説明

分合流部のトンネルおよび分合流部構築方法

【課題】 施工途中に覆工体を安定して支えるために配置される仮設支保材12、13の配置方法、及び、土水圧の作用による分岐トンネル2の滑動に配慮して分合流部3のトンネル躯体80の構造を比較的薄く、経済的に構築すること、作業効率の向上を図ることを課題とする。
【解決手段】 本線トンネル1から分岐トンネル2に分岐する分合流部3のトンネルにおいて、前記本線トンネル1から前記分岐トンネル2の上下に配設される山留材6、7と、本線トンネル1の覆工体を補強する第一の補強部材10、12、14aと、分岐トンネル2の覆工体を補強する第二の補強部材13、14bと、前記山留材6、7を支持する第三の補強部材11、15とを有し、前記分合流部3の外郭70の内側にコンクリートが打設されて、前記補強部材が埋設されて、前記分合流部3のトンネル躯体80が構成され、該分合流部3のトンネル躯体80の内側に分岐空間100が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分岐トンネルが本線トンネルから分岐する分合流部のトンネル及び分合流部分の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、首都圏や都市部等の住宅の密集した地域の渋滞解消の目的で、多くの道路が計画、又は、建設されている。それらの道路は、地上の用地取得が困難なため、地下に建設されることが増えてきている。従来、シールド機で地下高速道路等のトンネルの分合流部を構築する場合、地上より開削工法によって構築していた。また、このような開削工法を使わずにトンネルを構築できる従来の技術として、特許文献に記載のあるものとしては次の(1)の1件を挙げる。
(1)特許文献1(特開2004−27711号公報)
【0003】
既設のシールドトンネルの側壁の一部を、トンネルの半径方向に押出可能な少なくとも一つの押出セグメントからなる押出セグメント部を軸方向に複数並べることで形成する。そして、これら押出セグメント部毎に、押出セグメント部の内壁側の周縁部に、押出方向と逆方向に突出する筒状部を接合して箱状のブロック体を形成する。次いで、ブロック体を半径方向に既設のシールドトンネルの側壁からそれぞれ押し出す。そして、これらを軸方向に連接し、連接することで形成されるブロック体同士を仕切る仕切り壁部を撤去して、柱を設ける。軟弱地盤においても既設のシールドトンネルを容易に拡幅する。
【特許文献1】特開2004−27711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のものにあっては、トンネル分合流部をシールド工法によって構築するため、供用中の道路を交通規制する必要は無いものの、トンネル分合流部は、車両が合流分流するという機能上、地下に大規模な空間を構築することになり、その躯体構造は非常に厚くなっていた。もっとも、それ以前に、特許文献1は、主に軟弱地盤でなければ、押出セグメントを地下空間に突出できず、拡幅工法としては、用途限定されてしまうと言う欠点があった。
【0005】
そこで、この発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、施工途中に覆工体を安定して支えるために配置される仮設支保材の配置方法と、同じく施工途中に土水圧の作用によるトンネルの滑動に配慮してトンネル分合流部の躯体構造を比較的薄く、経済的に構築すること、作業効率の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
係る課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、本線トンネルから分岐トンネルに分岐する分合流部のトンネルにおいて、前記本線トンネルから前記分岐トンネルの上下に配設される山留材と、本線トンネル覆工体を補強する第一の補強部材と、分岐トンネル覆工体を補強する第二の補強部材と、前記山留材を支持する第三の補強部材とを有し、前記本線トンネル覆工体の一部、前記分岐トンネル覆工体の一部、および、前記山留材、で形成された分合流部外郭の内側にコンクリートが打設されて前記第一、第二及び第三の補強部材が埋設されて分合流部トンネル躯体が構成され、該分合流部トンネル躯体内側に分岐空間が形成されたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記山留材としてパイプルーフを使用し、該パイプルーフと前記コンクリートを一体構造としたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加えて、前記分岐トンネル覆工体は矩形であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の構成に加えて、前記本線トンネルの前記分岐空間内に、中柱を構築したことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の構成に加えて、前記本線トンネル覆工体の一部の内側で、前記分岐空間の床面の下側又は、前記分岐空間の天井面の上側に、空間部を形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、本線トンネルから分岐トンネルに分岐する分合流部を構築する方法において、シールド機で前記本線トンネルを構築し、前記分岐トンネルを前記本線トンネルに沿って構築し、前記本線トンネルから前記分岐トンネル覆工体の上下に山留材を配設し、前記本線トンネル覆工体を補強する第一の支保材と前記分岐トンネル覆工体を補強する第二の支保材と前記山留材を支持する第三の支保材とを設け、前記本線トンネル覆工体および前記分岐トンネル覆工体の一部を解体し、該覆工体の解体されていない一部と前記上下の山留材で囲まれた内側にコンクリートを打設して分岐空間を形成すると共に、該分岐空間内に露出する前記各支保材を除去して分合流部を構築したことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の構成に加えて、前記分岐トンネル覆工体外側の地盤に向けてグランドアンカーを設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記、請求項1に記載の発明によれば、本線トンネルから分岐トンネルに分岐する分合流部のトンネルにおいて、前記本線トンネルから前記分岐トンネルの上下に配設される山留材と、本線トンネル覆工体を補強する第一の補強部材と、分岐トンネル覆工体を補強する第二の補強部材と、前記山留材を支持する第三の補強部材とを有し、前記本線トンネル覆工体の一部、前記分岐トンネル覆工体の一部、および、前記山留材、で形成された分合流部外郭の内側にコンクリートが打設されて前記第一、第二及び第三の補強部材が埋設されて分合流部トンネル躯体が構成され、該分合流部トンネル躯体内側に分岐空間が形成されたことを特徴とするので、トンネル躯体構造を薄く構築できる。また、施工途中でもトンネル覆工体を安定させることが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加えて、前記山留材としてパイプルーフを使用し、該パイプルーフと前記コンクリートを一体構造としたことを特徴とするので、強固な水平防護工をするため、仮設構造体としてではなく、本体構造の一部として利用することで、仮設資材を減量して、トンネル分合流部を構築することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の効果に加えて、前記分岐トンネル覆工体は矩形であることを特徴とするので、前記山留材たるパイプルーフを施工し易く、矩形セグメントの外側垂直部材の覆工体を構造体の一部として使用することで、内空を建築限界一杯まで有効に活用できるため、分岐トンネルの外形を小さくすることが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れか1項に記載の効果に加えて、前記本線トンネルの前記分岐空間内に、中柱を構築したことを特徴とするので、打設するコンクリートの頂版及び底版の分岐トンネル幅方向における支持柱たる中柱の無い部分であるスパン長を短くでき、構造上頑強になる。すなわち、頂版厚と底版厚とを低減でき、躯体のコンクリートボリュームを大幅に減少することができる。しかも、頂版厚と底版厚を抑えることにより、分岐トンネルの断面の縦径を小さくでき、コスト圧縮に寄与する。結局、掘削ボリューム、コンクリート打設ボリューム、鉄筋等の使用量も低減できるため、全工費の圧縮、全工期の短縮に繋がる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の何れか1項に記載の効果に加えて、前記本線トンネル覆工体の一部の内側で、前記分岐空間の床面の下側又は、前記分岐空間の天井面の上側に、空間部を形成したことを特徴とするので、該空間部のうち前記分岐空間の天井面の上側には、換気ダクトや消防用出水管等を、前記分岐空間の床面の下側には、床版、非難施設、共同溝等の付属構造物を設けて利用できる。また、前記空間部のコンクリートボリュームが不要になるので、工費及び工期の節減にもなる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、本線トンネルから分岐トンネルに分岐する分合流部を構築する方法において、シールド機で前記本線トンネルを構築し、前記分岐トンネルを前記本線トンネルに沿って構築し、前記本線トンネルから前記分岐トンネル覆工体の上下に山留材を配設し、前記本線トンネル覆工体を補強する第一の支保材と前記分岐トンネル覆工体を補強する第二の支保材と前記山留材を支持する第三の支保材とを設け、前記本線トンネル覆工体および前記分岐トンネル覆工体の一部を解体し、該覆工体の解体されていない一部と前記上下の山留材で囲まれた内側にコンクリートを打設して分岐空間を形成すると共に、該分岐空間内に露出する前記各支保材を除去して分合流部を構築したことを特徴とするので、トンネル躯体構造を薄く構築できる。また、施工途中でもトンネル覆工体を安定させることが可能となる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、請求項6に記載の効果に加えて、前記分岐トンネル覆工体外側の地盤に向けてグランドアンカーを設置したことを特徴とするので、山留めが確実にでき、土水圧による滑動を防止でき、本線トンネルと分岐トンネル間の土砂掘削、覆工体の解体時に、水平支保材を直ぐに施工する必要が無くなり、作業効率の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明を実施するための最良の形態について説明する。
〔発明の実施の形態1〕
【0021】
図1乃至図13は、この発明の実施の形態1に係る図で、施工工程を示している。
【0022】
図1に示すように、この実施の形態1に係る、本線トンネル1と分岐トンネル2とが分合流し、当該トンネル分合流拡幅部3とその周辺の路線上を走行する車の流れは、上方から見た平面図で矢印のような流れになる。図1(a)は、本線トンネル1に分岐トンネル2(ONランプトンネル)が合流する合流部路線平面図で、図1(b)は、本線トンネル1から分岐トンネル2(OFFランプトンネル)が分流する分流部路線平面図である。
【0023】
図2には、本線トンネル1と分岐トンネル2が並列走行するトンネル分合流拡幅部3とその周辺の平面図が示されている。この分合流拡幅部3の幅が最大値になる本線トンネル分岐幅最大端部4から、本線トンネル分岐発端部5までの部分が、トンネル分合流拡幅部3である。この発明は、この分合流拡幅部3に適用したものであり、この分合流拡幅部3の路線長は、約200mである。
【0024】
また、図3及び図13には、図2のB−B線に沿うトンネル分合流拡幅部3の横断面図が示されている。このトンネル分合流拡幅部3の構成は、「山留材」である頂版パイプルーフ6及び底版パイプルーフ7をそれぞれ内蔵する、分岐部頂版8及び分岐部底版9によって、上下から挟まれ、「山留材を支持する第三の支保材」である分岐部側壁支保材11を補強部材として内蔵する分岐部側壁17、及び本線部側壁16によって、両側から挟まれる内部空間から成り、分岐部頂版8の上側及び分岐部底版9の下側の地盤は、それぞれ上側地盤18及び下側地盤19であり、止水性及び地盤強化の必要性等に応じて、それぞれ地盤改良されている。
【0025】
一方、分岐部側壁17の内部には、分岐部頂版8と分岐部底版9とを支える支保材としての役割を果たす、分岐部側壁支保材11が補強部材として内蔵されている。勿論、分岐部側壁17の外側に残した山留材の役割をした分岐トンネル2の覆工体の更に外側は、地下水の浸入が無い地盤条件では、補足地盤改良をする必要が無いが、浸水が有る場合は、補足地盤改良を施し、補足改良した地盤20を設ける。
【0026】
更に、「本線トンネル1の覆工体を補強する第一の支保材」である本線部側壁支保材10、本線部垂直支保材12及び本線部水平支保材14a、また、「分岐トンネル2の覆工体を補強する第二の支保材」である分岐部垂直支保材13及び分岐部水平支保材14bが配置されている。
【0027】
図10から図13に示すように、施工途中、第一の支保材である本線部側壁支保材10、本線部垂直支保材12、及び、本線部水平支保材14aは、本線トンネル1の覆工体を支持するが、本線部側壁支保材10及び本線部水平支保材14aはコンクリートに埋設し、補強部材となるのに対し、本線部垂直支保材12はコンクリート打設後は撤去する。第二の支保材である分岐部垂直支保材13と分岐部水平支保材14bは、分岐トンネル2の覆工体を支持し、コンクリート打設後、分岐部垂直支保材13は撤去され、分岐部水平支保材14bはコンクリートに埋設され、補強部材となる。第三の支保材である分岐部側壁支保材11と山留用垂直支保材15は、「山留材」である頂版パイプルーフ6及び底版パイプルーフ7を支持するが、分岐部側壁支保材11はコンクリートに埋設し、補強部材となるのに対し、山留用垂直支保材15はコンクリート打設後、撤去して完成する。
【0028】
ここで、図4に示すように、図3のC−C線に沿う断面図、すなわち、頂版パイプルーフ6を内蔵する分岐部頂版8のトンネル長手方向における断面構造を説明する。頂版パイプルーフ6は、パイプ21とジョイント22とからなり、パイプ21同士はフック型のジョイント22で連結されている。このジョイント22はパイプ21の長手方向側面に間断なく設置されており、頂版パイプルーフ6を構築するに当り、パイプ21を順次脇にジョイント22を噛み合せながら容易にスライドさせて並べることによりルーフ状になるように工夫されている。このように連続して組み立てられた頂版パイプルーフ6は、地中で地盤を支える鋼材であり、その各パイプ21の内部はコンクリート等の充填剤23を打設できるよう、空洞となっている。従来は前記空洞にコンクリート等は充填しなかった。しかし、更に、より強度を増し、折り曲がりにくくするために、パイプ21の内空には、地盤に挿通した後にH形鋼材24を鉄骨として挿入し、コンクリートを充填打設する。型枠29を仮設後、分岐部頂版8、分岐部底版9及び分岐部側壁17及び本線部側壁16にコンクリートを打設して、分合流部トンネル躯体80を構築する。なお、頂版パイプルーフ6と本線部水平支保材14との間の連結材25は、全てのパイプ21に間断なく設置するのではなく、1本置きの如く断続的に設置することができる。コンクリートが硬化し、分岐部頂版8を構築し終えたら、型枠29を取り外す。
【0029】
同様に、底版パイプルーフ7を内蔵する分岐部底版9のトンネル長手方向における断面構造は、これとは上下逆転して構築する。
【0030】
次に、パイプルーフ工法によって本線トンネル1と分岐トンネル2とを地中にて連結する施工手順について説明する。
《本線トンネル1内に第一の支保材10、12、14aを構築》
【0031】
図5に示すように、本線シールド機26が本線トンネル1を掘進中に、「第一の支保材」である本線部水平支保材14a、本線部垂直支保材12及び本線部側壁支保材10が設置され、これら第一の支保材14a、12及び10構築時に図示しない作業架台も構築される。この本線部水平支保材14aと本線部側壁支保材10は、トンネル分合流拡幅部3の構築時に鉄骨として使用することができる。
《本線トンネル1内より上側地盤18、下側地盤19の改良を施す》
【0032】
図6に示すように、分岐トンネル2が施工される予定の周辺地山に、殊に分岐トンネル2の覆工体上下に地盤18、19の地盤改良が、止水性及び地盤強度等を増した地盤にするために同時に又は順次施工される。従って、湧水を伴わない強固な地盤では、地盤改良規模を小さくでき、全く湧水を伴わなければ地盤改良が不要となる場合がある。
《分岐トンネル2を本線トンネル1に近接させて施工する》
【0033】
図7に示すように、分岐シールド機27で、分岐トンネル2が本線トンネル1の隣に離隔して構築される。分岐トンネル2が本線トンネル1に近接して施工されることで、本線トンネル1の覆工体へ作用する分岐トンネル2からの裏込め圧については、本線トンネル1内に構築・設置された第一の支保材である本線部水平支保材14a、本線部垂直支保材12及び本線部側壁支保材10で受けることができる。分岐シールド機27をトンネル分合流拡幅部3の区間が確保できる位置まで掘進させ、分岐トンネル2を構築し終える。
《頂版パイプルーフ6及び底版パイプルーフ7を設置する》
【0034】
図8に示すように、地盤改良された地盤18、19中に、それぞれ頂版パイプルーフ6,底版パイプルーフ7が水平方向に本線トンネル1内から構築される。頂版パイプルーフ6、底版パイプルーフ7を構築するための掘削方法は、ケーシング内を電動モータで回転させながら回転軸方向に押し込むスクリューオーガ式で、掘削すると共にケーシングを圧入ジャッキで押し込む。頂版パイプルーフ6、底版パイプルーフ7は、上下同時に又は順次施工する。頂版パイプルーフ6、底版パイプルーフ7は、ジョイント22を介して隣接するパイプ21と連結しながら地盤改良された地盤18、19中に挿通していく。
《分岐トンネル2内より分岐トンネル2の覆工体外側を地盤改良する》
【0035】
図9に示すように、分岐トンネル2内から、当該覆工体の外側に向けて地盤改良が施され、地盤20が改良される。また、止水性を高める必要があれば補足地盤改良を施こす。
《分岐トンネル2内に第二の支保材13を構築する》
【0036】
図10に示すように、分岐部垂直支保材13が分岐トンネル2内に構築される。
《本線トンネル1及び分岐トンネル2内に第三の支保材15、11を構築する》
【0037】
図10に示すように、山留用垂直支保材15及び分岐部側壁支保材11が本線トンネル1及び分岐トンネル2内に構築される。これらは、分岐トンネル2の覆工体の一部を解体し、内部地山50の掘削前に行う。このうち分岐部側壁支保材11は、分岐トンネル2内に残って、トンネル分合流拡幅部3の躯体構造の一部となる。頂版パイプルーフ6の先端部の分岐トンネル2の覆工体の一部を解体し分岐部側壁支保材11と結合し、底版パイプルーフ7の先端部の分岐トンネル2の覆工体の一部を解体して分岐部側壁支保材11とを結合し、頂版パイプルーフ6と底版パイプルーフ7の本線トンネル1側と山留用垂直支保材15を結合する。これにより本線トンネル1、分岐トンネル2及びパイプルーフ6、7と一体に定着した分合流部外郭70の構造体を構築する。
《本線トンネル1及び分岐トンネル2の覆工体の一部を撤去する》
【0038】
図11に示すように、覆工体の一部を撤去する作業は、上部より順次行い、内部地山50の掘削後迅速に本線部水平支保材14aと分岐部水平支保材14bを連結する。これは、覆工体の解体に伴い分合流部外郭70の構造体を維持するため順次行う。図11(a)には、トンネル分合流拡幅部3を構築した状態の、トンネル分合流拡幅部3の分岐幅最大端部4の断面図を、図11(b)には、平面図を示す。但し、図11では、妻側の地盤改良の範囲は省略している。
《分合流部トンネル躯体80を構築する》
【0039】
図12に示すように、分合流部トンネル躯体80が構築される。躯体構造は、鉄骨で、頂版パイプルーフ6、底版パイプルーフ7と本線トンネル1及び分岐トンネル2の覆工体とが連結し、一体化する。頂版パイプルーフ6のパイプ21内にはH形鋼材24を配置し、分岐部頂版8へコンクリートを打設する際にパイプ21内部にもコンクリート等の充填剤23を充填する。勿論、底版パイプルーフ7についても同様である。コンクリートの打設は、分岐部底版9、分岐部側壁17、本線部側壁16及び分岐部頂版8の順に行う。このとき支保材として仮設した本線部水平支保材14a、分岐部水平支保材14b、分岐部側壁支保材11及び本線部側壁支保材10を、分合流部トンネル躯体80の補強部材として利用し、分岐部頂版8、本線部側壁16、分岐部側壁17及び分岐部底版9等と一体化して分合流部トンネル躯体80を構築する本線部水平支保材14a、分岐部水平支保材14b、分岐部側壁支保材11及び本線部側壁支保材10をコンクリートの補強部材として利用可能なため、分合流部トンネル躯体80の構築厚を薄くすることができる。また、支保材の解体作業を少なくすることができる。
《分合流部トンネル躯体80内側の分岐空間100内にある支保材12、13、15を撤去する》
【0040】
図13に示すように、分合流部トンネル躯体80のコンクリートが養生され、硬化し構築された後、分岐空間100内にある無用になった本線部垂直支保材12、分岐部垂直支保材13及び山留用垂直支保材15を撤去し、分岐空間100を構築する。
【0041】
この発明の実施の形態1における分岐空間100の完成図を図13に示す。
【0042】
トンネル分合流拡幅部3は、分岐部頂版8、分岐部底版9、本線部側壁16及び分岐部側壁17で囲まれている分岐空間100を有しており、また、仮設構造体である支保材10、11、14a、14bと頂底版パイプルーフ6、7等の鋼材を適切に配置・結合することにより、本体構造の一部として利用できるので、無用になるはずの仮設資材を減量できる。そして、その結果、水平防護を含む強度が向上するので、頂版厚や底版厚を薄くできる。
〔発明の実施の形態2〕
【0043】
図3中の一点鎖線で示される部分及び図14乃至図17は、この発明の実施の形態2に係る図で、施工工程を示している。
【0044】
本線トンネル1と分岐トンネル2間に介在する内部地山たる土砂50を掘削することから、土水圧の作用により、分岐トンネル2が本線トンネル1側へ滑動する場合がある。このため水平支保材を土砂50の掘削とほぼ同時に早期構築する必要があり、効率的な作業の妨げになっていた。本発明は、図3中の一点鎖線で示されるように、分岐部側壁17の外側に向けて、残存する分岐トンネル2の覆工体の内側から放射状にグランドアンカー30が配置され、グランドアンカー30とそれが張り巡らされた地山が一体となり、分岐トンネル2の滑動を抑制できるので、分岐部水平支保材14bの速やかな施工が不必要になり、施工性が向上する。
《分岐トンネル2内よりグランドアンカー30を設置》
【0045】
図14に示すように、グランドアンカー30が分岐トンネル2の覆工体の内側から外側に向けて改良した地盤20を突き抜けて、地山に張り巡らされ、設置される。
《分岐トンネル2内に第二の支保材13を構築》
【0046】
図15に示すように、分岐トンネル2の矩形覆工体の外側垂直部材を支保材の一部として使用できる。これは、実施の形態1の図10で示した場合と比べて、グランドアンカー30が土水圧による滑動を防止するため、その分、分岐部水平支保材14bの設置は少なくても済む。
《本線トンネル1及び分岐トンネル2の覆工体の一部を撤去し、拡幅施工する》
【0047】
図16に示すように、拡幅作業が進められる。覆工体の一部を撤去する拡幅作業は、上部より順次行い、適宜分岐部水平支保材14bを連結する。妻部は、上方からの掘削と共に山留めを行い、構築する。但し、図16では、妻側の地盤改良の範囲は省略している。
《分合流部トンネル躯体80を構築》
【0048】
図17に示すように、分合流部トンネル躯体80を構築している。躯体構造は、頂版パイプルーフ6、底版パイプルーフ7と本線トンネル1及び分岐トンネル2の覆工体とが連結し、一体化して、分合流部外郭70となる。頂版パイプルーフ6のパイプ21内にはH形鋼材24を配置し、分岐部頂版8コンクリート打設時にパイプ21内部にもコンクリートを充填することが好適である。分岐部底版9についても同様である。コンクリートの打設は、下方から、分岐部底版9、分岐部側壁17、本線部側壁16、分岐部頂版8の順に行い、コンクリート硬化後、用済みの支保材を撤去し、この実施の形態2における分合流部トンネル躯体80は、完成する。
【0049】
図14乃至図17には、この発明の実施の形態2の施工工程の後半を示す。
【0050】
比較の為、この発明の実施の形態1では、頂底版パイプルーフ6及び7を本線トンネル1の覆工体内側から挿通して配置した後、止水性を確保するために、地盤20を改良し、垂直に地盤を掘削し、図10に示す分岐部側壁支保材11を構築したことを挙げるが、この発明の実施の形態2では、上記地盤20を改良後、分岐トンネル2の覆工体の外側地山に向けて、グランドアンカー30を設置すると、分岐トンネル2の滑動が抑制できるので、分岐部水平支保材14bの速やかな施工が不必要になり、施工性が向上する。更に、土水圧による分岐トンネル2の覆工体の滑動を防止できる。
《本線トンネル1及び分岐トンネル2の構築》
【0051】
図15には実施の形態2に係るトンネル分合流拡幅部3付近の断面図を示す。
【0052】
まず、実施の形態1のトンネル分合流拡幅部3の構築方法と同様に、頂版パイプルーフ6、底版パイプルーフ7、分岐部側壁支保材11及び本線部側壁支保材10を構築して、これらの内側にコンクリートを打設し、図16に示す通り、頂版パイプルーフ6、底版パイプルーフ7、分岐部側壁支保材11及び本線部側壁支保材10をそれぞれ内蔵した分岐部頂版8、分岐部底版9、分岐部側壁17及び本線部側壁16を構築する。
【0053】
ここで、図13のように、分岐部側壁17は、分岐トンネル2の覆工体の一部を補強部材の一部として分合流部トンネル躯体80に埋め込んでも良い。
〔発明の実施の形態3〕
【0054】
図18には、この発明の実施の形態3の完成断面図を示す。
【0055】
この発明の実施の形態3では、本線トンネル1と分岐トンネル2との分流・合流部には、合流車線、走行車線、追越車線の3車線が並走する場合、本線トンネル1内には、本線である走行車線と追越車線が配置され、分岐トンネル2内には、合流車線が配置され、本線トンネル1には車両の分流・合流の妨げにならないように走行車線と追越車線間に中柱31を設置する。
〔発明の実施の形態4〕
【0056】
図19には、この発明の実施の形態4の完成断面図を示す。
【0057】
この発明の実施の形態4では、本線トンネル1の覆工体の一部の内側で、且つ、分岐空間100の天井面の上側の空間部に、換気ダクト34や消防用出水管35等を設け、天板32で区切り、収納・保護したり、本線トンネル1の覆工体の一部の内側で、且つ、分岐空間100の床面の下側の空間部に、避難施設36や共同溝37等を設け、床板33で区切り、その上を歩道や車線路にする。本線トンネル1の覆工体が地山を支えているので、分岐空間100に余分なコンクリートを打設する必要が無く、このようなトンネル管理用の空間として使える。
【0058】
尚、これらの各実施の形態では本線トンネルを掘削してから分岐シールド機27を発進させ分岐トンネル2を掘削したが、分岐トンネル2を先行して構築してから本線トンネル1を掘削し、トンネル分合流拡幅部3を構築することもできる。
【0059】
更に、以上の各実施の形態では、本線シールド機26及び分岐シールド機27の断面形状は、それぞれ円形及び矩形のため頂版パイプルーフ6、底版パイプルーフ7を施工し易い旨を説明したが、矩形に限定することなく、円形、馬蹄形、円弧状矩形等どのような形状でもよく、またシールド形式も制限はなく、更に以上の実施の形態では、分岐部頂版8及び分岐部底版9のパイプルーフをスクリューオーガ式によって構築したが、シールド工法又は推進工法等で構築してもよい。
【0060】
また、本線トンネル1の供用後の車線本数は、1車線に限らず、複数車線でも構わない。
【0061】
更にまた、シールド機による拡幅工事の覆工体には、コンクリート製、ダクタイル製、鋼製等を使用したり、打設するコンクリートには、高流動性のものを使用しても良い。
【0062】
ところで、地盤改良は、止水性を増した地盤にするために施工されるものであり、湧水を伴わない地盤では、地盤改良規模を小さくでき、全く湧水を伴わなければ地盤改良が不要となる場合があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明は、土木、建築等、特に、地下高速道路等のトンネル掘削工法において、分岐部分、すなわち、地中での合・分流箇所の工法を地上からの開削工法によらずに、地下で進めることができるので、未来型地下都市構築のためのジオフロント、例えば、大深度地下計画等にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明の実施の形態1に係る本線トンネル1及び分岐トンネル2の分合流部分を示す図で、(a)は、本線トンネル1に分岐トンネル2から合流する部分を示す路線平面図、(b)は、本線トンネル1から分岐トンネル2に分流する部分を示す路線平面図である。
【図2】同実施の形態1に係る図1のトンネル分岐部たる分合流拡幅部3の平面図である。
【図3】同実施の形態1に係る図2のB−B線に沿う横断面図である。
【図4】同実施の形態1に係る図3のC−C線に沿う縦断面図である。
【図5】同実施の形態1又は2に係る本線トンネル1内に本線部水平支保材14aを設置した断面図で、(a)は、横断面図、(b)は、縦断面図である。
【図6】同実施の形態1又は2に係る本線トンネル1から地盤18、19に地盤改良した断面図で、(a)は、横断面図、(b)は、縦断面図である。
【図7】同実施の形態1又は2に係る分岐トンネル2を本線トンネル1の隣に離隔して掘削した断面図で、(a)は、横断面図、(b)は、縦断面図である。
【図8】同実施の形態1又は2に係る頂版パイプルーフ6、底版パイプルーフ7を設置した横断面図である。
【図9】同実施の形態1に係る地盤20に補足地盤改良した断面図で、(a)は、横断面図、(b)は、縦断面図である。
【図10】同実施の形態1に係る分岐トンネル2の分岐部側壁支保材11、分岐部垂直支保材13を設置した横断面図である。
【図11】同実施の形態1に係る本線トンネル1及び分岐トンネル2の一部の覆工体を撤去し、拡幅した断面図で、(a)は、横断面図、(b)は、縦断面図である。
【図12】同実施の形態1に係るコンクリートを打設し、トンネル分岐部本体を構築した横断面図である。
【図13】同実施の形態1に係る用済み支保材を撤去した横断面図である。
【図14】この発明の同実施の形態2に係るグランドアンカー30を設置した横断面図である。
【図15】同実施の形態2に係る分岐トンネル2の分岐部側壁支保材11、分岐部垂直支保材13を設置した横断面図である。
【図16】同実施の形態2に係る本線トンネル1及び分岐トンネル2の一部の覆工体を撤去し、拡幅した横断面図である。
【図17】同実施の形態2に係るコンクリートを打設し、トンネル分岐部本体を構築した横断面図である。
【図18】この発明の同実施の形態3に係る中柱31を設置した横断面図である。
【図19】この発明の同実施の形態4に係る分岐空間100を形成した横断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 本線トンネル
2 分岐トンネル(ON or OFFランプトンネル)
3 トンネル分合流拡幅部
4 本線トンネル分岐幅最大端部
5 本線トンネル分岐発端部
6 頂版パイプルーフ
7 底版パイプルーフ
8 分岐部頂版
9 分岐部底版
10 本線部側壁支保材
11 分岐部側壁支保材
12 本線部垂直支保材
13 分岐部垂直支保材
14a 本線部水平支保材
14b 分岐部水平支保材
15 山留用垂直支保材
16 本線部側壁
17 分岐部側壁
18 上側地盤
19 下側地盤
20 地盤
21 パイプ
22 ジョイント
23 充填剤
24 H形鋼材
25 連結材
26 本線シールド機
27 分岐シールド機
29 型枠
30 グランドアンカー
31 中柱
32 天板
33 床板
34 換気ダクト
35 消防用出水管
36 避難施設
37 共同溝
50 内部地山(土砂)
70 分合流部外郭
80 分合流部トンネル躯体
100 分岐空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本線トンネルから分岐トンネルに分岐する分合流部のトンネルにおいて、前記本線トンネルから前記分岐トンネルの上下に配設される山留材と、本線トンネル覆工体を補強する第一の補強部材と、分岐トンネル覆工体を補強する第二の補強部材と、前記山留材を支持する第三の補強部材とを有し、前記本線トンネル覆工体の一部、前記分岐トンネル覆工体の一部、および、前記山留材、で形成された分合流部外郭の内側にコンクリートが打設されて前記第一、第二及び第三の補強部材が埋設されて分合流部トンネル躯体が構成され、該分合流部トンネル躯体内側に分岐空間が形成されたことを特徴とする分合流部のトンネル。
【請求項2】
前記山留材としてパイプルーフを使用し、該パイプルーフと前記コンクリートを一体構造としたことを特徴とする請求項1に記載の分合流部のトンネル。
【請求項3】
前記分岐トンネル覆工体は矩形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の分合流部のトンネル。
【請求項4】
前記本線トンネルの前記分岐空間内に、中柱を構築したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の分合流部のトンネル。
【請求項5】
前記本線トンネル覆工体の一部の内側で、前記分岐空間の床面の下側又は、前記分岐空間の天井面の上側に、空間部を形成したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の分合流部のトンネル。
【請求項6】
本線トンネルから分岐トンネルに分岐する分合流部を構築する方法において、シールド機で前記本線トンネルを構築し、前記分岐トンネルを前記本線トンネルに沿って構築し、前記本線トンネルから前記分岐トンネル覆工体の上下に山留材を配設し、前記本線トンネル覆工体を補強する第一の支保材と前記分岐トンネル覆工体を補強する第二の支保材と前記山留材を支持する第三の支保材とを設け、前記本線トンネル覆工体および前記分岐トンネル覆工体の一部を解体し、該覆工体の解体されていない一部と前記上下の山留材で囲まれた内側にコンクリートを打設して分岐空間を形成すると共に、該分岐空間内に露出する前記各支保材を除去して分合流部を構築したことを特徴とする分合流部構築方法。
【請求項7】
前記分岐トンネル覆工体外側の地盤に向けてグランドアンカーを設置したことを特徴とする請求項6に記載の分合流部構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−57341(P2006−57341A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240936(P2004−240936)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000207780)大豊建設株式会社 (77)
【Fターム(参考)】