出力光モニタ付光導波路型光変調器
【課題】
誘電体基板として薄板を用いた場合においても、モニタ用出力光として光導波路から放射される放射モード光を、より正確に検出するための出力光モニタ付光導波路型光変調器を提供すること。
【解決手段】
誘電体基板1上に光導波路2を形成した光導波路素子、該光導波路素子への光ファイバ3の接続を補強する光ファイバ補強部材4、該光導波路の一部から放射される放射モード光を該光ファイバ補強部材を介して受光する光検出器を有する出力光モニタ付光導波路型光変調器において、光導波路2の出力部と光ファイバ3との非結合光が該光検出器に入射することを防止する非結合光遮蔽手段32が、該光ファイバ補強部材4の中空部に設けられていることを特徴とする。
誘電体基板として薄板を用いた場合においても、モニタ用出力光として光導波路から放射される放射モード光を、より正確に検出するための出力光モニタ付光導波路型光変調器を提供すること。
【解決手段】
誘電体基板1上に光導波路2を形成した光導波路素子、該光導波路素子への光ファイバ3の接続を補強する光ファイバ補強部材4、該光導波路の一部から放射される放射モード光を該光ファイバ補強部材を介して受光する光検出器を有する出力光モニタ付光導波路型光変調器において、光導波路2の出力部と光ファイバ3との非結合光が該光検出器に入射することを防止する非結合光遮蔽手段32が、該光ファイバ補強部材4の中空部に設けられていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力光モニタ付光導波路型光変調器に関するものであり、特に、本発明はモニタ用出力光として光導波路から放射される放射モード光を適宜の方向において利用し、変調器そのものの実質的構造を変更することなく、簡単なモニタ手段により出力光をモニタし光変調器の動作点をフィードバック制御し、モニタ信号におけるノイズを低減させた出力光モニタ付光導波路型変調器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、光導波路素子などを用いた光変調器の出力光を一定出力の状態に維持するためには、光変調器の出力光をモニタし、出力光の変化に対応して、光変調器に印加する変調電圧などの大きさを変化させることが必要である。
光導波路素子などによる光変調器の出力光をモニタする方法として、従来は光導波路素子内に方向性結合器(カプラ)などを配置して、光信号出力用の光導波路とは別に、モニタ光出力用の光導波路を設ける方式が一般的に行なわれている。この方式においては、光導波路素子内に、モニタ光分岐用の光回路を新たに設ける必要があり、またモニタ出力用光ファイバを、光出力信号用光ファイバとは別に光導波路素子に接続する必要がある。
【0003】
また、別のモニタ方式として、特許文献1に開示されているように、光導波路上のクラッド部に傾斜穴をつけるか、あるいは光導波路素子上に回折レンズなどを配置し、光導波路中の信号出力光の一部分を、このレンズ等により素子基板の外に取り出す方式が知られている。この方式においては、光導波路型光導波路素子上に、モニタ光取り出し用レンズ等を、新たに取りつけることが必要であり、また、モニタ光は、光導波路素子の上方に取り出されるため、モニタ光の受光部材は、光導波路型素子を、その収容ケース内に実装した後に、この素子に取りつけなければならず、この取り付けには、かなりの手間を要する。
【0004】
さらに、特許文献2には、光導波路素子の素子端を斜めに形成し、導波路から出力する光の一部分を斜め方向に反射させ、この反射光をモニタ光として受光する方式が開示されている。この方式においては、素子端面の傾斜形状は、素子からの主出力光に悪影響を与えない範囲内において選定する必要があり、このためこの方式の実用性については問題がある。
【0005】
特許文献3には、光導波路素子上に直接受光素子を設置し、光導波路中の信号出力光の一部を直接受光し、モニタするデバイスが記載されている。このデバイスにおいて、受光素子の取付手段を、光導波路素子上に取りつけることが必要であり、かつ、この取付手段の実装及びそれに受光素子を接続する作業及び調整作業は、光導波路素子を、それを収容するケースに実装した後に行われる。このため、この受光素子の取り付け、調整作業は、かなり難しくなり、光導波路素子にダメージを与える可能性が高くなる。
【0006】
以上を踏まえ、本出願人は、図1に示すように、特許文献4において、モニタ用出力光として、光導波路2における分岐光導波路部の合一点から放射される放射モード光20を、適宜の方向において利用し、光変調器そのものの実質的な構造を変更することなく、簡単な構造と、優れた加工性及び光ファイバ操作性を有するキャピラリー4を利用したモニタ手段により、出力光の光強度をモニタできる「出力光モニタ付光導波路型変調器」を提案した。図1において、1は誘電体基板、3は光ファイバ、5はキャピラリーに形成された放射モード光20を反射する反射手段、6は放射モード光を受光する受光素子、7は光導波路素子及び前記受光素子などを内蔵する筐体、10は入射光、さらに11は出射光を各々示す。
【0007】
さらに、光導波路型光変調器の基板からは、上述した放射モード光以外にも多様な迷光が漏出しており、キャピラリーの内部に入射した光は、キャピラリーの内面で反射され、それらの一部は光電変換素子に入射することとなり、光検出器からのモニタ信号出力もバックグラウンド・ノイズを多く含む波形となる。このため、本出願人は特許文献5において、キャピラリーの誘電体基板側とは反対の端面には、放射モード光の一部のみを光検出器に向かって反射させる反射手段を設けると共に、該キャピラリーの表面は、該反射手段及び該反射手段による反射光が光検出器に向かう光路上を除いて、光吸収層が形成されている「出力光モニタ付光導波路型光変調器」を提案した。
【0008】
他方、光変調周波数の広帯域化を実現するためには、変調信号であるマイクロ波と光波との速度整合を図ることが重要であり、これまでに、様々な方法が考案されている。具体例を挙げれば、バッファ層の厚膜化、電極の高アスペクト化やリッジ構造などがこれにあたる。特に、以下の特許文献6又は7においては、30μm以下の厚みを有する極めて薄い基板(以下、「薄板」という。)に、光導波路並びに変調電極を組み込み、該薄板より誘電率の低い他の基板を接合し、マイクロ波に対する実効屈折率を下げ、マイクロ波と光波との速度整合を図ることが行われている。
【0009】
しかしながら、光導波路を形成する基板の厚みが薄くなるに従い、光導波路を伝搬する光波は基板表面に平行な方向(厚み方向に垂直な方向。以下、「横方向」という。)に広がる傾向を示す。このため、光ファイバの横方向の幅よりも、基板から出力される光波の横方向のモード径が広くなるため、図2に示すように光導波路2の出射端からの出力光のうち、光ファイバ3に結合せず外部に漏れ出す光波21(以下、「非結合光」という。)が多くなり、キャピラリー4などの補強部材を伝搬し、光検出器に入射するという不具合を生じる。
なお、以下の図2,3,6,7及び11については、非結合光21の記述を明確にするため、光導波路2の出力端に接続される光ファイバ3の内、キャピラリー4中に保持される部分の記載を省略してある。
【0010】
図3は、図2に示す光導波路素子の側面図であり、図4に光導波路素子のキャピラリーの側面側(特に図3の点線12の部分)を観察した様子を示す。なお、図3において、1は誘電体基板、2は光導波路、8は接着層、9は補強板を示す。
図4(a)は出射光がON状態の様子を示しており、非結合光及び若干の放射モード光が観察されている。他方、図4(b)は出射光がOFF状態の様子を示しており、放射モード光及び若干の非結合光が観測されている。
【0011】
図5(a)に示すように、通常は、放射モード光Bは、光変調器から出力される信号光(メイン光)Aとは逆相状態で変化しているが、図4のように非結合光が放射モード光を受光する受光素子に入射すると、図5(b)の波形B’に示すように放射モード光として観測される信号が、信号光Aの逆相状態からシフトする結果となる。ただし、図5の横軸は光導波路素子に印加する電圧の変化量を示し、縦軸は検出される光強度を示す。
【0012】
図5(b)の波形B’に示すように、位相シフトが発生する原因は、放射モード光が受光素子に到達するまでの光路長と、非結合光が受光素子に到達するまでの光路長とが異なり、両者の光路長の差による位相差が発生するためである。
また、非結合光の影響は上述した位相シフトだけでなく、本来の放射モード光が来ないときに非結合光を受光するため、波形B’の振幅値が減少し、放射モード光の検知に際しての消光比が劣化する原因ともなる。
【0013】
モニタ光として放射モード光を受光素子により検出し、受光素子からの検出信号に基づき、光導波路素子に印加するDCバイアス等を調整して、信号光の動作点を制御する場合には、該受光素子が非結合光も併せて受光しているため信号光とモニタ光との関係が逆相状態からシフトし、さらにモニタ出力の消光比が劣化するため制御すべき信号光の状態を正確に判別することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平11−194237号公報
【特許文献2】特開平5−34650号公報
【特許文献3】特開平5−53086号公報
【特許文献4】特開2001−281507号公報
【特許文献5】特開2004−294708号公報
【特許文献6】特開昭64−18121号公報
【特許文献7】特開2003−215519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、誘電体基板として薄板を用いた場合においても、モニタ用出力光として光導波路から放射される放射モード光を、より正確に検出するための出力光モニタ付光導波路型光変調器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明では、誘電体基板と、該誘電体基板の表面又は裏面に形成され、2つ以上の分岐光導波路部及び該分岐光導波路部の合一点から伸び出ている光導波路出力部を有する光導波路とを備えた光導波路素子と、該光導波路出力部の出力端に接続される光ファイバと、該光導波路出力部の出力端と該光ファイバの端面との接続部を補強する光ファイバ補強部材と、前記分岐光導波路部の合一点から放射され、かつ該光導波路出力部の両側を通って伝搬される放射モード光の一部を、該誘電体基板及び該光ファイバ補強部材を介して受光する光検出器と、を有する出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該光ファイバ補強部材が、該光ファイバの接続端部分を収容する中空部を有し、かつ、該放射モード光を伝搬するキャピラリーであり、該キャピラリーの該誘電体基板側とは反対の端面には、前記放射モード光の一部を該光検出器に向かって反射させる反射手段が形成されており、該中空部には、該光導波路出力部と該光ファイバとの非結合光が該光検出器に入射することを防止する非結合光遮蔽手段が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項2に係る発明では、請求項1に記載の出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該誘電体基板の厚さは30μm以下であることを特徴とする。
【0018】
請求項3に係る発明では、請求項1又は2に記載の出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該非結合光遮蔽手段は、該キャピラリーの中空部の内面に配置された金属膜、反射膜又は光吸収膜のいずれかであることを特徴とする。
【0019】
請求項4に係る発明では、請求項1又は2に記載の出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該非結合光遮蔽手段は、該キャピラリーの中空部の形状が、該誘電体基板側の端面の穴を拡張するものであることを特徴とする。
【0020】
請求項5に係る発明では、請求項1又は2に記載の出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該非結合光遮蔽手段は、該キャピラリーの中空部と該光ファイバと間に挿入された管状挿入材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明により、光導波路出力部と光ファイバとの非結合光が光検出器に入射することを防止することが可能となるため、信号光に対して逆相状態のモニタ光をより正確に検出することが可能となる。
【0022】
請求項2に係る発明により、誘電体基板の厚さは30μm以下であるため、非結合光が発生し易い光変調器であるにも拘らず、請求項1の構成を採用することで、放射モード光のみを正確に検出することが可能となる。
【0023】
請求項3に係る発明により、非結合光遮蔽手段は、キャピラリーの中空部の内面に配置された金属膜、反射膜又は光吸収膜のいずれかであるため、光ファイバの近傍を伝搬する非結合光を効果的に遮蔽することが可能となる。
【0024】
請求項4に係る発明により、非結合光遮蔽手段は、キャピラリーの中空部の形状が、誘電体基板側の端面の穴を拡張するものであるため、非結合光が出射する光導波路の端部に近接して非結合光遮蔽手段を配置することが可能となり、非結合光が伝搬して広がる前に効率よく遮蔽することが可能となる。また、キャピラリーの中空部の一部を拡張する工程のみで非結合光遮蔽手段を形成することが可能となるため、製造工程の複雑化や高コスト化を抑制することも可能となる。
【0025】
請求項5に係る発明により、非結合光遮蔽手段は、キャピラリーの中空部と光ファイバとの間に挿入された管状挿入材であるため、非結合光が出射する光導波路の端部に近接して非結合光遮蔽手段を配置することが可能となり、管状挿入材内に非結合光を選択的に伝搬させることにより、非結合光が伝搬して広がる前に効率よく遮蔽することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の出力光モニタ付光導波路型光変調器の概略図である。
【図2】従来のキャピラリー近傍の状態を示す平面図である。
【図3】従来のキャピラリー近傍の状態を示す側面図である。
【図4】従来のキャピラリー近傍の状態を示す観察図である。
【図5】信号光と受光素子のモニタ光との関係を示すグラフである。
【図6】本発明に係る第1の実施例(参考例)を示す図である。
【図7】本発明に係る第2の実施例(参考例)を示す図である。
【図8】本発明に係る第3の実施例を示す図である。
【図9】本発明に係る第4の実施例を示す図である。
【図10】本発明に係る第5の実施例(参考例)を示す図である。
【図11】本発明に係る第6の実施例(参考例)を示す図である。
【図12】本発明に係る第7の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を好適例を用いて詳細に説明する。
図6は、本発明に係る出力光モニタ付光導波路型光変調器の第1の実施例(参考例)を示す。
本発明は、誘電体基板1と、該誘電体基板の表面又は裏面に形成され、2つ以上の分岐光導波路部及び該分岐光導波路部の合一点から伸び出ている光導波路出力部を有する光導波路2とを備えた光導波路素子と、該光導波路出力部の出力端に接続される光ファイバ3と、該光導波路出力部の出力端と該光ファイバの端面との接続部を補強する光ファイバ補強部材4と、前記分岐光導波路部の合一点から放射され、かつ該光導波路出力部の両側を通って伝搬される放射モード光20の一部を、該誘電体基板及び該光ファイバ補強部材を介して受光する光検出器(不図示)と、を有する出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該光ファイバ補強部材が、該光ファイバの接続端部分を収容する中空部を有し、かつ、該放射モード光を伝搬するキャピラリー4であり、該キャピラリーの該誘電体基板側とは反対の端面には、前記放射モード光の一部を該光検出器に向かって反射させる反射手段が形成されており、該光導波路出力部と該光ファイバとの非結合光21が該光検出器に入射することを防止する非結合光遮蔽手段30が設けられていることを特徴とする。
【0028】
特に、本発明が適用される光変調器は、誘電体基板の厚さが30μm以下であり、このような薄板を用いた光変調器においては、光ファイバ3に結合しない非結合光21が増加する傾向にあるため、本発明を効果的に適用することが可能である。
【0029】
本発明に係る出力光モニタ付光導波路型光変調器の全体構成としては、図1に示す従来の光変調器の構成が採用でき、特に、キャピラリー4などに非結合光遮蔽手段を形成している点を除いて、同様に構成することが可能である。
本発明においても、ケース(筐体)7内に、LiNbO3などの強誘電体からなる基板1を固定する。例えば、その表面部分には、マッハツェンダー型光導波路2が形成されている。このマッハツェンダー型光導波路2は、光導波路入力部、それから分岐した分岐光導波路部、その分岐光導波路部の合波部、及び光導波路出力部を有し、各分岐部上に不図示の制御電極(信号電極及び接地電極など)が配置されている。基板1の入力端部(図1の右側)には、入力側キャピラリーが接合されている。キャピラリーの中空部を通して入力側光ファイバが導入され、その先端面が、光導波路入力部の入力端面に接続されている。
【0030】
光導波路2の出力端側には、同様にして、出力側キャピラリー4、出力側光ファイバ3が接続されている。
光波は、矢印10のように入力側光ファイバから、光導波路入力部に入り、分岐部に分配される。制御電極に、印加電気信号を、例えばケース7の側面に配置されたコネクタ(不図示)を介して印加すると、分岐光導波路部を伝搬する光波の光位相が、印加電気信号に応じて変化する。位相変化を受けた光波は、合波部において合波し、互に干渉して信号光を発生する。この干渉後の信号光は、キャピラリー3により補強された光ファイバ3を通ってケース7の外に、矢印11のように出力される。
【0031】
光導波路合波部6で、基板1内に放射された2つの放射モード光のうち、放射モード光20は、キャピラリー3の内部を通りキャピラリー3の先端面の上半部に形成された反射面5において反射される。キャピラリー3の形状として、略円柱状のものを使用する場合には、該円柱状の周面において放射モード光が集光され、光導波路2の出力部にほぼ直角をなす方向に放射される。この放射モード光20は、受光素子6に入射し、放射モード光の光強度に対応した電気信号を出力することとなる。
なお、光導波路2と光ファイバ3との結合部や、キャピラリーの外周面、さらには受光素子の受光面などで、伝搬する光波(信号光又は放射モード光)が反射し、戻り光とならないように、特許文献4又は5のように伝搬光の進行方向と境界面との成す角度を垂直状態から若干傾けて構成することが好ましい。
【0032】
第1の実施例(参考例)においては、図6に示すように、非結合光遮蔽手段は、キャピラリー4の反射手段5における光ファイバ3に近接する部分の一部30を切除することで構成されている。
【0033】
非結合光遮蔽手段の第2の実施例(参考例)としては、図7に示すように、キャピラリー4から露出した光ファイバ3の表面又は該光ファイバの近傍に位置する該キャピラリーの表面に光吸収材31を配置することができる。特に、キャピラリーの反射面5における非結合光が反射する位置に光吸収材31を配置することが、より効果的である。光吸収材31は、カーボンブラックなどの光吸収材料を含む塗料を、キャピラリー4などの表面に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。光吸収材料や形成方法については、このようなものに限らず、当該技術分野において公知の技術を適用することができることは、言うまでもない。
【0034】
非結合光遮蔽手段の第3の実施例としては、図8に示すように、光ファイバ3を貫通させる、キャピラリーの中空部の内面に、32で示した金属膜、反射膜又は光吸収膜のいずれかを配置し、光導波路2と光ファイバ3との接合部から放射される非結合光を中空部の内部に閉じ込め、受光素子の方向に放射されないよう構成する。
【0035】
非結合光遮蔽手段の第4の実施例としては、図9に示すように、キャピラリー4の中空部の形状が、誘電体基板1側の端面の穴33を拡張するものである。拡張された穴33の内面により、非結合光がキャピラリーに侵入するのを抑制することが可能である。拡張された穴の内面に必要に応じて光吸収材を塗布することも可能である。このような穴33は、キャピラリーの成形加工時に、容易に形成することが可能なものである。
【0036】
非結合光遮蔽手段の第5の実施例(参考例)としては、図10に示すように、キャピラリー4と誘電体基板1との間に、34のような反射膜又は光吸収膜を形成するものである。反射膜等の形状は、光ファイバへの信号光の伝搬を可能とするため、光ファイバ3と光導波路2との接合部分を除くと共に、受光素子が検出する放射モード光を遮らない範囲で任意の形状を選択することが可能である。
【0037】
非結合光遮蔽手段の第6の実施例(参考例)としては、図11に示すように、キャピラリー4内を伝搬する非結合光が該キャピラリーから外部に放出される位置35に形成される、キャピラリーの切除部分又はキャピラリー表面に設けられた光吸収材である。切除部分の形状は、第1の実施例と同様に、非結合光の受光素子への伝搬を防止するものであれば、任意の形状が選択できる。図4に示すように、非結合光は、キャピラリー4の領域35付近より集中的に放射されており、この領域のキャピラリー表面に遮蔽手段を設けるだけでも、非結合光の遮蔽効果は高くなる。
【0038】
非結合光遮蔽手段の第7の実施例としては、図12に示すように、キャピラリー4の中空部と該光ファイバとの間に挿入された管状挿入材35である。本構成とすることにより、光導波路2と光ファイバ3との接合部から放射される非結合光を管状挿入材35の内部に閉じ込め、受光素子の方向に放射されないよう構成することが可能となる。この管状挿入材35は、あらかじめ光ファイバ3の外周に取り付けておき、その後キャピラリー4を取り付けてもよいし、逆にあらかじめキャピラリー4の中空部内に取り付けておき、該中空挿入材の貫通孔中に光ファイバ3を挿入し固定してもよい。
【0039】
管状挿入材35の寸法及び形状は、受光素子が検出する放射モード光を遮らない範囲で任意に選択することが可能である。ここで、管状挿入材の誘電体基板に接する側とは反対側の端面の位置および形状は、キャピラリーの反射面とは異なるように設けることがのぞましい。特に、図12に示すように、管状挿入材35の長さをキャピラリー4よりも長くしておけば、管状挿入材内を伝搬した非結合光と放射モード光との分離が容易となり、非結合光が光検出器に入射することを、容易に防止することが可能となる。さらに、キャピラリーの中空部の内面、または管状挿入材の外面に、金属膜、反射膜又は光吸収膜のいずれかを配置することにより、非結合光の遮蔽効果をより高めることができる。
また、管状挿入材の屈折率としては、キャピラリーの屈折率と同じか、高い方が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る出力光モニタ付光導波路型光変調器によれば、誘電体基板として薄板を用いた場合においても、モニタ用出力光として光導波路から放射される放射モード光を、より正確に検出するための出力光モニタ付光導波路型光変調器を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1 誘電体基板
2 光導波路
3 光ファイバ
4 キャピラリー
5 反射手段
6 受光素子
7 筐体
8 接着層
9 補強板
10 入射光
11 出射光(信号光)
20 放射モード光
21 非結合光
30 切除部分
31 光吸収材
32 金属膜等
33 拡張部
34 反射膜等
35 管状挿入材
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力光モニタ付光導波路型光変調器に関するものであり、特に、本発明はモニタ用出力光として光導波路から放射される放射モード光を適宜の方向において利用し、変調器そのものの実質的構造を変更することなく、簡単なモニタ手段により出力光をモニタし光変調器の動作点をフィードバック制御し、モニタ信号におけるノイズを低減させた出力光モニタ付光導波路型変調器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、光導波路素子などを用いた光変調器の出力光を一定出力の状態に維持するためには、光変調器の出力光をモニタし、出力光の変化に対応して、光変調器に印加する変調電圧などの大きさを変化させることが必要である。
光導波路素子などによる光変調器の出力光をモニタする方法として、従来は光導波路素子内に方向性結合器(カプラ)などを配置して、光信号出力用の光導波路とは別に、モニタ光出力用の光導波路を設ける方式が一般的に行なわれている。この方式においては、光導波路素子内に、モニタ光分岐用の光回路を新たに設ける必要があり、またモニタ出力用光ファイバを、光出力信号用光ファイバとは別に光導波路素子に接続する必要がある。
【0003】
また、別のモニタ方式として、特許文献1に開示されているように、光導波路上のクラッド部に傾斜穴をつけるか、あるいは光導波路素子上に回折レンズなどを配置し、光導波路中の信号出力光の一部分を、このレンズ等により素子基板の外に取り出す方式が知られている。この方式においては、光導波路型光導波路素子上に、モニタ光取り出し用レンズ等を、新たに取りつけることが必要であり、また、モニタ光は、光導波路素子の上方に取り出されるため、モニタ光の受光部材は、光導波路型素子を、その収容ケース内に実装した後に、この素子に取りつけなければならず、この取り付けには、かなりの手間を要する。
【0004】
さらに、特許文献2には、光導波路素子の素子端を斜めに形成し、導波路から出力する光の一部分を斜め方向に反射させ、この反射光をモニタ光として受光する方式が開示されている。この方式においては、素子端面の傾斜形状は、素子からの主出力光に悪影響を与えない範囲内において選定する必要があり、このためこの方式の実用性については問題がある。
【0005】
特許文献3には、光導波路素子上に直接受光素子を設置し、光導波路中の信号出力光の一部を直接受光し、モニタするデバイスが記載されている。このデバイスにおいて、受光素子の取付手段を、光導波路素子上に取りつけることが必要であり、かつ、この取付手段の実装及びそれに受光素子を接続する作業及び調整作業は、光導波路素子を、それを収容するケースに実装した後に行われる。このため、この受光素子の取り付け、調整作業は、かなり難しくなり、光導波路素子にダメージを与える可能性が高くなる。
【0006】
以上を踏まえ、本出願人は、図1に示すように、特許文献4において、モニタ用出力光として、光導波路2における分岐光導波路部の合一点から放射される放射モード光20を、適宜の方向において利用し、光変調器そのものの実質的な構造を変更することなく、簡単な構造と、優れた加工性及び光ファイバ操作性を有するキャピラリー4を利用したモニタ手段により、出力光の光強度をモニタできる「出力光モニタ付光導波路型変調器」を提案した。図1において、1は誘電体基板、3は光ファイバ、5はキャピラリーに形成された放射モード光20を反射する反射手段、6は放射モード光を受光する受光素子、7は光導波路素子及び前記受光素子などを内蔵する筐体、10は入射光、さらに11は出射光を各々示す。
【0007】
さらに、光導波路型光変調器の基板からは、上述した放射モード光以外にも多様な迷光が漏出しており、キャピラリーの内部に入射した光は、キャピラリーの内面で反射され、それらの一部は光電変換素子に入射することとなり、光検出器からのモニタ信号出力もバックグラウンド・ノイズを多く含む波形となる。このため、本出願人は特許文献5において、キャピラリーの誘電体基板側とは反対の端面には、放射モード光の一部のみを光検出器に向かって反射させる反射手段を設けると共に、該キャピラリーの表面は、該反射手段及び該反射手段による反射光が光検出器に向かう光路上を除いて、光吸収層が形成されている「出力光モニタ付光導波路型光変調器」を提案した。
【0008】
他方、光変調周波数の広帯域化を実現するためには、変調信号であるマイクロ波と光波との速度整合を図ることが重要であり、これまでに、様々な方法が考案されている。具体例を挙げれば、バッファ層の厚膜化、電極の高アスペクト化やリッジ構造などがこれにあたる。特に、以下の特許文献6又は7においては、30μm以下の厚みを有する極めて薄い基板(以下、「薄板」という。)に、光導波路並びに変調電極を組み込み、該薄板より誘電率の低い他の基板を接合し、マイクロ波に対する実効屈折率を下げ、マイクロ波と光波との速度整合を図ることが行われている。
【0009】
しかしながら、光導波路を形成する基板の厚みが薄くなるに従い、光導波路を伝搬する光波は基板表面に平行な方向(厚み方向に垂直な方向。以下、「横方向」という。)に広がる傾向を示す。このため、光ファイバの横方向の幅よりも、基板から出力される光波の横方向のモード径が広くなるため、図2に示すように光導波路2の出射端からの出力光のうち、光ファイバ3に結合せず外部に漏れ出す光波21(以下、「非結合光」という。)が多くなり、キャピラリー4などの補強部材を伝搬し、光検出器に入射するという不具合を生じる。
なお、以下の図2,3,6,7及び11については、非結合光21の記述を明確にするため、光導波路2の出力端に接続される光ファイバ3の内、キャピラリー4中に保持される部分の記載を省略してある。
【0010】
図3は、図2に示す光導波路素子の側面図であり、図4に光導波路素子のキャピラリーの側面側(特に図3の点線12の部分)を観察した様子を示す。なお、図3において、1は誘電体基板、2は光導波路、8は接着層、9は補強板を示す。
図4(a)は出射光がON状態の様子を示しており、非結合光及び若干の放射モード光が観察されている。他方、図4(b)は出射光がOFF状態の様子を示しており、放射モード光及び若干の非結合光が観測されている。
【0011】
図5(a)に示すように、通常は、放射モード光Bは、光変調器から出力される信号光(メイン光)Aとは逆相状態で変化しているが、図4のように非結合光が放射モード光を受光する受光素子に入射すると、図5(b)の波形B’に示すように放射モード光として観測される信号が、信号光Aの逆相状態からシフトする結果となる。ただし、図5の横軸は光導波路素子に印加する電圧の変化量を示し、縦軸は検出される光強度を示す。
【0012】
図5(b)の波形B’に示すように、位相シフトが発生する原因は、放射モード光が受光素子に到達するまでの光路長と、非結合光が受光素子に到達するまでの光路長とが異なり、両者の光路長の差による位相差が発生するためである。
また、非結合光の影響は上述した位相シフトだけでなく、本来の放射モード光が来ないときに非結合光を受光するため、波形B’の振幅値が減少し、放射モード光の検知に際しての消光比が劣化する原因ともなる。
【0013】
モニタ光として放射モード光を受光素子により検出し、受光素子からの検出信号に基づき、光導波路素子に印加するDCバイアス等を調整して、信号光の動作点を制御する場合には、該受光素子が非結合光も併せて受光しているため信号光とモニタ光との関係が逆相状態からシフトし、さらにモニタ出力の消光比が劣化するため制御すべき信号光の状態を正確に判別することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平11−194237号公報
【特許文献2】特開平5−34650号公報
【特許文献3】特開平5−53086号公報
【特許文献4】特開2001−281507号公報
【特許文献5】特開2004−294708号公報
【特許文献6】特開昭64−18121号公報
【特許文献7】特開2003−215519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、誘電体基板として薄板を用いた場合においても、モニタ用出力光として光導波路から放射される放射モード光を、より正確に検出するための出力光モニタ付光導波路型光変調器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明では、誘電体基板と、該誘電体基板の表面又は裏面に形成され、2つ以上の分岐光導波路部及び該分岐光導波路部の合一点から伸び出ている光導波路出力部を有する光導波路とを備えた光導波路素子と、該光導波路出力部の出力端に接続される光ファイバと、該光導波路出力部の出力端と該光ファイバの端面との接続部を補強する光ファイバ補強部材と、前記分岐光導波路部の合一点から放射され、かつ該光導波路出力部の両側を通って伝搬される放射モード光の一部を、該誘電体基板及び該光ファイバ補強部材を介して受光する光検出器と、を有する出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該光ファイバ補強部材が、該光ファイバの接続端部分を収容する中空部を有し、かつ、該放射モード光を伝搬するキャピラリーであり、該キャピラリーの該誘電体基板側とは反対の端面には、前記放射モード光の一部を該光検出器に向かって反射させる反射手段が形成されており、該中空部には、該光導波路出力部と該光ファイバとの非結合光が該光検出器に入射することを防止する非結合光遮蔽手段が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項2に係る発明では、請求項1に記載の出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該誘電体基板の厚さは30μm以下であることを特徴とする。
【0018】
請求項3に係る発明では、請求項1又は2に記載の出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該非結合光遮蔽手段は、該キャピラリーの中空部の内面に配置された金属膜、反射膜又は光吸収膜のいずれかであることを特徴とする。
【0019】
請求項4に係る発明では、請求項1又は2に記載の出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該非結合光遮蔽手段は、該キャピラリーの中空部の形状が、該誘電体基板側の端面の穴を拡張するものであることを特徴とする。
【0020】
請求項5に係る発明では、請求項1又は2に記載の出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該非結合光遮蔽手段は、該キャピラリーの中空部と該光ファイバと間に挿入された管状挿入材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明により、光導波路出力部と光ファイバとの非結合光が光検出器に入射することを防止することが可能となるため、信号光に対して逆相状態のモニタ光をより正確に検出することが可能となる。
【0022】
請求項2に係る発明により、誘電体基板の厚さは30μm以下であるため、非結合光が発生し易い光変調器であるにも拘らず、請求項1の構成を採用することで、放射モード光のみを正確に検出することが可能となる。
【0023】
請求項3に係る発明により、非結合光遮蔽手段は、キャピラリーの中空部の内面に配置された金属膜、反射膜又は光吸収膜のいずれかであるため、光ファイバの近傍を伝搬する非結合光を効果的に遮蔽することが可能となる。
【0024】
請求項4に係る発明により、非結合光遮蔽手段は、キャピラリーの中空部の形状が、誘電体基板側の端面の穴を拡張するものであるため、非結合光が出射する光導波路の端部に近接して非結合光遮蔽手段を配置することが可能となり、非結合光が伝搬して広がる前に効率よく遮蔽することが可能となる。また、キャピラリーの中空部の一部を拡張する工程のみで非結合光遮蔽手段を形成することが可能となるため、製造工程の複雑化や高コスト化を抑制することも可能となる。
【0025】
請求項5に係る発明により、非結合光遮蔽手段は、キャピラリーの中空部と光ファイバとの間に挿入された管状挿入材であるため、非結合光が出射する光導波路の端部に近接して非結合光遮蔽手段を配置することが可能となり、管状挿入材内に非結合光を選択的に伝搬させることにより、非結合光が伝搬して広がる前に効率よく遮蔽することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の出力光モニタ付光導波路型光変調器の概略図である。
【図2】従来のキャピラリー近傍の状態を示す平面図である。
【図3】従来のキャピラリー近傍の状態を示す側面図である。
【図4】従来のキャピラリー近傍の状態を示す観察図である。
【図5】信号光と受光素子のモニタ光との関係を示すグラフである。
【図6】本発明に係る第1の実施例(参考例)を示す図である。
【図7】本発明に係る第2の実施例(参考例)を示す図である。
【図8】本発明に係る第3の実施例を示す図である。
【図9】本発明に係る第4の実施例を示す図である。
【図10】本発明に係る第5の実施例(参考例)を示す図である。
【図11】本発明に係る第6の実施例(参考例)を示す図である。
【図12】本発明に係る第7の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を好適例を用いて詳細に説明する。
図6は、本発明に係る出力光モニタ付光導波路型光変調器の第1の実施例(参考例)を示す。
本発明は、誘電体基板1と、該誘電体基板の表面又は裏面に形成され、2つ以上の分岐光導波路部及び該分岐光導波路部の合一点から伸び出ている光導波路出力部を有する光導波路2とを備えた光導波路素子と、該光導波路出力部の出力端に接続される光ファイバ3と、該光導波路出力部の出力端と該光ファイバの端面との接続部を補強する光ファイバ補強部材4と、前記分岐光導波路部の合一点から放射され、かつ該光導波路出力部の両側を通って伝搬される放射モード光20の一部を、該誘電体基板及び該光ファイバ補強部材を介して受光する光検出器(不図示)と、を有する出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該光ファイバ補強部材が、該光ファイバの接続端部分を収容する中空部を有し、かつ、該放射モード光を伝搬するキャピラリー4であり、該キャピラリーの該誘電体基板側とは反対の端面には、前記放射モード光の一部を該光検出器に向かって反射させる反射手段が形成されており、該光導波路出力部と該光ファイバとの非結合光21が該光検出器に入射することを防止する非結合光遮蔽手段30が設けられていることを特徴とする。
【0028】
特に、本発明が適用される光変調器は、誘電体基板の厚さが30μm以下であり、このような薄板を用いた光変調器においては、光ファイバ3に結合しない非結合光21が増加する傾向にあるため、本発明を効果的に適用することが可能である。
【0029】
本発明に係る出力光モニタ付光導波路型光変調器の全体構成としては、図1に示す従来の光変調器の構成が採用でき、特に、キャピラリー4などに非結合光遮蔽手段を形成している点を除いて、同様に構成することが可能である。
本発明においても、ケース(筐体)7内に、LiNbO3などの強誘電体からなる基板1を固定する。例えば、その表面部分には、マッハツェンダー型光導波路2が形成されている。このマッハツェンダー型光導波路2は、光導波路入力部、それから分岐した分岐光導波路部、その分岐光導波路部の合波部、及び光導波路出力部を有し、各分岐部上に不図示の制御電極(信号電極及び接地電極など)が配置されている。基板1の入力端部(図1の右側)には、入力側キャピラリーが接合されている。キャピラリーの中空部を通して入力側光ファイバが導入され、その先端面が、光導波路入力部の入力端面に接続されている。
【0030】
光導波路2の出力端側には、同様にして、出力側キャピラリー4、出力側光ファイバ3が接続されている。
光波は、矢印10のように入力側光ファイバから、光導波路入力部に入り、分岐部に分配される。制御電極に、印加電気信号を、例えばケース7の側面に配置されたコネクタ(不図示)を介して印加すると、分岐光導波路部を伝搬する光波の光位相が、印加電気信号に応じて変化する。位相変化を受けた光波は、合波部において合波し、互に干渉して信号光を発生する。この干渉後の信号光は、キャピラリー3により補強された光ファイバ3を通ってケース7の外に、矢印11のように出力される。
【0031】
光導波路合波部6で、基板1内に放射された2つの放射モード光のうち、放射モード光20は、キャピラリー3の内部を通りキャピラリー3の先端面の上半部に形成された反射面5において反射される。キャピラリー3の形状として、略円柱状のものを使用する場合には、該円柱状の周面において放射モード光が集光され、光導波路2の出力部にほぼ直角をなす方向に放射される。この放射モード光20は、受光素子6に入射し、放射モード光の光強度に対応した電気信号を出力することとなる。
なお、光導波路2と光ファイバ3との結合部や、キャピラリーの外周面、さらには受光素子の受光面などで、伝搬する光波(信号光又は放射モード光)が反射し、戻り光とならないように、特許文献4又は5のように伝搬光の進行方向と境界面との成す角度を垂直状態から若干傾けて構成することが好ましい。
【0032】
第1の実施例(参考例)においては、図6に示すように、非結合光遮蔽手段は、キャピラリー4の反射手段5における光ファイバ3に近接する部分の一部30を切除することで構成されている。
【0033】
非結合光遮蔽手段の第2の実施例(参考例)としては、図7に示すように、キャピラリー4から露出した光ファイバ3の表面又は該光ファイバの近傍に位置する該キャピラリーの表面に光吸収材31を配置することができる。特に、キャピラリーの反射面5における非結合光が反射する位置に光吸収材31を配置することが、より効果的である。光吸収材31は、カーボンブラックなどの光吸収材料を含む塗料を、キャピラリー4などの表面に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。光吸収材料や形成方法については、このようなものに限らず、当該技術分野において公知の技術を適用することができることは、言うまでもない。
【0034】
非結合光遮蔽手段の第3の実施例としては、図8に示すように、光ファイバ3を貫通させる、キャピラリーの中空部の内面に、32で示した金属膜、反射膜又は光吸収膜のいずれかを配置し、光導波路2と光ファイバ3との接合部から放射される非結合光を中空部の内部に閉じ込め、受光素子の方向に放射されないよう構成する。
【0035】
非結合光遮蔽手段の第4の実施例としては、図9に示すように、キャピラリー4の中空部の形状が、誘電体基板1側の端面の穴33を拡張するものである。拡張された穴33の内面により、非結合光がキャピラリーに侵入するのを抑制することが可能である。拡張された穴の内面に必要に応じて光吸収材を塗布することも可能である。このような穴33は、キャピラリーの成形加工時に、容易に形成することが可能なものである。
【0036】
非結合光遮蔽手段の第5の実施例(参考例)としては、図10に示すように、キャピラリー4と誘電体基板1との間に、34のような反射膜又は光吸収膜を形成するものである。反射膜等の形状は、光ファイバへの信号光の伝搬を可能とするため、光ファイバ3と光導波路2との接合部分を除くと共に、受光素子が検出する放射モード光を遮らない範囲で任意の形状を選択することが可能である。
【0037】
非結合光遮蔽手段の第6の実施例(参考例)としては、図11に示すように、キャピラリー4内を伝搬する非結合光が該キャピラリーから外部に放出される位置35に形成される、キャピラリーの切除部分又はキャピラリー表面に設けられた光吸収材である。切除部分の形状は、第1の実施例と同様に、非結合光の受光素子への伝搬を防止するものであれば、任意の形状が選択できる。図4に示すように、非結合光は、キャピラリー4の領域35付近より集中的に放射されており、この領域のキャピラリー表面に遮蔽手段を設けるだけでも、非結合光の遮蔽効果は高くなる。
【0038】
非結合光遮蔽手段の第7の実施例としては、図12に示すように、キャピラリー4の中空部と該光ファイバとの間に挿入された管状挿入材35である。本構成とすることにより、光導波路2と光ファイバ3との接合部から放射される非結合光を管状挿入材35の内部に閉じ込め、受光素子の方向に放射されないよう構成することが可能となる。この管状挿入材35は、あらかじめ光ファイバ3の外周に取り付けておき、その後キャピラリー4を取り付けてもよいし、逆にあらかじめキャピラリー4の中空部内に取り付けておき、該中空挿入材の貫通孔中に光ファイバ3を挿入し固定してもよい。
【0039】
管状挿入材35の寸法及び形状は、受光素子が検出する放射モード光を遮らない範囲で任意に選択することが可能である。ここで、管状挿入材の誘電体基板に接する側とは反対側の端面の位置および形状は、キャピラリーの反射面とは異なるように設けることがのぞましい。特に、図12に示すように、管状挿入材35の長さをキャピラリー4よりも長くしておけば、管状挿入材内を伝搬した非結合光と放射モード光との分離が容易となり、非結合光が光検出器に入射することを、容易に防止することが可能となる。さらに、キャピラリーの中空部の内面、または管状挿入材の外面に、金属膜、反射膜又は光吸収膜のいずれかを配置することにより、非結合光の遮蔽効果をより高めることができる。
また、管状挿入材の屈折率としては、キャピラリーの屈折率と同じか、高い方が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る出力光モニタ付光導波路型光変調器によれば、誘電体基板として薄板を用いた場合においても、モニタ用出力光として光導波路から放射される放射モード光を、より正確に検出するための出力光モニタ付光導波路型光変調器を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1 誘電体基板
2 光導波路
3 光ファイバ
4 キャピラリー
5 反射手段
6 受光素子
7 筐体
8 接着層
9 補強板
10 入射光
11 出射光(信号光)
20 放射モード光
21 非結合光
30 切除部分
31 光吸収材
32 金属膜等
33 拡張部
34 反射膜等
35 管状挿入材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、該誘電体基板の表面又は裏面に形成され、2つ以上の分岐光導波路部及び該分岐光導波路部の合一点から伸び出ている光導波路出力部を有する光導波路とを備えた光導波路素子と、
該光導波路出力部の出力端に接続される光ファイバと、
該光導波路出力部の出力端と該光ファイバの端面との接続部を補強する光ファイバ補強部材と、
前記分岐光導波路部の合一点から放射され、かつ該光導波路出力部の両側を通って伝搬される放射モード光の一部を、該誘電体基板及び該光ファイバ補強部材を介して受光する光検出器と、
を有する出力光モニタ付光導波路型光変調器において、
該光ファイバ補強部材が、該光ファイバの接続端部分を収容する中空部を有し、かつ、該放射モード光を伝搬するキャピラリーであり、
該キャピラリーの該誘電体基板側とは反対の端面には、前記放射モード光の一部を該光検出器に向かって反射させる反射手段が形成されており、
該中空部には、該光導波路出力部と該光ファイバとの非結合光が該光検出器に入射することを防止する非結合光遮蔽手段が設けられていることを特徴とする出力光モニタ付光導波路型光変調器。
【請求項2】
請求項1に記載の出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該誘電体基板の厚さは30μm以下であることを特徴とする出力光モニタ付光導波路型光変調器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該非結合光遮蔽手段は、該キャピラリーの中空部の内面に配置された金属膜、反射膜又は光吸収膜のいずれかであることを特徴とする出力光モニタ付光導波路型光変調器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該非結合光遮蔽手段は、該キャピラリーの中空部の形状が、該誘電体基板側の端面の穴を拡張するものであることを特徴とする出力光モニタ付光導波路型光変調器。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該非結合光遮蔽手段は、該キャピラリーの中空部と該光ファイバとの間に挿入された管状挿入材であることを特徴とする出力光モニタ付光導波路型光変調器。
【請求項1】
誘電体基板と、該誘電体基板の表面又は裏面に形成され、2つ以上の分岐光導波路部及び該分岐光導波路部の合一点から伸び出ている光導波路出力部を有する光導波路とを備えた光導波路素子と、
該光導波路出力部の出力端に接続される光ファイバと、
該光導波路出力部の出力端と該光ファイバの端面との接続部を補強する光ファイバ補強部材と、
前記分岐光導波路部の合一点から放射され、かつ該光導波路出力部の両側を通って伝搬される放射モード光の一部を、該誘電体基板及び該光ファイバ補強部材を介して受光する光検出器と、
を有する出力光モニタ付光導波路型光変調器において、
該光ファイバ補強部材が、該光ファイバの接続端部分を収容する中空部を有し、かつ、該放射モード光を伝搬するキャピラリーであり、
該キャピラリーの該誘電体基板側とは反対の端面には、前記放射モード光の一部を該光検出器に向かって反射させる反射手段が形成されており、
該中空部には、該光導波路出力部と該光ファイバとの非結合光が該光検出器に入射することを防止する非結合光遮蔽手段が設けられていることを特徴とする出力光モニタ付光導波路型光変調器。
【請求項2】
請求項1に記載の出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該誘電体基板の厚さは30μm以下であることを特徴とする出力光モニタ付光導波路型光変調器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該非結合光遮蔽手段は、該キャピラリーの中空部の内面に配置された金属膜、反射膜又は光吸収膜のいずれかであることを特徴とする出力光モニタ付光導波路型光変調器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該非結合光遮蔽手段は、該キャピラリーの中空部の形状が、該誘電体基板側の端面の穴を拡張するものであることを特徴とする出力光モニタ付光導波路型光変調器。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の出力光モニタ付光導波路型光変調器において、該非結合光遮蔽手段は、該キャピラリーの中空部と該光ファイバとの間に挿入された管状挿入材であることを特徴とする出力光モニタ付光導波路型光変調器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−100154(P2011−100154A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250(P2011−250)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【分割の表示】特願2005−284467(P2005−284467)の分割
【原出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【分割の表示】特願2005−284467(P2005−284467)の分割
【原出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】
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