説明

分子タグを使用する多重免疫組織化学アッセイ

複数の分析体が同時にアッセイできるように、好ましくは多重アッセイで、細胞表面部分等の分析物を検出する方法および組成物を提供する。本方法では、オリゴヌクレオチド標識に結合しており、その標識が切断構造の形成および検出可能なタグの生成に利用される、分析物結合因子を用いる。好ましくは、複数のタグが分析物結合事象毎に生成される。1つの局面において、本発明は、サンプル中の複数の分析物の有無を検出する方法を提供する。分析物は、例えば、臨床組織ライブラリーの細胞受容体または他のマーカーを含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、複数の分析物を同時にアッセイすることができるように、細胞表面部分等の分析物を検出するための方法及び組成物に関し、好ましくは多重アッセイにおける方法・組成物に関する。特に、本発明は分子タグの核酸ベースの生成を使用している多重アッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
(参考文献)
【0003】
【数1】

(発明の背景)
治療または診断の対象となる生化学種はしばしば細胞表面抗原を含む。天然あるいは合成の結合分子によって抗原が認識されると、疾患の発症または継続において重要な細胞反応をもたらす細胞の中にあるシグナル伝達および遺伝子調節を生じさせるネットワークを始動させる。標的抗原は、また、種々の細胞の表面に多様に存在しており、組織または器官における生理機能の固有の状態または疾患進行を示すことができる。
【0004】
腫瘍細胞表面で発現する腫瘍関連抗原に向けられるモノクローナル抗体は、ヒト腫瘍の免疫療法に用途がある。細胞表面抗原を有する腫瘍細胞を標的とする特定のモノクローナル抗体の相互作用について十分な根拠が示されている。HerLyn et aL.(1987), Koprowski et aL.(1985)、Grob et aL.(1985)、及びMurthy et aL.(1987)を参照。上皮成長因子レセプター(EGFR)を標的とするモノクローナル抗体の受容体が充実性腫瘍の患者において高レベルで発現するため、この抗体は大変重要である。また、他の疾患、例えば自己免疫疾患、エイズ、喘息、乾癬(psoraisis)、これ以外の炎症性疾患に関係する分子を標的とするMABが開発された。
【0005】
抗体等の標的特異的結合因子は、特に種々の細胞または組織タイプのマーカーを分析する種々のアッセイ、例えば免疫組織化学的アッセイでは、そのような生物学的マーカーの検出に広く利用されている。
既知の検出用結合する分子を利用することによって組織ライブラリーのような複数の組織または細胞サンプル中の標的分析物をスクリーニングする技術を広義に含む免疫組織化学(IHC)は、疾患、例えば癌のさまざまなステージに関係する分子マーカーの有無、通常はタンパク質の有無を検出するために使うことができる。完全な細胞の表面抗原について上記のようなアッセイを行う方法が開発され、可溶抗原とは対照的である(例えば、Bishop & Hwang,1992; Bator & ReaDing,1989を参照)。過去2、3年にわたって、免疫組織化学的分析の役割は、補助的な診断技術の役割から単独の診断法の役割に変わった(O’Leary 2001)。IHC検査が、外科病理学においてますます重要な役割を果たしており、例えば、腫瘍を分類したり、癌の原因を予測したり、微小な転移および微生物を示したり、予後の情報を提供したり、傷害性の標本における診断を行ったりする際に利用可能である。
【0006】
標準的IHCアッセイでは、マーカーは通常、サンプルに加えられる特異的結合分子(例えば抗体)の免疫染色によって検出される。染色結果の解釈の整合性は、特に臨床設定のとり方ひとつで問題となりうる。この技術も、同時に検出することができるマーカーの種類の数を制限する。
【0007】
通常、多くの受容体が、少しばかりの細胞表面に発現され、その数は、数百から数千の受容体/細胞である。これら受容体は医学的関心の高い多くの受容体タイプを含み、例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、多くのインターロイキン、エリスロポイエチンと腫瘍壊死因子(TNF)がある。加えて、小さい組織サンプル、稀な組織サンプル、類をみない組織サンプルのほか、量が限られている組織サンプルについてアッセイを行わなければならないことが多い。したがって、限られた組織サンプルで、しばしば低レベルで存在している上記のようなマーカーを検出する方法が必要とされている。この方法は定量的で、再現性があり、高感度な方法で少量の分析物から直ちに検出可能な信号を出してくれる方法である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
1つの局面において、本発明は、サンプル中の複数の分析物の有無を検出する方法を提供する。分析物は、例えば、臨床組織ライブラリーの細胞受容体または他のマーカーを含んでもよい。
【0009】
本方法によると、アッセイされている各々の分析物のために、結合組成物が提供される。結合組成物は、オリゴヌクレオチド標識を有する、抗体等の結合剤を含む結合組成物を提供する。更に、各々のオリゴヌクレオチド標識に対して、所与の領域におけるオリゴヌクレオチド標識に特異的な検出プローブと該所与の領域に近接する位置でのオリゴヌクレオチド標識に特異的なヘルパープローブからなる試薬ペアも提供される。検出プローブは結合した分子タグを有しており、分子タグは、他の検出プローブの分子タグ対して異なった光学または分離特性を有する。好ましい局面では、それらタグは蛍光性標識されている。
【0010】
分析物複合体が分析物とそれらのそれぞれの結合組成物の間で形成されるように、結合組成物はサンプルと結合される。分析物複合体を形成しない(すなわち、分析物と結合しない)結合組成物は、除去される。分析物複合体が、ハイブリダイゼーション条件下で、ヌクレアーゼ及び各々の結合組成物のオリゴヌクレオチド標識対応する試薬ペアと結合し、その結果それぞれのオリゴヌクレオチド標識に特異的なヘルパープローブと検出プローブがオリゴヌクレオチド標識でヌクレアーゼによって認識される切断構造を形成し、ヌクレアーゼが切断構造を切断し、分子タグを放出する。
【0011】
放出された分子タグは、分離され、識別されて複数の分析体の有無を決定する。1つの実施態様では、それぞれ放出されたタグは、電気泳動的な可動性があり、放出されると、他の検出プローブから放出されたタグの電気泳動的可動性と異なっている。
【0012】
一般の方法の好ましい局面において、ハイブリダイゼーション条件は、オリゴヌクレオチド標識にアニールされた検出プローブが、アニールしていない検出プローブと平衡状態にあるように、そして、切断された検出プローブが追加的な検出プローブにより該オリゴヌクレオチド標識から繰り返し位置がずれていくような条件である。
【0013】
本方法はまた、少なくとも1つの分析物が第1および第2結合部位を有している、複数の結合事象フォーマットで実施されてもよい。本方法のこの実施例において、そのような分析物に提供される結合組成物は、第1の結合部位に特異的である結合剤含み、そして結合組成物に提供されるヘルパープローブは第2の結合部位に特異的な第2の結合剤と結合する。該結合組成物は、本例では、結合剤とオリゴヌクレオチド標識間のフレキシブルリンカーを含んでもよい;ヘルパープローブは、フレキシブルリンカーを介して第2の結合剤と結合してもよい。
【0014】
関連した局面において、サンプル中の複数の分析物の有無を検出するための方法が提供され、該方法は以下の工程を含む、
各分析物に対して、第1のオリゴヌクレオチド標識を有する第1の結合組成物と第2のオリゴヌクレオチド標識を有する第2の結合組成物を含む結合ペアと提供する工程であり、第1の結合組成物と第2の結合組成物が同一の分析物に結合するときはいつも二重鎖を形成するように、該第1のオリゴヌクレオチド標識と第2のオリゴヌクレオチド標識は、第1の領域において互いに相補的である、
各第1及び第2のオリゴヌクレオチド標識に対して、該領域に近接する位置において第1または第2いずれかのオリゴヌクレオチド標識に特異的な検出プローブを提供する工程であり、該検出プローブは切断可能な結合により結合した分子タグを有し、該分子タグは、分離されると各分子タグが分離プロファイルにおいて識別可能なピークを形成するように、他の検出プローブに結合している分子タグとは1つ以上の物理的及び/または光学的に異なる特性を有している、
分析物複合体が分析物を各々の結合ペアの間で形成されるよう、また二重鎖が各第1及び第2のオリゴヌクレオチド標識の間で形成されるように、該結合ペアを該サンプルと結合させる工程、
分析物複合体を形成していない結合ペアを除去する工程、
ハイブリダイゼーション条件下で、ヌクレアーゼ、該分析物複合体、及び各結合ペアの検出プローブとを結合させて、第1または第2のオリゴヌクレオチド標識に特異的な検出プローブが該ヌクレアーゼによって認識される切断複合体を形成し、該ヌクレアーゼが該切断複合体を切断し該切断複合体から分子タグを放出させる工程、と
放出された分子タグを分離および識別し、複数の分析物の有無を検出する工程、を包含する方法。
【0015】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
以下に他の定義がない限り、本明細書中に使用される用語はそれらの通常認められた科学的な意味を持つ。標準の化学用語の定義は、参考文献、例えば、Carey anD SunDberg(1992)”ADvanceD Organic Chemistry 3rD ED.”, VoLs. A anD B, PLenum Press, New Yorkに見出すことができる。特に明記しない限り、本発明の実施は、当業者の技術範囲内で、質量分光、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術と薬理学の従来の方法を使用する。そのような技術は、文献で完全に説明される。例えば、G. Barany anD R. B. MerrifieLD (1980), ”The PeptiDes: AnaLysis, Synthesis, BioLogy”, VoL. 2, E. Gross anD J. Meienhoffer, eDs., AcaDemic Press, New York.; MethoDs In EnzymoLogy (S. CoLowick anD N. KapLan, eDs., AcaDemic Press, Inc.); Remington’s PharmaceuticaL Sciences, 18th EDition (Easton, PennsyLvania: Mack PubLishing Company, 1990)を参照。
【0016】
本明細書中に引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、上記あるいは下記いずれに記載されているにかかわらず、その全部を本明細書に取り入れるものとする。
【0017】
本明細書と付属の請求項で使われるように、単数形式である「a」、「an」及び「the」は、その内容が明確にそうでないことを記載していない限り、該当物が複数であることを含む。したがって、例えば、「オリゴヌクレオチド」といえば、2つ以上のオリゴヌクレオチド、などの混合物を含む。
【0018】
本発明を記載する際に、以下の用語が使用され、以下に示したように定義されることを目的とする
本明細書で使われているように「オリゴヌクレオチド標識を有する結合組成物」または単に「結合組成物」は例えば、望ましくは共有結合的に、既知の配列オリゴヌクレオチドと結合する結合アッセイで用いられるリガンドあるいは結合剤、例えば抗体を意味している。オリゴヌクレオチド標識は、また、テンプレートオリゴヌクレオチドとして本明細書中に言及される可能性がある。そのような構成は、また、“リガンド−オリゴヌクレオチド結合体”として本明細書中に参照される可能性がある。
【0019】
「検出プローブ」は、(1)分子「タグ」と(2)既知の配列オリゴヌクレオチドを含む化学構造である。プローブの集合は、オリゴヌクレオチド配列とタグ識別間の既知の相互関係を有し、通常、本明細書中に記載される方法のために、提供される。既知の配列のオリゴヌクレオチドは、更に下で記載される方法では、結合組成物(上記にて定義)で部分的に選択されたオリゴヌクレオチド標識の領域と相補的に設計されている。それがオリゴヌクレオチド標識に密接に結びつくとき、プローブの切断は分子タグ(また、電気泳動的タグの場合、eTags、eTagリポーターまたはeTagマーカーと称されて)を放出する。そして、それは検出可能な標識と移動度改変基を含む。放出された分子タグは、同様に一部のプローブオリゴヌクレオチドを含んでもよい。分子タグは、セクションIIIBで詳述する。好ましくは、更に以下にて議論されるように、結合した検出プローブの複数の切断は、単一の分析物結合事象から生じ、それによって検出のための複数の分子タグを生成している。
【0020】
「ヘルパープローブ」または「プライマー」は、結合組成物中(上記にて定義)のオリゴヌクレオチド標識の領域と部分的にまたは完全に相補的になるように設計されているオリゴヌクレオチドである。両方とも切断構築物でオリゴヌクレオチド標識に結合するとき、ヘルパープローブの存在は一般に検出プローブの切断を高める。
【0021】
本明細書中で用いられる場合、「プローブ」とは、「ヘルパープローブ」および/または「電気泳動プローブ」を、文脈に依存して、各単独または両方が集合的にいずれかで言及し得る。
【0022】
「切断構造」はテンプレート・オリゴヌクレオチドの複合体(例えばオリゴヌクレオチド標識)を参照する検出プローブでおよび概して、ヘルパープローブ、検出可能な分子タグを放出して、検出プローブが切断されるように、ヌクレアーゼによって認識される。本明細書中に記載される方法に従って、それが切断構造に組み込まれない限り、検出プローブは切断されない。検出プローブを含んでいる切断構造は、また、「認識二重鎖」と称される可能性がある。
【0023】
オリゴヌクレオチド標識の領域に関して、「近接している」とは、すなわち介在ヌクレオチドを持たなくて、隣接する領域を含む、通常、最大3つまでの、好ましくは2つ、より好ましくは1つの介在ヌクレオチドを有する基部を含んでもよい。
【0024】
本明細書中に使われるように、検出プローブまたは分子タグの構成要素としての、「標識」または「検出可能な標識」は、検出可能な分子を意味する。それらは、ラジオアイソトープ、蛍光剤、化学発光剤、発色団、酵素、酵素基質、酵素コファクター、酵素阻害剤、発色団、染料、金属、金属イオン、金属ソル、リガンド(例えばビオチン、アビジン、ストレプトアビジンまたはハプテン)を含むが、これらに限られない。用語「蛍光剤」は、検出可能な範囲で蛍光を示すことができる物質あるいはその一部を意味する。
【0025】
本明細書中で用いられる場合、複数の蛍光標識に関連して、用語「スペクトル分解可能な」とは、これらの標識の蛍光発光バンドが、それぞれの標識が結合している分子タグが、標準的光検出系(例えば、米国特許第4,230,558号、同第4,811,218号などまたはWheeLessら,21−76頁,FLow Cytometry:Instrumentation anD Data AnaLysis(AcaDemic Press,New York,1985)に記載される系によって例示されるような、バンドパスフィルターと光電子増倍管との組み合わせの系を用いることなど)によって、それぞれの標識によって発せられる蛍光シグナルに基づいて識別され得るに充分に異なる、すなわち、ほとんど重複していないことを意味する。
【0026】
「電気泳動的な可動性」は、定義済みのバッファと電界条件下で、定義済み分離媒体中の荷電された合成物の可動性を意味する。分子タグに適用されるにつれて、「異なる電気泳動的な可動性」はタグが所与の電気泳動的な媒体、例えばアクリルアミド・ゲルで異なる移動率を基づいて、そして異なる荷電/質量比を有する正あるいは負に荷電された合成物いずれかを分離するための定義済みの電気泳動的条件下、例えば標準的電気泳動条件下で、相互に分離可能なことを意味する。
【0027】
「電気泳動的な分離能」は、電気泳動図の中の隣接するピークが別個であること、すなわち重なりがないことの尺度を意味する。それは、隣接する最大ピークの2つの標準偏差のより大きい方の4倍で割った隣接する最大ピークの間の距離である。好ましくは、隣接するピークは、少なくとも1.0、より好ましくは、少なくとも1.5、および最も好ましくは、少なくとも2.0の分離能を有する。所定の分離および検出システムにおいて、所望の分離能は、複数の分子タグ(そのメンバーは、少なくともピーク分離の程度が異なる電気泳動的移動度を有する)を選択することによって得られ、このような量は、当業者に周知のいくつかの要因(シグナル検出システム、蛍光部分の性質、タグの拡散係数、篩いマトリクスの存在または非存在、電気泳動装置の性質(例えば、チャネルの存在または非存在、分離チャネルの長さなど)が挙げられる)に依存する。
【0028】
本明細書中に使われるように、「固体支持体」は磁気ビーズ、ラテックス・ビーズ、よくマイクロタイターウェルプレート、ガラス・プレート、ナイロン、アガロース、アクリルアミド、などのような固体の表面を意味する。
【0029】
「タンパク質」または「ポリペプチド」は、最も広義に2つ以上のサブユニット・アミノ酸、アミノ酸の類似体または他のペプチド模倣物の合成物を参照するのに用いられる。この中に使われるように、用語「アミノ酸」はいずれの自然もおよび/または不自然であるか合成アミノ酸(グリシンと両方のDまたはL光学異性体を含む)とアミノ酸の類似体とペプチド模倣物を意味する。ペプチド鎖が短い場合、3つ以上のアミノ酸のペプチドは一般にオリゴペプチドと呼ばれている。ペプチド鎖が長い場合、ペプチドはポリペプチドまたはタンパク質と典型的に呼ばれている。全長のタンパク質、類似体とそれの断片は、定義に取り囲まれている。条件も、ポリペプチド(例えばグリコシレーション、アセチル化、リン酸エステル化など)のpostexpression変形実施例を含む。さらに、イオン化可能なアミノとカルボキシル基が分子で存在するにつれて、特定のポリペプチドは酸性であるか基本塩として、または中性の形状で得られる可能性がある。ポリペプチドは、直接供給生物体から得られる可能性があるか、リコンビナント的にまたは合成的に生産される可能性がある。
【0030】
「抗体」は、他の分子の特定の空間的および極性の組織と特異的に結合する免疫グロブリンを意味し、そしてそれによってそれらと相補的であると定義される。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得、そして当業者に周知の宿主の免疫化処置および血清(ポリクローナル)の収集による技術によって、または連続するハイブリッド細胞株を調整し、そして分泌されたタンパク質(モノクローナル)を収集することによって、またはヌクレオチド配列および少なくとも自然の抗体の特異的な結合に必要とされるアミノ酸配列をコードする変異体のクローニングおよび発現によって調製され得る。抗体は、完全な免疫グロブリンまたはそれの断片を含み、この免疫グロブリンは、IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3、IgMなどのような様々な分類およびアイソタイプを含む。その断片は、Fab、FvおよびF(ab)2、Fabなどを含む。加えて、凝集塊、重合体および免疫グロブリンまたはそれらの断片の複合体(conjugate)が使用され得、それらは、特定の標的の結合親和性が維持される限り適切である。
【0031】
「モノクローナル抗体」(MAB)はリンパ球(すなわち一つのB細胞の結果)の一つのクローンで生産される免疫グロブリンである。そして、それは抗原の上で一つのエピトープだけを認識する。抗体は、下記のセクションVI.Aで更に議論される。
【0032】
「キャピラリー電気泳動」とは、キャピラリーチューブ中またはキャピラリープレート中での電気泳動であって、分離カラムの直径または分離プレートの厚みが約25〜500ミクロンの間であり、分離媒体全体での効率的な熱放散を可能にし、その結果、この媒体中での熱対流が小さい、電気泳動を意味する。
【0033】
「篩マトリクス(sieving matrix)」または「篩媒体(sieving medium)」とは、マトリクスを通しての荷電種の電気泳動移動を遅延させるに効果的である、架橋されているかまたは架橋されていないポリマーを含む、電気泳動媒体を意味する。
【0034】
2つの分子または1つの分子および分子の複合体の結合に関連する「特異的な」は、他の分子の実質的により少ない認識およびこのような他の分子との安定な複合体の形成の欠如と比較した場合の、一方の他方に対する特異的認識および安定な複合体の形成をいう。好ましくは、結合に関連する「特異的な」は、分子が、他の分子または複合体と複合体を形成し、この分子は、それが特異性を有する分子または複合体との複合体の少なくとも50%を形成する程度を意味する。一般的に、分子または複合体は、2つの分子の間の特異的認識を生じさせる、それらの表面上または空洞中の領域を有する。特異的結合の例としては、以下が挙げられる:抗体−抗原相互作用、酵素−基質相互作用、ポリヌクレオチド相互作用、細胞レセプター−リガンド相互作用など。
【0035】
「多重分析」は、複数のアッセイ反応、例えば同時に多数の分析物のアッセイが一つの反応室で実施されるおよび/または、そして、一回の分離と検出フォーマットで分析されるアッセイを意味する。
【0036】
「分析物」は、物質、化合物またはサンプル中の成分を意味し、その存在または不在が検出されるあるいは、その量が測定される。分析物は、ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、有機分子、ハプテン、エピトープ、生物細胞の一部、タンパク質の翻訳後の修飾物、レセプター、糖複合体、ビタミン、ホルモンなどを含むが、それに限定されない。単分子実体に関連する1より多い分析物が存在し得る(例えば、同じタンパク質上の異なるリン酸化部位)。同様に、単一分析物に関連する1より多い分子実体が存在し得る(例えば、ダイマーを形成する異なる細胞表面膜受容体(receptor)。
【0037】
「クロマトグラフィー」または「クロマトグラフィーの分離」は、本明細書で使用される場合、化合物の混合物(例えば、分子タグを含む)を含む移動相(通常は液体)の流れが、移動相と固定相(通常は固体)との間の差示的な分配によって、このような組成物の分離を促進する分析の方法を意味するかまたは表す。分析物、例えば分子タグのクロマトグラフィーの分離の根拠を形成する1つ以上の物理的特性は、分子量、形、溶解度、pKa、疎水性、電荷、極性等を含むが、これらに限定されない。
【0038】
高圧(または高性能)液体クロマトグラフィー(HPLC)は、(i)300mmの長さおよび5mmまでの内部直径を有する固体円筒状の分離カラムを使用し(ii)分離カラムに充填する5μmまでの同じ直径を有する固体球形の粒子(例えば、シリカ、アルミナなど)を含む固相を有し、(iii)35℃〜80℃までの範囲の温度および150barまでのカラム圧力で実施し、そして(iv)1μL/分〜4mL/分の範囲の流速を使用する液相クロマトグラフィー分離をいう。HPLCにおいて使用する固相粒子は、(i)平均粒子直径について狭い分布を有し、実質全ての粒子の直径は平均の10%内であり、(ii)70Å〜300Åの範囲において、同じ孔の大きさを有し、(iii)50m2/g〜250m2/gの範囲の表面領域を有し、そして(iv)1nm2あたり1〜5の範囲の結合相密度(すなわち、単位領域あたりの保持リガンドの数)、においてさらに特徴付けされる。
【0039】
キャピリー電子クロマトグラフィー(CEC)は、液体がキャピラリーサイズのカラム(例えば、30μm〜100μmの範囲における内部直径)中を電気浸透流によって駆動されている液相クロマトグラフィー技術をいう。CECは、Svec,ADv.Biochem.Eng.BiotechnoL.76:1−47(2002);Vanhoenackerら、ELectrophoresis,22:4064−4103(2001)などのような参考文献に記載される。CECカラムは、従来の逆相HPLCに使用されているのと同じ固体相材料を使用してもよく、そして付加的に、いわゆる「巨大な」非特定の充填を使用してもよい。CECのいくつかの形態において、電気浸透に加えて、圧力がカラムを通過する分析物含有溶剤を駆動する。
【0040】
アッセイ条件に対する参照において、「等温」は、本発明に従った電気泳動プローブの切断が実行される均一なまたは一定の温度を意味する。この温度は、標的オリゴヌクレオチド標識配列を有するオリゴヌクレオチド標識へのプローブのハイブリダイゼーションによって形成された二本鎖が、遊離またはハイブリダイズしていないプローブと遊離またはハイブリダイズしていない標的ポリヌクレオチド配列とが平衡である、言い換えると、プローブとポリヌクレオチドが「可逆的にハイブリダイズする」と本明細書でいわれる条件にあるように選択される。通常、オリゴヌクレオチド標識の少なくとも1%、好ましくは20〜80%、通常は95%未満は、等温条件下でプローブとハイブリダイズする。従って、等温条件下では、プローブ、またはその部分とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが存在し、そしてプローブとハイブリダイズしていない分子と動力学的に平衡である。幾らかの温度の変動が生じ得、依然として本発明の利益を達成し得る。変動は、一般的に、本発明の方法を実行するのに必須でなく、通常、実質的な改善を何ら提供しない。従って、用語「等温」は、温度変動の使用、特に、温度の無秩序または制御されない変動を含むが、特に、熱サイクル(幾つかの公知の増幅手順(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)において使用される)といわれる温度の変動の型は含まない。
【0041】
融点(Tm)は、所定の核酸二本鎖の50%が溶融する(すなわち、一本鎖になる)温度として定義される。Tmは、反応条件(例えば、溶液の塩濃度)に依存する。所望のTmは、代表的に、相補領域の長さおよびヌクレオチド塩基組成の操作によって達成される。他の方法もまた、二本鎖Tmを調節するために利用され得る。これらとしては、安定性ヌクレオチドまたはヌクレオチド間結合(例えば、ペプチド核酸、ホスホラミデート、2’−メトキシリボヌクレオシドなど)を有する相補的塩基対の幾らか、または全部の不適合、置換の組み込みが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
核酸のTmを計算するための幾つかの式が、当該分野で周知である。標準的な参考文献によって示されるように、核酸が、1M NaCLの水溶液中にある場合に、Tの簡単な概算値は、式Tm=81.5+0.41(%G+C)によって計算され得る(例えば、AnDersonおよびYoung,Quantitative FiLter HybriDization,in NucLeic AciD HybriDization(1985)を参照のこと)。他の参考文献(例えば、ALLawi,H.T.&SantaLucia,J.,Jr.ThermoDynamics anD NMR of internaL G.T mismatches in DNA.Biochemistry 36,10581−94(1997))は、Tmの計算のために、構造および環境ならびに配列特性まで考慮に入れる、より洗練された計算を含む。
【0043】
標的ポリヌクレオチド標識に対するプローブのような、一つの分子の他の分子への結合についての言及における「特異的」または「特異性」は、二つの分子間の認識、接触および安定的な複合体の形成を意味し、同時に、実質的にほとんどないその分子と他の分子との認識、接触または複合体形成を意味する。一局面において、第一の分子の第二の分子への結合についての言及における「特異的」は、第一の分子が反応物またはサンプル中の別の分枝を認識し、複合体を形成する限り、それは第二の分子との複合体を最大数形成することを意味する。好ましくは、この最大数は、少なくとも50%である。一般に、特異的な結合事象に関与する分子は、結合する分子間での認識を誘発する表面上または空洞に領域を有する。特異的結合の例は、抗体−抗原の相互作用、酵素−基質の相互作用、ポリヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチドの間での二重鎖または三重鎖の形成、レセプター−リガンドの相互作用などを含む。本明細書中で使用される場合、特異性または特異的な結合についての言及における「接触」は、ファンデルワールス力、水素結合、イオン相互作用または疎水的相互作用などのような弱い非共有の化学的な相互作用が、分子の相互作用を支配するのに十分、2つの分子が近いことを意味する。
【0044】
本明細書および請求項中における用語「サンプル」は、広い意味で使用されている。一方で、それは試料や培養物(例えば、微生物学的な培養物)を含むことを意味する。他方では、それは、生物学的サンプルおよび環境的サンプルを含むことを意味する。サンプルは、合成起源物の試料を含み得る。生物学的サンプルは、液体食料および固体食料ならびに飼料作物そして乳製品のような成分、野菜、肉および肉製品、そして廃棄物に加えて、動物(ヒトを含む)、流体、固体(例えば糞)または組織であり得る。生物学的サンプルは、患者から採集される材料を含み得、これらとしては培養物、血液、唾液、脳脊髄液、胸水、乳液、リンパ、痰、精液、針吸引物などが挙げられるがこれに限定されない。生物学的サンプルは、様々な種の家畜全ておよび野生または野生種の動物から獲得され得、これらの動物としては、有蹄類のような動物、熊、魚、げっ歯類などを含むが、それに限定されない。環境的サンプルは、表面物質のような環境材料、土壌、水および工業的サンプル、ならびに食料および乳製品加工器具、装置、機器、用具、使い捨て品、非使い捨て品から獲得されるサンプルを含む。これらの例示は、本発明に適用可能なサンプルの型を限定すると解釈されるべきではない。
【0045】
分子タグの分離に対する言及における「分離プロファイル」は、時間に対するシグナルの強さのデータの図表、グラフ、曲線、棒グラフ、もしくは他の描写、または、アッセイにおいて産生される各々の型の分子タグの数の読み出し、測定を提供する他の時間に対する変数を意味する。分離プロファイルは電気泳動図、クロマトグラム、電気クロマトグラムまたは使用する分離技術に依存するデータの図面の描写の様なものであり得る。分離プロファイルに対する言及における「ピーク」または「バンド」または「区域」は、分離された化合物が集中する領域を意味する。例えば、明瞭な照射スペクトルおよびデータを有する異なる蛍光標識を有する異なる分子タグが、多様な波長で収集され、そして記録される場合、シングルアッセイに多様な分離プロファイルが存在し得る。
【0046】
(II.アッセイフォーマット)
本発明の方法は、サンプル中の1つあるいは複数の分析物の存在を決定するのに用いることができる。通常、サンプルは少なくとも1つの細胞タイプを含む、そして、分析物は細胞表面部分(例えば細胞表面受容体)であってもよい。
【0047】
一般に、リガンドまたは結合剤の分析物との結合は、以下に記載のとおり、結合剤のアイデンティティに相関し得る1つ以上の検出可能な分子タグの放出によって起こる。本発明の1つの局面によれば、結合剤はオリゴヌクレオチド標識と結合し、オリゴヌクレオチド標識は核酸ベースのシグナル増幅システムの1つの構成要素である。(i)検出プローブがオリゴヌクレオチド標識と結合する、(ii)分子タグを放出するためにプローブを切断、そして(iii)無傷の(インタクトな)プローブによって切断されたプローブを置換する、以下により詳細に記載されているように、これらの工程の繰返しサイクルによって、シグナルは増幅される。放出された「タグ」の型と量を検出することで、サンプル中の異なる分析物の有無についての情報を得ることができる。
【0048】
結合剤は、例えば、抗体、特にモノクローナル抗体、あるいは、分泌されたペプチドといったペプチドリガンドであってもよい。抗体については、以下により詳細に記述する。受容体結合化合物は、アゴニスト(それは、天然の受容体結合リガンドのそれと似た生理的反応をもたらす)または拮抗剤(それは、受容体の生理活性を阻害する)であってもよい。
【0049】
本明細書中に記載のアッセイは、特にサンプル中の低レベルで存在する分析物、または限られたサンプル量しか利用できない場合の少量サンプル中の分析物との結合を検出するのに有益である。例として、レーザー−捕獲顕微手術(例えば、Emmert−Buckら,1996)等の技術によって得る組織サンプルが含まれる。それは非常に純度が高く代表的な細胞サンプルを提供することができるが、サイズにおいて限度がある。他の限られたサンプルとしては、例えば臨床試験での患者集団から得られる組織ライブラリーにおけるサンプルを含む。そのようなライブラリーは、神経変性疾患の研究のための脳組織ライブラリーにおけるように、他のタイプの標本が集められるが、しばしば癌組織サンプルを含んでいる(GoLDstineら,2002を参照)。
【0050】
本方法に従って、1つ以上のアッセイされるべき分析物を含むサンプルが提供される。本方法は、これらの分析物と結合することが既知となっている、例えば抗体といってリガンドを用いることによって、選択された分析物の存在および/またはレベルを検出するために使用されてもよい。あるいは、本方法は既知の標的に結合するリガンドの候補を選別するために使用されてもよい。本方法は、特に分析物が低レベルで存在すると思われる、および/または利用できるサンプルの量が少量である時に、特に第1のタイプのアッセイに適している。
【0051】
各々の結合剤は、リガンド−オリゴヌクレオチド結合体の形で提供され、また本明細書中では、結合剤が抗体である図1Aの10に図式的に示されているように、結合組成物として言及されている。各々異なる結合剤は(12)は、異なる既知の配列のオリゴヌクレオチド(14)と結合し、結合体を形成する。1つまたは好ましくは、複数のそのような結合体が、サンプル中の分析物とその分析物がそれに対して結合親和性を有するリガンドの間で結合が起こるような条件下で、サンプルに添加される。
【0052】
1つの態様において、サンプルは少なくとも1つの細胞タイプを含み;それによって、分析物は細胞表面受容体を含む。図1Bは、受容体R1、R2、R3及びR4を有する細胞を示している。ここに示されているシステムには、5つの異なるリガンド−オリゴヌクレオチド結合体16、18、20、22及び24、異なる配列のオリゴヌクレオチドを有するそれぞれの結合剤が該細胞を含むサンプルに添加される。結合体16、18、20、及び22の抗体成分は、受容体R1、R2、R3及びR4にそれぞれ結合し、示されるように、分析物複合体、例えば26を形成し、一方結合体24は結合していない。
【0053】
図1Cに関して、結合したリガンド−オリゴヌクレオチド結合体は、また本明細書においては分析物複合体として示されることもあり、分析物とそれら各々の結合組成物との間に形成されている。これら結合体は、次に結合しなかったリガンド−オリゴヌクレオチド結合体、例えば26から、分離される(27)。分離はさまざまな方法で行われてよく、それぞれ結合した結合体と結合しなかった結合体とを識別し、固体支持体に結合された試薬を用いるものである。固体支持体は、容器壁(例えば、マイクロタイタープレートウェル、キャピラリー、プレート、スライド、磁気ビーズなどのビーズ、リポソームなどであり得る。固体支持体の主な特徴は、(1)結合部分と非結合部分を区別できること、好ましくは非共有結合によって区別できること、(2)分析物複合体の形成及び安定に干渉せず、かつ定量におけるその他の操作についても干渉しないこと。これは、例えば、ビオチン等の親和性分子を含むリガンド−オリゴヌクレオチド結合体を用い、ストレプトアビジン等の親和性分子に対する結合パートナーを含む表面で結合したリガンドを含む細胞を捕獲することによって達成される。
【0054】
非結合細胞および/または結合しなかった結合剤は、一般に支持体を洗うことによって除去される。粒子またはビーズが用いられている場合、これらを洗浄の前に、ろ過、遠心または磁気分離といった方法によって、上澄みから分離してもよい。
【0055】
あるいは、ビオチン等の試薬に結合した2次抗体が添加され、結合していない結合体の抗体部分に結合してもよい。例えば24は、分析物複合体の一部ではない。ビオチン化された結合体は、それから、混合液をストレプトアビジン化された固相支持体に接触させることによって除去でき、溶液中には分析物複合体が残る。
【0056】
アッセイの他の成分は、以下更に記述がある、ヌクレアーゼ、および1つ以上の検出プローブ、または、より典型的には1つ以上の検出プローブ/ヘルパープローブのペアを含み、そしてそれぞれのペアが既知の方法で1つのリガンド−オリゴヌクレオチド結合体に対応する。それぞれのペアは、(i)所与の領域において、結合体のオリゴヌクレオチド標識に特異的なヘルパープローブ、(ii)該所与の領域に隣接している第2の領域で、結合体のオリゴヌクレオチド標識に特異的な検出プローブを含む。該プローブは、また、分子タグを含み、他のプローブの分子タグに対して異なる光学的および/または分離性質、例えば質量または電気泳動移動度等を有する。そのようなタグは、以下のセクションIIIBにおいて詳述する。
【0057】
結合組成物のオリゴヌクレオチド標識に使われるオリゴヌクレオチド、検出プローブ、そしてヘルパープローブまたはプライマーは、アッセイに使用される切断酵素の基質である切断構造を形成するように配列特異的な物質中でハイブリダイズさせるのに効果的である。典型的には、リン酸ジエステルにリンクされたデオキシリボオリゴヌクレオチド(DNA)が用いられるが、RNAオリゴマーも切断構造を形成し、従ってこれを用いてもよい(例えばLyamichevら,1993;Browら、米国特許第6,001,567号を参照)。切断構造の例は、以下のセクションIIIにおいて詳述される。
【0058】
プローブは、所望のオリゴヌクレオチド標識に反応するように、好ましくは、非標的オリゴヌクレオチド標的とは反応しないよう(例えば、交差反応)に設計されている。しかし、一般に、検出/ヘルパーのペアのうち1つのプローブが望んでいない標的とハイブリダイズし、もう一方のプローブがしないなら、切断構造が形成されるには両方のプローブがハイブリダイズしなければならないので、以下に記載するように、アッセイは依然として適切に機能している。
【0059】
上記のヘルパーおよび検出プローブのペアを用いて、サンプル中の標的オリゴヌクレオチド標識を検出するには、以下の一般的な手順が用いられる:1)ヘルパーおよび検出プローブのペアがリガンド−オリゴヌクレオチド標識複合体を含むサンプルに添加される、2)適切な領域のアニーリングが生じるように混合物をインキュベートし、3)分子タグを放出するように適切な酵素によって切断構造を切断し、そして4)放出(遊離)されたタグを分離・同定し、対応するリガンド−オリゴヌクレオチド複合体、そして対応する分析物を同定する。切断構造の例示的なタイプ(例えば、図2A、3Aおよび4Aに示される)は、以下に詳述される。
【0060】
ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ感受性の検出プローブ中の他の結合を切断することもできる。検出プローブ中に少なくとも1つのヌクレアーゼ耐性結合があることの利点は、切断されると、タグを付けられたプローブは、放出されたタグリポーターの単一サイズの種を得るということである。ヌクレアーゼ切断可能な結合は、例えば、ホスホジエステル結合を含み、ヌクレアーゼ耐性結合は、例えば、チオリン酸塩、ホスフィン酸塩、ホスホラミデート、またはアミドおよびホウ酸結合等のリン酸誘導体を除くリンカーを含む。
【0061】
切断構造形成のために用いられるアニーリング条件は、実際の適用、プローブの設計、オリゴヌクレオチド標識の性質および標的オリゴヌクレオチドが含まれるサンプルの組成に依存して変化し得る。核酸ハイブリダイゼーションの速度に影響するとして知られている要因は、核酸の濃度、アッセイが行われる温度、アッセイ溶液中の塩類および/または他の荷電遮蔽イオンの濃度を含む。最適条件は、サンプルのタイプに基づいて様々であり、従って、当業者によって調整することができる。
【0062】
バッファー(緩衝液)の条件は、望ましい温度と濃度範囲でハイブリダイゼーションが可能となるよう、そして酵素と互換性を持つよう充分な塩濃度を含む。市販されている酵素については、製造業者の指示によって、推奨されるバッファーが提供されている。一般に、従来のバッファー、例えば、リン酸、炭酸、HEPES、MOPS、Tris、ホウ酸など、および他の従来の添加物、例えば、塩、安定化剤、有機溶媒などを用いてもよい。水性媒体は、水単独であり得るか、または0.01〜80またはそれ以上の体積パーセントの共溶媒を含み得る。
【0063】
標的オリゴヌクレオチド標識に対するハイブリダイゼーションの速度が速くなるように、オリゴヌクレオチド(検出プローブオリゴヌクレオチドおよびヘルパープローブまたはプライマーオリゴヌクレオチド)が、好ましくは、実質的に過剰に提供される。適切な濃度は、0.1nM〜10μM、好ましくは1nM〜10μMの範囲である。以下に更に記述されるように、プローブオリゴヌクレオチドおよび任意のプライマーオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド標識に対して過剰に提供されるのが好ましい。プローブの濃度増加は、反応速度が、プローブ配列、温度、オリゴヌクレオチド標識は配列の濃度および酵素濃度に依存する制限値に近づくということに留意するべきである。多くの検出方法にとって、プローブの濃度が非常に高いと検出をより困難にする。切断されたプローブの正確な検出が、大量の切断されなかったプローブに容易に影響を受け易い場合は、プローブの濃度を減らすべきであり、または切断されなかったプローブを分析の前にアッセイ混合物から除去してもよい。
【0064】
ヌクレアーゼは、一般に、ヌクレアーゼがオリゴヌクレオチド分析物を可逆的にハイブリダイズする場合に、検出オリゴヌクレオチドの切断を、過剰な酵素で達成可能な最大速度の迅速さの少なくとも半分(好ましくは、最大速度の少なくとも75%)で進行させるのに十分な量で存在する。核酸の異なるタイプを切断するのに用いられるヌクレアーゼがいくつか、下記に詳細について記載されるが、本分野において周知となっている。例えば、2本鎖DNAを切断することができる、DNAseIおよびエンドヌクレアーゼ、または1本鎖DNAを切断することができる、ヌクレアーゼS1等が利用できる。ヌクレアーゼとしては、ヌクレアーゼとしてのみ機能する酵素のほか、5’ヌクレアーゼ活性を有するTaqポリメラーゼのようなDNAポリメラーゼ等のヌクレアーゼ活性を含む多機能酵素も含む。異なる菌種に由来するTaqポリメラーゼまたは設計された突然変異に由来するTaqポリメラーゼのいくつかの誘導体が、しられており、それらは核酸ハイブリッドの特異的構造を切断する(Kaiseら、J. BioL. Chem. 274:21387−21394 (1999); Lyamichevら, Proc. NatL. AcaD. Sci. USA 96:6143−6148 (1999); Maら, J. BioL. Chem. 275:24693−24700 (2000))。
【0065】
ヌクレアーゼの濃度は、通常経験的に決定される。好ましくは、濃度におけるさらなる増加が、増幅のための時間を5倍(好ましくは2倍)を超えて減少させない十分な濃度が使用される。一般的に、主な制限因子は、試薬の費用である。次いで、これに関して、オリゴヌクレオチド標識および酵素は、一般に、触媒量で存在する。
【0066】
アッセイは水性媒体中で行われる。この媒体についてのpHは、通常、約4.5〜9.5の範囲、より通常は約5.5〜8.5の範囲、そして好ましくは約6〜8の範囲である。pHおよび温度は、可逆的な加水分解またはプローブの切断が本発明に従って生じる平衡状態を達成するように、選択される。いくつかの例において、本発明の方法のこれらの工程の速度、効率および特異性を最適化するために、反応パラメータにおいて妥協が生じる。使用される緩衝剤の例としては、ボレート、ホスフェート、カルボネート、Tris、バルビタールなどが挙げられる。使用される特定の緩衝剤は、本発明にとって重要ではないが、個々の方法において1種の緩衝剤が、別の緩衝剤を上回って好まれ得る。
【0067】
本発明によると、アッセイ反応は、等温条件下で実行される。この反応は通常、プローブ:オリゴヌクレオチド複合体の融点に近い温度で実行される。従って、採用される温度は、多数の因子に依存する。通常、本発明に従うプローブの切断のためには、温度はプローブの長さおよび配列に依存して約35℃〜90℃である。高速の反応を提供するためには、60℃〜85℃の比較的高い温度を使用することが通常所望される。利用される正確な温度はまた、塩濃度、pH、使用した溶媒、ならびに標的オリゴヌクレオチド標識配列の長さおよび組成、ならびに上述したようにプローブの長さおよび組成に依存して変化する。最適な反応温度の選択は、採用されるヌクレアーゼの温度依存性を考慮することが理解される。
【0068】
アッセイは、反応で形成される最も不安定な二重鎖のTmより少し低い温度で行われるのが好ましい。オリゴヌクレオチドのためそしてそれら成分領域のための融点は実験的に決定される、本分野において周知であるコンピューターソフトウェアを使用して推定される、または10−30ヌクレオチドの長さを有するオリゴヌクレオチドについて、A−T塩基対毎に2℃、G−C塩基対毎に4℃を割り当てて概算して決定してもよい。非特異的切断(すなわち、その長さに沿って多くのまたはすべての位置でプローブを切断する)が検出された場合は、より高い温度にしなければならない。反対に、切断がほとんどまたは全く起こらない場合は、低い温度にしなければならない。好ましい実施形態では、アッセイ温度は、オリゴヌクレオチド標識にアニールする検出オリゴヌクレオチドの領域のTmより少し高い温度であり、その結果、複数の切断が速やかに行われる。通常は、インキュベート温度は、好ましくは、5℃と70℃との間、より好ましくは30℃と65℃との間である。一般に、アッセイの各工程について、全てあるいは一部の試薬を混合した後のインキュベート時間は、少なくとも5分であり、より通常は少なくとも15分である。
【0069】
本発明の1つの局面において、構築物における結合状態と溶液中の遊離状態との間での検出プローブの平衡交換または循環に起因して、放出された分子タグは蓄積される。別の局面において、核酸構築物の切断は、構築物の不安定化、例えば、1つの長い二重鎖の代わりに2つの短い二重鎖を作ること、によって解離を促進する。両方の場合において、解離は、構築物の形成および切断の新しい循環のためのオリゴヌクレオチド標識を遊離させ、それによって、放出されたタグの蓄積を可能にする。
【0070】
ヘルパープローブ、検出プローブと標的オリゴヌクレオチド標識との間の上記複合体を形成するためのアッセイ条件およびオリゴヌクレオチド配列を選択するための指針は、当該分野で見出され得る(例えば、Hoganら,米国特許第5,451,503号;Westernら,同第6,121,001号;ReynaLDoら,J.MoL.BioL.,297:511−520(2000);Wetmur,CriticaL Rev.in Biochem.MoL.BioL.,26:227−259(1991)など)。従って、各参考文献は、本明細書で参考として援用される。
【0071】
(III.切断構造の形成および切断)
(A.概論)
上記記載のように、本発明のアッセイは、分子タグを生成し、結合事象の結果生じる信号を増幅するために核酸ベースの手段を用いる。一般に、アッセイでは、一般的な要素(分析物−結合因子−核酸ベースの分子タグ生成系)核酸ベース分子タグ生成系は、以下の工程の繰返しサイクルによって信号を増幅する(i)検出プローブが結合因子のオリゴヌクレオチド標識と結合する、(ii)分子タグを放出するためにプローブを切断、そして(iii)無傷の(インタクトな)検出プローブによって切断されたプローブを置換する。そのような核酸切断プロトコルのうち選択した例については、後述し、添付の図面に示されている。
【0072】
いくつかの核酸ベース信号増幅技術が、分子タグを生成するために本発明で利用され、その技術としては、プローブ分解を用いる技術、およびプローブ合成またはリゲーションを用いる技術であり、例えば、Schweitzerら, Nature BiotechnoLogy 20: 359−365 (2002); MartineLLiら, 米国特許第6,083,689号; FreDrikssonら, Nature BiotechnoLogy 20: 473−477 (2002)等に記載されている。1つの局面では、放出された分子タグにもとづく信号は、ヌクレアーゼでのプローブの分解を利用するいくつかの核酸ベースの信号増幅技術のいずれか1つによって生成される。これは例えば、taqmanアッセイであり、例えばGeLfanD, 米国特許第5,210,015号に記載; プローブサイクリングアッセイであり、例えばBrowら,米国特許第5,846,717号;WaLDerら,米国特許第5,403,711号;Hoganら,米国特許第5,451,503号; Westernら,米国特許第6,121,001号; Fritchら,米国特許第4,725,537号; Varyら,米国特許第4,767,699号に記載;他の分解アッセイであり、例えばOkano anD Kambara, AnaL. Biochem. 228: 101−108(1995)に記載されているものであるが、これらに限定されない。特に、分子タグを生成するいくつかのそのような信号増幅技術は、Singh,米国特許第6,322,980号; Singh, 国際特許公報WO 00/66607;および Matrayら, 米国特許公報第2002/0146726および2002/0142329に公開されている。この段落に引用したすべての米国特許を核酸ベースの信号増幅技術の参考文献として本明細書に援用される。
【0073】
1つの局面において、本発明は、ヌクレアーゼに基質として働く切断構造または複合体を生成するために、オリゴヌクレオチドの局在化された領域上でヘルパープローブおよび検出プローブの協調した運用を利用する信号増幅技術を用いる。ひとたび、そのような複合体がアッセイ条件下で形成されると、ヌクレアーゼによって認識され、その後複合体の検出プローブを切断し、分子タグを放出する。アッセイ条件は、オリゴヌクレオチド標識が不在の場合、切断構造が形成しないよう、すなわち、検出プローブが分子タグを放出しないことである。
【0074】
簡単にいうと、そのような方法は、1以上のオリゴヌクレオチド標識を検出するために、以下の工程を用いる。上記記載のように、各オリゴヌクレオチド標識が、分析物特異的リガンドも含む結合組成物の一部である。工程は、
(i)各オリゴヌクレオチド標識に対して、ヌクレオチド標識の領域と相補的な検出プローブを準備し、多くの例では、該領域に近接するオリゴヌクレオチド標識に相補的なヘルパープローブを準備し、各検出プローブが切断可能な結合によって分子タグを結合しており、各分子タグがそのようなタグの分離プロファイルにおいて識別可能なピークを形成するように、各検出プローブの分子タグが他の検出プローブに結合する分子タグとことなる物理的および/または光学的特性を有するものとする工程、
(ii)ハイブリダイゼーション条件下で、ヌクレアーゼ、該サンプル、該検出プローブおよび、必要であればヘルパープローブを混ぜ合わせ、アッセイ混合物を形成する、その結果、オリゴヌクレオチド標識とハイブリダイズしたプローブが、検出プローブが切断部位で切断される結果となる反応において、ヌクレアーゼによって認識され、その結果該アッセイ混合物は、放出された分子タグ、切断されなかった検出プローブおよび非特異的分解産物を含む、
(iii)分離プロファイルから切断されなかった検出プローブおよび非特異的分解産物を除去するためにアッセイ混合物を処理する工程、
(iv)放出された分子タグを分離および同定し、複数のオリゴヌクレオチド標識の各々を決定する工程、を含む。
【0075】
本明細書において使用されている「ヘルパープローブ」は、ヌクレアーゼ活性が起こるのに必要な構造を生成するのに必要な拡散ベースの信号増幅技術における、プローブを指している。ヘルパープローブは、GeLfanD(上記記載)または、Westernら(上記記載)等に記載のある「プライマー」、Browら(上記記載)等に記載のある「インベーダー」プローブまたは「パイロット」プローブ、Hoganら(上記記載)等に記載のある複合体の「アーム」領域等を含む。本明細書において使用されている「検出プローブ」はヌクレアーゼによって切断され、本発明において分子タグを放出するプローブであり、例えば、「アーム」領域の補体(Hoganら、上記記載)、GeLfanD(上記記載)のtaqmanプローブ等があげられる。ヘルパープローブと検出プローブの対は、必要であればアッセイ中で結合してもよい。通常は、そのようなプローブの対は、近接する領域である近隣の部位でオリゴヌクレオチド標識とハイブリダイズし、両プローブのハイブリダイゼーションは、切断事象が起こるのに必要である。例えば、ヘルパープローブがプライマーである場合、それは相補的領域においてオリゴヌクレオチドとハイブリダイズまたはアニーリングして、その後それはポリメラーゼによって認識される。ポリメラーゼは、プライマーを伸長し、それが5’→3’ヌクレアーゼ活性を有するなら、近接し、プライマーの下流にある検出プローブを分解する。他の例では、ヘルパープローブと検出プローブがオリゴヌクレオチド標識と直近の部位でハイブリダイズし、Western(上記記載)参照、その結果、プローブ間に介在する一重鎖領域がなくなる。通常、そのようなプローブの対は、数百のヌクレオチド、例えば、500−1,000、好ましくは、数十のヌクレオチド、例えば、0−60、を有するオリゴヌクレオチド標識とハイブリダイズする。好ましくは、温度信号生成技術は、分離のために放出された分子タグを蓄積するためプローブリサイクリングを用い、温度サイクルを必要としない、すなわち等温的に操作する技術が採用される。
【0076】
(B.切断構造物の例)
(B1)本方法の1つの実施形態において、ヘルパープローブは、オリゴヌクレオチド標識の第1の領域に相補的な第1のセグメントを有し、検出プローブは、該第1の領域に近接する領域でオリゴヌクレオチド標識に相補的な第1のセグメントとヘルパープローブの第2のセグメントに相補的な第2のセグメントを有し、その結果、ヘルパープローブと検出プローブが、お互いのおよびオリゴヌクレオチド標識とのハイブリダイゼーションによって認識二重鎖を形成する。
【0077】
この実施形態による、認識二重鎖または切断構造の形成は、図2Aに示されている。分析物に対応する検出可能な信号は、以下の工程で生成される:(1)各オリゴヌクレオチド標識106に対して、オリゴヌクレオチド標識の第1の領域110’に相補的なヘルパープローブ100、およびヘルパープローブに相補的でありかつ該第1の領域に近接する第2の領域114’でオリゴヌクレオチド標識と相補的な検出プローブ102を準備し、ヘルパープローブと検出プローブが、互いにおよびオリゴヌクレオチド標識とハイブリダイズして認識二重鎖112を形成し、各検出プローブは分子タグ(図では、「eタグ」)を結合しており、分子タグはそのようなタグの分離プロファイルにおいて識別可能なピークを形成するように、他の分子タグと異なる分離または光学的特性を有する、(2)ハイブリダイゼーション条件下で、ヌクレアーゼ、該サンプル、および該検出プローブを混合し、認識二重鎖が形成されるようにアッセイ混合物を生成する、(3)分子タグが放出されるように切断部位で認識二重鎖を切断する。(4)放出された分子タグを分離および同定し、複数のオリゴヌクレオチド標識の各々を検出する。
【0078】
このようなプローブの各対のヘルパープローブ(100)および検出プローブ(102)は各々、図2に示すように、オリゴヌクレオチド標識にハイブリダイズする領域および認識二重鎖を形成するように対の他のプローブにハイブリダイズする領域を保有する。互いにハイブリダイズするか、またはオリゴヌクレオチド標識とハイブリダイズする領域は、互いに相補的なヌクレオチド配列を有する。この相補性は、完全に適合した二本鎖を生じる必要はない。実際に、以下に記載されるように、幾つかの場合において、認識二重鎖は、切断因子のための特定の認識構造として役立つ不適合の塩基対を意図的に含む。これらのプローブ対の領域は、オリゴヌクレオチド標識の非存在下における認識二重鎖の融点が、このアッセイの操作温度より低い、好ましくは、操作温度より4℃低い(より好ましくは7〜10℃低い)ように設計され、その結果、認識二重鎖を形成する領域のハイブリダイゼーションは、オリゴヌクレオチド標識の非存在下においては、ほとんど生じないか、または全く生じない。アッセイ反応の操作温度が、約60℃である場合、認識二重鎖を形成する正確な相補性領域の好ましい長さは、連続した約8〜20塩基(塩基組成および配列に依存する)である。他の反応条件は、潜在的に、異なるサイズ範囲をもたらす;このことは、実験的に容易に決定される。
【0079】
プローブと標的核酸を含む溶液との接触の際に、2つのプローブオリゴヌクレオチドのプローブ領域は、オリゴヌクレオチド標識上のそれらのそれぞれの標的領域にハイブリダイズし、これらは、代表的に、図2Aに示されるように、互いに隣接しているが、それらは、真近に隣接する必要はない。2つのプローブ鎖の互いに相補的な領域は、互いに極近接するように制限され、従って、会合した二本鎖の安定性を増加させる。
【0080】
オリゴヌクレオチド標識に相補的なプローブの領域は、種々の様式で設計され得る。例えば、これらの領域は、認識二重鎖を形成する領域と同様に設計され得、ここで、いずれかの領域単独(すなわち、1つのプローブ鎖+標的鎖)のTmは、操作温度より低いが、プローブ鎖および標的鎖の両方が存在し、認識二重鎖を形成する領域がハイブリダイズしている場合、操作温度より高い。これらはまた、プローブ領域のTmが、両方とも操作温度より高いように設計され得るか、または、それらは、1つのTmが、操作温度より高く、そしてもう1つが操作温度より低いように設計され得る。どのような設計が、選択されたとしても、認識二重鎖を形成する領域が、標的オリゴヌクレオチド標識の存在下でのみ安定な二本鎖を形成するという必要性は、みたされなければならない。標的オリゴヌクレオチド標識に相補的なプローブの領域は、好ましくは、8〜50ヌクレオチド長であり、より好ましくは、8〜30ヌクレオチド長である。これらの領域は、より長いものであり得るが、最良の適用としては、このさらなる長さを必要とせず、そしてこれらのより長いオリゴヌクレオチドの合成は、より短いオリゴヌクレオチドよりもコストと時間を消費する。
【0081】
図2Aに示されるように、安定な多重鎖複合体は、全部で3つのメンバー(ヘルパープローブ(100)、検出プローブ(102)およびオリゴヌクレオチド標識(106))の存在下でのみ、アッセイ条件下で形成される。検出プローブ(102)は、所定のアッセイ条件下で、単独では、安定な二重鎖をオリゴヌクレオチド標識(106)と形成できないように設計されている。このような複合体(107)が形成される場合、ヘルパープローブ(108)および検出プローブ(108’)の相補的な領域は、ハイブリダイズして認識二重鎖(112)を形成する。三本鎖複合体を形成するために、ヘルパープローブ(100)および検出プローブ(102)の両方は、のオリゴヌクレオチド標識(106)の部位(110’)および(114’)に対して相補的な領域(110)および(114)をそれぞれ有する。オリゴヌクレオチド標識(106)は、一本鎖DNAまたはメッセンジャーRMA(mRNA)のような一本鎖RNAのどちらかであり得る。
【0082】
図1Bに示されるように、本発明のアッセイの操作において、ヘルパープローブおよび検出プローブの複数の対(120)は、それらの対応するオリゴヌクレオチド標識が存在するときはいつでも、対の間の認識二重鎖(124)の形成を許容する条件下対応するで複数の標的ポリヌクレオチド(122)と混合し得る。認識二重鎖(124)は、二重鎖形態で存在する核酸のみを特異的に切断する(126)切断因子によって認識され、分子タグを含む検出プローブの断片を放出する。従って、一本鎖核酸(結合していないヘルパープローブ、結合していない検出プローブ、およびオリゴヌクレオチド標識を含む)は、切断も改変もされない。好ましくは、切断因子は、基質が、2本のDNA鎖、2本のRNA鎖または1本のDNA鎖、1本のRNA鎖を含む二重鎖構造であるかまたはこの二重鎖構造を含む、ヌクレアーゼである。検出プローブの切断の後、認識二重鎖は、不安定化する。なぜなら、この二重鎖において塩基対を形成するヌクレオチドはほとんど無く、次いでこれが、3本鎖複合体全体の不安定化(128)をもたらす。オリゴヌクレオチド標識を越えた実質的に過剰濃度の検出プローブを提供する工程を包含するアッセイ条件下で、切断されていない検出プローブは、検出可能な量の放出された分子タグが、アッセイ混合物中に蓄積するまで、複合体の形成および切断の連続するサイクル(130)に関与する。
【0083】
アッセイ反応の完了後、放出された分子タグは、従来の分離技術(例えば、キャピラリー電気泳動、マイクロボアクロマトグラフィーなど)を使用して分離されそして同定される(132)。
【0084】
(B2)本方法のもう1つの実施形態において、検出プローブはオリゴヌクレオチド標識とハイブリダイズするハイブリダイズ領域を有し、オリゴヌクレオチド標識とハイブリダイズしない分子タグを含む5’領域を有する。ヘルパープローブは検出プローブのハイブリダイズ領域の領域3’においてオリゴヌクレオチド標識とハイブリダイズする。切断構造を形成するこの方法の例は、米国特許第6,121,001号(Westernら)に記載されている。従って、オリゴヌクレオチド検出プローブは、等温条件下で、オリゴヌクレオチド標識配列と可逆的にハイブリダイズする。検出プローブは、標的オリゴヌクレオチド標識配列とハイブリダイズする約10−40ヌクレオチドの領域を含み、標的配列とハイブリダイズしない3’配列を含んでもよい。これによって形成された二重鎖は、検出プローブの5’末端で5’ヌクレアーゼによって切断され、分子タグを含む切断された断片、好ましくは1−3ヌクレオチド長を供給する。1つの実施形態において、プローブは、標的配列をハイブリダイズしない、通常は、1−20ヌクレオチド長の5’領域を有し、分子タグはこの領域にある。ヌクレアーゼによる切断は、通常、検出プローブのハイブリダイズした配列とハイブリダイズしなかった配列の接合点から5ヌクレオチド以内に起こる。
【0085】
等温条件は、アッセイ混合物中で、すはわちオリゴヌクレオチド標識、無傷(インタクト)の検出プローブおよび切断された検出プローブの断片の混合物中で、オリゴヌクレオチド標識−検出プローブ二重鎖と種々の一本鎖種との間に平衡が存在するように選択される。無傷のプローブは、好ましくは、オリゴヌクレオチド標識の量に対して、かなり過剰に使用する。これらの条件下、ハイブリダイゼーションおよびプローブ切断が繰返し行われた。好ましくは、成分は、オリゴヌクレオチド標識に対して少なくとも100倍過剰な切断生成物を生成するのに効果的な時間、ヌクレアーゼに接触させておくとよい。
【0086】
切断構造は、第2、通常は非標識のオリゴヌクレオチドプローブ(ヘルパープローブ)も含み、それは検出プローブのハイブリダイズした5’末端に近接し、検出プローブの領域3’でオリゴヌクレオチド標識とハイブリダイズする。ヘルパープローブは、好ましくは、検出プローブのハイブリダイズした領域より長く、標的オリゴヌクレオチド標識配列とハイブリダイズした時、標的オリゴヌクレオチド標識とハイブリダイズした検出プローブの融点より、好ましくは少なくとも高い、またはより好ましくは少なくとも5℃高い融点を有する。切断構造でのヘルパープローブの存在により、検出プローブの切断を促進する。
【0087】
切断に利用される5’ヌクレアーゼは、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部が標的オリゴヌクレオチド標識配列とハイブリダイズしたときのみ、オリゴヌクレオチドの切断を断片へ触媒するいずれの配列−非依存型のデオキシリボヌクレアーゼ酵素でもよい。その酵素は、ハイブリダイズした部分の5’末端近くで、その5ヌクレオチド以内で、好ましくは1−2ヌクレオチド以内で、選択的にオリゴヌクレオチドを切断し、ハイブリダイズしていないオリゴヌクレオチドプローブまたは標的オリゴヌクレオチド配列を切断しない。そのような酵素としては、5’エキソヌクレアーゼおよび5’エンドヌクレアーゼ両方を含むが、RNAseHおよび制限酵素等のリボヌクレアーゼを含まない。有益な例としては、Taq DNAポリメラーゼ(例:AmpLiTaqTM、Perkin−ELmer社、NorwaLk,NJ)、ThermaLase TbrTM DNAポリメラーゼ(Amresco社、SoLon、OH)、ULtra ThermTM DNAポリメラーゼ(Bio/Can Scientific社、Ontario、CanaDa)、RepLithermTM DNAポリメラーゼ(Epicentre社、MaDison、WI)、TfLTM DNAポリメラーゼ(Epicentre社),PanozymeTM DNAポリメラーゼ(Panorama Research、Mountain View、CA)、TthTM DNAポリメラーゼ(Epicentre社)、rBstTM DNAポリメラーゼ(Epicentre社)、およびHeat TuffTM DNAポリメラーゼ(CLontech社、PaLo ALto、CA)等の5’エキソヌクレアーゼ活性を有する熱的に安定なヌクレオチドポリメラーゼを含む。
【0088】
(B3)切断構造の更なる実施例において、図3Aに示されるように、ヘルパープローブの3’ヌクレオチドと検出プローブの内部ヌクレオチドが、ヌクレオチドの同位置に相補的であるように、ヘルパープローブは、オリゴヌクレオチドの第1の領域と相補的であり、検出プローブは、第1の領域と重複するオリゴヌクレオチドの第2の領域と相補的である。図3Aに示されるように、ヘルパープローブ28と検出プローブ30がテンプレートオリゴヌクレオチド32とハイブリダイゼーションすることによって、三重鎖または切断構造を生成する。そこで、内部ヌクレオチドのすぐ近くの検出プローブ30の鎖34がハイブリダイズされない。そのような切断構造は、例えば、米国特許第6,001,567号に記載されている。電気泳動タグ36が鎖34に結合される。
【0089】
更に図1Cに関して、ヘルパープローブ、検出プローブおよびヌクレアーゼが、ヘルパープローブ、検出プローブおよびオリゴヌクレオチド標識がヌクレアーゼによって認識される切断構造を形成し、かつヌクレアーゼが電気泳動タグを切断および放出するように、分析物複合体(結合したリガンド−オリゴヌクレオチド結合体)に添加(38、40)される。1つの実施形態では、ヘルパープローブの少なくとも3’部分がテンプレートオリゴヌクレオチドにアニールして、検出プローブの少なくとも5’部分もテンプレートオリゴヌクレオチドにアニールして、図1Cの42に示されるように、切断構造を形成する。
【0090】
図1Cにおいて、1−4と標識された分子タグを有する検出プローブは、抗体−オリゴヌクレオチド結合体16、18、20および22にそれぞれ結合し、一方、抗体−オリゴヌクレオチド結合体24に対応するeタグ5と標識された分子タグを有する検出プローブは、結合していない(44)。
【0091】
ヘルパープローブ、検出プローブおよびヌクレアーゼは、また同時に添加されてもよい。ヌクレアーゼは、切断構造を認識し、検出プローブを、通常オリゴヌクレオチド標識から置換された部位で切断し、分子タグを放出する酵素である。そのような酵素としては、以下に記載のような5’エンドヌクレアーゼ活性を有する酵素を含む。
【0092】
Muranteら(1995)に記載されているように、そのような切断も、ヘルパープローブが3’末端で1塩基のミスマッチでオーバーハング(突出)したまま、テンプレートにアニールする際に、起こる。したがって、「ヘルパープローブの3’ヌクレオチド」とは、末端についての言及であったり、またはヘルパープローブの3’末端の最後から2番目のヌクレオチドについての言及であったりする。
【0093】
好ましくは、図3Bに示すように、アッセイは、単一の分析物複合体上で複数のプローブ切断が起こるような条件下で、行われる。検出プローブ、および必要であればヘルパープローブが過剰に存在し、切断された検出プローブ(46)がオリゴヌクレオチド標識から追加の完全長検出プローブ(30)、これは続いて切断されるが、このプローブによって、繰返し置換されるような条件下で、成分を混合する。オリゴヌクレオチド標識32およびヘルパープローブ28がヌクレアーゼに対して補因子とみなされている、この過程で各分析物複合体26に対して大量の放出されたタグ(48)を生成している。
【0094】
(C.特異的な酵素を使用している具体例)
図4Aにおいて、切断因子としてhOGG1タンパク質を使用する本発明の実施形態が示される。ヘルパープローブ(202)および検出プローブ(200)は、標的オリゴヌクレオチド標識(204)との安定な複合体(207)の形成を許容するアッセイ条件下で混合される。好ましくは、本発明の検出プローブ(200)は、式:
3’−(N)−Z−(N)−(M,D)
によって定義され、ここで、Nはヌクレオチドであり、jは8〜40の範囲の整数であり、kは1〜3の範囲の整数であり;Zは、認識二重鎖である場合、hOGG1タンパク質によって認識される改変されたヌクレオシドであり、好ましくは、Zは、7,8−ジヒドロ−8−オキソ−2’−デオキシグアノシン(「8−オキソ−G」)、ホルアミドピリジングアノシン(foramiDopyrimiDine guanosine)またはメチルホルアミドピリミジングアノシン(methyLforamiDopyrimiDine guanosine)であり;(M,D)は以下にさらに記載されるように、分子タグである。好ましくは、部分「3’−(N)」の少なくとも1つのヌクレオチドは捕捉リガンドに結合され、分離により切断されていないプローブまたはタグのついていないフラグメント(210)を排除する。好ましくは、捕捉リガンドはビオチンであり、捕捉因子はストレプトアビジンである。
【0095】
複合体(207)は、デオキシシトシン:8−オキソ−G塩基対を含む認識二重鎖(205)を含む。認識二重鎖(205)は、hOGG1タンパク質によって認識され、8−オキソ−Gは切除され(209)、分子タグ(208)を放出し、そして5’リン酸を有するフラグメント(210)を切断する。好ましくは、本発明の分子タグ(208)は式:
3’−s−(N)−(M,D)
によって定義され、ここで、「s」は5つの炭素原子と2つの酸素原子を含む開環糖であり、Nはヌクレオチドであり、kは1〜3の範囲の整数であり、そして(M,D)は移動度改変基および検出可能な標識(以下でより十分に記載される)である。好ましくは、構造「−(M,D)」は、リン酸リンカーによって(N)に結合される。本実施形態の検出プローブ(200)は、従来のホスホラミダイト(phosphoramiDite)化学を使用して合成され得、ここで特に、8−オキソ−Gホスホラミダイトモノマーは、Koizumeら、NucLeosiDes anD NucLeotiDes,13:1517−1534(1994);KohDaら、Chem.Res.ToxicoL.,9:1278−1284(1996)などによって開示されているように作製される。
【0096】
検出プローブ(200)の切断または交換は、複合体(207)の不安定化(212)を引き起こし、従って、標的オリゴヌクレオチド(204)は、別の複合体(207)でのリサイクル(214)に利用可能となる。好ましくは、Westernらの米国特許第6,121,001号によって教示されるように、提供される標的またはヘルパープローブ(202)の高モル濃過剰で電気泳動プローブ(200)を提供することがリサイクル(214)を亢進する。放出された分子タグの十分な量が蓄積されるまで、この反応は、しばらく継続する(215)。反応時間は実験的に決定され、そして当業者によって容易に操作されるパラメータ(例えば、反応温度、ヌクレアーゼ濃度、ヘルパープローブ濃度、検出プローブ濃度、塩濃度、プローブ長および組成など)に依存する。
【0097】
反応が終了する際、検出のために、アッセイ混合物から、そして互いから分子タグが分離される。この分離工程は、好ましくは、放出された分子タグの分離または検出を妨げる物質をアッセイ混合物から排除する工程を包含する。このような工程は、(1)放出された電気泳動タグと分離される場合に、切断されていないプローブの蛍光標識は検出不能となるように、クエンチャーを電気泳動プローブに結合させる工程(2)捕捉リガンドを検出プローブに(好ましくは切断部位と反対側のプローブ上に)結合させる工程であって、ここで捕捉リガンドは、相互結合因子または、境界プローブまたは境界フラグメントに、(電気泳動分離のために)放出された分子タグの電荷と反対の電荷を与えるレセプターと混合される工程、または(3)分離されることから排除するために、高分子量化合物、または、粒状物質などを濾過する工程、を含む。
【0098】
反応が終了した後、分子タグ(208)は分離され、そして以下でさらに記載されるように同定される(216)。
【0099】
図4Bにおいて、切断因子としてMut Yタンパク質を使用する本発明の実施例が示される。ヘルパープローブ(220)および検出プローブ標識(222)は、標的ポリヌクレオチド(221)との安定な複合体(228)の形成を許容するアッセイ条件下で合わされる。好ましくは、本発明の検出プローブ(222)は、式:
3’−(N)−A−(N)−(M,D)
によって定義され、ここで、Nはヌクレオチドであり、jは8〜40の範囲の整数であり、kは1〜3の範囲の整数であり、そして(M,D)は上記に記載のとおりである。上述のように、好ましくは、「3’−(N)」部分の少なくとも1つのヌクレオチドが、分離から非切断プローブまたは非タグフラグメント(234)を排除するために、結合した捕捉リガンドを有する。好ましくは、この捕捉リガンドはビオチンであり、捕捉因子はストレプトアビジンである。
【0100】
本発明のヘルパープローブ(220)は、式:
5’−(N)−Z’−(N)−3’
によって定義され、ここで、N、kおよびjは上で定義した通りであり、そしてZ’(226)は、認識二重鎖中のデオキシアデノシンと塩基対形成する場合に、mut Yタンパク質によって認識される改変されたヌクレオシドであり、好ましくはZ’は、7,8−ジヒドロ−8−オキソ−2’−デオキシグアノシン(「8−オキソ−G」)である。
【0101】
複合体(228)は、デオキシアデノシン:8−オキソ−G塩基対を含む認識二重鎖(224)である。認識二重鎖(224)は、mut Yタンパク質によって認識され、そして、8−オキソ−Gと塩基対形成したデオキシアデノシンが切除され、分子タグ(232)および5’リン酸を有する切断フラグメント(234)を放出する。好ましくは、本発明の分子タグ(232)は、式:
3’−A−(N)−(M,D)
によって定義され、ここで、Aはデオキシアデノシンであり、Nはヌクレオチドであり、kは1〜3の範囲の整数であり、そして(M,D)は移動度改変基、および、以下にさらに記載される検出可能な標識である。好ましくは、構造「−(M,D)」は、リン酸リンカーによって(N)に結合されている。
【0102】
本実施形態のヘルパープローブ(220)は、従来のホスホラミダイト化学を使用して合成され得る。検出プローブ(222)の切断または交換は、複合体(228)の不安定化(230)を引き起こし、その結果、標的オリゴヌクレオチド標識(221)は、別の複合体(228)へのリサイクル(240)に利用可能となる。再度、Westernらの米国特許第6,121,001号によって教示されるように、標的またはヘルパープローブ(220)の高モル過剰で電気泳動プローブ(222)を提供することは、リサイクル(240)を亢進する。放出された分子タグの十分な量が蓄積されるまで、この反応は、しばらく継続する(238)。反応時間は実験的に決定され、そして当業者によって容易に操作されるパラメータ(例えば、反応温度、ヌクレアーゼ濃度、ヘルパープローブ濃度、検出プローブ濃度、塩濃度、プローブ長および組成など)に依存する。反応が終了すると、分子タグは検出のために、アッセイ混合物から、および互いから分離される(242)。必要に応じて、上述したように、さらなる工程が取られて、放出された分子タグの分離から妨害物質を排除し得る。
【0103】
(IV.複数事象結合)
本発明はまた、分析物上の結合したまたは多量体結合部位を標的とするための方法を提供する。例えば、細胞表面受容体は、異なる抗体に特異的な複数の結合部位を含んでいる。したがって、リガンド−オリゴヌクレオチド結合体の特異的ペアが利用され、その1つが図5において分析物複合体の一部として示されている。第1の結合因子(50)は、上記に記載のように、テンプレートオリゴヌクレオチド標識(52)に結合している、一方第2の結合因子(54)はプライマーまたはヘルパーオリゴヌクレオチドプローブ(56)に結合している。図に示されるように、結合プローブ(64)が切断構造を形成するように、リガンドが標的上のそれぞれの結合部位(58、60)に同時に結合することで、テンプレートオリゴヌクレオチドおよびプライマーがハイブリダイズされる。分析物上の異なる結合部位に両結合プローブの存在を要求することによって、分析物に対するアッセイの感度は増加する。
【0104】
好ましくは、2つの結合体のいずれかで、結合因子とオリゴヌクレオチドがフレキシブル結合基(66)によって結合されている。リガンドの間で切断構造を形成するよう要求される近接性が、結合基の適切な長さを決定する。典型的な結合基は、例えば、約2−50の、好ましくは約5−25のエチレンオキシドのサブユニットを有するPEG(ポリエチレングリコール)鎖からなる、またはリガンド、例えば、抗体をオリゴヌクレオチドに結合する異なる結合を含む同様の長さの鎖からなる。そのような結合体は、生体分子に用いられる標準的な結合方法によって、更に以下で述べられるように、準備される。
【0105】
(V.タグ混合物の分析)
タグの切断の後、放出されたタグは、必要であれば、分離される、そして、例えばクロマトグラフィー分離、質量分析によって、または好ましくは、電気泳動分離によって分析される。他のアッセイ成分または試薬、例えば切断されなかった検出プローブまたは部分的に分解された検出プローブが電気泳動分析を干渉する場合は、アッセイ溶液から放出されたタグを分離する必要がある。そのような分離は、例えば、切断されなかった検出プローブの信号生成の選択的クエンチング、アフィニティークロマトグラフィー(Ensingら、欧州特許公報 0671626A1等)、イオン交換、液体クロマトグラフィー、イニシャル電気泳動分離等によるタグの単離、または不要な成分の切断によって行われる。後者の場合、切断が荷電、疎水性、分子量、または不要の成分を除去できるような物理的特性等に変化をもたらす。
【0106】
分離は、また、ビオチンまたは他の親和性リガンド等の捕捉リガンド、および、アビジン、ストレプトアビジン、抗体、レセプターまたはそれらの機能的な断片等の捕捉リガンドに特異的結合活性を有する捕捉因子を用いて行われる。タグ付きプローブまたはタグ付きプローブの標的結合部分は、捕捉因子に特異的な結合活性を有する捕捉リガンドを含む。例えば、タグ付きプローブの標的結合部分は、本分野において周知の方法を用いて、ビオチン標識されるか、または親和性リガンドに結合される。タグレポーターがタグ付きプローブから切断された後、標的結合部分およびビオチンを有するタグ付きプローブの残りの部分は、ストレプトアビジンアガロースビーズ等により除去される。捕捉リガンドおよび捕捉因子は、また、クロマトグラフィーによって分離されたタグレポーターの質量範囲から外れるように、タグ付きプローブの残りの部分に質量を加えるのに利用される。
【0107】
分離されたピークは、タグ中の蛍光標識の蛍光検出器等によって、検出される。それぞれのプローブから放出された分子タグの分離特性は既知であるので、図1Dおよび図2Bと4Bの49で概略的に示されているように、電気泳動図等の多重データ出力が使われ、サンプル中の分析物に結合するリガンド−オリゴヌクレオチド結合体を同定する。見てわかるように、「タグ5」は図1Dにはない、それはその対応リガンド−オリゴヌクレオチド複合体(結合組成物)がサンプル中のいずれの標的とも結合しないからである(図1A−Cにも示される)。ピークの強度はまた、分析物に結合するリガンドに基づいて、サンプル中の異なる分析物の相対量を測定するのに用いてもよい。
【0108】
好ましくは、分子タグに使用される標識は、異なるタグのピークの高さまたは面積が検出されたタグの数に直接的に相関し得るような標識である。例えば、更に以下で説明されるように、プローブのセットが同じ標識および異なる移動度改変基を有するタグを用いてもよい。
【0109】
既知量の「標準」分子タグが、放出されたタグの移動度およびピーク特性を較正するための基準を提供するため、既知の量の「標準的」分子タグが、検査アッセイに加えられてもよい。既知量の加えられた標準分子タグと比べて、標準の分子タグの測定されたピーク高さまたは曲線下面積(AUC)が、電気泳動図の測定ピーク高さまたはAUCから、検査およびコントロール分子タグの量を計算するために、利用される。
【0110】
切断されたeタグレポーターの溶液が、一旦準備され、干渉成分を含んでいなければ、その溶液の組成が分析される。アッセイからの放出タグは、単一分離媒体またはフォーマット上で好ましくは分離される。つまり混合されたタグを含むサンプル混合物が単一分離媒体、例えば電気泳動分離媒体、クロマトグラフィー媒体、質量分析媒体等に加えられ、サンプル生成物/基質成分の全てがその媒体上で分離されることを意味する。
【0111】
好ましい分離媒体は、電気泳動媒体である。分析では、電気泳動的に複数の合成物を分離することができるキャピラリー電気泳動装置、マイクロフルイディクス装置または他の装置を用いてよく、個々のeタグレポーターの分解されたバンドを提供する。好ましい分離装置は、周知の方法によって分離チャネルにわたって荷電された成分を分離するための、上記記載のタイプのマイクロフクイディクス装置である。電気泳動装置は、一般には、装置からデータを受信し処理するほか、電気泳動装置の操作のためのデータプロセッサーに接続されている。複数のプローブおよび基質の電気泳動分離はおよびバンド分解は、この方法によって容易に達成される。
【0112】
都合良くは、一般に約5μL以下のアリコートが、直接的な総合システムへの電気泳動的注入または圧力式注入によって、またはシリンジ、キャピラリー等よって、マイクロフルイディクス装置またはキャピラリー電気泳動装置のサンプルタンク(溜め)に移される。マイクロフルイディクス装置は、多くの国内および外国の特許および公開特許出願に記載されている。例えば、米国特許番号第5,750,015号、同5,900,130号、同6,007,690号、およびWO 98/45693、WO 99/19717およびWO 99/15876を参照。分離が行われる条件は、従来どおりで、生成物の性質によって変化する。電気泳動の条件下で似た移動度を有する生成物に対しては、より長い時間が必要となる。
【0113】
実例として、図6は、上記の用途に詳細に記載されたタイプのマイクロフルイディクス装置での、サンプルの装填、および上記アッセイで生成されたタグおよびプローブのサンプルの電気泳動分離のためのマイクロチャネルネットワーク300を示す。簡単にいえば、ネットワークは、上流および下流のタンク304、306それぞれを終点とする主要分離チャネル302を含む。この主要チャネルは、タンク310を終点とするサイドチャネル308およびタンク314を終点とするサイドチャネル312によって、軸方向オフセット位置で交わっている。2つのサイドチャネル間のオフセットで、主要チャネル内にサンプル装填ゾーン316を形成する。
【0114】
操作において、上記からのアッセイ混合物は、図6に示される、サンプルタンク310に入れられる。前述のように、アッセイ混合物は、1つ以上の表面に結合した検出プローブを有する標的細胞、1以上の検査リガンド、および任意で、分子タグスタンダードを含む。結合組成物と標的細胞の初期結合、その後検出プローブの切断を含むアッセイ反応は、サンプルタンク310で行われる、あるいは、アッセイ反応は、他の反応容器で行い、反応後のサンプル成分をサンプルタンクに添加してもよい。
【0115】
放出された分子タグをサンプル装填ゾーンに入れるために、図に示されるように、電界がタンク310、314に印加され、負に帯電した放出されたプローブをタンク310から装填ゾーン316に引き寄せる。一方で、帯電されていないまたは正に帯電したサンプル成分はサンプルタンクに残る。装填ゾーン中の放出されたタグは、図に示されるように、タンク304、306にわたって電界が印加することによる、従来のキャピラリー電気泳動によって分離される。
【0116】
得られた電気泳動パターンから、タグおよびタグによって標識された対応する細胞タイプを同定することができる。これは、通常は、分離チャネルの下流末端近くに蛍光検出器を設置し、および分離された分子タグ成分の電気泳動図を作成することによって行われ、第1に上記のように分離特性を測定し、第2に信号、例えばピーク高さまたはピーク面積等の強度を、各プローブに関与するタグの相対量の尺度として測定する。検出可能なプローブのレベルを検出し、定量化する方法は、周知である。1つの好ましい方法では、タグは蛍光標識を付けられている。標準の蛍光発光源は、分離媒体の下流部分の検出ゾーンに対して向けられ、そのゾーンの蛍光発光が標準光検出器によって測定される。記録された信号の高さまたは面積は、サンプル中の生成物および基質の濃度を提供する。
【0117】
電気泳動によるeタグレポーターの分離の前に既知量のフルオロフォアが各サンプルに添加されることによって、相対的な蛍光信号を絶対的量に変換できる。e−タグレポーター信号の検出を干渉しない任意のフルオロフォアを、蛍光信号を正規化するために利用してよい。コントロールシグナルは、好ましくは、サンプル中の任意のe−タグレポーターの電気泳動的移動度と異なる電気泳動的移動度を有し、そして同じかまたは異なる放射波長を有し得る。例示的な蛍光分子としては、ROX、FAM、およびフルオレセインが挙げられる。
【0118】
上記の検出情報により、各検出されたタグに特定の結合組成物を割り当て、結合組成物の細胞への結合を尺度として各検出されたタグの相対的レベルを比較することができる。
【0119】
(VI.アッセイ成分)
(A.抗体)
ほとんどの場合、リガンド−オリゴヌクレオチド結合体の結合因子成分は、タンパク質であり、概して抗体である。一般に、抗体は、抗原の存在に反応してリンパ球(プラスマ細胞)によって生成される動物の血清に存在する免疫グロブリン(球状蛋白質の種類)である。抗体は、別の分子の特定の空間的機構または極性機構に特異的に結合し、そしてそれによって別の分子の特定の空間的機構または極性機構と相補的として定義される。抗体としては、完全な免疫グロブリンまたはそのフラグメントが挙げられ、この免疫グロブリンとしては、種々のクラスおよびイソ型、例えば、IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3、IgMなどが挙げられる。そのフラグメントとしては、Fab、FvおよびF(ab’)Gab’などが挙げられる。さらに、凝集物、ポリマー、および免疫グロブリンの結合体またはそのフラグメントは、特定の分子についての結合親和性が維持される限り、適切に使用され得る。
【0120】
抗体は、当該分野で周知の技術、例えば、宿主の免疫化および血清の収集(ポリクローナル)、または連続的なハイブリッド細胞株を調製し、そして分泌されたタンパク質を収集すること(モノクローナル)によって、あるいは天然の抗体の特異的結合に必要なアミノ酸配列を少なくともコードするヌクレオチド配列またはその変異誘発されたバージョンをクローン化し、そして発現することによって、調製することができる。
【0121】
「モノクローナル抗体」(MAB)は、リンパ球(すなわち1つのB細胞の子孫)の1つのクローンで生産される免疫グロブリンであり、抗原の上で一つのエピトープだけを認識する。MBAは、KohLerおよびMiLstein, Nature 265:495−497,1975の標準的な技術等によって、ハイブリドーマ細胞から実験的に作り出すことができる。モノクローナル抗体技術の概説は、Lymphocyte HybriDomas, eD. MeLchersら, Springer−VerLag (New York 1978)、Nature 266: 495 (1977)、Science 208:692(1980)、およびMethoDs of EnzymoLogy 73 (Part B): 3−46(1981)に見ることができる。
【0122】
特異的なレセプターを対象とするMABを生産する1つの方法では、癌特有レセプター等の特定のレセプターを有する細胞がマウスに注射される、それによってマウスの抗体産生細胞(Bリンパ球)を誘発し、細胞表面のレセプターすべてに対する抗体を産生する。これらB細胞は、ハイブリドーマを作製するために、培養で抽出され、不死化細胞(永久に複製する)に融合される。この標準的方法の改良型として、ヒト化MABを作製する方法が開発された。したがって、本発明の1つの実施形態では、検査モノクローナル抗体は、抗体分泌ハイブリドーマ細胞によって作製され、標的細胞に添加される検査抗体はハイブリドーマ細胞の培養から収集されたものである。
【0123】
MABは、ファージ表面での結合部分として免疫グロブリン断片のライブラリーを表示するために設計されるファージのライブラリーによっても生産することができる。簡単にいうと、ファージ表示抗体ライブラリーを生産するために、免疫化されたBリンパ球(1つの抗原だけに対して抗体を作る各細胞)からPCRによって単離された免疫グロブリンのcDNAが、糸状のファージのゲノムまたはファージミドベクターに挿入され、E.coLi宿主細胞に導入される。ファージが複製するにつれ、種々のBリンパ球の遺伝子によってコードされる抗体がそれらの表面に発現される。ファージライブラリーは、標的に結合する表示されたタンパク質(抗体)を有するファージを同定するために選別される。
【0124】
抗体準備のためのもう1つのアプローチでは、抗体の結合部位をコードする配列が染色体DNAから切り取られ、クローンベクターに挿入される、それがバクテリア中で発現され、対応する抗体結合部位を有する組み換えタンパク質を生産する。発現された抗体を発現系から迅速に抽出または精製するために、規定された親和ペプチドタグ(6xHis、HA、myc等)の遺伝子配列が免疫グロブリン遺伝子配列のアミノまたはカルボキシ末端に挿入されてもよい。
【0125】
他のタンパク質または他の混入物からモノクローナル抗体を単離・精製するための種々の従来方法が存在する(上記のKohLerとMiLsten参照)。一般に、抗体は、DEAEクロマトgラフィー、ABxクロマトグラフィー等クロマトグラフィー、ろ過等の既知の技術によって精製される。
【0126】
細胞表面レセプター等、種々の分析種を対象とするMABは、幅広く供給者、例えば、ZymeD Laboratories社(South San Francisco, CaLif.)、Pierce BiotechnoLogy社(RockLanD, ILL.)およびAbcam社(CambriDge Science Park,UK)から購入することも可能である。
【0127】
(B.分子タグ)
本発明の検出プローブは、式T−Eによって表される。Tはオリゴヌクレオチドであり、Eは分子タグである。Tの少なくとも1つのヌクレオチドは、また、捕獲リガンドを含んでもよい。分子タグEは、種々の部位においてTに結合する。例えば、Eは、Tの任意のヌクレオシドに、Tの任意のインターヌクレオシド結合に、または3’−ヒドロキシルまたは5’−ヒドロキシルに結合してもよい。分子タグがヌクレアーゼ活性により放出された場合、放出された分子タグは、一般に、ヌクレオシドまたは1以上のヌクレオチドを、移動度改変部分(M)および検出可能標識(D)と共に含む。したがって、1つの局面では、放出された分子タグは、次の式で表される。
(D,M)−N
「(D,M)−」部分は上記記載のとおり、Nはヌクレオシド、ヌクレオチド、塩基、リボース等。通常、Nはヌクレオシド。
【0128】
以下により十分に記載するように、本発明の重要な局面は、アッセイで生成する分子タグの組である。一般的に、一組の分子タグは、広い範囲に渡る種々の構造を有する分子の群から選択され得る。組を構成する第一の基準は、各々の分子タグが、所定の分離方法および検出方法下で、同じ組の他の全ての分子タグと区別できなければならないことであり、Singh、米国特許第6,322,980号;Singh、PCT公報WO 00/66607;およびSinghら、PCT公報WO 01/83502で記載されており、これらの参考文献は参考として援用される。すなわち、組の各々の分子タグは、分離した後に検出および定量されることを可能にする、他のタグと異なる検出および/または分離の特徴を有さなくてはならない。好ましくは、分子タグは、蛍光特性によって検出され、そして電気泳動によって分離される;しかし、他の液相分離技術、特にクロマトグラフィーがまた使用され得る。組の分子タグは、経験的に選択され得る;しかし、以下に記載するように、組のメンバーはまた、予想される分離特性を有する分子ビルディングブロックから組み立てられ得る。
【0129】
結合組成物および電気泳動タグ、および多重アッセイにおけるそれらの使用についての更なる記述については、例えば、共同所有している、米国特許出願番号09/824,851、本願は米国出願公開番号20010051340として2001年12月13日に公開、共同所有しているPCT公報 WO2000/6607およびWO2001/83502、および共同所有している米国特許仮出願番号60/399,056、これらは各々、本明細書で参考として援用される。
【0130】
分子タグは、オリゴヌクレオチドプローブに結合し、アッセイ中に切断され、切断および放出時の条件に対して安定であり、検出またはレポーター基を含む水溶性有機化合物である。その他の点では、タグはサイズおよび構造において広範に変化し得る。好ましくは、分子タグは中性pHで荷電を保有し、約150〜10,000ダルトンの範囲、より好ましくは150〜5000ダルトンの範囲、そして最も好ましくは150〜2500ダルトンの範囲の分子量を有する。好ましい構造は、以下により十分に記載される。好ましくは、検出基は、電気化学的なシグナル、蛍光シグナル、または色素生産性シグナルを生じる。最も好ましくは、検出基は蛍光シグナルを生じる。
【0131】
好ましくは、1つの多重アッセイ中での複数の分子タグは、各々、独自の電荷対質量比、および/または、同じ複数のものの他のメンバーについて独自の光学特性のいずれかを有する。好ましくは、この光学特性は、発光スペクトル、蛍光寿命などのような蛍光特性である。より好ましくは、この蛍光特性は、発光スペクトルである。例えば、複数の各分子タグの各々は、同じ蛍光発光特性を有し得るが、各々は独自の電荷対質量比の点で互いに異なる。他方で、複数の分子タグの2つ以上は、同一の荷電対質量比を有し得るが、それらは独自の蛍光特性(例えば、スペクトル的に分解可能な発光スペクトル)を有し、従ってこれら複数の全てのメンバーが電気泳動分離および蛍光測定の組み合せによって識別可能である。
【0132】
好ましくは、複数の分子タグが、電気泳動的分離および蛍光により検出される。好ましくは、実質的に同一の蛍光特性を有する分子タグは、電気泳動図における別個のピークが、分離条件下で形成されるように、異なる電気泳動移動度を有する。隣接するピークが別個であること、すなわち重なりがないことの尺度は、電気泳動分離能であり、これは、隣接する最大ピークの2つの標準偏差のより大きい方の4倍で割った隣接する最大ピークの間の距離である。好ましくは、隣接するピークは、少なくとも1.0、より好ましくは、少なくとも1.5、および最も好ましくは、少なくとも2.0の分離能を有する。所定の分離および検出システムにおいて、所望の分離能は、複数の分子タグ(そのメンバーは、少なくともピーク分離の程度が異なる電気泳動的移動度を有する)を選択することによって得られ得、このような量は、当業者に周知のいくつかの要因(シグナル検出システム、蛍光部分の性質、タグの拡散係数、篩いマトリクスの有無、電気泳動装置の性質(例えば、チャネルの有無、分離チャネルの長さなど)が挙げられる)に依存する。
【0133】
好ましくは、アッセイで放出された複数の電気泳動タグ(各タグは、そこから切断されるプローブの部分を含む)は、従来の篩いマトリクスの存在下または非存在下のいずれかにおいて、従来のキャピラリー電気泳動装置によって分離される。例示的なキャピラリー電気泳動装置としては、AppLieD Biosystems(Foster City,CA)モデル310、3100および3700;Beckman(FuLLerton,CA)モデルP/ACE MDQ;Amersham Biosciences(SunnyvaLe,CA)MegaBACE 1000または4000;SpectruMeDix遺伝分析システムなどが挙げられる。好ましくは、このような従来の装置において、複数の分子タグの電気泳動的移動度は、少なくとも1%、より好ましくは、少なくとも1〜10%の範囲の割合だけ異なる。電気泳動的移動度は、q/M2/3に比例し、ここでqは、分子上の電荷であり、Mは、分子量である。所望であれば、最も近い分子タグ間の決定の条件下での移動度における差異は、少なくとも約0.001、通常は0.002、より通常は、少なくとも約0.01であり、そして、0.02以上であり得る。
【0134】
電気泳動タグEの好ましい構造は、(M,D)であり、Mは、移動度改変部分であり、Dは、検出部分である。記載「(M,D)」は、M部分およびD部分の順番は、そのいずれかの部分が、切断可能な連結Lに隣接し得ることを示すために使用される。すなわち、「T−L−(M,D)」は、2つの形態:「T−L−M−D」または「T−L−D−M」のうちのいずれかの電気泳動プローブを示す。
【0135】
(B1.検出部分D)
検出部分Dは、蛍光標識または色素、色素形成標識または色素、電気化学標識などであり得る。好ましくは、Dは、蛍光色素である。本発明とともに使用するための例示的蛍光色素としては、以下の文献で開示される水溶性ローダミン色素、フルオレセイン、4,7−ジクロロフルオレセイン、ベンゾキサンテン色素、およびエネルギー移動色素が挙げられる:HanDbook of MoLecuLar Probes anD Research Reagents,第8版,(MoLecuLar Probes,Eugene,2002);Leeら,米国特許第6,191,278号;Leeら,米国特許第6,372,907号;Menchenら,米国特許第6,096,723号;Leeら,米国特許第5,945,526号;Leeら,NucLeic AciDs Research,25:2816−2822(1997);Hobb,Jr.,米国特許第4,997,928号;Khannaら,米国特許第4,318,846号;ReynoLDs,米国特許第3,932,415号;Eckertら,米国特許第2,153,059号;Eckertら,米国特許第2,242,572号;Taingら,国際特許公開WO02/30944;など。さらなる特定の例示的な蛍光色素としては、以下が挙げられる:5−カルボキシローダミン6Gおよび6−カルボキシローダミン6G;5−カルボキシ−X−ローダミンおよび6−カルボキシ−X−ローダミン、5−カルボキシテトラメチルローダミンおよび6−カルボキシテトラメチルローダミン、5−カルボキシフルオレセインおよび6−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセインおよび6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、2’,7’−ジメトキシ−5−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセインおよび2’,7’−ジメトキシ−6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−5−カルボキシフルオレセインおよび2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−5−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセインおよび2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、1’,2’,7’,8’−ジベンゾ−5−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセインおよび1’,2’,7’,8’−ジベンゾ−6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、1’,2’,7’,8’−ジベンゾ−4’,5’−ジクロロ−5−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセインおよび1’,2’,7’,8’−ジベンゾ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、2’,7’−ジクロロ−5−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセインおよび2’,7’−ジクロロ−6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、ならびに2’,4’,5’,7’−テトラクロロ−5−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセインおよび2’,4’,5’,7’−テトラクロロ−6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン。最も好ましくは、Dは、フルオレセインまたはフルオレセイン誘導体である。
【0136】
別の局面において、(M,D)の検出部分は、エネルギー移動機構による蛍光シグナルを生成する。好ましくは、この局面において、Dは、「D−g−D」を形成し、ここで、DおよびDは、分子のアクセプター−ドナー対であり(例えば、Wuら、AnaL.Biochem.,218:1−13(1994))、そしてgは、DおよびDを実質的に一定の距離に維持する剛性リンカーである。剛性リンカーgの選択におけるガイダンスは、Wuら(上で引用される)、ならびに米国特許第5,863,727号;同第5,800,996号;同第5,945,526号;および同第6,008,379号に見出され得る。この対において、DまたはDの一方がアクセプター分子であり、他方がドナー分子である。本発明で使用するための例示的なエネルギー移動検出部分は、Leeら、米国特許第5,945,526号;Leeら、NucLeic AciDs Research,25:2816−2822(1997);Taingら,国際特許出願WO02/30944などの参考文献に開示される。好ましくは、剛性リンカーgは、DとDとの間の距離が、10〜100Åの範囲内の実質的に一定の距離に維持されるように選択される。これらの連結が、一重項酸素の存在に対して安定であるという条件で、広範な連結基が用いられ得る。好ましくは、DおよびDは、一連のフルオレセイン、ローダミン、ローダミン6G、ローダミン110、ローダミンX、テトラメチルローダミンおよびそれらのハロゲン化誘導体から選択される。より好ましくは、DおよびDの両方が、フルオレセイン色素である。
【0137】
1つの局面において、gは、R−R−RおよびR−R−C(=O)−X−Rのいずれかから選択され得、後者は、DおよびDに関していずれかの配向で存在し;ここで、Xは、O、SまたはNHであり;Rは、(C〜Cアルキルジイル,X,C(=O))であり、その結果、括弧内の任意の1〜3個の部分が、任意の一列の順序で整列し;Rは、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、フラン、ピロール、イソピロール、イソアゾール、ピラゾール、イソイミダゾール、ピラン、ピロン、ベンゼン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンオキサジン、インデン、ベンゾフラン、チオナフテン、インドールおよびナフタレンからなる群から選択される5〜6員環であり;Rは、C〜Cアルキルジイルである。「C〜Cアルキルジイル」によって、1−5炭素を有する、例えば、−CH−,−(CH−,または−CH(CH)CHCH−等の2価のアルキル基を意味する。
【0138】
上記記載のように、各eタグ部分は一般的に検出可能な標識Dを含む。あるいは、eタグ部分は、サンプルと完全に反応した後、標識Dに結合できるような官能基を含んでもよい。いくつかの例では、検出可能な標識は、切断可能な結合Lを切断する試薬の一部である。1つの実施形態では、複数の異なる官能基が異なる結合メンバー、標識との反応にしようされる。異なる標識は、第1の官能基の1つと反応する対応する官能基を有している。例えば、第1の官能基はチオール、カルボキシル基、アルデヒドおよびオレフィンを含む場合、標識は、活性化されたオレフィン、アルコール、アミン、およびチオール基をそれぞれ含み得る。1以上の官能基に対して除去可能な保護基を用いて、交差反応性を回避するために、保護基は段階的に除去されてもよく、標識は段階的に添加されてもよい。
【0139】
(B2.移動度改変部分M)
Mは、一般に規定の電気泳動システムにおいて特定の電荷−対−質量比(従って、特定の電気泳動的移動度)を有するかもしくは有するように設計された化学基、または部分である。n個の電気泳動プローブのセットにおいて、各特有の移動度改変因子(mobiLity moDifier)は、Mと示され、ここでj=1〜nであり、nは、上記の値を有する。すなわち、nは、一般に5〜200の範囲であり、より好ましくは5〜100の範囲または5〜75の範囲、または5〜50の範囲、または10〜30の範囲である。
【0140】
移動度改変部分は、質量改変領域および/もしくは電荷改変領域または質量改変領域かつ電荷改変領域として作用する単一の領域を含むと考えられ得る。本発明において利用されるプローブセットにおいて、移動度改変部分は、以下の特徴の打ちの1つ以上を有し得る:(i)電荷ではなく質量の変動に起因する、特有の電荷−対−質量比;(ii)質量および電荷の両方の変化に起因する、特有の電荷−対−質量比;ならびに(iii)約−0.0001から約0.5の間、通常は、約−0.001から約0.1の間の特有の電荷−対−質量比。上記のように、Dは、代表的には、異なる検出プローブのセットまたは複数の異なる検出プローブの間で共通しているが、プローブセットの間で異なっていてもよく、このことにより、放出され分子タグの特有の電気泳動移動度に寄与することになる。
【0141】
移動度改変部分Mのサイズおよび組成は、結合から鎖中の約100原子、通常、約60原子以下、より通常には、約30原子以下まで変化し得、ここでその原子は、炭素、酸素、窒素、リン、ホウ素および硫黄である。一般に、結合以外の場合、移動度改変部分は、約0〜約40、より通常は、約0〜約30のヘテロ原子を有し、これは、上記のヘテロ原子に加えて、ハロゲンまたは他のヘテロ原子を含み得る。ハロゲン以外の原子の総数は、概して、約200原子未満、通常は、約100原子未満である。酸性基が存在する場合、移動度改変部分が存在する媒体のpHに依存して、種々のカチオンがその酸性基と結合され得る。その酸は、有機酸であっても無機酸であってもよく、これらとしては、カルボン酸、チオノカルボン酸(thionocarboxyL)、チオカルボン酸、ヒドロキサム酸、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸、ボロン酸、硝酸、亜硝酸などが挙げられる。正電荷については、置換基としては、アミノ(アンモニウムを含む)、ホスホニウム、スルホニウム、オキソニウムなどが挙げられ、ここで置換基は、一般に、約1〜6個の炭素原子の脂肪族であり、ヘテロ原子1個あたりの炭素原子の総数は、通常、約12個未満、通常、約9個未満である。他の置換基として、フェノール基を含むヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル、アミド、ホスフェート、複素環があげられる。荷電した移動度改変部分は、一般に、負電荷または正電荷しか有さないが、これは、電荷の組み合わせを有し得、特に、ここで、移動度改変部分が結合される領域は、荷電され、移動度改変部分が反対の電荷を有する。
【0142】
種々の実施形態において、Mは、同じかまたは異なる化学的特性のモノマー(例えば、ヌクレオチドおよびアミノ酸)を有するオリゴマーであってもよい。移動度改変部分は、オリゴマー化に対して異なる官能性を提供し、1つの電荷を有する単一のモノマーを有してもよい。あるいは、2つ以上異なるのモノマーを用いてもよい。置換されたジオールが使用され得、ここでその置換基は、荷電され、二塩基酸である。このようなオリゴマーの例示は、ジオールまたはジアミノの組み合わせである(例えば、2,3−ジヒドロキシプロピオン酸、2,3−ジヒドロキシコハク酸、2,3−ジアミノコハク酸、2,4−ジヒドロキシグルタル酸など)。ジオール化合物またはジアミノ化合物は、二塩基酸によって連結され得る。その二塩基酸としては、上記の無機二塩基酸、およびシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、炭酸などのような二塩基酸が挙げられる。エステルを使用する代わりに、アミドが使用され得、ここで、アミノ酸またはジアミンおよび二酸が使用され得る。あるいは、ヒドロキシルまたはアミンとアルキレン基またはアリーレン基が連結され得る。
【0143】
多数の分子タグは、電荷を提供するためのオリゴペプチド、特に、2〜6個のモノマー、通常は2〜4個のモノマーのオリゴペプチド、リジン、アルギニンおよびヒスチジンから生じる正電荷、またはアスパラギン酸およびグルタミン酸から生じる負電荷のいずれかを含み得る。非天然アミノ酸または合成アミノ酸(例えば、タウリン、ホスフェート置換セリンまたはスレオニン、S−α−スクシニルシステイン、ジアミンとアミノ酸のco−オリゴマーなど)を使用することができる。
【0144】
本発明の1つの局面において、電荷付与部分は、都合良くは、主にアミノ酸から構成されるだけでなく、チオ酸(thioaciD)および1〜5個の炭素原子を有する他のカルボン酸を含み得る。この電荷付与部分は、1つの部分あたり、約1〜約30個、好ましくは約1〜約20個、より好ましくは約1〜約10個のアミノ酸を有し得、そしてまた、約1〜約3個のチオ酸または他のカルボン酸を含み得る。しかし、非電荷サブ領域と共に使用される場合、荷電したサブ領域は、一般に、約1〜約4個、頻繁には約1〜約3個のアミノ酸を有する。任意のアミノ酸(天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸の両方)が、用いられ得る。
【0145】
電荷を提供するか、または電荷を提供するように改変され得る置換基を有するモノマーを使用することによって、所望の電荷−質量比を有する移動度改変部分を提供し得る。例えば、セリンまたはスレオニンを使用することによって、ホスフェートでヒドロキシル基を改変して、負に荷電した移動度改変部分を提供し得る。アルギニン、リジン、およびヒスチジンを用いることで、正に荷電した移動度改変部分を提供する。オリゴマー形成を従来の方法で実施することによって、適切な大きさにされた移動度改変部分を提供し得る。この異なる移動度改変部分は、異なる順序のオリゴマーを有しており、一般的には、1〜20のモノマー単位、より通常は、約1〜12のモノマー単位を有している。ここで、1つの単位は、1〜2の異なるモノマーを有し得る反復単位を意図する。ほとんどの部分について、オリゴマーは、核酸標的結合領域以外と共に使用され得る。このモノマー単位の多官能性は、他の部分に結合するのに使用され得る末端に官能性を提供し、その結果、反応に対して利用可能な官能性を使用して、異なる官能性を提供し得る。例えば、活性化オレフィンとの反応のために、カルボキシル基をアミノエチルチオールと反応させ、そのカルボキシル基をチオール官能性と置換し得る。
【0146】
約1〜約3個の電荷を有するモノマーを使用することによって、少数のモノマーを使用して、そして分子量の変化を伴う移動度バリエーションを提供し得る。約2〜4個の各々の官能性を有するポリオールポリカルボン酸が特に興味深く、このポリオールポリカルボン酸としては、例えば、酒石酸、2,3−ジヒドロキシテレフタル酸、3,4−ジヒドロキシフタル酸、Δ−テトラヒドロ−3,4−ジヒドロキシフタル酸などがある。さらなる負電荷を提供するために、これらのモノマーを二塩基酸(例えば、リン酸誘導体)とオリゴマー形成し、リン酸ジエステルを形成し得る。あるいは、このカルボン酸をジアミンと共に使用して、ポリアミドを形成し得るが、一方、このヒドロキシル基を使用して、エステル(例えば、リン酸エステル)、またはエーテル(例えば、グリコール酸のエーテル)などを形成し得る。
【0147】
移動度を変化させるために、異なる分子量の種々の脂肪族基(例えば、ポリメチレン、ポリオキシアルキレン、ポリハロ脂肪族基もしくは芳香族基、ポリオール(例えば、糖))を使用し得、ここで、移動度は、少なくとも約0.01、より通常は少なくとも約0.02およびより通常は少なくとも約0.5異なる。Mはまた、公知のポリマーサブユニット合成方法によって調製されるポリマー鎖を含み得る。選択された長さのポリエチレンオキシド含有鎖を形成する方法は、周知である(例えば、Grossmanら、米国特許第5,777,096号)。規定されたサイズのマルチサブユニットポリマー単位を、直接的に、または連結基を介して、互いに連結するこれらの方法は、広範なポリマー(例えば、ポリエーテル(例えば、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシド)、ポリエステル(例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸)、ポリペプチド、オリゴサッカリド、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスルホンアミド、ポリスルホキシド、ポリホスホネートおよびそれらのブロックコポリマー(荷電した連結基または無電荷の連結基により連結される複数のサブユニットのユニットからなるポリマーを含む))に適用可能であることが理解され得る。ホモポリマーに加えて、本発明に従って使用されるポリマー鎖は、選択された長さのコポリマー(例えば、ポリプロピレン単位を交互に有するポリエチレンオキシド単位)を含む。別の例としては、ホモポリマーまたは混合ポリマーとしての、選択された長さおよびアミノ酸組成のポリペプチド(すなわち、天然のアミノ酸残基または人工のアミノ酸残基を含む)がある。
【0148】
種々のオリゴマーは、支持体上に合成する、または適当な宿主にクローニングまたは発現させることによって製造され得る。都合良くは、ポリペプチドは、末端基以外に、わずか1つのシステインまたはセリン/スレオニン/チロシン、アスパラギン酸/グルタミン酸またはリジン/アルギニン/ヒスチジンしか存在しない場合に生成され得、その結果、特有の官能基(これは差次的に官能化され得る)を提供する。保護基を使用することによって、当業者は、側鎖の官能基を末端アミノ酸の官能基と区別し得る。また、適切な設計によって、当業者は、移動度改変部分上の異なる部位に存在する同じ官能基の間の好ましい反応を提供し得る。当業者がオリゴペプチドの調製のために合成を使用するかクローニングを使用するかは、かなりの程度まで、移動度改変部分の長さに依存する。
【0149】
(M,D)部分は、全部または一部の合成のために、特に商業的なDNAまたはペプチド合成剤を用いて簡単にアセンブリできる、1つまたはそれ以上の同じまたは異なる、一般的にまた商業的に入手可能な結合、架橋結合、及び標識化試薬から都合よく生成される。この局面において、(M,D)部分は、ホスホジエステル結合およびアミド結合によって一般的に連結されるサブユニットからなる。例えば、AnaSpec, Inc.(San Jose, CA)から商業的に入手可能であるように、アミド結合を形成する典型的な前駆体は例えばFmoc−またはBoc−保護されたアミノ酸前駆体およびその誘導体を含む。例示的には、前駆体として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ジメトキシトリチル(DMT)−保護ヘキサエチレングリコールホスホラミダイト、6−(4−モノメトキシトリチルアミノ)ヘキシル−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホラミダイト、12−(4−モノメトキシトリチルアミノ)ドデシル−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホラミダイト、2−[2−(4−モノメトキシトリチル)アミノエトキシ]エチル−(2−シアノエチル)、N,N−ジイソプロピル)−ホスホラミダイト、(S−トリチル−6−メルカプトヘキシル)−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホラミダイト、5’−フルオレセインホスホラミダイト、5’−ヘキサクロロ−フルオレセインホスホラミダイト、5’−テトラクロロ−フルオレセインホスホラミダイト、9−O−ジメトキシトリチル−トリエチレングリコール、1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト、3−(4,4’ジメトキシトリチルオキシ)プロピル−1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト、5’−O−ジメトキシトリチル−1’,2’−ジデオキシリボース−3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト、18−Oジメトキシトリチルヘキサエチレングリコール、1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト、12−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)ドデシル−1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト、1,3−ビス−[5−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)ペンチルアミド]プロピル−2−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト、1−[5−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)ペンチルアミド]−3−[5−フルオレノメトキシカルボニルオキシペンチルアミド]−プロピル−2−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト、トリス−2,2,2−[3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロピルオキシメチル]エチル−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト、スクシンイミジルトランス−4−(マレイミジルメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジルアセチルチオアセテート、テキサスレッド−X−スクシンイミジルエステル、5−カルボキシテトラメチルローダミンスクシンイミジルエステルおよび6−カルボキシテトラメチルローダミンスクシンイ(NPIA);4−(4−N−マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH);ならびに同様の試薬。上記の試薬は、例えば、GLen Research(SterLing,VA)、MoLecuLar Probes(Eugene,OR)、Pierce ChemicaL、および同様の試薬提供業者から市販されている。従来の合成スキームにおける上記の試薬の使用は、当該分野で周知である(例えば、Hermanson,Bioconjugate Techniques(AcaDemic Press,New York,1996))。特に、Mは、以下の試薬から構築され得る:ジメトキシトリチル(DMT)−保護ヘキサエチレングリコールホスホラミダイト、6−(4−モノメトキシトリチルアミノ)ヘキシル−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホラミダイト、12−(4−モノエトキシトリチルアミノ)ドデシル−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホラミダイト、2−[2−(4−モノメトキシトリチル)アミノエトキシ]エチル−(2−シアノエチル)、N,N−ジイソプロピル)−ホスホラミダイト、(S−トリチル−6−メルカプトヘキシル)−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホラミダイト、9−O−ジメトキシトリチル−トリエチレングリコール、1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト、3(4,4’ジメトキシトリチルオキシ)プロピル−1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト、5’−O−ジメトキシトリチル−1’,2’−ジデオキシリボース−3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト、18−Oジメトキシトリチルヘキサエチレングリコール、1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト、12−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)ドデシル−1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト、1,3−ビス−[5−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)ペンチルアミド]プロピル−2−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト、1−[5−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)ペンチルアミド]−3−[5−フルオレノメトキシカルボニルオキシペンチルアミド]−プロピル−2−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト、トリス−2,2,2−[3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロピルオキシメチル]エチル−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト、スクシンイミジルトランス−4−(マレイミジルメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジルアセチルチオアセテート、スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB);N−γ−マレイミドブチリル−オキシスクシンイミドエステル(GMBS);p−ニトロフェニルヨードアセテート(NPIA);ならびに4−(4−N−マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)。したがって、可動性修飾子Mは、そのような試薬からつくられてもよく。上記の試薬は、例えばGLen Research (SterLing, Va.)、MoLecuLar Probes (Eugene, Oreg.)、Pierce ChemicaLから、商業的に入手可能で、試薬医療提供者を好む。従来の合成スキームの上記の試薬の用法は、本分野では周知である(例えばHermanson, Bioconjugate Techniques (AcaDemic Press, New York, 1996)
別の局面において、(M,D)部分は、コンビナトリアルライブラリーの作製に使用される化学骨格から構築される。例えば、以下の参考文献は、多様な移動度改変部分を作製するのに有用な骨格化合物を記載する:ペプトイド(PCT公開番号WO 91/19735,1991年12月26日)、コードされたペプチド(PCT公開WO 93/20242,1993年10月14日)、ランダムバイオオリゴマー(PCT公開WO 92/00091,1992年1月9日)、ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、およびジペプチドのようなダイバーソマー(Diversomere)(Hobbs DeWitt,S.ら,Proc.Nat.AcaD.Sci.U.S.A.90:6909−6913(1993))、ビニル性ポリペプチド(Hagiharaら,J.Amer.Chem.Soc.114:6568(1992))、β−D−グルコース骨格との非ペプチド性ペプチド模倣物(Hirschmann,R.ら,J.Amer.Chem.Soc.114:9217−9218(1992))、低分子化合物ライブラリーの類似の有機合成(Chen,C.ら,J.Amer.Chem.Soc.116:2661(1994))、オリゴカルバメート(Cho,C.Y.ら,Science 261:1303(1993))、ペプチジルホスホネート(CampbeLL,D.A.ら,J.Org.Chem.59:658(1994));Chengら,米国特許第6,245,937号;Heizmannら,「Xanthines as a scaffoLD for moLecuLar Diversity」、MoL.Divers.2:171−174(1997);Paviaら,Bioorg.MeD.Chem.4:659−666(1996);Ostreshら,米国特許第5,856,107号;GorDon,E.M.ら,J.MeD.Chem.37:1385(1994);など。好ましくは、この局面において、Dは、骨格上の置換基であり、そしてMは、残りの骨格である。
【0150】
別の実施形態において、移動度改変部分Mは、アルキレンまたはアラルキレン(約1〜約2個の脂肪族領域および約1〜約2個の芳香族領域(一般的には、ベンゼン)を有する二価の脂肪族基を含む)の使用に依存し、ここで、これらの基は、置換されていても非置換であってもよく、通常は非置換であり、約2〜約16個、より通常は約2〜約12個の炭素原子を有し、ここで、この移動度改変部分は、同じかまたは異なる蛍光物質を、モノマー単位(例えば、ヌクレオチド)に連結し得る。この移動度改変部分は、カルボキシ基、ヒドロキシ基またはアミノ基で終結し得、エステルまたはアミドとして存在する。蛍光団上の置換基を変えることによって、当業者は、少なくとも約5個以上、通常は少なくとも9個の単位の質量を、キャピラリー電気泳動における良好な分離を得ることが出来るように変更し得る。さらなるバリエーションを提供するために、チオスクシンイミド基が、窒素および硫黄におけるアルキレン基またはアラルキレン基を結合するために用いられ得、その結果、炭素原子の総数は、約2〜約30、より通常は約2〜約20の範囲であり得る。上記の基の代わりに、または上記の基と組み合わせて、親水性を加えるために、アルキレンオキシ基を使用してもよい。
【0151】
いくつかの実施形態において、分子タグ部分は、荷電している必要はなく、単に質量が異なっているのみである。従って、同じモノマーまたは類似のモノマーを使用することができ、ここでその官能基は、中性であるかまたは中性になるように、例えば、カルボン酸のエステルおよびアミドにされる。また、同位体置換(例えば、H、18O、14Cなど)により、eタグ部分を変動させてもよい。
【0152】
標識の化学的および光学的特徴、エネルギー移動複合体の使用、移動度調節部分の化学的性質における変化(これは、移動度に影響する(例えば、フォールディング))、溶媒と溶媒中のイオンとの相互作用、などによって、プローブまたはeタグのセットにおける多様性を成し得る。
【0153】
個々の標的分子に関与する結合事象のために複数の分子タグレポーターの放出することは有利である。ある意味、これによって信号の増幅される結果となる。従って、複数の分子タグは、プローブオリゴヌクレオチドに結合される。例えば、各プローブオリゴヌクレオチドは、1分子あたり検出可能部分の分子を、2−300、好ましくは、2−100、より好ましくは2−10分子放出する結果となる部分を結合している。
【0154】
(C.酵素)
認識二重鎖は、切断が生じるために二本鎖構造を必要とする化学的ヌクレアーゼまたはタンパク質ヌクレアーゼのいずれかを含む切断因子によって切断される。広範な種々の切断因子が、本発明の方法で使用され得る。化学的ヌクレアーゼは、以下の参考文献に記載される:Sigmanら、「ChemicaL nucLeases:new reagents in moLecuLar bioLogy」、Annu.Rev.Biochem.、59:207−236(1990);およびThuongら、「Sequence−specific recognition anD moDification of DoubLe−heLicaL DNA by oLigonucLeotiDes」、Angew.Chem.Int.ED.EngL.、32:666−690(1993)。一般に、オリゴヌクレオチドベースの化学的ヌクレアーゼは、3つの構成要素を有する:i)配列特異的結合のためのオリゴヌクレオチド部分、ii)切断部分、およびiii)オリゴヌクレオチドを切断部分に結合するための連結部分。配列特異的結合は、一本鎖標的とのワトソン−クリック二重鎖の形成、二重鎖標的との「Dループ」の形成、および二重鎖標的との三重鎖構造の形成によって達成されている。これらの場合の全てにおいて、オリゴヌクレオチド部分は、化学的ヌクレアーゼの認識部位を規定する。
【0155】
切断部分は、5’末端、3’末端、両方の末端、またはオリゴヌクレオチド部分の内部塩基に連結され得る;従って、オリゴヌクレオチドベースの化学的ヌクレアーゼについて、認識部位は、その切断部位とは別個であり得る。DNA標的についての切断部分は、代表的に、以下の2つの型のうち1つである:切断をもたらす拡散性のラジカル(例えば、ヒドロキシル)を生成するために化学的に活性化された薬剤、またはテザー化タンパク質ヌクレアーゼ。好ましい切断酵素は、5’−ヌクレアーゼ活性を有するしかし合成活性はもたない未変性または改変されたDNAポリメラーゼを含む。好ましくは、該酵素は、認識、切断および放出を含む全切断反応を迅速に行うに充分な活性を有し、高い回転率(1分析構造物あたりの切断の数)を提供し、該構造内の所望の切断部位に対して高い選択性をもつ。本分野において周知となっているそのような酵素は、ThirD Wave TechnoLogies社によって製造されているCLeavaseTM、FEN−1(フラップエンドヌクレアーゼ)エンドヌクレアーゼ(RAD2およびXPG(色素性乾皮症相補グループG)タンパク質)、Taq DNAポリメラーゼおよびE.coLi DNAポリメラーゼIを含む。FEN1、RAD2およびXPGタンパク質はDNA修復に関与しており、置換された5’鎖に類似する構造体の開裂を優先することが示されている。同様なDNA修復酵素が単細胞および高等真核生物から、また古細菌から単離されており、真正細菌にも関連したDNA修復タンパク質がある。同様な5’ヌクレアーゼはまたT5やT7のようなバクテリオファージとも関連している。
【0156】
熱安定性DNAポリメラーゼを改変し、合成活性を低くするか、合成活性を無くすことができる。改変は、たとえば、タンパク質分解酵素によって酵素を物理的に切断し、合成活性に欠けるが5’ヌクレアーゼ活性は保持したままのフラグメントを生成するようなタンパク質分解によって実施することができる。または組み替え技術的には、熱安定性DNAポリメラーゼをクローン化して増幅し、このとき、たとえばコードする遺伝子要素の欠失によって,突然変異またはフレームシフトによる翻訳終止コドンの導入によって、または上記のようなタンパク質分解処置によって、遺伝子のポリメラーゼ部分を除くことによって上記の改変をすることができる。このように改変されたポリメラーゼの合成および5’ヌクレアーゼ活性の存在については、Hallら,米国特許第6,348,314号に記載されているように検査をすることができる。
【0157】
熱安定性DNAポリメラーゼの合成活性は、ポリメラーゼの合成活性を選択的に阻害する条件を用い化学的手段によって低くすることもできる。たとえば、Mg+2濃度を5mMよりも高くすると、本来のDNAP Taqにある重合活性が阻害される。熱安定性ポリメラーゼの合成活性は、ポリメラーゼを長時間(20分以上)、極端に加熱(典型的には96〜100℃)することによって、無くすこともできる。しかし、酵素を物理的に改変することの方が好ましい。上記のような酵素としては、既に示したように種々のものが公知であり、市販されている。
【0158】
好ましくは、認識二重鎖は、十分既定されかつ反復可能な切断特性を有するタンパク質ヌクレアーゼで切断される。本発明での使用に適切なヌクレアーゼとしては、制限エンドヌクレアーゼおよび修復酵素が挙げられるが、これらに限定されない。本発明での使用に適切なヌクレアーゼとしては、Fpgタンパク質、エンドヌクレアーゼIII(Nth)タンパク質、ALkAタンパク質、Tagタンパク質、MPGタンパク質、ウラシル−DNAグリコシラーゼ(UDGタンパク質)、MutYタンパク質、T4エンドヌクレアーゼV、cv−PDGタンパク質、8−オキソ−グアニンDNAグリコシラーゼ(hOGG1)、FEN−1、ヒトAPエンドヌクレアーゼ、λエキソヌクレアーゼ、RNase Hなどが挙げられる。このような酵素は、複数の供給業者(New EngLanD BioLabs(BeverLy,MA)およびTrevigen Corp.(Gaithersburg,MD))から市販されている。多くの制限エンドヌクレアーゼが、本発明での使用に適切である。放出された分子タグが、認識二重鎖由来の可能な限り少ないヌクレオチドを含むように、二重鎖の末端で効果的に切断し得る制限エンドヌクレアーゼが好ましい。好ましい制限エンドヌクレアーゼとしては、Tsp509I、NLaIII、BssK1、DpnII、MboI、Sau3AI、MboII、PLeI、MnLI、ALwIなどが挙げられ、これらは、New EngLanD BioLabs(BeverLy,MA)から入手可能である。好ましくは、ヌクレアーゼの熱安定性改変体が使用され、その結果、アッセイ反応温度は、40℃〜70℃の範囲で、そしてより好ましくは40℃〜65℃の範囲で、そしてなおより好ましくは50℃〜65℃の範囲で実施され得る。
【0159】
「DNA修復酵素」は、DNA修復機構の構成要素である酵素であり、この酵素は、DNAポリメラーゼではない。DNA修復酵素としては、例えば、塩基切除修復(BER)、ヌクレオチド切除修復(NER)およびミスマッチ修復(MMR)に関与する酵素が挙げられる。修復酵素の基質特異性および機構の決定における化学的構造の役割の概説については、SingerおよびHang、Chapter2,DNA anD Free RaDicaLs:Techniques,Mechanisms & AppLications(AruomaおよびHaLLiweLL編)、OICA InternationaL,1998を参照のこと。
【0160】
塩基切除修復(BER)酵素は、損傷したDNAから遊離塩基を切り出す。BER酵素の基質は、主に、酸化的に損傷した塩基、アルカリ化付加物、脱アミノ化生成物および特定の型の単一塩基ミスマッチのような小さいDNA損傷である。塩基切除修復酵素としては、DNAグリコシラーゼ(例えば、Fpgタンパク質、Nthタンパク質、ALkAタンパク質、Tagタンパク質、MPGタンパク質、UDGタンパク質、MutYタンパク質、T4エンドヌクレアーゼVおよびcv−PDG)が挙げられる。これらの特異的酵素は、BER経路の第一工程で作用し、ここで、DNAグリコシラーゼは、変更された塩基と糖−リン酸骨格を接続するN−グリコシル結合を加水分解して、遊離塩基を放出する。残りの無塩基(abasic)(AP)部位は、APエンドヌクレアーゼによってニック形成される。いくつかのグリコシラーゼは、APリアーゼ活性を伴い、これは、AP部位に対して3’側に鎖の中断を生じる。Fpgタンパク質およびNThタンパク質は、DNAグリコシラーゼ/APリアーゼであり、DNAに対する酸化的損傷の主要なプリン生成物およびピリミジン生成物をそれぞれ認識し、切り出す。ALkAタンパク質は、アルキル化、脱アミノ化または酸化によって誘導された種々の損傷塩基を除去する。Tagタンパク質は、3−メチルアデノシンおよび3−メチルグアニンを切り出すDNAグリコシラーゼである。これらの酵素は、二本鎖DNA基質中に存在する損傷に対して活性である。UDG(ウラシル−DNAグリコシラーゼ)は、二本鎖DNAおよび一本鎖DNAの両方からウラシルを除去する。MutYタンパク質は、アデニン−グアニンまたはアデニン−シトシンのミスマッチを認識し、そしてアデニンを切り出すDNAグリコシラーゼ/APリアーゼである。上記の酵素は全て、E.coLi起源である。
【0161】
さらに、ヒトMPG(メチルプリングリコシラーゼ)は、二本鎖DNA中のアルキル化、脱アミン化および酸化的損傷塩基を認識する。T4エンドヌクレアーゼVは、UV光誘導性のcis−synシクロブタンピリミジンダイマー(CPD)に特異的なグリコシラーゼ/APリアーゼである。ChLoreLLaウイルスのピリミジンダイマーグリコシラーゼ(cv−PDG)は、cis−synCPDだけではなく、trans−syn−II異性体に対しても特異的である。代表的なグリコシラーゼ/リアーゼを、表1に列挙する。
【0162】
【表1】

NER酵素の基質は、広範な種々の嵩高な歪曲したDNA付加物および特定の非歪曲型のDNA損傷である。NERの間に、この損傷は、オリゴヌクレオチドフラグメントの一部として放出される。ヌクレオチド切除修復酵素の例としては、E.coLi UvrABCエキソヌクレアーゼが挙げられ、これは、広いスペクトルの遺伝毒性DNA付加物を認識する。ピリミジンダイマーおよび6−4光産物に加えて、UvrABCエキソヌクレアーゼの基質としては、ソラレン、4−ニトロキノリンオキシド、シスプラチン、ベンゾ[a]ピレンジオールエポキシド(BPDE)、アフラトキシンB1、N−アセトキシ−2−アセチルアミノフルオレン、7,12−ジメチルベンゾ[a]アントラセンジオールエポキシド、マイトマイシンCおよびその他多数が挙げられる。UvrABCエキソヌクレアーゼ複合体は、3つのタンパク質(UvrA、UvrBおよびUvrC)からなり、これは、複数工程の二項性(bimoDaL)切除反応において、損傷を含むフラグメントを認識および放出する。切り出されたオリゴヌクレオチドは、12〜13ヌクレオチドのサイズを有する。しかし、ヒト細胞において、損傷配列は、24〜32マーのオリゴヌクレオチド内で放出される。
【0163】
第三の主要なDNA修復機構であるMMRは、単一のミスマッチヌクレオチドおよび短いループを修正する。切除修復系に加えて、他の重要な修復経路(DNA損傷の直接的逆転(O−メチルグアニン−DNAメチルトランスフェラーゼおよびDNA光分解酵素)および二本鎖中断/組換え修復を含む)もまた、遺伝的安定性を維持する際の基本的な因子である。
【0164】
切断認識二重鎖由来の特に好ましいタンパク質ヌクレアーゼとしては、以下が挙げられる:Fpgタンパク質、Mut Yタンパク質、hOGG1タンパク質、Nthタンパク質(エンドヌクレアーゼIII)、ヒトAPエンドヌクレアーゼ、RNase Hおよびλエンドヌクレアーゼ。これらのヌクレアーゼのうち2つを使用する本発明の実施形態は、図4A−Bに示される。
【0165】
(D.分析物)
上記記載のように、分析物は通常、生化学的マーカー、例えば細胞表面マーカーまたは疾患状態と関連している他の細胞タンパク質である。より一般には、分析物はサンプル中の有無がアッセイされる必要があり、そして、特異的結合分子(例えば抗体)が利用できるか、生産されることができるどんな生体分子ででもよい。レセプターまたは他のタンパク質に加えて、分析物はそのようなレセプターまたはタンパク質のエピトープ(抗原性の部分)、炭水化物、核酸または他の生体分子を含んでもよい。
【0166】
サンプルは、例えば固定されたパラフィン包埋組織、凍結組織切片、培養されたあるいは未培養の細胞サンプルまたは体液サンプルといった組織標本である。組織標本は、外科病理学者が通常使用する標準的技術、例えば凍結またはパラフィン固定といった方法を用いて準備される、切除された組織または生検資材から得られるものである。組織マイクロアレイの準備の概説についてはWangら、2002、または組織cyroarraysについてはHoosら、2001参照のこと。組織サンプルは、周知の技術、例えば超音波、機械破砕、化学リーシス(例えば、洗剤リーシス)またはそれらの組合せによって、均質にされるかあるいはスクリーニングのために調整される。
【0167】
体液サンプルの例は、血液、尿、リンパ体液、脳脊髄液、羊水、膣液と精液を含む。細胞は、遠心等の技術によって流体サンプルから分離される。例えば、血漿は血球からも分離される、その結果これらの成分のいずれかあるいは両方が、別々にスクリーニングできる。
【0168】
好ましくは、調整されたサンプルは、先に述べたように、酵素の活性、成分オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに適当な条件下で、緩衝液に懸濁される。
【0169】
1つの実施形態において、サンプルまたはサンプルは臨床起源の組織ライブラリーに由来する。そして、それはサイズおよび/または入手可能性の点でしばしば制限される。本アッセイは多重フォーマット、すなわち多くの分析物を同時にアッセイする、で行われ、そして分析物毎に複数の検出可能な信号を生成することができるので、少ないサンプル量でも節約できる。
【0170】
(VII.アッセイ成分の調整)
抗体または他の生体分子の化学結合体は、例えば、Hermanson,BIOCONNUGATE TECHNIQUES(AcaDemic Press,1996)pp.460−483;March、ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4th ED.(WiLey 1992);Green anD Wuts、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS 2nD ED.(WiLey 1991)に記載されているように、当業者に周知の技術および材料を用いて調整することができる。これらに記載されている本発明の合成物の合成手順は、化学分野において周知であるような、保護および脱保護、精製および特徴づけの工程を含む。
【0171】
A.リガンド−オリゴヌクレオチド結合体の合成(結合組成物)
本発明の1つの実施形態に従って、上記したように、直接またはフレキシブルリンカーを介して、結合因子(例えば抗体)はオリゴヌクレオチドに結合する。直接結合は、HenDricksonら、NucLeic AciDs Res.23(3):522−29(1995)に記載されているような方法を用いて行われる。それは、Hermanson、pp.460−483に記載の従来の酵素−抗体結合プロトコールを改変したものである。一般に、これらの成分はheterobiofunctionaL結合試薬を介して結合する。分子の反応部分、例えば抗体のアミン基、が初期結合ポイントとして利用される。これらの手順は、同様の反応基を含む他のタンパク質等、他の生体分子においても、当業者によって使われている。
【0172】
最終的な結合ステップにおいて、トリフルオロアセチル−保護アミノ側鎖を有するホスホラミダイト結合試薬である、試薬AminoLink2TM(AppLieD Biosystems、Foster City、CA)使用することによって、オリゴヌクレオチドに末端プライマリー脂肪族アミンを付与することができる(L.M.Smithら、NucLeic AciDs Res.15、6181(1987);B.S.Sproatら、NucLeic AciDs Res.19:3749(1991)参照)。
【0173】
1つの結合スキームにおいて、いずれの成分も反応性マレイミド基とともに、Pierce BiotechnoLogy社(RockforD、IL)製のSMCC(N−スクシンイミジル−4−(マレイミドルメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート)または、より水溶性の高いその類似体であるスルホ−SMCCとの反応によって、誘導体化される。SMCCおよびスルホ−SMCCは両方とも生体結合化学において広く利用されているものである。試薬は、1つの末端に、結合因子またはオリゴヌクレオチドのアミンと置換されるNHSエステル基を含み、他の末端に、マレイミド基を含む(図7参照)。図7において、抗体1のアミン基は、SMCCと反応して、マレイミド誘導体2を生成する。上記記載の通りに調整されたオリゴヌクレオチド3の活性アミンは、別名Traut試薬としても知られる2−アミノチオレン(2−aminothioLane)と反応して、オリゴヌクレオチド(4)に結合した末端チオール基を生成する。活性化された成分2および4の反応により結合体5が生成される。
【0174】
この手順の他の形態としては、チオール化試薬SATA(N−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート)が用いられ、いずれかの成分に保護チオール官能基を生成する。これは保存され、使用前に脱保護されてもよい。
【0175】
リガンド−オリゴヌクレオチドこれらの2つの成分間のフレキシブルリンカーによるリガンド−オリゴヌクレオチド結合体は、例えば、PEG鎖等の結合されたリンカーを有するオリゴヌクレオチドを利用することによって形成される。タンパク質、脂質、またはオリゴヌクレオチド等の生体分子で結合体を調整するために誘導体化されたPEGポリマーまたはオリゴマーを利用することは、当該分野において周知となっている。例えば、一方の末端にNHSエステル、他方の末端に保護されたヒドラジドを有するheterobifunctionaLPEGオリゴマーは、ZaLipsky(1993)に記載されている。PEGまたは他の非ヌクレオチドポリマーでオリゴヌクレオチドの結合体の調整をすることは、例えば、米国特許第5,470,705号(Grossmanら)、米国特許第4,904,582号(TuLLis)と米国特許第5,672,662号(Harrisら)に記載されている。
【0176】
1つのアプローチでは、オリゴヌクレオチドは、標準的なホスホラミダイト化学によって調整され、上記に引用されているGrossmanらに記載のように、DMTエーテルで終結するPEGオリゴマーを結合しているホスホラミダイトモノマーで終結されている。その際DMTエーテルは、脱保護され、NHSエステルに変換されるアルコールを生成し、アミン含有抗体または他の結合因子と反応してリガンド−リンカー−オリゴヌクレオチド結合体を生成する。
【0177】
一度調整されると、結合体は、HenDricksonに記載のように、ゲルろ過クロマトグラフィ等によって精製される。抗体含有結合体の精製に特に便利な方法としては、アフィニティークロマトグラフィ、特にHermanson、pp.486−7に記載のニッケル−キレートアフィニティークロマトグラフィを用いる。アフィニティークロマトグラフィ法は、オリゴヌクレオチドが結合のために過剰に使用されるときに、効果的であり、その結果結合していない抗体はほとんど存在しない。
【0178】
(B.オリゴヌクレオチドタグ結合体の合成(検出プローブ))
ヘルパープローブと検出プローブは、従来の技術を使用して生産される合成オリゴヌクレオチドを含む。移動度改変領域および検出プローブの検出可能標識は、好ましくは、プローブ合成の最終工程においてオリゴヌクレオチド部分と結合しているホスホラミダイト前駆体を形成することによりオリゴヌクレオチド部分と好ましくは、結合する。検出プローブは、例えば、HanDbook of MoLecuLar Probes anD Research ProDucts, 8th eDition (MoLecuLar Probes, Inc., Eugene, OR, 2002);Beaucage anD Iyer, TetraheDron, 48: 2223−2311 (1992); MoLkoら, 米国特許第4,980,460号; Kosterら、米国特許第4,725,677号; Caruthersら、米国特許第4,415,732号;同4,458,066号;および同4,973,679号等に記載のように、標準的ホスホラミダイト化学を利用して固相支持体でのアセンブリにより容易にかつ効果的に調整される。これらの化学の多くは、検出プローブの構成要素を、自動化DNA合成機(例えば、AppLieD Biosystems,Inc.(Foster City,CaLifornia)モデル392または394 DNA/RNA合成機など)で簡便に合成することを可能にする。
【0179】
一般のアプローチでは、種々の検出可能な標識されたホスホラミダイトモノマーは、調整され、標準的な合成の間オリゴヌクレオチドに組みこまれ、したがって、分子タグをオリゴヌクレオチドプローブに組みこむことになる。モノマーは、市販されている、種々に置換された蛍光色素より調整される。例えば、1つのアプローチでは、市販されている6−カルボキシフルオレスセインのフェノールヒドロキシル基を、無水物を使用して保護する。その後、カルボキシル官能基は、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS−エステル)を形成することによりインサイチュで活性化され、その後アミノアルコールと反応する。生成物の遊離ヒドロキシル基をホスフィチル化してホスホラミダイトモノマーを生成する。変化した分子タグ部分は、アミノアルコールを変化させることで生成される。特に、対称ビスアミノアルコールリンカーを使用し、遊離アミンをホスフィチル化反応の前に種々のカルボン酸誘導体のいずれかとカップリングする。
【0180】
もう1つのアプローチでは、5−アミノフルオレセインを大過剰の二酸二塩化物と反応させ、モノアシル化生成物の形成に有利であり、加水分解処理でカルボン酸に変換する。その際、カルボン酸は、ホスホラミダイトモノマー形成の上記記載の一連の反応を経る。この場合、多様な組合せの分子タグが生成するため、種々の二酸のほか種々のアミノアルコールが使用される。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1A】図1Aは、抗体−オリゴヌクレオチド結合体、つまりオリゴヌクレオチド標識を有する結合組成物の1つの態様の概略図である。
【図1B】図1Bは、各々の異なる抗体は異なる既知の配列オリゴヌクレオチド標識に結合している、異なるいくつかの抗体−オリゴヌクレオチド結合体、およびこれらの結合体の一部分を細胞表面の標的部分と結合することを示す概略図である。
【図1C】図1Cは、オリゴヌクレオチド標識を有するいくつかのリガンドといくつかの標的細胞表面部分の間の結合を検出するための本発明によるアッセイ方法における工程を示すものであり、アッセイの結果からの切断された分子タグの典型的な電気泳動図(図1D)を含む。
【図1D】図1Cは、オリゴヌクレオチド標識を有するいくつかのリガンドといくつかの標的細胞表面部分の間の結合を検出するための本発明によるアッセイ方法における工程を示すものであり、アッセイの結果からの切断された分子タグの典型的な電気泳動図(図1D)を含む。
【図2A】図2Aは、認識二重鎖を含んでいる安定複合体を形成するように、標的オリゴヌクレオチド標識とヘルパープローブ及び検出プローブの結合の例を示す。
【図2B】図2Bは、複数の標的オリゴヌクレオチド標識を検出するための本発明の1つの態様の操作を示す。
【図3】図3Aは、ヘルパープローブ・オリゴヌクレオチド、分子タグのラベルが付いた検出プローブ・オリゴヌクレオチドと抗体−オリゴヌクレオチド複合体のオリゴヌクレオチド標識成分から作られる典型的な切断構造の図である。図3Bは、1つの分析物複合体から多数の切断された分子タグの生成を示している。
【図4A】図4Aは、切断因子がhOGG1タンパク質である、本発明によるアッセイの例を示す。
【図4B】図4Bは、切断因子がMutYタンパク質である、本発明によるアッセイの例を示す。
【図5】図5は、複数の結合事象アッセイフォーマットで形成されているように、結合した検出プローブを有する分析物複合体を示す。
【図6】図6は、マイクロフイディクス/キャピラリー電気泳動法(CE)装置を用いて、本発明の方法を行うことにおけるステップを示す;および
【図7】図7は、抗体−オリゴヌクレオチド結合体を準備するための合成計画を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の複数の分析物の有無を検出する方法であって、該方法は、以下:
オリゴヌクレオチド標識を有する結合組成物を各分析物に対して提供する工程;
所与の領域で該オリゴヌクレオチド標識に特異的である検出プローブ及び該所与の領域に隣接する位置で該オリゴヌクレオチド標識に特異的であるヘルパープローブからなる試薬ペアを各オリゴヌクレオチド標識に対し提供する工程であって、該検出プローブは結合した分子タグを有し、該タグは他の検出プローブの分子タグに対して異なる光学的特性または分離特性を有する工程、
分析物とその結合組成物との間で分析物複合体が形成されるように、該結合組成物を該サンプルと合わせる工程、
分析物複合体を形成しない結合組成物を除去する工程、
ハイブリダイゼーション条件下で、該分析物複合体、各結合組成物の該オリゴヌクレオチド標識に対応する該試薬ペア、及びヌクレアーゼを合わせ、これによって各オリゴヌクレオチド標識に特異的な該ヘルパープローブおよび該検出プローブが、該ヌクレアーゼによって認識される切断構造を該オリゴヌクレオチド標識とともに形成し、該ヌクレアーゼが該構造を切断し該分子タグを放出する工程、および
該放出された分子タグを分離および同定し、複数の分析物の有無を決定する工程、
を、包含する方法。
【請求項2】
前記ハイブリダイゼーション条件下で、前記対応するオリゴヌクレオチド標識非存在下において、前記切断構造は前記ヘルパープローブ及び検出プローブによって形成されない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記条件が、前記オリゴヌクレオチド標識にハイブリダイズした検出プローブが、ハイブリダイズしていない検出プローブと平衡状態であるような条件であり、その結果切断された検出プローブがさらなる検出プローブにより該オリゴヌクレオチド標識から繰り返し置換されていく、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの分析物が第1及び第2の結合部位を有し;
該分析物に対して提供される前記結合組成物が、該第1の結合部位に特異的である結合剤を含み;かつ
該結合組成物に対して提供される前記ヘルパープローブが、該第2の結合部位に特異的な第2の結合剤に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記結合組成物が、前記結合剤と前記オリゴヌクレオチド標識との間のフレキシブルリンカーを含み、前記ヘルパープローブがフレキシブルリンカーを介して前記第2の結合剤に結合する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記結合組成物が抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分子タグが蛍光性標識されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
各放出されたタグが電気泳動移動度を有し、該移動度は該タグの放出時に、他の検出プローブから放出されたタグの電気泳動移動度と異なっている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該サンプルが臨床組織ライブラリーに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
サンプル中の複数の分析物の有無を検出する方法であって、該方法は、以下:
各分析物に対して、第1のオリゴヌクレオチド標識を有する第1の結合組成物と第2のオリゴヌクレオチド標識を有する第2の結合組成物とを含む結合ペアを提供する工程であって、該第1のオリゴヌクレオチド標識および該第2のオリゴヌクレオチド標識は、該第1の結合組成物および該第2の結合組成物が同一の分析物に結合するときはいつも二重鎖を形成するように、第1の領域において互いに相補的である工程、
各第1のオリゴヌクレオチド標識及び第2のオリゴヌクレオチド標識に対して、該領域に隣接する位置で該第1のオリゴヌクレオチド標識または該第2オリゴヌクレオチド標識のいずれかに特異的である検出プローブを提供する工程であって、該検出プローブは切断可能な結合により結合した分子タグを有し、各検出プローブの該分子タグは、分離の際に各分子タグが分離プロフィールにおいて識別可能なピークを形成するように、他の検出プローブに結合している分子タグとは異なる1つ以上の物理的及び/または光学的な特性を有する工程、
該分析物とその対応する結合ペアとの間で分析物複合体が形成されるように、かつ各第1および第2のオリゴヌクレオチド標識の間で二重鎖が形成されるように、該結合ペアを該サンプルと合わせる工程、
分析物複合体を形成していない結合ペアを除去する工程、
ハイブリダイゼーション条件下で、ヌクレアーゼ、該分析物複合体、及び各結合ペアの該検出プローブを合わせて、第1または第2のオリゴヌクレオチド標識の各々に特異的な該検出プローブが該ヌクレアーゼによって認識される切断複合体を形成し、その結果、該ヌクレアーゼが該切断複合体を切断し該切断複合体から分子タグを放出させる工程、および
該放出された分子タグを分離および同定し、複数の分析物の有無を検出する工程、
を、包含する方法。

【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−511807(P2006−511807A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564869(P2004−564869)
【出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/035342
【国際公開番号】WO2004/061131
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(501014795)アクララ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】