説明

分光光度計

【課題】 外付け付属品や光路切換ミラーの状態を認識できるようにして、誤操作することなく外付け付属品による測定ができるようにした分光光度計を提供する。
【解決手段】 内蔵検出器24と、外付け検出器32とを備え、着脱可能な光路切換部23aを試料室23に装着したときには、内蔵検出器24からの検出信号に基づいた測定に代えて外付け検出器32からの検出信号に基づいた測定が行われるように切り換わる分光光度計10であって、内蔵検出器24または外付け検出器32からの測定データについての閾値Tを記憶する測定データ閾値記憶部51と、測定光を試料室23に導入した状態で、内蔵検出器24または外付け検出器32からの測定データと閾値Tとの比較結果に基づいて、いずれの検出器が測定光の受光が可能な状態かを認識する受光検出器認識部52とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外付け検出器を備えた付属品を装着して分光測定することができる分光光度計に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、汎用の分光光度計は、装置本体内に光源、分光器、試料室、検出器、信号増幅器、制御部等を内蔵している。試料室には、測定光が通過する光路上に試料を保持するためのホルダ等の光学部品が着脱可能な状態で取り付けられており、これを用いて試料を光路上にセットし、測定目的に応じた波長範囲の測定光を照射し、透過光を検出器に導いて検出信号(電気信号)として検出し、増幅、AD変換のような信号処理や演算を行って透過率や吸光度を算出するようにしている。そして透過率や吸光度の測定データをモニタ画面で表示させることにより、測定結果が得られるようにしてある。
【0003】
最近の分光光度計では、試料の大きさ、形状、数、測定目的、測定手法等に合わせて、さまざまな付属品がオプションで着脱できるように用意されており、必要に応じてこれらの付属品を選択して装置本体に装着することにより、所望の測定が正しく、かつ、簡単に行えるようになっている。
【0004】
装置本体に付属品を取り付けて測定する場合に、その付属品が取り付けられていることに気づかないで測定を行うと、入力設定を誤ったり、操作を誤ったりすることがあり、誤った測定データを出力したりすることになる。
【0005】
そこで、付属品の特定位置、および、これに対応する装置本体側の特定位置にそれぞれ付属品を認識するための電気接点等の付属品認識機構を設けることが開示されている(特許文献1)。
また、付属品自体に、その構成内容を識別するための付属品情報を記憶しているICチップ(識別タグ)が含まれるようにしておき、付属品を試料室内に取り付けると、装置本体側の試料室に設けられた読み取り手段で付属品情報を読み取って、制御コンピュータに情報を送るようにするようにした分光光度計が開示されている(特許文献1,2)。
【0006】
上述した文献に記載されている装置は、付属品を取り付けた状態でも、取り付けていない状態でも、検出器自体は装置本体に内蔵された同じものを用いている。したがって、付属品の有無についての現在の状態を、装置本体の付属品認識機構で認識することにより、付属品が取り付けられた状態または取り付けていない状態のいずれか一方に対応させた設定で内蔵検出器による測定がなされることになる。
【0007】
ところで、付属品として、例えば、試料表面の拡散反射率を測定する場合に積分球が使用されることがある。積分球には検出器を近接して設置する必要があるため、内蔵検出器とは別の外付けの検出器を用いて測定する。
このような外付け検出器を備えた付属品を分光光度計の装置本体に装着した場合には、内蔵検出器と外付け検出器とのいずれかで測定することになる。
【0008】
図5はこのような外付けの付属品を分光光度計Mの試料室に取り付けた状態の一例を示す概略図である。また、図6は同装置Mで外付けの付属品を取り付けていない状態(透過測定の状態)を示す概略図である。なお、実際の測定光は信号側光束と参照側光束とのダブルビームが用いられることが多いが、ここでは信号側光束を説明し、参照側の光束は説明を省略する。
分光光度計Mは、装置本体10と、主に測定に必要な入出力を行うパーソナルコンピュータ11と、外付け付属品12とからなる。
装置本体10は、光源21、分光器22、試料室23、検出器24(内蔵検出器)、信号増幅器25、AD変換器26、制御部27(ファームウェア)、分光器22の波長送り機構22a、信号増幅器25のゲイン設定機構29を備えている。
光源21(例えば重水素ランプ)から発した光は、回折格子を用いた分光器22で単色光に分光され、試料室23の壁に設けた入口窓から試料室内に導入される。光源21は光源ミラー21aにより光路の向きが調整されて分光器22に送られる。分光器22は回折格子の角度を調整する波長送り機構22aにより、試料室23に送る単色光の波長が調整されるようにしてある。
【0009】
試料室23には、光路上の位置Pに、光の進行方向を曲げて外付け付属品12に導く光路切換ミラー23a(光路切換部)が装着される。位置Pは、光路上であればよいが、ほとんどの装置は、外付け付属品12を取り付けていない通常の透過測定のときに(図6)、透過測定用のセルホルダ23bが設置される位置に、セルホルダ23bと交換するようにして取り付けるようにしてある。セルホルダ23bを取り付ける位置の底面には装着のための位置決め部が形成されているので、容易に取り付けることができるようになっている。
【0010】
試料室23以降の装置構成については、測定光学系が切り替わるので、まず、通常の透過測定について説明する。図6に示すように、位置Pのセルホルダ23bを直進した光は、試料室23の壁に設けた出口窓から出射し、検出器24(内蔵検出器)に導かれて検出信号が出力されるようにしてある。
【0011】
検出器24からの出力信号は、ゲイン設定機構29により所望の増幅率に調整される信号増幅器25で増幅され、AD変換器26を介して制御部27に測定データ信号(デジタルデータ)として送られる。
光電子増倍管などの検出器では、ゲイン設定機構により光電子増倍管の負高圧を制御して増幅率を調整するものもある。
制御部27はいわゆるファームウェアであって、制御に必要なプログラムや設定パラメータなどの情報を記憶し、装置全体の制御を行う。また、伝送された測定データに対し、データ処理を行って透過率や吸光度を算出する。
【0012】
パーソナルコンピュータ11は、制御部27で算出された透過率や吸光度の測定データを所定のフォーマットでモニタ画面上に出力データとして表示する。
【0013】
次に、外付け付属品12を分光光度計の試料室23に取り付けた状態での装置構成について説明する。
図5に示すように、位置Pに取り付けた光路切換ミラー23a(光路切換部)で反射した光が、外付け付属品12の光学素子である積分球31の入射窓31aから導入され、積分球31の壁に設けた検出器32(外付け検出器)により検出信号が出力されるようにしてある。なお、試料は付属品12に取り付けられるようにしてある。
【0014】
検出器32からの出力信号は、外部ケーブル33、コネクタ34、内部ケーブル35を介して信号増幅器25で所望の増幅率に増幅され、AD変換器26を介して制御部27に測定データ信号(デジタルデータ)として送られる。制御部27は測定データ信号に対し、データ処理を行って透過率や吸光度を算出する。そしてパーソナルコンピュータ11のモニタ画面に透過率や吸光度の出力データが表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−241551号公報
【特許文献2】特開2007−033292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したような外付けの検出器32と、内蔵の検出器24とを備えた測定系が構築されている場合に、従来例で説明したICタグのような付属品認識機構を外付け付属品自体に設けた場合、外付け付属品12が接続された状態か否かを認識することはできる。しかしながら、光路上に光路切換ミラー23a(光路切換部)が取り付けられていなければ、たとえ外付け付属品および外付け検出器が接続されていたとしても、測定光が到達しないため、誤測定が行われることになる。
すなわち、外付け付属品12の装着を認識する付属品認識機構とともに、光路切換ミラーの23aの装着を認識するための光路認識機構も設けなければ、誤操作を防止できないことになり、例えばICタグの認識機構を2箇所に搭載しなければならなくなって部品点数が増し、製造コストが増大することになる。
【0017】
他の方法として、試料料室23に取り付ける光路切換ミラー23aと外付け付属品12(および外付け検出器)とが一体となっており、光路切換ミラー23aの装着を認識するための光路認識機構だけを設けた場合には、光路については外付け付属品による測定が可能な状態に設定してあることが認識でき、ICタグを1箇所だけにすることができるが、実際に外付け付属品12(および外付け検出器)が正しく接続されているかは認識できなくなる。
しかも、たとえICタグを1箇所だけ設けるにしても、そのタグ情報を読み取るための読取機構を装置本体に取り付ける必要があり、ICタグを用いない場合よりも部品点数が増し、その分製造コストが増大することになる。
【0018】
また、光路切換ミラー23aの取り付け位置は、試料室23の内部であり、本来は試料が取り付けられる場所であるため、試料がこぼれて汚れたりしやすい場所であるため、機械的あるいは電気的な認識機構は取り付けたくない。
【0019】
そこで、本発明は、第一に、ICタグやその他の機械式、電気式認識機構(ハードウェア資源)を追加することなく外付け付属品や光路切換ミラーの状態を認識できるようにして、誤操作することなく外付け付属品による測定ができるようにした分光光度計を提供することを目的とする。
また本発明は、第二に、外付け付属品(外付け検出器を含む)を装着したままの状態で、光路切換ミラー(光路切換部)を使用するか否かで、外付け検出器と内蔵検出器とのいずれでも測定できるようにしておき、それでいて、いずれの検出器による測定が可能な状態であるかを認識できるようにすることで、誤操作することなく測定できる分光光度計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明では、分光光度計本体に備えている制御部が実行するソフトウェアの追加変更により、装置状態の自動認識を行えるようにしている。
すなわち、本発明に係る分光光度計は、分光測定用の測定光を形成する光源部と、前記測定光が導入される試料室と、分光光度計の本体に内蔵される内蔵検出器と、前記本体に対し着脱可能な外付け付属品に付設される外付け検出器とを備え、着脱可能な光路切換部を前記試料室に装着したときには、前記測定光の光路が前記内蔵検出器に向かう通常光路から前記外付け検出器に向かう外部光路に切り換わり、前記内蔵検出器からの検出信号に基づいた測定に代えて前記外付け検出器からの検出信号に基づいた測定が行われるように切り換わる分光光度計であって、前記内蔵検出器または前記外付け検出器からの測定データについての閾値Tを記憶する測定データ閾値記憶部と、前記測定光を試料室に導入した状態で、前記内蔵検出器または前記外付け検出器からの測定データと閾値Tとの比較結果に基づいて、いずれの検出器が測定光の受光が可能な状態かを認識する受光検出器認識部とを備えるようにしている。
なお、光路切換部は外付け付属品と一体に取り付けられていてもよい。
【0021】
ここで、前記光源部は光源ミラーの向きを変える駆動機構を備え、前記受光検出器認識部は、前記駆動機構により光源ミラーの向きを走査することにより、走査中に得られた測定データの最大値と閾値Tとの比較を行うようにしてもよい。
また、さらに前記内蔵検出器および前記外付け検出器の検出信号の増幅率を設定するためのゲイン設定機構を備え、前記受光検出器認識部は、いずれの検出器からの測定データも閾値Tを超えないときは、ゲイン設定機構により検出信号の増幅率を上げた上で測定データと閾値Tとの比較を行うようにしてもよい。
また、さらに第二閾値T2(ただし、T2>T)を記憶し、前記受光検出器認識部は、測定データが第二閾値T2を超えるときは、ゲイン設定機構により検出信号の増幅率を下げた上で測定データと閾値Tとの比較を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、受光検出器認識部は、測定光を試料室に導入した状態で、内蔵検出器からの検出信号を検出して取得した測定データを予め設定した閾値Tと比較する。閾値Tはノイズ信号を除外するための閾値であり、閾値T以下ではノイズと判定される。内蔵検出器から取得した測定データが閾値Tを超えているときは、内蔵検出器により測定光が受光できる状態であると認識する。また、外付け検出器からの検出信号を検出して取得した測定データを予め設定した閾値Tと比較する。外付け検出器から取得した測定データが閾値Tを超えているときは、外付け検出器が測定光を受光できる状態であると認識する。すなわち、試料室に光路切換部が装着されているかいないかで、いずれか一方の検出器だけが閾値Tを超えることになるので、測定可能な検出器を認識することができる。
なお、光路切換部が装着されているにもかかわらず、外付け検出器が正しく装着されていないときは(例えば信号ケーブルの接続不良で検出信号伝送されない場合等)、いずれの検出器からの信号も閾値Tを超えないことがあるので、そのような状態も認識できるようになる。
【0023】
そして、装置状態設定部が受光可能と認識された検出器に合わせて設定変更、または、通常測定か外付け付属品による測定かを示す装置状態表示の少なくともいずれかの制御を行うことにより、誤操作することなく、正しい測定が簡単に行えるようになる。
【0024】
また、本発明によれば、分光光度計の本体に対し、外付け検出器を含む外付け付属品を正しく装着しさえすれば、その後は外付け付属品を取り付けたままで取り外すことなく、単に光路切換部を取り付けるか取り外すかの変更だけで、ソフト的に装置状態を自動認識することができるようになり、内蔵検出器による測定であっても、外付け検出器による測定であっても自由に行えるようになる。
【0025】
また、分光光度計を完全停止状態から電源を入れて起動したときには、装置の初期化が行われるが、その際には、分光器の光源ミラーは装置立ち上げ時に実施される初期化調整がなされていないため、検出器まで届くように測定光を送り出しているとは限らない。したがって、受光検出器認識部は、光源ミラー駆動機構を作動して試料室に導入する測定光を、光源ミラーの向きを走査するようにして送ることにより、走査中に得られた測定データの最大値と閾値Tとの比較を行うようにすることで、確実に受光可能な検出器を認識することができる。そして、受光可能な検出器を認識した後で、その検出器を用いて分光器の光学的な初期化(原点出し)を行うようにすることで、正しく光学的初期化を行うことができる。
【0026】
さらに、光源ミラー駆動機構で走査した場合でも、いずれの検出器から取得した測定データも閾値Tを超えないときは、各検出信号の増幅率を設定するためのゲイン設定機構により検出信号の増幅率を上げた上で取得された測定データと閾値Tとの比較を行うようにしてもよい。これにより、ノイズ信号を過度に増幅したためにノイズを検出信号と誤って判定してしまうことを防止することができるとともに、十分低い増幅率を初期設定とすることで、増幅率の高い状態で検出器に過大な光量を入射して検出器にダメージを与えるのを防止することができる。
【0027】
すなわち、測定データが閾値T2を超えると正常な測定結果が得られない場合などには、増幅率を下げた上で取得された測定データと閾値Tとの比較を行うようにしてもよい。受光検出器認識速度を優先する場合などには、最適である可能性の高い増幅率や、設定幅の中間の増幅率を初期設定として用いて、そこから増幅率を上げたり下げたりして探索することで、受光検出器認識速度を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態である分光光度計の構成を示すブロック図。
【図2】図1の装置による本発明の動作フローの一例を示すフローチャート。
【図3】図1の装置による本発明の動作フローの一例を示すフローチャート。
【図4】図1の装置による本発明の動作フローの一例を示すフローチャート。
【図5】外付けの付属品を分光光度計の試料室に取り付けた状態を示す概略図。
【図6】図5の装置における外付けの付属品を取り付けていない状態(透過測定の状態)を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の分光光度計について図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態である分光光度計MAの構成を示すブロック図である。なお、従来例である図5に記載した分光光度計Mと同じ構成部分については同符号を付すことにより、説明の一部を省略する。
図5と図1とを比較すれば明らかなように、分光光度計Mの制御部27を、分光光度計MAの制御部28に変更した部分を除き、そのハードウェアの構成は同じである。すなわち、本発明では、原則として従来の分光光度計Mの装置構成をそのまま利用できるようにしてあり、新たなハードウェア資源を追加することなく、制御部28が実行するソフトウェアのみを変更することにより、本発明を実現するようにしている。
以下に、変更部分である制御部28の構成について説明する。
【0030】
制御部28は、CPU、メモリを含むファームウェアであって、装置全体の制御および処理を行う。具体的には、装置の制御に必要なプログラム、設定パラメータをメモリに記憶し、光源21、光源ミラー駆動機構21a、分光器22の波長送り機構22a、検出器24、信号増幅器25のゲイン調整機構29、外付け検出器32などの装置各部の制御を行うとともに、検出信号に基づいて取得した測定データの演算、出力処理、さらに、パーソナルコンピュータ11とのデータ通信による入出力処理を行い、必要な機能を実現する。
【0031】
そして、本発明に関する機能を実現するために制御部28に追加された処理手段を機能ブロックに分けて説明すると、制御部28は測定データ閾値記憶部51と、受光検出器認識部52と、装置状態設定部53とを備えている。
測定データ閾値記憶部51は、内蔵の検出器24、または、外付けの検出器32から信号増幅器25、AD変換器26を介して取得した測定データに基づいて、ノイズであるか本来の測定データであるかを判定するための閾値Tを記憶する。閾値Tはノイズを判定できる値であれば検出器24や検出器32の種類に応じて変更してもよいし、同じであってもよい。
【0032】
受光検出器認識部52は、光源21および分光器22により形成された測定光を試料室23に導入した状態で、検出器24または検出器32から取得した測定データと、記憶されている閾値Tとを比較し、いずれの検出器に測定光が到達しているか(受光しているか)を判定して、現在受光(測定)可能な検出器を認識する。すなわち、試料室23に光路切換ミラー23a(光路切換部)が取り付けられているか否かで、測定光を受光する検出器が切り換わるので、いずれの状態であるかを認識する。
【0033】
装置状態設定部53は、受光可能状態であると認識された検出器に合わせて、その検出器に適した設定変更を行ったり、モニタ画面等に現在測定可能な検出器がどちらであるかの装置状態表示を行ったりする。設定変更は、予め、制御部28に、内蔵の検出器24による測定の場合の設定パラメータと、外付け付属品12や外付けの検出器32に関する設定パラメータとを、パーソナルコンピュータ11から入力して記憶させておくことで、認識結果に基づいていずれかの情報を読み出して必要な設定が行われる。また、装置状態表示はパーソナルコンピュータ11のモニタ画面に、内蔵の検出器24が測定可能であるか、外付けの検出器32が測定可能であるかの表示を行って報知し、測定者に対し、必要な設定変更を促すことが行われる。
【0034】
次に、分光光度計MAによる検出器の自動認識に関する動作フローの例について説明する。
【0035】
(動作フロー1)
図2は本発明の動作フローの一例を示すフローチャートである。この動作フローは、既に装置の初期化が完了していて、光学的初期化の必要がないときの自動認識の処理である。例えば、装置が動作中に何らかの異常やトラブルが生じたときに手動で自動認識の命令を与えたときに開始する。あるいは、測定動作に関する設定で、測定開始前に自動的に自動認識処理を作動させる設定を行っている場合に測定開始と同時に開始する。
【0036】
検出器を自動認識する処理の命令を受けると(S101)、内蔵の検出器24からの検出信号を取得する設定に切り替わる(S102)。このとき外付けの検出器32は停止されるか、対応する信号ラインが信号増幅器25から遮断される。なお、初期化が完了しているので光源21の光源ミラーの向きは試料室に測定光を導くようになっているはずであるが、もしそうでない場合は試料室に測定光を導くように光源ミラー駆動機構21aによって自動的に光源ミラーが駆動される。また自動認識に用いる検出器の種類に応じた最適波長に波長を移動する場合もある。
【0037】
そして検出器24の検出信号は、信号増幅器25およびAD変換器26を介して、制御部28に測定データ(デジタルデータ)として送られて閾値Tと比較される(S103)。その結果、測定データが閾値Tより大きいときは本来の測定データであると判定され、内蔵の検出器24が測定可能な検出器であると決定される(S104)。
【0038】
測定データが閾値より小さいときは、外付けの検出器32からの検出信号を取得する設定に切り替わる(S105)。このとき内蔵の検出器24は停止されるか、対応する信号ラインが信号増幅器25から遮断される。
そして検出器32の検出信号は、ケーブル33、コネクタ34、ケーブル35、信号増幅器25およびAD変換器26を介して、制御部28に測定データ(デジタルデータ)として送られて閾値Tと比較される(S106)。その結果、測定データが閾値Tより大きいときは本来の測定データであると判定され、外付けの検出器24が測定可能な検出器であると決定される(S107)。
以上で、いずれの検出器が測定可能な状態かが認識できたことになる(S104、S107)。
【0039】
続いて、制御部28は、認識結果に対応して、装置の設定を変更する(S108)。設定変更を測定者により手動で行わせる場合は、パーソナルコンピュータ11のモニタ画面に、内蔵の検出器24が測定可能であるか、外付けの検出器32が測定可能であるかのメッセージを表示する。また、予め、設定情報が制御部28に記憶されているときは、対応する設定情報に設定を変更(あるいは維持)する。
【0040】
なお、S106において、測定データが閾値Tよりも小さいときは、いずれの検出器も測定可能な状態ではないので自動認識ができなかったものと判定され、装置の設定はそのままにされる(S109)。このときはパーソナルコンピュータ11のモニタ画面に自動認識できなかったことのメッセージを表示する。この場合の原因としては、例えばケーブル33が外れたりしている装置の接続不良等が考えられるので、測定者に確認を促すことになる。
【0041】
なお、この受光検出器自動認識の際の増幅率は、直前の光入射状態からの推定でもよいし、初期設定の増幅率から開始して測定データが閾値Tを超えなければ増幅率を上げていく方法でもよいし、初期設定の増幅率から開始して測定データが閾値Tと第二閾値T2との間に入るように探索していく方法でもよい。
【0042】
(動作フロー2)
図3は、本発明の別の動作フローの一例を示すフローチャートである。この動作フローは、装置起動時の自動認識に適用される動作フローである。装置起動時には、まず測定可能な検出器の自動認識を行ってから、その検出器に設定を合わせ、それから光学的な初期化が行われる。「光学的初期化」とは、検出器に入射する測定光を用いて、波長送りの際の光学的な原点出しを行ったり、光源ミラーの最適な向きを設定したりすることである。なお、測定系の光路上に設けられる光学部品には、光源ミラーや波長送り機構で駆動される分光器の回折格子が含まれるが、光源ミラーや波長送り機構はモータで駆動される光学機構の一つである。初期化前にはモータで駆動される光学機構は、測定光を検出器まで届けることができる状態になっていない可能性がある。そのため、この動作フローでは、初期化時に、モータで駆動される光学機構を走査して、検出器に届く測定光のエネルギーが最大になるように調整した上で、閾値Tと比較するようにするアルゴリズムを採用している。
【0043】
電源がONにされると(S201)、制御部28が装置の初期化処理を開始し、モータで駆動される光学機構(少なくとも光源ミラー駆動機構21aを含む)はモータの初期化が行われる(S202)。
そして内蔵の検出器24からの検出信号を取得する設定に切り替わる(S203)。また、モータで駆動される光学機構は走査され、検出信号が最大となるように調整される。
【0044】
検出器24の検出信号は、信号増幅器25およびAD変換器26を介して、制御部28に測定データ(デジタルデータ)として送られて閾値Tと比較される(S204)。その結果、光源ミラー駆動機構21aのモータが走査されたとき得られた測定データ(最大の検出信号に対応する測定データ)が閾値Tより大きいときはノイズでない本来の測定データを検出していると判定され、内蔵の検出器24が測定可能な検出器であると決定される(S205)。
【0045】
S204で測定データが閾値Tより小さいときは、外付けの検出器32からの検出信号を取得する設定に切り替わる(S206)。このとき内蔵の検出器24は停止されるか、対応する信号ラインが信号増幅器25から遮断される。
そして検出器32の検出信号は、ケーブル33、コネクタ34、ケーブル35、信号増幅器25およびAD変換器26を介して、制御部28に測定データ(デジタルデータ)として送られて閾値Tと比較される(S207)。その結果、測定データが閾値Tより大きいときは本来の測定データであると判定され、外付けの検出器24が測定可能な検出器であると決定される(S208)。
以上で、いずれの検出器が測定可能な状態かの認識ができたことになる(S205、S208)。
【0046】
続いて、制御部28は、認識結果に対応して、装置の設定を変更する(S209)。
そして通常の光学的初期化処理を開始する(S210)。すなわち、測定可能な検出器に入射する測定光を用いて光学的な原点出しを行う。以上で装置の初期化が完了する(S211)。
【0047】
S207で測定データが閾値Tよりも小さいときは、いずれの検出器も測定可能な状態ではないので、自動認識ができなかったものと判定され、装置の設定はそのままにされる(S212)。このときはパーソナルコンピュータ11のモニタ画面に自動認識できなかったことのメッセージを表示する。以上で初期化は失敗したものとして完了する(S213)。
【0048】
(動作フロー3)
図4は、本発明のさらに別の動作フローの一例を示すフローチャートである。図3で説明したフローでは、検出器に届く測定光のエネルギーが最大になるように測定光を調整した上で測定データと閾値Tとを比較するようにするアルゴリズムを採用しているが、この動作フローは、これに加えて、検出器の負荷が最適な状態で判定を行うため、検出信号のゲイン(信号増幅器25の増幅率)を変更しながら判定を行うアルゴリズムを採用するようにしている。
例えば、初めからゲインを高く設定しておくと、本来はノイズであるにも係らず、増幅され誤って閾値Tを超えてしまって検出信号であると認識されてしまうのを防ぐため、最初はゲインを抑えて判定を行い、検出できないときにゲインを増やす設定にする方法が採用される。
【0049】
あるいは、光電子増倍管などのように検出器自体の負高圧を設定して増幅率を調整するような検出器の場合、増幅率が大きな状態で大きな光量を受光すると検出器がダメージを受ける場合がある。それを防ぐために、最初は増幅率を抑えて判定を行い、検出できないときに増幅率を増やす設定にする方法が採用される。
【0050】
あるいは初期化の時間短縮を優先する場合は、最適である可能性の高い増幅率や、設定幅の中間の増幅率に初期設定して判定を行い、増幅率が高過ぎて正常な測定結果が得られない(第二閾値T2を超える)場合には増幅率を下げ、増幅率が低過ぎて閾値Tを超えない場合には増幅率を上げる、というように探索する方法が採用される。(図4の動作フローにはない。)
【0051】
電源がONにされると(S301)、制御部28が装置の初期化処理を開始し、モータで駆動される光学機構(少なくとも光源ミラー駆動機構21aを含む)はモータの初期化が行われる(S302)。
そして内蔵の検出器24からの検出信号を取得する設定に切り替わる。検出器24からの検出信号の増幅率を変更するための信号増幅器25のゲイン調整機構29は、最初はゲインを0、例えば、検出信号を基本の増幅率で増幅してAD変換器26に送って測定する。また、モータで駆動される光学機構(光源ミラー駆動機構21a)は走査され、検出信号が最大となるように調整される(S303)。
【0052】
検出器24の検出信号は、(ゲイン0の)信号増幅器25およびAD変換器26を介して、制御部28に測定データ(デジタルデータ)として送られて閾値Tと比較される(S304)。その結果、光源ミラー駆動機構21aのモータが走査されたとき得られた測定データ(最大の検出信号に対応する測定データ)が閾値Tより大きいときはノイズでない本来の測定データを検出していると判定され、内蔵の検出器24が測定可能な検出器であると決定される(S305)。
【0053】
S304で測定データが閾値Tより小さいときは、外付けの検出器32からの検出信号を取得する設定に切り替わる(S306)。信号増幅器25のゲイン調整機構29は、ゲインを0のままにして測定する。このとき内蔵の検出器24は停止されるか、対応する信号ラインが信号増幅器25から遮断される。
そして検出器32の検出信号は、ケーブル33、コネクタ34、ケーブル35、信号増幅器25およびAD変換器26を介して、制御部28に測定データ(デジタルデータ)として送られて閾値Tと比較される(S307)。その結果、測定データが閾値Tより大きいときは本来の測定データであると判定され、外付けの検出器32が測定可能な検出器であると決定される(S308)。
以上で、いずれの検出器が測定可能な状態かの認識ができたことになる(S305、S308)。
【0054】
S307で測定データが閾値Tよりも小さいときは、再び内蔵の検出器24からの検出信号を取得する設定に切り替わる。ゲイン調整機構29は、ゲイン0からゲイン1に切り替わり、例えば検出信号の大きさが基本の増幅率の2倍に増幅されるように設定が変更される。また、モータで駆動される光学機構(光源ミラー駆動機構21a)は走査され、検出信号が最大となるように調整される(S312)。
【0055】
検出器24の検出信号は、(ゲイン1の)信号増幅器25およびAD変換器26を介して、制御部28に測定データ(デジタルデータ)が送られて閾値Tと比較される(S313)。その結果、測定データ(最大の検出信号に対応する測定データ)が閾値Tより大きいときはノイズでない本来の測定データを検出していると判定され、内蔵の検出器24が測定可能な検出器であると決定される(S313)。
【0056】
S313で測定データが閾値Tより小さいときは、外付けの検出器32からの検出信号を取得する設定に切り替わる(S314)。ゲイン調整機構29は、ゲインを1のままにして測定する。このとき内蔵の検出器24は停止されるか、対応する信号ラインが信号増幅器25から遮断される。
そして、検出器32の検出信号は、ケーブル33、コネクタ34、ケーブル35、信号増幅器25およびAD変換器26を介して、制御部28に測定データ(デジタルデータ)が送られて閾値Tと比較される(S315)。その結果、測定データが閾値Tより大きいときは付属品12の外付け検出器32からの測定データであると判定され、外付けの検出器32が測定可能な検出器であると決定される(S308)。
【0057】
続いて、制御部28は、認識結果に対応して、装置の設定を変更する(S309)。
そして通常の光学的初期化処理を開始する(S310)。すなわち、測定可能な検出器に入射する測定光を用いて光学的な原点出しを行う。以上で装置の初期化が完了する(S311)。
【0058】
S315で測定データが閾値Tより小さいと、いずれの検出器も測定可能な状態ではないので、自動認識ができなかったものと判定され、装置の設定はそのままにされる(S316)。このときはパーソナルコンピュータ11のモニタ画面に自動認識できなかったことのメッセージを表示する。以上で初期化は失敗したものとして完了する(S317)。
【0059】
このようにして、装置起動時の初期化時に、あるいは、装置起動後に、内蔵検出器24と外付け検出器32のいずれが測定可能な状態であるか認識し、誤操作のない測定を行うようにする。
【0060】
以上本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施形態に特定されるものでなく、本発明の目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
【0061】
例えば、光路切換ミラー23a(光路切換部)が外付け付属品12と一体に取り付けられてもよい。具体的には外付け付属品12の一部が試料室23に入り込むように構成され、光路切換ミラー23aが試料室23内に入り込んだ部分に取り付けられるようにしてもよい。
また、途中述べたような光電子増倍管が検出器である場合のように、増幅回路25ではなく検出器自体で増幅率を調整する場合もある。
また、増幅回路25やAD変換器26は、内蔵検出器と外付け検出器で別々のものを用い、デジタルデータとして取得するところで統合される場合もある。
また、増幅は行わない場合や、増幅ゲインが2段階以上ある場合、ゲインが1増えたときの増幅率の変化が2倍でない場合もある。
また、AD変換器とは異なる方法でデジタルデータ化する場合や、分光器が試料室と光源の間ではなく、試料室と検出器との間にある場合もある。
これら回路上や構成上の変更がなされた実施形態は、本発明の目的と直接関係あるところではなく、いずれも請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、外付け検出器を着脱することができる分光光度計に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
10 分光光度計(本体)
11 パーソナルコンピュータ
12 外付けの付属品
21 光源
22 分光器
22a 波長送り機構
23 試料室
23a 光路切換ミラー(光路切換部)
24 検出器(内蔵)
25 信号増幅器
26 AD変換器
28 制御部
31 積分球
32 検出器(外付け)
51 測定データ閾値記憶部
52 受光検出器認識部
53 装置状態設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光測定用の測定光を形成する光源部と、前記測定光が導入される試料室と、分光光度計の本体に内蔵される内蔵検出器と、前記本体に対し着脱可能な外付け付属品に付設される外付け検出器とを備え、着脱可能な光路切換部を前記試料室に装着したときには、前記測定光の光路が前記内蔵検出器に向かう通常光路から前記外付け検出器に向かう外部光路に切り換わり、前記内蔵検出器からの検出信号に基づいた測定に代えて前記外付け検出器からの検出信号に基づいた測定が行われるように切り換わる分光光度計であって、
前記内蔵検出器または前記外付け検出器からの測定データについての閾値(T)を記憶する測定データ閾値記憶部と、
前記測定光を試料室に導入した状態で、前記内蔵検出器または前記外付け検出器からの測定データと閾値(T)との比較結果に基づいて、いずれの検出器が測定光の受光が可能な状態かを認識する受光検出器認識部とを備えたことを特徴とする分光光度計。
【請求項2】
前記光路切換部は前記外付け付属品に一体に取り付けられる請求項1に記載の分光光度計。
【請求項3】
前記光源部は光源ミラーの向きを変える駆動機構を備え、
前記受光検出器認識部は、前記駆動機構により光源ミラーの向きを走査することにより、走査中に得られた測定データの最大値と閾値(T)との比較を行う請求項1または請求項2のいずれかに記載の分光光度計。
【請求項4】
前記内蔵検出器および前記外付け検出器の検出信号の増幅率を設定するためのゲイン設定機構を備え、
前記受光検出器認識部は、いずれの検出器からの測定データも閾値(T)を超えないときは、ゲイン設定機構により検出信号の増幅率を上げた上で測定データと閾値(T)との比較を行う請求項1〜3のいずれかに記載の分光光度計。
【請求項5】
前記内蔵検出器および前記外付け検出器の検出信号の増幅率を設定するためのゲイン設定機構と、
前記内蔵検出器または前記外付け検出器からの測定データについての閾値(T)および第二閾値(T2)(ただし、T2>T)を記憶する測定データ閾値記憶部とを備え、
前記測定光を試料室に導入した状態で、前記内蔵検出器または前記外付け検出器からの測定データを取得し、前記測定データが前記第二閾値(T2)を超えるときは、前記ゲイン設定機構により検出信号の増幅率を下げるように調整し、前記測定データと前記閾値(T)との比較結果に基づいて、いずれの検出器が測定光の受光が可能な状態かを認識し、いずれの検出器からの測定データも閾値(T)を超えないときは、前記ゲイン設定機構により検出信号の増幅率を上げるように調整した上で測定データと閾値(T)との比較を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分光光度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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