説明

分光光度計

【課題】Xeフラッシュランプに代表されるような間欠発光光源の発光量の利用効率を改善し、良好なS/N比を得ることが可能な分光光度計を実現する。
【解決手段】広波長範囲の単一光源であるXeフラッシュランプ1からの光のうちの所望の波長光をモノクロメータ10で選択し試料7を通過させ光検出器7で検出し、信号処理回路23のローパスフィルタ24に供給する。Xeフラッシュランプ1の発光光度のピーク値から半値となるまでの経過時間を時定数とする遅延手段等の時間幅拡張手段としてのローパスフィルタ24により光検出器7からの出力信号の波形を期間的に拡張する。拡張した期間の波形信号は増幅器25、A/D変換回路26を介してコンピュータ26に供給される。拡張した期間の波形信号を使用することができるので、全発光光量に対する利用効率を向上でき、S/N比の改善効果を最適化することかできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の波長範囲または特定の波長における透過率や反射率など、試料の分光測光値を計測する分光光度計に関する。
【背景技術】
【0002】
所定波長範囲または特定波長における透過率や反射率など、試料の分光測光値を計測する分光光度計として、紫外・可視域で試料の吸収スペクトルを測定するための紫外・可視分光光度計がある。代表的な紫外・可視分光光度計は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
これらの分光光度計では光源として、紫外域用の重水素放電管と、可視域用のハロゲンランプとの2種類の光源を搭載し、測定波長域に応じてこれらを切り替えて使用している。しかしながら、2種類の光源を搭載するための容積と、これらを制御するための複雑な切り替え機構を必要とし、装置全体の大形化と高コスト化が避けられなかった。
【0004】
そこで、小形で低コストの分光光度計を実現するため、例えば特許文献2には、紫外から可視域、あるいは紫外から近赤外域の広波長範囲を単一の光源でカバーし、複数光源の切り替え機構を必要としない分光光度計が記載されている。このような光源として代表的なものに、Xe(キセノン)フラッシュランプがある。
【0005】
Xeフラッシュランプは紫外域から近赤外域にわたって概略連続的な発光スペクトルを発生するため、単一の光源で紫外・可視域の分光測定に必要とされる波長域をカバーすることができる。さらに、一般的なハロゲンランプに比べて発熱量が小さいことから、分光光度計の小型化に有利な光源である。
【0006】
一方で、Xeフラッシュランプの時間発光特性は、時間的に連続して発光する重水素放電管やハロゲンランプと異なり、比較的長い無発光期間を隔てて持続時間の短いパルス状の発光が繰り返し間欠的に行われるという特徴をもつ。Xeフラッシュランプの発光量は、パルス状の発光期間における尖頭値としては重水素放電管やハロゲンランプより大きいが、複数回の発光を平均した単位時間当たりの平均光量としてはこれらの光源より小さい。
【0007】
このため、重水素放電管とハロゲンランプの両方を搭載した分光光度計において、光源部分のみをそのままXeフラッシュランプに置き換えただけでは、従来の分光測定において確保されていたS/N比を保持することは難しい。
【0008】
そこで、特許文献2には、このように間欠的に発光する光源の時間発光特性に鑑み、光源の有効な発光期間にのみ光検出器の出力信号を取り込み、無発光期間には光検出器の出力信号を取り込まないことで、S/N比を改善する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−53527号公報
【特許文献2】米国特許第3、810、696号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
Xeフラッシュランプの代表的な時間発光特性におけるパルス状の発光ピークの半値全幅は約500ns程度で、一般的にこのパルス状発光が約20〜100Hz程度で繰返し行われる。この時間発光特性を前提として、特許文献2のようにパルス状の発光ピークの半値全幅相当の有効発光期間のみに光検出器の出力信号を取り込むためには、信号処理回路に概略10MHz程度の応答周波数帯域が求められる。
【0011】
しかしながら、信号処理回路をこのように広帯域化すると、耐雑音性能の低下や、信号増幅時に大きなゲインを稼ぐのが難しいという問題が生じる。さらに、リセット回路付きの積分回路を用いる場合には、リセット用スイッチからの不要流入電流の影響を受けやすく、高速スイッチングによるノイズの発生等のデメリットを生じる。
【0012】
さらに、Xeフラッシュランプの時間発光波形は一般にピーク時刻に対して前後が非対称であり、ピークを過ぎた後の方が発光量がゼロになるまで長い時間裾を引くという特徴を有する。このような時間発光波形の中でピーク周辺の半値全幅相当の時間幅分の発光量だけを利用したのでは、全発光量に対する利用効率が低くなり、S/N比を改善する効果を最適化することはできない。このため、Xeフラッシュランプを光源として用いた場合であっても、十分なS/N比の向上化が困難であった。
【0013】
本発明の目的は、Xeフラッシュランプに代表されるような間欠発光光源の発光量の利用効率を改善し、良好なS/N比を得ることが可能な分光光度計及び分光計測方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。
【0015】
無発光期間を隔てて間欠的に発光する光源からの光を分光して単色光を取り出し、取り出された単色光を試料に照射し、通過した単色光の強度を電気信号に変換し、上記光源の1回の発光の時間発光プロファイルの半値幅よりも長い時間幅に上記電気信号の時間幅を拡張し、拡張した時間幅の信号に基いて、上記試料の光学的特性を算出する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、信号処理回路の耐雑音性能を劣化させることなく、かつ間欠的に発光する光源の発光量の利用効率を最適化して良好なS/N比を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1による分光光度計の概略構成図である。
【図2】Xeフラッシュランプの時間発光特性を説明する図である
【図3】本発明の実施例2による分光光度計の概略構成図である。
【図4】本発明に実施例2の変形例示す図である。
【図5】本発明の実施例3による分光光度計の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の実施例1である分光光度計の概略構成図である。実施例1においては、試料の分光測光値を測定するのに用いる光束の数が1本のシングルビーム方式の分光光度計の例である。
【0020】
図1において、光源1にはXeフラッシュランプを用いる。光源1は光源用電源2から供給される光源駆動電流によって点灯される。
【0021】
図2は、Xeフラッシュランプの代表的な時間発光特性波形(図2の(A))及び光源用電源2からの光源駆動電流と光源1の時間発光特性の関係(図2の(B))を示す図である。図2において、光源1のパルス状発光ピークの半値全幅は約500nsである。
【0022】
図1において、光源1から出た光はモノクロメータ10に入射する。モノクロメータ10はコンピュータ30の指令で動作する波長制御機構11により測定波長λnmの単色光を試料7に向けて射出するよう制御される。測定波長λは、200nmから1100nmの波長範囲で選択可能である。試料7を透過した光は光検出器20で電気信号に変換される。光検出器20にはシリコンフォトダイオードを用いるが、光電子増倍管や、他の検出原理の光検出器であっても良い。光検出器20の出力信号は信号処理回路23に導かれる。信号処理回路23の初段はローパスフィルタ24で構成されている。
【0023】
ここで、Xeフラッシュランプの時間発光プロファイルは、図2の(A)に示すように、パルス状発光がピークを迎えて変曲点を過ぎた後、ほぼ指数関数的に減衰しているとみなすことができる。すなわち、パルス状発光がピークを迎えた後の変曲点の位置を時間軸の原点t=0とすると、発光信号波形I(t)は、次式(1)で表される。
【0024】
【数1】

【0025】
ただし、式(1)において、kはそのランプの特性から得られる定数である。
【0026】
ただし、以降の計算を簡単にするため、パルス状発光の上記変曲点における値を1としている。
【0027】
Xeフラッシュランプの発光を光検出器20で捉えた信号波形をローパスフィルタ24に通した後に得られる信号波形も、ピークを迎えて変曲点を過ぎた後は、ほぼ次式(2)の形で減衰していると見なすことができる。式(2)において、pは比例定数である。
【0028】
【数2】

【0029】
このとき、およそ0.7/kが、発行信号波形I(t)がピーク値の半値を取るまでの経過時間、すなわちローパスフィルタ24の時定数に相当する。ピーク波形全体の信号量の総和が変化しない、すなわち、ゲイン=1のローパスフィルタを考えると、式(1)をt=0〜無限大で積分した結果より、p=kとなるので、式(2)は、次式(3)となる。
【0030】
【数3】

【0031】
ここで、ローパスフィルタ24通過後の信号がピークを迎えて変曲点を過ぎた後の領域におけるS/N比を評価する。
【0032】
ショットノイズを考慮しなければならないような微弱光で無い限り、ノイズ成分の瞬時値の平均は光量によらず一定として良いので、I(t)をt=0からt=τまで積分したものを信号Sとする場合、それに対応するノイズNは、積分時間幅τがローパスフィルタの時定数1/kよりも長いので、ほぼkと積分時間幅τの積の平方根に比例すると見なすとすると、次式(4)、(5)となえる。
【0033】
【数4】

【0034】
【数5】

【0035】
これらの比としてS/N比を求めると、次式(6)となる。
【0036】
【数6】

【0037】
式(6)が最大となるのは、式(6)をτで微分したものが0になるときである。そのとき、次式(7)のようになる。
【0038】
【数7】

【0039】
式(7)はkτが約1.25のときに満足されるので、S/N比を最大化できる積分時間τはほぼ1.25/kで与えられる。このときのS/N比の最大値は、式6より、kτが一定であれば、kの値によらず一定の値を取ることが分かる。
【0040】
すなわち、信号処理回路を構成する上で都合の良い時定数を0.7/kとし、そのkに合わせてτ=1.25/kの積分時間でローパスフィルタ24の信号を積分して用いることにより、常に最適化されたS/N比で測光値を得ることができる。
【0041】
例えば、時定数=10μsのときには、積分時間=18μsとすれば良い。但し、この積分時間はXeフラッシュランプの時間発光プロファイルまたはその信号波形をローパスフィルタ24に通した後に得られる信号波形がピークを迎えて変曲点を過ぎた後の領域に関する積分である。実際の積分処理は、その前のXeフラッシュランプの発光開始時点からはじめる必要があるので、発光開始からからピークを迎えて変曲点に至るまでの時間を加算する必要があり、時定数=10μsの場合には、例えば、積分時間を25μsのように設定する。
【0042】
これらの結果を踏まえて実施例1では、ローパスフィルタ24の時定数を10μsとしている。このときの応答周波数帯域は高々100kHzであり、Xeフラッシュランプの時間発光プロファイルに応答するような広周波数帯域の信号処理回路に比べて、耐雑音性能や、信号増幅時に大きなゲインを確保するのに有利である。
【0043】
このローパスフィルタ24は同時に信号増幅作用も有する。前述の積分処理は信号処理回路中のローパスフィルタ24の後段に積分回路を設けることで実現できるが、ローパスフィルタ24の出力信号を増幅した後にA/D変換器でデジタルデータに変換し、デジタル加算処理により実現しても良い。
【0044】
本実施例1では、ローパスフィルタ24の出力信号は増幅器25で十分な信号電圧になるまで増幅した後、A/D変換器26でデジタルデータに変換し、コンピュータ30に取り込む。A/D変換器26が入力信号をデジタルデータに変換するサンプリング周期は1μsとしている。A/D変換器26は、ローパスフィルタ24の時定数と概略同等かそれよりも短く設定したサンプリング間隔で、概略周期的に信号処理回路23の出力信号をデジタル量に変換する。
【0045】
コンピュータ(光学的特性算出手段)30では光源1の1回のパルス状発光毎に発光開始後25μs間に発生するデジタルデータを加算した結果を用いて、試料7に関する分光測光値、例えば透過率や吸光度などの光学的特性を算出する。
【0046】
すなわち、25μsの間に発生する25個のデジタルデータをD0〜D24としたとき、次式(8)に示す加算結果が用いられる。
【0047】
【数8】

【0048】
本実施例1では、モノクロメータ10と試料7を、モノクロメータ10から射出される単色光が試料7に入射するよう配置しているが、光源1から出た白色光を先に試料7に入射させ、試料7を透過した光をモノクロメータ10に導いて単色光化するようにしても、上記で得られるS/N比の改善効果に違いは無い。
【0049】
このように本実施例1では、信号処理回路の応答周波数帯域を広くすることなしに、式(6)において期待可能な、最適化されたS/N比を実現することが可能になる。
【0050】
つまり、本発明の実施例1によれば、広波長範囲の単一光源であるXeフラッシュランプ1からの光のうちの所望の波長光をモノクロメータで選択し、試料7を通過させ、光検出器7で検出する。そして、Xeフラッシュランプ1の発光光度のピーク値から半値となるまでの経過時間を時定数とする遅延手段等の時間幅拡張手段としてのローパスフィルタ24により、光検出器7からの出力信号の波形を期間的に拡張し、拡張した期間の波形信号を利用している。これにより、全発光光量に対する利用効率を向上でき、S/N比の改善効果を最適化することかできる。
【0051】
なお、上記実施例1において、信号処理回路23は、ローパスフィルタ24の後段に、積分回路と、この積分回路に蓄積された電荷を消去するリセット回路を備えるように構成することもできる。
【0052】
上記積分回路は、光源1の1回の発光の時間発光プロファイルの中で発光開始から発光強度がピークを迎えてその後第2の所定の強度以下に減衰するまでの期間に対応する積分時間だけローパスフィルタ24を通過した電気信号を積分する。そして、A/D変換器26は、上記積分時間の終了直後に積分回路に蓄積された電荷量に対応する電気信号をデジタルデータに変換し、その後、リセット回路が積分回路に蓄積された電荷を消去する。
【実施例2】
【0053】
次に、本発明の実施例2について説明する。図3は、本発明の実施例2である分光光度計の概略構成図である。本実施例2の光学系およびA/D変換器26までの信号処理系は実施例1と同じであるので説明は省略する。
【0054】
例えば、特開2008−58239号公報に記載されているように、ノイズを含んだ信号を複数加算した結果を用いて測光値の算出を行う場合に、相対的にノイズレベルの高い信号の寄与分を低くすることでS/N比を改善する技術が知られている。
【0055】
具体的には、各信号に重み係数を乗じたものを加算するようにし、各信号が含む相対的なノイズレベルに応じてそれぞれに乗じる重み係数を変えるものである。加算すべき各信号が含むノイズ量の期待値が統計的に等しい場合には、「相対的にノイズレベルの高い信号」とは、すなわち「有効信号成分が相対的に小さい信号」を意味する。
【0056】
ローパスフィルタ24の出力信号は図2の(A)に示すような時間変化波形を示すので、この波形のうちの積分時間内の強度変化と相似な値の並びを有する重み系数列を{Ci}(i=0〜24)とする。ここで、各iは、A/D変換器26のサンプリング周期に対応する。また、{Ci}は最大値が1となるように規格化したものを用いる。本実施例2では、実施例1の式(8)に従って算出していた積分値に代えて、次式(9)を用いる。
【0057】
【数9】

【0058】
Xeフラッシュランプ光源1、光源用電源2およびその制御条件、ローパスフィルタ24が同一であれば、上記{Ci}は発光毎に概略いつも同じ形状を示すので、本実施例2では、{Ci}はそれらを数値化したものをコンピュータ30の外部メモリである重み係数テーブル31として保存して用いる。
【0059】
また、実施例2の変形例として、1回のパルス状の発光毎に{Ci}を実測して得ることも可能である。その場合の構成例を図4に示す。
【0060】
図4において、光源1の直後にビームスプリッタ12を置き、光源1から出た光の一部を第2の光検出器21に導く。第2の光検出器21には第1の光検出器20と同等のものを用いる。第2の光検出器21の出力信号は第2の信号処理回路27を経て第2のA/D変換器28に導かれる。
【0061】
第2の信号処理回路27および第2のA/D変換器28は、各々第1の信号処理回路23および第1のA/D変換器26と同等である。第2のA/D変換器28からのデジタルデータはコンピュータ30に取り込まれ、重み係数{Ci}が生成される。他の構成は、実施例1と同様にとなっている。
【0062】
上記図3または図4のいずれの方式においても、実施例1よりもS/N比を改善することが可能になる。
【実施例3】
【0063】
次に、本発明の実施例3について説明する。図5は、本発明の実施例3である分光光度計の概略構成図である。
【0064】
実施例1及び実施例2では、試料の分光測光値を測定するのに用いる光束の数が1本のシングルビーム方式の分光光度計であった。
【0065】
これに対して、本実施例3は、試料側と参照側の2本の光束を備えたダブルビーム方式の分光光度計の例であり、実施例1または実施例2の信号処理をダブルビーム方式の分光光度計に適用した例である。
【0066】
本実施例3の光学系のうち光源1からモノクロメータ10までの部分は実施例1と同等であるので説明は省略する。
【0067】
図5において、モノクロメータ10から射出される波長λの単色光は、ビームスプリッタ12で2分割され、一方は試料側光束13として試料7に入射する。試料7以降の第1の光検出器20、第1の信号処理回路23、第1のA/D変換器24については、実施例1と同等であるので説明は省略する。
【0068】
ビームスプリッタ12で分割されたもう一方の光束は、平面鏡15で反射され、参照側光束14として参照用試料8に入射する。参照用試料8を透過した光は第2の光検出器21で電気信号に変換される。第2の光検出器21には第1の光検出器と同等のものを用いる。第2の光検出器21の出力信号は第2の信号処理回路27を経て第2のA/D変換器28に導かれる。第2の信号処理回路27および第2のA/D変換器28は、各々第1の信号処理回路23および第1のA/D変換器26と同等である。
【0069】
第1のA/D変換器26からのデジタルデータと第2のA/D変換器28からのデジタルデータは共にコンピュータ30に取り込まれ、各々に対して式(8)または式(9)に従って加算され、参照用試料8を基準とした試料7の分光測光値が算出される。
【0070】
これにより、ダブルビーム方式の分光光度計の構成においても、実施例1または実施例2と同様な、S/N比の改善効果を得ることができる。
【0071】
なお、上述した例においては、光源としてXeフラシュランプを用いたが、本発明は、光源として、Xeフラッシュランプの他に、パルスレーザやレーザダイオードを使用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1・・・光源、2・・・光源用電源、7・・・試料、8・・・参照用試料、10・・・モノクロメータ、11・・・波長制御機構、12・・・ビームスプリッタ、13・・・試料側光束、14・・・参照側光束、15・・・平面鏡、20、21・・光検出器、23、27・・・信号処理回路、24・・・ローパスフィルタ、25・・・増幅器、26、28・・・A/D変換器、30・・・コンピュータ、31・・・重み係数テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無発光期間を隔てて間欠的に発光する光源と、
上記光源からの光を分光して単色光を取り出すモノクロメータと、
上記モノクロメータにより取り出された単色光が試料に照射され、通過した単色光の強度を電気信号に変換する第1の光検出器と、
上記光源の1回の発光の時間発光プロファイルの半値幅よりも長い時定数を有し、上記光検出手段から出力された信号の時間幅を拡張する時間幅拡張手段を有する第1の信号処理手段と、
上記信号処理手段から出力された信号に基いて、上記試料の光学的特性を算出する光学的特性算出手段と、
を備えることを特徴とする分光光度計。
【請求項2】
請求項1に記載の分光光度計において、上記時間幅拡張手段はローパスフィルタであり、上記信号処理手段は上記ローパスフィルタから出力された信号を増幅する増幅器を有することを特徴とする分光光度計。
【請求項3】
請求項2に記載の分光光度計において、上記信号処理手段の増幅器により増幅する第1のA/D変換器を備え、この第1のA/D変換器によりデジタルデータに変換された信号に基いて上記光学的特性算出手段は上記試料の光学的特性を算出することを特徴とする分光光度計。
【請求項4】
請求項3に記載の分光光度計において、上記ローパスフィルタの時定数は、上記光源の1回の発光の時間発光プロファイルの中で発光開始から発光強度がピークを迎えた後に第1の所定の強度以下に減衰するまでの時間幅に対応する値あることを特徴とする分光光度計。
【請求項5】
請求項3に記載の分光光度計において、上記A/D変換器は、上記ローパスフィルタの時定数と概略同等かそれよりも短く設定したサンプリング間隔で、概略周期的に上記信号処理手段の出力信号をデジタル量に変換することを特徴とする分光光度計。
【請求項6】
請求項5に記載の分光光度計において、上記光学的特性算出手段は、上記光源の1回の発光の時間発光プロファイルの中で発光開始から発光強度がピークを迎えた後の第2の所定の強度以下に減衰するまでの期間に含まれるサンプリング時刻に得られた一連のデジタルデータを用いて上記試料の光学的特性を算出することを特徴とする分光光度計。
【請求項7】
請求項6に記載の分光光度計において、上記光学的特性算出手段は、上記一連のデジタルデータから上記試料の光学的特性を算出する際に、信号強度の大きいデジタルデータほど測光値算出への寄与が大きくなるよう、個々のデジタルデータに予め定めた重み係数を乗じ、上記試料の光学的特性を算出することを特徴とする分光光度計。
【請求項8】
請求項7に記載の分光光度計において、上記一連のデジタルデータ中の個々のデータに適用される重み係数は、上記光源の1回の発光の時間発光プロファイルで上記個々のデータのサンプリング時刻に対応する時刻に対応する発光強度に比例させて決定されることを特徴とする分光光度計。
【請求項9】
請求項3に記載の分光光度計において、上記信号処理手段は上記ローパスフィルタの後段に、積分回路と、この積分回路に蓄積された電荷を消去するリセット回路とを有し、上記積分回路は、上記光源の1回の発光の時間発光プロファイルの中で発光開始から発光強度がピークを迎えてその後第2の所定の強度以下に減衰するまでの期間に対応する積分時間だけ上記ローパスフィルタを通過した電気信号を積分し、上記A/D変換器は上記積分時間の終了直後に上記積分回路に蓄積された電荷量に対応する電気信号をデジタルデータに変換後、上記リセット回路が上記積分回路に蓄積された電荷を消去することを特徴とする分光光度計。
【請求項10】
請求項3に記載の分光光度計において、上記モノクロメータから射出された単色光の一部を分岐して第2の光束として取り出し、直接または参照用試料を通過後に供給される第2の光検出器と、
上記第2の光検出器の出力信号を処理するために、上記信号処理手段と略同等の第2の信号処理回路と、
上記第2の信号処理手段の出力信号をデジタルデータに変換する第2のA/D変換器と、
を備え、上記光学的特性算出手段は、上記第1のA/D変換器と第2のA/D変換器とから得られるデジタルデータから上記試料の光学的特性を算出することを特徴とする分光光度計。
【請求項11】
請求項10に記載の分光光度計において、上記光学的特性算出手段は、上記第1のA/D変換器から得られる一連のデジタルデータ中の個々のデータに、個々のデータのサンプリング時刻と同時刻に上記第2のA/D変換器から得られるデジタルデータの強度に比例させて決定される重み係数を乗じ、上記試料の光学的特性を算出することを特徴とする分光光度計。
【請求項12】
請求項3に記載の分光光度計において、
上記光源の後に配置されるビームスプリッタと、
上記光源から発せられる光の一部が上記ビームスプリッタで分岐され、第2の光束として供給される第2の光検出器と、
上記第2の光検出器の出力信号を処理するために、第1の信号処理手段と略同等の第2の信号処理回路と、
上記第1のA/D変換器と概略同等の第2のA/D変換器と、
を備え、上記光学的特性算出手段は、上記第1及び第2のA/D変換器から得られるデジタルデータの組から上記試料の光学的特性を算出することを特徴とする分光光度計。
【請求項13】
請求項3に記載の分光光度計において、
上記光源の後に配置されるビームスプリッタと、
上記光源から発せられる光の一部が上記ビームスプリッタで分岐され、第2の光束として供給される第2の光検出器と、
上記第2の光検出器の出力信号を処理するために、第1の信号処理手段と略同等の第2の信号処理回路と、
上記第1のA/D変換器と概略同等の第2のA/D変換器と、
を備え、上記光学的特性算出手段は、上記第1のA/D変換器から得られる一連のデジタルデータ中の個々のデータに、上記個々のデータのサンプリング時刻と同時刻に上記第2のA/D変換器から得られるデジタルデータ強度に比例させて決定される重み係数を乗じ、上記試料の光学的特性を算出することを特徴とする分光光度計。
【請求項14】
無発光期間を隔てて間欠的に発光する光源を有する光学系と、上記光源から出た光を検出する光検出器と、上記光検出器の出力信号を処理する光信号処理回路とを有する光計測装置において、
上記光源の1回の発光の時間発光プロファイルの半値幅よりも長い時定数を有するローパスフィルタを備え、上記ローパスフィルタにより上記光検出器の出力信号のうちの低周波成分のみを通過させて、上記光信号処理回路に供給することを特徴とする光計測装置。
【請求項15】
請求項14に記載の光計測装置において、上記ローパスフィルタより後に、積分回路と、積分回路に蓄積された電荷を消去するリセット回路とを備え、上記積分回路は、上記光源の1回の発光の時間発光プロファイルの中で発光開始から発光強度がピークを迎えてその後所定の強度以下に減衰するまでの期間に対応する積分時間だけ上記ローパスフィルタを通過した電気信号を積分することを特徴とする光計測装置。
【請求項16】
無発光期間を隔てて間欠的に発光する光源からの光を分光して単色光を取り出し、
上記モノクロメータにより取り出された単色光を試料に照射し、通過した単色光の強度を電気信号に変換し、
上記光源の1回の発光の時間発光プロファイルの半値幅よりも長い時間幅に上記電気信号の時間幅を拡張し、
上記拡張した時間幅の信号に基いて、上記試料の光学的特性を算出することを特徴とする分光計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−257268(P2011−257268A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132053(P2010−132053)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】