説明

分子および病理診断のための組織安定化用容器システム

生物サンプルを2つの異なる環境の間で輸送するために保管するシステムが提供される。このシステムは、第一の容器内部を画定する第一の容器(12)と、第二の容器内部を画定する第二の容器(32)と、を備える。第一の容器の開放端を密閉するための第一の閉鎖手段(22)が用意され、この第一の閉鎖手段は、サンプルホルダを受けるようになされている。また、第二の容器の開放端を密閉するための第二の閉鎖手段(42)も用意される。第一の容器は、第一の閉鎖手段が第一の容器の開放端を密閉したときに、サンプルホルダを取り外し自在に受け入れるようになされ、第二の容器は、第一の閉鎖手段が第二の容器の開放端を密閉したときに、第一の容器に続いて同じサンプルホルダを受け入れるようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
本願は、2007年10月23日出願の”Container System for Tissue Stabilization for Molecular and Histopathology Diagnostics”と題する米国特許仮出願第60/982,025号の優先権を主張するものであり、引用により同出願の全開示内容を本願に援用する。
【0002】
本発明は、生物組織サンプルを保管するための容器システムに関する。特に、本発明は1種類の試薬あるいは、希望に応じて複数の試薬内に、生物組織サンプルを保管するための2個組容器システム(a two container system)に関する。
【背景技術】
【0003】
生物サンプルは、研究者または臨床医により、特定の病気の存在を判断し、その病気のための適切な治療法を決定する診断的評価のためにごく頻繁に採取される。このようなサンプルはまた、分子診断および核酸分析、特に各種病気の治療のための研究において一般的に行われるようになったRNA、DNA分析用として採取される。高精度のRNAおよびDNA分析を行うために必要不可欠な条件は、生物サンプル中に高品質で完全な状態のRNAとDNAが存在することである。
【0004】
多くの場合、患者または採取源からサンプルを採取した直後に組織学的または細胞学的分析を実施し、サンプルの保管中に発生しうる分子の変化を回避している。このような変化、例えば遺伝子転写等の原因は、未処理のサンプルが特定の環境ストレスを受けることによるサンプル内の核酸の劣化である。しかしながら、サンプル収集直後にサンプル分析を実施することが不可能または非現実的である場合も多くある。したがって、サンプルを管理された条件下に特定の時間にわたって保管しながらも、サンプルの構造や分子の完全性が維持されるようなシステムを提供することが必要である。
【0005】
従来、上記のような保管を実現するための1つの方法は、サンプルを単独の固定試薬の中に浸漬することであった。代表的な固定試薬は10パーセント(%)ホルマリンであるが、水混和性アルコール、エタノール/アセトン混合物およびエタノール/酢酸混合物でもよい。この種の保管に使用される容器は一般に、特定の生物サンプルを処理するのに有効な量の試薬を収容できる、単独の一体的空洞からなるものであった。生物サンプルを試薬と共に容器内に入れ、容器を閉じると、サンプルは固定剤により保存された状態で保管、輸送することができた。このような容器の一例は、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,147,826号明細書ヘイウッド他
【特許文献2】米国特許第4,220,252号明細書ビール(Beall)他
【特許文献3】米国特許第4,034,884号明細書ホワイト他
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの容器は業界内で一定の成功を見ているものの、いくつかの制約がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施形態において、本発明は、閉鎖端と、開放端と、閉鎖端と開放端との間に延在して第一の容器内部を画定する側壁と、を有する第一の容器を含む部品キットを提供する。このキットは、閉鎖端と、開放端と、閉鎖端と開放端との間に延在して第二の容器内部を画定する側壁と、を有する第二の容器を含む。このキットはさらに、第一の時期に第一の容器の開放端を閉鎖し、第二の時期に第二の容器の開放端を閉鎖する第一の閉鎖手段を含み、第一の閉鎖手段は、サンプルホルダを受け入れるようになされている。このキットはさらに、第二の容器の開放端を閉鎖するための第二の閉鎖手段を含む。第一の容器内部は、第一の閉鎖手段が第一の容器の開放端を閉鎖したときに、サンプルホルダを取り外し自在に受け入れるようになされている。第二の容器内部は、第一の閉鎖手段が第二の容器の開放端を閉鎖したときに、同じサンプルホルダを第一の容器内部に続いて受け入れるようになされている。
【0009】
任意で、サンプルホルダは、生物サンプルを保持するための内部空洞を画定する閉鎖可能なハウジングを有する。ハウジングは、第一のチャンバと第二のチャンバの内の少なくとも一方に収容されている流体が内部空洞へと通過できるようになされた複数の流体開口部を有していてもよい。別の構成では、サンプルホルダは組織学カセットである。サンプルホルダは、第一の閉鎖手段に関して回転自在であってもよい。
【0010】
別の構成において、第一の閉鎖手段の少なくとも一部と第一の容器の少なくとも一部は、両者間がねじ係合するようになされている。任意で、第二の閉鎖手段は取り外し自在な膜である。第一の閉鎖手段は、第二の容器と係合して、第二の容器の開放端を閉鎖できるものであってもよい。第一の閉鎖手段の少なくとも一部と第二の容器の少なくとも一部は、両者間がねじ係合するようになされていてもよい。第一の閉鎖手段は第一の容器の開放端と係合可能であり、第一の閉鎖手段は、第一の容器に続いて第二の容器の開放端と係合可能であってもよい。
【0011】
さらに、第一の容器と第二の容器の内の少なくとも一方は、第一の容器を第二の容器と区別するための視覚的な標識を備えていてもよい。別の構成では、第一の容器内部は第一の予定充填容量を画定し、第二の容器内部は第二の予定充満容量を画定し、第二の予定充満容量は第一の予定充満容量と異なる。
【0012】
本発明の別の実施形態において、生物サンプルを保管し保存するためのシステムは、閉鎖端と、開放端と、閉鎖端と開放端との間に延在して第一の容器内部を画定する側壁と、を有する第一の容器を備える。このシステムは、閉鎖端と、開放端と、閉鎖端と開放端との間に延在して第二の容器内部を画定する側壁と、を有する第二の容器を備える。このシステムはまた、第一の容器の開放端を閉鎖する第一の閉鎖手段を備える。第一の閉鎖手段は、サンプルホルダを受けるようになされている底面を有する。このシステムは、第二の容器の開放端を閉鎖する第二の閉鎖手段をさらに備える。第一の溶液が第一の容器の中に入れられ、第二の溶液が第二の容器の中に入れられ、第一と第二の溶液は異なる。第一の閉鎖手段は、第一の閉鎖手段が第一の容器の開放端を閉鎖したときにサンプルホルダを第一の容器の中に入れるようになされており、第一の閉鎖手段は、第一の閉鎖手段が第二の容器の開放端を閉鎖したときに、サンプルホルダを第一の容器に続いて第二の容器の中に入れるようになされている。
【0013】
サンプルホルダは、生物サンプルを保持するための内部空洞を画定する閉鎖可能なハウジングを備えていてもよく、ハウジングは、第一のチャンバと第二のチャンバの内の少なくとも一方に収容されている流体が内部空洞の中へと通過できるようなされた複数の流体用開口部を有する。別の構成において、サンプルホルダは組織学用カセットである。任意で、システムは、第一の閉鎖手段に関して回転自在である。また別の実施形態では、第二の閉鎖手段は取り外し可能な膜である。
【0014】
本発明の他の実施形態において、生物サンプルを保管し保存するためのアセンブリは、閉鎖端と、開放端と、閉鎖端と開放端との間に延在して容器内部を画定する側壁と、を有する容器を備える。容器内部の一部はサンプルホルダ用空洞を画定する。このアセンブリはまた、容器の開放端を閉鎖するための閉鎖手段を備える。サンプルホルダを受けるようになされたプラットフォームは、閉鎖手段と回転自在に係合する。サンプルホルダ用空洞は、閉鎖手段が容器の開放端と係合したときに、サンプルホルダを受け入れるようになされている。
【0015】
ある構成において、閉鎖手段は、閉鎖手段が容器の開放端から外れている離脱位置から、閉鎖手段が容器の開放端を閉鎖する係合位置へと移動可能である。ある具体的な構成において、プラットフォームがサンプルホルダ用空洞と位置合わせされていないと、閉鎖手段は離脱位置から係合位置へと移動できない。任意で、容器内部に関するプラットフォームの方位は、容器に関する閉鎖手段の回転中も略一定のままである。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態において、生物サンプルを保管し保存するための方法は、閉鎖端と、開放端と、閉鎖端と開放端との間に延在して第一の容器内部を画定する側壁と、を有し、第一の溶液が第一の容器内部の中に入れられている第一の容器を用意するステップを含む。この方法はまた、閉鎖端と、開放端と、閉鎖端と開放端との間に延在して第二の容器内部を画定する側壁と、を有し、第二の溶液が第二の容器内部に入れられている第二の容器を用意するステップを含む。第二の溶液は、第一の容器と異なる。この方法はまた、第一の閉鎖手段を第一の容器と係合させて、第一の容器の開放端を閉鎖するステップを含む。第一の閉鎖手段は、中に生物サンプルを収容するサンプルホルダを有し、第一の溶液に生物サンプルを浸漬するようになされている。この方法は、第一の閉鎖手段を第二の容器に係合させて、第二の容器の開放端を閉鎖するステップをさらに含む。第一の閉鎖手段はさらに、生物サンプルを第一の溶液に浸漬させた後に、前記生物サンプルを第二の溶液に浸漬させるようになされている。
【0017】
本発明の詳細と利益は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読むことによって明らかとなるであろう。図中、全体を通じて同様の部品には同様の参照番号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の1つの実施形態による容器システムの斜視図である。
【図2】第一の容器内部が示されている、図1のシステムの第一の容器と第二の閉鎖手段の斜視図である。
【図3】第一の閉鎖手段を取り付けた状態の、図1のシステムの第一の容器の底面斜視図である。
【図4】第二の容器内部が示されている、図1のシステムの第二の容器と第二の閉鎖手段の斜視図である。
【図5】第二の閉鎖手段を取り付けた状態の、図1のシステムの第二の容器の底面斜視図である。
【図6】本発明の1つの実施形態において、サンプルホルダを第一の閉鎖手段に連結するプラットフォームの斜視図である。
【図7A】サンプルホルダの1つの実施形態の開放状態を示す斜視図である。
【図7B】サンプルホルダの1つの実施形態の閉鎖状態を示す斜視図である。
【図8】サンプルホルダがプラットフォームと枢動連結によって第一の閉鎖手段に回転自在に連結される、図1の第一の閉鎖手段の分解図である。
【図9】ねじ山の設けられた部材が配置されている様子を示す、図1の第一の閉鎖手段の底面斜視図である。
【図10】ねじ山の設けられた部材が配置されている様子を示す、図1の第二の閉鎖手段の底面斜視図である。
【図11A】本発明に関して使用されるプラットフォームの別の実施形態の斜視図である。
【図11B】図11Aのプラットフォームの前面図である。
【図11C】図11Bの線11C−11Cで切ったプラットフォームの側面断面図である。
【図11D】図11Aのプラットフォームの側面図である。
【図11E】図11Aのプラットフォームの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明において、空間的方位を表す用語が使用されている場合、これは、添付の図面に描かれ、またはその他、以下の詳細な説明の中に記載されている参照実施形態の方位に関するものである。しかしながら、以下に紹介する実施形態は、さまざまな変化形や実施態様を採ることができると理解するべきである。また、添付の図面に描かれ、本明細書に記載されている具体的な機器は単に例に過ぎず、限定するものと考えるべきではないと理解するべきである。
【0020】
本発明の容器システムによれば、生物サンプル、例えば分子および組織学的診断、特に組織病理学試験のための組織サンプル等の保管が可能となる。特に、この容器システムは、各種の試薬溶液を収容するための複数の容器を備え、組織サンプルを収容するサンプルホルダを受け入れるようになされており、組織サンプルを複数の容器のうちの1つまたは複数の間で移動させることができる。このような組織サンプルの移動は、複数の容器の全てが組織サンプルホルダの取り付けられる閉鎖手段を受け入れられるようになされているため、組織サンプルホルダを容器の内の1つの閉鎖手段に連結することによって行ってもよい。
【0021】
例えば、容器システムは、第一の容器と第二の容器を備えていてもよく、各容器は、開放端と、閉鎖端と、開放端と閉鎖端との間に延在して容器内部を画定する側壁と、を備えてなる。したがって、液体媒体を容器の内の少なくとも1つ、例えば第二の容器に入れてもよい。このようにして、例えば第一の容器の中に入れられた組織サンプルを取り扱い、処理してから、組織を第二の容器の中の溶液と接触させることができる。本明細書内で詳しく説明するように、本発明の1つの実施形態において、第一の容器は空の保管用容器としてもよく、第二の容器に、病理診断のためにサンプルを固定させる組織固定剤としての試薬をはじめとする液体媒体を入れてもよい。このようにして、2つの容器をサンプリングキットとして提供してもよく、組織サンプルを第一の容器の中に入れ、希望に応じて、後にサンプルを第二の容器に移し替えて、組織サンプルを第二の容器の中の溶液と流体接触させてもよい。あるいは、第一の容器には試薬を入れ、第二の容器を空にしてもよく、組織サンプルをまず試薬の入った第一の容器の中に入れて、組織サンプルが所望の時間にわたって試薬と接触した後に、組織サンプルを保管および後の分析のために空の第二の容器に移してもよい。
【0022】
本発明の別の実施形態において、第一の容器には第一の溶液または試薬、例えば組織固定剤溶液等を入れ、第二の容器には第二の溶液または試薬、例えば核酸安定化溶液等を入れておき、組織サンプルを第一の容器の中に入れて、所望の時間だけ第一の溶液と液体接触させた後、組織サンプルを第二の容器に移し替えて、組織サンプルを第二の容器の中の溶液と液体接触させてもよい。したがって、本発明のシステムによれば、特定のサンプルを2つの異なる環境内に保管するためのメカニズムが得られる。本明細書で紹介する実施形態は、上記の方法のいずれにも使用できる容器ユニットとシステムの代表的な例である。
【0023】
図面を参照すると、複数の図面を通じて同様の部品は同様の参照番号により指し示されており、図1は、本発明の1つの実施形態による容器ユニット10を示す。一般に、容器システムつまりユニット10は、第一の容器12と、第二の容器32と、第一の閉鎖手段22と、第二の閉鎖手段42と、を備える。容器ユニット10は一般に、サンプルホルダ50と共に使用するものと想定されており、サンプルホルダ50の例を図7A,7Bに示す。容器ユニット10の個々の構成要素は、液体および/または気体に対して不浸透性の好適な材料、例えばガラスおよび/またはプラスチックで作製してもよい。1つの実施形態において、第一の容器12と第二の容器32は、代表的な材料であるポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ガラス、またはこれらの組み合せの内の1つまたは複数から作製してもよい。
【0024】
図2,3に示される第一の容器12は一般に、開放端14と、閉鎖端16と、開放端14と閉鎖端16との間に延在して第一の容器内部20を画定する側壁18と、を備える。図4,5に示される第二の容器32もまた一般に、開放端34と、閉鎖端36と、開放端34と閉鎖端36との間に延在して第二の容器内部40を画定する側壁38と、を備える。第一の容器内部20は第一の予定充填容量を有し、サンプルホルダ50を受け入れ、収容できる大きさであり、これについては後に詳細に説明する。さらに、第一の容器内部20は内部側壁面28a,28bを有していてもよく、これらは、閉鎖端16および側壁18と共に、サンプルホルダ50の大きさと形状に略対応する空洞26を画定する。第二の容器内部40は、第二の予定充填容量を有し、これは第一の予定充填容量と異なっていても、同じでもよく、第一の容器内部20に収容されるものと同じサンプルホルダ50を受け入れ、収容できる大きさである。第一の容器内部20の場合と同様に、第二の容器内部40もまた、内部側壁面48a,48bを有していてもよく、これらは、閉鎖端36および側壁38と共に、サンプルホルダ50の大きさと形状に略対応する空洞46を画定する。
【0025】
第一の容器12は、第一の閉鎖端16に隣接する複数の構造リブ15を第一の閉鎖端16の外面上に有していてもよい。リブ15は第一の閉鎖端16を横切って延び、複数のリブ15が中心点17で出会うようになっていてもよい。このようなリブ15によって、第一の容器12は構造的に健全となり、第一の容器12のための安定した底面が得られ、複数のリブが第一の容器12のための略平面の表面を形成するため、テーブルの上に立てて置くことができる。さらに、このようなリブ15により、第一の容器12の全体的な寸法は、上記のような安定した底面のある、ユーザにとって取り扱いやすいものとなり、取り扱いやすい外部形状でありながら、内部容量空間は小さく保たれて、余分な試薬の使用を避けるために最低限の量で第一の容器12の中に入れられた液体に、組織サンプルを収容するサンプルホルダ50を適正に浸漬させることができるようになっている。同様に、第二の容器32は、中心点37で出会う複数のリブ35を有していてもよく、容器システムに使用される第三以降の容器も同様な構造であってもよい。
【0026】
容器ユニット10はさらに、図9に示される第一の閉鎖手段22と、図10に示される第二の閉鎖手段42と、を備え、これらは、それぞれ第一の開放端14と第二の開放端34を閉鎖する。第一の閉鎖手段22は第一の容器と結合可能であり、第二の閉鎖手段42は第二の容器32と結合可能である。第一の閉鎖手段22と第一の容器12との結合方法は、液密状態で密閉できれば、摩擦ばめ、スナップフィット、ねじ係合、噛み合い構造による係合その他、いずれでもよい。好ましくは、第一の閉鎖手段22は、それぞれ第一の閉鎖手段22と第一の容器12とに設けられた1組のねじ山部材24a,24bによって、第一の容器12とねじ結合可能である。あるいは、対応するねじ係合は、第一の開放端14の第一の側壁部分における第一の容器12の内面に設けられた雌ねじと係合するための、第一の閉鎖手段22の外側に設けられた雄ねじによって実現してもよい。第二の閉鎖手段42と第二の容器32との結合方法は、液密状態で密閉できれば、摩擦ばめ、スナップフィット、ねじ係合、噛み合い構造による係合その他、いずれでもよい。1つの実施形態において、第二の閉鎖手段42は、それぞれ第二の閉鎖手段42と第二の容器32とに設けられた第二の1組のねじ山部材44a,44bによって、第二の容器32とねじ結合可能である。他の実施形態では、第二の閉鎖手段は第二の容器32の第二の開放端34に取り付けられた、取り外し可能な膜、例えば剥離フォイル(peel away foil)またはワックス材である。
【0027】
ある具体的な実施形態において、第一の閉鎖手段22は第二の容器32とも結合可能であり、結合すると、第一の閉鎖手段22は第二の容器32の第二の開放端34を閉鎖する。したがって、第一の閉鎖手段22は第一の容器12から第二の容器32に移動させることができ、これがサンプルホルダ50を第一の容器12から第二の容器32に移動させるためのメカニズムとなるが、これについて後に詳しく説明する。第一の閉鎖手段22は、液密状態を達成できればどのような方法で第二の容器32と結合してもよいが、好ましくは、第一の閉鎖手段22は第二の容器32とねじ結合可能である。この方式では、第一の閉鎖手段22は、第一の閉鎖手段22に設けられたねじ山部材24aと第二の容器32に設けられたねじ山部材44bとの係合によって、第二の容器32と結合する。
【0028】
容器ユニット10は、サンプルホルダ50に収容された生物サンプルを処理するために、サンプルホルダ50と共に使用されると想定される。サンプルホルダ50は、第一の容器12の中に受け入れられるようになされている。サンプルホルダ50は、診断テスト用のサンプルを準備する際の生物組織サンプルの保管用として当業界で知られているような従来の組織学カセット(「ヒストカセット(histo-cassette)」という)の形態であってもよい。このようなサンプルホルダまたはヒストカセットは、生物試料を後の分析のための準備として流体で処理する間に収容しておくものとして周知である。一般に、このようなサンプルホルダまたはヒストカセットは略長方形であり、平面ハウジング構造が内部空洞を有し、壁面には、流体がハウジングに流れるようにするための複数の開口部がある。多くの場合、取り外し自在または開放自在のカバーが構造を閉鎖し、これは、例えばハウジング構造の一端に沿って設置されて、ドアの様なカバーをハウジング構造に設けるようにするヒンジ等によって行われる。また、上記のようなサンプルホルダまたはヒストカセットには平面が設けられることが多く、これは傾斜していてもよく、ラベル表示や書き込みのための表面となる。こうしたサンプルホルダの寸法は、例えば高さ約0.3インチ(プラスマイナス0.1インチ)、長さ約1.73インチ(プラスマイナス0.1インチ)、幅約1.12インチ(プラスマイナス0.1インチ)であってもよい。本発明で有用なサンプルホルダの例は、特許文献2および特許文献3において紹介されており、引用によって両特許を本願に明確に援用する。
【0029】
例えば、図7A,7Bに示されるように、サンプルホルダ50は、生物組織サンプルを保持するための内部空洞52を画定する対向壁を備える、略長方形の平面ハウジング56を有する。ハウジング56の壁の少なくとも1つは傾斜壁57のように傾斜していてもよく、ラベルを貼付し、あるいは書き込むための表面を提供し、必要に応じて、サンプルホルダ50の中のサンプルを識別するための手段となる。サンプルホルダ50のハウジング56は閉鎖可能な構造であり、ハウジング56に取り付けられるヒンジ式のドアの様な構造55を有していてもよく、これによって組織サンプルを内部空洞52に保管し、またはそこから組織サンプルを取り出すために、内部空洞52に手が届くようにすることができる。ドアの様な構造55をハウジング56に関して旋回させるためのメカニズムとなるフラップによって、ハウジング56に連結されたドアの様な構造55が一体構造となるように、ドアの様な構造55がハウジング56と一体的に形成されてもよい。あるいは、ヒンジで連結されたドアの様な構造55は、例えば旋回点53を通じてハウジング56に連結されていてもよく、旋回点53は、内部空洞52に手が届くように、ハウジング56の片側からドアの様な構造55を開けるためのヒンジとしての役割を果たす。サンプルホルダ50のハウジング56は、その中を流体が流れるようになされた少なくとも1つ、好ましくは複数の流体開口部54を有する。このように、ハウジング56が第一の容器12の中に設置されると、第一の容器12の中の流体は、開口部54を通って流れ、内部空洞52の中に収容された生物組織サンプルと接触することが可能である。
【0030】
前述のように、サンプルホルダ50は、第一の容器12の中で使用するための別の要素として提供されてもよく、または容器10の一部と相互接続されていてもよい。好ましくは、サンプルホルダ50は第一の閉鎖手段22と結合する。このように結合させるには、第一の閉鎖手段22に連結、またはこれと一緒に形成された一体構造としてサンプルホルダ50を提供してもよく、またサンプルホルダ50は、第一の閉鎖手段22と取り外し自在に結合可能、または分離可能に連結される別の構造であってもよい。図8に示されるように、第一の閉鎖手段22は、第一の閉鎖手段22の底面から延びる、サンプルホルダ50を収容するためのプラットフォーム60を備えていてもよい。プラットフォーム60は、サンプルホルダ50を第一の閉鎖手段22に取り付けられた状態に保持するための構造、例えばスナップフィット係合部等を備えていてもよく、またサンプルホルダ50はプラットフォーム60から外すことができてもよい。特に、プラットフォーム60は、一般的な大きさと形状のサンプルホルダ50を収容するための長方形の収納部を画定する構造であってもよい。プラットフォーム60は、サンプルホルダ50と係合して、サンプルホルダ50をプラットフォーム60によって画定される収納部内に保持するための、プラットフォーム60から延びる少なくとも1つの指状部62を有していてもよい。このような指状部62は屈曲可能であってもよく、サンプルホルダ50の縁辺がプラットフォーム60の対応する壁面に接触した所定の位置に保持されて、サンプルホルダ50がプラットフォーム60の収納部に押し込まれると、指状部62はサンプルホルダ50の壁と反対側に反って、その後当初の位置まで戻るため、サンプルホルダ50は傾斜した壁57の縁辺と接触した所定の位置にぱちんと嵌め込まれる。指状部62は、サンプルホルダ50をプラットフォーム60と第一の閉鎖手段22に関して永久的に所定の位置にロックしてもよく、あるいは、希望に応じてサンプルホルダ50をプラットフォーム60から取り外せるように屈曲可能でもよい。
【0031】
プラットフォーム60はまた、サンプルホルダ50のハウジング56がプラットフォーム60の中に収容されたまま、サンプルホルダ50のドア55を開けることができるように、一般的な形状でもよく、これにより、サンプルホルダ50がプラットフォーム60の中で第一の閉鎖手段22に関して所定の位置に保持されている状態で、サンプルホルダ50の内部空洞52にアクセスできる。例えば、プラットフォーム60には、ドア55の取っ手の様な突出部58を収容するための壁切り取り部64があってもよく、プラットフォーム60の全体的な寸法と壁の高さは、取っ手58に触ってドア55を手で開け、ドア55をプラットフォーム60の全面にわたって旋回させるのに障害がないように設計されていてもよい。プラットフォーム60はまた、流体がプラットフォーム60を通過してサンプルホルダ50とその中に収容されているサンプルと接触できるようにするための複数の穴66を有していてもよい。
【0032】
1つの実施形態において、プラットフォームは、大きさと形状の異なるヒストカセットまたはサンプルホルダを収容できるようにする構造を有していてもよい。例えば、図11A−11Eに描かれている別の実施形態に示されるように、プラットフォーム60aは指状部90a,92aを有していてもよく、これらは各種の大きさのサンプルホルダの壁面を支えるための圧縮可能な要素として機能する。このような指状部90a,92aは、プラットフォーム60aの中に設置されたサンプルホルダの壁表面に対して付勢力を与えるための付勢部材またはリーフスプリングとして機能してもよく、サンプルホルダをプラットフォーム60aの側壁に押し付けて、サンプルホルダを所定の場所に保持する。特に、指状部90aは、プラットフォーム60aの中に収容されたサンプルホルダに付勢力を与え、その一方で、指状部90aに対向する面91aは、サンプルホルダの端部をプラットフォーム60aの中に保持し、指状部または突出部62aは、サンプルホルダの別の縁辺をその中に保持する。また、指状部92aはサンプルホルダに付勢力を与え、その一方で、指状部92aに対向する突出部62aは、サンプルホルダの端部を所定の位置に保持する。このような反対向きで同等の力が働くことは、異なる大きさと形状のサンプルホルダを所定の位置に保持するのに役立つ。さらに、壁切り取り部64aを設けて、前述のようにサンプルホルダのドアの取っ手部を収容し、その一方で、希望に応じてサンプルホルダがプラットフォーム内の所定の位置にある間に、ドアを開けるために取っ手部にアクセスきるようにしてもよい。このように、容器ユニット10には、容器ユニット10で使用するための異なる大きさと形状のヒストカセットを収容できる1つのプラットフォームを設けてもよい。さらに、プラットフォーム60aは、上述のように、流体がその中を流れるような複数の穴66aを有していてもよい。このような穴66aは、プラットフォームからサンプルホルダへの流体の流れがサンプルホルダの大きさ、形状および/または表面形状に関係なく、サンプルホルダの中に保持されているサンプルと十分に接触するようなパターンまたは向きであってもよい。
【0033】
1つの実施形態において、サンプルホルダ50は第一の閉鎖手段22と回転自在に係合し、サンプルホルダ50が第一の閉鎖手段22に関して回転する。これを実現するためには、プラットフォーム60を、例えばリング70により確立される旋回連結等によって第一の閉鎖手段22に関して回転できる構造として設け、サンプルホルダ50をプラットフォーム60の中に設けてもよい。この方式を図8に示す。特に、リング70は、第一の閉鎖手段22の下側表面上の対応する構造と係合するようになされた、略円形の構造であってもよい。このように係合させるには、第一の閉鎖手段22に少なくとも1つ、好ましくは複数のタブ23を設け、ここにリング70を回転係合状態で収容するようにしてもよい。タブ23は、好ましくは相互に対向した位置に離間させて配置され、閉鎖手段22の下側表面に周縁回転領域を画定する。リング70は、タブ23によって画定される回転領域内に嵌り、リング70(したがって、プラットフォーム60およびこれに連結されたサンプルホルダ50)と、第一の閉鎖手段22と、の間に回転係合をもたらすようになされている。
【0034】
リング70はまた、リング70の周縁に複数の切り込み72を有していてもよく、これらは、組み立て時に第一の閉鎖手段22のタブ23と位置が合うように設計される。好ましくは、リング70は第一の閉鎖手段22のタブ23の数に対応するように、同じ数の切り込み72を有する。切り込み72は組み立て時にタブ23と位置合わせされもよく、リング70はタブ23によって画定される領域内で押し下げられる。リング70の外周の切り込み72のある部分の直径は、複数のタブ23の間に画定される領域の内径より若干大きく、リング70の位置合わせのためには、切り込み72が複数のタブ23の間の位置にある状態でリング70が押し下げられなければならないようにして、リング70が軽い締まりばめおよび軽いスナップフィット係合で結合されるようにする。このような嵌合は、切り込み72とタブ23を位置合わせし力を入れて閉鎖手段22からリング70を引っ張らない限り、リング70を閉鎖手段22から取り外せないように、リング70を第一の閉鎖手段22に回転自在に取り付けるためのメカニズムとなる。
【0035】
上記のようにタブ23によって画定される領域内でリング70を嵌合させることにより、プラットフォーム60と第一の閉鎖手段22が回転連結される。このようにして、サンプルホルダ50が第一の容器12または第二の容器32の中に設置され、例えばねじ式に取り付ける方法などによってサンプルホルダ50が第一の閉鎖手段22と回転自在に係合した場合、第一の閉鎖手段22を回転させると、プラットフォーム60および/またはサンプルホルダ50の内の一方または両方が側壁内面28a,28bまたは48a,48bの1つまたは複数と接触し、これによってサンプルホルダ50は第一の容器12の空洞26または第二の容器32の空洞46の中の所定の位置に保持される。この方式は、第一の閉鎖手段22が第一の容器12および/または第二の容器32とねじ係合し、その一方で、サンプルホルダ50およびその中に収容される生物サンプルが、結合中も容器内部の中で安定した状態に保持される点で有利である。さらに、第一の閉鎖手段22と第一の容器12は、例えば上述のようなねじ係合を通じて、係合位置と離脱位置とを有し、第一の閉鎖手段22を第一の容器12に取り付け、または第一の容器12から外すために、閉鎖手段22を第一の容器12に関して回転的に位置付けることができる。確実に正しい方位とするために、第一の閉鎖手段22が第一の容器12と係合しない離脱位置から、それが第一の容器12と係合してこれに取り付けられる係合位置へ移動する前に、プラットフォーム60を第一の容器12の空洞26の中で正しく位置合わせしなければならないように、第一の閉鎖手段22が方位を含んでもよい。プラットフォーム60を第一の閉鎖手段22に関して回転させることによって、このような位置に合わせ、および係合をもたらすことができる。1つの実施形態において、第一の閉鎖手段22は、第一の閉鎖手段22が第一の容器12の開放端14から外れる離脱位置から、第一の閉鎖手段22が第一の容器12の開放端14を閉鎖する係合位置に移動できる。第一の閉鎖手段22を離脱位置から係合位置に移動するには、プラットフォーム60を容器内部20のサンプルホルダ用空洞の中に何の障害もなく入れることができるように、プラットフォーム60の位置を容器内部20のサンプルホルダ用空洞に合わせなければならない。別の構成では、容器内部20に関するプラットフォーム60の方位は、第一の容器12に関して第一の閉鎖手段22を回転させている間、略一定したままに保たれる。
【0036】
容器ユニット10の他の態様は、第一の容器12と第二の容器32の間の差別化に関する。その最良の実現方法は、容器の内の少なくとも1つに視覚的標識(複数の場合もある)を配置することである。標識は、第一の容器12または第二の容器32のいずれかの、使用者にとって見やすいどの場所に配置してもよい。1つの実施形態において、標識は第一の閉鎖手段22に配置される。別の実施例では、標識は第二の閉鎖手段42に配置される。標識はまた、第一の容器12または第二の容器32のいずれかの側壁に配置することができる。例えば、標識の形態は、数字、1本の線もしくは線の集合、または色であってもよい。標識はまた、第二の容器32の第二の開放端34を覆う膜と一体形成してもよい。他の実施形態において、第一の容器12は着色された材料で形成され、第二の容器32は異なる色に着色された材料で形成される。
【0037】
第一の容器内部20と第二の容器内部40は、同一のサンプルホルダ50を続けて受け入れるような寸法である。この方式の恩恵により、使用者は、サンプルホルダ50を第一の容器内部20から第二の容器内部40に移動させることができる。さらに、サンプルホルダ50を第一の閉鎖手段22に連結させた状態で提供することにより、第一の閉鎖手段22を第一の容器12から外し、引き続いて第二の容器32(および、同様にしてさらにまた別の容器)に取り付けることができるため、第一の容器12、第二の容器32、および、これに続く容器がいくつあっても、その中に入れるためのサンプルホルダ50を収容する閉鎖手段は1つだけでよい。
【0038】
前述したように、第一の容器内部20と第二の容器内部40には、それぞれ第一の媒体と第二の媒体を入れることができる。1つの実施形態において、第一の容器内部20は、空であって、サンプルホルダ50を第二の容器内部40に挿入する前に、サンプルホルダ50を格納または保留しておく(staging)ための空間の役割を果たす。別の実施形態では、第一の容器内部20には第一の試薬が収容され、第二の容器内部40には第二の試薬が収容され、第一の試薬は第二の試薬と異なる。容器ユニット10は、製造地点において、溶液または試薬等の液体媒体を第一の容器12および/または第二の容器32の中に入れた状態で組み立てられて提供されてもよい。あるいは、上記のような液体媒体は、使用前のいずれかの時点、例えば組織サンプルをサンプルホルダ50に挿入する直前等ににおいて、第一の容器12および/または第二の容器32に充填してもよい。
【0039】
より詳しくは、容器ユニット10は、1試薬システム用として提供してもよい。このようにして、1つの試薬溶液、例えば、ホルマリンのような組織固定剤を第二の容器32の中に入れてもよい。こうした固定剤溶液は、分子診断テストを行うために、組織サンプル内のRNAを安定化させる。あるいは、容器ユニット10は、2溶液または2試薬システム用として提供してもよい。例えば、洗浄液を第二の容器32に入れ、サンプルホルダ50が第一の容器12の中で第一の固定剤試薬に浸漬された後に、サンプルホルダ50から第一の試薬を洗い落とすようにしてもよい。また、各容器に同じ試薬を入れることも可能であり、これはある程度の時間が経過した後に同じ試薬を新しいものに替えることが有利かもしれないからである。あるいは、第一の試薬溶液、例えばホルマリンのような組織固定剤を第一の容器12の中で使用し、第二の試薬溶液、例えば組織サンプルの形態を安定化させるための核酸安定化試薬等の安定化剤を第二の容器32の中に入れてもよい。
【0040】
本発明の容器には、どのような試薬でも使用できる。例えば、固定剤は、ホルマリン、エタノール溶液、カルノア液I(エタノール、酢酸)、カルノア液II(エタノール、クロロホルム、酢酸)、methacarn(メタノール、クロロホルム、酢酸)、Clarkの固定剤、Boonfix等のいずれでもよい。市販されている固定剤としては、これらが全てではないが、MIRSKY’S FIXATIVE(ジョージア州アトランタのNational Diagnostics社が販売)、GLYOFIX(ペンシルバニア州ピッツバーグのShandon Lipshaw社が販売)、HISTOCHOICE(登録商標)(Amrescoが販売)、HISTOFIX(ミネソタ州ニューブライトンのTrend Scientificが販売)、KRYOFIX(登録商標)(Merckが販売)、MICROFIX(コネチカット州イーストグランベリのEnergy Beam Sciences社が販売)、NEOFIX(Merckが販売)、NOTOX(ニュージャージ州ベルミードのEarth Safe Industries社が販売)、OMNIFIX IIおよびOMNIFIX 2000(ニューヨーク州メルヴィルのAnCon Genetics社が販売)、PREFER(ミシガン州バトルクリークのAnatech社が販売)、PRESERVE(コネチカット州イーストグランベリのEnergy Beam Sciences社が販売)、SAFEFIX II(Thermo Fischer Scientific社が販売)、STATFIX(テキサス州ルイスヴィルのStatLab Medical Products社が販売)、S.T.F.(登録商標)(ニューイングランド州オマハのStreck Laboratoriesが販売)、UMFIX(カリフォルニア州トランスのSakura Fineteck USA社が販売)、FINEFIX(コネチカット州シェルトンのMilestone Medicalが販売)等がある。市販されている安定化剤には、これらに限定されないが、RNALATER(登録商標)(テキサス州オースティンのAmbion社が販売)、RNEASY(カリフォルニア州ヴァレンシアのQiagen社が販売)等がある。固定剤および/または安定化剤として使用される既存、または今後発見される他の試薬は、全て本発明に有益であるものとする。
【0041】
容器ユニット10は、第一の容器12と、第二の容器32と、第一の閉鎖手段22と、第二の閉鎖手段42と、を含む部品キットとして販売することができる。この方式では、使用者が各容器にどの溶液(複数の場合もある)を入れるかを決定できる。あるいは、容器ユニット10は、生物サンプルを保存するためのより複雑なシステムの一部として販売してもよく、それは、第一の容器12の中に入った第一の溶液および/または第二の容器32の中に入った第二の溶液を含む。この実施形態において、第二の溶液は、第一の溶液と同じでも違ってもよい。
【0042】
容器ユニット10の基本的な使用方法は、当業者であれば分かるように、所望の生物サンプルをサンプルホルダ50の中に入れるステップと、次に、例えばサンプルホルダ50の取り付けられた第一の閉鎖手段22を第一の容器12に取り付けることによって、サンプルホルダ50を第一の容器内部20の中に挿入するステップを含む。これを実現するために、空洞26内の側壁面28a,28bによって作られるサンプルホルダ用空洞の上に、サンプルホルダ50が取り付けられている状態のプラットフォーム60を位置合わせし、第一の容器12に対して第一の閉鎖手段22を回転させ、これによって、第一の閉鎖手段22が例えばねじ係合によって第一の容器12と係合するようにしてもよく、その間、プラットフォーム60は第一の閉鎖手段22に関して回転し、サンプルホルダはほとんど、または全く回転運動することなく、空洞26の中に保たれる。そうする中で、サンプルホルダ50の中の組織サンプル容器は、第一の容器12の中に入っている溶液、例えば第一の試薬と接触する状態に置かれる。生物組織サンプルが第一の容器内部20の中の試薬と十分に接触した後に、使用者は、サンプルホルダ50を第一のチャンバ内部20から第二のチャンバ内部40に移動させる。これを実現するためには、第二の容器から第二の閉鎖手段(これは、取り外し可能な膜であってもよい)を取り除いてから、第一の閉鎖手段22を第一の容器12から第二の容器32に移動させる。この時点で第一の閉鎖手段22は第二の容器32に取り付けられ、組織サンプルを収容するサンプルホルダ50は第二の容器内部40と接触した状態に置かれ、第二の容器内部40にも試薬が入っていてもよく、好ましくは、第一の容器12の中とは異なる試薬である。サンプルホルダ50は第一の閉鎖手段22と結合した状態にあり、使用者は、サンプルホルダ50が第一の閉鎖手段22と結合した後、サンプルホルダ50に直接接触することなく、サンプルホルダ50を第一の容器内部20と第二の容器内部40の間で移動させる間、第一の閉鎖手段22だけに接触する。この特徴は、保存中に生物サンプルが汚染される可能性をなくすのに役立つ。
【0043】
本発明の実施形態は多くの異なる形態で実現できるが、本発明の具体的な実施形態が図面に示され本明細書に詳細に説明されており、本開示内容は、本発明の原理の例として考えられるべきであり、本発明を図面に示された実施形態に限定するものではないと理解する。当業者にとって、本発明の範囲と精神から逸脱することなく、これら以外のさまざまな実施形態は明らかであり、容易に考案されるであろう。例えば、本願の開示では全般に2個組の容器システムについて説明したが、このシステムの実施形態では、異なる試薬を収容するためのより多くの容器、例えば3個または4個の容器を備えてもよいことが想定される。本発明の範囲は、付属の特許請求範囲およびこれと同等物により判断される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖端と、開放端と、前記閉鎖端と前記開放端との間に延在して第一の容器内部を画定する側壁と、を有する第一の容器と、
閉鎖端と、開放端と、前記閉鎖端と前記開放端との間に延在して第二の容器内部を画定する側壁と、を有する第二の容器と、
第一の時期において前記第一の容器の前記開放端を閉鎖し、第二の時期において前記第二の容器の前記開放端を閉鎖するための第一の閉鎖手段であって、サンプルホルダを受けるようになされた第一の閉鎖手段と、
前記第二の容器の前記開放端を閉鎖するための第二の閉鎖手段と、
を備える部品キットであって、
前記第一の容器内部は、前記第一の閉鎖手段が前記第一の容器の前記開放端を閉鎖したときに前記サンプルホルダを取り外し自在に受けるようになされており、前記第二の容器内部は、前記第一の閉鎖手段が前記第二の容器の前記開放端を閉鎖したときに、前記第一の容器内部に続いて、同じ前記サンプルホルダを受けるようになされていることを特徴とする部品キット。
【請求項2】
前記サンプルホルダは、生物サンプルを保持するための内部空洞を画定する閉鎖可能なハウジングを有し、前記ハウジングは、前記第一の容器と前記第二の容器の内の少なくとも一方に収容された流体が前記内部空洞へと流れることができるようになされた複数の流体開口部を有することを特徴とする請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記サンプルホルダは組織学カセットであることを特徴とする請求項1に記載のキット。
【請求項4】
前記サンプルホルダは、前記第一の閉鎖手段に関して回転可能であることを特徴とする請求項1に記載のキット。
【請求項5】
前記第一の閉鎖手段の少なくとも一部と前記第一の容器の少なくとも一部は、それらの間でねじ係合するようになされていることを特徴とする請求項1に記載のキット。
【請求項6】
前記第二の閉鎖手段は取り外し可能な膜であることを特徴とする請求項1に記載のキット。
【請求項7】
前記第一の閉鎖手段は、前記第二の容器の開放端を閉鎖するために前記第二の容器と係合可能であることを特徴とする請求項1に記載のキット。
【請求項8】
前記第一の閉鎖手段の少なくとも一部と前記第二の容器の少なくとも一部は、それらの間でねじ係合するようになされていることを特徴とする請求項7に記載のキット。
【請求項9】
前記第一の閉鎖手段は前記第一の容器の前記開放端と係合可能であり、前記第一の閉鎖手段は、前記第一の容器に続いて前記第二の容器の前記開放端と係合可能であることを特徴とする請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記第一の容器と前記第二の容器の内の少なくとも一方は、前記第一の容器を前記第二の容器と区別するための視覚的標識を有することを特徴とする請求項1に記載のキット。
【請求項11】
前記第一の容器の前記内部は第一の予定充填容量を画定し、前記第二の容器の前記内部は第二の予定充填容量を画定し、前記第二の予定充填容量は前記第一の予定充填容量と異なることを特徴とする請求項1に記載のキット。
【請求項12】
閉鎖端と、開放端と、前記閉鎖端と前記開放端との間に延在して第一の容器内部を画定する側壁と、を有する第一の容器と、
閉鎖端と、開放端と、前記閉鎖端と前記開放端との間に延在して第二の容器内部を画定する側壁と、を有する第二の容器と、
前記第一の容器の前記開放端を閉鎖するための第一の閉鎖手段であって、サンプルホルダを受けるようになされた底面を有する第一の閉鎖手段と、
前記第二の容器の前記開放端を閉鎖するための第二の閉鎖手段と、
前記第一の容器の中に入れられた第一の溶液と、
前記第二の容器の中に入れられた第二の溶液であって、前記第一の溶液とは異なる第二の溶液と、
を備える、生物サンプルを保管し保存するためのシステムであって、
前記第一の閉鎖手段は、前記第一の閉鎖手段が前記第一の容器の前記開放端を閉鎖したときに前記サンプルホルダを前記第一の容器内部に配置するようになされており、前記第一の閉鎖手段は、前記第一の閉鎖手段が前記第二の容器の前記開放端を閉鎖したときに、前記第一の容器内部に続いて前記第二の容器内部に前記サンプルホルダを配置するようになされていることを特徴とするシステム。
【請求項13】
前記サンプルホルダは、生物サンプルを保持するための内部空洞を画定する閉鎖可能なハウジングを有し、前記ハウジングは、前記第一の容器と前記第二の容器の内の少なくとも一方に収容されている流体が前記内部空洞の中に流れることができるようになされている複数の流体開口部を有することを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記サンプルホルダは組織学カセットであることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記サンプルホルダは、前記第一の閉鎖手段に関して回転自在であることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記第二の閉鎖手段は取り外し可能な膜であることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
閉鎖端と、開放端と、前記閉鎖端と前記開放端との間に延在して容器内部を画定する側壁と、を有する容器であって、前記容器内部の一部がサンプルホルダ用空洞を画定する容器と、
前記容器の前記開放端を閉鎖するための閉鎖手段と、
サンプルホルダを受けるようになされ、前記閉鎖手段と回転自在に係合するプラットフォームと、
を備える、生物サンプルを保管し保存するためのアセンブリであって、
前記サンプルホルダ用空洞は、前記閉鎖手段が前記容器の前記開放端と係合したときに前記サンプルホルダを受けるようになされていることを特徴とするアセンブリ。
【請求項18】
前記閉鎖手段は、前記閉鎖手段が前記容器の前記開放端から外れている離脱位置から、前記閉鎖手段が前記容器の前記開放端を閉鎖する係合位置へと移動可能であり、前記閉鎖手段が前記離脱位置から前記係合位置に移動するためには、前記プラットフォームが前記サンプルホルダ用空洞と同じ位置で整合しなければならないことを特徴とする請求項17に記載のアセンブリ。
【請求項19】
前記容器内部に関する前記プラットフォームの向きは、前記容器に関する前記閉鎖手段の回転中にも略固定して保たれることを特徴とする請求項17に記載のアセンブリ。
【請求項20】
閉鎖端と、開放端と、前記閉鎖端と前記開放端との間に延在して第一の容器内部を画定する側壁と、を有する第一の容器であって、前記第一の容器内部の中に第一の溶液が入れられている第一の容器を用意するステップと、
閉鎖端と、開放端と、前記閉鎖端と前記開放端との間に延在して第二の容器内部を画定する側壁と、を有する第二の容器であって、前記第二の容器内部の中に前記第一の溶液とは異なる第二の溶液が入れられている第二の容器を用意するステップと、
前記第一の容器の前記開放端を閉鎖するために前記第一の容器に第一の閉鎖手段を係合させるステップであって、前記第一の閉鎖手段は生物サンプルを収容するサンプルホルダを有し、前記第一の閉鎖手段は前記第一の溶液の中に前記生物サンプルを浸漬させるようになされている、ステップと、
前記第二の容器の前記開放端を閉鎖するために前記第一の閉鎖手段を前記第二の容器と係合させるステップであって、前記第一の閉鎖手段は、前記生物サンプルを前記第一の溶液に浸漬させた後に、前記生物サンプルを前記第二の溶液に浸漬させるようになされている、ステップと、
を含むことを特徴とする生物サンプルを保管し保存する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【公表番号】特表2011−501197(P2011−501197A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531250(P2010−531250)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/081000
【国際公開番号】WO2009/055600
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】