説明

凹凸ブロックの凹部貼付用積層シート

【課題】 視覚障害者誘導用ブロックは、駅のプラットホーム、地下鉄の構内、歩道等で敷設されている。これは、視覚障害者を安全に案内するためのもので、その凹凸によって足の裏で検知できるようになっているばかりでなく、黄色に着色されて弱視者に対しても考慮されている。また、これとは別に最近どんどん地下鉄や地下街が発達し、不慮の災害時の場合の避難対策が叫ばれてきている。そこで、安価で簡単に施工でき、暗闇でも十分的確な誘導を可能にする積層シートを提供する。
【解決手段】透明プラスチックシート、蓄光顔料を含む塗料層、粘着層、および剥離シートがこの順に積層されているものであって、該塗料層は凹凸ブロックの表面を全面覆うものでないもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸ブロックの凹部貼付用積層シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
凹凸ブロックとは、視覚障害者誘導用のブロックのようにその表面に凹凸を有するものである。
視覚障害者誘導用ブロックは、駅のプラットホーム、地下鉄の構内、歩道等で敷設されている。これは、視覚障害者を安全に案内するためのもので、その凹凸によって足の裏で検知できるようになっているばかりでなく、黄色に着色されて弱視者に対しても考慮されている。
【0003】
また、これとは別に最近どんどん地下鉄や地下街が発達し、不慮の災害時の場合の避難対策が叫ばれてきている。例えば、地下鉄の駅で地震に遭遇し、停電になり地下街が真っ暗になった場合である。非常灯が設けられているが、その灯自体が破壊されている場合には非常灯の役を果たさない。
【0004】
このため、蓄光顔料を壁面に塗布することや、蓄光顔料を混合したブロックを床に敷設することが行われている。
しかし、壁面に蓄光顔料を塗布する方法では、誘導が十分ではない。また、床面に塗布する方法では、どのように塗布するか面倒であり、また塗布して乾燥するまで歩行を遮断しなければならない。
【0005】
また、蓄光顔料を混合したブロックを床に敷設する方法では、工事に時間がかかり大変である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、安価で簡単に施工でき、暗闇でも十分的確な誘導を可能にする積層シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような現状に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明凹凸ブロックの凹部貼付用積層シートを完成したものであり、その特徴とするところは、透明プラスチックシート、蓄光顔料を含む塗料層、粘着層、および剥離シートがこの順に積層されているものであって、該塗料層は凹凸ブロックの表面を全面覆うものでない点にある。
【0008】
ここでいう凹凸ブロックとは、床又は壁に貼付した場合の表面に凹凸があるものであって、材質はコンクリート、樹脂、金属、その他どのようなものでもよい。凹凸形状はどのようなものでもよい。代表的なものは、視覚障害者誘導用ブロックである。
【0009】
凹部貼付用シートとは、前記した凹凸ブロックの凹部にのみ貼付するものである。その形状は自由であり、貼付する凹凸ブロックの凹部にのみ貼付されるような小さいもの、ブロックの凸部にあたる部分を打ち抜き又は切り欠いたもの等である。
【0010】
しかし、最も好ましいものは、凹凸ブロックの表面と同形状で、凸部のみを打ち抜いた形状である。このようにすると貼付が容易である。
【0011】
透明プラスチックシートとは、本発明の必須構成要素の中で表面側に位置するものである。即ち、床に適用した場合には表面に出て直接足で踏まれる部分である。
材質はどのようなものでもよいが、耐候性や強度、透明性に優れたものが好ましい。例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂等である。厚みはその用途にもよるが、0.5〜1.5mm程度が好適であるが、より薄くても(0.1〜0.5mm)よい。透明度は可視光の透過度が90%以上であれば十分である。
【0012】
蓄光顔料を含む塗料層とは、蓄光顔料とビヒクルを混合したもので、それ以外の成分が混合されていてもよい。ビヒクルとしては、種々の透明樹脂でよい。
蓄光顔料とは、光を受けて、そのエネルギーにより光が消えた後も一定時間可視光を照射するものをいう。特に最近研究が進み、種々のものが市販されている。例えば、特許第2543825号に記載の蓄光性蛍光体等がある。この蓄光顔料は、粉体でも粒体でもよい。
【0013】
蓄光材の色は、どのようなものでもよいが、視覚障害者誘導用ブロックに使用する場合には黄色(夜間発光する色ではなく、発光でない反射光の色)が好ましい。
【0014】
この蓄光顔料とビヒクルの混合物を前記した透明プラスチックシートに塗布したものが塗料層である。塗布の方法は印刷の方法等が便利である。
【0015】
蓄光顔料(蓄光材料)は、一般に大小の粒状物の形態を有しているが、本願では小粒子の蓄光顔料粒子をこれより大きな粒径の心材の上に密に層状に付着させた蓄光材料(複合蓄光材という)を使用してもよい。該材料は、心材に透明な物を使用した場合、入射光が透過せずに内部で反射する光があるため蓄光量が増し、発光時にも逆方向に出た光が反射によって正方向に進み光量が増すことになる。
一定重量の蓄光材料において光照射を受けた場合、入射光をできるだけ広い面積で受けて蓄光し、発光時には一定強度以上で長時間発光することが好ましいと考えられる。一般に蓄光材粒子が大きい程、受光において不利になることは否めない。
【0016】
一方、小粒子の蓄光材料は液体中(硬化性バインダー)に分散した場合には、塗膜形成により著しく受光面積が広がり、蓄光に有利である(蓄光材料の粒径が1/100になれば表面積は1万倍、粒子数は100万倍)。しかし、それでも蓄光材粒子同士は密接せず離れ離れであり、心材使用における場合のような反射が無いため、入射光、蓄光の発光効率は低くなる。
【0017】
複合蓄光材は、代表的な例としては、心材の表面上に微細な蓄光材粒子を、バインダーを使用しあるいは使用せずに接着した物であり、その製造方法はすでに公開されている(特開2001−010851)。
心材は、無機物、有機高分子物質いずれもでもよく、炭酸カルシウム、珪砂、酸化チタン、ポリエチレンなどがあげられ、粒径は0.01〜10mm、好ましくは0.1〜5mm、粒子形状は球形、直方体、板状、棒状などのほか、異形のものでもよい。また、ガラスビーズ等の透明なもの、ガラスバルーンのような中空のものを使用してもよい。視認性がより向上する。
【0018】
蓄光材は、無機物、無機/有機複合物でもよい。蓄光材粒子の大きさは、心材の大きさより小さい粒子であり、粒子径において心材1に対し、1/2以下、好ましくは1/5以下、より好ましくは1/10以下である。蓄光材粒子の心材への付着には一般にバインダー(接着剤)を使用するが、融着でもよい。有機バインダーとしてはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂などがあげられ、すでに重合した高分子の溶媒溶液あるいは水エマルジョンを用いてもよい。
【0019】
複合蓄光材の製造方法は単純であり、その方法は、(1)心材に樹脂液(例えば、エポキシ樹脂10%対心材)を添加し均一にかきまぜたのち、(2)蓄光材粒子(例えば、5〜20μm)を添加してかきまぜ、蓄光材粒子が付着しなくなるまで繰り返す、(3)常温で放置して樹脂が硬化すれば完成である。
【0020】
さらに、蓄光顔料とビヒクルに加えて、ガラスビーズを混合してもよい。
ガラスビーズとは、ガラスを球形、楕円形など(おおよそでよい)にしたものをいう。サイズは0.01〜5mm程度である。これは市販しているものでよく特別なものである必要はない。ガラスビーズは、光学的には透明性が良く、屈折率の高いものが好ましく、物理的には耐磨耗性に優れ、圧縮強度の高いものが望ましい。
【0021】
粘着層は、粘着剤又は接着剤の層であり、本発明シートの用途において剥離しない程度の粘着力又は接着力があればよい。粘着剤や接着剤は通常の建築用のものでよい。
【0022】
剥離シートは、紙やプラスチックのシートであり、粘着層をカバーするためのものである。これも一般的なものでよい。
【0023】
また、前記した塗料層は貼付する凹凸ブロックの表面全面を覆うものであってはならない。その用途によって、どの程度覆うかは自由である。しかし、その下方の色が少なくとも50%は見える(即ち覆う量は半分以下)のが好ましい。
この全面を覆わない方法としては、塗料層の面積がブロック表面の面積の50%以下にする方法、塗料層は全面に塗布されているが、ミクロ的にはドット状に塗布することによって部分的に塗布する方法等がある。
【0024】
更に上記した塗料層と粘着層の間に透明フィルムを設けてもよい。これは粘着層の塗布を容易にしたり、塗料層の保護等の利点がある。
以上の構成要素では、昼間などでは、蓄光顔料の塗料層とそれが全面を覆っていないため、貼付しているブロックの表面の色が見えている。特に視覚障害者誘導用ブロックでは、色が問題になることが多いが、以上の例では塗料層が覆う程度を考慮すれば問題はないと思われる。
【0025】
また、塗料層と粘着層の間に着色剤層を設けてもよい。
着色剤層は、前記した塗料層の次の層であり、これを設けると本発明シートの全体の色を決める要素となる部分である。例えば、前記した視覚障害者誘導用ブロックでは、全体が黄色とするよう規定(薦め)されているため、この着色剤層を黄色とするのである。勿論、塗料層との組み合わせで、あくまでも全体としての色であり、この着色剤層のみで決まるかどうかは分からない。
この着色剤層は、塗料層の上に塗布するだけでよい。
【0026】
本発明の製造方法として、1枚1枚所定のサイズで製造しても、長尺状に製造して裁断してもよい。また巻反で製造し、現場でそのまま貼付できるところはそのまま貼付し、他はその場でカットしてもよい。
【0027】
本発明シートの使用方法は、本発明の剥離シートを剥離し、粘着層を介してブロックに貼るだけでよい。これで、下層から順に粘着層、塗料層、透明プラスチックシートの順になる。
【0028】
本発明シートの用途として、視覚障害者誘導用ブロックに貼付する方法がある。これは新たにブロックを敷設する場合に、本発明シートを貼付して敷設してもよい。
また、すでに敷設されているブロックの上に貼付してもよい。この場合、この視覚障害者誘導ブロックは、そもそも安全な出口に誘導するよう敷設されているため、どこに貼付するか考慮する必要がない。よって、本発明シートをこのブロックに貼付するだけで完成である。
【発明の効果】
【0029】
本発明凹凸ブロックの凹部貼付用積層シートには、次のような利点がある。
(1) ブロックに貼るだけであり、非常に安価で工期が短い。よって、地下街等で簡単に採用できる。
(2) 蓄光顔料を塗布しているため、停電時でも十分に発光し、人々を誘導できる。
(3) 蓄光顔料の下層に着色剤層又はブロックそのものの色の層があり、蓄光顔料層が下方を全面カバーしていないため、明るいときには着色剤層の色が見える。
(4) 凹凸ブロックの凹部にのみ貼付するため、人間の靴等によって損傷をほとんど受けない。
(5) 既設の視覚障害者誘導用ブロックに貼るだけで、避難経路を示す誘導標識となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下好適な実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0031】
図1は、本発明凹凸ブロックの凹部貼付用積層シート1の1例を示す断面図である。上方から、透明プラスチックシート2、蓄光顔料を含む塗料層3、着色剤層4、粘着層5及び剥離シート6である。
【0032】
ここで、透明プラスチックシート1は、アクリル樹脂の厚さ1mmのものを用いた。塗料は、通常の塗料(アクリル系)に市販の蓄光顔料を10重量%混合したものを用いた。蓄光顔料の粉体のサイズは0.1mm以下であった。大きさと形状は通常の視覚障害者誘導用ブロックと同じである。
【0033】
この塗料を0.2mmの厚みで印刷機で塗布した。この印刷はシルクスクリーンを用いて、全表面にドット状に行った。ドットの総面積は全体の40%であった。
【0034】
次にこの塗料層の上に着色剤層を設けた。これも黄色の塗料で印刷したものである。これも厚みは0.2mmであった。
【0035】
そして粘着剤を塗布した。そして、ブロックの凸部になる部分を打ち抜き、全体に剥離紙を貼付した。打ち抜きや剥離紙の貼付の順序は自由である。
【0036】
図2は、16個の凸部を有する凹凸ブロック(視覚障害者誘導用ブロックを模式的に示したもの)に合うように16個の打ち抜きを施したものである。この打ち抜き孔7を凸部に合わせて貼るだけである。
【0037】
図3は、本発明シートの他の例であり、積層物は図1と同様であるが、平面形状が図のように矢印状である。図4は、この矢印形の本発明シート1を凹凸ブロック8の凹部に3枚貼付したところを示す。このように簡単に貼ることができ、効果も十分である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明積層シートの断面図である
【図2】本発明積層シートの平面図である。
【図3】本発明積層シートの他の例を示す平面図である。
【図4】本発明の使用状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 本発明凹凸ブロックの凹部貼付用積層シート
2 透明プラスチックシート
3 蓄光顔料を含む塗料層
4 着色剤層
5 粘着層
6 剥離シート
7 打ち抜き孔
8 凹凸ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチックシート、蓄光顔料を含む塗料層、粘着層、および剥離シートがこの順に積層されているものであって、該塗料層は凹凸ブロックの表面を全面覆うものでないことを特徴とする凹凸ブロックの凹部貼付用積層シート。
【請求項2】
塗料層と粘着層の間に透明プラスチックフィルムを設けたものである請求項1記載の凹凸ブロックの凹部貼付用積層シート。
【請求項3】
塗料層と粘着層の間に着色剤層を設けたものである請求項1記載の凹凸ブロックの凹部貼付用積層シート。
【請求項4】
凹凸ブロックの凸部に対応する部分は打ち抜かれているものである請求項1〜3記載の凹凸ブロックの凹部貼付用積層シート。
【請求項5】
該塗料層には、ガラスビーズも含有されているものである請求項1〜4記載の凹凸ブロックの凹部貼付用積層シート。
【請求項6】
該凹凸ブロックは、視覚障害者誘導用ブロックである1〜5記載の凹凸ブロックの凹部貼付用積層シート。
【請求項7】
該塗料層は、透明プラスチックシートの一部にのみ塗布されているものである請求項1〜6記載の凹凸ブロックの凹部貼付用積層シート。
【請求項8】
全体形状は凹凸ブロックと同じ形状である請求項1〜7記載の凹凸ブロックの凹部貼付用積層シート。
【請求項9】
全体形状は凹凸ブロックの一部である請求項1〜8記載の凹凸ブロックの凹部貼付用積層シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−280720(P2008−280720A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125188(P2007−125188)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(592189376)オサダ技研株式会社 (23)
【出願人】(000214629)
【Fターム(参考)】