分光器
【課題】簡単な構造でワーク領域を小さくでき、波長走査範囲の広い波長分散型の分光器を提供する。
【解決手段】試料43から放出される試料43の特性を示す電磁波を回折する分光素子52と、この分光素子52をこの分光素子52の表面を軸として回転させる分光素子回転機構(61-1,62-1)と、分光素子52で回折された電磁波をそれぞれ異なる波長領域で検出する複数の検出器53-1,53-2,……,53-nと、分光素子回転機構(61-1,62-1)と回転軸を共有し、複数の検出器を分光素子52の回りで移動させる検出器回転機構(61-2,62-2)とを備える。検出器回転機構(61-2,62-2)のオフセット角度を変えることで、複数の検出器を切り替え可能とする。
【解決手段】試料43から放出される試料43の特性を示す電磁波を回折する分光素子52と、この分光素子52をこの分光素子52の表面を軸として回転させる分光素子回転機構(61-1,62-1)と、分光素子52で回折された電磁波をそれぞれ異なる波長領域で検出する複数の検出器53-1,53-2,……,53-nと、分光素子回転機構(61-1,62-1)と回転軸を共有し、複数の検出器を分光素子52の回りで移動させる検出器回転機構(61-2,62-2)とを備える。検出器回転機構(61-2,62-2)のオフセット角度を変えることで、複数の検出器を切り替え可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)等の波長分散型の分光器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨハンソン型の分光器は、図16に示すように、分光素子12eの結晶格子面がローランド円Qの半径Rの2倍の曲率半径2Rに湾曲され、分光素子12eの表面形状は、ローランド円Qの半径Rと等しい曲率に研磨されている。円周角一定の定理から、試料11eの励起線照射部位10eを一方の焦点とすると、励起線照射部位10eと、分光素子12eの分光面と、検出器13eによる検出点とが、ローランド円Q上に位置すれば、分光素子12eからの回折X線が、検出器13eによる検出点で焦点を結ぶ。ヨハンソン型の分光器は、常に励起線照射部位10eを含めた3点をローランド円Q上に配置可能なように設計する必要があり、分光素子12eによりローランド円Qの半径が決まってしまうので、試料11eと分光素子12eの間の距離を自由に選べない。このため、励起線照射部位10eの位置も含めて分光器を設計する必要があり、ヨハンソン型の分光器を、既存の分析装置に新たに搭載することは困難である。又、分光素子12eと、検出器13eの位置を制御する必要があるため、装置が複雑になり、大型化する。
【0003】
一方、図17に示すように、試料11fの励起線照射部位10fから放出された特性X線を、ポリキャピラリレンズ15fを用いて平行ビーム化し、平板型の分光素子12fによって分光し、検出器13fに入射させることによって分析を行う方法が考案されている(特許文献1参照)。この方式では、検出器13fの検出点に焦点を結ぶ必要がなく、分光素子12f上のX線照射部位120fを中心に分光素子12fを回転させ、検出器13fを分光素子12fの回転に連動させることにより分析を行うことができるので、装置の構造を小型化にできる。又、ポリキャピラリレンズ15fから分光素子12fまでの距離は、任意に設定可能であり、図17に示す方式の分光器を、既存の分析装置に新たに搭載することが比較的容易である。
【0004】
以上のような波長分散型のX線分光器の場合、1台の分光器に分光可能な波長範囲の異なる複数の分光結晶を搭載し、それらを切り替えることで分光できる波長範囲を広くしているが(特許文献2参照)、1台の分光器で更に広い波長範囲を分析するためには、検出可能な波長範囲の異なる複数の検出器を搭載し、切り替えて使用する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−294168号公報
【特許文献2】特開2008−026251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、検出器の切り替えには複雑な構造が必要になるため、小型化が可能な実用に足るような分光器の構成は未だ提案されていない。
【0007】
本発明は、簡単な構造でワーク領域を小さくでき、波長走査範囲の広い波長分散型の分光器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の様態は、(a)試料から放出される試料の特性を示す電磁波を回折する分光素子と、(b)この分光素子をこの分光素子の表面を軸として回転させる分光素子回転機構と、(c)分光素子で回折された電磁波をそれぞれ異なる波長領域で検出する複数の検出器と、(d)分光素子回転機構と回転軸を共有し、複数の検出器を分光素子の回りで移動させる検出器回転機構とを備え、検出器回転機構のオフセット角度を変えることで、複数の検出器を切り替え可能とした分光器であることを要旨とする。
【0009】
本発明の第2の様態は、(a)試料から放出される試料の特性を示す電磁波を回折する分光素子と、(b)この分光素子をこの分光素子の表面を軸として回転させる分光素子回転機構と、(c)分光素子で回折された電磁波をそれぞれ異なる波長領域で検出する複数の検出器と、(d)分光素子回転機構と回転軸を共有し、複数の検出器の何れかを搭載し、分光素子の回りで移動させる複数の検出器回転機構とを備え、複数の検出器回転機構を切り替えることで、複数の検出器を切り替え可能とした分光器であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単な構造でワーク領域を小さくでき、波長走査範囲の広い波長分散型の分光器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る分光器を用いた分析装置の基本的な構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る分光器を用いた分析装置に用いる、レンズ部の構成の一例を説明する模式図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るポリキャピラリレンズの構造を説明する模式図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る回転体駆動部の構成の一例を説明する模式図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る分光器における視射角及び回折角を説明する模式図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る検出器切り替え手段の論理構成の概略を示すブロック図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る分析方法を説明するフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る分析方法に用いる、2台の検出器の間のオフセット角を説明する模式図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る分析方法において、切り替え前の第1の検出器によりX線を検出する様子を説明する模式図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る分析方法において、切り替え後の第2の検出器によりX線を検出する様子を説明する模式図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る分光器を用いた分析装置の基本的な構造を示すブロック図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る分光器を用いた分析装置の基本的な構造を示すブロック図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係る分光器の基本的な構造を説明する模式図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る検出器切り替え手段の論理構成の概略を示すブロック図である。
【図15】本発明のその他の実施の形態に係る分光器を用いた分析装置の励起線源及びレンズ部の一例を示す模式図である。
【図16】従来のヨハンソン型の分光器を説明する基本的な模式図である。
【図17】ポリキャピラリレンズを用いた分光器を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して、本発明の第1〜第3の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、装置の構成等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。又、以下に示す第1〜第3の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る分光器を用いた分析装置として、図1に示すように、試料43から放出されるX線を分析する分析ユニット4と、分析ユニット4の種々の動作を制御し、且つ分析ユニット4から得られたデータを解析、管理等をする制御解析装置2を備える電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)について例示的に説明する。
【0014】
分析ユニット4は、図1に示すように、試料43に向け励起線(電子線)Eを出射する励起線源(電子銃)41と、励起線源41と試料43との間に位置し、試料43上に励起線Eを集束し、走査するレンズ部42と、試料43を保持し、移動するステージ部44と、励起線Eが照射された試料43から放出されたX線を分光、検出する分光器5とを備える。レンズ部42は例えば、図2に示すように、集束レンズ421、偏向コイル422、対物レンズ423等の電子レンズを備える。集束レンズ421及び対物レンズ423は、励起線Eを試料43上に集束し、偏向コイル422は、励起線Eの照射方向を曲げ、試料43上において、励起線Eを走査する。
【0015】
励起線Eは、レンズ部42が形成する磁場を通り、微小径に収束されて、ステージ部44上に載置された試料43の励起線照射部位430を照射する。試料43の励起線照射部位430から試料43の特性を示すX線が周囲に放出されるので、試料43の近傍の上方には、図1に示すように、励起線照射部位430から放出されたX線を分光する分光器5が設置されている。ステージ部44は図示を省略した駆動機構により水平方向に移動し、試料43上の励起線照射部位430で励起線Eの照射位置が走査可能となっている。
【0016】
第1の実施の形態に係る分光器5は、試料43から放出される試料43の特性を示す電磁波を回折する分光素子52と、この分光素子52をこの分光素子52の表面を軸として回転させる分光素子回転機構(61-1,62-1)と、分光素子52で回折された電磁波をそれぞれ異なる波長領域で検出する複数の検出器53-1,53-2,……,53-nと、分光素子回転機構(61-1,62-1)と回転軸を共有し、複数の検出器53-1,53-2,……,53-nを分光素子52の回りで移動させる検出器回転機構(61-2,62-2)とを備え、検出器回転機構(61-2,62-2)のオフセット角度を変えることで、複数の検出器53-1,53-2,……,53-nを切り替え可能としている。図1に示すように、分光素子回転機構(61-1,62-1)は、円盤状の第1の回転体61-1と、第1の回転体61-1を回転させる第1の回転体駆動機構62-1とを備える。検出器回転機構(61-2,62-2)は、第2の回転体61-2と、第2の回転体61-2を回転させる第2の回転体駆動機構62-2とを備える。第1の回転体61-1及び第2の回転体61-2は、第1の回転体61-1がなすゴニオメータ円の中心を通り、紙面に垂直な軸である回転軸60を共有して回転する。
【0017】
即ち、第1の実施の形態に係る分光器5は、励起線照射部位430から放出されたX線を平行ビーム化するポリキャピラリレンズ51と、第1の回転体61-1と第1の回転体61-1より大きな半径を有する第2の回転体61-2を有するゴニオメータ装置6と、第1の回転体61-1の中央に搭載された分光素子52と、第2の回転体61-2の円周側に設けられ、それぞれ検出可能なX線の波長範囲の異なるn台(nは2以上の整数である。)の検出器53-1,53-2,……,53-nとを備える。
【0018】
ポリキャピラリレンズ51は、図3に示すように、内径が1〜100μm程度の微小径のガラスキャピラリ(毛管)を100本〜100万本程度束ね、一端側は個々のキャピラリが焦点Fに向くようにすぼめられ、他端側は個々のキャピラリが平行になるように構成された光学素子である。試料43の励起線照射部位430から放出されたX線は、励起線照射部位430が焦点Fと一致するように設置されたポリキャピラリレンズ51の個々のキャピラリ内を全反射しつつ通過して平行化され、他端側においてX線の平行ビームを形成する。
【0019】
第1の回転体駆動機構62-1は、例えば図4に示すように、ステッピングモータ、サーボモータ等のアクチュエータ621と、アクチュエータ621によって回転されるウォーム(ねじ歯車)622と、ウォーム622と噛み合い、第1の回転体61-1の周囲にリング状に設けられたウォームホイール(はすば歯車)623から構成可能である。第2の回転体駆動機構62-2についても同様であり、第1の回転体駆動機構62-1と第2の回転体駆動機構62-2とは、それぞれ独立した駆動が可能である。第1の回転体駆動機構62-1及び第2の回転体駆動機構62-2の動力伝達機構はウォームギアに限定されるものではなく、第1の回転体61-1及び第2の回転体61-2を高精度に駆動制御が可能である限り、他のギアセット、若しくはベルト・プーリ、チェーン・スプロケット等を採用してもよく、又、動力伝達機構を用いないダイレクトドライブ方式等を採用しても構わない。
【0020】
ゴニオメータ装置6は、図示を省略したロータリエンコーダ等の角度検出器を内蔵し、第1の回転体61-1及び第2の回転体61-2の基準点からの回転角度を検出可能である。ゴニオメータ装置6の角度検出器により検出された角度情報は、信号化され制御解析装置2に入力される。
【0021】
第1の実施の形態に係る分光器5に用いる分光素子52は平板型であり、分光素子52の表面が回転軸60を含むように、第1の回転体61-1の回転面に対して表面を垂直にして搭載されている。分光素子52は、フッ化リチウム(LiF)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、フタル酸ルビジウム(RAP)、フタル酸タリウム(TAP)、ペンタエリスリトール(PET)、人工超格子分光素子(LDE)、燐酸2水素アンモニウム(ADP)、……等公知の種々の結晶から適宜選択して、切り替え可能である。分光素子52は、例えば、四角柱や六角柱の各側面に結晶を貼り付け、角柱の中心軸に対して回転する機構を設け、角柱を回転させることにより分光に用いる結晶を切り替えるようにすればよい。角柱の軸の方向は、分光に用いる結晶の表面が回転軸60を含むように搭載可能であれば、第1の回転体61-1に対して垂直でもよいし、平行でもよい。ポリキャピラリレンズ51によって平行ビーム化されたX線は、ポリキャピラリレンズ51から分光素子52の表面に向け出射される。分光素子52への入射角の余角である視射角θは、第1の回転体61-1の回転による分光素子52の表面のポリキャピラリレンズ51の軸方向に対する角度の制御によって変化する。
【0022】
複数の検出器53-1〜53-nは、それぞれの検出方向を回転軸60へ向け、相互間に所定のオフセット角を有して、第2の回転体61-2に互いに干渉しないように配置されている。検出器53-1〜53-nが互いに干渉しない限り、検出器53-1〜53-nの個数は何台でも構わない。ポリキャピラリレンズ51によって平行ビーム化されたX線が、分光素子52で回折され、図示を省略した受光スリットを通過して複数の検出器53-1〜53-nの何れかにより検出される。このため、ポリキャピラリレンズ51、分光素子52、検出器53-1〜53-nは、回転軸60の方向を法線方向とする同一平面上に位置することは勿論である。
【0023】
例えば、分光素子52を用いて波長走査を行う場合において、検出器53-1は、図5に示すように、分光素子52への視射角=θの場合、分光素子52への入射波の方向と、回折波の方向との間の角(以下において回折角という。)が2θとなるように、第2の回転体61-2の回転によって移動される。つまり、視射角θを設定する第1の回転体61-1に設置された分光素子52の回転と、この回転に連動する第2の回転体61-2に設置された検出器53-1の回転により、回折角2θを制御して、倍角の関係を維持することによりブラッグの回折条件が満たされる。
【0024】
検出器53-1〜53-nは、それぞれ測定するX線の波長に応じて、例えば、シンチレーションカウンター、ガスフロー型比例計数管(FPC)、イグザトロン検出器、GeやCdZnTe等の半導体検出器等を用いればよい。
【0025】
検出器53-1〜53-nによる検出信号は、制御解析装置2における信号処理により、例えば、波長走査に応じたX線スペクトルが作成され、更にこれに基づく定性分析や定量分析が可能である。又、励起線E若しくはステージ部44による位置走査に応じて試料43上の元素の含有量の分布(マッピング)画像を作成するようにすることもできる。
【0026】
制御解析装置2は図1に示すように、CPU(中央演算処理装置)3、プログラム記憶装置25、波長情報記憶装置26、角度情報記憶装置27、分析情報記憶装置28、入力装置22、出力装置23、表示装置24、入出力制御部21等を備えて、ノイマン型コンピュータのハードウェア構成をなしている。
【0027】
制御解析装置2のプログラム記憶装置25は、分析ユニット4の制御に必要な一連のプログラムを格納する。波長情報記憶装置26は、複数の検出器53-1〜53-nが、それぞれ有する検出可能なX線の波長範囲と、使用した分光素子52によって波長走査を行うことができる波長範囲とを格納する。角度情報記憶装置27は、検出器53-1〜53-nの切り替え時に必要となる情報として、切り替え前後の視射角θ、回折角2θ、検出器53-1〜53-nの配置された角度差等を格納する。分析情報記憶装置28は、分析対象や分光素子52等の分析条件、分析に用いる検出器53-1〜53-nの他、分析を行った際の分析結果、分析日時等の情報を格納する。
【0028】
入力装置22、出力装置23及び表示装置24は、入出力制御部21を介して、CPU3とのデータの送受信を行う。図1において、入力装置22はキーボード、マウス、ライトペン等で構成される。入力装置22より分析実行者は、分析対象の元素、分光素子52の種類、複数の検出器53-1〜53-nによる走査波長範囲、波長走査の際のステップ幅、等の分析条件の設定を行うことが可能である。更に、入力装置22より、分析中止の命令、設定した各条件の修正等を行うことも可能である。又、出力装置23及び表示装置24は、それぞれ、プリンタ装置及びディスプレイ装置等により構成することが可能である。表示装置24は分析条件設定画面、分析結果画面等を表示することができる。
【0029】
制御解析装置2のCPU(中央演算処理装置)3は、励起線源41の動作を制御する励起線源制御手段31、レンズ部42の動作を制御するレンズ部制御手段32、ステージ部44の動作を制御するステージ部制御手段33、検出器53-1〜53-nからの検出信号を処理する検出信号処理手段34、検出器53-1〜53-nの切り替えを制御する検出器切り替え手段35等のハードウェア資源を論理構造として有する。検出器切り替え手段35の詳細は、図6に示すように、ゴニオメータ装置6の第1の回転体駆動機構62-1及び第2の回転体駆動機構62-2の駆動制御を行うゴニオメータ装置制御手段351と、検出器53-1〜53-nの切り替え時に必要となるゴニオメータ装置6の駆動量(回転角)を計算する駆動量処理手段352と、検出器53-1〜53-nの駆動制御を行う検出器制御手段353とを有する。
【0030】
なお、図1のプログラム記憶装置25、波長情報記憶装置26、角度情報記憶装置27、分析情報記憶装置28は、論理構成を模式的に表示したものであり、現実の物理的構成としては、プログラム記憶装置25、波長情報記憶装置26等の記憶内容は同一のハードウェアに格納されて構わない。例えば、角度情報記憶装置27の記憶内容は、SRAM、DRAM等の揮発性の記憶装置からなる主記憶装置に格納することが可能で、プログラム記憶装置25、波長情報記憶装置26、分析情報記憶装置28の記憶内容は、ハードディスク(HD)等の磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク、光磁気ディスク等の不揮発性の記憶装置からなる補助記憶装置に格納することが可能である。補助記憶装置としては、その他、RAMディスク、ICカード、フラッシュメモリーカード、USBフラッシュメモリー、フラッシュディスク(SSD)等が使用可能である。
【0031】
図1に示すような、本発明の第1の実施の形態に係る分光器5によれば、以下に説明するような手順で波長範囲の異なる複数の検出器53-1〜53-nを切り替えて順次使用できる。
【0032】
なお、図1に示す第1の実施の形態に係る分光器5は例示であり、複数の検出器53-1,53-2,……,53-nを搭載するギアを用い、このギアの中心軸中に分光素子52を搭載するためのシャフトを通し、そのシャフトを大きなギアで回すような、他の構成であっても構わない。
【0033】
−検出器切り替え方法−
図7のフローチャートを用いて、第1の実施の形態に係る分析方法の一例として、第1の検出器53-1を用いて視射角θS〜θ1、回折角2θS〜2θ1で分析を行った後、第2の検出器53-2に切り替えて視射角θ2〜θE、回折角2θ2〜2θEで分析を行う場合について例示的に説明する。図8に示すように、分光素子52への入射波の方向を基準として、第1の検出器53-1の回転角φ1、第2の検出器53-2の回転角φ2とすれば、第1の検出器53-1、第2の53-2の間のオフセット角β=φ1−φ2となる。:
(イ)先ず、ステップS101において、図1に示す入力装置22を介して、分析に用いる検出器、試料43の分析対象元素、分光素子52の種類、走査波長範囲、波長ステップ幅、視射角θS,θ1,θ2,θE、回転角φ1,φ2等、分析に用いる種々の条件やパラメータを分析条件として設定する。設定された条件やパラメータは、分析情報記憶装置28に格納され、視射角θS,θ1,θ2,θE、回転角φ1,φ2が角度情報記憶装置27に格納される。
【0034】
(ロ)ステップS102において、ステップS101で指定された分析条件に基づき分析を行う。ゴニオメータ装置制御手段351が、第1の回転体駆動機構62-1及び第2の回転体駆動機構62-2を駆動させ、図9に示すように、分光素子52への視射角θ=θS、第1の検出器53-1の回転角φ1=2θSを初期値として、第1の回転体61-1を例えば、時計方向に回転させ、この第1の回転体61-1の回転に連動させて、第2の回転体61-2を時計方向に回転させ、第1の検出器53-1を用いて、視射角θS〜θ1、回折角2θS〜2θ1までの間時計方向に波長走査する。第1の検出器53-1の時計方向の波長走査が終了すると、ステップS103において、ステップS101で指定された分析条件に基づき、第2の検出器53-2に切り替えて分析を行うか否かを決定する。第2の検出器53-2に切り替える場合は、ステップS104に進む。
【0035】
(ハ)ステップS104において、第2の検出器53-2に切り替えるためのゴニオメータ装置6の駆動量を取得する。駆動量処理手段352は、角度情報記憶装置27から視射角θ2,θE、回転角φ1,φ2を読み出し、ゴニオメータ装置6に必要な駆動量である回転角を算出し、角度情報記憶装置27に格納し、ゴニオメータ装置制御手段351が、角度情報記憶装置27からゴニオメータ装置6に必要な回転角を読み出す。
【0036】
(ニ)ステップS105において、ゴニオメータ装置制御手段351は、第1の回転体61-1と第2の回転体61-2を連動させて回転させθ=θ2,φ1=2θ2とした後、第2の回転体駆動機構62-2を介して、第2の回転体61-2を、オフセット角βだけ時計方向に進行させ、第2の検出器53-2の回転角φ2=2θ2とする。更に、検出器制御手段353によって、検出器53-1の動作を停止し、検出器53-2の動作を開始し、検出器53-2からの検出信号を制御解析装置2に出力するように切り替える。
【0037】
(ホ)ステップS106に進み、ゴニオメータ装置制御手段351が、第1の回転体駆動機構62-1及び第2の回転体駆動機構62-2を駆動させ、図10に示すように、検出器53-2を用いて、視射角θ2〜θE、回折角2θ2〜2θEまでの間波長走査する。検出器53-2での波長走査が終了すると、ステップS103において、ステップS101で指定された分析条件に基づき、更に次の検出器に切り替えて次の波長範囲の分析を続けるか否かを決定する。次の波長範囲の分析を行わない場合は終了する。
【0038】
上記の説明は、第1の回転体61-1及び第2の回転体61-2が時計方向に回転して、時計方向に波長走査する場合について説明したが、反時計方向に波長走査をする場合は、第1の回転体61-1及び第2の回転体61-2を反時計方向に回転させ、視射角θのとき回折角2θとなるようにすればよい。
【0039】
(第2の実施の形態)
図1に示す第1の実施の形態に係る分光器の構成は例示であり、ゴニオメータ装置6は、図11に示すように、複数の検出器回転機構(61-2a,62-2a;61-3a,62-3a)を備え、複数の検出器回転機構(61-2a,62-2a;61-3a,62-3a)にそれぞれ検出器を備えるようにしてもよい。
【0040】
即ち、本発明の第2の実施の形態に係る分光器5aは、図11に示すように、試料43から放出される試料43の特性を示す電磁波を回折する分光素子52aと、この分光素子52aをこの分光素子52aの表面を軸として回転させる分光素子回転機構(61-1a,62-1a)と、分光素子52aで回折された電磁波をそれぞれ異なる波長領域で検出する複数の検出器(53-1a〜53-na;54-1a〜54-ma)と、分光素子回転機構(61-1a,62-1a)と回転軸を共有し、複数の検出器(53-1a〜53-na;54-1a〜54-ma)の何れかを搭載し、分光素子52aの回りで移動させる複数の検出器回転機構(61-2a,62-2a;61-3a,62-3a)とを備え、複数の検出器回転機構(61-2a,62-2a;61-3a,62-3a)を切り替えることで、複数の検出器(53-1a〜53-na;54-1a〜54-ma)を切り替え可能としている点で第1の実施の形態と異なる。分光素子回転機構(61-1a,62-1a)は、図11に示すように、円盤状の第1の回転体61-1aと、第1の回転体61-1aを回転させる第1の回転体駆動機構62-1aとを備える。第1の検出器回転機構(61-2a,62-2a)は、第2の回転体61-2aと、第2の回転体61-2aを回転させる第2の回転体駆動機構62-2aとを備え、第2の検出器回転機構(61-3a,62-3a)は、第3の回転体61-3aと、第3の回転体61-3aを回転させる第3の回転体駆動機構62-3aとを備える。
【0041】
具体的には、図11に示すように、第2の回転体61-2上にn台(nは1以上の整数である。)の検出器53-1a〜53-naを、第3の回転体61-3上にm台(mは1以上の整数である。)の検出器54-1a〜54-maを備える。
【0042】
図11に示すように、第2の回転体61-2aは、第1の回転体61-1より大きな半径を有し、第3の回転体61-3aは、第2の回転体61-2aより大きな半径を有する。第1の回転体61-1a、第2の回転体61-2a、第3の回転体61-3aは、それぞれ第1の回転体61-1aがなすゴニオメータ円の中心を通り、紙面に垂直な回転軸60aを共有して回転する。第3の回転体駆動機構62-3aは、第1の回転体駆動機構62-1a、第2の回転体駆動機構62-2aと同様な基本構成となっており、第1の回転体駆動機構62-1a、第2の回転体駆動機構62-2a、第3の回転体駆動機構62-3aは、互いに独立した高精度な駆動制御が可能である。
【0043】
なお、図11においては、複数の検出器回転機構(61-2a,62-2a;61-3a,62-3a)として、第1の検出器回転機構(61-2a,62-2a)及び第2の検出器回転機構(61-3a,62-3a)の2つの検出器回転機構を例示しているが、検出器回転機構は2つに限定されるものではなく、検出器回転機構は3つ以上でも構わない。即ち、第2の実施の形態のゴニオメータ装置6aが4枚以上の回転体を備え、それぞれの回転体に検出器を備えるようにしてもよい。
【0044】
図11に示すように、検出器54-1a〜54-maは、検出器53-1〜53-nと同様に、mが2以上の場合は、それぞれの検出方向を回転軸60aへ向け、互いに干渉しないように相互間に所定の角度差を有して、第3の回転体61-3aに配設される。ポリキャピラリレンズ51aによって平行ビーム化されたX線等の電磁波が、分光素子52aで回折され、図示を省略したスリットを通過して検出器53-1a〜53-na,54-1a〜54-maによって検出可能なように、ポリキャピラリレンズ51a、分光素子52a、検出器53-1a〜53-na,54-1a〜54-maは、回転軸60aに対して垂直な同一平面上に位置する。
【0045】
例えば、定性分析や定量分析等のための波長走査を、検出器53-1aを用いて視射角θS〜θ1、回折角2θS〜2θ1までの間行った後、検出器54-1aに切り替えて視射角θ2〜θE、回折角2θ2〜2θEまでの間行う場合において、分光素子52aへの入射波の方向を基準として、切り替え前に用いる検出器53-1aの回転角φ1、切り替え後に用いる検出器54-1aの回転角φ2とすると、第2の回転体61-2aに設置された検出器53-1aと、第3の回転体61-3aに設置された検出器54-1aとは、互いに独立した回転が可能なため、検出器53-1aによる波長走査の最中に、検出器54-1aの回転角φ2=2θ2として待機させておくことが可能となり、より迅速な分析を行うことができる。
【0046】
(第3の実施の形態)
分光素子は、第1及び第2の実施の形態で説明したような平板型に限定されるものではない。本発明の第3の実施の形態に係る分光器を用いた分析装置の分析ユニット4bは、図12に示すように、湾曲型の分光素子52bによって分光を行うヨハンソン型の分光器5bを備える。背景技術の欄で説明したように、分光素子52bの表面の曲率半径Rと等しい半径Rを有するローランド円Q上に、試料43bの励起線照射部位430bと、格子面の曲率半径2Rの分光素子52bと、検出点とが位置する必要がある。このため、第3の実施の形態に係る分光器を用いた分析装置においては、励起線照射部位430bから分光素子52bまでの距離と、分光素子52bからn台の検出器53-1b〜53-nbによる検出点までの距離とがローランド円Qを基準として調節される。
【0047】
例えば、図13に示すように、第3の実施の形態に係る分光器は、励起線照射部位430bと、湾曲型の分光素子52bと、受光スリット59bとをローランド円Qの外周に配置する第1の回転体61-1bと、検出可能な波長範囲の異なる複数の検出器53-1b〜53-nb(図12及び図13では、2台の検出器53-1b,53-2bのみ図示している。)を配置するように、第1の回転体61-1bと同一の回転中心を有し、第1の回転体61-1bより大きな半径を有し、第1の回転体61-1bよりも紙面の奥に位置する円盤状の第2の回転体61-2bとを備える。第2の回転体61-2bには、第2の回転体61-2bを回転させる第2の回転体駆動機構62-2bが設けられている。図13に示すような構成にすれば、主アーム63bの一端側(図13において左側の端部側)は、ローランド円Qの回転軸60bに平行な励起線照射部位430bを通る軸を回転軸としてローランド円Qに固定され、他端側(図13において右側の端部側)はローランド円Qの中心となる回転軸60bを、ローランド円Qが回転するように支持する。位置を固定された励起線照射部位430bが、常にローランド円Qの円周上に位置し、主アーム63bの回転により移動する回転軸60bには、補助アーム64bの一方の端部が固定され、補助アーム64bにより距離Rを隔てた補助アーム64bの他端側がローランド円Qの円周上に位置するように、受光スリット59bがローランド円Q上に設置されている。検出器53-1b〜53-nbによる検出点Dは、受光スリット59bのスリット部に近似することが可能なので、検出点Dは、補助アーム64bにより、常にローランド円Qの円周上に位置する。
【0048】
湾曲型の分光素子52bは、分光素子52bの法線方向がローランド円Qの回転軸60bに向かうように、分光素子ホルダ65bを介してローランド円Qである第1の回転体61-1bの円周上に回転可能に、且つ、円周上をスライドするように設置されている。分光素子52bは、分光素子駆動機構55bにより、分光素子ガイド56bに沿って直線駆動されることにより、ローランド円Qの円周上をスライドする。分光素子ガイド56bは、励起線Eが照射される試料43bの表面に対して一定の角度を維持して、分光素子52bが直線移動するので、励起線照射部位430bと、分光素子52bの表面を通る分光素子中心軸520bの距離が変化すると、ローランド円Qの中心である回転軸60bが、励起線照射部位430bを中心として回転する。
【0049】
分光素子駆動機構55bは、図13に示すように、分光素子ホルダ65bに保持された分光素子52bがローランド円Qの円周上をスライドするように、分光素子中心軸520bを中心に回転する。
【0050】
受光スリット59bは、受光スリット駆動機構57bにより、ローランド円Qの円周上に受光スリット59bの回転中心がスライドするように固定されながら受光スリットガイド58bに沿って直線移動される。受光スリットガイド58bは、受光スリット59bを駆動させる際の直線移動のガイドであり、常に受光スリット59bを通る光軸が分光素子中心軸520bの方向を向くように設定されている。分光素子52bからの回折X線が、受光スリット59bを通過し、検出器53-1b〜53-nbの何れかによって検出されるように、受光スリットガイド58bは、分光素子中心軸520b、受光スリット59b、及び検出器53-1b〜53-nbの何れかが一直線上に保持する。
【0051】
複数の検出器53-1b〜53-nbは、それぞれ検出器ホルダ66-1b〜66-nbに保持され、互いに干渉しないように相互間に所定の角度差を有して、分光素子ガイド56b、受光スリットガイド58bよりも紙面の奥の方で回転する第2の回転体61-2bの円周側に配設されている。検出器ホルダ66-1b〜66-nbは、それぞれ第2の回転体61-2bと平行な面で回転(自転)可能であり、第2の回転体61-2bの回転(公転)に伴い、検出に用いる検出器53-1b〜53-nbの検出方向を受光スリット59bに向くように制御する。
【0052】
検出器ホルダ66-1b〜66-nbのそれぞれは、検出器53-1b〜53-nbの何れかを受光スリットガイド58bに順次脱着させるため、図示を省略した駆動機構により、紙面に垂直方向の移動が可能である。受光スリットガイド58bは、検出器の位置の下面に開口部を有し、検出器53-1b〜53-nbの何れかを選択して受光スリットガイド58bに順次開口部を介して脱着させる際、選択された検出器53-1b〜53-nbの何れかと、受光スリットガイド58bの開口部との位置合わせは、第2の回転体駆動機構62-2bによる第2の回転体61-2bの回転によって行われる。
【0053】
図13で第2の回転体61-2bは紙面の奥に位置するが、測定時(分析時)において、X線が分光素子52bで回折され、受光スリット59bで焦点を結び、検出点Dを複数の検出器53-1b〜53-nbの何れかによって順次検出可能なように、励起線照射部位430b、分光素子52b、検出点Dは、同一平面をなすローランド円Qの円周上にそれぞれ位置する。
【0054】
第3の実施の形態に係る制御解析装置2のCPU3が論理構造として有する検出器切り替え手段35bは、図14に示すように、ゴニオメータ装置6bの第2の回転体駆動機構62-2bの駆動制御を行うゴニオメータ装置制御手段351bと、検出器53-1b〜53-nbの切り替え時に必要となる分光器5bの駆動量を計算する駆動量処理手段352bと、検出器53-1b〜53-nbの駆動制御を行う検出器制御手段353bと、分光素子駆動機構55b、受光スリット駆動機構57bを駆動制御する分光器制御手段355bとを備える。試料43bの励起線照射部位430bと、分光素子52bの分光面と、検出器53-1b〜53-nbによる受光スリット59bの検出点Dとは、主アーム63b、補助アーム64b、分光素子駆動機構55b、受光スリット駆動機構57b、第2の回転体駆動機構62-2bによって、常にローランド円Qの円周上に位置するように、試料43bから分光素子52bまでの距離と、分光素子52bから検出点Dまでの距離とが等しくなるように制御され、このまま、視射角θと回折角2θとが倍角の関係でブラッグの回折条件を満たすので、X線の波長走査が達成される。
【0055】
例えば、第1の検出器53-1bと第2の検出器53-2bとが、回転軸60bに対してオフセット角βを有して配置され、第1の検出器53-1bを用いて分析を行った後、第2の検出器53-2bに切り替えて分析を行う場合において、第1の検出器53-1bによる検出が終了すると、第1の検出器53-1bは、受光スリットガイド58bの開口部から紙面の奥に下がることにより、受光スリットガイド58bから離脱される。第2の回転体駆動機構62-2bにより第2の回転体61-2bをオフセット角βだけ回転させることによって、第2の検出器53-2bと受光スリットガイド58bの開口部との位置合わせが行われる。第2の検出器53-2bが、紙面の奥から上昇して開口部から受光スリットガイド58bの内部に挿入されることによって受光スリットガイド58bに装着され、第2の検出器53-2bによる検出が可能となる。
【0056】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1〜第3実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0057】
例えば、第1及び第2の実施の形態の説明においては、ゴニオメータ装置6,6aが備える複数の回転体の形状は、円盤状に限るものでない。分光素子52の表面が回転軸60を含み、複数の検出器が検出方向を回転軸60に向くように配設可能であれば、リング状、棒状等であっても構わない。例えば、棒状の回転体を、回転軸60と一致するように装置し、先端に分光素子52を搭載するようにしてもよい。
【0058】
又、第3の実施の形態においては、ゴニオメータ装置6bが備える回転体の数は2枚に限られるものでなく、第2の実施の形態の形態に示すように、3枚以上の回転体を備え、それぞれの回転体に検出器を備えるようにしてもよい。
【0059】
更に、第1〜第3の実施の形態の説明においては、検出器として、CCD検出器、フォトダイオード、光電子増倍管等を備えることによって、X線以外の波長、即ち波長0.1〜0.01nm以下のγ線或いは波長10nm以上の紫外線の波長の電磁波を検出することができ、分光素子として、様々な分光結晶、回折格子、反射鏡等を分光素子ホルダに備え、分光素子を適宜選択し、変更可能にすることにより、広範な分析対象についてより多くの分析を行うことができる。例えば、分光素子52を回折格子とし、CCD検出器によりカソードルミネッセンス等を検出する構成としてもよい。
【0060】
又、第1〜第3実施の形態の説明においては、励起線源41及びレンズ部42は、電子銃及び電子レンズに限るものでなく、図15に示すように、X線源41dと、試料43dの励起線照射部位430dに焦点を合わせたポリキャピラリレンズ42dとを採用した蛍光X線分析(XRF)装置であっても、同様なシステムが構築可能であり、同様な方法が実施可能で、更に、同様な作用効果が得られることは、上記の説明から明らかであろう。
【0061】
又、第1〜第3実施の形態の説明においては、励起線としてイオンビームを用いた粒子線励起X線分析(PIXE)装置等、波長分散型の分光器を用いた他の分析装置であっても、同様なシステムが構築可能であり、同様な方法が実施可能で、更に、同様な作用効果が得られることは、上記の説明から明らかであろう。
【0062】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0063】
Q…ローランド円
2…制御解析装置
3…CPU
4,4b…分析ユニット
5,5a,5b…分光器
6,6a,6b…ゴニオメータ装置
10e,10f,430,430b,430d…励起線照射部位
11e,11f,43,43b,43d…試料
12e,12f,52,52a,52b…分光素子
13e,13f,53-1〜53-n,54-1〜54-m…検出器
15f,42d,51,51a…ポリキャピラリレンズ
21…入出力制御部
22…入力装置
23…出力装置
24…表示装置
25…プログラム記憶装置
26…波長情報記憶装置
27…角度情報記憶装置
28…分析情報記憶装置
31…励起線源制御手段
32…レンズ部制御手段
33…ステージ部制御手段
34…検出信号処理手段
35,35b…検出器切り替え手段
41…励起線源
41d…X線源
42…レンズ部
44…ステージ部
55b…分光素子駆動機構
56b…分光素子ガイド
57b…受光スリット駆動機構
58b…受光スリットガイド
59b…受光スリット
60,60a,60b…回転軸
61-1…第1の回転体
61-2…第2の回転体
61-3…第3の回転体
62-1…第1の回転体駆動機構
62-2…第2の回転体駆動機構
62-3…第3の回転体駆動機構
63b…主アーム
64b…補助アーム
65b…分光素子ホルダ
66-1b〜66-nb…検出器ホルダ
351,351b…ゴニオメータ装置制御手段
352,352b…駆動量処理手段
353,353b…検出器制御手段
355b…分光器制御手段
421…集束レンズ
422…偏向コイル
423…対物レンズ
520b…分光素子中心軸
621…アクチュエータ
622…ウォーム
623…ウォームホイール
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)等の波長分散型の分光器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨハンソン型の分光器は、図16に示すように、分光素子12eの結晶格子面がローランド円Qの半径Rの2倍の曲率半径2Rに湾曲され、分光素子12eの表面形状は、ローランド円Qの半径Rと等しい曲率に研磨されている。円周角一定の定理から、試料11eの励起線照射部位10eを一方の焦点とすると、励起線照射部位10eと、分光素子12eの分光面と、検出器13eによる検出点とが、ローランド円Q上に位置すれば、分光素子12eからの回折X線が、検出器13eによる検出点で焦点を結ぶ。ヨハンソン型の分光器は、常に励起線照射部位10eを含めた3点をローランド円Q上に配置可能なように設計する必要があり、分光素子12eによりローランド円Qの半径が決まってしまうので、試料11eと分光素子12eの間の距離を自由に選べない。このため、励起線照射部位10eの位置も含めて分光器を設計する必要があり、ヨハンソン型の分光器を、既存の分析装置に新たに搭載することは困難である。又、分光素子12eと、検出器13eの位置を制御する必要があるため、装置が複雑になり、大型化する。
【0003】
一方、図17に示すように、試料11fの励起線照射部位10fから放出された特性X線を、ポリキャピラリレンズ15fを用いて平行ビーム化し、平板型の分光素子12fによって分光し、検出器13fに入射させることによって分析を行う方法が考案されている(特許文献1参照)。この方式では、検出器13fの検出点に焦点を結ぶ必要がなく、分光素子12f上のX線照射部位120fを中心に分光素子12fを回転させ、検出器13fを分光素子12fの回転に連動させることにより分析を行うことができるので、装置の構造を小型化にできる。又、ポリキャピラリレンズ15fから分光素子12fまでの距離は、任意に設定可能であり、図17に示す方式の分光器を、既存の分析装置に新たに搭載することが比較的容易である。
【0004】
以上のような波長分散型のX線分光器の場合、1台の分光器に分光可能な波長範囲の異なる複数の分光結晶を搭載し、それらを切り替えることで分光できる波長範囲を広くしているが(特許文献2参照)、1台の分光器で更に広い波長範囲を分析するためには、検出可能な波長範囲の異なる複数の検出器を搭載し、切り替えて使用する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−294168号公報
【特許文献2】特開2008−026251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、検出器の切り替えには複雑な構造が必要になるため、小型化が可能な実用に足るような分光器の構成は未だ提案されていない。
【0007】
本発明は、簡単な構造でワーク領域を小さくでき、波長走査範囲の広い波長分散型の分光器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の様態は、(a)試料から放出される試料の特性を示す電磁波を回折する分光素子と、(b)この分光素子をこの分光素子の表面を軸として回転させる分光素子回転機構と、(c)分光素子で回折された電磁波をそれぞれ異なる波長領域で検出する複数の検出器と、(d)分光素子回転機構と回転軸を共有し、複数の検出器を分光素子の回りで移動させる検出器回転機構とを備え、検出器回転機構のオフセット角度を変えることで、複数の検出器を切り替え可能とした分光器であることを要旨とする。
【0009】
本発明の第2の様態は、(a)試料から放出される試料の特性を示す電磁波を回折する分光素子と、(b)この分光素子をこの分光素子の表面を軸として回転させる分光素子回転機構と、(c)分光素子で回折された電磁波をそれぞれ異なる波長領域で検出する複数の検出器と、(d)分光素子回転機構と回転軸を共有し、複数の検出器の何れかを搭載し、分光素子の回りで移動させる複数の検出器回転機構とを備え、複数の検出器回転機構を切り替えることで、複数の検出器を切り替え可能とした分光器であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単な構造でワーク領域を小さくでき、波長走査範囲の広い波長分散型の分光器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る分光器を用いた分析装置の基本的な構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る分光器を用いた分析装置に用いる、レンズ部の構成の一例を説明する模式図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るポリキャピラリレンズの構造を説明する模式図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る回転体駆動部の構成の一例を説明する模式図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る分光器における視射角及び回折角を説明する模式図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る検出器切り替え手段の論理構成の概略を示すブロック図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る分析方法を説明するフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る分析方法に用いる、2台の検出器の間のオフセット角を説明する模式図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る分析方法において、切り替え前の第1の検出器によりX線を検出する様子を説明する模式図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る分析方法において、切り替え後の第2の検出器によりX線を検出する様子を説明する模式図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る分光器を用いた分析装置の基本的な構造を示すブロック図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る分光器を用いた分析装置の基本的な構造を示すブロック図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係る分光器の基本的な構造を説明する模式図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る検出器切り替え手段の論理構成の概略を示すブロック図である。
【図15】本発明のその他の実施の形態に係る分光器を用いた分析装置の励起線源及びレンズ部の一例を示す模式図である。
【図16】従来のヨハンソン型の分光器を説明する基本的な模式図である。
【図17】ポリキャピラリレンズを用いた分光器を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して、本発明の第1〜第3の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、装置の構成等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。又、以下に示す第1〜第3の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る分光器を用いた分析装置として、図1に示すように、試料43から放出されるX線を分析する分析ユニット4と、分析ユニット4の種々の動作を制御し、且つ分析ユニット4から得られたデータを解析、管理等をする制御解析装置2を備える電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)について例示的に説明する。
【0014】
分析ユニット4は、図1に示すように、試料43に向け励起線(電子線)Eを出射する励起線源(電子銃)41と、励起線源41と試料43との間に位置し、試料43上に励起線Eを集束し、走査するレンズ部42と、試料43を保持し、移動するステージ部44と、励起線Eが照射された試料43から放出されたX線を分光、検出する分光器5とを備える。レンズ部42は例えば、図2に示すように、集束レンズ421、偏向コイル422、対物レンズ423等の電子レンズを備える。集束レンズ421及び対物レンズ423は、励起線Eを試料43上に集束し、偏向コイル422は、励起線Eの照射方向を曲げ、試料43上において、励起線Eを走査する。
【0015】
励起線Eは、レンズ部42が形成する磁場を通り、微小径に収束されて、ステージ部44上に載置された試料43の励起線照射部位430を照射する。試料43の励起線照射部位430から試料43の特性を示すX線が周囲に放出されるので、試料43の近傍の上方には、図1に示すように、励起線照射部位430から放出されたX線を分光する分光器5が設置されている。ステージ部44は図示を省略した駆動機構により水平方向に移動し、試料43上の励起線照射部位430で励起線Eの照射位置が走査可能となっている。
【0016】
第1の実施の形態に係る分光器5は、試料43から放出される試料43の特性を示す電磁波を回折する分光素子52と、この分光素子52をこの分光素子52の表面を軸として回転させる分光素子回転機構(61-1,62-1)と、分光素子52で回折された電磁波をそれぞれ異なる波長領域で検出する複数の検出器53-1,53-2,……,53-nと、分光素子回転機構(61-1,62-1)と回転軸を共有し、複数の検出器53-1,53-2,……,53-nを分光素子52の回りで移動させる検出器回転機構(61-2,62-2)とを備え、検出器回転機構(61-2,62-2)のオフセット角度を変えることで、複数の検出器53-1,53-2,……,53-nを切り替え可能としている。図1に示すように、分光素子回転機構(61-1,62-1)は、円盤状の第1の回転体61-1と、第1の回転体61-1を回転させる第1の回転体駆動機構62-1とを備える。検出器回転機構(61-2,62-2)は、第2の回転体61-2と、第2の回転体61-2を回転させる第2の回転体駆動機構62-2とを備える。第1の回転体61-1及び第2の回転体61-2は、第1の回転体61-1がなすゴニオメータ円の中心を通り、紙面に垂直な軸である回転軸60を共有して回転する。
【0017】
即ち、第1の実施の形態に係る分光器5は、励起線照射部位430から放出されたX線を平行ビーム化するポリキャピラリレンズ51と、第1の回転体61-1と第1の回転体61-1より大きな半径を有する第2の回転体61-2を有するゴニオメータ装置6と、第1の回転体61-1の中央に搭載された分光素子52と、第2の回転体61-2の円周側に設けられ、それぞれ検出可能なX線の波長範囲の異なるn台(nは2以上の整数である。)の検出器53-1,53-2,……,53-nとを備える。
【0018】
ポリキャピラリレンズ51は、図3に示すように、内径が1〜100μm程度の微小径のガラスキャピラリ(毛管)を100本〜100万本程度束ね、一端側は個々のキャピラリが焦点Fに向くようにすぼめられ、他端側は個々のキャピラリが平行になるように構成された光学素子である。試料43の励起線照射部位430から放出されたX線は、励起線照射部位430が焦点Fと一致するように設置されたポリキャピラリレンズ51の個々のキャピラリ内を全反射しつつ通過して平行化され、他端側においてX線の平行ビームを形成する。
【0019】
第1の回転体駆動機構62-1は、例えば図4に示すように、ステッピングモータ、サーボモータ等のアクチュエータ621と、アクチュエータ621によって回転されるウォーム(ねじ歯車)622と、ウォーム622と噛み合い、第1の回転体61-1の周囲にリング状に設けられたウォームホイール(はすば歯車)623から構成可能である。第2の回転体駆動機構62-2についても同様であり、第1の回転体駆動機構62-1と第2の回転体駆動機構62-2とは、それぞれ独立した駆動が可能である。第1の回転体駆動機構62-1及び第2の回転体駆動機構62-2の動力伝達機構はウォームギアに限定されるものではなく、第1の回転体61-1及び第2の回転体61-2を高精度に駆動制御が可能である限り、他のギアセット、若しくはベルト・プーリ、チェーン・スプロケット等を採用してもよく、又、動力伝達機構を用いないダイレクトドライブ方式等を採用しても構わない。
【0020】
ゴニオメータ装置6は、図示を省略したロータリエンコーダ等の角度検出器を内蔵し、第1の回転体61-1及び第2の回転体61-2の基準点からの回転角度を検出可能である。ゴニオメータ装置6の角度検出器により検出された角度情報は、信号化され制御解析装置2に入力される。
【0021】
第1の実施の形態に係る分光器5に用いる分光素子52は平板型であり、分光素子52の表面が回転軸60を含むように、第1の回転体61-1の回転面に対して表面を垂直にして搭載されている。分光素子52は、フッ化リチウム(LiF)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、フタル酸ルビジウム(RAP)、フタル酸タリウム(TAP)、ペンタエリスリトール(PET)、人工超格子分光素子(LDE)、燐酸2水素アンモニウム(ADP)、……等公知の種々の結晶から適宜選択して、切り替え可能である。分光素子52は、例えば、四角柱や六角柱の各側面に結晶を貼り付け、角柱の中心軸に対して回転する機構を設け、角柱を回転させることにより分光に用いる結晶を切り替えるようにすればよい。角柱の軸の方向は、分光に用いる結晶の表面が回転軸60を含むように搭載可能であれば、第1の回転体61-1に対して垂直でもよいし、平行でもよい。ポリキャピラリレンズ51によって平行ビーム化されたX線は、ポリキャピラリレンズ51から分光素子52の表面に向け出射される。分光素子52への入射角の余角である視射角θは、第1の回転体61-1の回転による分光素子52の表面のポリキャピラリレンズ51の軸方向に対する角度の制御によって変化する。
【0022】
複数の検出器53-1〜53-nは、それぞれの検出方向を回転軸60へ向け、相互間に所定のオフセット角を有して、第2の回転体61-2に互いに干渉しないように配置されている。検出器53-1〜53-nが互いに干渉しない限り、検出器53-1〜53-nの個数は何台でも構わない。ポリキャピラリレンズ51によって平行ビーム化されたX線が、分光素子52で回折され、図示を省略した受光スリットを通過して複数の検出器53-1〜53-nの何れかにより検出される。このため、ポリキャピラリレンズ51、分光素子52、検出器53-1〜53-nは、回転軸60の方向を法線方向とする同一平面上に位置することは勿論である。
【0023】
例えば、分光素子52を用いて波長走査を行う場合において、検出器53-1は、図5に示すように、分光素子52への視射角=θの場合、分光素子52への入射波の方向と、回折波の方向との間の角(以下において回折角という。)が2θとなるように、第2の回転体61-2の回転によって移動される。つまり、視射角θを設定する第1の回転体61-1に設置された分光素子52の回転と、この回転に連動する第2の回転体61-2に設置された検出器53-1の回転により、回折角2θを制御して、倍角の関係を維持することによりブラッグの回折条件が満たされる。
【0024】
検出器53-1〜53-nは、それぞれ測定するX線の波長に応じて、例えば、シンチレーションカウンター、ガスフロー型比例計数管(FPC)、イグザトロン検出器、GeやCdZnTe等の半導体検出器等を用いればよい。
【0025】
検出器53-1〜53-nによる検出信号は、制御解析装置2における信号処理により、例えば、波長走査に応じたX線スペクトルが作成され、更にこれに基づく定性分析や定量分析が可能である。又、励起線E若しくはステージ部44による位置走査に応じて試料43上の元素の含有量の分布(マッピング)画像を作成するようにすることもできる。
【0026】
制御解析装置2は図1に示すように、CPU(中央演算処理装置)3、プログラム記憶装置25、波長情報記憶装置26、角度情報記憶装置27、分析情報記憶装置28、入力装置22、出力装置23、表示装置24、入出力制御部21等を備えて、ノイマン型コンピュータのハードウェア構成をなしている。
【0027】
制御解析装置2のプログラム記憶装置25は、分析ユニット4の制御に必要な一連のプログラムを格納する。波長情報記憶装置26は、複数の検出器53-1〜53-nが、それぞれ有する検出可能なX線の波長範囲と、使用した分光素子52によって波長走査を行うことができる波長範囲とを格納する。角度情報記憶装置27は、検出器53-1〜53-nの切り替え時に必要となる情報として、切り替え前後の視射角θ、回折角2θ、検出器53-1〜53-nの配置された角度差等を格納する。分析情報記憶装置28は、分析対象や分光素子52等の分析条件、分析に用いる検出器53-1〜53-nの他、分析を行った際の分析結果、分析日時等の情報を格納する。
【0028】
入力装置22、出力装置23及び表示装置24は、入出力制御部21を介して、CPU3とのデータの送受信を行う。図1において、入力装置22はキーボード、マウス、ライトペン等で構成される。入力装置22より分析実行者は、分析対象の元素、分光素子52の種類、複数の検出器53-1〜53-nによる走査波長範囲、波長走査の際のステップ幅、等の分析条件の設定を行うことが可能である。更に、入力装置22より、分析中止の命令、設定した各条件の修正等を行うことも可能である。又、出力装置23及び表示装置24は、それぞれ、プリンタ装置及びディスプレイ装置等により構成することが可能である。表示装置24は分析条件設定画面、分析結果画面等を表示することができる。
【0029】
制御解析装置2のCPU(中央演算処理装置)3は、励起線源41の動作を制御する励起線源制御手段31、レンズ部42の動作を制御するレンズ部制御手段32、ステージ部44の動作を制御するステージ部制御手段33、検出器53-1〜53-nからの検出信号を処理する検出信号処理手段34、検出器53-1〜53-nの切り替えを制御する検出器切り替え手段35等のハードウェア資源を論理構造として有する。検出器切り替え手段35の詳細は、図6に示すように、ゴニオメータ装置6の第1の回転体駆動機構62-1及び第2の回転体駆動機構62-2の駆動制御を行うゴニオメータ装置制御手段351と、検出器53-1〜53-nの切り替え時に必要となるゴニオメータ装置6の駆動量(回転角)を計算する駆動量処理手段352と、検出器53-1〜53-nの駆動制御を行う検出器制御手段353とを有する。
【0030】
なお、図1のプログラム記憶装置25、波長情報記憶装置26、角度情報記憶装置27、分析情報記憶装置28は、論理構成を模式的に表示したものであり、現実の物理的構成としては、プログラム記憶装置25、波長情報記憶装置26等の記憶内容は同一のハードウェアに格納されて構わない。例えば、角度情報記憶装置27の記憶内容は、SRAM、DRAM等の揮発性の記憶装置からなる主記憶装置に格納することが可能で、プログラム記憶装置25、波長情報記憶装置26、分析情報記憶装置28の記憶内容は、ハードディスク(HD)等の磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク、光磁気ディスク等の不揮発性の記憶装置からなる補助記憶装置に格納することが可能である。補助記憶装置としては、その他、RAMディスク、ICカード、フラッシュメモリーカード、USBフラッシュメモリー、フラッシュディスク(SSD)等が使用可能である。
【0031】
図1に示すような、本発明の第1の実施の形態に係る分光器5によれば、以下に説明するような手順で波長範囲の異なる複数の検出器53-1〜53-nを切り替えて順次使用できる。
【0032】
なお、図1に示す第1の実施の形態に係る分光器5は例示であり、複数の検出器53-1,53-2,……,53-nを搭載するギアを用い、このギアの中心軸中に分光素子52を搭載するためのシャフトを通し、そのシャフトを大きなギアで回すような、他の構成であっても構わない。
【0033】
−検出器切り替え方法−
図7のフローチャートを用いて、第1の実施の形態に係る分析方法の一例として、第1の検出器53-1を用いて視射角θS〜θ1、回折角2θS〜2θ1で分析を行った後、第2の検出器53-2に切り替えて視射角θ2〜θE、回折角2θ2〜2θEで分析を行う場合について例示的に説明する。図8に示すように、分光素子52への入射波の方向を基準として、第1の検出器53-1の回転角φ1、第2の検出器53-2の回転角φ2とすれば、第1の検出器53-1、第2の53-2の間のオフセット角β=φ1−φ2となる。:
(イ)先ず、ステップS101において、図1に示す入力装置22を介して、分析に用いる検出器、試料43の分析対象元素、分光素子52の種類、走査波長範囲、波長ステップ幅、視射角θS,θ1,θ2,θE、回転角φ1,φ2等、分析に用いる種々の条件やパラメータを分析条件として設定する。設定された条件やパラメータは、分析情報記憶装置28に格納され、視射角θS,θ1,θ2,θE、回転角φ1,φ2が角度情報記憶装置27に格納される。
【0034】
(ロ)ステップS102において、ステップS101で指定された分析条件に基づき分析を行う。ゴニオメータ装置制御手段351が、第1の回転体駆動機構62-1及び第2の回転体駆動機構62-2を駆動させ、図9に示すように、分光素子52への視射角θ=θS、第1の検出器53-1の回転角φ1=2θSを初期値として、第1の回転体61-1を例えば、時計方向に回転させ、この第1の回転体61-1の回転に連動させて、第2の回転体61-2を時計方向に回転させ、第1の検出器53-1を用いて、視射角θS〜θ1、回折角2θS〜2θ1までの間時計方向に波長走査する。第1の検出器53-1の時計方向の波長走査が終了すると、ステップS103において、ステップS101で指定された分析条件に基づき、第2の検出器53-2に切り替えて分析を行うか否かを決定する。第2の検出器53-2に切り替える場合は、ステップS104に進む。
【0035】
(ハ)ステップS104において、第2の検出器53-2に切り替えるためのゴニオメータ装置6の駆動量を取得する。駆動量処理手段352は、角度情報記憶装置27から視射角θ2,θE、回転角φ1,φ2を読み出し、ゴニオメータ装置6に必要な駆動量である回転角を算出し、角度情報記憶装置27に格納し、ゴニオメータ装置制御手段351が、角度情報記憶装置27からゴニオメータ装置6に必要な回転角を読み出す。
【0036】
(ニ)ステップS105において、ゴニオメータ装置制御手段351は、第1の回転体61-1と第2の回転体61-2を連動させて回転させθ=θ2,φ1=2θ2とした後、第2の回転体駆動機構62-2を介して、第2の回転体61-2を、オフセット角βだけ時計方向に進行させ、第2の検出器53-2の回転角φ2=2θ2とする。更に、検出器制御手段353によって、検出器53-1の動作を停止し、検出器53-2の動作を開始し、検出器53-2からの検出信号を制御解析装置2に出力するように切り替える。
【0037】
(ホ)ステップS106に進み、ゴニオメータ装置制御手段351が、第1の回転体駆動機構62-1及び第2の回転体駆動機構62-2を駆動させ、図10に示すように、検出器53-2を用いて、視射角θ2〜θE、回折角2θ2〜2θEまでの間波長走査する。検出器53-2での波長走査が終了すると、ステップS103において、ステップS101で指定された分析条件に基づき、更に次の検出器に切り替えて次の波長範囲の分析を続けるか否かを決定する。次の波長範囲の分析を行わない場合は終了する。
【0038】
上記の説明は、第1の回転体61-1及び第2の回転体61-2が時計方向に回転して、時計方向に波長走査する場合について説明したが、反時計方向に波長走査をする場合は、第1の回転体61-1及び第2の回転体61-2を反時計方向に回転させ、視射角θのとき回折角2θとなるようにすればよい。
【0039】
(第2の実施の形態)
図1に示す第1の実施の形態に係る分光器の構成は例示であり、ゴニオメータ装置6は、図11に示すように、複数の検出器回転機構(61-2a,62-2a;61-3a,62-3a)を備え、複数の検出器回転機構(61-2a,62-2a;61-3a,62-3a)にそれぞれ検出器を備えるようにしてもよい。
【0040】
即ち、本発明の第2の実施の形態に係る分光器5aは、図11に示すように、試料43から放出される試料43の特性を示す電磁波を回折する分光素子52aと、この分光素子52aをこの分光素子52aの表面を軸として回転させる分光素子回転機構(61-1a,62-1a)と、分光素子52aで回折された電磁波をそれぞれ異なる波長領域で検出する複数の検出器(53-1a〜53-na;54-1a〜54-ma)と、分光素子回転機構(61-1a,62-1a)と回転軸を共有し、複数の検出器(53-1a〜53-na;54-1a〜54-ma)の何れかを搭載し、分光素子52aの回りで移動させる複数の検出器回転機構(61-2a,62-2a;61-3a,62-3a)とを備え、複数の検出器回転機構(61-2a,62-2a;61-3a,62-3a)を切り替えることで、複数の検出器(53-1a〜53-na;54-1a〜54-ma)を切り替え可能としている点で第1の実施の形態と異なる。分光素子回転機構(61-1a,62-1a)は、図11に示すように、円盤状の第1の回転体61-1aと、第1の回転体61-1aを回転させる第1の回転体駆動機構62-1aとを備える。第1の検出器回転機構(61-2a,62-2a)は、第2の回転体61-2aと、第2の回転体61-2aを回転させる第2の回転体駆動機構62-2aとを備え、第2の検出器回転機構(61-3a,62-3a)は、第3の回転体61-3aと、第3の回転体61-3aを回転させる第3の回転体駆動機構62-3aとを備える。
【0041】
具体的には、図11に示すように、第2の回転体61-2上にn台(nは1以上の整数である。)の検出器53-1a〜53-naを、第3の回転体61-3上にm台(mは1以上の整数である。)の検出器54-1a〜54-maを備える。
【0042】
図11に示すように、第2の回転体61-2aは、第1の回転体61-1より大きな半径を有し、第3の回転体61-3aは、第2の回転体61-2aより大きな半径を有する。第1の回転体61-1a、第2の回転体61-2a、第3の回転体61-3aは、それぞれ第1の回転体61-1aがなすゴニオメータ円の中心を通り、紙面に垂直な回転軸60aを共有して回転する。第3の回転体駆動機構62-3aは、第1の回転体駆動機構62-1a、第2の回転体駆動機構62-2aと同様な基本構成となっており、第1の回転体駆動機構62-1a、第2の回転体駆動機構62-2a、第3の回転体駆動機構62-3aは、互いに独立した高精度な駆動制御が可能である。
【0043】
なお、図11においては、複数の検出器回転機構(61-2a,62-2a;61-3a,62-3a)として、第1の検出器回転機構(61-2a,62-2a)及び第2の検出器回転機構(61-3a,62-3a)の2つの検出器回転機構を例示しているが、検出器回転機構は2つに限定されるものではなく、検出器回転機構は3つ以上でも構わない。即ち、第2の実施の形態のゴニオメータ装置6aが4枚以上の回転体を備え、それぞれの回転体に検出器を備えるようにしてもよい。
【0044】
図11に示すように、検出器54-1a〜54-maは、検出器53-1〜53-nと同様に、mが2以上の場合は、それぞれの検出方向を回転軸60aへ向け、互いに干渉しないように相互間に所定の角度差を有して、第3の回転体61-3aに配設される。ポリキャピラリレンズ51aによって平行ビーム化されたX線等の電磁波が、分光素子52aで回折され、図示を省略したスリットを通過して検出器53-1a〜53-na,54-1a〜54-maによって検出可能なように、ポリキャピラリレンズ51a、分光素子52a、検出器53-1a〜53-na,54-1a〜54-maは、回転軸60aに対して垂直な同一平面上に位置する。
【0045】
例えば、定性分析や定量分析等のための波長走査を、検出器53-1aを用いて視射角θS〜θ1、回折角2θS〜2θ1までの間行った後、検出器54-1aに切り替えて視射角θ2〜θE、回折角2θ2〜2θEまでの間行う場合において、分光素子52aへの入射波の方向を基準として、切り替え前に用いる検出器53-1aの回転角φ1、切り替え後に用いる検出器54-1aの回転角φ2とすると、第2の回転体61-2aに設置された検出器53-1aと、第3の回転体61-3aに設置された検出器54-1aとは、互いに独立した回転が可能なため、検出器53-1aによる波長走査の最中に、検出器54-1aの回転角φ2=2θ2として待機させておくことが可能となり、より迅速な分析を行うことができる。
【0046】
(第3の実施の形態)
分光素子は、第1及び第2の実施の形態で説明したような平板型に限定されるものではない。本発明の第3の実施の形態に係る分光器を用いた分析装置の分析ユニット4bは、図12に示すように、湾曲型の分光素子52bによって分光を行うヨハンソン型の分光器5bを備える。背景技術の欄で説明したように、分光素子52bの表面の曲率半径Rと等しい半径Rを有するローランド円Q上に、試料43bの励起線照射部位430bと、格子面の曲率半径2Rの分光素子52bと、検出点とが位置する必要がある。このため、第3の実施の形態に係る分光器を用いた分析装置においては、励起線照射部位430bから分光素子52bまでの距離と、分光素子52bからn台の検出器53-1b〜53-nbによる検出点までの距離とがローランド円Qを基準として調節される。
【0047】
例えば、図13に示すように、第3の実施の形態に係る分光器は、励起線照射部位430bと、湾曲型の分光素子52bと、受光スリット59bとをローランド円Qの外周に配置する第1の回転体61-1bと、検出可能な波長範囲の異なる複数の検出器53-1b〜53-nb(図12及び図13では、2台の検出器53-1b,53-2bのみ図示している。)を配置するように、第1の回転体61-1bと同一の回転中心を有し、第1の回転体61-1bより大きな半径を有し、第1の回転体61-1bよりも紙面の奥に位置する円盤状の第2の回転体61-2bとを備える。第2の回転体61-2bには、第2の回転体61-2bを回転させる第2の回転体駆動機構62-2bが設けられている。図13に示すような構成にすれば、主アーム63bの一端側(図13において左側の端部側)は、ローランド円Qの回転軸60bに平行な励起線照射部位430bを通る軸を回転軸としてローランド円Qに固定され、他端側(図13において右側の端部側)はローランド円Qの中心となる回転軸60bを、ローランド円Qが回転するように支持する。位置を固定された励起線照射部位430bが、常にローランド円Qの円周上に位置し、主アーム63bの回転により移動する回転軸60bには、補助アーム64bの一方の端部が固定され、補助アーム64bにより距離Rを隔てた補助アーム64bの他端側がローランド円Qの円周上に位置するように、受光スリット59bがローランド円Q上に設置されている。検出器53-1b〜53-nbによる検出点Dは、受光スリット59bのスリット部に近似することが可能なので、検出点Dは、補助アーム64bにより、常にローランド円Qの円周上に位置する。
【0048】
湾曲型の分光素子52bは、分光素子52bの法線方向がローランド円Qの回転軸60bに向かうように、分光素子ホルダ65bを介してローランド円Qである第1の回転体61-1bの円周上に回転可能に、且つ、円周上をスライドするように設置されている。分光素子52bは、分光素子駆動機構55bにより、分光素子ガイド56bに沿って直線駆動されることにより、ローランド円Qの円周上をスライドする。分光素子ガイド56bは、励起線Eが照射される試料43bの表面に対して一定の角度を維持して、分光素子52bが直線移動するので、励起線照射部位430bと、分光素子52bの表面を通る分光素子中心軸520bの距離が変化すると、ローランド円Qの中心である回転軸60bが、励起線照射部位430bを中心として回転する。
【0049】
分光素子駆動機構55bは、図13に示すように、分光素子ホルダ65bに保持された分光素子52bがローランド円Qの円周上をスライドするように、分光素子中心軸520bを中心に回転する。
【0050】
受光スリット59bは、受光スリット駆動機構57bにより、ローランド円Qの円周上に受光スリット59bの回転中心がスライドするように固定されながら受光スリットガイド58bに沿って直線移動される。受光スリットガイド58bは、受光スリット59bを駆動させる際の直線移動のガイドであり、常に受光スリット59bを通る光軸が分光素子中心軸520bの方向を向くように設定されている。分光素子52bからの回折X線が、受光スリット59bを通過し、検出器53-1b〜53-nbの何れかによって検出されるように、受光スリットガイド58bは、分光素子中心軸520b、受光スリット59b、及び検出器53-1b〜53-nbの何れかが一直線上に保持する。
【0051】
複数の検出器53-1b〜53-nbは、それぞれ検出器ホルダ66-1b〜66-nbに保持され、互いに干渉しないように相互間に所定の角度差を有して、分光素子ガイド56b、受光スリットガイド58bよりも紙面の奥の方で回転する第2の回転体61-2bの円周側に配設されている。検出器ホルダ66-1b〜66-nbは、それぞれ第2の回転体61-2bと平行な面で回転(自転)可能であり、第2の回転体61-2bの回転(公転)に伴い、検出に用いる検出器53-1b〜53-nbの検出方向を受光スリット59bに向くように制御する。
【0052】
検出器ホルダ66-1b〜66-nbのそれぞれは、検出器53-1b〜53-nbの何れかを受光スリットガイド58bに順次脱着させるため、図示を省略した駆動機構により、紙面に垂直方向の移動が可能である。受光スリットガイド58bは、検出器の位置の下面に開口部を有し、検出器53-1b〜53-nbの何れかを選択して受光スリットガイド58bに順次開口部を介して脱着させる際、選択された検出器53-1b〜53-nbの何れかと、受光スリットガイド58bの開口部との位置合わせは、第2の回転体駆動機構62-2bによる第2の回転体61-2bの回転によって行われる。
【0053】
図13で第2の回転体61-2bは紙面の奥に位置するが、測定時(分析時)において、X線が分光素子52bで回折され、受光スリット59bで焦点を結び、検出点Dを複数の検出器53-1b〜53-nbの何れかによって順次検出可能なように、励起線照射部位430b、分光素子52b、検出点Dは、同一平面をなすローランド円Qの円周上にそれぞれ位置する。
【0054】
第3の実施の形態に係る制御解析装置2のCPU3が論理構造として有する検出器切り替え手段35bは、図14に示すように、ゴニオメータ装置6bの第2の回転体駆動機構62-2bの駆動制御を行うゴニオメータ装置制御手段351bと、検出器53-1b〜53-nbの切り替え時に必要となる分光器5bの駆動量を計算する駆動量処理手段352bと、検出器53-1b〜53-nbの駆動制御を行う検出器制御手段353bと、分光素子駆動機構55b、受光スリット駆動機構57bを駆動制御する分光器制御手段355bとを備える。試料43bの励起線照射部位430bと、分光素子52bの分光面と、検出器53-1b〜53-nbによる受光スリット59bの検出点Dとは、主アーム63b、補助アーム64b、分光素子駆動機構55b、受光スリット駆動機構57b、第2の回転体駆動機構62-2bによって、常にローランド円Qの円周上に位置するように、試料43bから分光素子52bまでの距離と、分光素子52bから検出点Dまでの距離とが等しくなるように制御され、このまま、視射角θと回折角2θとが倍角の関係でブラッグの回折条件を満たすので、X線の波長走査が達成される。
【0055】
例えば、第1の検出器53-1bと第2の検出器53-2bとが、回転軸60bに対してオフセット角βを有して配置され、第1の検出器53-1bを用いて分析を行った後、第2の検出器53-2bに切り替えて分析を行う場合において、第1の検出器53-1bによる検出が終了すると、第1の検出器53-1bは、受光スリットガイド58bの開口部から紙面の奥に下がることにより、受光スリットガイド58bから離脱される。第2の回転体駆動機構62-2bにより第2の回転体61-2bをオフセット角βだけ回転させることによって、第2の検出器53-2bと受光スリットガイド58bの開口部との位置合わせが行われる。第2の検出器53-2bが、紙面の奥から上昇して開口部から受光スリットガイド58bの内部に挿入されることによって受光スリットガイド58bに装着され、第2の検出器53-2bによる検出が可能となる。
【0056】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1〜第3実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0057】
例えば、第1及び第2の実施の形態の説明においては、ゴニオメータ装置6,6aが備える複数の回転体の形状は、円盤状に限るものでない。分光素子52の表面が回転軸60を含み、複数の検出器が検出方向を回転軸60に向くように配設可能であれば、リング状、棒状等であっても構わない。例えば、棒状の回転体を、回転軸60と一致するように装置し、先端に分光素子52を搭載するようにしてもよい。
【0058】
又、第3の実施の形態においては、ゴニオメータ装置6bが備える回転体の数は2枚に限られるものでなく、第2の実施の形態の形態に示すように、3枚以上の回転体を備え、それぞれの回転体に検出器を備えるようにしてもよい。
【0059】
更に、第1〜第3の実施の形態の説明においては、検出器として、CCD検出器、フォトダイオード、光電子増倍管等を備えることによって、X線以外の波長、即ち波長0.1〜0.01nm以下のγ線或いは波長10nm以上の紫外線の波長の電磁波を検出することができ、分光素子として、様々な分光結晶、回折格子、反射鏡等を分光素子ホルダに備え、分光素子を適宜選択し、変更可能にすることにより、広範な分析対象についてより多くの分析を行うことができる。例えば、分光素子52を回折格子とし、CCD検出器によりカソードルミネッセンス等を検出する構成としてもよい。
【0060】
又、第1〜第3実施の形態の説明においては、励起線源41及びレンズ部42は、電子銃及び電子レンズに限るものでなく、図15に示すように、X線源41dと、試料43dの励起線照射部位430dに焦点を合わせたポリキャピラリレンズ42dとを採用した蛍光X線分析(XRF)装置であっても、同様なシステムが構築可能であり、同様な方法が実施可能で、更に、同様な作用効果が得られることは、上記の説明から明らかであろう。
【0061】
又、第1〜第3実施の形態の説明においては、励起線としてイオンビームを用いた粒子線励起X線分析(PIXE)装置等、波長分散型の分光器を用いた他の分析装置であっても、同様なシステムが構築可能であり、同様な方法が実施可能で、更に、同様な作用効果が得られることは、上記の説明から明らかであろう。
【0062】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0063】
Q…ローランド円
2…制御解析装置
3…CPU
4,4b…分析ユニット
5,5a,5b…分光器
6,6a,6b…ゴニオメータ装置
10e,10f,430,430b,430d…励起線照射部位
11e,11f,43,43b,43d…試料
12e,12f,52,52a,52b…分光素子
13e,13f,53-1〜53-n,54-1〜54-m…検出器
15f,42d,51,51a…ポリキャピラリレンズ
21…入出力制御部
22…入力装置
23…出力装置
24…表示装置
25…プログラム記憶装置
26…波長情報記憶装置
27…角度情報記憶装置
28…分析情報記憶装置
31…励起線源制御手段
32…レンズ部制御手段
33…ステージ部制御手段
34…検出信号処理手段
35,35b…検出器切り替え手段
41…励起線源
41d…X線源
42…レンズ部
44…ステージ部
55b…分光素子駆動機構
56b…分光素子ガイド
57b…受光スリット駆動機構
58b…受光スリットガイド
59b…受光スリット
60,60a,60b…回転軸
61-1…第1の回転体
61-2…第2の回転体
61-3…第3の回転体
62-1…第1の回転体駆動機構
62-2…第2の回転体駆動機構
62-3…第3の回転体駆動機構
63b…主アーム
64b…補助アーム
65b…分光素子ホルダ
66-1b〜66-nb…検出器ホルダ
351,351b…ゴニオメータ装置制御手段
352,352b…駆動量処理手段
353,353b…検出器制御手段
355b…分光器制御手段
421…集束レンズ
422…偏向コイル
423…対物レンズ
520b…分光素子中心軸
621…アクチュエータ
622…ウォーム
623…ウォームホイール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料から放出される前記試料の特性を示す電磁波を回折する分光素子と、
該分光素子を該分光素子の表面を軸として回転させる分光素子回転機構と、
前記分光素子で回折された前記電磁波をそれぞれ異なる波長領域で検出する複数の検出器と、
前記分光素子回転機構と回転軸を共有し、前記複数の検出器を前記分光素子の回りで移動させる検出器回転機構
とを備え、前記検出器回転機構のオフセット角度を変えることで、前記複数の検出器を切り替え可能としたことを特徴とする分光器。
【請求項2】
試料から放出される前記試料の特性を示す電磁波を回折する分光素子と、
該分光素子を該分光素子の表面を軸として回転させる分光素子回転機構と、
前記分光素子で回折された前記電磁波をそれぞれ異なる波長領域で検出する複数の検出器と、
前記分光素子回転機構と回転軸を共有し、前記複数の検出器の何れかを搭載し、前記分光素子の回りで移動させる複数の検出器回転機構
とを備え、前記複数の検出器回転機構を切り替えることで、前記複数の検出器を切り替え可能としたことを特徴とする分光器。
【請求項1】
試料から放出される前記試料の特性を示す電磁波を回折する分光素子と、
該分光素子を該分光素子の表面を軸として回転させる分光素子回転機構と、
前記分光素子で回折された前記電磁波をそれぞれ異なる波長領域で検出する複数の検出器と、
前記分光素子回転機構と回転軸を共有し、前記複数の検出器を前記分光素子の回りで移動させる検出器回転機構
とを備え、前記検出器回転機構のオフセット角度を変えることで、前記複数の検出器を切り替え可能としたことを特徴とする分光器。
【請求項2】
試料から放出される前記試料の特性を示す電磁波を回折する分光素子と、
該分光素子を該分光素子の表面を軸として回転させる分光素子回転機構と、
前記分光素子で回折された前記電磁波をそれぞれ異なる波長領域で検出する複数の検出器と、
前記分光素子回転機構と回転軸を共有し、前記複数の検出器の何れかを搭載し、前記分光素子の回りで移動させる複数の検出器回転機構
とを備え、前記複数の検出器回転機構を切り替えることで、前記複数の検出器を切り替え可能としたことを特徴とする分光器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−286346(P2010−286346A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140134(P2009−140134)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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