説明

分子および組織診断用の流体移動組織容器

分子診断検査および/または組織検査のために生物試料を収容するための容器(10)は、提供される。容器(10)は、中に試料ホルダ(40)を収容するための第1チャンバ(20)と、第2チャンバ(26)と、そして、容器(10)を囲うための閉鎖体(50)とを含む。弁(32)のような推移バリヤは、2つのチャンバ間で流体連通状態にある。推移バリヤは、第1チャンバ(20)が第2チャンバ(26)から流体分離状態にある第1位置と、流体が第1チャンバおよび第2チャンバのうちの少なくとも一方から第1チャンバおよび第2チャンバのうちの他方へ通ることができる第2位置との間で推移する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許
本出願は、「分子および組織診断用の流体移動組織容器」と表題を付けられた2007年10月23日に出願された米国特許仮出願第60/982038号明細書の優先権を主張するものであり、この仮出願の全開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、組織試料容器に関する。さらに特に、本発明は、分子診断検査および/または組織検査用の生物組織試料を収容するための試料容器に関する。
【背景技術】
【0003】
生物試料は、ある特定の病気の存在を決定するためおよび病気のための適切な治療法を決定するための診断評価のために、しばしば研究者または臨床家によって得られる。組織試料は、多くの病気の治療のための研究において普通になっている、分子診断と核酸分析とのために、特にRNA分析およびDNA分析のために患者からしばしば得られる。正確なRNA分析およびDNA分析のための不可欠な必要条件は、生物試料内の高品質で無傷なRNAおよびDNAの存在である。
【0004】
しばしば、保管中に起こり得る分子変化を避けるために、患者または源から試料が取り去られたすぐ後に、組織分析または細胞分析は行われるであろう。遺伝子転写のようなこれら変化は、ある特定の環境ストレスに未処理の試料を曝すことによって生じる試料中での核酸の劣化に起因する。しかしながら、試料が収集された直後の試料の分析は、しばしば不可能であるか非現実的である。それ故に、試料の構造的な分子の完全性を維持する、ある一定の期間の間、制御された状況下で、試料を保管するためのシステムを提供することが必要である。
【0005】
伝統的に、この保管を達成することについての一つの方法は、単一の固定試薬中に試料を沈めることによる。典型的な固定試薬は、10パーセント(%)のホルマリンであるが、また、水、 混合可能アルコール、エタノール/アセトン混合物およびエタノール/酢酸混合物を含むことができる。このような保管用に用いられる容器は、概ね、特定の生物組織試料を扱うために有効容積の試薬を収容することができる単一の一体化キャビティで構成されている。生物組織試料は、試薬とともに容器内に入れられ、容器は閉じられ、そして試料は保管され、運ばれ、その間、固定剤によって維持される。このような容器の例がヘイウッドらへの特許文献1に見られることができる。このような容器は産業でいくらかの成功を経験したが、ある特定の制限を受けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7147826号明細書
【特許文献2】米国特許第4220252号明細書
【特許文献3】米国特許第4034884号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明の一実施形態において、生物試料を収容するための容器は、開端部を有し、流体を入れると共に中に少なくとも部分的に試料ホルダを収容するように構成された第1チャンバを含む。容器は、また、中に流体を入れるように構成された第2チャンバと、第1チャンバの少なくとも開端部を囲うための閉鎖体とを含む。推移バリヤは、第1チャンバと第2チャンバとの間に少なくとも部分的に配置される。そのバリヤは、第1チャンバが第2チャンバから流体分離状態にある第1位置から、流体が第1チャンバおよび第2チャンバのうちの少なくとも一方から第1チャンバおよび第2チャンバのうちの他方へ通ることができる第2位置へ推移する。
【0008】
試料ホルダは、閉鎖体に取り外し可能に接続されることができる。任意で、試料ホルダは、閉鎖体に対して回転可能である。1つの構成において、棚部は、閉鎖体に取り付けられ試料ホルダを収容するために適合される。棚部は、閉鎖体に対して回転可能であることができる。試料ホルダは、生物試料を保持するための内部キャビティを区画形成する閉鎖可能なハウジングを含むことができる。試料ホルダのハウジングは、第1チャンバおよび第2チャンバのうちの少なくとも一方内に収容される流体が内部キャビティへ通過することを可能にするための複数の流体開口部をまた含むことができる。特定の構成において、試料ホルダは、組織カセットである。
【0009】
第1チャンバは第1所望満容積を有することができ、第2チャンバは第1所望満容積と異なる第2所望満容積を有することができる。さらなる構成において、第1流体は、第1チャンバ内に配置されることができ、第1流体と異なる第2流体は、第2チャンバ内に配置されることができる。さらなる構成において、推移バリヤは弁である。弁は、第1位置と第2位置との間の弁の動きを可能にするために取っ手を有することができる。
【0010】
第1チャンバは第1ハウジングを含むことができ、第2チャンバは第2ハウジングを含むことができる。第1ハウジングは第2ハウジング内に少なくとも部分的に挿入可能であり得、それにより、第2ハウジング内の流体が弁を介して第1ハウジングの中に移動することをもたらすことができる。弁は、第2ハウジングから第1ハウジングへの流体流れを可能にする一方向弁であることができる。第1ハウジングは、第2ハウジングから第1ハウジングの中への流体の移動に基づいて第1チャンバから排出するための排気口をまた含むことができる。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、生物試料を収容するための容器に向けられる。容器は、第1開端部と第2端部との間に延在するハウジングであって、第1開端部は中に流体および試料ホルダを収容するように構成された第1チャンバを区画形成する、ハウジングを含む。ハウジングは、中に流体を収容するように構成された第2チャンバ、および、ハウジングの少なくとも開端部を囲うための閉鎖体をさらに含む。弁は、第1チャンバと第2チャンバとの間に延在し、第1チャンバが第2チャンバから流体分離状態にある第1位置と、流体が少なくとも第2チャンバから第1チャンバの中へ通ることができる第2位置との間で可動である。
【0012】
任意に、試料ホルダは、閉鎖体に取り外し可能に接続され、閉鎖体から第1チャンバの中へ延在する。試料ホルダは、生物試料を保持するための内部キャビティを区画形成することができる。試料ホルダは、第1チャンバおよび第2チャンバのうちの少なくとも一方内に収容される流体が内部キャビティの中に通ることを可能にするために適合された少なくとも1つの流体開口部を含むことができる。閉鎖体およびハウジングは、ねじ係合状態に取り外し可能に提供されることができる。さらなる構成において、試料ホルダは、閉鎖体およびハウジングの第1チャンバに対して回転可能である。弁は、第1位置と第2位置との間の弁の動きのために取っ手をさらに含むことができる。
【0013】
本発明のさらに別の実施形態にしたがって、生物試料を収容するための容器は、第1チャンバを区画形成し、上に取り外し可能に係合する閉鎖体を有する開端部を含む第1ハウジングを含む。第1チャンバは中に試料ホルダを収容するように構成される。容器は、中に流体を入れると共に中に第1ハウジングの少なくとも一部を収容するように構成された第2チャンバを区画形成する第2ハウジングをまた含む。第1ハウジングおよび第2ハウジングのうちの少なくとも一方は、第1ハウジングの少なくとも一部の第2チャンバの中への挿入に基づいて、流体が第2チャンバから第1チャンバの中へ動き、第1チャンバ内に収容された試料ホルダと接することを可能にするための弁をさらに含む。
【0014】
さらなる構成において、弁は第1ハウジングと関係があって第1チャンバの中への流体流れを可能にする一方向弁である。第1ハウジングは第2チャンバから第1チャンバへの流体の動きに基づいて第1チャンバから排出するための排気口をまた含むことができる。任意に、第1チャンバは中に第1流体を収容するようにさらに構成され、該第1流体は第2チャンバ内の流体と異なる。
【0015】
本発明のさらなる別の実施形態において、少なくとも1つの液体内に生物試料を収容する方法は、開端部を有する第1チャンバ、および、該第1チャンバから隔てられて中に液体を収容する第2チャンバを有する容器を提供するステップを含む。この方法は、また、生物試料を収容する試料ホルダを第1チャンバの中に挿入するステップを含む。該方法は、第2チャンバ内に収容される液体が第1チャンバ内に配置される生物試料に接するように、第1チャンバと第2チャンバとの間の流体連通を確立するステップをさらに含む。
【0016】
第1チャンバは第1液体を含むことができ、第1チャンバと第2チャンバとの間の流体連通を確立するステップは、第1チャンバと第2チャンバとの間の弁を開くステップをさらに含むことができる。第1チャンバと第2チャンバとの間に流体連通を確立するステップは、第1チャンバが第2チャンバから流体分離状態にある第1位置から、流体が第1チャンバと第2チャンバとの間を通ることができる第2位置へ、第1チャンバと第2チャンバとの間に配置される推移バリヤを推移することをまた含むことができる。さらなる構成において、推移バリヤは弁である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態にしたがう生物試料を保管するための容器の斜視図である。
【図2】図1の容器の分解斜視図である。
【図3A】本発明の実施形態における図1の容器の試料ホルダの斜視図であり、閉位置に示されている。
【図3B】本発明の実施形態における図1の容器の試料ホルダの斜視図であり、開位置に示されている。
【図4A】本発明の実施形態における図1の容器の閉鎖体の斜視図である。
【図4B】試料ホルダを一緒に含む、図4Aの閉鎖体の斜視図である。
【図5A】図1の容器の容器ハウジングの上側の斜視図である。
【図5B】図5Aの容器ハウジングの下側の斜視図である。
【図6A】開位置に描かれた弁を有する、図1の6−6線に沿った容器の断面図である。
【図6B】閉位置に描かれた弁を有する、図6Aに示される容器の断面図である。
【図7A】開位置に描かれた弁を有する、図1の7−7線に沿った容器の断面図である。
【図7B】閉位置に描かれた弁を有する、図7Aに示される容器の断面図である。
【図7C】図1の容器で使用するための弁構成要素の斜視図である。
【図8】本発明のさらなる実施形態にしたがう、生物試料を保管するための容器システムの斜視図である。
【図9】図8の容器の分解斜視図である。
【図10】本発明の実施形態における図8の容器の閉鎖体の下側の斜視図である。
【図11】図8の容器の第1ハウジングの下側の斜視図である。
【図12】図8の容器の第2ハウジングの斜視図である。
【図13】第2ハウジングの開端部に位置付けられた第1ハウジングを有する、第1位置での図8に示される容器システムの側断面図である。
【図14】第2ハウジング内に差し込まれる第1ハウジングを有する、第2位置での図8に示される容器システムの側断面図である。
【図15A】本発明に関連する使用のための棚部の代わりの実施形態の斜視図である。
【図15B】図15Aの棚部の正面図である。
【図15C】図15BのA−A線に沿った棚部の側断面図である。
【図15D】図15Aの棚部の側面図である。
【図15E】図15Aの棚部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
説明のために、以下では、空間の方向の用語は、用いられる場合、参照される実施形態と関連し合い、添付図面の図において方向付けられるかまたは他の点では以下の詳細な説明において記述されるだろう。しかしながら、以下に記述される実施形態が多くの代わりの変形および実施形態を考えることができることは理解されるべきである。添付図面の図に表されているおよびここに説明される特定の装置は単に典型的なものであり、限定するものとして考えられるべきではないことはまた理解されるべきである。
【0019】
本発明の容器は、分子診断および組織診断用の、特に組織病理検査用の組織試料のような生物試料の保管を可能にする。特に、容器は互いから流体分離状態の第1チャンバと第2チャンバを含む。推移バリヤは、第1チャンバを第2チャンバから分離させ、第1チャンバが第2チャンバから流体分離状態にある第1方向と、流体が第1および第2チャンバ間の少なくとも1つの方向に通ることができる第2方向との間で移り変わる。したがって、液体培地は第2チャンバのような、チャンバの少なくとも1つに含まれることができる。この方法で、例えば、第1チャンバに含まれる組織試料は、第2チャンバの溶液と該組織が接触する前に、取り扱われるかあるいは処理されることができる。ここにもっと詳細に述べられるように、本発明の一実施形態において、第1チャンバは空であり保管チャンバの代表例であることができ、そして、第2チャンバは組織病理診断用の試料を固定するために組織固定溶液の種類の試薬のような液体培地を含むことができる。このように、組織試料は第1チャンバ内に置かれることができ、そして望まれるとき、第1および第2チャンバを分離するバリヤは、第2チャンバ内の溶液との流体接触状態に組織試料を置くように、推移することができる。
【0020】
本発明のさらなる実施形態では、組織試料は、所望の期間、第1流体との流体接触状態に第1チャンバに置かれることができ、その後、第1チャンバを第2チャンバから分離するバリヤは第2チャンバ内の溶液との流体接触状態に組織試料を置くように推移させられことができるように、第1チャンバは組織固定溶液のような第1流体を含むことができ、第2チャンバはタンパク質安定化溶液の種類の試薬のような第2流体を含むことができる。例えば、第2流体が第2チャンバから第1チャンバの中へ流れ出て、そして第1流体とともに組織試料と直接的に接触することができるように、流体流れはたった1つの方向に生じることができる。代わりに、第1流体は第2チャンバの中に流れ出ることができ、第1および第2流体の混合物は第1チャンバの中に戻ることができ、それにより、第2流体が、第1流体とともに組織試料と接触することを可能にする。ここに説明される実施形態は、これらの様式のいずれででも使用可能である容器の典型である。
【0021】
同様の参照数字が幾つかの図の全体にわたって同様のパーツに向く図面に注意を向けると、図1〜7は本発明の実施形態にしたがう容器10を表す。概ね、容器10はハウジング12、第1チャンバ20、第2チャンバ26、弁32、閉鎖体50、および試料ホルダ40を含む。容器10の個別の構成要素は、ガラスおよび/またはプラスチックのような、液体および/または気体を通さない任意の適当な材料から作られることができる。1つの実施形態では、ハウジング12は、次の代表的な材料のうちの1つまたは1つ以上から作られることができ、それらはポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ガラス、またはその組み合わせである。
【0022】
容器10は、概ね、第1開端部16と第2端部18との間に延在するハウジング壁14を有するハウジング12を含む。ハウジング壁14は第1チャンバ20を区画形成し、第1開端部16は第1チャンバ20の中に延在する。第1チャンバ20は、第1所望満容積を定め、キャビティを含むことができ、該キャビティはその中に試料ホルダ40を受け入れて収容するように所定の大きさに作られることができ、より詳細に説明されるだろう。例えば、第1チャンバ20は底壁面22、側壁面24a、24b、24c、24dを含むことができ、それらは試料ホルダ40の大きさおよび形状に概ね対応する概ね矩形形状のキャビティを区画形成することができる。
【0023】
ハウジング壁14は第2所望満容積を定める第2チャンバ26をさらに区画形成し、第2所望満容積は第1チャンバ20の第1所望満容積と望ましくは異なる。第2チャンバ26はハウジング12の第2端部18に隣接して位置付けられることができる。第2端部18は、第2チャンバ26の中に延在する開端部であることができる。このような配置では、容器10は第2端部18を覆ってハウジング12と結合するためのカバー28をさらに含み、それにより、第2チャンバ26への閉鎖可能なアクセスを提供する。カバー28は、液体密封を提供する、摩擦嵌合、スナップ嵌合、ねじ式係合、組合構造係合、または他の方法のような任意の様式でハウジング12と結合することができる。例えば、対応するねじ山は、カバー28の外面の周囲に関して提供されることができ、第2端部18でハウジング12のハウジング壁14の内面の周囲内にあり、または、カバー28の内面の周囲内に提供されることができ、第2端部18でハウジング壁14の外面の周囲にある。
【0024】
第2チャンバ26は第1チャンバ20の底壁面22の下に延在するハウジング12の全底部分であることができる。または、図5Bに示されるように、第2チャンバ26は第2端部18においてハウジング12の内側の一部のみであることができ、第2端部18におけるハウジング12の残りの内側はデッドスペース27であることができる。
【0025】
第1チャンバ20と第2チャンバ26とが互いに選択的に流体連通状態に置かれることができるように、ハウジング12は構造的特徴を含む。これは、第1チャンバ20と第2チャンバ26との間に延在する流体開口部を提供することによって、達成されることができる。例えば、図5Aおよび5Bに示されるように、第1および第2開口部30、31は第1チャンバ20の底壁面22を通ってそして第2チャンバ26の中に延びることができる。第2チャンバ26との流体連通状態に第1チャンバ20を選択的にセットするために、弁32のような推移バリヤが開口部30、31を横切って提供されることができる。
【0026】
例えば、弁32はハウジング壁14を通して延在することができ、ユーザーによる手動操作のためにハウジング壁14の外部にまで延在する取っ手34を含む。ハウジング12は、弁32を支持して保持するための構造的要素を含み、弁32はハウジング12の内部を横切って延在する内部開口部33のようなハウジング12内に可動に取り付けられ、弁32は内部開口部33内に回転可能な構造体として提供され、取っ手34はハウジング壁14の少なくとも一方の側部から外部に延在する。弁32は、溝35のような構造的特徴を含むことができ、それは内部開口部33内に回転可能な部材として弁32を与えることに対して、ハウジング12の構造的要素と合致することができる。Oリング(不図示)のような封止要素は、弁32とハウジング12との間の液体密封を提供するために、弁32の溝35内のような、弁32とハウジング12との間の係合部にまた提供されることができる。
【0027】
弁32は、その本体を通して延在する(図6A、6B、7A、7B、および7Cに示される)少なくとも1つの通路36をさらに含み、少なくとも1つの通路36はハウジング12に対する弁32の動きに基づいて、第1チャンバ20と第2チャンバ26との間の流体連通を選択的に提供するように選択的に位置付けられることができる。ここに描写されるようにハウジング12の長手方向軸線に関して第2チャンバ26が第1チャンバ20から垂直にずれた実施形態では、通路36は、第1開口部30と第2開口部31との間にそれを通しての流体連通を与えるように、(図6Aおよび6Bにみられるように)90度角のような角を定めることができる。
【0028】
ここに述べられるように、弁32は、(図6Bおよび7Bに示されているような)第1チャンバ20が第2チャンバ26から流体分離状態にある第1位置と、流体が第2チャンバ26から第1チャンバ20まで少なくとも通ることができ、望ましくは両方のチャンバ間を通ることができるように(図6Aおよび7Aに示されているような)第1チャンバ20と第2チャンバ26とが流体連通状態にある第2位置との間で可動である。
【0029】
試料ホルダ40は、容器10での使用のためにさらに提供され、ハウジング12の第1チャンバ20内に受け入れられるように構成されている。試料ホルダ40は、容器10の一部を形成することができ、あるいは、容器10での使用のために別に与えられることができる。試料ホルダ40は、診断検査用の試料の準備の間に生物組織試料を保管するための、当該技術分野で知られているような、従来の組織カセット(「組織カセット」)の形式であることができる。そのような試料ホルダまたは組織カセットは、後の分析のために試料を準備するべく流体で処理する間、生物試料を収容するために知られている。一般的に、このような試料ホルダまたは組織カセットは、内部キャビティを有する概ね矩形で平らなハウジング構造体であり、ハウジングを通しての流体流れを与えるために壁面を貫く複数の開口部を備える。しばしば、取り外し可能なまたは開閉可能なカバーが該構造体を囲み、ハウジング構造体に扉状カバーを提供するために、ヒンジを介すなどして、ハウジング構造体の1つの端部に沿って位置付けられる。また、傾けられ得る平面的な面は、そのような試料ホルダまたは組織カセットにしばしば提供され、ラベルを付けるまたは書くための表面の機能を果たす。そのような試料ホルダのための寸法は、例えば、約0.3インチ(7.62mm)(プラスマイナス0.1インチ(2.54mm))の高さ、約1.73インチ(43.9mm)(プラスマイナス0.1インチ(2.54mm))の長さ、約1.12インチ(28.4mm)(プラスマイナス0.1インチ(2.54mm))の幅を含むことができる。ここで有用であり得る試料ホルダの例が、ビールらへの特許文献2およびホワイトへの特許文献3に示されていて、それらの両方ともが参照によってここに特別に組み込まれる。
【0030】
例えば、図3Aおよび3Bに示されるように、試料ホルダ40は、内部キャビティ44を区画形成する対向する壁を有する概して矩形の平面的なハウジング42を含み、そこに生物組織試料を保持する。ハウジング42の壁の少なくとも1つは、傾斜壁45のように、傾かされることができ、必要に応じて、試料ホルダ40内に含まれる試料の識別用のメカニズムを提供するように、ラベルを付けたり書いたりするための表面を提供する。試料ホルダ40のハウジング42は、閉鎖可能な構造体であり、ハウジング42に取り付けられた扉状構造体46を含むことができ、それにより内部キャビティ44内に組織試料を保管したりまたは内部キャビティ44から組織試料を取り除いたりするために内部キャビティ44へのアクセスを可能にする。扉状構造体46は一体的な構造体を提供するようにハウジング42と一体的に形成されることができ、扉46はハウジング42に対して扉46を回転するための機構を提供するべくフラップを介してハウジング42に接続されることができ、さもなければ扉46は内部キャビティ44へのアクセスを得るようにハウジング42の1つの側部から扉46を開くために例えばヒンジとして働くピボットポイント43を介してハウジング42に接続可能であることができる。試料ホルダ40のハウジング42は、少なくとも1つ、好ましくは複数の流体開口部48を含み、流体がそれらを通して流れることを許容する。このように、ハウジング42が第1チャンバ20内に位置付けられるとき、第1チャンバ20内の流体は、開口部48を通して流れ、内部キャビティ44内に収容される生物組織試料に接することができる。
【0031】
容器10は、さらに、ハウジング12の第1開端部16を密閉するための閉鎖体50を含む。閉鎖体50は、摩擦嵌合、スナップ嵌合、ねじ式係合、組合構造係合、または他の方法のような任意の様式で第1開端部16でハウジング12と結合することができ、液体密封を提供する。望ましくは、閉鎖体50およびハウジング12は、それらの間に液体密封を与えるべくハウジング12と共に閉鎖体50がねじ山を付けられることができるように、対応するねじ山を含む。例えば、このような対応するねじ山は、閉鎖体50の外面の周囲に関して提供されることができ、第1端部16でハウジング12のハウジング壁14の内面の周囲内にあり、または、閉鎖体50の内面の周囲内に提供されることができ、第1端部16でハウジング12のハウジング壁14の外面の周囲に関してある。
【0032】
述べられたように、試料ホルダ40は、第1チャンバ20内での使用のための別個の要素として提供されることができ、または、容器10の一部と相互に連結させられることができる。望ましくは、試料ホルダ40は閉鎖体50と結合させられる。そのような結合は、閉鎖体50に接続されるまたは閉鎖体50と共に形成される不可欠なパーツとして試料ホルダ40を提供することによって達成されることができ、または、試料ホルダ40は閉鎖体50に取り外し可能に結合可能であるまたは分離可能に接続可能である別個の構造体であり得る。図4Aに示されるように、閉鎖体50は、そこに試料ホルダ40を収容するために、閉鎖体50の底面から延在する棚部52を含むことができる。棚部52は、図4Bに示されるように、例えばスナップ嵌め係合状態に、試料ホルダ40を閉鎖体50に取り付けられた状態に維持するための構造体を含むことができ、試料ホルダ40は棚部52から解放可能であることができる。特に、一般的な大きさおよび形状の試料ホルダ40を受け入れるために、棚部52は矩形の凹部を区画形成する概ね矩形の構造物であることができる。プラットフォーム52は、試料ホルダ40と係合するためにそこから延在する1つ以上の指部56を含み、それにより、棚部52によって区画形成された凹部内に試料ホルダ40を保持することができる。傾斜壁45に隣接する試料ホルダ40の縁部が棚部52の(図7Aおよび7Bに示される突出部64のような)対応する突出部または指部に対して所定の位置に保持されて試料ホルダ40が棚部52の凹部の中に押し込まれるとき、指部56は試料ホルダ40の壁部から離れるように反れ、そしてホルダ40の凸部58に対してそれらの初期位置に戻り、それにより、所定の位置に試料ホルダ40をカチャッと嵌めるように、そのような指部56は曲がることができる。指部56は、棚部52または閉鎖体50に対して取り外せないように所定の位置に試料ホルダ40をロックすることができ、必要に応じて、棚部52から試料ホルダ40を取り外すように曲がることができる。
【0033】
棚部52は、また、その中に含まれる試料ホルダ40のハウジング42を維持する間、試料ホルダ40の扉46が開くことを可能にするように一般的な形状で提供されることができ、それにより、試料ホルダ40が棚部52内にそして閉鎖体50に関して決まった場所に保持されている間、試料ホルダ40の内部キャビティ44へのアクセスを提供することができる。例えば、棚部52の壁面は、扉46の取っ手のような突出部47を入れるために切取部57を有することができ、棚部52の全寸法およびその壁部の高さは、干渉しないで、取っ手47に触れて、棚部52の向こう側に扉46を回転することによって、扉46を手動で開くことを提供するように設計されることができる。
【0034】
1つの実施形態では、棚部は異なった大きさと形状の組織カセットまたは試料ホルダを受け入れることができる結合構造を含むことができる。例えば、図15A〜15Eに描かれる代わりの実施形態に示されるように、棚部52aは指部90a、92aを含むことができ、それらは種々の大きさの試料ホルダの壁面に対して支えるために圧縮可能要素として働く。そのような指部90a、92aは棚部52a内に取り付けられる試料ホルダの壁面に対して付勢力を及ぼすための付勢要素またはリーフスプリングとして働くことができ、所定の位置に試料ホルダを保持するべく棚部52aの側壁に対して試料ホルダを付勢することができる。さらに特に、指部90aは棚部52a内に収容される試料ホルダに対して付勢力を加え、そして、対向する面91aがそこに試料ホルダの一端部を保持し、指部または突出部64aがそこに試料ホルダの別の縁部を保持する。また、指部92aは試料ホルダに対して付勢力を加え、これに対して対向する突出部64aは所定の位置に試料ホルダの端部を保持する。そのような反対の等しい力は、所定の位置に種々の大きさと形状の試料ホルダを維持するのを助ける。さらに、上記したように、試料ホルダの扉の取っ手部分を収容するために壁切取部57aがまた提供されることができ、試料ホルダが棚部において所定の位置にある間、必要に応じて、扉を開くための取っ手部分へのアクセスを提供することができる。このように、容器10は、容器10での使用のために種々の大きさおよび形状の組織カセットを収容することができる単一の棚部を備えることができる。加えて、棚部52aは、上記したように、複数の穴98aを、それらを通しての流体流れのために、含むことができる。試料ホルダへの棚部を通しての流体流れが試料ホルダの大きさ、形状および/または幾何学的形状にかかわらず試料ホルダ内に含まれる試料との接触に対して十分であるように、そのような穴98aはあるパターンまたは方向を含むことができる。
【0035】
上記のとおり、第1チャンバ20は、その中に試料ホルダ40を受け入れて、そして収容するように大きさを定められることができる。このような配置において、試料ホルダ40が閉鎖体50と結合され、そして閉鎖体50がねじ係合を介するなどしてハウジング12と回転可能に係合するとき、試料ホルダ40は、閉鎖体50に対する回転に対して提供されることができる。例えば、これは、例えばピボット接続54を介して閉鎖体50に対して回転可能である構造体として棚部52を提供することによって、および、棚部52内に試料ホルダ40を提供することによって成し遂げられることができる。このように、試料ホルダ40が第1チャンバ20内に置かれ、そして閉鎖体50がハウジング12と回転可能に係合するとき、棚部52および/または試料ホルダ40のうちの一方または両方は閉鎖体50の回転に基づいて側壁面24a〜dのうちの1つ以上と接触し、それにより容器10のハウジング12の第1チャンバ20内の所定の位置に試料ホルダ40を維持する。
【0036】
容器10は、製造の時点にて、組み立てられ、第1チャンバ20および/または第2チャンバ26内にたくわえられる溶液または試薬のような液体培地を備えることができる。代わりに、組織試料を試料ホルダ40に入れる直前など、使用前の任意の時点で、そのような液体培地が第1チャンバ20および/または第2チャンバ26の中に満たされることができる。
【0037】
述べたように、容器10はある1つの試薬システムでの使用のために与えられることができる。このように、ホルマリンのような組織固定剤のような、単一の試薬溶液は、第2チャンバ26内に与えられることができる。このような固定溶液は、分子診断検査を行うために、組織試料内のRNAを安定させる。代わりに、容器10は、2つの溶液または2つの試薬システムでの使用のために与えられることができる。例えば、第1チャンバ20の第1試薬固定液を薄めるまたは第1チャンバ20の第1試薬を不活性化するように、洗浄溶液が第2チャンバ26に提供されることができる。各チャンバは、同じ試薬を、ある時期が過ぎるとその同じ試薬を新たにすることが有利であるので、含むことがまた可能である。あるいは、ホルマリンのような組織固定液のような、第1試薬溶液が第2チャンバ26内に用いられることができ、組織試料の形態を安定させるための核酸安定化試薬の種類の安定剤のような第2試薬溶液が第2チャンバ26内に提供されることができる。
【0038】
どんな試薬も本発明の容器で用いられることができる。例えば、固定剤はホルマリン、エタノール溶液、Carnoy’s solution I(エタノールおよび酢酸)、Carnoy’s solution II(エタノール、クロロホルムおよび酢酸)、methacarn(メタノール、クロロホルムおよび酢酸)、Clark’s fixative、Boonfixなどであることができる。商業的に利用可能な固定剤の非制限のリストは、(ジョージア州、アトランタのNational Diagnostics, Inc.から利用できる)MIRSKY’S FIXATIVE、(ペンシルバニア州、ピッツバーグのShandon Lipshawから利用できる)GLYOFIX、(Amrescoから利用できる)HISTOCHOICE、(ミネソタ州、ニューブライトンのTrend Scientificから利用できる)HISTOFIX、(Merckから利用できる)KRYOFIX、(コネチカット州、イーストグランブリーのEnergy Beam Sciencesから利用できる)MICROFIX、(Merckから利用できる)NEOFIX、(ニュージャージー州、ベルミードのEarth Safe Industriesから利用できる)NOTOX、(ニューヨーク州、メルビレのAnCon Geneticsから利用できる)OMNIFIX IIおよびOMNIFIX 2000、(ミシガン州、バトルクリークのAnatech Ltdから利用できる)PREFER、(コネチカット州、イーストグランブリーのEnergy Beam Sciencesから利用できる)PRESERVE、(Thermo Fischer Scientific, Inc.から利用できる)SAFEFIX II、(テキサス州、ルイスビレのStatLab Medical Productsから利用できる)STATFIX、(ネブラスカ州、オマハのStreck Laboratoriesから利用できる)STF(Streck Tissue Fixative)、(カリフォルニア州、トランスのSakura Finetek USA, Inc.から利用できる)UMFIX、および、(コネチカット州、シェルトンのMilestone Medicalから利用できる)FINEFIXを含み、これらに限定されない。商業的に利用できる安定剤は、(テキサス州、オースチンのAmbion, Inc.から利用できる)RNALATER、および、(カリフォルニア州、バレンシアのQiagen, Inc.から利用できる)RNEASYを含み、これらに限定されない。固定剤および/または安定剤としての使用のために既知であるまたは今後発見される他のいかなる試薬も、本発明で有用なものとして意図されている。
【0039】
容器10を組み立てるべく、弁32が閉位置に位置付けられ、第2チャンバ26は望ましい液体培地で満たされている。第2端部18が閉じられた端部である実施形態において、そのような液体培地は、ポートまたは開口部を通して第2チャンバ26内に供給されることができ、または、第1開端部16を通して供給されることができ、それは、弁32を閉じる前に弁32が開位置にあるとき、第1チャンバ20および開口部30、31を通してである。代わりに、ハウジング12は開いた第2端部18を備え、第2チャンバ26内に液体培地を収容するように第2チャンバ26を満たした後、カバー28は第2端部18を覆って置かれてそれと結合する。その後、第1チャンバ20は第1開端部16を通して(例えば、2つの試薬システムを含む実施形態において)第2液体培地で満たされることができる。閉鎖体50は、そこから延在する試料ホルダ40を備えまたは備えず、ハウジング12の第1開端部16を覆って置かれ、螺合するように結合する。したがって、組み立てられた容器10は、必要に応じて、別々のパッケージに包装され、そして使用のためにしまっておかれることができる。
【0040】
使用するとき、分子または組織診断検査のために患者から採取された組織試料のような、生物試料は、ヒンジ式扉46を介すなどして試料ホルダ40内のキャビティ44内に置かれる。試料ホルダ40が別個の要素として与えられる実施形態において、閉鎖体50は、ハウジング12から取り外されることができ、そして試料ホルダ40は閉鎖体50の棚部52の中に挿入されることができる。代わりに、試料ホルダ40が閉鎖体50を備える場合、閉鎖体50がハウジング12から取り外された後、そこに試料ホルダ40が接続されたままの状態で、または、それから試料ホルダ40を取り外してそこにそれを再度取り付けることによって、組織試料は、試料ホルダ40内に置かれることができる。
【0041】
中に組織試料を含む試料ホルダ40を有する閉鎖体50は、その後、ハウジング12の第1開端部16上に設置され、試料ホルダ40は第1チャンバ20内に位置合わせされて第1チャンバ20の中に位置づけられる。閉鎖体50は、次に、例えば、ねじ係合の状態に閉鎖体50および/またはハウジング12を互いに対して回転することにより、ハウジング12と結合する。上記したように特別の形状の試料ホルダ40を収容するために第1チャンバ20が所定の大きさに作られて調整されている実施形態において、そのようなそれぞれの回転の間、試料ホルダ40は、第1チャンバ20内でのそれの位置付けを維持することができる。
【0042】
上記したようにある1つの試薬システムを含む実施形態において、組織試料は、第2チャンバ26内の試薬から隔離状態にある第1チャンバ20の試料ホルダ40内に含まれる。組織試料を試薬と接触させることが望まれるとき、弁32は開かれることができ、例えば、ユーザーは、取っ手34を回転させ、それにより弁32の流体通路36を、(図6Bおよび7Bに示されるような)第1チャンバ20と第2チャンバ26との間の流体連通を妨げる第1方向から、それらの間での流体連通を提供するべく(図6Aおよび7Aに示されるような)流体通路が第1チャンバ20と第2チャンバ26との間で向きを調節される第2方向に動かす。そして、第2チャンバ26内の試薬が弁32の流体通路36を介して第1チャンバ20の中に流れ、それにより試料ホルダ40の流体開口部を通して流れ、その中のキャビティ44内に収容される組織試料と接触することをもたらすように、容器10は逆さにされ、揺すられ、またはさもなければ動かされることができる。このように、組織試料を第2チャンバ26内に収容された試薬から隔てた状態に維持することによって、試料と試薬との間の接触は所望の時まで正確に規制されることができ、組織試料と試薬との接触の時間の長さが正確に規制され計測されることができる。
【0043】
ある1つの試薬システムが用いられることができることがさらに意図され、そこで、試薬が第1チャンバ20内に収容され、そして組織試料が第1チャンバ20内に置かれたとき組織試料とすぐに接触し、所望の時間の接触後、試薬が第1チャンバ20から第2チャンバ26の中に流れるように弁32が開かれ得、それにより、試薬とのさらなる接触から組織試料を分離することができる。
【0044】
上記したように、ある2つの試薬システムを含む実施形態において、試料ホルダ40が第1チャンバ20内に置かれるとき、組織試料は第1チャンバ20内に収容される第1試薬との接触状態に置かれ、試料ホルダ40の流体開口部48を通してそのような試薬が流れ、それによりその内部キャビティ44内に収容される組織試料と接触する。組織試料は規定時間の間、第1チャンバ20内の試薬との接触状態に維持されることができ、その後、弁は第1チャンバ20と第2チャンバ26との間に流体流れを生じさせるように開かれることができる。したがって、第2チャンバ26内に維持される第2試薬は、弁32の流体通路36を介して第1チャンバ20の中に流れることができ、それによりその中に含まれる組織試料と接触することができる。さらに、第1チャンバ20内の第1試薬は、同様に、第2通路の中へ弁32を介して流れ、それにより第2試薬と混ざるだろうということが意図される。したがって、第1試薬および第2試薬の濃度は、2つの試薬の任意の混合が、組織試料と一緒になるとき、試薬の意図される機能に有害な効果を有さないことを保証するように、特に調整されることができる。第2試薬が第1チャンバ20の中に移動されて、そして所望の期間、組織試料と接触した後、閉鎖体50は任意の所望の診断検査のために組織試料を試料ホルダ40から取り除くように取り外されることができる。
【0045】
例えばデッドスペース27内であるハウジング12内に、第3チャンバが提供されることがまた意図される。この様式では、弁32は第1チャンバ20と第2チャンバ26が流体分離状態にある第1位置と、第1チャンバ20がデッドスペース27と流体連通状態にある第2位置と、第1チャンバが第2チャンバ26と流体連通状態にある第3位置との間で選択的に位置決め可能であることができる。このように、弁32は第1位置にあるとき、第1チャンバ20は閉じられた環境であり、組織試料は規定時間の間、第1チャンバ20内の試薬と接触状態に維持されることができ、その時間の後、第1チャンバ20とデッドスペース27によって定められる空のチャンバとの間に流体流れを引き起こすように弁は第2位置まで動かされることができる。したがって、第1チャンバ20内に収容される流体がデッドスペース27の中に流されることができ、その後、弁は第3位置まで動かされることができ、流体連通が第2チャンバ26と第1チャンバ20との間に確立され、それにより、第2チャンバ26内に保たれている第2試薬が弁32の流体通路36を通して第1チャンバ20の中へ流れることを可能にし、それによりそこに含まれる組織試料と接触する。
【0046】
試料ホルダ40が閉鎖体50に接続されているので、試料ホルダ40内に収容されている組織試料へのアクセスは、容器10から閉鎖体50を取り外し、それをひっくり返し、カウンターの上に外面を置き、それによって試料ホルダ40がむき出しにすることを防ぐことによって達成されることができる。試料ホルダ40内に含まれている如何なる流体も、閉鎖体50の底面または内面内の低い方へ落ちることができ、閉鎖体50の周囲のリムによってとらえられ、それによりカウンターの表面上への如何なる漏れも流出も防ぐことができる。試料ホルダ40のヒンジ式扉46は、例えば棚部52を介して試料ホルダ40が閉鎖体50に接続された状態で開くことができ、それにより、そこに収容される組織試料への簡単なアクセスを提供し、試料にアクセスする間所定の位置に保持するために(取っ手47における扉46の縁部以外の)試料ホルダの如何なる部分に物理的に接触することなしに所定の位置に試料ホルダ40を維持するための適切な支持を提供し、それによりユーザーによる接触に基づく試料の汚染の如何なる可能性をも妨げることができる。
【0047】
その後、容器10は洗浄されて、そして再利用されることができ、または、より好ましくは他の試料との二次汚染を妨げるように廃棄されるだろう。
【0048】
図8〜14に示されるさらなる実施形態において、容器110は、第1開端部116と概ね閉じられた第2端部118との間に延在するハウジング壁114を含む第1ハウジング112を含む。第1ハウジング112は第1チャンバ120を区画形成し、第1開端部116は第1チャンバ120の中に延びる。第1チャンバ120は第1所望満容積を定め、中に試料ホルダ140を受け入れて収容するように所定の大きさに作られることができるキャビティを含むことができる。
【0049】
図8〜14に示される実施形態において、容器110は、第1開端部117と第2閉鎖端部119との間に延在するハウジング壁115を有する第2ハウジング113をさらに含む。第2ハウジング113は、第2所望満容積を定める第2チャンバ126を区画形成し、それは第1チャンバ120の第1所望満容積と望ましくは異なる。第2ハウジング113の第1開端部117は、そこに挿入可能に第1ハウジング112の第2端部118を収容するように所定の大きさに作られている。したがって、第2ハウジング113の第1開端部117は、第1開端部117の内部周囲面内に延在してそこに開口部129を区画形成する環状肩口部127を含むことができる。肩口部127は、Oリングとして提供されることができ、望ましくは柔軟部材であり、それは第1ハウジング112が開口部129を介して第2ハウジング113の中に挿入されて、外側ハウジング壁114に沿って肩口部127が滑る密閉配置状態になることを可能にし、ここでさらに詳しく述べられるだろう。
【0050】
容器110は、図1〜7の実施形態と関係して説明されるように、試料ホルダ140をさらに含む。特に、試料ホルダ140は、従来の組織カセットのように、第1ハウジング112の第1チャンバ120内に受け入れられるように構成されていて、生物組織試料を保持するための内部キャビティ(不図示)を区画形成する閉鎖可能なハウジング142を含み、アクセスはヒンジ式扉状構造体146を介して提供され、少なくとも1つの、好ましくは複数の流体開口部148がそれらを通して流体が流れることを許容するように適合されている。
【0051】
容器110は、第1ハウジング112の第1開端部116を密閉するために閉鎖体150をさらに含む。閉鎖体150は、図1〜7の実施形態と関係して同様に説明されるように第1開端部116で第1ハウジング112と結合可能である。望ましくは、閉鎖体150および第1ハウジング112は、閉鎖体150が第1ハウジング112と共にそれらの間の液体密封を提供するべくねじ山を付けられるように、対応するねじ山を含む。さらに、閉鎖体150は、図1〜7の実施形態に関係して上述されるように、試料ホルダ140を収容するための、閉鎖体150の底面から延在する棚部152を含むことができる。
【0052】
容器110は、第1ハウジング112によって区画形成される第1チャンバ120および第2ハウジング113によって区画形成される第2チャンバ126が互いと流体連通状態に選択的に配置されることができるように、構造的特徴を含む。これは、図11に示されるように第1ハウジング112の第2端部118に弁132を提供することによって達成されることができ、第1ハウジング112と第2ハウジング113との間の推移バリヤとして働く。例えば、弁132は、第1ハウジング112のハウジング壁114を通して延在することができる。弁132は、例えば第1チャンバ120の中へは流れるが第1チャンバ120から外へは流れないように、一方の方向にのみ、流体が流れることを可能にするために、「ダックビル」式弁のような一方向弁であることができる。代わりに、弁132は、例えば第1チャンバ120の中へ流れまた第1チャンバ120から外へも流れるように、両方向に流体が流れることを可能にすることができる。第1ハウジング112は、閉じ込められた空気のような流体を第1チャンバ120から外に排出するための排気出口を含むことができることも意図される。例えば、多孔性の排気出口153は閉鎖体150に提供されることができ、それを通して空気を排出するように適合されているが、それらを通しての液体流れを妨げる。そのような排気出口は、それが第1チャンバ120から排出することができる限り、閉鎖体140ではなく第1ハウジング112に提供されることができることが意図される。排気出口153は、第1チャンバ120から周囲に空気を排出することを可能にするように、一方向排気口として提供されることもでき、外気または流体が第1チャンバ120の中にそれらを通ることを妨げることができる。
【0053】
容器110は、製造の時点で、第1チャンバ120および/または第2チャンバ126内に溶液または試薬のような液体培地が収容された状態で、組み立てられ、提供されることができる。代わりに、あらゆるそのような液体培地は、組織試料を試料ホルダ140の中に挿入する直前などの、使用の前のあらゆる時点で、第1チャンバ120および/または第2チャンバ126の中に満たされることができる。望ましくは、容器110は、図13に描かれるように、第2ハウジング113に対して第1位置にある第1ハウジング112を備え、第1ハウジング112と第2ハウジング113との間の摩擦嵌合または他の機械的係合を介すなどして、そのような位置に固定される。
【0054】
上述されたように、分子または組織診断検査のために患者から採取された組織試料のような生物試料は、使用するとき、試料ホルダ140内のキャビティ144内に置かれる。中に組織試料を含む試料ホルダ140を有する閉鎖体150は、その後、試料ホルダ140が第1チャンバ120の中に位置付けられる状態に、第1ハウジング112の第1開端部114を覆って置かれる。閉鎖体150は、そして、例えば、互いに対して閉鎖体150および/またはハウジング112を回転させることによって、ねじ係合状態にされて、第1ハウジング112と結合する。このようなそれぞれの回転の間、試料ホルダ140は第1チャンバ120内で自由に動くことができ、または、第1チャンバ120が上述のように特定形状の試料ホルダ140を収容するために所定の大きさに作られて調整されている実施形態において第1チャンバ120内におけるその位置付けを維持することができる。
【0055】
上述のようにある1つの試薬システムを含む実施形態では、この時点での組織試料は第2ハウジング113内の試薬から分離状態にある第1ハウジング112の試料ホルダ140内に含まれる。組織試料が試薬と接することが望まれるとき、第1ハウジング112は、ハウジング壁114の外面が肩口部127の柔軟膜に沿って図14の位置にまで進むことをもたらすように、例えば下方に押し付けることによって、第2ハウジング113内に差し込まれ(または第2ハウジング113内にさらに差し込まれ)る。このような動きの間、第2ハウジング113の第2チャンバ126内に含まれる試薬は弁132を通して第1ハウジング112の第1チャンバ120の中に移動させられるかまたは無理やり送られる。このような流体運動または移動を容易にするために、第1チャンバ120内の空気は排気出口153を通して大気に外に排出される。このように、第2チャンバ126内の試薬は、弁132を介して第1チャンバ120の中に流れ、それにより試料ホルダ140の流体開口部148を通して、中のキャビティ(不図示)内に収容される組織試料に接触するように流れる。
【0056】
ある2つの試薬システムを含む実施形態では、試料ホルダ140が第1ハウジング112内に置かれるとき、組織試料は第1チャンバ120内に収容される第1試薬との接触状態に置かれ、このような試薬が試料ホルダ140の流体開口部148を通して流れ、それによりその内部キャビティ144内に収容される組織試料と接触する。組織試料は規定時間の間、第1チャンバ120内の試薬との接触状態に維持されることができ、その時間後、第1ハウジング112は、上述のように、第2ハウジング113内に、例えば下方に押し付けることによって差し込まれ(または第2ハウジング113内にさらに差し込まれ)る。そうすることは、第2ハウジング113の第2チャンバ126内に保たれている第2試薬に、弁132を介して第1ハウジング112の第1チャンバ120の中に流れ、それにより中に収容される組織試料に接触することをもたらす。
【0057】
本発明の実施形態が多くの異なった形式で満たされているけれども、本開示は本発明の原則の典型的なものとして考慮されるべきであって表された実施形態に本発明を限定することを意図していないという理解を伴って、本発明の特定の実施形態は、図面に示されると共にここで詳細に説明された。種々の他の実施形態が、発明の要旨と精神を逸脱しない範囲で、当業者によって明らかであり、容易になされるだろう。本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲およびそれらの等価物によって評価されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物試料を収容するための容器であって、
開端部を有し、流体を入れると共に中に少なくとも部分的に試料ホルダを収容するように構成された第1チャンバと、
中に流体を入れるように構成された第2チャンバと、
前記第1チャンバの少なくとも前記開端部を囲うための閉鎖体と、
前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間に少なくとも部分的に配置された推移バリヤであって、前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間の流体の通路を制御するために構成された推移バリヤと
を備える容器。
【請求項2】
前記推移バリヤは、前記第1チャンバが前記第2チャンバから流体分離状態にある第1位置から、流体が前記第1チャンバおよび前記第2チャンバのうちの少なくとも一方から前記第1チャンバおよび前記第2チャンバのうちの他方へ通ることができる第2位置へ推移する、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記試料ホルダは、前記閉鎖体に取り外し可能に接続されている、請求項1に記載の容器。
【請求項4】
前記試料ホルダは、前記閉鎖体に対して回転可能である、請求項1に記載の容器。
【請求項5】
前記閉鎖体に取り付けられ前記試料ホルダを収容するために適合された棚部をさらに備える、請求項1に記載の容器。
【請求項6】
前記棚部は、前記閉鎖体に対して回転可能である、請求項5に記載の容器。
【請求項7】
前記試料ホルダは、生物試料を保持するための内部キャビティを区画形成する閉鎖可能なハウジングを備え、該ハウジングは前記第1チャンバおよび前記第2チャンバのうちの少なくとも一方内に収容される流体が前記内部キャビティへ通過することを可能にするための複数の流体開口部を備える、請求項1に記載の容器。
【請求項8】
前記試料ホルダは、組織カセットである、請求項1に記載の容器。
【請求項9】
前記第1チャンバは第1所望満容積を有し、前記第2チャンバは前記第1所望満容積と異なる第2所望満容積を有する、請求項1に記載の容器。
【請求項10】
前記第1チャンバ内に配置された第1流体および前記第2チャンバ内に配置された第2流体をさらに備え、前記第1流体は前記第2流体と異なる、請求項1に記載の容器。
【請求項11】
前記推移バリヤは弁である、請求項1に記載の容器。
【請求項12】
前記弁は、前記第1位置と前記第2位置との間の前記弁の動きのために取っ手を備える、請求項11に記載の容器。
【請求項13】
前記第1チャンバは第1ハウジングを備え、前記第2チャンバは第2ハウジングを備え、前記第1ハウジングは前記第2ハウジング内に少なくとも部分的に挿入可能であり、それにより、前記第2ハウジング内の流体が前記弁を介して前記第1ハウジングの中に移動することをもたらす、請求項11に記載の容器。
【請求項14】
前記弁は、前記第2ハウジングから前記第1ハウジングへの流体流れを可能にする一方向弁である、請求項13に記載の容器。
【請求項15】
前記第1ハウジングは、前記第2ハウジングから前記第1ハウジングの中への流体の移動に基づいて前記第1チャンバから排出するための排気口をさらに備える、請求項13に記載の容器。
【請求項16】
生物試料を収容するための容器であって、
第1開端部と第2端部との間に延在するハウジングであって、前記第1開端部は中に流体および試料ホルダを収容するように構成された第1チャンバを区画形成し、該ハウジングは中に流体を収容するように構成された第2チャンバをさらに備える、ハウジングと、
前記ハウジングの少なくとも前記開端部を囲うための閉鎖体と、
前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間に延在する弁であって、該弁は前記第1チャンバが前記第2チャンバから流体分離状態にある第1位置と、流体が少なくとも前記第2チャンバから前記第1チャンバの中へ通ることができる第2位置との間で可動である、弁と
を備える、容器。
【請求項17】
前記試料ホルダは、前記閉鎖体に取り外し可能に接続され、前記閉鎖体から前記第1チャンバの中へ延在し、
前記試料ホルダは、生物試料を保持するための内部キャビティを区画形成し、前記第1チャンバおよび前記第2チャンバのうちの少なくとも一方内に収容される流体が前記内部キャビティの中に通ることを可能にするために適合された少なくとも1つの流体開口部を備える、
請求項16に記載の容器。
【請求項18】
前記閉鎖体および前記ハウジングは、ねじ係合において、取り外し可能に提供される、請求項16に記載の容器。
【請求項19】
前記試料ホルダは、前記閉鎖体および前記ハウジングの前記第1チャンバに対して回転可能である、請求項16に記載の容器。
【請求項20】
前記弁は、前記第1位置と前記第2位置との間の前記弁の動きのために取っ手を備える、請求項16に記載の容器。
【請求項21】
生物試料を収容するための容器であって、
第1チャンバを区画形成し、上に取り外し可能に係合する閉鎖体を有する開端部を含む第1ハウジングであって、該第1チャンバは中に試料ホルダを収容するように構成されている、第1ハウジングと、
中に流体を入れると共に中に前記第1ハウジングの少なくとも一部を収容するように構成された第2チャンバを区画形成する第2ハウジングと
を備え、
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングのうちの少なくとも一方は、前記第1ハウジングの少なくとも一部の前記第2チャンバの中への挿入に基づいて、流体が前記第2チャンバから前記第1チャンバの中へ動き、前記第1チャンバ内に収容された前記試料ホルダと接することを可能にするための弁を備える、
容器。
【請求項22】
前記弁は前記第1ハウジングと関係があって前記第1チャンバの中への流体流れを可能にする一方向弁であり、前記第1ハウジングは前記第2チャンバから前記第1チャンバへの流体の動きに基づいて前記第1チャンバから排出するための排気口をさらに備える、請求項21に記載の容器。
【請求項23】
前記第1チャンバは中に第1流体を収容するようにさらに構成され、該第1流体は前記第2チャンバ内の流体と異なる、請求項21に記載の容器。
【請求項24】
少なくとも1つの液体内に生物試料を収容する方法であって、
開端部を有する第1チャンバ、および、該第1チャンバから隔てられて中に液体を収容する第2チャンバを備える容器を提供し、
生物試料を収容する試料ホルダを前記第1チャンバの中に挿入し、そして、
前記第2チャンバ内に収容される前記液体が前記第1チャンバ内に配置される前記生物試料に接するように、前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間の流体連通を確立する、
方法。
【請求項25】
前記第1チャンバは第1液体を含み、前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間の流体連通を確立する前記ステップは、前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間の弁を開くことをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間に流体連通を確立する前記ステップは、前記第1チャンバが前記第2チャンバから流体分離状態にある第1位置から、流体が前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間を通ることができる第2位置へ、前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間に配置される推移バリヤを推移することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記推移バリヤは弁である、請求項26に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図15C】
image rotate

【図15D】
image rotate

【図15E】
image rotate


【公表番号】特表2011−501813(P2011−501813A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531246(P2010−531246)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/080990
【国際公開番号】WO2009/055592
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】