又は高NAレンズの使用である。蛍光磁性粒子を用いることによって、励起及び/又は発光波長がそれぞれ異なる様々な蛍光体を用いることによる多重化が可能となる。別な実施例として、検出は、磁性粒子ラベルと結合した蛍光ラベル(最初は離れていても良いし、又は非磁性粒子に付着若しくは埋め込まれていて良い)を用いることによって光学的に行われても良い。この例における凝集の測定は磁性粒子のクラスタ形成には基づいておらず、磁性粒子の蛍光の増大に基づく。たとえば蛍光又は磁性粒子ラベルのいずれかが付された抗原が混合される。続いて抗原に固有な抗体を含む試料に曝露することで、蛍光ラベルが磁性粒子ラベルと結合する。この実施例では、磁性粒子が非結合センサ表面に対して作用し、表面に固有な蛍光ラベルの検出を行うことができる。表面に固有な蛍光体の励起は、放射線源を用いて-たとえば集光レーザービームを用いるか又はエバネッセント場によって-行われて良い。検出は、共焦点検出(表面敏感な検出法)によるか、又は高NA集光レンズ(表面敏感ではない検出法)を用いて行われて良い。この方法を用いることによって、余剰のラベル及び試料流体自体からのバックグラウンド蛍光を減少させ、さらには最小限に抑制することができる。粒子の様々なラベル付与に基づくアッセイの多重化は、様々な蛍光ラベルを利用することが容易に予想できる。光学検出はまた表面増強共鳴ラマン分光(SERRS)法によって行われても良い。SERRSは、光学ラベルが付された分子又は種のコロイド粒子-たとえば銀粒子-への吸着によって、その分子又は種を検出する非常に敏感な方法である。光学ラベルとは、コロイド粒子が制御されながらクラスタを形成するときにプラズモン及び色素共鳴を起こす適切な色素分子(たとえばローダミン)である。磁性粒子は金属コーティングを備えた状態で存在することが知られている。たとえば抗原(標的すなわち抗体に結合する)がそのような銀でコーティングされた磁性粒子と結合しながら抗原もまた適切な色素と結合するとき、抗原に固有な抗体は、色素を銀コーティングされた磁性粒子と結合させる。磁気作用は色素共鳴を生じさせるクラスタ/ピラーを生成する。SERRSは、エバネッセント場での非結合センサ表面への作用後に検出されて良い。そのような設定では、抗体の検出は、流体洗浄手順を省いた単一チャンバ内で行われて良い。その理由は、検出は表面固有であり、溶液からの未結合色素による妨害を受けないからである。
【0076】
他の例では、たとえばホールセンサ、又は磁気抵抗センサ-たとえばGMR、TMR、若しくはAMRセンサ-のような磁気センサが用いられて良い。特別な例では、磁気センシングは、印加AC磁場に対して特別な周波数を用いることができるという利点を得ることができる。低周波数領域-つまりたとえば100Hz未満-では、磁気センサ素子の1/f雑音が支配的となる。1/f雑音は電流のポイント間揺らぎに起因し、かつ周波数の逆数に比例する。磁気抵抗センサでは、1/f雑音は自由層での磁気揺らぎに起因する。発生したAC磁場の周波数が100Hz以上であるとき、支配する1/f雑音は、従来技術と比較して顕著に減少する。その結果、信号対雑音比(SNR)が改善される。それは、AC磁場の周波数が、熱ホワイト(Nyquist)ノイズレベルが1/f雑音レベルよりも支配的となる値にまで増大するときに有利となる。特許文献1で述べたように、ある特定のコーナー周波数fc≒50kHzを超えると、GMRセンサの熱ホワイトノイズが支配的となる。ホワイトノイズレベルは理論的に到達可能な検出限界を制限してしまう。
【0077】
図4及び図5は、本発明の実施例による典型的なセンサデバイスの断面図である。これらの実施例では、磁気センサが用いられているが、図4では磁性粒子15は存在しないが、図5では磁性粒子15は存在する。例示目的のため、以降本発明はバイオセンサについて説明する。バイオセンサは試料中での磁性粒子を検出する。試料とはたとえば、流体、液体、気体、粘弾性媒体、ゲル、又は細胞組織試料である。当該デバイスは、基板10及び回路-たとえば集積回路-を有して良い。当該デバイスの測定面が、図4及び図5において破線にて示されている。基板は、半導体材料、ガラス、プラスチック、セラミック、シリコン-オン-ガラス、シリコン-オン-サファイアを有して良い。回路は、センサ素子としての磁気抵抗センサ、及び導体12である磁場発生装置を有して良い。磁気抵抗センサ11はたとえば、GMR、AMR、又はTMR型センサであって良い。磁気抵抗センサ11はたとえば、細長-たとえば長くて細い-の幾何学形状を有して良い。しかし本発明はこの幾何学形状に限定されるわけではない。センサ11及び導体12は、距離gの範囲内で互いに隣接して設けられて良い(図4)。センサ11と導体12との間の距離gはたとえば1nmから1mm-たとえば3μm-であって良い。図4及び図5では、磁気センサデバイスがxy平面内に導入される場合に、磁気センサ11が主として磁場のx成分を検出する-つまりx方向が磁気センサ11の敏感方向である-ことを示すために、座標系を導入する。図4及び図5の矢印13は、本発明による磁気抵抗センサ11の敏感なx方向を表す。磁気センサ11はセンサデバイスの面に対して垂直な方向-図中の垂直方向すなわちz方向-にはほとんど感受性を示さないので、導体12を流れる電流によって発生する磁場14は、磁性ナノ粒子15が存在しないセンサ11によっては検出されない。磁性ナノ粒子15が存在しないセンサ11に電流を印加することによって、センサ11の信号が校正されて良い。この校正は測定前に行われることが好ましい。磁性材料(これはたとえば磁気イオン、分子、ナノ粒子15、固体材料、又は磁気成分を有する流体であって良い)が導体12に隣接しているとき、その磁性材料は図5の磁力線16によって表される磁気モーメントmを生じさせる。磁気モーメントmは双極子漂有磁場を発生させる。双極子漂有磁場はセンサ11の位置で面内磁場成分17を有する。よってナノ粒子15は磁場14を、矢印13で表されたセンサ11の敏感なx方向に偏向させる(図5)。磁場Hxのx成分-これはセンサ11の敏感なx方向である-は、センサ11によって検知され、かつ磁性ナノ粒子15の数Nnp及び導体を流れる電流Icに依存する。
【0078】
第3の特別な例では、本発明の実施例によるセンサユニット及び対応するセンシング方法が記載されている。これらはセンサ面に対して垂直な方向において良好な分解能を有する。図6、図7、及び図8は、センサ面に対して垂直な方向において分解能が改善された前記センサユニットに係る3つの実施例の断面図である。磁性粒子15の表面での濃度と全体での濃度とを区別するため、センサ素子11の面に対して垂直な方向での分解能-これは図4で導入された座標系のz方向に相当する-が必要となる。図6に図示されているように、導体12a及び導体12bの磁場14a及び磁場14bに対して、導体12c及び導体12dは磁場14c及び磁場14dをそれぞれ発生させる。4つの導体12a、12b、12c、12dを起源とするセンサ信号を組み合わせることによって、x方向及びz方向での磁性粒子15の濃度に関する情報を得ることが可能となる。z方向での分解能は、磁気センサ素子11の面に対して垂直な方向-垂直方向すなわちz方向として表されている-に、より多くの導体を設けることによってさらに改善することが可能である。これは図7の実施例において図示されている。導体12a及び導体12bは、磁気センサ11の隣の両側に設けられていて、センサ素子11の面に対して垂直な方向での高さは同一である。導体12c、導体12d、導体12e、及び導体12fは、基板10とセンサ11の間に設けられている。導体12c及び導体12dのz方向での位置は、導体12e及び導体12fのz方向での位置とは異なる。繰り返しになるが、様々な導体12a〜12fから生じるセンサ信号の組合せは、全体、表面付近、及び表面での磁性粒子15の濃度に関する情報を与えることができる。さらに他の実施例では、図8に図示されているように、基板10と磁気センサ11との間のある高さに位置している導体12c及び導体12dを流れる電流は、互いに反対の方向を有する。このようにして、導体12c及び導体12dはx方向において強い磁場勾配を発生させることができる。この実施例は空間分解能を改善にとって有利となりうる。
【0079】
第3の特別な例では、凝集した磁性粒子のサイズに依存する分離プロセスを実行する任意の手順がより詳細に記載されている。図9は分離プロセスの概略図である。この分離プロセスは、標的誘起凝集アッセイにおいて磁気ラベル15の1つ以上の凝集パラメータを定量的に測定する本発明に実施例において用いることができる。係る手順は、ラベルを供した後であって凝集粒子100を生成する凝集プロセスを実行した後に行われて良い。分離プロセスの一例では、分離力FSEPが1つ以上の空間方向に印加されて良い。その分離力FSEPは凝集粒子100のサイズに依存する。分離力FSEPは有利となるように凝集粒子100に印加される不均一磁場であって良い。しかし他の種類の分離も可能である。他の種類の分離とはたとえば、塊によって力を分離する遠心力を発生させる回転、静水圧の使用、静電分離の使用(業種粒子100上に電荷を必要とする)である。分離に用いられる様々な力の使用に加えて、あるいはその代わりに、サイズ排除フィルタが用いられても良い。大抵の凝集アッセイにとって、凝集粒子100に含まれる磁性粒子15の数は、凝集粒子100のサイズに直接依存-たとえば比例-する。とはいえ常にそうだというわけではない。不均一磁場が分離に用いられる場合、磁場は、AC磁場を発生させる手段と同一の手段によって発生されても良いし、あるいはその代わりに、専用の磁場発生装置-たとえばその目的のために磁気センサ素子11の近くに配置されている-によって発生されても良い。
【0080】
図10は本発明による分離プロセスの一実施例である。図10に図示されているように、この実施例では、凝集粒子100のサイズ分布の測定を支援するため、複数のセンサ素子11が分離された凝集粒子100に対して備えられている。前記分離の結果、一の空間方向において様々なセンサ素子11について空間的な分離が実現されるが、同様に2又は3の空間次元においてもその分離を行うことができる。
【0081】
図15は、本発明の方法による実施例で用いることが可能な分離プロセスの実施例を図示している。各異なるサイズの磁性粒子-たとえば単一の粒子に対するクラスタ粒子、又は小さなサイズの粒子に対する大きなサイズの粒子-は、磁気泳動分離を用いて分離されて良い。磁気泳動分離とは、磁場中での磁性粒子の速度が磁力に対する感受率に直接比例するという事実に基づくものである。たとえば凝集の結果生じる磁性粒子のクラスタは、単一の磁性粒子よりも感受率が大きくなるので、磁気泳動は、クラスタ化した磁性粒子を単一磁性粒子から分離するのに用いることができる。非結合表面-たとえばセンサ表面又は反応チャンバの表面-への作用すなわち沈殿の際、センサ信号の変化が時間的に観測されて良い。クラスタは磁場中でより速く沈殿し、又はより速く移動するので、クラスタは速く表面に到達する。従って非結合表面(付近)で磁性粒子を時間的に測定することで、クラスタ形成に関する信号となる。凝集パラメータの測定は分離手順を含む。クラスタ化したビーズから単一の粒子を再現性良く分離するには、磁気泳動による粒子の分離の原理が、たとえばGMR及びFTIR検出用に開発されたカートリッジ内で用いられて良い。図15は反応チャンバに係る実施例の概略図を示す。この反応チャンバでは、H1で表される上部コイルを反応チャンバの最後部に備え、かつH2で表される下部コイルをセンサ表面の下に備える。分離は、最初上部コイルをオンにすることによって反応チャンバの最後部にビーズを集めることによって実現されて良い。下部コイルをオンにしながら上部コイルをオフにする場合、磁性粒子はセンサ表面へ向かって移動する。所定の時間において、2ビーズのクラスタがセンサを覆って、かつ単一クラスタが最後部-センサ間の距離の半分未満の地点に位置するときには、上部コイルが再度オンにされる。2ビーズクラスタはさらにセンサ表面へ向かって移動する一方で、単一ビーズは反対に最後部へ向かって移動する。この方法は磁性粒子クラスタの端点測定を可能にし、かつ動力学的検出を必要としない。同様に、単一磁性粒子は、クラスタ化した磁性粒子から磁気的に分離されて良い。その分離は、単一ビーズが非結合表面に到達する一方で、クラスタ化したビーズはセンサ表面とは異なる地点で収集されるようにして実現される。これを実現するための一の方法は、上述と同一の磁気泳動粒子分離を利用することが考えられるが、他の方法もある。最初にビーズがセンサ面上に収集され、続いて下部コイルをオフにして上部コイルをオンにする。所定の時間後、2ビーズクラスタがセンサを覆って、かつ単一クラスタが最後部-センサ間の距離の半分未満の地点に位置するときには、下部コイルが再度オンにされる。2ビーズクラスタはさらに最後部へ向かって移動し、単一ビーズは反対にセンサへ移動する。この例は「1-xアッセイ」である。なぜなら標的が存在することでクラスタが生成され、センサ面で検出される単一磁性粒子の量が減少するからである。係るアッセイは本質的に感度が低いため、この形式は恐らく好ましくない。この実施例の利点は、凝集粒子ではなく減少した単一磁性粒子が検出されるため、多数のクラスタが生成されても定量化が妨害されないことである。本例のいずれの場合でも、異なるサイズの磁性粒子の磁気泳動分離は、集積ワイヤを用いることによって実現されても良い。よって粒子の分離はセンサ表面内で起こる。クラスタ又は単一ビーズが-どちらなのかは選ばれる実験の種類に依存する-検出スポット上(GMRの場合であれば検出ワイヤの上方で、FTIRの場合であればレーザースポットの上方)で収集される。その一方で、単一又はクラスタ化した磁性粒子はそれぞれ、検出面から十分異なる地点であってセンサ表面内のあるスポットで収集される。
【0082】
図11は本発明の分離プロセスの別な実施例である。この実施例では、単一のセンサ11が、印加される分離力FSEPに対して備えられ、それにより時間の関数として測定することで、凝集粒子100のサイズ分布が明らかになるか、少なくとも示唆される。前記分離は時間的な分離として評価されて良い。センサ11による時間依存測定もまた凝集の動力学の測定に用いられて良い。図12は副甲状腺ホルモンの動力学的調査の例である。この例では、最初に4nMの検体が、PTHに対する抗体を含む粒子に加えられる。測定は、図11と同様に60分間行われる。粒子は標的(200nm)の存在下で凝集して、弱い磁気作用下で、検体を含まない試料よりも速く沈殿する。その結果十分に大きなGMR信号が発生する。分離力FSEPは交流(AC)磁場によって作られる。
【0083】
第5の特別な例では、凝集プロセスが任意で以下にして改善され得るのかが図示されている。当該方法は凝集改善磁場(HENH)を印加する手順を有する。凝集改善磁場は、分離用磁場の前又はそれと同時に印加されて良い。アッセイ全体にわたって不均一磁場(HENH)を印加することによって、磁性粒子が作用して、凝集が可逆的な非選択的相互作用によって増大する。結合部分を含む粒子は、磁気作用にとって溶液中を移動することが可能で、それにより結合部分と出会う標的数が増大する。これは、アッセイ速度又はアッセイの感度を改善するために用いられて良い。たとえこれが凝集中に行われて良いとしても、可能な限り多くの結合部分を曝露させるため、作用は凝集前に行われることが好ましい。これは、最初に粒子15-結合部分2の複合体へ標的5を曝露し、その標的を作用させて、その標的を粒子15b-結合部分2bの複合体へ曝露し、又はその逆を行うことによって実現されて良い(図1参照)。同様の方法は抑制形式でも可能である。代替実施例では、凝集の形式の改善は、標的5が結合部分2及び2bと結合した後に、磁性粒子15と他の磁性粒子15bとの衝突を改善することによって実現されて良い(図1参照)。関与する磁力は、これ及びこれまでの改善された実施例と同一である必要はないが、一部の実施例については、磁力は同一であって良い。何れの種類の改善も同時に行われて良いとはいえ、第1形式の改善を実行して、その後第2形式の改善を実行することが好ましい。粒子の磁化は作用にとって必要である。この結果、外部磁場の存在下で粒子の凝集が可逆的となりうる。クラスタが互いに永続的な非選択的結合を行うのを防ぐ緩衝溶液条件下でアッセイを実行するのが非常に好ましい。緩衝溶液は、非選択的な結合を防止する少なくとも1%のタンパク質(アルブミン、グロブリン、ゼラチン、カゼイン等)、及び/又は少なくとも0.05%の浄化剤(Triton(登録商標)X-100、Tween20/80(登録商標)等)、及び/又はポリマー(PVB、PEG等)を含んで良い。上述したように分離は、アッセイに磁場HSEPを印加することによって実行されて良い。分離用磁場HSEPとの改善用磁場HENHのいずれもある条件に服する。その条件とは、磁場が強すぎる、又は磁場が強すぎる空間勾配を有することで、測定結果を改変させてしまう不可逆的な非選択的結合を防止できないことがないような条件である。300nmのマグネタイト粒子では、本発明は、1×104A/m、1×105A/m、又は1×106A/mの磁場強度の上限が適している一方で、勾配の上限は、1×107A/m2、1×108A/m2、又は1×109A/m2であって良いことを発見した。典型的には分離用磁場HSEPの大きさはこれらの上限未満のオーダーである。図13は、時間tに対して連続的に依存する、本発明の実施例による様々な磁場を用いている様子を概略的に図示している。3つの磁場がそれぞれ互いに異なる方向を有して良いので、磁場の数値のみが示されている。最初に凝集プロセスを改善するための磁場が印加される。最終的にHACが印加される。磁場HSEPと磁場HENHは、長時間にわたって一定であることが示されているが、これらは時間依存であっても良く、1つ以上の凝集パラメータを測定するための磁場HACのように方向が交互に変化するものであっても良い。
【0084】
特定の例の別な組が、アッセイへ印加されるAC磁場に関する任意の特性を図示している。図16〜図18は、例として、粒子の回転が、滑り周波数と呼ばれる所与の周波数で、及びその滑り周波数よりも実質的に高い周波数で得られる現象を図示している。ただし本発明はこれに限定されるわけではない。図16Aは、印加された回転磁場の角度周波数の関数として単一磁性粒子の回転周波数を図示している。矢印は臨界滑り周波数を表す。図16A、図16B、図17A、及び図17Bに図示されたデータは、大きな非永久磁化率及び小さな永久磁化を有する直径2.8μmの磁性粒子について得られたものである。図16Aの例では、回転磁場を発生させる底部電流(Ibottom)は0.046アンペア(A)であった。図16Bは、回転磁場を発生させる電流ワイヤへ印加される電流の関数としての臨界滑り周波数を図示している。100mAの電流は本例の磁性粒子の位置での2mTの磁場に相当する。線形的な振る舞いは、磁気トルクが磁性粒子中での永久磁化に起因していることを示唆している。図17Aは、印加された回転磁場の角周波数の関数としての単一磁性粒子についての光学的に測定された回転周波数を図示している。この図では、広範囲の周波数を表すためにx軸には対数スケールがとられている。永久磁化の効果は低周波数範囲(約10Hz未満)で見られる。非永久磁化の効果は高周波数範囲(最大約10MHz)で見られる。図17Bは周波数40kHzでの電流ワイヤへ印加される電流の関数としての磁性粒子の回転周波数を図示している。回転磁場中での磁性粒子の2乗の振る舞いは、磁気トルクが磁性粒子の感受率-つまり非永久磁化-に起因していることを示唆している。図17及び図18は、予期しない発見を表している。それは、臨界滑り周波数よりも高い周波数では、単一磁性粒子と2つの磁性粒子のクラスタのいずれについても粒子の回転周波数が増大していることである。図18の2重矢印は、臨界滑り周波数よりもはるかに高い周波数で動作する係るAC磁場の影響下での磁性粒子の回転周波数が、その臨界滑り周波数での回転周波数よりも高い最大値にまで上昇することを示唆している。後者は電流に依存する。低周波数では、回転周波数は印加磁場強度に対して1次関数的に増大する。その一方で高周波数では、回転周波数は印加磁場強度に対して2乗で増大する。よってある特定の磁場強度よりも大きな磁場強度では、臨界滑り周波数は最大到達可能周波数よりも低い。好適には、凝集粒子又は磁性粒子クラスタは、磁気的に形成された磁性粒子の鎖(図19)の主軸とは一致しない回転軸について回転する。このようにしてクラスタは、各独立した粒子の鎖の存在下でさえも特定可能となる。
【0085】
表面へ結合していない場合、クラスタ及び単一粒子は、磁気泳動分離及び検出後に再度バルク溶液中へ分散されて良い。本発明のこの特性のため、本発明ではアッセイのリアルタイム観測が可能となる。これはたとえばPCRのようなリアルタイムでの核酸の増幅にとって興味深い。バルク溶液中でのクラスタの再分散及びPCR生産物の溶解は、PCRでの指数関数的増幅にとって必要な、粒子へのプライマーの再使用を可能にする。
【0086】
本発明による実施例の利点は、磁性粒子をラベルとして利用でき、かつ非結合センサ表面付近で選択的検出が可能となることである。このため、親和性が低い標的-たとえば低親和性結合抗体-の検出及び流体の洗浄手順の省略が可能となる。
【0087】
未処理試料でも検出が可能となるような磁性粒子を用いることは実施例の利点である。磁性粒子を用いる本発明の実施例の利点は、流体の洗浄手順を必要としないことで、そのため速度と容易性が増大してアッセイの感度が増大する。磁性粒子を用いる実施例の利点はさらに、作用手順が、結合可能性を増大させるように供されて良いことである。
【0088】
本発明による実施例の利点は、センサ表面への結合を必要としないことであり、そのため特別なセンサ表面の改質又は誘導体化を必要としないことである。
【0089】
本発明の他の態様は、上述した凝集を測定する方法を実行する道具一式を供することである。当該道具一式は特定の標的の存在下で凝集アッセイを実行するための1つ以上の磁性粒子を有する。当該道具一式は、凝集アッセイが実行される反応チャンバをさらに有して良い。特に当該道具一式では、1つ以上の磁性粒子3、15及び前記液体が事前に混合されて反応チャンバ内に含まれて良い。この特別な実施例は、標的の存在について検査する際、その検査を行う必要のある試料しか加えなくて良いことである。アッセイの速度を上げるため、並びにアッセイの感度及び/又は再現性を高める操作をこれ以上行う必要はない。
【0090】
本発明の態様は、標的誘起凝集アッセイにおいて1つ以上の凝集パラメータを測定するデバイスを供することである。当該デバイスは、測定中アッセイが維持される反応チャンバの表面に付着しない凝集粒子100を生じさせる凝集プロセスを実行する凝集手段を有する。凝集粒子は1つ以上の磁性粒子を有する。当該デバイスはAC磁場をアッセイへ印加する磁場発生手段をさらに有する。係る磁場は、アッセイを維持してそのアッセイによって磁場検知されるようにする反応チャンバへ印加される。アッセイ、及び測定中にそのアッセイが維持される反応チャンバは、印加磁場の効果が検知される少なくとも1つのセンサ素子の近くに設けられて良い。少なくとも1つのセンサ素子は、凝集粒子100に対するAC磁場の効果を検出するための適切な技術に基づいて良い。その適切な技術とはたとえば、光学効果を測定する光検出器、磁気効果を検出する磁気検出器、電気効果を検出する電気検出器、又は音響効果を検出する音響検出器であって良い。磁気検出器が用いられる場合、その検出器はホールプローブ、又はGMR、AMR、若しくはTMRのような磁気抵抗検出器であって良い。少なくとも1つのセンサ素子は、凝集粒子に対するAC磁場の効果を測定するように備えられている。その測定された効果は1つ以上の凝集パラメータを表す。本発明のこの態様の一実施例では、当該デバイスは、凝集粒子のサイズに依存して分離プロセスを実行する分離手段をさらに有する。特別な実施例では、分離手段は、不均一な分離用磁場HSEPを発生させるように備えられた磁場発生装置であって良い。分離手段は、上述した様々な分離プロセスの機能を有する構成要素であって良い。他の特別な実施例では、当該デバイスは、単一磁性粒子の滑り周波数よりも実質的に高い周波数で動作するように発生したAC磁場の周波数を制御する制御手段を有して良い。印加したAC磁場の周波数は、少なくとも10倍、少なくとも100倍、又は少なくとも1000倍大きくて良い。
【0091】
本発明の実施例の方法は、如何なる適切な形態で実施されても良い。如何なる適切な形態には、ハードウエア、ソフトウエア、ファームウエア又はこれらの結合が含まれる。本発明(の一部の事項)は、1つ以上のデータプロセッサ及び/又はデジタル信号プロセッサで動作するコンピュータソフトウエアとして実施されても良い。本発明の実施例の素子及び構成要素は、任意の適切な方法で物理的、機能的、及び論理的に実施されて良い。特に機能は単一ユニット、複数のユニット、又は他の機能的ユニットの一部として実施されても良い。そのようなものとして本発明は、単一のユニットで実施されて良いし、又は各異なるユニットとプロセッサ間で物理的及び機能的に分配されても良い。
【0092】
本発明の実施例のデバイス、方法、及びシステムは、センサ多重化(つまり異なるセンサ及びセンサ表面の並列使用)、ラベル多重化(つまり各異なる種類のラベルの並列使用)、及びチャンバ多重化(つまり各異なるチャンバの並列使用)に適している。
【0093】
本発明に記載されたデバイス、方法、及びシステムは、迅速で、耐久性を有し、かつ容易に使用できる、小さな試料体積用のポイントオブケアバイオセンサに用いられて良い。反応チャンバが、小型読み取り装置と共に用いられ、1つ以上の磁場発生手段を有し、かつ1つ以上の検出又は測定手段を有する使い捨て装置であって良いことである。また本発明のデバイス、方法、及びシステムは、自動化された高処理能力検査で用いられても良い。この場合、反応チャンバはたとえばウエルプレート又はキューベットのような自動装置に適合したものである。
【0094】
本発明の実施例について記載した凝集アッセイは、高速処理システム-たとえばマイクロタイタープレート又はガラス瓶を備えたシステム及びフローシステム(フローサイトメトリー)-にとって非常に適している。しかもクラスタアッセイはアッセイのリアルタイム観察を行う能力を有する。これはたとえばリアルタイムPCRにとって興味深い。
【0095】
しかも本発明の実施例のデバイス及び方法はクラスタの高並列検出に適している。多くのクラスタの検出は並列に行われて良い。これにより、その手法は迅速かつ正確な測定にとって適したものとなる。
【0096】
本発明によるデバイスについて、好適実施例、特定の構造、構成、及び材料が論じられているとはいえ、本発明の技術的範囲から逸脱することなく、様々な詳細及び形式を変化させたものや修正したものを設計することが可能であることに留意すべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学、化学、又は生化学センシングの分野に関する。より詳細には本発明は、標的誘起アッセイにおいて磁気ラベルの1つ以上の凝集パラメータを定量的に測定する方法に関する。本発明は、対応する道具一式及び対応する装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年の努力は、粒子が中に存在するより大きな混合物又は溶液での標的の存在-場合によっては濃度のレベル-を決定する測定手法へ向けられてきた。通常は比較的低濃度のある特定の有機化合物を測定することが必要である。医療においては、たとえば、大抵の場合溶液中で所与の種類の分子濃度を決定することは非常に有用である。そのような分子は、たとえば血液や尿のような生理液中に自然に存在するものや、薬のような生体系へ導入されるものである。
【0003】
特定の関心化合物の存在を検出するのに用いられる一の一般的な方法はイムノアッセイ法である。この方法では、所与の分子種-一般的にはリガンドと呼ばれる-の検出は、関心リガンドに対して選択的に結合する第2分子種-通常は抗リガンド又はレセプタと呼ばれる-を用いることによって実現される。関心リガンドの存在は、抗リガンドに対するリガンドの結合程度を、たとえば光学的手法によって、直接的又は間接的に、測定又は推定することによって検出される。リガンドは標的又は検体と考えることができる。
【0004】
多数のイムノアッセイ法の方式が存在する。全ての方式は結合を含むが、全てが凝集を含むわけではない。凝集しない場合では、一のラベルが一の標的に付着する。凝集アッセイ法は迅速でかつ検出が容易である。よって、容易な検出及び迅速な-たとえばその場での-結果が必要なときには、凝集アッセイ法が用いられる。
【0005】
大きな粒子の光学検出に基づく定量的な検査はそれほど敏感ではない。なぜならそのような検査は、濁度(試料を透過する光)又は比濁(試料で散乱される光)の測定に依拠し、これらはいずれも特定物質からのバックグラウンド干渉による影響を受けるためである。従って、光学方法は、細胞を含む全血や、食物粒子を有している恐れのある唾液のような未処理試料での使用には適さない。
【0006】
その代わりに、マグネタイト及び不活性母体材料から作られる磁性粒子が、生化学の分野では長らく用いられてきた。係る磁性粒子のサイズは、直径にして数nmから最大数μmの範囲で、15%〜100%のマグネタイトを含んで良い。係る磁性粒子は通常、超常磁性粒子と表されるか、あるいは大きなサイズ範囲では磁気ビーズと表される。通常の方法は、粒子の表面を、ある生物学的に活性な材料でコーティングすることである。それにより、係る粒子は、特定の微視的対象物すなわち関心粒子-たとえばタンパク質、ウイルス、細胞、又はDNA断片-と強く結合する。磁性粒子は「ハンドル」と考えることができる。この磁性粒子が、磁気勾配-通常は強い永久磁場によって供される-を用いることによって、対象物を移動又は固定させることが可能だからである。
【0007】
これまで、そのような磁性粒子は、基本的には結合した対象物を固定するのに用いられてきた。しかし最近の研究では、結合した複合体の存在を検出するタグとしてその粒子が利用されてきている。歴史的には、結合した複合体の検出及び定量化は、関心複合体と結合する、放射性、蛍光性、又はリン光性分子の手段によって実現されてきた。しかしこれら従来のタグを付す手法は様々な周知の欠点を有している。
【0008】
他方、小さな体積の磁性粒子からの信号が非常に小さいため、研究者たちが、多く用途にとって最も磁場に対して敏感であることがよく知られている量子干渉素子(SQUID)に基づいて検出器を構築することを試みてきたのは当然のことである。しかしSQUIDは非常に敏感な測定素子であるが、とりわけ極低温当たりまで冷却されなければならないという欠点に悩まされる。
【0009】
最近、本願出願人によって、改善された磁性粒子センサデバイスが、特に特許文献1及び2において開示された。これらの磁性粒子センサデバイスは、測定を室温で行うことができる一方で、同時に十分高い信号対雑音比を有するという利点を有している。
【0010】
最近、特許文献3が、決定されるべき量又は他の固有な特徴を有する検体と磁性粒子の結合物を定量的に測定する装置を開示した。その磁性粒子はその決定されるべき検体と複合して、数百kHzの磁場中で励起される。それにより磁性粒子の磁化は、双極子が自身の磁場を生成するように、励起周波数で振動する。これらの磁場は、たとえばグラジオメータ内で作製されたセンシングコイルのような少なくとも1つのコイルと誘導結合する。センシングコイルからの出力信号は、磁性粒子の結合又は凝集にとって有用な出力信号を与えるように、適切に増幅及び処理される。しかしキロヘルツ領域振動の領域での動作は不必要な雑音の寄与を導入してしまう恐れがあり、さらには試料を移動-特に回転-させる用途では設計が複雑になる。なぜなら試料ホルダの回転は、その回転が測定と励起とを切り離すのに用いられるときには、相対的に精密でなければならなくなるからである。それに加えて、試料ホルダが回転することで、磁気測定直前、中、直後を問わず、試料操作の補助は容易ではなくなる。しかもサイモンド(Simmonds)他によって用いられたコイル技術はあまり敏感ではないので、検出のために相対的に多量の磁性材料が必要となる。その結果、試料容積を大きくすることが必要となる。結局サイモンド他は、クラスタ状態の磁性材料と単一粒子の磁性材料の両方の総量しか測定しておらず、実効的にはクラスタ状態の磁性材料と単一粒子の磁性材料を分けないので、凝集パラメータの測定は不可能である。
【0011】
磁性粒子は、ある周波数-所謂臨界滑り周波数-の回転磁場中で回転できることも知られている。臨界滑り周波数よりも高い周波数では、磁性粒子の回転は印加磁場の回転に追随できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2005/010542号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/010543号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6437563号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
たとえ凝集パラメータを測定する方法が多数存在するとしても、より効率的で、かつ/又はより信頼性が高く、かつ/又はより敏感な方法が必要である。たとえば、多くのクラスタを形成しない種のバックグラウンド内における少数のクラスタを形成する種の検出、及び/又は、多くのクラスタを形成する種のバックグラウンド内における少数のクラスタを形成しない種の検出は、凝集アッセイ法における課題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は凝集パラメータを測定する良好な方法及びシステムを供することである。本発明による実施例の利点は、上述した単独の従来技術又は従来技術の組合せによる欠点を緩和、又は解決することである。この目的は、本発明による方法及びデバイスによって実現される。本発明は、反応チャンバ内で実行される標的誘起アッセイにおいて1つ以上の粒子の凝集を測定する方法を供する。当該方法は、前記反応チャンバ内のアッセイに交流磁場(HAC)を印加する手順、及び、前記少なくとも1つのセンサ素子によって、前記反応チャンバの表面に付着していない磁性粒子に対する前記HACの効果を測定する手順をさらに有する。ここで測定された効果は1つ以上の凝集パラメータを表す。本発明による実施例の利点は高い処理能力を実現できることである。本発明による実施例の利点は高い感度を実現できることである。本発明による実施例の利点はクラスタの非選択的形成を最小限に抑制できることである。アッセイ、すなわちそのアッセイを維持できる反応チャンバは、センサ素子の付近に存在して良い。磁性粒子はセンシング方法によって直接的に検出されて良い。あるいは磁性粒子は検出前にさらに処理されても良い。さらなる処理の例は、材料を追加すること、又はその磁性粒子の(生)化学若しくは物理的特性を改質して検出を助けることである。
【0015】
当該方法は、センサ表面付近に磁性粒子を集中させる手順をさらに有して良い。前記集中は、磁性粒子を束縛するようにセンサ表面引き付けることによって実行されて良い。磁性粒子の検出は、回転磁場を印加し、かつたとえば光学イメージングによる回転するクラスタを特定することによって行われて良い。
【0016】
当該方法は、凝集した粒子のサイズに依存した分離プロセスを実行する手順をさらに有して良い。本発明による実施例の利点は、様々なサイズの粒子の評価を別個に行うことが可能なので、アッセイに対するクラスサイズの影響を緩和又は回避できるため、精度が改善される。本発明による実施例の利点は、複数のセンサ素子は、その各々がアッセイの付近にセンサ表面を有するように配置されることで、本発明の実施例による分離プロセスから得られる定量的な凝集パラメータが与えられることである。特に複数のセンサが、分離プロセスから得られる凝集粒子の様々なサイズの割合を測定する凝集アッセイに関して配置されて良い。
【0017】
交流磁場HACは、単一磁性粒子の臨界滑り周波数よりも顕著に高い周波数を有して良い。その周波数は、前記臨界滑り周波数の少なくとも10倍、100倍、又は1000倍よりも大きくて良い。あるいはその代わりにアッセイは、臨界滑り周波数(付近)で実行されても良い。本発明による実施例の利点は、当該方法が広範囲の印加磁場周波数で適用可能なことである。
【0018】
効果を測定する手順は、磁気信号、光信号、若しくは電気信号、又はこれらの結合を測定する手順を有して良い。光信号-たとえば発光信号-を測定する手順は、光学的手法-たとえば散乱、エバネッセント場技術、広視野可視化顕微鏡、共焦点レーザー走査顕微鏡等-を用いて粒子の光学特性を検出することであって良い。前記測定はたとえば磁気光学信号又は電磁信号の測定であっても良い。
【0019】
アッセイは少なくとも1つのセンサ素子表面付近に設置されて良い。
【0020】
生成された交流磁場HACの方向は少なくとも1つのセンサ素子表面に対して実質的に平行であって良い。実質的に平行とは、生成された交流磁場HACの方向とセンサ素子表面とのなす角が0°〜20°-たとえば0°〜10°-であって良い。
【0021】
磁気センサは、粒子の磁性の検出に基づいた如何なる適切なセンサであって良い。たとえば、コイル、ワイヤ、磁気抵抗センサ、巨大磁気抵抗センサ、磁歪センサ、ホールセンサ、平面型ホールセンサ、フラックスゲートセンサ、SQUID、磁気共鳴センサ等である。
【0022】
前記測定は、センサ素子表面から10μm未満の距離の領域で、好適には5μm未満の距離の領域で、より好適には1μm未満の距離の領域で実行されて良い。分離プロセスはアッセイの実質的に閉じこめられた容積内部実行されて良い。有利となるように、1つ以上の磁気ラベルの磁性に対するHACの効果をセンサ素子によって測定する手順は、そのセンサ素子付近の空間領域内で実行されて良い。よって本発明は表面上での測定とは異なるが、表面上での測定に適用されても良い。より具体的には前記測定は、前記センサ素子付近10μmの空間領域-より具体的には5μm及び1μm-内で実行されて良い。200μmの範囲-具体的には100μm又は50μm-でも適用されて良い。
【0023】
分離プロセスは、アッセイ中での磁性粒子の少なくとも一部に作用する磁力によって実行されて良い。前記磁力は分離用の不均一磁場(HSEP)を起源とする。
【0024】
分離用に用いられる磁場(HSEP)はAC磁場とは異なって良い。本発明による実施例の利点は、より選択的な分離プロセスを補助することである。
【0025】
凝集プロセスを改善するのに凝集改善磁場(HENH)が印加されて良い。その凝集改善磁場(HENH)は、分離用磁場(HSEP)の前及び/又はとHSEPと同時に印加されて良い。
【0026】
交流磁場HACの効果は長時間にわたって測定されて良い。1つ以上の磁性粒子への交流磁場HACの効果は、端点測定から導出されても良いし、信号を時間の関数として連続的又は断続的に記録して時間測定を行うことによって導出されても良い。時間間隔は1秒から最大で1時間の範囲であって良く、典型的には1〜10分で、特に1〜5分である。1つ以上の磁性粒子への交流磁場HACの効果を長時間にわたって測定するとき、たとえば凝集粒子のサイズ分布信号を得ることが可能であり、又は凝集プロセスの動力学に係る信号を得ることも可能である。
【0027】
当該方法は凝集粒子のサイズ分布を決定する手順をさらに有して良い。
【0028】
当該方法は、複数のセンサを用いて、前記分離の結果生じる凝集粒子の様々なサイズ割合を測定する手順を有して良い。
【0029】
アッセイは生化学アッセイであって良い。
【0030】
本発明はまた、上述の方法によって、標的誘起凝集アッセイにおいて粒子の1つ以上の凝集パラメータを定量的に測定する道具一式にも関する。当該道具一式は標的と結合する能力を有する少なくとも1つの磁性粒子を有する。
【0031】
本発明はまた標的誘起凝集アッセイにおいて1つ以上の凝集パラメータを測定するデバイスにも関する。当該デバイスは、少なくとも1つの磁性粒子を有するように粒子を凝集させる凝集プロセスを実行する凝集手段を有する。凝集した粒子は、任意の表面、少なくとも1つのセンサ素子、及びAC磁場をアッセイに印加する磁場発生手段に付着しない。前記センサ素子は、付着しない凝集粒子のうちの1つ以上の磁性粒子に対するAC磁場の効果を測定するように備えられて良い。測定された効果は1つ以上の凝集パラメータを表す。AC磁場の効果は1つ以上の磁性粒子の磁性に対する効果であって良い。当該デバイスは、官能化されていない表面を有して良いし、又はアッセイ非選択の官能化表面を有しても良い。
【0032】
当該デバイスは、センサ表面付近に粒子を集中させるプロセス、又は凝集粒子のサイズに依存した分離プロセスをさらに有して良い。
【0033】
当該デバイスは、単一磁性粒子の臨界滑り周波数よりもはるかに大きな、発生したAC磁場の周波数を制御する制御手段をさらに有して良い。その周波数は臨界滑り周波数の少なくとも10倍よりも大きくて良い。
【0034】
前記少なくとも1つのセンサ素子は、光センサ素子、磁気センサ素子-たとえばホールプローブ又は磁気抵抗センサに基づく素子-、音響センサ素子、電気センサ素子等のいずれであっても良い。
【0035】
本発明は特に、排他的ではないが、今まで開示されてきた方法よりも、より定量的に1つ以上の磁気ラベル又は磁性粒子を含む粒子の凝集を研究する方法を得るのに有利である。具体的には、用いられる磁気測定手法が低雑音であり、かつ/又は、1つ以上の磁性粒子の特性の測定前及び/若しくはその測定中での凝集した粒子の分離が改善されるために、このようなことが実現され、必要な凝集パラメータの感度が改善される。多数の測定可能粒子に関する感度については、行われた実験は、本発明が従来技術よりも少なくとも1桁高い感度を有することを示した。
【0036】
他の利点として、当該方法は、表面には結合していないがセンサ素子の付近-たとえばセンサ表面又は凝集アッセイが含まれる反応チャンバ表面-に存在する凝集粒子の特性の測定を補助する。表面への結合という制約のない粒子は特に有利である。なぜなら複雑な表面構造(表面パターニング及び表面改質)が不要であるため、センシングデバイス-たとえば磁気センシングデバイス-の製造が顕著に単純化されるからである。
【0037】
凝集パラメータは、生成される凝集体のサイズ、2つ以上の独立した粒子を有する凝集体での磁性材料の総量、凝集体のサイズ分布、凝集体を形成する個々の粒子の磁性粒子数分布、凝集した個々の粒子に対する凝集しない個々の粒子の比等を有して良いが、これらに限定されるわけではない。
【0038】
本発明の方法は、複数の種類の生化学アッセイと共に用いられて良い。そのような生化学アッセイとはたとえば、結合/未結合アッセイ、サンドイッチアッセイ、競合アッセイ、変位アッセイ、酵素アッセイ、増幅アッセイ等である。
【0039】
本発明の方法は、センサ多重化(つまり各異なるセンサ及びセンサ表面の並列使用)、ラベル多重化(つまり各異なる種類のラベルの並列使用)、及びチャンバ多重化(つまり各異なるチャンバの並列使用)に適している。本発明に記載された方法は、迅速で、耐久性を有し、かつ容易に使用できる、小さな試料体積用のポイントオブケアバイオセンサに用いられて良い。しかし本発明に記載された方法は実験室の器具で用いられても良い。
【0040】
本発明による実施例の利点は、検査中に試料を含む反応チャンバが、小型読み取り装置と共に用いられ、1つ以上の磁場発生手段を有し、かつ1つ以上の検出又は測定手段を有する使い捨て装置であって良いことである。また本発明の方法は、中央研究所での自動化された高処理能力検査で用いられても良い。この場合、反応チャンバはたとえばウエルプレート又はキューベットのような自動装置に適合したものである。
【0041】
本発明による実施例の利点は、サイズに依存した分離が実行されるとしても、その分離を別な試料格納容器又は異なるプロセス場所で行う必要がなく、測定が行われる場所で行うことができることである。
【0042】
本発明による実施例の利点は、印加されたAC磁場が、所与の状況下での所与の種類の磁性粒子の臨界滑り周波数よりも大きな周波数を有して良いことである。臨界滑り周波数の値は、当業者にとって知られた方法/本明細書に記載された方法によって得られて良い。
【0043】
本発明による実施例の利点は、磁気ラベルを含む凝集アッセイを行う試薬が、デバイス上で水を含まない状態で存在しうることである。固体試薬は流体試料を加えることによって溶解して分散することが可能である。これは使用しやすさ及びデバイスの保存にとって有利である。
【0044】
本発明の特別な態様及び好適な態様は、「特許請求の範囲」の独立及び従属請求項に記載されている。従属請求項の記載事項は、適切であれば請求項中に明示的に記載されていなくても、独立請求項の記載事項及び他の従属請求項の記載事項と組み合わせられて良い。
【0045】
本発明の上記及び他の特徴、事項、及び利点は、例示的に本発明の原理を図示している添付の図面と共に以降の詳細な説明から明らかとなる。本記載は例示を目的とするのみで、本発明の技術的範囲を限定するものではない。以降で引用される参照番号は添付の図面を指し示している。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例での使用が可能な凝集アッセイの概略的な反応である。
【図2】本発明の実施例での使用が可能な凝集アッセイの概略的な反応である。
【図3】本発明の実施例での使用が可能な凝集アッセイの概略的な反応である。
【図4】本発明の実施例の例示であって、磁性粒子が存在しない磁気センサを用いたセンサデバイスの断面図である。
【図5】本発明の実施例の例示であって、磁性粒子が存在する磁気センサを用いたセンサデバイスの断面図である。
【図6】磁気センサ面に対して実質的に垂直な方向での分解能が改善された磁気センサを用いる本発明のセンサデバイスに係る実施例の断面図である。
【図7】磁気センサ面に対して実質的に垂直な方向での分解能が改善された磁気センサを用いる本発明のセンサデバイスに係る実施例の断面図である。
【図8】磁気センサ面に対して実質的に垂直な方向での分解能が改善された磁気センサを用いる本発明のセンサデバイスに係る実施例の断面図である。
【図9】本発明の実施例による分離プロセスの概略図である。
【図10】本発明の実施例による分離プロセスの第1特定実施例である。
【図11】本発明の実施例による分離プロセスの第2特定実施例である。
【図12】本発明による実施例で使用可能な凝集の動力学的研究で測定されたGMR信号である。
【図13】本発明による実施例で使用可能である、本発明の実施例において印加されている時間依存する様々な磁場の概略図である。
【図14】本発明の実施例による方法のフローチャートである。
【図15】本発明の実施例による分離プロセスの一例である。ここでH1及びH2は凝集アッセイの対向する面に配置された2つの磁場発生手段を表す。
【図16】a及びbは、本発明による実施例で使用可能な永久磁性粒子の回転速度に対するHACの周波数及び強度の効果を図示している。
【図17】a及びbは、本発明による実施例で使用可能な非永久磁性粒子の回転速度に対するHACの周波数及び強度の効果を図示している。
【図18】本発明による実施例で使用可能な磁性粒子の2ビーズクラスタの回転速度に対するHACの周波数の効果を図示している。
【図19】凝集アッセイの一例の概略図である。ここで凝集は、本発明による実施例で使用可能な個々の独立したビーズが存在する状態で測定される。
【発明を実施するための形態】
【0047】
各異なる図中、同一の参照番号は同一又は同様の素子を指し示す。
【0048】
特定の図を参照しながら、具体的実施例について、本発明を説明する。しかし本発明は参照された具体的実施例によっては限定されず、「特許請求の範囲」に記載された請求項によってのみ限定される。示された図は単なる概略に過ぎず、非限定的である。図においては、例示目的のため、大きさが誇張され、かつ正しいスケールで描かれていない構成要素がある。
【0049】
さらに、明細書及び特許請求の範囲に記載されている第1、第2、第3等の語は、同様の構成要素を区別するために用いられており、必ずしも生起順序又は時系列順序を表すものではない。よって用いられているそれらの語は適切な状況下では同義であり、本明細書で説明されている本発明は、説明すなわち例示されている順序以外の順序での動作が可能であることに留意すべきである。
【0050】
しかも、明細書及び特許請求の範囲に記載されている上部、下部、上、下等の語は、説明目的で使用されており、必ずしも相対的位置を表すものではない。よって用いられているそれらの語は適切な状況下では同義であり、本明細書で説明されている本発明は、説明すなわち例示されている順序以外の順序での動作が可能であることに留意すべきである。
【0051】
しかも本明細書に記載されたある実施例がある事項を含み、かつ別な実施例が別の事項を含んでいるが、これらの異なる実施例の事項を組み合わせたものは本発明の技術的範囲内に属すると解され、この組み合わせたものは別な実施例を形成する。このことは当業者には明らかなことである。たとえば「特許請求の範囲」の請求項では、請求項に記載された発明の実施例はどのように組み合わせられても良い。
【0052】
本明細書において与えられた説明では、多数の具体的詳細が記載されている。しかし本発明の実施例はこれらの具体的詳細がなくても実施可能であることに留意して欲しい。他に、本説明の理解を曖昧にしないように、周知の方法、構造、及び手法は、詳細に示していない。
【0053】
「発生手段」という語と「発生装置」という語は同義的に用いられて良い。また「制御手段」という語と「制御装置」という語も同義的に用いられて良い。同様に、「センサ」という語と「センサ素子」という語も同義的に用いられて良い。
【0054】
本明細書で用いられている「時間の関数」又は「長時間にわたって」という語は、連続的な場合も不連続的な場合も意味する。不連続的な場合では、所定の時間間隔が規則的又は不規則的に設けられて良い。
【0055】
本発明のために本明細書で用いられている「凝集」又は「クラスタ化」という語は、少なくとも2つの構成要素が集合することによる、塊、群、又はクラスタの形成を意味する。「凝集」及び「クラスタ化」という語、及び同様に「凝集した」及び「クラスタ化した」という語は同義的に用いられて良い。特に「凝集」は、構成要素間での特定の相互作用による塊又は群に形成に関する。
【0056】
本発明の目的のため、「磁性粒子」という語は広義に解されるべきである。広義に解されるとはたとえば、如何なる種類の磁性粒子-たとえば強磁性、常磁性、超常磁性等-だけではなく、如何なる形式の粒子-たとえば磁性球、磁性棒、磁性粒子で構成される列、又は複合粒子-も磁性粒子に含まれることである。ここで複合粒子には、磁性材料と光学活性材料を含む粒子や非磁性母体内部に磁性材料を含む粒子がある。任意で、磁性物体又は磁化可能物体は強磁性粒子であって良い。そのような強磁性粒子は、磁気緩和時間の速い小さな強磁性グレインを有し、かつ単独での粒子の磁性のため凝集する危険性が低い。磁性粒子である磁性物体又は磁化可能物体の手段によって本発明を説明する。
【0057】
本発明の目的のため本明細書で用いられている「標的」という語は、本発明による方法で検出及び/又は定量化される構成要素-つまり本発明の実施例による凝集プロセスにおいて誘導的な役割を果たす構成要素-を意味する。本発明によって用いられる標的分子の例についての非限定的なリスト明細書中に与えられる。
【0058】
本明細書で用いられている「反応チャンバ」という語は、反応又は凝集アッセイを保持する格納容器として機能する任意の装置を意味する。前記格納容器は任意で、本発明の方法の実行に用いられるデバイス又は装置から取り外し可能である。つまり反応チャンバは、デバイス又は装置と一体化した一部分であっても良いし、それだけではなく、装置上、装置内、又は装置付近に設けられて、再度トリはず可能な独立部品であっても良い。
【0059】
本明細書に用いられている「付着していない」という語は、その物体が、特定の他の物体若しくは表面と付着、接続、又は相互作用しない状態を意味する。特にその物体が、物体に固有の付着、又は物体に固有な相互作用をしない状態で、特定の化学又は生化学結合又は相互作用によって付着しない状態である。
【0060】
第1態様では、本発明は、標的誘起凝集アッセイにおいて、1つ以上の磁性粒子を含む凝集を測定する方法を供する。そのようなアッセイは反応チャンバ内で実行されて良い。当該方法は、標的に結合する能力を有する磁性粒子をアッセイ内に供する手順を有する。前記の供する手順は、前記アッセイと磁性粒子とを互いに接触させる手順を有して良い。磁性粒子は、棚から得られて良いし、又はデバイス内にすでに存在してもいても良い。磁性粒子はデバイス内で如何なる状態で存在していても良い。試料は如何なる適切な方法で得られても良いし、かつ如何なる適切な方法-たとえばシリンジを介してキャビティを充填するような方法-で反応チャンバへ導入されても良い。本発明の実施例による方法は、複数の種類のアッセイ法と共に用いられて良い。そのようなアッセイ法はたとえば、結合/未結合アッセイ、サンドイッチアッセイ、競合アッセイ、変位アッセイ、酵素アッセイ等である。そのプロセスは様々な構成要素を含んで良い。その様々な構成要素は、様々な類の分子及び生体部分-たとえばDNA、RNA、タンパク質、小分子-を有する。分子アッセイに加えて、大きな部分-たとえば細胞、ウイルス、細胞若しくはウイルスの断片、組織片、又は組織片の抽出物等-が検出又は探索されても良い。分子標的は通常、大きな部分-たとえば細胞、ウイルス、細胞若しくはウイルスの断片、組織片、又は組織片の抽出物等-の濃度及び/又は存在を決定する。磁性粒子は小さな寸法を有して良い。たとえば磁性粒子はナノ粒子であって良い。ナノ粒子とは、少なくとも1つの寸法が0.1nmから10000nmの範囲であって、好適には3nmから3000nmの範囲であって、10nmから1000nmの範囲である粒子を意味する。磁性粒子は印加磁場による磁気モーメントを得ることができる(たとえば磁性粒子は常磁性であって良い)。あるいは磁性粒子は永久磁気モーメントを有しても良い。磁性粒子は複合体であって良い。たとえば磁性粒子は、非磁性材料内部又はそれに付着する1つ以上の小さな磁性粒子で構成されても良い。粒子がAC磁場の周波数に対してゼロではない応答を生じさせる限り、つまりその粒子が磁気感受性すなわち透磁性を有している限り、その粒子は使用されうる。様々な形式-たとえば球形状、棒形状、2ビーズクラスタ-の磁性粒子が用いられて良い。磁性粒子はさらなる特性-たとえば蛍光のような光学特性-を示しても良い。磁性粒子のこれらの異なる特性は、アッセイ内での多重化に用いられて良い。ラベル多重化は、同一のセンサ範疇内で各異なる粒子についての識別可能な特性-たとえば磁気センサ素子についての識別可能な信号を生じさせる各異なる磁性材料-を用いることによって、又は、異なるセンサ範疇から選ばれた特性-たとえば磁気センサ素子及び光学センサ素子によってそれぞれ選択的に測定された磁気ラベル及び光学ラベルを組み合わせたもの-を用いることによって実現可能である。
【0061】
当該方法は、磁性粒子が凝集した粒子となるアッセイの凝集プロセスを実行する手順をさらに有する。凝集した粒子は少なくとも1つの磁性粒子を有する。クラスタの生成すなわち凝集は試料中での標的の存在の指標となり得る。なぜなら標的が凝集を誘起するからである。本発明の実施例では、磁性粒子とアッセイ粒子との凝集が行われる。センサ信号及び標的の存在を容易に補正するため、2粒子のクラスタ化が、多粒子のクラスタ化よりも好ましいと考えられる。多粒子のクラスタ化よりも2粒子のクラスタ化を好ましくするため、たとえば最終的な標的濃度をはるかに超える粒子の濃度又は粒子上での捕獲分子の濃度が用いられて良い。また原則として3ユニット以上のクラスタ形成を許さない生化学的プロセスが用いられても良い。たとえばサンドイッチアッセイ法が用いられる。このアッセイ法では、一方で磁性粒子と複数の特定の抗体が結合し、かつ他方で1つの蛍光ラベルに対して1つの抗体のみが結合する。
【0062】
本発明の実施例によると、凝集は多量の溶液中で生じて、表面への結合を必要としない。これは、アッセイの単純性、アッセイの速度、製造の単純さ、及び低コストという点で有利となりうる。
【0063】
特に高速アッセイ法、及び低標的濃度のアッセイ法では、検出される事象数を非常に低くする必要がある。本発明の実施例によると、多くのクラスタ化していないバックグラウンド中で少数のクラスタを迅速かつ正確に測定すること、及び/又は、多数のクラスタのバックグラウンド中で少数のクラスタ化していない種を検出することは不可能となる。
【0064】
当該方法は任意で、前記凝集プロセス後であって測定前に、集中及び/又は分離プロセスを用いる手順を有して良い。
【0065】
分離プロセスは凝集した粒子のサイズに依存して良い。分離プロセスの適用は、粒子を分離するための磁場-たとえば不均一磁場-を印加する手順によって行われて良い。分離プロセスのさらなる例は以降でより詳細に説明される。あるいはその代わりに分離プロセスは実行されなくても良い。
【0066】
集中プロセスは特に、測定されるべき粒子をセンサ表面付近に集中させる効果を有して良い。この特別な実施例は、前記粒子の検出方法の感度を改善させるという利点を有することが可能である。
【0067】
当該方法はまたアッセイに交流(AC)磁場を印加する手順をも有する。そのため前記アッセイは効果を測定するのに用いられる少なくとも1つのセンサ素子付近に設けられて良い。そのような交流磁場は、如何なる適切な方法によって生成されても良い。そのような適切な方法とはたとえば、ワイヤの使用、コイルの使用、磁性材料の使用、電磁石の使用などである。交流磁場はオンチップで生成されても良いし、オフチップで生成されても良い。オンチップとは発生装置がデバイス内に集積されていることを意味する。他方オフチップとはデバイスの外部にある発生装置、又はそのデバイスとは独立した発生装置を意味する。本発明の本態様による実施例では、標的誘起凝集を測定する方法は、磁性粒子がAC磁場中で回転可能であるという発見を利用している。係る回転磁場中で、磁性粒子は、印加磁場の周波数から最大で所謂臨界滑り周波数と呼ばれるある特定の周波数で回転して良い。臨界滑り周波数を超えると、磁性粒子の物理的な回転は印加磁場の回転に追随できなくなる。さらに示すように、驚くべきことに、臨界滑り周波数よりも実質的に高い周波数で、磁性粒子の物理的回転が再度増大することが発見された。換言すると驚くべきことに、臨界滑り周波数よりも実質的に高い周波数を凝集パラメータの決定に用いることができることを発見した。印加したAC磁場HACの周波数はたとえば臨界滑り周波数の10倍よりも大きくて良い。HACの周波数は、臨界滑り周波数の少なくとも10倍で、少なくとも100倍で、又は少なくとも1000倍であって良い。臨界滑り周波数は典型的には数Hzである一方で、Neel緩和によって生じる回転-つまり回転磁場の周波数よりも実質的に高い周波数での回転-は数kHz超から最大で数MHzの周波数での回転が支配的となり始める。この実施例の目的にとっては、印加されたHACの周波数は約10Hzから約10MHzであって良く、より詳細には約100Hzから約1MHzであって良い。実際に望ましい周波数は用いられる磁性粒子のサイズ/種類に依存する。最大の信号を得るためには、印加されたAC磁場の測定された効果に関する第2最大値(図18に図示されている)に近い周波数を用いるのが有利である。図18に図示された実験で用いられたビーズにとっては、望ましい周波数は600kHz周辺である。用いられる粒子のアッセイ及び種類に依存して、これは顕著に高く/低くなりうる。なぜならたとえば用いられる磁性粒子のグレインサイズに対するNeel緩和の強い依存性があるためである。臨界滑り周波数は、印加磁場の回転周波数の関数として粒子の回転を調べることによって、光学的又は磁気的に測定することが可能である。本発明の枠内では、臨界滑り周波数を決定するには2つの可能性が存在する。第1の可能性は凝集アッセイの前にビーズのバッチを評価することである。よって臨界滑り周波数は、アッセイが行われる実際のデバイス内でビーズが用いられる前、又はそのビーズが本発明による方法に用いられる前に、既知となる。あるいはその代わりに、臨界滑り周波数は、凝集アッセイもが行われるデバイス中で決定される。周波数を0Hzから臨界滑り周波数よりも高い周波数まで掃引しながら、臨界滑り周波数は回転ビーズについて光学顕微鏡を用いて決定されて良い。臨界滑り周波数はまた、印加磁場の周波数を掃引しながら回転ビーズの双極子場を測定する磁場センサを用いて決定されても良い。出力信号のロックイン検出によって、印加磁場周波数でのセンサ出力が与えられる。一旦ビーズの永久磁気モーメントが印加磁場(臨界滑り周波数)に追随できなくなると、作動する周波数での信号は減少を示す。
【0068】
よってAC磁場HACを操作する周波数は臨界滑り周波数よりも高くて良い。高い周波数での動作は臨界滑り周波数での動作よりも有利となりうる。臨界滑り周波数よりもはるかに高い周波数での動作から複数の利点が生じる。高周波数での励起によって、磁性粒子間での双極子-双極子相互作用が減少して、センサの再現性が改善される。変調技術を用いるため、信号対雑音比及び検出感度が高くなる。アッセイに印加されるように-たとえばセンサ11付近で-生成されたAC磁場は、1つ以上の磁性粒子15の磁性によって誘起される効果の測定を可能にする。そのような磁性はAC磁場によって誘起される特性であって良い。
【0069】
当該方法はまた、反応チャンバの表面に付着しない1つ以上の磁性粒子に対するHACの効果を、少なくとも1つのセンサ素子によって測定する手順をも有する。前記の測定された効果は1つ以上の凝集パラメータを表す。交流磁場は1つ以上の磁性粒子の磁性に作用して良い。凝集を表すHACの効果の測定は、試料中での標的の存在に関する情報を供する。係る情報は定性的であっても定量的であっても良い。凝集の定性的測定は、試料中に存在する1つ以上の標的の性質すなわち素性を表す。凝集の定量的測定は、1つ以上の標的が試料中にどの程度存在するのかを表す。HACの効果の測定は、その効果の物理的性質に依存して、光学測定、音響測定、磁気測定、電気測定等であって良い。たとえば光学測定は、エバネッセント放射線の検出、蛍光放射線の検出、リン光の検出、散乱光の検出などに基づいて良い。測定された効果は磁性粒子数に関連づけられて良い。分離プロセスが行われる場合には、流指数はサイズ分布に変換されて良い。
【0070】
限定ではない例示として、本発明による、標的誘起凝集アッセイにおいて粒子の1つ以上の凝集パラメータを測定する方法のフローチャートが図14に示されている。このフローチャートは当該方法の標準的手順と任意手順を表す。よって当該方法は、手順S1、手順S2、手順S4、手順S5を有し、任意で手順S3を有する。手順S1は、標的5に結合する能力を有する磁気ラベル3、15をアッセイ中に供する手順に対応する。手順S2は、1つ以上の磁性粒子を有する凝集した粒子100を生成する凝集プロセスを実行する手順に対応する。任意の手順S3は、集中及び/又は分離プロセスを実行する手順に対応する。前記分離プロセスは、たとえば分離力FSEPを印加することによって凝集した粒子のサイズに依存して良い。手順S4はアッセイに交流磁場HACを印加する手順を有する。前記アッセイ、つまりは該アッセイが測定中に維持される反応チャンバが少なくとも1つのセンサ素子付近に存在することで、誘起される効果は前記少なくとも1つのセンサ素子によって測定される。手順S5は、センサ素子によって、反応チャンバの表面とは結合しない1つ以上の磁気ラベル又は粒子3、15に対するHACの効果を測定する手順を有する。前記の測定されたHACの効果は1つ以上の凝集パラメータを表す。
【0071】
限定ではない例示として、多数の例及び当該方法の多数の標準的又は任意の手順をより詳細に説明する。
【0072】
第1例では、凝集アッセイの概略的な反応が多数図示されている。これは本発明の実施例でも用いることができるものである。図1は、磁性粒子又は磁気ラベル15がサンドイッチ構造を介して磁性粒子15bに付着する凝集アッセイを図示している。そのサンドイッチ構造は、粒子15及び15bとそれぞれ付着する結合部分2及び2bによって取り囲まれた標的5で構成される。この形式は、標的が少なくとも2つの結合位置を有するときに用いられて良い。そのような標的とは典型的には、多数のパラトープを有するタンパク質若しくはペプチド抗原、核酸(DNA,RNA)、及び多数のエピトープを有する抗体等である。しかし場合によっては、標的はたとえば、ハプテン、小さな分子薬、ホルモン、代謝体等の相対的に小さなものであっても良い。磁性粒子15はサンドイッチ構造を介して磁性粒子15bに付着する。そのサンドイッチ構造は、粒子15及び15bとそれぞれ付着する結合部分2及び2bによって取り囲まれた標的5で構成される。そのように付着した結果、凝集粒子100が生成される。2つの結合位置は明確に異なっていて良い。その場合、結合部分2及び2bは異なっている。あるいはその代わりに、2つの結合位置は同一であっても良い。その場合、結合部分2及び2bは同一である。結合部分2及び2bは磁性粒子に直接付着しても良いし、又はある中間結合基を介して付着しても良い。そのような中間結合基とはたとえば、タンパク質G、ストレプトアビジン、ビオチン、タンパク質A、IgG抗体等である。しかし本発明はこれらに限定されるわけではない。結合部分2及び2bのうちの1つ以上は、すでに粒子に付着して状態で存在しても良いし、又はその粒子から独立して存在しても良い。それらの場合、結合部分と粒子のいずれも、粒子が結合部分2及び2bへ付着することを可能にする中間結合部分を有していなければならない。よって磁性粒子15と標的5の結合は本発明の文脈においては間接的といえる。小さくて1つしか結合位置を有してない標的5(たとえば小さな分子、ハプテン、薬、ホルモン及び代謝体)については、抑制又は競合形式が代わりに用いられて良い。
【0073】
図2は、磁性粒子3が、部分4と付着して、その部分4を介して、結合部分4bによって取り囲まれた粒子3bと凝集するアッセイを図示している。部分4は標的ホモログであって良い。標的が加えられるとき、その標的は部分4bと結合して、粒子の凝集を抑制する。凝集が始まる前に標的が加えられるのは有利である。その理由は、凝集は不可逆的、すなわち凝集体は分散するのが困難となるからである。このことは、部分4と4bとを空間的に分離して、標的と部分4bとを反応させるようにすることによって実現可能である。サンドイッチ形式と同様に、結合部分4bは粒子とは独立して良く、かつ中間結合部分による反応の間に付着して良い。結合部分は標的を認識するように特別に設計される。結合部分はたとえば、抗体、核酸、アプタマー、ペプチド、タンパク質、及びレクチンのような分子であって良い。作用させるために標的を露光する前に、すでに結合部分を粒子に付着させるのが好ましいとはいえ、その成分はどのような順序で結合しても良い。粒子は最大2μmであって良く、1μm未満であることが好ましい。1μm未満であることで、表面対体積比が大きくなり、ダイナミックレンジが大きくなる。凝集は多数の粒子が互いに結合して生じ、その結果凝集100となる。
【0074】
図3は、部分4が標的ホモログであって、標的5が加えられるときに、標的5が部分4bと結合して、粒子の凝集を抑制するアッセイを図示している。よって、本発明の文脈内においては、凝集プロセスは、凝集の抑制を調べるプロセスを有利に含む。
【0075】
第2の特別な組の例では、各異なる検出手法による効果の測定が図示されている。しかし本発明はこれらに限定されるわけではない。一例では、放射性ラベル-たとえば発光又は蛍光ラベル-が、用いられる磁性粒子内に埋め込まれているか、又はその磁性粒子に付着している。たとえば抗原は、蛍光磁性粒子と結合して良いし、又は蛍光粒子と非蛍光粒子の何れとも結合しても良い。蛍光磁性粒子の励起は、放射線源を用いることによって行われて良い。放射線源を用いるとはたとえば、前記ラベルの光学的な検出を可能にする集光レーザービームによるか、又はエバネッセント場励起によることである。検出は、如何なる適切な方法によって行われても良い。適切な方法とはたとえば、共焦点検出の使用又は高NAレンズの使用である。蛍光磁性粒子を用いることによって、励起及び/又は発光波長がそれぞれ異なる様々な蛍光体を用いることによる多重化が可能となる。別な実施例として、検出は、磁性粒子ラベルと結合した蛍光ラベル(最初は離れていても良いし、又は非磁性粒子に付着若しくは埋め込まれていて良い)を用いることによって光学的に行われても良い。この例における凝集の測定は磁性粒子のクラスタ形成には基づいておらず、磁性粒子の蛍光の増大に基づく。たとえば蛍光又は磁性粒子ラベルのいずれかが付された抗原が混合される。続いて抗原に固有な抗体を含む試料に曝露することで、蛍光ラベルが磁性粒子ラベルと結合する。この実施例では、磁性粒子が非結合センサ表面に対して作用し、表面に固有な蛍光ラベルの検出を行うことができる。表面に固有な蛍光体の励起は、放射線源を用いて-たとえば集光レーザービームを用いるか又はエバネッセント場によって-行われて良い。検出は、共焦点検出(表面敏感な検出法)によるか、又は高NA集光レンズ(表面敏感ではない検出法)を用いて行われて良い。この方法を用いることによって、余剰のラベル及び試料流体自体からのバックグラウンド蛍光を減少させ、さらには最小限に抑制することができる。粒子の様々なラベル付与に基づくアッセイの多重化は、様々な蛍光ラベルを利用することが容易に予想できる。光学検出はまた表面増強共鳴ラマン分光(SERRS)法によって行われても良い。SERRSは、光学ラベルが付された分子又は種のコロイド粒子-たとえば銀粒子-への吸着によって、その分子又は種を検出する非常に敏感な方法である。光学ラベルとは、コロイド粒子が制御されながらクラスタを形成するときにプラズモン及び色素共鳴を起こす適切な色素分子(たとえばローダミン)である。磁性粒子は金属コーティングを備えた状態で存在することが知られている。たとえば抗原(標的すなわち抗体に結合する)がそのような銀でコーティングされた磁性粒子と結合しながら抗原もまた適切な色素と結合するとき、抗原に固有な抗体は、色素を銀コーティングされた磁性粒子と結合させる。磁気作用は色素共鳴を生じさせるクラスタ/ピラーを生成する。SERRSは、エバネッセント場での非結合センサ表面への作用後に検出されて良い。そのような設定では、抗体の検出は、流体洗浄手順を省いた単一チャンバ内で行われて良い。その理由は、検出は表面固有であり、溶液からの未結合色素による妨害を受けないからである。
【0076】
他の例では、たとえばホールセンサ、又は磁気抵抗センサ-たとえばGMR、TMR、若しくはAMRセンサ-のような磁気センサが用いられて良い。特別な例では、磁気センシングは、印加AC磁場に対して特別な周波数を用いることができるという利点を得ることができる。低周波数領域-つまりたとえば100Hz未満-では、磁気センサ素子の1/f雑音が支配的となる。1/f雑音は電流のポイント間揺らぎに起因し、かつ周波数の逆数に比例する。磁気抵抗センサでは、1/f雑音は自由層での磁気揺らぎに起因する。発生したAC磁場の周波数が100Hz以上であるとき、支配する1/f雑音は、従来技術と比較して顕著に減少する。その結果、信号対雑音比(SNR)が改善される。それは、AC磁場の周波数が、熱ホワイト(Nyquist)ノイズレベルが1/f雑音レベルよりも支配的となる値にまで増大するときに有利となる。特許文献1で述べたように、ある特定のコーナー周波数fc≒50kHzを超えると、GMRセンサの熱ホワイトノイズが支配的となる。ホワイトノイズレベルは理論的に到達可能な検出限界を制限してしまう。
【0077】
図4及び図5は、本発明の実施例による典型的なセンサデバイスの断面図である。これらの実施例では、磁気センサが用いられているが、図4では磁性粒子15は存在しないが、図5では磁性粒子15は存在する。例示目的のため、以降本発明はバイオセンサについて説明する。バイオセンサは試料中での磁性粒子を検出する。試料とはたとえば、流体、液体、気体、粘弾性媒体、ゲル、又は細胞組織試料である。当該デバイスは、基板10及び回路-たとえば集積回路-を有して良い。当該デバイスの測定面が、図4及び図5において破線にて示されている。基板は、半導体材料、ガラス、プラスチック、セラミック、シリコン-オン-ガラス、シリコン-オン-サファイアを有して良い。回路は、センサ素子としての磁気抵抗センサ、及び導体12である磁場発生装置を有して良い。磁気抵抗センサ11はたとえば、GMR、AMR、又はTMR型センサであって良い。磁気抵抗センサ11はたとえば、細長-たとえば長くて細い-の幾何学形状を有して良い。しかし本発明はこの幾何学形状に限定されるわけではない。センサ11及び導体12は、距離gの範囲内で互いに隣接して設けられて良い(図4)。センサ11と導体12との間の距離gはたとえば1nmから1mm-たとえば3μm-であって良い。図4及び図5では、磁気センサデバイスがxy平面内に導入される場合に、磁気センサ11が主として磁場のx成分を検出する-つまりx方向が磁気センサ11の敏感方向である-ことを示すために、座標系を導入する。図4及び図5の矢印13は、本発明による磁気抵抗センサ11の敏感なx方向を表す。磁気センサ11はセンサデバイスの面に対して垂直な方向-図中の垂直方向すなわちz方向-にはほとんど感受性を示さないので、導体12を流れる電流によって発生する磁場14は、磁性ナノ粒子15が存在しないセンサ11によっては検出されない。磁性ナノ粒子15が存在しないセンサ11に電流を印加することによって、センサ11の信号が校正されて良い。この校正は測定前に行われることが好ましい。磁性材料(これはたとえば磁気イオン、分子、ナノ粒子15、固体材料、又は磁気成分を有する流体であって良い)が導体12に隣接しているとき、その磁性材料は図5の磁力線16によって表される磁気モーメントmを生じさせる。磁気モーメントmは双極子漂有磁場を発生させる。双極子漂有磁場はセンサ11の位置で面内磁場成分17を有する。よってナノ粒子15は磁場14を、矢印13で表されたセンサ11の敏感なx方向に偏向させる(図5)。磁場Hxのx成分-これはセンサ11の敏感なx方向である-は、センサ11によって検知され、かつ磁性ナノ粒子15の数Nnp及び導体を流れる電流Icに依存する。
【0078】
第3の特別な例では、本発明の実施例によるセンサユニット及び対応するセンシング方法が記載されている。これらはセンサ面に対して垂直な方向において良好な分解能を有する。図6、図7、及び図8は、センサ面に対して垂直な方向において分解能が改善された前記センサユニットに係る3つの実施例の断面図である。磁性粒子15の表面での濃度と全体での濃度とを区別するため、センサ素子11の面に対して垂直な方向での分解能-これは図4で導入された座標系のz方向に相当する-が必要となる。図6に図示されているように、導体12a及び導体12bの磁場14a及び磁場14bに対して、導体12c及び導体12dは磁場14c及び磁場14dをそれぞれ発生させる。4つの導体12a、12b、12c、12dを起源とするセンサ信号を組み合わせることによって、x方向及びz方向での磁性粒子15の濃度に関する情報を得ることが可能となる。z方向での分解能は、磁気センサ素子11の面に対して垂直な方向-垂直方向すなわちz方向として表されている-に、より多くの導体を設けることによってさらに改善することが可能である。これは図7の実施例において図示されている。導体12a及び導体12bは、磁気センサ11の隣の両側に設けられていて、センサ素子11の面に対して垂直な方向での高さは同一である。導体12c、導体12d、導体12e、及び導体12fは、基板10とセンサ11の間に設けられている。導体12c及び導体12dのz方向での位置は、導体12e及び導体12fのz方向での位置とは異なる。繰り返しになるが、様々な導体12a〜12fから生じるセンサ信号の組合せは、全体、表面付近、及び表面での磁性粒子15の濃度に関する情報を与えることができる。さらに他の実施例では、図8に図示されているように、基板10と磁気センサ11との間のある高さに位置している導体12c及び導体12dを流れる電流は、互いに反対の方向を有する。このようにして、導体12c及び導体12dはx方向において強い磁場勾配を発生させることができる。この実施例は空間分解能を改善にとって有利となりうる。
【0079】
第3の特別な例では、凝集した磁性粒子のサイズに依存する分離プロセスを実行する任意の手順がより詳細に記載されている。図9は分離プロセスの概略図である。この分離プロセスは、標的誘起凝集アッセイにおいて磁気ラベル15の1つ以上の凝集パラメータを定量的に測定する本発明に実施例において用いることができる。係る手順は、ラベルを供した後であって凝集粒子100を生成する凝集プロセスを実行した後に行われて良い。分離プロセスの一例では、分離力FSEPが1つ以上の空間方向に印加されて良い。その分離力FSEPは凝集粒子100のサイズに依存する。分離力FSEPは有利となるように凝集粒子100に印加される不均一磁場であって良い。しかし他の種類の分離も可能である。他の種類の分離とはたとえば、塊によって力を分離する遠心力を発生させる回転、静水圧の使用、静電分離の使用(業種粒子100上に電荷を必要とする)である。分離に用いられる様々な力の使用に加えて、あるいはその代わりに、サイズ排除フィルタが用いられても良い。大抵の凝集アッセイにとって、凝集粒子100に含まれる磁性粒子15の数は、凝集粒子100のサイズに直接依存-たとえば比例-する。とはいえ常にそうだというわけではない。不均一磁場が分離に用いられる場合、磁場は、AC磁場を発生させる手段と同一の手段によって発生されても良いし、あるいはその代わりに、専用の磁場発生装置-たとえばその目的のために磁気センサ素子11の近くに配置されている-によって発生されても良い。
【0080】
図10は本発明による分離プロセスの一実施例である。図10に図示されているように、この実施例では、凝集粒子100のサイズ分布の測定を支援するため、複数のセンサ素子11が分離された凝集粒子100に対して備えられている。前記分離の結果、一の空間方向において様々なセンサ素子11について空間的な分離が実現されるが、同様に2又は3の空間次元においてもその分離を行うことができる。
【0081】
図15は、本発明の方法による実施例で用いることが可能な分離プロセスの実施例を図示している。各異なるサイズの磁性粒子-たとえば単一の粒子に対するクラスタ粒子、又は小さなサイズの粒子に対する大きなサイズの粒子-は、磁気泳動分離を用いて分離されて良い。磁気泳動分離とは、磁場中での磁性粒子の速度が磁力に対する感受率に直接比例するという事実に基づくものである。たとえば凝集の結果生じる磁性粒子のクラスタは、単一の磁性粒子よりも感受率が大きくなるので、磁気泳動は、クラスタ化した磁性粒子を単一磁性粒子から分離するのに用いることができる。非結合表面-たとえばセンサ表面又は反応チャンバの表面-への作用すなわち沈殿の際、センサ信号の変化が時間的に観測されて良い。クラスタは磁場中でより速く沈殿し、又はより速く移動するので、クラスタは速く表面に到達する。従って非結合表面(付近)で磁性粒子を時間的に測定することで、クラスタ形成に関する信号となる。凝集パラメータの測定は分離手順を含む。クラスタ化したビーズから単一の粒子を再現性良く分離するには、磁気泳動による粒子の分離の原理が、たとえばGMR及びFTIR検出用に開発されたカートリッジ内で用いられて良い。図15は反応チャンバに係る実施例の概略図を示す。この反応チャンバでは、H1で表される上部コイルを反応チャンバの最後部に備え、かつH2で表される下部コイルをセンサ表面の下に備える。分離は、最初上部コイルをオンにすることによって反応チャンバの最後部にビーズを集めることによって実現されて良い。下部コイルをオンにしながら上部コイルをオフにする場合、磁性粒子はセンサ表面へ向かって移動する。所定の時間において、2ビーズのクラスタがセンサを覆って、かつ単一クラスタが最後部-センサ間の距離の半分未満の地点に位置するときには、上部コイルが再度オンにされる。2ビーズクラスタはさらにセンサ表面へ向かって移動する一方で、単一ビーズは反対に最後部へ向かって移動する。この方法は磁性粒子クラスタの端点測定を可能にし、かつ動力学的検出を必要としない。同様に、単一磁性粒子は、クラスタ化した磁性粒子から磁気的に分離されて良い。その分離は、単一ビーズが非結合表面に到達する一方で、クラスタ化したビーズはセンサ表面とは異なる地点で収集されるようにして実現される。これを実現するための一の方法は、上述と同一の磁気泳動粒子分離を利用することが考えられるが、他の方法もある。最初にビーズがセンサ面上に収集され、続いて下部コイルをオフにして上部コイルをオンにする。所定の時間後、2ビーズクラスタがセンサを覆って、かつ単一クラスタが最後部-センサ間の距離の半分未満の地点に位置するときには、下部コイルが再度オンにされる。2ビーズクラスタはさらに最後部へ向かって移動し、単一ビーズは反対にセンサへ移動する。この例は「1-xアッセイ」である。なぜなら標的が存在することでクラスタが生成され、センサ面で検出される単一磁性粒子の量が減少するからである。係るアッセイは本質的に感度が低いため、この形式は恐らく好ましくない。この実施例の利点は、凝集粒子ではなく減少した単一磁性粒子が検出されるため、多数のクラスタが生成されても定量化が妨害されないことである。本例のいずれの場合でも、異なるサイズの磁性粒子の磁気泳動分離は、集積ワイヤを用いることによって実現されても良い。よって粒子の分離はセンサ表面内で起こる。クラスタ又は単一ビーズが-どちらなのかは選ばれる実験の種類に依存する-検出スポット上(GMRの場合であれば検出ワイヤの上方で、FTIRの場合であればレーザースポットの上方)で収集される。その一方で、単一又はクラスタ化した磁性粒子はそれぞれ、検出面から十分異なる地点であってセンサ表面内のあるスポットで収集される。
【0082】
図11は本発明の分離プロセスの別な実施例である。この実施例では、単一のセンサ11が、印加される分離力FSEPに対して備えられ、それにより時間の関数として測定することで、凝集粒子100のサイズ分布が明らかになるか、少なくとも示唆される。前記分離は時間的な分離として評価されて良い。センサ11による時間依存測定もまた凝集の動力学の測定に用いられて良い。図12は副甲状腺ホルモンの動力学的調査の例である。この例では、最初に4nMの検体が、PTHに対する抗体を含む粒子に加えられる。測定は、図11と同様に60分間行われる。粒子は標的(200nm)の存在下で凝集して、弱い磁気作用下で、検体を含まない試料よりも速く沈殿する。その結果十分に大きなGMR信号が発生する。分離力FSEPは交流(AC)磁場によって作られる。
【0083】
第5の特別な例では、凝集プロセスが任意で以下にして改善され得るのかが図示されている。当該方法は凝集改善磁場(HENH)を印加する手順を有する。凝集改善磁場は、分離用磁場の前又はそれと同時に印加されて良い。アッセイ全体にわたって不均一磁場(HENH)を印加することによって、磁性粒子が作用して、凝集が可逆的な非選択的相互作用によって増大する。結合部分を含む粒子は、磁気作用にとって溶液中を移動することが可能で、それにより結合部分と出会う標的数が増大する。これは、アッセイ速度又はアッセイの感度を改善するために用いられて良い。たとえこれが凝集中に行われて良いとしても、可能な限り多くの結合部分を曝露させるため、作用は凝集前に行われることが好ましい。これは、最初に粒子15-結合部分2の複合体へ標的5を曝露し、その標的を作用させて、その標的を粒子15b-結合部分2bの複合体へ曝露し、又はその逆を行うことによって実現されて良い(図1参照)。同様の方法は抑制形式でも可能である。代替実施例では、凝集の形式の改善は、標的5が結合部分2及び2bと結合した後に、磁性粒子15と他の磁性粒子15bとの衝突を改善することによって実現されて良い(図1参照)。関与する磁力は、これ及びこれまでの改善された実施例と同一である必要はないが、一部の実施例については、磁力は同一であって良い。何れの種類の改善も同時に行われて良いとはいえ、第1形式の改善を実行して、その後第2形式の改善を実行することが好ましい。粒子の磁化は作用にとって必要である。この結果、外部磁場の存在下で粒子の凝集が可逆的となりうる。クラスタが互いに永続的な非選択的結合を行うのを防ぐ緩衝溶液条件下でアッセイを実行するのが非常に好ましい。緩衝溶液は、非選択的な結合を防止する少なくとも1%のタンパク質(アルブミン、グロブリン、ゼラチン、カゼイン等)、及び/又は少なくとも0.05%の浄化剤(Triton(登録商標)X-100、Tween20/80(登録商標)等)、及び/又はポリマー(PVB、PEG等)を含んで良い。上述したように分離は、アッセイに磁場HSEPを印加することによって実行されて良い。分離用磁場HSEPとの改善用磁場HENHのいずれもある条件に服する。その条件とは、磁場が強すぎる、又は磁場が強すぎる空間勾配を有することで、測定結果を改変させてしまう不可逆的な非選択的結合を防止できないことがないような条件である。300nmのマグネタイト粒子では、本発明は、1×104A/m、1×105A/m、又は1×106A/mの磁場強度の上限が適している一方で、勾配の上限は、1×107A/m2、1×108A/m2、又は1×109A/m2であって良いことを発見した。典型的には分離用磁場HSEPの大きさはこれらの上限未満のオーダーである。図13は、時間tに対して連続的に依存する、本発明の実施例による様々な磁場を用いている様子を概略的に図示している。3つの磁場がそれぞれ互いに異なる方向を有して良いので、磁場の数値のみが示されている。最初に凝集プロセスを改善するための磁場が印加される。最終的にHACが印加される。磁場HSEPと磁場HENHは、長時間にわたって一定であることが示されているが、これらは時間依存であっても良く、1つ以上の凝集パラメータを測定するための磁場HACのように方向が交互に変化するものであっても良い。
【0084】
特定の例の別な組が、アッセイへ印加されるAC磁場に関する任意の特性を図示している。図16〜図18は、例として、粒子の回転が、滑り周波数と呼ばれる所与の周波数で、及びその滑り周波数よりも実質的に高い周波数で得られる現象を図示している。ただし本発明はこれに限定されるわけではない。図16Aは、印加された回転磁場の角度周波数の関数として単一磁性粒子の回転周波数を図示している。矢印は臨界滑り周波数を表す。図16A、図16B、図17A、及び図17Bに図示されたデータは、大きな非永久磁化率及び小さな永久磁化を有する直径2.8μmの磁性粒子について得られたものである。図16Aの例では、回転磁場を発生させる底部電流(Ibottom)は0.046アンペア(A)であった。図16Bは、回転磁場を発生させる電流ワイヤへ印加される電流の関数としての臨界滑り周波数を図示している。100mAの電流は本例の磁性粒子の位置での2mTの磁場に相当する。線形的な振る舞いは、磁気トルクが磁性粒子中での永久磁化に起因していることを示唆している。図17Aは、印加された回転磁場の角周波数の関数としての単一磁性粒子についての光学的に測定された回転周波数を図示している。この図では、広範囲の周波数を表すためにx軸には対数スケールがとられている。永久磁化の効果は低周波数範囲(約10Hz未満)で見られる。非永久磁化の効果は高周波数範囲(最大約10MHz)で見られる。図17Bは周波数40kHzでの電流ワイヤへ印加される電流の関数としての磁性粒子の回転周波数を図示している。回転磁場中での磁性粒子の2乗の振る舞いは、磁気トルクが磁性粒子の感受率-つまり非永久磁化-に起因していることを示唆している。図17及び図18は、予期しない発見を表している。それは、臨界滑り周波数よりも高い周波数では、単一磁性粒子と2つの磁性粒子のクラスタのいずれについても粒子の回転周波数が増大していることである。図18の2重矢印は、臨界滑り周波数よりもはるかに高い周波数で動作する係るAC磁場の影響下での磁性粒子の回転周波数が、その臨界滑り周波数での回転周波数よりも高い最大値にまで上昇することを示唆している。後者は電流に依存する。低周波数では、回転周波数は印加磁場強度に対して1次関数的に増大する。その一方で高周波数では、回転周波数は印加磁場強度に対して2乗で増大する。よってある特定の磁場強度よりも大きな磁場強度では、臨界滑り周波数は最大到達可能周波数よりも低い。好適には、凝集粒子又は磁性粒子クラスタは、磁気的に形成された磁性粒子の鎖(図19)の主軸とは一致しない回転軸について回転する。このようにしてクラスタは、各独立した粒子の鎖の存在下でさえも特定可能となる。
【0085】
表面へ結合していない場合、クラスタ及び単一粒子は、磁気泳動分離及び検出後に再度バルク溶液中へ分散されて良い。本発明のこの特性のため、本発明ではアッセイのリアルタイム観測が可能となる。これはたとえばPCRのようなリアルタイムでの核酸の増幅にとって興味深い。バルク溶液中でのクラスタの再分散及びPCR生産物の溶解は、PCRでの指数関数的増幅にとって必要な、粒子へのプライマーの再使用を可能にする。
【0086】
本発明による実施例の利点は、磁性粒子をラベルとして利用でき、かつ非結合センサ表面付近で選択的検出が可能となることである。このため、親和性が低い標的-たとえば低親和性結合抗体-の検出及び流体の洗浄手順の省略が可能となる。
【0087】
未処理試料でも検出が可能となるような磁性粒子を用いることは実施例の利点である。磁性粒子を用いる本発明の実施例の利点は、流体の洗浄手順を必要としないことで、そのため速度と容易性が増大してアッセイの感度が増大する。磁性粒子を用いる実施例の利点はさらに、作用手順が、結合可能性を増大させるように供されて良いことである。
【0088】
本発明による実施例の利点は、センサ表面への結合を必要としないことであり、そのため特別なセンサ表面の改質又は誘導体化を必要としないことである。
【0089】
本発明の他の態様は、上述した凝集を測定する方法を実行する道具一式を供することである。当該道具一式は特定の標的の存在下で凝集アッセイを実行するための1つ以上の磁性粒子を有する。当該道具一式は、凝集アッセイが実行される反応チャンバをさらに有して良い。特に当該道具一式では、1つ以上の磁性粒子3、15及び前記液体が事前に混合されて反応チャンバ内に含まれて良い。この特別な実施例は、標的の存在について検査する際、その検査を行う必要のある試料しか加えなくて良いことである。アッセイの速度を上げるため、並びにアッセイの感度及び/又は再現性を高める操作をこれ以上行う必要はない。
【0090】
本発明の態様は、標的誘起凝集アッセイにおいて1つ以上の凝集パラメータを測定するデバイスを供することである。当該デバイスは、測定中アッセイが維持される反応チャンバの表面に付着しない凝集粒子100を生じさせる凝集プロセスを実行する凝集手段を有する。凝集粒子は1つ以上の磁性粒子を有する。当該デバイスはAC磁場をアッセイへ印加する磁場発生手段をさらに有する。係る磁場は、アッセイを維持してそのアッセイによって磁場検知されるようにする反応チャンバへ印加される。アッセイ、及び測定中にそのアッセイが維持される反応チャンバは、印加磁場の効果が検知される少なくとも1つのセンサ素子の近くに設けられて良い。少なくとも1つのセンサ素子は、凝集粒子100に対するAC磁場の効果を検出するための適切な技術に基づいて良い。その適切な技術とはたとえば、光学効果を測定する光検出器、磁気効果を検出する磁気検出器、電気効果を検出する電気検出器、又は音響効果を検出する音響検出器であって良い。磁気検出器が用いられる場合、その検出器はホールプローブ、又はGMR、AMR、若しくはTMRのような磁気抵抗検出器であって良い。少なくとも1つのセンサ素子は、凝集粒子に対するAC磁場の効果を測定するように備えられている。その測定された効果は1つ以上の凝集パラメータを表す。本発明のこの態様の一実施例では、当該デバイスは、凝集粒子のサイズに依存して分離プロセスを実行する分離手段をさらに有する。特別な実施例では、分離手段は、不均一な分離用磁場HSEPを発生させるように備えられた磁場発生装置であって良い。分離手段は、上述した様々な分離プロセスの機能を有する構成要素であって良い。他の特別な実施例では、当該デバイスは、単一磁性粒子の滑り周波数よりも実質的に高い周波数で動作するように発生したAC磁場の周波数を制御する制御手段を有して良い。印加したAC磁場の周波数は、少なくとも10倍、少なくとも100倍、又は少なくとも1000倍大きくて良い。
【0091】
本発明の実施例の方法は、如何なる適切な形態で実施されても良い。如何なる適切な形態には、ハードウエア、ソフトウエア、ファームウエア又はこれらの結合が含まれる。本発明(の一部の事項)は、1つ以上のデータプロセッサ及び/又はデジタル信号プロセッサで動作するコンピュータソフトウエアとして実施されても良い。本発明の実施例の素子及び構成要素は、任意の適切な方法で物理的、機能的、及び論理的に実施されて良い。特に機能は単一ユニット、複数のユニット、又は他の機能的ユニットの一部として実施されても良い。そのようなものとして本発明は、単一のユニットで実施されて良いし、又は各異なるユニットとプロセッサ間で物理的及び機能的に分配されても良い。
【0092】
本発明の実施例のデバイス、方法、及びシステムは、センサ多重化(つまり異なるセンサ及びセンサ表面の並列使用)、ラベル多重化(つまり各異なる種類のラベルの並列使用)、及びチャンバ多重化(つまり各異なるチャンバの並列使用)に適している。
【0093】
本発明に記載されたデバイス、方法、及びシステムは、迅速で、耐久性を有し、かつ容易に使用できる、小さな試料体積用のポイントオブケアバイオセンサに用いられて良い。反応チャンバが、小型読み取り装置と共に用いられ、1つ以上の磁場発生手段を有し、かつ1つ以上の検出又は測定手段を有する使い捨て装置であって良いことである。また本発明のデバイス、方法、及びシステムは、自動化された高処理能力検査で用いられても良い。この場合、反応チャンバはたとえばウエルプレート又はキューベットのような自動装置に適合したものである。
【0094】
本発明の実施例について記載した凝集アッセイは、高速処理システム-たとえばマイクロタイタープレート又はガラス瓶を備えたシステム及びフローシステム(フローサイトメトリー)-にとって非常に適している。しかもクラスタアッセイはアッセイのリアルタイム観察を行う能力を有する。これはたとえばリアルタイムPCRにとって興味深い。
【0095】
しかも本発明の実施例のデバイス及び方法はクラスタの高並列検出に適している。多くのクラスタの検出は並列に行われて良い。これにより、その手法は迅速かつ正確な測定にとって適したものとなる。
【0096】
本発明によるデバイスについて、好適実施例、特定の構造、構成、及び材料が論じられているとはいえ、本発明の技術的範囲から逸脱することなく、様々な詳細及び形式を変化させたものや修正したものを設計することが可能であることに留意すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応チャンバ内で行われる標的誘起凝集アッセイでの1つ以上の磁性粒子の凝集を測定する方法であって:
前記アッセイ内に、標的と結合することのできる磁性粒子を供する手順;
前記磁性粒子を少なくとも1つ含む凝集粒子を生成する凝集プロセスを実行する手順;
前記反応チャンバ内において前記アッセイに交流磁場(HAC)を印加する手順;及び
前記反応チャンバの表面に付着しない前記1つ以上の磁性粒子への前記HACの効果を、少なくとも1つのセンサ素子によって測定する手順であって、前記の測定された効果は1つ以上の凝集パラメータを表す手順;
を有する方法。
【請求項2】
センサ付近に磁性粒子を集中させる手順をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凝集粒子のサイズに依存した分離プロセスを実行する手順をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記HACが、単一磁性粒子の臨界滑り周波数よりも顕著に高い周波数を有する、請求項1乃至3に記載の方法。
【請求項5】
前記の効果を測定する手順が、磁気信号、光信号、若しくは電気信号、又は上記の結合を測定する手順を有する、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記アッセイが前記少なくとも1つのセンサ素子表面付近に設けられている、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
発生した前記HACの方向が前記少なくとも1つのセンサ素子表面に対して実質的に平行である、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記分離プロセスが、前記アッセイにおいて前記1つ以上の磁性粒子の少なくとも一部に作用する磁力によって実行され、
前記磁力は分離用不均一磁場(HSEP)を起源とする、
請求項3及び上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
分離のために印加される前記磁場(HSEP)が前記AC磁場とは異なる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記凝集プロセスを改善するために凝集改善用磁場(HENH)が印加される、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記HACの効果が長時間にわたって測定される、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記凝集粒子のサイズ分布を決定する手順をさらに有する、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記分離プロセスから生じる前記凝集粒子のサイズ割合を複数のセンサを用いて測定する手順をさらに有する、請求項3及び上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記アッセイが生化学アッセイである、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項1乃至14に記載の方法によって標的誘起凝集アッセイにおいて粒子の1つ以上の凝集パラメータを定量的に測定する道具一式であって、標的と結合する能力を有する少なくとも1つの磁性粒子を有する道具一式。
【請求項16】
標的誘起凝集アッセイにおいて1つ以上の凝集パラメータを測定するデバイスであって、
当該デバイスは:
少なくとも1つの磁性粒子を有するように粒子を凝集させる凝集プロセスを実行する凝集手段であって、前記の凝集した粒子は表面へは付着しない、凝集手段;
少なくとも1つのセンサ素子;及び
前記アッセイにAC磁場を印加する磁場発生手段;
を有し、
前記センサ素子は、付着しない凝集粒子のうちの1つ以上の磁性粒子に対するAC磁場の効果を測定するように備えられ、
前記の測定された効果は1つ以上の凝集パラメータを表す、
デバイス。
【請求項17】
前記センサ表面付近に粒子を集中させる集中プロセスを実行する集中手段、及び/又は前記凝集粒子のサイズに依存して分離する分離プロセスを実行する分離手段をさらに有する、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
単一磁性粒子の臨界滑り周波数よりも顕著に高くなるように前記の発生したAC磁場の周波数を制御する制御手段をさらに有する、請求項16乃至17に記載のデバイス。
【請求項1】
反応チャンバ内で行われる標的誘起凝集アッセイでの1つ以上の磁性粒子の凝集を測定する方法であって:
前記アッセイ内に、標的と結合することのできる磁性粒子を供する手順;
前記磁性粒子を少なくとも1つ含む凝集粒子を生成する凝集プロセスを実行する手順;
前記反応チャンバ内において前記アッセイに交流磁場(HAC)を印加する手順;及び
前記反応チャンバの表面に付着しない前記1つ以上の磁性粒子への前記HACの効果を、少なくとも1つのセンサ素子によって測定する手順であって、前記の測定された効果は1つ以上の凝集パラメータを表す手順;
を有する方法。
【請求項2】
センサ付近に磁性粒子を集中させる手順をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凝集粒子のサイズに依存した分離プロセスを実行する手順をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記HACが、単一磁性粒子の臨界滑り周波数よりも顕著に高い周波数を有する、請求項1乃至3に記載の方法。
【請求項5】
前記の効果を測定する手順が、磁気信号、光信号、若しくは電気信号、又は上記の結合を測定する手順を有する、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記アッセイが前記少なくとも1つのセンサ素子表面付近に設けられている、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
発生した前記HACの方向が前記少なくとも1つのセンサ素子表面に対して実質的に平行である、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記分離プロセスが、前記アッセイにおいて前記1つ以上の磁性粒子の少なくとも一部に作用する磁力によって実行され、
前記磁力は分離用不均一磁場(HSEP)を起源とする、
請求項3及び上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
分離のために印加される前記磁場(HSEP)が前記AC磁場とは異なる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記凝集プロセスを改善するために凝集改善用磁場(HENH)が印加される、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記HACの効果が長時間にわたって測定される、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記凝集粒子のサイズ分布を決定する手順をさらに有する、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記分離プロセスから生じる前記凝集粒子のサイズ割合を複数のセンサを用いて測定する手順をさらに有する、請求項3及び上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記アッセイが生化学アッセイである、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項1乃至14に記載の方法によって標的誘起凝集アッセイにおいて粒子の1つ以上の凝集パラメータを定量的に測定する道具一式であって、標的と結合する能力を有する少なくとも1つの磁性粒子を有する道具一式。
【請求項16】
標的誘起凝集アッセイにおいて1つ以上の凝集パラメータを測定するデバイスであって、
当該デバイスは:
少なくとも1つの磁性粒子を有するように粒子を凝集させる凝集プロセスを実行する凝集手段であって、前記の凝集した粒子は表面へは付着しない、凝集手段;
少なくとも1つのセンサ素子;及び
前記アッセイにAC磁場を印加する磁場発生手段;
を有し、
前記センサ素子は、付着しない凝集粒子のうちの1つ以上の磁性粒子に対するAC磁場の効果を測定するように備えられ、
前記の測定された効果は1つ以上の凝集パラメータを表す、
デバイス。
【請求項17】
前記センサ表面付近に粒子を集中させる集中プロセスを実行する集中手段、及び/又は前記凝集粒子のサイズに依存して分離する分離プロセスを実行する分離手段をさらに有する、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
単一磁性粒子の臨界滑り周波数よりも顕著に高くなるように前記の発生したAC磁場の周波数を制御する制御手段をさらに有する、請求項16乃至17に記載のデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2010−513913(P2010−513913A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542357(P2009−542357)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/IB2007/055195
【国際公開番号】WO2008/075285
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/IB2007/055195
【国際公開番号】WO2008/075285
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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