説明

分割ユニットケースの位置決め結合構造

【課題】外側への突出を防ぎ、かつ、回転方向のずれを防ぐことができる分割ユニットケースの位置決め結合構造を提供すること。
【解決手段】第1の分割ユニットケース部(100A)の結合面50Aに設けられたロケートピン2は、ロケートパイプ3内を挿通する円筒部4と、円筒部4の外周に設けられたフック部5と、フック部5の先端に設けられた係止部6とを有し、さらに、第2の分割ユニットケース部(100B)の結合面50Bに設けられたロケートパイプ3は、フック部5および係止部6が挿通するスリット部7を有している構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロケートピンおよびロケートパイプにより複数の分割ケース部を結合する分割ユニットケースの位置決め結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高精度でかつ高強度な組付けを確保しながら、分解も容易にすることを目的とし、ロケートピンの外側に係合フックを設け、ロケートパイプの外側に係合受部を設けるように構成し、分割ユニット部を結合させる場合には、ロケートピンをロケートパイプに挿入するとともに、係合フックを係合受部に係合するように設定した分割ユニットケースの位置決め結合構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−310617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている従来の分割ユニットケースの位置決め結合構造にあっては、ロケートピンの外側に係合フックを設け、ロケートパイプの外側に係合受部を設けるように構成するものであるため、外側への突起が大きくなるという問題があった。
【0004】
また、上記特許文献1に記載されている従来の分割ユニットケースの位置決め結合構造にあっては、係合フックを外側に向けて突出した係合受部に係合して結合させる構成であるため、回転方向のずれが生じる虞があるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、外側へ大きく突出することを防ぎ、かつ、回転方向のずれを防ぐことができる分割ユニットケースの位置決め結合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、第1の分割ケース部の結合面にはロケートピンが設けられ、前記第1の分割ケース部と結合する第2の分割ケース部の結合面には、前記第1の分割ケース部と結合したときに前記ロケートピンに対応する位置にロケートパイプが設けられ、複数の分割ケース部を結合して一つのユニットケースを形成する分割ユニットケースの位置決め結合構造において、
前記ロケートピンは、前記ロケートパイプ内を挿通する円筒部と、前記円筒部の外周に設けられたフック部と、前記フック部の先端に設けられた係止部とを有し、前記ロケートパイプは、前記フック部および前記係止部が挿通するスリット部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の分割ユニットケースの位置決め結合構造によれば、複数の分割ケース部を結合する場合、フック部および係止部がスリット部を挿通して結合されるという作用を示す。この結果、外側へ大きく突出することを防ぐことができ、かつ、回転方向のずれを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の分割ユニットケースの位置決め結合構造を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
まず、構成を説明する。
【0010】
図1は、実施例1の車両用空調ユニットケース100を示す分解図であり、図2は、第1の分割ケース部100Aと第2の分割ケース部100Bとの位置決め結合構造1を示す要部拡大斜視図である。
【0011】
以下、図1および図2に基づいて、車両用空調ユニットケース100の全体構成を説明する。
【0012】
実施例1における車両用空調ユニット100(分割ユニットケースの一例)は、図1に示すように、第1の分割ケース部100A、および、第1の分割ケース部100Aと結合する第2の分割ケース部100Bを備えている。
【0013】
この第1の分割ケース部100Aの結合面50Aにはロケートピン2が設けられ、第2の分割ケース部100Bの結合面50Bには、第1の分割ケース部100Aと結合したときにロケートピン2に対応する位置にロケートパイプ3が設けられている。
【0014】
これらロケートピン2とロケートパイプ3とにより構成される位置決め結合構造1は、車両用空調ユニットケース100に複数設けられている。なお、ロケートピン2およびロケートパイプ3は合成樹脂等により形成されている。
【0015】
前記ロケートピン2は、図2に示すように、ロケートパイプ3の内部を挿通する円筒部4と、円筒部4の外周に設けられたフック部5と、フック部5の先端に設けられた係止部6と、円筒部4の先端側に設けられた先細りテーパー部8と、円筒部4の上部に設けられた挿通入口側係合面9とを備えている。
前記フック部5および係止部6の高さD1は、フック部5および係止部6とロケートパイプ3とが外観上同一平面と認識される高さに設定した。すなわち、フック部5および係止部6の高さD1はロケートパイプ3の厚さD2と同じ高さに設定した(D1=D2)。
前記先細りテーパー部8は、その先端面を係止部6の先端から挿通方向延長位置に設定した。すなわち、先細りテーパー部8の先端面は、係止部6の先端よりも下方に位置している。
前記挿通入口側係合面9は、ロケートパイプ3への挿通が完了した場合、ロケートパイプ3の挿通入口側全面を塞ぐように構成されており、この挿通入口側係合面9の外径はロケートパイプ3の外径と等しく設定した。
【0016】
前記ロケートパイプ3は、図2に示すように、フック部5および係止部6が挿通するスリット部7を備えている。
前記スリット部7の鉛直方向の長さL2は、フック部5の鉛直方向の長さL1と等しく設定した(L1=L2)。
【0017】
図3は、図2のロケートピン2およびロケートパイプ3の構造を示す正面図であり、図4は、図3のロケートピン2の係止部6の構造を示す正面拡大図であり、図5は、図3のロケートパイプ3の先端の構造を示す正面拡大図である。
【0018】
以下、図3〜図5に基づいて、ロケートピン2およびロケートパイプ3の構成をより詳細に説明する。
【0019】
前記ロケートピン2は、図3に示すように、係止部6の幅D5をスリット部7の先端の幅D4よりも広く設定した(D4<D5)。
【0020】
前記ロケートパイプ3は、図3に示すように、スリット部7の先端の幅D4をフック部5の幅D3と等しく設定し(D3=D4)、スリット部7の挿通入口幅D6を係止部6の幅D5よりも広く設定した(D5<D6)。
すなわち、フック部5の幅D3、スリット部7の先端の幅D4、係止部6の幅D5、スリット部7の挿通入口幅D6の関係は、D3=D4<D5<D6とした。
前記スリット部7は、スリット部7の先端の幅D4とスリット部7の挿通入口幅D6とを全長にわたって結んだ一対の傾斜壁7a、7aを有するように構成した。
【0021】
前記ロケートピン2は、図4に示すように、係止部6の係合面を、係止部6の先端の方向に向かって下向き傾斜したピン側係合面6a、6aを有する。
【0022】
前記ロケートパイプ3は、図5に示すように、ピン側係合面6a、6aと面接触するように傾斜したパイプ側係合面7cと、フック部5の側面と面接触するように形成した平坦部7bを有する。
【0023】
なお、図1において、第2の分割ケース部100B内には、エアフィルタ10、エバポレータ11、ヒータコア12、エアミックスドア13、ブロワ14、フットドア15、ベントドア16、デフドア17が備えられている。
【0024】
次に、作用を説明する。
【0025】
図6は、ロケートパイプ3にロケートピン2を挿通する動作を説明する模式図であり、(a)は挿通前の状態を示す図であり、(b)は挿通作業を行っている最中の状態を示す図であり、(c)は挿通が完了した状態を示す図である。
【0026】
また、図7は、図6(c)の係止部6およびロケートパイプ3の先端の状態を示す部分拡大図である。
【0027】
以下、図6および図7に基づいて、車両用空調ユニットケース100の位置決め結合構造の作用について説明する。
【0028】
実施例1に係る位置決め結合構造1により車両用空調ユニット100を形成する場合、エアフィルタ10やエバポレータ11等が内部に設けられた第2の分割ケース部100Bに対して第1の分割ケース部100Aを被せるように結合する。
【0029】
このとき、第1の分割ケース部100Aの結合面50Aと第2の分割ケース部100Bの結合面50Bとを面接触させると同時に、ロケートパイプ3にロケートピン2の円筒部4を挿通させ、かつ、ロケートパイプ3に設けられたスリット部7にロケートピン2に設けられたフック部5と係止部6とを挿通させる。
【0030】
まず、図6(a)に示すように、ロケートピン2を挿通方向である矢印Aの方向に動かすと、先細りテーパー部8が最初にロケートパイプ3内に入る。
【0031】
ここで、先細りテーパー部8の先端面の径R1は、ロケートパイプ3の内径R2よりも小さいため(R1<R2)、ロケートピン2の中心軸とロケートパイプ3の中心軸とは必ずしも一致していなくても、先細りテーパー部8をロケートパイプ3内に入れることは可能である。
【0032】
また、このように中心軸が一致していない場合であっても、先細りテーパー部8をロケートパイプ3内に入った後は、先細りテーパー部8がロケートパイプ3の押されることで、中心軸が一致するように補正されながらロケートピン2は挿通する。
【0033】
そして、ロケートピン2を矢印Aの方向にさらに動かすと、係止部6がスリット部7の挿通入口に入る。その後、図6(b)に示すように、係止部6がスリット部7(傾斜壁7a、平坦部7b)を左右方向に徐々に押し広げながら、ロケートピン2がロケートパイプ3内に挿通していく。
【0034】
さらに、図6(c)に示すように、係止部6がスリット部7を通過し挿通が完了すると、左右に押し広げられていたスリット部7は弾性変形により元の状態に戻る。
【0035】
このとき、フック部5および係止部6の高さD1はロケートパイプ3の厚さD2と同じ高さに設定しているため(D1=D2)、フック部5および係止部6がロケートパイプ3から外側に向けて飛び出ることがない。
【0036】
また、図7に示すように、係止部6は、そのピン側係合面6a、6aがスリット部7のパイプ側係合面7c、7cと面接触して係合する。このピン側係合面6aとパイプ側係合面7cとの接触面は、挿通方向に対して斜めであるため、これらの接触面にかかる力の向きは挿通方向と異なり、矢印Bで示すようになる。
【0037】
ここで、フック部5の鉛直方向の長さL1は、スリット部7の鉛直方向の長さL2と等しいため、係止部6および挿通入口側係合面9がそれぞれロケートパイプ3と係合することにより、係止部6および挿通入口側係合面9はロケートパイプ3を挟み上下方向の動きを固定する。
さらに、図7に示すように、スリット部7の平坦部7b、7bは、フック部5の側面を左右方向から面接触して挟み、フック部5の左右方向の動きを固定する。
【0038】
次に、効果を説明する。
【0039】
実施例1の車両用空調ユニット100にあっては、下記の効果を得ることができる。
【0040】
(1) 第1の分割ユニットケース部100Aの結合面50Aにはロケートピン2が設けられ、第1の分割ケース部100Aと結合する第2の分割ケース部100Bの結合面50Bには、第1の分割ケース部100Aと結合したときにロケートピン2に対応する位置にロケートパイプ3が設けられ、複数の分割ケース部(第1の分割ユニットケース部100A、第2の分割ケース部100B)を結合して一つのユニットケースを形成する分割ユニットケース(車両用空調ユニットケース100)の位置決め結合構造1において、ロートピン2は、ロケートパイプ3内を挿通する円筒部4と、円筒部4の外周に設けられたフック部5と、フック部5の先端に設けられた係止部6とを有し、ロケートパイプ3は、フック部5および係止部6が挿通するスリット部7を有している。このため、外側へ大きく突出することがなく、かつ、回転方向のずれを防ぐことができる。
【0041】
(2)ロケートピン2は、フック部5および係止部6の高さD1を、フック部5および係止部6とロケートパイプ3とが外観上同一平面と認識される高さに設定した。このため、挿通が完了した際に、フック部5および係止部6がロケートパイプ3から外側に向けて飛び出ることがなく、スペースを多く必要とすることがない。
【0042】
(3)ロケートピン2は、円筒部4の先端側に先細りテーパー部8を形成し、先細りテーパー部8は、その先端面を係止部6の先端から挿通方向延長位置に設定した。このため、ロケートピン2の中心軸とロケートパイプ3の中心軸とが必ずしも一致していない状態であっても、先細りテーパー部8をロケートパイプ3内に入れることが可能であるとともに、中心軸の位置ずれ補正を行うことを必要としない。
【0043】
(4)ロケートパイプ3は、スリット部7の先端の幅D4を、フック部5の幅D3と等しく設定した。このため、フック部5の回転ずれを防止することができる。
【0044】
(5)ロケートピン2は、係止部6の幅D5をスリット部7の先端の幅D4よりも広く設定し、ロケートパイプ3は、スリット部7の挿通入口幅D6を係止部6の幅D5よりも広く設定し、スリット部7は、スリット部7の先端の幅D4とスリット部7の挿通入口幅D6とを全長にわたって結んだ一対の傾斜壁を有するように構成した。このため、係止部6を容易にスリット部7内へ入れることができるとともに、係止部6とスリット部7との間に大きな負荷がかかることがなく、破損を抑えることができる。
【0045】
(6)ロケートパイプ3は、ロケートピン2とロケートパイプ3とが嵌合した際にフック部5の側面と接触する平坦部7b、7bを有するように構成した。このため、回転ずれに対してより安定してフック部5を固定することができる。
【0046】
(7)ロケートピン2は、係止部6の係合面を、係止部6の先端の方向に向かって下向き傾斜したピン側係合面6a、6aを有し、ロケートパイプ3は、ピン側係合面6a、6aと接触する係合面を、ピン側係合面6a、6aと面接触するように傾斜したパイプ側係合面7c、7cを有するように構成した。このため、係止部6およびロケートパイプ3の先端部の破損を防止することができるとともに、係合強度を強くすることができる。
【0047】
(8)位置決め結合構造1を車両用空調ユニットケース100に適用した。このような位置決め結合構造1は、分割して形成されるとともに、狭い空間に配置される車両用空調ユニットケース100に有用である。
【実施例2】
【0048】
実施例2は、スリット部の形状を変形した例である。
【0049】
まず、構成を説明する。
【0050】
図8は、実施例2のロケートピン2およびロケートパイプ23の構造を示す正面図であり、図9は、図8のロケートパイプ23の先端の構造を示す正面拡大図である。
【0051】
以下、図8および図9に基づいて、ロケートピン2およびロケートパイプ23の構成を詳細に説明する。
【0052】
前記ロケートピン2は、図8に示すように、フック部5の幅D3を係止部6の幅D5よりも狭く設定した(D3<D5)。
【0053】
前記ロケートパイプ23は、図8に示すように、スリット部27の挿通入口幅D26を係止部6の幅D5以上に設定し(D5≦D26)、スリット部27の先端の幅D24を、フック部5の幅D3と等しく設定した(D3=D24)。
すなわち、フック部5の幅D3、スリット部27の先端の幅D24、係止部6の幅D5、スリット部27の挿通入口幅D26の関係は、D3=D24<D5≦D26とした。
前記スリット部27は、スリット部27の挿通入口から先端領域に至るまで挿通入口幅D26を保った一対の平行壁27a、27aと、先端領域からスリット部7の先端に向かって傾斜した一対の傾斜壁27b、27bとを有する。
【0054】
前記ロケートパイプ23は、図9に示すように、ピン側係合面6a、6aと面接触するように傾斜したパイプ側係合面27cと、フック部5の側面と点接触するように形成した円弧部27dを有する。
【0055】
なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
次に、作用を説明する。
【0057】
図10は、ロケートパイプ23にロケートピン2を挿通する動作を説明する模式図であり、(a)は挿通前の状態を示す図であり、(b)は挿通作業を行っている最中の状態を示す図であり、(c)は挿通が完了した状態を示す図である。
【0058】
以下、図10に基づいて、車両用空調ユニットケース100の位置決め結合構造の作用について説明する。
【0059】
図10(a)に示すように、ロケートピン2を挿通方向である矢印Aの方向に動かすと、先細りテーパー部8が最初にロケートパイプ23内に入る。
【0060】
そして、ロケートピン2を矢印Aの方向にさらに動かすと、係止部6がスリット部27の挿通入口に入り、その後、係止部6およびフック部5はスリット部27内を先端領域に至るまで挿通する。
【0061】
このとき、スリット部27の挿通入口幅D26は係止部6の幅D5以上(D5≦D26)であるため、係止部6とスリット部27との間に大きな負荷がかかることなく挿通する。
また、図10(b)に示すように、係止部6が先端領域に達すると、スリット部27は傾斜壁27b、27bによりその幅が狭くなっているため、係止部6はスリット部27の傾斜壁27b、27bを左右に押し広げながら、ロケートピン2がロケートパイプ23内に挿通していく。
【0062】
その後、図10(c)に示すように、係止部6がスリット部27を通過し挿通が完了すると、左右に押し広げられていたスリット部27は弾性変形により元の状態に戻る。
【0063】
このとき、スリット部27の円弧部27d、27dは、フック部5の側面を左右方向から挟むことでフック部5を固定する。これらの円弧部27d、27dは、フック部5を、フック部5の側面と円弧部27d、27dとの接点で挟むため、フック部5またはスリット部27の少なくともどちらか一方に振動入力が加わった場合には、フック部5は接線に沿って動くことになる。
【0064】
なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0065】
次に、効果を説明する。
【0066】
実施例2の分割ユニットケースの位置決め結合構造にあっては、実施例1の(1)〜(8)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0067】
(9)ロケートピン2は、係止部6の幅D5をスリット部27の先端の幅D24よりも広く設定し、ロケートパイプ23は、スリット部27の挿通入口幅D26を係止部6の幅D5以上に設定し、スリット部27は、スリット部27の挿通入口から先端領域に至るまで挿通入口幅D26を保った一対の平行壁27a、27aと、先端領域からスリット部27の先端に向かって傾斜した一対の傾斜壁27b、27bとを有するように構成した。このため、係止部6はスリット部27の先端領域に至るまで、大きな負荷がかかることなく挿通することができ、挿通作業を容易に行うことができる。
【0068】
(10)ロケートパイプ23は、ロケートピン2とロケートパイプ23とが嵌合した際にフック部5の側面と接触する円弧部27b、27bを有するように構成した。このため、振動入力に対しても安定してフック部5とスリット部27との係合を保つことができる。
【0069】
なお、図11に示すように、円弧部27dに代わり実施例1と同様に平坦部27eを設けるような構成にすることもできる。このような構成によれば、この平坦部27e、27eとフック部5の側面とが面接触するため、回転ずれに対して安定してフック部5を固定することができる。
【実施例3】
【0070】
実施例3もまた、スリット部の形状を変形した例である。
【0071】
まず、構成を説明する。
【0072】
図12は、実施例3のロケートピン2およびロケートパイプ33の構造を示す正面図である。以下、図12に基づいてロケートパイプ33の構成を詳細に説明する。
【0073】
前記ロケートパイプ33は、図12に示すように、スリット部37の挿通入口幅D36を係止部6の幅D5以上に設定し(D5≦D36)、スリット部27の先端の幅D34を、フック部5の幅D3と等しく設定した(D3=D34)。
すなわち、フック部5の幅D3、スリット部37の先端の幅D34、係止部6の幅D5、スリット部37の挿通入口幅D36の関係は、D3=D34<D5≦D36とした。
【0074】
前記スリット部37は、スリット部37の挿通入口幅D36を保った一対の第1平行壁37a、37aと、スリット部37の先端の幅D34を保った一対の第2平行壁37e、37eと、第1平行壁37a、37aから第2平行壁37e、37eに向かって傾斜した一対の傾斜壁37b、37bと、を有する。
【0075】
一対の第2平行壁37e、37eは、スリット部37の略中間部から先端までに設定され、ロケートピン2とロケートパイプ33とが嵌合した際にフック部5の側面と面接触する。
【0076】
なお、他の構成は、実施例1および実施例2と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0077】
次に、作用を説明する。
【0078】
図12は、ロケートパイプ33にロケートピン2を挿通する動作を説明する模式図であり、(a)は挿通前の状態を示す図であり、(b)は挿通作業を行っている最中の状態を示す図であり、(c)は挿通が完了した状態を示す図である。以下、図12に基づいて、車両用空調ユニットケース100の位置決め結合構造の作用について説明する。
【0079】
ロケートピン2を挿通方向に動かすと、先細りテーパー部8が最初にロケートパイプ33内に入り、その後、係止部6が傾斜壁37b、37bに至るまで挿通方向に動く。
【0080】
このとき、スリット部37の挿通入口幅D36は係止部6の幅D5以上(D5≦D36)であるため、係止部6とスリット部37との間に大きな負荷がかかることなく挿通する。
【0081】
また、図12(a)に示すように、係止部6が傾斜壁37b、37bに達すると、スリット部37は傾斜壁37b、37bによりその幅が狭くなっているため、係止部6はスリット部37の傾斜壁37b、37bを左右方向に徐々に押し広げながら、ロケートピン2がロケートパイプ33内に挿通していく。
【0082】
さらに、図12(b)に示すように、係止部6が第2平行壁37e、37eを左右方向に押し広げて挿通し、図12(c)に示すように、係止部6がスリット部37を通過し挿通が完了すると、左右に押し広げられていたスリット部37は弾性変形により元の状態に戻る。
【0083】
このとき、スリット部37の第2平行壁37e、37eは、フック部5の側面を左右方向から挟むことでフック部5を固定する。これらの第2平行壁37e、37eとフック部5とは幅広い面で面接触し、スリット部37の一部にのみ負荷がかかることを防ぐため、回転ずれに対してフック部5をより安定して固定することができ、かつ、スリット部37の破損を防ぐことができる。
【0084】
なお、他の作用は、実施例1および実施例2と同様であるので、説明を省略する。
【0085】
次に、効果を説明する。
【0086】
実施例3の分割ユニットケースの位置決め結合構造にあっては、実施例1の(1)〜(8)の効果および実施例2の(9)〜(10)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0087】
(11)ロケートピン2は、係止部6の幅D5をスリット部37の先端の幅D34よりも広く設定し、ロケートパイプ33は、スリット部37の挿通入口幅D36を係止部6の幅D5以上に設定し、スリット部37は、ロケートピン2とロケートパイプ33とが嵌合した際にフック部5の側面と面接触する所定の長さを確保した一対の平行壁(第2平行壁37e、37e)と、傾斜した一対の傾斜壁37b、37bと、を有するように構成した。
このため、回転ずれに対してフック部5をより安定して固定することができ、かつ、スリット部37の破損を防ぐことができる。
【0088】
なお、スリット部37の第1平行壁37a、37aおよび傾斜壁37b、37bに代えて、スリット部37の挿通入口と第2平行壁37e、37eとを結んだ一対の傾斜壁を設けるように構成してもよい。
このような構成によれば、スリット部37に設けられた傾斜壁の傾斜が緩やかになるため、係止部6とスリット部37との間に大きな負荷がかかることがなく、破損をより効果的に抑えることができる。
【0089】
以上、本発明の分割ユニットケースの位置決め結合構造を実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0090】
実施例1〜実施例3では、ロケートピン2は、ロケートパイプ3へ挿通が完了した際にロケートパイプ3、23、33の挿通入口側全面を塞ぐように係合する挿通入口側係合面9を備えている例を示した。
【0091】
しかし、本発明に係る分割ユニットケースの位置決め結合構造はこのような形態に限定されるものではなく、例えば図14に示すように、ロケートパイプ3、23、33の上部の一部に係合するような係合部10が設けられていればよい。
【0092】
このような構成によれば、樹脂成型等の型抜き等を行う場合に型を上下方向に抜くことができ、製造を容易にすることができる。
【0093】
また、実施例1〜実施例3では、係止部6がスリット部7、27、37を左右に押し広げて挿通する例を示した。
【0094】
しかし、本発明に係る分割ユニットケースの位置決め結合構造はこのような形態に限定されるものではなく、例えば、先細りテーパー部がロケートパイプ内を広げて挿通するような構成にすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
実施例1〜実施例3では、2つの分割ケース部からなる車両用空調ユニットへの適用例を示したが、複数の分割ケース部からなる他の分割ユニットケースの位置決め結合構造であれば適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】実施例1の車両用空調ユニット100を示す分解図である。
【図2】第1の分割ケース部100Aと第2の分割ケース部100Bとの位置決め結合構造1を示す要部拡大斜視図である。
【図3】図2のロケートピン2およびロケートパイプ3の構造を示す正面図である。
【図4】図3のロケートピン2の係止部6の構造を示す正面拡大図である。
【図5】図3のロケートパイプ3の先端の構造を示す正面拡大図である。
【図6】ロケートパイプ3にロケートピン2を挿通する動作を説明する模式図であり、(a)は挿通前の状態を示す図、(b)は挿通作業を行っている最中の状態を示す図、(c)は挿通が完了した状態を示す図である。
【図7】図6(c)の係止部6およびロケートパイプ3の先端の状態を示す部分拡大図である。
【図8】実施例2のロケートピン2およびロケートパイプ23の構造を示す正面図である。
【図9】図8のロケートパイプ23の先端の構造を示す正面拡大図である。
【図10】ロケートパイプ23にロケートピン2を挿通する動作を説明する模式図であり、(a)は挿通前の状態を示す図、(b)は挿通作業を行っている最中の状態を示す図、(c)は挿通が完了した状態を示す図である。
【図11】図9のロケートパイプ23の先端の構造の変形例を示す正面拡大図である。
【図12】実施例3のロケートピン2およびロケートパイプ33の構造を示す正面図である。
【図13】ロケートパイプ33にロケートピン2を挿通する動作を説明する模式図であり、(a)は挿通前の状態を示す図、(b)は挿通作業を行っている最中の状態を示す図、(c)は挿通が完了した状態を示す図である。
【図14】図2のロケートピン2の構造の変形例を示す拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0097】
1 位置決め結合構造
2 ロケートピン
3 ロケートパイプ
4 円筒部
5 フック部
6 係止部
7 スリット部
8 先細りテーパー部
9 挿通入口側係合面
D1 フック部および係止部の高さ
D2 ロケートパイプの厚さ
L1 フック部の鉛直方向の長さ
L2 スリット部の鉛直方向の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の分割ケース部の結合面にはロケートピンが設けられ、前記第1の分割ケース部と結合する第2の分割ケース部の結合面には、前記第1の分割ケース部と結合したときに前記ロケートピンに対応する位置にロケートパイプが設けられ、複数の分割ケース部を結合して一つのユニットケースを形成する分割ユニットケースの位置決め結合構造において、
前記ロケートピンは、前記ロケートパイプ内を挿通する円筒部と、前記円筒部の外周に設けられたフック部と、前記フック部の先端に設けられた係止部とを有し、
前記ロケートパイプは、前記フック部および前記係止部が挿通するスリット部を有していることを特徴とする分割ユニットケースの位置決め結合構造。
【請求項2】
請求項1に記載された分割ユニットケースの位置決め結合構造において、
前記ロケートピンは、前記フック部および前記係止部の高さを、前記フック部および前記係止部と前記ロケートパイプとが外観上同一平面と認識される高さに設定したことを特徴とする分割ユニットケースの位置決め結合構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された分割ユニットケースの位置決め結合構造において、
前記ロケートピンは、前記円筒部の先端側に先細りテーパー部を形成し、
前記先細りテーパー部は、その先端面を前記係止部の先端から挿通方向延長位置に設定したことを特徴とする分割ユニットケースの位置決め結合構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載された分割ユニットケースの位置決め結合構造において、
前記ロケートパイプは、前記スリット部の先端の幅を、前記フック部の幅と等しく設定したことを特徴とする分割ユニットケースの位置決め結合構造。
【請求項5】
請求項4に記載された分割ユニットケースの位置決め結合構造において、
前記ロケートピンは、前記係止部の幅を前記スリット部の先端の幅よりも広く設定し、
前記ロケートパイプは、前記スリット部の挿通入口幅を前記係止部の幅よりも広く設定し、
前記スリット部は、前記スリット部の先端の幅と前記スリット部の挿通入口幅とを全長にわたって結んだ一対の傾斜壁を有することを特徴とする分割ユニットケースの位置決め結合構造。
【請求項6】
請求項4に記載された分割ユニットケースの位置決め結合構造において、
前記ロケートピンは、前記係止部の幅を前記スリット部の先端の幅よりも広く設定し、
前記ロケートパイプは、前記スリット部の挿通入口幅を前記係止部の幅以上に設定し、
前記スリット部は、前記スリット部の挿通入口から先端領域に至るまで前記挿通入口幅を保った一対の平行壁と、先端領域から前記スリット部の先端に向かって傾斜した一対の傾斜壁とを有することを特徴とする分割ユニットケースの位置決め結合構造。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6の何れか1項に記載された分割ユニットケースの位置決め結合構造において、
前記ロケートパイプは、前記ロケートピンと前記ロケートパイプとが嵌合した際に前記フック部の側面と接触する平坦部を有することを特徴とする分割ユニットケースの位置決め結合構造。
【請求項8】
請求項4乃至請求項6の何れか1項に記載された分割ユニットケースの位置決め結合構造において、
前記ロケートパイプは、前記ロケートピンと前記ロケートパイプとが嵌合した際に前記フック部の側面と接触する円弧部を有することを特徴とする分割ユニットケースの位置決め結合構造。
【請求項9】
請求項4に記載された分割ユニットケースの位置決め結合構造において、
前記ロケートピンは、前記係止部の幅を前記スリット部の先端の幅よりも広く設定し、
前記ロケートパイプは、前記スリット部の挿通入口幅を前記係止部の幅以上に設定し、
前記スリット部は、前記ロケートピンと前記ロケートパイプとが嵌合した際に前記フック部の側面と面接触する所定の長さを確保した一対の平行壁と、傾斜した一対の傾斜壁と、を有することを特徴とする分割ユニットケースの位置決め結合構造。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載された分割ユニットケースの位置決め結合構造において、
前記ロケートピンは、前記係止部の係合面を、前記係止部の先端の方向に向かって下向き傾斜したピン側係合面を有し、
前記ロケートパイプは、前記ピン側係合面と接触する係合面を、前記ピン側係合面と面接触するように傾斜したパイプ側係合面を有することを特徴とする分割ユニットケースの位置決め結合構造。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載された分割ユニットケースの位置決め結合構造において、
前記分割ユットケースは、車両用空気調和装置の分割ユニットケースであることを特徴とする分割ユニットケースの位置決め結合構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−149759(P2010−149759A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331323(P2008−331323)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】