説明

分光計

【課題】光の測定を行うときに、簡単な光学構成で収差を補正することを目的とする。
【解決手段】本発明の分光計1は、光源からの光を入力する入力ポート2と、入力ポート2から入力された光を反射する凹面形状の球面鏡3と、球面鏡3で反射した光を分光して球面鏡3に反射する等しい格子幅の球面の凸面形状の回折格子4と、球面鏡3により反射した分光された光を往路光Lとして、この往路光Lを反転させた復路光Rを球面鏡3に反射させる反射光学系5と、球面鏡3および回折格子4で反射した復路光Rを出力する出力ポート6と、を備えている。往路光Lと復路光Rとで相互に収差をキャンセルして補正することができる。曲率が一定な球面鏡を用い、格子幅が等しい回折格子を用いているため、簡単な光学構成で収差を補正することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を分光して測定を行う分光計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光源から発光された光の測定を行うために、分光した光のスペクトルの測定を行う分光計が用いられている。この種の分光計として、ツェルニー・ターナー配置の分光計がある。図17はツェルニー・ターナー配置の分光計の一例を示しており、2つの凹面鏡と1つの回折格子とを用いて構成している。
【0003】
この分光計101は入力ポート102と第1の凹面鏡103と回折格子104と第2の凹面鏡105と出力ポート106とを備えている。入力ポート102は光源が発光した光を通過させるスリットになり、このスリットを通過した光Lが入力される。入力ポート102を通過した光Lは第1の凹面鏡103に入射する。
【0004】
第1の凹面鏡103は球面鏡になっており、入射した光Lを反射する。反射した光Lは平行光になって回折格子104に入射する。回折格子104は光Lを分光して反射させる。これにより、光Lは波長ごとに角度分散される。そして、分光された光Lが第2の凹面鏡105に入射する。
【0005】
第2の凹面鏡105は球面鏡になっており、この第2の凹面鏡105で光Lが反射して、出力ポート106に入力される。出力ポート106はスリットであり、スリットを通過した位置にフォトディテクタを配置している。これにより、光Lは一定の波長成分がフォトディテクタで結像される。
【0006】
光Lが出力ポート106に到達したときに、光Lには収差が発生している。図17のツェルニー・ターナー配置の分光計では、第1の凹面鏡103および第2の凹面鏡105に球面鏡を用いることで、波長の分散方向に収差の補正を行っている。ただし、波長の分散方向以外の方向(非分散方向)には収差の補正効果が得られない。このため、光Lの結像は円形ではなく、長円(楕円)の像になる。
【0007】
フォトディテクタは、S/N比等の観点から、そのサイズをある程度コンパクトにしている。このときに、像が長円になっている光Lの一部がフォトディテクタに受光されず、光の一部が損失をする。これにより、光Lの正確な測定を行うことができなくなる。一方、長円の像の光Lを確実に受光できるようにフォトディテクタのサイズを大型に形成すると、S/N比が低下する。さらには、コストも増加する。
【0008】
この点、第1の凹面鏡103および第2の凹面鏡105を球面鏡ではなく非球面鏡にすることにより、波長の非分散方向にも収差の改善を行うことができる。例えば、第1の凹面鏡103および第2の凹面鏡105に軸外し放物面鏡やトロイダル鏡等の非球面鏡を用いることで、非分散方向の収差を改善して、フォトディテクタに結像する像を円形にすることができる。
【0009】
また、回折格子104の格子幅を変調することで、収差の改善を図ることができる。この種の技術が特許文献1に開示されている。特許文献1の技術では、第1の凹面鏡と第2の凹面鏡とを用いている点では図17と同じであるが、回折格子に収差補正凸面回折格子を用いている。この収差補正凸面回折格子は、曲がった平行ではない溝を回折格子に形成しており、これにより収差の改善を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−18413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図17で示したツェルニー・ターナー配置の分光計は波長の分散方向には収差を補正することができるが、非分散方向には収差の補正をすることができない。これにより、円形の像を結像することができなくなり、測定の正確性が損なわれる。この点、軸外し放物面鏡やトロイダル鏡等の非球面鏡を用いることにより、円形の像を結像することができ、収差の補正をすることができる。
【0012】
ただし、非球面鏡は面の曲率が一定ではないため、非球面鏡を形成することは非常に難しくなる。同様に、特許文献1の収差補正凸面回折格子を用いる場合でも、格子幅が等しくない曲がった平行でない溝を回折格子に形成しなければならず、回折格子を形成することはやはり難しくなる。
【0013】
また、分光計は所定の波長だけを測定するモノクロメータとして用いることもあるが、所定の波長範囲を測定対象とするポリクロメータとして用いることもある。ポリクロメータは波長ごとに回折角が異なることから、非球面鏡や凸面回折格子を用いたとしても、収差の補正効果は不十分になる。
【0014】
そこで、本発明は、光の測定を行うときに、簡単な光学構成で収差を補正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以上の課題を解決するため、本発明の分光計は、光源からの光を入力する入力ポートと、この入力ポートから入力された光を反射する凹面形状の球面鏡と、この球面鏡で反射した光を分光して前記球面鏡に反射する等しい格子幅の球面の凸面形状の回折格子と、前記球面鏡により反射した分光された光を往路光として、この往路光を反転させた復路光を前記球面鏡に反射させる反射部と、前記球面鏡および前記回折格子で反射した前記復路光を出力する出力ポートと、を備えたことを特徴とする。
【0016】
この分光計によれば、反射部は往路光を反転して復路光として反射している。このため、往路光で生じる収差と復路光で生じる収差とを相互にキャンセルすることができる。これにより、収差の補正効果が得られる。曲率が一定の球面鏡を用いており、且つ格子幅が一定の回折格子を用いているため、簡単な光学構成で収差補正の効果が得られる。
【0017】
また、前記反射部は、前記球面鏡から入射した前記往路光を反射する凹面形状の反射系球面鏡と、この反射系球面鏡から入射した前記往路光を復路光として前記反射系球面鏡に反射させる等しい格子幅の凸面形状の球面の反射系回折格子と、を備えたことを特徴とする。反射部は反射面球面鏡と反射系回折格子とにより構成され、何れも球面により光を反射している。これにより、回転方向における誤差の影響を受けることなく、簡単な光学構成で収差補正を改善することができる。
【0018】
また、前記反射系球面鏡と前記球面鏡とは同一の光学部品を用い、前記反射系回折格子と前記回折格子とは同一の光学部品を用いたことを特徴とする。反射部の構成は球面鏡および回折格子と同じになる。よって、共通的な光学部品を使用することができ、使用する部品の種類を少なくすることができる。
【0019】
また、前記反射部は、前記球面鏡から入射した前記往路光を反射する凹面形状の第1の反射系球面鏡と、この第1の反射系球面鏡で反射した前記往路光を前記復路光として第1の前記反射系球面鏡に反射させる凸面形状の第2の反射系球面鏡と、を備えたことを特徴とする。これにより、回転方向における誤差の影響を受けることなく、簡単な光学構成で収差補正を改善することができる。
【0020】
また、前記反射系球面鏡および前記反射系回折格子を可動式として、分光された前記往路光または前記復路光のうち特定の波長の光のみを通過させ、前記反射系球面鏡および前記反射系回折格子と同期して可動する可動式スリットを備えたことを特徴とする。可動式スリットを用いることで、特定の波長のみを透過させて測定を行うモノクロメータとして適用することができる。
【0021】
また、前記反射系球面鏡および前記反射系回折格子を固定式として、分光された前記往路光または前記復路光のうち特定の波長の光のみを通過させる可動式スリットを備えたことを特徴とする。反射系球面鏡は固定して可動式スリットを可動させることで、収差補正の改善効果が優れたモノクロメータを実現することができる。且つ、反射系球面鏡を可動させることがないため、分光計の機構が単純になる。
【0022】
また、前記反射部は、前記球面鏡から入射した前記往路光を反射する平面形状の第1の反射ミラーと、この第1の反射ミラーで反射した前記往路光を前記球面鏡に向けて前記復路光として反転して反射する平面形状の第2の反射ミラーと、分光された前記往路光または前記復路光のうち特定の波長の光のみを透過させる可動式スリットと、を備えたことを特徴とする。第1の反射ミラーと第2の反射ミラーとを用いることで、収差補正を改善させることができ、且つ分光計を小型の構成とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、反射部が往路光を反転して反射することで復路光として、往路光で生じる収差と復路光で生じる収差とを相互にキャンセルさせることができる。これにより、結像する像は円形にすることができ、正確な測定を行うことができる。反射部には一定の曲率の球面鏡および格子幅の等しい回折格子を用いているため、簡単な光学構成で収差を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態の分光計の構成図である。
【図2】変形例1の分光計の斜視図である。
【図3】変形例1の分光計の上面図である。
【図4】変形例1の分光計の側面図である。
【図5】変形例2の分光計の斜視図である。
【図6】変形例2の分光計の上面図である。
【図7】変形例2の分光計の側面図である。
【図8】変形例3の分光計の斜視図である。
【図9】変形例3の分光計の上面図である。
【図10】変形例3分光計の側面図である。
【図11】変形例3の他の例の分光計の斜視図である。
【図12】変形例3の他の例の分光計の上面図である。
【図13】変形例3の他の例の分光計の側面図である。
【図14】変形例4の分光計の斜視図である。
【図15】変形例4分光計の上面図である。
【図16】変形例4の分光計の側面図である。
【図17】従来の分光計の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本実施形態の分光計1を示している。分光計1は入力ポート2と球面鏡3と回折格子4と反射光学系5と出力ポート6とを備えて構成している。入力ポート2は基本的にスリットであり、光源(図示せず)からの光を入力する。入力された光は測定対象となる光であり、入力ポート2から入力される光を往路光Lとする。往路光Lは入力ポート2のスリットを通過して拡散光となって球面鏡3に入射される。
【0026】
球面鏡3は凹面形状をしており、往路光Lを入射する面は一定の曲率で球面が形成されている。この往路光Lは球面鏡3により回折格子4に反射される。反射後の往路光Lは平行光になって回折格子4に入力される。回折格子4は凸面の球面になっており、往路光Lを球面鏡3に向けて反射させる。回折格子4には等しい幅(格子幅)で格子(溝)を形成しており、回折作用により往路光Lは波長成分ごとに分光される。
【0027】
回折格子4で反射した往路光Lは球面鏡3により反射光学系5に向けて反射される。 球面鏡3と回折格子4との中心は一致している。これにより、球面鏡3の中心位置を挟んで一方側(下部側)の領域により入力ポート2からの往路光Lは反射し、他方側(上部側)の領域により回折格子4からの往路光Lが反射する。
【0028】
反射光学系5は往路光Lを反射するための反射部である。反射光学系5としては、直角リフレクタ(2つの平面ミラーを直交配置したリフレクタ)やリトロリフレクタ、オフナーリフレクタ等を用いることができる。反射光学系5には、往路光Lを反転させて反射させることが要求される。従って、当該要求を満足するものであれば任意の光学系を適用することができる。
【0029】
反射光学系5では往路光Lが入射した方向に向けて復路光Rを反転して反射させる。従って、往路光Lと復路光Rとは相互に進行方向が逆向きになっている。反射光学系5で反射した復路光Rが球面鏡3に入射する。球面鏡3により復路光Rは回折格子4に入射され、回折格子4で反射する。反射した復路光Rは再び球面鏡3で反射する。反射した復路光Rは出力ポート6に入力される。
【0030】
出力ポート6は基本的にスリットであり、このスリットを通過した復路光Rが図示しないフォトディテクタ等の検出部で検出される。復路光Rは所定の波長範囲に分散しており、検出部が復路光Rを検出することで、スペクトル測定が行われる。
【0031】
反射光学系5は往路光Lを反転して反射させて復路光Rとしている。往路光Lまたは復路光Rのみに着目すると、収差が発生している。このため、フォトディテクタ等の検出部で検出すると、波長の分散方向には収差が補正されているが、それ以外の方向(非分散方向)には収差が補正されない。従って、検出部に結像されたときの像は長円(楕円)になる。
【0032】
つまり、往路光Lおよび復路光Rのみでは像が楕円になる。これが収差となって、測定の正確性を損なう。反射光学系5では、復路光Rは往路光Lを反転させて反射している。これにより、往路光Lを反転させたときに、楕円の像が円形になるように補正される。従って、復路光Rの像は円形になり、検出部で検出される像が円形になる。換言すれば、往路光Lと復路光Rとのダブルパスで収差の補正を行っていることから、収差がキャンセルされて円形の像を結ぶことになる。これにより、測定の正確性が向上する。
【0033】
球面鏡3は一定の曲率の球面鏡を用いている。よって、軸外し放物面鏡やトロイダル鏡等の非球面鏡を用いることがないため、球面鏡3を簡単に形成することができる。且つ、回折格子4についても格子幅を変調しておらず、一定の格子幅で回折格子4を構成している。従って、簡単な光学構成により(簡単な光学部品を用いて)分光計1を構成することができる。
【0034】
次に、反射光学系5としてオフナーリフレクタを用いた変形例1を示す。図2は変形例1の斜視図、図3は上面図、図4は側面図を示している。図2乃至図4に示すように、反射光学系5は第1の反射系球面鏡11と第2の反射系球面鏡12とを備えて構成している。第1の反射系球面鏡11と第2の反射系球面鏡12とによりオフナーリフレクタが構成される。なお、各図において、実線、破線、一点鎖線はそれぞれ異なる色の光路を示している。
【0035】
入力ポート2から入力された往路光Lは球面鏡3で反射して、回折格子4に入力される。回折格子4により往路光Lは分光されて、再び球面鏡3で反射する。球面鏡3で反射した往路光Lは反射光学系5の第1の反射系球面鏡11に入射される。第1の反射系球面鏡11は往路光Lが入射する面を凹面形状としており、往路光Lを第2の反射系球面鏡12に向けて反射する。
【0036】
第2の反射系球面鏡12は往路光Lが入射する面が凸面形状をしており、往路光Lを第1の反射系球面鏡11に向けて反射する。このときに、往路光Lは反転して復路光Rとなる。復路光Rは第1の反射系球面鏡11で反射して、球面鏡3に入射する。球面鏡3は復路光Rを反射して、回折格子4でさらに反射する。そして、回折格子4で反射した復路光Rが球面鏡3で反射する。球面鏡3で反射した復路光Rが出力ポート6から出力される。
【0037】
従って、反射光学系5は第1の反射系球面鏡11と第2の反射系球面鏡12とにより構成することができる。第1の反射系球面鏡11および第2の反射系球面鏡12は球面鏡であり、一定の曲率で構成することができることから、簡単な光学構成で実現することができる。また、第1の反射系球面鏡11および第2の反射系球面鏡12により往路光Lが反転して復路光Rとなるため、収差をキャンセルする補正効果が得られる。
【0038】
また、第1の反射系球面鏡11および第2の反射系球面鏡12は球面鏡を用いており、第1の反射系球面鏡11および第2の反射系球面鏡12が回転方向に誤差を生じたとしても、その影響はない。つまり、球面鏡であるため、回転したとしても、往路光Lおよび復路光Rに対しては影響を及ぼすことがない。
【0039】
次に、変形例2について説明する。変形例2の反射光学系5は反射系球面鏡(第1の反射系球面鏡)11と反射系回折格子13とを備えて構成している。本変形例2は変形例1の第2の反射系球面鏡12を反射系回折格子13としたものであり、オフナーリフレクタに回折格子を適用したものである。反射系回折格子13は球面の凸面形状の回折格子となっており、回折格子4と同じものである。図5は変形例2の斜視図、図6は上面図、図7は側面図を示している。
【0040】
従って、球面鏡3および回折格子4と反射系球面鏡11および反射系回折格子13とは同じ構成のものを対称に2つ設定している。入力ポート2から入力された往路光Lは球面鏡3および回折格子4で反射して、反射光学系5に入力される。反射光学系5では反射系球面鏡11および反射系回折格子13で反射して、再び球面鏡3に入力される。そして、球面鏡3および回折格子4で反射して出力ポート6から出力される。
【0041】
これにより、往路光Lは反射光学系5で反転して反射されるため、復路光Rが出力ポート6に入力されるときには、収差が補正されている。本変形例2では、球面鏡3と回折格子4との1つのセット、および同じ構成の反射系球面鏡11と反射系回折格子13との1つのセットを用いている。つまり、同じ光学部品(球面鏡および回折格子)を用いることで、使用する光学部品の種類を少なくすることができる。このため、簡単な光学構成で収差の補正を実現することができる。
【0042】
反射光学系5としては、直角リフレクタを用いてもよい。後述する図14乃至図16に示す構成のうち可動式スリットを除いたものである。直角リフレクタは平面形状の2枚の反射ミラーを配置して構成しており、球面鏡3が反射した分光された往路光Lを一方の反射ミラーから他方の反射ミラーに向けて反射する。そして、2枚の反射ミラーにより反射された往路光Lは復路光Rとして球面鏡3に入射される。
【0043】
このとき、2枚の反射ミラーの作用により、復路光Rは往路光Lに対して反転されている。従って、往路光Lまたは復路光Rに生じる収差がキャンセルされて、収差補正効果が得られる。直角リフレクタは2枚の平面形状の反射ミラーで構成しているために構成が簡単になり、且つオフナーリフレクタと比べると小型になる。これにより、分光計1のコンパクト化を実現できる。
【0044】
また、反射光学系5としてはリトロリフレクタを用いてもよい。リトロリフレクタは3つの平面で往路光Lを反射して復路光Rとするリフレクタであり、リトロリフレクタで反射した往路光Lは復路光Rに対して反転している。これにより、収差を補正することができる。
【0045】
以上は、分光された光の所定の波長範囲を測定対象とするポリクロメータとして適用した場合について説明した。ポリクロメータとして適用する場合には、復路光Rは波長分散方向に分散が拡大(加分散)するようにする。これにより、所定の波長範囲の光を測定することができる。このために、反射光学系5において、波長分散方向の中心から短波長側と長波長側とが光路を入れ替えるように構成する。
【0046】
一方、ポリクロメータではなく、分光された光のうち特定の波長のみを測定対象とするモノクロメータとして適用してもよい。この場合には、反射光学系5において、波長分散方向の中心から短波長側と長波長側とで光路の入れ替えを起こさないように構成する。これにより、波長分散方向に分散が縮小(差分散)するようにする。変形例3はオフナーリフレクタを用いたモノクロメータを分光計1として示している。
【0047】
図8は変形例3の斜視図、図9は上面図、図10は側面図を示している。図8乃至図10に示されるように、反射光学系5は可動式反射系球面鏡14と可動式反射系回折格子15とを備えて構成している。可動式反射系球面鏡14は変形例1の反射系球面鏡11と同一形状の凹面鏡になっているが、可動式になっている。可動式反射系回折格子15は変形例2の反射系回折格子13と同一形状の凸面鏡になっているが、可動式になっている。なお、可動式反射系回折格子15の代わりに変形例1の第2の反射系球面鏡12を可動式として用いてもよい。
【0048】
可動式スリット16は復路光Rの光路に配置する。可動式スリット16はスリットであり、特定の波長だけが透過されるようになっている。このスリットを可動式反射系球面鏡14および可動式反射系回折格子15に同期して可動させることで、所望の波長を透過させることができる。このために、可動式スリット16は回折格子4により分光された後の光の光路に配置する。
【0049】
入力ポート2から入力される往路光Lは球面鏡3および回折格子4で反射して、反射光学系5に入射される。往路光Lは可動式反射系球面鏡14で反射して可動式反射系回折格子15で反射し、再び可動式反射系球面鏡14で反射される。そして、可動式反射系球面鏡14で反射した復路光Rの光路に配置してある可動式スリット16により特定の波長成分の光のみが透過する。そして、透過した復路光Rが出力ポート6から出力される。これにより、分光計1をモノクロメータとして用いることができる。
【0050】
図8乃至図10では可動式反射系球面鏡14および可動式反射系回折格子15を可動式にしているが、固定式としてもよい。可動式反射球面鏡14および可動式反射系回折格子15を固定式としたときの斜視図を図11、上面図を図12、側面図を図13に示す。可動式反射系球面鏡14および可動式反射系回折格子15を固定式としたときにおいても、可動式としたときと同様に収差の補正効果が得られる。
【0051】
固定式とした場合には、可動式反射系球面鏡14および可動式反射系回折格子15を用いた場合よりも収差の補正効果が高くなる。これにより、結像される光をより円形に近づけることができる。また、凹面鏡を可動させる機構を設けなくてもよいことから、分光計1の機構がより単純化できる。
【0052】
次に、変形例4について説明する。本変形例4は反射光学系5に直角リフレクタを用いたモノクロメータになっている。図14は変形例4の斜視図、図15は上面図、図16は側面図を示している。反射光学系5の直角リフレクタは第1の反射ミラー17と第2の反射ミラー18とを備えて構成している。また、モノクロメータとして用いているため、可動式スリット16を備えている。
【0053】
第1の反射ミラー17および第2の反射ミラー18は平面形状のミラーであり、光を反射する。第1の反射ミラー17と第2の反射ミラー18とにより光が入射する方向に反射しているため、第1の反射ミラー17と第2の反射ミラー18との間に所定角度が形成されるように、対向配置している。
【0054】
入力ポート2から入力される往路光Lは球面鏡3および回折格子4で反射して、反射光学系5に入力される。往路光Lはまず第1の反射ミラー17で反射して光路が90度変換される。そして、第2の反射ミラー18で反射してさらに光路が90度変換される。これにより、復路光Rは、往路光Lが入射した方向に向けて反射される。
【0055】
第1の反射ミラー17と第2の反射ミラー18との間に可動式スリット16を配置している。これにより、特定の波長成分の光だけが透過するため、モノクロメータとして用いることができる。
【0056】
第1の反射ミラー17および第2の反射ミラー18は平面形状のミラーであり、そのサイズは第1の反射系球面鏡11と比較すると、コンパクトである。従って、分光計1の全体のサイズを小型化することができる。これにより、小型の分光計1を用いて、収差の補正を実現することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 分光計
2 入力ポート
3 球面鏡
4 回折格子
5 反射光学系
6 出力ポート
11 第1の反射系球面鏡
12 第2の反射系球面鏡
13 反射系回折格子
14 可動式反射系球面鏡
16 可動式スリット
17 第1の反射ミラー
18 第2の反射ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を入力する入力ポートと、
この入力ポートから入力された光を反射する凹面形状の球面鏡と、
この球面鏡で反射した光を分光して前記球面鏡に反射する等しい格子幅の球面の凸面形状の回折格子と、
前記球面鏡により反射した分光された光を往路光として、この往路光を反転させた復路光を前記球面鏡に反射させる反射部と、
前記球面鏡および前記回折格子で反射した前記復路光を出力する出力ポートと、
を備えたことを特徴とする分光計。
【請求項2】
前記反射部は、
前記球面鏡から入射した前記往路光を反射する凹面形状の反射系球面鏡と、
この反射系球面鏡から入射した前記往路光を復路光として前記反射系球面鏡に反射させる等しい格子幅の凸面形状の球面の反射系回折格子と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の分光計。
【請求項3】
前記反射系球面鏡と前記球面鏡とは同一の光学部品を用い、前記反射系回折格子と前記回折格子とは同一の光学部品を用いたこと
を特徴とする請求項2記載の分光計。
【請求項4】
前記反射部は、
前記球面鏡から入射した前記往路光を反射する凹面形状の第1の反射系球面鏡と、
この第1の反射系球面鏡で反射した前記往路光を前記復路光として第1の前記反射系球面鏡に反射させる凸面形状の第2の反射系球面鏡と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の分光計。
【請求項5】
前記反射系球面鏡および前記反射系回折格子を可動式として、分光された前記往路光または前記復路光のうち特定の波長の光のみを通過させ、前記反射系球面鏡および前記反射系回折格子と同期して可動する可動式スリットを備えたこと
を特徴とする請求項3記載の分光計。
【請求項6】
前記反射系球面鏡および前記反射系回折格子を固定式として、分光された前記往路光または前記復路光のうち特定の波長の光のみを通過させる可動式スリットを備えたこと
を特徴とする請求項3記載の分光計。
【請求項7】
前記反射部は、
前記球面鏡から入射した前記往路光を反射する平面形状の第1の反射ミラーと、
この第1の反射ミラーで反射した前記往路光を前記球面鏡に向けて前記復路光として反転して反射する平面形状の第2の反射ミラーと、
分光された前記往路光または前記復路光のうち特定の波長の光のみを透過させる可動式スリットと、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の分光計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−229936(P2012−229936A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97014(P2011−97014)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】