説明

分光光度計

【課題】測定結果へのノイズの影響を低減し、スペクトルデータの段差を改善することができる分光光度計の提供。
【解決手段】試料に向かって光を出射する光源部30と、試料を透過した光が入射する光検出器7と、光源部30及び光検出器7を制御する制御部21とを備え、光源部30は、赤外領域及び可視領域の光を出射する第一光源1と、紫外領域の光を出射する第二光源2とを有し、制御部21は、切替設定波長で第一光源1の点灯と第二光源2の点灯とを切り替えることが可能な分光光度計10であって、光源部30は、切替設定波長を含む波長領域の光を出射する発光ダイオード3を有し、制御部21は、第一切替設定波長で第一光源1の点灯と発光ダイオード3の点灯とを切り替え、第二切替設定波長で発光ダイオード3の点灯と第二光源2の点灯とを切り替えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長200nm以上700nm以下の光を出射することが可能な分光光度計に関する。
【背景技術】
【0002】
分光光度計は、物質が特定の波長において固有の吸光係数を持つという特性を利用したもので、吸光される波長によって物質を特定し、その波長における透過率や吸光度によってその濃度を測定するものである。よって、分光光度計による試料の分析では、透明な試料セル内に液体試料を入れ、そこに光源から発せられた赤外線や可視光線等の測定光を通してその透過率を測定することにより、試料の特定が行われる。
【0003】
図3は、従来の分光光度計の一例を示す概略構成図である。分光光度計110は、波長200nm以上700nm以下の光を出射することが可能な光源部130と、光を波長成分に分光する分光器5と、光電子倍増管(PMT)検出器7と、分光器5とPMT検出器7との間に試料セルを配置するためのセルホルダ6と、分光光度計110全体の制御を行うコンピュータ120とを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような分光光度計110では、光源部130から出射された光は、分光器5の内部へ入る。分光器5の内部において、光は回折格子等によりスペクトルに展開された後、各波長の光がセルホルダ6中の試料セルに照射される。試料セルでは試料の特性に応じた波長成分の光が吸収され、試料セルを通過した各波長の光の強度がPMT検出器7により検出される。
【0005】
コンピュータ120においては、CPU(制御部)121やメモリ(図示せず)を備え、さらにモニタ画面23a等を有する表示装置23と、キーボード24aやマウス24b等を有する入力装置24とが連結されている。CPU121は、PMT検出器7からの検出出力を取り込み、各波長毎に、試料のないときの検出出力と試料があるときの検出出力との比を求め、これをもとに吸光度スペクトルを演算して測定結果を表示装置23に表示する。
【0006】
ところで、単一の光源で赤外線、可視光から紫外線にわたる広い範囲において充分な発光強度を有するものがないため、光源部130は、タングステン・ヨウ素ランプ(第一光源)1と重水素ランプ(第二光源)2と光源切替ミラー4と光源切替ミラー4の回転駆動機構(図示せず)とを有する。タングステン・ヨウ素ランプ1は、赤外領域と可視領域とにわたる連続スペクトルを有する光を出射する。また、重水素ランプ2は、紫外領域にわたる連続スペクトルを有する光を出射する。
【0007】
これにより、例えば、「波長200nm〜700nm」の光を出射するように入力装置24で入力された場合には、CPU121は、まず、タングステン・ヨウ素ランプ1から光を試料に向かって出射させた後、315nm(切替設定波長)の光を分光器5から試料に向かって出射させる際に、光源切替ミラー4を回転させることによりタングステン・ヨウ素ランプ1から試料への照射と重水素ランプ2から試料への照射とを切り替えている。図4は、光源部130から出射される光の波長とエネルギー(光量)との関係を示す図である。波長200nm〜315nmの光は、重水素ランプ2から出射され、波長315nm〜700nmの光は、タングステン・ヨウ素ランプ1から出射されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−152375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図4に示すように、波長200nm〜700nmの光を出射する場合には、波長315nm付近の成分が少なくエネルギーが小さくなっている。このため、波長315nm付近では、S/Nが悪くなることでノイズの影響が出やすくなり、また、透過率等の測定時に得られるスペクトルデータに段差が出るという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本件発明者は、上記課題を解決するために、波長315nm付近のエネルギーを大きくする方法について検討を行った。そこで、発光ダイオードは様々な性質を有するものを作製することができ、その結果、例えば、波長300nm以上330nm以下にわたり且つ波長315nmがドミナント波長となる連続スペクトルを有する発光ダイオードを用いることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明の分光光度計は、試料に向かって光を出射する光源部と、前記試料を透過又は前記試料が反射した光が入射する光検出器と、前記光源部及び光検出器を制御する制御部とを備え、前記光源部は、赤外領域及び可視領域の光を出射する第一光源と、紫外領域の光を出射する第二光源とを有し、前記制御部は、切替設定波長の光を試料に向かって出射させる際に前記第一光源から試料への照射と前記第二光源から試料への照射とを切り替えることが可能な分光光度計であって、前記光源部は、前記切替設定波長を含む波長領域の光を出射する発光ダイオードを有し、前記制御部は、前記切替設定波長より長波長となる第一切替設定波長の光を試料に向かって出射させる際に前記第一光源から試料への照射と前記発光ダイオードから試料への照射とを切り替え、前記切替設定波長より短波長となる第二切替設定波長の光を試料に向かって出射させる際に前記発光ダイオードから試料への照射と前記第二光源から試料への照射とを切り替えるようにしている。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の分光光度計によれば、第一光源と第二光源とでエネルギーが小さくなる領域をエネルギーが大きくなるようにできるため、測定結果へのノイズの影響を低減し、スペクトルデータの段差を改善することができる。
【0013】
(他の課題を解決するための手段及び効果)
また、本発明の分光光度計は、前記第一光源は、タングステン・ヨウ素ランプであり、前記第二光源は、重水素ランプであるようにしてもよい。
さらに、本発明の分光光度計は、前記光源部は、少なくとも波長200nm以上700nm以下の光を出射することが可能となっているようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態である分光光度計の一例を示す概略構成図。
【図2】光源部30から出射される光波長とエネルギー(光量)との関係図。
【図3】従来の分光光度計の一例を示す概略構成図。
【図4】光源部130から出射される光波長とエネルギー(光量)との関係図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態である分光光度計の一例を示す概略構成図である。なお、上述した分光光度計110と同様のものについては、同じ符号を付している。
分光光度計10は、波長200nm以上700nm以下の光を出射することが可能な光源部30と、光を波長成分に分光する分光器5と、光電子倍増管(PMT)検出器7と、分光器5とPMT検出器7との間に試料セルを配置するためのセルホルダ6と、分光光度計10全体の制御を行うコンピュータ20とを備える。
【0017】
光源部30は、タングステン・ヨウ素ランプ(第一光源)1と重水素ランプ(第二光源)2と紫外発光ダイオード(紫外LED)3と光源切替ミラー4と光源切替ミラー4の回転駆動機構(図示せず)とを有する。タングステン・ヨウ素ランプ1は、赤外領域と可視領域とにわたる連続スペクトルを有する光を出射する。また、重水素ランプ2は、紫外領域にわたる連続スペクトルを有する光を出射する。さらに、紫外LED3は、波長300nm以上330nm以下にわたり且つ波長315nmがドミナント波長となる連続スペクトルを有する光を出射する。
【0018】
コンピュータ20においては、CPU(制御部)21やメモリ(図示せず)を備え、さらにモニタ画面等を有する表示装置23と、キーボードやマウス等を有する入力装置24とが連結されている。CPU21は、PMT検出器7からの検出出力を取り込み、各波長毎に、試料のないときの検出出力と試料があるときの検出出力との比を求め、これをもとに吸光度スペクトルを演算して測定結果を表示装置23に表示する測定結果表示制御部21aと、分光器5及び光源部30を制御する光源切替制御部21bとを有する。
【0019】
光源切替制御部21bは、予めメモリに記憶された所定のタイミング(WL1nm(第一切替設定波長)、WL2nm(第二切替設定波長))で、タングステン・ヨウ素ランプ1と重水素ランプ2と紫外LED3とを切り替える制御を行う。例えば、「波長200nm〜700nm」の光を出射するように入力装置24で入力された場合には、光源切替制御部21bは、まず、タングステン・ヨウ素ランプ1から光を試料に向かって出射させた後、WL1nm(第一切替設定波長)の光を分光器5から試料に向かって出射させる際に、光源切替ミラー4を回転させることによりタングステン・ヨウ素ランプ1から試料への照射と紫外LED3から試料への照射とを切り替え、WL2nm(第二切替設定波長)の光を分光器5から試料に向かって出射させる際に、光源切替ミラー4を回転させることにより紫外LED3から試料への照射と重水素ランプ2から試料への照射とを切り替える。図2は、光源部30から出射される光の波長とエネルギー(光量)との関係を示す図である。波長200nm〜WL2nmの光は、重水素ランプ2から出射され、波長WL2nm〜WL1nmの光は、紫外LED3から出射され、波長WL1nm〜700nmの光は、タングステン・ヨウ素ランプ1から出射されている。なお、WL1nm(第一切替設定波長)は、315nmより長波長となっており、タングステン・ヨウ素ランプ1の光量より紫外LED3の光量が上回っている。また、WL2nm(第二切替設定波長)は、315nmより短波長となっており、重水素ランプ2の光量より紫外LED3の光量が上回っている。
【0020】
以上のように、分光光度計10によれば、波長315nm付近のエネルギーが大きくなるため、測定結果へのノイズの影響を低減し、スペクトルデータの段差を改善することができる。
【0021】
(他の実施形態)
(1)上述した分光光度計10では、1個の紫外LED3を備えるような構成を示したが、ドミナント波長が異なる2個の紫外LEDを備えるような構成としてもよい。このような構成によれば、タングステン・ヨウ素ランプ1や重水素ランプ2が経時変化しても、エネルギーが小さくなる領域にドミナント波長を有する最適な紫外LEDを選択して用いることができる。
(2)上述した分光光度計10では、透過率を測定するような構成を示したが、反射率を測定するような構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、波長200nm以上700nm以下の光を出射することが可能な分光光度計等に利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1: タングステン・ヨウ素ランプ(第一光源)
2: 重水素ランプ(第二光源)
3: 紫外発光ダイオード
7: PMT検出器(光検出器)
10: 分光光度計
21: CPU(制御部)
30: 光源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に向かって光を出射する光源部と、
前記試料を透過又は前記試料が反射した光が入射する光検出器と、
前記光源部及び光検出器を制御する制御部とを備え、
前記光源部は、赤外領域及び可視領域の光を出射する第一光源と、紫外領域の光を出射する第二光源とを有し、
前記制御部は、切替設定波長の光を試料に向かって出射させる際に前記第一光源から試料への照射と前記第二光源から試料への照射とを切り替えることが可能な分光光度計であって、
前記光源部は、前記切替設定波長を含む波長領域の光を出射する発光ダイオードを有し、
前記制御部は、前記切替設定波長より長波長となる第一切替設定波長の光を試料に向かって出射させる際に前記第一光源から試料への照射と前記発光ダイオードから試料への照射とを切り替え、前記切替設定波長より短波長となる第二切替設定波長の光を試料に向かって出射させる際に前記発光ダイオードから試料への照射と前記第二光源から試料への照射とを切り替えることを特徴とする分光光度計。
【請求項2】
前記第一光源は、タングステン・ヨウ素ランプであり、
前記第二光源は、重水素ランプであることを特徴とする請求項1に記載の分光光度計。
【請求項3】
前記光源部は、少なくとも波長200nm以上700nm以下の光を出射することが可能となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の分光光度計。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate