説明

処置対象中の悪性腫瘍の処置方法およびそのための医薬組成物

【課題】
細胞接着分子及び補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスを使用して、メラノーマ細胞を含む悪性腫瘍のような異常細胞を殺滅する方法を提供する。
【解決手段】
哺乳動物中の異常細胞を処置する方法であって、前記異常細胞に感染することによってそれらの細胞の死を引き起す能力を持ち、かつ前記異常細胞に感染するために免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスの有効量を、前記哺乳動物に投与することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウイルスを利用した異常細胞の殺滅に関する。また、細胞が前記ウイルスによる処置に対して感受性であるかどうかを確認するためにそれらの細胞をスクリーニングする方法ならびに前記ウイルスを組み込んだ医薬組成物についても記述する。本発明には獣医学的用途があり、ヒト医学分野にも幅広く応用できる。
【背景技術】
【0002】
メラノーマは人口母集団における罹病率の主原因である。オーストラリアはメラノーマの罹病率が世界中で最も高い。メラノーマは侵襲性皮膚癌であり、オーストラリアでは男性でも女性でも3番目に多い癌である。オーストラリア人の30人に1人は何らかの型のメラノーマを持ち、オーストラリアだけで年間1000人を超える人々の死因になっている。早期に発見された場合、ほとんどの型のメラノーマは効果的に処置することができる。しかし、さらに進行したメラノーマの管理は成功率が低く、集中的な研究分野になっている。この研究分野の主な目標は、良性および悪性メラノサイト腫瘍中で弁別的に発現される分子の同定である。このような分子は診断に利用することができ、抗癌治療のターゲットとして利用することもできる(Kageshita T.ら;1993)。
【0003】
細胞性炎症相互作用に決定的な役割を果たす細胞間接着分子−1(ICAM−1)はメラノーマプログレッション抗原として一般に認められている。メラノーマにおけるICAM−1の表面発現は、悪性メラノーマプログレッションと高い相関関係にあることが証明されている(Kraus A.ら;1997およびMorandini R.ら;1998)。
【0004】
ICAM−1は免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーで、インテグリン白血球機能抗原−1(LFA−1/CD11a)およびMac(CD11b)の対レセプターであり、またヒトライノウイルスの90%にとって細胞接着分子でもある(Stuanton D.E.ら;1989)。またICAM−1は、ライノウイルス感染の発生だけでなく、熱帯熱マラリア原虫感染や、喘息、慢性気管支炎および嚢胞性線維症の悪化にも重要な役割を果たす。最近、悪性メラノーマの表面では相補的調節タンパク質(特にDAFと呼ばれる崩壊促進因子)が上方制御されると報告されている(Cheung NKら;1998)。
【0005】
自らの複製過程によって悪性腫瘍の溶解を誘発する能力を持つウイルスは腫瘍細胞溶解性ウイルスと呼ばれ、腫瘍細胞溶解性ウイルスを用いて悪性腫瘍を処置する試みがなされている(Nemunaitis J;1999)。ほとんどの腫瘍細胞溶解性ウイルスは同じ種または細胞系統での増殖を必要とする。ウイルスによる細胞の感染には、ウイルスキャプシドの脱外被に続く細胞内での複製をもたらすまたはそれらと同時に起こる細胞への付着および取り込みが必要である(Fenner F.ら著「The Biology of Animal Viruses」Academic Press(ニューヨーク)、1974年、第2版)。
【0006】
殺癌細胞能力が評価された腫瘍細胞溶解性ウイルスには、HeLa子宮頚癌細胞株で腫瘍細胞溶解活性を示したアデノウイルスサブタイプEgypt101ウイルス、胃癌、子宮癌および皮膚癌を処置するためのムンプスウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、卵巣癌を処置するためのインフルエンザウイルス、例えば子宮頚癌を処置するためのアデノウイルスなどがある(Nemunaitis J;1999)。また、アデノウイルスおよび弱毒化ポリオウイルス組換え体は悪性神経膠腫細胞の処置に役立ちうること(Alemany Rら,1999;Andreansky S.S.,1996)、およびレトロウイルスは活性化されたRasシグナリング経路を持つヒトU87膠芽腫細胞およびNIH−3T3細胞で溶解能力を示すこと(Coffey M.C.ら,1998;Strong J.E.ら,1998)も、他の報文によって示されている。
【0007】
さらに、臨床試験ではメラノーマ(II期)患者の処置にワクシニア腫瘍細胞溶解物が使われている(Nemunaitis J.,1999)。改変型非神経毒性単純ヘルペスウイルス(HSV)も、頭蓋内メラノーマを含む脳腫瘍および皮下ヒトメラノーマの処置に有望であると報告されている(Randazzo B.R.,1997)。また、アデノウイルス感染は、植物ミトトキシンサポリンによる殺メラノーマ細胞を増進させると報告されている(Satyamoorthy K.,1997)。
【0008】
アデノウイルスによって認識されるターゲット細胞上のレセプターはアデノウイルスのタイプによって異なる。すなわち、アデノウイルスサブグループA、C、D、EおよびFは例えばCARレセプターを認識するが、アデノウイルス5型(サブグループC)、アデノウイルス2型(サブグループC)およびアデノウイルス9型(サブグループD)は、それぞれクラスII主要組織適合分子、αβおよびαインテグリンを認識する。CARレセプターはメラノーマ細胞株上に発現することが知られている(Hemmi S.ら,1998)。ヘパラン硫酸は単純ヘルペス1型および2型ならびにヒトヘルペスウイルス7、アデノ随伴ウイルス2型によって認識される。ヒトヘルペスウイルス7のレセプターはCD4であり、エプスタインバーウイルスは補体レセプターCr2(CD21)を認識する。ポリオウイルス1型および2型は細胞接着のためにポリオウイルスレセプター(Pvr)を認識し、レトロウイルスはシアル酸を認識する。A型およびB型インフルエンザウイルスは細胞接着のためにシアル酸N−アセチルノイラミン酸を認識する。これに対し、C型インフルエンザウイルスはシアル酸9−O−アセチルノイラミン酸を認識する。ワクシニアウイルスは上皮増殖因子レセプターとヘパラン硫酸の両方を認識する。コクサッキーウイルスA13、A15、A18およびA21はICAM−1と補体調節タンパク質DAF(CD55)を認識する(例えばShafren D.R.ら,1997を参照されたい)。DAFはエンテロウイルス70によっても認識される。例えばFlint SJら著「Principles of Virology:molecular biology, pathogenesis and control」(ASM Press(ワシントン)、2000年)を参照されたい。
【0009】
転移性腫瘍の伝播は、調節された組織崩壊と共役した一連の接着/脱接着事象を伴う病的過程である。細胞外マトリックスへの接着と細胞マトリックスを介した遊走は腫瘍の浸潤にとって不可欠であることが知られている。細胞外接着分子の最も大きいファミリーはインテグリンファミリーであり(Marshall J.F.およびHart I.R.,1996)、αvβ群のインテグリンは様々な細胞タイプ上に発現することが明らかにされている。例えばαβは神経芽細胞腫、メラノーマおよび骨肉腫細胞上に発現し、αβはメラノーマ、膠芽腫および腎癌細胞上に発現し、αβはαβと同様にメラノーマ細胞上に発現する(Marshall J.F.およびHart I.R.,1996)。
【0010】
悪性腫瘍の処置は進歩したが、それでも、メラノーマを含む癌の処置は重要な研究課題であり、既存の治療方法に代わる方法が今なお必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、ウイルスおよび前記ウイルスが細胞に感染するために利用する細胞発現マーカーの認識/相互作用を使って異常細胞の有意な死滅を達成することができるという驚くべき発見に基づいている。
【0012】
一側面として、哺乳動物中の異常細胞を処置する方法であって、前記異常細胞に感染することによってそれらの細胞の死を引き起す能力を持ち、かつ前記異常細胞に感染するために免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスの有効量を、前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0013】
本発明において「異常細胞」という用語は最も広義に、悪性細胞、成長に何らかの異常を示す細胞、ならびに同じ細胞タイプで正常な表現型を示す対応する正常細胞と比較して細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方の発現が異常に上方制御されている細胞を、その細胞が癌細胞であっても癌細胞でなくても、またその細胞の増殖速度が異常であっても異常でなくても包含すると解釈すべきである。したがってこの用語は前新生物細胞、新生物細胞、および最終的に癌細胞に発達してもしなくてもよい非癌細胞を包含する。異常な成長としては、例えば良性腫瘍または悪性腫瘍が挙げられる。典型的には異常細胞は悪性細胞であり、通常はメラノーマ細胞だろう。
【0014】
一般に、細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方の発現は、異常細胞が見いだされる周囲組織と比較して上方制御されるだろう。
【0015】
それゆえウイルスは、細胞上の細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方と接触する可能性が高いために、通例、異常細胞に優先的に感染するだろう。したがって上記ウイルスは、異常細胞を効果的にターゲットとするために使用することができる。
【0016】
もう一つの側面として、本発明は、哺乳動物中のメラノーマを処置する方法であって、前記メラノーマ細胞に感染することによってそれらの細胞の死を引き起す能力を持ち、かつ前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスの有効量を、哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0017】
上記ウイルスは、細胞をスクリーニングして、例えばその細胞を採取した患者の処置にそのウイルスが適しているかどうか、またはそのウイルスを必要としない他の処置プロトコールの方がその哺乳動物にとって有益であるかどうかを確かめるために使用することもできる。逆に、当該哺乳動物の処置に最も適したウイルスを選択するために、当該患者から採取した細胞の試料を使って様々なウイルスをスクリーニングすることもできる。
【0018】
したがって本発明は、もう一つの側面として、異常細胞がウイルス誘発細胞死に対して感受性であるかどうかを決定するために異常細胞をスクリーニングする方法であって、
(a)異常細胞を用意する工程、
(b)前記異常細胞に感染するために免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスの有効量を、前記細胞に加える工程、
(c)前記ウイルスの存在下に前記異常細胞をある期間にわたってインキュベートする工程、および
(d)前記ウイルスが前記異常細胞の少なくとも一部に感染してその死を引き起したかどうかを決定する工程、
を含む方法を提供する。
【0019】
さらなる一側面として、本発明は、メラノーマ細胞がウイルス誘発細胞死に対して感受性であるかどうかを決定するためにメラノーマ細胞をスクリーニングする方法であって、
(a)メラノーマ細胞を用意する工程、
(b)前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスの有効量を、前記細胞に加える工程、
(c)前記ウイルスの存在下に前記メラノーマ細胞をある期間にわたってインキュベートする工程、および
(d)前記ウイルスが前記メラノーマ細胞の少なくとも一部に感染してその死を引き起したかどうかを決定する工程、
を含む方法を提供する。
【0020】
本発明の方法に使用するウイルスは、与えられたウイルスが細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を発現させる異常細胞に感染してその死を引き起す能力をもつかどうかを試験することによって、選択することができる。特にこの試験では、各ウイルスをそれぞれ異常細胞の試料と共にインキュベートし、感染の結果として細胞が殺されるかどうかを決定することによって、多数の異なるウイルスをスクリーニングすることができる。
【0021】
したがって本発明は、もう一つの側面として、ウイルスが異常細胞に感染することによってそれらの細胞の死を引き起す能力を持ち、前記異常細胞に感染するために免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するかどうかを試験する方法を提供する。
【0022】
さらにもう一つの側面として、本発明は、ウイルスがメラノーマ細胞に感染することによってそれらの細胞の死を引き起す能力を持ち、前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するかどうかを試験する方法を提供する。
【0023】
さらにもう一つの側面として、本発明は、異常細胞に感染してその死を引き起す能力に関してウイルスをスクリーニングする方法であって、
(a)前記異常細胞に感染するために免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスを選択する工程、
(b)選択した前記ウイルスを、前記異常細胞の試料と共に、ある期間にわたってインキュベートする工程、および
(c)選択した前記ウイルスが前記異常細胞の少なくとも一部の死を引き起すかどうかを決定する工程、
を含む方法を提供する。
【0024】
もう一つの側面として、本発明は、メラノーマ細胞に感染してその死を引き起す能力に関してウイルスをスクリーニングする方法であって、
(a)前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスを選択する工程、
(b)選択した前記ウイルスを、前記メラノーマ細胞の試料と共に、ある期間にわたってインキュベートする工程、および
(c)選択した前記ウイルスが前記メラノーマ細胞の少なくとも一部の死を引き起すかどうかを決定する工程、
を含む方法を提供する。
【0025】
本方法はさらに、前記細胞に感染してその死を引き起す選択したウイルスの能力を、別の細胞試料を使って工程(b)および(c)に付した別のウイルスの能力と比較する工程を含んでもよい。
【0026】
ウイルスの感染に続く細胞の死は、ウイルスの細胞内複製による細胞の溶解またはおそらくは細胞性カスパーゼの活性化の結果として起こる感染誘発性アポトーシスによる細胞の溶解に起因するのだろう。
【0027】
溶解が起こると、感染細胞の細胞質ゾル内容物が破裂した形質膜から溢流し、異常細胞に対する免疫応答を誘発することができる抗原が放出されうる。それゆえ、本発明の方法による哺乳動物中の異常細胞の処置は、前記異常細胞に対する前記哺乳動物の免疫性を増強することになりうる。
【0028】
したがって本発明は、もう一つの側面として、哺乳動物において免疫応答を誘発する方法であって、前記哺乳動物中の異常細胞をウイルスに感染させることにより、それらの細胞の死および溶解を引き起して、前記免疫応答を生じさせるための抗原をそこから放出させることを含み、前記ウイルスは前記異常細胞に感染するために免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識する方法を提供する。
【0029】
さらにもう一つの側面として、本発明は、哺乳動物においてメラノーマ細胞に対する免疫応答を誘発する方法であって、前記哺乳動物中の前記メラノーマ細胞をウイルスに感染させることにより、それらの細胞の死および溶解を引き起して、前記免疫応答を生じさせるための抗原をそこから放出させることを含み、前記ウイルスは前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識する方法を提供する。
【0030】
一般に上記ウイルスは本発明方法用の医薬組成物の形で提供されるだろう。したがって本発明は、さらにもう一つの側面として、異常細胞に感染することによってそれらの細胞の死を引き起す能力を持ち、かつ前記異常細胞に感染するために免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスと、医薬的に許容できる担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0031】
さらにもう一つの側面として、本発明は、メラノーマ細胞に感染することによってそれらの細胞の死を引き起す能力を持ち、かつ前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスと、医薬的に許容できる担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0032】
もう一つの側面として、本発明方法における上記医薬組成物の使用を提供する。
【0033】
さらにもう一つの側面として、本発明は、異常細胞に感染することによってそれらの細胞の死を引き起す能力を持ち、かつ前記異常細胞に感染するために免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの細胞接着分子を認識するウイルスの、悪性細胞処置用医薬の製造における使用を提供する。
【0034】
もう一つの側面として、本発明は、メラノーマ細胞に感染することによってそれらの細胞の死を引き起す能力を持ち、かつ前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスの、メラノーマ処置用医薬の製造における使用を提供する。
【0035】
さらに、哺乳動物への前記ウイルスの送達を容易にするために前記哺乳動物の皮膚上に保持される送達手段であって、使用に際して本送達手段を哺乳動物の前記皮膚上に保持したときに本発明の医薬組成物が皮膚と接触するように含浸されている送達手段を提供する。一般に本送達手段は、所望の処置部位に、皮膚を覆った状態で保持することができるようになっているだろう。
【0036】
上記ウイルスは好ましくは細胞接着分子および補体調節タンパク質の両方に結合するかまたは他の形で関係する能力を持つだろう。補体調節タンパク質は通常は細胞接着分子と複合体を形成するか、または細胞接着分子と空間的に密接な関係を持つだろう。補体調節タンパク質は好ましくは崩壊促進因子(DAF)だろう。
【0037】
細胞接着分子は、V−CAM−1ならびに細胞間接着分子ICAM−1、ICAM−2およびICAM−3を含む免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーであることが好ましい。細胞接着分子はICAM−1であることが好ましい。
【0038】
通常、上記ウイルスは動物RNAウイルスであり、典型的には二十面体キャプシドと一本鎖RNAゲノムとを持つ非エンベロープRNAウイルスだろう。
【0039】
ウイルスは、好ましくは、ピコルナウイルス科の一種であるだろう。免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーは多数の細胞外ドメインを持ち、ウイルスは免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリー分子のN末端に最も近い一番外側のドメインと望ましく相互作用するだろう。ウイルスは、好ましくはエンテロウイルス属に由来し、最も好ましくはコクサッキーウイルスだろう。コクサッキーウイルスはヒトエンテロウイルスであり、ほとんどのエンテロウイルス感染は、このウイルス群のもっと毒性の強いメンバーでさえ、臨床症状をほとんどまたは全く引き起さない。例えばCAV21感染は風邪および乳幼児下痢症の発症と関連する。
【0040】
したがって本発明は、もう一つの側面として、哺乳動物中の異常細胞を処置する方法であって、前記哺乳動物に有効量のコクサッキーウイルスを投与することを含む方法を提供する。
【0041】
さらにもう一つの側面として、本発明は、哺乳動物中のメラノーマを処置する方法であって、前記哺乳動物に有効量のコクサッキーウイルスを投与することを含む方法を提供する。
【0042】
コクサッキーウイルスは典型的にはコクサッキーA群ウイルスだろう。また、通常は、コクサッキーウイルス血清型1〜24(CAV1〜24)からなる群より選択され、最も好ましくはCAV13、CAV15、CAV18およびCAV21より選択されるだろう。
【0043】
ウイルスは通常、一般的な動物ウイルスであるが、本発明はこれに限定されず、異常細胞に感染してそれらの死を引き起す能力を持つように操作された組換えウイルス、または細胞に感染して感染後に細胞の死を引き起す能力が強化されるように他の形で改変を施したウイルスを利用してもよい。例えばウイルスはαβ、αβまたはαβなどの他の細胞接着分子を認識するように改変することができる。
【0044】
さらにまた、同じウイルスを異なる処置クール中に哺乳動物に投与してよい。しかし好ましくは、先に投与したウイルスに対する何らかの免疫応答の潜在的影響を避けるためまたは軽減するために、異なる処置クールには異なるウイルスを使用する。ウイルスは例えば患者に局所投与、腫瘍内投与、全身投与することができる。
【0045】
哺乳動物は悪性腫瘍に苦しんでいて処置を必要としている任意の哺乳動物であってよい。哺乳動物は好ましくはヒトだろう。
【0046】
本発明の方法は通常の癌処置に対する補助処置として、または他の治療的処置を伴わない処置として使用することができる。特に本発明の方法は、通常の処置が適切でないか実用的でない場合、または異常細胞の切除により患者が容認しかねる瘢痕または傷が残る可能性がある場合(特に患者の顔、例えば患者の鼻または唇などからの切除)に利用することができる。もう一つの選択肢として、異常細胞切除の前および/または直後に、ウイルスを投与することもできる。
【0047】
したがって本方法は、初期悪性腫瘍の診断後でも後期悪性腫瘍の診断後でも使用することができ、かつ外科手術前に細胞を殺し外科手術後に残存細胞を殺すためにも応用することができる代替的な治療的処置になる。
【0048】
本明細書に記載するプロトコールを使用すれば、当業者は容易に、本発明方法での使用に適したウイルスを選択し、どの異常細胞がそれらの細胞の死をもたらす感染に対して感受性であるかを決定することができるだろう。異常細胞としては、例えば前立腺癌細胞、乳癌細胞、胃癌細胞、大腸癌細胞、結腸直腸癌細胞、神経膠腫細胞、皮膚癌細胞または他の悪性細胞を挙げることができる。
【0049】
本発明の方法は皮膚の悪性腫瘍またはメラノーマなどの皮膚から転移した悪性腫瘍の処置にとりわけ適している。
【0050】
文脈上明らかに異なる判断をすべき場合を除いて、本明細書および特許請求の範囲では、「〜を含む」などの用語は排他的または網羅的ではなく非排他的に、すなわち「〜を含むが、それらに限らない」という意味に解釈すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
以下、好ましい態様の例をいくつか挙げて、本発明をさらに説明する。
【図1】図1はメラノーマ細胞上の表面ICAM−1発現の免疫ペルオキシダーゼ染色を示す図である。ICAM−1発現(白い矢印)が黒っぽい細胞染色によって示されている。
【図2】図2はメラノーマ細胞株Sk−Mel−28およびME4405によるICAM−1およびDAF発現の相対レベルを示す図である。
【図3】図3は様々な感染後時間におけるコクサッキーウイルスA21による2つのヒトメラノーマ細胞株の細胞溶解性感染を示す図である。
【図4】図4はヌードマウス中で誘導した原発性メラノーマから得たヒトメラノーマ細胞の様々な用量のコクサッキーウイルスA21による細胞溶解性感染を示す図である。
【図5】図5は胸壁メラノーマから得た懸濁および付着悪性腫瘍細胞調製物のコクサッキーウイルスA21による細胞溶解性感染(感染後20時間)を示す図である。
【図6】図6の(A)は、6個のヒトメラノーマ細胞株のコクサッキーウイルスA21による細胞溶解性感染(感染後23時間)を示す図である。(B)はヒトメラノーマ細胞表面のDAF(黒っぽい線)とICAM−1(明るい線)のフローサイトメトリー解析の結果を示す図である。
【図7】図7は代表的ヒトエンテロウイルスによる様々な腫瘍細胞株の細胞溶解性感染を示す図である。
【図8】図8はリンパ節から得たヒトメラノーマ生検材料のヒトエンテロウイルス(コクサッキーウイルスA21およびB3)による細胞溶解性感染を示す図である。
【図9】図9は選択されたコクサッキーウイルスによる前立腺癌細胞の細胞溶解性感染を示す図である。
【図10】図10は非メラノーマ細胞には感染することなくメラノーマ細胞を特異的に溶解することによって破壊するCAV21およびCAV15の能力を示す図である。
【図11】図11はNOD−SCIDマウスにCAV21感染細胞を皮下投与することによってヒトメラノーマ腫瘍形成が阻害されることを示す図である。
【図12】図12はCAV21による既成Sk−Mel−28メラノーマの腫瘍内処置の結果を示すグラフである。
【図13】図13はCAV15による既成Sk−Mel−28メラノーマの腫瘍内処置の結果を示すグラフである。
【図14】図14はPBS(左側の腫瘍)およびCAV15(右側の腫瘍)と共に接種した35日後のSk−Mel−28腫瘍を示す図である。
【図15】図15はCAV21による既成ME4405メラノーマの腫瘍内処置の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
あるウイルスがある腫瘍の細胞に感染してそれらの死を引き起す能力を持つかどうかを決定するには、通常の技術を使って腫瘍から生検材料を採取し、細胞の調製物を調製した後、(i)ウイルス受容体細胞表面発現を確認し、(ii)それらの細胞をウイルスにばく露し、所定の培養期間(典型的には約2日であるが、これは使用するウイルスによって変動しうる)にわたって、感染および細胞死に関してそれらの細胞を監視することができる。この方法では、調製した悪性細胞を少しずつ使って、多数のウイルスを同時にスクリーニングすることができ、より高度の感染性と細胞死を示すウイルスを選択して、前記生検材料を採取した処置対象に投与することができる。同様に、様々な供給源から採取した生検材料から調製した様々な悪性細胞調製物を特定のウイルスを使ってアッセイに使用してもよい。生検材料は一個体の様々な部位から採取してもよいし、多数の個体から採取してもよい。
【0053】
本明細書に記載する方法で使用されるウイルスは、望ましくは、受容者に臨床症状をほとんど引き起さないか、または極わずかな臨床症状しか引き起さないだろう。そのようなウイルスは当業者によく知られている供給業者から容易に入手することができ、本方法での有効性については上述した方法でスクリーニングすることができる。望ましくは、ウイルスは通常は、コクサッキーA群ウイルスから選択されるだろう。CAV21は好ましく、CAV21(Kuykendall)は特に好ましい(Sickles G.M.,Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 102:742;Shafren D.ら,J. Virol 1997,71:4736;Hughesら,J. Gen Virol. 1989,70:2943;Schmidt,N.J.ら,Proc. Soc. Exp. Biol. Med.,1961,107:63)。CAV21(Kuykendall)はアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(アメリカ合衆国バージニア州20110−2209マナッサス、ユニバーシティーブールバード10801)から受託番号VR−850として入手することができる。
【0054】
与えられたウイルスが悪性細胞に感染してその死を引き起す能力を持つかどうかを簡単にスクリーニングする目的には、生検材料から単離された初代悪性細胞ではなく悪性細胞株を使用することができる。
【0055】
典型的にはICAM−1および補体調節タンパク質DAFの少なくとも一方を認識するウイルスが使用されるだろう。DAFはメラノーマ細胞上に発現することの他に(Cheung N.K.ら;1998)、生体内原位置の大腸腺癌細胞上およびヒト大腸腺癌細胞株HT29上での発現が上方制御されることも示されている。DAFの発現は、補体による損傷に対する細胞の耐性を増進すると考えられているので、腫瘍エスケープの機序であることが考えられる(Bjφrge L.ら;1996)。
【0056】
上方制御されたICAM−1の発現は、胃癌および腺腫細胞(Nasu R.,1996;Koyama S.,1992)、前立腺癌細胞(Rokhlin O.W.およびCohen M.B.,1995)ならびにヒト乳癌細胞(Sgagius M.K.,1996)を含む様々な悪性細胞タイプで報告されている。乳癌細胞上にはICAM−1と共にV−CAM1が発現されることも、研究によって示されている(Regidor P.A.ら;1998)。またICAM−1は、髄様癌細胞(Bacuss S.S.ら;1994)、骨髄腫細胞(Maloney D.G.ら;1999)および甲状腺癌細胞上に発現することも知られている。ICAM−1陽性染色は乳糖腺癌などの原発腫瘍ならびに脳、肝臓および副腎からの転移性腫瘍でも報告されている(Fernandez−Real J.M;1996)。
【0057】
メラノーマなどの皮膚上に生じる腫瘍はウイルスによる処置のとりわけ好適な候補である。メラノーマがリンパ節、肺または他の器官に転移している場合は、処置を施すために外科手術によってそれらの部位を露出する際に、上述のように、これらの部位および/または周囲組織にウイルスを投与することができる。
【0058】
選択したウイルスは、好ましくは、ウイルスによる感染を受けうる腫瘍の領域が最大になるように、悪性腫瘍上の多数の部位に直接注射されるだろう。通常、腫瘍を取り囲む組織は、その組織中に悪性細胞が存在する可能性を考えて、注射または他の方法により、ウイルスで処置されるだろう。比較的進行するまで腫瘍が検出されない場合は、腫瘍自体を外科的に切除した後、ウイルスを注射することができる。
【0059】
ウイルスは、悪性腫瘍に直接注射するのではなく、腫瘍に送達されるように腫瘍部位に隣接する位置で受容者の血流中に静脈内注射することによって全身投与してもよい。同様にウイルスは、適当であると考えられる場合は、皮下、腹腔内、または例えば筋肉内に投与してもよい。しかし一般的には、ウイルスに特異的な抗体が存在することによって上記のような他のウイルス送達法の効力が低下する可能性を考えると、腫瘍への直接注射が好ましい。
【0060】
ウイルスは、単独でまたは腫瘍中へのウイルスの直接注射と組み合わせて、腫瘍に局所外用してもよい。この場合、ウイルスは、処置すべき皮膚上の悪性腫瘍部位に押しつけられる送達手段であって、ウイルスによる悪性細胞の感染が可能なようにウイルスの完全性を維持するのに適した医薬的に許容できる担体が含浸された送達手段を使って適用することができる。この送達手段は、処置すべき領域にウイルスを局在化させておくのに適した例えばパッチ、パッド、ワッド(wad)、包帯などの形状を取ることができる。典型的には、前記送達手段は、パッチを皮膚に貼り付けることによって所望の位置にパッチを保持して接種物を患者の皮膚と接触させておくために下面外縁部に接着剤が塗布されているパッチだろう。
【0061】
一般的には、悪性腫瘍および/または周囲組織に1または複数の小さい切開を施して、ウイルスがそこに進入するための部位が設けられるだろう。
【0062】
ウイルスを受容者に接種するために使用される運搬媒体は生理食塩水などの液体であるか、適当と考えられる従来から知られている他の任意の媒体、例えば医薬用途および処置部位へのウイルスの投与に適した市販のゲルなどであることができる。
【0063】
接種物は一般的には接種物1mlにつき約1×10〜約1×1010プラーク形成単位を含むだろう。接種物は好ましくは接触物1mlにつき約1×10プラーク形成単位以上を含むだろう。主治医または外科医は、患者の全身状態、悪性腫瘍の段階と位置、ウイルスで処置すべき領域の総サイズと分布を考慮し、一般に認められた医療に従って、患者に投与される接種物の量を容易に決定することができる。典型的には、患者は初回量のウイルスで処置された後、適切な期間にわたって監視され、次に、ウイルスの初回投与に対する患者の応答および初回処置がもたらすウイルス感染と悪性細胞死の程度などといった因子に応じて、その患者にさらにウイルスを投与するという決定を下す。
【0064】
個体は、望ましくは、ある期間にわたって所定の間隔で、ウイルスによって処置されるだろう。間隔は毎日または24時間〜72時間以上の範囲でそれぞれの状況に合わせて決定することができる。先に投与したウイルスに対する何らかの免疫応答の影響を回避するためまたは最小限にするために、毎回同じウイルスまたは異なるウイルスを投与することができ、1回の処置クールは主治医の決定に応じて1〜2週間以上に及ぶことができる。最も好ましくは、当該哺乳動物が過去にばく露されたことのないウイルス、または当該哺乳動物は比較的軽微な免疫応答しか生じないと標準的技術で決定されるようなウイルスが投与されるだろう。
【0065】
本発明の方法には容易に入手できる既知ウイルスを好適に使用することができるが、通常の技術を使って改変または操作されたウイルスも利用することができる。例えば、追加の細胞接着分子を細胞レセプターとして利用するようにウイルスを改変することができる。例えばコクサッキーウイルスA21は、コクサッキーA9(CAV−9)の場合と同様にペプチドモチーフ「RGD」がウイルスキャプシド表面に発現するように、部位特異的突然変異導入法を使って改変することができる。RGDモチーフは全てのαインテグリンヘテロ二量体によって認識される。このキャプシド改変により、ウイルスは、例えばインテグリンαβ(これは悪性メラノーマ病巣の表面でICAM−1と一緒に上方制御されることが示されている細胞接着分子である(Natali P.G.;1997))を結合することができるようになり、その結果、インテグリン分子との相互作用または続いて起こるICAM−1との相互作用によるウイルスの取り込みが増大する。あるいは、E−セレクチンなどのセレクチンを認識するようにウイルスを改変することもできる。
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。
【0067】
実施例1
1.1 細胞株
ICAM−1を発現する横紋筋肉腫細胞(RD−ICAM−1)、HeLa−B細胞およびヒト肺線維芽細胞(MRC5)の連続培養物は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)と10%ウシ胎仔血清(FCS)中で維持した。2つのメラノーマ細胞株Sk−Mel−28およびME4405は、モナッシュ大学生化学分子生物学部(オーストラリア国ビクトリア州)のRalph博士およびロイヤルニューカッスル病院癌研究部門(オーストラリア国ニューサウスウェールズ州ニューカッスル・デビッドマディソンビルディング4階)のPeter Hersey博士からそれぞれ入手した。細胞株Sk−Mel−28は、化学療法剤に耐性であることが見いだされた転移性メラノーマ細胞株である(56)。メラノーマ細胞培養ME4405は原発性メラノーマ病巣の標本から樹立された(69)。これら2つのメラノーマ細胞株は、10%FCSを含むDMEMで維持した。横紋筋肉腫細胞(RD)、異数性ヒト胚細胞株、およびHeLa−B細胞、ヒト扁平上皮細胞由来の異数性細胞クローンは、フェアフィールド病院腸呼吸器研究所(オーストラリア国ビクトリア州メルボルン)から入手した。免疫グロブリンスーパーファミリー分子ICAM−1をコードするcDNAをRD細胞に安定にトランスフェクトしたRD−ICAM−1細胞株は別途記載されている(Shafren DRら;1997)。ヒト肺線維芽細胞由来のMRC5細胞はBio−Whittaker社(米国)から入手した。
【0068】
1.2 ウイルス
CAV21(Kuykendall株)、CAV15(G−9)およびCVB3(Nancy)の株はMargery Kennett(オーストラリア国ビクトリア州メルボルン、フェアフィールド病院胃呼吸器研究所)から入手した。
【0069】
1.3 ウイルス増殖
標準的方法に従ってRD−ICAM−1培養(80〜95%コンフルエント)を10TCID50(50%組織培養感染量)のコクサッキーウイルスA株に感染させた。完全な細胞変性効果が観察されるまで(2日以内)、感染細胞を37℃でインキュベートした。次に細胞を−80℃で凍結し融解して、残っている細胞内ウイルス粒子を放出させた。1000×gで5分間の遠心分離により、ウイルス含有培地から細胞片を除去し、500μlずつに分けて−80℃で保存した。CVB3は上記の同じ方法によりHeLa−B細胞中で増殖させた。
【0070】
1.4 モノクローナル抗体(MAb)
DAFの第3SCRを認識するMAb IH4(24)は、オースチン研究所(オーストラリア国ビクトリア州メルボルン)のB.Loveland博士からもらった。MAb WEHI−CAMはICAM−1の第1ドメインを認識する抗体であり(Berendt ARら;1992)、ウォルター・アンド・イライザホール研究所(オーストラリア国ビクトリア州メルボルン)のA.Boyd博士によって提供された。
【0071】
1.5 フローサイトメトリー解析
液量100μl中の細胞(1×10)を1%FCSを含むDMEMに希釈したMab IH4またはMab WEHI−CAMと共に氷上で30分間インキュベートした。次に細胞を5.0mlのPBSで洗浄し、1000×gで5分間ペレット化し、PBSに希釈したフルオレセインイソチオシアネート結合ヤギ抗マウス免疫グロブリンG(Silenus社(オーストラリア、メルボルン))100μlに再懸濁した。氷上で30分間インキュベートした後、細胞を洗浄し、ペレット化し、PBSに再懸濁して、FACStarアナライザー(Becton Dickinson社(オーストラリア、シドニー))による解析を行った。
【0072】
1.6 比色法による感染力アッセイ
CAV21およびCAV15のウイルス保存液を、1%ウシ胎仔血清(FCS)を含むDMEMに、10倍ずつ段階希釈した。96ウェルプレート中のRD−ICAM−1細胞単層をウイルスの段階希釈液100μlと共に37℃で48時間インキュベートした。細胞の生存を定量するために、単層を100μlのクリスタルバイオレット/メタノール溶液(PBS中の5%w/vクリスタルバイオレット、10%v/vメタノール、10%v/vホルムアルデヒド溶液)と共にインキュベートし、蒸留水で洗浄した。波長540nmのマルチスキャン酵素結合免疫吸着検定プレートリーダーでプレートを読みとった。50%終点力価を計算し(Reed LJおよびMuench HA;1938)、1ミリリットルあたりの50%組織培養感染量(TCID50)として表した。吸光度がウイルスなしの対照の3標準偏差未満である場合は、そのウェルを陽性と記録した。CAV21のTCID50は2.7×10単位/mlと決定され、CAV15のTCID50は1.6×10単位/mlと決定された。
【0073】
1.7 ICAM−1およびDAFの表面発現
メラノーマ細胞株SK−Mel−28およびME4405の表面におけるICAM−1およびDAF発現の相対レベルを、フローサイトメトリー解析によって決定した。結果を図2に示す。
【0074】
図からわかるように、フローサイトメトリー解析により、2つのメラノーマ細胞株の表面では、同程度の高レベルなICAM−1発現とDAF発現が明らかになった。転移性メラノーマに由来するさらに6つのメラノーマ細胞株も高レベルのICAM−1とDAFを発現させた(非掲載データ)。試験した全ての転移性メラノーマ細胞に高レベルのICAM−1発現が見いだされたことは、インビボでのICAM−1発現レベルの増加が転移能の増加と相関することを示すいくつかの報文を裏付けるものである(Johnson JPら:1988;Kageshita Tら:1993;Miller BEおよびWelch DR:1990;Natalie PGら:1997)。
【0075】
実施例2
2.1 CAV21によるメラノーマ細胞株の感染
2つの培養適応メラノーマ細胞株MillerおよびMM200の単層を、実施例1で調製したCAV21に、感染多重度1.0で1時間感染させた後、接種物を除去し、細胞を培養培地(1%ウシ胎仔血清およびペニシリン−ストレプトマイシンを含むDMEM)中、37℃で24時間インキュベートした。図3に示す結果は、CAV21が感染後(PI)5時間で早くも両細胞株の有意な細胞病理学的変化を誘導し、PI9時間までに全メラノーマ細胞のほとんど完全な死滅を誘導できたことを示している。
【0076】
実施例3
3.1 原発性メラノーマから得られたメラノーマ細胞のCAV21による感染
先にME4405株のヒトメラノーマ細胞を通常の方法で皮下に接種しておいたヌードマウスから取り出した原発性メラノーマから得られた細胞は、図4に示すように、1メラノーマ細胞あたり0.005 CAV21粒子のばく露率(challenge rate)でも、CAV21による感染および殺滅を著しく受けやすかった。
【0077】
実施例4
4.1 組織生検材料から単離されたメラノーマ細胞のCAV21による感染
メラノーマ細胞を、原発性胸壁メラノーマの新鮮な生検材料から、「スピリング(spilling)」法とコラーゲン−トリプシンおよびDNアーゼ消化によって単離した。簡単に述べると、生検材料を10ml注射器のプランジャでほぐすことによって、細胞をメラノーマ生検材料から遊離させた。得られたメラノーマ細胞懸濁液をフィコール−ハイパック(Amersham Pharmacia社(スウェーデン国ウプサラ))勾配で精製した。ヒト線維芽細胞に対するモノクローナル抗体(カタログ番号MAS516X、SeraLab社)と白血球共通抗原に対するモノクローナル抗体(CD45、カタログ番号17−0804−3、Amrad Biotech社(オーストラリア国ビクトリア州))でコーティングされたDynalビーズと混合することによって、混入している線維芽細胞と白血球を除去した。
【0078】
次に、1×10細胞を24穴組織培養プレートに入れ、実施例1で調製した約1×10プラーク形成単位のCAV21を接種した。37℃で20時間インキュベートした後、ヨウ化プロピジウム染色と検鏡により、細胞を細胞死について評価した。
【0079】
図5は、付着および懸濁原発性メラノーマ細胞が、CAV21感染の結果として、20時間のインキュベーション期間中に、どちらも効率よく殺されたことを示している。
【0080】
実施例5
5.1 CAV21感染に対して感受性を示すメラノーマ細胞でのICAM−1およびDAFの発現
メラノーマ細胞がCAV21による感染とその結果起こる死滅に高い感受性を持つことを確認するために、原発性ヒトメラノーマに由来するさらに6つのヒトメラノーマ細胞株を実施例1で調製したCAV21に感染させた。
【0081】
図6(A)は、1株(ME105)を除く全てのメラノーマ細胞株がCAV21感染の結果として23時間のインキュベーション期間中に死滅したことを示している。
【0082】
悪性メラノーマ細胞表面のICAM−1とDAFの高レベル発現を確認するために、各細胞株の細胞をMab IH4およびMab WEHI−CAMで処理した。抗DAFおよび抗ICAM−1 Mabの結合は、上述のようにフローサイトメトリー解析によって検出した。図6(B)に示す蛍光ヒストグラムは、ME105細胞株を除いて、調べた全メラノーマ細胞株の表面にDAFとICAM−1の高レベルに発現することを裏付けている。DAFおよびICAM−1発現の欠如は、その細胞株をCAV21感染に対して抵抗性にした。
【0083】
実施例6
6.1 ICAM−1を発現するメラノーマ細胞の選択的感染
ICAM−1発現ヒトメラノーマ細胞のCAV21感染の選択性を強調するために、メラノーマ細胞株MM200の単層に、約1×10プラーク形成単位のCAV21、コクサッキーウイルスB3(CVB3)、エコーウイルス7型(E7)またはコクサッキーウイルスB1(CVB1)を、それぞれ24穴組織培養プレートのウェル中、37℃で1時間接種した。次にウイルス接種物を除去し、細胞単層をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、1.0%ウシ胎仔血清を含む1.0mlのDMEMを各ウェルに加え、細胞を37℃で48時間インキュベートした。細胞の生存を定量するために、単層をクリスタルバイオレット/メタノール溶液と共にインキュベートし、蒸留水で洗浄し、100倍の顕微鏡で調べた。
【0084】
図7は、48時間のインキュベーション期間後に、CAV21だけがMM200メラノーマ細胞に感染したのに対し、CVB1、CVB3およびE7感染と死滅が明白な横紋筋肉腫細胞(RD)ではその逆であったことを示している。RD細胞はDAFを発現させるが、ICAM−1を発現させない。しかしRD細胞の表面にICAM−1を発現させると、それらはCVA21による感染と死滅に高い感受性を示すようになる。
【0085】
実施例7
7.1 CAV21によるメラノーマ生検材料の感染
固形ヒトメラノーマリンパ節生検材料の切片を24穴組織培養プレートのウェルに入れ、模擬感染させるか、約1×10プラーク形成単位のCAV21またはCVB3にばく露した。
【0086】
図8の結果は、CAV21感染により、当該ウイルスで処理されたメラノーマ生検材料の外辺部に重度の組織破壊が起こったが、模擬感染およびCVB3感染した生検材料では検出できるウイルス膜破壊は観察されなかったことを示している。
【0087】
実施例8
8.1 CAV21およびCAV15によるヒトメラノーマ細胞の細胞溶解性感染
ヒトメラノーマ細胞株に対するCAV15およびCAV21の腫瘍細胞溶解能をアッセイするために、Sk−Mel−28細胞とME4405細胞を平底96穴マイクロタイタープレート(Becton Dickinson社)に1ウェルあたり3×10細胞の密度で播種した。37℃で24時間インキュベートした後、培養培地を除去して、適当なウイルス段階希釈液を含む最終液量100μlの新しい培地と置き換えた。保存ウイルス調製物を10−1から10−7まで段階希釈した。ウイルス接種の後、プレートを37℃で48時間インキュベートし、細胞の生存を上述のようにクリスタルバイオレット染色によって検出した。
【0088】
3つの細胞株RD−ICAM−1、Sk−Mel−28およびME4405は全て、CAV21とCAV15による細胞溶解性感染に対して許容性であることがわかった。48時間のインキュベーション期間後に、ウイルスなしの対照はウイルス誘発性CPEの徴候を何も示さなかったが、10−1および10−2の希釈率では全ての細胞培養に著しい細胞溶解が観察された。さらに高いウイルス希釈率では、Sk−Mel−28細胞は、ME4405およびRD−ICAM−1細胞株と比較してウイルス溶解に対する許容性が高いことがわかった。
【0089】
CAV21およびCAV15の総腫瘍細胞溶解能は対照RD−ICAM−1細胞と比べてメラノーマ細胞株の方が高かった。どの細胞タイプも同じぐらいのレベルのICAM−1を発現させるが、RD−ICAM−1細胞でのDAF発現はメラノーマ細胞よりも有意に低く(図2参照)、RD−ICAM−1細胞へのDAFによるウイルス付着が少ない理由になっている。DAFは、多くのコクサッキーウイルスにとって低親和性隔離(sequestration)分子であり、ウイルス粒子の捕捉を補助し、よって細胞の感染性を補助することが、先に明らかにされている(Lea SMら;1998)。メラノーマ細胞株にはRD−ICAM−1細胞よりも高レベルのDAF発現が存在するので、ICAM−1受容体にウイルスが接近する可能性が増し、よって感染および細胞溶解のレベルが増大する。
【0090】
8.2 コクサッキーウイルスによるヒト前立腺癌細胞の細胞溶解性感染
ヒト前立腺癌細胞株CP3(ICAM−1を発現させる)の細胞を平底96穴マイクロタイタープレート(Becton Dickenson社)に3×10細胞/ウェルの密度で播種し、上記実施例8.1に記述したように、細胞をインキュベートした後、上記実施例CAV13、CAV15、CAV21およびコクサッキーウイルスB群ウイルスCVB3の段階希釈液で処理した。PC3細胞はアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(米国バージニア州マナッサス)から受託番号CRL−1435として入手することができる。
【0091】
図9に示すように、PC3細胞はCAV15による細胞溶解性感染に対して著しく許容性だった。CAV13およびCAV21でも著しい細胞溶解性感染が観察された。
【0092】
8.3 ヒトメラノーマ細胞株Sk−Mel−28およびME4405におけるCAV21およびCAV15の選択的複製
メラノーマ細胞株Sk−Mel−28およびME4405に対するCAV21およびCAV15の選択性を、インビトロ特異性アッセイ法で調べた。
【0093】
滅菌細胞培養インサートを使って、標準的な6穴組織培養プレートのウェルを分割した。細胞培養インサートの内部でSk−Mel−28細胞またはME4405細胞を生育させ、細胞培養インサートの周りでMRC5またはRD細胞を生育させた。細胞が付着したら、細胞培養インサートを各ウェルから取り除いて、細胞培養培地が共培養を均等に覆うようにした。両細胞集団の外辺部が融合したら、共培養物をPBSで2回洗浄し、次に500μlのPBSまたは保存ウイルス(10 TCID50)を37℃で1時間接種した。37℃でインキュベートした後、1%FCSを含む新しいDMEMを各ウェルに加え、プレートを5%CO雰囲気下に37℃で48時間インキュベートした。細胞単層を光学顕微鏡によって、ウイルス誘発性CPEの徴候についてモニターした後、各ウェルを3mlのクリスタルバイオレット溶液で染色して、ウイルスによる細胞溶解性感染からの細胞の生残を検出した。周囲の非メラノーマ細胞に感染することなくメラノーマ細胞を特異的に溶解によって破壊するCAV21およびCAV15ウイルスの能力を図10に示す。
【0094】
図からわかるように、CAV21またはCAV15で処理した各ウェルの内側のメラノーマ細胞培養物はウイルスによって完全に破壊されたが、細胞に進入するためのレセプターとしてICAM−1を使用しないCVB3ウイルスによる影響は受けなかった。CVB3は細胞への進入にコクサッキーおよびアデノウイルスレセプター(CAR)を利用する(10)。MRC5細胞はCAV21およびCAV15による細胞溶解性感染には抵抗性であるように見えた。これらの細胞はヒト肺線維芽細胞培養物に由来し、ICAM−1を低レベルにしか発現しない(未公表データ)。このデータは、迅速かつ効果的なターゲット細胞の細胞溶解性感染が、ICAM−1およびDAFの高レベル発現を助長したことを示している。ICAM−1を発現しないRD細胞はCAV21感染またはCAV15感染によって破壊されなかった。さらに、上記の結果は、ウイルス感染したレセプター保有細胞と直接接触したレセプター陰性細胞へのCAV21およびCAV15の伝播が、あったとしても極めてわずかに過ぎないことを示している。
【0095】
実施例9
NOD−SCIDマウスを使った一連の動物ばく露実験により、インビボの既成メラノーマ腫瘍の細胞溶解性感染を評価した。
【0096】
9.1 NOD−SCIDマウスにおけるメラノーマ異種移植片の成長
全ての動物実験は、ニューカッスル大学動物実験倫理委員会が承認したガイドラインに基づいて実施した。NOD−SCIDマウスは動物実験施設(オーストラリア国ニューサウスウェールズ州ニューカッスル・デビッドマディソンビルディング5階)にある病原体フリーの飼育器で飼育した。
【0097】
Sk−Mel−28細胞およびME4405細胞は10%FCSを含むDMEMで生育した。細胞を収集し、DMEMで2回洗浄し、滅菌PBSに再懸濁した。懸濁液の細胞濃度を血球計数器で決定し、細胞の生存力をトリパンブルー染色によって評価した。>95%が生存可能な細胞調製物だけを異種移植に使用した。異種移植に先立って、ロンプン/ケタミン(50mg/kg)の腹腔内(i.p)注射によって動物を麻酔した。動物を監視し腫瘍成長を測定するために、動物を3%イソフルオランで麻酔した。
【0098】
腫瘍細胞は麻酔した4〜6週齢の雌NOD−SCIDマウスの側腹部に異種移植した。異種移植片腫瘍成長は毎日観察し、様々な間隔でキャリパスを用いて測定し、全ての測定値を5週間にわたってミリメートルの単位で記録した。腫瘍体積の推定値は既知の方法を使って計算した(Davies CDら;1997)。
【0099】
9.2 皮下ウイルス送達
15匹のNOD−SCIDマウスを使った予備実験で、エクスビボ感染細胞によるウイルスの局所皮下送達を、腫瘍成長の阻害について評価した。対照群のマウス(n=5)にはSk−Mel−28細胞(1×10)を、上下両方の側腹部の個々の部位に皮下注射した。CAV21群(n=5)には1×10個のSk−Mel−28細胞を上側腹部に注射すると共に、室温にて10 TCID50のCAV21と共にエクスビボで1時間プレインキュベートしておいたSk−Mel−28細胞(1×10)も注射した。CAV15群(n=5)は、下側腹部に施した第2の注射が10 TCID50のCAV15と共にインキュベートしておいたSk−Mel−28細胞(1×10)を含む点を除いて、CAV21群と同じように処置した。注射の4週間後に、対照群の一匹を屠殺したところ、Sk−Mel−28細胞(1×10)の注射部位2カ所に対応する2つの腫瘍塊が個別に存在することが明らかになった。これに対し、CAV21群の一匹には、非感染細胞注射部位にもウイルス感染細胞注射部位にも検出できる腫瘍形成はなかった(図11)。剖検では、対照群の残りのメンバーは全て2つの独立したメラノーマ異種移植片腫瘍成長物を持つことが明らかになったが、CAV21群の残りのメンバー(注射後17週間)はどちらの注射部位にも検出可能な腫瘍成長を示さなかった。CAV15群のマウスは注射後4週間の時点で腫瘍形成を示さなかった。
【0100】
9.3 腫瘍内ウイルス送達
NOD−SCIDマウス20匹の上側腹部にSk−Mel−28細胞(1×10)を注射した。腫瘍体積が約50〜100mmに達したら、動物を無作為に5匹ずつの群に分割し、独立したケージで飼育した。マウス群にはそれぞれ103.2または104.2 TCID50の用量を含む100μlの活性CAV21またはCAV15を腫瘍内注射した。残りの動物には100μlのPBSを異種移植片中に直接注射した。ウイルスおよび他の病原体が個々のケージ内に確実に保たれるように、異なる処置群は個別の通気口を持つケージで陰圧下に飼育した。
【0101】
それぞれ103.2または10−4.2 TCID50のCAV21またはCAV15の用量は、注射後14日の時点で既成Sk−Mel−28腫瘍を持つ動物で有意な腫瘍減少をもたらすのに十分だった。腫瘍組織量の減少傾向はその後、14〜21日間続いた。注射後30〜35日の時点で検出可能な腫瘍は観察されなかった(図12および13参照)。CAV21処置群とPBS処置対照群の間で観察された相違は統計的に有意だった(P=0.0023、t検定)。Sk−Mel−28腫瘍を持ちCAV21を注射された動物はCAV21疾患の臨床徴候を何も示さなかった。メラノーマ腫瘍組織量を劇的に減少させるCAV15の能力を図14に示す。注射後35日の時点で、PBSで処置したメラノーマ異種移植片は体積が約2037mmだったが、CAV15処置腫瘍は約2mmだった(P=0.053、t検定)。図示したCAV15処置腫瘍は、ほとんどが残存している結合組織からなる。
【0102】
9.4 ME4405異種移植片へのCAV21の腫瘍内送達
このウイルスの抗腫瘍治療能力をさらに裏付けるために、別のメラノーマ(ME4405)異種移植片へのCAV21の腫瘍内送達を試みた。NOD−SCIDマウス15匹の側腹部の一カ所にME4405細胞(5×10)を皮下注射した。腫瘍体積が約500mmに達したら、動物を無作為に5匹ずつの群に分割し、独立したケージで飼育した。5匹の動物には103.2 TCID50の用量を含む100μlの活性CAV21を腫瘍内注射し、5匹のマウスには100μlのPBSを異種移植片中に直接注射し、残りの5匹には何も処置しなかった。図15に示すように、CAV21の腫瘍内投与は、たとえば初期注射前腫瘍体積が上で使用したものより5倍大きかったとしても、注射後25日以内にME4405細胞の腫瘍成長を著しく減少させることができた。ME4405異種移植片は、対照群における有意に速い腫瘍成長速度から推定されるように、Sk−Mel−28腫瘍よりも侵襲性であることが観察された。
【0103】
ME4405細胞株は、成長速度が遅くME4405腫瘍ほどには血管性でないSk−Mel−28腫瘍と比較して、高度に血管性の侵襲的腫瘍を生成した。
【0104】
Sk−Mel−28異種移植片を持つマウスとは対照的に、ME4405腫瘍を持つ動物にCAV21を注入すると、疾患の徴候が多少観察され、最も顕著な徴候は前後両肢の一過性の衰弱だった。位置異常は観察されなかった。
【0105】
9.5 結果の考察
この研究は、CAV13、CAV15およびCAV21が悪性細胞株を細胞溶解的に破壊する能力を持つことを実証するものである。
【0106】
具体的に述べると、メラノーマ細胞のCAV21およびCAV15感染のインビトロ解析は、これら2つのウイルスが、ICAM−1とDAFの発現の結果として、Sk−Mel−28およびME4405細胞株に選択的に感染できると同時に、それぞれのコクサッキーウイルスが前立腺癌株PC3の細胞に感染してその死を引き起すことができたことを明らかにしている。さらに、NOD−SCIDマウスの側腹部で生育したヒトメラノーマ細胞株の異種移植片へのCAV21およびCAV15の腫瘍内注射により、CAV21およびCAV15は悪性メラノーマに対して治療的用途を持つことがわかる。これらの2つのウイルスのいずれかを既成のメラノーマ腫瘍に直接注射すると、対照動物と比較して腫瘍成長が抑制され、有意な腫瘍退縮が起こり、場合によっては完全な腫瘍破壊が起こった。さらに、エクスビボでウイルスに感染させた細胞の送達は腫瘍成長の完全な阻害をもたらし、エクスビボCAV21感染メラノーマ細胞が局所腫瘍成長を阻害するのに十分なウイルスを送達できることを示した。また、最初の腫瘍攻撃位置から離れた領域への感染細胞の皮下注射により、ウイルスは全身的に移動できることがわかる。
【0107】
CAV21およびCAV15感染症の発生は主に無症候性であるか、またはせいぜい軽微な倦怠感が現れるぐらいである。CAV21のCoe株は、アメリカ合衆国の食品医薬品局(FDA)により、CAV21に対する特異的抗ウイルス剤の臨床評価を行うための生投与が認証された(90)。CAV21およびCAV15に対する特異的抗ウイルス剤が最近開発されたことで、薬物介入によるウイルス感染の管理という安全対策が加わることになる。
【0108】
以上、好ましい態様をいくつか挙げて本発明を説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく数多くの変更態様が考えられることは、当業者には理解されるだろう。
【0109】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物中の異常細胞を処置する方法であって、前記異常細胞に感染することによってそれらの細胞の死を引き起す能力を持ち、かつ前記異常細胞に感染するために免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスの有効量を、前記哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記細胞接着分子がICAM−1である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルスが異常細胞に感染するために細胞接着分子と補体調節タンパク質の両方を認識する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルスが前記異常細胞に感染するために補体調節タンパク質を認識する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記補体調節タンパク質がDAFである請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞接着分子の発現が、正常な表現型を示す正常な前記細胞と比較して、異常細胞では上方制御される請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞接着分子の発現が、前記異常細胞が見いだされる周囲組織の細胞と比較して、異常細胞では上方制御される請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ウイルスが動物RNAウイルスである請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルスがエンテロウイルスである請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ウイルスがコクサッキーウイルスである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ウイルスがCAV−13、CAV−15、CAV−18およびCAV−21からなる群より選択される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ウイルスが組換えウイルスである請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記異常細胞が皮膚の悪性腫瘍、前立腺癌、胃癌、乳癌および大腸癌からなる群より選択される悪性腫瘍の細胞である請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ウイルスが静脈内、腫瘍内、腹腔内もしくは筋肉内投与されるか、または局所外用によって投与される請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ウイルスが注射によって投与される請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ウイルスが接種物1mlあたり約1×10プラーク形成単位を超える投与量で患者に投与される請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ウイルスが接種物1mlあたり約1×10〜1×1010プラーク形成単位の投与量で患者に投与される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
患者中のメラノーマを処置する方法であって、メラノーマ細胞に感染することによってそれらの細胞の死を引き起す能力を持ち、かつ前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスの有効量を、前記患者に投与することを含む方法。
【請求項19】
前記細胞接着分子が免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞接着分子がICAM−1である請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記ウイルスが前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子を認識する請求項18〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ウイルスが前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子と補体調節タンパク質の両方を認識する請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ウイルスが前記メラノーマ細胞に感染するために補体調節タンパク質を認識する請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記補体調節タンパク質がDAFである請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記ウイルスが動物RNAウイルスである請求項18〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ウイルスがピコルナウイルス科の一種である請求項18〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ウイルスがコクサッキーウイルスである請求項18〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ウイルスがCAV−13、CAV−15、CAV−18およびCAV−21からなる群より選択される請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ウイルスが静脈内、腫瘍内、腹腔内もしくは筋肉内投与されるか、または局所外用によって投与される請求項18〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ウイルスが注射によって投与される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ウイルスが接種物1mlあたり約1×10プラーク形成単位を超える投与量で患者に投与される請求項18〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ウイルスが接種物1mlあたり約1×10〜1×1010プラーク形成単位の投与量で患者に投与される請求項31に記載の方法。
【請求項33】
異常細胞がウイルス誘発細胞死に対して感受性であるかどうかを決定するために異常細胞をスクリーニングする方法であって、
(a)異常細胞を用意する工程、
(b)前記異常細胞に感染するために免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスの有効量を、前記細胞に加える工程、
(c)前記ウイルスの存在下に前記異常細胞をある期間にわたってインキュベートする工程、および
(d)ウイルスが異常細胞の少なくとも一部に感染してその死を引き起したかどうかを決定する工程、
を含む方法。
【請求項34】
前記細胞接着分子がICAM−1である請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ウイルスが前記異常細胞に感染するために細胞接着分子と補体調節タンパク質の両方を認識する請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記ウイルスが異常細胞に感染するために補体調節タンパク質を認識する請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記補体調節タンパク質がDAFである請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞接着分子の発現が、正常な表現型を示す正常な前記細胞と比較して、異常細胞では上方制御される請求項33〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞接着分子の発現が、前記異常細胞が見いだされる周囲組織の細胞と比較して、異常細胞では上方制御される請求項33〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記ウイルスが動物RNAウイルスである請求項33〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記ウイルスがピコルナウイルス科の一種である請求項33〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記ウイルスがエンテロウイルスである請求項33〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記ウイルスがコクサッキーウイルスである請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記異常細胞が皮膚の悪性腫瘍、前立腺癌、胃癌、乳癌および大腸癌からなる群より選択される悪性腫瘍の細胞である請求項33〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
メラノーマ細胞がウイルス誘発細胞死に対して感受性であるかどうかを決定するためにメラノーマ細胞をスクリーニングする方法であって、
(a)メラノーマ細胞を用意する工程、
(b)前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスの有効量を、前記メラノーマ細胞に加える工程、
(c)前記ウイルスの存在下に前記メラノーマ細胞をある期間にわたってインキュベートする工程、および
(d)前記ウイルスが前記メラノーマ細胞の少なくとも一部に感染してその死を引き起したかどうかを決定する工程、
を含む方法。
【請求項46】
前記細胞接着分子が免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーである請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記細胞接着分子がICAM−1である請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ウイルスがメラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子を認識する請求項45〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記ウイルスが前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子と補体調節タンパク質の両方を認識する請求項45〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記ウイルスが前記メラノーマ細胞に感染するために補体調節タンパク質を認識する請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記補体調節タンパク質がDAFである請求項45〜50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記ウイルスがピコルナウイルス科の一種である請求項45〜51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記ウイルスがエンテロウイルスである請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記ウイルスがコクサッキーウイルスである請求項53に記載の方法。
【請求項55】
異常細胞に感染してその死を引き起す能力に関してウイルスをスクリーニングする方法であって、
(a)前記異常細胞に感染するために免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスを選択する工程、
(b)選択した前記ウイルスを、異常細胞の試料と共に、ある期間にわたってインキュベートする工程、および
(c)選択した前記ウイルスが前記異常細胞の少なくとも一部の死を引き起すかどうかを決定する工程、
を含む方法。
【請求項56】
前記異常細胞に感染してその死を引き起すウイルスの能力を、別の細胞試料を使って工程(b)および(c)に付した異なる前記ウイルスの能力と比較する工程をさらに含む請求項55の方法。
【請求項57】
前記細胞接着分子がICAM−1である請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
前記ウイルスが前記異常細胞に感染するために細胞接着分子を認識する請求項55〜57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記ウイルスが前記異常細胞に感染するために細胞接着分子と補体調節タンパク質の両方を認識する請求項55〜58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記ウイルスが前記異常細胞に感染するために補体調節タンパク質を認識する請求項55に記載の方法。
【請求項61】
前記補体調節タンパク質がDAFである請求項59または60に記載の方法。
【請求項62】
前記細胞接着分子の発現が、正常な表現型を示す正常な前記細胞と比較して、異常細胞では上方制御される請求項55〜61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記ウイルスが動物RNAウイルスである請求項55〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記ウイルスがピコルナウイルス科の一種である請求項55〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記ウイルスがコクサッキーウイルスである請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記異常細胞が皮膚の悪性腫瘍、前立腺癌、胃癌、乳癌および大腸癌からなる群より選択される悪性腫瘍の細胞である請求項55〜59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
メラノーマ細胞に感染してその死を引き起す能力に関してウイルスをスクリーニングする方法であって、
(a)前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスを選択する工程、
(b)選択した前記ウイルスを、前記メラノーマ細胞の試料と共に、ある期間にわたってインキュベートする工程、および
(c)選択した前記ウイルスが前記メラノーマ細胞の少なくとも一部の死を引き起すかどうかを決定する工程、
を含む方法。
【請求項68】
前記メラノーマ細胞に感染してその死を引き起すウイルスの能力を、別の細胞試料を使って工程(b)および(c)に付した異なる前記ウイルスの能力と比較する工程をさらに含む請求項67の方法。
【請求項69】
前記細胞接着分子が免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーである請求項67または68に記載の方法。
【請求項70】
前記細胞接着分子がICAM−1である請求項67〜69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記ウイルスが前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子と補体調節タンパク質の両方を認識する請求項67〜69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記ウイルスが前記メラノーマ細胞に感染するために補体調節タンパク質を認識する請求項67または68に記載の方法。
【請求項73】
前記補体調節タンパク質がDAFである請求項71または72に記載の方法。
【請求項74】
前記ウイルスが動物RNAウイルスである請求項67〜73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記ウイルスがピコルナウイルス科の一種である請求項67〜74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記ウイルスがエンテロウイルスである請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記ウイルスがコクサッキーウイルスである請求項76に記載の方法。
【請求項78】
異常細胞に感染することによってそれらの細胞の死を引き起す能力を持ち、かつ前記異常細胞に感染するために免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスと、医薬的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【請求項79】
前記細胞接着分子がICAM−1である請求項78に記載の医薬組成物。
【請求項80】
前記ウイルスが前記異常細胞に感染するために細胞接着分子を認識する請求項78または79に記載の医薬組成物。
【請求項81】
前記ウイルスが前記異常細胞に感染するために細胞接着分子と補体調節タンパク質の両方を認識する請求項78〜80のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項82】
前記ウイルスが異常細胞に感染するために補体調節タンパク質を認識する請求項78に記載の医薬組成物。
【請求項83】
前記補体調節タンパク質がDAFである請求項82に記載の医薬組成物。
【請求項84】
前記細胞接着分子の発現が、正常な表現型を示す正常な前記細胞と比較して、異常細胞では上方制御される請求項78〜81のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項85】
前記ウイルスが動物RNAウイルスである請求項78〜84のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項86】
前記ウイルスがピコルナウイルス科の一種である請求項78〜85のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項87】
前記ウイルスがエンテロウイルスである請求項86に記載の医薬組成物。
【請求項88】
前記ウイルスがコクサッキーウイルスである請求項87に記載の医薬組成物。
【請求項89】
前記異常細胞が皮膚の悪性腫瘍、前立腺癌、胃癌、乳癌および大腸癌からなる群より選択される悪性腫瘍の細胞である請求項78〜88のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項90】
メラノーマ細胞に感染することによってそれらの細胞の死を引き起す能力を持ち、かつ前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスと、医薬的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【請求項91】
前記細胞接着分子が免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーである請求項90に記載の医薬組成物。
【請求項92】
前記細胞接着分子がICAM−1である請求項90または91に記載の医薬組成物。
【請求項93】
前記ウイルスがメラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子を認識する請求項90〜92のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項94】
前記ウイルスが前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子と補体調節タンパク質の両方を認識する請求項90〜93のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項95】
前記ウイルスが前記メラノーマ細胞に感染するために補体調節タンパク質を認識する請求項90に記載の医薬組成物。
【請求項96】
前記補体調節タンパク質がDAFである請求項95に記載の医薬組成物。
【請求項97】
前記ウイルスが動物RNAウイルスである請求項90〜96のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項98】
前記ウイルスがピコルナウイルス科の一種である請求項90〜97のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項99】
前記ウイルスがエンテロウイルスである請求項98に記載の医薬組成物。
【請求項100】
前記ウイルスがコクサッキーウイルスである請求項99に記載の医薬組成物。
【請求項101】
前記ウイルスがCAV−13、CAV−15、CAV−18およびCAV−21からなる群より選択される請求項100に記載の医薬組成物。
【請求項102】
請求項78〜101のいずれか一項に定義した医薬組成物が皮膚と接触するように含浸されている、患者の皮膚上に保持される送達手段。
【請求項103】
パッチ、パッド、ワッドまたは包帯を含む請求項102に記載の送達手段。
【請求項104】
患者の皮膚に粘着することによって前記医薬組成物を皮膚と接触した状態に保つようになっている請求項102または103に記載の送達手段。
【請求項105】
異常細胞に感染することによってそれらの細胞の死を引き起す能力を持ち、かつ前記異常細胞に感染するために免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスの、異常細胞処置用医薬の製造における使用。
【請求項106】
前記ウイルスが前記異常細胞に感染するためにICAM−1を認識する請求項105に記載の使用。
【請求項107】
前記ウイルスが前記異常細胞に感染するために細胞接着分子と補体調節タンパク質の両方を認識する請求項105または106に記載の使用。
【請求項108】
前記ウイルスが前記異常細胞に感染するために補体調節タンパク質を認識する請求項105に記載の使用。
【請求項109】
前記補体調節タンパク質がDAFである請求項107または108に記載の使用。
【請求項110】
前記細胞接着分子の発現が、正常な表現型を示す悪性でない前記細胞と比較して、異常細胞では上方制御される請求項105〜107のいずれか一項に記載の使用。
【請求項111】
前記細胞接着分子の発現が、前記異常細胞が見いだされる周囲組織の細胞と比較して、異常細胞では上方制御される請求項105〜107のいずれか一項に記載の使用。
【請求項112】
前記ウイルスが動物RNAウイルスである請求項105〜111のいずれか一項に記載の使用。
【請求項113】
前記ウイルスがピコルナウイルス科の一種である請求項105〜112のいずれか一項に記載の使用。
【請求項114】
前記ウイルスがエンテロウイルスである請求項113に記載の使用。
【請求項115】
前記ウイルスがコクサッキーウイルスである請求項114に記載の使用。
【請求項116】
前記ウイルスがCAV−13、CAV−15、CAV−18およびCAV−21からなる群より選択される請求項115に記載の使用。
【請求項117】
前記異常細胞が皮膚の悪性腫瘍、前立腺癌、胃癌、乳癌および大腸癌からなる群より選択される悪性腫瘍の細胞である請求項105〜115のいずれか一項に記載の使用。
【請求項118】
メラノーマ細胞に感染することによってそれらの細胞の死を引き起す能力を持ち、かつ前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子および補体調節タンパク質の少なくとも一方を認識するウイルスの、メラノーマ処置用医薬の製造における使用。
【請求項119】
前記細胞接着分子が免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーである請求項118に記載の使用。
【請求項120】
前記細胞接着分子がICAM−1である請求項118または119に記載の使用。
【請求項121】
前記ウイルスが前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子を認識する請求項118〜120のいずれか一項に記載の使用。
【請求項122】
前記ウイルスが前記メラノーマ細胞に感染するために細胞接着分子と補体調節タンパク質の両方を認識する請求項118〜121のいずれか一項に記載の使用。
【請求項123】
前記ウイルスが前記メラノーマ細胞に感染するために補体調節タンパク質を認識する請求項118に記載の使用。
【請求項124】
前記補体調節タンパク質がDAFである請求項122または123に記載の使用。
【請求項125】
前記ウイルスが動物RNAウイルスである請求項118〜124のいずれか一項に記載の使用。
【請求項126】
前記ウイルスがピコルナウイルス科の一種である請求項118〜125のいずれか一項に記載の使用。
【請求項127】
前記ウイルスがエンテロウイルスである請求項125または126に記載の使用。
【請求項128】
前記ウイルスがコクサッキーウイルスである請求項127に記載の使用。
【請求項129】
前記ウイルスがCAV−13、CAV−15、CAV−18およびCAV−21からなる群より選択される請求項128に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−190266(P2011−190266A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102853(P2011−102853)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2001−539480(P2001−539480)の分割
【原出願日】平成12年11月27日(2000.11.27)
【出願人】(507348702)ヴィラリティクス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】