分圧器
【課題】使用時の周囲温度が変化しても、高電圧の測定精度を低下させず、かつ、スケールファクタを校正する必要のない分圧器を得ることを目的とする。
【解決手段】一次回路構成要素室1内の絶縁油の温度は温度センサ3a,3bによって計測される。二次回路構成要素室2内の絶縁油の温度は温度センサ4によって計測される。温度センサ3a,3b,4の検出値は温度制御装置8に送られる。温度制御装置8は、温度センサ3a,3bの検出値に基づいて一次回路構成要素室1内の絶縁油の温度を制御する。同じく温度制御装置8は、温度センサ4の検出値に基づいて二次回路構成要素室2内の絶縁油の温度を制御する。
【解決手段】一次回路構成要素室1内の絶縁油の温度は温度センサ3a,3bによって計測される。二次回路構成要素室2内の絶縁油の温度は温度センサ4によって計測される。温度センサ3a,3b,4の検出値は温度制御装置8に送られる。温度制御装置8は、温度センサ3a,3bの検出値に基づいて一次回路構成要素室1内の絶縁油の温度を制御する。同じく温度制御装置8は、温度センサ4の検出値に基づいて二次回路構成要素室2内の絶縁油の温度を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高電圧機器等に加えられる電圧を分圧するための分圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
分圧器は、一定比(以下、スケールファクタとも呼ぶ)で電圧を分圧するためのものである。分圧器の主な利用目的は、一般的に用いられる電圧計では測定できない高電圧を測定することである。電圧V1が一般的に用いられる電圧計では測定できない高電圧、たとえば100kVであるとき、スケールファクタが2000の分圧器を用いることによって、100kVの電圧を50V程度の電圧に変換できる。一般的に用いられる、50V程度を測定可能な電圧計によって分圧器の出力電圧V2を測定し、その出力電圧にスケールファクタを乗じて電圧V1が算定される。分圧器の正確なスケールファクタは、一般的にはスケールファクタが既知である他の分圧器との比較校正により定められる。
【0003】
分圧器を構成する要素として、一般的には抵抗やコンデンサ等のインピーダンス要素が用いられる。これらの素子のインピーダンスは、温度によって変化するという特性を有する。一般的に、抵抗については、温度によるインピーダンス変化係数が10ppm/deg程度の温度特性の良いものを利用できる。しかしコンデンサについては、温度によるインピーダンス変化係数が0.1%/deg程度である。すなわち温度が10℃変化すると、コンデンサの静電容量値は1%程度変化することになる。
【0004】
分圧器は、電気的に直列接続された一次回路と二次回路とから構成される。一次回路のインピーダンスおよび二次回路のインピーダンスによってスケールファクタが決定される。インピーダンス温度特性が一次回路構成要素と二次回路構成要素とで同一であれば、温度が変化してもスケールファクタは変化せずに一定に保たれる。しかし、一次回路の構成要素と二次回路の構成要素とを同一材料で構成しても、その特性には必ずばらつきが生じるので、インピーダンス温度係数も一次回路構成要素と二次回路構成要素とで異なる。このため分圧器のスケールファクタが温度によって変化する。
【0005】
分圧器のスケールファクタが温度によって変化した場合、たとえば下記の2つの問題が発生する。
【0006】
(1)温度を一定に保てない限り分圧器のスケールファクタが変動するため、高電圧の測定精度が悪化する。
【0007】
(2)高精度で高電圧の測定を行なうためには、分圧器を使用する温度条件に合わせて分圧器のスケールファクタを校正する必要がある。たとえば、夏期と冬期とに分圧器のスケールファクタを校正する必要がある。
【0008】
温度変化によらず高電圧を精度良く測定するために提案された構成が、たとえば特開平4−335713号公報(特許文献1)に開示されている。この文献に開示された分圧器は、負荷端部の高圧電極と接地タンク近傍に電気的に浮遊して設けられた低圧側電極との間で形成される静電容量と、接地タンク外部に設けられた低圧側コンデンサとによって構成される。低圧側電極は膨張収縮可能な中空部材から構成される。この中空部材内に絶縁ガスを充填・回収することで高圧側電極と低圧側電極との間の相対的な位置を変化させることができるので静電容量が調整される。これによって分圧比を調整することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−335713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特開平4−335713号公報(特許文献1)に開示された構成によれば、スケールファクタを一定に保つために、中空部材内に絶縁ガスを充填・回収することによる静電容量の調整を行なわなければならない。静電容量の調整とはスケールファクタの校正に対応する。したがって特開平4−335713号公報(特許文献1)に開示された構成によれば、上記(1)の問題は解決可能であっても上記(2)の問題が解決されていない。
【0011】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであって、使用時の周囲温度が変化しても、高電圧の測定精度を低下させず、かつ、スケールファクタを校正する必要のない分圧器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一局面に係る分圧器は、電気的に直列に接続された第1および第2のインピーダンス要素と、第1のインピーダンス要素を収容し、かつ絶縁媒体で満たされる第1の収容室と、第2のインピーダンス要素を収容し、かつ絶縁媒体で満たされる第2の収容室と、第1の収容室の内部に満たされた絶縁媒体の温度を検出する第1の検出部と、第2の収容室の内部に満たされた絶縁媒体の温度を検出する第2の検出部と、第1および第2の収容室の各々の内部に満たされた絶縁媒体の温度を制御する温度制御部とを備える。第1の収容室の内部の絶縁媒体の温度制御時には、温度制御部は、第1の収容室を経由して絶縁媒体を循環させるとともに、第1の検出部が検出した温度に基づいて第1の収容室に供給される絶縁媒体の温度を調整する。第2の収容室の内部の絶縁媒体の温度制御時には、温度制御部は、第2の収容室を経由して絶縁媒体を循環させるとともに、第2の検出部が検出した温度に基づいて第2の収容室に供給される絶縁媒体の温度を調整する。第1の検出部は、第1のインピーダンス要素の近傍に配置される。第2の検出部は、第2のインピーダンス要素の近傍に配置される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、絶縁媒体の温度を制御することによって第1および第2のインピーダンス要素の温度を制御することができるので、スケールファクタの温度変化が低減される。これにより分圧器の校正を不要としつつ高い精度で高電圧を測定できる。さらに、収容室内部に温度分布が生じた場合にも、効率よく収容室内部の温度を設定範囲内に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】抵抗を回路構成要素として構築された抵抗分圧器を示した図である。
【図2】コンデンサを回路構成要素として構築された容量分圧器を示した図である。
【図3】抵抗とコンデンサとを回路構成要素として構築された抵抗容量分圧器の構成を示した図である。
【図4】この発明の第1の実施形態に係る分圧器50を示した図である。
【図5】図4に示した温度制御装置の構成の一形態を示した機能ブロック図である。
【図6】図5に示された制御部23a,23bによる絶縁油の温度制御を説明するためのフローチャートである。
【図7】一次回路構成要素室内部の温度センサの配置の一例を示した図である。
【図8】この発明の第2の実施形態に係る分圧器51を示した図である。
【図9】図8に示した温度制御装置の構成の一形態を示した機能ブロック図である。
【図10】図9に示された制御部23aによる絶縁油の温度制御を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態に係る分圧器の適用例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0016】
[分圧器の基本構成]
図1は、抵抗を構成要素として構築された抵抗分圧器を示した図である。図1を参照して、分圧器100は、高電圧入力端子T1とアースとの間に直列接続された一次抵抗101および二次抵抗102を備える。ノードN1は一次抵抗101および二次抵抗102の接続点に相当する。一次抵抗101の抵抗値をR1、二次抵抗102の抵抗値をR2、高電圧入力端子T1に印加される電圧をV1、一次抵抗101および二次抵抗102によって分圧された電圧をV2とする。ノードN1とアースとの間に電圧計103が接続され、電圧V2は電圧計103で測定される。原理的には、(R1+R2)/R2で表わされるスケールファクタを電圧V2に乗じることによって、高電圧V1(=V2×(R1+R2)/R2)を算定することができる。図1に示した抵抗分圧器は、主に直流電圧とインパルス電圧との測定に利用される。
【0017】
図2は、コンデンサを構成要素として構築された容量分圧器を示した図である。図2を参照して、分圧器110は、高電圧入力端子T2とアースとの間に直列接続された一次コンデンサ104および二次コンデンサ105を備える。ノードN2は一次コンデンサ104および二次コンデンサ105の接続点に相当する。一次コンデンサ104の静電容量値をC1、二次コンデンサ105の静電容量値をC2とする。ノードN2とアースとの間に電圧計103が接続され、電圧V2は電圧計103で測定される。スケールファクタは原理的には(C1+C2)/C1で計算される。図2に示した容量分圧器は、主に交流電圧の測定に利用される。
【0018】
図3は、抵抗とコンデンサとを構成要素として構築された抵抗容量分圧器の構成を示した図である。図3を参照して、分圧器120は、高電圧入力端子T3とアースとの間に直列接続された一次抵抗101および二次抵抗102を備えるとともに、高電圧入力端子T3とアースとの間に直列接続された一次コンデンサ104および二次コンデンサ105を備える。一次抵抗101および一次コンデンサ104は、高電圧入力端子T2とノードN3との間に並列接続される。同様に、二次抵抗102および二次コンデンサ105は、ノードN3とアースとの間に並列接続される。ノードN3とアースとの間に電圧計103が接続される。
【0019】
図3に示した構成は、図1および図2に示した構成を組み合わせることで得られる。分圧器120においては、直流電圧領域でのスケールファクタは抵抗分圧器(分圧器100)と同様に計算され、交流電圧・インパルス電圧領域でのスケールファクタは容量分圧器(分圧器120)と同様に計算される。図3に示した抵抗容量分圧器は、主に直流電圧、交流電圧、およびインパルス電圧の測定に利用される。
【0020】
本発明は上記のいずれの構成の分圧器に対しても適用可能であるが、以下では代表的に、本発明を抵抗容量分圧器に適用した形態を説明する。
【0021】
[実施の形態1]
図4は、この発明の第1の実施形態に係る分圧器50を示した図である。図4を参照して、分圧器50は、一次回路構成要素を収容する一次回路構成要素室1と、二次回路構成要素を収容する二次回路構成要素室2とを備える。分圧器50は、さらに、インピーダンス要素として、一次抵抗11と、二次抵抗12と、一次コンデンサ14と、二次コンデンサ15とを備える。
【0022】
一次抵抗11および一次コンデンサ14は、一次回路を構成するインピーダンス要素であり、一次回路構成要素室1に収容される。二次抵抗12および二次コンデンサ15は、二次回路を構成するインピーダンス要素であり、二次回路構成要素室2に収容される。一次抵抗11および一次コンデンサ14は、高電圧入力端子TとノードNとの間に並列接続されることで一次回路を構成する。二次抵抗12および二次コンデンサ15は、ノードNとアースとの間に並列接続されることで二次回路を構成する。一次抵抗11および二次抵抗12は高電圧入力端子Tとアースとの間に電気的に直列接続され、一次コンデンサ14および二次コンデンサ15は高電圧入力端子Tとアースとの間に電気的に直列接続される。
【0023】
一次回路および二次回路は、高電圧入力端子Tとアースとの間の高電圧V1を分圧する。電圧計13はノードNとアースとの間の電圧V2を測定する。電圧計13によって計測された電圧V2にスケールファクタを乗じることによって高電圧V1が算定される。
【0024】
一次回路構成要素室1および二次回路構成要素室2には、絶縁媒体である絶縁油が充満している。分圧器50は、温度センサ3a,3b,4と、送り配管5,6と、戻り配管7と、温度制御装置8とを備える。温度制御装置8から送られた絶縁油は、送り配管5を通じて一次回路構成要素室1に導入される。一方、一次回路構成要素室1から排出された絶縁油は戻り配管7を通じて温度制御装置8に戻される。
【0025】
送り配管5から分岐した複数の配管(図1では一例として配管5a,5bを示す)が絶縁油の流入路として一次回路構成要素室1に接続される。複数であれば一次回路構成要素室1に結合される流入路の数は特に限定されるものではない。また、一次回路構成要素室1には絶縁油の流出路として配管7aが接続される。配管7aは戻り配管7に結合される。より好ましくは、一次回路構成要素室1に結合される流出路の数は複数である。
【0026】
同じく二次回路構成要素室2には、送り配管6を通じて温度制御装置8から絶縁油が送られる。二次回路構成要素室2には絶縁油の流出路として配管7bが接続される。配管7aは戻り配管7に結合される。一次回路構成要素室1および二次回路構成要素室2に送られた絶縁油は、戻り配管7を通じて温度制御装置8に戻る。
【0027】
一次回路構成要素室1内の絶縁油の温度は温度センサ3a,3bによって検出される。二次回路構成要素室2内の絶縁油の温度は温度センサ4によって検出される。温度センサ3a,3b,4の検出値は温度制御装置8に送られる。温度制御装置8は、温度センサ3a,3bの検出値に基づいて一次回路構成要素室1内の絶縁油の温度を制御する。同じく温度制御装置8は、温度センサ4の検出値に基づいて二次回路構成要素室2内の絶縁油の温度を制御する。
【0028】
図5は、図4に示した温度制御装置の構成の一形態を示した機能ブロック図である。図5を参照して、温度制御装置8は、温度調整部21a,21bと、ポンプ22a,22bと、制御部23a,23bとを備える。温度調整部21aと、ポンプ22aと、制御部23aとは、一次回路構成要素室1内に満たされる絶縁油の温度を制御する。温度調整部21bと、ポンプ22bと、制御部23bとは、二次回路構成要素室2内に満たされる絶縁油の温度を制御する。ただし、制御部23aと制御部23bとが1つの機能ブロックに統合されていてもよい。
【0029】
戻り配管7から戻る絶縁油は、分岐されて温度調整部21a,21bに流入する。温度調整部21aは絶縁油を加熱または冷却することによって、絶縁油の温度を調整する。たとえば温度調整部21aは、絶縁油を加熱するためのヒータおよび絶縁油を冷却するための冷却器(たとえば水冷式あるいは空冷式の冷却器であるがこれらに限定されない)によって構成される。
【0030】
ポンプ22aは、温度調整部21aによって温度が調整された絶縁油を、送り配管5を通じて送出する。制御部23aは、温度センサ3a,3bの検出値に基づいて温度調整部21aおよびポンプ22aを制御する。制御部23aは、温度センサ3a,3bの検出値の少なくとも一方が設定範囲から外れた場合に、絶縁油の温度が設定範囲内となるように温度調整部21aを制御する。この場合、制御部23aは、ポンプ22aを駆動させる。絶縁油の温度が設定範囲内である場合には、制御部23aは、ポンプ22aを停止状態にする。
【0031】
温度調整部21b、ポンプ22b、および制御部23bの機能は、それぞれ上記の温度調整部21a、ポンプ22a、制御部23aの機能と同様であり、ポンプ22bが送り配管6に絶縁油を送出する点で異なっている。したがって温度調整部21b、ポンプ22b、および制御部23bに関する詳細な説明は以後繰返さない。二次回路構成要素室2内の絶縁油は、その温度が設定範囲から外れた場合に、温度調整部21bによって調整されるとともにポンプ22bによって循環させられる。
【0032】
図6は、図5に示された制御部23a,23bによる絶縁油の温度制御を説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示した処理は、たとえば一定の周期でメインルーチンから呼び出されて実行される。制御部23a,23bの各々は、このフローチャートに沿って温度制御を実行する。以下では代表的に、制御部23aによって実行される温度制御について説明する。
【0033】
図6を参照して、処理が開始されると、ステップS1において、制御部23aは温度センサ3a,3bから検出値を取得する。ステップS2において、制御部23aは、温度センサ3a,3bの検出値のうち少なくとも1つが設定範囲の上限値を上回るか否かを判定する。温度センサ3a,3bの検出値のうち少なくとも1つが上限値を上回る場合(ステップS2においてYES)、処理はステップS3に進む。一方、温度センサ3a,3bの検出値のいずれも上限値以下である場合(ステップS2においてNO)、処理はステップS4に進む。なお、上限値は予め設定されている。
【0034】
ステップS3において、制御部23aは温度調整部21aを制御することにより絶縁油を冷却する。処理はステップS3からステップS6に進む。
【0035】
一方、ステップS4において制御部23aは、温度センサ3a,3bの検出値のうち少なくとも1つが設定範囲の下限値を下回るか否かを判定する。温度センサ3a,3bの検出値のうち少なくとも1つが下限値を下回る場合(ステップS4においてYES)、処理はステップS5に進む。一方、温度センサ3a,3bの検出値のいずれも下限値以上である場合(ステップS4においてNO)、処理は後述するステップS7に進む。なお、下限値は予め設定されている。
【0036】
ステップS5において、制御部23aは温度調整部21aを制御することにより絶縁油を加熱する。次にステップS6において、制御部23aはポンプ22aを駆動させる。
【0037】
一方、ステップS7において、制御部23aはポンプ22aが停止状態となるようにポンプ22aを制御する。ステップS6またはステップS7の処理が終了すると全体の処理はメインルーチンに戻される。
【0038】
図6に示したフローチャートによれば、一次回路構成要素室1内の絶縁油の温度を設定範囲内に保つことができる。温度センサ3a,3bの検出値のうち少なくとも1つが設定範囲の上限値を上回る場合(ステップS2においてYES)、あるいは温度センサ3a,3bの検出値のうち少なくとも1つが設定範囲の下限値を下回る場合(ステップS4においてYES)には、温度調整部21aによって絶縁油が冷却または加熱されてポンプ22aが動作する(ステップS3,S5,S6)。したがって、一次回路構成要素室1内には、設定範囲内に温度が調整された絶縁油が導入される。一方、温度センサ3a,3bの検出値の両方が上限値以下かつ下限値以上、すなわち設定範囲内である場合(ステップS2においてNO、かつステップS4においてNO)、ポンプ22aは停止状態とされる(ステップS7)。この場合には、一次回路構成要素室1内の絶縁油の温度が設定範囲内に保たれているので温度制御装置8による温度調整は不要となる。
【0039】
同様に、制御部23bは温度センサ4の検出値に基づいてステップS1〜S7の処理を実行する。制御部23bによる処理は、上記の処理において、温度センサ3a,3bを温度センサ4に、温度調整部21aを温度調整部21bに、ポンプ22aをポンプ22bに置き換えたものに相当する。したがって、一次回路構成要素室1内の絶縁油の温度制御と同様に、二次回路構成要素室2内の絶縁油の温度を設定範囲内に保つことができる。
【0040】
一次回路構成要素と二次回路構成要素は、温度上昇の程度が異なる。実施の形態1では、一次回路構成要素と二次回路構成要素とが別々の要素室に分離して収容され、かつ温度制御装置8によって個別に温度制御される。したがって一次回路構成要素および二次回路構成要素の各々の温度を効率的に設定範囲内に保つことができる。
【0041】
高電圧V1を電圧計13で測定可能な電圧V2に変換するためには、スケールファクタ(言い換えると分圧比)が大きくなければならない。スケールファクタを大きくするためには、抵抗値の大きい抵抗素子および容量値の大きいコンデンサを一次回路構成要素に用いなければならない。しかしながら抵抗素子の抵抗値が大きいほど、その抵抗素子のサイズも大きくなる。コンデンサについても同様であり、容量値が大きいほどコンデンサのサイズが大きくなる。
【0042】
一次抵抗11および一次コンデンサ14のサイズが大きいため、一次回路構成要素室1の容積を大きくしなければならない。一方、高電圧入力端子T1に高電圧V1が印加されると、一次抵抗11および/または一次コンデンサ14が発熱する。このため、一次回路構成要素室1の内部では、一次抵抗11および一次コンデンサ14の大きさに依存する不均一な温度分布が発生する。
【0043】
そこで温度センサ3a,3bは、一次回路構成要素室1の内部の不均一な温度分布をより速く解消するために適切な位置に配置される。
【0044】
図7は、一次回路構成要素室内部の温度センサの配置の一例を示した図である。図7を参照して、温度センサ3a,3bは、一次抵抗11の近傍に設けられる。より好ましくは、図7に示されるように、温度センサ3a,3bは一次抵抗11よりも絶縁油の流れの下流側に設けられる。なお、図7に示した例では、一次抵抗11のほうが一次コンデンサ14よりも温度変化(特に温度上昇)が大きいため、温度センサ3a,3bは一次抵抗11の近傍に設けられる。温度変化の大きい要素の近傍に温度センサを配置することで、その要素の温度変化を速やかに検出できる。したがって、要素室内部の不均一な温度分布を速やかに検出できる。
【0045】
好ましくは、図7に示されるように温度センサ3a,3bは、インピーダンス要素に対して絶縁油の流れの下流側に配置される。これにより、絶縁油と要素との間の熱交換が行なわれた後に温度センサが絶縁油の温度を検出することになるので、温度センサの検出値をインピーダンス要素の温度に近づけることができる。したがって、要素室内部の不均一な温度分布を速やかに検出することができる。
【0046】
なお温度センサは、温度上昇の高い要素の近傍に配置すればよく、好ましくは、その要素に対して絶縁油の流れの下流側に設けられる。したがって一次コンデンサ14のほうが一次抵抗11よりも温度変化(特に温度上昇)が大きい場合には、温度センサを一次コンデンサ14の近傍に設ければよい。好ましくは、温度センサは、一次コンデンサ14に対して絶縁油の下流側に設けられる。
【0047】
また、温度センサの個数は2つに限定されるものではない。たとえば、一次回路構成要素室1の内部の温度分布を考慮して、温度センサの個数および配置を定めればよい。この場合には、一次回路構成要素室1の内部の温度分布を容易に検出できるので、一次回路構成要素室1の内部の温度をより確実に設定範囲内に保つことができる。一方で、一次回路構成要素室内部の代表的な箇所(たとえば温度上昇の速度が大きい箇所)に1つの温度センサを配置してもよい。1つの温度センサのみ用いることで経済性の面でのメリットが得られる。
【0048】
さらに実施の形態1では、一次回路構成要素室1には複数の絶縁油の流入路(配管5a,5b)が接続される。複数の流入路によって、設定範囲内に温度が管理された絶縁油を一次回路構成要素室1の内部に行き渡らせることができる。これによって、一次抵抗11および一次コンデンサ14の大きさに依存する不均一な温度分布を解消することができるので、一次回路構成要素室1の内部の温度を効率的に設定範囲内(より好ましくは設定温度)に保つことができる。
【0049】
絶縁油の流入路および流出路の位置は温度上昇の高い要素の近傍に設置することが好ましい。これによって、その要素の温度をより確実に設定範囲内に保つことができる。
【0050】
なお、一次回路構成要素室1に接続される流出路の数は複数であることが好ましい。流入路だけでなく流出路も複数設けることで、一次回路構成要素室1内部に、絶縁油のスムーズな流れを生じさせることができる。よって、一次回路構成要素室1の内部の不均一な温度分布をより速く解消することができる。
【0051】
以上のように実施の形態1によれば、温度制御装置8によって2つの要素室の各々の内部温度(絶縁油の温度)を一定に保つことができる。これによって各要素室に収容された回路要素のインピーダンスの変化が小さくなるので、スケールファクタの変化が低減される。したがって実施の形態1によれば、高精度で高電圧を測定することができる。さらに温度条件の変化(たとえば夏季、冬季など)による分圧器の校正を不要にすることができる。校正を不要としつつ分圧器を使用できるので、たとえば分圧器を長期間使用できるというメリットが得られる。
【0052】
また、高電圧試験に関する規格としてたとえばIEC60060が挙げられる。IEC60060では、高電圧試験に使用する測定システムの不確かさを規定しており、試験温度に対するスケールファクタの変動の見積もりを要求している。上記の「不確かさ」の規定として「測定システムの校正」、「基準測定システムの不確かさ」、「測定方法・手順」、「データ処理方法」、「測定対象の安定性・再現性」、「測定環境」等がある。また、測定環境に関する要求として、「周囲温度に関する温度効果」、「試験(電圧印加)を行なうことで変動(温度に起因)する短期安定性」などを変動要因として見積もる必要がある。上記のように、実施の形態1によれば、温度によるスケールファクタの変動を低減することができるので、試験温度に対するスケールファクタの変動を見積もることも可能となる。
【0053】
[実施の形態2]
図8は、この発明の第2の実施形態に係る分圧器51を示した図である。図8および図4を参照して、分圧器51は、温度制御装置8に代えて温度制御装置8Aを備える点、および、配管5a,5bにそれぞれ設けられる流量可変部9a,9bを備える点において分圧器50と異なる。流量可変部9a,9bは、絶縁油の流量を変化させるためのものであり、たとえば電磁比例制御弁によって構成される。なお、配管6にも、絶縁油の流量を制御するための流量可変部(たとえば電磁比例制御弁)が設けられていてもよい。この場合には、温度制御装置8Aは流量可変部9a,9bに加えて、配管6に設けられた流量可変部を制御する。
【0054】
温度制御装置8Aは、温度センサ3a,3bの検出値に基づいて一次回路構成要素室1内の絶縁油の温度を制御するとともに、温度センサ4の検出値に基づいて二次回路構成要素室2内の絶縁油の温度を制御する。温度制御装置8Aは、この点において温度制御装置8と同様である。
【0055】
実施の形態2では、温度制御装置8Aは、上記の制御に加えて、流量可変部9a,9bの制御も実行する。この点において温度制御装置8Aは、実施の形態1に係る温度制御装置8と異なる。具体的には、温度制御装置8Aは、温度センサ3aの検出値に基づいて流量可変部9aを制御することにより、配管5aを流れる絶縁油の流量を制御する。同様に、温度制御装置8Aは、温度センサ3bの検出値に基づいて流量可変部9bを制御することにより、配管5bを流れる絶縁油の流量を制御する。
【0056】
図9は、図8に示した温度制御装置の構成の一形態を示した機能ブロック図である。図9を参照して、制御部23aは、温度センサ3a,3bの検出値に基づいて温度調整部21aおよびポンプ22aを制御する。制御部23aは、さらに、温度センサ3aの検出値に基づいて流量可変部9aを制御するとともに、温度センサ3bの検出値に基づいて流量可変部9bを制御する。なお、温度制御装置8Aの他の部分の構成は、図5に示した温度制御装置8の対応する部分の構成と同様である。
【0057】
図10は、図9に示された制御部23aによる絶縁油の温度制御を説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示した処理は、たとえば一定の周期でメインルーチンから呼び出されて実行される。
【0058】
図10および図6を参照して、図10に示したフローチャートでは、ステップS8の処理が追加される点において図6に示したフローチャートと異なる。図10のフローチャートにおける他のステップの処理は、図6のフローチャートの対応するステップの処理と同様であるので以後の説明は繰返さない。
【0059】
制御部23aは、ステップS8において、流量可変部9a,9bを制御することで、配管5a,5bを流れる絶縁油の流量を制御する。たとえば制御部23aは、流量可変部9aについて、温度設定値(たとえば温度設定範囲の中心値)と、温度センサ3aの検出値との差が大きくなるほど絶縁油の流量を大きくする一方、温度設定値と温度センサ3aの検出値との差が大きくなるほど絶縁油の流量を小さくする。流量可変部9bに対する制御も同様である。
【0060】
実施の形態2によれば、一次回路構成要素室1内の温度センサ3a,3bが検出した温度に基づいて、一次回路構成要素室1内に供給される絶縁油の温度を調整し、さらに、複数の流入路(配管5a,5b)の各々を流れる絶縁油の流量を制御するために、流量可変部9a,9bを制御する。具体的には、温度センサの検出値と設定温度との差が大きい場合には、その測定された位置における絶縁油の流量が増加するように流量可変部が制御される。これによって、一次回路構成要素室1の内部の温度を効率的に設定範囲内に保つことができる。
【0061】
なお、実施の形態1と同様に、温度センサ3a,3bは、温度上昇の大きい要素の近傍に配置される。好ましくは、温度センサ3a,3bは、その要素に対して、絶縁油の流れの下流側に配置される(図7参照)。温度センサの個数は特に限定されるものではない。また、一次回路構成要素室1には、複数の流入路(配管5a,5b)が接続される。
【0062】
上記の実施の形態1,2では、絶縁媒体として絶縁油が用いられる。ただし他の液体状の絶縁媒体、あるいはSF6ガス等の気体状の絶縁媒体を本発明に用いることも可能である。本発明によれば、絶縁媒体の温度を制御することによって分圧器のスケールファクタを一定に保つことが可能となる。したがって、本発明では絶縁媒体の種類は特に限定されない。
【0063】
[適用例]
本発明の実施の形態に係る分圧器は、たとえば変圧器、ガス絶縁開閉装置などの高電圧機器の高電圧試験に用いられる。
【0064】
図11は、本発明の実施の形態に係る分圧器の適用例を示した図である。図11を参照して、本発明の実施の形態に係る分圧器50は、インパルス電圧試験装置に用いられる。
【0065】
インパルス電圧発生装置61の上端は、導電線62を介して試験対象の変圧器67の1次巻線の入力端子Bに接続されている。変圧器67の1次巻線の入力端子Bと2次巻線の出力端子Dとは、筐体67aの上面から突出しており、端子B,Dの各々は碍子で覆われている。図には示していないが1次巻線および2次巻線は筐体67a内に収容されており、1次巻線の他方端子Cおよび筐体67aは接地されている。
【0066】
変圧器67の1次巻線の入力端子Bは、導電線65を介して分圧器50の上端の高電圧入力端子Tに接続される。分圧器50の出力端子(ノードN)は電圧計13に接続される。インパルス電圧は、電圧計13によって測定される。
【0067】
なお、分圧器50に代えて分圧器51を図11に示したインパルス電圧試験装置に適用することもできる。
【0068】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1 一次回路構成要素室、2 二次回路構成要素室、3a,3b,4 温度センサ、5,6 送り配管、5a,5b,7a,7b 配管、7 戻り配管、8,8A 温度制御装置、9a,9b 流量可変部、11,101 一次抵抗、12,102 二次抵抗、13,103 電圧計、14,104 一次コンデンサ、15,105 二次コンデンサ、21a,21b 温度調整部、22a,22b ポンプ、23a,23b 制御部、50,51,100,110,120 分圧器、61 インパルス電圧発生装置、62,65 導電線、67 変圧器、67a 筐体、B 入力端子、C 他方端子、D 出力端子、N,N1,N2,N3 ノード、T,T1,T2,T3 高電圧入力端子。
【技術分野】
【0001】
この発明は、高電圧機器等に加えられる電圧を分圧するための分圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
分圧器は、一定比(以下、スケールファクタとも呼ぶ)で電圧を分圧するためのものである。分圧器の主な利用目的は、一般的に用いられる電圧計では測定できない高電圧を測定することである。電圧V1が一般的に用いられる電圧計では測定できない高電圧、たとえば100kVであるとき、スケールファクタが2000の分圧器を用いることによって、100kVの電圧を50V程度の電圧に変換できる。一般的に用いられる、50V程度を測定可能な電圧計によって分圧器の出力電圧V2を測定し、その出力電圧にスケールファクタを乗じて電圧V1が算定される。分圧器の正確なスケールファクタは、一般的にはスケールファクタが既知である他の分圧器との比較校正により定められる。
【0003】
分圧器を構成する要素として、一般的には抵抗やコンデンサ等のインピーダンス要素が用いられる。これらの素子のインピーダンスは、温度によって変化するという特性を有する。一般的に、抵抗については、温度によるインピーダンス変化係数が10ppm/deg程度の温度特性の良いものを利用できる。しかしコンデンサについては、温度によるインピーダンス変化係数が0.1%/deg程度である。すなわち温度が10℃変化すると、コンデンサの静電容量値は1%程度変化することになる。
【0004】
分圧器は、電気的に直列接続された一次回路と二次回路とから構成される。一次回路のインピーダンスおよび二次回路のインピーダンスによってスケールファクタが決定される。インピーダンス温度特性が一次回路構成要素と二次回路構成要素とで同一であれば、温度が変化してもスケールファクタは変化せずに一定に保たれる。しかし、一次回路の構成要素と二次回路の構成要素とを同一材料で構成しても、その特性には必ずばらつきが生じるので、インピーダンス温度係数も一次回路構成要素と二次回路構成要素とで異なる。このため分圧器のスケールファクタが温度によって変化する。
【0005】
分圧器のスケールファクタが温度によって変化した場合、たとえば下記の2つの問題が発生する。
【0006】
(1)温度を一定に保てない限り分圧器のスケールファクタが変動するため、高電圧の測定精度が悪化する。
【0007】
(2)高精度で高電圧の測定を行なうためには、分圧器を使用する温度条件に合わせて分圧器のスケールファクタを校正する必要がある。たとえば、夏期と冬期とに分圧器のスケールファクタを校正する必要がある。
【0008】
温度変化によらず高電圧を精度良く測定するために提案された構成が、たとえば特開平4−335713号公報(特許文献1)に開示されている。この文献に開示された分圧器は、負荷端部の高圧電極と接地タンク近傍に電気的に浮遊して設けられた低圧側電極との間で形成される静電容量と、接地タンク外部に設けられた低圧側コンデンサとによって構成される。低圧側電極は膨張収縮可能な中空部材から構成される。この中空部材内に絶縁ガスを充填・回収することで高圧側電極と低圧側電極との間の相対的な位置を変化させることができるので静電容量が調整される。これによって分圧比を調整することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−335713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特開平4−335713号公報(特許文献1)に開示された構成によれば、スケールファクタを一定に保つために、中空部材内に絶縁ガスを充填・回収することによる静電容量の調整を行なわなければならない。静電容量の調整とはスケールファクタの校正に対応する。したがって特開平4−335713号公報(特許文献1)に開示された構成によれば、上記(1)の問題は解決可能であっても上記(2)の問題が解決されていない。
【0011】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであって、使用時の周囲温度が変化しても、高電圧の測定精度を低下させず、かつ、スケールファクタを校正する必要のない分圧器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一局面に係る分圧器は、電気的に直列に接続された第1および第2のインピーダンス要素と、第1のインピーダンス要素を収容し、かつ絶縁媒体で満たされる第1の収容室と、第2のインピーダンス要素を収容し、かつ絶縁媒体で満たされる第2の収容室と、第1の収容室の内部に満たされた絶縁媒体の温度を検出する第1の検出部と、第2の収容室の内部に満たされた絶縁媒体の温度を検出する第2の検出部と、第1および第2の収容室の各々の内部に満たされた絶縁媒体の温度を制御する温度制御部とを備える。第1の収容室の内部の絶縁媒体の温度制御時には、温度制御部は、第1の収容室を経由して絶縁媒体を循環させるとともに、第1の検出部が検出した温度に基づいて第1の収容室に供給される絶縁媒体の温度を調整する。第2の収容室の内部の絶縁媒体の温度制御時には、温度制御部は、第2の収容室を経由して絶縁媒体を循環させるとともに、第2の検出部が検出した温度に基づいて第2の収容室に供給される絶縁媒体の温度を調整する。第1の検出部は、第1のインピーダンス要素の近傍に配置される。第2の検出部は、第2のインピーダンス要素の近傍に配置される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、絶縁媒体の温度を制御することによって第1および第2のインピーダンス要素の温度を制御することができるので、スケールファクタの温度変化が低減される。これにより分圧器の校正を不要としつつ高い精度で高電圧を測定できる。さらに、収容室内部に温度分布が生じた場合にも、効率よく収容室内部の温度を設定範囲内に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】抵抗を回路構成要素として構築された抵抗分圧器を示した図である。
【図2】コンデンサを回路構成要素として構築された容量分圧器を示した図である。
【図3】抵抗とコンデンサとを回路構成要素として構築された抵抗容量分圧器の構成を示した図である。
【図4】この発明の第1の実施形態に係る分圧器50を示した図である。
【図5】図4に示した温度制御装置の構成の一形態を示した機能ブロック図である。
【図6】図5に示された制御部23a,23bによる絶縁油の温度制御を説明するためのフローチャートである。
【図7】一次回路構成要素室内部の温度センサの配置の一例を示した図である。
【図8】この発明の第2の実施形態に係る分圧器51を示した図である。
【図9】図8に示した温度制御装置の構成の一形態を示した機能ブロック図である。
【図10】図9に示された制御部23aによる絶縁油の温度制御を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態に係る分圧器の適用例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0016】
[分圧器の基本構成]
図1は、抵抗を構成要素として構築された抵抗分圧器を示した図である。図1を参照して、分圧器100は、高電圧入力端子T1とアースとの間に直列接続された一次抵抗101および二次抵抗102を備える。ノードN1は一次抵抗101および二次抵抗102の接続点に相当する。一次抵抗101の抵抗値をR1、二次抵抗102の抵抗値をR2、高電圧入力端子T1に印加される電圧をV1、一次抵抗101および二次抵抗102によって分圧された電圧をV2とする。ノードN1とアースとの間に電圧計103が接続され、電圧V2は電圧計103で測定される。原理的には、(R1+R2)/R2で表わされるスケールファクタを電圧V2に乗じることによって、高電圧V1(=V2×(R1+R2)/R2)を算定することができる。図1に示した抵抗分圧器は、主に直流電圧とインパルス電圧との測定に利用される。
【0017】
図2は、コンデンサを構成要素として構築された容量分圧器を示した図である。図2を参照して、分圧器110は、高電圧入力端子T2とアースとの間に直列接続された一次コンデンサ104および二次コンデンサ105を備える。ノードN2は一次コンデンサ104および二次コンデンサ105の接続点に相当する。一次コンデンサ104の静電容量値をC1、二次コンデンサ105の静電容量値をC2とする。ノードN2とアースとの間に電圧計103が接続され、電圧V2は電圧計103で測定される。スケールファクタは原理的には(C1+C2)/C1で計算される。図2に示した容量分圧器は、主に交流電圧の測定に利用される。
【0018】
図3は、抵抗とコンデンサとを構成要素として構築された抵抗容量分圧器の構成を示した図である。図3を参照して、分圧器120は、高電圧入力端子T3とアースとの間に直列接続された一次抵抗101および二次抵抗102を備えるとともに、高電圧入力端子T3とアースとの間に直列接続された一次コンデンサ104および二次コンデンサ105を備える。一次抵抗101および一次コンデンサ104は、高電圧入力端子T2とノードN3との間に並列接続される。同様に、二次抵抗102および二次コンデンサ105は、ノードN3とアースとの間に並列接続される。ノードN3とアースとの間に電圧計103が接続される。
【0019】
図3に示した構成は、図1および図2に示した構成を組み合わせることで得られる。分圧器120においては、直流電圧領域でのスケールファクタは抵抗分圧器(分圧器100)と同様に計算され、交流電圧・インパルス電圧領域でのスケールファクタは容量分圧器(分圧器120)と同様に計算される。図3に示した抵抗容量分圧器は、主に直流電圧、交流電圧、およびインパルス電圧の測定に利用される。
【0020】
本発明は上記のいずれの構成の分圧器に対しても適用可能であるが、以下では代表的に、本発明を抵抗容量分圧器に適用した形態を説明する。
【0021】
[実施の形態1]
図4は、この発明の第1の実施形態に係る分圧器50を示した図である。図4を参照して、分圧器50は、一次回路構成要素を収容する一次回路構成要素室1と、二次回路構成要素を収容する二次回路構成要素室2とを備える。分圧器50は、さらに、インピーダンス要素として、一次抵抗11と、二次抵抗12と、一次コンデンサ14と、二次コンデンサ15とを備える。
【0022】
一次抵抗11および一次コンデンサ14は、一次回路を構成するインピーダンス要素であり、一次回路構成要素室1に収容される。二次抵抗12および二次コンデンサ15は、二次回路を構成するインピーダンス要素であり、二次回路構成要素室2に収容される。一次抵抗11および一次コンデンサ14は、高電圧入力端子TとノードNとの間に並列接続されることで一次回路を構成する。二次抵抗12および二次コンデンサ15は、ノードNとアースとの間に並列接続されることで二次回路を構成する。一次抵抗11および二次抵抗12は高電圧入力端子Tとアースとの間に電気的に直列接続され、一次コンデンサ14および二次コンデンサ15は高電圧入力端子Tとアースとの間に電気的に直列接続される。
【0023】
一次回路および二次回路は、高電圧入力端子Tとアースとの間の高電圧V1を分圧する。電圧計13はノードNとアースとの間の電圧V2を測定する。電圧計13によって計測された電圧V2にスケールファクタを乗じることによって高電圧V1が算定される。
【0024】
一次回路構成要素室1および二次回路構成要素室2には、絶縁媒体である絶縁油が充満している。分圧器50は、温度センサ3a,3b,4と、送り配管5,6と、戻り配管7と、温度制御装置8とを備える。温度制御装置8から送られた絶縁油は、送り配管5を通じて一次回路構成要素室1に導入される。一方、一次回路構成要素室1から排出された絶縁油は戻り配管7を通じて温度制御装置8に戻される。
【0025】
送り配管5から分岐した複数の配管(図1では一例として配管5a,5bを示す)が絶縁油の流入路として一次回路構成要素室1に接続される。複数であれば一次回路構成要素室1に結合される流入路の数は特に限定されるものではない。また、一次回路構成要素室1には絶縁油の流出路として配管7aが接続される。配管7aは戻り配管7に結合される。より好ましくは、一次回路構成要素室1に結合される流出路の数は複数である。
【0026】
同じく二次回路構成要素室2には、送り配管6を通じて温度制御装置8から絶縁油が送られる。二次回路構成要素室2には絶縁油の流出路として配管7bが接続される。配管7aは戻り配管7に結合される。一次回路構成要素室1および二次回路構成要素室2に送られた絶縁油は、戻り配管7を通じて温度制御装置8に戻る。
【0027】
一次回路構成要素室1内の絶縁油の温度は温度センサ3a,3bによって検出される。二次回路構成要素室2内の絶縁油の温度は温度センサ4によって検出される。温度センサ3a,3b,4の検出値は温度制御装置8に送られる。温度制御装置8は、温度センサ3a,3bの検出値に基づいて一次回路構成要素室1内の絶縁油の温度を制御する。同じく温度制御装置8は、温度センサ4の検出値に基づいて二次回路構成要素室2内の絶縁油の温度を制御する。
【0028】
図5は、図4に示した温度制御装置の構成の一形態を示した機能ブロック図である。図5を参照して、温度制御装置8は、温度調整部21a,21bと、ポンプ22a,22bと、制御部23a,23bとを備える。温度調整部21aと、ポンプ22aと、制御部23aとは、一次回路構成要素室1内に満たされる絶縁油の温度を制御する。温度調整部21bと、ポンプ22bと、制御部23bとは、二次回路構成要素室2内に満たされる絶縁油の温度を制御する。ただし、制御部23aと制御部23bとが1つの機能ブロックに統合されていてもよい。
【0029】
戻り配管7から戻る絶縁油は、分岐されて温度調整部21a,21bに流入する。温度調整部21aは絶縁油を加熱または冷却することによって、絶縁油の温度を調整する。たとえば温度調整部21aは、絶縁油を加熱するためのヒータおよび絶縁油を冷却するための冷却器(たとえば水冷式あるいは空冷式の冷却器であるがこれらに限定されない)によって構成される。
【0030】
ポンプ22aは、温度調整部21aによって温度が調整された絶縁油を、送り配管5を通じて送出する。制御部23aは、温度センサ3a,3bの検出値に基づいて温度調整部21aおよびポンプ22aを制御する。制御部23aは、温度センサ3a,3bの検出値の少なくとも一方が設定範囲から外れた場合に、絶縁油の温度が設定範囲内となるように温度調整部21aを制御する。この場合、制御部23aは、ポンプ22aを駆動させる。絶縁油の温度が設定範囲内である場合には、制御部23aは、ポンプ22aを停止状態にする。
【0031】
温度調整部21b、ポンプ22b、および制御部23bの機能は、それぞれ上記の温度調整部21a、ポンプ22a、制御部23aの機能と同様であり、ポンプ22bが送り配管6に絶縁油を送出する点で異なっている。したがって温度調整部21b、ポンプ22b、および制御部23bに関する詳細な説明は以後繰返さない。二次回路構成要素室2内の絶縁油は、その温度が設定範囲から外れた場合に、温度調整部21bによって調整されるとともにポンプ22bによって循環させられる。
【0032】
図6は、図5に示された制御部23a,23bによる絶縁油の温度制御を説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示した処理は、たとえば一定の周期でメインルーチンから呼び出されて実行される。制御部23a,23bの各々は、このフローチャートに沿って温度制御を実行する。以下では代表的に、制御部23aによって実行される温度制御について説明する。
【0033】
図6を参照して、処理が開始されると、ステップS1において、制御部23aは温度センサ3a,3bから検出値を取得する。ステップS2において、制御部23aは、温度センサ3a,3bの検出値のうち少なくとも1つが設定範囲の上限値を上回るか否かを判定する。温度センサ3a,3bの検出値のうち少なくとも1つが上限値を上回る場合(ステップS2においてYES)、処理はステップS3に進む。一方、温度センサ3a,3bの検出値のいずれも上限値以下である場合(ステップS2においてNO)、処理はステップS4に進む。なお、上限値は予め設定されている。
【0034】
ステップS3において、制御部23aは温度調整部21aを制御することにより絶縁油を冷却する。処理はステップS3からステップS6に進む。
【0035】
一方、ステップS4において制御部23aは、温度センサ3a,3bの検出値のうち少なくとも1つが設定範囲の下限値を下回るか否かを判定する。温度センサ3a,3bの検出値のうち少なくとも1つが下限値を下回る場合(ステップS4においてYES)、処理はステップS5に進む。一方、温度センサ3a,3bの検出値のいずれも下限値以上である場合(ステップS4においてNO)、処理は後述するステップS7に進む。なお、下限値は予め設定されている。
【0036】
ステップS5において、制御部23aは温度調整部21aを制御することにより絶縁油を加熱する。次にステップS6において、制御部23aはポンプ22aを駆動させる。
【0037】
一方、ステップS7において、制御部23aはポンプ22aが停止状態となるようにポンプ22aを制御する。ステップS6またはステップS7の処理が終了すると全体の処理はメインルーチンに戻される。
【0038】
図6に示したフローチャートによれば、一次回路構成要素室1内の絶縁油の温度を設定範囲内に保つことができる。温度センサ3a,3bの検出値のうち少なくとも1つが設定範囲の上限値を上回る場合(ステップS2においてYES)、あるいは温度センサ3a,3bの検出値のうち少なくとも1つが設定範囲の下限値を下回る場合(ステップS4においてYES)には、温度調整部21aによって絶縁油が冷却または加熱されてポンプ22aが動作する(ステップS3,S5,S6)。したがって、一次回路構成要素室1内には、設定範囲内に温度が調整された絶縁油が導入される。一方、温度センサ3a,3bの検出値の両方が上限値以下かつ下限値以上、すなわち設定範囲内である場合(ステップS2においてNO、かつステップS4においてNO)、ポンプ22aは停止状態とされる(ステップS7)。この場合には、一次回路構成要素室1内の絶縁油の温度が設定範囲内に保たれているので温度制御装置8による温度調整は不要となる。
【0039】
同様に、制御部23bは温度センサ4の検出値に基づいてステップS1〜S7の処理を実行する。制御部23bによる処理は、上記の処理において、温度センサ3a,3bを温度センサ4に、温度調整部21aを温度調整部21bに、ポンプ22aをポンプ22bに置き換えたものに相当する。したがって、一次回路構成要素室1内の絶縁油の温度制御と同様に、二次回路構成要素室2内の絶縁油の温度を設定範囲内に保つことができる。
【0040】
一次回路構成要素と二次回路構成要素は、温度上昇の程度が異なる。実施の形態1では、一次回路構成要素と二次回路構成要素とが別々の要素室に分離して収容され、かつ温度制御装置8によって個別に温度制御される。したがって一次回路構成要素および二次回路構成要素の各々の温度を効率的に設定範囲内に保つことができる。
【0041】
高電圧V1を電圧計13で測定可能な電圧V2に変換するためには、スケールファクタ(言い換えると分圧比)が大きくなければならない。スケールファクタを大きくするためには、抵抗値の大きい抵抗素子および容量値の大きいコンデンサを一次回路構成要素に用いなければならない。しかしながら抵抗素子の抵抗値が大きいほど、その抵抗素子のサイズも大きくなる。コンデンサについても同様であり、容量値が大きいほどコンデンサのサイズが大きくなる。
【0042】
一次抵抗11および一次コンデンサ14のサイズが大きいため、一次回路構成要素室1の容積を大きくしなければならない。一方、高電圧入力端子T1に高電圧V1が印加されると、一次抵抗11および/または一次コンデンサ14が発熱する。このため、一次回路構成要素室1の内部では、一次抵抗11および一次コンデンサ14の大きさに依存する不均一な温度分布が発生する。
【0043】
そこで温度センサ3a,3bは、一次回路構成要素室1の内部の不均一な温度分布をより速く解消するために適切な位置に配置される。
【0044】
図7は、一次回路構成要素室内部の温度センサの配置の一例を示した図である。図7を参照して、温度センサ3a,3bは、一次抵抗11の近傍に設けられる。より好ましくは、図7に示されるように、温度センサ3a,3bは一次抵抗11よりも絶縁油の流れの下流側に設けられる。なお、図7に示した例では、一次抵抗11のほうが一次コンデンサ14よりも温度変化(特に温度上昇)が大きいため、温度センサ3a,3bは一次抵抗11の近傍に設けられる。温度変化の大きい要素の近傍に温度センサを配置することで、その要素の温度変化を速やかに検出できる。したがって、要素室内部の不均一な温度分布を速やかに検出できる。
【0045】
好ましくは、図7に示されるように温度センサ3a,3bは、インピーダンス要素に対して絶縁油の流れの下流側に配置される。これにより、絶縁油と要素との間の熱交換が行なわれた後に温度センサが絶縁油の温度を検出することになるので、温度センサの検出値をインピーダンス要素の温度に近づけることができる。したがって、要素室内部の不均一な温度分布を速やかに検出することができる。
【0046】
なお温度センサは、温度上昇の高い要素の近傍に配置すればよく、好ましくは、その要素に対して絶縁油の流れの下流側に設けられる。したがって一次コンデンサ14のほうが一次抵抗11よりも温度変化(特に温度上昇)が大きい場合には、温度センサを一次コンデンサ14の近傍に設ければよい。好ましくは、温度センサは、一次コンデンサ14に対して絶縁油の下流側に設けられる。
【0047】
また、温度センサの個数は2つに限定されるものではない。たとえば、一次回路構成要素室1の内部の温度分布を考慮して、温度センサの個数および配置を定めればよい。この場合には、一次回路構成要素室1の内部の温度分布を容易に検出できるので、一次回路構成要素室1の内部の温度をより確実に設定範囲内に保つことができる。一方で、一次回路構成要素室内部の代表的な箇所(たとえば温度上昇の速度が大きい箇所)に1つの温度センサを配置してもよい。1つの温度センサのみ用いることで経済性の面でのメリットが得られる。
【0048】
さらに実施の形態1では、一次回路構成要素室1には複数の絶縁油の流入路(配管5a,5b)が接続される。複数の流入路によって、設定範囲内に温度が管理された絶縁油を一次回路構成要素室1の内部に行き渡らせることができる。これによって、一次抵抗11および一次コンデンサ14の大きさに依存する不均一な温度分布を解消することができるので、一次回路構成要素室1の内部の温度を効率的に設定範囲内(より好ましくは設定温度)に保つことができる。
【0049】
絶縁油の流入路および流出路の位置は温度上昇の高い要素の近傍に設置することが好ましい。これによって、その要素の温度をより確実に設定範囲内に保つことができる。
【0050】
なお、一次回路構成要素室1に接続される流出路の数は複数であることが好ましい。流入路だけでなく流出路も複数設けることで、一次回路構成要素室1内部に、絶縁油のスムーズな流れを生じさせることができる。よって、一次回路構成要素室1の内部の不均一な温度分布をより速く解消することができる。
【0051】
以上のように実施の形態1によれば、温度制御装置8によって2つの要素室の各々の内部温度(絶縁油の温度)を一定に保つことができる。これによって各要素室に収容された回路要素のインピーダンスの変化が小さくなるので、スケールファクタの変化が低減される。したがって実施の形態1によれば、高精度で高電圧を測定することができる。さらに温度条件の変化(たとえば夏季、冬季など)による分圧器の校正を不要にすることができる。校正を不要としつつ分圧器を使用できるので、たとえば分圧器を長期間使用できるというメリットが得られる。
【0052】
また、高電圧試験に関する規格としてたとえばIEC60060が挙げられる。IEC60060では、高電圧試験に使用する測定システムの不確かさを規定しており、試験温度に対するスケールファクタの変動の見積もりを要求している。上記の「不確かさ」の規定として「測定システムの校正」、「基準測定システムの不確かさ」、「測定方法・手順」、「データ処理方法」、「測定対象の安定性・再現性」、「測定環境」等がある。また、測定環境に関する要求として、「周囲温度に関する温度効果」、「試験(電圧印加)を行なうことで変動(温度に起因)する短期安定性」などを変動要因として見積もる必要がある。上記のように、実施の形態1によれば、温度によるスケールファクタの変動を低減することができるので、試験温度に対するスケールファクタの変動を見積もることも可能となる。
【0053】
[実施の形態2]
図8は、この発明の第2の実施形態に係る分圧器51を示した図である。図8および図4を参照して、分圧器51は、温度制御装置8に代えて温度制御装置8Aを備える点、および、配管5a,5bにそれぞれ設けられる流量可変部9a,9bを備える点において分圧器50と異なる。流量可変部9a,9bは、絶縁油の流量を変化させるためのものであり、たとえば電磁比例制御弁によって構成される。なお、配管6にも、絶縁油の流量を制御するための流量可変部(たとえば電磁比例制御弁)が設けられていてもよい。この場合には、温度制御装置8Aは流量可変部9a,9bに加えて、配管6に設けられた流量可変部を制御する。
【0054】
温度制御装置8Aは、温度センサ3a,3bの検出値に基づいて一次回路構成要素室1内の絶縁油の温度を制御するとともに、温度センサ4の検出値に基づいて二次回路構成要素室2内の絶縁油の温度を制御する。温度制御装置8Aは、この点において温度制御装置8と同様である。
【0055】
実施の形態2では、温度制御装置8Aは、上記の制御に加えて、流量可変部9a,9bの制御も実行する。この点において温度制御装置8Aは、実施の形態1に係る温度制御装置8と異なる。具体的には、温度制御装置8Aは、温度センサ3aの検出値に基づいて流量可変部9aを制御することにより、配管5aを流れる絶縁油の流量を制御する。同様に、温度制御装置8Aは、温度センサ3bの検出値に基づいて流量可変部9bを制御することにより、配管5bを流れる絶縁油の流量を制御する。
【0056】
図9は、図8に示した温度制御装置の構成の一形態を示した機能ブロック図である。図9を参照して、制御部23aは、温度センサ3a,3bの検出値に基づいて温度調整部21aおよびポンプ22aを制御する。制御部23aは、さらに、温度センサ3aの検出値に基づいて流量可変部9aを制御するとともに、温度センサ3bの検出値に基づいて流量可変部9bを制御する。なお、温度制御装置8Aの他の部分の構成は、図5に示した温度制御装置8の対応する部分の構成と同様である。
【0057】
図10は、図9に示された制御部23aによる絶縁油の温度制御を説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示した処理は、たとえば一定の周期でメインルーチンから呼び出されて実行される。
【0058】
図10および図6を参照して、図10に示したフローチャートでは、ステップS8の処理が追加される点において図6に示したフローチャートと異なる。図10のフローチャートにおける他のステップの処理は、図6のフローチャートの対応するステップの処理と同様であるので以後の説明は繰返さない。
【0059】
制御部23aは、ステップS8において、流量可変部9a,9bを制御することで、配管5a,5bを流れる絶縁油の流量を制御する。たとえば制御部23aは、流量可変部9aについて、温度設定値(たとえば温度設定範囲の中心値)と、温度センサ3aの検出値との差が大きくなるほど絶縁油の流量を大きくする一方、温度設定値と温度センサ3aの検出値との差が大きくなるほど絶縁油の流量を小さくする。流量可変部9bに対する制御も同様である。
【0060】
実施の形態2によれば、一次回路構成要素室1内の温度センサ3a,3bが検出した温度に基づいて、一次回路構成要素室1内に供給される絶縁油の温度を調整し、さらに、複数の流入路(配管5a,5b)の各々を流れる絶縁油の流量を制御するために、流量可変部9a,9bを制御する。具体的には、温度センサの検出値と設定温度との差が大きい場合には、その測定された位置における絶縁油の流量が増加するように流量可変部が制御される。これによって、一次回路構成要素室1の内部の温度を効率的に設定範囲内に保つことができる。
【0061】
なお、実施の形態1と同様に、温度センサ3a,3bは、温度上昇の大きい要素の近傍に配置される。好ましくは、温度センサ3a,3bは、その要素に対して、絶縁油の流れの下流側に配置される(図7参照)。温度センサの個数は特に限定されるものではない。また、一次回路構成要素室1には、複数の流入路(配管5a,5b)が接続される。
【0062】
上記の実施の形態1,2では、絶縁媒体として絶縁油が用いられる。ただし他の液体状の絶縁媒体、あるいはSF6ガス等の気体状の絶縁媒体を本発明に用いることも可能である。本発明によれば、絶縁媒体の温度を制御することによって分圧器のスケールファクタを一定に保つことが可能となる。したがって、本発明では絶縁媒体の種類は特に限定されない。
【0063】
[適用例]
本発明の実施の形態に係る分圧器は、たとえば変圧器、ガス絶縁開閉装置などの高電圧機器の高電圧試験に用いられる。
【0064】
図11は、本発明の実施の形態に係る分圧器の適用例を示した図である。図11を参照して、本発明の実施の形態に係る分圧器50は、インパルス電圧試験装置に用いられる。
【0065】
インパルス電圧発生装置61の上端は、導電線62を介して試験対象の変圧器67の1次巻線の入力端子Bに接続されている。変圧器67の1次巻線の入力端子Bと2次巻線の出力端子Dとは、筐体67aの上面から突出しており、端子B,Dの各々は碍子で覆われている。図には示していないが1次巻線および2次巻線は筐体67a内に収容されており、1次巻線の他方端子Cおよび筐体67aは接地されている。
【0066】
変圧器67の1次巻線の入力端子Bは、導電線65を介して分圧器50の上端の高電圧入力端子Tに接続される。分圧器50の出力端子(ノードN)は電圧計13に接続される。インパルス電圧は、電圧計13によって測定される。
【0067】
なお、分圧器50に代えて分圧器51を図11に示したインパルス電圧試験装置に適用することもできる。
【0068】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1 一次回路構成要素室、2 二次回路構成要素室、3a,3b,4 温度センサ、5,6 送り配管、5a,5b,7a,7b 配管、7 戻り配管、8,8A 温度制御装置、9a,9b 流量可変部、11,101 一次抵抗、12,102 二次抵抗、13,103 電圧計、14,104 一次コンデンサ、15,105 二次コンデンサ、21a,21b 温度調整部、22a,22b ポンプ、23a,23b 制御部、50,51,100,110,120 分圧器、61 インパルス電圧発生装置、62,65 導電線、67 変圧器、67a 筐体、B 入力端子、C 他方端子、D 出力端子、N,N1,N2,N3 ノード、T,T1,T2,T3 高電圧入力端子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に直列に接続された第1および第2のインピーダンス要素と、
前記第1のインピーダンス要素を収容し、かつ絶縁媒体で満たされる第1の収容室と、
前記第2のインピーダンス要素を収容し、かつ絶縁媒体で満たされる第2の収容室と、
前記第1の収容室の内部に満たされた絶縁媒体の温度を検出する第1の検出部と、
前記第2の収容室の内部に満たされた絶縁媒体の温度を検出する第2の検出部と、
前記第1および第2の収容室の各々の内部に満たされた絶縁媒体の温度を制御する温度制御部とを備え、
前記第1の収容室の内部の絶縁媒体の温度制御時には、前記温度制御部は、前記第1の収容室を経由して絶縁媒体を循環させるとともに、前記第1の検出部が検出した温度に基づいて前記第1の収容室に供給される絶縁媒体の温度を調整し、
前記第2の収容室の内部の絶縁媒体の温度制御時には、前記温度制御部は、前記第2の収容室を経由して絶縁媒体を循環させるとともに、前記第2の検出部が検出した温度に基づいて前記第2の収容室に供給される絶縁媒体の温度を調整し、
前記第1の検出部は、前記第1のインピーダンス要素の近傍に配置され、
前記第2の検出部は、前記第2のインピーダンス要素の近傍に配置される、分圧器。
【請求項2】
前記第1の検出部は、前記第1のインピーダンス要素に対して絶縁媒体の流れの下流側に設けられ、
前記第2の検出部は、前記第2のインピーダンス要素に対して絶縁媒体の流れの下流側に設けられる、請求項1に記載の分圧器。
【請求項3】
前記第1のインピーダンス要素は、電圧入力端子と電圧測定ノードとの間に電気的に接続され、
前記第2のインピーダンス要素は、前記電圧測定ノードとアースとの間に電気的に接続され、
前記第1の収容室は、前記温度制御部から送られた絶縁媒体を前記第1の収容室に導入するための複数の流入路に接続される、請求項2に記載の分圧器。
【請求項4】
前記分圧器は、
前記複数の流入路にそれぞれ設けられて、対応する流入路を流れる絶縁媒体の流量を変化させる複数の流量可変部をさらに備え、
前記第1の検出部は、
前記複数の流入路に対応してそれぞれ設けられた複数の温度センサを含み、
前記温度制御部は、前記複数の温度センサの各々が検出した温度に基づいて、前記第1の収容室に供給される絶縁媒体の温度を調整し、さらに、前記複数の流入路の各々を流れる絶縁媒体の流量を制御するために、前記複数の流量可変部を制御する、請求項3に記載の分圧器。
【請求項1】
電気的に直列に接続された第1および第2のインピーダンス要素と、
前記第1のインピーダンス要素を収容し、かつ絶縁媒体で満たされる第1の収容室と、
前記第2のインピーダンス要素を収容し、かつ絶縁媒体で満たされる第2の収容室と、
前記第1の収容室の内部に満たされた絶縁媒体の温度を検出する第1の検出部と、
前記第2の収容室の内部に満たされた絶縁媒体の温度を検出する第2の検出部と、
前記第1および第2の収容室の各々の内部に満たされた絶縁媒体の温度を制御する温度制御部とを備え、
前記第1の収容室の内部の絶縁媒体の温度制御時には、前記温度制御部は、前記第1の収容室を経由して絶縁媒体を循環させるとともに、前記第1の検出部が検出した温度に基づいて前記第1の収容室に供給される絶縁媒体の温度を調整し、
前記第2の収容室の内部の絶縁媒体の温度制御時には、前記温度制御部は、前記第2の収容室を経由して絶縁媒体を循環させるとともに、前記第2の検出部が検出した温度に基づいて前記第2の収容室に供給される絶縁媒体の温度を調整し、
前記第1の検出部は、前記第1のインピーダンス要素の近傍に配置され、
前記第2の検出部は、前記第2のインピーダンス要素の近傍に配置される、分圧器。
【請求項2】
前記第1の検出部は、前記第1のインピーダンス要素に対して絶縁媒体の流れの下流側に設けられ、
前記第2の検出部は、前記第2のインピーダンス要素に対して絶縁媒体の流れの下流側に設けられる、請求項1に記載の分圧器。
【請求項3】
前記第1のインピーダンス要素は、電圧入力端子と電圧測定ノードとの間に電気的に接続され、
前記第2のインピーダンス要素は、前記電圧測定ノードとアースとの間に電気的に接続され、
前記第1の収容室は、前記温度制御部から送られた絶縁媒体を前記第1の収容室に導入するための複数の流入路に接続される、請求項2に記載の分圧器。
【請求項4】
前記分圧器は、
前記複数の流入路にそれぞれ設けられて、対応する流入路を流れる絶縁媒体の流量を変化させる複数の流量可変部をさらに備え、
前記第1の検出部は、
前記複数の流入路に対応してそれぞれ設けられた複数の温度センサを含み、
前記温度制御部は、前記複数の温度センサの各々が検出した温度に基づいて、前記第1の収容室に供給される絶縁媒体の温度を調整し、さらに、前記複数の流入路の各々を流れる絶縁媒体の流量を制御するために、前記複数の流量可変部を制御する、請求項3に記載の分圧器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−247663(P2011−247663A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119065(P2010−119065)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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