処理した脂肪性組織および処理した脂肪性組織の生産物の移入のための組成物および方法
この発明は、処理された脂肪性組織の調製のための組成物および方法を提供する。この発明はさらに、処理された脂肪性組織の使用の方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照 この出願は、2009年8月11日付け出願の仮出願番号第61/232,915号に優先権を主張する。この出願は2008年2月11日付け出願の米国仮特許出願番号第61/065322号、およびPCT国際出願第PCT/US2009/00887号に関連し、それは2009年2月11日に出願し、そして国際公開第WO 2009/102452号として2009年8月20日に国際公開された。これらの出願のすべては、参照することによってそれらの全体についてここに組み込む。
【背景技術】
【0002】
再生医療の分野は、組織代用をトラウマ(外傷性傷害)、病気または先天性異常の次に続く再構築のために提供することを目標とする。バイオマテリアル(生物物質)および細胞は、新しい組織を再生させるためにしばしば使用される一方、これらの方法は、高価であり、そして新しい組織形成のために著しい時間を必要とする傾向がある。軟組織の形態の修復(Restoration)は、トラウマ再構築、胸部再構築、および化粧品〔鼻唇溝(nasolabial folds)、しわ、その他〕を含む多数の適用のために重要である。概ね、2つの取組みが目下存在し、1)生物学的組織(脂)の注入/伝達または2)合成または自然由来材料の注入または移植である。双方の場合とも、結局、移植された組織またはバイオマテリアルは分解され、そして交換が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際出願第US2009/00887号〔2009年2月11日出願、国際公開第2009/102452号(2009年8月20日国際公開)〕
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
患者組織を用いる再構築は、時として組織の永久修復を提供することができる。しかし、そのような手法にも、それらの限界がある。乳腺切除後の胸部再構築は、再構築部位の方へ引っ張られる腹部または背中のいずれかからの筋肉および脂肪性組織の組織フラップ(皮弁)の使用を含みうる。そのようなフラップは大きさにおいて使用のために女性に存在する組織の量によって必然的に制限され、そして腹部または背中からの筋肉の移動は、回復時間を延ばし、そしてドナー(供与)部位の病的状態をもたらすことができる。ファットトランスファー(脂の移動)の持続は、30-90%の間のどこかでの報告を伴って広くて変化する。また持続は、しばしば外科医および技術に依存性である。持続のそのような損失は、望ましい訂正を維持するために複数の手順に要求する。また、自家の脂の移動と関連したドナー部位の病的状態は、重大な関心事でもある。そのうえ、移植された脂肪性組織は、しばしば手術後の石灰化に至る。この現象は、石灰化がマンモグラフィーの読みに干渉するかもしれず、複数の、不必要な胸部生検および不安をもたらすかもしれないので、乳房切除後胸部再構築を経る乳がんの経歴がある女性にとって特に重要である。最後に、がんのために化学療法および放射線を経験する多くの患者には、関連する悪液質は、それらの者を、それらが自家の脂の移動を必要とする脂肪のボリューム(大きな塊)がないようにする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概略 本発明は、処理された脂肪性組織組成物およびそれらの調製および使用のための方法を提供する。
【0006】
本発明は、生細胞(生存細胞)が確実に(安全に)付着する脱細胞化された(decellularized)脂肪性組織細胞外基質を有する処理された脂肪性組織を含む組成物を提供する。
【0007】
本発明の処理された脂肪性組織は、麻酔剤、鎮痛剤、抗生物質、抗菌剤、増殖因子類、低温保存剤、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャー(遊離基消去剤)、カスパーゼインヒビター(カスパーゼ抑制剤)、ビタミン、リポアスピレート(脂肪吸引物)、および細胞からなる群からの少なくとも1種(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12)の物質を含むことができる。
【0008】
一定の具体例において、脱細胞化された脂肪は、架橋剤を含む。架橋剤には、制限されないが、カルボジイミド(EDC)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde、glutaraldehyde)、プロアントシアニジン、リボース、トレオース、およびリジルオキシダーゼ、カルボジイミド、ポリエポキシエーテル類、ジビニルスルホン(DVS)、ゲニピン(genipin)、ポリアルデヒドおよびジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ゲニピン、エポキシ化合物類、ジアルデヒドでんぷん、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジメチルスベルイミデート(suberimidate)、カルボジイミド類、サクシニミジル類、ジイソシアナート類、およびアシルアジド(アジ化物);またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0009】
一定の具体例において、処理された脂肪性組織には、バイオポリマースキャフォールド(生物高分子足場)が更に含まれる。一定の具体例において、処理された脂肪性組織およびバイオポリマースキャフォールドには、バイオポリマー(生物高分子)の架橋剤が更に含まれる。一定の具体例において、処理された脂肪性組織には、重合イニシエーターが含まれる。
【0010】
生物高分子足場には、制限されないが、ヒアルロン酸、PEG-DA、コンドロイチン硫酸、部分的にか、または完全に加水分解されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体類〔ポロキサマー類およびメロキサポール類(meroxapols)〕、ポロキサミン類(poloxamines)、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキル化セルロース類、ポリペプチド類、多糖類または糖質類(炭水化物類)、フィコール(商標)〔Ficoll(R)〕ポリスクロース、デキストラン、ヘパラン硫酸、ヘパリン、アルギン酸、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、オボアルブミン、およびそれらの共重合体類またはブレンド類が含まれる。
【0011】
重合イニシエーターには、エオシンY、1-ビニル2-ピロリドンNVP、およびトリエタノールアミン;およびイルガキュア(Irgacure)D2959が含まれる。
【0012】
一定の具体例において、処理された脂肪性組織には、基底膜が基本的にない。一定の具体例では、処理された脂肪性組織には、基底膜が含まれる(すなわち、本質的にフリーではない)。
【0013】
本発明の処理された脂肪性組織は、対象体に移入される(implanted)とき、実質非免疫原性であるのが好ましい。
【0014】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、0.2μg/mgまたはそれより少ない(すなわち、DNAの未検出レベルからDNAの0.2μgまで)、0.1μg/mgまたはそれより少ない、0.05μg/mgまたはそれより少ない、0.025μg/mgまたはそれより少ない、0.1μg/mgまたはそれより少ない、または0.005μg/mgまたはそれより少ないDNAを含む。
【0015】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、10%またはそれより少ない(すなわち、脂質の未検出レベルから10%の脂質まで)、5%またはそれより少ない、2%またはそれより少ない、1%またはそれより少ない、0.5%またはそれより少ない、0.25%またはそれより少ない、0.1%またはそれより少ない、0.05%またはそれより少ない、0.01%またはそれより少ない、0.001%またはそれより少ない脂質(w/w)を含む。
【0016】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、104-105Pas;1×104-3×105Pas;2×104-2×105Pas;3×104-1×105Pas;1×104-8×105Pas;または1×104-9×105Pas;またはそれらの範囲の任意の組合せの複素粘度(η)を有する。
【0017】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの複素モジュラス(G*)を有する。
【0018】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの弾性率(G’)を有する。
【0019】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの粘性係数(viscous modulus)(G’’)を有する。
【0020】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、0.1-0.2;0.1-0.5;0.1-1.0;0.1-0.3;0.1-0.4;0.1-0.75;0.05-0.5;または0.05-2.0;またはこれらの範囲の任意の組合せのタン(δ)を有する。
【0021】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、組成物中に存在するコラーゲンの50%またはそれよりも多く、60%またはそれよりも多く、70%またはそれよりも多く、80%またはそれよりも多くまたは90%またはそれよりも多く(またはそれらの値によって括弧でくくられる任意の範囲)を含み、それはI型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、XII型コラーゲンからなる群より選ばれる。
【0022】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、組成物中に存在するグリコサミノグリカン類(GAGs)の50%またはそれよりも多く、60%またはそれよりも多く、70%またはそれよりも多く、80%またはそれよりも多くまたは90%またはそれよりも多く(またはそれらの値によって括弧でくくられる任意の範囲)を含み、それはヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン硫酸からなる群より選ばれる。
【0023】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、水に不溶である。
【0024】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、本出願において提供される任意の方法を用いて調製される。
【0025】
一定の具体例では、脂肪性組織はヒト(人間)の脂肪性組織である。一定の具体例では、脂肪性組織はブタの脂肪性組織である。一定の具体例では、脂肪性組織は生きたドナー(供与体)からである。一定の具体例では、脂肪性組織は死体ドナーからである。
【0026】
本発明は、処理された脂肪性組織(PAT)、特にヒトの脂肪性組織(PhAT)の調製のための方法を提供し、それには、順次に、固形脂肪性組織を含む哺乳類組織を提供すること、組織中の非脂肪物質から脂肪を分離すること、および脂肪を脱細胞化すること、または脂肪から脂質を抽出すること、またはそれらの双方が含まれる。脂肪を脱細胞化するか、または脂肪から脂質を抽出するための方法には、脂質および細胞の除去を促進し、処理された脂肪性組織を調製するために、緩衝剤を用いて脂肪を操作することが含まれる。そのような緩衝剤には、リン酸緩衝塩類(PBS)が含まれる。脱細胞化を促進するための薬剤には、弱有機酸のような弱酸、非イオン性洗浄剤、および胆汁酸の一またはそれよりも多くが含まれうる。緩衝剤または薬剤による脂肪の、生理的pHでのか、またはおよその生理的pHでの処置の後、緩衝剤により脂肪のpHを生理的pHに合わせる。本発明は、脂肪を超臨界CO2と接触させることを含む脂肪を脱細胞化するか、または脂肪から脂質から抽出するための方法を提供する。また、本発明の方法は、核酸を除去するために、物質のヌクレアーゼ処理を含む。
【0027】
脂肪性組織の供給源は哺乳類の脂肪性組織である。十分な出発物質を提供するために、哺乳類の脂肪性組織は、任意の哺乳類から、最も好都合なことには、より一層大きな哺乳類からでも得られうる。好ましい具体例において、脂肪性組織は、ヒト脂肪性組織またはブタ脂肪性組織であり、生きた、または死体ドナーからのものである。
【0028】
一定の具体例において、処理された脂肪性組織はさらに、粒子に形成される。一定の具体例では、脱細胞化された/脂質抽出された脂肪性組織はさらに、たとえば、コラーゲンのような、処理された脂肪性組織に存在するタンパク質を架橋するために、架橋剤と接触される。そのような方法に用いられる架橋剤には、制限されないが、カルボジイミド(EDC)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde、glutaraldehyde)、プロアントシアニジン、リボース、トレオース、およびリジルオキシダーゼ、ポリエポキシエーテル類、ジビニルスルホン(DVS)、ゲニピン(genipin)、ポリアルデヒドおよびジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ゲニピン、エポキシ化合物類、ジアルデヒドでんぷん、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジメチルスベルイミデート(suberimidate)、カルボジイミド類、サクシニミジル類、ジイソシアナート類、およびアシルアジド(アジ化物);またはそれらの任意の組合せが含まれる。架橋剤と脱細胞化された/脂質抽出された脂肪性組織の特定の比は、たとえば、用いられる特定の架橋剤および処理された脂肪性組織の最終的な用途に依存する。標準的な生物物理学的または生化学的アッセイ方法を使用して決定することができる処理された脂肪性組織の望ましい物性に基づいて、用いられる架橋剤の量を定める。
【0029】
一定の具体例において、脱細胞化された/脂質抽出された脂肪性組織はさらに、バイオポリマースキャフォールド(生物高分子足場)と組み合わされる。一定の具体化において、脱細胞化された/脂質抽出された脂肪性組織および生物高分子足場はおよびさらに、バイオポリマー(生物高分子)の架橋剤と組み合わせることを含み、その混合物はさらに、重合剤、およびさらに随意に重合イニシエーターと接触させることができる。
【0030】
脱細胞化された/脂質抽出された脂肪性組織と共に用いられるバイオ適合性ポリマー(生物適合性重合体)には、制限されないが、ヒアルロン酸、PEG-DA、コンドロイチン硫酸、部分的にか、または完全に加水分解されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体類〔ポロキサマー類およびメロキサポール類(meroxapols)〕、ポロキサミン類(poloxamines)、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキル化セルロース類、ポリペプチド類、多糖類または糖質類(炭水化物類)、フィコール(商標)〔Ficoll(R)〕ポリスクロース、デキストラン、ヘパラン硫酸、ヘパリン、アルギン酸、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、オボアルブミン、およびそれらの共重合体類またはブレンド類が含まれる。
【0031】
脱細胞化された/脂質抽出された脂肪性組織と共に用いられる重合イニシエーターには、制限されないが、そこでは、重合イニシエーターは、エオシンY、1-ビニル2-ピロリドンNVP、およびトリエタノールアミン;およびイルガキュア(Irgacure)D2959からなる群より選ばれる薬剤を含む。一定の具体例において、重合イニシエーターには、光が含まれる。
【0032】
ここに提供する処理された脂肪性組織の調製のための方法には、脂肪をヌクレアーゼ、非特異的、または部位特異的DNase(デオキシリボヌクレアーゼ)および/またはRNase(リボヌクレアーゼ)のいずれかと接触させることを含むことができる。一定の具体例において、脂肪性組織は、脱細胞化および/または脂質抽出の後にヌクレアーゼと接触される。
【0033】
一定の具体例において、処理された脂肪性組織の調製のための方法には、脂肪を、それらの方法の一またはそれよりも多くのステップにてプロテアーゼインヒビターと接触させることを含むことができる。好ましい具体例において、プロテアーゼインヒビターは生物適合性であり、またはプロテアーゼインヒビターは、最終的な処理された脂肪性組織が生物適合性であるように、処理の間に、実質除去されるか、または不活化される。
【0034】
方法は、処理された脂肪性組織を、たとえば、照射または適切なガスとの接触によって殺菌することを随意に含む。
【0035】
一定の具体例において、処理された脂肪性組織は、他の薬剤と組み合わせられ、それには、制限されないが、麻酔剤、抗生物質、増殖因子類、低温保存剤、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャー(遊離基消去剤)、カスパーゼインヒビター(カスパーゼ抑制剤)、ビタミン、リポアスピレート(脂肪吸引物)、および細胞が含まれる。一定の具体例において、追加の薬剤は、処理された脂肪性組織の貯蔵に先立って加えられる。一定の具体例において、追加の薬剤は、貯蔵後、処理された脂肪性組織のエンドユーザー(最終使用者)による使用の時間のより一層近くで加えられる。
【0036】
一定の具体例において、処理された脂肪性組織は、基底膜が基本的にない。脂肪性組織が脈管構造を含み、およびそれによって基底膜を含むが、本発明の一定の処理方法は脈管構造を除去するのに役立ち、そしてそれによって基底膜が除去される。一定の具体例において、処理された脂肪性組織はスペースを定めないか、または基底膜のようにスペースを仕切らず、例えば、細胞不浸透性のバリアを提供する。
【0037】
本発明の一定の具体例では、処理された脂肪性組織は基底膜を含む。本発明の一定の具体例では、処理された脂肪性組織は、元の組織から、脈管構造、または脈管構造のレムナント(残余物)を含む。
【0038】
本発明は、本発明の方法のいずれかによって作成される組成物を提供する。本発明によって提供される組成物は、製薬上の組成物、たとえば、注入可能または、さもなければ移入可能な製薬上の組成物に調製することができる。
【0039】
本発明はさらに、本発明の組成物のいずれかを作成するためのキットを提供する。また、本発明は、対象体でのバイオフィラー(生物注入剤)としての使用のための本発明の組成物のいずれかを含むキットを提供する。キットは、キットの使用のために、指示書を含むことができる。
【0040】
本発明により提供される組成物はさらに、一またはそれよりも多くの物質を、脱細胞化された/脂質抽出された脂肪性組織において含むことができ、それには、制限されないが、麻酔剤、鎮痛剤、抗生物質、抗菌剤、増殖因子類、低温保存剤、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャー(遊離基消去剤)、カスパーゼインヒビター(カスパーゼ抑制剤)、ビタミン、リポアスピレート(脂肪吸引物)、および細胞が含まれる。
【0041】
本発明の一定の組成物には、たとえば、脱細胞化された/脂質抽出された脂肪性組織のコラーゲン分子のように、タンパク質分子の間で交差結合類を提供するために架橋剤がさらに含まれる。そのような架橋剤には、制限されないが、カルボジイミド(EDC)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde、glutaraldehyde)、プロアントシアニジン、リボース、トレオース、およびリジルオキシダーゼ、カルボジイミド、ポリエポキシエーテル類、ジビニルスルホン(DVS)、ゲニピン(genipin)、ポリアルデヒドおよびジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ゲニピン、エポキシ化合物類、ジアルデヒドでんぷん、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジメチルスベルイミデート(suberimidate)、カルボジイミド類、サクシニミジル類、ジイソシアナート類、およびアシルアジド(アジ化物);またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0042】
本発明の一定の組成物はさらに、生物高分子足場を含み、随意にさらに生物高分子の架橋剤、重合剤、および重合開始剤の一またはそれよりも多くを有する。
【0043】
生物高分子足場の例には、制限されないが、ヒアルロン酸、PEG-DA、コンドロイチン硫酸、部分的にか、または完全に加水分解されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体類〔ポロキサマー類およびメロキサポール類(meroxapols)〕、ポロキサミン類(poloxamines)、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキル化セルロース類、ポリペプチド類、多糖類または糖質類(炭水化物類)、フィコール(商標)〔Ficoll(R)〕ポリスクロース、デキストラン、ヘパラン硫酸、ヘパリン、アルギン酸、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、オボアルブミン、およびそれらの共重合体類またはブレンド類からなる群より選ばれるポリマーが含まれる。重合イニシエーターの例には、制限されないが、エオシンY、1-ビニル2-ピロリドンNVP、およびトリエタノールアミン;およびイルガキュア(Irgacure)D2959が含まれる。
【0044】
一定の具体例において、処理された脂肪性組織は、スペースを規定せず、またはスペースを仕切らない。
【0045】
本発明によって提供される組成物は、それらをバイオフィラーとして有用にする一またはそれよりも多くの特性を有する。たとえば、処理された脂肪性組織は、生細胞が確実に(安全に)付着し、そして増殖することができる脱細胞化脂質である。好ましい具体例において、組成物は、対象体に移入するとき実質非免疫原性である。一定の具体例において、組成物は、DNAが本質的に含まれず、処理された脂肪性組織が、0.2μg/mgまたはそれよりも低く(0.2μg/mg以下)、0.2μg/mg以下、0.1μg/mg以下、0.05μg/mg以下、0.025μg/mg以下、0.1μg/mg以下、または0.005μg/mg以下のDNAを有するほどである。一定の具体例において、組成物は、本質的に脂質が含まれず、処理された脂肪性組織が10%またはそれよりも少ない(10%以下)、5%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.25%以下、0.1%以下、0.05%以下、0.01%以下、0.001%以下の脂質(w / w)を有するほどである。
【0046】
本発明の組成物の生物物理学的特性は、任意の公知の方法によって定めることができる。一定の具体例では、処理された脂肪性組織は、104-105Pas;1×104-3×105Pas;2×104-2×105Pas;3×104-1×105Pas;1×104-8×105Pas;または1×104-9×105Pas;またはそれらの範囲の任意の組合せの複素粘度(η)を有する。一定の具体例において、処理された脂肪性組織は、103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの複素モジュラス(G*)を有する。一定の具体例において、処理された脂肪性組織は、103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの弾性率(G’)を有する。一定の具体例において、処理された脂肪性組織は、103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの粘性係数(viscous modulus)(G’’)を有する。一定の具体例では、処理された脂肪性組織は、0.1-0.2;0.1-0.5;0.1-1.0;0.1-0.3;0.1-0.4;0.1-0.75;0.05-0.5;または0.05-2.0;またはこれらの範囲の任意の組合せのタン(δ)を有する。
【0047】
本発明によって提供される処理された脂肪性組織は好ましくは、組成物中に存在するコラーゲンの50%またはそれよりも多く(50%以上)、60%以上、70%以上、80%以上または90%以上を含み、それらは脂肪に存在する種類から選ばれる。コラーゲンの種類には、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、XII型コラーゲンが含まれる。
【0048】
本発明によって提供される処理された脂肪性組織は好ましくは、組成物中に存在するグリコサミノグリカン(GAGs)の60%以上、70%以上、80%以上または90%以上を含み、それらは脂肪性組織に存在する種類から選ばれる。GAGsの種類には、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン硫酸が含まれる。
【0049】
本発明は、本発明の場合の組成物の使用の方法を提供し、それには処理された脂肪性組織を対象体に移入する方法を含む。そのような方法には、処理された脂肪性組織の移入が必要な対象体を識別すること、処理された脂肪性組織の移入が必要な対象体での部位を識別すること、および処理された脂肪性組織を対象体に識別された部位で移入することを含む。移入の方法は、ここに提供するいずれかの組成物を用いてでも実行することができ、またはここに提供する方法によって行うことができる。移入のための方法はさらに、移入された物質の持続性、および/または細胞のインプラント(移入体)への浸入、および/または移入された物質に対する対象体の耐性について対象体を監視するための方法を含むことがでる。監視は、ここに提供する方法のような任意の既知の方法を用いて実行することができる。
【0050】
本発明は処理された脂肪性組織(PAT)、特に処理されたヒト脂肪性組織(PhAT)の調製のための方法を提供し、それには、順次、固形脂肪を含む哺乳類組織、たとえば、皮下脂肪性組織のようなものを得ること、組織中の非脂肪物質から脂肪を、たとえば、スクレーピング(こすり落とすこと)によって分離すること、および順に、脂質および細胞の除去を促進し、処理された脂肪性組織を調製するために、一またはそれより多くの緩衝剤を用い、または超臨界の二酸化炭素(CO2)による処置(たとえば、米国特許第4,466,923号明細書参照、ここに参照するによって組み込まれる)によって操作することが含まれる。哺乳類の脂肪性組織は、任意の哺乳動物からでも、最も好都合なことには、十分な出発物質を提供するために、より一層大きな哺乳動物から得ることができる。
【0051】
分離した脂肪の操作の間に使用する緩衝剤には、生理的pHおよびイオン強度の緩衝剤、たとえば、リン酸緩衝塩類(PBS)または生理的塩類溶液のようなものが含まれる。固形脂肪の脱細胞化または脂質抽出を促進するために、緩衝剤は、弱酸、弱有機酸、非イオン性洗浄剤、または胆汁酸、またはその組合せのような化合物であることができる。
【0052】
本発明は、また、分離した脂肪が一またはそれよりも多くのヌクレアーゼ、たとえば、材料に存在することがある核酸の分解を促進するために、DNase(デオキシリボヌクレアーゼ)およびRNase(リボヌクレアーゼ)と接触させることもできる方法を提供する。ヌクレアーゼとの接触は任意のステップで実行することができるが、好ましくは脱細胞化ステップの後に実行され、それは脱細胞化プロセスが細胞を壊して開けることができ、それらを分解のためにより一層利用可能にする核酸が放出される。
【0053】
本発明により提供する処理された脂肪性組織にはまた、バイオポリマースキャフォールド(生物高分子足場)をつくるために、バイオポリマー(生物高分子)および脂肪性組織から派生した物質の間に加え、生物高分子の分子の範囲内、およびその間で分子架橋を生じさせるために、生物高分子および生物高分子架橋剤が含まれうる。これらの生物高分子は、制限されないが、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、コラーゲン、エラスチン、ラミニンからなることができる。
【0054】
本発明は、たとえば、管理(投与)を容易にするために、本発明での処理された脂肪性組織を粒子に形成するための方法を提供する。本発明は、処理された脂肪性組織を一またはそれよりも多くの架橋剤および/または生物高分子足場と随意に結合するための方法を提供する。生物高分子足場は予め架橋されえ(たとえば、架橋したヒアルロン酸)、またはなんらの更なる薬剤がない場合でも生物高分子が架橋された構造を形成することが可能になるように(たとえば、官能化されたコンドロイチン硫酸)、官能基を含むことができる。あるいはまた、生物高分子足場は、架橋剤および重合イニシエーターの使用を必要とすることがある。重合イニシエーターは、化学的開始剤または光を含むことができる。本発明は、生物高分子足場の重合のための方法を提供する。
【0055】
本発明はさらに、本発明のいずれかの方法によって作成される組成物を提供し、それには任意のプロセシング中間体(処理中間体)が含まれる。
【0056】
本発明はさらに、この発明のいずれかの組成物のバイオマテリアル(生物物質)としての使用を提供し、それには、たとえば、組織再構築または回復のために、任意のプロセシング中間体が含まれる。本発明は、この発明の組成物を、適切なキャリヤー(担体)での投与のために提供する(たとえば、塩類溶液、緩衝剤類で、抗生物質類(antiobiotics)、麻酔剤類、増殖因子類、または他の細胞外基質成分、または注入のより一層大きな容易さのための粘度を提供する物質を伴うか、または伴わないもの)。
定義
【0057】
ここに用いるように、「無細胞の」は、細胞を、生存しているか、または生きられない、全体またはフラグメント(断片)を含まず、または十分に少数の細胞または細胞性物質しか含まず、細胞の存在が、その物質を移入される対象体での免疫反応を生じさせるのに十分でないほどのものとして理解される。細胞は、供給源の組織から、たとえば、機械的または化学的方法、またはその組合せによって除去することができる。
【0058】
「無細胞の脂肪性生物適合性の生物物質」は、また、「処理された脂肪性組織」または「PAT」と称され、ドナー(供与体)から、たとえば、生きたドナー(たとえば、自家の供与、脂肪吸引術または腹壁形成術のような美容の外科的処置の副産物)または組織バンク(たとえば、生きたドナー、死体ドナー)から得られる脂肪性組織から導き出された組成物として理解される。組成物は皮下の脂(脂肪)、内蔵の脂、白色の脂、褐色の脂、脂組織〔たとえば、リポアスピレート(リポ吸引物)〕を含む混合された細胞集団またはその任意の組合せから由来することができる。第一のステップにおいて、脂肪は組織試料において非脂肪性物質から、分離された脂肪を調製するために、たとえば、真皮または周囲の器官から脂肪をこすり落とすこと、リポ吸引物を仕切ることによって分離された。分離したものは、脂細胞および脂質成分を除去するために、化学的および/または機械的な方法を用いて処理される。その物質は好ましくは、対象体において移入に先立ってプロセスによって除去されない任意の残留する細胞を死なすために処理される。その物質は好ましくは、その材料に存在する場合がある任意の潜在的に免疫原性の核酸を破壊するために一以上のヌクレアーゼ、たとえば、DNaseおよび/またはRNaseで処理される。その材料が無細胞性であるとき、それは非免疫原性である。したがって、組成物は、非自家で移入することができる。さらに、材料は、再構築的な、および美容の外科的手術に用いるための「容易に入手可能な」生産物として用いることができる。組成物は、対象体への移入に先立って他の物質と組み合わせることができ、それには他の生物物質または生物高分子、細胞または細胞性物質、たとえば、制限されないが、生体幹細胞、間葉系幹細胞(間充織幹細胞)、脂肪派生間葉系幹細胞、胚性幹細胞(ES細胞)、誘導多能性幹細胞、線維芽細胞、脂肪細胞を含む自家であるか、またはドナーの細胞が含まれる。
【0059】
用語「活性薬剤」および「生物学的に活性な薬剤」は、望ましい薬理学的、生理的効果を誘発する、化学的または生物学的な化合物に言及するために、ここでは互換的に用いられ、そこでは、その効果は予防上または治療上であることができる。これらの用語はまた、ここに特に記載するそれらの活性な薬剤の薬学的に許容可能な、薬理学的に活性な誘導体を包含し、制限されないが、塩類、エステル類、アミド類、プロドラッグ類、活性代謝物質類、類似物類、などが含まれる。用語「活性薬剤」、「薬理学的に活性な薬剤」および「薬物」を用いる時、その結果として、本出願人がそれ自体活性な薬剤ならびに薬理学的に許容可能な、薬理学的に活性な塩類、エステル類、アミド類、プロドラッグ類、代謝物質類、類似物類、その他を含めることを意図することを理解すべきである。
【0060】
ここに用いるように、「麻酔剤」は知覚または感受性の不足を提供する薬剤として理解される。この発明との関連では、麻酔剤は典型的に局所で作用する麻酔薬であり、知覚または感受性の縮小を薬剤により接触された組織に提供する。局所麻酔薬には、制限されないが、ベンゾカイン、クロロプロカイン、コカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン(dimethocaine)/ラロカイン(larocaine)、プロポキシカイン、プロカイン/ノボカイン、プロパラカイン、テトラカイン/アメトカイン、アルチカイン、ブピバカイン、カルチカイン、シンコカイン/ジブカイン、エチドカイン、レボブピバカイン、リドカイン/リグノカイン、メピバカイン、ピペロカイン、プリロカイン、ロピバカイン、トリメカイン、サキシトキシン、およびテトロドトキシンが含まれる。
【0061】
ここに使われるように、「抗生物質」は、病原体および/または伝染性作用物(infectious agent)、細菌およびウイルスを壊すか、死なす薬剤として理解され。抗生物質には、制限されないが、細菌の細胞壁を標的とするもの(ペニシリン類、セファロスポリン類)、または細胞膜(ポリミキシン類)、または不可欠な細菌酵素への干渉(キノロン類、スルホンアミド類)が含まれ、通常事実上殺菌性である。アミノグリコシド類、マクロライド類およびテトラサイクリン類のようなタンパク質合成を標的とするものは、通常静菌的である。
【0062】
ここで用いるように、「酸化防止剤」は、スーパーオキシドおよび/または酸化ラジカルによって引き起こされる損傷の形成を低減または防止するか、またはその損傷を軽減または防止する薬剤として理解される。抗酸化物質には、フリーラジカルスカベンジャーが含まれる。ビタミンCおよびビタミンEを含む多くのビタミンは、抗酸化物質である。他の抗酸化物質には、制限されないが、アスコルビン酸(ビタミンC)、グルタチオン、メラトニン、およびトコフェロール類とトコトリエノール類(例は、ビタミンE)が含まれる。本発明で使用するための酸化防止剤は、好ましくは生物適合性がある。
【0063】
ここで用いるように、「自家の」移植、供与、などは、対象体への移入のための脂肪性組織の供給源が同じ対象体から導き出される手法として理解される。自家移植または供与には、対象体からの組織の収集および対象体への組織の再移入の間の組織の処理が含まれうる。
【0064】
ここで用いるように、「基底膜」は、上皮の基礎にある繊維の薄いシートであるように理解され、それは、器官のキャビティ(空隙)および表面、または上皮を裏打ちし、それは血管の内面を裏打ちする。基底膜の主な機能は、上皮をその下の疎性結合組織にアンカー固定することである。このことは、細胞接着分子類(CAMs)を介する細胞基質間接着により達成される。基底膜タンパク質は、表皮または内皮細胞のいずれかによって分泌され、それは、通常、物体での境界、 通例「内対外」を、物体でのルーメン(内腔)を定義するように規定し、たとえば、腸または膀胱は、表皮基底膜を有し、内側の空きスペースを外側から規定し、または分離し、または血管の内腔を縁取る内皮細胞のために、内側対外側が規定される。脂肪は、スペースを定義したり、または体腔または器官の内側対外側を分離するのに役立つことはない。脂肪性ECMは、それが基底膜をもつ血管を有する範囲に対してだけ基底膜がある(および多数の微細血管として脂)。脂肪自体は基底膜を含まない。真皮とは似ておらず、真皮が行うように、自然に生じる脂は、BMの著しい量を含まない。自然に生じる脂肪性組織は主として脂質で構成される。ここに記載した処理された脂肪性組織材料の調製後、材料は、基底膜を基本的に含まず、たとえば、80%またはそれよりも多く(以上)、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の基底膜を定義する材料は、処理された脂肪性組織から除去される。また、ここで用いるように、基底膜は、典型的に、スペース(空間)を囲み、または分けることが可能であると考えられる。
【0065】
基底膜の組成が明確に定義されている。したがって、当業者は、基底膜から導き出された材料を定めることが可能であろう。基底膜は、2つの基底層類の融合体である。それは、緻密層と称される電子密度の高い膜、約30-70ナノメートルの厚さ、および平均して30ナノメートルの直径および0.1-2マイクロメーターの厚さの網様コラーゲン(III型)原線維(その前駆体は線維芽細胞である)の基礎をなすネットワーク(網状構造)で構成される。このIII型コラーゲンは、間質マトリックスに見られる線維状コラーゲンとは対照的に、網様タイプのものである。コラーゲンに加えて、この支持性マトリックスには、固有の高分子の成分が含まれている。緻密層〔IV型コラーゲン線維で構成されているもの。パールカン(ヘパラン硫酸プロテオグリカン)がこれらの線維を被覆し、それらはヘパラン硫酸が高度にある〕および緻密層(ラミニン、インテグリン、円タクチン類、およぼジストログリカンで構成されている)が一緒に基底層を構成している。アンカリングフィブリル(固着線維)(VII型コラーゲン線維)およびミクロフィブリル〔フィブリリン(fibrilin)〕を有する基底層に付着したラミナ網様体は、まとめて基底膜として知られている。
【0066】
用語「胆汁酸」は、哺乳動物の胆汁中に主に見出されたステロイド酸として理解される。胆汁酸は洗浄剤および界面活性剤として機能することができる。胆汁酸には、制限されないが、タウロコール酸、グリココール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、およびリトコール酸が含まれる。
【0067】
ポリマーに関連して用いる時、用語「生物適合性」は技術認識される(art-recognized)。たとえば、生物適合性重合体には、それ自体が使用される濃度および量で宿主(たとえば、動物または人間)に毒性がないか、またはモノマーのまたはオリゴマーのサブユニットまたは他の副産物を宿主に有毒な濃度で生成する速度で分解される(ポリマーが分解される場合)のいずれものポリマーが含まれる。本発明の一定の具体例では、生分解は、概して生物でのポリマーの、たとえば、そのモノマーサブユニットへの分解を伴い、それは事実上毒性のないことを知ることができる。そのような分解から得られた中間体オリゴマー生成物は、異なる毒物学的な特性を有するが、しかしまたは、生分解は、酸化またはポリマーのモノマーサブユニット以外の分子を生成する他の生化学的反応を伴うことがある。結果として、一定の具体例では、患者(受動体)への移入または注入のようなインビボでの使用を対象とする生分解性ポリマーの毒物学は、1以上の毒性分析の後に定めることができる。任意の対象の組成物が生物適合性と考えられるように100%の純度を有する必要はなく、実際には、対象の組成物は上記記載された生物適合性であることだけが必要である。それゆえ、対象の組成物は、99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、60%、50%またはさらにそれよりも少ない生物適合性ポリマーを含有するポリマーを含むことができ、ここに記載するポリマーおよび他の材料および賦形剤が含まれ、そしてそれはまだ生物適合性である。
【0068】
ポリマーまたは他の材料が生物適合性であるかどうかを判断するためには、毒性分析を行う必要があるかもしれない。そのようなアッセイはこの技術でよく知られている。このようなアッセイの一例は、次の方法において、GT3TKB腫瘍細胞のような生きたガン腫細胞を用いて実行することができる。完全な分解が観察されるまで、試料は37℃で1MのNaOHにおいて分解される。次いで、この溶液を1MのHClで中和される。分解した試料生成物の種々の濃度のものの約200μLを、96ウェル組織培養プレートに置き、104/ウェルの密度でヒト胃ガン腫細胞(GT3TKB)を播種する。分解した試料生成物を、48時間GT3TKB細胞と共にインキュベーションする。アッセイの結果は、組織培養ウェルにおける分解した試料の%相対増殖対濃度としてプロットすることができる。加えて、ポリマー、ポリマーマトリックス、および本発明での処方物はまた、ラットでの皮下移入のような、よく知られるインビボ試験によって、それらが皮下移入部位での刺激または炎症の有意なレベルを引き起こさないことを確認するために評価することができる。
【0069】
生物適合性材料はまた、ここで提供する無細胞脂肪性生物物質のような、対象体への移入に適する自然に導き出される生成物を含むことができる。
【0070】
ここで用いるように、「生物適合性生物物質」は、組織の再構築、たとえば、顔の再構築、乳房再構築、注入喉頭形成術であり、HIVプロテアーゼ誘発脂肪萎縮の処置、美容整形、例えば、乳房、臀部、ふくらはぎ、胸筋、唇、および頬増強、しわ逆転、および瘢痕、外傷、先天性欠陥、手術痕、火傷、および腫瘍切除からの欠陥を含む不具合の充填のために用いることができ、それらのものは、哺乳類において、好ましくはヒト対象体で用いるために許容可能な物質である。
【0071】
ここで用いるように、「カスパーゼインヒビター」は、カスパーゼプロテアーゼの作用を防止するプロテアーゼインヒビターのクラスのものであり、またシステイン-アスパラギン酸プロテアーゼとしても知られており、それらは、アポトーシス、壊死、および炎症に関与する。カスパーゼインヒビターには、制限されないが、カスパーゼインヒビターI、II、III、カスパーゼ1インヒビターI、II、III、カスパーゼ2インヒビター、カスパーゼ3インヒビター等が含まれる。
【0072】
ここで用いる「接触する」ことは、二つ以上の構成要素(例は、生物学的適合性ポリマー、架橋剤、界面活性剤、および脂肪性細胞;皮下脂肪性組織および過酢酸)を、二つ以上の構成要素の相互作用、例は、脂肪性細胞を含むゲル状の生物重合体マトリクス形成;脂肪性組織の脱細胞化を可能にするために、十分な時間の間、そして温度、圧力、pH、イオン強度などの適切な状態の下で十分近くにまでもたらすこととして理解される。本発明に関連して、接触させることは、チューブのような反応容器において、または本発明の組成物で充填される対象体の体腔で起こりうる。
【0073】
ここで用いる「架橋」は、共有結合、イオン結合、水素結合またはその任意の組合せの形成から生じる分子間架橋および随意の分子内架橋を含む組成物言及する。「架橋可能」は、架橋した組成物を形成するために反応を経ることができる構成要素または化合物に言及する。
【0074】
ここに用いるように、「クロスリンカー」または「架橋剤」などは、互換性の反応基を有する2つの他の分子の間の、共有結合的連結、すなわち、架橋の形成を可能にさせるために、少なくとも2つの反応基を含む化合物として理解される。架橋試薬は、タンパク質または他の分子上での特定の官能基(1級アミン、スルフヒドリル、など)への反応性末端を含む。タンパク質およびペプチドでの反応のための標的でありえるいくつかの化学的基は直ちに利用でき、それらが架橋法を用いて容易に接合され、そして研究されるのを可能にする。一定の具体例において、クロスリンカーは2つの自然に生じる生物重合体、例は、この発明の処理された脂肪性組織において存在するもののようなものの間で、架橋の形成のために用いられる。そのような架橋剤には、制限されないが、カルボジイミド(EDC)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde、glutaraldehyde)、プロアントシアニジン、リボース、トレオース、およびリジルオキシダーゼ、カルボジイミド〔例は、N−(3-ジメチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド(EDC)〕、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ポリエポキシエーテル類、ジビニルスルホン(DVS)、ゲニピン(genipin)、ポリアルデヒドおよびジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ゲニピン、エポキシ化合物類、ジアルデヒドでんぷん、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジメチルスベルイミデート(suberimidate)、カルボジイミド類、サクシニミジル類、ジイソシアナート類、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)およびアシルアジド(アジ化物);またはそれらの任意の組合せ(例は、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれよりも多くの架橋剤)が含まれる。「生物重合体の架橋剤」などは、人工の生物重合体または化学的に修飾した自然に生じる生物重合体、すなわち、脂肪性組織に存在する生物重合体でないもののような生物重合体と共に使用するための架橋剤として理解される。そのような生物重合体には、制限されないが、ここで議論するヒアルロン酸、ヒドロゲルおよび他の架橋可能な親水性の、荷電されたか、またはさもなければ共有結合的に架橋可能な材料が含まれる。脂肪性組織に存在しない生物重合体と共に使用するための適切な架橋剤の選定は、ここで議論する。
【0075】
本発明の重合可能な薬剤には、モノマー、マクロマー、オリゴマー、ポリマーまたはそれらの混合物が含まれうる。重合体組成物は、単に共有結合的に架橋可能な重合体またはイオン性の架橋可能な重合体、または酸化還元化学によって架橋可能な重合体、または水素結合によって架橋された重合体、またはその任意の組合せだけからなることができる。重合可能な薬剤は実質親水性および生物学的適合性であるべきである。
【0076】
ここで用いるように、「検出すること」、「検出」などは、アッセイまたは方法を試料での特定の分析物の識別のために実行したことと理解される。試料において検出された分析物の量は、ないか、またはアッセイまたは方法の検出のレベルより低いことがある。
【0077】
用語「ゲル」は、液体および固体の間の物質の状態に言及し、そして概して、液体の媒体での膨潤した架橋重合体ネットワークとして規定される。典型的に、ゲルは、双方の固体および液体を含む二相コロイド分散体であり、そこでは、固体の量は「ゾル」と称される二相コロイド分散体でのものよりも多い。それ自体として、「ゲル」は、いくらかの液体の特性をもち(すなわち、形態は弾力的で、そして変形可能であり)、およびいくらかの固体の特性をもつ(すなわち、形態は二次元の表面で三次元を維持するのに十分に不連続である)。「ゲル化時間」、また、ここでは「ゲル時間」と称するが、組成物が適度のストレス下で非流動可能になるためにかかる時間に言及する。これは概して、弾性率G’が、粘性係数(viscous modulus)(G’’)に等しいか、または超える物理的状態に達するとき、すなわち、タン(デルタ)が1になる時〔慣習的なレオロジー(流動学的)技術を使用して定められうるとき〕に示される。
【0078】
ここで用いるように、「増殖因子」は、細胞増殖、増加および細胞分化を刺激することができる自然に発生する物質として理解される。通常は、それはタンパク質またはステロイドホルモンである。増殖因子類は、細胞増殖、分化、移動、および血管新生を含む多種多様な細胞プロセスを調節するために重要である。増殖因子類は、典型的に、細胞の間でのシグナリング分子としてはたらく。それらの例は、それらの標的細胞の表面での特定の受容体に結合するサイトカイン類およびホルモン類である。増殖因子類には、制限されないが、骨形成タンパク質(BMPs)、上皮(表皮性)増殖因子(EGF)、エリトロポイエチン(EPO)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖分化因子-9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、インシュリン様成長因子(IGF)、ミオスタチン(GDF-8)、神経増殖因子(NGF)および他のニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(PDGF)、トロンボポエチン(TPO)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-α)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、および血管内皮増殖因子(VEGF)が含まれる。
【0079】
「ヒアルロン酸」(HA)(また「ヒアルロナン」または「ヒアルロナート」として知られる)は、結合組織、上皮組織、および神経組織を通して広く分布した非硫酸化グリコサミノグリカンである。それは細胞外基質の主構成要素の1つであり、細胞の増殖および移動に対して著しく寄与し、そしてまた若干の悪性腫瘍の進行に関与することがある。HAの繰返し二糖単位は(-4GlcUAβ1-3GlcNAcβ1-)nである。ヒアルロン酸は、25,000の二糖繰返しの長さであることができる。HAの重合体類は、インビボ(生体内)で、5から20,000kDaのサイズに及ぶことができる。本発明で用いるためのヒアルロン酸は、およそ5、10、25、50、100、500、1000、2000、5000、7500、10,000、15,000または20,000kDaの分子量、または提供されるいずれか2つの分子量の間の範囲を有することができる。用いられるHAの特定のサイズは、最終使用者の選定の問題である。たとえば、より一層高い分子量のHAが多くの適用のためにより一層良好な粘性を有することは十分に理解される。より一層低い分子量のHAは血管形成であるが、しかし、より一層低い分子量のHAはまた、より一層高い分子量のHAよりも強い炎症反応を生成する。そのような配慮は、この技術での熟練者に十分に理解される。
【0080】
ここで用いるように、「ヒドロゲル」は、水の大きな容量分率(volume fraction)を含むことができる親水性架橋重合体として理解される。より一層好ましくは、本発明に従うヒドロゲルは、およそ70-90容量%を超える水を含むことができる。親水性重合体がインサイツ(原位置)に形成されるとき、それは水を本質的に環境から、またはヒドロゲルをつくるのに用いられる溶液から得ることができる。
【0081】
ここで用いるように、特に「分離した脂肪」に用いるような「分離した」は、この発明の生物物質の一つ以上の調製を可能にするために非脂肪性組織または細胞を脂肪性細胞外基質、組織、または細胞から分離することとして理解される。例えば、「分離した脂肪」は、固形の分離した脂肪、例は、組織試料からの、例えば、皮下脂肪(ファット)のようなもの、または液状の分離した脂肪、例は、リポ吸引物からのものを含むことができる。分離は、材料が非脂肪性材料を完全に含まないことを要求しない。分離した脂肪は、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、または98%の脂肪性細胞、組織、細胞外基質、その他を含むと理解される。たとえば、脂肪は、スクレーピングによって皮下脂肪を含む組織試料から分離することができる。脂肪は、この技術で知られる方法を用い、密度によって、リポ吸引物から分離することができる。
【0082】
ここで用いるように、「キット」は、本発明の方法での使用のために、適切な包装において、または使用のための指示書と共に、一以上の構成要素を含むように理解される。
【0083】
ここで用いるように、「脂肪吸引物(吸引脂肪組織)」は脂肪吸引のような美容外科手順のそれ以外は使い捨ての副産物である。
【0084】
ここで用いるように、「哺乳動物」はクラス哺乳類(哺乳類綱)の任意の動物として理解される。哺乳類は、制限されないが、ヒトおよび非ヒト霊長類、ブタ、イヌ、ネコ、ウシ、マウス、ラット、ウマおよびラビットが含まれると理解される。
【0085】
ここで用いるように、「操作する」ことは、手動で(例は、パンを練るような)、または機械的に(例えば、ミキサー、ホモジナイザーまたはブレンダーを利用して)、非流動性の材料、例は、脂肪の塊を作用させ、圧縮し、または分けて、その材料を、もう一つの材料、例は、緩衝剤、乾燥材料、溶媒、超臨界流体、酵素、その他と完全に接触させると理解される。操作は、たとえば、脱細胞化および/または脂肪からの脂質の除去を促進するために実行することができる。
【0086】
ここで用いるように、「ミンシング」は、材料を、たとえば、粉砕する(グライディングする)か、または切り刻む(チョッピングする)ことによって、材料、例えば、脂を処理するか、または随意に繰り返し、精細に分けられる材料を提供するために、型を通して材料を押出加工することとして理解される。材料は、好ましくは、材料に浸透させるために、薬剤、例は、酸、洗浄剤、緩衝剤、架橋剤が、脂質と接触するのを許すように十分に微細である。組織からの脂質の分離のプロセスは必然的に組織のより一層小さな破片を提供することをもたらすと理解される。
【0087】
ここで用いる「非イオン性洗浄剤」は、たとえば、エトキシル化脂肪アルコールエーテル類およびラウリルエーテル類、エトキシル化アルキルフェノール類、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール化合物類、修飾されたオキシエチル化および/またはオキシプロピル化された直鎖アルコール類、ポリエチレングリコールモノオレアート化合物類、ポリソルベート化合物類、およびフェノール脂肪アルコールエーテル類を含むと理解される。特により一層好ましくは、Triton(R)〔トリトン(商標)〕X-100、Triton(R)X-114、BASFからのPluronics(プルロニックス)(以下に界面活性剤としてリストするようなもの)、ICI Americas Inc.(ICIアメリカス社)、Wilmington(ウィルミントン)、Del.(デラウェア)からのTween(R) 〔トウィーン(商標)〕20、Tween(R)80であり、それはポリオキシエチル化(20)ソルビタンモノラウラートであり、BASF Wyandotte Corp.(BASFワイアンドット社)、Parsippany(パーシッパニー)、N.J.(ニュージャージー)からのIconolTM〔イコノル(商品名)〕NP-40であり、それは、エトキシル化アルキルフェノール(ノニル);オクチルグルコシド、およびオクチルチオグルコシドである。
【0088】
ここで用いるように、「ヌクレアーゼ」は、一つ以上の核酸、例は、DNAおよびRNAを消化する酵素として理解される。ヌクレアーゼには、制限されないが、オリゴヌクレオチダーゼ(oligonucleotidase)、デオキシリボヌクレアーゼI、II、IV、制限酵素、UVrABCエンドヌクレアーゼ、RNase III、RNase H、P、A、T1、および小球菌ヌクレアーゼ(micrococcal nuclease)が含まれる。本発明での処理された脂肪性組織での使用のためのヌクレアーゼは好ましくは、生物適合性であり、および/または不活性化されたものとなり、または対象体への処理された脂肪性組織の配送に先立って不活化させることができる。
【0089】
「得ること」は、ここでは製造、購買、またはさもなければ所有に入ることと理解される。
【0090】
用語「薬学的に許容可能なキャリヤーまたはアジュバント」は、この発明での化合物と一緒に、患者(受動体)に投与することができ、そしてそれはその薬理学的活性を壊さずに、治療上の量の化合物を配送するのに十分な用量において投与されるとき無毒である、キャリヤーまたはアジュバントに言及する。
【0091】
本発明での使用のための薬学的に許容可能なキャリヤーは、滅菌した注射可能な調製物の形態、たとえば、滅菌した注射可能な水性または油性の懸濁物であってよい。このような懸濁物は、適切に分散された、または湿潤した薬剤(たとえば、Tween(R)80)および懸濁化剤を用いたこの技術で知られる技術に従って調剤することができる。また、滅菌した注射可能な調製物は、無毒の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒での滅菌した注射可能な溶液または懸濁液の状態、たとえば、1,3-ブタンジオールでの溶液であってもよい。許容可能な媒体および溶媒の中で、マンニトール、水、リンガー溶液および等張食塩溶液(生理食塩水)を採用することができる。加えて、滅菌した、固定油(不揮発性油)は、慣習的に溶媒または懸濁培地として採用される。この目的のため、任意の穏やかな不揮発性油も、合成のモノまたはジグリセリドを含めて採用することができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、注射物質の調製に有用であり、そのことは特にそれらのポリオキシエチル化バージョンにおいて、自然な薬学的に許容可能な油、たとえば、オリーブ油またはヒマシ油のようなものである。また、これらの油溶液または懸濁物は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、またはカルボキシメチルセルロースまたは類似した分散性薬剤を含むことができ、それらは、普通に、エマルジョン類およびまたは懸濁物のような薬学的に許容可能な剤形の調剤物において用いられる。また、他の普通に用いられる界面活性剤で、たとえば、Tweens(トウィーンズ)またはSpans(スパンズ)のようなもの、および/または薬学的に許容可能な固形の、液状の、または他の剤形の製造において普通に用いられる他の類似した乳化剤または生物学的利用能エンハンサーを、調剤の目的のために用いられる。
【0092】
ここで用いる、「複数の」は、1よりも多いことを意味すると理解される。たとえば、複数は、少なくとも2、3、4、5、10、25、50、100以上に言及する。
【0093】
「ポリエチレングリコール」(PEG)〔また、ポリエチレンオキシド(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)とも称される〕は式HO-(CH2-CH2-O-)n-Hを有し、およびそれらは典型的に線形(すなわち、分枝してない)分子である。この発明の組成物および方法において用いるためのポリエチレングリコールは、約1000 MWから10,000 MWの分子量を有する。
【0094】
ここで用いるような重合可能な混合物は、任意の好適な重合可能なポリマー、モノマー、またはモノマーおよび形成されるポリマーの混合物:共有結合的に架橋されたネットワーク、重合開始剤の存在を伴うか、または伴わないもの、イオン的に架橋されたネットワーク、または共有結合的およびイオン的に架橋されたネットワークのブレンドである。本発明に従う重合可能な混合物は、カプセル化される細胞、または材料が移入される組織または対象体に対し毒性がない重合したネットワークを形成することができなければならない。
【0095】
光重合可能な重合体は、外部供給源によって提供される放射線を用いて共有結合的に架橋したネットワークを形成する任意の適切な重合体、または外部供給源からの放射線にさらされた時、半浸透ネットワークがそこに懸濁した細胞を有して形成される共有結合的に、およびイオン的に架橋可能なまたは親水性の重合体のブレンドである。本発明に従う光重合可能な混合物は、カプセル化されている細胞に毒性がない重合されたネットワークを形成することができなければならない。
【0096】
重合開始剤は、ハイドロゲルネットワークを形成するポリマーの架橋を開始する任意の物質であり、そしてそれには、酸化還元剤、カルシウムのような二価カチオン、可視光および/またはUV放射(紫外線)にさらされる時、活性種を形成する物質が含まれる。光開始剤は、UV光および/または可視光にさらされたとき、活性種を生成する重合開始剤の特定の種類であり、そして光重合可能な混合物の重合(すなわち、架橋)を開始するために使用することができる。本発明に従う重合開始剤類および光開始剤類は重合可能な混合物の架橋を開始するために必要な量で使用するとき、カプセル化されている細胞に対して毒性がないものでなければならない。
【0097】
生きている細胞をカプセル化するためのハイドロゲルは、高含水親水性ポリマーネットワークである。本発明にかかるこのようなハイドロゲルは、例えば、約70-90%より高い水分を有することができる。本発明にかかるこのようなハイドロゲルは、カプセル化された細胞に対して毒性がなく、そしてポリマーネットワークを介して、細胞への栄養素、および細胞から離れた廃棄物の移動を許可される。
【0098】
「重合開始剤」は、任意の物質または刺激を意味し、それはフリーラジカル(遊離基)生成によってモノマーまたはマクロマーの重合を開始することができる。模範的な重合開始剤には、電磁放射、熱、化学的化合物が含まれる。
【0099】
「脱細胞化および脂質の抽出を推進する」のプロセスは、材料から細胞および脂質を除去するために、組織試料のような試料の化学的な、または物理的な処理および/または操作として理解される。プロセスは、一つまたはそれよりも多くの緩衝剤の存在下での連続した一連の試料の洗浄および操作を包含することができる。
【0100】
「提供すること」、たとえば、購入、作成、またはその他で所有の状態になることによって得ることに言及する。
【0101】
「確実に付着した生細胞」は、生きている、接着細胞として理解され、それは、たとえば、増殖培地を交換するために細胞をリンスする(すすぐ)日常的な方法を用いて、処理された脂肪性組織に付着し続ける。確実に付着した生細胞は、たとえば、以下の例において提供されるような方法を用い、マトリクスに付着した細胞を撮像(イメージ)するために、日常的な洗浄方法を通して、処理された脂肪性組織に付着し続ける。生細胞が確実に付着していること、または材料は、日常的な細胞の染色法〔例は、免疫蛍光、トリパンブルー(tyrpan blue)、など〕を実行することおよびその50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上の、処理された脂肪性組織にもともと付着していた生細胞が、細胞培養、免疫蛍光染色、または他の細胞染色およびここで提供する操作方法で用いるすすぎおよび/または洗浄の後に付着し続けることを定めることによって、材料が細胞の確実な付着を可能にするかどうかを定めることができる。
【0102】
ここで用いるように、「溶液」は溶液、懸濁物、またはコロイドを意味する。
【0103】
用語「スペース(空間)」は、この発明の組成物が固まるように注入されるか、または移入され、そして大まかに定められ、および型において形成されたキャビティ(空洞)、組織において外科的に形成された空洞、または外科的にアクセスすることができる組織において自然に存在する空洞、本発明での組成物および方法を用いて修復されるしわ(ひだ)または他の組織異常が含まれうる所の場所を説明し、ここで用いる。
【0104】
ここで用いるように、「対象体」は、動物、好ましくは、マウス、ラット、イヌ、ネコ、サル、ウシ、ブタ、または、人間または非ヒト霊長類のような哺乳動物として理解される。人間の対象体はまた、患者として知られている場合もある。
【0105】
ここで用いるように、「相当な免疫反応」は、医療専門家による介入(診療)が必要な本発明での処理された脂肪性組織の移入後に対象体の免疫反応として理解され(例は、処理された脂肪性組織の除去の必要性、免疫抑制薬物)、または移入した処理された脂肪性組織の大幅に減らされた生存期間、たとえば、移入した処理された脂肪性組織の持続時間は50%以上、少なくとも60%以上、少なくとも70%以上、少なくとも80%以上、または少なくとも90%以上によって減少され、そしてそこでは、移入した処理された脂肪性組織は、少なくとも一つの種類の炎症性細胞と共に浸入し、それには、制限されないが、マクロファージ、好中球、および好酸球が含まれる。相当な免疫反応は、時間とともに減少する移入の部位での一般的な発赤、刺激作用、および膨張の一時的な、およびトランジェント(過渡応答)の(例は、1週以下、6日以下、5日以下、4日以下、3日以下、2日以下、または1日以下)を含まず、そして移入した組織自体への反応でない場合があるが、しかし、その代わりに、皮膚の崩壊またはさもなければ、皮膚または移入と関係する組織の崩壊または伸縮による隣接組織に対する反応でありうる。
【0106】
ここで用いるように、「界面活性剤」は記載した生物物質、ヒドロゲル、またはHLB(親水性親油性バランス)値が18よりも高いか、またはそれに等しいか、または任意の組合せのどれでも有する直鎖ポリエーテル界面活性剤を含む他の生物物質の溶液での、脂の組織の乳化を助けるための組成物であり、それは臨床用途にとって安全であることが証明される。
【0107】
直鎖ポリエーテル界面活性剤は、制限されないが、「PluronicTM〔プルロニック(商品名)」としてBASFワイアンドット社〔ワイアンドット、ミシガン州(Mich)〕を含む商業上の供給源から入手可能である。界面活性剤のHLBは、ポリエーテル界面活性剤の乳化の特徴を決定する際における主要な要因であることが知られている。概して、より一層低いHLB値を有する界面活性剤はより一層高い親油性であり、その一方、より一層高いHLB値を有する界面活性剤はより一層親水性である。種々のポロキサミンズ(poloxamines)およびポロキサマーズ(poloxamers)のHLB値は、BASFワイアンドット社によって提供される。
【0108】
18より高いか、またはそれに等しいHLB値を有する適切な直鎖ポリエーテル界面活性剤には、たとえば、制限されないが、31のHLBおよび4700の平均分子量(AMW)を有するプルロニックF38TM(BASF);29のHLBおよび8400のAMWを有するプルロニックF68TM(BASF);26のHLBおよびAMWまたは7700を有するプルロニック68LFTM(BASF);25のHLBおよび6600のAMWを有するプルロニックF77TM(BASF);24のHLBおよび7700のAMWを有するプルロニックF 87TM(BASF);28のHLBおよびAMWまたは11400を有するプルロニックF88TM(BASF);28のHLBおよび13000のAMWを有するプルロニックF98TM(BASF);27のHLBおよび14600のAMWを有するプルロニックF108TM(BASF);22のHLBおよび12600のAMWを有するプルロニックF127TM(BASF);19のHLBおよび1900のAMWを有するプルロニックL35TM(BASF);27のHLBおよび12200のAMWを有するTetronic(テトロニック)707TM(BASF);31のHLBおよび25000のAMWを有するテトロニック908TM(BASF)が含まれる。HLB値が18より高いか、またはそれに等しいものを有する好ましい直鎖ポリ(エチレンオキシド-プロピレンオキシド-エチレンオキシド)(PEO-PPO-PEO)ブロック共重合体、プルロニック界面活性剤は、プルロニックF38TM、プルロニックF68TM、プルロニック68LFTM、プルロニックF77TM、プルロニックF87TM、プルロニックF88TM、プルロニックF98TM、プルロニックF108TM、プルロニックF127TMである。より一層好ましいプルロニック界面活性剤は、プルロニックF127TMである。
【0109】
脂組織の必要なHLBを得るために、水性組成物での組合せにおけるポリエーテル界面活性剤またはポリエーテル界面活性剤は、およそ2.0から10.0重量パーセントまでである。より一層好ましくは、合計の組み合わせた総量は、4.0から8.0重量パーセントにわたる。
【0110】
ここで用いる「弱酸」は、溶液で完全には解離しない酸としてここで理解され、たとえば、過酢酸(PAA)、酢酸、ホウ酸、およびリン酸である。
【0111】
ここに提供される範囲は、範囲内の値の全ての簡略形であると理解される。たとえば、1から50までの範囲は、次の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、および50からなる群からの任意の数、数の組合せ、または下位範囲も含むと理解される。
【0112】
「少なくとも」の一定の値は、その値またはそれより多いとして理解される。たとえば、「少なくとも10」は、「10またはそれよりも多い(10以上)」として理解され、「少なくとも20」は、「またはそれよりも多い(20以上)」として理解される。ここで用いる「未満」の一定の値は、その値およびそれより少ないことを意味すると理解される。たとえば、「10未満」は、「10またはそれより少ない(10以下)」を意味すると理解される。
【0113】
特に述べられないか、またはここで用いるように、前後関係から明らかでないかぎり、用語「または」は包含的であると理解される。
【0114】
もし、特に述べられないか、または前後関係から明らかでなければ、ここで用いるように、用語「一つ(a)」、「一つ(an)」および「それ(the)」は単数または複数であると理解される。
【0115】
もし、特に述べられないか、または前後関係から明らかでなければ、ここで用いるように、「およそ(約)」は、この技術での通常の許容範囲内として、たとえば、平均の2桁の標準偏差内として理解される。およそは、述べた値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01% として理解される。
【0116】
ここでの変数の任意の定義での化学的なグループの一覧(リスト)の復唱(列挙)には、リストされたグループの任意の単一のグループまたは組合せとしてその変数の定義が含まれる。変数またはここでの見地のための具体例の復唱には、任意の単一の具体例または任意の他の具体例またはその部分との組合せを含む。
【0117】
ここで提供する任意の組成物または方法でも、ここに提供される任意の他の組成物および方法の一つ以上と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1A-Cは注移入用の脂肪吸引物の脂肪性組織を示す。A)は脂質および水性PEGの混合物を示す。左端のチューブは界面活性剤が含まれていない。相分離は明白である。右に移動すると、界面活性剤の増加濃度が加えられ、改善された乳化が示される。B)は脂肪吸引物およびHAの変動する比率において(10%-50%)溶解した10%w / vのPEGを示す;およびC)は脂肪吸引物およびPEGおよびHAの皮下注入後の無胸腺マウスを示す。
【図2A】図2Aは無胸腺ヌードマウスの背部に軟組織インプラントの全体のイメージを示す図である。
【図2B】図2Bは軟組織インプラントのSprague-Dawley(スプラーグドーリー)ラットのT2 MRIであり、体積の測定が可能になる。
【図2C】図2CはC)商業上入手可能なインプラントのものである。
【図2D】図2DはD)ヒアルロン酸を伴うか、または伴わない、いずれかの細胞脂肪性組織の高さおよび容量を経時的にプロットし、およびそれらが移入した脂肪性組織および商業上入手可能な注入された皮膚充填剤の既知の臨床的持続性と相関することが見出された。
【図3】図3A-C:A)前処理した、基礎となる皮下脂肪性組織を有するドナーの腹壁形成の皮膚の試料を示す。B)3または6時間の間の過酢酸(PAA)の濃度の変動(0.1%-5%)を伴う脂肪性組織の全体(上)およびH&E(下)染色像を示す。C)濃い紫色(ヘマトキシリン)での染色された核を有する前処理された脂肪組織のH&E染色および脂質充填された空胞を反映する空きスペースのアーキテクチャ(基本設計)を示す。前処理された脂肪性組織の全体像(A)に比べて、特徴的な黄色の損失は、PAAの濃度の増加を伴って(B)見られる。C)核の濃い紫色のヘマトキシリン染色および前処理された組織での空胞の空のスペースを示し、(C)で見られるように、処理された組織(B)にもはや存在しておらず、脱細胞化および処理法の間に発生するECMが確認される。
【図4】処理されていない脂肪性組織(コントロール)に比べて、様々な処理法の後に、試料組織での残りのDNA含量を定量化するDNAアッセイである。
【図5A】図5A-Eは、様々な処理法が、DNAおよび脂質を含む免疫原性の、および炎症性細胞の内容物を除去することができるが、それでもECM成分を保持することを確認するために、A)残留するタンパク質含量のものである。
【図5B】図5BはB)コラーゲン含量を定量化し、そしてコントロールと比較する。
【図5C】図5Cはまた、D)GAG含量を定量化し、およびコントロールと比較する。C)I型コラーゲン免疫染色(茶色染色)およびE)サフラニン(Safrainin)-O(赤色染色)を、コラーゲンおよびGAGの存在を定量化するために用いる生化学的アッセイを裏付ける組織学上の試料上で行った。
【図5D】図5Dはまた、D)GAG含量を定量化し、およびコントロールと比較する。C)I型コラーゲン免疫染色(茶色染色)およびE)サフラニン(Safrainin)-O(赤色染色)を、コラーゲンおよびGAGの存在を定量化するために用いる生化学的アッセイを裏付ける組織学上の試料上で行った。
【図5E】図5Eはまた、D)GAG含量を定量化し、およびコントロールと比較する。C)I型コラーゲン免疫染色(茶色染色)およびE)サフラニン(Safrainin)-O(赤色染色)を、コラーゲンおよびGAGの存在を定量化するために用いる生化学的アッセイを裏付ける組織学上の試料上で行った。
【図6】図6は脂肪性組織を様々な処理法にさらした後に複素粘度に及ぼす生物力学的効果である。用いるPAAの濃度が増加すると複素粘度が低下する。
【図7A】図7A-DはA-B)移入後40日の無胸腺マウスでの移入した、処理された脂肪性組織の全体像を示す。
【図7B】図7A-DはA-B)移入後40日の無胸腺マウスでの移入した、処理された脂肪性組織の全体像を示す。
【図7C】C)ラットにおける45日での移入した、処理された脂肪性組織、およびD)ラットにおける45日の移入後の処理された脂肪性組織の4×H&E染色を示す。
【図7D】C)ラットにおける45日での移入した、処理された脂肪性組織、およびD)ラットにおける45日の移入後の処理された脂肪性組織の4×H&E染色を示す。
【図8A】図8A-Cは、ラットの動物モデルにおける21日間にわたって測定したPATの皮下インプラントのA)容量比およびB)高さによって測定される生体内での持続を示す。
【図8B】図8A-Cは、ラットの動物モデルにおける21日間にわたって測定したPATの皮下インプラントのA)容量比およびB)高さによって測定される生体内での持続を示す。
【図8C】C)7日および21日での移入材料のH&E染色は、細胞の流入および暗く染色される白血球、好中球、またはマクロファージによって証明されるように最低限の炎症を示す。体積測定は時間とともに持続性の減少を示すが、組織構造は、凝縮したインプラント部位を示し、おそらく組織の集積が示される。
【図9】図9A-Fは、細かく分けた脂肪性組織を用いる脂肪性組織の処理のステップを示す。A)は腹部形成の手順から得られた脂肪性組織試料の例を示す。B)は3%PAAおよびTX-100の双方での処理後に処理された脂肪性組織のマトリックスを示す。C)はH&E染色された無傷の脂肪性組織の組織画像を示し、およびD)は細胞成分の残余がないことを示すH&E染色された脱細胞化した脂肪性組織の組織学的像を示す。E)DNAの定量およびF)0.1%-5%からの過酢酸の濃度を三時間の間変化させることで処理した組織のコラーゲンアッセイからの結果である。
【図10】図10は(上)細胞を伴わないで、および指定された倍率で10日間(下)の間細胞を播種して処理された脂肪性ECMの走査電子顕微鏡画像を示す。
【図11】図11は、未架橋のコントロール組織および架橋したECMについてコラゲナーゼと共にインキュベートしたときに24時間にわたり分解した総コラーゲンのパーセント割合によって決定されるように、酵素分解に対する未架橋および架橋PhATの持続を示す。A)は5-100 mMのEDCで架橋したPhAT(脂肪性ECM)を示す。B)はTween(R)20において1%および5%HMDCで架橋したPhATを示す。C)は2 -プロパノール(100%)において1%および5%HMDCで架橋したPhATを示す。
【図12】図12は、2週間のインビボのラット皮下移入の研究からの結果を示す。A)架橋されていないコントロール、B)5mMのEDC架橋したもの、およびC)Tween-20中1%のHMDCの架橋したECMのための皮下注入による移入の2週間後の脂肪性ECMの全体(上)および組織構造(下)の画像である。
【図13】図13A-Hはインプラントの(A-F)界面および(GI)中央での2週間後の皮下インプラントの組織構造を示す。移入された細胞外マトリックスは、(A、D、G)コントロール、(B、E、H)5 mMのEDC架橋されたもの、および(C、F、I)1%HMDCのTween(R) - 20の架橋された組織についての界面で撮影した画像のためのアスタリスクによって表される。
【発明を実施するための形態】
【0119】
詳しい説明および好ましい具体例 本発明は、生物適合性の生物物質、生物物質の調製のための方法、およびこの発明の生物物質の移入のための方法を提供する。
【0120】
再構築手術の分野では、適切な軟組織の置換えの著しい必要性がある。脂肪性組織は、腫瘍または先天性欠損のために外科的外傷および外科的切除のための軟組織欠損を修復する際に選り抜きの組織であり続ける。しかし、目下の自家の脂の移動技術は、いくつかの限界がある。脂移動の持続は、文献において30-90%の間のどこかの報告と共に広く異なる。持続は、しばしば外科医、テクニックおよび患者依存性である。持続のそのような損失は、望ましい修正を維持するために複数の手順を要求する。自家の脂移動に関連したドナー部位の病的状態は、また重要な懸念でもある。そのうえ、移入された脂肪性組織は、手術後の石灰化にしばしば至る。これは、乳房切除の後、胸部再構築を経ている乳ガンの病歴を有する女性のために特に重要であり、それは、これがマンモグラフィーの読みに干渉することがありえ、そして複数の、不必要な胸部生検および懸念をもたらすからである。最後に、リポジストロフィーを患う多くのHIV患者にとって、またはガンのために化学療法および放射線を受ける患者にとって、関連する悪液質は、その者らが自家の脂移動のために必要とする脂肪の容積を伴わずに、その者らから去る。これらの理由から、脂肪性組織の機械的および生物学的特性を保持する、予想可能な、「すぐに入手可能な」材料は、軟組織欠損および軟組織増大の再構築のために理想的である。
【0121】
再生医療の狙いの1つは、組織の置換を提供することである。生物物質および細胞が新しい組織を再生するために採用されることが多い一方、これらの方法は高価であり、そして新しい組織を形成するために著しく時間がかかる傾向がある。近年、組織置換が、処理された皮膚、骨、膀胱、血管類、腸管膜および羊膜からつくられ、そして、多種多様な適用のために臨床使用される。種々の処理法は、組織を脱細胞化するために採用され、細胞外基質(ECM)が残され、それは所定の組織を形作る細胞を支持し、および維持するのに理想的に適する構造および機能的なタンパク質の独特な、組織特異的集合からなる。〔Reing(レイング)、2009年。Tissue Engineering(組織工学)15:605。〕
【0122】
特に皮下脂肪性組織で見つかるECM構成要素群、糖タンパク質類、増殖因子類、およびグリコサミノグリカン類(gylcosaminoglycans)(GAGs)は、脂肪生成を誘発する能力があることを、以前の調査は示した。脂肪性組織再構築用に有益なマトリックスをつくるように皮下脂肪性組織の固有の生物活性を利用するために脂肪性組織を処理することで、本発明者らは種々の方法を調査した。細胞および脂質は、それぞれ、炎症反応および局所的毒性反応を引き起こし、脂組織処置のための方法論は、それらの除去に依存する。最終的な、処理されたヒトの脂肪性組織(PhAT)は、無細胞であり、そしてほとんど脂質残余を含まないが、まだ、脂肪性組織の自然な基本設計および生物活性を保持する。軟組織再構築および増大のために用いられるインサイツ(原位置)の組織形成のために、このPhATは、容積および足場の双方を提供する。
【0123】
この発明により提供される生物学的適合性の生物物質の第一のクラスは、細胞系の生物学的適合性の生物物質であり、それには、生物物質、(水、しばしばヒドロゲルの形態)、および脂質(脂肪)-界面活性剤の存在下で溶解し、好ましくは足場と関連し、好ましくは生物学的適合性重合体で、架橋可能な足場との組合せが含まれる。この生物物質は脂細胞系の生物物質であり、そして、移植は好ましくは自家のドナーからのものである。混合の範囲は、界面活性剤の選定および濃度によって修飾することができる。脂は望まれるように処理することができ、そして生物物質の選定は標準的な生物物質成分の多くを含むことができる。足場の存在下に一緒に水および脂を組み合わせることの重要性は、以下の通りである。すなわち、1) 足場は、より一層良好な形態の組織に、脂における細胞のための三次元フレームワーク/足場を提供する(すなわち、より一層大きな容量)。2)若干の生物物質(すなわち、ヒアルロン酸)は、血管新生を誘発することができ、それは脂の形成を助け、そしてより一層大きな容量を提供することができる。本発明の生物物質のこの手順の移入が好ましくは注入によるので、複数の注入はより一層大きな組織構造を構築するように作成されうる。
【0124】
生物適合性の生物物質のこの第一のクラスは、界面活性剤系を用いることによる自家の脂を伴った、ヒアルロン酸、ならびにヒドロゲルを含む他の材料の組合せを可能にする。そのようなシステムは、それ以外は混ざらない材料中への親水性生物物質および脂質の乳化を許容する。結果はより一層大きな容量を伴う注入可能な生物物質、以前の充填剤物質と比較して寿命が高められ、このようにして、単独での脂または充填剤の移動と比較して臨床結果を改善した一方で、臨床使用の簡便さ、および望ましいテクスチャーを維持した。
【0125】
本発明はまた、処理された脂肪組織(PAT)と称する無細胞の脂肪性生物学的適合性の生物物質である生物学的適合性の生物物質の第二のクラスを提供する。無細胞の生物物質はドナー脂肪性組織から導き出されるが、しかし、細胞材料が組織から除去されるので、それは非免疫原性で、そして非自家の供与のために用いることができる。これは、「容易に入手可能な」生物学的適合性の生物物質(充填剤)を提供することによって、生物物質の使用のためにより一層大きな便宜および標準化を提供する。
【0126】
無細胞材料は、たとえば、脱細胞化、好ましくは脂肪性組織の化学的脱細胞化によって生産される。材料の剛性により、機械的な、または手動の操作は、処理された組織試料と洗浄溶液との妥当な混合を保証するために、各々の洗浄ステップで試料に対して行われる。無細胞の脂肪性の生物学的適合性の生物物質の調製は、ホモジナイゼーション(均質化、そして中和のための滅菌した塩類溶液または緩衝剤での連続する洗浄、好ましくは次いでさらに脂質を細胞から抽出するために、たとえば、過酢酸(約0.1%-10%v/v、好ましくは約0.5%から約3%v/vまで、好ましくは約1%v/v)のような有機過酸化物またはデオキシコール酸(約0.1%-10%w/v、好ましくは約0.5%から約2.5%w/vまで、好ましくは約1%w/v)のような胆汁酸の溶液において連続する洗浄の実行によって達成することができる。酸性の洗浄は、次いで随意に、リン酸緩衝塩類溶液(PBS)のような緩衝剤において、または水中で、Triton-X 100またはTween 20(約0.1%-10%v/v、好ましくは約0.5%から約2.5%v/vまで、好ましくは約1%v/v)を含むここに提供されるもののような非イオン性洗浄剤での連続する洗浄が続く。随意に、胆汁酸、弱酸、および/または非イオン性洗浄剤の洗浄は、次いで材料において残留する脂質を除去し、そして均質な白色の生物学的足場を生産するために、ジクロロメタン/メタノール(2:1)のような有機溶剤における洗浄が続けられうる。さらに別の選択肢は、たとえば、液体二酸化炭素のような、超臨界の流体中に材料を通すことであり、二酸化炭素の以降の蒸発および材料からの脂質の分離を伴い、このようにして、有毒な有機化合物の使用が避けられる。次に、材料は任意の適切な方法を通して滅菌することができ、それには、制限されないが、ガンマ照射および/またはエチレンオキサイドでの処置が含まれる。このステップは、材料に対する損害を減らすために、任意の保存剤または保護剤で補われることができる。次いで、処理された脂肪性組織は、望ましいサイズの粒子に、好ましくは注入を可能にするために形成され、および随意に、対象体への注入に先立って、一つ以上の架橋剤を伴うか、または伴わないで、重合可能な生物重合体の足場のような適切な生物物質と共に混合される。材料は、貯蔵のために、粒子に形成される前またはその後に、凍結乾燥させることができ、使用に先立ち、再水和させることができる。必要に応じて、注入された材料は、注入後に架橋アクチベーター(活性剤)(例は、光の適切な波長)を受ける。そのような考慮はこの技術の熟練者に十分理解される。
【0127】
皮下の脂肪性組織において見出される細胞外マトリクス(ECM)の構成要素、糖タンパク質、およびグリコサミノグリカン類(gylcosaminoglycans)(GAGs)が脂肪生成を誘発する能力があることを、以前の調査は示した〔Uriel(ウリエル)ら、2008年、The Role of Adipose Derived Protein Hydrogels in Adipogenesis(脂肪生成における脂肪由来タンパク質ヒドロゲル類の役割)。Biomaterials(バイオマテリアルズ)。29:3712-3719、参照によってここに組み込む〕。皮下脂肪性組織の固有の生物活性を利用して、脂肪組織再構築用に有益なマトリックスを作成するために、本発明は脂肪性組織を処理することによって組織誘導物質を提供する。脂肪性組織処置のための方法論は、炎症反応および局所的毒性反応を、それぞれ引き起こす細胞および脂質の除去に依存する。最終的な、処理された脂肪性組織(PAT)は、無細胞であり、そしてほとんど脂質残余を含まないが、まだ脂肪性組織の自然な基本設計および生物活性を保持する。たやすく入手可能な無細胞皮膚生成物、Alloderm(アロダーム)TMに類似し、それは皮膚置換およびヘルニア修復のために普通に用いられ、このPATは軟組織再構築および増大における原位置での組織形成のための容量および足場を提供する。
【0128】
ここに示されるように、皮下脂肪組織は、細胞および脂質を除去するために処理されうる一方で、まだ細胞外マトリクスの自然な基本設計を保存する。処理された組織の組織構造は、未処理の脂肪性組織において見られる有核細胞および脂質空胞がない(例は、図3および9)。
【0129】
最適な処理法は、組織のすべての免疫原性成分、細胞および、脂質類を含む細胞の細片のようなものを除去するが、ECMの機能および基本設計の特性は維持される。最良にECMを保存する処理法を識別するために、本発明者らは、種々の処理法から生産されるPhATのレオロジー特性に加え、タンパク質、コラーゲン、グリコサミノグリカン(glycosoaminoglycan)(GAG)含量を調べた。タンパク質含量は、PAAおよびDNAse1で処理した試料において最大で維持され、そこでは、脂肪性組織が、6時間、1%過酢酸、800μg/mgにさらされた。すべてのケースで、タンパク質含量は、コントロール、100μg/mgよりも高かった。これは、処理中に発生した組織の濃度によって説明することができる。未処理の脂肪に比べ、そこでは、脂質は処理後、試料の全体の重量に最大の貢献を持ち、等しい重量の試料は目下、濃縮されたECMからなり、得られた材料でのマトリクス成分およびタンパク質が効果的に濃縮される。PhATのコラーゲン含量は、1%6時間、3%3または6時間の過酢酸にさらされ(30-45μg/mg)、コントロールよりも著しく高かった(2μg/mg、P<0.05、図5A-C)。1%3時間への暴露が十分に脂質を除去せず、これは、この濃度効果が見られなかったこと、およびコラーゲン含量が、コントロールに似ていたことの理由を説明する。5%の3または6時間の過酢酸への暴露は、脂質低減材料であるにもかかわらず、コントロールに似たコラーゲン含有量をもたらし、この場合には、コラーゲン分解が発生したことを示した。コラーゲンアッセイの結果は、I型コラーゲンに対する免疫染色により確認した。 GAG含量はまた、3%過酢酸で生成したPhATでも最も高く、そして増加または減少する過酢酸濃度と共に減少した(図5C)。これはまた、Safranin(サフラニン)-O(図5D)により組織学的に確認した。
【0130】
PAAおよびDNase1を用いて調製したPhATのさらなる特徴の研究は、インビボ試験のための潜在的候補と見なされたPhATsでだけ行われた。したがって、最小の脂質含量、3%、5%を有するPhATだけが、残りの研究に含まれていた。処理法は、マトリクスの整合性に最小の影響をもったかを定める別の手段として、せん断ひずみ曲線を処理の前後に取得した。レオロジー試験は、曝露時間および酸濃度の双方が複素弾性率に影響を及ぼしたことを示した(図6)。3%過酢酸で3時間処理したPhATは、最も密接に、予め処理された脂肪性組織に似ていた。6時間酸においてインキュベーションしたとき、このPhATは5%×3時間のPhATと区別がつかないことになった。複素弾性率での最大の減少は、PhATが6時間の5%過酢酸への暴露後に生成されたときに発生した。
【0131】
異なるPhATsの機械的特性において見られる傾向はまた、ヒト間葉系幹細胞を播種した3%および5%のPhATの細胞生存率の研究において反映された。これは、脱細胞化中に発生した構造変化が生物学的変化を伴い、細胞接着および生存率に影響を及ぼされることが示された。次いで細胞播種、LIVE(生きた)/DEAD(死なせた)アッセイを1日目および7日目に行った。すべてのケースにおいて、生きた細胞が、処理された脂肪性組織での培養の24時間後に存在した。より一層大きな細胞の生存率が、3%PAA(3および6時間)のPhATについて、5%PAA×3時間で生存率を減少させると見出され、および5%PAA×6時間でほぼ最小の生存があった。7日まで生きた細胞は3%のPAAで処理したPATにおいてだけ死なせた細胞(赤色核染色)上回る。
【0132】
軟組織置換材料として機能するために、生物適合性および持続性を実証しなければならない。インビボの応答およびPhATの安定性を評価するために、3%および5%のPhATsは、ラットにおいて皮下に移入し、および経時的に監視した。1および3週間での組織構造は、炎症反応(好中球、単球、多核巨細胞の存在によって測定されるもの)の最小量および繊維状カプセル化または組織壊死の証拠がないことを示した。移入した材料の代表的な組織画像を図8Cに示す。それらの線維芽細胞の形態を与えられた線維芽細胞からなる可能性が最も高い組織への細胞の流入の証拠が存在した。完全な内腔の血管はまれに同定された。
【0133】
キャリパー測定は、1週間で絶対的な高さおよび容量比の初期減少を示し、それは3週間で平らになると見えた(図8A-B)。収集時での組織の組織学的な外観は、予め移入したその外観よりはるかに大きな組織の密度を示し、若干の初期の分解が時間にわたるインプラントの容量の減少を説明しうるが、ラットの筋肉の皮膚の下にある組織の圧縮(コンパクション)がまた、容量における初期の減少に寄与することができる。
【0134】
PAA / TX-100 / DNAseIを用いて調製されたPhATを用いた観察は、DNAseIを伴わないで調製したものと同様であった。さらに、PhATの架橋は、まだ生物適合性であったより一層プロテアーゼ耐性の材料を提供した。
【0135】
炎症および毒性を誘発する能力を有する細胞の脂質細片の十分な量の除去は、処理された脂肪性組織における重要な課題である。本発明者らの研究では、少なくとも3%w/vの過酢酸(PAA)の濃度は、脂質の有意な減少をもたらした。結果として得られるPhATの特徴付けは、タンパク質類、コラーゲン、グリコサミノグリカン類(GAGs)を含むマトリクス成分に集中した効果を実証した。それはこの物質の指導的能力(instructional capacity)を維持するこれらのECM成分の保持である。3%のPAAで調製したPhATはまた、MSCsを用いた播種時の細胞接着を支持することができ、処理法が大幅にその構造および生物学的特性を変えないことを示した。
【0136】
本発明者らは、この材料が、臨床的解釈のための重要な潜在能力を有すると信じ、そして従って、インビボでの生物学的適合性においてそれを検討した。最小限の炎症反応が見られ、および組織壊死の証拠はなかったので、拒絶反応または毒性の証拠はなかった。それにもかかわらず、細胞がインプラント材料の中心に見られ、ラットでの皮下空間における組織の集積のための潜在能力が実証され、そこでは利用可能な最小限の脂肪体(パッド)があった。
【0137】
容量の持続はこの材料の臨床使用での別の関心事である。しかし、材料が収集されたとき、キャリパー測定の研究は容量における初期落下を示し、全体的に、および組織学的に双方で、はるかに密度の高い材料が取り出された。機構によって拘束されることなく、本発明者らは材料の圧縮が、若干の分解に加えて、持続性プロットを説明することができると考える。生物学的材料として、本発明者らは、若干の分解が発生すると予測し、それはPhATが組み込まれ、そして作り変えられるからであり、しかし、完全に組み込まれる組織は長期的な持続性を有する。
【0138】
脱細胞化組織は再構築手術に重要な貢献をしてきた。臨床的に用いられ、無細胞性の真皮および骨組織は集積および修復を容易にするために示された。しかし、Flynn(フリン)らのような、他の者は、脂肪生成のための足場を作成することを目的として、胎盤のような、様々な組織を脱細胞するが、この技術はいまだ、脂肪組織に直接適用される。組織生産における細胞外マトリックスの役割についての本発明者らの理解が拡大するにつれて、マトリクスの成分が、まさに組織での構造的役割を果たさないが、細胞増殖、移動および分化、および最終的には組織形成の指導的見地に積極的に加わることが明らかである。最近、細胞遊走および増殖に影響を与えることでの様々なECMの分解成分の役割について多くのことが明らかにされている。ECMを考慮して、この指導的な役割を提供するように、本発明者らは、元の組織、脂肪組織自体に注目し、それが唯一に脂肪生成のための指示を提供するために適していることが考えられる。本研究において、本発明者は、脂肪組織が首尾よく脱細胞化され、軟組織の再構築のための潜在能力がある材料として機能することができることを示す。
【0139】
炎症および毒性を誘発する潜在能力がある細胞の脂質残屑の十分な量の除去は、処理された脂肪性組織における重要な課題である。本発明者らの研究では、少なくとも3%w/vの過酢酸(PAA)の濃度は、脂質における有意な減少をもたらした。機械的処理の継続した最適化は、より一層大きな脂質抽出がPAAのより一層低い濃度で行われることを証明した。結果として得られるPhATの特徴付けは、タンパク質、コラーゲン、グリコサミノグリカンが含まれる、マトリクス成分への集中効果を実証した。それはこの物質の指導的能力を維持するこれらのECM成分の保持である。3%PAAで調製されたPhATは、未処理の脂肪性組織と同じ等級の大きさ(magnitide)でレオロジー特性を有し、そしてまた、MSCsで播種した時に細胞接着を支持することができ、処理法が大幅にその構造および生物学的特性を変えないことが示された。
【0140】
本発明者らは、この材料が臨床上の解釈のための重要な潜在能力を有すると考え、そして従って、そのインビボでの生物適合性を調査した。拒絶反応または毒性の証拠はなかったが、それは最小限の炎症反応が見られ、および組織壊死の証拠が存在しなかったからである。これらの研究は、小さなインプラントサイズ、200μlを使用した。それにもかかわらず、線維芽細胞様細胞は、インプラント材料の中央において見られ、ラットでの皮下空間における組織の集積のための潜在能力を実証し、そこでは、利用可能な最小限の脂肪パッドが存在した。他の者は、マトリゲル(R)が脂肪組織に隣接して移入されたとき、それはインビボでの脂肪生成となる潜在能力を有することを示した。7ラットにおける精巣上体脂肪パッドの近くの移入による今後の研究は、脂肪環境と接触している時に、たとえば胸部において予測されるもののように、PhATの脂肪生成潜在能力を探索した。さらに、マトリゲルにさらされるとき、脂肪細胞になるように刺激されるのは宿主細胞である。研究は、それが基底膜成分、特に脂肪生成の潜在能力に関与する、IV型コラーゲンおよびラミニンであることが同定された。脂肪性組織が、高度に血管新生化された組織であるので、脂肪組織において見出された多くの微小血管の基底膜タンパク質が、おそらくその上でこの脂肪生成の潜在能力を付与する。
【0141】
本発明は、豊胸術を含む注入可能な生物物質の使用を提供し、本発明の生物学的適合性の生物物質はどこよりも適する。本発明での生物物質の使用は、解法を以前の充填物に関する問題に提供し、そして傷跡の排除、減少した外科的および麻酔の時間、合成胸インプラントに対する異物反応の排除、ならびにより一層自然な感じを提供することを、たとえば胸の再構築において可能にする。
【0142】
移された自家組織の脂の持続を長くするための方法が熱心に追求された。生物物質は膨大な組織のタイプにおいてこの目的のために使用された。脂質組織への生物物質の適用における主要な制限は、親水性の生物物質を脂質と混合するときの相分離である。ここに提供される組成物および方法は、界面活性剤の使用を通じてこれらの限界を克服する。このようにして、脂質組織への多種多様な生物物質の適用を容易にする。あるいはまた、本発明の組成物は、脂細胞の生物物質への組み込みを必要とすることなく、足場を脂細胞に提供する。
【0143】
目下利用可能な商業上の充填剤の使用は、容量および寿命によって制限される。自家の脂がより一層大きな容量を提供するが、部分的に細胞性壊死のために、その使用はその低い移植片生着率により制限される。生物物質系の足場、たとえば、脂へのヒアルロン酸またはヒドロゲルのようなものの組合せのための組成物および方法を開発することによって、これらの問題の双方ともを、同時に対処する。生物学的適合性ポリマーのような脂および生物物質の組合せは、生物物質を直ちにより一層大きな容量で提供する。第2に、本発明の組成物は、ヒアルロン酸および他の生物物質類の二重の性質を利用し、容量増強生物物質に加えて双方の足場としてふるまい、したがって、細胞付着、脈管内殖、および増殖因子との相互作用を許すネットワークを提供し、それは、乏しい脂移植片生着率に関与すると考えられる細胞死の問題に取り組む。この発明のPATは、新鮮な自家の吸引脂肪組織または他の細胞含有混合物と、自然な生物物質、たとえば、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、コラーゲン、エラスチン、またはラミニンのようなもの、たとえば、または多数の適用での任意のもの用に使用するための生物学的適合性のポリマーおよび接着剤のような他の生物物質との混合物を含むことができる。
【0144】
本発明は、脂の移動で使用する疎水性脂肪性組織に、種々の親水性足場で、商業上入手可能なヒアルロン酸およびヒドロゲルが包含されるものの組合せを許容するために、界面活性剤システムを提供する。目下、吸引脂肪組織は、未処理の望ましい場所に注入される。ここに提供する界面活性剤系の使用により、吸引脂肪組織の再注入に先立ち、今回親水性生物物質を脂肪組織と適切に乳状にすることができる。これは、付着する足場を伴う成熟および前駆脂肪細胞を提供することによる自家脂移植片の生存率を高める望ましい効果をもつ。加えて、生物物質足場のデリバリーエージェント(配送剤)としての利用は、脂肪生成を刺激するために、種々の増殖促進因子の組込みを可能にし、それによって移植片の生存率、目下の脂の移動技術への別の新しさ促す。
【0145】
本発明の修飾には、ここに提供される種々の界面活性剤の使用、特に細胞生物物質の用途を含む。
【0146】
さらなる修飾には、ポリエチレングリコールジアクリラート(PEG-A)、商業上の充填剤として利用可能なヒアルロン酸(HA)を含む種々の生物物質、それには、限定されないが、Restylane(レスチレーン)、Juvaderm(ジュビダーム)、Captique(カプチキュ)、Teoxyl(テオキシル)が含まれる種々の生物物質の使用を含む。
【0147】
本発明はさらに、間葉系幹細胞類(MSCs)、胚性幹細胞類(ES)、脂肪性組織由来幹細胞類(ASC)、線維芽細胞ならびに他の細胞種類の生物物質封入吸引脂肪組織への組み込みを提供する。さらなる変形には、ペプチド類、ホルモン類、増殖因子類、ビタミン類、受容体類、薬物類および他の調整因子類が包含されるように、足場の修飾が含まれる。臨床応用には、顔の再構築、胸部再構築、注入喉頭形成術、HIVプロテアーゼ誘発脂肪萎縮の処置、美容外科で、豊胸術、臀部増大、ふくらはぎ増大、胸筋増大、唇増大および頬増大、しわの逆転、傷跡、外科的外傷、先天性欠損、外科的な傷跡、火傷および腫瘍切除からの欠陥を含むを欠陥での充填が含まれる。
架橋可能な親水性(Hydrophillic)ポリマー
【0148】
適切な親水性ポリマーには、合成ポリマー類で、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、部分的にか、または完全に加水分解されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体類〔ポロキサマー類およびメロキサポール類(meroxapols)〕、ポロキサミン類(poloxamines)、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキル化セルロース類のようなもの、および自然なポリマーで、ポリペプチド類、多糖類または糖質類(炭水化物類)のようなもので、フィコール(商品名)〔Ficoll(TM)〕、ポリスクロース、デキストラン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、アルギン酸のようなもの、およびタンパク質で、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、またはオボアルブミンまたはそれらの共重合体類のようなもの、またはブレンド類が含まれる。ここで用いる「セルロース類」には、セルロースおよび上述のタイプの誘導体が含まれ、「デキストラン」には、デキストランおよびその類似した誘導体が含まれる。
【0149】
ヒドロゲルを形成するのに用いることができる材料の例には、修飾されたアルギン酸塩が含まれる。アルギン酸塩は海草から分離される糖質ポリマーであり、それは、たとえば国際公開第WO 94/25080号明細書において、記載されるように、カルシウムのような二価陽イオンにさらすことによってヒドロゲルを形成するように、架橋することができ、その開示内容を参照することによってここに組み込む。アルギン酸塩は、二価陽イオンの存在下で、水中において、室温で、イオンによってヒドロゲル基材を形成するために架橋される。修飾されたアルギン酸塩誘導体を合成することができ、それはヒドロゲルを形成する改善された能力を有する。出発物質としてのアルギン酸塩の使用は有利であり、それは、それが一以上の供給源から入手可能であり、そして良好な純度および特徴付けにおいて利用できるからである。ここに使われるように、用語「修飾されたアルギン酸塩」は修飾されたヒドロゲル特性を有する化学修飾アルギン酸塩に言及する。自然に発生するアルギン酸塩は、より一層速く分解するアルギン酸塩ポリマー誘導体を生じさせるために、化学的に修正されうる。たとえば、アルギン酸塩は、ゲル化可能な(gellable)オリゴ糖類ブロックのより一層小さなブロックを生産するために、化学的に開裂されえ、そして線状共重合体はもう一つのあらかじめ選定されたモエティ(構成部分)、例は、乳酸またはエプシロンカプロラクトンで形成されうる。結果として生じるポリマーには、イオンによって触媒作用を及ぼされてゲル化することを許すアルギン酸ブロックおよび、合成的設計に従いより一層急速な分解をもたらすオリゴエステルブロックが含まれる。あるいはまた、マンヌロン酸のグルロン酸に対する比がフィルム状ゲルを生産しないアルギン酸塩ポリマーを用いることができ、それは、疎水的な、水不安定鎖、例は、エプシロンカプロラクトンのオリゴマーで誘導体化される。疎水的相互作用は、それらが体内で分解するまでゲル化を誘発する。
【0150】
加えて、一価の陽イオンへの暴露によってゲル化する多糖類、および細菌の多糖類で、たとえばジェラン(gellan)ガムのようなもの、および植物の多糖類で、たとえばカラゲーニンのようなものは、上述のようにアルギン酸塩を架橋することに利用できるそれらに類似した方法を使用してヒドロゲルを形成するために、架橋されうる。一価の陽イオンの存在下でゲル化する多糖類は、曝露、たとえば、ナトリウムの生理的レベルを含む溶液に対するものによってヒドロゲルを形成する。ヒドロゲル前駆体溶液もまた、非イオンで浸透圧により調節されえ、たとえば、マンニトールのようなもので調節され、それから、ゲルを形成するために注入されるかもしれない。
【0151】
非常に粘りけがある液体であるか、チキソトロピーであり、そして構造の緩慢な発展によって時間とともにゲルを形成する多糖類もまた、役立つ。たとえば、ヒアルロン酸は、整髪用ゲルのような一貫性を有する注入可能なゲルを形成し、利用されうる。修飾されたヒアルロン酸誘導体は特に有用である。ここで用いる「ヒアルロン酸」という語は、自然な、および化学的に修飾したヒアルロン酸に言及する。架橋および生物分解性の速度および程度を調節するために、修飾されたヒアルロン酸は、予め選定された化学的な修飾で設計され、そして合成されうる。たとえば、修飾されたヒアルロン酸は、設計し、および合成しえ、それは、ポリマーをより一層疎水性およびゲル形成性にするために、プロピオン酸またはベンジル酸のような比較的疎水的な基を用いてエステル化され、またはそれは、静電的自己集合を進めるために、アミンと共に移植される。修飾されたヒアルロン酸はこのようにして合成することができ、それは注入可能であり、そこではそれらはストレスの下で流れるが、しかし、ストレスのない下では、ゲルのような構造を維持する。ヒアルロン酸およびヒアルロン酸誘導体は、Genzyme(ジェンザイム社)、ケンブリッジ、マス.およびFidia(フィディア社)、イタリア国から入手可能である。
【0152】
他の重合体ヒドロゲル前駆体はPluronics(プルロニックス)TMまたはTetronics(テトロニックス)TMのようなポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロック共重合体を含み、それは、Steinleitner(シュタインレイトナー)ら、Obstetrics & Gynecology、第77巻、pp. 48-52(1991年);およびSteinleitnerら、Fertility and Sterility 、第57巻、pp. 305-308(1992)に記載されているように水素結合によっておよび/または温度変化によって架橋されている。利用されうる他の材料には、タンパク質で、たとえば、フィブリン、コラーゲンおよびゼラチンのようなものが含まれる。ポリマー混合物も利用されうる。たとえば、ポリエチレンオキシドおよび混ざると水素結合によってゲル化するポリアクリル酸の混合物が利用されうる。1つの具体例において、ポリアクリル酸の5%w/w溶液とポリエチレンオキシド(ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン)100,000の5%w/wの混合物は、時間の経過によりゲルを形成するために、たとえば、数秒(2、3秒)以内と同じくらい速く結合することができる。
荷電された架橋可能なポリマー溶液
【0153】
荷電された側基を有する水溶性ポリマーは、ポリマーを、逆の電荷のイオンを含む水性溶液と、陽イオンであれば、ポリマーが酸性の側基を有する場合、または陰イオンであれば、ポリマーが塩基性側基を有する場合のどちらでも、反応を起こさせることによって、架橋することができる。ヒドロゲルを形成するために酸性の側基を有するポリマーの架橋のための陽イオンの例は、ナトリウムのような一価の陽イオン、カルシウムのような二価の陽イオン、および銅、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムおよびスズのような多価陽イオン、およびアルキルアンモニウム塩類のような、ジ-、トリ-またはテトラ-官能化有機陽イオンである。軟質の、高度に膨れたヒドロゲルおよび膜を形成するために、これらの陽イオンの塩類の水溶液をポリマーに加える。陽イオンの濃度がより一層高いと、または原子価がより一層高いほど、ポリマーの架橋の程度はより一層大きい。その上、ポリマーは酵素的に架橋することができ、たとえば、トロンビンによるフィブリンである。
【0154】
イオンによって架橋可能な適切な基には、フェノール類、アミン類、イミン類、アミド類、カルボン酸類、スルホン酸類およびホスフェートの基が含まれる。負に荷電した基で、たとえば、カルボキシラート、スルホナートおよびホスフェートのイオンは、カルシウムイオンのような陽イオンで架橋することができる。カルシウムイオンでのアルギン酸(アルジネート)を架橋することは、イオン性架橋のこのタイプの例である。正に荷電した基で、たとえば、アンモニウムイオンのようなものは、負に荷電したイオンで、たとえば、カルボキシラート、スルホナートおよびホスフェートのイオンのようなもので架橋することができる。好ましくは、負に荷電したイオンには、一よりも多くのカルボキシラート、スルホナートまたはホスフェートの基が含まれる。
【0155】
ヒドロゲルを形成するポリマーの架橋のための好ましい陰イオンは、低分子量のジカルボン酸、たとえば、テレフタル酸(terepthalic acid)、サルフェートイオンおよび炭酸イオンのような一価、二価または三価の陰イオンである。陽イオンに関して説明するように、軟質の、高度に膨れたヒドロゲルおよび膜を作成するために、これらの陰イオンの塩類の水溶液をポリマーに加える。
【0156】
多種多様なポリカチオンを、複合体形成のために使用し、そしてそれにより半透性の表面膜中へのポリマーハイドロゲルを安定化することができる。使用できる物質の例としては、ポリエチレンイミンおよびポリリシンのような、3,000および100,000の間の好ましい分子量を有するアミンまたはイミン基のような塩基性反応基を有するポリマーが含まれる。これらは商業上入手可能である。一種のポリカチオンは、ポリ(L-リジン)であり;合成ポリアミンの例は、次のとおり:ポリエチレンイミン、ポリ(ビニルアミン)、およびポリ(アリルアミン)である。また、多糖類、キトサンのような自然なポリカチオンも存在する。
【0157】
ポリアニオンは、重合体ヒドロゲルの塩基性表面基との反応により半透膜を形成するために使用することができ、それには、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の他の誘導体のポリマーおよびコポリマー、ペンダントSO3H基を有するポリマーで、スルホン化ポリスチレンのようなもの、およびカルボン酸基を持つポリスチレンが含まれる。これらのポリマーは、活性種の重合性基および/またはイオン架橋性基を含むように修飾することができる。これらの基を含めるように親水性ポリマーを修飾するための方法は、この技術における熟練した者(当業者)によく知られている。
【0158】
ポリマー類は本質的に生分解性であることができるが、好ましくは低生分解性であり(溶出の予測のため)、排泄を可能にするために十分に低分子量でもある。人間(または使用が意図されている他の種)の排泄を許容する最大の分子量は、ポリマーの種類によって異なるが、多くの場合、20,000ダルトンまたはそれより低いことが多い。使用可能だが、しかし本質的な生分解性のための一般的な使用のため、あまり好ましくないものは、水溶性天然重合体および合成の等価物または誘導体であり、それには、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、および分解性多糖類が含まれる。
【0159】
ポリマーは、少なくとも600、好ましくは2000以上、より一層好ましくは少なくとも3000の分子量を有する単一のブロックであることができる。あるいはまた、ポリマーは、他のグループによって接合されている2つ以上の水溶性ブロックであることができるものを含むことができる。そのような接合基には、生分解性連結、重合性連結、またはその双方を含めることができる。たとえば、マレイン酸、フマル酸、またはアコニット酸のような不飽和ジカルボン酸は、ポリエチレングリコールのような、ヒドロキシ基を含む親水性ポリマーによりエステル化すること、またはポロキサミンのようなアミン基を含む親水性ポリマーによりアミド化することができる。
共有結合架橋性ポリマー溶液
【0160】
共有結合架橋性ヒドロゲル前駆体もまた有用である。たとえば、キトサンのような水溶性ポリアミンは、ポリエチレングリコールジイソチオシアナートのような水溶性ジイソチオシアナートと架橋することができる。イソチオシアナートは化学的に架橋されたゲルを形成するアミンと反応する。アミンと、たとえば、ポリエチレングリコールジアルデヒドとの、アルデヒド反応を利用してもよい。ヒドロキシル化された水溶性ポリマーもまた利用することができる。
【0161】
あるいはまた、ラジカルイニシエーター(開始剤)との接触時にラジカル反応により架橋された置換基を含んでいるポリマーは、使用することができる。たとえば、光化学的に架橋することができるエチレン性不飽和基を含むポリマーは、国際公開第WO93/17669号に開示されているように使用することができ、その開示を参照することによりここに組み込む。この具体例では、少なくとも1種の水溶性の領域、生分解性の領域、および少なくとも2つのフリーラジカル重合可能な領域を含む水溶性マクロマーが提供される。マクロマーは、たとえば、感光性化学物質によっておよびまたは光によって、生成されたフリーラジカルに対し重合可能な領域の曝露によって重合される。これらのマクロマーの例としては、エオシン色素のようなラジカル開始系を用いて、または紫外線または可視光を簡単に曝露させることによって、アクリレート基が重合される、PEG-オリゴラクチルアクリレートである。さらに、光化学的に架橋されていてもよいシンナモイル基を含む水溶性ポリマーは、まつだら、ASAIO Trans.、第38巻、pp. 154-157(1992年)に開示されるように利用することができる。
【0162】
用語「活性種重合性基」は、活性種への曝露によりインターリンクするポリマーがもたらされる追加の共有結合を形成する能力を有する反応性官能基として規定される。活性種には、フリーラジカル類、カチオン類、およびアニオン類が含まれる。適切なフリーラジカル重合性基類には、ビニルエーテル類、アリル基類、不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、および不飽和トリカルボン酸類のようなエチレン性不飽和基(すなわち、ビニル基)が含まれる。不飽和モノカルボン酸類には、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸が含まれる。不飽和ジカルボン酸類には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸またはシトラコン酸が含まれる。一具体例では、活性種の重合性基は、好ましくは、親水性ポリマーの一以上の端部に位置する。別の具体例では、活性種の重合性基は、個々のブロックを形成する一以上の親水性ポリマーとのブロック共重合体内に位置する。好ましい重合性基は、アクリレート類、ジアクリレート類、オリゴアクリレート類(oligoacrylates)、ジメタクリレート類、オリゴメタアクリレート類、および他の生物学的に許容可能な光重合性基である。アクリレートが最も好ましい活性種の重合性基である。
【0163】
概して、ポリマー類は、水、緩衝塩類溶液、または水性アルコール溶液のような水溶液中に少なくとも部分的に可溶である。上記の他のポリマーを合成するための方法は当業者に知られている。たとえば、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts(重合体科学および重合体アミン類およびアンモニウム塩類のコンサイス百科事典)、E. Goethals(ゴーサルズ)、編集、〔Pergamen Press(ペルガメン・プレス社)、エルムズフォード、NY 1980年〕を参照。ポリ(アクリル酸)のような多くのポリマーは市販されている。
【0164】
天然および合成ポリマーは、この技術で利用可能な化学反応を使用して修飾することができ、およびたとえば、3月、「Advanced Organic Chemistry(最新有機化学)」、第4版、1992年、Wiley-Interscience Publication(ワイリー・インターサイエンス・パブリケーション社)、ニューヨークに記述される。このような方法は、ここに記載されるよう、たとえば、アクリレート基を導入するために用いることができる。
【0165】
好ましくは、活性種または架橋性基を含む親水性ポリマーは、平均して少なくとも1.02の重合性または架橋性基を含み、そしてより好ましくは、それぞれが平均して2つ以上の重合性または架橋性基を含む。各重合性基が鎖に重合されるため、架橋したヒドロゲルは、ポリマーあたりにわずかに一よりも多い反応基(すなわち、平均で約1.02の重合性基)だけを使用して製造することができる。しかし、より一層高い割合が好ましく、そして優れたゲルは、分子のほとんどまたはすべてが2つ以上の反応性二重結合を有するポリマー混合物で得ることができる。ポロキサミン類、親水性ポリマーの例は、4つの腕を有し、そして従って、容易に4つの重合性基を含むように修飾することができる。
移入の方法
【0166】
好ましい具体例において、本発明の組成物は調製され、そして直接、材料を入れるよう求められる部位に注入される。架橋剤が用いられるならば、ヒドロゲルを形成するためにポリマーを架橋する前に、好ましくは材料を注入する。好ましい方法では、生物物質の相当な移動が注入の部位から離れてないように、架橋を十分に速く起こす。一定の具体例において、複数部位で、または周期的時間間隔で、分、時間、日、週、または、より長い間隔のいずれかでも、複数の注射によって生物物質を届けることは、有利でありうる。皮膚を生物物質に対応させるために伸びさせることが、定期的な移入には要求されるかもしれない(例は、乳房切除の後の胸再構築の間)。
【0167】
部位、または部位群で、本発明での生物物質群がどこに注入されることになるかを、個々の必要性に基づき、生物物質が細胞を含むとき、必要な数の細胞であることのように定められる。あるものは、注入された溶液を形づくるために、外部の型を適用することができる。加えて、重合速度をコントロールすることによって、1つのものが粘土を形作るような生物物質の注入されたインプラントを形作ることが可能である。あるいはまた、混合物を型に注入することができ、生物物質は固まることを許され、次いで材料を移入する。
【0168】
組成物は、注射筒および針、または任意の適切に設計された注入器具または最小にしか侵襲しない移入装置を介し、特定のエリア、薬剤原体を望まれるどこでも、すなわち、手術後に見られるもののような軟組織の欠陥、または先天性であるか後天性病気による筋収縮症のエリアと共に、または外科的外傷に続く、火傷、などに注入することができる。この例は、乳房切除の後の胸域での、または、神経障害に続発する筋萎縮症を有する患者の上部胴体での組成物の注入である。
【0169】
懸濁物はまた、直接の接触によって、たとえば、針を精管内に入れ、そして注入された原体物質でそれをふさぐことによってのように、経皮的に注入することもでき、このようにして、患者の生殖力がなくされる。懸濁物は、蛍光透視鏡、超音波検査(ソノグラフの)、コンピューター断層撮影、磁気共鳴映像法または他のタイプの放射線学的ガイダンスでカテーテルまたは針によって注入することもできる。これは、どこで薬剤原体が必要とされても、体での特定の器官または他の組織領域への脈管アクセスまたは経皮的アクセスによってこの物質の配置または注入が許容される。さらに、この物質は、腹腔鏡または任意の腹膜内または腹膜外または胸郭器官のへの胸腔鏡でも注入することができた。
【0170】
随意に、種々の添加剤を、マイクロ細菌の汚染を抑制するために100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンのようなヒドロゲル溶液に含ませることができる。しかし、これらは、ヒドロゲル溶液に含むことができる唯一の生理活性添加物ではない。たとえば、生理活性添加物は、単独で、または組合わせで、増殖因子類、細胞分化因子類、他の細胞メディエーター(調停物)類、栄養分、抗生物質類、抗炎症剤類、および他の製剤を含むことができた。制限しないが、若干の適切な細胞増殖因子は、あるとしても、ヒドロゲルの同じものまたは隣接したヒドロゲル層のいずれかにも包まれる細胞のタイプにより、ヘパリン結合性増殖因子(HBGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGFαまたはTGFβ)、アルファ線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、種々の血管生成因子類、増殖因子類、神経増殖因子(NGF)、および筋肉形態的増殖因子を含む。
【0171】
加えて、ヒドロゲル溶液は随意に適切な非毒性の重合開始剤を含み、0.05%w/vの終濃度を作るように十分に混合される。PEGDAまたはPEODAがポリマー類として選ばれるとき、重合開始剤は好ましくは添加され、および光重合開始剤イルガキュア(Igracure)TM 2959〔Ciba Specialty Chemicals Corp.(チバ・スペシャルティ・コーポレーション)、タリータウン、N.Y.から商業上入手可能〕であるように選ばれるが、しかし、他の適切な光重合開始剤を用いることができる。
【0172】
光重合性PEGDAおよびPEODAが本発明に従うヒドロゲルを作成するために好ましいポリマー類の中にあるが、他の適切な親水性ポリマー類を用いることができる。適切な親水性ポリマーには、部分的にか、または完全に加水分解されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体類〔ポロキサマー類およびメロキサポール類(meroxapols)〕、ポロキサミン類(poloxamines)、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキル化セルロース類のような合成重合体、およびポリペプチド類のような自然な重合体、多糖類またはフィコール(商標)〔Ficoll(R)〕ポリスクロースのような糖質類(炭水化物類)、ヒアルロン酸、デキストラン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、またはアルギン酸、およびゼラチン、コラーゲン、アルブミン、またはオボアルブミンのようなタンパク質類、またはそれらの共重合体類およびブレンド類が含まれる。ここに用いるように、「セルロース類」には、セルロースおよび上述のタイプの誘導体が含まれ;「デキストラン」には、デキストランおよびその類似した誘導体が含まれる。光重合性混合物のこのリストは、例示であることを意味し、そして包括的ではない。たとえば、本発明での用途に適切な他の光重合性混合物は米国特許第6,224,893号B1明細書で記述され、それは参照することによってここに組み込む。
【0173】
好ましい光重合開始剤がイルガキュア(Igracure)TM 2959である一方で、種々のな他の光重合開始剤がその代わりに用いることができる。たとえば、HPKは、Polysciences(ポリサイエンシーズ社)から商業上入手可能なものであり、別の適切な光重合開始剤である。そのうえ、種々の染料およびアミン触媒が活性な種を外部の放射を浴びるときに形成することが知られている。具体的には、染料での光吸収は染料が三重項状態を仮定する原因となり、それは次いで重合を開始する活性な種を形成するためにアミンと反応する。典型的に、重合は約200-700nmの間での波長で、最も好ましくは長い波長の紫外線範囲または可視範囲、320nm以上で、そして最も好ましくは約365および514nmの間で、光による照射によって開始することができる。
【0174】
非常に多くの染料が光重合のために用いることができ、そしてこれらには、エリトロシン、フロキシン(phloxime)、ローズベンガル、チオニン(thonine)、カンファーキノン(camphorquinone)、エチルエオシン、エオシン、メチレンブルー、リボフラビン、2,2-ジメチル-2-フェニルアセトフェノン、2-メトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、他のアセトフェノン誘導体類およびカンファーキノン(camphorquinone)が含まれる。適切な共触媒には、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、N-ベンジルエタノールアミン、N-イソプロピルベンジルアミンのようなアミンが含まれる。トリエタノールアミンは、これらの染料の1つと共に好ましい共触媒である。ポリマーおよび光開始剤の組合せが(細胞に有毒でない濃度において、0.1重量%未満の、より一層好ましくは0.05および0.01%重量パーセントの間の開始剤)1および3mWatts/cm2の間と等価な光に曝露することにより架橋されるという知識に、これらのポリマー溶液の光重合は基づく。
【0175】
フォトポリマーがヒドロゲルを作成するために好まれる一方で、外科的な範囲を通して供給される外部の放射を用いた重合を制御することが便利であるので、本発明は他のポリマー材料および重合開始剤を用いて実践することができる。ヒドロゲルを形成するのに用いることができる他の材料の例には、(a)修飾されたアルジネート、 (b)一価の陽イオンへの曝露によってゲル化する多糖類(例は、ジェランガムおよびカラゲーニン)、(c)多糖類(例は、ヒアルロン酸)で、それは、非常に粘性がある液体であるか、またはチオトロピック(thiotropic)であり、そして、構造の緩慢な発展によって時間とともにゲルを形成する、および(d)重合ヒドロゲル前駆体(例は、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロック共重合体およびタンパク質)が含まれる。米国特許第6,224,893号B1明細書は種々のポリマーの詳しい説明およびそのようなポリマーの化学的性質を提供し、それは、本発明に従うヒドロゲルを作成することに適切であり、そしてこの特許は参照することによってここにその全体を組み込む。
【0176】
この発明において使用する重合性薬剤は、モノマー類、マクロマー類、オリゴマー類、ポリマー類、またはそれらの混合物を含むことができる。ポリマー組成物類は、共有結合により架橋できるポリマー、または共有結合によって、およびイオンによって架橋できるか、親水性ポリマーのブレンドだけからなることができる。
無細胞生物学的組織の架橋剤
【0177】
無細胞生物組織が自然な微小環境を宿主細胞の移動に提供することができ、および組織再生のための足場として用いることができることが以前に報告された。抗原性を減らすために、生物学的組織は、移入の前に架橋剤で固定されなければならない。Liang(リャン)、H.-C.ら、2004年による研究において、細胞抽出プロセスは、ウシの心膜から細胞構成要素を取り除くために採用された。次いで、無細胞組織を、程度の異なる架橋を得るために、種々の既知の濃度でゲニピン(genipin)、架橋剤で固定された。インビトロ(試験管内)の分解研究において、ゲニピンによる固定の後、無細胞組織の酵素分解に対する抵抗性がその架橋の程度を増加させることで著しく増加したことが示された。インビボでの皮下研究において、細胞(炎症性細胞類、線維芽細胞類、内皮細胞類、および赤血球類)が無細胞組織に浸潤することができることが見出された。概して、無細胞組織への細胞浸潤の深さは、その架橋の程度を増やすことで減少した。炎症性細胞の浸入は無細胞組織の分解を伴った。早期の分解により、新鮮(架橋を伴わない)および30%-程度の-架橋結合無細胞組織の範囲内で、組織再生は観察されなかった。これは、浸潤した細胞がそれら自身の細胞外基質を分泌し始める前に、これらの2つの試料により提供される足場が既に完全に分解されたからである。対照的に、組織再生(線維芽細胞、ネオコラーゲン原線維、およびネオ毛細血管)は、組織学的試験、免疫組織学的染色、透過型電子顕微鏡検査、および変性温度測定によって60%-および95%-程度の-架橋結合無細胞組織について観察された。95%-程度の-架橋結合無細胞組織は、酵素による分解に対して、その60%-程度の-架橋対応物より高い抵抗性であった。結果として、組織再生は、研究(手術後1年)の全体の経過中を通じて95%-程度の-架橋無細胞組織の外層において制限され、その一方、組織再生は、60%-程度の-架橋無細胞組織について全体の試料内で観察された。リャン、H.-C.らは、架橋の程度が無細胞組織の分解速度およびその組織再生パターンを定めると結論した。分解の速度および細胞浸入の量が処理された脂肪性組織の架橋結合の量によって調節されうることが、これらのデータによって証明される。
【0178】
無細胞組織の架橋結合の方法はこの技術で知られている。たとえば、無細胞組織は、リン酸緩衝塩類溶液〔PBS、0.1m、pH7.4、Sigma Chemical Co.(シグマ・ケミカル社)〕で緩衝化された種々の既知の濃度での水性ゲニピン〔Challenge Bioproducts(チャレンジ・バイオプロダクツ社)、台中、台湾〕溶液中、3日の間37℃で固定することができる。架橋の程度は、ニンヒドリンアッセイによって〔Stryer(ストライヤー)、Biochemistry(バイオケミストリー)、第3版編集、ニューヨーク、フリーマン、1988、50-55、参照することによってここに組み込む〕またはAnaSpec(アナスペック)によって供されるもののような市販のキットを使用することで測定することができる。架橋結合の量は、無細胞組織中の遊離アミノ基の割合が固定後にゲニピンのような架橋剤と反応したものと規定される。各々の研究したグループ(コラーゲンの変性に対応する)の変性温度は、たとえば、Perkin-Elmer(パーキン-エルマー)示差走査熱量計(モデルDSC 7、ノーウォーク、CT、米国)で測定することができる。この技術は、コラーゲン性生物物質の熱の移行を研究する際に広く用いられた。加熱速度は5℃/分であったが、それを用いることができる。典型的に、走査された温度は、(Td225℃)<T<(Td+10℃)のおよその範囲内にあり;そこではTdが関連した変性温度である。密封したアルミニウムパンの使用は、揮発性の化合物のために薦められる。
【0179】
架橋剤の特定の量、架橋結合時間、および架橋温度は使用する特定の架橋剤または架橋剤群に、および処理された脂肪性組織の最終的な用途に応じた架橋剤の所望のレベルに応じて変動させることができる。一定の具体例では、処理された脂肪性組織は40%-程度の-架橋結合から95%-程度の架橋結合を有する。一定の具体例において、処理された脂肪性組織は50%-程度の架橋結合から90%-程度の架橋結合までを有する。一定の具体例では、処理された脂肪性組織は60%-程度の架橋結合から90%-程度の架橋結合までを有する。一定の具体例では、処理された脂肪性組織は60%-程度の架橋結合から80%-程度の架橋結合までを有する。一定の具体例では、処理された脂肪性組織は50%-程度の架橋結合から75%-程度の架橋結合までを有する。本発明での処理された脂肪性組織のような生物組織誘導材料と共に使用するための架橋剤には、制限されないが、カルボジイミド(EDC)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde)、プロアントシアニジン、リボース、トレオース、およびリシルオキシダーゼ、カルボジイミド、ポリエポキシエーテル、ジビニルスルホン(DVS)、ゲニピン(genipin)、ポリアルデヒドおよびジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ゲニピン、エポキシ化合物、ジアルデヒドでんぷん、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジメチルスベルイミデート(suberimidate)、カルボジイミド類、サクシニミジル類、ジイソシアナート、およびアシルアジドが含まれる。
処理された脂肪性組織のための超臨界流体抽出法
【0180】
CO2が抽出中に圧縮された状態にあるプロセスが知られており、それは他ではCO2が液体状態だからである〔Hubert(ヒューバート)ら、1980年;Wilson(ウィルソン)、1984年〕。この技術は、有機溶剤を用いた従来の抽出方法によって得られるものと同等の抽出収率を提供する。また、有機溶剤とは対照的に、二酸化炭素は非毒性で、非可燃性、非腐食性、安価、および高純度で大量にも容易に入手可能である。
【0181】
超臨界流体技術は、処理された脂肪性組織のここでの調製のために脂肪性組織の抽出のために使用することができる。超臨界流体(SCFの)はしばしば濃密な気体と称される。技術的には、SCFは純物質の相図(状態図)で規定され、その臨界温度および臨界圧力を超えて存在するガスである。ガスがその臨界温度を超えて圧縮されるとき、密度が劇的に増加する。したがって、SCFは、条件の与えられた設定下でガスの拡散性を維持しながら、液体の密度を有することができる。SCFの溶媒特性は、100年よりも長くにわたって認識されているが、商業上の適用では、開発が遅れている。SC-CO2は理想的な溶媒であり、それは、それが無毒で、非爆発性、安価、容易に入手可能で、抽出された生成物から容易に除去されるからである。SC CO2を用いた脂質の抽出のための方法は、たとえば、参照することによりここに組み込まれる米国特許第4466923号明細書において提供する。
レオロジー測定
【0182】
ここで提供する処理された脂肪性組織材料は粘弾性材料としてレオロジー的に規定される。粘弾性材料は、応力が適用(変形)されたとき、粘性(液体状)および弾性(固体状)特性をもつ。蜂蜜のような粘性物質は、変形したときに動き、または流れ、そして変形応力が除去されたときに元の状態に戻らない。弾性材料は、ゴムのように、変形したときは動いても、変形応力が除去されると元の状態に戻る。ここで提供される処理された脂肪性組織のためには、低および高応力環境は重要であり、それは、それらが使用中、高応力および低応力を受けるからである。高応力は材料が狭い孔の針から流れ出すときに適用され、その材料が真皮内の適用部位でその場所で静止している間、インプラントは非常に低い応力しか受けない。レオロジー的に、処理された脂肪性組織の粘弾性特性は、単一のプログラムされた実行においてレオメーターを用いて、弾性率(elastic modulus)(G ')および粘性、または損失、係数(G'')を推定することによって記述することができる。処理された脂肪性組織を含む、任意の粘弾性材料の特徴は、これら二つの値に応じて記述することができる。G'およびG''をタン(tan)として規定される集合値、そこではタン=G'/G''に組み合わせることができる。より一層低いタンはより一層堅く、より一層固形で、または弾性様ゲルに対応する。特定のG'、G"、およびタンは配送のための処理された脂肪性組織材料の濃度、架橋剤の濃度、生物重合体、およびその他の因子を伴うか、または伴わないかを調整することによって、処理された脂肪性組織において調節することができる。
【0183】
レオロジー測定は、この技術で既知の多数の方法のいずれかを使用して実行することができる。たとえば、小さな変形振動の動的レオロジー測定は、コーンおよびプレートの形状に取り付けられたThermo Haake(サーモハーケ)RS300レオメーター(ニューイントン、NH)を用いて行うことができる。測定は25℃で35mm/1°のチタンコーンのセンサを使用して行うことができる。振動測定は、振動数範囲にわたって、たとえば、0.628から198rad(ラジアン)/s(秒)の振動数範囲で行うことができる。弾力性の割合は、弾力性の割合=(100×G')/(G'+G'')として計算される。タンは、タン=G''/G'、選択した任意の振動数で、たとえば、0.628rad/sの振動数で動的弾性率のデータから取得することができる。
【実施例】
【0184】
例および図は、実験を議論し、移入可能な材料に基づいて脂肪性組織からの結果を提供する。図1-2に示す結果は、吸引脂肪組織の出発物質を用いて実行した。図3-13に示す結果は、出発材料として、固形の、皮下脂肪性組織を用いて実行した。実験からの結果を図3-8に示し、PAAおよびDNAseIを用いるが、TX-100は用いないで処理したあまり細かく刻んでない出発物質を使用して実行した。図9-13は、PAA、TX-100、およびDNAseIで典型的に処理したより一層細かく刻んだ出発物質を用いて実行した実験からの結果を示す。処理されたヒト脂肪性組織(PhAT)を調製するのに使用される特定の試薬は、図を議論する例において、上記に提供するその図の凡例において以下にさらに詳細に考察する。
例1-細胞の生物適合性生物物質の調製
【0185】
脂肪吸引物を標準的な低侵襲手術の技術を使用して取得した。腫れ上がった流体を除去し、吸引脂肪組織を次のステップまで氷上に置いた。吸引脂肪組織は、生物学的適合性の生物材料の調製のために、種々の界面活性剤および足場と組み合わせた。
【0186】
1.ヒアルロン酸を、5%プルロニック系界面活性剤を添加した1:1の比率で、セル化した吸引脂肪組織と共に乳化した。
【0187】
2. 容量あたり10重量%のPEG-DAを、PBS:吸引脂肪組織の50:50の割合で溶解した。
【0188】
図1は、界面活性剤の不存在または存在下で、吸引脂肪組織および水性PEG混合物の乳化を示す。図1Aでは、一番左のチューブは界面活性剤を含まない。混合物の水層および脂質層の間の相分離が明白である。右に移動すると、界面活性剤の増加した濃度を添加し、そして改善された乳化が観察された。
【0189】
用いたHAは架橋剤を必要とせず、手で成形することができる市販の架橋HAであった。
【0190】
光開始剤を調製し、PEG-DAの混合物の重合のために添加した。開始剤溶液を、PBS〔GIBCO(ギブコ社)のCAT#14190342〕中のエオシンY二ナトリウム塩〔Sigma-Aldrich(シグマ・アルドリッチ社)CAT#45235で、それは450から550 nmの波長範囲で最も強く吸収〕(1.375 mg/mlのエオシンY)を溶解することによって調製した。100mg(10%w/v)のPEODA〔3.4KD MW SunBio(サンバイオ社)CAT#P2AC-3〕を、開始剤溶液の50μl、PBSの30μl、およびN-ビニルピロリドンの20μL(Sigma-Aldrich CAT#95060)に溶解した。最終的溶液を、このPEODA溶液と、30μlのトリエタノールアミン(Sigma-Aldrich #90278)および吸引脂肪組織の1mlとを混合することによって調製した。
【0191】
図1Bは、界面活性剤およびHA(10%-50%)の存在下、吸引脂肪組織の比率を変動させて溶解させた10%w/vのPEGを示す。吸引脂肪組織/PEG/HAは、移入のために望ましい形のインプラントを形成することができる。
【0192】
あるいはまた、図1Cで示すように、吸引脂肪組織材料は注入し、そしてインサイツ(その場)で架橋結合することができる。注入に先立ち、混合物が脂の均質な分散を有するように見えるまで、混合物をボルテックス(渦形成)した。PEG-DA/吸引脂肪組織を混ぜたものを皮下に(subcutaneoulsy)注入し、そしてヒドロゲルの場合に超短パルス光(Intense Pulsed Light、IPL)を提供するために、光源(例は、発光ダイオード)を適用した。経皮光重合のための方法はよく知られた技術である〔例は、Elisseeff(エリセーエフ)ら、Transdermal photopolymerization for minimally invasive implantation(最小侵襲移入のための経皮光重合)、Proc. Natl. Acad. Sci, USA(米国科学アカデミー紀要)。96:3104-3107を参照、参照することによってここに組み込む〕。図1Cは、吸引脂肪組織およびPEGおよびHAの皮下注入後の、無胸腺マウスを示す。架橋結合した吸引脂肪組織の盛り上がった隆起がすぐに理解できる。
【0193】
この発明の生物学的適合性の生物物質の臨床的有効性を可能にし、および予測するために、前臨床動物モデルを発育させ、そして、軟組織置換の寿命または持続および耐性を予測するために検証した。ヒトの脂肪性組織および市販のヒアルロン酸真皮充填物を含む、種々の軟組織材料の皮下注入の持続は、無胸腺マウスおよびスプラーグドーリー(Sprague-Dawley)ラットの双方で、これらの材料の既知の臨床的持続と相関する。本発明の細胞ベースの生物物質の持続は、MRI容積測定を使用して確かめた。しかし、評価は注入された材料の高さおよび幅を測定するためにカリパスを使って実行することもできる。
【0194】
注入された吸引脂肪組織材料は、HAを伴うか、または伴わないで、およびHAだけで、マウスモデルでの持続について試験した。異なる測定値(高さ対容量)を用いる市販の生物充填剤を使って、類似した実験を実行した。図2Aは、種々の生物充填剤を注入した無胸腺ヌードマウスを示す。注入部位を星印で示す。図2Bは軟組織インプラントを同じように注射するスプラーグドーリー(Sprague-Dawley)ラットのT2 MRIの画像を示し、容積測定が許容される。図2Cでは、市販のインプラント、および図2Dでは、細胞脂肪性組織の、ヒアルロン酸を伴うか、または伴わないもののいずれもの高さおよび容量を、時間とともにプロットする。吸引脂肪組織材料の良好な持続が示される。さらに、材料の持続は、移入された脂肪性組織および市販の注入された真皮充填剤の既知の臨床的持続と相関することが見出された。たとえば、35日に、HAを伴う脂肪は容量50%を超えてまだ存在した。ヒアルロン酸だけまたは脂肪だけが、より一層速く消失することが見出された。
例2-無細胞生物物質/処理されたヒト脂肪性組織(PhAT)の調製
【0195】
組織取得および処理。組織は、ドナーの適切な同意を得て、新鮮な外科的および死体の供給源から取得した。皮下脂肪の代表的試料を図3Aおよび9Aに示す。核、脂質空胞、および細胞外基質を示す代表的な組織切片を、図3Cおよび9Cに提供する。
【0196】
皮下脂肪はスクレーピング(掻爬すること)によって試料から分離した。掻爬した脂肪組織をブレンダーで均質化した。次いで、ホモジェネート(破砕物)をストレーナー(ざる)に置き、そして脂質および細胞デブリ(細片)を洗うために、脱イオン水下に5分間洗浄した。これを3回繰り返した。均質化し、そして洗浄した組織の等しい重さを、37℃にてシェーカー上で3または6時間、0.1%、1%、3%、または5%の過酢酸中に置いた。脂肪細胞が死ぬと、油は細胞から放出される。十分に脂肪性組織を浸入させ、および油を除去するために、材料を手動で乳鉢および乳棒により操作し、またはブレンダーで、またはPBSによる洗浄の間にプレスして均質化した。脂質が除去されたので、処理された脂肪性材料は黄色から白色に変化する(図3B)。
【0197】
あるいはまた、掻爬した脂肪性組織を、型によって繰り返し材料を押しつけることによって、微細に細かく刻み、その一方で脂質を除去するために水ですすいだ。細かく刻まれた材料は、弱酸の0.1%-5%の溶液、例は、化学的脱細胞化を進めるために振とうすることを伴い、37℃で3-6時間の間、滅菌した蒸留水中で過酢酸(PAA)を使い、可溶化するために、チューブへ移した。
【0198】
デブリを除去し、そして生理的pHにpHを戻すために、リン酸緩衝化塩類溶液(PBS)を用いてPAA処理された材料を洗浄した。
【0199】
一定の実験で、PAA処理された材料は、さらに脂質を除去するために、37℃で一晩中滅菌水中、2mMのEDTAでの1%のTriton(R)X-100により処理した。その材料を、洗剤を除去するために、PBS中で繰り返しすすいだ。
【0200】
一定の実験にて、PAA処理された材料またはPAA/Triton(R)X-100処理された材料(図9B)を、一晩中37℃で10mMのMgCl2でのDNAseIまたは600単位/mlのDNAseの0.1%の溶液において、さらにヌクレアーゼ処理した。
【0201】
処理された材料は、貯蔵に先立ち、繰り返しPBSですすいだ。処理された材料は、抗生物質、例は、1%のペニシリン/ストレプトマイシンまたは10%の抗生物質抗真菌溶液で、PBS中において、-20℃で保存した(A5955シグマアルドリッチ、St.ルイス、MO)。随意に、材料を、室温で貯蔵に先立ち、2-3のために急速に凍らせ、および凍結乾燥させた。
【0202】
処理された脂肪性材料は、生物高分子足場および架橋剤の有無で注入のために粒子にした。
【0203】
処理された脂肪性材料は、ここに提供する方法を使用して特徴づけた。Triton(R)X-100でも処理されたより一層微細に刻んだ組織が脂質および核酸のより一層大幅な除去をもたらすことが決定された。しかし、いずれかの方法によって処理された脂肪も、市販の組織充填剤と比較してインビボで良好な持続をもつ処理された材料を生産し、最小の免疫反応を生じさせ、インビトロおよびインビボで細胞増殖を支えた。
例3-無細胞生物学的適合性生物物質の分析
【0204】
無細胞の生物学的適合性の生物物質(処理されたヒト脂肪性組織すなわちPhAT)を、その材料が、無細胞で、脂質フリーであり、無傷の細胞外基質(ECM)および適切な動的剛性を含むことを証明するために、多数のアッセイを用いて試験した。用いる典型的なアッセイが提供される。材料が望ましい特徴を有するかどうかを定めるための他の方法は、この技術で知られている。
【0205】
細胞フリー。前の例の方法の少なくとも1つによって調製したPATのパラフィン包埋切片上でヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を実行し、核の存在(細胞)を決定した(図7Cおよび9Cを図7Bおよび9Dと比較する)。細胞材料または核は、本発明の方法につき、PAAおよびDNAseで(図7B)、またはPAA、TX-100、およびDNAseで(図9D)の処理後に観察されなかった。
【0206】
加えて、MHCクラスI免疫染色は、抗原の存在を評価するために実行することができる。
【0207】
DNA含量:脱細胞化の程度を示すために、DNAアッセイを行った。蛍光定量的なDNAアッセイのために、仔ウシ胸腺DNA標準を、0-100μg/mlのDNAで調製した。試料(100μl)または標準を、1×TNE緩衝剤(10mMのトリス、1mMのEDTA、0.2MのNaCl、pH7.4)において溶解した33258 Hoechst(ヘキスト)溶液〔0.1μg/ml、Molecular probes(分子プローブ)、Eugene(ユージン)、OR〕と混合した。DNA含量は、A365nmの励起およびA458nm放出を使った蛍光計〔Hoefer DyNA(フォーファーDyNA) Quant(クワント)200 Florometer(フルオロメーター)〕で決定し、そして仔ウシ胸腺DNA検量線から算出した。
【0208】
脱細胞化された脂肪性組織の組成物の生化学的分析は、3名の異なるドナー全域でほとんどドナー変動性を示さなかった。図示の通り、PAAおよびヌクレアーゼ(図4)およびPAA、TX-100、およびヌクレアーゼ(図9E)の処置は、試料に存在する著しい量の核酸を除去した。出発材料と比較して処理された材料の著しく減少した容量のため、比較は図9の中で元の材料に対してなされない。図9において、0.1%の過酢酸で処理された試料は、より一層高い酸濃度の試料と比較して、最も高いDNA含量を持ち、それは、1%から5%まで酸性の濃度を変えたにもかかわらず、類似した結果を与えた(図9E)。これらの結果は、本発明のPhATが、組織から著しい量の核酸を、TX-100でも処理されるより一層微細に刻まれた試料での核酸除去に対する影響の損失を有するPAAの特定の濃度を用いて除去することを証明する。
【0209】
脂質フリー。迅速なエマルジョンアッセイを、処理された組織中の残留脂質の存在を除外するために実施した。脂質の低レベルの変化量は、典型的に、組織内に残るより一層多くの残留脂質をもたらすより一層低いPAA濃度と共に検出された。皮下脂肪性組織の全体的および組織学的外観での明らかな変化は、次の処理を起こした(図3)。前処理された脂肪性組織は、高度に濃縮された脂質含量を反映するオレンジ色を有する(図3A)。機械的破壊および過酢酸(PAA)の暴露の後、脂質除去は、PhATの強まる白色によって示されるように、過酢酸の濃度と相関した。H&E染色を有する組織構造はまた、前処理された脂肪の脂質を含んだ空胞細胞の基本設計の損失を明らかにした(図3C)。脂肪性組織の処理は、コラーゲン繊維の基本設計と一致する繊維状の外観と共に凝縮したECMをもたらす。
【0210】
脂質の存在はまた、組織学的に観察された。脂質は組織学的に観察されなかった(図5E)。
【0211】
組織構造:足場は、10%ホルマリンで一晩固定した。一連のエタノール(EtOH)溶液を、試料を脱水するために用い、それをその後夜通しパラフィン中に包埋させた。切片を、5μm厚にカットし、顕微鏡スライド上に搭載し、40℃プレート上で1時間から夜通し乾燥させた。水分補給の後、切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)およびサフラニン-O/ファストグリーンを用いて染色した。免疫組織化学は、製造業者のプロトコルに従ってHistostain(ヒストステイン)-SPキット〔Zymed Laboratories Inc.(ザイムド・ラボラトリーズ社)、サンフランシスコ、CA〕を用いて行った。コラーゲンI〔Research Diagnostics Inc.(リサーチ・ダイアグノスティックス社)〕に対するラビットポリクローナル抗体を一次抗体として用いた。
【0212】
タンパク質含量:異なる処理法によってつくられたPhAT試料中のタンパク質含量の比較を、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイキット(Sigma-Aldrich、B 9643、セントルイス、MO)を用い製造者の指示に従って行った。簡単に言うと、BCAの作業試薬の20部を、試験試料の1部と混合し、30分間37℃でインキュベーションする。試験試料の吸光度はλ=562で読み取り、そしてアルブミンの既知量を含む標準と比較した。PAAおよびTX-100で処理した後の試料中のタンパク質含量を図5Aに示す。
【0213】
コラーゲン含量:簡単に説明すると、全体のコラーゲン含量を、110℃にての夜通しの6 N塩酸での加水分解および前述のようにヒドロキシプロリンの全体のコラーゲンに対する比として0.1を用いるp-ジメチルアミノベンズアルデヒドおよびクロラミン-Tでの反応後に、パパイン消化のヒドロキシプロリン濃度(100μl)を測定することによって合計コラーゲン含量を決定した〔Creemers(クリーマーズ)、LBら、Microassay for the assessment of low levels of hydroxyproline(ヒドロキシプロリンの低レベルの評価のためのマイクロアッセイ)。Biotechniques(バイオテクニクス)。22:656-658、1997年;Woessner(ウースナー)、JF、Jr.m The determination of hydroxyproline in tissue and protein samples containing small proportions of this imino acid(このイミノ酸の小割合を含む組織およびタンパク質試料中のヒドロキシプロリンの決定)。Arch Biochem Biophys(アーカイブズ・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジックス)。93:440-4477、1961年、双方を参照によりここに組み込む)。ヒドロキシプロリン標準曲線は、L-4-ヒドロキシプロリンを用いて調製した〔Fluka(フルカ社)、米国〕。結果を図5Bおよび9Fに示す。再度、PAAの特定の濃度がさらにTX-100で処理したより一層微細に刻んだ材料に残るコラーゲンの量により一層少ない影響しか有しなかった。しかし、コラーゲンとして含量は、より一層高い過酢酸濃度で、最も顕著なのは5%過酢酸で減少し始めた(図9F)。高い酸濃度で、細胞外基質は、その構造的完全性を失い始め、そして取扱うことが難しくなってきた。最適な処理条件は、完全に細胞物質を除去する一方、細胞外基質構造を維持しながら、最終的にはその後の実験のために3%過酢酸を用いて、2つの目標を最大に満たすための能力によって決定された。
【0214】
ECM保存。細胞外基質の保存は、定量的に、コラーゲンおよびプロテオグリカンの生化学的アッセイを用いて、機械的に基本設計〔H&EおよびMasson(マッソン)のTrichome(トライコーム)染色)を評価するために、組織学的に評価された(図3B、5CおよびE、9D、および10)。無傷のECMが観察された。
【0215】
プロテオグリカン濃度。プロテオグリカン/グリコサミノグリカン濃度の決定は、パパイン消化物において前述のようにジメチルメチレンブルー(DMMB)の分光光度法によって実行した。コンドロイチン硫酸C(サメ軟骨抽出物、Sigma)を標準として使用した(図5D)。
【0216】
レオロジー評価:レオロジー試験は、コーンプレートの構成を使用してRFS-3のレオメーター(レオメトリックサイエンティフィック社製)上で行った。25mmのコーンは0.0584mmのギャップと共に使用した。1 rad/sの振動数でのパイロット動的せん断ひずみスイープ試験は、0.1%せん断ひずみが線形の応力-ひずみ範囲であったことを示した。動的せん断ひずみスイープ試験は、線形の応力-ひずみ範囲が類似していたことを確認するために、後続のすべての試料で行われた。動的せん断振動数スイープは0.1%のせん断振幅で0.1から100 rad/sでの振動数の範囲にわたって試験した。10の振動数での複素弾性率は、約1×103-1×105ポアズであると決定した。
【0217】
試料の動的剛性および圧縮率は、ELFTM 3200テスト機器を使って測定した。統計分析をSPSS(バージョン10.0;SPSS、シカゴ、イリノイ)ソフトウェア・パッケージで実行する。結果は図6に示す。複素粘度は、PAAの濃度を増やすことで減少することが示された。
【0218】
すべての生化学結果は、平均および標準偏差(n=3-4)として現わす。
【0219】
統計分析はSPSS(バージョン10.0;SPSS、シカゴ、イリノイ)ソフトウェアパッケージで実行した。統計的有意性はANOVA(分散分析)および事後のテスト(post-hoc tests)によって測定し、p<0.05としてセットした。
例4-脂肪生成性(Adipogenicity)のインビトロでの支持
【0220】
インビトロでの細胞増殖および脂肪生成を支持する能力のために、処理された脂肪性組織を評価する。インビトロで脂肪生成を支持するそれらの能力を、本発明の方法によっ調製するPhATを試験した。
【0221】
簡単には、処理された材料の試料は、1cm2につき5×103または10×103細胞の密度で、間葉系幹細胞(MSCs)と共に播種した。脂肪生成誘導媒体は24、48、72、または96時間で加え、そして分化の割合はDNA、オイルレッドO染色、およびナイル赤染色によって5、10、および15日に定めた。播種後72-96時間に誘導媒体で処理するとき、細胞が最大の差異を認めることが分り、そして脂肪生成の分化は5日に観察された。
【0222】
さらに脂肪生成性を分析するために、RNAをPAT上で接種した細胞から抽出し、そしてPPAR-γおよびリポタンパク質リパーゼ(Lipo-Protein-Lipase、LPL)を含む脂肪のマーカーのためのRT-PCRを実行し、および単層で膨張した細胞および記述されたように、自然な脂肪性組織でのものと比較する〔Hillel(ヒレル)、A.ら、Embryonic Germ Cells are capable of Adipogenic Differentiation in Vitro and in Vivo(胚性生殖細胞は試験管内および生体内の脂肪生成分化が可能である)。Tissue Engineering(ティッシュ・エンジニアリング)Part(パート)A。14:1-8(2008年)〕。
例5-PhATと細胞の走査型電子顕微鏡観察
【0223】
試料を、室温で1時間、2.5%のショ糖と共に0.1Mのカコジル酸ナトリウム緩衝液での3.0%のホルムアルデヒド/1.5%のグルタルアルデヒドにおいて固定することによってSEMのために調製した。次いで、段階的なエタノール溶液で脱水の前に室温で光から保護して30分間、サンプルを1%の四酸化オスミウムをポスト添加した(post-fixed)。CO2臨界点乾燥を実行し、次いでプラチナによるスパッタコーティングが続き、および画像をFEIクアンタ(Quanta)200 SEM(ヒルズバラ、OR)上で撮影した。
【0224】
脱細胞化された脂肪マトリクスのSEM画像は、変動する厚さの束を有するECMの原繊維コラーゲン構造を示す(図10 A、B)。ECMも事実上多孔性であり、細胞遊走および栄養拡散が促進される。脂肪から派生した幹細胞の試験管内の実験は、脱細胞化された組織のECMの上での広範囲な細胞接着および広がりを明らかにする(図10 C、D)。複数の細胞ECM接触は、培養において7日目で各々の細胞について見ることができる。
例6-PhATの架橋およびインビトロでの分解に対する抵抗性
【0225】
PAA/DNAse I/TX-100処理を使用して調製したPhATを、pH 5.5で50mMの2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝剤において、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて架橋した。試料を、EDCを用い5、10、50、および100mMのEDCの濃度:2:1のNHSモル比で4時間、架橋溶液とインキュベーションした。残留する架橋剤を、2時間、0.1MのNa2HPO4ですすぐことによって除去し、次いで蒸留水との4回の追加の30分のインキュベーションを続けた。
【0226】
EDC架橋を、異なる化学的架橋剤、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)と比較した。水溶液中でのその不安定性のために、本発明者らが方法の基礎を形成した前の研究は、溶媒として第二のアルコール類を使い、またはHMDC反応性を保つために、界面活性剤を用いた。第二のアルコール懸濁物について、1%および5%のHMDC溶液は2-プロパノールで作成した。試料は、架橋溶液において4時間のインキュベーションの前に、それぞれ30分に2つの変化のために2-プロパノールで乾操した。試料はそれぞれ30分間に二回100%の2-プロパノールですすぎ、次いでそれぞれ30分間段階的な2-プロパノール溶液および蒸留水でのさらに4回のすすぎを用いる再水和が続いた。
【0227】
pH7.4のリン酸緩衝液(0.054MのNa2HPO3、0.013MのNaH2PO4)での1%のTween 20を含む界面活性剤溶液において、また試料を1%および5%のHMDCと架橋した。架橋は4時間室温で実行し、次いで蒸留水での広範囲なすすぎ、4MのNaClによる2回の30分のインキュベーション、および界面活性剤および残留する架橋剤を除去するために4回の追加の蒸留水でのすすぎのそれぞれ30分間が続いた。
【0228】
異なる架橋条件は、それらの感受性を酵素の分解と比較することによって特徴づけられた。架橋された試料および非架橋のコントロールを、含水量に基づく可変性を減らすために、2日の間凍結乾燥した。次いで、試料は37℃のインキュベーター中で0.05Mのトリス-HCl(pH7.5)での200U/mlコラゲナーゼIとインキュベーションした。1、3、8、16、および24時間の4、6つの時点で、試料を沈降させ、そして上澄みを収集し、実験の完成まで-20℃で貯蔵した。新鮮なコラゲナーゼを加え、そして試料を次の指定された時点までインキュベーター戻した。24時間で上澄みを集めた後、任意の残留する細胞外基質を、60℃の水浴で16時間125ug/mlのパパイナーゼ(papainase)溶液で消化した。最後に、異なる時点で分解する合計コラーゲンの割合を得るために、可溶化されたコラーゲンの量を測定するために前記のコラーゲンアッセイを使って、すべての上澄みおよびパパイン消化された試料を分析した。各架橋条件について3つの試料を用いた。
【0229】
コラゲナーゼ(図11A)と共にインキュベーションされたとき、EDC架橋された試料は、非架橋コントロールに比較して酵素の分解に対するより一層大きな抵抗を示した。分解に対する抵抗性は化学的架橋剤のより一層高い濃度と共に増加した。HMDC架橋は、用いる溶媒に従い、異なる分解特性をもたらした。1%のTween 20溶液中で懸濁されるとき、1%または5%のHMDC濃度(図11B)の間で観察される違いはなく、ごくわずかな分解しか起こらなかった。HMDCが2-プロパノール中で懸濁されたとき、1%のHMDCで架橋された試料は5%のHMDC(図11C)のそれらよりコラゲナーゼ分解に影響されやすかった。
例7-インビトロでの細胞生存能力の支持
【0230】
ここに提供するどの方法によって調製されるPhATも、細胞生存能力を支持することが見出されたことを証明するために、生存/死体の分析〔Molecular Probes(モレキュラー・プローブズ社)〕を実行した。
【0231】
8mmのパンチ生検で、足場を、PAAの種々の濃度で、そしてDNAseで処理した各々のPhATから作成され、細胞の播種を容易にするために凍結乾燥し、そしてDMEMの50,000細胞/30ulの濃度で、ヒト間葉系幹細胞(MSCs)で再構成した。足場を脂肪生成媒体で〔DMEMはFBSおよび0.5mMのデキサメタゾンで補った(シグマ;セントルイス、MO)、1mg/mlのインシュリン(シグマ;セントルイス、MO)〕、そして0.5mmの1-メチル-3-イソブチルメチル-キサンテン(IBMX;(シグマ;セントルイス、MO))37℃の5%CO2で培養した。培養の24時間および1週後に、種々のPhAT足場の切片を、30分間の生存/死体溶液中で切断し、そしてインキュベーションした(生存/死溶液;カルセインAM:EthD-ホモダイマー1:DMEM(0.5:4:2000))。30分のインキュベーションの後、切片を洗浄し、そして製造者(モレキュラー・プローブズ社)によって解説されるように、細胞生存能力を蛍光顕微鏡下で観察した。細胞播種の後、生存/死亡アッセイを、1日目および7日目に実行した。あらゆる場合に、生きた細胞は、処理された脂肪性組織の上で培養する24時間後に存在した。グレーター細胞生存能力は、5%のPAA×3時間の生存能力の減少および5%のPAA×6時間でのほとんど最小の生存能力を有する3%のPAA(3および6時間)PhATについて見出された。7日まで、生きた細胞は、3%のPAAで処理されるPATにおいてだけで、死亡した細胞(赤い核染色)より数で勝る。
【0232】
架橋PhAT調製物(製剤)はまた、同様の方法を用いて細胞の生存を支持する能力について試験した。化学的架橋剤は、残留架橋剤として組織に残っている場合には、細胞毒性でありえ、不完全にしか除去されない場合、使用される溶媒はまた、細胞の生存に有害でありうる。PhATは、上記のようにダイを介して脂肪性組織を強要され、3%PAA、TX-100、およびDNaseによる順次処理することにより調製した。 次いで、5-100mMのEDCと、1%のTween(R)20、2 -プロパノール(100%)での1-5%HMDCとの存在下で1-5%HMDCを使用して、後述するように試料を架橋した。細胞はASC維持培地(DMEM-F12、10%FBS、100U/mlペニシリン、10ug/mlのストレプトマイシン)で48ウェルプレートで足場当たり40,000細胞で播種し、そして5日間培養した。
【0233】
細胞生存率を生存/死亡の生存率/細胞毒性キット〔Invitrogen(インビトロゲン社)、カールスバッド、CA〕を用いて評価した。細胞-ECMの足場は、37℃、5%CO2で30分間DMEM-F12で4uMのカルセインAMおよび4uMのエチジウムホモ二量体-1を含む生存/死亡媒体でインキュベーションした。インキュベーションが完了して、生存/死亡媒体をPBSですすいだウェルおよび足場から除去した。細胞毒性は、それぞれ、生細胞および死細胞を可視化するために、485±10nmおよび530±12.5nmの光学フィルタを有する蛍光顕微鏡を用いて評価した。
【0234】
細胞は、架橋されていないコントロールと比較して、条件ごとに、培養中の5日後に生きた細胞が死んだものよりもはるか多い1および5日の双方で最高の架橋剤濃度の条件でさえも生存し、および増殖した。細胞増殖に少なくともつながる条件は、2-プロパノールでのHMDCように見え、したがって、引き続くインビボ研究で除外された。
例8-処理された脂肪性組織のインビボでの評価
【0235】
PAAおよびDNaseIで処理することにより調製したPhATの1ミリリットルを、スプラーグドーリーラットおよび500ulで無胸腺ヌードマウスにの背部上に皮下移植した。40日のPhATの移入後の代表的なマウスの写真を図7AおよびBに示す。インプラントは触診を介して時間をかけて監視し、および測定値をキャリパーにより採取し、および移入時から45日後で持続することがわかった。PhATは、実験を通して触知され、およびPhAT上の皮膚を除去することにより目に見えた(図7C)。45日に、動物を犠牲にし、材料を組織構造のために収集した。組織構造は、周囲の組織、血管新生、および最小の炎症との統合の証拠を実証した(図7D)。
例9-生体内持続性および生物学的適合性研究
【0236】
好ましいマトリクスの持続および生物適合性を、ラットにおいて皮下移入してインボボで試験した。すべての手順を、Johns Hopkins Animal Care and Use Committee(ジョンズホプキンス大学の動物ケアおよび使用委員会)の事前承認を事行した。PhATは、8週齢の雌性のスプラーグドーリーラット(n=4)の背部に皮下移入した。持続性を測定するために、各インプラント部位の長さ、幅、深さを、デジタルキャリパーを用いて測定し、そして三回記録し、および平均した。インプラントのために楕円体形状を仮定することで、式(4/3)(π)(1/2の高さ)(1/2の長さ)(1/2の幅)が、各次元の平均値を使用して容積を算出するために用いられた。これらの測定は、1および3週で、注入の直後に行った。容量はその後時間の経過とともにプロットし、そしてそれらの結果を図8AおよびBに示す。1および3週間で、安楽死に続き、インプラントを抽出し、そして10%ホルマリンにおいて夜通し固定し、およびH&Eを使用して染色した。PhAT移入に対する炎症反応、PhATの細胞流入および血管新生の組織学的評価を、生物適合性を評定するために用いた。
【0237】
組織への細胞の流入の証拠があり、それはそれらの線維芽細胞の形態が与えられる線維芽細胞からなる可能性が最も高かった。十分な内腔の血管をまれに確認した。
【0238】
キャリパーの測定は、1週間で絶対的な高さおよび容量比での初期減少を示し、それは3週間で横ばいに表示された(図8A-B)。収集時の組織の組織学的所見は、その外観のプレインプラントよりもはるかに大きな組織の密度を実証し、若干の初期の劣化は、時間にわたるインプラントの容積での減少が許容されうることを示し、ラットの筋肉の皮膚の下にある組織の圧縮はまた、容量での初期の減少に寄与することがある。
【0239】
生物学的体適合性の研究はまた、架橋されたPhATを用いて実行した。移入の2週間後、脂肪性ECMインプラントは不透明であり、および血管新生は表面で観察することができた(図12)。炎症性細胞は、インプラントの周辺で主に存在した。広範な炎症反応は存在しなかったが、最も顕著な繊維状のカプセルが5mMのEDC架橋されたECMと共に形成された。インプラントへの細胞移行は、線維性被膜の存在を反映し、架橋された足場での中央への細胞移行がコントロールに比べて少なかった(図13)。このデータから、それはECMが、重度の免疫応答を誘発することなく、インビボにおいて架橋し、および移入することができ、それによって生物物質の分解プロファイルおよび機械的性質を調節する機構が提供されると結論付けられる。
【0240】
架橋されたPhATを用いる第二の研究では、ジョンズホプキンス大学の動物ケアおよび使用委員会からの事前の承認を得て、ラットでの生体内注入研究によって評価した。12週齢のスプラーグドーリーラット(n=2)を、次の条件、すなわち、未架橋(コントロール)、5mMのEDC架橋、または1%のTween 20でのHMDC架橋のものの、脱細胞化した脂肪性細胞外マトリクスの400uLで、背部において各条件の2回の注入により皮下注射した。インプラントは3週間後に除去し、そして組織学的分析のために10%ホルマリンで固定した。標本は、一連の段階的エタノール溶液により脱水し、そしてパラフィンに埋め込む前にキシレンにおいてきれいにした。インプラントは、5umの厚さで切片にし、再水和し、そしてその後ヘマトキシリンおよびエオシンで、ならびにインプラントの生物学的適合性を評価するためにMasson’s trichrome(マッソンのトリクロム)で染色した。インプラントの持続性を監視することは、移入の最初の週の後に安定したインプラントの容量の維持を示した。宿主組織および細胞の浸潤との良好な統合は、インプラントの中央に観察することができ、細胞およびECMのその後のリモデリングの重要な移行を伴い、組織再生が容量安定化したインプラントを維持できることが示唆された。
例10-処理された脂肪性組織の0.63rad/sでの動的なレオロジー特性の評価
【0241】
処理された脂肪性組織のレオロジーの特性を、上述のもののような既知の方法を使用してアッセイした〔また、例は、Falcone(ファルコーネ)およびBerg(バーグ)2009年、Temporary polysaccharide dermal fillers: A model for persistence based on physical properties(一時的な多糖類皮膚充填剤:物性に基づく持続のためのモデル)。Dermatol. Surg.(ダーマトロジック・サージェリー)。35:1-6参照、参照することによってここに組み込む。〕。結果を下の表に提供する。
【0242】
【表1】
η*(Pas):複素粘度、ポアズで測定される。
G*(Pas):複素モジュラス、パスカルで測定される。
G’(Pas):弾性率、パスカルで測定される。
G’’(Pas):粘性係数、パスカルで測定される。
Tan(δ):タンジェントデルタ。
^は上付き文字を示す。
【0243】
当業者はここに説明する本発明の特定の具体例に対し多くの等価物を認めるか、ほんの日常的な実験しか使わないで確かめることができる。そのような等価物は、以下の請求の範囲に包含されていることを意図する。
【0244】
ここに引用されるすべての参考文献、特許および特許公報は、まるでそれら各々が個々に組み込まれるように、参照することによってここに組み込まれる。
1.Kaufman (コーフマン), M. R.、Bradley (ブラッドリー), J.、Dickenson (ディッケンソン)、B.ら、Autologous Fat Transfer National Consensus Survey: Trends in Techniques for Harvest, Preparation, and Application, and Perception of Short- and Long-Term Results(自家の脂肪移行の国民的な合意調査:収集、調製、および適用のための技術における傾向、および短期および長期の結果の認識)。Plastic and Reconstructive Surgery。第119巻(1)、2007年1月、pp 323-331。
2.Butterwick(バターウィック), K. J.、Nootheti(ヌーテティ), P. K.、Hsu(スウ), J. W.ら、Autologous Fat Transfer: An In-Depth Look at Varying Concepts and Techniques(自家の脂肪移行:様々な概念および技術の徹底的な観察)。Facial Plastics Surgery Clinics of North America。第15巻、2007、pp 99-111。
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【図1A】
【図1B】
【図1C】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照 この出願は、2009年8月11日付け出願の仮出願番号第61/232,915号に優先権を主張する。この出願は2008年2月11日付け出願の米国仮特許出願番号第61/065322号、およびPCT国際出願第PCT/US2009/00887号に関連し、それは2009年2月11日に出願し、そして国際公開第WO 2009/102452号として2009年8月20日に国際公開された。これらの出願のすべては、参照することによってそれらの全体についてここに組み込む。
【背景技術】
【0002】
再生医療の分野は、組織代用をトラウマ(外傷性傷害)、病気または先天性異常の次に続く再構築のために提供することを目標とする。バイオマテリアル(生物物質)および細胞は、新しい組織を再生させるためにしばしば使用される一方、これらの方法は、高価であり、そして新しい組織形成のために著しい時間を必要とする傾向がある。軟組織の形態の修復(Restoration)は、トラウマ再構築、胸部再構築、および化粧品〔鼻唇溝(nasolabial folds)、しわ、その他〕を含む多数の適用のために重要である。概ね、2つの取組みが目下存在し、1)生物学的組織(脂)の注入/伝達または2)合成または自然由来材料の注入または移植である。双方の場合とも、結局、移植された組織またはバイオマテリアルは分解され、そして交換が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際出願第US2009/00887号〔2009年2月11日出願、国際公開第2009/102452号(2009年8月20日国際公開)〕
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
患者組織を用いる再構築は、時として組織の永久修復を提供することができる。しかし、そのような手法にも、それらの限界がある。乳腺切除後の胸部再構築は、再構築部位の方へ引っ張られる腹部または背中のいずれかからの筋肉および脂肪性組織の組織フラップ(皮弁)の使用を含みうる。そのようなフラップは大きさにおいて使用のために女性に存在する組織の量によって必然的に制限され、そして腹部または背中からの筋肉の移動は、回復時間を延ばし、そしてドナー(供与)部位の病的状態をもたらすことができる。ファットトランスファー(脂の移動)の持続は、30-90%の間のどこかでの報告を伴って広くて変化する。また持続は、しばしば外科医および技術に依存性である。持続のそのような損失は、望ましい訂正を維持するために複数の手順に要求する。また、自家の脂の移動と関連したドナー部位の病的状態は、重大な関心事でもある。そのうえ、移植された脂肪性組織は、しばしば手術後の石灰化に至る。この現象は、石灰化がマンモグラフィーの読みに干渉するかもしれず、複数の、不必要な胸部生検および不安をもたらすかもしれないので、乳房切除後胸部再構築を経る乳がんの経歴がある女性にとって特に重要である。最後に、がんのために化学療法および放射線を経験する多くの患者には、関連する悪液質は、それらの者を、それらが自家の脂の移動を必要とする脂肪のボリューム(大きな塊)がないようにする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概略 本発明は、処理された脂肪性組織組成物およびそれらの調製および使用のための方法を提供する。
【0006】
本発明は、生細胞(生存細胞)が確実に(安全に)付着する脱細胞化された(decellularized)脂肪性組織細胞外基質を有する処理された脂肪性組織を含む組成物を提供する。
【0007】
本発明の処理された脂肪性組織は、麻酔剤、鎮痛剤、抗生物質、抗菌剤、増殖因子類、低温保存剤、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャー(遊離基消去剤)、カスパーゼインヒビター(カスパーゼ抑制剤)、ビタミン、リポアスピレート(脂肪吸引物)、および細胞からなる群からの少なくとも1種(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12)の物質を含むことができる。
【0008】
一定の具体例において、脱細胞化された脂肪は、架橋剤を含む。架橋剤には、制限されないが、カルボジイミド(EDC)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde、glutaraldehyde)、プロアントシアニジン、リボース、トレオース、およびリジルオキシダーゼ、カルボジイミド、ポリエポキシエーテル類、ジビニルスルホン(DVS)、ゲニピン(genipin)、ポリアルデヒドおよびジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ゲニピン、エポキシ化合物類、ジアルデヒドでんぷん、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジメチルスベルイミデート(suberimidate)、カルボジイミド類、サクシニミジル類、ジイソシアナート類、およびアシルアジド(アジ化物);またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0009】
一定の具体例において、処理された脂肪性組織には、バイオポリマースキャフォールド(生物高分子足場)が更に含まれる。一定の具体例において、処理された脂肪性組織およびバイオポリマースキャフォールドには、バイオポリマー(生物高分子)の架橋剤が更に含まれる。一定の具体例において、処理された脂肪性組織には、重合イニシエーターが含まれる。
【0010】
生物高分子足場には、制限されないが、ヒアルロン酸、PEG-DA、コンドロイチン硫酸、部分的にか、または完全に加水分解されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体類〔ポロキサマー類およびメロキサポール類(meroxapols)〕、ポロキサミン類(poloxamines)、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキル化セルロース類、ポリペプチド類、多糖類または糖質類(炭水化物類)、フィコール(商標)〔Ficoll(R)〕ポリスクロース、デキストラン、ヘパラン硫酸、ヘパリン、アルギン酸、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、オボアルブミン、およびそれらの共重合体類またはブレンド類が含まれる。
【0011】
重合イニシエーターには、エオシンY、1-ビニル2-ピロリドンNVP、およびトリエタノールアミン;およびイルガキュア(Irgacure)D2959が含まれる。
【0012】
一定の具体例において、処理された脂肪性組織には、基底膜が基本的にない。一定の具体例では、処理された脂肪性組織には、基底膜が含まれる(すなわち、本質的にフリーではない)。
【0013】
本発明の処理された脂肪性組織は、対象体に移入される(implanted)とき、実質非免疫原性であるのが好ましい。
【0014】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、0.2μg/mgまたはそれより少ない(すなわち、DNAの未検出レベルからDNAの0.2μgまで)、0.1μg/mgまたはそれより少ない、0.05μg/mgまたはそれより少ない、0.025μg/mgまたはそれより少ない、0.1μg/mgまたはそれより少ない、または0.005μg/mgまたはそれより少ないDNAを含む。
【0015】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、10%またはそれより少ない(すなわち、脂質の未検出レベルから10%の脂質まで)、5%またはそれより少ない、2%またはそれより少ない、1%またはそれより少ない、0.5%またはそれより少ない、0.25%またはそれより少ない、0.1%またはそれより少ない、0.05%またはそれより少ない、0.01%またはそれより少ない、0.001%またはそれより少ない脂質(w/w)を含む。
【0016】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、104-105Pas;1×104-3×105Pas;2×104-2×105Pas;3×104-1×105Pas;1×104-8×105Pas;または1×104-9×105Pas;またはそれらの範囲の任意の組合せの複素粘度(η)を有する。
【0017】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの複素モジュラス(G*)を有する。
【0018】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの弾性率(G’)を有する。
【0019】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの粘性係数(viscous modulus)(G’’)を有する。
【0020】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、0.1-0.2;0.1-0.5;0.1-1.0;0.1-0.3;0.1-0.4;0.1-0.75;0.05-0.5;または0.05-2.0;またはこれらの範囲の任意の組合せのタン(δ)を有する。
【0021】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、組成物中に存在するコラーゲンの50%またはそれよりも多く、60%またはそれよりも多く、70%またはそれよりも多く、80%またはそれよりも多くまたは90%またはそれよりも多く(またはそれらの値によって括弧でくくられる任意の範囲)を含み、それはI型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、XII型コラーゲンからなる群より選ばれる。
【0022】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、組成物中に存在するグリコサミノグリカン類(GAGs)の50%またはそれよりも多く、60%またはそれよりも多く、70%またはそれよりも多く、80%またはそれよりも多くまたは90%またはそれよりも多く(またはそれらの値によって括弧でくくられる任意の範囲)を含み、それはヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン硫酸からなる群より選ばれる。
【0023】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、水に不溶である。
【0024】
本発明での処理された脂肪性組織は好ましくは、本出願において提供される任意の方法を用いて調製される。
【0025】
一定の具体例では、脂肪性組織はヒト(人間)の脂肪性組織である。一定の具体例では、脂肪性組織はブタの脂肪性組織である。一定の具体例では、脂肪性組織は生きたドナー(供与体)からである。一定の具体例では、脂肪性組織は死体ドナーからである。
【0026】
本発明は、処理された脂肪性組織(PAT)、特にヒトの脂肪性組織(PhAT)の調製のための方法を提供し、それには、順次に、固形脂肪性組織を含む哺乳類組織を提供すること、組織中の非脂肪物質から脂肪を分離すること、および脂肪を脱細胞化すること、または脂肪から脂質を抽出すること、またはそれらの双方が含まれる。脂肪を脱細胞化するか、または脂肪から脂質を抽出するための方法には、脂質および細胞の除去を促進し、処理された脂肪性組織を調製するために、緩衝剤を用いて脂肪を操作することが含まれる。そのような緩衝剤には、リン酸緩衝塩類(PBS)が含まれる。脱細胞化を促進するための薬剤には、弱有機酸のような弱酸、非イオン性洗浄剤、および胆汁酸の一またはそれよりも多くが含まれうる。緩衝剤または薬剤による脂肪の、生理的pHでのか、またはおよその生理的pHでの処置の後、緩衝剤により脂肪のpHを生理的pHに合わせる。本発明は、脂肪を超臨界CO2と接触させることを含む脂肪を脱細胞化するか、または脂肪から脂質から抽出するための方法を提供する。また、本発明の方法は、核酸を除去するために、物質のヌクレアーゼ処理を含む。
【0027】
脂肪性組織の供給源は哺乳類の脂肪性組織である。十分な出発物質を提供するために、哺乳類の脂肪性組織は、任意の哺乳類から、最も好都合なことには、より一層大きな哺乳類からでも得られうる。好ましい具体例において、脂肪性組織は、ヒト脂肪性組織またはブタ脂肪性組織であり、生きた、または死体ドナーからのものである。
【0028】
一定の具体例において、処理された脂肪性組織はさらに、粒子に形成される。一定の具体例では、脱細胞化された/脂質抽出された脂肪性組織はさらに、たとえば、コラーゲンのような、処理された脂肪性組織に存在するタンパク質を架橋するために、架橋剤と接触される。そのような方法に用いられる架橋剤には、制限されないが、カルボジイミド(EDC)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde、glutaraldehyde)、プロアントシアニジン、リボース、トレオース、およびリジルオキシダーゼ、ポリエポキシエーテル類、ジビニルスルホン(DVS)、ゲニピン(genipin)、ポリアルデヒドおよびジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ゲニピン、エポキシ化合物類、ジアルデヒドでんぷん、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジメチルスベルイミデート(suberimidate)、カルボジイミド類、サクシニミジル類、ジイソシアナート類、およびアシルアジド(アジ化物);またはそれらの任意の組合せが含まれる。架橋剤と脱細胞化された/脂質抽出された脂肪性組織の特定の比は、たとえば、用いられる特定の架橋剤および処理された脂肪性組織の最終的な用途に依存する。標準的な生物物理学的または生化学的アッセイ方法を使用して決定することができる処理された脂肪性組織の望ましい物性に基づいて、用いられる架橋剤の量を定める。
【0029】
一定の具体例において、脱細胞化された/脂質抽出された脂肪性組織はさらに、バイオポリマースキャフォールド(生物高分子足場)と組み合わされる。一定の具体化において、脱細胞化された/脂質抽出された脂肪性組織および生物高分子足場はおよびさらに、バイオポリマー(生物高分子)の架橋剤と組み合わせることを含み、その混合物はさらに、重合剤、およびさらに随意に重合イニシエーターと接触させることができる。
【0030】
脱細胞化された/脂質抽出された脂肪性組織と共に用いられるバイオ適合性ポリマー(生物適合性重合体)には、制限されないが、ヒアルロン酸、PEG-DA、コンドロイチン硫酸、部分的にか、または完全に加水分解されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体類〔ポロキサマー類およびメロキサポール類(meroxapols)〕、ポロキサミン類(poloxamines)、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキル化セルロース類、ポリペプチド類、多糖類または糖質類(炭水化物類)、フィコール(商標)〔Ficoll(R)〕ポリスクロース、デキストラン、ヘパラン硫酸、ヘパリン、アルギン酸、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、オボアルブミン、およびそれらの共重合体類またはブレンド類が含まれる。
【0031】
脱細胞化された/脂質抽出された脂肪性組織と共に用いられる重合イニシエーターには、制限されないが、そこでは、重合イニシエーターは、エオシンY、1-ビニル2-ピロリドンNVP、およびトリエタノールアミン;およびイルガキュア(Irgacure)D2959からなる群より選ばれる薬剤を含む。一定の具体例において、重合イニシエーターには、光が含まれる。
【0032】
ここに提供する処理された脂肪性組織の調製のための方法には、脂肪をヌクレアーゼ、非特異的、または部位特異的DNase(デオキシリボヌクレアーゼ)および/またはRNase(リボヌクレアーゼ)のいずれかと接触させることを含むことができる。一定の具体例において、脂肪性組織は、脱細胞化および/または脂質抽出の後にヌクレアーゼと接触される。
【0033】
一定の具体例において、処理された脂肪性組織の調製のための方法には、脂肪を、それらの方法の一またはそれよりも多くのステップにてプロテアーゼインヒビターと接触させることを含むことができる。好ましい具体例において、プロテアーゼインヒビターは生物適合性であり、またはプロテアーゼインヒビターは、最終的な処理された脂肪性組織が生物適合性であるように、処理の間に、実質除去されるか、または不活化される。
【0034】
方法は、処理された脂肪性組織を、たとえば、照射または適切なガスとの接触によって殺菌することを随意に含む。
【0035】
一定の具体例において、処理された脂肪性組織は、他の薬剤と組み合わせられ、それには、制限されないが、麻酔剤、抗生物質、増殖因子類、低温保存剤、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャー(遊離基消去剤)、カスパーゼインヒビター(カスパーゼ抑制剤)、ビタミン、リポアスピレート(脂肪吸引物)、および細胞が含まれる。一定の具体例において、追加の薬剤は、処理された脂肪性組織の貯蔵に先立って加えられる。一定の具体例において、追加の薬剤は、貯蔵後、処理された脂肪性組織のエンドユーザー(最終使用者)による使用の時間のより一層近くで加えられる。
【0036】
一定の具体例において、処理された脂肪性組織は、基底膜が基本的にない。脂肪性組織が脈管構造を含み、およびそれによって基底膜を含むが、本発明の一定の処理方法は脈管構造を除去するのに役立ち、そしてそれによって基底膜が除去される。一定の具体例において、処理された脂肪性組織はスペースを定めないか、または基底膜のようにスペースを仕切らず、例えば、細胞不浸透性のバリアを提供する。
【0037】
本発明の一定の具体例では、処理された脂肪性組織は基底膜を含む。本発明の一定の具体例では、処理された脂肪性組織は、元の組織から、脈管構造、または脈管構造のレムナント(残余物)を含む。
【0038】
本発明は、本発明の方法のいずれかによって作成される組成物を提供する。本発明によって提供される組成物は、製薬上の組成物、たとえば、注入可能または、さもなければ移入可能な製薬上の組成物に調製することができる。
【0039】
本発明はさらに、本発明の組成物のいずれかを作成するためのキットを提供する。また、本発明は、対象体でのバイオフィラー(生物注入剤)としての使用のための本発明の組成物のいずれかを含むキットを提供する。キットは、キットの使用のために、指示書を含むことができる。
【0040】
本発明により提供される組成物はさらに、一またはそれよりも多くの物質を、脱細胞化された/脂質抽出された脂肪性組織において含むことができ、それには、制限されないが、麻酔剤、鎮痛剤、抗生物質、抗菌剤、増殖因子類、低温保存剤、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャー(遊離基消去剤)、カスパーゼインヒビター(カスパーゼ抑制剤)、ビタミン、リポアスピレート(脂肪吸引物)、および細胞が含まれる。
【0041】
本発明の一定の組成物には、たとえば、脱細胞化された/脂質抽出された脂肪性組織のコラーゲン分子のように、タンパク質分子の間で交差結合類を提供するために架橋剤がさらに含まれる。そのような架橋剤には、制限されないが、カルボジイミド(EDC)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde、glutaraldehyde)、プロアントシアニジン、リボース、トレオース、およびリジルオキシダーゼ、カルボジイミド、ポリエポキシエーテル類、ジビニルスルホン(DVS)、ゲニピン(genipin)、ポリアルデヒドおよびジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ゲニピン、エポキシ化合物類、ジアルデヒドでんぷん、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジメチルスベルイミデート(suberimidate)、カルボジイミド類、サクシニミジル類、ジイソシアナート類、およびアシルアジド(アジ化物);またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0042】
本発明の一定の組成物はさらに、生物高分子足場を含み、随意にさらに生物高分子の架橋剤、重合剤、および重合開始剤の一またはそれよりも多くを有する。
【0043】
生物高分子足場の例には、制限されないが、ヒアルロン酸、PEG-DA、コンドロイチン硫酸、部分的にか、または完全に加水分解されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体類〔ポロキサマー類およびメロキサポール類(meroxapols)〕、ポロキサミン類(poloxamines)、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキル化セルロース類、ポリペプチド類、多糖類または糖質類(炭水化物類)、フィコール(商標)〔Ficoll(R)〕ポリスクロース、デキストラン、ヘパラン硫酸、ヘパリン、アルギン酸、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、オボアルブミン、およびそれらの共重合体類またはブレンド類からなる群より選ばれるポリマーが含まれる。重合イニシエーターの例には、制限されないが、エオシンY、1-ビニル2-ピロリドンNVP、およびトリエタノールアミン;およびイルガキュア(Irgacure)D2959が含まれる。
【0044】
一定の具体例において、処理された脂肪性組織は、スペースを規定せず、またはスペースを仕切らない。
【0045】
本発明によって提供される組成物は、それらをバイオフィラーとして有用にする一またはそれよりも多くの特性を有する。たとえば、処理された脂肪性組織は、生細胞が確実に(安全に)付着し、そして増殖することができる脱細胞化脂質である。好ましい具体例において、組成物は、対象体に移入するとき実質非免疫原性である。一定の具体例において、組成物は、DNAが本質的に含まれず、処理された脂肪性組織が、0.2μg/mgまたはそれよりも低く(0.2μg/mg以下)、0.2μg/mg以下、0.1μg/mg以下、0.05μg/mg以下、0.025μg/mg以下、0.1μg/mg以下、または0.005μg/mg以下のDNAを有するほどである。一定の具体例において、組成物は、本質的に脂質が含まれず、処理された脂肪性組織が10%またはそれよりも少ない(10%以下)、5%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.25%以下、0.1%以下、0.05%以下、0.01%以下、0.001%以下の脂質(w / w)を有するほどである。
【0046】
本発明の組成物の生物物理学的特性は、任意の公知の方法によって定めることができる。一定の具体例では、処理された脂肪性組織は、104-105Pas;1×104-3×105Pas;2×104-2×105Pas;3×104-1×105Pas;1×104-8×105Pas;または1×104-9×105Pas;またはそれらの範囲の任意の組合せの複素粘度(η)を有する。一定の具体例において、処理された脂肪性組織は、103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの複素モジュラス(G*)を有する。一定の具体例において、処理された脂肪性組織は、103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの弾性率(G’)を有する。一定の具体例において、処理された脂肪性組織は、103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの粘性係数(viscous modulus)(G’’)を有する。一定の具体例では、処理された脂肪性組織は、0.1-0.2;0.1-0.5;0.1-1.0;0.1-0.3;0.1-0.4;0.1-0.75;0.05-0.5;または0.05-2.0;またはこれらの範囲の任意の組合せのタン(δ)を有する。
【0047】
本発明によって提供される処理された脂肪性組織は好ましくは、組成物中に存在するコラーゲンの50%またはそれよりも多く(50%以上)、60%以上、70%以上、80%以上または90%以上を含み、それらは脂肪に存在する種類から選ばれる。コラーゲンの種類には、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、XII型コラーゲンが含まれる。
【0048】
本発明によって提供される処理された脂肪性組織は好ましくは、組成物中に存在するグリコサミノグリカン(GAGs)の60%以上、70%以上、80%以上または90%以上を含み、それらは脂肪性組織に存在する種類から選ばれる。GAGsの種類には、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン硫酸が含まれる。
【0049】
本発明は、本発明の場合の組成物の使用の方法を提供し、それには処理された脂肪性組織を対象体に移入する方法を含む。そのような方法には、処理された脂肪性組織の移入が必要な対象体を識別すること、処理された脂肪性組織の移入が必要な対象体での部位を識別すること、および処理された脂肪性組織を対象体に識別された部位で移入することを含む。移入の方法は、ここに提供するいずれかの組成物を用いてでも実行することができ、またはここに提供する方法によって行うことができる。移入のための方法はさらに、移入された物質の持続性、および/または細胞のインプラント(移入体)への浸入、および/または移入された物質に対する対象体の耐性について対象体を監視するための方法を含むことがでる。監視は、ここに提供する方法のような任意の既知の方法を用いて実行することができる。
【0050】
本発明は処理された脂肪性組織(PAT)、特に処理されたヒト脂肪性組織(PhAT)の調製のための方法を提供し、それには、順次、固形脂肪を含む哺乳類組織、たとえば、皮下脂肪性組織のようなものを得ること、組織中の非脂肪物質から脂肪を、たとえば、スクレーピング(こすり落とすこと)によって分離すること、および順に、脂質および細胞の除去を促進し、処理された脂肪性組織を調製するために、一またはそれより多くの緩衝剤を用い、または超臨界の二酸化炭素(CO2)による処置(たとえば、米国特許第4,466,923号明細書参照、ここに参照するによって組み込まれる)によって操作することが含まれる。哺乳類の脂肪性組織は、任意の哺乳動物からでも、最も好都合なことには、十分な出発物質を提供するために、より一層大きな哺乳動物から得ることができる。
【0051】
分離した脂肪の操作の間に使用する緩衝剤には、生理的pHおよびイオン強度の緩衝剤、たとえば、リン酸緩衝塩類(PBS)または生理的塩類溶液のようなものが含まれる。固形脂肪の脱細胞化または脂質抽出を促進するために、緩衝剤は、弱酸、弱有機酸、非イオン性洗浄剤、または胆汁酸、またはその組合せのような化合物であることができる。
【0052】
本発明は、また、分離した脂肪が一またはそれよりも多くのヌクレアーゼ、たとえば、材料に存在することがある核酸の分解を促進するために、DNase(デオキシリボヌクレアーゼ)およびRNase(リボヌクレアーゼ)と接触させることもできる方法を提供する。ヌクレアーゼとの接触は任意のステップで実行することができるが、好ましくは脱細胞化ステップの後に実行され、それは脱細胞化プロセスが細胞を壊して開けることができ、それらを分解のためにより一層利用可能にする核酸が放出される。
【0053】
本発明により提供する処理された脂肪性組織にはまた、バイオポリマースキャフォールド(生物高分子足場)をつくるために、バイオポリマー(生物高分子)および脂肪性組織から派生した物質の間に加え、生物高分子の分子の範囲内、およびその間で分子架橋を生じさせるために、生物高分子および生物高分子架橋剤が含まれうる。これらの生物高分子は、制限されないが、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、コラーゲン、エラスチン、ラミニンからなることができる。
【0054】
本発明は、たとえば、管理(投与)を容易にするために、本発明での処理された脂肪性組織を粒子に形成するための方法を提供する。本発明は、処理された脂肪性組織を一またはそれよりも多くの架橋剤および/または生物高分子足場と随意に結合するための方法を提供する。生物高分子足場は予め架橋されえ(たとえば、架橋したヒアルロン酸)、またはなんらの更なる薬剤がない場合でも生物高分子が架橋された構造を形成することが可能になるように(たとえば、官能化されたコンドロイチン硫酸)、官能基を含むことができる。あるいはまた、生物高分子足場は、架橋剤および重合イニシエーターの使用を必要とすることがある。重合イニシエーターは、化学的開始剤または光を含むことができる。本発明は、生物高分子足場の重合のための方法を提供する。
【0055】
本発明はさらに、本発明のいずれかの方法によって作成される組成物を提供し、それには任意のプロセシング中間体(処理中間体)が含まれる。
【0056】
本発明はさらに、この発明のいずれかの組成物のバイオマテリアル(生物物質)としての使用を提供し、それには、たとえば、組織再構築または回復のために、任意のプロセシング中間体が含まれる。本発明は、この発明の組成物を、適切なキャリヤー(担体)での投与のために提供する(たとえば、塩類溶液、緩衝剤類で、抗生物質類(antiobiotics)、麻酔剤類、増殖因子類、または他の細胞外基質成分、または注入のより一層大きな容易さのための粘度を提供する物質を伴うか、または伴わないもの)。
定義
【0057】
ここに用いるように、「無細胞の」は、細胞を、生存しているか、または生きられない、全体またはフラグメント(断片)を含まず、または十分に少数の細胞または細胞性物質しか含まず、細胞の存在が、その物質を移入される対象体での免疫反応を生じさせるのに十分でないほどのものとして理解される。細胞は、供給源の組織から、たとえば、機械的または化学的方法、またはその組合せによって除去することができる。
【0058】
「無細胞の脂肪性生物適合性の生物物質」は、また、「処理された脂肪性組織」または「PAT」と称され、ドナー(供与体)から、たとえば、生きたドナー(たとえば、自家の供与、脂肪吸引術または腹壁形成術のような美容の外科的処置の副産物)または組織バンク(たとえば、生きたドナー、死体ドナー)から得られる脂肪性組織から導き出された組成物として理解される。組成物は皮下の脂(脂肪)、内蔵の脂、白色の脂、褐色の脂、脂組織〔たとえば、リポアスピレート(リポ吸引物)〕を含む混合された細胞集団またはその任意の組合せから由来することができる。第一のステップにおいて、脂肪は組織試料において非脂肪性物質から、分離された脂肪を調製するために、たとえば、真皮または周囲の器官から脂肪をこすり落とすこと、リポ吸引物を仕切ることによって分離された。分離したものは、脂細胞および脂質成分を除去するために、化学的および/または機械的な方法を用いて処理される。その物質は好ましくは、対象体において移入に先立ってプロセスによって除去されない任意の残留する細胞を死なすために処理される。その物質は好ましくは、その材料に存在する場合がある任意の潜在的に免疫原性の核酸を破壊するために一以上のヌクレアーゼ、たとえば、DNaseおよび/またはRNaseで処理される。その材料が無細胞性であるとき、それは非免疫原性である。したがって、組成物は、非自家で移入することができる。さらに、材料は、再構築的な、および美容の外科的手術に用いるための「容易に入手可能な」生産物として用いることができる。組成物は、対象体への移入に先立って他の物質と組み合わせることができ、それには他の生物物質または生物高分子、細胞または細胞性物質、たとえば、制限されないが、生体幹細胞、間葉系幹細胞(間充織幹細胞)、脂肪派生間葉系幹細胞、胚性幹細胞(ES細胞)、誘導多能性幹細胞、線維芽細胞、脂肪細胞を含む自家であるか、またはドナーの細胞が含まれる。
【0059】
用語「活性薬剤」および「生物学的に活性な薬剤」は、望ましい薬理学的、生理的効果を誘発する、化学的または生物学的な化合物に言及するために、ここでは互換的に用いられ、そこでは、その効果は予防上または治療上であることができる。これらの用語はまた、ここに特に記載するそれらの活性な薬剤の薬学的に許容可能な、薬理学的に活性な誘導体を包含し、制限されないが、塩類、エステル類、アミド類、プロドラッグ類、活性代謝物質類、類似物類、などが含まれる。用語「活性薬剤」、「薬理学的に活性な薬剤」および「薬物」を用いる時、その結果として、本出願人がそれ自体活性な薬剤ならびに薬理学的に許容可能な、薬理学的に活性な塩類、エステル類、アミド類、プロドラッグ類、代謝物質類、類似物類、その他を含めることを意図することを理解すべきである。
【0060】
ここに用いるように、「麻酔剤」は知覚または感受性の不足を提供する薬剤として理解される。この発明との関連では、麻酔剤は典型的に局所で作用する麻酔薬であり、知覚または感受性の縮小を薬剤により接触された組織に提供する。局所麻酔薬には、制限されないが、ベンゾカイン、クロロプロカイン、コカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン(dimethocaine)/ラロカイン(larocaine)、プロポキシカイン、プロカイン/ノボカイン、プロパラカイン、テトラカイン/アメトカイン、アルチカイン、ブピバカイン、カルチカイン、シンコカイン/ジブカイン、エチドカイン、レボブピバカイン、リドカイン/リグノカイン、メピバカイン、ピペロカイン、プリロカイン、ロピバカイン、トリメカイン、サキシトキシン、およびテトロドトキシンが含まれる。
【0061】
ここに使われるように、「抗生物質」は、病原体および/または伝染性作用物(infectious agent)、細菌およびウイルスを壊すか、死なす薬剤として理解され。抗生物質には、制限されないが、細菌の細胞壁を標的とするもの(ペニシリン類、セファロスポリン類)、または細胞膜(ポリミキシン類)、または不可欠な細菌酵素への干渉(キノロン類、スルホンアミド類)が含まれ、通常事実上殺菌性である。アミノグリコシド類、マクロライド類およびテトラサイクリン類のようなタンパク質合成を標的とするものは、通常静菌的である。
【0062】
ここで用いるように、「酸化防止剤」は、スーパーオキシドおよび/または酸化ラジカルによって引き起こされる損傷の形成を低減または防止するか、またはその損傷を軽減または防止する薬剤として理解される。抗酸化物質には、フリーラジカルスカベンジャーが含まれる。ビタミンCおよびビタミンEを含む多くのビタミンは、抗酸化物質である。他の抗酸化物質には、制限されないが、アスコルビン酸(ビタミンC)、グルタチオン、メラトニン、およびトコフェロール類とトコトリエノール類(例は、ビタミンE)が含まれる。本発明で使用するための酸化防止剤は、好ましくは生物適合性がある。
【0063】
ここで用いるように、「自家の」移植、供与、などは、対象体への移入のための脂肪性組織の供給源が同じ対象体から導き出される手法として理解される。自家移植または供与には、対象体からの組織の収集および対象体への組織の再移入の間の組織の処理が含まれうる。
【0064】
ここで用いるように、「基底膜」は、上皮の基礎にある繊維の薄いシートであるように理解され、それは、器官のキャビティ(空隙)および表面、または上皮を裏打ちし、それは血管の内面を裏打ちする。基底膜の主な機能は、上皮をその下の疎性結合組織にアンカー固定することである。このことは、細胞接着分子類(CAMs)を介する細胞基質間接着により達成される。基底膜タンパク質は、表皮または内皮細胞のいずれかによって分泌され、それは、通常、物体での境界、 通例「内対外」を、物体でのルーメン(内腔)を定義するように規定し、たとえば、腸または膀胱は、表皮基底膜を有し、内側の空きスペースを外側から規定し、または分離し、または血管の内腔を縁取る内皮細胞のために、内側対外側が規定される。脂肪は、スペースを定義したり、または体腔または器官の内側対外側を分離するのに役立つことはない。脂肪性ECMは、それが基底膜をもつ血管を有する範囲に対してだけ基底膜がある(および多数の微細血管として脂)。脂肪自体は基底膜を含まない。真皮とは似ておらず、真皮が行うように、自然に生じる脂は、BMの著しい量を含まない。自然に生じる脂肪性組織は主として脂質で構成される。ここに記載した処理された脂肪性組織材料の調製後、材料は、基底膜を基本的に含まず、たとえば、80%またはそれよりも多く(以上)、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の基底膜を定義する材料は、処理された脂肪性組織から除去される。また、ここで用いるように、基底膜は、典型的に、スペース(空間)を囲み、または分けることが可能であると考えられる。
【0065】
基底膜の組成が明確に定義されている。したがって、当業者は、基底膜から導き出された材料を定めることが可能であろう。基底膜は、2つの基底層類の融合体である。それは、緻密層と称される電子密度の高い膜、約30-70ナノメートルの厚さ、および平均して30ナノメートルの直径および0.1-2マイクロメーターの厚さの網様コラーゲン(III型)原線維(その前駆体は線維芽細胞である)の基礎をなすネットワーク(網状構造)で構成される。このIII型コラーゲンは、間質マトリックスに見られる線維状コラーゲンとは対照的に、網様タイプのものである。コラーゲンに加えて、この支持性マトリックスには、固有の高分子の成分が含まれている。緻密層〔IV型コラーゲン線維で構成されているもの。パールカン(ヘパラン硫酸プロテオグリカン)がこれらの線維を被覆し、それらはヘパラン硫酸が高度にある〕および緻密層(ラミニン、インテグリン、円タクチン類、およぼジストログリカンで構成されている)が一緒に基底層を構成している。アンカリングフィブリル(固着線維)(VII型コラーゲン線維)およびミクロフィブリル〔フィブリリン(fibrilin)〕を有する基底層に付着したラミナ網様体は、まとめて基底膜として知られている。
【0066】
用語「胆汁酸」は、哺乳動物の胆汁中に主に見出されたステロイド酸として理解される。胆汁酸は洗浄剤および界面活性剤として機能することができる。胆汁酸には、制限されないが、タウロコール酸、グリココール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、およびリトコール酸が含まれる。
【0067】
ポリマーに関連して用いる時、用語「生物適合性」は技術認識される(art-recognized)。たとえば、生物適合性重合体には、それ自体が使用される濃度および量で宿主(たとえば、動物または人間)に毒性がないか、またはモノマーのまたはオリゴマーのサブユニットまたは他の副産物を宿主に有毒な濃度で生成する速度で分解される(ポリマーが分解される場合)のいずれものポリマーが含まれる。本発明の一定の具体例では、生分解は、概して生物でのポリマーの、たとえば、そのモノマーサブユニットへの分解を伴い、それは事実上毒性のないことを知ることができる。そのような分解から得られた中間体オリゴマー生成物は、異なる毒物学的な特性を有するが、しかしまたは、生分解は、酸化またはポリマーのモノマーサブユニット以外の分子を生成する他の生化学的反応を伴うことがある。結果として、一定の具体例では、患者(受動体)への移入または注入のようなインビボでの使用を対象とする生分解性ポリマーの毒物学は、1以上の毒性分析の後に定めることができる。任意の対象の組成物が生物適合性と考えられるように100%の純度を有する必要はなく、実際には、対象の組成物は上記記載された生物適合性であることだけが必要である。それゆえ、対象の組成物は、99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、60%、50%またはさらにそれよりも少ない生物適合性ポリマーを含有するポリマーを含むことができ、ここに記載するポリマーおよび他の材料および賦形剤が含まれ、そしてそれはまだ生物適合性である。
【0068】
ポリマーまたは他の材料が生物適合性であるかどうかを判断するためには、毒性分析を行う必要があるかもしれない。そのようなアッセイはこの技術でよく知られている。このようなアッセイの一例は、次の方法において、GT3TKB腫瘍細胞のような生きたガン腫細胞を用いて実行することができる。完全な分解が観察されるまで、試料は37℃で1MのNaOHにおいて分解される。次いで、この溶液を1MのHClで中和される。分解した試料生成物の種々の濃度のものの約200μLを、96ウェル組織培養プレートに置き、104/ウェルの密度でヒト胃ガン腫細胞(GT3TKB)を播種する。分解した試料生成物を、48時間GT3TKB細胞と共にインキュベーションする。アッセイの結果は、組織培養ウェルにおける分解した試料の%相対増殖対濃度としてプロットすることができる。加えて、ポリマー、ポリマーマトリックス、および本発明での処方物はまた、ラットでの皮下移入のような、よく知られるインビボ試験によって、それらが皮下移入部位での刺激または炎症の有意なレベルを引き起こさないことを確認するために評価することができる。
【0069】
生物適合性材料はまた、ここで提供する無細胞脂肪性生物物質のような、対象体への移入に適する自然に導き出される生成物を含むことができる。
【0070】
ここで用いるように、「生物適合性生物物質」は、組織の再構築、たとえば、顔の再構築、乳房再構築、注入喉頭形成術であり、HIVプロテアーゼ誘発脂肪萎縮の処置、美容整形、例えば、乳房、臀部、ふくらはぎ、胸筋、唇、および頬増強、しわ逆転、および瘢痕、外傷、先天性欠陥、手術痕、火傷、および腫瘍切除からの欠陥を含む不具合の充填のために用いることができ、それらのものは、哺乳類において、好ましくはヒト対象体で用いるために許容可能な物質である。
【0071】
ここで用いるように、「カスパーゼインヒビター」は、カスパーゼプロテアーゼの作用を防止するプロテアーゼインヒビターのクラスのものであり、またシステイン-アスパラギン酸プロテアーゼとしても知られており、それらは、アポトーシス、壊死、および炎症に関与する。カスパーゼインヒビターには、制限されないが、カスパーゼインヒビターI、II、III、カスパーゼ1インヒビターI、II、III、カスパーゼ2インヒビター、カスパーゼ3インヒビター等が含まれる。
【0072】
ここで用いる「接触する」ことは、二つ以上の構成要素(例は、生物学的適合性ポリマー、架橋剤、界面活性剤、および脂肪性細胞;皮下脂肪性組織および過酢酸)を、二つ以上の構成要素の相互作用、例は、脂肪性細胞を含むゲル状の生物重合体マトリクス形成;脂肪性組織の脱細胞化を可能にするために、十分な時間の間、そして温度、圧力、pH、イオン強度などの適切な状態の下で十分近くにまでもたらすこととして理解される。本発明に関連して、接触させることは、チューブのような反応容器において、または本発明の組成物で充填される対象体の体腔で起こりうる。
【0073】
ここで用いる「架橋」は、共有結合、イオン結合、水素結合またはその任意の組合せの形成から生じる分子間架橋および随意の分子内架橋を含む組成物言及する。「架橋可能」は、架橋した組成物を形成するために反応を経ることができる構成要素または化合物に言及する。
【0074】
ここに用いるように、「クロスリンカー」または「架橋剤」などは、互換性の反応基を有する2つの他の分子の間の、共有結合的連結、すなわち、架橋の形成を可能にさせるために、少なくとも2つの反応基を含む化合物として理解される。架橋試薬は、タンパク質または他の分子上での特定の官能基(1級アミン、スルフヒドリル、など)への反応性末端を含む。タンパク質およびペプチドでの反応のための標的でありえるいくつかの化学的基は直ちに利用でき、それらが架橋法を用いて容易に接合され、そして研究されるのを可能にする。一定の具体例において、クロスリンカーは2つの自然に生じる生物重合体、例は、この発明の処理された脂肪性組織において存在するもののようなものの間で、架橋の形成のために用いられる。そのような架橋剤には、制限されないが、カルボジイミド(EDC)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde、glutaraldehyde)、プロアントシアニジン、リボース、トレオース、およびリジルオキシダーゼ、カルボジイミド〔例は、N−(3-ジメチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド(EDC)〕、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ポリエポキシエーテル類、ジビニルスルホン(DVS)、ゲニピン(genipin)、ポリアルデヒドおよびジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ゲニピン、エポキシ化合物類、ジアルデヒドでんぷん、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジメチルスベルイミデート(suberimidate)、カルボジイミド類、サクシニミジル類、ジイソシアナート類、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)およびアシルアジド(アジ化物);またはそれらの任意の組合せ(例は、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれよりも多くの架橋剤)が含まれる。「生物重合体の架橋剤」などは、人工の生物重合体または化学的に修飾した自然に生じる生物重合体、すなわち、脂肪性組織に存在する生物重合体でないもののような生物重合体と共に使用するための架橋剤として理解される。そのような生物重合体には、制限されないが、ここで議論するヒアルロン酸、ヒドロゲルおよび他の架橋可能な親水性の、荷電されたか、またはさもなければ共有結合的に架橋可能な材料が含まれる。脂肪性組織に存在しない生物重合体と共に使用するための適切な架橋剤の選定は、ここで議論する。
【0075】
本発明の重合可能な薬剤には、モノマー、マクロマー、オリゴマー、ポリマーまたはそれらの混合物が含まれうる。重合体組成物は、単に共有結合的に架橋可能な重合体またはイオン性の架橋可能な重合体、または酸化還元化学によって架橋可能な重合体、または水素結合によって架橋された重合体、またはその任意の組合せだけからなることができる。重合可能な薬剤は実質親水性および生物学的適合性であるべきである。
【0076】
ここで用いるように、「検出すること」、「検出」などは、アッセイまたは方法を試料での特定の分析物の識別のために実行したことと理解される。試料において検出された分析物の量は、ないか、またはアッセイまたは方法の検出のレベルより低いことがある。
【0077】
用語「ゲル」は、液体および固体の間の物質の状態に言及し、そして概して、液体の媒体での膨潤した架橋重合体ネットワークとして規定される。典型的に、ゲルは、双方の固体および液体を含む二相コロイド分散体であり、そこでは、固体の量は「ゾル」と称される二相コロイド分散体でのものよりも多い。それ自体として、「ゲル」は、いくらかの液体の特性をもち(すなわち、形態は弾力的で、そして変形可能であり)、およびいくらかの固体の特性をもつ(すなわち、形態は二次元の表面で三次元を維持するのに十分に不連続である)。「ゲル化時間」、また、ここでは「ゲル時間」と称するが、組成物が適度のストレス下で非流動可能になるためにかかる時間に言及する。これは概して、弾性率G’が、粘性係数(viscous modulus)(G’’)に等しいか、または超える物理的状態に達するとき、すなわち、タン(デルタ)が1になる時〔慣習的なレオロジー(流動学的)技術を使用して定められうるとき〕に示される。
【0078】
ここで用いるように、「増殖因子」は、細胞増殖、増加および細胞分化を刺激することができる自然に発生する物質として理解される。通常は、それはタンパク質またはステロイドホルモンである。増殖因子類は、細胞増殖、分化、移動、および血管新生を含む多種多様な細胞プロセスを調節するために重要である。増殖因子類は、典型的に、細胞の間でのシグナリング分子としてはたらく。それらの例は、それらの標的細胞の表面での特定の受容体に結合するサイトカイン類およびホルモン類である。増殖因子類には、制限されないが、骨形成タンパク質(BMPs)、上皮(表皮性)増殖因子(EGF)、エリトロポイエチン(EPO)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖分化因子-9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、インシュリン様成長因子(IGF)、ミオスタチン(GDF-8)、神経増殖因子(NGF)および他のニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(PDGF)、トロンボポエチン(TPO)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-α)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、および血管内皮増殖因子(VEGF)が含まれる。
【0079】
「ヒアルロン酸」(HA)(また「ヒアルロナン」または「ヒアルロナート」として知られる)は、結合組織、上皮組織、および神経組織を通して広く分布した非硫酸化グリコサミノグリカンである。それは細胞外基質の主構成要素の1つであり、細胞の増殖および移動に対して著しく寄与し、そしてまた若干の悪性腫瘍の進行に関与することがある。HAの繰返し二糖単位は(-4GlcUAβ1-3GlcNAcβ1-)nである。ヒアルロン酸は、25,000の二糖繰返しの長さであることができる。HAの重合体類は、インビボ(生体内)で、5から20,000kDaのサイズに及ぶことができる。本発明で用いるためのヒアルロン酸は、およそ5、10、25、50、100、500、1000、2000、5000、7500、10,000、15,000または20,000kDaの分子量、または提供されるいずれか2つの分子量の間の範囲を有することができる。用いられるHAの特定のサイズは、最終使用者の選定の問題である。たとえば、より一層高い分子量のHAが多くの適用のためにより一層良好な粘性を有することは十分に理解される。より一層低い分子量のHAは血管形成であるが、しかし、より一層低い分子量のHAはまた、より一層高い分子量のHAよりも強い炎症反応を生成する。そのような配慮は、この技術での熟練者に十分に理解される。
【0080】
ここで用いるように、「ヒドロゲル」は、水の大きな容量分率(volume fraction)を含むことができる親水性架橋重合体として理解される。より一層好ましくは、本発明に従うヒドロゲルは、およそ70-90容量%を超える水を含むことができる。親水性重合体がインサイツ(原位置)に形成されるとき、それは水を本質的に環境から、またはヒドロゲルをつくるのに用いられる溶液から得ることができる。
【0081】
ここで用いるように、特に「分離した脂肪」に用いるような「分離した」は、この発明の生物物質の一つ以上の調製を可能にするために非脂肪性組織または細胞を脂肪性細胞外基質、組織、または細胞から分離することとして理解される。例えば、「分離した脂肪」は、固形の分離した脂肪、例は、組織試料からの、例えば、皮下脂肪(ファット)のようなもの、または液状の分離した脂肪、例は、リポ吸引物からのものを含むことができる。分離は、材料が非脂肪性材料を完全に含まないことを要求しない。分離した脂肪は、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、または98%の脂肪性細胞、組織、細胞外基質、その他を含むと理解される。たとえば、脂肪は、スクレーピングによって皮下脂肪を含む組織試料から分離することができる。脂肪は、この技術で知られる方法を用い、密度によって、リポ吸引物から分離することができる。
【0082】
ここで用いるように、「キット」は、本発明の方法での使用のために、適切な包装において、または使用のための指示書と共に、一以上の構成要素を含むように理解される。
【0083】
ここで用いるように、「脂肪吸引物(吸引脂肪組織)」は脂肪吸引のような美容外科手順のそれ以外は使い捨ての副産物である。
【0084】
ここで用いるように、「哺乳動物」はクラス哺乳類(哺乳類綱)の任意の動物として理解される。哺乳類は、制限されないが、ヒトおよび非ヒト霊長類、ブタ、イヌ、ネコ、ウシ、マウス、ラット、ウマおよびラビットが含まれると理解される。
【0085】
ここで用いるように、「操作する」ことは、手動で(例は、パンを練るような)、または機械的に(例えば、ミキサー、ホモジナイザーまたはブレンダーを利用して)、非流動性の材料、例は、脂肪の塊を作用させ、圧縮し、または分けて、その材料を、もう一つの材料、例は、緩衝剤、乾燥材料、溶媒、超臨界流体、酵素、その他と完全に接触させると理解される。操作は、たとえば、脱細胞化および/または脂肪からの脂質の除去を促進するために実行することができる。
【0086】
ここで用いるように、「ミンシング」は、材料を、たとえば、粉砕する(グライディングする)か、または切り刻む(チョッピングする)ことによって、材料、例えば、脂を処理するか、または随意に繰り返し、精細に分けられる材料を提供するために、型を通して材料を押出加工することとして理解される。材料は、好ましくは、材料に浸透させるために、薬剤、例は、酸、洗浄剤、緩衝剤、架橋剤が、脂質と接触するのを許すように十分に微細である。組織からの脂質の分離のプロセスは必然的に組織のより一層小さな破片を提供することをもたらすと理解される。
【0087】
ここで用いる「非イオン性洗浄剤」は、たとえば、エトキシル化脂肪アルコールエーテル類およびラウリルエーテル類、エトキシル化アルキルフェノール類、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール化合物類、修飾されたオキシエチル化および/またはオキシプロピル化された直鎖アルコール類、ポリエチレングリコールモノオレアート化合物類、ポリソルベート化合物類、およびフェノール脂肪アルコールエーテル類を含むと理解される。特により一層好ましくは、Triton(R)〔トリトン(商標)〕X-100、Triton(R)X-114、BASFからのPluronics(プルロニックス)(以下に界面活性剤としてリストするようなもの)、ICI Americas Inc.(ICIアメリカス社)、Wilmington(ウィルミントン)、Del.(デラウェア)からのTween(R) 〔トウィーン(商標)〕20、Tween(R)80であり、それはポリオキシエチル化(20)ソルビタンモノラウラートであり、BASF Wyandotte Corp.(BASFワイアンドット社)、Parsippany(パーシッパニー)、N.J.(ニュージャージー)からのIconolTM〔イコノル(商品名)〕NP-40であり、それは、エトキシル化アルキルフェノール(ノニル);オクチルグルコシド、およびオクチルチオグルコシドである。
【0088】
ここで用いるように、「ヌクレアーゼ」は、一つ以上の核酸、例は、DNAおよびRNAを消化する酵素として理解される。ヌクレアーゼには、制限されないが、オリゴヌクレオチダーゼ(oligonucleotidase)、デオキシリボヌクレアーゼI、II、IV、制限酵素、UVrABCエンドヌクレアーゼ、RNase III、RNase H、P、A、T1、および小球菌ヌクレアーゼ(micrococcal nuclease)が含まれる。本発明での処理された脂肪性組織での使用のためのヌクレアーゼは好ましくは、生物適合性であり、および/または不活性化されたものとなり、または対象体への処理された脂肪性組織の配送に先立って不活化させることができる。
【0089】
「得ること」は、ここでは製造、購買、またはさもなければ所有に入ることと理解される。
【0090】
用語「薬学的に許容可能なキャリヤーまたはアジュバント」は、この発明での化合物と一緒に、患者(受動体)に投与することができ、そしてそれはその薬理学的活性を壊さずに、治療上の量の化合物を配送するのに十分な用量において投与されるとき無毒である、キャリヤーまたはアジュバントに言及する。
【0091】
本発明での使用のための薬学的に許容可能なキャリヤーは、滅菌した注射可能な調製物の形態、たとえば、滅菌した注射可能な水性または油性の懸濁物であってよい。このような懸濁物は、適切に分散された、または湿潤した薬剤(たとえば、Tween(R)80)および懸濁化剤を用いたこの技術で知られる技術に従って調剤することができる。また、滅菌した注射可能な調製物は、無毒の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒での滅菌した注射可能な溶液または懸濁液の状態、たとえば、1,3-ブタンジオールでの溶液であってもよい。許容可能な媒体および溶媒の中で、マンニトール、水、リンガー溶液および等張食塩溶液(生理食塩水)を採用することができる。加えて、滅菌した、固定油(不揮発性油)は、慣習的に溶媒または懸濁培地として採用される。この目的のため、任意の穏やかな不揮発性油も、合成のモノまたはジグリセリドを含めて採用することができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、注射物質の調製に有用であり、そのことは特にそれらのポリオキシエチル化バージョンにおいて、自然な薬学的に許容可能な油、たとえば、オリーブ油またはヒマシ油のようなものである。また、これらの油溶液または懸濁物は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、またはカルボキシメチルセルロースまたは類似した分散性薬剤を含むことができ、それらは、普通に、エマルジョン類およびまたは懸濁物のような薬学的に許容可能な剤形の調剤物において用いられる。また、他の普通に用いられる界面活性剤で、たとえば、Tweens(トウィーンズ)またはSpans(スパンズ)のようなもの、および/または薬学的に許容可能な固形の、液状の、または他の剤形の製造において普通に用いられる他の類似した乳化剤または生物学的利用能エンハンサーを、調剤の目的のために用いられる。
【0092】
ここで用いる、「複数の」は、1よりも多いことを意味すると理解される。たとえば、複数は、少なくとも2、3、4、5、10、25、50、100以上に言及する。
【0093】
「ポリエチレングリコール」(PEG)〔また、ポリエチレンオキシド(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)とも称される〕は式HO-(CH2-CH2-O-)n-Hを有し、およびそれらは典型的に線形(すなわち、分枝してない)分子である。この発明の組成物および方法において用いるためのポリエチレングリコールは、約1000 MWから10,000 MWの分子量を有する。
【0094】
ここで用いるような重合可能な混合物は、任意の好適な重合可能なポリマー、モノマー、またはモノマーおよび形成されるポリマーの混合物:共有結合的に架橋されたネットワーク、重合開始剤の存在を伴うか、または伴わないもの、イオン的に架橋されたネットワーク、または共有結合的およびイオン的に架橋されたネットワークのブレンドである。本発明に従う重合可能な混合物は、カプセル化される細胞、または材料が移入される組織または対象体に対し毒性がない重合したネットワークを形成することができなければならない。
【0095】
光重合可能な重合体は、外部供給源によって提供される放射線を用いて共有結合的に架橋したネットワークを形成する任意の適切な重合体、または外部供給源からの放射線にさらされた時、半浸透ネットワークがそこに懸濁した細胞を有して形成される共有結合的に、およびイオン的に架橋可能なまたは親水性の重合体のブレンドである。本発明に従う光重合可能な混合物は、カプセル化されている細胞に毒性がない重合されたネットワークを形成することができなければならない。
【0096】
重合開始剤は、ハイドロゲルネットワークを形成するポリマーの架橋を開始する任意の物質であり、そしてそれには、酸化還元剤、カルシウムのような二価カチオン、可視光および/またはUV放射(紫外線)にさらされる時、活性種を形成する物質が含まれる。光開始剤は、UV光および/または可視光にさらされたとき、活性種を生成する重合開始剤の特定の種類であり、そして光重合可能な混合物の重合(すなわち、架橋)を開始するために使用することができる。本発明に従う重合開始剤類および光開始剤類は重合可能な混合物の架橋を開始するために必要な量で使用するとき、カプセル化されている細胞に対して毒性がないものでなければならない。
【0097】
生きている細胞をカプセル化するためのハイドロゲルは、高含水親水性ポリマーネットワークである。本発明にかかるこのようなハイドロゲルは、例えば、約70-90%より高い水分を有することができる。本発明にかかるこのようなハイドロゲルは、カプセル化された細胞に対して毒性がなく、そしてポリマーネットワークを介して、細胞への栄養素、および細胞から離れた廃棄物の移動を許可される。
【0098】
「重合開始剤」は、任意の物質または刺激を意味し、それはフリーラジカル(遊離基)生成によってモノマーまたはマクロマーの重合を開始することができる。模範的な重合開始剤には、電磁放射、熱、化学的化合物が含まれる。
【0099】
「脱細胞化および脂質の抽出を推進する」のプロセスは、材料から細胞および脂質を除去するために、組織試料のような試料の化学的な、または物理的な処理および/または操作として理解される。プロセスは、一つまたはそれよりも多くの緩衝剤の存在下での連続した一連の試料の洗浄および操作を包含することができる。
【0100】
「提供すること」、たとえば、購入、作成、またはその他で所有の状態になることによって得ることに言及する。
【0101】
「確実に付着した生細胞」は、生きている、接着細胞として理解され、それは、たとえば、増殖培地を交換するために細胞をリンスする(すすぐ)日常的な方法を用いて、処理された脂肪性組織に付着し続ける。確実に付着した生細胞は、たとえば、以下の例において提供されるような方法を用い、マトリクスに付着した細胞を撮像(イメージ)するために、日常的な洗浄方法を通して、処理された脂肪性組織に付着し続ける。生細胞が確実に付着していること、または材料は、日常的な細胞の染色法〔例は、免疫蛍光、トリパンブルー(tyrpan blue)、など〕を実行することおよびその50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上の、処理された脂肪性組織にもともと付着していた生細胞が、細胞培養、免疫蛍光染色、または他の細胞染色およびここで提供する操作方法で用いるすすぎおよび/または洗浄の後に付着し続けることを定めることによって、材料が細胞の確実な付着を可能にするかどうかを定めることができる。
【0102】
ここで用いるように、「溶液」は溶液、懸濁物、またはコロイドを意味する。
【0103】
用語「スペース(空間)」は、この発明の組成物が固まるように注入されるか、または移入され、そして大まかに定められ、および型において形成されたキャビティ(空洞)、組織において外科的に形成された空洞、または外科的にアクセスすることができる組織において自然に存在する空洞、本発明での組成物および方法を用いて修復されるしわ(ひだ)または他の組織異常が含まれうる所の場所を説明し、ここで用いる。
【0104】
ここで用いるように、「対象体」は、動物、好ましくは、マウス、ラット、イヌ、ネコ、サル、ウシ、ブタ、または、人間または非ヒト霊長類のような哺乳動物として理解される。人間の対象体はまた、患者として知られている場合もある。
【0105】
ここで用いるように、「相当な免疫反応」は、医療専門家による介入(診療)が必要な本発明での処理された脂肪性組織の移入後に対象体の免疫反応として理解され(例は、処理された脂肪性組織の除去の必要性、免疫抑制薬物)、または移入した処理された脂肪性組織の大幅に減らされた生存期間、たとえば、移入した処理された脂肪性組織の持続時間は50%以上、少なくとも60%以上、少なくとも70%以上、少なくとも80%以上、または少なくとも90%以上によって減少され、そしてそこでは、移入した処理された脂肪性組織は、少なくとも一つの種類の炎症性細胞と共に浸入し、それには、制限されないが、マクロファージ、好中球、および好酸球が含まれる。相当な免疫反応は、時間とともに減少する移入の部位での一般的な発赤、刺激作用、および膨張の一時的な、およびトランジェント(過渡応答)の(例は、1週以下、6日以下、5日以下、4日以下、3日以下、2日以下、または1日以下)を含まず、そして移入した組織自体への反応でない場合があるが、しかし、その代わりに、皮膚の崩壊またはさもなければ、皮膚または移入と関係する組織の崩壊または伸縮による隣接組織に対する反応でありうる。
【0106】
ここで用いるように、「界面活性剤」は記載した生物物質、ヒドロゲル、またはHLB(親水性親油性バランス)値が18よりも高いか、またはそれに等しいか、または任意の組合せのどれでも有する直鎖ポリエーテル界面活性剤を含む他の生物物質の溶液での、脂の組織の乳化を助けるための組成物であり、それは臨床用途にとって安全であることが証明される。
【0107】
直鎖ポリエーテル界面活性剤は、制限されないが、「PluronicTM〔プルロニック(商品名)」としてBASFワイアンドット社〔ワイアンドット、ミシガン州(Mich)〕を含む商業上の供給源から入手可能である。界面活性剤のHLBは、ポリエーテル界面活性剤の乳化の特徴を決定する際における主要な要因であることが知られている。概して、より一層低いHLB値を有する界面活性剤はより一層高い親油性であり、その一方、より一層高いHLB値を有する界面活性剤はより一層親水性である。種々のポロキサミンズ(poloxamines)およびポロキサマーズ(poloxamers)のHLB値は、BASFワイアンドット社によって提供される。
【0108】
18より高いか、またはそれに等しいHLB値を有する適切な直鎖ポリエーテル界面活性剤には、たとえば、制限されないが、31のHLBおよび4700の平均分子量(AMW)を有するプルロニックF38TM(BASF);29のHLBおよび8400のAMWを有するプルロニックF68TM(BASF);26のHLBおよびAMWまたは7700を有するプルロニック68LFTM(BASF);25のHLBおよび6600のAMWを有するプルロニックF77TM(BASF);24のHLBおよび7700のAMWを有するプルロニックF 87TM(BASF);28のHLBおよびAMWまたは11400を有するプルロニックF88TM(BASF);28のHLBおよび13000のAMWを有するプルロニックF98TM(BASF);27のHLBおよび14600のAMWを有するプルロニックF108TM(BASF);22のHLBおよび12600のAMWを有するプルロニックF127TM(BASF);19のHLBおよび1900のAMWを有するプルロニックL35TM(BASF);27のHLBおよび12200のAMWを有するTetronic(テトロニック)707TM(BASF);31のHLBおよび25000のAMWを有するテトロニック908TM(BASF)が含まれる。HLB値が18より高いか、またはそれに等しいものを有する好ましい直鎖ポリ(エチレンオキシド-プロピレンオキシド-エチレンオキシド)(PEO-PPO-PEO)ブロック共重合体、プルロニック界面活性剤は、プルロニックF38TM、プルロニックF68TM、プルロニック68LFTM、プルロニックF77TM、プルロニックF87TM、プルロニックF88TM、プルロニックF98TM、プルロニックF108TM、プルロニックF127TMである。より一層好ましいプルロニック界面活性剤は、プルロニックF127TMである。
【0109】
脂組織の必要なHLBを得るために、水性組成物での組合せにおけるポリエーテル界面活性剤またはポリエーテル界面活性剤は、およそ2.0から10.0重量パーセントまでである。より一層好ましくは、合計の組み合わせた総量は、4.0から8.0重量パーセントにわたる。
【0110】
ここで用いる「弱酸」は、溶液で完全には解離しない酸としてここで理解され、たとえば、過酢酸(PAA)、酢酸、ホウ酸、およびリン酸である。
【0111】
ここに提供される範囲は、範囲内の値の全ての簡略形であると理解される。たとえば、1から50までの範囲は、次の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、および50からなる群からの任意の数、数の組合せ、または下位範囲も含むと理解される。
【0112】
「少なくとも」の一定の値は、その値またはそれより多いとして理解される。たとえば、「少なくとも10」は、「10またはそれよりも多い(10以上)」として理解され、「少なくとも20」は、「またはそれよりも多い(20以上)」として理解される。ここで用いる「未満」の一定の値は、その値およびそれより少ないことを意味すると理解される。たとえば、「10未満」は、「10またはそれより少ない(10以下)」を意味すると理解される。
【0113】
特に述べられないか、またはここで用いるように、前後関係から明らかでないかぎり、用語「または」は包含的であると理解される。
【0114】
もし、特に述べられないか、または前後関係から明らかでなければ、ここで用いるように、用語「一つ(a)」、「一つ(an)」および「それ(the)」は単数または複数であると理解される。
【0115】
もし、特に述べられないか、または前後関係から明らかでなければ、ここで用いるように、「およそ(約)」は、この技術での通常の許容範囲内として、たとえば、平均の2桁の標準偏差内として理解される。およそは、述べた値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01% として理解される。
【0116】
ここでの変数の任意の定義での化学的なグループの一覧(リスト)の復唱(列挙)には、リストされたグループの任意の単一のグループまたは組合せとしてその変数の定義が含まれる。変数またはここでの見地のための具体例の復唱には、任意の単一の具体例または任意の他の具体例またはその部分との組合せを含む。
【0117】
ここで提供する任意の組成物または方法でも、ここに提供される任意の他の組成物および方法の一つ以上と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1A-Cは注移入用の脂肪吸引物の脂肪性組織を示す。A)は脂質および水性PEGの混合物を示す。左端のチューブは界面活性剤が含まれていない。相分離は明白である。右に移動すると、界面活性剤の増加濃度が加えられ、改善された乳化が示される。B)は脂肪吸引物およびHAの変動する比率において(10%-50%)溶解した10%w / vのPEGを示す;およびC)は脂肪吸引物およびPEGおよびHAの皮下注入後の無胸腺マウスを示す。
【図2A】図2Aは無胸腺ヌードマウスの背部に軟組織インプラントの全体のイメージを示す図である。
【図2B】図2Bは軟組織インプラントのSprague-Dawley(スプラーグドーリー)ラットのT2 MRIであり、体積の測定が可能になる。
【図2C】図2CはC)商業上入手可能なインプラントのものである。
【図2D】図2DはD)ヒアルロン酸を伴うか、または伴わない、いずれかの細胞脂肪性組織の高さおよび容量を経時的にプロットし、およびそれらが移入した脂肪性組織および商業上入手可能な注入された皮膚充填剤の既知の臨床的持続性と相関することが見出された。
【図3】図3A-C:A)前処理した、基礎となる皮下脂肪性組織を有するドナーの腹壁形成の皮膚の試料を示す。B)3または6時間の間の過酢酸(PAA)の濃度の変動(0.1%-5%)を伴う脂肪性組織の全体(上)およびH&E(下)染色像を示す。C)濃い紫色(ヘマトキシリン)での染色された核を有する前処理された脂肪組織のH&E染色および脂質充填された空胞を反映する空きスペースのアーキテクチャ(基本設計)を示す。前処理された脂肪性組織の全体像(A)に比べて、特徴的な黄色の損失は、PAAの濃度の増加を伴って(B)見られる。C)核の濃い紫色のヘマトキシリン染色および前処理された組織での空胞の空のスペースを示し、(C)で見られるように、処理された組織(B)にもはや存在しておらず、脱細胞化および処理法の間に発生するECMが確認される。
【図4】処理されていない脂肪性組織(コントロール)に比べて、様々な処理法の後に、試料組織での残りのDNA含量を定量化するDNAアッセイである。
【図5A】図5A-Eは、様々な処理法が、DNAおよび脂質を含む免疫原性の、および炎症性細胞の内容物を除去することができるが、それでもECM成分を保持することを確認するために、A)残留するタンパク質含量のものである。
【図5B】図5BはB)コラーゲン含量を定量化し、そしてコントロールと比較する。
【図5C】図5Cはまた、D)GAG含量を定量化し、およびコントロールと比較する。C)I型コラーゲン免疫染色(茶色染色)およびE)サフラニン(Safrainin)-O(赤色染色)を、コラーゲンおよびGAGの存在を定量化するために用いる生化学的アッセイを裏付ける組織学上の試料上で行った。
【図5D】図5Dはまた、D)GAG含量を定量化し、およびコントロールと比較する。C)I型コラーゲン免疫染色(茶色染色)およびE)サフラニン(Safrainin)-O(赤色染色)を、コラーゲンおよびGAGの存在を定量化するために用いる生化学的アッセイを裏付ける組織学上の試料上で行った。
【図5E】図5Eはまた、D)GAG含量を定量化し、およびコントロールと比較する。C)I型コラーゲン免疫染色(茶色染色)およびE)サフラニン(Safrainin)-O(赤色染色)を、コラーゲンおよびGAGの存在を定量化するために用いる生化学的アッセイを裏付ける組織学上の試料上で行った。
【図6】図6は脂肪性組織を様々な処理法にさらした後に複素粘度に及ぼす生物力学的効果である。用いるPAAの濃度が増加すると複素粘度が低下する。
【図7A】図7A-DはA-B)移入後40日の無胸腺マウスでの移入した、処理された脂肪性組織の全体像を示す。
【図7B】図7A-DはA-B)移入後40日の無胸腺マウスでの移入した、処理された脂肪性組織の全体像を示す。
【図7C】C)ラットにおける45日での移入した、処理された脂肪性組織、およびD)ラットにおける45日の移入後の処理された脂肪性組織の4×H&E染色を示す。
【図7D】C)ラットにおける45日での移入した、処理された脂肪性組織、およびD)ラットにおける45日の移入後の処理された脂肪性組織の4×H&E染色を示す。
【図8A】図8A-Cは、ラットの動物モデルにおける21日間にわたって測定したPATの皮下インプラントのA)容量比およびB)高さによって測定される生体内での持続を示す。
【図8B】図8A-Cは、ラットの動物モデルにおける21日間にわたって測定したPATの皮下インプラントのA)容量比およびB)高さによって測定される生体内での持続を示す。
【図8C】C)7日および21日での移入材料のH&E染色は、細胞の流入および暗く染色される白血球、好中球、またはマクロファージによって証明されるように最低限の炎症を示す。体積測定は時間とともに持続性の減少を示すが、組織構造は、凝縮したインプラント部位を示し、おそらく組織の集積が示される。
【図9】図9A-Fは、細かく分けた脂肪性組織を用いる脂肪性組織の処理のステップを示す。A)は腹部形成の手順から得られた脂肪性組織試料の例を示す。B)は3%PAAおよびTX-100の双方での処理後に処理された脂肪性組織のマトリックスを示す。C)はH&E染色された無傷の脂肪性組織の組織画像を示し、およびD)は細胞成分の残余がないことを示すH&E染色された脱細胞化した脂肪性組織の組織学的像を示す。E)DNAの定量およびF)0.1%-5%からの過酢酸の濃度を三時間の間変化させることで処理した組織のコラーゲンアッセイからの結果である。
【図10】図10は(上)細胞を伴わないで、および指定された倍率で10日間(下)の間細胞を播種して処理された脂肪性ECMの走査電子顕微鏡画像を示す。
【図11】図11は、未架橋のコントロール組織および架橋したECMについてコラゲナーゼと共にインキュベートしたときに24時間にわたり分解した総コラーゲンのパーセント割合によって決定されるように、酵素分解に対する未架橋および架橋PhATの持続を示す。A)は5-100 mMのEDCで架橋したPhAT(脂肪性ECM)を示す。B)はTween(R)20において1%および5%HMDCで架橋したPhATを示す。C)は2 -プロパノール(100%)において1%および5%HMDCで架橋したPhATを示す。
【図12】図12は、2週間のインビボのラット皮下移入の研究からの結果を示す。A)架橋されていないコントロール、B)5mMのEDC架橋したもの、およびC)Tween-20中1%のHMDCの架橋したECMのための皮下注入による移入の2週間後の脂肪性ECMの全体(上)および組織構造(下)の画像である。
【図13】図13A-Hはインプラントの(A-F)界面および(GI)中央での2週間後の皮下インプラントの組織構造を示す。移入された細胞外マトリックスは、(A、D、G)コントロール、(B、E、H)5 mMのEDC架橋されたもの、および(C、F、I)1%HMDCのTween(R) - 20の架橋された組織についての界面で撮影した画像のためのアスタリスクによって表される。
【発明を実施するための形態】
【0119】
詳しい説明および好ましい具体例 本発明は、生物適合性の生物物質、生物物質の調製のための方法、およびこの発明の生物物質の移入のための方法を提供する。
【0120】
再構築手術の分野では、適切な軟組織の置換えの著しい必要性がある。脂肪性組織は、腫瘍または先天性欠損のために外科的外傷および外科的切除のための軟組織欠損を修復する際に選り抜きの組織であり続ける。しかし、目下の自家の脂の移動技術は、いくつかの限界がある。脂移動の持続は、文献において30-90%の間のどこかの報告と共に広く異なる。持続は、しばしば外科医、テクニックおよび患者依存性である。持続のそのような損失は、望ましい修正を維持するために複数の手順を要求する。自家の脂移動に関連したドナー部位の病的状態は、また重要な懸念でもある。そのうえ、移入された脂肪性組織は、手術後の石灰化にしばしば至る。これは、乳房切除の後、胸部再構築を経ている乳ガンの病歴を有する女性のために特に重要であり、それは、これがマンモグラフィーの読みに干渉することがありえ、そして複数の、不必要な胸部生検および懸念をもたらすからである。最後に、リポジストロフィーを患う多くのHIV患者にとって、またはガンのために化学療法および放射線を受ける患者にとって、関連する悪液質は、その者らが自家の脂移動のために必要とする脂肪の容積を伴わずに、その者らから去る。これらの理由から、脂肪性組織の機械的および生物学的特性を保持する、予想可能な、「すぐに入手可能な」材料は、軟組織欠損および軟組織増大の再構築のために理想的である。
【0121】
再生医療の狙いの1つは、組織の置換を提供することである。生物物質および細胞が新しい組織を再生するために採用されることが多い一方、これらの方法は高価であり、そして新しい組織を形成するために著しく時間がかかる傾向がある。近年、組織置換が、処理された皮膚、骨、膀胱、血管類、腸管膜および羊膜からつくられ、そして、多種多様な適用のために臨床使用される。種々の処理法は、組織を脱細胞化するために採用され、細胞外基質(ECM)が残され、それは所定の組織を形作る細胞を支持し、および維持するのに理想的に適する構造および機能的なタンパク質の独特な、組織特異的集合からなる。〔Reing(レイング)、2009年。Tissue Engineering(組織工学)15:605。〕
【0122】
特に皮下脂肪性組織で見つかるECM構成要素群、糖タンパク質類、増殖因子類、およびグリコサミノグリカン類(gylcosaminoglycans)(GAGs)は、脂肪生成を誘発する能力があることを、以前の調査は示した。脂肪性組織再構築用に有益なマトリックスをつくるように皮下脂肪性組織の固有の生物活性を利用するために脂肪性組織を処理することで、本発明者らは種々の方法を調査した。細胞および脂質は、それぞれ、炎症反応および局所的毒性反応を引き起こし、脂組織処置のための方法論は、それらの除去に依存する。最終的な、処理されたヒトの脂肪性組織(PhAT)は、無細胞であり、そしてほとんど脂質残余を含まないが、まだ、脂肪性組織の自然な基本設計および生物活性を保持する。軟組織再構築および増大のために用いられるインサイツ(原位置)の組織形成のために、このPhATは、容積および足場の双方を提供する。
【0123】
この発明により提供される生物学的適合性の生物物質の第一のクラスは、細胞系の生物学的適合性の生物物質であり、それには、生物物質、(水、しばしばヒドロゲルの形態)、および脂質(脂肪)-界面活性剤の存在下で溶解し、好ましくは足場と関連し、好ましくは生物学的適合性重合体で、架橋可能な足場との組合せが含まれる。この生物物質は脂細胞系の生物物質であり、そして、移植は好ましくは自家のドナーからのものである。混合の範囲は、界面活性剤の選定および濃度によって修飾することができる。脂は望まれるように処理することができ、そして生物物質の選定は標準的な生物物質成分の多くを含むことができる。足場の存在下に一緒に水および脂を組み合わせることの重要性は、以下の通りである。すなわち、1) 足場は、より一層良好な形態の組織に、脂における細胞のための三次元フレームワーク/足場を提供する(すなわち、より一層大きな容量)。2)若干の生物物質(すなわち、ヒアルロン酸)は、血管新生を誘発することができ、それは脂の形成を助け、そしてより一層大きな容量を提供することができる。本発明の生物物質のこの手順の移入が好ましくは注入によるので、複数の注入はより一層大きな組織構造を構築するように作成されうる。
【0124】
生物適合性の生物物質のこの第一のクラスは、界面活性剤系を用いることによる自家の脂を伴った、ヒアルロン酸、ならびにヒドロゲルを含む他の材料の組合せを可能にする。そのようなシステムは、それ以外は混ざらない材料中への親水性生物物質および脂質の乳化を許容する。結果はより一層大きな容量を伴う注入可能な生物物質、以前の充填剤物質と比較して寿命が高められ、このようにして、単独での脂または充填剤の移動と比較して臨床結果を改善した一方で、臨床使用の簡便さ、および望ましいテクスチャーを維持した。
【0125】
本発明はまた、処理された脂肪組織(PAT)と称する無細胞の脂肪性生物学的適合性の生物物質である生物学的適合性の生物物質の第二のクラスを提供する。無細胞の生物物質はドナー脂肪性組織から導き出されるが、しかし、細胞材料が組織から除去されるので、それは非免疫原性で、そして非自家の供与のために用いることができる。これは、「容易に入手可能な」生物学的適合性の生物物質(充填剤)を提供することによって、生物物質の使用のためにより一層大きな便宜および標準化を提供する。
【0126】
無細胞材料は、たとえば、脱細胞化、好ましくは脂肪性組織の化学的脱細胞化によって生産される。材料の剛性により、機械的な、または手動の操作は、処理された組織試料と洗浄溶液との妥当な混合を保証するために、各々の洗浄ステップで試料に対して行われる。無細胞の脂肪性の生物学的適合性の生物物質の調製は、ホモジナイゼーション(均質化、そして中和のための滅菌した塩類溶液または緩衝剤での連続する洗浄、好ましくは次いでさらに脂質を細胞から抽出するために、たとえば、過酢酸(約0.1%-10%v/v、好ましくは約0.5%から約3%v/vまで、好ましくは約1%v/v)のような有機過酸化物またはデオキシコール酸(約0.1%-10%w/v、好ましくは約0.5%から約2.5%w/vまで、好ましくは約1%w/v)のような胆汁酸の溶液において連続する洗浄の実行によって達成することができる。酸性の洗浄は、次いで随意に、リン酸緩衝塩類溶液(PBS)のような緩衝剤において、または水中で、Triton-X 100またはTween 20(約0.1%-10%v/v、好ましくは約0.5%から約2.5%v/vまで、好ましくは約1%v/v)を含むここに提供されるもののような非イオン性洗浄剤での連続する洗浄が続く。随意に、胆汁酸、弱酸、および/または非イオン性洗浄剤の洗浄は、次いで材料において残留する脂質を除去し、そして均質な白色の生物学的足場を生産するために、ジクロロメタン/メタノール(2:1)のような有機溶剤における洗浄が続けられうる。さらに別の選択肢は、たとえば、液体二酸化炭素のような、超臨界の流体中に材料を通すことであり、二酸化炭素の以降の蒸発および材料からの脂質の分離を伴い、このようにして、有毒な有機化合物の使用が避けられる。次に、材料は任意の適切な方法を通して滅菌することができ、それには、制限されないが、ガンマ照射および/またはエチレンオキサイドでの処置が含まれる。このステップは、材料に対する損害を減らすために、任意の保存剤または保護剤で補われることができる。次いで、処理された脂肪性組織は、望ましいサイズの粒子に、好ましくは注入を可能にするために形成され、および随意に、対象体への注入に先立って、一つ以上の架橋剤を伴うか、または伴わないで、重合可能な生物重合体の足場のような適切な生物物質と共に混合される。材料は、貯蔵のために、粒子に形成される前またはその後に、凍結乾燥させることができ、使用に先立ち、再水和させることができる。必要に応じて、注入された材料は、注入後に架橋アクチベーター(活性剤)(例は、光の適切な波長)を受ける。そのような考慮はこの技術の熟練者に十分理解される。
【0127】
皮下の脂肪性組織において見出される細胞外マトリクス(ECM)の構成要素、糖タンパク質、およびグリコサミノグリカン類(gylcosaminoglycans)(GAGs)が脂肪生成を誘発する能力があることを、以前の調査は示した〔Uriel(ウリエル)ら、2008年、The Role of Adipose Derived Protein Hydrogels in Adipogenesis(脂肪生成における脂肪由来タンパク質ヒドロゲル類の役割)。Biomaterials(バイオマテリアルズ)。29:3712-3719、参照によってここに組み込む〕。皮下脂肪性組織の固有の生物活性を利用して、脂肪組織再構築用に有益なマトリックスを作成するために、本発明は脂肪性組織を処理することによって組織誘導物質を提供する。脂肪性組織処置のための方法論は、炎症反応および局所的毒性反応を、それぞれ引き起こす細胞および脂質の除去に依存する。最終的な、処理された脂肪性組織(PAT)は、無細胞であり、そしてほとんど脂質残余を含まないが、まだ脂肪性組織の自然な基本設計および生物活性を保持する。たやすく入手可能な無細胞皮膚生成物、Alloderm(アロダーム)TMに類似し、それは皮膚置換およびヘルニア修復のために普通に用いられ、このPATは軟組織再構築および増大における原位置での組織形成のための容量および足場を提供する。
【0128】
ここに示されるように、皮下脂肪組織は、細胞および脂質を除去するために処理されうる一方で、まだ細胞外マトリクスの自然な基本設計を保存する。処理された組織の組織構造は、未処理の脂肪性組織において見られる有核細胞および脂質空胞がない(例は、図3および9)。
【0129】
最適な処理法は、組織のすべての免疫原性成分、細胞および、脂質類を含む細胞の細片のようなものを除去するが、ECMの機能および基本設計の特性は維持される。最良にECMを保存する処理法を識別するために、本発明者らは、種々の処理法から生産されるPhATのレオロジー特性に加え、タンパク質、コラーゲン、グリコサミノグリカン(glycosoaminoglycan)(GAG)含量を調べた。タンパク質含量は、PAAおよびDNAse1で処理した試料において最大で維持され、そこでは、脂肪性組織が、6時間、1%過酢酸、800μg/mgにさらされた。すべてのケースで、タンパク質含量は、コントロール、100μg/mgよりも高かった。これは、処理中に発生した組織の濃度によって説明することができる。未処理の脂肪に比べ、そこでは、脂質は処理後、試料の全体の重量に最大の貢献を持ち、等しい重量の試料は目下、濃縮されたECMからなり、得られた材料でのマトリクス成分およびタンパク質が効果的に濃縮される。PhATのコラーゲン含量は、1%6時間、3%3または6時間の過酢酸にさらされ(30-45μg/mg)、コントロールよりも著しく高かった(2μg/mg、P<0.05、図5A-C)。1%3時間への暴露が十分に脂質を除去せず、これは、この濃度効果が見られなかったこと、およびコラーゲン含量が、コントロールに似ていたことの理由を説明する。5%の3または6時間の過酢酸への暴露は、脂質低減材料であるにもかかわらず、コントロールに似たコラーゲン含有量をもたらし、この場合には、コラーゲン分解が発生したことを示した。コラーゲンアッセイの結果は、I型コラーゲンに対する免疫染色により確認した。 GAG含量はまた、3%過酢酸で生成したPhATでも最も高く、そして増加または減少する過酢酸濃度と共に減少した(図5C)。これはまた、Safranin(サフラニン)-O(図5D)により組織学的に確認した。
【0130】
PAAおよびDNase1を用いて調製したPhATのさらなる特徴の研究は、インビボ試験のための潜在的候補と見なされたPhATsでだけ行われた。したがって、最小の脂質含量、3%、5%を有するPhATだけが、残りの研究に含まれていた。処理法は、マトリクスの整合性に最小の影響をもったかを定める別の手段として、せん断ひずみ曲線を処理の前後に取得した。レオロジー試験は、曝露時間および酸濃度の双方が複素弾性率に影響を及ぼしたことを示した(図6)。3%過酢酸で3時間処理したPhATは、最も密接に、予め処理された脂肪性組織に似ていた。6時間酸においてインキュベーションしたとき、このPhATは5%×3時間のPhATと区別がつかないことになった。複素弾性率での最大の減少は、PhATが6時間の5%過酢酸への暴露後に生成されたときに発生した。
【0131】
異なるPhATsの機械的特性において見られる傾向はまた、ヒト間葉系幹細胞を播種した3%および5%のPhATの細胞生存率の研究において反映された。これは、脱細胞化中に発生した構造変化が生物学的変化を伴い、細胞接着および生存率に影響を及ぼされることが示された。次いで細胞播種、LIVE(生きた)/DEAD(死なせた)アッセイを1日目および7日目に行った。すべてのケースにおいて、生きた細胞が、処理された脂肪性組織での培養の24時間後に存在した。より一層大きな細胞の生存率が、3%PAA(3および6時間)のPhATについて、5%PAA×3時間で生存率を減少させると見出され、および5%PAA×6時間でほぼ最小の生存があった。7日まで生きた細胞は3%のPAAで処理したPATにおいてだけ死なせた細胞(赤色核染色)上回る。
【0132】
軟組織置換材料として機能するために、生物適合性および持続性を実証しなければならない。インビボの応答およびPhATの安定性を評価するために、3%および5%のPhATsは、ラットにおいて皮下に移入し、および経時的に監視した。1および3週間での組織構造は、炎症反応(好中球、単球、多核巨細胞の存在によって測定されるもの)の最小量および繊維状カプセル化または組織壊死の証拠がないことを示した。移入した材料の代表的な組織画像を図8Cに示す。それらの線維芽細胞の形態を与えられた線維芽細胞からなる可能性が最も高い組織への細胞の流入の証拠が存在した。完全な内腔の血管はまれに同定された。
【0133】
キャリパー測定は、1週間で絶対的な高さおよび容量比の初期減少を示し、それは3週間で平らになると見えた(図8A-B)。収集時での組織の組織学的な外観は、予め移入したその外観よりはるかに大きな組織の密度を示し、若干の初期の分解が時間にわたるインプラントの容量の減少を説明しうるが、ラットの筋肉の皮膚の下にある組織の圧縮(コンパクション)がまた、容量における初期の減少に寄与することができる。
【0134】
PAA / TX-100 / DNAseIを用いて調製されたPhATを用いた観察は、DNAseIを伴わないで調製したものと同様であった。さらに、PhATの架橋は、まだ生物適合性であったより一層プロテアーゼ耐性の材料を提供した。
【0135】
炎症および毒性を誘発する能力を有する細胞の脂質細片の十分な量の除去は、処理された脂肪性組織における重要な課題である。本発明者らの研究では、少なくとも3%w/vの過酢酸(PAA)の濃度は、脂質の有意な減少をもたらした。結果として得られるPhATの特徴付けは、タンパク質類、コラーゲン、グリコサミノグリカン類(GAGs)を含むマトリクス成分に集中した効果を実証した。それはこの物質の指導的能力(instructional capacity)を維持するこれらのECM成分の保持である。3%のPAAで調製したPhATはまた、MSCsを用いた播種時の細胞接着を支持することができ、処理法が大幅にその構造および生物学的特性を変えないことを示した。
【0136】
本発明者らは、この材料が、臨床的解釈のための重要な潜在能力を有すると信じ、そして従って、インビボでの生物学的適合性においてそれを検討した。最小限の炎症反応が見られ、および組織壊死の証拠はなかったので、拒絶反応または毒性の証拠はなかった。それにもかかわらず、細胞がインプラント材料の中心に見られ、ラットでの皮下空間における組織の集積のための潜在能力が実証され、そこでは利用可能な最小限の脂肪体(パッド)があった。
【0137】
容量の持続はこの材料の臨床使用での別の関心事である。しかし、材料が収集されたとき、キャリパー測定の研究は容量における初期落下を示し、全体的に、および組織学的に双方で、はるかに密度の高い材料が取り出された。機構によって拘束されることなく、本発明者らは材料の圧縮が、若干の分解に加えて、持続性プロットを説明することができると考える。生物学的材料として、本発明者らは、若干の分解が発生すると予測し、それはPhATが組み込まれ、そして作り変えられるからであり、しかし、完全に組み込まれる組織は長期的な持続性を有する。
【0138】
脱細胞化組織は再構築手術に重要な貢献をしてきた。臨床的に用いられ、無細胞性の真皮および骨組織は集積および修復を容易にするために示された。しかし、Flynn(フリン)らのような、他の者は、脂肪生成のための足場を作成することを目的として、胎盤のような、様々な組織を脱細胞するが、この技術はいまだ、脂肪組織に直接適用される。組織生産における細胞外マトリックスの役割についての本発明者らの理解が拡大するにつれて、マトリクスの成分が、まさに組織での構造的役割を果たさないが、細胞増殖、移動および分化、および最終的には組織形成の指導的見地に積極的に加わることが明らかである。最近、細胞遊走および増殖に影響を与えることでの様々なECMの分解成分の役割について多くのことが明らかにされている。ECMを考慮して、この指導的な役割を提供するように、本発明者らは、元の組織、脂肪組織自体に注目し、それが唯一に脂肪生成のための指示を提供するために適していることが考えられる。本研究において、本発明者は、脂肪組織が首尾よく脱細胞化され、軟組織の再構築のための潜在能力がある材料として機能することができることを示す。
【0139】
炎症および毒性を誘発する潜在能力がある細胞の脂質残屑の十分な量の除去は、処理された脂肪性組織における重要な課題である。本発明者らの研究では、少なくとも3%w/vの過酢酸(PAA)の濃度は、脂質における有意な減少をもたらした。機械的処理の継続した最適化は、より一層大きな脂質抽出がPAAのより一層低い濃度で行われることを証明した。結果として得られるPhATの特徴付けは、タンパク質、コラーゲン、グリコサミノグリカンが含まれる、マトリクス成分への集中効果を実証した。それはこの物質の指導的能力を維持するこれらのECM成分の保持である。3%PAAで調製されたPhATは、未処理の脂肪性組織と同じ等級の大きさ(magnitide)でレオロジー特性を有し、そしてまた、MSCsで播種した時に細胞接着を支持することができ、処理法が大幅にその構造および生物学的特性を変えないことが示された。
【0140】
本発明者らは、この材料が臨床上の解釈のための重要な潜在能力を有すると考え、そして従って、そのインビボでの生物適合性を調査した。拒絶反応または毒性の証拠はなかったが、それは最小限の炎症反応が見られ、および組織壊死の証拠が存在しなかったからである。これらの研究は、小さなインプラントサイズ、200μlを使用した。それにもかかわらず、線維芽細胞様細胞は、インプラント材料の中央において見られ、ラットでの皮下空間における組織の集積のための潜在能力を実証し、そこでは、利用可能な最小限の脂肪パッドが存在した。他の者は、マトリゲル(R)が脂肪組織に隣接して移入されたとき、それはインビボでの脂肪生成となる潜在能力を有することを示した。7ラットにおける精巣上体脂肪パッドの近くの移入による今後の研究は、脂肪環境と接触している時に、たとえば胸部において予測されるもののように、PhATの脂肪生成潜在能力を探索した。さらに、マトリゲルにさらされるとき、脂肪細胞になるように刺激されるのは宿主細胞である。研究は、それが基底膜成分、特に脂肪生成の潜在能力に関与する、IV型コラーゲンおよびラミニンであることが同定された。脂肪性組織が、高度に血管新生化された組織であるので、脂肪組織において見出された多くの微小血管の基底膜タンパク質が、おそらくその上でこの脂肪生成の潜在能力を付与する。
【0141】
本発明は、豊胸術を含む注入可能な生物物質の使用を提供し、本発明の生物学的適合性の生物物質はどこよりも適する。本発明での生物物質の使用は、解法を以前の充填物に関する問題に提供し、そして傷跡の排除、減少した外科的および麻酔の時間、合成胸インプラントに対する異物反応の排除、ならびにより一層自然な感じを提供することを、たとえば胸の再構築において可能にする。
【0142】
移された自家組織の脂の持続を長くするための方法が熱心に追求された。生物物質は膨大な組織のタイプにおいてこの目的のために使用された。脂質組織への生物物質の適用における主要な制限は、親水性の生物物質を脂質と混合するときの相分離である。ここに提供される組成物および方法は、界面活性剤の使用を通じてこれらの限界を克服する。このようにして、脂質組織への多種多様な生物物質の適用を容易にする。あるいはまた、本発明の組成物は、脂細胞の生物物質への組み込みを必要とすることなく、足場を脂細胞に提供する。
【0143】
目下利用可能な商業上の充填剤の使用は、容量および寿命によって制限される。自家の脂がより一層大きな容量を提供するが、部分的に細胞性壊死のために、その使用はその低い移植片生着率により制限される。生物物質系の足場、たとえば、脂へのヒアルロン酸またはヒドロゲルのようなものの組合せのための組成物および方法を開発することによって、これらの問題の双方ともを、同時に対処する。生物学的適合性ポリマーのような脂および生物物質の組合せは、生物物質を直ちにより一層大きな容量で提供する。第2に、本発明の組成物は、ヒアルロン酸および他の生物物質類の二重の性質を利用し、容量増強生物物質に加えて双方の足場としてふるまい、したがって、細胞付着、脈管内殖、および増殖因子との相互作用を許すネットワークを提供し、それは、乏しい脂移植片生着率に関与すると考えられる細胞死の問題に取り組む。この発明のPATは、新鮮な自家の吸引脂肪組織または他の細胞含有混合物と、自然な生物物質、たとえば、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、コラーゲン、エラスチン、またはラミニンのようなもの、たとえば、または多数の適用での任意のもの用に使用するための生物学的適合性のポリマーおよび接着剤のような他の生物物質との混合物を含むことができる。
【0144】
本発明は、脂の移動で使用する疎水性脂肪性組織に、種々の親水性足場で、商業上入手可能なヒアルロン酸およびヒドロゲルが包含されるものの組合せを許容するために、界面活性剤システムを提供する。目下、吸引脂肪組織は、未処理の望ましい場所に注入される。ここに提供する界面活性剤系の使用により、吸引脂肪組織の再注入に先立ち、今回親水性生物物質を脂肪組織と適切に乳状にすることができる。これは、付着する足場を伴う成熟および前駆脂肪細胞を提供することによる自家脂移植片の生存率を高める望ましい効果をもつ。加えて、生物物質足場のデリバリーエージェント(配送剤)としての利用は、脂肪生成を刺激するために、種々の増殖促進因子の組込みを可能にし、それによって移植片の生存率、目下の脂の移動技術への別の新しさ促す。
【0145】
本発明の修飾には、ここに提供される種々の界面活性剤の使用、特に細胞生物物質の用途を含む。
【0146】
さらなる修飾には、ポリエチレングリコールジアクリラート(PEG-A)、商業上の充填剤として利用可能なヒアルロン酸(HA)を含む種々の生物物質、それには、限定されないが、Restylane(レスチレーン)、Juvaderm(ジュビダーム)、Captique(カプチキュ)、Teoxyl(テオキシル)が含まれる種々の生物物質の使用を含む。
【0147】
本発明はさらに、間葉系幹細胞類(MSCs)、胚性幹細胞類(ES)、脂肪性組織由来幹細胞類(ASC)、線維芽細胞ならびに他の細胞種類の生物物質封入吸引脂肪組織への組み込みを提供する。さらなる変形には、ペプチド類、ホルモン類、増殖因子類、ビタミン類、受容体類、薬物類および他の調整因子類が包含されるように、足場の修飾が含まれる。臨床応用には、顔の再構築、胸部再構築、注入喉頭形成術、HIVプロテアーゼ誘発脂肪萎縮の処置、美容外科で、豊胸術、臀部増大、ふくらはぎ増大、胸筋増大、唇増大および頬増大、しわの逆転、傷跡、外科的外傷、先天性欠損、外科的な傷跡、火傷および腫瘍切除からの欠陥を含むを欠陥での充填が含まれる。
架橋可能な親水性(Hydrophillic)ポリマー
【0148】
適切な親水性ポリマーには、合成ポリマー類で、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、部分的にか、または完全に加水分解されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体類〔ポロキサマー類およびメロキサポール類(meroxapols)〕、ポロキサミン類(poloxamines)、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキル化セルロース類のようなもの、および自然なポリマーで、ポリペプチド類、多糖類または糖質類(炭水化物類)のようなもので、フィコール(商品名)〔Ficoll(TM)〕、ポリスクロース、デキストラン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、アルギン酸のようなもの、およびタンパク質で、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、またはオボアルブミンまたはそれらの共重合体類のようなもの、またはブレンド類が含まれる。ここで用いる「セルロース類」には、セルロースおよび上述のタイプの誘導体が含まれ、「デキストラン」には、デキストランおよびその類似した誘導体が含まれる。
【0149】
ヒドロゲルを形成するのに用いることができる材料の例には、修飾されたアルギン酸塩が含まれる。アルギン酸塩は海草から分離される糖質ポリマーであり、それは、たとえば国際公開第WO 94/25080号明細書において、記載されるように、カルシウムのような二価陽イオンにさらすことによってヒドロゲルを形成するように、架橋することができ、その開示内容を参照することによってここに組み込む。アルギン酸塩は、二価陽イオンの存在下で、水中において、室温で、イオンによってヒドロゲル基材を形成するために架橋される。修飾されたアルギン酸塩誘導体を合成することができ、それはヒドロゲルを形成する改善された能力を有する。出発物質としてのアルギン酸塩の使用は有利であり、それは、それが一以上の供給源から入手可能であり、そして良好な純度および特徴付けにおいて利用できるからである。ここに使われるように、用語「修飾されたアルギン酸塩」は修飾されたヒドロゲル特性を有する化学修飾アルギン酸塩に言及する。自然に発生するアルギン酸塩は、より一層速く分解するアルギン酸塩ポリマー誘導体を生じさせるために、化学的に修正されうる。たとえば、アルギン酸塩は、ゲル化可能な(gellable)オリゴ糖類ブロックのより一層小さなブロックを生産するために、化学的に開裂されえ、そして線状共重合体はもう一つのあらかじめ選定されたモエティ(構成部分)、例は、乳酸またはエプシロンカプロラクトンで形成されうる。結果として生じるポリマーには、イオンによって触媒作用を及ぼされてゲル化することを許すアルギン酸ブロックおよび、合成的設計に従いより一層急速な分解をもたらすオリゴエステルブロックが含まれる。あるいはまた、マンヌロン酸のグルロン酸に対する比がフィルム状ゲルを生産しないアルギン酸塩ポリマーを用いることができ、それは、疎水的な、水不安定鎖、例は、エプシロンカプロラクトンのオリゴマーで誘導体化される。疎水的相互作用は、それらが体内で分解するまでゲル化を誘発する。
【0150】
加えて、一価の陽イオンへの暴露によってゲル化する多糖類、および細菌の多糖類で、たとえばジェラン(gellan)ガムのようなもの、および植物の多糖類で、たとえばカラゲーニンのようなものは、上述のようにアルギン酸塩を架橋することに利用できるそれらに類似した方法を使用してヒドロゲルを形成するために、架橋されうる。一価の陽イオンの存在下でゲル化する多糖類は、曝露、たとえば、ナトリウムの生理的レベルを含む溶液に対するものによってヒドロゲルを形成する。ヒドロゲル前駆体溶液もまた、非イオンで浸透圧により調節されえ、たとえば、マンニトールのようなもので調節され、それから、ゲルを形成するために注入されるかもしれない。
【0151】
非常に粘りけがある液体であるか、チキソトロピーであり、そして構造の緩慢な発展によって時間とともにゲルを形成する多糖類もまた、役立つ。たとえば、ヒアルロン酸は、整髪用ゲルのような一貫性を有する注入可能なゲルを形成し、利用されうる。修飾されたヒアルロン酸誘導体は特に有用である。ここで用いる「ヒアルロン酸」という語は、自然な、および化学的に修飾したヒアルロン酸に言及する。架橋および生物分解性の速度および程度を調節するために、修飾されたヒアルロン酸は、予め選定された化学的な修飾で設計され、そして合成されうる。たとえば、修飾されたヒアルロン酸は、設計し、および合成しえ、それは、ポリマーをより一層疎水性およびゲル形成性にするために、プロピオン酸またはベンジル酸のような比較的疎水的な基を用いてエステル化され、またはそれは、静電的自己集合を進めるために、アミンと共に移植される。修飾されたヒアルロン酸はこのようにして合成することができ、それは注入可能であり、そこではそれらはストレスの下で流れるが、しかし、ストレスのない下では、ゲルのような構造を維持する。ヒアルロン酸およびヒアルロン酸誘導体は、Genzyme(ジェンザイム社)、ケンブリッジ、マス.およびFidia(フィディア社)、イタリア国から入手可能である。
【0152】
他の重合体ヒドロゲル前駆体はPluronics(プルロニックス)TMまたはTetronics(テトロニックス)TMのようなポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロック共重合体を含み、それは、Steinleitner(シュタインレイトナー)ら、Obstetrics & Gynecology、第77巻、pp. 48-52(1991年);およびSteinleitnerら、Fertility and Sterility 、第57巻、pp. 305-308(1992)に記載されているように水素結合によっておよび/または温度変化によって架橋されている。利用されうる他の材料には、タンパク質で、たとえば、フィブリン、コラーゲンおよびゼラチンのようなものが含まれる。ポリマー混合物も利用されうる。たとえば、ポリエチレンオキシドおよび混ざると水素結合によってゲル化するポリアクリル酸の混合物が利用されうる。1つの具体例において、ポリアクリル酸の5%w/w溶液とポリエチレンオキシド(ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン)100,000の5%w/wの混合物は、時間の経過によりゲルを形成するために、たとえば、数秒(2、3秒)以内と同じくらい速く結合することができる。
荷電された架橋可能なポリマー溶液
【0153】
荷電された側基を有する水溶性ポリマーは、ポリマーを、逆の電荷のイオンを含む水性溶液と、陽イオンであれば、ポリマーが酸性の側基を有する場合、または陰イオンであれば、ポリマーが塩基性側基を有する場合のどちらでも、反応を起こさせることによって、架橋することができる。ヒドロゲルを形成するために酸性の側基を有するポリマーの架橋のための陽イオンの例は、ナトリウムのような一価の陽イオン、カルシウムのような二価の陽イオン、および銅、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムおよびスズのような多価陽イオン、およびアルキルアンモニウム塩類のような、ジ-、トリ-またはテトラ-官能化有機陽イオンである。軟質の、高度に膨れたヒドロゲルおよび膜を形成するために、これらの陽イオンの塩類の水溶液をポリマーに加える。陽イオンの濃度がより一層高いと、または原子価がより一層高いほど、ポリマーの架橋の程度はより一層大きい。その上、ポリマーは酵素的に架橋することができ、たとえば、トロンビンによるフィブリンである。
【0154】
イオンによって架橋可能な適切な基には、フェノール類、アミン類、イミン類、アミド類、カルボン酸類、スルホン酸類およびホスフェートの基が含まれる。負に荷電した基で、たとえば、カルボキシラート、スルホナートおよびホスフェートのイオンは、カルシウムイオンのような陽イオンで架橋することができる。カルシウムイオンでのアルギン酸(アルジネート)を架橋することは、イオン性架橋のこのタイプの例である。正に荷電した基で、たとえば、アンモニウムイオンのようなものは、負に荷電したイオンで、たとえば、カルボキシラート、スルホナートおよびホスフェートのイオンのようなもので架橋することができる。好ましくは、負に荷電したイオンには、一よりも多くのカルボキシラート、スルホナートまたはホスフェートの基が含まれる。
【0155】
ヒドロゲルを形成するポリマーの架橋のための好ましい陰イオンは、低分子量のジカルボン酸、たとえば、テレフタル酸(terepthalic acid)、サルフェートイオンおよび炭酸イオンのような一価、二価または三価の陰イオンである。陽イオンに関して説明するように、軟質の、高度に膨れたヒドロゲルおよび膜を作成するために、これらの陰イオンの塩類の水溶液をポリマーに加える。
【0156】
多種多様なポリカチオンを、複合体形成のために使用し、そしてそれにより半透性の表面膜中へのポリマーハイドロゲルを安定化することができる。使用できる物質の例としては、ポリエチレンイミンおよびポリリシンのような、3,000および100,000の間の好ましい分子量を有するアミンまたはイミン基のような塩基性反応基を有するポリマーが含まれる。これらは商業上入手可能である。一種のポリカチオンは、ポリ(L-リジン)であり;合成ポリアミンの例は、次のとおり:ポリエチレンイミン、ポリ(ビニルアミン)、およびポリ(アリルアミン)である。また、多糖類、キトサンのような自然なポリカチオンも存在する。
【0157】
ポリアニオンは、重合体ヒドロゲルの塩基性表面基との反応により半透膜を形成するために使用することができ、それには、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の他の誘導体のポリマーおよびコポリマー、ペンダントSO3H基を有するポリマーで、スルホン化ポリスチレンのようなもの、およびカルボン酸基を持つポリスチレンが含まれる。これらのポリマーは、活性種の重合性基および/またはイオン架橋性基を含むように修飾することができる。これらの基を含めるように親水性ポリマーを修飾するための方法は、この技術における熟練した者(当業者)によく知られている。
【0158】
ポリマー類は本質的に生分解性であることができるが、好ましくは低生分解性であり(溶出の予測のため)、排泄を可能にするために十分に低分子量でもある。人間(または使用が意図されている他の種)の排泄を許容する最大の分子量は、ポリマーの種類によって異なるが、多くの場合、20,000ダルトンまたはそれより低いことが多い。使用可能だが、しかし本質的な生分解性のための一般的な使用のため、あまり好ましくないものは、水溶性天然重合体および合成の等価物または誘導体であり、それには、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、および分解性多糖類が含まれる。
【0159】
ポリマーは、少なくとも600、好ましくは2000以上、より一層好ましくは少なくとも3000の分子量を有する単一のブロックであることができる。あるいはまた、ポリマーは、他のグループによって接合されている2つ以上の水溶性ブロックであることができるものを含むことができる。そのような接合基には、生分解性連結、重合性連結、またはその双方を含めることができる。たとえば、マレイン酸、フマル酸、またはアコニット酸のような不飽和ジカルボン酸は、ポリエチレングリコールのような、ヒドロキシ基を含む親水性ポリマーによりエステル化すること、またはポロキサミンのようなアミン基を含む親水性ポリマーによりアミド化することができる。
共有結合架橋性ポリマー溶液
【0160】
共有結合架橋性ヒドロゲル前駆体もまた有用である。たとえば、キトサンのような水溶性ポリアミンは、ポリエチレングリコールジイソチオシアナートのような水溶性ジイソチオシアナートと架橋することができる。イソチオシアナートは化学的に架橋されたゲルを形成するアミンと反応する。アミンと、たとえば、ポリエチレングリコールジアルデヒドとの、アルデヒド反応を利用してもよい。ヒドロキシル化された水溶性ポリマーもまた利用することができる。
【0161】
あるいはまた、ラジカルイニシエーター(開始剤)との接触時にラジカル反応により架橋された置換基を含んでいるポリマーは、使用することができる。たとえば、光化学的に架橋することができるエチレン性不飽和基を含むポリマーは、国際公開第WO93/17669号に開示されているように使用することができ、その開示を参照することによりここに組み込む。この具体例では、少なくとも1種の水溶性の領域、生分解性の領域、および少なくとも2つのフリーラジカル重合可能な領域を含む水溶性マクロマーが提供される。マクロマーは、たとえば、感光性化学物質によっておよびまたは光によって、生成されたフリーラジカルに対し重合可能な領域の曝露によって重合される。これらのマクロマーの例としては、エオシン色素のようなラジカル開始系を用いて、または紫外線または可視光を簡単に曝露させることによって、アクリレート基が重合される、PEG-オリゴラクチルアクリレートである。さらに、光化学的に架橋されていてもよいシンナモイル基を含む水溶性ポリマーは、まつだら、ASAIO Trans.、第38巻、pp. 154-157(1992年)に開示されるように利用することができる。
【0162】
用語「活性種重合性基」は、活性種への曝露によりインターリンクするポリマーがもたらされる追加の共有結合を形成する能力を有する反応性官能基として規定される。活性種には、フリーラジカル類、カチオン類、およびアニオン類が含まれる。適切なフリーラジカル重合性基類には、ビニルエーテル類、アリル基類、不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、および不飽和トリカルボン酸類のようなエチレン性不飽和基(すなわち、ビニル基)が含まれる。不飽和モノカルボン酸類には、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸が含まれる。不飽和ジカルボン酸類には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸またはシトラコン酸が含まれる。一具体例では、活性種の重合性基は、好ましくは、親水性ポリマーの一以上の端部に位置する。別の具体例では、活性種の重合性基は、個々のブロックを形成する一以上の親水性ポリマーとのブロック共重合体内に位置する。好ましい重合性基は、アクリレート類、ジアクリレート類、オリゴアクリレート類(oligoacrylates)、ジメタクリレート類、オリゴメタアクリレート類、および他の生物学的に許容可能な光重合性基である。アクリレートが最も好ましい活性種の重合性基である。
【0163】
概して、ポリマー類は、水、緩衝塩類溶液、または水性アルコール溶液のような水溶液中に少なくとも部分的に可溶である。上記の他のポリマーを合成するための方法は当業者に知られている。たとえば、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts(重合体科学および重合体アミン類およびアンモニウム塩類のコンサイス百科事典)、E. Goethals(ゴーサルズ)、編集、〔Pergamen Press(ペルガメン・プレス社)、エルムズフォード、NY 1980年〕を参照。ポリ(アクリル酸)のような多くのポリマーは市販されている。
【0164】
天然および合成ポリマーは、この技術で利用可能な化学反応を使用して修飾することができ、およびたとえば、3月、「Advanced Organic Chemistry(最新有機化学)」、第4版、1992年、Wiley-Interscience Publication(ワイリー・インターサイエンス・パブリケーション社)、ニューヨークに記述される。このような方法は、ここに記載されるよう、たとえば、アクリレート基を導入するために用いることができる。
【0165】
好ましくは、活性種または架橋性基を含む親水性ポリマーは、平均して少なくとも1.02の重合性または架橋性基を含み、そしてより好ましくは、それぞれが平均して2つ以上の重合性または架橋性基を含む。各重合性基が鎖に重合されるため、架橋したヒドロゲルは、ポリマーあたりにわずかに一よりも多い反応基(すなわち、平均で約1.02の重合性基)だけを使用して製造することができる。しかし、より一層高い割合が好ましく、そして優れたゲルは、分子のほとんどまたはすべてが2つ以上の反応性二重結合を有するポリマー混合物で得ることができる。ポロキサミン類、親水性ポリマーの例は、4つの腕を有し、そして従って、容易に4つの重合性基を含むように修飾することができる。
移入の方法
【0166】
好ましい具体例において、本発明の組成物は調製され、そして直接、材料を入れるよう求められる部位に注入される。架橋剤が用いられるならば、ヒドロゲルを形成するためにポリマーを架橋する前に、好ましくは材料を注入する。好ましい方法では、生物物質の相当な移動が注入の部位から離れてないように、架橋を十分に速く起こす。一定の具体例において、複数部位で、または周期的時間間隔で、分、時間、日、週、または、より長い間隔のいずれかでも、複数の注射によって生物物質を届けることは、有利でありうる。皮膚を生物物質に対応させるために伸びさせることが、定期的な移入には要求されるかもしれない(例は、乳房切除の後の胸再構築の間)。
【0167】
部位、または部位群で、本発明での生物物質群がどこに注入されることになるかを、個々の必要性に基づき、生物物質が細胞を含むとき、必要な数の細胞であることのように定められる。あるものは、注入された溶液を形づくるために、外部の型を適用することができる。加えて、重合速度をコントロールすることによって、1つのものが粘土を形作るような生物物質の注入されたインプラントを形作ることが可能である。あるいはまた、混合物を型に注入することができ、生物物質は固まることを許され、次いで材料を移入する。
【0168】
組成物は、注射筒および針、または任意の適切に設計された注入器具または最小にしか侵襲しない移入装置を介し、特定のエリア、薬剤原体を望まれるどこでも、すなわち、手術後に見られるもののような軟組織の欠陥、または先天性であるか後天性病気による筋収縮症のエリアと共に、または外科的外傷に続く、火傷、などに注入することができる。この例は、乳房切除の後の胸域での、または、神経障害に続発する筋萎縮症を有する患者の上部胴体での組成物の注入である。
【0169】
懸濁物はまた、直接の接触によって、たとえば、針を精管内に入れ、そして注入された原体物質でそれをふさぐことによってのように、経皮的に注入することもでき、このようにして、患者の生殖力がなくされる。懸濁物は、蛍光透視鏡、超音波検査(ソノグラフの)、コンピューター断層撮影、磁気共鳴映像法または他のタイプの放射線学的ガイダンスでカテーテルまたは針によって注入することもできる。これは、どこで薬剤原体が必要とされても、体での特定の器官または他の組織領域への脈管アクセスまたは経皮的アクセスによってこの物質の配置または注入が許容される。さらに、この物質は、腹腔鏡または任意の腹膜内または腹膜外または胸郭器官のへの胸腔鏡でも注入することができた。
【0170】
随意に、種々の添加剤を、マイクロ細菌の汚染を抑制するために100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンのようなヒドロゲル溶液に含ませることができる。しかし、これらは、ヒドロゲル溶液に含むことができる唯一の生理活性添加物ではない。たとえば、生理活性添加物は、単独で、または組合わせで、増殖因子類、細胞分化因子類、他の細胞メディエーター(調停物)類、栄養分、抗生物質類、抗炎症剤類、および他の製剤を含むことができた。制限しないが、若干の適切な細胞増殖因子は、あるとしても、ヒドロゲルの同じものまたは隣接したヒドロゲル層のいずれかにも包まれる細胞のタイプにより、ヘパリン結合性増殖因子(HBGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGFαまたはTGFβ)、アルファ線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、種々の血管生成因子類、増殖因子類、神経増殖因子(NGF)、および筋肉形態的増殖因子を含む。
【0171】
加えて、ヒドロゲル溶液は随意に適切な非毒性の重合開始剤を含み、0.05%w/vの終濃度を作るように十分に混合される。PEGDAまたはPEODAがポリマー類として選ばれるとき、重合開始剤は好ましくは添加され、および光重合開始剤イルガキュア(Igracure)TM 2959〔Ciba Specialty Chemicals Corp.(チバ・スペシャルティ・コーポレーション)、タリータウン、N.Y.から商業上入手可能〕であるように選ばれるが、しかし、他の適切な光重合開始剤を用いることができる。
【0172】
光重合性PEGDAおよびPEODAが本発明に従うヒドロゲルを作成するために好ましいポリマー類の中にあるが、他の適切な親水性ポリマー類を用いることができる。適切な親水性ポリマーには、部分的にか、または完全に加水分解されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体類〔ポロキサマー類およびメロキサポール類(meroxapols)〕、ポロキサミン類(poloxamines)、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキル化セルロース類のような合成重合体、およびポリペプチド類のような自然な重合体、多糖類またはフィコール(商標)〔Ficoll(R)〕ポリスクロースのような糖質類(炭水化物類)、ヒアルロン酸、デキストラン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、またはアルギン酸、およびゼラチン、コラーゲン、アルブミン、またはオボアルブミンのようなタンパク質類、またはそれらの共重合体類およびブレンド類が含まれる。ここに用いるように、「セルロース類」には、セルロースおよび上述のタイプの誘導体が含まれ;「デキストラン」には、デキストランおよびその類似した誘導体が含まれる。光重合性混合物のこのリストは、例示であることを意味し、そして包括的ではない。たとえば、本発明での用途に適切な他の光重合性混合物は米国特許第6,224,893号B1明細書で記述され、それは参照することによってここに組み込む。
【0173】
好ましい光重合開始剤がイルガキュア(Igracure)TM 2959である一方で、種々のな他の光重合開始剤がその代わりに用いることができる。たとえば、HPKは、Polysciences(ポリサイエンシーズ社)から商業上入手可能なものであり、別の適切な光重合開始剤である。そのうえ、種々の染料およびアミン触媒が活性な種を外部の放射を浴びるときに形成することが知られている。具体的には、染料での光吸収は染料が三重項状態を仮定する原因となり、それは次いで重合を開始する活性な種を形成するためにアミンと反応する。典型的に、重合は約200-700nmの間での波長で、最も好ましくは長い波長の紫外線範囲または可視範囲、320nm以上で、そして最も好ましくは約365および514nmの間で、光による照射によって開始することができる。
【0174】
非常に多くの染料が光重合のために用いることができ、そしてこれらには、エリトロシン、フロキシン(phloxime)、ローズベンガル、チオニン(thonine)、カンファーキノン(camphorquinone)、エチルエオシン、エオシン、メチレンブルー、リボフラビン、2,2-ジメチル-2-フェニルアセトフェノン、2-メトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、他のアセトフェノン誘導体類およびカンファーキノン(camphorquinone)が含まれる。適切な共触媒には、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、N-ベンジルエタノールアミン、N-イソプロピルベンジルアミンのようなアミンが含まれる。トリエタノールアミンは、これらの染料の1つと共に好ましい共触媒である。ポリマーおよび光開始剤の組合せが(細胞に有毒でない濃度において、0.1重量%未満の、より一層好ましくは0.05および0.01%重量パーセントの間の開始剤)1および3mWatts/cm2の間と等価な光に曝露することにより架橋されるという知識に、これらのポリマー溶液の光重合は基づく。
【0175】
フォトポリマーがヒドロゲルを作成するために好まれる一方で、外科的な範囲を通して供給される外部の放射を用いた重合を制御することが便利であるので、本発明は他のポリマー材料および重合開始剤を用いて実践することができる。ヒドロゲルを形成するのに用いることができる他の材料の例には、(a)修飾されたアルジネート、 (b)一価の陽イオンへの曝露によってゲル化する多糖類(例は、ジェランガムおよびカラゲーニン)、(c)多糖類(例は、ヒアルロン酸)で、それは、非常に粘性がある液体であるか、またはチオトロピック(thiotropic)であり、そして、構造の緩慢な発展によって時間とともにゲルを形成する、および(d)重合ヒドロゲル前駆体(例は、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロック共重合体およびタンパク質)が含まれる。米国特許第6,224,893号B1明細書は種々のポリマーの詳しい説明およびそのようなポリマーの化学的性質を提供し、それは、本発明に従うヒドロゲルを作成することに適切であり、そしてこの特許は参照することによってここにその全体を組み込む。
【0176】
この発明において使用する重合性薬剤は、モノマー類、マクロマー類、オリゴマー類、ポリマー類、またはそれらの混合物を含むことができる。ポリマー組成物類は、共有結合により架橋できるポリマー、または共有結合によって、およびイオンによって架橋できるか、親水性ポリマーのブレンドだけからなることができる。
無細胞生物学的組織の架橋剤
【0177】
無細胞生物組織が自然な微小環境を宿主細胞の移動に提供することができ、および組織再生のための足場として用いることができることが以前に報告された。抗原性を減らすために、生物学的組織は、移入の前に架橋剤で固定されなければならない。Liang(リャン)、H.-C.ら、2004年による研究において、細胞抽出プロセスは、ウシの心膜から細胞構成要素を取り除くために採用された。次いで、無細胞組織を、程度の異なる架橋を得るために、種々の既知の濃度でゲニピン(genipin)、架橋剤で固定された。インビトロ(試験管内)の分解研究において、ゲニピンによる固定の後、無細胞組織の酵素分解に対する抵抗性がその架橋の程度を増加させることで著しく増加したことが示された。インビボでの皮下研究において、細胞(炎症性細胞類、線維芽細胞類、内皮細胞類、および赤血球類)が無細胞組織に浸潤することができることが見出された。概して、無細胞組織への細胞浸潤の深さは、その架橋の程度を増やすことで減少した。炎症性細胞の浸入は無細胞組織の分解を伴った。早期の分解により、新鮮(架橋を伴わない)および30%-程度の-架橋結合無細胞組織の範囲内で、組織再生は観察されなかった。これは、浸潤した細胞がそれら自身の細胞外基質を分泌し始める前に、これらの2つの試料により提供される足場が既に完全に分解されたからである。対照的に、組織再生(線維芽細胞、ネオコラーゲン原線維、およびネオ毛細血管)は、組織学的試験、免疫組織学的染色、透過型電子顕微鏡検査、および変性温度測定によって60%-および95%-程度の-架橋結合無細胞組織について観察された。95%-程度の-架橋結合無細胞組織は、酵素による分解に対して、その60%-程度の-架橋対応物より高い抵抗性であった。結果として、組織再生は、研究(手術後1年)の全体の経過中を通じて95%-程度の-架橋無細胞組織の外層において制限され、その一方、組織再生は、60%-程度の-架橋無細胞組織について全体の試料内で観察された。リャン、H.-C.らは、架橋の程度が無細胞組織の分解速度およびその組織再生パターンを定めると結論した。分解の速度および細胞浸入の量が処理された脂肪性組織の架橋結合の量によって調節されうることが、これらのデータによって証明される。
【0178】
無細胞組織の架橋結合の方法はこの技術で知られている。たとえば、無細胞組織は、リン酸緩衝塩類溶液〔PBS、0.1m、pH7.4、Sigma Chemical Co.(シグマ・ケミカル社)〕で緩衝化された種々の既知の濃度での水性ゲニピン〔Challenge Bioproducts(チャレンジ・バイオプロダクツ社)、台中、台湾〕溶液中、3日の間37℃で固定することができる。架橋の程度は、ニンヒドリンアッセイによって〔Stryer(ストライヤー)、Biochemistry(バイオケミストリー)、第3版編集、ニューヨーク、フリーマン、1988、50-55、参照することによってここに組み込む〕またはAnaSpec(アナスペック)によって供されるもののような市販のキットを使用することで測定することができる。架橋結合の量は、無細胞組織中の遊離アミノ基の割合が固定後にゲニピンのような架橋剤と反応したものと規定される。各々の研究したグループ(コラーゲンの変性に対応する)の変性温度は、たとえば、Perkin-Elmer(パーキン-エルマー)示差走査熱量計(モデルDSC 7、ノーウォーク、CT、米国)で測定することができる。この技術は、コラーゲン性生物物質の熱の移行を研究する際に広く用いられた。加熱速度は5℃/分であったが、それを用いることができる。典型的に、走査された温度は、(Td225℃)<T<(Td+10℃)のおよその範囲内にあり;そこではTdが関連した変性温度である。密封したアルミニウムパンの使用は、揮発性の化合物のために薦められる。
【0179】
架橋剤の特定の量、架橋結合時間、および架橋温度は使用する特定の架橋剤または架橋剤群に、および処理された脂肪性組織の最終的な用途に応じた架橋剤の所望のレベルに応じて変動させることができる。一定の具体例では、処理された脂肪性組織は40%-程度の-架橋結合から95%-程度の架橋結合を有する。一定の具体例において、処理された脂肪性組織は50%-程度の架橋結合から90%-程度の架橋結合までを有する。一定の具体例では、処理された脂肪性組織は60%-程度の架橋結合から90%-程度の架橋結合までを有する。一定の具体例では、処理された脂肪性組織は60%-程度の架橋結合から80%-程度の架橋結合までを有する。一定の具体例では、処理された脂肪性組織は50%-程度の架橋結合から75%-程度の架橋結合までを有する。本発明での処理された脂肪性組織のような生物組織誘導材料と共に使用するための架橋剤には、制限されないが、カルボジイミド(EDC)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde)、プロアントシアニジン、リボース、トレオース、およびリシルオキシダーゼ、カルボジイミド、ポリエポキシエーテル、ジビニルスルホン(DVS)、ゲニピン(genipin)、ポリアルデヒドおよびジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ゲニピン、エポキシ化合物、ジアルデヒドでんぷん、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジメチルスベルイミデート(suberimidate)、カルボジイミド類、サクシニミジル類、ジイソシアナート、およびアシルアジドが含まれる。
処理された脂肪性組織のための超臨界流体抽出法
【0180】
CO2が抽出中に圧縮された状態にあるプロセスが知られており、それは他ではCO2が液体状態だからである〔Hubert(ヒューバート)ら、1980年;Wilson(ウィルソン)、1984年〕。この技術は、有機溶剤を用いた従来の抽出方法によって得られるものと同等の抽出収率を提供する。また、有機溶剤とは対照的に、二酸化炭素は非毒性で、非可燃性、非腐食性、安価、および高純度で大量にも容易に入手可能である。
【0181】
超臨界流体技術は、処理された脂肪性組織のここでの調製のために脂肪性組織の抽出のために使用することができる。超臨界流体(SCFの)はしばしば濃密な気体と称される。技術的には、SCFは純物質の相図(状態図)で規定され、その臨界温度および臨界圧力を超えて存在するガスである。ガスがその臨界温度を超えて圧縮されるとき、密度が劇的に増加する。したがって、SCFは、条件の与えられた設定下でガスの拡散性を維持しながら、液体の密度を有することができる。SCFの溶媒特性は、100年よりも長くにわたって認識されているが、商業上の適用では、開発が遅れている。SC-CO2は理想的な溶媒であり、それは、それが無毒で、非爆発性、安価、容易に入手可能で、抽出された生成物から容易に除去されるからである。SC CO2を用いた脂質の抽出のための方法は、たとえば、参照することによりここに組み込まれる米国特許第4466923号明細書において提供する。
レオロジー測定
【0182】
ここで提供する処理された脂肪性組織材料は粘弾性材料としてレオロジー的に規定される。粘弾性材料は、応力が適用(変形)されたとき、粘性(液体状)および弾性(固体状)特性をもつ。蜂蜜のような粘性物質は、変形したときに動き、または流れ、そして変形応力が除去されたときに元の状態に戻らない。弾性材料は、ゴムのように、変形したときは動いても、変形応力が除去されると元の状態に戻る。ここで提供される処理された脂肪性組織のためには、低および高応力環境は重要であり、それは、それらが使用中、高応力および低応力を受けるからである。高応力は材料が狭い孔の針から流れ出すときに適用され、その材料が真皮内の適用部位でその場所で静止している間、インプラントは非常に低い応力しか受けない。レオロジー的に、処理された脂肪性組織の粘弾性特性は、単一のプログラムされた実行においてレオメーターを用いて、弾性率(elastic modulus)(G ')および粘性、または損失、係数(G'')を推定することによって記述することができる。処理された脂肪性組織を含む、任意の粘弾性材料の特徴は、これら二つの値に応じて記述することができる。G'およびG''をタン(tan)として規定される集合値、そこではタン=G'/G''に組み合わせることができる。より一層低いタンはより一層堅く、より一層固形で、または弾性様ゲルに対応する。特定のG'、G"、およびタンは配送のための処理された脂肪性組織材料の濃度、架橋剤の濃度、生物重合体、およびその他の因子を伴うか、または伴わないかを調整することによって、処理された脂肪性組織において調節することができる。
【0183】
レオロジー測定は、この技術で既知の多数の方法のいずれかを使用して実行することができる。たとえば、小さな変形振動の動的レオロジー測定は、コーンおよびプレートの形状に取り付けられたThermo Haake(サーモハーケ)RS300レオメーター(ニューイントン、NH)を用いて行うことができる。測定は25℃で35mm/1°のチタンコーンのセンサを使用して行うことができる。振動測定は、振動数範囲にわたって、たとえば、0.628から198rad(ラジアン)/s(秒)の振動数範囲で行うことができる。弾力性の割合は、弾力性の割合=(100×G')/(G'+G'')として計算される。タンは、タン=G''/G'、選択した任意の振動数で、たとえば、0.628rad/sの振動数で動的弾性率のデータから取得することができる。
【実施例】
【0184】
例および図は、実験を議論し、移入可能な材料に基づいて脂肪性組織からの結果を提供する。図1-2に示す結果は、吸引脂肪組織の出発物質を用いて実行した。図3-13に示す結果は、出発材料として、固形の、皮下脂肪性組織を用いて実行した。実験からの結果を図3-8に示し、PAAおよびDNAseIを用いるが、TX-100は用いないで処理したあまり細かく刻んでない出発物質を使用して実行した。図9-13は、PAA、TX-100、およびDNAseIで典型的に処理したより一層細かく刻んだ出発物質を用いて実行した実験からの結果を示す。処理されたヒト脂肪性組織(PhAT)を調製するのに使用される特定の試薬は、図を議論する例において、上記に提供するその図の凡例において以下にさらに詳細に考察する。
例1-細胞の生物適合性生物物質の調製
【0185】
脂肪吸引物を標準的な低侵襲手術の技術を使用して取得した。腫れ上がった流体を除去し、吸引脂肪組織を次のステップまで氷上に置いた。吸引脂肪組織は、生物学的適合性の生物材料の調製のために、種々の界面活性剤および足場と組み合わせた。
【0186】
1.ヒアルロン酸を、5%プルロニック系界面活性剤を添加した1:1の比率で、セル化した吸引脂肪組織と共に乳化した。
【0187】
2. 容量あたり10重量%のPEG-DAを、PBS:吸引脂肪組織の50:50の割合で溶解した。
【0188】
図1は、界面活性剤の不存在または存在下で、吸引脂肪組織および水性PEG混合物の乳化を示す。図1Aでは、一番左のチューブは界面活性剤を含まない。混合物の水層および脂質層の間の相分離が明白である。右に移動すると、界面活性剤の増加した濃度を添加し、そして改善された乳化が観察された。
【0189】
用いたHAは架橋剤を必要とせず、手で成形することができる市販の架橋HAであった。
【0190】
光開始剤を調製し、PEG-DAの混合物の重合のために添加した。開始剤溶液を、PBS〔GIBCO(ギブコ社)のCAT#14190342〕中のエオシンY二ナトリウム塩〔Sigma-Aldrich(シグマ・アルドリッチ社)CAT#45235で、それは450から550 nmの波長範囲で最も強く吸収〕(1.375 mg/mlのエオシンY)を溶解することによって調製した。100mg(10%w/v)のPEODA〔3.4KD MW SunBio(サンバイオ社)CAT#P2AC-3〕を、開始剤溶液の50μl、PBSの30μl、およびN-ビニルピロリドンの20μL(Sigma-Aldrich CAT#95060)に溶解した。最終的溶液を、このPEODA溶液と、30μlのトリエタノールアミン(Sigma-Aldrich #90278)および吸引脂肪組織の1mlとを混合することによって調製した。
【0191】
図1Bは、界面活性剤およびHA(10%-50%)の存在下、吸引脂肪組織の比率を変動させて溶解させた10%w/vのPEGを示す。吸引脂肪組織/PEG/HAは、移入のために望ましい形のインプラントを形成することができる。
【0192】
あるいはまた、図1Cで示すように、吸引脂肪組織材料は注入し、そしてインサイツ(その場)で架橋結合することができる。注入に先立ち、混合物が脂の均質な分散を有するように見えるまで、混合物をボルテックス(渦形成)した。PEG-DA/吸引脂肪組織を混ぜたものを皮下に(subcutaneoulsy)注入し、そしてヒドロゲルの場合に超短パルス光(Intense Pulsed Light、IPL)を提供するために、光源(例は、発光ダイオード)を適用した。経皮光重合のための方法はよく知られた技術である〔例は、Elisseeff(エリセーエフ)ら、Transdermal photopolymerization for minimally invasive implantation(最小侵襲移入のための経皮光重合)、Proc. Natl. Acad. Sci, USA(米国科学アカデミー紀要)。96:3104-3107を参照、参照することによってここに組み込む〕。図1Cは、吸引脂肪組織およびPEGおよびHAの皮下注入後の、無胸腺マウスを示す。架橋結合した吸引脂肪組織の盛り上がった隆起がすぐに理解できる。
【0193】
この発明の生物学的適合性の生物物質の臨床的有効性を可能にし、および予測するために、前臨床動物モデルを発育させ、そして、軟組織置換の寿命または持続および耐性を予測するために検証した。ヒトの脂肪性組織および市販のヒアルロン酸真皮充填物を含む、種々の軟組織材料の皮下注入の持続は、無胸腺マウスおよびスプラーグドーリー(Sprague-Dawley)ラットの双方で、これらの材料の既知の臨床的持続と相関する。本発明の細胞ベースの生物物質の持続は、MRI容積測定を使用して確かめた。しかし、評価は注入された材料の高さおよび幅を測定するためにカリパスを使って実行することもできる。
【0194】
注入された吸引脂肪組織材料は、HAを伴うか、または伴わないで、およびHAだけで、マウスモデルでの持続について試験した。異なる測定値(高さ対容量)を用いる市販の生物充填剤を使って、類似した実験を実行した。図2Aは、種々の生物充填剤を注入した無胸腺ヌードマウスを示す。注入部位を星印で示す。図2Bは軟組織インプラントを同じように注射するスプラーグドーリー(Sprague-Dawley)ラットのT2 MRIの画像を示し、容積測定が許容される。図2Cでは、市販のインプラント、および図2Dでは、細胞脂肪性組織の、ヒアルロン酸を伴うか、または伴わないもののいずれもの高さおよび容量を、時間とともにプロットする。吸引脂肪組織材料の良好な持続が示される。さらに、材料の持続は、移入された脂肪性組織および市販の注入された真皮充填剤の既知の臨床的持続と相関することが見出された。たとえば、35日に、HAを伴う脂肪は容量50%を超えてまだ存在した。ヒアルロン酸だけまたは脂肪だけが、より一層速く消失することが見出された。
例2-無細胞生物物質/処理されたヒト脂肪性組織(PhAT)の調製
【0195】
組織取得および処理。組織は、ドナーの適切な同意を得て、新鮮な外科的および死体の供給源から取得した。皮下脂肪の代表的試料を図3Aおよび9Aに示す。核、脂質空胞、および細胞外基質を示す代表的な組織切片を、図3Cおよび9Cに提供する。
【0196】
皮下脂肪はスクレーピング(掻爬すること)によって試料から分離した。掻爬した脂肪組織をブレンダーで均質化した。次いで、ホモジェネート(破砕物)をストレーナー(ざる)に置き、そして脂質および細胞デブリ(細片)を洗うために、脱イオン水下に5分間洗浄した。これを3回繰り返した。均質化し、そして洗浄した組織の等しい重さを、37℃にてシェーカー上で3または6時間、0.1%、1%、3%、または5%の過酢酸中に置いた。脂肪細胞が死ぬと、油は細胞から放出される。十分に脂肪性組織を浸入させ、および油を除去するために、材料を手動で乳鉢および乳棒により操作し、またはブレンダーで、またはPBSによる洗浄の間にプレスして均質化した。脂質が除去されたので、処理された脂肪性材料は黄色から白色に変化する(図3B)。
【0197】
あるいはまた、掻爬した脂肪性組織を、型によって繰り返し材料を押しつけることによって、微細に細かく刻み、その一方で脂質を除去するために水ですすいだ。細かく刻まれた材料は、弱酸の0.1%-5%の溶液、例は、化学的脱細胞化を進めるために振とうすることを伴い、37℃で3-6時間の間、滅菌した蒸留水中で過酢酸(PAA)を使い、可溶化するために、チューブへ移した。
【0198】
デブリを除去し、そして生理的pHにpHを戻すために、リン酸緩衝化塩類溶液(PBS)を用いてPAA処理された材料を洗浄した。
【0199】
一定の実験で、PAA処理された材料は、さらに脂質を除去するために、37℃で一晩中滅菌水中、2mMのEDTAでの1%のTriton(R)X-100により処理した。その材料を、洗剤を除去するために、PBS中で繰り返しすすいだ。
【0200】
一定の実験にて、PAA処理された材料またはPAA/Triton(R)X-100処理された材料(図9B)を、一晩中37℃で10mMのMgCl2でのDNAseIまたは600単位/mlのDNAseの0.1%の溶液において、さらにヌクレアーゼ処理した。
【0201】
処理された材料は、貯蔵に先立ち、繰り返しPBSですすいだ。処理された材料は、抗生物質、例は、1%のペニシリン/ストレプトマイシンまたは10%の抗生物質抗真菌溶液で、PBS中において、-20℃で保存した(A5955シグマアルドリッチ、St.ルイス、MO)。随意に、材料を、室温で貯蔵に先立ち、2-3のために急速に凍らせ、および凍結乾燥させた。
【0202】
処理された脂肪性材料は、生物高分子足場および架橋剤の有無で注入のために粒子にした。
【0203】
処理された脂肪性材料は、ここに提供する方法を使用して特徴づけた。Triton(R)X-100でも処理されたより一層微細に刻んだ組織が脂質および核酸のより一層大幅な除去をもたらすことが決定された。しかし、いずれかの方法によって処理された脂肪も、市販の組織充填剤と比較してインビボで良好な持続をもつ処理された材料を生産し、最小の免疫反応を生じさせ、インビトロおよびインビボで細胞増殖を支えた。
例3-無細胞生物学的適合性生物物質の分析
【0204】
無細胞の生物学的適合性の生物物質(処理されたヒト脂肪性組織すなわちPhAT)を、その材料が、無細胞で、脂質フリーであり、無傷の細胞外基質(ECM)および適切な動的剛性を含むことを証明するために、多数のアッセイを用いて試験した。用いる典型的なアッセイが提供される。材料が望ましい特徴を有するかどうかを定めるための他の方法は、この技術で知られている。
【0205】
細胞フリー。前の例の方法の少なくとも1つによって調製したPATのパラフィン包埋切片上でヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を実行し、核の存在(細胞)を決定した(図7Cおよび9Cを図7Bおよび9Dと比較する)。細胞材料または核は、本発明の方法につき、PAAおよびDNAseで(図7B)、またはPAA、TX-100、およびDNAseで(図9D)の処理後に観察されなかった。
【0206】
加えて、MHCクラスI免疫染色は、抗原の存在を評価するために実行することができる。
【0207】
DNA含量:脱細胞化の程度を示すために、DNAアッセイを行った。蛍光定量的なDNAアッセイのために、仔ウシ胸腺DNA標準を、0-100μg/mlのDNAで調製した。試料(100μl)または標準を、1×TNE緩衝剤(10mMのトリス、1mMのEDTA、0.2MのNaCl、pH7.4)において溶解した33258 Hoechst(ヘキスト)溶液〔0.1μg/ml、Molecular probes(分子プローブ)、Eugene(ユージン)、OR〕と混合した。DNA含量は、A365nmの励起およびA458nm放出を使った蛍光計〔Hoefer DyNA(フォーファーDyNA) Quant(クワント)200 Florometer(フルオロメーター)〕で決定し、そして仔ウシ胸腺DNA検量線から算出した。
【0208】
脱細胞化された脂肪性組織の組成物の生化学的分析は、3名の異なるドナー全域でほとんどドナー変動性を示さなかった。図示の通り、PAAおよびヌクレアーゼ(図4)およびPAA、TX-100、およびヌクレアーゼ(図9E)の処置は、試料に存在する著しい量の核酸を除去した。出発材料と比較して処理された材料の著しく減少した容量のため、比較は図9の中で元の材料に対してなされない。図9において、0.1%の過酢酸で処理された試料は、より一層高い酸濃度の試料と比較して、最も高いDNA含量を持ち、それは、1%から5%まで酸性の濃度を変えたにもかかわらず、類似した結果を与えた(図9E)。これらの結果は、本発明のPhATが、組織から著しい量の核酸を、TX-100でも処理されるより一層微細に刻まれた試料での核酸除去に対する影響の損失を有するPAAの特定の濃度を用いて除去することを証明する。
【0209】
脂質フリー。迅速なエマルジョンアッセイを、処理された組織中の残留脂質の存在を除外するために実施した。脂質の低レベルの変化量は、典型的に、組織内に残るより一層多くの残留脂質をもたらすより一層低いPAA濃度と共に検出された。皮下脂肪性組織の全体的および組織学的外観での明らかな変化は、次の処理を起こした(図3)。前処理された脂肪性組織は、高度に濃縮された脂質含量を反映するオレンジ色を有する(図3A)。機械的破壊および過酢酸(PAA)の暴露の後、脂質除去は、PhATの強まる白色によって示されるように、過酢酸の濃度と相関した。H&E染色を有する組織構造はまた、前処理された脂肪の脂質を含んだ空胞細胞の基本設計の損失を明らかにした(図3C)。脂肪性組織の処理は、コラーゲン繊維の基本設計と一致する繊維状の外観と共に凝縮したECMをもたらす。
【0210】
脂質の存在はまた、組織学的に観察された。脂質は組織学的に観察されなかった(図5E)。
【0211】
組織構造:足場は、10%ホルマリンで一晩固定した。一連のエタノール(EtOH)溶液を、試料を脱水するために用い、それをその後夜通しパラフィン中に包埋させた。切片を、5μm厚にカットし、顕微鏡スライド上に搭載し、40℃プレート上で1時間から夜通し乾燥させた。水分補給の後、切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)およびサフラニン-O/ファストグリーンを用いて染色した。免疫組織化学は、製造業者のプロトコルに従ってHistostain(ヒストステイン)-SPキット〔Zymed Laboratories Inc.(ザイムド・ラボラトリーズ社)、サンフランシスコ、CA〕を用いて行った。コラーゲンI〔Research Diagnostics Inc.(リサーチ・ダイアグノスティックス社)〕に対するラビットポリクローナル抗体を一次抗体として用いた。
【0212】
タンパク質含量:異なる処理法によってつくられたPhAT試料中のタンパク質含量の比較を、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイキット(Sigma-Aldrich、B 9643、セントルイス、MO)を用い製造者の指示に従って行った。簡単に言うと、BCAの作業試薬の20部を、試験試料の1部と混合し、30分間37℃でインキュベーションする。試験試料の吸光度はλ=562で読み取り、そしてアルブミンの既知量を含む標準と比較した。PAAおよびTX-100で処理した後の試料中のタンパク質含量を図5Aに示す。
【0213】
コラーゲン含量:簡単に説明すると、全体のコラーゲン含量を、110℃にての夜通しの6 N塩酸での加水分解および前述のようにヒドロキシプロリンの全体のコラーゲンに対する比として0.1を用いるp-ジメチルアミノベンズアルデヒドおよびクロラミン-Tでの反応後に、パパイン消化のヒドロキシプロリン濃度(100μl)を測定することによって合計コラーゲン含量を決定した〔Creemers(クリーマーズ)、LBら、Microassay for the assessment of low levels of hydroxyproline(ヒドロキシプロリンの低レベルの評価のためのマイクロアッセイ)。Biotechniques(バイオテクニクス)。22:656-658、1997年;Woessner(ウースナー)、JF、Jr.m The determination of hydroxyproline in tissue and protein samples containing small proportions of this imino acid(このイミノ酸の小割合を含む組織およびタンパク質試料中のヒドロキシプロリンの決定)。Arch Biochem Biophys(アーカイブズ・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジックス)。93:440-4477、1961年、双方を参照によりここに組み込む)。ヒドロキシプロリン標準曲線は、L-4-ヒドロキシプロリンを用いて調製した〔Fluka(フルカ社)、米国〕。結果を図5Bおよび9Fに示す。再度、PAAの特定の濃度がさらにTX-100で処理したより一層微細に刻んだ材料に残るコラーゲンの量により一層少ない影響しか有しなかった。しかし、コラーゲンとして含量は、より一層高い過酢酸濃度で、最も顕著なのは5%過酢酸で減少し始めた(図9F)。高い酸濃度で、細胞外基質は、その構造的完全性を失い始め、そして取扱うことが難しくなってきた。最適な処理条件は、完全に細胞物質を除去する一方、細胞外基質構造を維持しながら、最終的にはその後の実験のために3%過酢酸を用いて、2つの目標を最大に満たすための能力によって決定された。
【0214】
ECM保存。細胞外基質の保存は、定量的に、コラーゲンおよびプロテオグリカンの生化学的アッセイを用いて、機械的に基本設計〔H&EおよびMasson(マッソン)のTrichome(トライコーム)染色)を評価するために、組織学的に評価された(図3B、5CおよびE、9D、および10)。無傷のECMが観察された。
【0215】
プロテオグリカン濃度。プロテオグリカン/グリコサミノグリカン濃度の決定は、パパイン消化物において前述のようにジメチルメチレンブルー(DMMB)の分光光度法によって実行した。コンドロイチン硫酸C(サメ軟骨抽出物、Sigma)を標準として使用した(図5D)。
【0216】
レオロジー評価:レオロジー試験は、コーンプレートの構成を使用してRFS-3のレオメーター(レオメトリックサイエンティフィック社製)上で行った。25mmのコーンは0.0584mmのギャップと共に使用した。1 rad/sの振動数でのパイロット動的せん断ひずみスイープ試験は、0.1%せん断ひずみが線形の応力-ひずみ範囲であったことを示した。動的せん断ひずみスイープ試験は、線形の応力-ひずみ範囲が類似していたことを確認するために、後続のすべての試料で行われた。動的せん断振動数スイープは0.1%のせん断振幅で0.1から100 rad/sでの振動数の範囲にわたって試験した。10の振動数での複素弾性率は、約1×103-1×105ポアズであると決定した。
【0217】
試料の動的剛性および圧縮率は、ELFTM 3200テスト機器を使って測定した。統計分析をSPSS(バージョン10.0;SPSS、シカゴ、イリノイ)ソフトウェア・パッケージで実行する。結果は図6に示す。複素粘度は、PAAの濃度を増やすことで減少することが示された。
【0218】
すべての生化学結果は、平均および標準偏差(n=3-4)として現わす。
【0219】
統計分析はSPSS(バージョン10.0;SPSS、シカゴ、イリノイ)ソフトウェアパッケージで実行した。統計的有意性はANOVA(分散分析)および事後のテスト(post-hoc tests)によって測定し、p<0.05としてセットした。
例4-脂肪生成性(Adipogenicity)のインビトロでの支持
【0220】
インビトロでの細胞増殖および脂肪生成を支持する能力のために、処理された脂肪性組織を評価する。インビトロで脂肪生成を支持するそれらの能力を、本発明の方法によっ調製するPhATを試験した。
【0221】
簡単には、処理された材料の試料は、1cm2につき5×103または10×103細胞の密度で、間葉系幹細胞(MSCs)と共に播種した。脂肪生成誘導媒体は24、48、72、または96時間で加え、そして分化の割合はDNA、オイルレッドO染色、およびナイル赤染色によって5、10、および15日に定めた。播種後72-96時間に誘導媒体で処理するとき、細胞が最大の差異を認めることが分り、そして脂肪生成の分化は5日に観察された。
【0222】
さらに脂肪生成性を分析するために、RNAをPAT上で接種した細胞から抽出し、そしてPPAR-γおよびリポタンパク質リパーゼ(Lipo-Protein-Lipase、LPL)を含む脂肪のマーカーのためのRT-PCRを実行し、および単層で膨張した細胞および記述されたように、自然な脂肪性組織でのものと比較する〔Hillel(ヒレル)、A.ら、Embryonic Germ Cells are capable of Adipogenic Differentiation in Vitro and in Vivo(胚性生殖細胞は試験管内および生体内の脂肪生成分化が可能である)。Tissue Engineering(ティッシュ・エンジニアリング)Part(パート)A。14:1-8(2008年)〕。
例5-PhATと細胞の走査型電子顕微鏡観察
【0223】
試料を、室温で1時間、2.5%のショ糖と共に0.1Mのカコジル酸ナトリウム緩衝液での3.0%のホルムアルデヒド/1.5%のグルタルアルデヒドにおいて固定することによってSEMのために調製した。次いで、段階的なエタノール溶液で脱水の前に室温で光から保護して30分間、サンプルを1%の四酸化オスミウムをポスト添加した(post-fixed)。CO2臨界点乾燥を実行し、次いでプラチナによるスパッタコーティングが続き、および画像をFEIクアンタ(Quanta)200 SEM(ヒルズバラ、OR)上で撮影した。
【0224】
脱細胞化された脂肪マトリクスのSEM画像は、変動する厚さの束を有するECMの原繊維コラーゲン構造を示す(図10 A、B)。ECMも事実上多孔性であり、細胞遊走および栄養拡散が促進される。脂肪から派生した幹細胞の試験管内の実験は、脱細胞化された組織のECMの上での広範囲な細胞接着および広がりを明らかにする(図10 C、D)。複数の細胞ECM接触は、培養において7日目で各々の細胞について見ることができる。
例6-PhATの架橋およびインビトロでの分解に対する抵抗性
【0225】
PAA/DNAse I/TX-100処理を使用して調製したPhATを、pH 5.5で50mMの2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝剤において、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて架橋した。試料を、EDCを用い5、10、50、および100mMのEDCの濃度:2:1のNHSモル比で4時間、架橋溶液とインキュベーションした。残留する架橋剤を、2時間、0.1MのNa2HPO4ですすぐことによって除去し、次いで蒸留水との4回の追加の30分のインキュベーションを続けた。
【0226】
EDC架橋を、異なる化学的架橋剤、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)と比較した。水溶液中でのその不安定性のために、本発明者らが方法の基礎を形成した前の研究は、溶媒として第二のアルコール類を使い、またはHMDC反応性を保つために、界面活性剤を用いた。第二のアルコール懸濁物について、1%および5%のHMDC溶液は2-プロパノールで作成した。試料は、架橋溶液において4時間のインキュベーションの前に、それぞれ30分に2つの変化のために2-プロパノールで乾操した。試料はそれぞれ30分間に二回100%の2-プロパノールですすぎ、次いでそれぞれ30分間段階的な2-プロパノール溶液および蒸留水でのさらに4回のすすぎを用いる再水和が続いた。
【0227】
pH7.4のリン酸緩衝液(0.054MのNa2HPO3、0.013MのNaH2PO4)での1%のTween 20を含む界面活性剤溶液において、また試料を1%および5%のHMDCと架橋した。架橋は4時間室温で実行し、次いで蒸留水での広範囲なすすぎ、4MのNaClによる2回の30分のインキュベーション、および界面活性剤および残留する架橋剤を除去するために4回の追加の蒸留水でのすすぎのそれぞれ30分間が続いた。
【0228】
異なる架橋条件は、それらの感受性を酵素の分解と比較することによって特徴づけられた。架橋された試料および非架橋のコントロールを、含水量に基づく可変性を減らすために、2日の間凍結乾燥した。次いで、試料は37℃のインキュベーター中で0.05Mのトリス-HCl(pH7.5)での200U/mlコラゲナーゼIとインキュベーションした。1、3、8、16、および24時間の4、6つの時点で、試料を沈降させ、そして上澄みを収集し、実験の完成まで-20℃で貯蔵した。新鮮なコラゲナーゼを加え、そして試料を次の指定された時点までインキュベーター戻した。24時間で上澄みを集めた後、任意の残留する細胞外基質を、60℃の水浴で16時間125ug/mlのパパイナーゼ(papainase)溶液で消化した。最後に、異なる時点で分解する合計コラーゲンの割合を得るために、可溶化されたコラーゲンの量を測定するために前記のコラーゲンアッセイを使って、すべての上澄みおよびパパイン消化された試料を分析した。各架橋条件について3つの試料を用いた。
【0229】
コラゲナーゼ(図11A)と共にインキュベーションされたとき、EDC架橋された試料は、非架橋コントロールに比較して酵素の分解に対するより一層大きな抵抗を示した。分解に対する抵抗性は化学的架橋剤のより一層高い濃度と共に増加した。HMDC架橋は、用いる溶媒に従い、異なる分解特性をもたらした。1%のTween 20溶液中で懸濁されるとき、1%または5%のHMDC濃度(図11B)の間で観察される違いはなく、ごくわずかな分解しか起こらなかった。HMDCが2-プロパノール中で懸濁されたとき、1%のHMDCで架橋された試料は5%のHMDC(図11C)のそれらよりコラゲナーゼ分解に影響されやすかった。
例7-インビトロでの細胞生存能力の支持
【0230】
ここに提供するどの方法によって調製されるPhATも、細胞生存能力を支持することが見出されたことを証明するために、生存/死体の分析〔Molecular Probes(モレキュラー・プローブズ社)〕を実行した。
【0231】
8mmのパンチ生検で、足場を、PAAの種々の濃度で、そしてDNAseで処理した各々のPhATから作成され、細胞の播種を容易にするために凍結乾燥し、そしてDMEMの50,000細胞/30ulの濃度で、ヒト間葉系幹細胞(MSCs)で再構成した。足場を脂肪生成媒体で〔DMEMはFBSおよび0.5mMのデキサメタゾンで補った(シグマ;セントルイス、MO)、1mg/mlのインシュリン(シグマ;セントルイス、MO)〕、そして0.5mmの1-メチル-3-イソブチルメチル-キサンテン(IBMX;(シグマ;セントルイス、MO))37℃の5%CO2で培養した。培養の24時間および1週後に、種々のPhAT足場の切片を、30分間の生存/死体溶液中で切断し、そしてインキュベーションした(生存/死溶液;カルセインAM:EthD-ホモダイマー1:DMEM(0.5:4:2000))。30分のインキュベーションの後、切片を洗浄し、そして製造者(モレキュラー・プローブズ社)によって解説されるように、細胞生存能力を蛍光顕微鏡下で観察した。細胞播種の後、生存/死亡アッセイを、1日目および7日目に実行した。あらゆる場合に、生きた細胞は、処理された脂肪性組織の上で培養する24時間後に存在した。グレーター細胞生存能力は、5%のPAA×3時間の生存能力の減少および5%のPAA×6時間でのほとんど最小の生存能力を有する3%のPAA(3および6時間)PhATについて見出された。7日まで、生きた細胞は、3%のPAAで処理されるPATにおいてだけで、死亡した細胞(赤い核染色)より数で勝る。
【0232】
架橋PhAT調製物(製剤)はまた、同様の方法を用いて細胞の生存を支持する能力について試験した。化学的架橋剤は、残留架橋剤として組織に残っている場合には、細胞毒性でありえ、不完全にしか除去されない場合、使用される溶媒はまた、細胞の生存に有害でありうる。PhATは、上記のようにダイを介して脂肪性組織を強要され、3%PAA、TX-100、およびDNaseによる順次処理することにより調製した。 次いで、5-100mMのEDCと、1%のTween(R)20、2 -プロパノール(100%)での1-5%HMDCとの存在下で1-5%HMDCを使用して、後述するように試料を架橋した。細胞はASC維持培地(DMEM-F12、10%FBS、100U/mlペニシリン、10ug/mlのストレプトマイシン)で48ウェルプレートで足場当たり40,000細胞で播種し、そして5日間培養した。
【0233】
細胞生存率を生存/死亡の生存率/細胞毒性キット〔Invitrogen(インビトロゲン社)、カールスバッド、CA〕を用いて評価した。細胞-ECMの足場は、37℃、5%CO2で30分間DMEM-F12で4uMのカルセインAMおよび4uMのエチジウムホモ二量体-1を含む生存/死亡媒体でインキュベーションした。インキュベーションが完了して、生存/死亡媒体をPBSですすいだウェルおよび足場から除去した。細胞毒性は、それぞれ、生細胞および死細胞を可視化するために、485±10nmおよび530±12.5nmの光学フィルタを有する蛍光顕微鏡を用いて評価した。
【0234】
細胞は、架橋されていないコントロールと比較して、条件ごとに、培養中の5日後に生きた細胞が死んだものよりもはるか多い1および5日の双方で最高の架橋剤濃度の条件でさえも生存し、および増殖した。細胞増殖に少なくともつながる条件は、2-プロパノールでのHMDCように見え、したがって、引き続くインビボ研究で除外された。
例8-処理された脂肪性組織のインビボでの評価
【0235】
PAAおよびDNaseIで処理することにより調製したPhATの1ミリリットルを、スプラーグドーリーラットおよび500ulで無胸腺ヌードマウスにの背部上に皮下移植した。40日のPhATの移入後の代表的なマウスの写真を図7AおよびBに示す。インプラントは触診を介して時間をかけて監視し、および測定値をキャリパーにより採取し、および移入時から45日後で持続することがわかった。PhATは、実験を通して触知され、およびPhAT上の皮膚を除去することにより目に見えた(図7C)。45日に、動物を犠牲にし、材料を組織構造のために収集した。組織構造は、周囲の組織、血管新生、および最小の炎症との統合の証拠を実証した(図7D)。
例9-生体内持続性および生物学的適合性研究
【0236】
好ましいマトリクスの持続および生物適合性を、ラットにおいて皮下移入してインボボで試験した。すべての手順を、Johns Hopkins Animal Care and Use Committee(ジョンズホプキンス大学の動物ケアおよび使用委員会)の事前承認を事行した。PhATは、8週齢の雌性のスプラーグドーリーラット(n=4)の背部に皮下移入した。持続性を測定するために、各インプラント部位の長さ、幅、深さを、デジタルキャリパーを用いて測定し、そして三回記録し、および平均した。インプラントのために楕円体形状を仮定することで、式(4/3)(π)(1/2の高さ)(1/2の長さ)(1/2の幅)が、各次元の平均値を使用して容積を算出するために用いられた。これらの測定は、1および3週で、注入の直後に行った。容量はその後時間の経過とともにプロットし、そしてそれらの結果を図8AおよびBに示す。1および3週間で、安楽死に続き、インプラントを抽出し、そして10%ホルマリンにおいて夜通し固定し、およびH&Eを使用して染色した。PhAT移入に対する炎症反応、PhATの細胞流入および血管新生の組織学的評価を、生物適合性を評定するために用いた。
【0237】
組織への細胞の流入の証拠があり、それはそれらの線維芽細胞の形態が与えられる線維芽細胞からなる可能性が最も高かった。十分な内腔の血管をまれに確認した。
【0238】
キャリパーの測定は、1週間で絶対的な高さおよび容量比での初期減少を示し、それは3週間で横ばいに表示された(図8A-B)。収集時の組織の組織学的所見は、その外観のプレインプラントよりもはるかに大きな組織の密度を実証し、若干の初期の劣化は、時間にわたるインプラントの容積での減少が許容されうることを示し、ラットの筋肉の皮膚の下にある組織の圧縮はまた、容量での初期の減少に寄与することがある。
【0239】
生物学的体適合性の研究はまた、架橋されたPhATを用いて実行した。移入の2週間後、脂肪性ECMインプラントは不透明であり、および血管新生は表面で観察することができた(図12)。炎症性細胞は、インプラントの周辺で主に存在した。広範な炎症反応は存在しなかったが、最も顕著な繊維状のカプセルが5mMのEDC架橋されたECMと共に形成された。インプラントへの細胞移行は、線維性被膜の存在を反映し、架橋された足場での中央への細胞移行がコントロールに比べて少なかった(図13)。このデータから、それはECMが、重度の免疫応答を誘発することなく、インビボにおいて架橋し、および移入することができ、それによって生物物質の分解プロファイルおよび機械的性質を調節する機構が提供されると結論付けられる。
【0240】
架橋されたPhATを用いる第二の研究では、ジョンズホプキンス大学の動物ケアおよび使用委員会からの事前の承認を得て、ラットでの生体内注入研究によって評価した。12週齢のスプラーグドーリーラット(n=2)を、次の条件、すなわち、未架橋(コントロール)、5mMのEDC架橋、または1%のTween 20でのHMDC架橋のものの、脱細胞化した脂肪性細胞外マトリクスの400uLで、背部において各条件の2回の注入により皮下注射した。インプラントは3週間後に除去し、そして組織学的分析のために10%ホルマリンで固定した。標本は、一連の段階的エタノール溶液により脱水し、そしてパラフィンに埋め込む前にキシレンにおいてきれいにした。インプラントは、5umの厚さで切片にし、再水和し、そしてその後ヘマトキシリンおよびエオシンで、ならびにインプラントの生物学的適合性を評価するためにMasson’s trichrome(マッソンのトリクロム)で染色した。インプラントの持続性を監視することは、移入の最初の週の後に安定したインプラントの容量の維持を示した。宿主組織および細胞の浸潤との良好な統合は、インプラントの中央に観察することができ、細胞およびECMのその後のリモデリングの重要な移行を伴い、組織再生が容量安定化したインプラントを維持できることが示唆された。
例10-処理された脂肪性組織の0.63rad/sでの動的なレオロジー特性の評価
【0241】
処理された脂肪性組織のレオロジーの特性を、上述のもののような既知の方法を使用してアッセイした〔また、例は、Falcone(ファルコーネ)およびBerg(バーグ)2009年、Temporary polysaccharide dermal fillers: A model for persistence based on physical properties(一時的な多糖類皮膚充填剤:物性に基づく持続のためのモデル)。Dermatol. Surg.(ダーマトロジック・サージェリー)。35:1-6参照、参照することによってここに組み込む。〕。結果を下の表に提供する。
【0242】
【表1】
η*(Pas):複素粘度、ポアズで測定される。
G*(Pas):複素モジュラス、パスカルで測定される。
G’(Pas):弾性率、パスカルで測定される。
G’’(Pas):粘性係数、パスカルで測定される。
Tan(δ):タンジェントデルタ。
^は上付き文字を示す。
【0243】
当業者はここに説明する本発明の特定の具体例に対し多くの等価物を認めるか、ほんの日常的な実験しか使わないで確かめることができる。そのような等価物は、以下の請求の範囲に包含されていることを意図する。
【0244】
ここに引用されるすべての参考文献、特許および特許公報は、まるでそれら各々が個々に組み込まれるように、参照することによってここに組み込まれる。
1.Kaufman (コーフマン), M. R.、Bradley (ブラッドリー), J.、Dickenson (ディッケンソン)、B.ら、Autologous Fat Transfer National Consensus Survey: Trends in Techniques for Harvest, Preparation, and Application, and Perception of Short- and Long-Term Results(自家の脂肪移行の国民的な合意調査:収集、調製、および適用のための技術における傾向、および短期および長期の結果の認識)。Plastic and Reconstructive Surgery。第119巻(1)、2007年1月、pp 323-331。
2.Butterwick(バターウィック), K. J.、Nootheti(ヌーテティ), P. K.、Hsu(スウ), J. W.ら、Autologous Fat Transfer: An In-Depth Look at Varying Concepts and Techniques(自家の脂肪移行:様々な概念および技術の徹底的な観察)。Facial Plastics Surgery Clinics of North America。第15巻、2007、pp 99-111。
3.Uriel(ウリエル), S.、Huang(ホワン), J.、Moya(モヤ), M. L.ら、The Role of Adipose Derived Protein Hydrogels in Adipogenesis(脂肪生成での脂肪誘導タンパク質ヒドロゲルの役割)。Biomaterials。第29巻、2008、pp 3712-3719。
4.Creemers(グリーマーズ), L.B.ら、Microassay for the assessment of low levels of hydroxyproline(ヒドロキシプロリンの低レベルの評価のためのマイクロアッセイ)。Biotechniques。第22巻(4)、1997、pp 656-658。
5.Woessner(ウースナー), J.F., Jr.、The determination of hydroxyproline in tissue and protein samples containing small proportions of this imino acid(組織およびこのイミノ酸の少ない割合を含むタンパク質サンプル中のヒドロキシプロリンの決定)。Arch Biochem Biophys。第93巻、1961、pp 440-4477。
6.Liang(リャン), H.-C.ら、The effects of crosslinking degree of an acellular biological tissue on its tissue regeneration pattern(無細胞生物組織のその組織再生パターンに及ぼす架橋の程度の影響)。Biomaterials。25:3541-3552(2004)。
7.Kelly(ケリー)JL、Findlay(フィンドリー)MW、Knight(ナイト)KR、Penington(ペニントン)A、Thompson(トンプソン)EW、Messina(メッシーナ)A、Morrison(モリソン)WA。Contact with existing adipose tissue is inductive for adipogenesis in matrigel(既存の脂肪組織との接触は、マトリゲルで脂肪生成にとって誘導的である。Tissue Eng。2006年7月;12(7):2041-7。
8.Stillaert(シュティラート)F、Findlay(フィンドリー)M、Palmer(パーマー)J、Idrizi(イドリジ)R、Cheang(チェン)S、Messina(メッシーナ)A、Abberton(アバトン)K、Morrison(モリソン)W、Thompson(トンプソン)EW。Host rather than graft origin of Matrigel-induced adipose tissue in the murine tissue-engineering chamber(ネズミ組織工学チャンバーでのマトリゲル誘発脂肪性組織の移植片よりもむしろホスト起源)。. Tissue Eng。2007の9月;13(9):2291-300。
9.Aditya Chaubey(アディティア・チャウベイ)およびKaren(カレン)J. L。Extracellular Matrix Components as Modulators of Adult Stem Cell Differentiation in an Adipose System(脂肪システムでの成体幹細胞分化のモジュレータとしての細胞外基質成分)。Journal of Bioactive and Compatible Polymers。ブルク2008;23;20。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生細胞が確実に付着する脱細胞化された脂肪性組織細胞外基質を含む処理された脂肪性組織を備える組成物。
【請求項2】
組成物はさらに、麻酔剤、鎮痛剤、抗生物質、抗菌剤、増殖因子類、低温保存剤、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャー、カスパーゼインヒビター、ビタミン、リポアスピレート、および細胞からなる群からの少なくとも1種の物質を含む、請求項1の組成物。
【請求項3】
さらに架橋剤を含む、請求項1または2の組成物。
【請求項4】
架橋剤は、カルボジイミド(EDC)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)、グルタルアルデヒド、プロアントシアニジン、リボース、トレオース、およびリジルオキシダーゼ、カルボジイミド、ポリエポキシエーテル類、ジビニルスルホン(DVS)、ゲニピン、ポリアルデヒドおよびジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ゲニピン、エポキシ化合物類、ジアルデヒドでんぷん、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジメチルスベルイミデート、カルボジイミド類、サクシニミジル類、ジイソシアナート類、およびアシルアジド;またはそれらの任意の組合せからなる群より選ばれる、請求項3の組成物。
【請求項5】
さらに、バイオポリマースキャフォールドを含む、請求項1〜4のいずれかの組成物。
【請求項6】
処理された脂肪性組織およびバイオポリマースキャフォールドはさらに、バイオポリマー架橋剤を含む、請求項5の組成物。
【請求項7】
脂肪性組織は、ヒト脂肪性組織およびブタ脂肪性組織からなる群より選ばれる、請求項1〜6のいずれかの組成物。
【請求項8】
さらに、架橋剤を含む、請求項6または7の組成物。
【請求項9】
混合物はさらに重合剤を含む、請求項8の組成物。
【請求項10】
混合物はさらに重合イニシエーターを含む、請求項9の組成物。
【請求項11】
バイオポリマースキャフォールドは、ヒアルロン酸、PEG-DA、コンドロイチン硫酸、部分的にか、または完全に加水分解されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体類〔ポロキサマー類およびメロキサポール類〕、ポロキサミン類、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキル化セルロース類、ポリペプチド類、多糖類または糖質類、フィコール(商標)〔Ficoll(R)〕ポリスクロース、デキストラン、ヘパラン硫酸、ヘパリン、アルギン酸、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、オボアルブミン、およびそれらの共重合体類またはブレンド類からなる群より選ばれるポリマーを含む、請求項6〜10のいずれかの組成物。
【請求項12】
重合イニシエーターには、エオシンY、1-ビニル2-ピロリドンNVP、およびトリエタノールアミン;およびイルガキュア(Irgacure)D2959からなる群より選ばれる薬剤が含まれる、請求項10または11のいずれかの組成物。
【請求項13】
処理された脂肪性組織は基底膜が基本的にないか、または処理された脂肪性組織は基底膜を含む、請求項1〜12のいずれかの組成物。
【請求項14】
対象体に移入されるとき、組成物は実質非免疫原性である、請求項1〜13のいずれかの組成物。
【請求項15】
組成物は、0.2μg/mgまたはそれより少ない、0.2μg/mgまたはそれより少ない、0.1μg/mgまたはそれより少ない、0.05μg/mgまたはそれより少ない、0.025μg/mgまたはそれより少ない、0.1μg/mgまたはそれより少ない、または0.005μg/mgまたはそれより少ないDNAを含む、請求項1〜14のいずれかの組成物。
【請求項16】
組成物は10%またはそれより少ない、5%またはそれより少ない、2%またはそれより少ない、1%またはそれより少ない、0.5%またはそれより少ない、0.25%またはそれより少ない、0.1%またはそれより少ない、0.05%またはそれより少ない、0.01%またはそれより少ない、0.001%またはそれより少ない脂質(w/w)を含む、請求項1〜15のいずれかの組成物。
【請求項17】
組成物は104-105Pas;1×104-3×105Pas;2×104-2×105Pas;3×104-1×105Pas;1×104-8×105Pas;または1×104-9×105Pas;またはそれらの範囲の任意の組合せの複素粘度(η)を構成する、請求項1〜16のいずれかの組成物。
【請求項18】
組成物は103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの複素モジュラス(G*)を構成する、請求項1〜17のいずれかの組成物。
【請求項19】
組成物は103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの弾性率(G’)を構成する、請求項1〜18のいずれかの組成物。
【請求項20】
組成物は103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの粘性係数(G’’)を構成する、請求項1〜19のいずれかの組成物。
【請求項21】
組成物は、0.1-0.2;0.1-0.5;0.1-1.0;0.1-0.3;0.1-0.4;0.1-0.75;0.05-0.5;または0.05-2.0;またはこれらの範囲の任意の組合せのタン(δ)を構成する、請求項1〜20のいずれかの組成物。
【請求項22】
組成物中に存在するコラーゲンの50%またはそれよりも多く、60%またはそれよりも多く、70%またはそれよりも多く、80%またはそれよりも多くまたは90%またはそれよりも多くが、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、XII型コラーゲンからなる群より選ばれる、請求項1〜21のいずれかの組成物。
【請求項23】
組成物中に存在するグリコサミノグリカン類(GAGs)の50%またはそれよりも多く、60%またはそれよりも多く、70%またはそれよりも多く、80%またはそれよりも多くまたは90%またはそれよりも多くは、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン硫酸からなる群より選ばれる、請求項1〜22のいずれかの組成物。
【請求項24】
組成物は水に不溶である、請求項1の組成物。
【請求項25】
組成物は請求項1〜28のいずれかのステップを用いて調製される、請求項1の組成物。
【請求項26】
順次に、
a)固形脂肪を含む哺乳類組織を提供すること、
b)組織中の非脂肪性物質から脂肪を分離すること、および
c)脂肪を脱細胞化すること、または脂肪から脂質を抽出すること
を含む、処理された脂肪性組織(PAT)の調製方法。
【請求項27】
脂肪を脱細胞化すること、または脂肪から脂質を抽出することには、脂質および細胞の除去を促進し、処理された脂肪性組織を調製するために、緩衝剤を用いて脂肪を操作することが含まれる、請求項25の方法。
【請求項28】
緩衝剤には、リン酸緩衝塩類(PBS)が含まれる、請求項26の方法。
【請求項29】
脱細胞化を促進するための薬剤には、弱酸、弱有機酸、非イオン性洗浄剤、および胆汁酸からなる群より選ばれる薬剤を含む、請求項26または27の方法。
【請求項30】
脂肪を脱細胞化すること、または脂肪から脂質を抽出することには、脂肪を弱酸および非イオン性洗浄剤と接触させることを含む、請求項26または29の方法。
【請求項31】
脂肪を脱細胞化するか、または脂肪から脂質を抽出することには、過酢酸(PAA)、酢酸、ホウ酸、リン酸、および胆汁酸からなる群より選ばれる酸と脂肪を接触させることが含まれる、請求項26、29、または30のいずれかの方法。
【請求項32】
脂肪を脱細胞化するか、または脂肪から脂質を抽出することには、エトキシル化脂肪アルコールエーテル、ラウリルエーテル類、エトキシル化アルキルフェノール類、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール化合物類、修飾されたオキシエチル化直鎖アルコール類、オキシプロピル化直鎖アルコール類、ポリエチレングリコールモノオレアート化合物類、ポリソルベート化合物類、およびフェノール脂肪アルコールエーテル類からなる群より選ばれる非イオン洗浄剤と脂肪を接触させることが含まれる、請求項26、29または30の方法。
【請求項33】
非イオン洗浄剤は、トリトン(商標)〔Triton(R)〕X-100、トリトンX-114、プルロニックス(商標)〔Pluronics(R)〕、トゥイーン(商標)〔Tween(R)〕20、トゥイーン(商標)80、ポリオキシエチル化(20)ソルビタンモノラウラート、イコノル(商品名)〔IconolTM〕、ノニデット(商標)〔Nonidet(R)〕P 40(NP-40)、オクチルグルコシド、およびオクチルチオグルコシドからなる群より選ばれる、請求項32の方法。
【請求項34】
さらに、請求項1のステップ(b)または(c)からの脂肪を、脂のpHを生理的pHに調節するために緩衝剤と接触させる、請求項27〜33のいずれかの方法。
【請求項35】
脂肪を脱細胞化するか、または脂肪から脂質を抽出することには、脂肪を超臨界CO2と接触させることが含まれる、請求項26の方法。
【請求項36】
さらに、処理された脂肪性組織は粒子を形成することを含む、請求項26〜35のいずれかの方法。
【請求項37】
さらに、脱細胞化された脂肪を架橋剤と接触させることを含む、請求項26〜36のいずれかの方法。
【請求項38】
架橋剤は、カルボジイミド(EDC)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)、グルタルアルデヒド、プロアントシアニジン、リボース、トレオース、およびリジルオキシダーゼ、ポリエポキシエーテル類、ジビニルスルホン(DVS)、ゲニピン、ポリアルデヒドおよびジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ゲニピン、エポキシ化合物類、ジアルデヒドでんぷん、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジメチルスベルイミデート、カルボジイミド類、サクシニミジル類、ジイソシアナート類、およびアシルアジド;またはそれらの任意の組合せからなる群より選ばれる、請求項37の方法。
【請求項39】
さらに、処理された脂肪性組織をバイオポリマースキャフォールドと組み合わせることを含む、請求項26〜38のいずれかの方法。
【請求項40】
処理された脂肪性組織およびバイオポリマースキャフォールドをさらに、バイオポリマー架橋剤と組み合わせることを含む、請求項39の方法。
【請求項41】
脂肪性組織は、ヒト脂肪性組織およびブタ脂肪性組織からなる群より選ばれる、請求項26〜40のいずれかの方法。
【請求項42】
ステップ(c)の混合物はさらに架橋剤を含む、請求項39の方法。
【請求項43】
混合物はさらに重合剤を含む、請求項42の方法。
【請求項44】
さらに混合物を重合イニシエーターと接触させることを含む、請求項41〜43の方法。
【請求項45】
バイオ適合性ポリマーには、ヒアルロン酸、PEG-DA、コンドロイチン硫酸、部分的にか、または完全に加水分解されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体類〔ポロキサマー類およびメロキサポール類〕、ポロキサミン類、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキル化セルロース類、ポリペプチド類、多糖類または糖質類、フィコール(商標)〔Ficoll(R)〕ポリスクロース、デキストラン、ヘパラン硫酸、ヘパリン、アルギン酸、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、オボアルブミン、およびそれらの共重合体類またはブレンド類からなる群より選ばれるポリマーが含まれる、請求項41〜44のいずれかの方法。
【請求項46】
重合イニシエーターには、エオシンY、1-ビニル2-ピロリドンNVP、およびトリエタノールアミン;およびイルガキュア(Irgacure)D2959からなる群より選ばれる薬剤が含まれる、請求項45または46のいずれかの方法。
【請求項47】
重合イニシエーターには、光が含まれる、請求項45〜47のいずれかの方法。
【請求項48】
さらに、脂肪をヌクレアーゼと接触させることを含む、請求項26〜50のいずれかの方法。
【請求項49】
脂肪をステップ(c)後にヌクレアーゼと接触させる、請求項48の方法。
【請求項50】
さらに脂肪をプロテアーゼインヒビターと接触することを含む、請求項26〜49のいずれかの方法。
【請求項51】
さらに、脂肪を、麻酔剤、抗生物質、増殖因子類、低温保存剤、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャー、カスパーゼインヒビター、ビタミン、リポアスピレート、および細胞からなる群からの少なくとも1種の物質と接触させることを含む、請求項26〜50のいずれかの方法。
【請求項52】
脂肪をステップ(c)後に少なくとも物質上に接触させる、請求項51の方法。
【請求項53】
ステップ(c)の脂肪性組織は本質的に基底膜がない、請求項26〜52のいずれかの方法。
【請求項54】
固形脂肪性組織が生きたドナーまたは死体ドナーから提供される、請求項26〜53のいずれかの方法。
【請求項55】
請求項26〜54のいずれかの方法によって作成された組成物。
【請求項56】
製薬上の担体に請求項1〜25または55の組成物を含む、製薬上の組成物。
【請求項57】
対象体への組成物の注入を含む、請求項56の組成物の使用。
【請求項58】
請求項1〜25または55〜56のいずれかの組成物を作成するためのキット。
【請求項59】
いずれかの請求項1〜25または55〜56のいずれかの組成物の投与を含む、
キット。
【請求項60】
さらに、キットの使用のための指示書を含む、請求項58または59のキット。
【請求項61】
処理された脂肪性組織を、対象体に移入するにあたり、次の
a)処理された脂肪性組織の移入を必要としている対象体を識別すること、
b)処理された脂肪性組織の移入を必要としている対象体での部位を識別すること、および
c)処理された脂肪性組織を対象体に識別された部位で移入すること
を含む、方法。
【請求項62】
処理された組織が、いずれかの請求項1〜24のいずれかの方法によって作成されるか、またはいずれかの請求項1〜25の組成物である、請求項60の方法。
【請求項63】
方法はさらに、処理された脂肪性組織、細胞の浸入、または免疫反応の少なくとも1種について対象体を監視することを含む、請求項61または62の方法。
【請求項1】
生細胞が確実に付着する脱細胞化された脂肪性組織細胞外基質を含む処理された脂肪性組織を備える組成物。
【請求項2】
組成物はさらに、麻酔剤、鎮痛剤、抗生物質、抗菌剤、増殖因子類、低温保存剤、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャー、カスパーゼインヒビター、ビタミン、リポアスピレート、および細胞からなる群からの少なくとも1種の物質を含む、請求項1の組成物。
【請求項3】
さらに架橋剤を含む、請求項1または2の組成物。
【請求項4】
架橋剤は、カルボジイミド(EDC)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)、グルタルアルデヒド、プロアントシアニジン、リボース、トレオース、およびリジルオキシダーゼ、カルボジイミド、ポリエポキシエーテル類、ジビニルスルホン(DVS)、ゲニピン、ポリアルデヒドおよびジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ゲニピン、エポキシ化合物類、ジアルデヒドでんぷん、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジメチルスベルイミデート、カルボジイミド類、サクシニミジル類、ジイソシアナート類、およびアシルアジド;またはそれらの任意の組合せからなる群より選ばれる、請求項3の組成物。
【請求項5】
さらに、バイオポリマースキャフォールドを含む、請求項1〜4のいずれかの組成物。
【請求項6】
処理された脂肪性組織およびバイオポリマースキャフォールドはさらに、バイオポリマー架橋剤を含む、請求項5の組成物。
【請求項7】
脂肪性組織は、ヒト脂肪性組織およびブタ脂肪性組織からなる群より選ばれる、請求項1〜6のいずれかの組成物。
【請求項8】
さらに、架橋剤を含む、請求項6または7の組成物。
【請求項9】
混合物はさらに重合剤を含む、請求項8の組成物。
【請求項10】
混合物はさらに重合イニシエーターを含む、請求項9の組成物。
【請求項11】
バイオポリマースキャフォールドは、ヒアルロン酸、PEG-DA、コンドロイチン硫酸、部分的にか、または完全に加水分解されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体類〔ポロキサマー類およびメロキサポール類〕、ポロキサミン類、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキル化セルロース類、ポリペプチド類、多糖類または糖質類、フィコール(商標)〔Ficoll(R)〕ポリスクロース、デキストラン、ヘパラン硫酸、ヘパリン、アルギン酸、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、オボアルブミン、およびそれらの共重合体類またはブレンド類からなる群より選ばれるポリマーを含む、請求項6〜10のいずれかの組成物。
【請求項12】
重合イニシエーターには、エオシンY、1-ビニル2-ピロリドンNVP、およびトリエタノールアミン;およびイルガキュア(Irgacure)D2959からなる群より選ばれる薬剤が含まれる、請求項10または11のいずれかの組成物。
【請求項13】
処理された脂肪性組織は基底膜が基本的にないか、または処理された脂肪性組織は基底膜を含む、請求項1〜12のいずれかの組成物。
【請求項14】
対象体に移入されるとき、組成物は実質非免疫原性である、請求項1〜13のいずれかの組成物。
【請求項15】
組成物は、0.2μg/mgまたはそれより少ない、0.2μg/mgまたはそれより少ない、0.1μg/mgまたはそれより少ない、0.05μg/mgまたはそれより少ない、0.025μg/mgまたはそれより少ない、0.1μg/mgまたはそれより少ない、または0.005μg/mgまたはそれより少ないDNAを含む、請求項1〜14のいずれかの組成物。
【請求項16】
組成物は10%またはそれより少ない、5%またはそれより少ない、2%またはそれより少ない、1%またはそれより少ない、0.5%またはそれより少ない、0.25%またはそれより少ない、0.1%またはそれより少ない、0.05%またはそれより少ない、0.01%またはそれより少ない、0.001%またはそれより少ない脂質(w/w)を含む、請求項1〜15のいずれかの組成物。
【請求項17】
組成物は104-105Pas;1×104-3×105Pas;2×104-2×105Pas;3×104-1×105Pas;1×104-8×105Pas;または1×104-9×105Pas;またはそれらの範囲の任意の組合せの複素粘度(η)を構成する、請求項1〜16のいずれかの組成物。
【請求項18】
組成物は103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの複素モジュラス(G*)を構成する、請求項1〜17のいずれかの組成物。
【請求項19】
組成物は103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの弾性率(G’)を構成する、請求項1〜18のいずれかの組成物。
【請求項20】
組成物は103-105Pa;5×103-1×105Pa;1×104-1×105Pa;8×103-6×104Pa;2×104-5×104Pa;または1×104-9×104Pa;またはそれらの範囲の任意の組合せの粘性係数(G’’)を構成する、請求項1〜19のいずれかの組成物。
【請求項21】
組成物は、0.1-0.2;0.1-0.5;0.1-1.0;0.1-0.3;0.1-0.4;0.1-0.75;0.05-0.5;または0.05-2.0;またはこれらの範囲の任意の組合せのタン(δ)を構成する、請求項1〜20のいずれかの組成物。
【請求項22】
組成物中に存在するコラーゲンの50%またはそれよりも多く、60%またはそれよりも多く、70%またはそれよりも多く、80%またはそれよりも多くまたは90%またはそれよりも多くが、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、XII型コラーゲンからなる群より選ばれる、請求項1〜21のいずれかの組成物。
【請求項23】
組成物中に存在するグリコサミノグリカン類(GAGs)の50%またはそれよりも多く、60%またはそれよりも多く、70%またはそれよりも多く、80%またはそれよりも多くまたは90%またはそれよりも多くは、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン硫酸からなる群より選ばれる、請求項1〜22のいずれかの組成物。
【請求項24】
組成物は水に不溶である、請求項1の組成物。
【請求項25】
組成物は請求項1〜28のいずれかのステップを用いて調製される、請求項1の組成物。
【請求項26】
順次に、
a)固形脂肪を含む哺乳類組織を提供すること、
b)組織中の非脂肪性物質から脂肪を分離すること、および
c)脂肪を脱細胞化すること、または脂肪から脂質を抽出すること
を含む、処理された脂肪性組織(PAT)の調製方法。
【請求項27】
脂肪を脱細胞化すること、または脂肪から脂質を抽出することには、脂質および細胞の除去を促進し、処理された脂肪性組織を調製するために、緩衝剤を用いて脂肪を操作することが含まれる、請求項25の方法。
【請求項28】
緩衝剤には、リン酸緩衝塩類(PBS)が含まれる、請求項26の方法。
【請求項29】
脱細胞化を促進するための薬剤には、弱酸、弱有機酸、非イオン性洗浄剤、および胆汁酸からなる群より選ばれる薬剤を含む、請求項26または27の方法。
【請求項30】
脂肪を脱細胞化すること、または脂肪から脂質を抽出することには、脂肪を弱酸および非イオン性洗浄剤と接触させることを含む、請求項26または29の方法。
【請求項31】
脂肪を脱細胞化するか、または脂肪から脂質を抽出することには、過酢酸(PAA)、酢酸、ホウ酸、リン酸、および胆汁酸からなる群より選ばれる酸と脂肪を接触させることが含まれる、請求項26、29、または30のいずれかの方法。
【請求項32】
脂肪を脱細胞化するか、または脂肪から脂質を抽出することには、エトキシル化脂肪アルコールエーテル、ラウリルエーテル類、エトキシル化アルキルフェノール類、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール化合物類、修飾されたオキシエチル化直鎖アルコール類、オキシプロピル化直鎖アルコール類、ポリエチレングリコールモノオレアート化合物類、ポリソルベート化合物類、およびフェノール脂肪アルコールエーテル類からなる群より選ばれる非イオン洗浄剤と脂肪を接触させることが含まれる、請求項26、29または30の方法。
【請求項33】
非イオン洗浄剤は、トリトン(商標)〔Triton(R)〕X-100、トリトンX-114、プルロニックス(商標)〔Pluronics(R)〕、トゥイーン(商標)〔Tween(R)〕20、トゥイーン(商標)80、ポリオキシエチル化(20)ソルビタンモノラウラート、イコノル(商品名)〔IconolTM〕、ノニデット(商標)〔Nonidet(R)〕P 40(NP-40)、オクチルグルコシド、およびオクチルチオグルコシドからなる群より選ばれる、請求項32の方法。
【請求項34】
さらに、請求項1のステップ(b)または(c)からの脂肪を、脂のpHを生理的pHに調節するために緩衝剤と接触させる、請求項27〜33のいずれかの方法。
【請求項35】
脂肪を脱細胞化するか、または脂肪から脂質を抽出することには、脂肪を超臨界CO2と接触させることが含まれる、請求項26の方法。
【請求項36】
さらに、処理された脂肪性組織は粒子を形成することを含む、請求項26〜35のいずれかの方法。
【請求項37】
さらに、脱細胞化された脂肪を架橋剤と接触させることを含む、請求項26〜36のいずれかの方法。
【請求項38】
架橋剤は、カルボジイミド(EDC)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDC)、グルタルアルデヒド、プロアントシアニジン、リボース、トレオース、およびリジルオキシダーゼ、ポリエポキシエーテル類、ジビニルスルホン(DVS)、ゲニピン、ポリアルデヒドおよびジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ゲニピン、エポキシ化合物類、ジアルデヒドでんぷん、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジメチルスベルイミデート、カルボジイミド類、サクシニミジル類、ジイソシアナート類、およびアシルアジド;またはそれらの任意の組合せからなる群より選ばれる、請求項37の方法。
【請求項39】
さらに、処理された脂肪性組織をバイオポリマースキャフォールドと組み合わせることを含む、請求項26〜38のいずれかの方法。
【請求項40】
処理された脂肪性組織およびバイオポリマースキャフォールドをさらに、バイオポリマー架橋剤と組み合わせることを含む、請求項39の方法。
【請求項41】
脂肪性組織は、ヒト脂肪性組織およびブタ脂肪性組織からなる群より選ばれる、請求項26〜40のいずれかの方法。
【請求項42】
ステップ(c)の混合物はさらに架橋剤を含む、請求項39の方法。
【請求項43】
混合物はさらに重合剤を含む、請求項42の方法。
【請求項44】
さらに混合物を重合イニシエーターと接触させることを含む、請求項41〜43の方法。
【請求項45】
バイオ適合性ポリマーには、ヒアルロン酸、PEG-DA、コンドロイチン硫酸、部分的にか、または完全に加水分解されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体類〔ポロキサマー類およびメロキサポール類〕、ポロキサミン類、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキル化セルロース類、ポリペプチド類、多糖類または糖質類、フィコール(商標)〔Ficoll(R)〕ポリスクロース、デキストラン、ヘパラン硫酸、ヘパリン、アルギン酸、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、オボアルブミン、およびそれらの共重合体類またはブレンド類からなる群より選ばれるポリマーが含まれる、請求項41〜44のいずれかの方法。
【請求項46】
重合イニシエーターには、エオシンY、1-ビニル2-ピロリドンNVP、およびトリエタノールアミン;およびイルガキュア(Irgacure)D2959からなる群より選ばれる薬剤が含まれる、請求項45または46のいずれかの方法。
【請求項47】
重合イニシエーターには、光が含まれる、請求項45〜47のいずれかの方法。
【請求項48】
さらに、脂肪をヌクレアーゼと接触させることを含む、請求項26〜50のいずれかの方法。
【請求項49】
脂肪をステップ(c)後にヌクレアーゼと接触させる、請求項48の方法。
【請求項50】
さらに脂肪をプロテアーゼインヒビターと接触することを含む、請求項26〜49のいずれかの方法。
【請求項51】
さらに、脂肪を、麻酔剤、抗生物質、増殖因子類、低温保存剤、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャー、カスパーゼインヒビター、ビタミン、リポアスピレート、および細胞からなる群からの少なくとも1種の物質と接触させることを含む、請求項26〜50のいずれかの方法。
【請求項52】
脂肪をステップ(c)後に少なくとも物質上に接触させる、請求項51の方法。
【請求項53】
ステップ(c)の脂肪性組織は本質的に基底膜がない、請求項26〜52のいずれかの方法。
【請求項54】
固形脂肪性組織が生きたドナーまたは死体ドナーから提供される、請求項26〜53のいずれかの方法。
【請求項55】
請求項26〜54のいずれかの方法によって作成された組成物。
【請求項56】
製薬上の担体に請求項1〜25または55の組成物を含む、製薬上の組成物。
【請求項57】
対象体への組成物の注入を含む、請求項56の組成物の使用。
【請求項58】
請求項1〜25または55〜56のいずれかの組成物を作成するためのキット。
【請求項59】
いずれかの請求項1〜25または55〜56のいずれかの組成物の投与を含む、
キット。
【請求項60】
さらに、キットの使用のための指示書を含む、請求項58または59のキット。
【請求項61】
処理された脂肪性組織を、対象体に移入するにあたり、次の
a)処理された脂肪性組織の移入を必要としている対象体を識別すること、
b)処理された脂肪性組織の移入を必要としている対象体での部位を識別すること、および
c)処理された脂肪性組織を対象体に識別された部位で移入すること
を含む、方法。
【請求項62】
処理された組織が、いずれかの請求項1〜24のいずれかの方法によって作成されるか、またはいずれかの請求項1〜25の組成物である、請求項60の方法。
【請求項63】
方法はさらに、処理された脂肪性組織、細胞の浸入、または免疫反応の少なくとも1種について対象体を監視することを含む、請求項61または62の方法。
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2013−501586(P2013−501586A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524842(P2012−524842)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/045177
【国際公開番号】WO2011/019822
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(501335771)ザ ジョンズ ホプキンス ユニヴァーシティ (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/045177
【国際公開番号】WO2011/019822
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(501335771)ザ ジョンズ ホプキンス ユニヴァーシティ (5)
【Fターム(参考)】
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