説明

分取装置および分取方法

【課題】簡易な構成でばらつきのない分取ができる分取装置および分取方法を提供すること。
【解決手段】所望の微量の液体12を分取する分取装置1において、細長形状の部材の先端に、液体12を保持する液体保持部である貫通孔10を有し、この貫通孔10の両端の開口部の形状および面積が同じであるとともにこの貫通孔10の軸と垂直な軸を有する分取具9と、分取具9を昇降させるボールネジ7と、分取具9の軸が液体12の液面に対して鉛直であるか否かを検出する鉛直検出器3と、鉛直検出器3が検出した検出結果をもとに分取具9の姿勢を可変し、分取具9の軸が液体12の液面に対して鉛直となる補正を行なう鉛直補正器4と、ボールネジ7によって液体12から分取具9を上昇させる場合、鉛直補正器4によって分取具9の軸を液体12の液面に対して鉛直となる制御を行う制御部2と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の微量の液体を分取する分取装置および分取方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、毛細管現象を利用し、nL〜μLオーダーの微量液体を分取する分取装置が知られている。平板に微細な貫通孔を形成し、この平板の片面を液体に接触させ、液体を分取する技術が開示されている(特許文献1)。また、貫通孔の軸と垂直な軸を有する細長形状の板部材(分取具)を液体に浸漬した後、この分取具を液面から鉛直に引上げる分取装置が知られている。
【0003】
【特許文献1】米国特許第6743633号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この分取具を液面から鉛直に引上げる際、この分取具と液面との鉛直関係がずれると、貫通孔の開口部が液体から同時に離脱せず、この開口部に形成される液体の接触角(メニスカス)が異なる。メニスカスが異なると、開口部に形成される液面の形状が異なり所定の分取が行なえない。また、分取具が引上げられる度に、分取具の軸と液面との角度が異なると分取量がばらつくという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成でばらつきのない分取ができる分取装置および分取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる分取装置は、所望の微量の液体を分取する分取装置において、細長形状の部材の先端に、前記液体を保持する液体保持部である貫通孔を有し、この貫通孔の両端の開口部の形状および面積が同じであるとともにこの貫通孔の軸と垂直な軸を有する分取具と、前記分取具を昇降させる昇降手段と、前記分取具の軸が前記液体の液面に対して鉛直であるか否かを検出する検出手段と、前記検出手段が検出した検出結果をもとに前記分取具の姿勢を可変し、前記分取具の軸が前記液体の液面に対して鉛直となる補正を行なう補正手段と、前記昇降手段によって前記液体から前記分取具を上昇させる場合、前記補正手段によって前記分取具の軸を前記液体の液面に対して鉛直となる制御を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2にかかる分取装置は、上記の発明において、前記昇降手段が昇降する軸と前記分取具の軸とは平行であり、前記補正手段は、前記昇降手段の軸を偏芯させることによって前記分取具の軸を鉛直に補正することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3にかかる分取装置は、上記の発明において、前記分取具の先端は、テーパ状に形成されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4にかかる分取装置は、上記の発明において、前記貫通孔は、前記分取具の先端が円錐状に形成された該円錐斜面に設けられることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5にかかる分取方法は、上記の発明において、所望の微量の液体を分取する分取方法において、細長形状の部材の先端に、前記液体を保持する液体保持部である貫通孔を有し、この貫通孔の両端の開口部の形状および面積が同じであるとともにこの貫通孔の軸と垂直な軸を有する分取具を前記液体の液面下に下降させる下降ステップと、前記分取具を前記液体の液面上に引上げる場合、前記分取具の軸が前記液体の液面に対して鉛直であるか否かを検出し、検出した検出結果をもとに前記分取具の姿勢を可変し、前記分取具の軸が前記液体の液面に対して鉛直となる補正を行なう補正制御ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる分取装置および分取方法は、両端の開口部の形状および面積が同じ液体を保持する貫通孔を有するとともにこの貫通孔の軸と垂直な軸を有する分取具を液体の液面に対し常に鉛直となる姿勢で引上げることによって、開口部に形成される液面の形状を常に同一にし、ばらつきのない分取ができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる分取装置および分取方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態)
図1は、この発明にかかる分取装置1の概要構成を示すブロック図である。図1に示すように、この分取装置1は、分取動作を制御する制御部2と、容器11に収容された液体12を分取する分取具9と、分取具9の軸と平行な軸を有し、分取具9を支持するとともに回転運動を直進運動に変換する回転直進変換機構(リード)8と、リード8の直進方向を案内するガイド6と、リード8に回転運動を伝達するボールネジ7と、ボールネジ7を回転させるモータ5と、分取具9の軸を偏芯させて鉛直方向を補正する鉛直補正器4と、鉛直補正器4を支持するアーム13と、分取具9の鉛直方向を検出する鉛直検出器3と、鉛直補正器を駆動する鉛直補正器駆動部14と、モータ5を駆動するモータ駆動部5とを有する。また、分取具9は、液体を保持する貫通孔10を有し、この貫通孔10の軸は、分取具9の軸に対して垂直である。
【0014】
鉛直検出器3は、モータ5上部に取付けられ、例えば、ジャイロセンサ等によって実現され、鉛直補正器4は、アーム13によって支持されるとともにモータ5の軸を偏芯させるとともにボールネジ7を介して連結された分取具9の軸を偏芯させる。
【0015】
制御部2は、鉛直検出部20と、鉛直制御部21と、モータ制御部22とを有する。鉛直検出器3は、鉛直検出器3から検出信号S1を入力し、分取具9が液体12の液面に対して鉛直であるか否かを検出する。鉛直補正器駆動部11は、制御信号S2を出力し、分取具9が液体12の液面に対して鉛直となるように鉛直補正器4を駆動する。モータ駆動部12は、モータ5に駆動信号S5を出力し、モータ5を回転させ、リード8を介して分取具9を昇降させる。
【0016】
つぎに、この自動分取装置1の分取動作について説明する。図2は、制御部2が分取動作を制御する手順を示すフローチャートである。図2に示すように、まず、制御部2は、液体12の分取指示を入力すると(ステップS101)、制御部2のモータ制御部22は、モータ駆動部15を介してモータ5を回転させ、リード8を介して分取具9を下降させ、貫通孔10に液体12を保持させる(ステップS102)。
【0017】
その後、制御部2に鉛直検出器3から検出信号S1が入力され(ステップS103)、制御部2の鉛直検出部20は、この検出信号S1をもとに分取具9の軸と液面とが所定の角度θth以下であるか否かを判断し、分取具9が液体12の液面に対して鉛直になっているか否かを判断する(ステップS104)。この所定の角度θthは、分取具9が鉛直に引上げられた場合、開口部に形成される液面の形状が変化しない範囲である。検出信号S1によって、分取具9の軸と液体12の液面とが所定の角θth以下であると判断された場合(ステップS104,Yes)、制御部2のモータ制御部22は、モータ駆動部15を介してモータ5を回転させ、リード8を介して分取具9を上昇させ、貫通孔10を液体から引上げる(ステップ105)。
【0018】
一方、検出信号S1によって、分取具9の軸と液面とが所定の角度θthを超えていると判断された場合(ステップS104,No)、制御部2の鉛直制御部2は、鉛直補正器駆動部14を介して鉛直補正器4を駆動し、分取具9の軸と液面とが所定の角度θth以下となるように補正する(ステップS106)。この補正によって、分取具9は、液面に対して鉛直となり、貫通孔10の開口部に形成される液面の形状が同一となる。この結果、正確、かつ再現性の良い分取が行なえる。
【0019】
ここで、本発明にかかる分取装置1によって、液面に対して分取具9を鉛直方向に沿って引上げた場合と、鉛直方向に沿わずに引上げた場合とについて説明する。図3は、この分取具9を鉛直方向に沿って引上げた場合を示す貫通孔10の拡大断面図である。図3に示すように、貫通孔10の開口部が液面から同時に離脱するため、開口部に形成されるメニスカスが同じになるとともに開口部に形成される液面の形状が同一となる。
【0020】
図4は、この分取具9を鉛直方向に沿わずに引上げた場合を示す拡大断面図である。図4に示すように、貫通孔10の開口部が液面から同時に離脱しないため、開口部に形成されるメニスカスが異なるとともに開口部に形成される液面の形状が異なる。また、分取具9を引上げる度に異なる角度で引上げると、分取量がばらつく。
【0021】
この実施の形態では、貫通孔10の両端の開口部の形状および面積を同じに形成し、かつ貫通孔の軸と垂直な軸を有する分取具9を液体12に浸漬させた後、分取具9の姿勢を補正し、液面に対して常に鉛直方向に引上げることによって、ばらつきのない分取ができる。
【0022】
上述の実施の形態では、分取具9の先端が矩形状の板部材であったが、図5に示すように、分取具9Aの先端をテーパ状に形成し、分取具9Aを液体12から引上げた際に分取具9Aからの液切れを良くするようにしている。液切れを良くすると、貫通孔10A以外に液体12が残留しないため、正確な分取が行なえる。
【0023】
また、図6に示すように、分取具9Bを円筒状に形成するとともに先端部を円錐状に形成し、貫通孔10Bをこの円錐状の斜面に形成すると、分取具9B全体からの液切れを良くするばかりでなく、貫通孔10Bからの液切れも良くでき、より正確な分取が行なえる。
【0024】
なお、この実施の形態では、モータ5とボールネジ7とを用いて分取具9を昇降させていたが、リニアモータ等を用いて昇降させてもよい。また、液面の水平を検知する水平検知器等をさらに用いて液面と分取具9との鉛直関係をより正確となるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施の形態にかかる分取装置の概要構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態にかかる分取動作の動作手順を示すフローチャートある。
【図3】引上げ方向と鉛直方向とが同じ場合の分取具を示す拡大断面図である。
【図4】引上げ方向と鉛直方向とが異なる場合の分取具を示す拡大断面図である。
【図5】この発明の実施の形態にかかる分取具の外観を示す斜視図である。
【図6】この発明の実施の形態にかかる分取具の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 分取装置
2 制御部
3 鉛直検出器
4 鉛直補正器
5 モータ
6 ガイド
7 ボールネジ
8 リード
9,9A,9B 分取具
10,10A,10B 貫通孔
11 容器
12 液体
13 アーム
14 鉛直補正器駆動部
15 モータ駆動部
20 鉛直検出部
21 鉛直制御部
22 モータ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の微量の液体を分取する分取装置において、
細長形状の部材の先端に、前記液体を保持する液体保持部である貫通孔を有し、この貫通孔の両端の開口部の形状および面積が同じであるとともにこの貫通孔の軸と垂直な軸を有する分取具と、
前記分取具を昇降させる昇降手段と、
前記分取具の軸が前記液体の液面に対して鉛直であるか否かを検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した検出結果をもとに前記分取具の姿勢を可変し、前記分取具の軸が前記液体の液面に対して鉛直となる補正を行なう補正手段と、
前記昇降手段によって前記液体から前記分取具を上昇させる場合、前記補正手段によって前記分取具の軸を前記液体の液面に対して鉛直となる制御を行う制御手段と、
を備えたことを特徴とする分取装置。
【請求項2】
前記昇降手段が昇降する軸と前記分取具の軸とは平行であり、前記補正手段は、前記昇降手段の軸を偏芯させることによって前記分取具の軸を鉛直に補正することを特徴とする請求項1に記載の分取装置。
【請求項3】
前記分取具の先端は、テーパ状に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の分取装置。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記分取具の先端が円錐状に形成された該円錐斜面に設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の分取装置。
【請求項5】
所望の微量の液体を分取する分取方法において、
細長形状の部材の先端に、前記液体を保持する液体保持部である貫通孔を有し、この貫通孔の両端の開口部の形状および面積が同じであるとともにこの貫通孔の軸と垂直な軸を有する分取具を前記液体の液面下に下降させる下降ステップと、
前記分取具を前記液体の液面上に引上げる場合、前記分取具の軸が前記液体の液面に対して鉛直であるか否かを検出し、検出した検出結果をもとに前記分取具の姿勢を可変し、前記分取具の軸が前記液体の液面に対して鉛直となる補正を行なう補正制御ステップと、
を含むことを特徴とする分取方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate