説明

分光分析用の発電機

【課題】回路の構成要素を減らすことができ、分光分析用の誘導結合プラズマを励起して保持するための比較的安価なRF発電機を提供する。
【解決手段】分光分析のための、トーチ27内で誘導結合プラズマを励起する誘導コイル26のためのRF発電機10。発電機10は、誘導コイル26と、並列接続させたコンデンサ25とを備えた共振負荷回路16にRF電力を供給するためにゲート駆動電圧22を介して固体スイッチング装置20のオン・オフを交互に切り替えるためのスイッチング回路12を備えている。各固定スイッチング装置20のためのゲート駆動回路24はそれぞれ、誘導コイル26の導線と互いに誘導結合する一部分30を有し、ゲート駆動電圧22を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光分析用の誘導結合プラズマ(ICP)を励起するための誘導コイル用無線周波(RF)発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で従来技術として示す特許文献またはその他の内容についての言及は、本願により確立された優先日において、その文献または内容がオーストラリアにおいて周知であること、または、それに含まれる情報が一般常識の一部であったことを認めているものとして解釈されるべきではない。
分光分析では、ICPは質量分析(MS)用のイオン源または原子発光分析(OES)用の光源として使用されてもよい。ICP装置は、トーチアセンブリと同軸上に装着した1または複数の水冷誘導コイルから構成されてもよく、該トーチアセンブリからアルゴンガスが慎重に制御した速度で導入される。RF電力を誘電コイルに供給する。アルゴンは電気を通さないため、例えば高電圧火花によってアルゴン内で発生した小規模な放電でプラズマが「開始」されるまでは、誘導コイルのRF電磁場によって加熱されない。この放電により、RF電磁場と相互に作用するのに十分な電子とイオンとが生成され、その結果、イオンおよび電子生成のプロセスで自己持続するのに十分な熱が発生し、それによりプラズマを保持する。
【0003】
分光分析の用途では、プラズマの温度は一般に3,000Kないし10,000Kの範囲内である。変動電磁場の周波数は、数MHzないし数GHzの範囲内にすることができるが、プラズマを適切な温度に比較的励起しやすい特に有用な範囲は10MHzないし50MHzの間である。
RF電力を供給する発電機は、プラズマを励起して維持するための十分な電力、例えば500Wないし3kWの範囲の電力を発生させることができなければならない。また、発電機は、例えば不意にプラズマが消える際に起きる負荷インピーダンスの急激かつ著しい変化に対応できなければならない。また、発電機は、例えばプラズマの励起と持続的発生との間に起きる負荷インピーダンスの非定常状態に対応できなければならない。
【0004】
別の重要な要素は、分光分析機器のRF発電機のコストである。分光分析の計装は高価であり、当業界は競争が激しい。したがって、そのような機器製造者が市場で競争力を維持していこうとするには、RF発電機または発振器といった構成要素のコストに制約がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,194,731号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、分光分析用の誘導結合プラズマを励起して保持するための比較的安価なRF発電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
固体スイッチング装置を備え、DC電源の両端に接続可能なスイッチング回路であって、前記固体スイッチング装置の各々がゲート駆動電圧を受けるためのゲート電極を有し、それによりRF電力を供給するためにオン・オフを交互に切り替え可能であるスイッチング回路と、
前記スイッチング回路からのRF電力が結合される負荷回路であって、並列共振のために接続させた誘導コイルとコンデンサとを備えた負荷回路と、
各固体スイッチング装置のゲート駆動回路であって、各々が負荷回路の一部分と互いに誘導結合する一部分を有し、前記ゲート駆動電圧を提供するゲート駆動回路と、
を備えた分光分析用の誘導結合プラズマ(ICP)を励起するための誘導コイル用無線周波数(RF)発電機が提供される。
【0008】
最も好都合には、前記負荷回路の前記一部分は誘導コイルの導線(リード)である。
誘導コイルの導線と互いに誘導結合する各ゲート駆動回路の一部分は、誘導コイルの導線と平行に延びている誘導ループであることが好ましい。
本発明の実施形態では、RF MOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)のフルブリッジは、RF周波数で切り替わり、並列接続されている誘導コイルとコンデンサとに結合回路網によって接続されている。MOSFETのゲート駆動電圧は、プラズマ誘導コイルの支持導線に近接した誘導結合ループから生じることが好ましい。この配置は、支持導線を1次インダクタとして使用して、それにより付加的な構成要素の必要性を回避し、コストを削減するので有利である。また、誘導結合ループ(すなわち、2次インダクタ)は、例えばプリント回路基板の導電性トラックを介して比較的安価に設けることができる。あるいは、ゲート駆動電圧は負荷回路の他の部分から生じるものとすることができる。例えば、スイッチング回路と、並列接続されている誘導コイルおよびコンデンサとの間を結合するためのインダクタから生じるものとすることができる。
【0009】
固体スイッチング回路のDC電源は、AC−DC変換器を使用してAC商用(ユーティリティ)電源から得てもよい。AC−DC変換器は絶縁型であっても、非絶縁型であってもよいが、好ましくは2段階変換器で、AC−DC力率補正(PFC)変換器とそれに続く絶縁型DC−DC変換器とを有する。また、非絶縁型のDC−DC変換器を使用してもよい。無線周波数発電機の出力制御は、DC電源電圧の変化によって、できる限り2段階変換器の第2段階を出力DC電圧の変化に利用して、行ってもよい。調整する出力変数は、一般的なプラズマ状態に基づいて変化する出力電力、電流、電圧またはそれらの組合せであり得る。誘導コイルにおいて、電力または他の量ではなく電流を調整することで、制御が容易になり、プラズマが発生した際または消えた際に何も変更する必要がない。発生や消滅の際に、プラズマのインピーダンスは広範囲にわたって変化するが、電流を調整することにより、点火のための強い磁場が存在し、プラズマが存在するときでも電力を許容できる程度に一定に維持することが確実になる。
【0010】
従来技術の固体発電機に比して、本発明の好適な実施形態は、高供給電圧を有し、寄生インダクタンスがそれほど問題にならず、MOSFETのフルブリッジ型に固有のクランプによる過電圧を上手く調整する。このような実施形態には、1または2つのスイッチング構成要素しか使用しない従来の固体発電機に対して、4つの構成要素を使用し、熱損失をそれらの間で分散させ、冷却処理を簡素化するという利点がある。
【0011】
また、本発明のいくつかの実施形態では、MOSFETのスイッチング装置に見られる負荷を、MOSFETの出力キャパシタンスが、MOSFETがオンになる前に実質的に放電するようにすることで、発電機回路の効率を非常に高くすることができる。
本発明をより理解し、本発明がいかに実施されるかを示すために、非限定的な例として、添付の図面を参照しながら実施形態をよって以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るRF発電機回路を示す機能ブロック図である。
【図2】RF MOSFETのフルブリッジを採用した本発明の好適な実施形態に係る発電機を示す図である。
【図3】RF負荷電流を制御するための変更が含まれた図2の発電機回路を示す。
【図4】負荷回路に容量分圧器が採用された図2の発電機回路の他の変更を示す。
【図5】相互結合しているインターレース方式のプラズマ誘導コイルを使用した本発明に係る発電機の他の実施形態を示す。
【図6】ゲート駆動回路の誘導ループ部分を示す本発明の一実施形態に係る構造の一部分を示す等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係るRF発電機10は、DC電源14の両端に接続可能なスイッチング回路12を備え、DC電源14は、結合回路18を介して負荷回路16にRF電力を供給する。スイッチング回路12は少なくとも2つの固体スイッチング装置20を備え、各固体スイッチング装置20は、それぞれのゲート駆動回路24からゲート駆動電圧を受けるためのゲート電極22を有する。ゲート駆動回路24は、RF電力を負荷回路16に供給するために固体スイッチング装置20のオン・オフを交互に切り替える。負荷回路16は、誘導コイル26と、並列接続されているコンデンサ25とを備えている。誘導コイル26は、分光分析のためにプラズマトーチ27においてICPを励起するためのものである。誘導コイル26は、一般的にはプラズマトーチ27と同軸上にあり、例えばアルゴンといったプラズマ形成ガスが制御した流量でプラズマトーチ27を通過する。誘導コイル26は支持導線28を備え、各ゲート駆動回路24は、当該ゲート駆動回路24へのフィードバックのために誘導コイル26の支持導線28と互いに誘導結合する一部分30を備え、固体スイッチング装置20のオン・オフを切り替えるためにゲート電極22にゲート駆動電圧を与える。
【0014】
回路10の出力は、負荷回路変数のフィードバックに応じてDC入力供給電圧14(符号34を参照)を変化させるマイクロプロセッサ制御装置32を介して制御してもよい。負荷回路変数は、符号36で示すように誘導コイル26の電流であってもよい。また、マイクロプロセッサ制御装置32はゲート駆動回路24にバイアス電圧38を供給してもよい。無線周波数発電機10の回路がマイクロプロセッサ制御装置32を介して一旦作動すると、自己発振する。
【0015】
図2に示す実施形態は、型DE375−501N21A(IXYS RF社)または同等のものである4つのRF MOSFET51,52,53および54(M1,M2,M3およびM4)を備えているフルブリッジ型スイッチング回路を有する発電機回路50を示している。このMOSFETの構成を利用して、約1.5〜2.0kWのRF電力出力をプラズマに発生できる。入力DC電源56をコンデンサ(キャパシタ)58(C10)によってバイパスし、誘導コイル60(L5)のRF電流に低インピーダンスのリターンパスを提供する。EMIフィルタ57がDC電源56とコンデンサ58との間に配置されている。
【0016】
電力は負荷結合インダクタ61,62,63および64(L1,L2,L3およびL4)によってMOSFET51〜54のフルブリッジから誘導コイル60(L5A)に結合される。ドレイン−ソース間のコンデンサ66,67,68および69(C6,C7,C8およびC9)がない場合、負荷コンデンサ70(C5)と並列である、誘導コイル60(L5A)および関連する導線80および82のインダクタンス(L5B,L5C)との組合せ、ならびに、MOSFET52(M2)および53(M3)が導通している際の負荷結合インダクタ62および63(L2およびL3)(またはMOSFET51(M1)および54(M4)が導通している際の負荷結合インダクタ61および64(L1およびL4))の直列の組合せは、目的動作周波数(通常、13MHzないし50MHzの周波数範囲内)で共振するように設定されている。これら構成要素の最適値は、誘導コイル60(L5A)のインダクタンス、誘導コイル60内のプラズマトーチ59におけるプラズマへの結合およびプラズマの温度とサイズとによるものであるため、シミュレーションと実験とで決定することができる。構成要素は、発電機回路50の当該部分において高RF電流を伝搬できるよう設定しなければならない。負荷コンデンサ70(C5)における少量の寄生インダクタンスは回路動作に著しく影響しない。
【0017】
ドレイン−ソース間のコンデンサ66,67,68および69(C6,C7,C8およびC9)はMOSFET51,52,53および54(M1,M2,M3およびM4)上でドレインからソースに接続されている。これらのコンデンサを使用して、MOSFETにおけるドレイン−ソース間の電圧偏差を制限する。コンデンサの有用性は、ドレイン−ソース間の電圧の制限と、MOSFETが周期毎に放電する必要があることから減少する電力変換効率との折衷である。また、導通(通電)していないMOSFET51,52,53または54において、ドレイン−ソース間のコンデンサ66,67,68または69と負荷結合インダクタ61,62,63または64(L1,L2,L3またはL4)との直列の組合せは、近接した導通しているMOSFETの負荷結合インダクタと並列に効果的に発生するため、コンデンサがあることで発電機回路50の動作周波数も上がる。例えば、MOSFET52(M2)が導通しているとき、導通していないMOSFET51(M1)に接続されている負荷結合インダクタ61(L1)とコンデンサ66(C6)との直列の組合せは負荷結合インダクタ62(L2)と効果的に並列である。これは、両電源レール72,74がバイパスコンデンサ58(C10)によって同じRF電位に保たれているためである。
【0018】
MOSFET51,52,53および54(M1,M2,M3およびM4)のゲート駆動は負荷回路からの誘導フィードバックによって得られる。ゲート駆動はそれぞれ、結合ループ77,76,79および78(L7,L6,L9およびL8)から生じる。結合ループ77,76,79および78は、支持導線によりプラズマ誘導コイル60(L5A)に設けられているインダクタ80および82(L5BおよびL5C)に互いに誘導結合している。結合ループ76および77(L6およびL7)は支持導線80(L5B)に結合している一方、結合ループ78および79(L8およびL9)は支持導線82(L5C)に結合している。結合ループ76,77,78および79(L6,L7,L8およびL9)の接続位相は、MOSFET51および54(M1およびM4)が導通せず、MOSFET52および53(M2およびM3)が同時に導通するものである。動作周波数における発振周期の逆相では、MOSFET52および53(M2およびM3)が非導通状態である一方、MOSFET51および54(M1およびM4)が導通する。
【0019】
または、誘導フィードバックは、導線80および82の代わりに、結合インダクタ61,62,63および64(L1,L2,L3およびL4)から得ることができる。本実施形態では、ゲート駆動インダクタ76,77,78および79(L6,L7,L8およびL9)はそれぞれ、結合インダクタ62,61,64および63(L2,L1,L4およびL3)と互いに誘導結合している。
【0020】
ゲート駆動回路は、2つの機能を果たすゲートコンデンサ84,86,88および90(C1,C2,C3およびC4)を備えている。ゲートコンデンサ84,86,88および90は、MOSFET51,52,53および54(M1,M2,M3およびM4)へのバイアス電源の短絡を防止するためにDC阻止機能を提供している。また、ゲートコンデンサ84〜90は、各々のゲート駆動回路の共振周波数を設定するためにも使用される。これらゲート駆動回路は、結合ループ76,77,78および79(L6,L7,L8およびL9)ならびにゲートコンデンサ84,86,88および90(C1,C2,C3およびC4)の直列の組合せのインダクタンスと、それぞれのMOSFET51,52,53および54(M1,M2,M3およびM4)のゲート入力キャパシタンスとを含む。ゲート駆動回路の共振周波数は一般に、発電機50のDC−RF電力変換効率を最大にするための動作周波数より高く設定される。
【0021】
MOSFET51,52,53および54(M1,M2,M3およびM4)のゲート−ソース間のバイアス電圧は、マイクロプロセッサ制御システム102によって制御されるDCバイアス電源97,98,99および100から無線周波数チョーク91,92,93,94,95および96(RFC1,RFC2A,RFC2B,RFC3,RFC4AおよびRFC4B)を介して結合される。抵抗器111,112,113および114(R1,R2,R3およびR4)はそれぞれ、各MOSFET51,52,53および54のゲートとソースとの間に接続され、マイクロプロセッサにより制御されたバイアス電源97〜100からのバイアスがない場合にゲート−ソース間のバイアス電圧をゼロに設定して、バイアスが印加されて発電機回路50が発振するまでMOSFET51〜54が確実に導通しないようにしている。
【0022】
プラズマトーチ59においてプラズマの温度を制御するには誘導コイル60(L5A)のRF電流を制御することが最も簡便である。この役割は、誘導コイル60(L5A)と、それに関連する支持導線80および82(L5BおよびL5C)ならびにコンデンサC5とにより形成されている共振回路に1次巻線を直列接続させたRF電流トランス116(T1)を使用することで容易に実行される。電流トランス116(T1)の2次巻線からの出力は、安定抵抗器に接続させてプラズマコイル電流検出器118で整流して、マイクロプロセッサ制御システム102内のアナログ−デジタル変換器により測定されるDCフィードバック信号を発生させてもよい。その後、マイクロプロセッサ制御システム102は、DC電力を発電機回路50に提供する可変DC電源56の出力電圧を制御する。このようにすれば、誘導コイル60(L5A)のRF電流は安定する。
【0023】
誘導コイル60のRF電流を制御するための(図3に示す)他の方法は、一部または全部のMOSFET51,52,53および54でゲート−ソース間の電圧を測定することによる。これは、電圧がゲート結合インダクタ76,77,78および79から引き出され、それにより誘導コイル60の電流に比例するからである。図3に示すように、従来のダイオード整流器117(D4,D5)とコンデンサ119(C13,C14)とを備えたゲート電圧検出器回路を使用してライン121にDC電圧を発生させ、そのDC電圧をマイクロプロセッサ制御システム102により測定し、DC電源56を制御するために使用する。これにより、誘導コイル60のRF電流は安定する。
【0024】
プラズマ検出器出力からの可変電源を直接アナログ制御することも可能である。マイクロプロセッサ制御システム102はまた、電流感知抵抗器120(R5)の両端の電圧降下を測定することでRF発電機50によって生じるDC電源電流も監視する。このようにして、誘導コイル60の両端にアークが発生した場合には、RF発電機50の構成要素を付加的に保護することができる。可変DC電源56とマイクロプロセッサ制御システム102は共にAC電源(商用電源)から動力を供給される。
【0025】
図4(図2における同様の構成要素には同様の参照符号を使用)は固体RF電源50の他の実施形態を示している。この固体RF電源50には、共振コンデンサ70(C5)ではなく、誘導またはワークコイル60電位を接地電位に対して均衡(バランス)させることでプラズマ電位を最小限にする、コンデンサ70aおよび70b(C5AおよびC5B)の容量分圧器を使用する。本実施形態では、接地電位に対して均衡させた可変DC電源56を使用する必要がある。その他の点については、この種のRF発電機50の動作は図4に示すものとすべて同じである。
【0026】
マイクロプロセッサ制御システム102はRF発電機50を作動させるための手段である。マイクロプロセッサ制御システム102は、MOSFET51,52,53および54(M1,M2,M3およびM4)を導通させるゲート−ソース間のバイアス電源97,98,99および100を制御する。RF発電機50を作動させるために、マイクロプロセッサ制御システム102はまず、可変DC電源56を低減された電圧(例えば、50ボルト)に設定して、ゲートバイアス電源97,98,99および100を、電流検知抵抗器120(R5)の両端の電圧降下によって測定されたゲート閾値電圧まで徐々に引き上げて導通させる。この時点で、発振が確立し、可変DC電源56の出力電圧を最終的な動作値(例えば、200ボルト)に引き上げることができる。プラズマ放電は、プラズマシステムで周知のように、プラズマトーチ59へのアルゴンガス流への、電離のための火花放電を開始することで引き起こされる。
【0027】
ゲート駆動回路の誘導フィードバックに誘導コイル60の支持導線80,82を1次インダクタとして使用することでいくつかの利点が得られる。まず、構成要素が減る。またさらに、結合ループ76,77,78および79を、例えば適当に成形加工した銅ストリップを介してまたは後述するプリント回路基板の導電性トラックを介して容易に設けることができる点で簡素化が可能になる。また、結合ループ76,77,78および79は低インダクタンスを有しているため、MOSFET51,52,53,54(M1,M2,M3,M4)の直接的なゲート駆動が可能になる。すなわち、ゲート駆動回路で構成要素(成分)を増幅する必要がない。

【0028】
上記例示したRF発電機50に関しては、典型的なDC−RF電力交換効率は、190ボルトのDC電源電圧で80%を上回る。
図5(図2における同様の構成要素には同様の参照符号を使用)は、ターナー(米国特許第5,194,731号明細書)が記述するような、相互結合したインターレース方式のプラズマ誘導コイル60aおよび60b(L5A/1,L5A/2)を使用する固体RF発電機50’の別の実施形態を示す。この構成では、接地電位に対して均衡されたDC電源56’を採用する必要がある。2つの電源バイパスコンデンサ58aおよび58b(C10A,C10B)がこの構成では必要になる。また、MOSFET51および53(M1およびM3)のバイアス電源97および99は、図2の実施形態のように接地電位を基準にするよりもむしろ、負DC電源レール74’に対して直ちに浮動しなければならないため、バイアス電圧基準点を確立するために別のRFチョーク91a(RFC1B)が必要になる。その他の点については、この種のRF発電機50’の動作は図2に示すものとすべて同じである。
【0029】
可変DC電源56の力率補正ブーストおよびDC−DC変換器は、既に確立された手法に応じて構築することができるが、完全な交換器をユニットとして電源製造者から購入することもできる。この用途には出力電圧がほぼ200Vであることを除いて特別な要件はない。
図6(図2における同様の構成要素には同様の参照符号を使用)を参照すると、本発明の図2の実施形態に係る電源装置50の構造200の一部分には、2対の対向するプリント回路基板204、206を支持するフレーム202が備えられている。プラズマトーチ(図示せず)が配置可能な誘導コイル60は、プリント回路基板204,206とフレーム202とから成るアセンブリ200に対して誘導コイル60を構造的に支持する導線80および82を備えている。誘導コイル60とその導線80および82は、発電機50の作動中に冷媒が流れる銅管から形成されていてもよい。
【0030】
プリント回路基板204は導電性トラック210を備え、各導電性トラック210は、導線80に近接して平行に延びている部分であって、それぞれ誘導結合ループ76(L6)および77(L7)になる部分を有する。コンデンサ84(C1)および86(C2)とMOSFET51(M1)および52(M2)とは、プリント回路基板204の導電性トラック210の上に実装されている個々の構成要素である。導線82に対する結合ループ78,79、およびコンデンサ88,90(C3,C4)とMOSFET53および54(M3およびM4)の同様な配置(図6では見えていない)が他方のプリント回路基板206によって設けられている。誘導コイル60の支持導線80,82に対する誘導結合ループ76,77の配置を明確に示すために、その他の種々構成要素を図6から省略している。これら省略した構成要素には、コンデンサ70,66,67,58(C5,C6,C7,C10)、インダクタ61,62(L1,L2)、抵抗器111,112(R1,R2)および無線周波数チョーク91,92および93(RFC1,RFC2A,RFC2B)が含まれている。
【0031】
プリント回路基板204および206の導電性トラック210を介して誘導結合ループ76,77,78および79が設けられた回路トポロジーにより、容易に実現できて低コストな構造が可能になる。
本明細書に記載の発明は、具体的に記述した以外の変形、変更および/または追加が可能であり、そのような変形、変更および/または追加は、以下の特許請求の範囲内に含まれることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体スイッチング装置を備え、DC電源の両端に接続可能なスイッチング回路であって、前記固体スイッチング装置の各々がゲート駆動電圧を受けるためのゲート電極を有し、それによりRF電力を供給するためにオン・オフを交互に切り替え可能であるスイッチング回路と、
前記スイッチング回路からのRF電力に結合される負荷回路であって、並列共振のために接続させた誘導コイルとコンデンサとを備えた負荷回路と、
各固体スイッチング装置のためのゲート駆動回路であって、各々が前記負荷回路の一部分と互いに誘導結合する一部分を有し、前記ゲート駆動電圧を提供するゲート駆動回路と、
を備えたことを特徴とする分光分析用の誘導結合プラズマを励起するための誘導コイル用無線周波数発電機。
【請求項2】
前記負荷回路の前記一部分は前記誘導コイルの導線であることを特徴とする請求項1に記載の無線周波数発電機。
【請求項3】
各ゲート駆動回路の前記一部分は誘導ループであることを特徴とする請求項2に記載の無線周波数発電機。
【請求項4】
前記誘導ループは前記誘導コイルの前記導線と平行に延びていることを特徴とする請求項3に記載の無線周波数発電機。
【請求項5】
各誘導ループはプリント回路基板の導通性トラックにより設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の無線周波数発電機。
【請求項6】
前記固体スイッチング装置は絶縁ゲート電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の無線周波数発電機。
【請求項7】
前記スイッチング装置は、フルブリッジ型に構成した4つのMOSFETを備えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の無線周波数発電機。
【請求項8】
DC電圧源を備え、前記DC電圧は、前記発電機の出力を変化させるために変えられることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の無線周波数発電機。
【請求項9】
前記DC電圧は前記負荷回路の測定変数に応じて変えられることを特徴とする請求項8に記載の無線周波数発電機。
【請求項10】
前記負荷回路の測定変数は前記誘導コイル共振回路の無線周波数電流であることを特徴とする請求項9に記載の無線周波数発電機。
【請求項11】
前記DC電圧は少なくとも1つの前記固体スイッチング装置のゲート駆動電圧に応じて変えられることを特徴とする請求項8に記載の無線周波数発電機。
【請求項12】
前記DC電圧源は、AC商用電源に接続可能なAC−DC変換器を備えたことを特徴とする請求項8ないし11のいずれか1項に記載の無線周波数発電機。
【請求項13】
前記AC−DC変換器は、AC−DC力率補正変換器と、それに続くDC−DC変換器とを有する2段階変換器であることを特徴とする請求項12に記載の無線周波数発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−537829(P2009−537829A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511301(P2009−511301)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000610
【国際公開番号】WO2007/134363
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(503002042)ヴァリアン オーストラリア ピーティーワイ.エルティーディー. (5)
【Fターム(参考)】