分合流部構造及び分合流部の構築方法
【課題】分合流部空間の十分な強度を確保することが可能な分合流部構造を提供することを課題とする。
【解決手段】ランプトンネル12aの本線トンネル11aとは反対の側方位置に、ランプトンネル12aより上方となるように配置された上部アンカートンネル13と、ランプトンネル12aより下方であって上部アンカートンネル13の略鉛直下方となるように配置された下部アンカートンネル15とを有すると共に、上部アンカートンネル13と下部アンカートンネル15とを連結する支保壁17を有し、本線トンネル11aのランプトンネル12a側の躯体上部と支保壁17とが、略水平方向に連続する上床桁21aにより連結されると共に、本線トンネル11aのランプトンネル12a側の躯体下部と支保壁17とが、略水平方向に連続する下床桁23aにより連結され、上床桁21aと下床桁23aとの間に本線トンネル11aとランプトンネル12aとを連通する分合流部空間20aが形成されている。
【解決手段】ランプトンネル12aの本線トンネル11aとは反対の側方位置に、ランプトンネル12aより上方となるように配置された上部アンカートンネル13と、ランプトンネル12aより下方であって上部アンカートンネル13の略鉛直下方となるように配置された下部アンカートンネル15とを有すると共に、上部アンカートンネル13と下部アンカートンネル15とを連結する支保壁17を有し、本線トンネル11aのランプトンネル12a側の躯体上部と支保壁17とが、略水平方向に連続する上床桁21aにより連結されると共に、本線トンネル11aのランプトンネル12a側の躯体下部と支保壁17とが、略水平方向に連続する下床桁23aにより連結され、上床桁21aと下床桁23aとの間に本線トンネル11aとランプトンネル12aとを連通する分合流部空間20aが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、本線トンネルとランプトンネルとが接続される分合流部の構造であって、ランプトンネルの一部が本線トンネルに隣接配置されてその間を連通する分合流部空間を備えた分合流部構造と、この分合流部空間を地中にて築造する分合流部構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路トンネルや地下鉄のトンネル等の本線トンネルと、地上と連絡するアクセストンネルや他のトンネルと連絡する連絡トンネル等のランプトンネルとが接続される分合流部では、ランプトンネルの一部が本線トンネルの横に近接配置され、その間が連通されるように横幅の広い分合流部空間が形成された分合流部構造が構築されている。
【0003】
従来、このような分合流部構造では、分合流部空間に相当する部位に対応する地上部分に開口を設け、この開口から掘削して分合流部構造を構築する開削工法が主流であった。
【0004】
しかし、開削工法では、構築中に地上の広い範囲に開口を設ける必要があり、用地取得が困難であるなどの理由で、このような開削工法を使わずに分合流部を構築する方法も提案されている。
【0005】
例えば、下記特許文献1では、既設のシールドトンネルの側壁の一部を、トンネルの半径方向に押出可能な少なくとも一つの押出セグメントからなる押出セグメント部を軸方向に複数並べることで形成し、これら押出セグメント部毎に、押出セグメント部の内壁側の周縁部に、押出方向と逆方向に突出する筒状部を接合して箱状のブロック体を形成し、ブロック体を半径方向に既設のシールドトンネルの側壁からそれぞれ押し出し、これらを軸
方向に連接し、ブロック体同士を仕切る仕切り壁部を撤去して柱を設けてシールドトンネルを拡幅させている。
【特許文献1】特開2004−27711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のものにあっては、分合流部をシールド工法によって構築するため、構築中に地上の広い範囲に開口を設ける必要はないものの、分合流部空間は、本線トンネルとランプトンネルの一部とが横に隣接配置されて、それらが連通した空間であるため、本線トンネルやランプトンネルの他の部位に比較して、横幅が格段に広くなり易い。そのため、横幅全幅において十分な強度を確保するには、掘削後に分合流部構造全体を、例えば躯体を非常に厚くしたり、縦横に多数の柱等を配置して、十分な補強を行う必要があるなど、構築に手間を要していた。
【0007】
そこで、この発明は、上記の点に鑑み、分合流部空間の十分な強度を確保することが可能な分合流部構造を提供することを課題とする。
【0008】
また、そのような分合流部構造を地上の開口部を抑えて、より安全に構築することができる分合流部の構築方法を提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する請求項1に記載の分合流部構造は、本線トンネルと、分合流部で該本線トンネルの横に配置されるランプトンネルの一部とが連通された分合流部構造において、前記ランプトンネルの前記本線トンネルとは反対の側方位置に、該ランプトンネルより上方となるように配置された上部アンカートンネルと、前記ランプトンネルより下方であって前記上部アンカートンネルの略鉛直下方となるように配置された下部アンカートンネルとを有すると共に、該上部アンカートンネルと下部アンカートンネルとを連結する支保壁を有し、前記本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体上部と前記支保壁とが、略水平方向に連続する上床桁により連結されると共に、前記本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体下部と前記支保壁とが、略水平方向に連続する下床桁により連結され、前記上床桁と前記下床桁との間に前記本線トンネルと前記ランプトンネルとを連通する分合流部空間が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の分合流部構造は、一対の本線トンネルが配設され、分合流部で一方の本線トンネルのランプトンネルの一部が前記一対の本線トンネル間に隣接して配置されると共に、他方の本線トンネルのランプトンネルの一部が前記一対の本線トンネル間に隣接して配置され、各本線トンネルとそのランプトンネルの一部とがそれぞれ連通された分合流部構造において、前記一対のランプトンネルの間に相当する位置に、該一対のランプトンネルより上方となるように配設された上部アンカートンネルと、該一対のランプトンネルより下方であって前記上部アンカートンネルの略鉛直下方となるように配設された下部アンカートンネルとを有すると共に、前記上部アンカートンネルと前記下部アンカートンネルとを連結する支保壁を有し、前記各本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体上部と前記支保壁とが、略水平方向に連続する上床桁によりそれぞれ連結されると共に、前記各本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体下部と前記支保壁とが、略水平方向に連続する下床桁によりそれぞれ連結され、前記支保壁の両側の前記上床桁と前記下床桁との間に各本線トンネルとそのランプトンネルとを連通する分合流部空間がそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の分合流部構造は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記上部アンカートンネルと前記上床桁とを連結する上部補強部材と、前記下部アンカートンネルと前記下床桁とを連結する下部補強部材とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の分合流部構造は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の構成に加え、前記本線トンネルの躯体内に、前記上床桁と連続する上床桁延長部と、前記下床桁と連続する下床桁延長部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の分合流部の構築方法は、既設の本線トンネルの横に、分合流部でランプトンネルの一部を隣接配置して連通させる分合流部の構築方法において、前記ランプトンネルの前記本線トンネルとは反対の側方となる位置に該ランプトンネルより上方となるように上部アンカートンネルを構築すると共に、前記ランプトンネルより下方であって前記上部アンカートンネルの略鉛直下方となるように下部アンカートンネルを構築し、前記分合流部で前記上部アンカートンネルと下部アンカートンネルとの間を掘削して両者を連結する支保壁を構築し、前記本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体上部と該支保壁との間を略水平方向に掘削して本線トンネルの躯体と前記支保壁とを連結する上床桁を構築し、前記本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体下部と該支保壁との間を略水平方向に掘削して本線トンネルの躯体と前記支保壁とを連結する下床桁を構築し、前記上床桁と前記下床桁との間で、前記本線トンネルの躯体を開口させて掘削し、該本線トンネルと前記ランプトンネルとを連通する分合流部空間を形成することを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の分合流部の構築方法は、既設の一対の本線トンネル間に、分合流部で一方の本線トンネルのランプトンネルの一部を隣接配置すると共に他方の本線トンネルのランプトンネルの一部を隣接配置し、各本線トンネルとそのランプトンネルの一部との間をそれぞれ連通させる分合流部の構築方法において、前記一対のランプトンネルの間に相当する位置に該一対のランプトンネルより上方となるように上部アンカートンネルを構築すると共に、前記一対のランプトンネルより下方であって前記上部アンカートンネルの略鉛直下方となるように下部アンカートンネルを構築し、前記上部アンカートンネルと下部アンカートンネルとを連結する支保壁を構築し、前記支保壁の両側で、各本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体上部と該支保壁との間を略水平方向に掘削して各本線トンネルの躯体と前記支保壁とを連結する上床桁を構築し、同じく前記支保壁の両側で、各本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体下部と該支保壁との間を略水平方向に掘削して各本線トンネルの躯体と前記支保壁とを連結する下床桁を構築し、前記支保壁の両側の前記上床桁と前記下床桁との間で、それぞれ前記本線トンネルの躯体を開口させて掘削し、該本線トンネルと前記ランプトンネルとを連通する分合流部空間をそれぞれ形成することを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の分合流部の構築方法は、請求項5又は請求項6に記載の構成に加え、前記上部アンカートンネル及び前記下部アンカートンネルとを、前記ランプトンネルと並行に地上側から掘削して構築することを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の分合流部の構築方法は、請求項7に記載の構成に加え、前記ランプトンネルと前記上部アンカートンネル及び前記下部アンカートンネルとを、地上側の共通の立坑から掘削して構築することを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の分合流部の構築方法は、請求項5乃至は8に記載の構成に加え、前記上床桁と前記下床桁との間を掘削する前に、前記上部アンカートンネルと前記上床桁とを連結する上部補強部材と、前記下部アンカートンネルと前記下床桁とを連結する下部補強部材とを構築することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の分合流部構造によれば、ランプトンネルの本線トンネルとは反対の側方位置に配置された支保壁の両側に上床桁及び下床桁が連結され、上床桁及び下床桁が本線トンネルの躯体と連結されているので、全体として一体化された躯体を構成することができ、地山の土水圧により上床桁及び下床桁に負荷される荷重を、分力として支保壁で支持することができる。また、支保壁が一対のランプトンネルより上方及び下方となるように配設された上部アンカートンネル及び下部アンカートンネルに連結されているので、支保壁に負荷される荷重に対して十分な保持性能を確保することができる。そのため、本線トンネルとランプトンネルとが連通して横幅が広くなり、強度が確保し難い各分合流部空間を十分な強度で確保することができる。
【0019】
請求項2に記載の分合流部構造によれば、一対のランプトンネルの間に相当する位置に配置された支保壁の両側に上床桁及び下床桁がそれぞれ連結され、上床桁及び下床桁が各本線トンネルの躯体と連結されているので、全体として一体化された躯体を構成することができ、地山の土水圧により上床桁及び下床桁に負荷される荷重を、分力として支保壁で支持することができる。また、一対のランプトンネルの間に対応した位置で、支保壁が一対のランプトンネルより上方配置された上部アンカートンネルと下方に配置された下部アンカートンネルとに連結されているので、支保壁に負荷される荷重に対して十分な保持性能を確保することができる。そのため、本線トンネルとランプトンネルとが連通して横幅が広くなり、強度が確保し難い各分合流部空間を十分な強度で確保することができる。
【0020】
しかも、一対のランプトンネルより上方配置された上部アンカートンネルと下方に配置された下部アンカートンネルとにより荷重の十分な保持性能が確保されている支保壁に対して、その両側にそれぞれ上床桁及び下床桁を設けているため、支保壁17を中心にして分合流部の幅方向両側のバランスを良好に確保することができ、安定した分合流部構造を構成することができる。
【0021】
請求項3に記載の分合流部構造によれば、上部アンカートンネルと上床桁とを連結する上部補強部材と、下部アンカートンネルと下床桁とを連結する下部補強部材とを備えたので、上床桁及び下床桁に土水圧により垂直方向に負荷される荷重を上部補強部材及び下部補強部材を介してより確実に支保壁に分力として分散することができ、より分合流空間の強度を確保し易い。
【0022】
請求項4に記載の分合流構造によれば、本線トンネルの躯体内に、上床桁と連続する上床桁延長部と、下床桁と連続する下床桁延長部とを備えたので、本線トンネルの躯体をも一体的に補強することができ、本線トンネルの分合流部の強度をも十分に確保し易い。
【0023】
請求項5に記載の構築方法によれば、ランプトンネルの上方及び下方に上部アンカートンネル及び下部アンカートンネルを構築すると共に、分合流部でこれらの間を掘削して両者を連結する支保壁を構築し、本線トンネルと支保壁との間を略水平方向に掘削して本線トンネルの躯体と支保壁とを連結する上床桁と下床桁とを構築し、上床桁と下床桁との間で、本線トンネルの躯体を開口させて掘削し、分合流部空間を形成するので、地上に分合流部空間に対応する開口部分を形成することなく、分合流部空間を形成することができる。同時に、本線トンネルと支保壁とを連結した上床桁と下床桁により十分な強度で補強された状態で、その間を掘削して分合流部空間を形成するため、極めて安全に分合流部空間を構築することができる。
【0024】
請求項6に記載の構築方法によれば、既設の一対の本線トンネル間の分合流部で、一対のランプトンネルの上方及び下方に上部アンカートンネル及び下部アンカートンネルを構築すると共に、一対のランプトンネル間を貫通して掘削し、両者を連結する支保壁を構築し、各本線トンネルと支保壁との間をそれぞれ略水平方向に掘削して本線トンネルの躯体と支保壁とを連結する上床桁と下床桁とをそれぞれ構築し、各上床桁と下床桁との間で、本線トンネルの躯体を開口させて掘削し、分合流部空間を形成するので、地上に分合流部空間に対応する開口部分を形成することなく、分合流部空間を形成することができる。同時に、本線トンネルと支保壁とを連結した上床桁と下床桁により十分な強度で補強された状態で、その間を掘削して分合流部空間を形成するため、極めて安全に分合流部空間を構築することができる。
【0025】
しかも、一対のランプトンネルより上方及び下方にそれぞれ配置された上部アンカートンネル及び下部アンカートンネルにより十分な強度が確保できる支保壁の両側に、それぞれ上床桁及び下床桁を設けるため、一対の分合流部空間を形成するのに一組の上下部アンカートンネル及び支保壁を構築すればよく、効率よく、分合流部空間を構築することが可能である。
【0026】
請求項7に記載の方法によれば、上部アンカートンネル及び下部アンカートンネルとを、ランプトンネルと並行に地上側から掘削して構築するので、地上側の掘削位置を近接させることができ、各トンネルの構築中に地上側に形成される開口部分を集中させて、その範囲を少なく抑えることができる。
【0027】
請求項8に記載の方法によれば、ランプトンネルと上部アンカートンネル及び下部アンカートンネルとを、地上側の共通の立坑から掘削して構築するので、各トンネルの構築中に地上側に形成される開口部分を立坑の開口とすることができ、より地上側の開口部分の範囲を少なく抑えることができる。
【0028】
請求項9に記載の方法によれば、前記上床桁と前記下床桁との間を掘削する前に、上部アンカートンネルと上床桁とを連結する上部補強部材と、下部アンカートンネルと下床桁とを連結する下部補強部材とを構築するので、上床桁及び下床桁を補強してからその間を掘削することができ、更に安全に分合流部空間を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態について図を用いて説明する。
[発明の実施の形態1]
【0030】
図1乃至図7には、この発明の実施の形態1を示す。
図1及び図2に示すように、地中に一対の3車線道路トンネルからなる本線トンネル11a、11bが配設されており、この一対の本線トンネル11a、11b間に地上Gから一対の2車線のランプトンネル12a、12bが延びている。ここでは、この一対のランプトンネル12a、12bはそれぞれ本線トンネル11a、11bに並行に構築されている。そして、分合流部10において一方の本線トンネル11aに一方のランプトンネル12aが接続され、他方の本線トンネル11bに他方のランプトンネル12bが接続されている。
【0031】
この分合流部10の分合流部構造は、一方の本線トンネル11aに、そのランプトンネル12aの一部が横に隣接するように配置されると共に、他方の本線トンネル11bに、そのランプトンネル12bの一部が横に隣接するように配置され、各本線トンネル11a、11bとそれぞれの隣接するランプトンネル12a、12bとが連通するように構築されている。
【0032】
この分合流部構造では、図3に示すように、本線トンネル11a、11bの配向方向に対して直交する断面において、一対のランプトンネル12a、12b間となる位置に配置された上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15並びにこれらを連結する支保壁17を備え、支保壁17と各本線トンネル11a、11bとの間が上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bとによりそれぞれ連結された構成を備えている。
【0033】
そして、支保壁17の両側の上床桁21a、21bと下床桁23a、23bとの間に各本線トンネル11a、11bとそのランプトンネル12a、12bとを連通する分合流部空間20a、20bがそれぞれ形成されている。ここでは、本線トンネル11a、11bの躯体は、分合流部10の全長に渡り構築されているが、ランプトンネル12a、12bの躯体は、地上G側から分合流部10までの区間構築されている。
【0034】
上部アンカートンネル13は、ランプトンネル12a、12bの間に相当する位置に、両方のランプトンネル12a、12bより上方となるように、これらに沿って並行に配設されている。言い換えれば、この上部アンカートンネル13は、一方のランプトンネル12aの本線トンネル11aとは反対の側方位置の上方であると共に、他方のランプトンネル12bの本線トンネル11bとは反対の側方位置の上方に配置されている。
【0035】
下部アンカートンネル15は、両方のランプトンネル12a、12bより上方となる位置に、上部アンカートンネル13の略鉛直下方となるように、上部アンカートンネル13に沿って並行に構築されている。
【0036】
これらの上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15の躯体は、例えば、弧状のコンクリートセグメントが周方向及び上下部アンカートンネル13、15の配向方向に多数連結された構成を有している。
【0037】
そして、支保壁17は、一対のランプトンネル12a、12bの間を貫通して構築されており、上部アンカートンネル13と下部アンカートンネル15とを連結している。この支保壁17は、例えば、多数の角筒形状の鋼殻17cが上下に積層されると共に、上下部アンカートンネル13、15の配向方向に配列及び固着され、その内部がコンクリートKで充填された構成を有している。
【0038】
さらに、その上端部17a側は、上部アンカートンネル13の躯体下部の下部開口部13aから内部に突出した状態で、上部アンカートンネル13内に打設されたコンクリートKにより固定されている。また、下端部17b側は、下部アンカートンネル15の躯体上部の上部開口部15aから内部に突出した状態で、下部アンカートンネル15内に打設されたコンクリートKにより固定されている。
【0039】
これにより、上部アンカートンネル13、下部アンカートンネル15、及び支保壁17は分合流部10の全長に渡り連続して、一体化した状態となっている。
【0040】
上床桁21a、21bは、各本線トンネル11a、11bのランプトンネル12a、12b側の躯体上部と支保壁17との間で略水平方向に連続して構築されており、各本線トンネル11a、11bの躯体上部と支保壁17の側面とに強固に連結されている。この上床桁21a、21bは、例えば、多数の角筒形状の鋼殻21cが本線トンネル11a、11bと支保壁17との横幅方向に貫通軸を向けて多数配列及び固着されると共に、上下部アンカートンネル13、15の配向方向に並べて配列及び固着されており、その内部がコンクリートKで充填された構成を有している。
【0041】
また、上床桁21a、21bの本線トンネル11a、11b側端部は、本線トンネル11a、11bの躯体側部に分合流部10の全長に渡り設けられた広幅開口部11c、11dにおいて、本線トンネル11a、11bの躯体上部に結合されている。一方、上床桁21a、21bの支保壁17側の端部は、支保壁17の鋼殻17cに結合されている。
【0042】
下床桁23a、23bも、上床桁21a、21bと同様に、各本線トンネル11a、11bのランプトンネル12a、12b側の躯体下部と支保壁17との間で略水平方向に連続して構築されており、各本線トンネル11a、11bの躯体下部と支保壁17の側面とに強固に連結されている。この下床壁23a、23bは、例えば、多数の角筒形状の鋼殻23cが本線トンネル11a、11bと支保壁17との横幅方向に貫通軸を向けて多数配列及び固着されると共に、上下部アンカートンネル13、15の配向方向に並べて配列及び固着されて、その内部がコンクリートKで充填された構成を有している。
【0043】
また、下床桁23a、23bの本線トンネル11a、11b側端部は、本線トンネル11a、11bの躯体側部に分合流部10の全長に渡り設けられた広幅開口部11c、11dにおいて、本線トンネル11a、11bの躯体下部に結合されている。一方、下床桁23a、23bの支保壁17側の端部は、支保壁17の鋼殻17cに結合されている。
【0044】
この分合流部構造においては、更に、上部アンカートンネル13と上床桁21a、21bとの間を斜めに連結する上部補強部材25a、25bと、下部アンカートンネル15と下床桁23a、23bとを斜めに連結する下部補強部材27a、27bとを備えている。
【0045】
上部補強部材25a、25b及び下部補強部材27a、27bは、上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bを支持するなどの目的で、分合流部10の全長に渡り設けられており、図1に示すように、上下部アンカートンネル13、15と本線トンネル11a、11bとの間の幅方向に配向する多数のパイプ補強材29が本線トンネル11a、11bの長手方向に並べて配置された構成を有している。
【0046】
各パイプ補強材29は、図4及び図5に示すように、鋼管31aと、この鋼管31a内に配置されて両側の端部が鋼管31aの端部より突出する鋼棒材、鉄筋、 鋼棒等からなる支持棒材31bと、鋼管31aと支持棒材31bとの間の空間に充填されたコンクリートKとを有している。このような構成を有する各パイプ補強材29は、個々に、一端が上下部アンカートンネル13、15に強固に連結され、他端が上床桁21a、21b又は下床桁23a、23bに強固に連結されている。
【0047】
上部補強部材25a、25bと上部アンカートンネル13との連結構造は、図4に示されるように、コンクリートK内部に支保壁17の上端部17aと固定された結合部材33aが埋設され、上部アンカートンネル13に形成された傾斜開口部13bに、パイプ補強材29の一方の端部が挿入され、結合部材33a内の両傾斜開口部13bと対向する位置に設けられた固定台座33bに、パイプ補強材29の鋼管31aから突出する支持棒材31bが例えばナット33c等で固定された構造となっている。
【0048】
また、上部補強部材25a、25bと上床桁21a、21bとの連結構造は、図5に示されるように、上床桁21a、21bの各本線トンネル11a、11b側の位置で、上床桁21a、21bを構成する鋼殻21c内に埋設された状態で固定台座35aが固定され、この固定台座35aにパイプ補強材29の鋼管31aから突出する支持棒材31bが例えばナット35b等で固定された構造となっている。
【0049】
一方、下部補強部材27a、27bと下部アンカートンネル15との連結構造は、図6に示されるように、コンクリートK内部に支保壁17の下端部17bと固定された結合部材37aが埋設され、下部アンカートンネル15の両本線トンネル11a、11b側に斜めに開口された傾斜開口部15bに、パイプ補強材29の一方の端部が挿入され、結合部材37a内の両傾斜開口部15bと対向する位置に設けられた固定台座37bに、パイプ補強材29の鋼管31aから突出する支持棒材31bが例えばナット37c等で固定された構造となっている。
【0050】
また、下部補強部材27a、27bと下床桁23a、23bとの連結構造は、図7に示されるように、下床桁23a、23bの各本線トンネル11a、11b側の位置で、下床桁23a、23bを構成する鋼殻23c内に埋設された状態で固定台座39aが固定され、この固定台座39aにパイプ補強材29の鋼管31aから突出する支持棒材31bが例えばナット39b等で固定された構造となっている。
【0051】
以上のような各部の連結により、この分合流部10の構造では、上下部アンカートンネル13、15、支保壁17、上床桁21a、21b、及び下床桁23a、23b全体が、一体的に連結された強固な構造体となっている。
【0052】
そして、この強固な構造体において、上床桁21a、21bと下床桁23a、23bとの間に、ランプトンネル12a、12bと、このランプトンネル12a、12bと各本線トンネル11a、11bとを連通する分合流部空間20a、20bがそれぞれ形成されている。
【0053】
なお、各本線トンネル11a、11bには、図3等に示すように、避難路41a、41bを形成してインバート43a、43bが構築されている。
【0054】
以上のようなこの実施の形態1の分合流部構造によれば、一対のランプトンネル12a、12bの間に相当する位置に配置された支保壁17の両側に、上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bがそれぞれ連結され、上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bが各本線トンネル11a、11bの躯体と連結されているので、支保壁17、上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bが全体として一体化された躯体を構成することができる。そのため、地山の土水圧により上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bに負荷される荷重を、分力として支保壁17で支持することができる。
【0055】
また、一対のランプトンネル12a、12bの間を貫通する支保壁17が一対のランプトンネル12a、12bより上方となるように配設された上部アンカートンネル13と下方となるように配設された下部アンカートンネル15とに連結されているので、支保壁17に負荷される荷重に対して十分な保持性能を確保することができる。
【0056】
そのため、本線トンネル11a、11bとランプトンネル12a、12bとが連通することにより横幅が広くなる分合流部10であっても、各分合流部空間20a、20bを十分な強度で確保することが可能である。
【0057】
しかも、一対のランプトンネル12a、12bより上方に配置された上部アンカートンネル13と下方に配置された下部アンカートンネル15とにより荷重の十分な保持性能が確保されている支保壁17に対して、その両側にそれぞれ上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bを設けるため、支保壁17を中心にして分合流部10の幅方向両側のバランスを良好に確保することができ、安定した分合流部構造を構成することができる。
【0058】
特に、この実施の形態1では、上部アンカートンネル13と上床桁21a、21bとを斜めに連結する上部補強部材25a、25bと、下部アンカートンネル15と下床桁23a、23bとを斜めに連結する下部補強部材27a、27bとを備えているので、上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bに土水圧により垂直方向に負荷される荷重を、上部補強部材25a、25b及び下部補強部材27a、27bを介してより確実に支保壁17に分力として分散することができ、より分合流部空間20a、20bの強度を確保し易い。
【0059】
次に、以上のような実施の形態1の分合流部構造の構築方法について説明する。
【0060】
この構築方法は、一対の本線トンネル11a、11bが既に配設されている状態で、各本線トンネル11a、11bのための地上からのランプトンネル12a、12bをそれぞれ構築し、分合流部10で一対の本線トンネル11a、11bの間の位置で、一方の本線トンネル11aにそのランプトンネル12aの一部を隣接配置すると共に、他方の本線トンネル11bのランプトンネル12bの一部を隣接配置し、この隣接した部分で、各本線トンネル11a、11bとそのランプトンネル12a、12bとの間を、それぞれ連通させて接続する方法である。
【0061】
まず、図1及び図2に示すように、構築しようとするランプトンネル12a、12bの地上Gの開口部12c、12dより分合流部10側の位置に、ランプトンネル12a、12bと上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15との掘削を開始するための発進立坑45を構築する。
【0062】
この発進立坑45は、ランプトンネル12a、12b、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15に共通に使用するものであり、所定の深度で構築した後、各トンネルの掘進を開始する。各トンネルの掘進を開始する順序はお互いのトンネル築造の影響を考慮して下方のトンネルから築造することが一般的であり、下部アンカートンネル15、ランプトンネル12a、12b、上部アンカートンネル13の順序で掘進を開始するのが好適である。
【0063】
ここでは、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15は、ランプトンネル12a、12bと並行に掘削する。
【0064】
なお、発進立坑45から地上部までの区間は、以後の分合流部10の築造とは別に、或いはその後に、一般的な開削工法などにより掘削して設けることができる。その際、ランプトンネル12a、12bは必ず設ける必要があるものの、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15は、その後に利用することがない限り、設なくともよい。
【0065】
この発進立坑45を深く構築すれば、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15をより短くすることが可能であり、一方、地上部までの区間を開削工法で行う場合には、発進立坑45をランプトンネル12a、12bの地上Gの開口部12c、12d側に近接させれば、地上部の開削部分を小さくすることが可能である。従って、発進立坑45の位置や深度は、施工条件、経済性等から適宜選択するのが好適である。なお、このような発進立坑45を設けることなく、各トンネルを地上部から構築することも可能である。
【0066】
上述のような発進立坑45からの分合流部10の築造では、掘進を継続することにより、ランプトンネル12a、12bを地中の分合流部10の施工位置の直前まで施工する。また、上部アンカートンネル13を分合流部10終端の上方位置まで掘削すると共に、下部アンカートンネル15を分合流部10終端の下方位置まで掘削する。このとき、掘削は同時に進行する必要はない。
【0067】
この掘削と共に、分合流部構造の構築をより安全に行うために必要とされる範囲に地盤改良を施こす。
【0068】
そして、ランプトンネル12a、12bの掘削を停止したまま、分合流部10における一対のランプトンネル12a、12bの配設予定位置の間に相当する位置に、それらの配設予定位置より上方となるように上部アンカートンネル13を掘削して構築する。また、それらの配設予定位置より下方であって、上部アンカートンネル13の略鉛直下方となるように、下部アンカートンネル15を掘削して構築する。
【0069】
これらのランプトンネル12a、12b、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15の掘削方法は推進工法、シールド工法等の適宜の方法、好ましくはシールド工法を使用して行うことができる。
【0070】
このようにして、分合流部10における上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15を掘削及び構築するのに伴ない、又は、掘削及び構築をした後に、支保壁17を構築する。
【0071】
この構築でシールド工法等の掘削を行うのに先立ち、上部アンカートンネル13、下部アンカートンネル15の補強用の支保工(図示を省略)を必要に応じて設置しておく。
【0072】
上部アンカートンネル13の躯体下部のセグメントを開口させて下部開口部13aを形成し、この下部開口部13aから鉛直下方の下部アンカートンネル15に向かって、推進工法、シールド工法、深礎工法等の方法、好ましくは推進工法により鉛直方向に掘削を行い、多数の角筒状の鋼殻17cを上下に積層して連結し、順次、支保壁17の外殻を構築する。このとき、分合流部10の一対のランプトンネル12a、12bの配設予定位置の間を、貫通するように掘削して構築する必要がある。
【0073】
下部アンカートンネル15の躯体上部のセグメントを開口させて上部開口部15aを形成し、上部開口部15aを支保壁17の外殻が貫通した状態とする。
【0074】
そして、このような施行を繰り返して多数の鋼殻17cを連結することにより、上部アンカートンネル13と下部アンカートンネル15とを連結するように、分合流部全長にわたり連続して支保壁17の外殻を構築する。
【0075】
ここでは、推進工法の場合、使用する推進機の形状は、分合流部10の断面方向は構造検討によって決定される厚さを有すると共に、分合流部10の延長方向の幅は施工性を考慮して1辺の長さが1〜3m程度のものが好適である。より広い幅の形状であっても使用可能である。
【0076】
なお、支保壁17の掘削後、推進工法等に使用した刃口あるいは推進機、押管は、鋼製部材であり、支保壁17の鋼殻コンクリートの鋼殻部材となるため、構造物として使用することができる。支保壁17を鉄筋コンクリート製とする場合には、刃口あるいは推進機、押管は外型枠材として使用し、断面内に所要の鉄筋を配筋し、コンクリートKを打設する。
【0077】
次に、上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bを、各本線トンネル11a、11b側から構築する。
【0078】
この構築では、本線トンネル11a、11bの躯体からセグメント(覆工体)を部分的に撤去して開口させる必要があるため、本線トンネル11a、11bの強度を保つために、予め本線トンネル11a、11bを支保工(図示を省略)で補強しておく。
【0079】
一対のランプトンネル12a、12bの配設予定位置より上方に所望の厚さで略水平な上床桁21a、21bを構築できるように、本線トンネル11a、11bの上床桁21a、21bに対応する部位の躯体を開口させる。
【0080】
この本線トンネル11a、11bの躯体の開口から、それぞれ水平方向に支保壁17に向けて、推進工法、シールド工法等の方法、好ましくは推進工法により掘削を行い、角筒状の多数の鋼殻21cを水平方向に順次配列させ、支保壁17まで到達させて連結する。このような施行を繰り返して多数の鋼殻21cを連結することにより、分合流部全長にわたり連続して、本線トンネル11a、11bの躯体と支保壁17とを連結するように上床桁21a、21bの外殻を構築する。
【0081】
また、一対のランプトンネル12a、12bの配設予定位置より下方に所望の厚さで略水平な下床桁23a、23bを構築できるように、本線トンネル11a、11bの下床桁23a、23bに対応する部位の躯体を開口させる。
【0082】
この本線トンネル11a、11bの躯体の開口から、それぞれ水平方向に支保壁17に向けて、推進工法、シールド工法等の方法により掘削を行い、角筒状の多数の鋼殻23cを水平方向に順次配列させ、支保壁17まで到達させて連結する。このような施行を繰り返して多数の鋼殻23cを連結することにより、分合流部全長にわたり連続して、本線トンネル11a、11bの躯体と支保壁17とを連結するように下床桁23a、23bの外殻を構築する。
【0083】
ここでは、推進工法の場合、使用する推進機の形状は、構造検討によって決定される桁高さ、幅方向は施工性を考慮して1辺の長さが1〜3m程度のものが好適である。より広い幅の形状であっても使用可能である。
【0084】
次に、上床桁21a、21bと上部アンカートンネル13の躯体との間を繋ぐ上部補強部材25a、25bと、下部補強部材27a、27bと下部アンカートンネル15の躯体とを繋ぐ下部補強部材27a、27bとを、本線トンネル11a、11b側から施行して構築する。
【0085】
多数の鋼管31aを上床桁21a、21bの本線トンネル11a、11b側から上部アンカートンネル13の傾斜開口部13bまで到達させ、その内部に支持棒材31bを配置する。支持棒材31bは、一端側を上部アンカートンネル13内で支保壁17の上端部17aに固定された結合部材33aの固定台座33bに結合し、他端側を上床桁21a、21bの固定台座35aに結合する。このような鋼管31a及び支持棒材31bを分合流部全長にわたり連続して配置することにより、上部補強部材25a、25bの鋼殻を構築する。
【0086】
また、多数の鋼管31aを下床桁23a、23bの本線トンネル11a、11b側から下部アンカートンネル15の傾斜開口部15bまで到達させ、その内部に支持棒材31bを配置する。支持棒材31bは、一端側を下部アンカートンネル15内で支保壁17の下端部17bに固定された結合部材37aの固定台座37bに結合し、他端側を下床桁23a、23b固定台座39aに結合する。このような鋼管31a及び支持棒材31bを分合流部全長にわたり連続して配置することにより、下部補強部材27a、27bの鋼殻を構築する。
【0087】
このようにして、各部の鋼殻の構築が完了した後で、各部の内部にコンクリートKを打設充填する。具体的には、支保壁17の外殻内部全体、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15内の結合部材33a、37a側及び結合部材33a、37a内部全体、上床桁21a、21bの外殻内部全体、下床桁23a、23bの外殻内部全体、上部補強部材25a、25b及び下部補強部材27a、27bの全鋼管31a内部全体である。このとき、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15内の結合部材33a、37a側にコンクリートKを打設することにより、結合部材33a、37aの結合をより強固にできる。その際、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15内全体にコンクリートKを充填することも、構造を強固にする上では有効である。
【0088】
このコンクリートKとしては高流動コンクリートが好適である。
【0089】
このコンクリートKの打設、充填して、硬化させることにより、上部アンカートンネル13、下部アンカートンネル15、支保壁17、上床桁21a、21b、下床桁23a、23b、上部補強部材25a、25b及び下部補強部材27a、27bの全パイプ補強材29が一体化された構造体が形成される。
【0090】
更に、本線トンネル11a、11b内にもコンクリートKを打設し、避難路41a、41bを有するインバート43a、43bを構築する。これは、下床桁23a、23bの構築前に行うのが好ましい。
【0091】
その後、分合流部10の本線トンネル11a、11bに沿う両端面に、多数の鋼管31aを配設して内部にコンクリートKを打設して形成される妻部パイプルーフ46を構築する。ランプトンネル12a、12bの地上側と接続する端面では各トンネルを閉塞しない範囲に構築する。この両端部では、ランプトンネルの躯体の形状が大幅に変化するため、地山が露出するからである。
【0092】
そして、このような構造を形成した後、支保壁17の両側の上床桁21a、21bと下床桁23a、23bとの間の間隙を、それぞれ、本線トンネル11a、11bの躯体のセグメント(覆工体)を撤去しながら、順次開口させて掘削することにより、ランプトンネル12a、12bと、このランプトンネル12a、12bと本線トンネル11a、11bとの連通部分を含む分合流部空間20a、20bを形成する。
【0093】
その後、妻部の構築処理や不要な支保工を撤去することにより、この実施の形態1の分合流部構造の構築を完了する。
【0094】
以上のようにして分合流部10を構築すれば、地上G側から分合流部10まで掘削して、一対のランプトンネル12a、12bの上方及び下方に上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15を構築し、両者を連結する支保壁17を構築し、各本線トンネル11a、11bと支保壁17との間を掘削して本線トンネル11a、11bの躯体と支保壁17とを連結する上床桁21a、21bと下床桁23a、23bとを構築し、上床桁21a、21bと下床桁23a、23bとの間で、本線トンネル11a、11bの躯体を開口させて掘削し、分合流部空間20a、20bを形成するので、地上Gに分合流部空間20a、20bに対応する広い範囲の開口部分を形成することなく、分合流部空間20a、20bを形成することが可能である。
【0095】
同時に、本線トンネル11a、11bと支保壁17とを連結した上床桁21a、21bと下床桁23a、23bにより十分な強度で補強された状態で、その間を掘削して分合流部空間20a、20bを形成するため、極めて安全に分合流部空間20a、20bを構築することができる。
【0096】
特に、上床桁21a、21bと下床桁23a、23bとを、それぞれ上部補強部材25a、25bと下部補強部材補強部材27a、27bにより補強してからその間の掘削を行うので、更に安全に構築することが可能である。
【0097】
しかも、一対のランプトンネル12a、12bより上方及び下方にそれぞれ配置された上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15により十分な強度が確保できる支保壁17の両側に、それぞれ上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bを設けるため、一対の分合流部空間20a、20bを形成するのに一組の上下部アンカートンネル13、15及び支保壁17を構築すればよく、効率よく、分合流部空間20a、20bを構築することが可能である。
【0098】
この構築時に、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15とを、ランプトンネル12a、12bと並行に地上G側から掘削して構築しているので、地上G側の掘削位置を近接させることができ、各トンネルの構築中に地上G側に形成される開口部分を集中させて、その範囲を少なく抑えることができる。
【0099】
特に、ここでは、ランプトンネル12a、12bと上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15とを、地上G側の共通の発進立坑45から掘削して構築しているので、各トンネル12a、12b、13、15の構築中に地上G側に形成される開口部分を発進立坑45の開口とすることができ、より地上G側の開口部分の範囲を少なく抑えることができる。
【0100】
なお、上記実施の形態1では、本線トンネル11a、11bとして道路トンネルを説明したが、地中に形成される地下鉄等の他の用途のためのトンネルであってもよい。また、ランプトンネル12a、12bとして、地上とのアクセストンネルの例について説明したが、別の本線トンネルとの間を接続するためのランプトンネルであってもこの発明を適用することは可能である。更に、このランプトンネル12a、12bは、分合流部10において各本線トンネル11a、11bに隣接配置されるものであれば、各本線トンネル11a、11bと並行して設けられていなくても適用可能である。
【0101】
さらに、上記実施の形態1では、ランプトンネル12a、12bの躯体を分合流部構造の上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bと共通にすることにより、よりシンプルな構成を採用したが、上床桁21a、21bと下床桁23a、23bとの間に、地上G側から分合流部10までの区間のランプトンネル12a、12bの躯体と同じ躯体を配設して、隣接する本線トンネル11a、11b側を開口させて、分合流部空間20a、20bや本線トンネル11a、11bと連通させることも可能である。
【0102】
また、上記実施の形態1では、上部補強部材25a、25b及び下部補強部材27a、27bが設けられた構造を採用しているが、強度を確保できる限り、これらが設けられていなくても適用可能である。
【0103】
さらに、上記の構築方法では、支保壁17の構築にあたり、上部アンカートンネル13から下部アンカートンネル15に向けて施工したが、下部アンカートンネル15から上部アンカートンネル13に向けて施工することも可能である。
[発明の実施の形態2]
【0104】
図8は、この発明の実施の形態2の分合流部構造を示す。
【0105】
この分合流部10では、本線トンネル11a、11bの躯体内に、上床桁21a、21bと連続する上床桁延長部47a、47bと、下床桁23a、23bと連続する下床桁延長部49a、49bとをそれぞれ備えている。ここでは上床桁21a、21bと上床桁延長部47a、47bとの間、下床桁23a、23bと下床桁延長部49a、49bとの間で上下の床桁構造が連続するように、鉄筋コンクリートあるいは上下床桁21a…と同様な鋼殻コンクリートにて製作されている。その他は、実施の形態1と同一である。
【0106】
このような分合流部構造では、実施の形態1と同様の効果が得られる上に、本線トンネル11a、11bの躯体内に、上床桁21a、21bと連続する上床桁延長部47a、47bと、下床桁23a、23bと連続する下床桁延長部49a、49bとを備えているので、本線トンネル11a、11bの躯体を、より一体的に構成して補強することができ、本線トンネル11a、11bの分合流部の強度をも十分に確保し易い。
[発明の実施の形態3]
【0107】
図9は、この発明の実施の形態2の分合流部構造を示す。
【0108】
上記実施の形態1、2では一対の本線トンネル11a、11b及び一対のランプトンネル12a、12bを有する分合流部構造であったが、この実施の形態2では、1本の本線トンネル11aと、この本線トンネル12aの横に配置される1本のランプトンネル12aの一部とが連通されて分合流部10が構成されている。
【0109】
即ち、この分合流部10では、ランプトンネル12aの本線トンネル11aとは反対の側方位置において、ランプトンネル12aより上方となるように上部アンカートンネル12が配置されると共に、ランプトンネル13より下方であって上部アンカートンネル12aの略鉛直下方に下部アンカートンネル15が配置され、上部アンカートンネル13と下部アンカートンネル15とが支保壁17により連結されている。
【0110】
そして、本線トンネル11aのランプトンネル12a側の躯体上部と支保壁17とが、略水平方向に延びて連続した上床桁21aにより連結され、一方、本線トンネル11aのランプトンネル12a側の躯体下部と支保壁17とが、略水平方向に延びて連続した下床桁15により連結されており、これらの上床桁13と下床桁15との間に分合流部空間20aが形成されている。
【0111】
更に、本線トンネル11aの躯体内に、上床桁21aと連続する上床桁延長部47aと、下床桁23aと連続する下床桁延長部49aとが設けられている。
【0112】
このような分合流部10の構造であっても、実施の形態1、2と全く同様の効果が得られる。
[実施の形態4]
【0113】
図10乃至図12は、この発明の実施の形態4を示す。
【0114】
この分合流部10では、支保壁17、上床桁21a、21b、及び下床桁23a、23bの掘削及び構築方法が異なる他は、実施の形態1と同様である。
【0115】
まず、実施の形態1と同様に、発進立坑45から上部アンカートンネル13、ランプトンネル12a、12b、下部アンカートンネル15の掘削を行い、ランプトンネル12a、12bを地中の分合流部10の施工位置の直前までで停止し、分合流部10に上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15を掘削して構築する。
【0116】
その後、実施の形態1では、例えば1辺の長さが1〜3mの角形の矩形推進機などを用い、例えば本線トンネル11a、11bの配向方向に対して直交する上下方向や幅方向に掘削を順次繰り返して支保壁17、上床桁21a、21b、及び下床桁23a、23bを構築していたのに対し、この実施の形態4では、一辺の長さが大きい長方形の版状推進機などを用い、例えば本線トンネル11a、11bの配向方向に沿って掘削を行うことにより、支保壁17、上床桁21a、21b、及び下床桁23a、23bの掘削及び構築を行う。
【0117】
そのような掘削及び構築を行うために、ここでは、分合流部10の施工位置の直前の位置の分合流部10内の近傍位置において、上部アンカートンネル13側から下部アンカートンネル15側に向けて掘削して版状推進機59の発進立坑51を形成する。この発進立坑51の掘進中に上床桁21a、21bに対応する位置に到達した段階で、本線トンネル11a、11bに向けて掘削し、上床桁21a、21b用の版状推進機61a、61bの発進立坑53a、53bを形成する。更に、発進立坑51が掘進して下床桁23a、23bに対応する位置に到達した段階で、本線トンネル11a、11bに向けて掘削し、下床桁23a、23b用の版状推進機63a,63bの発進立坑55a、55bを形成する。
【0118】
各版状推進機59、61a,61b,63a,63bの発進立坑51、53a、53b、55a、55bがそれぞれ形成された後に、各版状推進機59、61a,61b,63a,63bにより、本線トンネル11a、11bの配向方向に掘削することにより、支保壁17、上床桁21a、21b、及び下床桁23a、23bを構築する。
【0119】
このとき、支保壁17は上端部17aが上部アンカートンネル13内に突出すると共に、下端部17bが下部アンカートンネル15内に突出するように、それぞれの躯体を順次開口させつつ掘削及び構築を行う。また、上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bも、それぞれ本線トンネル11a、11b内に突出するように、それぞれの躯体を順次開口させつつ掘削及び構築を行う。
【0120】
そして、分合流部10全長を掘削し、各版状掘進機59、61a,61b,63a,63bを鋼殻として残留させてコンクリートKを打設して構築を完了する。その他は、実施の形態1と同様である。
【0121】
これにより、この実施の形態4の分合流部構造が構築される。そして、このようにして分合流部構造を構築しても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】この発明の実施の形態1の分合流部及びその周囲を示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1の分合流部構造を示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1の分合流部構造における上部アンカートンネルの拡大部分断面図である。
【図5】この発明の実施の形態1の分合流部構造における上部補強部材の上床桁との接合部分を示す拡大部分断面図である。
【図6】この発明の実施の形態1の分合流部構造における下部アンカートンネルの拡大部分断面図である。
【図7】この発明の実施の形態1の分合流部構造における下部補強部材の下床桁との接合部分を示す拡大部分断面図である。
【図8】この発明の実施の形態2の分合流部構造を示す断面図である。
【図9】この発明の実施の形態3の分合流部構造を示す断面図である。
【図10】この発明の実施の形態4の分合流部及びその周囲を示す平面図である。
【図11】図10のB−B断面図である。
【図12】この発明の実施の形態4の分合流部構築時を示す断面図である。
【符号の説明】
【0123】
G 地上
10 分合流部
11a、11b 本線トンネル
12a、12b ランプトンネル
13 上部アンカートンネル
15 下部アンカートンネル
17 支保壁
21a、21b 上床桁
23a、23b 下床桁
25a、25b 上部補強部材
27a、27b 下部補強部材
45 発進立坑
47a、47b 上床桁延長部
49a、49b 下床桁延長部
【技術分野】
【0001】
この発明は、本線トンネルとランプトンネルとが接続される分合流部の構造であって、ランプトンネルの一部が本線トンネルに隣接配置されてその間を連通する分合流部空間を備えた分合流部構造と、この分合流部空間を地中にて築造する分合流部構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路トンネルや地下鉄のトンネル等の本線トンネルと、地上と連絡するアクセストンネルや他のトンネルと連絡する連絡トンネル等のランプトンネルとが接続される分合流部では、ランプトンネルの一部が本線トンネルの横に近接配置され、その間が連通されるように横幅の広い分合流部空間が形成された分合流部構造が構築されている。
【0003】
従来、このような分合流部構造では、分合流部空間に相当する部位に対応する地上部分に開口を設け、この開口から掘削して分合流部構造を構築する開削工法が主流であった。
【0004】
しかし、開削工法では、構築中に地上の広い範囲に開口を設ける必要があり、用地取得が困難であるなどの理由で、このような開削工法を使わずに分合流部を構築する方法も提案されている。
【0005】
例えば、下記特許文献1では、既設のシールドトンネルの側壁の一部を、トンネルの半径方向に押出可能な少なくとも一つの押出セグメントからなる押出セグメント部を軸方向に複数並べることで形成し、これら押出セグメント部毎に、押出セグメント部の内壁側の周縁部に、押出方向と逆方向に突出する筒状部を接合して箱状のブロック体を形成し、ブロック体を半径方向に既設のシールドトンネルの側壁からそれぞれ押し出し、これらを軸
方向に連接し、ブロック体同士を仕切る仕切り壁部を撤去して柱を設けてシールドトンネルを拡幅させている。
【特許文献1】特開2004−27711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のものにあっては、分合流部をシールド工法によって構築するため、構築中に地上の広い範囲に開口を設ける必要はないものの、分合流部空間は、本線トンネルとランプトンネルの一部とが横に隣接配置されて、それらが連通した空間であるため、本線トンネルやランプトンネルの他の部位に比較して、横幅が格段に広くなり易い。そのため、横幅全幅において十分な強度を確保するには、掘削後に分合流部構造全体を、例えば躯体を非常に厚くしたり、縦横に多数の柱等を配置して、十分な補強を行う必要があるなど、構築に手間を要していた。
【0007】
そこで、この発明は、上記の点に鑑み、分合流部空間の十分な強度を確保することが可能な分合流部構造を提供することを課題とする。
【0008】
また、そのような分合流部構造を地上の開口部を抑えて、より安全に構築することができる分合流部の構築方法を提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する請求項1に記載の分合流部構造は、本線トンネルと、分合流部で該本線トンネルの横に配置されるランプトンネルの一部とが連通された分合流部構造において、前記ランプトンネルの前記本線トンネルとは反対の側方位置に、該ランプトンネルより上方となるように配置された上部アンカートンネルと、前記ランプトンネルより下方であって前記上部アンカートンネルの略鉛直下方となるように配置された下部アンカートンネルとを有すると共に、該上部アンカートンネルと下部アンカートンネルとを連結する支保壁を有し、前記本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体上部と前記支保壁とが、略水平方向に連続する上床桁により連結されると共に、前記本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体下部と前記支保壁とが、略水平方向に連続する下床桁により連結され、前記上床桁と前記下床桁との間に前記本線トンネルと前記ランプトンネルとを連通する分合流部空間が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の分合流部構造は、一対の本線トンネルが配設され、分合流部で一方の本線トンネルのランプトンネルの一部が前記一対の本線トンネル間に隣接して配置されると共に、他方の本線トンネルのランプトンネルの一部が前記一対の本線トンネル間に隣接して配置され、各本線トンネルとそのランプトンネルの一部とがそれぞれ連通された分合流部構造において、前記一対のランプトンネルの間に相当する位置に、該一対のランプトンネルより上方となるように配設された上部アンカートンネルと、該一対のランプトンネルより下方であって前記上部アンカートンネルの略鉛直下方となるように配設された下部アンカートンネルとを有すると共に、前記上部アンカートンネルと前記下部アンカートンネルとを連結する支保壁を有し、前記各本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体上部と前記支保壁とが、略水平方向に連続する上床桁によりそれぞれ連結されると共に、前記各本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体下部と前記支保壁とが、略水平方向に連続する下床桁によりそれぞれ連結され、前記支保壁の両側の前記上床桁と前記下床桁との間に各本線トンネルとそのランプトンネルとを連通する分合流部空間がそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の分合流部構造は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記上部アンカートンネルと前記上床桁とを連結する上部補強部材と、前記下部アンカートンネルと前記下床桁とを連結する下部補強部材とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の分合流部構造は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の構成に加え、前記本線トンネルの躯体内に、前記上床桁と連続する上床桁延長部と、前記下床桁と連続する下床桁延長部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の分合流部の構築方法は、既設の本線トンネルの横に、分合流部でランプトンネルの一部を隣接配置して連通させる分合流部の構築方法において、前記ランプトンネルの前記本線トンネルとは反対の側方となる位置に該ランプトンネルより上方となるように上部アンカートンネルを構築すると共に、前記ランプトンネルより下方であって前記上部アンカートンネルの略鉛直下方となるように下部アンカートンネルを構築し、前記分合流部で前記上部アンカートンネルと下部アンカートンネルとの間を掘削して両者を連結する支保壁を構築し、前記本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体上部と該支保壁との間を略水平方向に掘削して本線トンネルの躯体と前記支保壁とを連結する上床桁を構築し、前記本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体下部と該支保壁との間を略水平方向に掘削して本線トンネルの躯体と前記支保壁とを連結する下床桁を構築し、前記上床桁と前記下床桁との間で、前記本線トンネルの躯体を開口させて掘削し、該本線トンネルと前記ランプトンネルとを連通する分合流部空間を形成することを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の分合流部の構築方法は、既設の一対の本線トンネル間に、分合流部で一方の本線トンネルのランプトンネルの一部を隣接配置すると共に他方の本線トンネルのランプトンネルの一部を隣接配置し、各本線トンネルとそのランプトンネルの一部との間をそれぞれ連通させる分合流部の構築方法において、前記一対のランプトンネルの間に相当する位置に該一対のランプトンネルより上方となるように上部アンカートンネルを構築すると共に、前記一対のランプトンネルより下方であって前記上部アンカートンネルの略鉛直下方となるように下部アンカートンネルを構築し、前記上部アンカートンネルと下部アンカートンネルとを連結する支保壁を構築し、前記支保壁の両側で、各本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体上部と該支保壁との間を略水平方向に掘削して各本線トンネルの躯体と前記支保壁とを連結する上床桁を構築し、同じく前記支保壁の両側で、各本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体下部と該支保壁との間を略水平方向に掘削して各本線トンネルの躯体と前記支保壁とを連結する下床桁を構築し、前記支保壁の両側の前記上床桁と前記下床桁との間で、それぞれ前記本線トンネルの躯体を開口させて掘削し、該本線トンネルと前記ランプトンネルとを連通する分合流部空間をそれぞれ形成することを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の分合流部の構築方法は、請求項5又は請求項6に記載の構成に加え、前記上部アンカートンネル及び前記下部アンカートンネルとを、前記ランプトンネルと並行に地上側から掘削して構築することを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の分合流部の構築方法は、請求項7に記載の構成に加え、前記ランプトンネルと前記上部アンカートンネル及び前記下部アンカートンネルとを、地上側の共通の立坑から掘削して構築することを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の分合流部の構築方法は、請求項5乃至は8に記載の構成に加え、前記上床桁と前記下床桁との間を掘削する前に、前記上部アンカートンネルと前記上床桁とを連結する上部補強部材と、前記下部アンカートンネルと前記下床桁とを連結する下部補強部材とを構築することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の分合流部構造によれば、ランプトンネルの本線トンネルとは反対の側方位置に配置された支保壁の両側に上床桁及び下床桁が連結され、上床桁及び下床桁が本線トンネルの躯体と連結されているので、全体として一体化された躯体を構成することができ、地山の土水圧により上床桁及び下床桁に負荷される荷重を、分力として支保壁で支持することができる。また、支保壁が一対のランプトンネルより上方及び下方となるように配設された上部アンカートンネル及び下部アンカートンネルに連結されているので、支保壁に負荷される荷重に対して十分な保持性能を確保することができる。そのため、本線トンネルとランプトンネルとが連通して横幅が広くなり、強度が確保し難い各分合流部空間を十分な強度で確保することができる。
【0019】
請求項2に記載の分合流部構造によれば、一対のランプトンネルの間に相当する位置に配置された支保壁の両側に上床桁及び下床桁がそれぞれ連結され、上床桁及び下床桁が各本線トンネルの躯体と連結されているので、全体として一体化された躯体を構成することができ、地山の土水圧により上床桁及び下床桁に負荷される荷重を、分力として支保壁で支持することができる。また、一対のランプトンネルの間に対応した位置で、支保壁が一対のランプトンネルより上方配置された上部アンカートンネルと下方に配置された下部アンカートンネルとに連結されているので、支保壁に負荷される荷重に対して十分な保持性能を確保することができる。そのため、本線トンネルとランプトンネルとが連通して横幅が広くなり、強度が確保し難い各分合流部空間を十分な強度で確保することができる。
【0020】
しかも、一対のランプトンネルより上方配置された上部アンカートンネルと下方に配置された下部アンカートンネルとにより荷重の十分な保持性能が確保されている支保壁に対して、その両側にそれぞれ上床桁及び下床桁を設けているため、支保壁17を中心にして分合流部の幅方向両側のバランスを良好に確保することができ、安定した分合流部構造を構成することができる。
【0021】
請求項3に記載の分合流部構造によれば、上部アンカートンネルと上床桁とを連結する上部補強部材と、下部アンカートンネルと下床桁とを連結する下部補強部材とを備えたので、上床桁及び下床桁に土水圧により垂直方向に負荷される荷重を上部補強部材及び下部補強部材を介してより確実に支保壁に分力として分散することができ、より分合流空間の強度を確保し易い。
【0022】
請求項4に記載の分合流構造によれば、本線トンネルの躯体内に、上床桁と連続する上床桁延長部と、下床桁と連続する下床桁延長部とを備えたので、本線トンネルの躯体をも一体的に補強することができ、本線トンネルの分合流部の強度をも十分に確保し易い。
【0023】
請求項5に記載の構築方法によれば、ランプトンネルの上方及び下方に上部アンカートンネル及び下部アンカートンネルを構築すると共に、分合流部でこれらの間を掘削して両者を連結する支保壁を構築し、本線トンネルと支保壁との間を略水平方向に掘削して本線トンネルの躯体と支保壁とを連結する上床桁と下床桁とを構築し、上床桁と下床桁との間で、本線トンネルの躯体を開口させて掘削し、分合流部空間を形成するので、地上に分合流部空間に対応する開口部分を形成することなく、分合流部空間を形成することができる。同時に、本線トンネルと支保壁とを連結した上床桁と下床桁により十分な強度で補強された状態で、その間を掘削して分合流部空間を形成するため、極めて安全に分合流部空間を構築することができる。
【0024】
請求項6に記載の構築方法によれば、既設の一対の本線トンネル間の分合流部で、一対のランプトンネルの上方及び下方に上部アンカートンネル及び下部アンカートンネルを構築すると共に、一対のランプトンネル間を貫通して掘削し、両者を連結する支保壁を構築し、各本線トンネルと支保壁との間をそれぞれ略水平方向に掘削して本線トンネルの躯体と支保壁とを連結する上床桁と下床桁とをそれぞれ構築し、各上床桁と下床桁との間で、本線トンネルの躯体を開口させて掘削し、分合流部空間を形成するので、地上に分合流部空間に対応する開口部分を形成することなく、分合流部空間を形成することができる。同時に、本線トンネルと支保壁とを連結した上床桁と下床桁により十分な強度で補強された状態で、その間を掘削して分合流部空間を形成するため、極めて安全に分合流部空間を構築することができる。
【0025】
しかも、一対のランプトンネルより上方及び下方にそれぞれ配置された上部アンカートンネル及び下部アンカートンネルにより十分な強度が確保できる支保壁の両側に、それぞれ上床桁及び下床桁を設けるため、一対の分合流部空間を形成するのに一組の上下部アンカートンネル及び支保壁を構築すればよく、効率よく、分合流部空間を構築することが可能である。
【0026】
請求項7に記載の方法によれば、上部アンカートンネル及び下部アンカートンネルとを、ランプトンネルと並行に地上側から掘削して構築するので、地上側の掘削位置を近接させることができ、各トンネルの構築中に地上側に形成される開口部分を集中させて、その範囲を少なく抑えることができる。
【0027】
請求項8に記載の方法によれば、ランプトンネルと上部アンカートンネル及び下部アンカートンネルとを、地上側の共通の立坑から掘削して構築するので、各トンネルの構築中に地上側に形成される開口部分を立坑の開口とすることができ、より地上側の開口部分の範囲を少なく抑えることができる。
【0028】
請求項9に記載の方法によれば、前記上床桁と前記下床桁との間を掘削する前に、上部アンカートンネルと上床桁とを連結する上部補強部材と、下部アンカートンネルと下床桁とを連結する下部補強部材とを構築するので、上床桁及び下床桁を補強してからその間を掘削することができ、更に安全に分合流部空間を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態について図を用いて説明する。
[発明の実施の形態1]
【0030】
図1乃至図7には、この発明の実施の形態1を示す。
図1及び図2に示すように、地中に一対の3車線道路トンネルからなる本線トンネル11a、11bが配設されており、この一対の本線トンネル11a、11b間に地上Gから一対の2車線のランプトンネル12a、12bが延びている。ここでは、この一対のランプトンネル12a、12bはそれぞれ本線トンネル11a、11bに並行に構築されている。そして、分合流部10において一方の本線トンネル11aに一方のランプトンネル12aが接続され、他方の本線トンネル11bに他方のランプトンネル12bが接続されている。
【0031】
この分合流部10の分合流部構造は、一方の本線トンネル11aに、そのランプトンネル12aの一部が横に隣接するように配置されると共に、他方の本線トンネル11bに、そのランプトンネル12bの一部が横に隣接するように配置され、各本線トンネル11a、11bとそれぞれの隣接するランプトンネル12a、12bとが連通するように構築されている。
【0032】
この分合流部構造では、図3に示すように、本線トンネル11a、11bの配向方向に対して直交する断面において、一対のランプトンネル12a、12b間となる位置に配置された上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15並びにこれらを連結する支保壁17を備え、支保壁17と各本線トンネル11a、11bとの間が上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bとによりそれぞれ連結された構成を備えている。
【0033】
そして、支保壁17の両側の上床桁21a、21bと下床桁23a、23bとの間に各本線トンネル11a、11bとそのランプトンネル12a、12bとを連通する分合流部空間20a、20bがそれぞれ形成されている。ここでは、本線トンネル11a、11bの躯体は、分合流部10の全長に渡り構築されているが、ランプトンネル12a、12bの躯体は、地上G側から分合流部10までの区間構築されている。
【0034】
上部アンカートンネル13は、ランプトンネル12a、12bの間に相当する位置に、両方のランプトンネル12a、12bより上方となるように、これらに沿って並行に配設されている。言い換えれば、この上部アンカートンネル13は、一方のランプトンネル12aの本線トンネル11aとは反対の側方位置の上方であると共に、他方のランプトンネル12bの本線トンネル11bとは反対の側方位置の上方に配置されている。
【0035】
下部アンカートンネル15は、両方のランプトンネル12a、12bより上方となる位置に、上部アンカートンネル13の略鉛直下方となるように、上部アンカートンネル13に沿って並行に構築されている。
【0036】
これらの上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15の躯体は、例えば、弧状のコンクリートセグメントが周方向及び上下部アンカートンネル13、15の配向方向に多数連結された構成を有している。
【0037】
そして、支保壁17は、一対のランプトンネル12a、12bの間を貫通して構築されており、上部アンカートンネル13と下部アンカートンネル15とを連結している。この支保壁17は、例えば、多数の角筒形状の鋼殻17cが上下に積層されると共に、上下部アンカートンネル13、15の配向方向に配列及び固着され、その内部がコンクリートKで充填された構成を有している。
【0038】
さらに、その上端部17a側は、上部アンカートンネル13の躯体下部の下部開口部13aから内部に突出した状態で、上部アンカートンネル13内に打設されたコンクリートKにより固定されている。また、下端部17b側は、下部アンカートンネル15の躯体上部の上部開口部15aから内部に突出した状態で、下部アンカートンネル15内に打設されたコンクリートKにより固定されている。
【0039】
これにより、上部アンカートンネル13、下部アンカートンネル15、及び支保壁17は分合流部10の全長に渡り連続して、一体化した状態となっている。
【0040】
上床桁21a、21bは、各本線トンネル11a、11bのランプトンネル12a、12b側の躯体上部と支保壁17との間で略水平方向に連続して構築されており、各本線トンネル11a、11bの躯体上部と支保壁17の側面とに強固に連結されている。この上床桁21a、21bは、例えば、多数の角筒形状の鋼殻21cが本線トンネル11a、11bと支保壁17との横幅方向に貫通軸を向けて多数配列及び固着されると共に、上下部アンカートンネル13、15の配向方向に並べて配列及び固着されており、その内部がコンクリートKで充填された構成を有している。
【0041】
また、上床桁21a、21bの本線トンネル11a、11b側端部は、本線トンネル11a、11bの躯体側部に分合流部10の全長に渡り設けられた広幅開口部11c、11dにおいて、本線トンネル11a、11bの躯体上部に結合されている。一方、上床桁21a、21bの支保壁17側の端部は、支保壁17の鋼殻17cに結合されている。
【0042】
下床桁23a、23bも、上床桁21a、21bと同様に、各本線トンネル11a、11bのランプトンネル12a、12b側の躯体下部と支保壁17との間で略水平方向に連続して構築されており、各本線トンネル11a、11bの躯体下部と支保壁17の側面とに強固に連結されている。この下床壁23a、23bは、例えば、多数の角筒形状の鋼殻23cが本線トンネル11a、11bと支保壁17との横幅方向に貫通軸を向けて多数配列及び固着されると共に、上下部アンカートンネル13、15の配向方向に並べて配列及び固着されて、その内部がコンクリートKで充填された構成を有している。
【0043】
また、下床桁23a、23bの本線トンネル11a、11b側端部は、本線トンネル11a、11bの躯体側部に分合流部10の全長に渡り設けられた広幅開口部11c、11dにおいて、本線トンネル11a、11bの躯体下部に結合されている。一方、下床桁23a、23bの支保壁17側の端部は、支保壁17の鋼殻17cに結合されている。
【0044】
この分合流部構造においては、更に、上部アンカートンネル13と上床桁21a、21bとの間を斜めに連結する上部補強部材25a、25bと、下部アンカートンネル15と下床桁23a、23bとを斜めに連結する下部補強部材27a、27bとを備えている。
【0045】
上部補強部材25a、25b及び下部補強部材27a、27bは、上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bを支持するなどの目的で、分合流部10の全長に渡り設けられており、図1に示すように、上下部アンカートンネル13、15と本線トンネル11a、11bとの間の幅方向に配向する多数のパイプ補強材29が本線トンネル11a、11bの長手方向に並べて配置された構成を有している。
【0046】
各パイプ補強材29は、図4及び図5に示すように、鋼管31aと、この鋼管31a内に配置されて両側の端部が鋼管31aの端部より突出する鋼棒材、鉄筋、 鋼棒等からなる支持棒材31bと、鋼管31aと支持棒材31bとの間の空間に充填されたコンクリートKとを有している。このような構成を有する各パイプ補強材29は、個々に、一端が上下部アンカートンネル13、15に強固に連結され、他端が上床桁21a、21b又は下床桁23a、23bに強固に連結されている。
【0047】
上部補強部材25a、25bと上部アンカートンネル13との連結構造は、図4に示されるように、コンクリートK内部に支保壁17の上端部17aと固定された結合部材33aが埋設され、上部アンカートンネル13に形成された傾斜開口部13bに、パイプ補強材29の一方の端部が挿入され、結合部材33a内の両傾斜開口部13bと対向する位置に設けられた固定台座33bに、パイプ補強材29の鋼管31aから突出する支持棒材31bが例えばナット33c等で固定された構造となっている。
【0048】
また、上部補強部材25a、25bと上床桁21a、21bとの連結構造は、図5に示されるように、上床桁21a、21bの各本線トンネル11a、11b側の位置で、上床桁21a、21bを構成する鋼殻21c内に埋設された状態で固定台座35aが固定され、この固定台座35aにパイプ補強材29の鋼管31aから突出する支持棒材31bが例えばナット35b等で固定された構造となっている。
【0049】
一方、下部補強部材27a、27bと下部アンカートンネル15との連結構造は、図6に示されるように、コンクリートK内部に支保壁17の下端部17bと固定された結合部材37aが埋設され、下部アンカートンネル15の両本線トンネル11a、11b側に斜めに開口された傾斜開口部15bに、パイプ補強材29の一方の端部が挿入され、結合部材37a内の両傾斜開口部15bと対向する位置に設けられた固定台座37bに、パイプ補強材29の鋼管31aから突出する支持棒材31bが例えばナット37c等で固定された構造となっている。
【0050】
また、下部補強部材27a、27bと下床桁23a、23bとの連結構造は、図7に示されるように、下床桁23a、23bの各本線トンネル11a、11b側の位置で、下床桁23a、23bを構成する鋼殻23c内に埋設された状態で固定台座39aが固定され、この固定台座39aにパイプ補強材29の鋼管31aから突出する支持棒材31bが例えばナット39b等で固定された構造となっている。
【0051】
以上のような各部の連結により、この分合流部10の構造では、上下部アンカートンネル13、15、支保壁17、上床桁21a、21b、及び下床桁23a、23b全体が、一体的に連結された強固な構造体となっている。
【0052】
そして、この強固な構造体において、上床桁21a、21bと下床桁23a、23bとの間に、ランプトンネル12a、12bと、このランプトンネル12a、12bと各本線トンネル11a、11bとを連通する分合流部空間20a、20bがそれぞれ形成されている。
【0053】
なお、各本線トンネル11a、11bには、図3等に示すように、避難路41a、41bを形成してインバート43a、43bが構築されている。
【0054】
以上のようなこの実施の形態1の分合流部構造によれば、一対のランプトンネル12a、12bの間に相当する位置に配置された支保壁17の両側に、上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bがそれぞれ連結され、上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bが各本線トンネル11a、11bの躯体と連結されているので、支保壁17、上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bが全体として一体化された躯体を構成することができる。そのため、地山の土水圧により上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bに負荷される荷重を、分力として支保壁17で支持することができる。
【0055】
また、一対のランプトンネル12a、12bの間を貫通する支保壁17が一対のランプトンネル12a、12bより上方となるように配設された上部アンカートンネル13と下方となるように配設された下部アンカートンネル15とに連結されているので、支保壁17に負荷される荷重に対して十分な保持性能を確保することができる。
【0056】
そのため、本線トンネル11a、11bとランプトンネル12a、12bとが連通することにより横幅が広くなる分合流部10であっても、各分合流部空間20a、20bを十分な強度で確保することが可能である。
【0057】
しかも、一対のランプトンネル12a、12bより上方に配置された上部アンカートンネル13と下方に配置された下部アンカートンネル15とにより荷重の十分な保持性能が確保されている支保壁17に対して、その両側にそれぞれ上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bを設けるため、支保壁17を中心にして分合流部10の幅方向両側のバランスを良好に確保することができ、安定した分合流部構造を構成することができる。
【0058】
特に、この実施の形態1では、上部アンカートンネル13と上床桁21a、21bとを斜めに連結する上部補強部材25a、25bと、下部アンカートンネル15と下床桁23a、23bとを斜めに連結する下部補強部材27a、27bとを備えているので、上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bに土水圧により垂直方向に負荷される荷重を、上部補強部材25a、25b及び下部補強部材27a、27bを介してより確実に支保壁17に分力として分散することができ、より分合流部空間20a、20bの強度を確保し易い。
【0059】
次に、以上のような実施の形態1の分合流部構造の構築方法について説明する。
【0060】
この構築方法は、一対の本線トンネル11a、11bが既に配設されている状態で、各本線トンネル11a、11bのための地上からのランプトンネル12a、12bをそれぞれ構築し、分合流部10で一対の本線トンネル11a、11bの間の位置で、一方の本線トンネル11aにそのランプトンネル12aの一部を隣接配置すると共に、他方の本線トンネル11bのランプトンネル12bの一部を隣接配置し、この隣接した部分で、各本線トンネル11a、11bとそのランプトンネル12a、12bとの間を、それぞれ連通させて接続する方法である。
【0061】
まず、図1及び図2に示すように、構築しようとするランプトンネル12a、12bの地上Gの開口部12c、12dより分合流部10側の位置に、ランプトンネル12a、12bと上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15との掘削を開始するための発進立坑45を構築する。
【0062】
この発進立坑45は、ランプトンネル12a、12b、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15に共通に使用するものであり、所定の深度で構築した後、各トンネルの掘進を開始する。各トンネルの掘進を開始する順序はお互いのトンネル築造の影響を考慮して下方のトンネルから築造することが一般的であり、下部アンカートンネル15、ランプトンネル12a、12b、上部アンカートンネル13の順序で掘進を開始するのが好適である。
【0063】
ここでは、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15は、ランプトンネル12a、12bと並行に掘削する。
【0064】
なお、発進立坑45から地上部までの区間は、以後の分合流部10の築造とは別に、或いはその後に、一般的な開削工法などにより掘削して設けることができる。その際、ランプトンネル12a、12bは必ず設ける必要があるものの、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15は、その後に利用することがない限り、設なくともよい。
【0065】
この発進立坑45を深く構築すれば、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15をより短くすることが可能であり、一方、地上部までの区間を開削工法で行う場合には、発進立坑45をランプトンネル12a、12bの地上Gの開口部12c、12d側に近接させれば、地上部の開削部分を小さくすることが可能である。従って、発進立坑45の位置や深度は、施工条件、経済性等から適宜選択するのが好適である。なお、このような発進立坑45を設けることなく、各トンネルを地上部から構築することも可能である。
【0066】
上述のような発進立坑45からの分合流部10の築造では、掘進を継続することにより、ランプトンネル12a、12bを地中の分合流部10の施工位置の直前まで施工する。また、上部アンカートンネル13を分合流部10終端の上方位置まで掘削すると共に、下部アンカートンネル15を分合流部10終端の下方位置まで掘削する。このとき、掘削は同時に進行する必要はない。
【0067】
この掘削と共に、分合流部構造の構築をより安全に行うために必要とされる範囲に地盤改良を施こす。
【0068】
そして、ランプトンネル12a、12bの掘削を停止したまま、分合流部10における一対のランプトンネル12a、12bの配設予定位置の間に相当する位置に、それらの配設予定位置より上方となるように上部アンカートンネル13を掘削して構築する。また、それらの配設予定位置より下方であって、上部アンカートンネル13の略鉛直下方となるように、下部アンカートンネル15を掘削して構築する。
【0069】
これらのランプトンネル12a、12b、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15の掘削方法は推進工法、シールド工法等の適宜の方法、好ましくはシールド工法を使用して行うことができる。
【0070】
このようにして、分合流部10における上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15を掘削及び構築するのに伴ない、又は、掘削及び構築をした後に、支保壁17を構築する。
【0071】
この構築でシールド工法等の掘削を行うのに先立ち、上部アンカートンネル13、下部アンカートンネル15の補強用の支保工(図示を省略)を必要に応じて設置しておく。
【0072】
上部アンカートンネル13の躯体下部のセグメントを開口させて下部開口部13aを形成し、この下部開口部13aから鉛直下方の下部アンカートンネル15に向かって、推進工法、シールド工法、深礎工法等の方法、好ましくは推進工法により鉛直方向に掘削を行い、多数の角筒状の鋼殻17cを上下に積層して連結し、順次、支保壁17の外殻を構築する。このとき、分合流部10の一対のランプトンネル12a、12bの配設予定位置の間を、貫通するように掘削して構築する必要がある。
【0073】
下部アンカートンネル15の躯体上部のセグメントを開口させて上部開口部15aを形成し、上部開口部15aを支保壁17の外殻が貫通した状態とする。
【0074】
そして、このような施行を繰り返して多数の鋼殻17cを連結することにより、上部アンカートンネル13と下部アンカートンネル15とを連結するように、分合流部全長にわたり連続して支保壁17の外殻を構築する。
【0075】
ここでは、推進工法の場合、使用する推進機の形状は、分合流部10の断面方向は構造検討によって決定される厚さを有すると共に、分合流部10の延長方向の幅は施工性を考慮して1辺の長さが1〜3m程度のものが好適である。より広い幅の形状であっても使用可能である。
【0076】
なお、支保壁17の掘削後、推進工法等に使用した刃口あるいは推進機、押管は、鋼製部材であり、支保壁17の鋼殻コンクリートの鋼殻部材となるため、構造物として使用することができる。支保壁17を鉄筋コンクリート製とする場合には、刃口あるいは推進機、押管は外型枠材として使用し、断面内に所要の鉄筋を配筋し、コンクリートKを打設する。
【0077】
次に、上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bを、各本線トンネル11a、11b側から構築する。
【0078】
この構築では、本線トンネル11a、11bの躯体からセグメント(覆工体)を部分的に撤去して開口させる必要があるため、本線トンネル11a、11bの強度を保つために、予め本線トンネル11a、11bを支保工(図示を省略)で補強しておく。
【0079】
一対のランプトンネル12a、12bの配設予定位置より上方に所望の厚さで略水平な上床桁21a、21bを構築できるように、本線トンネル11a、11bの上床桁21a、21bに対応する部位の躯体を開口させる。
【0080】
この本線トンネル11a、11bの躯体の開口から、それぞれ水平方向に支保壁17に向けて、推進工法、シールド工法等の方法、好ましくは推進工法により掘削を行い、角筒状の多数の鋼殻21cを水平方向に順次配列させ、支保壁17まで到達させて連結する。このような施行を繰り返して多数の鋼殻21cを連結することにより、分合流部全長にわたり連続して、本線トンネル11a、11bの躯体と支保壁17とを連結するように上床桁21a、21bの外殻を構築する。
【0081】
また、一対のランプトンネル12a、12bの配設予定位置より下方に所望の厚さで略水平な下床桁23a、23bを構築できるように、本線トンネル11a、11bの下床桁23a、23bに対応する部位の躯体を開口させる。
【0082】
この本線トンネル11a、11bの躯体の開口から、それぞれ水平方向に支保壁17に向けて、推進工法、シールド工法等の方法により掘削を行い、角筒状の多数の鋼殻23cを水平方向に順次配列させ、支保壁17まで到達させて連結する。このような施行を繰り返して多数の鋼殻23cを連結することにより、分合流部全長にわたり連続して、本線トンネル11a、11bの躯体と支保壁17とを連結するように下床桁23a、23bの外殻を構築する。
【0083】
ここでは、推進工法の場合、使用する推進機の形状は、構造検討によって決定される桁高さ、幅方向は施工性を考慮して1辺の長さが1〜3m程度のものが好適である。より広い幅の形状であっても使用可能である。
【0084】
次に、上床桁21a、21bと上部アンカートンネル13の躯体との間を繋ぐ上部補強部材25a、25bと、下部補強部材27a、27bと下部アンカートンネル15の躯体とを繋ぐ下部補強部材27a、27bとを、本線トンネル11a、11b側から施行して構築する。
【0085】
多数の鋼管31aを上床桁21a、21bの本線トンネル11a、11b側から上部アンカートンネル13の傾斜開口部13bまで到達させ、その内部に支持棒材31bを配置する。支持棒材31bは、一端側を上部アンカートンネル13内で支保壁17の上端部17aに固定された結合部材33aの固定台座33bに結合し、他端側を上床桁21a、21bの固定台座35aに結合する。このような鋼管31a及び支持棒材31bを分合流部全長にわたり連続して配置することにより、上部補強部材25a、25bの鋼殻を構築する。
【0086】
また、多数の鋼管31aを下床桁23a、23bの本線トンネル11a、11b側から下部アンカートンネル15の傾斜開口部15bまで到達させ、その内部に支持棒材31bを配置する。支持棒材31bは、一端側を下部アンカートンネル15内で支保壁17の下端部17bに固定された結合部材37aの固定台座37bに結合し、他端側を下床桁23a、23b固定台座39aに結合する。このような鋼管31a及び支持棒材31bを分合流部全長にわたり連続して配置することにより、下部補強部材27a、27bの鋼殻を構築する。
【0087】
このようにして、各部の鋼殻の構築が完了した後で、各部の内部にコンクリートKを打設充填する。具体的には、支保壁17の外殻内部全体、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15内の結合部材33a、37a側及び結合部材33a、37a内部全体、上床桁21a、21bの外殻内部全体、下床桁23a、23bの外殻内部全体、上部補強部材25a、25b及び下部補強部材27a、27bの全鋼管31a内部全体である。このとき、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15内の結合部材33a、37a側にコンクリートKを打設することにより、結合部材33a、37aの結合をより強固にできる。その際、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15内全体にコンクリートKを充填することも、構造を強固にする上では有効である。
【0088】
このコンクリートKとしては高流動コンクリートが好適である。
【0089】
このコンクリートKの打設、充填して、硬化させることにより、上部アンカートンネル13、下部アンカートンネル15、支保壁17、上床桁21a、21b、下床桁23a、23b、上部補強部材25a、25b及び下部補強部材27a、27bの全パイプ補強材29が一体化された構造体が形成される。
【0090】
更に、本線トンネル11a、11b内にもコンクリートKを打設し、避難路41a、41bを有するインバート43a、43bを構築する。これは、下床桁23a、23bの構築前に行うのが好ましい。
【0091】
その後、分合流部10の本線トンネル11a、11bに沿う両端面に、多数の鋼管31aを配設して内部にコンクリートKを打設して形成される妻部パイプルーフ46を構築する。ランプトンネル12a、12bの地上側と接続する端面では各トンネルを閉塞しない範囲に構築する。この両端部では、ランプトンネルの躯体の形状が大幅に変化するため、地山が露出するからである。
【0092】
そして、このような構造を形成した後、支保壁17の両側の上床桁21a、21bと下床桁23a、23bとの間の間隙を、それぞれ、本線トンネル11a、11bの躯体のセグメント(覆工体)を撤去しながら、順次開口させて掘削することにより、ランプトンネル12a、12bと、このランプトンネル12a、12bと本線トンネル11a、11bとの連通部分を含む分合流部空間20a、20bを形成する。
【0093】
その後、妻部の構築処理や不要な支保工を撤去することにより、この実施の形態1の分合流部構造の構築を完了する。
【0094】
以上のようにして分合流部10を構築すれば、地上G側から分合流部10まで掘削して、一対のランプトンネル12a、12bの上方及び下方に上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15を構築し、両者を連結する支保壁17を構築し、各本線トンネル11a、11bと支保壁17との間を掘削して本線トンネル11a、11bの躯体と支保壁17とを連結する上床桁21a、21bと下床桁23a、23bとを構築し、上床桁21a、21bと下床桁23a、23bとの間で、本線トンネル11a、11bの躯体を開口させて掘削し、分合流部空間20a、20bを形成するので、地上Gに分合流部空間20a、20bに対応する広い範囲の開口部分を形成することなく、分合流部空間20a、20bを形成することが可能である。
【0095】
同時に、本線トンネル11a、11bと支保壁17とを連結した上床桁21a、21bと下床桁23a、23bにより十分な強度で補強された状態で、その間を掘削して分合流部空間20a、20bを形成するため、極めて安全に分合流部空間20a、20bを構築することができる。
【0096】
特に、上床桁21a、21bと下床桁23a、23bとを、それぞれ上部補強部材25a、25bと下部補強部材補強部材27a、27bにより補強してからその間の掘削を行うので、更に安全に構築することが可能である。
【0097】
しかも、一対のランプトンネル12a、12bより上方及び下方にそれぞれ配置された上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15により十分な強度が確保できる支保壁17の両側に、それぞれ上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bを設けるため、一対の分合流部空間20a、20bを形成するのに一組の上下部アンカートンネル13、15及び支保壁17を構築すればよく、効率よく、分合流部空間20a、20bを構築することが可能である。
【0098】
この構築時に、上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15とを、ランプトンネル12a、12bと並行に地上G側から掘削して構築しているので、地上G側の掘削位置を近接させることができ、各トンネルの構築中に地上G側に形成される開口部分を集中させて、その範囲を少なく抑えることができる。
【0099】
特に、ここでは、ランプトンネル12a、12bと上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15とを、地上G側の共通の発進立坑45から掘削して構築しているので、各トンネル12a、12b、13、15の構築中に地上G側に形成される開口部分を発進立坑45の開口とすることができ、より地上G側の開口部分の範囲を少なく抑えることができる。
【0100】
なお、上記実施の形態1では、本線トンネル11a、11bとして道路トンネルを説明したが、地中に形成される地下鉄等の他の用途のためのトンネルであってもよい。また、ランプトンネル12a、12bとして、地上とのアクセストンネルの例について説明したが、別の本線トンネルとの間を接続するためのランプトンネルであってもこの発明を適用することは可能である。更に、このランプトンネル12a、12bは、分合流部10において各本線トンネル11a、11bに隣接配置されるものであれば、各本線トンネル11a、11bと並行して設けられていなくても適用可能である。
【0101】
さらに、上記実施の形態1では、ランプトンネル12a、12bの躯体を分合流部構造の上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bと共通にすることにより、よりシンプルな構成を採用したが、上床桁21a、21bと下床桁23a、23bとの間に、地上G側から分合流部10までの区間のランプトンネル12a、12bの躯体と同じ躯体を配設して、隣接する本線トンネル11a、11b側を開口させて、分合流部空間20a、20bや本線トンネル11a、11bと連通させることも可能である。
【0102】
また、上記実施の形態1では、上部補強部材25a、25b及び下部補強部材27a、27bが設けられた構造を採用しているが、強度を確保できる限り、これらが設けられていなくても適用可能である。
【0103】
さらに、上記の構築方法では、支保壁17の構築にあたり、上部アンカートンネル13から下部アンカートンネル15に向けて施工したが、下部アンカートンネル15から上部アンカートンネル13に向けて施工することも可能である。
[発明の実施の形態2]
【0104】
図8は、この発明の実施の形態2の分合流部構造を示す。
【0105】
この分合流部10では、本線トンネル11a、11bの躯体内に、上床桁21a、21bと連続する上床桁延長部47a、47bと、下床桁23a、23bと連続する下床桁延長部49a、49bとをそれぞれ備えている。ここでは上床桁21a、21bと上床桁延長部47a、47bとの間、下床桁23a、23bと下床桁延長部49a、49bとの間で上下の床桁構造が連続するように、鉄筋コンクリートあるいは上下床桁21a…と同様な鋼殻コンクリートにて製作されている。その他は、実施の形態1と同一である。
【0106】
このような分合流部構造では、実施の形態1と同様の効果が得られる上に、本線トンネル11a、11bの躯体内に、上床桁21a、21bと連続する上床桁延長部47a、47bと、下床桁23a、23bと連続する下床桁延長部49a、49bとを備えているので、本線トンネル11a、11bの躯体を、より一体的に構成して補強することができ、本線トンネル11a、11bの分合流部の強度をも十分に確保し易い。
[発明の実施の形態3]
【0107】
図9は、この発明の実施の形態2の分合流部構造を示す。
【0108】
上記実施の形態1、2では一対の本線トンネル11a、11b及び一対のランプトンネル12a、12bを有する分合流部構造であったが、この実施の形態2では、1本の本線トンネル11aと、この本線トンネル12aの横に配置される1本のランプトンネル12aの一部とが連通されて分合流部10が構成されている。
【0109】
即ち、この分合流部10では、ランプトンネル12aの本線トンネル11aとは反対の側方位置において、ランプトンネル12aより上方となるように上部アンカートンネル12が配置されると共に、ランプトンネル13より下方であって上部アンカートンネル12aの略鉛直下方に下部アンカートンネル15が配置され、上部アンカートンネル13と下部アンカートンネル15とが支保壁17により連結されている。
【0110】
そして、本線トンネル11aのランプトンネル12a側の躯体上部と支保壁17とが、略水平方向に延びて連続した上床桁21aにより連結され、一方、本線トンネル11aのランプトンネル12a側の躯体下部と支保壁17とが、略水平方向に延びて連続した下床桁15により連結されており、これらの上床桁13と下床桁15との間に分合流部空間20aが形成されている。
【0111】
更に、本線トンネル11aの躯体内に、上床桁21aと連続する上床桁延長部47aと、下床桁23aと連続する下床桁延長部49aとが設けられている。
【0112】
このような分合流部10の構造であっても、実施の形態1、2と全く同様の効果が得られる。
[実施の形態4]
【0113】
図10乃至図12は、この発明の実施の形態4を示す。
【0114】
この分合流部10では、支保壁17、上床桁21a、21b、及び下床桁23a、23bの掘削及び構築方法が異なる他は、実施の形態1と同様である。
【0115】
まず、実施の形態1と同様に、発進立坑45から上部アンカートンネル13、ランプトンネル12a、12b、下部アンカートンネル15の掘削を行い、ランプトンネル12a、12bを地中の分合流部10の施工位置の直前までで停止し、分合流部10に上部アンカートンネル13及び下部アンカートンネル15を掘削して構築する。
【0116】
その後、実施の形態1では、例えば1辺の長さが1〜3mの角形の矩形推進機などを用い、例えば本線トンネル11a、11bの配向方向に対して直交する上下方向や幅方向に掘削を順次繰り返して支保壁17、上床桁21a、21b、及び下床桁23a、23bを構築していたのに対し、この実施の形態4では、一辺の長さが大きい長方形の版状推進機などを用い、例えば本線トンネル11a、11bの配向方向に沿って掘削を行うことにより、支保壁17、上床桁21a、21b、及び下床桁23a、23bの掘削及び構築を行う。
【0117】
そのような掘削及び構築を行うために、ここでは、分合流部10の施工位置の直前の位置の分合流部10内の近傍位置において、上部アンカートンネル13側から下部アンカートンネル15側に向けて掘削して版状推進機59の発進立坑51を形成する。この発進立坑51の掘進中に上床桁21a、21bに対応する位置に到達した段階で、本線トンネル11a、11bに向けて掘削し、上床桁21a、21b用の版状推進機61a、61bの発進立坑53a、53bを形成する。更に、発進立坑51が掘進して下床桁23a、23bに対応する位置に到達した段階で、本線トンネル11a、11bに向けて掘削し、下床桁23a、23b用の版状推進機63a,63bの発進立坑55a、55bを形成する。
【0118】
各版状推進機59、61a,61b,63a,63bの発進立坑51、53a、53b、55a、55bがそれぞれ形成された後に、各版状推進機59、61a,61b,63a,63bにより、本線トンネル11a、11bの配向方向に掘削することにより、支保壁17、上床桁21a、21b、及び下床桁23a、23bを構築する。
【0119】
このとき、支保壁17は上端部17aが上部アンカートンネル13内に突出すると共に、下端部17bが下部アンカートンネル15内に突出するように、それぞれの躯体を順次開口させつつ掘削及び構築を行う。また、上床桁21a、21b及び下床桁23a、23bも、それぞれ本線トンネル11a、11b内に突出するように、それぞれの躯体を順次開口させつつ掘削及び構築を行う。
【0120】
そして、分合流部10全長を掘削し、各版状掘進機59、61a,61b,63a,63bを鋼殻として残留させてコンクリートKを打設して構築を完了する。その他は、実施の形態1と同様である。
【0121】
これにより、この実施の形態4の分合流部構造が構築される。そして、このようにして分合流部構造を構築しても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】この発明の実施の形態1の分合流部及びその周囲を示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1の分合流部構造を示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1の分合流部構造における上部アンカートンネルの拡大部分断面図である。
【図5】この発明の実施の形態1の分合流部構造における上部補強部材の上床桁との接合部分を示す拡大部分断面図である。
【図6】この発明の実施の形態1の分合流部構造における下部アンカートンネルの拡大部分断面図である。
【図7】この発明の実施の形態1の分合流部構造における下部補強部材の下床桁との接合部分を示す拡大部分断面図である。
【図8】この発明の実施の形態2の分合流部構造を示す断面図である。
【図9】この発明の実施の形態3の分合流部構造を示す断面図である。
【図10】この発明の実施の形態4の分合流部及びその周囲を示す平面図である。
【図11】図10のB−B断面図である。
【図12】この発明の実施の形態4の分合流部構築時を示す断面図である。
【符号の説明】
【0123】
G 地上
10 分合流部
11a、11b 本線トンネル
12a、12b ランプトンネル
13 上部アンカートンネル
15 下部アンカートンネル
17 支保壁
21a、21b 上床桁
23a、23b 下床桁
25a、25b 上部補強部材
27a、27b 下部補強部材
45 発進立坑
47a、47b 上床桁延長部
49a、49b 下床桁延長部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本線トンネルと、分合流部で該本線トンネルの横に配置されるランプトンネルの一部とが連通された分合流部構造において、
前記ランプトンネルの前記本線トンネルとは反対の側方位置に、該ランプトンネルより上方となるように配置された上部アンカートンネルと、前記ランプトンネルより下方であって前記上部アンカートンネルの略鉛直下方となるように配置された下部アンカートンネルとを有すると共に、該上部アンカートンネルと下部アンカートンネルとを連結する支保壁を有し、
前記本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体上部と前記支保壁とが、略水平方向に連続する上床桁により連結されると共に、前記本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体下部と前記支保壁とが、略水平方向に連続する下床桁により連結され、
前記上床桁と前記下床桁との間に前記本線トンネルと前記ランプトンネルとを連通する分合流部空間が形成されていることを特徴とする分合流部構造。
【請求項2】
一対の本線トンネルが配設され、分合流部で一方の本線トンネルのランプトンネルの一部が前記一対の本線トンネル間に隣接して配置されると共に、他方の本線トンネルのランプトンネルの一部が前記一対の本線トンネル間に隣接して配置され、各本線トンネルとそのランプトンネルの一部とがそれぞれ連通された分合流部構造において、
前記一対のランプトンネルの間に相当する位置に、該一対のランプトンネルより上方となるように配設された上部アンカートンネルと、該一対のランプトンネルより下方であって前記上部アンカートンネルの略鉛直下方となるように配設された下部アンカートンネルとを有すると共に、前記上部アンカートンネルと前記下部アンカートンネルとを連結する支保壁を有し、
前記各本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体上部と前記支保壁とが、略水平方向に連続する上床桁によりそれぞれ連結されると共に、前記各本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体下部と前記支保壁とが、略水平方向に連続する下床桁によりそれぞれ連結され、
前記支保壁の両側の前記上床桁と前記下床桁との間に各本線トンネルとそのランプトンネルとを連通する分合流部空間がそれぞれ形成されていることを特徴とする分合流部構造。
【請求項3】
前記上部アンカートンネルと前記上床桁とを連結する上部補強部材と、前記下部アンカートンネルと前記下床桁とを連結する下部補強部材とを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の分合流部構造。
【請求項4】
前記本線トンネルの躯体内に、前記上床桁と連続する上床桁延長部と、前記下床桁と連続する下床桁延長部とを備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の分合流部構造。
【請求項5】
本線トンネルの横に、分合流部でランプトンネルの一部を隣接配置して連通させる分合流部の構築方法において、
前記ランプトンネルの前記本線トンネルとは反対の側方となる位置に該ランプトンネルより上方となるように上部アンカートンネルを構築すると共に、
前記ランプトンネルより下方であって前記上部アンカートンネルの略鉛直下方となるように下部アンカートンネルを構築し、
前記分合流部で前記上部アンカートンネルと下部アンカートンネルとの間を掘削して両者を連結する支保壁を構築し、
前記本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体上部と該支保壁との間を略水平方向に掘削して本線トンネルの躯体と前記支保壁とを連結する上床桁を構築し、
前記本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体下部と該支保壁との間を略水平方向に掘削して本線トンネルの躯体と前記支保壁とを連結する下床桁を構築し、
前記上床桁と前記下床桁との間で、前記本線トンネルの躯体を開口させて掘削し、該本線トンネルと前記ランプトンネルとを連通する分合流部空間を形成することを特徴とする分合流部の構築方法。
【請求項6】
一対の本線トンネル間に、分合流部で一方の本線トンネルのランプトンネルの一部を隣接配置すると共に他方の本線トンネルのランプトンネルの一部を隣接配置し、各本線トンネルとそのランプトンネルの一部との間をそれぞれ連通させる分合流部の構築方法において、
前記一対のランプトンネルの間に相当する位置に該一対のランプトンネルより上方となるように上部アンカートンネルを構築すると共に、
前記一対のランプトンネルより下方であって前記上部アンカートンネルの略鉛直下方となるように下部アンカートンネルを構築し、
前記上部アンカートンネルと下部アンカートンネルとを連結する支保壁を構築し、
前記支保壁の両側で、各本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体上部と該支保壁との間を略水平方向に掘削して各本線トンネルの躯体と前記支保壁とを連結する上床桁を構築し、
同じく前記支保壁の両側で、各本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体下部と該支保壁との間を略水平方向に掘削して各本線トンネルの躯体と前記支保壁とを連結する下床桁を構築し、
前記支保壁の両側の前記上床桁と前記下床桁との間で、それぞれ前記本線トンネルの躯体を開口させて掘削し、該本線トンネルと前記ランプトンネルとを連通する分合流部空間をそれぞれ形成することを特徴とする分合流部の構築方法。
【請求項7】
前記上部アンカートンネル及び前記下部アンカートンネルとを、前記ランプトンネルと並行に地上側から掘削して構築することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の分合流部の構築方法。
【請求項8】
前記ランプトンネルと前記上部アンカートンネル及び前記下部アンカートンネルとを、地上側の共通の立坑から掘削して構築することを特徴とする請求項7に記載の分合流部の構築方法。
【請求項9】
前記上床桁と前記下床桁との間を掘削する前に、前記上部アンカートンネルと前記上床桁とを連結する上部補強部材と、前記下部アンカートンネルと前記下床桁とを連結する下部補強部材とを構築することを特徴とする請求項5乃至8に記載の分合流部の構築方法。
【請求項1】
本線トンネルと、分合流部で該本線トンネルの横に配置されるランプトンネルの一部とが連通された分合流部構造において、
前記ランプトンネルの前記本線トンネルとは反対の側方位置に、該ランプトンネルより上方となるように配置された上部アンカートンネルと、前記ランプトンネルより下方であって前記上部アンカートンネルの略鉛直下方となるように配置された下部アンカートンネルとを有すると共に、該上部アンカートンネルと下部アンカートンネルとを連結する支保壁を有し、
前記本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体上部と前記支保壁とが、略水平方向に連続する上床桁により連結されると共に、前記本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体下部と前記支保壁とが、略水平方向に連続する下床桁により連結され、
前記上床桁と前記下床桁との間に前記本線トンネルと前記ランプトンネルとを連通する分合流部空間が形成されていることを特徴とする分合流部構造。
【請求項2】
一対の本線トンネルが配設され、分合流部で一方の本線トンネルのランプトンネルの一部が前記一対の本線トンネル間に隣接して配置されると共に、他方の本線トンネルのランプトンネルの一部が前記一対の本線トンネル間に隣接して配置され、各本線トンネルとそのランプトンネルの一部とがそれぞれ連通された分合流部構造において、
前記一対のランプトンネルの間に相当する位置に、該一対のランプトンネルより上方となるように配設された上部アンカートンネルと、該一対のランプトンネルより下方であって前記上部アンカートンネルの略鉛直下方となるように配設された下部アンカートンネルとを有すると共に、前記上部アンカートンネルと前記下部アンカートンネルとを連結する支保壁を有し、
前記各本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体上部と前記支保壁とが、略水平方向に連続する上床桁によりそれぞれ連結されると共に、前記各本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体下部と前記支保壁とが、略水平方向に連続する下床桁によりそれぞれ連結され、
前記支保壁の両側の前記上床桁と前記下床桁との間に各本線トンネルとそのランプトンネルとを連通する分合流部空間がそれぞれ形成されていることを特徴とする分合流部構造。
【請求項3】
前記上部アンカートンネルと前記上床桁とを連結する上部補強部材と、前記下部アンカートンネルと前記下床桁とを連結する下部補強部材とを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の分合流部構造。
【請求項4】
前記本線トンネルの躯体内に、前記上床桁と連続する上床桁延長部と、前記下床桁と連続する下床桁延長部とを備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の分合流部構造。
【請求項5】
本線トンネルの横に、分合流部でランプトンネルの一部を隣接配置して連通させる分合流部の構築方法において、
前記ランプトンネルの前記本線トンネルとは反対の側方となる位置に該ランプトンネルより上方となるように上部アンカートンネルを構築すると共に、
前記ランプトンネルより下方であって前記上部アンカートンネルの略鉛直下方となるように下部アンカートンネルを構築し、
前記分合流部で前記上部アンカートンネルと下部アンカートンネルとの間を掘削して両者を連結する支保壁を構築し、
前記本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体上部と該支保壁との間を略水平方向に掘削して本線トンネルの躯体と前記支保壁とを連結する上床桁を構築し、
前記本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体下部と該支保壁との間を略水平方向に掘削して本線トンネルの躯体と前記支保壁とを連結する下床桁を構築し、
前記上床桁と前記下床桁との間で、前記本線トンネルの躯体を開口させて掘削し、該本線トンネルと前記ランプトンネルとを連通する分合流部空間を形成することを特徴とする分合流部の構築方法。
【請求項6】
一対の本線トンネル間に、分合流部で一方の本線トンネルのランプトンネルの一部を隣接配置すると共に他方の本線トンネルのランプトンネルの一部を隣接配置し、各本線トンネルとそのランプトンネルの一部との間をそれぞれ連通させる分合流部の構築方法において、
前記一対のランプトンネルの間に相当する位置に該一対のランプトンネルより上方となるように上部アンカートンネルを構築すると共に、
前記一対のランプトンネルより下方であって前記上部アンカートンネルの略鉛直下方となるように下部アンカートンネルを構築し、
前記上部アンカートンネルと下部アンカートンネルとを連結する支保壁を構築し、
前記支保壁の両側で、各本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体上部と該支保壁との間を略水平方向に掘削して各本線トンネルの躯体と前記支保壁とを連結する上床桁を構築し、
同じく前記支保壁の両側で、各本線トンネルの前記ランプトンネル側の躯体下部と該支保壁との間を略水平方向に掘削して各本線トンネルの躯体と前記支保壁とを連結する下床桁を構築し、
前記支保壁の両側の前記上床桁と前記下床桁との間で、それぞれ前記本線トンネルの躯体を開口させて掘削し、該本線トンネルと前記ランプトンネルとを連通する分合流部空間をそれぞれ形成することを特徴とする分合流部の構築方法。
【請求項7】
前記上部アンカートンネル及び前記下部アンカートンネルとを、前記ランプトンネルと並行に地上側から掘削して構築することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の分合流部の構築方法。
【請求項8】
前記ランプトンネルと前記上部アンカートンネル及び前記下部アンカートンネルとを、地上側の共通の立坑から掘削して構築することを特徴とする請求項7に記載の分合流部の構築方法。
【請求項9】
前記上床桁と前記下床桁との間を掘削する前に、前記上部アンカートンネルと前記上床桁とを連結する上部補強部材と、前記下部アンカートンネルと前記下床桁とを連結する下部補強部材とを構築することを特徴とする請求項5乃至8に記載の分合流部の構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−197923(P2007−197923A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15028(P2006−15028)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000207780)大豊建設株式会社 (77)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000207780)大豊建設株式会社 (77)
【Fターム(参考)】
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