処理取鍋
概ね筒状の耐熱取鍋内張を収容した取鍋殻を含み、水平姿勢と垂直姿勢との間で回転可能な処理取鍋であって、前記取鍋内張は、連続した側壁を間に有する第1端および第2端を有し、前記第1端、第2端および連続した側壁の間に内部空間が規定され、前記取鍋内張は、さらに、処理剤を保持するためのポケットであって、第1端に隣接して位置して内部空間と流体連通し、取鍋が水平姿勢にあるときに内部空間の底よりも頂に近く位置し、取鍋が垂直姿勢にあるときに内部空間の頂よりも底に近く位置するポケット、ならびに、溶融金属を受けるためおよび注ぐための注入排出部であって、取鍋が水平姿勢にあるときおよび垂直姿勢にあるときに、内部空間の底よりも頂に近く位置する注入排出部を含み、水平姿勢において、内部空間の頂と底との間の中間平面の下、かつ、第1端と第1端および第2端の中間の垂直平面との間に規定される内部空間の下部容積が、前記中間平面よりも上、かつ、第1端と前記垂直平面との間に規定される内部空間の上部容積よりも大きい取鍋。処理取鍋は、特に延性鉄の調製において、溶融金属を気化可能な添加剤で処理するために設計されている。本発明は、取鍋を使用して溶融金属を処理する方法にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属を気化可能な添加剤で処理するための取鍋に関し、特に、延性鉄を形成するために鉄をマグネシウム(Mg)で処理するための取鍋に関する。
【背景技術】
【0002】
球状黒鉛(s.g.)鉄またはノジュラー鉄としても知られる延性鉄は、液体鉄を、鋳造前に、いわゆるノジュラライザ(あるいはノジュライザ)で処理することによって、製造される。ノジュラライザは、分散した小塊の形態で黒鉛が沈降するのを促進する。実際には、ノジュラライザは普通、純粋なマグネシウムとして、または、マグネシウム−フェロシリコン(MgFeSi合金)もしくはニッケル−マグネシウム(NiMg合金)などの、希土類金属を含有してもよい合金として、マグネシウムを含む。一般的な処理では、約0.04%の残存マグネシウム含量となるようにマグネシウムが液体鉄に加えられ、鉄は接種されて鋳造される。マグネシウムを鉄に加えることは、マグネシウムが比較的低い温度(1090℃)で沸騰して、液体鉄の激しい撹拌と気体の形態でのマグネシウムの多量の損失が生じるので、困難である。
延性鉄を調製するための様々な方法が開発されており、次のものが含まれる。
【0003】
サンドイッチ取鍋−処理合金が、取鍋の底の凹部に収容され、鋼鉄くずで覆われる。取鍋は、たとえばタンディッシュ蓋で覆われてよい。次いで鉄が取鍋に注ぎ入れられ、処理合金との反応は鋼鉄くずバリヤによって減速される。この方法は、単純であり広く使用されているが、Mg回収率が一貫しない。さらに、必要な処理レベルを首尾よく達成するためには、より多くのノジュラライザを使用する必要がある。
【0004】
プランジャ−処理合金が、耐熱性のプランジャベルを用いて、取鍋に押し込まれる。この方法は、大量の金属について実用的なだけである。
【0005】
コンバータ−ノジュラライザが、円筒状取鍋の底部のポケットに配置される。取鍋は、水平配置の間に液体鉄で満たされ、封止されて、マグネシウムが鉄の下に沈むように、垂直姿勢へと回転される。
【0006】
コア入りワイヤ処理−ノジュラライザ(たとえば、MgFeSi合金)を収容したワイヤが、専用のステーションを用いて、機械的に鉄中に供給される。
【0007】
インモールド処理−ノジュラライザ(たとえば、MgFeSi合金)が、鉄が合金上を流れる間に連続的に処理されるような、動作システムに成形されたチャンバ内に配置される。
【発明の概要】
【0008】
本発明の1つの目的は、金属を気化可能な添加剤で処理するための取鍋の提供である。
本発明の他の目的は、溶融金属を気化可能な添加剤で処理するための方法を提供することである。
【0009】
本発明の第1の側面によれば、概して筒状の耐熱取鍋内張を収容した取鍋殻を含み、水平姿勢と垂直姿勢との間で回転可能な処理取鍋が提供され、前記取鍋内張は、連続した側壁を間に有する第1端および第2端を有し、前記第1端、第2端および連続した側壁の間に内部空間が規定され、前記取鍋内張は、さらに、処理剤を保持するためのポケットであって、第1端に隣接して位置して内部空間と流体連通し、取鍋が水平姿勢にあるときに内部空間の底よりも頂に近く位置し、取鍋が垂直姿勢にあるときに内部空間の頂よりも底に近く位置するポケット、ならびに、溶融金属を受けるためおよび注ぐための注入排出部であって、取鍋が水平姿勢にあるときおよび垂直姿勢にあるときに、内部空間の底よりも頂に近く位置する注入排出部を含み、
水平姿勢において、内部空間の頂と底との間の中間平面の下、かつ、第1端と第1端および第2端の中間の垂直平面との間に規定される内部空間の下部容積が、前記中間平面よりも上、かつ、第1端と前記垂直平面との間に規定される内部空間の上部容積よりも大きい。
【0010】
上記より、垂直姿勢においては、取鍋内張の第1端が内部空間の最下部を構成することが、理解されるであろう。
【0011】
使用に際しては、処理剤がポケットに配置され、取鍋は、水平姿勢にある間に、溶融金属で満たされる。通常、取鍋は、溶融金属が前記中間平面に対応する高さまで満たされるように、半分満たされる。取鍋は、次いで、処理剤を含んでいるポケットに金属が流れ込むように、垂直姿勢へと90゜回転させられる。処理剤は、溶融金属と接触して気化し、泡立ってポケットの上方の金属のヘッドを通る。取鍋は、次いで、処理された溶融金属が注入排出部を通って排出されるように、再び回転させられる。特定の実施形態において、取鍋は、水平姿勢から90゜を超えて回転させられ、垂直姿勢を経て、処理された溶融金属が排出される第3の姿勢(排出姿勢)に至る。
【0012】
本発明の取鍋は、取鍋が水平姿勢にあるときに空気に曝される金属の表面積を最小にするので、有用である。表面積の低減は、金属からの熱損失の減少に結びつく。熱損失が減少すると、金属はより低い温度で取鍋に注ぎ入れてよくなり、これによって、耐熱内張および他の鋳造装置の損耗が低減される。取鍋に注ぎ入れる温度の低下は、マグネシウム蒸気の膨脹を下げるためにも有利に働き、これは、(マグネシウムと熱金属との)反応の激しさを低下させる。これは、より多くのマグネシウム蒸気が液体鉄中に効率よく保持されるので、マグネシウムの回収を向上させ、また、反応の激しさが低いということは、金属とより冷たい大気との接触が少なくなることなので、処理後の熱損失を低減すると考えられる。
【0013】
本発明の取鍋のもう1つの利点は、取鍋が垂直姿勢にあるときの、処理剤の上方の金属のヘッドを最大とすることである。金属のヘッドの増大は、金属と処理剤との反応の激しさの低下に結びつき、マグネシウム含有処理剤の場合には、マグネシウムの回収が向上し、より一貫することに結びつく。
【0014】
本発明の利点は、取鍋内張の形状によって、特に、取鍋が満たされるとき(水平姿勢)および金属が処理されるとき(垂直姿勢)に、溶融金属と接触する取鍋内張の部分の形状によって、得られることが理解されよう。垂直平面(取鍋が水平姿勢にあるときの第1端と第2端との中間)は、取鍋内張の形状を評価するために選択される。垂直平面は、取鍋内張の一般的な断面を表すように選択されるべきである。取鍋内張が、連続した側壁の断面がその全長にわたって一貫しているような、規則的な形状を有する場合、垂直平面は、第1端と第2端との間のどの点に選んでもよい。便宜的に、垂直平面は、取鍋が水平姿勢にあるときの内張の第1端と第2端とから等距離である。
【0015】
特定の実施形態において、ポケットは、取鍋内張の第1端から延びて内部空間から離れる(つまり、取鍋が垂直姿勢にあるときに第1端の下方に延びる)。これは、取鍋が垂直姿勢にあるときに、溶融金属がポケットを満たし得るので、処理剤の上の金属のヘッドに更なる増大をもたらす。上述のように、金属のヘッドの増大は、金属と処理剤との反応の激しさの低下に結びつき、マグネシウム含有処理剤の場合には、マグネシウムの回収が向上しより一貫することになる。ポケットが第1端から延びる実施形態において、ポケットの長さは50〜1200mm、200〜1000mm、または400〜600mmでよい。
【0016】
代替の実施形態において、ポケットは、内部空間内に位置する。どの場合も、ポケットは、内部空間に流体連通しているか、金属との接触で内部空間に流体連通し得るかの、どちらかでなければならない。たとえば、ポケットは、処理剤を保持するために充分に小さいながら、なおかつ溶融金属の通過を可能にする開口を有するメッシュまたは格子によって規定されてよく、あるいは、融けることによってポケットの内容物へのアクセスをもたらす材料(金属など)で作製されてよい。ポケットの容積は内部空間の容積に比べて一般に小さい、と理解されよう。ポケットの形状は特に限定されないが、便宜的には、ポケットは、処理剤の保持を確実にするために長くされる。ポケットは円状または三角形状の断面を有してよい。
【0017】
上部容積に対する下部容積の比は、少なくとも1.5:1、少なくとも2:1、または少なくとも3:1でよい。
【0018】
取鍋が水平姿勢にあるときの内部空間の高さ(連続した側壁の内部によって規定される、内部空間の頂と底との間の距離)は、200mm〜1500mm、400mm〜1000mm、または600mm〜800mmでよい。
【0019】
取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さ(内部空間の頂と底との間の距離)は、400mm〜3000mm、800mm〜2000mm、または1000mm〜1500mmでよい。
【0020】
取鍋が水平姿勢にあるときの内部空間の高さに対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比は、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1、または少なくとも5:1でよい。取鍋が水平姿勢にあるときの内部空間の高さに対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比は、6:1以下、4:1以下、または3:1以下でよい。
【0021】
ポケットが、第1端から延びて内部空間から離れる実施形態において、ポケットの長さに対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比は、少なくとも1.5:1、少なくとも2:1、少なくとも2.5:1、または少なくとも3:1でよい。
【0022】
連続した側壁は、形状が同じでも異なっていてもよい内表面および外表面を有する。便宜的に、連続した側壁は均一な厚さを有し、内表面と外表面とは同じ形状を有する。内部空間の形状を規定するのは連続した側壁の内表面であり、したがって、連続した側壁の断面についての言及は、連続した側壁の内表面の断面への言及であることが、理解されよう。
【0023】
連続した側壁は、連続した側壁の断面が実質的に多角形になるように、3つ以上の壁部によって規定されてよい。連続した側壁が、3つの壁部によって規定される実施形態において、連続した側壁の断面は実質的に三角形である。連続した側壁が、長さの等しい3つの壁部によって規定される実施形態においては、連続した側壁の断面は正三角形の形状を有する。断面が多角形に基づくどの実施形態においても、角は丸められ/丸くされてよく、および/または、辺は外方に曲げられてよい。便宜的に、側壁の断面は、第1端と第2端との中間の垂直平面において測定される。
【0024】
連続した側壁の断面が実質的に三角形になるように、連続した側壁が3つの壁部によって規定される実施形態において、側壁部の長さに対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比は、少なくとも1:1、 少なくとも1.5:1、または少なくとも2:1でよい。
【0025】
連続した側壁の断面が実質的に三角形になるように、連続した側壁が3つの壁部によって規定される実施形態において、三角形の断面は、内接円、つまり、その三角形に含まれ得る最大の円、を規定する。この場合、三角形の断面に内接する円の半径に対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比は、少なくとも1.5:1、少なくとも2:1、少なくとも2.5:1、または少なくとも3:1でよい。
【0026】
取鍋は、初めは溶融金属を受けて、後に処理後の溶融金属を排出するための、注入排出部を含む。これは、金属を取鍋から鋳型に直接注ぐことができ、再度すくう処理を要することがないので、特に有益である。これは、温度損失の低減、および、鋳造処理における1工程を排除することによる鋳造生産性の向上という、二重の便益を有する。
【0027】
好適な耐熱材料には、EP0675862B1に記載されているものが含まれ、特に、シリカ、アルミナおよびマグネサイトから製造され、フェノール樹脂などの有機材料で結合される耐熱内張である、KALTEK(登録商標)が含まれる。特定の実施形態において、連続した側壁は一体構造である。
【0028】
取鍋を回転させるために、取鍋はクレーンもしくはフォークリフトまたは他の機械に搭載されてよい。
【0029】
取鍋殻は、従来の円筒状殻または取鍋内張の形状に適合された変更殻でよい。従来の円筒状殻を採用する場合、連続した側壁の内表面および外表面が異なる形状を有することが必要であり、つまり、耐熱内張は均一な厚さを有さなくなる。非円筒状殻を採用する場合、連続した側壁の内表面および外表面は同じ形状を有し得る。たとえば、取鍋内張が三角形の断面を有する側壁を含む場合、殻もまた三角形の断面を有してよく、つまり、三角プリズムであってよい。
【0030】
特定の実施形態において、取鍋殻および取鍋内張は、実質的に同じ形状を有する。これは、使用する耐熱材料の量を最少にすることができるという利点を有する。これに代えて、取鍋は従来の円筒状の取鍋殻を含んでもよい。これは、従来の円筒状殻を再使用するときに便利である。取鍋内張の効率は、殻内に取鍋内張を適合させるために必要な追加の耐熱材料の費用を、少なくとも部分的に埋め合わせるであろう。
【0031】
本発明の第2の側面によれば、処理剤をポケットに配置することによって第1の側面の取鍋を装填し、取鍋が水平姿勢にある間に、ポケットの下方の高さまで溶融金属を取鍋に充填し、溶融金属がポケット内の処理剤に流れるように取鍋を垂直姿勢へと回転させることを含む、溶融金属を処理するための方法が提供される。
【0032】
特定の実施形態において、この方法は、取鍋を水平姿勢から90゜を超えて回転させて、垂直姿勢を経て、処理後に溶融金属が注入排出部から排出される排出姿勢に至らせることを含む。更なる実施形態において、この方法は、取鍋を水平姿勢から約180゜回転させて、垂直姿勢を経て、処理された金属が排出される排出姿勢に至らせることを含む。
【0033】
特定の実施形態において、取鍋は、水平姿勢にあるときに、内部空間の頂と底との中間の平面に対応する高さまで満たされる。
【0034】
本発明の方法は、処理剤がノジュラライザであり溶融金属が鉄である、延性鉄の調製に特に適している。
【0035】
一実施形態において、処理剤はマグネシウム含有ノジュラライザである。好適なノジュラライザには、純粋なマグネシウム、マグネシウム−フェロシリコン合金(MgFeSi合金)、ニッケル−マグネシウム合金およびマグネシウム−鉄ブリケットが含まれる。
【0036】
本発明の取鍋および方法は、延性(球状黒鉛)鉄およびバーミキュラ(コンパクト黒鉛)鉄の双方の生産に使用してよい。
【0037】
本発明の方法は、処理剤(たとえば、ノジュラライザ)との反応後の溶融金属の接種を含んでもよい。接種剤は、共晶黒鉛核生成を誘発するために、少量加えられる合金である。好適な接種剤には、フェロシリコンおよびカルシウムシリサイドに基づくものが含まれる。
【0038】
本発明の方法は、処理剤との反応に先立つ溶融金属の初期化を含んでよい。初期化剤は、溶融金属の酸素活性を不活性化して、後続の処理がよりうまくいくようにすると考えられる。好適な初期化剤には、国際公開第WO2008/012492号に開示されているものが含まれる。
以下、添付の図面を参照しながら、例示のみの目的で本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1A】本発明の実施形態に従う取鍋の斜視図である。
【図1B】図1Aに示す取鍋の組み立て時における斜視図である。
【図1C】図1Aに示す取鍋の組み立て時における断面図である。
【図1D】図1Aに示す取鍋の組み立てにおいて使用される成形具の断面図である。
【図1E】図1Aに示す取鍋の組み立てにおいて使用される成形具の断面図である。
【図1F】図1Aに示す取鍋の断面図である。
【図2A】図1Aに示す取鍋の概略図である。
【図2B】図1Aに示す取鍋の概略図である。
【図3A】本発明の実施形態に従う取鍋を示す図である。
【図3B】本発明の実施形態に従う取鍋を示す図である。
【図3C】本発明の実施形態に従う取鍋を示す図である。
【図4A】比較のための従来の取鍋を示す図である。
【図4B】比較のための従来の取鍋を示す図である。
【図5A】MAGMASOFT(登録商標)ソフトウェアを使用したシミュレーションを示す図である。
【図5B】MAGMASOFT(登録商標)ソフトウェアを使用したシミュレーションを示す図である。
【図5C】MAGMASOFT(登録商標)ソフトウェアを使用したシミュレーションを示す図である。
【図5D】MAGMASOFT(登録商標)ソフトウェアを使用したシミュレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1Aは、本発明の実施形態に従う取鍋10を示す。取鍋10は、概ね筒状の鋼鉄殻12、および、殻12内の概して筒状の耐熱内張14(部分的に見える)を含む。取鍋10は、上端に開口16を有し、下端に突部18を有する。殻12の形状は、耐熱内張14の外形と相補的であり、突部18が、処理剤を保持するためのポケット(見えない)の形状に対応する。取鍋はまた、閉じることが可能な蓋20を含み、その内面は、耐熱内張14の第2端を規定する。殻12および耐熱内張14は、上端に向って広がり、開口16に隣接して注入排出部17を形成する。取鍋10は、その垂直姿勢にて示されており、注入排出部が、取鍋の頂に位置し、ポケットが取鍋の底に位置している。この配置では、処理剤は、開口16を介して、ポケット内に容易に装填することができる。
【0041】
取鍋10は、図1Bおよび図1Cに示すように、2つの部分から成る。取鍋の本体10aは、殻12内に成形具22aを配置し、殻12と成形具22aとの間隙を耐熱材料(KALTEK(登録商標))で満たすことによって、作製されている。耐熱材料が硬化すると、成形具22aは除去される。同様に、取鍋の突出部10bは、突部18に対応する殻の中に別の成形具22bを配置し、成形具22bと突部18との間隙を耐熱材料で満たすことによって、作製されている。成形具22a,22bの外面が、耐熱取鍋内張14の内部の形状に対応することが理解されよう。2つの部分10a,10bは、次いで、相互に取り付けられる。
【0042】
図1Cは、成形具22a,22bが除去される前の、蓋20のない取鍋10の断面を示す。耐熱内張14は、連続した側壁24、および下端(第1端)26を有し、蓋20が取り付けられていないので、取鍋は上端が全体的に開放されている。連続した側壁の最上部は、蓋20が取り付けられる部分(第2端28)を規定する。取鍋内張14は、処理剤を保持するためのポケット30を含む。ポケット30は、第1端から離れるように延びる。これは、処理剤の上方に金属のより大きなヘッドが生じるという利点を提供する。ポケット30の壁は連続した側壁24よりも厚いことに、注目すべきである。より厚い壁は、処理剤の気化に追加の断熱を提供する。
【0043】
取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さを、xとする。取鍋が回転されて水平姿勢にあるときの内部空間の高さを、yとする。ポケットの深さを、zとする。本実施形態においては、x,yおよびzのおおよその値は、それぞれ1380mm、640mm、および480mmである。したがって、x:yの比は約2.2:1であり、x:zの比は約2.9:1である。
【0044】
図1Dは成形具22aの断面を示す。成形具22aの外面は、連続した側壁24の内表面を規定し、したがって、内部空間の断面を規定する。成形具22aの断面は、頂点が丸められ辺が外方に曲げられた、正三角形に基づいている。
【0045】
図1Eは、成形具22bの断面を示す。成形具22bの外面は、ポケット30の壁を規定する。本実施形態においては、成形具22bの断面は、成形具22aの断面(破線で示す)に関連している。成形具22bの断面も、おおよそ三角形である。ポケット30が別の断面、たとえば円状の断面、を有してもよいことが理解されよう。ただし、三角形の断面は、取鍋が垂直姿勢から水平姿勢に回転されるときに、ポケット30内に処理剤を保持するのを支援するので、三角形の断面が有利であると考えられる。
【0046】
図1Fは、殻12および連続した耐熱側壁24を含む、取鍋の本体10aの断面を示す。側壁24は、各頂点が側壁24に接する正三角形(破線で示す)に基づいている。本実施形態においては、三角形の各辺の長さは約740mmであり、側壁部の長さに対する、取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さ(図1Cにおいて符号xで示す)の比は、約1.8:1である。三角形は、内接円(これも破線で示す)を含む。本実施形態においては、内接円は約427mmの直径を有しており、この円の直径の長さに対する、取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さ(図1Cにおいて符号xで示す)の比は、約3.2:1である。
【0047】
図1A〜図1Fに示した取鍋の比率は、良好な熱保持と効率的な処理とを組み合わせており、処理剤による金属の処理に特に有益であると考えられる。
【0048】
図2Aおよび図2Bは、図1Aに示す取鍋10の水平姿勢おける概略図である。取鍋10は、前述のように、第1端26、第2端28、および連続した側壁24を含んでいる。この水平配置では、側壁の上部が内部空間の頂40を規定し、側壁の下部が内部空間の底42を規定する。第1端と第2端との中間の垂直平面44が示されている。この垂直平面は、第2端28よりも第1端26に近く選択されている。ここが、連続した側壁24が規則的な形状を有する位置に、相当するからである。内部空間の頂40と底42との中間の水平平面46が示されている。内部空間の底42、第1端26、中間平面46、および垂直平面44の間に規定される内部空間の容積(下部容積)を、符号Iで示す。内部空間の頂40、第1端26、中間平面46、および垂直平面44の間に規定される内部空間の容積(上部容積)を、符号IIで示す。図2Aを見ると、容積Iおよび容積IIは等しいように見受けられるが、図2Bから明らかなように、連続した側壁24の断面の形状のため、容積Iは容積IIよりも大きい。
【0049】
本発明の実施形態に従う取鍋の三角プリズム形状は、円筒状の取鍋と比べて、水平姿勢にあるときの金属からの熱損失、および、垂直姿勢(第2姿勢)にあるときの処理剤上方の金属のヘッドの増加の点で、有利である。図2Bの概略図から明らかなように、取鍋が半分まで充填された場合、空気に曝される金属は、対照の円筒状取鍋よりも少なくなるであろう。同様に、取鍋が水平姿勢から垂直姿勢へと回転されると、金属の高さは、対照の円筒状取鍋よりも大きくなるであろう。
【0050】
実施例1および比較例1:シミュレーション
本発明の実施形態に従う取鍋(実施例1)についての熱損失の速度を公正に評価するために、本発明者らは、2つの取鍋、実施例1(本発明の実施形態に従う)および比較用の取鍋(比較例1)を設計して、MAGMASOFTシミュレーションツールを用いてシミュレーションを行った。MAGMASOFTは、MAGMA Giessereitechnologie GmbHによって提供される、モールド充填および鋳造物の固化をモデル化する主要なシミュレーションツールである。これは、高価で時間を要する鋳造試験を回避するために、鋳造所で一般に使用されている。
【0051】
実施例1の取鍋を図3Aに示し(垂直姿勢)、また、図3Bおよび図3Cに示す(水平姿勢)。内部空間は、実質的に三角形の断面を有する。比較例1を図4Aに示し(垂直姿勢)、また、図4Bおよび図4Cに示す(水平姿勢)。内部空間は、円形の断面を有する。
【0052】
各図において、取鍋が作業容量まで満たされたときの溶融金属の高さを表すために、点線を示す。2つの取鍋の特徴の比較を次の表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
これより判るように、両取鍋は同量の金属を保持するが、異なる形状のため、異なる高さまで満たされる。水平姿勢においては、金属はどちらの場合も同程度の高さまで満たされるが、取鍋が回転されて垂直姿勢になったときは、金属の高さは、比較例1におけるよりも、実施例1においてはるかに大きい。気化可能な処理剤の上方の金属がより高いことは、気化した処理剤がより多くの金属内を移動しなければならず、それ故、溶融金属内により留まり易く、より良好な回収率を招く、ことを意味する。
【0055】
さらに、(空気または取鍋の壁に接する)金属の総表面積および(空気に接する)金属の上表面積は、比較例1におけるよりも、実施例1において小さい。これは、幾何学的係数が、比較例1よりも実施例1において大きいことに対応する。したがって、実施例1の取鍋内の溶融金属は、比較例1の取鍋内の溶融金属よりも、ゆっくりと冷えるであろう。
【0056】
シミュレーションにおいて、取鍋は、溶融鋼を収容し、KALTEK(登録商標)のものと同じ断熱特性を有する耐熱内張を有するものとして、モデル化した。モデルは、金属の上方の境界物質を空気とみなした。シミュレーションは、耐熱内張についての2つの異なる初期温度(1400℃および1580℃)で行った。240秒後の結果を図5A〜図5Dに示す。これらのシミュレーション出力は、金属の陰つき等温線図であり、陰の暗さは液体金属の温度に逆比例し、つまり、陰が暗いほど金属は冷たく、実際の値はシミュレーションにおける温度キーによって表されている。
【0057】
図5Aおよび図5Bは、それぞれ実施例1および比較例1について、耐熱内張が1400℃の初期温度を有するときの、金属の表面温度を示している。金属の表面温度は、両取鍋が同量の金属を収容しており、同じ初期温度を有しているにもかかわらず、比較例におけるよりも本発明の取鍋において高い。これは、金属の暗い等温線(陰)の割合が、図5Aにおけるよりも図5Bにおいて高いことで、示されている。陰が暗いほど、金属は冷たいからである。
【0058】
図5Cおよび図5Dは、それぞれ実施例1および比較例1について、耐熱内張が1580℃の初期温度を有するときの、金属の表面温度を示している。この場合も、図5Dに比べて図5Cにおいて陰が薄いことで示されているように、金属の表面温度は、比較例におけるよりも本発明の取鍋において高い。これは、本発明の取鍋が、金属がより高い温度をより長時間にわたって維持することを、可能にすることを表している。
【0059】
実施例2および比較例2−延性鉄の調製
本発明の実施形態に従う取鍋(実施例2)および標準的タンディッシュ取鍋(比較例2)を用いて、延性鉄を調製した。どちらの場合も、溶融鉄をマグネシウム−フェロシリコン合金(MgFeSi)で処理した。4分および9/10分後のマグネシウムの回収を測定した。マグネシウムの回収は、次式に従って算出した:
Mg回収%=(0.76×(ベース金属中S%−残存S%)+残存Mg%)
×100/追加Mg%
【0060】
実施例2
図1Aに示す取鍋10を、ポケット18を最下点となる垂直姿勢に配置した。次いで、20.8kgのマグネシウム−フェロシリコン合金(5.38%Mg)を、開口に配置した長首じょうごを用いて、ポケット内に装填した。処理剤を装填した後、取鍋を90゜回転させて水平姿勢にした。その後、取鍋を1480℃の温度の1600kgの溶融鉄で満たした。次いで、溶融鉄がポケットに流れ込むように、取鍋を回転させて垂直姿勢に戻した。溶融鉄がマグネシウム合金と反応するのに伴い、白いフレアが観察された。取鍋を傾けて注入排出部17から注ぎ出すことによって、金属を取鍋から注ぎ出した。結果を下記の表2に示す。
【0061】
比較例2
14.4kgのマグネシウム−フェロシリコン合金(5.38%Mg)を、標準的タンディッシュ取鍋の凹部内に配置し、1500℃の温度の800kgの溶融鉄(標準的技法)を取鍋に注ぎ入れた。結果を次の表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
マグネシウムの回収は、比較例2におけるよりも実施例2においてかなり高い。したがって、本発明の実施形態に従う取鍋は、照準的タンディッシュ取鍋よりも良好な回収率を提供するように見える。
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属を気化可能な添加剤で処理するための取鍋に関し、特に、延性鉄を形成するために鉄をマグネシウム(Mg)で処理するための取鍋に関する。
【背景技術】
【0002】
球状黒鉛(s.g.)鉄またはノジュラー鉄としても知られる延性鉄は、液体鉄を、鋳造前に、いわゆるノジュラライザ(あるいはノジュライザ)で処理することによって、製造される。ノジュラライザは、分散した小塊の形態で黒鉛が沈降するのを促進する。実際には、ノジュラライザは普通、純粋なマグネシウムとして、または、マグネシウム−フェロシリコン(MgFeSi合金)もしくはニッケル−マグネシウム(NiMg合金)などの、希土類金属を含有してもよい合金として、マグネシウムを含む。一般的な処理では、約0.04%の残存マグネシウム含量となるようにマグネシウムが液体鉄に加えられ、鉄は接種されて鋳造される。マグネシウムを鉄に加えることは、マグネシウムが比較的低い温度(1090℃)で沸騰して、液体鉄の激しい撹拌と気体の形態でのマグネシウムの多量の損失が生じるので、困難である。
延性鉄を調製するための様々な方法が開発されており、次のものが含まれる。
【0003】
サンドイッチ取鍋−処理合金が、取鍋の底の凹部に収容され、鋼鉄くずで覆われる。取鍋は、たとえばタンディッシュ蓋で覆われてよい。次いで鉄が取鍋に注ぎ入れられ、処理合金との反応は鋼鉄くずバリヤによって減速される。この方法は、単純であり広く使用されているが、Mg回収率が一貫しない。さらに、必要な処理レベルを首尾よく達成するためには、より多くのノジュラライザを使用する必要がある。
【0004】
プランジャ−処理合金が、耐熱性のプランジャベルを用いて、取鍋に押し込まれる。この方法は、大量の金属について実用的なだけである。
【0005】
コンバータ−ノジュラライザが、円筒状取鍋の底部のポケットに配置される。取鍋は、水平配置の間に液体鉄で満たされ、封止されて、マグネシウムが鉄の下に沈むように、垂直姿勢へと回転される。
【0006】
コア入りワイヤ処理−ノジュラライザ(たとえば、MgFeSi合金)を収容したワイヤが、専用のステーションを用いて、機械的に鉄中に供給される。
【0007】
インモールド処理−ノジュラライザ(たとえば、MgFeSi合金)が、鉄が合金上を流れる間に連続的に処理されるような、動作システムに成形されたチャンバ内に配置される。
【発明の概要】
【0008】
本発明の1つの目的は、金属を気化可能な添加剤で処理するための取鍋の提供である。
本発明の他の目的は、溶融金属を気化可能な添加剤で処理するための方法を提供することである。
【0009】
本発明の第1の側面によれば、概して筒状の耐熱取鍋内張を収容した取鍋殻を含み、水平姿勢と垂直姿勢との間で回転可能な処理取鍋が提供され、前記取鍋内張は、連続した側壁を間に有する第1端および第2端を有し、前記第1端、第2端および連続した側壁の間に内部空間が規定され、前記取鍋内張は、さらに、処理剤を保持するためのポケットであって、第1端に隣接して位置して内部空間と流体連通し、取鍋が水平姿勢にあるときに内部空間の底よりも頂に近く位置し、取鍋が垂直姿勢にあるときに内部空間の頂よりも底に近く位置するポケット、ならびに、溶融金属を受けるためおよび注ぐための注入排出部であって、取鍋が水平姿勢にあるときおよび垂直姿勢にあるときに、内部空間の底よりも頂に近く位置する注入排出部を含み、
水平姿勢において、内部空間の頂と底との間の中間平面の下、かつ、第1端と第1端および第2端の中間の垂直平面との間に規定される内部空間の下部容積が、前記中間平面よりも上、かつ、第1端と前記垂直平面との間に規定される内部空間の上部容積よりも大きい。
【0010】
上記より、垂直姿勢においては、取鍋内張の第1端が内部空間の最下部を構成することが、理解されるであろう。
【0011】
使用に際しては、処理剤がポケットに配置され、取鍋は、水平姿勢にある間に、溶融金属で満たされる。通常、取鍋は、溶融金属が前記中間平面に対応する高さまで満たされるように、半分満たされる。取鍋は、次いで、処理剤を含んでいるポケットに金属が流れ込むように、垂直姿勢へと90゜回転させられる。処理剤は、溶融金属と接触して気化し、泡立ってポケットの上方の金属のヘッドを通る。取鍋は、次いで、処理された溶融金属が注入排出部を通って排出されるように、再び回転させられる。特定の実施形態において、取鍋は、水平姿勢から90゜を超えて回転させられ、垂直姿勢を経て、処理された溶融金属が排出される第3の姿勢(排出姿勢)に至る。
【0012】
本発明の取鍋は、取鍋が水平姿勢にあるときに空気に曝される金属の表面積を最小にするので、有用である。表面積の低減は、金属からの熱損失の減少に結びつく。熱損失が減少すると、金属はより低い温度で取鍋に注ぎ入れてよくなり、これによって、耐熱内張および他の鋳造装置の損耗が低減される。取鍋に注ぎ入れる温度の低下は、マグネシウム蒸気の膨脹を下げるためにも有利に働き、これは、(マグネシウムと熱金属との)反応の激しさを低下させる。これは、より多くのマグネシウム蒸気が液体鉄中に効率よく保持されるので、マグネシウムの回収を向上させ、また、反応の激しさが低いということは、金属とより冷たい大気との接触が少なくなることなので、処理後の熱損失を低減すると考えられる。
【0013】
本発明の取鍋のもう1つの利点は、取鍋が垂直姿勢にあるときの、処理剤の上方の金属のヘッドを最大とすることである。金属のヘッドの増大は、金属と処理剤との反応の激しさの低下に結びつき、マグネシウム含有処理剤の場合には、マグネシウムの回収が向上し、より一貫することに結びつく。
【0014】
本発明の利点は、取鍋内張の形状によって、特に、取鍋が満たされるとき(水平姿勢)および金属が処理されるとき(垂直姿勢)に、溶融金属と接触する取鍋内張の部分の形状によって、得られることが理解されよう。垂直平面(取鍋が水平姿勢にあるときの第1端と第2端との中間)は、取鍋内張の形状を評価するために選択される。垂直平面は、取鍋内張の一般的な断面を表すように選択されるべきである。取鍋内張が、連続した側壁の断面がその全長にわたって一貫しているような、規則的な形状を有する場合、垂直平面は、第1端と第2端との間のどの点に選んでもよい。便宜的に、垂直平面は、取鍋が水平姿勢にあるときの内張の第1端と第2端とから等距離である。
【0015】
特定の実施形態において、ポケットは、取鍋内張の第1端から延びて内部空間から離れる(つまり、取鍋が垂直姿勢にあるときに第1端の下方に延びる)。これは、取鍋が垂直姿勢にあるときに、溶融金属がポケットを満たし得るので、処理剤の上の金属のヘッドに更なる増大をもたらす。上述のように、金属のヘッドの増大は、金属と処理剤との反応の激しさの低下に結びつき、マグネシウム含有処理剤の場合には、マグネシウムの回収が向上しより一貫することになる。ポケットが第1端から延びる実施形態において、ポケットの長さは50〜1200mm、200〜1000mm、または400〜600mmでよい。
【0016】
代替の実施形態において、ポケットは、内部空間内に位置する。どの場合も、ポケットは、内部空間に流体連通しているか、金属との接触で内部空間に流体連通し得るかの、どちらかでなければならない。たとえば、ポケットは、処理剤を保持するために充分に小さいながら、なおかつ溶融金属の通過を可能にする開口を有するメッシュまたは格子によって規定されてよく、あるいは、融けることによってポケットの内容物へのアクセスをもたらす材料(金属など)で作製されてよい。ポケットの容積は内部空間の容積に比べて一般に小さい、と理解されよう。ポケットの形状は特に限定されないが、便宜的には、ポケットは、処理剤の保持を確実にするために長くされる。ポケットは円状または三角形状の断面を有してよい。
【0017】
上部容積に対する下部容積の比は、少なくとも1.5:1、少なくとも2:1、または少なくとも3:1でよい。
【0018】
取鍋が水平姿勢にあるときの内部空間の高さ(連続した側壁の内部によって規定される、内部空間の頂と底との間の距離)は、200mm〜1500mm、400mm〜1000mm、または600mm〜800mmでよい。
【0019】
取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さ(内部空間の頂と底との間の距離)は、400mm〜3000mm、800mm〜2000mm、または1000mm〜1500mmでよい。
【0020】
取鍋が水平姿勢にあるときの内部空間の高さに対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比は、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1、または少なくとも5:1でよい。取鍋が水平姿勢にあるときの内部空間の高さに対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比は、6:1以下、4:1以下、または3:1以下でよい。
【0021】
ポケットが、第1端から延びて内部空間から離れる実施形態において、ポケットの長さに対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比は、少なくとも1.5:1、少なくとも2:1、少なくとも2.5:1、または少なくとも3:1でよい。
【0022】
連続した側壁は、形状が同じでも異なっていてもよい内表面および外表面を有する。便宜的に、連続した側壁は均一な厚さを有し、内表面と外表面とは同じ形状を有する。内部空間の形状を規定するのは連続した側壁の内表面であり、したがって、連続した側壁の断面についての言及は、連続した側壁の内表面の断面への言及であることが、理解されよう。
【0023】
連続した側壁は、連続した側壁の断面が実質的に多角形になるように、3つ以上の壁部によって規定されてよい。連続した側壁が、3つの壁部によって規定される実施形態において、連続した側壁の断面は実質的に三角形である。連続した側壁が、長さの等しい3つの壁部によって規定される実施形態においては、連続した側壁の断面は正三角形の形状を有する。断面が多角形に基づくどの実施形態においても、角は丸められ/丸くされてよく、および/または、辺は外方に曲げられてよい。便宜的に、側壁の断面は、第1端と第2端との中間の垂直平面において測定される。
【0024】
連続した側壁の断面が実質的に三角形になるように、連続した側壁が3つの壁部によって規定される実施形態において、側壁部の長さに対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比は、少なくとも1:1、 少なくとも1.5:1、または少なくとも2:1でよい。
【0025】
連続した側壁の断面が実質的に三角形になるように、連続した側壁が3つの壁部によって規定される実施形態において、三角形の断面は、内接円、つまり、その三角形に含まれ得る最大の円、を規定する。この場合、三角形の断面に内接する円の半径に対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比は、少なくとも1.5:1、少なくとも2:1、少なくとも2.5:1、または少なくとも3:1でよい。
【0026】
取鍋は、初めは溶融金属を受けて、後に処理後の溶融金属を排出するための、注入排出部を含む。これは、金属を取鍋から鋳型に直接注ぐことができ、再度すくう処理を要することがないので、特に有益である。これは、温度損失の低減、および、鋳造処理における1工程を排除することによる鋳造生産性の向上という、二重の便益を有する。
【0027】
好適な耐熱材料には、EP0675862B1に記載されているものが含まれ、特に、シリカ、アルミナおよびマグネサイトから製造され、フェノール樹脂などの有機材料で結合される耐熱内張である、KALTEK(登録商標)が含まれる。特定の実施形態において、連続した側壁は一体構造である。
【0028】
取鍋を回転させるために、取鍋はクレーンもしくはフォークリフトまたは他の機械に搭載されてよい。
【0029】
取鍋殻は、従来の円筒状殻または取鍋内張の形状に適合された変更殻でよい。従来の円筒状殻を採用する場合、連続した側壁の内表面および外表面が異なる形状を有することが必要であり、つまり、耐熱内張は均一な厚さを有さなくなる。非円筒状殻を採用する場合、連続した側壁の内表面および外表面は同じ形状を有し得る。たとえば、取鍋内張が三角形の断面を有する側壁を含む場合、殻もまた三角形の断面を有してよく、つまり、三角プリズムであってよい。
【0030】
特定の実施形態において、取鍋殻および取鍋内張は、実質的に同じ形状を有する。これは、使用する耐熱材料の量を最少にすることができるという利点を有する。これに代えて、取鍋は従来の円筒状の取鍋殻を含んでもよい。これは、従来の円筒状殻を再使用するときに便利である。取鍋内張の効率は、殻内に取鍋内張を適合させるために必要な追加の耐熱材料の費用を、少なくとも部分的に埋め合わせるであろう。
【0031】
本発明の第2の側面によれば、処理剤をポケットに配置することによって第1の側面の取鍋を装填し、取鍋が水平姿勢にある間に、ポケットの下方の高さまで溶融金属を取鍋に充填し、溶融金属がポケット内の処理剤に流れるように取鍋を垂直姿勢へと回転させることを含む、溶融金属を処理するための方法が提供される。
【0032】
特定の実施形態において、この方法は、取鍋を水平姿勢から90゜を超えて回転させて、垂直姿勢を経て、処理後に溶融金属が注入排出部から排出される排出姿勢に至らせることを含む。更なる実施形態において、この方法は、取鍋を水平姿勢から約180゜回転させて、垂直姿勢を経て、処理された金属が排出される排出姿勢に至らせることを含む。
【0033】
特定の実施形態において、取鍋は、水平姿勢にあるときに、内部空間の頂と底との中間の平面に対応する高さまで満たされる。
【0034】
本発明の方法は、処理剤がノジュラライザであり溶融金属が鉄である、延性鉄の調製に特に適している。
【0035】
一実施形態において、処理剤はマグネシウム含有ノジュラライザである。好適なノジュラライザには、純粋なマグネシウム、マグネシウム−フェロシリコン合金(MgFeSi合金)、ニッケル−マグネシウム合金およびマグネシウム−鉄ブリケットが含まれる。
【0036】
本発明の取鍋および方法は、延性(球状黒鉛)鉄およびバーミキュラ(コンパクト黒鉛)鉄の双方の生産に使用してよい。
【0037】
本発明の方法は、処理剤(たとえば、ノジュラライザ)との反応後の溶融金属の接種を含んでもよい。接種剤は、共晶黒鉛核生成を誘発するために、少量加えられる合金である。好適な接種剤には、フェロシリコンおよびカルシウムシリサイドに基づくものが含まれる。
【0038】
本発明の方法は、処理剤との反応に先立つ溶融金属の初期化を含んでよい。初期化剤は、溶融金属の酸素活性を不活性化して、後続の処理がよりうまくいくようにすると考えられる。好適な初期化剤には、国際公開第WO2008/012492号に開示されているものが含まれる。
以下、添付の図面を参照しながら、例示のみの目的で本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1A】本発明の実施形態に従う取鍋の斜視図である。
【図1B】図1Aに示す取鍋の組み立て時における斜視図である。
【図1C】図1Aに示す取鍋の組み立て時における断面図である。
【図1D】図1Aに示す取鍋の組み立てにおいて使用される成形具の断面図である。
【図1E】図1Aに示す取鍋の組み立てにおいて使用される成形具の断面図である。
【図1F】図1Aに示す取鍋の断面図である。
【図2A】図1Aに示す取鍋の概略図である。
【図2B】図1Aに示す取鍋の概略図である。
【図3A】本発明の実施形態に従う取鍋を示す図である。
【図3B】本発明の実施形態に従う取鍋を示す図である。
【図3C】本発明の実施形態に従う取鍋を示す図である。
【図4A】比較のための従来の取鍋を示す図である。
【図4B】比較のための従来の取鍋を示す図である。
【図5A】MAGMASOFT(登録商標)ソフトウェアを使用したシミュレーションを示す図である。
【図5B】MAGMASOFT(登録商標)ソフトウェアを使用したシミュレーションを示す図である。
【図5C】MAGMASOFT(登録商標)ソフトウェアを使用したシミュレーションを示す図である。
【図5D】MAGMASOFT(登録商標)ソフトウェアを使用したシミュレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1Aは、本発明の実施形態に従う取鍋10を示す。取鍋10は、概ね筒状の鋼鉄殻12、および、殻12内の概して筒状の耐熱内張14(部分的に見える)を含む。取鍋10は、上端に開口16を有し、下端に突部18を有する。殻12の形状は、耐熱内張14の外形と相補的であり、突部18が、処理剤を保持するためのポケット(見えない)の形状に対応する。取鍋はまた、閉じることが可能な蓋20を含み、その内面は、耐熱内張14の第2端を規定する。殻12および耐熱内張14は、上端に向って広がり、開口16に隣接して注入排出部17を形成する。取鍋10は、その垂直姿勢にて示されており、注入排出部が、取鍋の頂に位置し、ポケットが取鍋の底に位置している。この配置では、処理剤は、開口16を介して、ポケット内に容易に装填することができる。
【0041】
取鍋10は、図1Bおよび図1Cに示すように、2つの部分から成る。取鍋の本体10aは、殻12内に成形具22aを配置し、殻12と成形具22aとの間隙を耐熱材料(KALTEK(登録商標))で満たすことによって、作製されている。耐熱材料が硬化すると、成形具22aは除去される。同様に、取鍋の突出部10bは、突部18に対応する殻の中に別の成形具22bを配置し、成形具22bと突部18との間隙を耐熱材料で満たすことによって、作製されている。成形具22a,22bの外面が、耐熱取鍋内張14の内部の形状に対応することが理解されよう。2つの部分10a,10bは、次いで、相互に取り付けられる。
【0042】
図1Cは、成形具22a,22bが除去される前の、蓋20のない取鍋10の断面を示す。耐熱内張14は、連続した側壁24、および下端(第1端)26を有し、蓋20が取り付けられていないので、取鍋は上端が全体的に開放されている。連続した側壁の最上部は、蓋20が取り付けられる部分(第2端28)を規定する。取鍋内張14は、処理剤を保持するためのポケット30を含む。ポケット30は、第1端から離れるように延びる。これは、処理剤の上方に金属のより大きなヘッドが生じるという利点を提供する。ポケット30の壁は連続した側壁24よりも厚いことに、注目すべきである。より厚い壁は、処理剤の気化に追加の断熱を提供する。
【0043】
取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さを、xとする。取鍋が回転されて水平姿勢にあるときの内部空間の高さを、yとする。ポケットの深さを、zとする。本実施形態においては、x,yおよびzのおおよその値は、それぞれ1380mm、640mm、および480mmである。したがって、x:yの比は約2.2:1であり、x:zの比は約2.9:1である。
【0044】
図1Dは成形具22aの断面を示す。成形具22aの外面は、連続した側壁24の内表面を規定し、したがって、内部空間の断面を規定する。成形具22aの断面は、頂点が丸められ辺が外方に曲げられた、正三角形に基づいている。
【0045】
図1Eは、成形具22bの断面を示す。成形具22bの外面は、ポケット30の壁を規定する。本実施形態においては、成形具22bの断面は、成形具22aの断面(破線で示す)に関連している。成形具22bの断面も、おおよそ三角形である。ポケット30が別の断面、たとえば円状の断面、を有してもよいことが理解されよう。ただし、三角形の断面は、取鍋が垂直姿勢から水平姿勢に回転されるときに、ポケット30内に処理剤を保持するのを支援するので、三角形の断面が有利であると考えられる。
【0046】
図1Fは、殻12および連続した耐熱側壁24を含む、取鍋の本体10aの断面を示す。側壁24は、各頂点が側壁24に接する正三角形(破線で示す)に基づいている。本実施形態においては、三角形の各辺の長さは約740mmであり、側壁部の長さに対する、取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さ(図1Cにおいて符号xで示す)の比は、約1.8:1である。三角形は、内接円(これも破線で示す)を含む。本実施形態においては、内接円は約427mmの直径を有しており、この円の直径の長さに対する、取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さ(図1Cにおいて符号xで示す)の比は、約3.2:1である。
【0047】
図1A〜図1Fに示した取鍋の比率は、良好な熱保持と効率的な処理とを組み合わせており、処理剤による金属の処理に特に有益であると考えられる。
【0048】
図2Aおよび図2Bは、図1Aに示す取鍋10の水平姿勢おける概略図である。取鍋10は、前述のように、第1端26、第2端28、および連続した側壁24を含んでいる。この水平配置では、側壁の上部が内部空間の頂40を規定し、側壁の下部が内部空間の底42を規定する。第1端と第2端との中間の垂直平面44が示されている。この垂直平面は、第2端28よりも第1端26に近く選択されている。ここが、連続した側壁24が規則的な形状を有する位置に、相当するからである。内部空間の頂40と底42との中間の水平平面46が示されている。内部空間の底42、第1端26、中間平面46、および垂直平面44の間に規定される内部空間の容積(下部容積)を、符号Iで示す。内部空間の頂40、第1端26、中間平面46、および垂直平面44の間に規定される内部空間の容積(上部容積)を、符号IIで示す。図2Aを見ると、容積Iおよび容積IIは等しいように見受けられるが、図2Bから明らかなように、連続した側壁24の断面の形状のため、容積Iは容積IIよりも大きい。
【0049】
本発明の実施形態に従う取鍋の三角プリズム形状は、円筒状の取鍋と比べて、水平姿勢にあるときの金属からの熱損失、および、垂直姿勢(第2姿勢)にあるときの処理剤上方の金属のヘッドの増加の点で、有利である。図2Bの概略図から明らかなように、取鍋が半分まで充填された場合、空気に曝される金属は、対照の円筒状取鍋よりも少なくなるであろう。同様に、取鍋が水平姿勢から垂直姿勢へと回転されると、金属の高さは、対照の円筒状取鍋よりも大きくなるであろう。
【0050】
実施例1および比較例1:シミュレーション
本発明の実施形態に従う取鍋(実施例1)についての熱損失の速度を公正に評価するために、本発明者らは、2つの取鍋、実施例1(本発明の実施形態に従う)および比較用の取鍋(比較例1)を設計して、MAGMASOFTシミュレーションツールを用いてシミュレーションを行った。MAGMASOFTは、MAGMA Giessereitechnologie GmbHによって提供される、モールド充填および鋳造物の固化をモデル化する主要なシミュレーションツールである。これは、高価で時間を要する鋳造試験を回避するために、鋳造所で一般に使用されている。
【0051】
実施例1の取鍋を図3Aに示し(垂直姿勢)、また、図3Bおよび図3Cに示す(水平姿勢)。内部空間は、実質的に三角形の断面を有する。比較例1を図4Aに示し(垂直姿勢)、また、図4Bおよび図4Cに示す(水平姿勢)。内部空間は、円形の断面を有する。
【0052】
各図において、取鍋が作業容量まで満たされたときの溶融金属の高さを表すために、点線を示す。2つの取鍋の特徴の比較を次の表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
これより判るように、両取鍋は同量の金属を保持するが、異なる形状のため、異なる高さまで満たされる。水平姿勢においては、金属はどちらの場合も同程度の高さまで満たされるが、取鍋が回転されて垂直姿勢になったときは、金属の高さは、比較例1におけるよりも、実施例1においてはるかに大きい。気化可能な処理剤の上方の金属がより高いことは、気化した処理剤がより多くの金属内を移動しなければならず、それ故、溶融金属内により留まり易く、より良好な回収率を招く、ことを意味する。
【0055】
さらに、(空気または取鍋の壁に接する)金属の総表面積および(空気に接する)金属の上表面積は、比較例1におけるよりも、実施例1において小さい。これは、幾何学的係数が、比較例1よりも実施例1において大きいことに対応する。したがって、実施例1の取鍋内の溶融金属は、比較例1の取鍋内の溶融金属よりも、ゆっくりと冷えるであろう。
【0056】
シミュレーションにおいて、取鍋は、溶融鋼を収容し、KALTEK(登録商標)のものと同じ断熱特性を有する耐熱内張を有するものとして、モデル化した。モデルは、金属の上方の境界物質を空気とみなした。シミュレーションは、耐熱内張についての2つの異なる初期温度(1400℃および1580℃)で行った。240秒後の結果を図5A〜図5Dに示す。これらのシミュレーション出力は、金属の陰つき等温線図であり、陰の暗さは液体金属の温度に逆比例し、つまり、陰が暗いほど金属は冷たく、実際の値はシミュレーションにおける温度キーによって表されている。
【0057】
図5Aおよび図5Bは、それぞれ実施例1および比較例1について、耐熱内張が1400℃の初期温度を有するときの、金属の表面温度を示している。金属の表面温度は、両取鍋が同量の金属を収容しており、同じ初期温度を有しているにもかかわらず、比較例におけるよりも本発明の取鍋において高い。これは、金属の暗い等温線(陰)の割合が、図5Aにおけるよりも図5Bにおいて高いことで、示されている。陰が暗いほど、金属は冷たいからである。
【0058】
図5Cおよび図5Dは、それぞれ実施例1および比較例1について、耐熱内張が1580℃の初期温度を有するときの、金属の表面温度を示している。この場合も、図5Dに比べて図5Cにおいて陰が薄いことで示されているように、金属の表面温度は、比較例におけるよりも本発明の取鍋において高い。これは、本発明の取鍋が、金属がより高い温度をより長時間にわたって維持することを、可能にすることを表している。
【0059】
実施例2および比較例2−延性鉄の調製
本発明の実施形態に従う取鍋(実施例2)および標準的タンディッシュ取鍋(比較例2)を用いて、延性鉄を調製した。どちらの場合も、溶融鉄をマグネシウム−フェロシリコン合金(MgFeSi)で処理した。4分および9/10分後のマグネシウムの回収を測定した。マグネシウムの回収は、次式に従って算出した:
Mg回収%=(0.76×(ベース金属中S%−残存S%)+残存Mg%)
×100/追加Mg%
【0060】
実施例2
図1Aに示す取鍋10を、ポケット18を最下点となる垂直姿勢に配置した。次いで、20.8kgのマグネシウム−フェロシリコン合金(5.38%Mg)を、開口に配置した長首じょうごを用いて、ポケット内に装填した。処理剤を装填した後、取鍋を90゜回転させて水平姿勢にした。その後、取鍋を1480℃の温度の1600kgの溶融鉄で満たした。次いで、溶融鉄がポケットに流れ込むように、取鍋を回転させて垂直姿勢に戻した。溶融鉄がマグネシウム合金と反応するのに伴い、白いフレアが観察された。取鍋を傾けて注入排出部17から注ぎ出すことによって、金属を取鍋から注ぎ出した。結果を下記の表2に示す。
【0061】
比較例2
14.4kgのマグネシウム−フェロシリコン合金(5.38%Mg)を、標準的タンディッシュ取鍋の凹部内に配置し、1500℃の温度の800kgの溶融鉄(標準的技法)を取鍋に注ぎ入れた。結果を次の表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
マグネシウムの回収は、比較例2におけるよりも実施例2においてかなり高い。したがって、本発明の実施形態に従う取鍋は、照準的タンディッシュ取鍋よりも良好な回収率を提供するように見える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
概ね筒状の耐熱取鍋内張を収容した取鍋殻を含み、水平姿勢と垂直姿勢との間で回転可能な処理取鍋であって、
前記取鍋内張は、連続した側壁を間に有する第1端および第2端を有し、
前記第1端、第2端および連続した側壁の間に内部空間が規定され、
前記取鍋内張は、さらに、
処理剤を保持するためのポケットであって、第1端に隣接して位置して内部空間と流体連通し、取鍋が水平姿勢にあるときに内部空間の底よりも頂に近く位置し、取鍋が垂直姿勢にあるときに内部空間の頂よりも底に近く位置するポケット、ならびに、
溶融金属を受けるためおよび注ぐための注入排出部であって、取鍋が水平姿勢にあるときおよび垂直姿勢にあるときに、内部空間の底よりも頂に近く位置する注入排出部を含み、
水平姿勢において、内部空間の頂と底との間の中間平面の下、かつ、第1端と第1端および第2端の中間の垂直平面との間に規定される内部空間の下部容積が、前記中間平面よりも上、かつ、第1端と前記垂直平面との間に規定される内部空間の上部容積よりも大きい、ことを特徴とする取鍋。
【請求項2】
ポケットが取鍋内張の第1端から延びて内部空間から離れる、ことを特徴とする請求項1に記載の取鍋。
【請求項3】
前記上部容積に対する前記下位容積の比が少なくとも1.5:1である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の取鍋。
【請求項4】
取鍋が水平姿勢にあるときの内部空間の高さに対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比が、少なくとも2:1である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の取鍋。
【請求項5】
取鍋が水平姿勢にあるときの内部空間の高さに対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比が、6:1以下である、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の取鍋。
【請求項6】
ポケットが取鍋内張の第1端から延びて内部空間から離れ、ポケットの長さに対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比が少なくとも2:1である、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の取鍋。
【請求項7】
連続した側壁の断面が実質的に多角形となるように、連続した側壁が3つ以上の壁部で規定されている、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の取鍋。
【請求項8】
連続した側壁が3つの壁部で規定されており、連続した側壁の断面が実質的に三角形である、ことを特徴とする請求項7に記載の取鍋。
【請求項9】
多角形の頂点が丸められ、および/または、多角形の辺が外方に曲げられている、ことを特徴とする請求項7または8に記載の取鍋。
【請求項10】
連続した側壁が3つの壁部で規定されており、連続した側壁の断面が実質的に三角形であり、壁部のうちの少なくとも1つの長さに対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比が少なくとも1.5:1である、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の取鍋。
【請求項11】
連続した側壁が一体構造である、ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の取鍋。
【請求項12】
取鍋殻および取鍋内張が実質的に同じ形状を有する、ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の取鍋。
【請求項13】
処理剤をポケットに配置することによって請求項1〜12のいずれか1項に記載の取鍋を装填し、取鍋が水平姿勢にある間に、ポケットの下方の高さまで溶融金属を取鍋に充填し、溶融金属がポケット内の処理剤に流れるように取鍋を垂直姿勢へと回転させることを含む、溶融金属を処理するための方法。
【請求項14】
取鍋は、水平姿勢から90゜を超えて回転させられ、垂直姿勢を経て、溶融金属が注入排出部から排出される排出姿勢に至る、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
処理剤がノジュラライザである、ことを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【請求項1】
概ね筒状の耐熱取鍋内張を収容した取鍋殻を含み、水平姿勢と垂直姿勢との間で回転可能な処理取鍋であって、
前記取鍋内張は、連続した側壁を間に有する第1端および第2端を有し、
前記第1端、第2端および連続した側壁の間に内部空間が規定され、
前記取鍋内張は、さらに、
処理剤を保持するためのポケットであって、第1端に隣接して位置して内部空間と流体連通し、取鍋が水平姿勢にあるときに内部空間の底よりも頂に近く位置し、取鍋が垂直姿勢にあるときに内部空間の頂よりも底に近く位置するポケット、ならびに、
溶融金属を受けるためおよび注ぐための注入排出部であって、取鍋が水平姿勢にあるときおよび垂直姿勢にあるときに、内部空間の底よりも頂に近く位置する注入排出部を含み、
水平姿勢において、内部空間の頂と底との間の中間平面の下、かつ、第1端と第1端および第2端の中間の垂直平面との間に規定される内部空間の下部容積が、前記中間平面よりも上、かつ、第1端と前記垂直平面との間に規定される内部空間の上部容積よりも大きい、ことを特徴とする取鍋。
【請求項2】
ポケットが取鍋内張の第1端から延びて内部空間から離れる、ことを特徴とする請求項1に記載の取鍋。
【請求項3】
前記上部容積に対する前記下位容積の比が少なくとも1.5:1である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の取鍋。
【請求項4】
取鍋が水平姿勢にあるときの内部空間の高さに対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比が、少なくとも2:1である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の取鍋。
【請求項5】
取鍋が水平姿勢にあるときの内部空間の高さに対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比が、6:1以下である、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の取鍋。
【請求項6】
ポケットが取鍋内張の第1端から延びて内部空間から離れ、ポケットの長さに対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比が少なくとも2:1である、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の取鍋。
【請求項7】
連続した側壁の断面が実質的に多角形となるように、連続した側壁が3つ以上の壁部で規定されている、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の取鍋。
【請求項8】
連続した側壁が3つの壁部で規定されており、連続した側壁の断面が実質的に三角形である、ことを特徴とする請求項7に記載の取鍋。
【請求項9】
多角形の頂点が丸められ、および/または、多角形の辺が外方に曲げられている、ことを特徴とする請求項7または8に記載の取鍋。
【請求項10】
連続した側壁が3つの壁部で規定されており、連続した側壁の断面が実質的に三角形であり、壁部のうちの少なくとも1つの長さに対する取鍋が垂直姿勢にあるときの内部空間の高さの比が少なくとも1.5:1である、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の取鍋。
【請求項11】
連続した側壁が一体構造である、ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の取鍋。
【請求項12】
取鍋殻および取鍋内張が実質的に同じ形状を有する、ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の取鍋。
【請求項13】
処理剤をポケットに配置することによって請求項1〜12のいずれか1項に記載の取鍋を装填し、取鍋が水平姿勢にある間に、ポケットの下方の高さまで溶融金属を取鍋に充填し、溶融金属がポケット内の処理剤に流れるように取鍋を垂直姿勢へと回転させることを含む、溶融金属を処理するための方法。
【請求項14】
取鍋は、水平姿勢から90゜を超えて回転させられ、垂直姿勢を経て、溶融金属が注入排出部から排出される排出姿勢に至る、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
処理剤がノジュラライザである、ことを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【公表番号】特表2012−526198(P2012−526198A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509081(P2012−509081)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000824
【国際公開番号】WO2010/128273
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511239074)フォセコ インターナショナル リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Foseco International Limited
【住所又は居所原語表記】1 Midland Way,Central Park,Barlborough Links,Derbyshire S43 4XA,United Kingdom
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000824
【国際公開番号】WO2010/128273
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511239074)フォセコ インターナショナル リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Foseco International Limited
【住所又は居所原語表記】1 Midland Way,Central Park,Barlborough Links,Derbyshire S43 4XA,United Kingdom
【Fターム(参考)】
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