説明

分子生物学的用途のための、核酸重合酵素を含有してなる、乾燥及び安定化したすぐ使用できる組成物

本発明は、核酸重合酵素及びセロビオースを含む乾固又は凍結乾燥した組成物に関するものであり、ここで、該酵素は、55℃に至るまでの温度でさえも、ある期間の間、安定である。また、本発明の組成物は、更に、塩、サンプル中に存在する鋳型DNAに対して特異的なプライマー、プローブ等の更なる試薬を含むことができ、場合により他の安定化化合物を含むこともできる。本発明は、核酸重合酵素及びセロビオースを含む乾固又は凍結乾燥した組成物を、場合により容器中で、調製する方法に関するものであり、ここで、該酵素は、凍結乾燥され、サンプル添加時の分子生物学的用途に使える状態にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸重合酵素の安定化と、すぐ使用できる反応組成物及びかかるポリメラーゼ安定剤を含有するキットの製造とに関するものであり、それらは診断目的にも使用できる。
【背景技術】
【0002】
核酸のインビボ及びインビトロでの合成は、そのストランドの正確な複製によって制御されており、ここで、一つ一つの核酸ストランドは、完全に相補的なストランド中のヌクレオチドの順番を決定する。DNA複製に特異的な機構は、ポリメラーゼとして知られる酵素ファミリーの使用を必要とし、該酵素ファミリーによって行われる。
【0003】
ポリメラーゼは、各種生物から精製されるものであり、研究及び診断において、特にはポリメラーゼ連鎖反応等の遺伝子増幅の各種システムの出現によって、よく使用されている(PCR−Mullis et al.米国特許第4,683,195号;第4,683,202号;及び第4,800,159号)。
【0004】
PCRの基本構成は、2つの合成プライマー、核酸鋳型及びそのポリメラーゼ酵素からなる。各プライマーは、標的核酸のある領域に相補的であり、又はそれ以上に、2つの相補鎖の1つに相補的である。
【0005】
ポリメラーゼ酵素は、水素結合を介して鋳型鎖に結合できる標的特異性ポリヌクレオチドプライマーのヒドロキシル基にヌクレオチドを結合して、ヌクレオチドを連続して3’方向に加える能力が理由で、増幅システムの重要な部分であることは明らかである。
【0006】
標準的な増幅混合物は、以下に示す組成を有することができる:dNTPs、緩衝剤、MgCl、順方向プライマー、逆方向プライマー、Taqポリメラーゼ、DNA及びHO。
【0007】
その反応混合物は、鋳型DNAの二重らせんを変性するために、90〜95℃に加熱される必要がある。変性工程後、その温度を50〜60℃に下げて、プライマーの相補鎖とのアニーリングが可能になる;ポリメラーゼは、伸長として一般に知られている工程において前述のプライマーを伸長させることによって、その過程を完了する。
【0008】
PCR反応に使用される酵素は、好熱性生物から単離されており、それ故に、高温下にて安定である。それにもかかわらず、これら高温安定性酵素でさえ化学的因子、プロテアーゼ又は環境変化によって不活性化が起こり得る。
【0009】
耐熱性酵素の使用は、他の酵素と同様に、高温、PCRの場合のように、補助因子及び基質の濃度が最適以下での水性混合物、並びに最大酵素活性に対して最適でないpH等の変性条件の併用を要する場合が多い。
【0010】
この状況は、酵素の安定化が強く望まれ、それは該酵素の長期間保存に必要であり、特には他の試薬と一緒に合わせた水性混合物及び核酸増幅用のすぐ使用できる反応混合物中に含まれる場合に必要であることを示唆する。
【0011】
ポリメラーゼを安定化するために、多くの技術が知られており、特許及び出願において記載されている。前述の技術には、酵素の化学的修飾、固体支持体上での固定化、アプタマーの使用、酵素の遺伝子操作、及び安定剤の添加が含まれている。
【0012】
安定化活性が実証されている物質の群は、酵素の活性形態とそれらが含まれる水性環境間の界面で作用する界面活性剤である。
【0013】
分子生物学の技術において使用される酵素を安定化する通常の方法は、50%グリセロール、及びジチオスレイトール(DTT)、β−メルカプトエタノール等の還元剤を含有する溶液中における各酵素の液体調製物を−20℃で貯蔵することによるものである。その手順は、酵素の活性を、何ヶ月もの間、活性の最小限の損失で保つのに十分である。対照的に、酵素活性は、室温又は+4℃で貯蔵された場合、すぐに失われる。
【0014】
Triton X−100、Tween20等の非イオン性洗剤が、DNAポリメラーゼ活性を安定化することが示された。特許出願EP776,970A1は、耐熱性DNAポリメラーゼの活性を安定化するため、Tween20(登録商標)及びNP−40(登録商標)を含めた、非イオン性洗剤を使用することを記載する。低濃度のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)もまた、酵素活性を安定化することが示された。
【0015】
酵素が室温への長期間暴露又は高温への短時間暴露に耐えることを可能にする酵素保存方法は、依然として、郵便委託及び新規分野の利用のより容易で且つ費用効率のより高いマネジメントへの実際の制限のみである。酵素、特には好熱性生物に由来するものを含んだポリメラーゼ、即ちポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に通常利用されるものは、これまで、+2〜8℃より低い温度、通常では−20℃で輸送されていた。
【0016】
生物材料を保存するための方法のうち、凍結乾燥は、これまで、食品、細胞、生体膜、生体高分子、更には酵素を保存するために使用されてきた。
【0017】
凍結乾燥法は、室内圧力より低い条件下での、凍結サンプルからの水の除去、即ち液体状態を通過せずに固体の水性成分の蒸発を含む。
【0018】
タンパク質調製物は、乾固による構造歪みを低減するため、乾固させる前に通常凍結される。
【0019】
不完全に乾燥した凍結乾燥、即ち依然として低いパーセントの水を含有するものは、完全に乾固したものと比べて、特には+4〜10℃より高くない温度での保存が行われる場合、より良好な保存を確保するように思う。しかしながら、これら条件下でさえ、酵素活性の小さな喪失がある。
【0020】
しかしながら、ポリメラーゼ等の一部の酵素は、凍結乾燥型(乾燥又はそうでないもの)にもかかわらず、抗凍結剤の不在下における凍結乾燥後に完全に不活性化される。
【0021】
抗凍結活性を持つ多くの物質又は添加剤は、ポリメラーゼを安定化するために使用され又は提案されている。例えば、US5,614,387及びUS5,834,254は、核酸増幅用の凍結乾燥した安定な酵素組成物を調製するための方法及び組成物を記載しており、ここで、トレハロース及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)が凍結防止剤として使用された。
【0022】
既知の技術及び現在市場に出回っている製品の分析は、重合酵素を保護する問題、及び重合連鎖反応混合物の調製を単純化する見込み(それ故に、実験室環境内でさえもPCR反応を標準化すること)が非常に話題であり、継続して開発されていることを示す。
【0023】
市場で利用できるものは、標準PCR増幅用の単一用量における予備混合凍結乾燥製剤からなるpuRe Taq レディー・トゥ・ゴー PCR ビーズ(GEヘルスケア)として知られるシステムである。しかしながら、そのシステムは、安定性及び純度のためにリード酵素として記載されている特定のTaqポリメラーゼ(puRe Taqポリメラーゼ)を用いて調製するという制限がある。対照的に、提案される本発明の方法は、全てのポリメラーゼを用いて使用できる。なぜなら、セロビオースが、単純なポリメラーゼや、ホットスタートポリメラーゼ、更にはクレノウ等のそれらの活性断片であろうとも、全てのTaqポリメラーゼを安定化及び保護することができるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第4,683,195号
【特許文献2】米国特許第4,683,202号
【特許文献3】米国特許第4,800,159号
【特許文献4】特許出願EP776,970A1
【特許文献5】US5,614,387
【特許文献6】US5,834,254
【発明の概要】
【0025】
本発明は、乾固又は凍結乾燥した組成物に関し、適当な溶媒を用いて希釈されるのに適したものであり、凍結乾燥及び55℃以下の温度での貯蔵に耐えるために安定化された核酸重合酵素を含むものであり、ここで、前記組成物は、核酸重合酵素濃度が0.01〜250ユニット(0,4〜10000U/ml)の範囲にあり、濃度が50mM(17,115g/L)〜500mM(171,15g/L)のセロビオースと、緩衝剤とを含むことを特徴とする。前記核酸重合酵素は、好ましくはTaqポリメラーゼ、ホットスタートポリメラーゼ又はそれらの活性断片からなる群から選択されるDNAポリメラーゼである。前記組成物は、「凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物」又は「ユニバーサル・マスター・ミックス」ともいわれる。
【0026】
本発明の更なる態様は、適切な溶媒を用いて希釈されるのに適した組成物に関し、凍結乾燥及び55℃以下の温度での貯蔵に耐えるために安定化された核酸重合酵素を含むものであり、ここで、前記組成物は、核酸重合酵素濃度が0.01〜250ユニットの範囲にあり、濃度が50〜500mMのセロビオース、緩衝剤、dNTPs、KCl及びMgClを含むことを特徴とする。
【0027】
更に、本発明は、核酸の増幅のための、特には、PCRに限定されず、リアルタイムPCR、融解曲線分析、高分解能融解分析、配列決定、定量的蛍光PCR、多重PCR、全ゲノム増幅、等温増幅等の分子生物学的用途のための、上記組成物の使用に関する。
【0028】
また更に、本発明は、核酸の増幅方法に関し、該方法は、
i.本発明の組成物を水中又は緩衝剤中に再構成する工程と;
ii.標的DNAに対して特異的なプライマーを加える工程と;
iii.核酸鋳型を加える工程と;
iv.KCl、MgCl、dNTPs、任意に標識化された少なくとも1つのプローブ、還元剤、及び更なる安定剤からなる群から選択される試薬の1種以上を任意に加える工程と
を含む。
【0029】
また、本発明は、本発明に従う乾固又は凍結乾燥した組成物と、前記組成物を再構成するための溶媒とを含むすぐ使用できる製品を提供する。
【0030】
その上、本発明は、DNAサンプルのPCR増幅用キットであって、本発明に従う組成物を備え、任意には再構成のための指示及びポリメラーゼ連鎖反応における上記酵素の使用を備えるものを含む。
【0031】
本発明の特に好適な実施態様は、凍結乾燥中及び55℃以下の温度での長期貯蔵中に核酸ポリメラーゼを保存するためのセロビオースの使用から構成される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】凍結乾燥プロセス完了直後での、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物のアガロースゲル電気泳動パターンである。レーン1〜6:会社Xからのホットスタートポリメラーゼを用いて調製された凍結乾燥したすぐ使用できる組成物を用いて増幅されたPCR産物;凍結乾燥前の体積:25μl(レーン1〜3)又は9.1μl(レーン4〜6)。レーン7〜12:会社YのホットスタートDNAポリメラーゼを用いて調製された凍結乾燥したすぐ使用できる混合物を用いて得られた増幅産物;凍結乾燥前の体積:25μl(レーン7〜9)又は7.5μl(レーン10−12)。レーン13〜15:会社Xから得たポリメラーゼを用いて調製された凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物を用いて得られたPCR産物;凍結乾燥前の体積:25μl。 M:分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」,Promega。 PCR産物:268bp:ヒトベータ−グロビン遺伝子の断片;240bp;マラリア原虫spp18sRNA遺伝子の断片。
【図2】室温又は37℃での3週間保存後の、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物のアガロースゲル電気泳動パターンである。レーン1〜8:会社XのホットスタートDNAポリメラーゼを含有する増幅混合物を用いて得られた増幅産物;凍結乾燥前の体積:25μl(レーン1〜4)又は9.1μl(レーン5〜8)。レーン9〜12:会社XのDNAポリメラーゼを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物を用いて得られた増幅産物;凍結乾燥前の体積:25μl。室温(レーン1〜3、5〜7、9〜11)又は37℃(レーン4、8、12)での3週間の保存。 M:分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」,Promega。 PCR産物:268bp:ヒトベータ−グロビン遺伝子の断片;240bp;マラリア原虫spp18sRNA遺伝子の断片。
【図3】凍結乾燥プロセス完了直後での、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物のアガロースゲル電気泳動パターンである。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物は、次のものを含有する:(i)会社W(レーン1〜4)、会社X(レーン5〜8)、会社R(レーン9〜12)又は会社Y(レーン13〜19)の反応緩衝剤;(ii)会社W(レーン1、5、9及び13)、会社Y(レーン2、6、10、14、17、18及び19)、会社X(レーン3、7、11及び15)又は会社R(レーン4、8、12及び16)から得たホットスタートDNAポリメラーゼ。レーン17、18及び19の増幅産物は、それぞれが0.25%のNP−40及び0.25%のTween−20、100mMのスクロース及び0.25%のNP−40、0.25%のTween−20及び100mMのスクロースをも含有する凍結乾燥したすぐ使用できる混合物を用いて得られた。 M:分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」,Promega。 PCR産物:268bp:ヒトベータ−グロビン遺伝子の断片;240bp;マラリア原虫spp18sRNA遺伝子の断片。
【図4】室温での6週間保存後の、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物のアガロースゲル電気泳動パターンである。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物は、次のものをそれぞれ含有する:(i)会社W(レーン1〜4)、会社X(レーン5〜8)、会社R(レーン9〜12)又は会社Y(レーン13〜19)の反応緩衝剤;(ii)会社W(レーン1、5、9及び13)、会社Y(レーン2、6、10、14、17、18及び19)、会社X(レーン3、7、11及び15)又は会社R(レーン4、8、12及び16)から得たホットスタートDNAポリメラーゼ。レーン17、18及び19の増幅産物は、それぞれが0.25%のNP−40及び0.25%のTween−20、100mMのスクロース及び0.25%のNP−40、0.25%のTween−20及び100mMのスクロースをも含有する凍結乾燥したすぐ使用できる混合物を用いて得られた。 M:分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」,Promega。 PCR産物:268bp:ヒトベータ−グロビン遺伝子の断片;240bp;マラリア原虫spp18sRNA遺伝子の断片。
【図5】凍結乾燥プロセス完了直後での、250mMのスクロースを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物のアガロースゲル電気泳動パターンである。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物は、次のものを含有する:(i)会社X(レーン1、8及び9)、会社W(レーン2、3、14〜17)、会社R(レーン4、5、10〜13)又は会社Y(レーン6、7、18〜21)の反応緩衝剤;(ii)会社X(レーン1〜7)又は会社R(レーン8〜21)から得たホットスタートDNAポリメラーゼ。レーン1、2、4、6、8、10、14及び18において使用された上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物においては、物質が加えられず;レーン3、5、7、11、15及び19のものでは、250mMのスクロースを反応緩衝剤に加え;レーン9、12、16及び20のものでは、250mMのスクロースを貯蔵緩衝剤に加え;レーン13、17及び21のものでは、250mMのスクロースを反応緩衝剤及び貯蔵緩衝剤の両方に加えた。 M:分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」,Promega。 PCR産物:268bp:ヒトベータ−グロビン遺伝子の断片;240bp;マラリア原虫spp18sRNA遺伝子の断片。
【図6】室温での8週間保存後の、250mMのスクロースを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物のアガロースゲル電気泳動パターンである。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物は、次のものを含有する:(i)会社X(レーン1、8及び9)、会社W(レーン2、3、14〜17)、会社R(レーン4、5、10〜13)又は会社Y(レーン6、7、18〜21)の反応緩衝剤;(ii)会社X(レーン1〜7)又は会社R(レーン8〜21)から得たホットスタートDNAポリメラーゼ。レーン1、2、4、6、8、10、14及び18において使用された上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物においては、物質が加えられず;レーン3、5、7、11、15及び19のものでは、250mMのスクロースを反応緩衝剤に加え;レーン9、12、16及び20のものでは、250mMのスクロースを貯蔵緩衝剤に加え;レーン13、17及び21のものでは、250mMのスクロースを反応緩衝剤及び貯蔵緩衝剤の両方に加えた。 M:分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」,Promega。 PCR産物:268bp:ヒトベータ−グロビン遺伝子の断片;240bp;マラリア原虫spp18sRNA遺伝子の断片。
【図7】凍結乾燥プロセス完了直後での、以下に記載の安定剤を含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物のアガロースゲル電気泳動パターンである。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物は、会社W(レーン1〜5)又は会社R(レーン6〜10)から得た、反応緩衝剤及びホットスタートDNAポリメラーゼ酵素を含有する。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物に安定剤として加えられたものは、200mMのトレハロース(レーン2及び7)、250mMのスクロース(レーン3及び8)、200mMのマルトース(レーン4及び9)又は0.025%のアガロース(レーン5及び10)であった。レーン1及び6で使用した上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物には、物質を加えなかった。 M:分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」,Promega。 PCR産物:268bp:ヒトベータ−グロビン遺伝子の断片;240bp;マラリア原虫spp18sRNA遺伝子の断片。
【図8】室温又は37℃での1週間保存後の、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物のアガロースゲル電気泳動パターンである。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物は、会社W(レーン1〜5)又は会社R(レーン6〜10)から得た、反応緩衝剤及びホットスタートDNAポリメラーゼ酵素を含有する。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物に安定剤として加えられたものは、200mMのトレハロース(レーン2及び7)、250mMのスクロース(レーン3及び8)、200mMのマルトース(レーン4及び9)又は0.025%のアガロース(レーン5及び10)であった。レーン1及び6で使用した上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物には、物質を加えなかった。 M:分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」,Promega。 PCR産物:268bp:ヒトベータ−グロビン遺伝子の断片;240bp;マラリア原虫spp18sRNA遺伝子の断片。
【図9】凍結乾燥プロセス完了直後での、安定剤を含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物のアガロースゲル電気泳動パターンである。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物は、会社W(レーン1〜5)又は会社R(レーン6〜10)から得た、反応緩衝剤及びホットスタートDNAポリメラーゼを含有する。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物に加えたものは、250mMのトレハロース(レーン2及び7)、6.6%のデキストロース(レーン3及び8)、200mMのセロビオース(レーン4及び9)又は6.6%のアミロペクチン(5及び10)であった。レーン1及び6で使用した上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物には、物質を加えなかった。 M:分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」,Promega。 PCR産物:268bp:ヒトベータ−グロビン遺伝子の断片;240bp;マラリア原虫spp18sRNA遺伝子の断片。
【図10】37℃での1週間保存後の、安定剤を含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物のアガロースゲル電気泳動パターンである。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物は、会社W(レーン1〜5)又は会社R(レーン6〜10)から得た、反応緩衝剤及びホットスタートDNAポリメラーゼを含有する。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物に加えたものは、250mMのトレハロース(レーン2及び7)、6.6%のデキストロース(レーン3及び8)、200mMのセロビオース(レーン4及び9)又は6.6%のアミロペクチン(5及び10)であった。レーン1及び6で使用した上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物には、物質を加えなかった。 M:分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」,Promega。 PCR産物:268bp:ヒトベータ−グロビン遺伝子の断片;240bp;マラリア原虫spp18sRNA遺伝子の断片。
【図11】凍結乾燥プロセス完了直後での、セロビオースを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物のアガロースゲル電気泳動パターンである。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物は、会社W(レーン1〜5)又は会社R(レーン6〜10)から得た、反応緩衝剤及びホットスタートDNAポリメラーゼを含有する。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物に加えたものは、250mMのトレハロース(レーン2及び7)、6.6%のデキストロース(レーン3及び8)、200mMのセロビオース(レーン4及び9)又は6.6%のアミロペクチン(5及び10)であった。レーン1及び6で使用した上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物には、物質を加えなかった。 M:分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」,Promega。 PCR産物:268bp:ヒトベータ−グロビン遺伝子の断片;240bp;マラリア原虫spp18sRNA遺伝子の断片。
【図12】37℃での2週間保存後の、セロビオースを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物のアガロースゲル電気泳動パターンである。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物は、会社R(レーン1〜13)から得た、反応緩衝剤及びホットスタートDNAポリメラーゼを含有する。セロビオースは、異なる濃度(mM)で、上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物に加えられた:0(レーン1)、50(レーン2)、100(レーン3)、150(レーン4)、200(レーン5)、250(レーン6)、300(レーン7)、350(レーン8)、400(レーン9)、450(レーン10)、500(レーン11)、600(レーン12)、700(レーン13)。 M:分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」,Promega。 PCR産物:268bp:ヒトベータ−グロビン遺伝子の断片;240bp;マラリア原虫spp18sRNA遺伝子の断片。
【図13】凍結乾燥プロセス完了直後での、セロビオース又はトレハロースを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物のアガロースゲル電気泳動パターンである。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物は、会社R(レーン1〜16)から得た、反応緩衝剤及びホットスタートDNAポリメラーゼを含有する。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物に加えたものは、100mMのセロビオース(レーン1〜5)、200mMのセロビオース(レーン6〜10)又は200mMのトレハロース(レーン12〜16)であった。レーン11で使用した上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物には、物質を加えなかった。 M:分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」,Promega。 PCR産物:268bp:ヒトベータ−グロビン遺伝子の断片;240bp;マラリア原虫spp18sRNA遺伝子の断片。
【図14】37℃での2週間保存後の、セロビオース又はトレハロースを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物のアガロースゲル電気泳動パターンである。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物は、会社R(レーン1〜15)から得た、反応緩衝剤及びホットスタートDNAポリメラーゼを含有する。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物に加えたものは、100mMのセロビオース(レーン1〜5)、200mMのセロビオース(レーン6〜10)又は200mMのトレハロース(レーン11〜15)であった。 M:分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」,Promega。 PCR産物:268bp:ヒトベータ−グロビン遺伝子の断片;240bp;マラリア原虫spp18sRNA遺伝子の断片。
【図15】55℃での24時間(レーン1及び6)、48時間(レーン2及び7)、72時間(レーン3及び8)、96時間又は1週間(レーン5及び10)保存後の、セロビオース又はトレハロースを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物のアガロースゲル電気泳動パターンである。上記凍結乾燥したすぐ使用できる混合物は、会社R(レーン1〜10)から得た、反応緩衝剤及びホットスタートDNAポリメラーゼを含有する。 M:分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」,Promega。 PCR産物:268bp:ヒトベータ−グロビン遺伝子の断片;240bp;マラリア原虫spp18sRNA遺伝子の断片。 全図面において、「M」は、Promega社による分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」のレーンに対応しており;前記マーカーの断片は、50bpから1000bpまで幅がある。
【図16】凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物、及び参照方法によって得られた、野生型(wt)DNA対照サンプル(C1)、未知のDNAサンプル(C2)、変異DNA対照サンプル(C3)、及び鋳型無しの対照(N)増幅産物のアガロースゲル電気泳動パターンである。図16aは、上記増幅産物の精製手順前の結果である。図16bは、上記増幅産物の精製手順後の結果である。
【図17】直接配列決定の結果である。図17aは、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物を用いて得た、野生型及び変異配列の増幅産物の直接配列決定の結果である。図17bは、参照方法によって得た、野生型及び変異配列の増幅産物の直接配列決定の結果である。
【図18a】図18は、PCR及びリアルタイムPCRである。図18a(i)は、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物を用いて得た、野生型(wt)DNA対照サンプル(C1)、未知のDNAサンプル(C2)、変異DNA対照サンプル(C3)、及び鋳型無しの対照(N)増幅産物のアガロースゲル電気泳動パターンである。図18a(ii)は、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物を用いて得た、リアルタイムPCRのテイクオフ曲線である。図18a(iii)は、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物を用いて得た、リアルタイムPCRの定量比較の結果である。
【図18b】図18b(i)は、参照方法によって得られた、野生型(wt)DNA対照サンプル(C1)、未知のDNAサンプル(C2)、変異DNA対照サンプル(C3)、及び鋳型無しの対照(N)増幅産物のアガロースゲル電気泳動パターンである。図18b(ii)は、参照方法によって得られた、リアルタイムPCRのテイクオフ曲線である。図18b(iii)は、参照方法によって得られた、リアルタイムPCRの定量比較の結果である。
【図19】図19aは、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物を用いて得た、融解曲線分析の結果である。図19bは、参照方法によって得られた、融解曲線分析の結果である。
【図20】図20aは、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物を用いて得た、高分解能融解分析(HRM)の結果である。図20bは、参照方法によって得られた、高分解能融解分析(HRM)の結果である。
【図21】図21aは、定量的蛍光(QF)フェログラムであって、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物を用いて得られた結果である。図21bは、定量的蛍光(QF)フェログラムであって、参照方法によって得られた結果である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
本発明の理解を容易にするため、一部の用語を以下に定義する。
【0034】
「安定剤」の語は、生物活性材料に添加された場合に、安定剤の不在下において該材料を保存するのと比べて、長時間、活性が失われることを防ぐか又は遅らせることができる薬剤を意味する。
【0035】
「ポリメラーゼ」の語は、DNA鋳型及びリボヌクレオシド三リン酸又はデオキシヌクレオシド三リン酸の有効性から、核酸ストランド(RNA又はDNA)を合成することができる酵素又はその活性断片を指す。
【0036】
「ポリメラーゼ活性」の語は、リボヌクレオシド三リン酸又はデオキシヌクレオシド三リン酸から出発して核酸のストランド(RNA又はDNA)を合成する酵素の能力を指す。
【0037】
「緩衝剤」(「buffer」又は「buffering agents」)の語は、溶液に加えたときに、そのpHの変化に対する抵抗力を与える物質又は調製物を指す。
【0038】
「還元剤」の語は、電子供与体、即ち第二物質の原子の1つ以上の酸化状態を還元するために第二物質に電子を提供する物質を指す。
【0039】
「溶液」の語は、混合物を指し、水性でもよいし、非水性でもよい。
【0040】
「緩衝液」の語は、緩衝剤を含有する溶液を指す。
【0041】
「反応緩衝剤」の語は、酵素反応を展開する緩衝液を指す。
【0042】
「貯蔵緩衝剤」の語は、酵素を保存する緩衝液を指す。
【0043】
「鋳型」の語は、「標的」の存在について分析されている生物サンプルに由来する核酸を指す。
【0044】
「標的」の語は、分子生物学的技術に関連して使用する場合に、増幅反応に用いる特異的プライマーによって認識される核酸の領域を指す。診断用途のPCRの場合、標的DNAは、病原体の核酸からなる。
【0045】
「プライマー」又はトリガーの語は、核酸合成を生じる条件下(ヌクレオチド及びポリメラーゼの存在下)で使用した場合に合成用トリガーとして作用できる合成したオリゴヌクレオチドを指す。
【0046】
dNTPs(デオキシヌクレオシド三リン酸)の語は、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン及びデオキシシチジンの混合物を指し、ここで、デオキシヌクレオシド三リン酸それぞれの濃度が示される。
【0047】
「PCR産物」又は「増幅断片」の語は、一般には二重らせんにあり、2つ以上のPCRサイクルに由来するDNA断片を指し、即ち鋳型DNA鎖の変性工程、それとの特異的プライマーのアニーリング工程、及び該プライマーのOH末端から開始する鋳型DNAに相補的な鎖の伸長又は延長工程を受ける連鎖重合に由来するDNA断片を指す。
【0048】
詳細な説明
本発明は、凍結乾燥(又は乾固)中、核酸重合酵素、特にはDNAポリメラーゼ、ホットスタートDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ又はそれらの活性断片を安定化するための、及びそれらをこの形態で長時間保存するための、二糖セロビオースの使用に関する。
【0049】
好適な態様において、本発明は、適当な溶媒を用いて希釈されるのに適している乾固又は凍結乾燥した組成物に関し、凍結乾燥及び55℃以下の温度での貯蔵に耐えるために安定化された核酸重合酵素を含むものであり、ここで、前記組成物は、核酸重合酵素濃度が0.01〜250ユニットの範囲にあり、濃度が50mM(17,115g/L)〜500mM(171,15g/L)のセロビオースと、緩衝剤とを含むことを特徴としており、ここで、該緩衝剤は、トリスHClであることが好ましい。前記核酸重合酵素は、好ましくはTaqポリメラーゼ、ホットスタートポリメラーゼ又はそれらの活性断片からなる群から選択されるDNAポリメラーゼである。
【0050】
前記組成物はまた、「凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物」又は「ユニバーサル・マスター・ミックス」ともいわれる。
【0051】
上記乾固又は凍結乾燥した組成物は、液体の又は凍結した混合物からの凍結乾燥(又は乾固)によって得られ、ここで、セロビオースは、50mMと500mMの間に含まれる濃度にあるか又は150mM(51,345g/L)と250mM(85,575g/L)の間に含まれる濃度にあるか、好ましくは250mMであり、また、核酸重合酵素の濃度は、0.01〜250ユニットの範囲にあり、好ましくは少なくとも2ユニットである。凍結乾燥に使用されるセロビオースは、分析グレードのものが好ましい。
【0052】
本発明の好適な実施態様は、適切な溶媒を用いて希釈されるのに適した組成物に関し、凍結乾燥及び55℃以下の温度での貯蔵に耐えるために安定化された核酸重合酵素を含むものであり、ここで、前記組成物は、核酸重合酵素濃度が0.01〜250ユニットの範囲にあり、濃度が50〜500mMのセロビオース、緩衝剤、dNTPs、KCl及びMgClを含むことを特徴としており、ここで、該緩衝剤は、トリスHClであることが好ましい。
【0053】
上記組成物は、好ましくはRCRにおいてすぐ使用できる形態としての酵素の実施態様に従い、更に好ましくは、以下に示す試薬:
i.界面活性剤、NP40、Tween20、Triton−X100等のイオン性若しくは非イオン性洗剤、及び/又はデキストロース、スクロース、トレハロース等の非還元糖からなる群から選択される安定剤;
ii.β−メルカプトエタノール、DTT又は硫酸アンモニウムからなる群から選択される還元剤;
iii.少なくとも1つのプローブであって、任意に標識化されたもの
の少なくとも1種を含む。
【0054】
任意には、上記凍結乾燥した組成物をリアルタイムPCRに用いる場合、それは、プローブであって、場合によっては、例えばTaqManプローブ(登録商標)、モレキュラービーコンズ(登録商標)、スコーピオンズプローブ(登録商標)、ハイビーコンプローブ(登録商標)、又はリアルタイムPCRに使用可能な他のプローブからなる群から選択される蛍光基を用いて標識化したものを含むことができる。
【0055】
本発明の組成物がDNAを含有する水又は緩衝システム中に再構成される場合、セロビオースは、50mMと500mMの間に含まれる濃度にあるか、150mMと250mMの間に含まれる濃度にあるか、好ましくは250mMであり、この濃度であれば、それは、遺伝子増幅反応に干渉しない。
【0056】
更に好ましくは、上記組成物は、好適な実施態様において記載した試薬の全てを含有し、チューブ、マイクロプレート等の単一容器における再構成又はバルクでの再構成の後、直接、遺伝子増幅するために予め調製された、すぐ使用できる凍結乾燥又は乾固した調製物からなる。
【0057】
本発明は、更に、核酸増幅用の組成物の使用に関し、該増幅は、自動化された方法で行うことができ、具体的には、PCRに制限されず、リアルタイムPCR、融解曲線分析、高分解能融解分析、配列決定、定量的蛍光PCR、多重PCR、全ゲノム増幅、等温増幅等の分子生物学的用途のためである。
【0058】
また、本発明は、本発明に従う乾固又は凍結乾燥した組成物と、前記組成物を再構成するための溶媒とを含むすぐ使用できる製品を提供する。
【0059】
本発明に従って調製された上記凍結乾燥した組成物は、それらから行われるPCR法のかなりの単純化をもたらし、それ故に、汚染の問題を回避することができ、主に、その反応に必要な核酸の体積に関してかなりの柔軟性が許容され、結果として、テストロバスト性の増大が顕著である。この最後の態様は、より大きな体積の核酸が上記凍結乾燥した組成物と共に使用できるため、法医科学において特に興味深い。
【0060】
更に、ポリメラーゼを含有する組成物の室温安定性のかなりの増加は、獣医学及びヒト診断分野、並びに食品分析分野への特定の興味の適用が、特に十分に設備が整っていない施設において行われる場合に、可能とされることを意味する。従って、これら使用は、特に好適である。また、55℃以下の温度にて貯蔵するための組成物の安定性の増加は、出荷及び貯蔵について更なる柔軟性を許容する。
【0061】
また更に、本発明は、核酸の増幅方法に関し、該方法は、
v.本発明の組成物を水中又は緩衝剤中に再構成する工程と;
vi.標的DNAに対して特異的なプライマーを加える工程と;
vii.核酸鋳型を加える工程と;
viii.KCl、MgCl、dNTPs、任意に標識化された少なくとも1つのプローブ、還元剤、及び更なる安定剤からなる群から選択される試薬の1種以上を任意に加える工程と
を含む。
【0062】
本発明の更なる態様は、室温にて安定なポリメラーゼ、好ましくはDNAポリメラーゼ、更に好ましくはTaqポリメラーゼ、一層好ましくはホットスタートポリメラーゼを含有する乾固又は凍結乾燥した組成物の調製方法に関し、本質的には、前記酵素(複数の前記酵素)を、濃度が50mM〜500mM、好ましくは150mM〜250mMのセロビオースと共に、例えばトリス−HClからなることのできる凍結乾燥及び貯蔵緩衝剤中において、「最小」と定義された手順に従って混合することと、好ましくは迅速な凍結後に、その溶液に凍結乾燥又は乾固を受けさせることを特徴とする。
【0063】
上記酵素は、少なくとも1〜5IUの量で加えられる:その最小量方法はまた、塩、好ましくはKCl、MgClからなる群から選択されるものを凍結乾燥の前に加えることも備える。
【0064】
本発明の利点の一つは、セロビオースを用いて安定化されたシステムが、様々な製造会社からの全DNAポリメラーゼに適応することである。
【0065】
その上、セロビオースは、セルロース、植物起源のグルコース(糖)の長鎖からなる分子から出発する酵素加水分解システムによって作られる。上記植物起源は、トレハロースの場合のように生産がその合成のために細菌培養物を使用することを含む場合にありそうな細菌汚染から起こり得る核酸汚染物質の欠如を保証する。
【0066】
酵素又は複数の酵素と安定剤(セロビオース)とを単に又は他の成分と共に混合するためのシステムは多く、全てが適用できる。例えば、溶解した酵素を含有する溶液に安定剤が加えられる方法、又は酵素を含有する溶液を安定剤を含有する第二溶液と混合する方法、又は酵素を安定剤を含有する溶液中に溶解させる方法があり、他には、酵素及び安定剤の両方を含有する溶液を液体又は凍結乾燥したものとして保存する方法がある。
【0067】
凍結乾燥は、当該技術分野の専門家に知られている基準に従って行われる。凍結乾燥の実行できる手順の例は、以下のものである:
長時間凍結乾燥手順:
・5分で+20℃から−40℃までの勾配
・−40℃で3時間
・30分で−40℃から−10℃までの勾配
・−10℃で4時間
・15分で−10℃から+10℃までの勾配
・+10℃で2時間
・15分で+10℃から+30℃までの勾配
・+30℃で4〜8時間
【0068】
凍結乾燥は、以下に示す短時間手順に従って行うこともでき、少量が含まれているという理由においても適用できる。凍結乾燥の実行できる手順の例は、以下のものである:
短時間凍結乾燥手順:
・5分で+20℃から−40℃までの勾配
・−40℃で30分間
・15分で−40℃から−10℃までの勾配
・−10℃で30分間
・15分で−10℃から+10℃までの勾配
・+10℃で60分間
・15分で+10℃から+30℃までの勾配
・+30℃で60分間
【0069】
短時間凍結乾燥手順は、上記酵素がグリセロール中に貯蔵されていない場合に特に示唆され、一方、長時間凍結乾燥手順は、上記酵素がグリセロール中に貯蔵されているかどうかにかかわらず使用できる。
【0070】
更に好適な実施態様において、特には診断用途についてであるが、本発明は、ポリメラーゼを凍結乾燥するための組成物をすぐ使用できる形態で調製する方法に関するものであり、該方法は、以下に示す工程を含む:
・「最小」と定義された手順に従って、例えばトリス−HClからなることができる凍結乾燥及び貯蔵緩衝剤中に、上記酵素を、50と500mMの間に含まれる濃度、好ましくは150と250mMの間に含まれる濃度のセロビオースと混合する工程(或いはその逆)、
・KCl、トリス−HCl、MgClからなる群から好ましくは選択される塩を加える工程、
・以下のものを任意に加える工程:
・dNTPs、
・サンプル中に存在する標的DNAに対して特異的であるプライマー、好ましくは、少なくとも1つの5’プライマー(順方向)及び1つの3’プライマー(逆方向)、
・NP40、Tween−20等のイオン性若しくは非イオン性洗剤、及び/又は、デキストロース、スクロース、トレハロース等の非還元糖、又は、DTT、β−メルカプトエタノール等の還元剤の任意の添加、
・先に示されたような、好ましくは迅速な凍結後の、凍結乾燥(又は乾固)を行い、上記酵素をこの形態で保存する工程。
【0071】
また、上記方法は、重合連鎖反応のためのコントロールDNAと、特異的プライマーとを凍結乾燥の前に加えることを含むこともできる。
【0072】
安定剤の語は、NP−40(アルキル−フェノールエトキシラート)、Tween−20(ソルビタン−ポリオキシエチラートモノラウラート)、Triton−X100等の洗剤(又は界面活性剤)又はその類似物、及びデキストロース、スクロース、トレハロース等の非還元糖を意味する。
【0073】
更なる試薬は、反応混合物中に一つずつ加えてもよいし、予め混合して加えてもよく、製造業者によって上記酵素と共に供給されたもの等であり、重合反応に用いる最終濃度よりn倍高く濃縮(一般には×10)されている。
【0074】
凍結乾燥した形態で、場合によってはすぐ使用できる上記酵素は、室温にて数カ月の間維持されることができる。
【0075】
この形態の酵素であって、場合によってはその後のポリメラーゼ連鎖反応に対して特異的な試薬と組み合わせたものの凍結乾燥及び安定性は、その混合物を乾固した形態で且つ緩衝剤又は水を用いて再構成した後にすぐ使用できる形態で含む容器(チューブ、テストチューブ又はマイクロプレート)を用意することができ、場合によっては、サンプル中にDNA/RNA鋳型を含有しており、存在する場合には、該サンプルを増幅する必要がある。
【0076】
従って、この態様は、診断用途を含む本発明の全ての使用について、その後の増幅反応の標準化を可能にする。
【0077】
その上、凍結乾燥及び保存手順は、典型的及びリアルタイムPCRによる両方の鎖増幅反応に適しており、延いては定量的及び定性的なタイプの用途の両方にも適している。
【0078】
本発明の利点の一つは、使用される安定剤(セロビオース)が、上記酵素の凍結乾燥及び保存の両方に対して効果的であることであり、一方で、既知の技術の安定剤は、一般に一方の目的又は他の目的のために使用されている。この目的に使用される他の分子と適合性があるにもかかわらず、セロビオースの使用は、他の「安定化させる」分子の使用を、様々な段階で不要にする。加えて、セロビオースはトレハロースより溶解し難いので、それが、吸湿性も低く、それ故に、凍結乾燥した製品により優れた保存寿命を与えることができることも期待されている。
【0079】
その上、本発明は、本発明に従う組成物を備え、任意には再構成のための指示及びポリメラーゼ連鎖反応における上記酵素の使用を備えるDNAサンプルのPCR増幅用キットを含む。
【0080】
本発明の特に好適な実施態様は、凍結乾燥中、及び55℃以下の温度での長期間の貯蔵中に核酸ポリメラーゼを保存するため、セロビオースを使用することで構成される。
【0081】
前述の単一反応用の凍結乾燥した組成物は、数μl(2〜50、好ましくは5〜30)の最小体積での再構成後に、少なくとも1ngのDNAサンプルを増幅させるのに適している。
【0082】
また、上記凍結乾燥物は、サンプルのDNAを含有する緩衝剤中で直接再構成できる。すぐ使用できる凍結乾燥した組成物中、又は酵素の再構成の直後に加えられる反応混合物中における各種試薬の濃度は、該組成物を水又は緩衝剤を用いて適当な体積で再構成させた後、PCRによるDNA増幅に対して最適になるようにすべきであり、即ち、好ましくは、KClが20と150mMの間の濃度にあり、MgClが0.5と5mMの間の濃度にあり、標的DNAの重合反応及び増幅に対して特異的なプライマーが0.05と0.2mMの間の濃度にあり、dNTPsが50と200mMの間の濃度にある。上記酵素を凍結乾燥した形態で含有するかかるキットは、室温にて維持できる。
【0083】
本発明の他の態様は、凍結乾燥中及び55℃以下の温度での貯蔵中に、DNAポリメラーゼ、好ましくはホットスタートDNAポリメラーゼを保存するため、セロビオースを使用することに関する。
【0084】
先に述べたように、上記酵素の凍結乾燥及びその安定性は、すぐ使用できる反応混合物の形態であっても、単一用量でもバルクであっても、鎖増幅反応の条件を更に標準化することが可能である。従って、本発明の組成物の好適な使用及び本発明によって可能となる凍結乾燥プロセスは、診断キット、具体的には体液又は組織中における寄生因子の存在を決定するためのものの準備に関する。従って、特に好適なものとしては、すぐ使用できる形態の凍結乾燥又は乾固した組成物であって、上記酵素及びセロビオース並びに上述の試薬(例えば、塩及びdNTPs)に加えて、マラリア原虫(falciparum、malariae、vivax及びovale種のそれぞれについて一対)の標的DNAに対して特異的なプライマーであって、好ましくは18sRNA又はLeishamaniaの保存領域でデザインされたものを、好ましくは18sRNA又はToxoplasmaの保存領域でデザインされたプライマーと共に、好ましくは高反復領域HREでデザインされたプライマーと共に含むものであり、DNAサンプルにおいて前述の病原体を診断確認するためのものである。
【0085】
また、すぐ使用できる形態としての、それぞれの凍結乾燥した組成物は、好ましくは参照システム中で正常に発現した遺伝子のプライマー対に対応する内部増幅コントロールを含み、好ましくはヒトのベータ−グロビン遺伝子、任意には増幅用のコントロールDNA鋳型等である。
【0086】
好ましくはすぐ使用できる形態で作られた組成物中に存在する追加の成分は、好ましくは5〜20mMのトリス−HCl緩衝剤(pH8.0)中における、再構成後の最終濃度が20〜150mMにあるKClと、0.05〜0.5mMのMgClであり、任意には、濃度が0.05〜0.2mMのDNAの増幅に対して特異的なプライマー(ここで、その存在はサンプル中で検出されるのに必要とされる)と、濃度が50〜200mMのdNTPsである。
【0087】
本発明の実施は、具体的であるが非制限的な一部の例において説明される。
【実施例】
【0088】
実験パート
材料
方法. 実験パートに記載の凍結乾燥した組成物は、他に独立して示されていない限り、適当な時間に加えられる下記の特定の試薬を一般に含有する:DNAポリメラーゼ(1〜5ユニットの範囲内)、製造業者によって供給される反応緩衝剤、MgCl、dNTPs及びプライマー。
【0089】
特に、本発明について与えられる例では、反応混合物が、DNA中の2つの領域:1)マラリア原虫spp.の18sリボソームRNA遺伝子でデザインされた240bp(塩基対)の断片(標的DNA)、2)内部増幅コントロール(DNAコントロール)として使用されるヒトβ−グロビン遺伝子でデザインされた268bp断片を増幅するためのプライマーと、塩と、dNTPsとを含有する。
【0090】
凍結乾燥後、シリカゲル法によってマラリア原虫falciparumが陽性の末梢血液から抽出された約10ng(ナノグラム)のゲノムDNAを、凍結乾燥した混合物に加え、滅菌蒸留水を用いて最終体積を25μl(マイクロリットル)にした。
【0091】
94℃で2分間の初期変性後、変性(94℃で2分間)、アニーリング(55℃で30秒間)及び伸長(72℃で45秒間)からなる増幅サイクルを行った。反応を完了させるため、上述のサイクルを40回行った。
【0092】
使用した凍結乾燥手順の一つは、以下のもので構成された:
・5分で+20℃から−40℃までの勾配
・−40℃で3時間
・30分で−40℃から−10℃までの勾配
・−10℃で4時間
・15分で−10℃から+10℃までの勾配
・+10℃で2時間
・15分で+10℃から+30℃までの勾配
・+30℃で4〜8時間
【0093】
例1.DNAポリメラーゼとホットスタートポリメラーゼ間の比較
凍結乾燥プロセス後に良好なポリメラーゼ活性を維持するDNAポリメラーゼの種類を確認する目的で、我々は、市販のDNAポリメラーゼを、異なる2つの製造業者から入手できる2つのホットスタートDNAポリメラーゼと比較した。
【0094】
図1において、レーン1〜6は、会社Xからのホットスタートポリメラーゼを用いて調製された凍結乾燥したすぐ使用できる混合物を用いて増幅されたPCR産物を示す;具体的には、凍結乾燥前の反応体積は、レーン1〜3が25μl、レーン4〜6が9.1μlに相当する。レーン7〜12は、会社YからのホットスタートDNAポリメラーゼを用いて調製された凍結乾燥したすぐ使用できる混合物を用いて得られた増幅産物に相当する;具体的には、凍結乾燥前の反応体積は、レーン7〜9が25μl、レーン10〜12が7.5μlに相当する。レーン13〜15は、会社Xから得たポリメラーゼを用いて調製された凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物を用いて得られたPCR産物に相当する;その反応体積は25μlである。
【0095】
凍結乾燥前の反応混合物に安定剤を加えなかった。
【0096】
増幅産物が凍結乾燥プロセスの直後に分析された図1中に示されるように、レーン7〜12から、会社Yから得たホットスタートDNAポリメラーゼを含有する混合物は、期待された2つの増幅産物の増幅が可能でなく、一方、両方のポリメラーゼ、会社Xから得られたホットスタート及び非ホットスタート(それぞれ1〜6及び13〜15)は、凍結乾燥後のそれらのポリメラーゼ活性を維持することが分かる。
【0097】
会社Xは、その自身の反応緩衝剤内に、溶液密度を物理的に増大する物質を含んでおり、それらは、専ら総称的に安定剤として定義される。
【0098】
会社Xから得たポリメラーゼを用いて調製された、PCR用の凍結乾燥したすぐ使用できる混合物の熱安定性を評価する目的で、同一の混合物を室温及び37℃にて3週間保存した。
【0099】
写真2は、会社XのホットスタートDNAポリメラーゼを含有する増幅混合物を用いて得られた増幅産物を示す;具体的に、PCRに用いる混合物の凍結乾燥前の最終体積は、レーン1〜4が25μl、レーン5〜8が9.1μlに相当する。レーン9〜12は、会社XからのDNAポリメラーゼを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物を用いて得られた増幅産物を示す;凍結乾燥前の反応体積は25μlに相当する。前述の凍結乾燥した反応混合物を、凍結乾燥後に3週間、室温(レーン1〜3、5〜7、9〜11)又は37℃(レーン4、8及び12)にて保存した。
【0100】
その写真に示されるように、室温で3週間した後、ホットスタートDNAポリメラーゼを含有する混合物を用いて得た増幅産物(レーン1〜3及び5〜7)は、単純なDNAポリメラーゼを用いて得たもの(レーン9〜11)と比べてより強いものであることを証明する。更に、ホットスタートDNAポリメラーゼは、他のポリメラーゼと対照的に、プライマー二量体の形成を生じない。
【0101】
結論として、37℃での3週間の保存後では、ホットスタートDNAポリメラーゼが、その酵素活性を維持し(レーン4及び8)、一方、単純なDNAポリメラーゼは維持しなかった(レーン12)。
【0102】
従って、以下のことを完全に確信している:1)安定剤の使用は、凍結乾燥プロセス中、DNAポリメラーゼの酵素活性を維持するのに重要であり、2)ホットスタートDNAポリメラーゼは、通常のDNAポリメラーゼと比べて、増幅効率に適しているものの、DNAポリメラーゼの両方のカテゴリーが類似の挙動を示すため、即ちそれらは凍結乾燥のために安定剤を要するため、凍結乾燥プロセスには適していない。
【0103】
最後に、この実験では、異なる2つ体積を凍結乾燥工程前に試験したが(25及び9.1μl)、結果において変化は見られなかった。
【0104】
例2.異なるホットスタートDNAポリメラーゼ間の比較
下記の例では、異なる4社(W、X、R、Y)から得たホットスタートDNAポリメラーゼを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる混合物を調製した。それぞれは、合計19の組み合わせで、4つの反応緩衝剤と組み合わされたり、NP−40、Tween−20、スクロース等の追加の安定剤と組み合わされたりしたものである。
【0105】
図3及び4において、レーン1〜4、5〜8、9〜12及び13〜19は、会社W、X、R又はYから得た反応緩衝剤をそれぞれ含有する凍結乾燥したすぐ使用できる混合物を用いたPCRによって増幅された産物を示す。同一の図面において、レーン1、5、9及び13は、会社Wから得たホットスタートDNAポリメラーゼを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物を用いて得られた増幅産物に相当する;レーン2、6、10、14、17、18及び19は、会社Yから得たホットスタートDNAポリメラーゼを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物を用いて得られた増幅産物に相当する;レーン3、7、11及び15は、会社Xから得たホットスタートDNAポリメラーゼを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物を用いて得られた増幅産物に相当する;レーン4、8、12及び16は、会社Rから得たホットスタートDNAポリメラーゼを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物を用いて得られた増幅産物に相当する。図3及び4において、レーン17、18及び19は、それぞれが0.25%のNP−40及び0.25%のTween−20、100mMのスクロース及び0.25%のNP−40、0.25%のTween−20及び100mMのスクロースをも含有する凍結乾燥したすぐ使用できる混合物を用いて得られた増幅産物に相当する。
【0106】
図3中に示されるPCR産物は、凍結乾燥手順の完了直後に、凍結乾燥したすぐ使用できる混合物を用いて増幅された。対照的に、図4は、同一の混合物を室温で6ヶ月間保存したものの結果を示す。
【0107】
図3中に明確に示されるように、会社Xの反応緩衝剤を含有する混合物は、凍結乾燥した直後に監視したところ、4つのポリメラーゼのうち3つにおいて酵素活性を維持し、一方で、4番目のものについては、活性が部分的に維持されただけであった。
【0108】
会社W又はRの反応緩衝剤を用いて調製された混合物は、4つのポリメラーゼのうち1つの活性を維持した。最後に、会社Yから得た反応緩衝剤の存在下においては、期待された2つの断片に相当する増幅が見られなかった;残留酵素活性は、100mMのスクロースの存在下においてのみ見られた。加えて、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物を、PCRによる増幅を行う前に、室温にて6週間保存した。図4中に示されるように、会社Xの反応緩衝剤を用いて調製された凍結乾燥した混合物のみが、使用した4つのホットスタートDNAポリメラーゼのうち3つの酵素活性を維持することができた。
【0109】
これら結果は、ポリメラーゼの酵素活性を維持するため、凍結乾燥プロセス中のPCR反応混合物中に安定剤を含むことの重要性を強調する。
【0110】
例3.250mMのスクロースを含有する、PCR用の凍結乾燥したすぐ使用できる組成物の安定性
凍結乾燥したPCR反応混合物についての安定性の改善を評価する目的で、貯蔵緩衝剤中、反応緩衝剤中、又は両方の緩衝剤中における250mMのスクロースの存在の効果を最初に評価した。2つの異なる会社から得た2つの異なるホットスタートDNAポリメラーゼを評価した。
【0111】
図5及び6において、レーン1〜7及びレーン8〜21は、それぞれが会社X又はRから得たホットスタートDNAポリメラーゼを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物を用いて得られた増幅産物を示す。図5及び6において、レーン1、8及び9は、会社Xの反応緩衝剤を用いて調製された凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物を用いて得られた増幅産物に相当する;レーン2及び3並びにレーン14〜17は、会社Wの反応緩衝剤を用いて調製された凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物を用いて得られた増幅産物に相当する;レーン4及び5並びにレーン10〜13は、会社Rの反応緩衝剤を用いて調製された凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物を用いて得られた増幅産物に相当する;レーン6及び7並びにレーン18〜21は、会社Yの反応緩衝剤を用いて調製された凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物を用いて得られた増幅産物に相当する。図5及び6において、レーン3、5、7、11、15及び19は、反応緩衝剤に250mMのスクロースを加えることによって調製された凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物を用いて得られた増幅産物を示す;レーン9、12、16及び20は、貯蔵緩衝剤に250mMのスクロースを加えることによって調製された凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物を用いて得られた増幅産物を示す;レーン13、17及び21は、反応緩衝剤及び貯蔵緩衝剤に250mMのスクロースを加えることによって調製された凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物を用いて得られた増幅産物を示す。
【0112】
図5中に示される増幅産物は、凍結乾燥プロセスの完了直後に利用された凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物を用いて増幅され、一方、図6の結果は、図5のものと同一であるが、凍結乾燥したすぐ使用できる混合物を室温にて8週間保存した後のものである。
【0113】
図5中で強調されるように、貯蔵緩衝剤中ではなく反応緩衝剤中における250mMのスクロースの存在は、凍結乾燥プロセス中及びその後に酵素活性を維持するのに重要である。室温での8週間の保存後、酵素活性の維持は、半分の場合(10のうち5)において可能であっただけである(図6)。
【0114】
その結果として、スクロースは、酵素活性に対して保護作用を有するものの、長期間の保存に効果的ではないと結論を出すことができる。
【0115】
例4.異なる安定化物質を用いて調製された凍結乾燥した組成物の安定性
異なる安定剤を含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物の熱安定性を比較する目的で、二糖、多糖、炭水化物等の要素を利用した。それらは、導入部で記載したように調製された増幅混合物に加えられた。
【0116】
図7及び8において、レーン1〜5及びレーン6〜10は、それぞれが会社W又はRから得たホットスタートDNAポリメラーゼを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物を用いて得られた増幅産物を示す。図7及び8において、レーン1及び6、2及び7、3及び8、4及び9、並びに5及び10は、それぞれが、安定剤を含有しない、200mMのトレハロースを含有する、250mMのスクロースを含有する、200mMのマルトースを含有する、及び0.025%のアガロースを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物に相当する。
【0117】
図7中に示される増幅産物は、凍結乾燥プロセスの完了直後に、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物を用いて得られたものであり、一方、図8中に示される結果は、図7のものと同一であるが、凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物を37℃で1週間保存した後のものである。
【0118】
凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物中における250mMのスクロース、200mMのトレハロース、200mMのマルトース及び0.025%のアガロースの存在は、異なる2つの会社から得た異なる2つのホットスタートDNAポリメラーゼを用いることによって最初に評価された。図7中に強調されるように、凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物中におけるトレハロース、スクロース及びマルトース(それぞれレーン2及び7、3及び8並びに4及び9)の存在は、両方の酵素の酵素活性を維持できるようにするが、その作用は、会社Rから得た酵素に対しては効果が低いようである(レーン7、8及び9);これは、スクロースについて特に明らかである(レーン8)。アガロースについては、増幅バンドが見られなかった(図7、レーン5及び10)。加えて、凍結乾燥したすぐ使用できる混合物を、PCRによって処理する前に、37℃で1週間保存した。200mMのトレハロースを含有する凍結乾燥した混合物は、両方のホットスタートDNAポリメラーゼの酵素活性を完全なまま維持した(図8、レーン2及び7)一方で、250mMのスクロース及び0.025%のアガロースを用いたものは維持しなかった(図8、それぞれレーン3及び8、5及び10)。
【0119】
200mMでのマルトースは、1つのポリメラーゼの活性を維持したが(図8、レーン9)、他のものの活性については部分的に維持したのみであった。
【0120】
次に、凍結乾燥する前に反応混合物に加えられた、250mMのトレハロース、6.6%のデキストロース、200mMのセロビオース(FlukaAnalytical22150 D−(+)−セロビオース)及び6.6%のアミロペクチンの作用を上記の2つのポリメラーゼに対して評価した。
【0121】
図9及び10において、レーン1〜5及びレーン6〜10は、それぞれが会社W又はRから得たホットスタートDNAポリメラーゼを用いて調製された凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物を用いて得られた増幅産物を示す。図9及び10において、レーン1及び6、2及び7、3及び8、4及び9、5及び10は、それぞれが、安定剤を含有しない、250mMのトレハロースを含有する、6.6%のデキストロースを含有する、200mMのセロビオースを含有する又は6.6%のアミロペクチンを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物に相当する。図9中の結果は、凍結乾燥プロセスを完了した直後に処理された凍結乾燥した混合物に相当し、一方、図10中に示される結果は、先のものと同時に調製された同一の特徴を有する反応混合物に相当するものであるが、37℃で1週間保存されたものである。
【0122】
図9中に示されるように、凍結乾燥した反応混合物中にトレハロース及びセロビオースを組み入れることは、両方のホットスタートDNAポリメラーゼの酵素活性を維持した(それぞれレーン2及び7、4及び9)一方で、デキストロース及びアミロペクチンは、2つの酵素のうち1つのみを保護した(それぞれレーン3及び8、5及び10)。加えて、先のものと同時に調製された同一の特徴を有する反応混合物を、PCRによって処理する前に、37℃にて1週間保存した。250mMのトレハロース及び200mMのセロビオースを安定剤として含有する凍結乾燥した反応混合物は、両方のポリメラーゼの酵素活性を保護した(図10、それぞれレーン2及び7、4及び9)一方で、6.6%のデキストロース及び6.6%のアミロペクチンは、それを維持しなかった(図10、それぞれレーン3及び8、5及び10)。
【0123】
加えて、0.5%のアルブミン、2%のアルブミン及び3%のラクトースについても評価したが、トレハロース及びセロビオースを用いて得られた結果に匹敵する結果は得られなかった。
【0124】
従って、セロビオース及びトレハロースのみがDNAポリメラーゼに対して保護を提供すると明確に実証された。
【0125】
例5.凍結乾燥した組成物を安定化させるためのセロビオースの最適濃度の評価
DNAポリメラーゼの酵素活性を維持する際に最も効果的なセロビオース濃度を確認する目的で、導入部において記載したように、漸増濃度のセロビオースを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物を調製した。
【0126】
分析濃度は、0〜700mMのセロビオースに及ぶ。
【0127】
図11及び12において、レーン1〜13は、それぞれが0、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600及び700mMの濃度で加えられたセロビオースを含有する凍結乾燥した反応混合物を用いて得られた増幅産物を示す。
【0128】
図11の増幅産物は、凍結乾燥プロセスの完了直後に、凍結乾燥した反応混合物を用いることによって得られたものであり、一方、図12の結果は、先のものと同時に調製された同一の特徴を有する反応混合物に相当するものであるが、37℃で2週間保存されたものである。
【0129】
図11及び12中に示されるように、ポリメラーゼの酵素活性を最高に維持するセロビオース濃度は、37℃で1週間の保存の後であっても(図12)、150〜250mMの範囲内にある。
【0130】
従って、セロビオースは、150〜250mMの濃度範囲で、凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物に対して最高の安定性を提供することが実証された。
【0131】
例6.トレハロース又はセロビオースを安定剤として含有する凍結乾燥したすぐ使用できる組成物の時間安定性の評価
トレハロース又はセロビオースを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる混合物の時間安定性を確認する目的で、導入部で記載されるようにして、凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物を調製した。しかしながら、200mMのセロビオース又は200mMのトレハロースが加えられている。該混合物は、PCRによる増幅を受ける前に凍結乾燥された。
【0132】
図13において、レーン1〜5、6〜10、11及び12〜16は、それぞれが100mMのセロビオースを含有する、200mMのセロビオースを含有する、安定剤を含有しない、200mMのトレハロースを含有する混合物に相当する。
【0133】
図13中に示される増幅産物は、凍結乾燥プロセスの完了直後に、凍結乾燥した反応混合物を用いて得られたものであり、一方、図14の結果は、先のものと同時に調製された同一の特徴を有する反応混合物に相当するものであるが、37℃で2週間保存されたものである。
【0134】
図14において、レーン1〜5、6〜10、11〜15は、それぞれが100mMのセロビオース、200mMのセロビオース、又は200mMのトレハロースを含有する凍結乾燥した混合物に相当する。図15中に示される増幅産物は、それぞれが55℃にて24時間、48時間、72時間、96時間及び1週間保存された凍結乾燥した反応混合物を用いて得られた(それぞれレーン1、6及び11;2、7及び12;3、8及び13;4、9及び14;5、10及び15)。
【0135】
図15において、レーン1〜5は、55℃で24時間(レーン1及び6)、48時間(レーン2及び7)、72時間(レーン3及び8)、96時間又は1週間(レーン5及び10)の保存後の、セロビオース又はトレハロースを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物のアガロースゲル電気泳動パターンを示す。凍結乾燥したすぐ使用できる混合物は、会社Rから得た、反応緩衝剤及びホットスタートDNAポリメラーゼを含有する(レーン1〜10)。M:分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」,Promega。
【0136】
PCR産物:268bp:ヒトのベータ−グロビン遺伝子の断片;240bp:マラリア原虫spp18sRNA遺伝子の断片。
【0137】
全ての図面において、「M」は、Promega社による分子量マーカー「ベンチトップPCRマーカー」のレーンに対応しており;前述のマーカーの断片は、50bp〜1000bpの幅がある。
【0138】
図13中に示されるように、この例の凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物中に存在する安定剤は、確実にポリメラーゼ活性を維持する。また、凍結乾燥した反応混合物を、PCRで処理する前に、37℃で1週間保存した。
【0139】
このストレスにさらされた後でさえも、200mMのセロビオースを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる反応混合物(図14、レーン6〜10)中に存在するポリメラーゼは、その酵素活性を完全なまま維持し、200mMのトレハロースが加えられたものも維持した(図14、レーン11〜15)。37℃での2週間の保存後の、200mMのセロビオース(図14、レーン6〜10)又は200mMのトレハロース(図14、レーン11〜15)の場合では、酵素がそれらの活性を維持した。
【0140】
最後に、先のものと同時に調製された同一の特徴を有する反応混合物を55℃で24時間、48時間、72時間、96時間、及び1週間保存し(図15)、次いで、PCRによる増幅を受けた。
【0141】
安定剤としてトレハロースの使用(図15、レーン6〜10)は、55℃のストレス後であっても、ホットスタートDNAポリメラーゼの酵素活性の保護を可能にする。55℃での長期間の処理(48時間、72時間及び96時間)は、酵素活性が部分的に損なわれた(図15、それぞれレーン2、3及び4)。
【0142】
しかしながら、200mMのセロビオースを含有する凍結乾燥したすぐ使用できる混合物は、200mMのトレハロースを含有する混合物と安定性が同じである。従って、我々は、安定剤として、セロビオースが、トレハロースと同一の特性を有するものの、それと比べると、セルロース、植物起源の長いグルコース(糖)鎖からなる分子からの酵素加水分解システムによる産生を含む上述した利点があると主張する。該植物起源は、トレハロース産生の場合のように細菌培養物がその合成に使用される場合に常にあり得そうな細菌汚染から生じ得る核酸汚染物質の欠如を保証する。
【0143】
例7.寄生虫学の分野における診断キット用のすぐ使用できる組成物を形成するための、セロビオース安定剤の使用
寄生虫学の分野における診断キットの形成に適したすぐ使用できる凍結乾燥した混合物の調製において、ホットスタートDNAポリメラーゼ酵素の安定剤として、セロビオースを用いた。
【0144】
具体的には、調査した寄生虫それぞれについて、以下のものを含有する最終反応混合物を前もって調製した:
10mMのトリス−HCl(pH8.0)、50mMのKCl、0.25μMの順方向プライマー、0.25μMの逆方向プライマー、0.2mMのdNTPs、1.5mMのMgCl、及び2ユニットのTaqポリメラーゼ。
【0145】
マラリア原虫(falciparum、malariae、vivax及びovale種のそれぞれについて1対)のトリガー又はプライマーは、18sRNAの保存領域でデザインされた。Leishmaniaのプライマーは、18sRNAの保存領域でデザインされた。Toxoplasmaのプライマーは、高反復領域HREでデザインされた。
【0146】
調製された全ての混合物は、ヒトのベータ−グロビン遺伝子配列でデザインされたプライマー対に対応する内部コントロールを含有する。
【0147】
様々な構造の各プライマーは、0.25μMの濃度で供給された。
【0148】
例8.DNA増幅及び直接配列決定の性能の比較
増幅した、野生型(wt)DNA対照サンプル(C1)、未知のDNAサンプル(C2)、変異DNA対照サンプル(D3)及び非鋳型コントロール(N)のアガロースゲル電気泳動パターン。
【0149】
DNA増幅は、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物を用いて得られたPCR産物と、参照方法によって得られたものとを比較するために行われた。
【0150】
凍結乾燥したすぐ使用できる増幅組成物には、以下に示す成分が加えられた
プライマー順方向 0.4μM
プライマー逆方向 0.4μM
DNA 30ng
O 25μlまで
【0151】
参照方法は、以下の組成を有する
dNTPs それぞれ0.2mM
反応緩衝剤 1×
MgCl 1.5mM
プライマー順方向 0.4μM
プライマー逆方向 0.4μM
Taqポリメラーゼ 0.003U/μl
DNA 30ng
O 25μlまで
【0152】
PCR収率は、両方の系で同程度であった。増幅した産物は、2%のアガロースゲル上での電気泳動によって分析された(図16a)。
【0153】
配列決定分析の前に、各PCR産物を、マルチスクリーンHTS真空マニホールドシステム(Millipore)を用いて精製した。その精製手順は、ユニバーサル・マスター・ミックスを用いて得たPCR産物を参照方法によって得たものと比較するため、短時間で行われた。凍結乾燥形態は、高品質のPCR産物を保障し、精製工程を妨害し遅らせる場合がある通常の添加剤の存在を除去し、その後の配列決定分析に十分な量の増幅産物を生じる(図16b)。
【0154】
その結果は、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物(ユニバーサル・マスター・ミックス)が、増幅反応及びその後の配列決定分析に最適であることを示す(図17)。
【0155】
例9.蛍光染料の存在下におけるリアルタイムPCR、融解曲線分析、及び高分解能融解分析(HRM)性能の比較
凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物(ユニバーサル・マスター・ミックス)の性能は、ロータージーン6000(コルベットライフサイエンス)の使用によって評価された。この機器は、同一の分析セッションで3つの異なる適用を可能にした:蛍光二重鎖特異的染料(EvaGreen、Biotium)の存在下におけるリアルタイムPCR、融解曲線分析、及び高分解能融解分析。それぞれの適用について、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物(ユニバーサル・マスター・ミックス)を参照方法と比較した。
【0156】
3つの適用それぞれについての結果は、同様な増幅効率が示された、野生型DNA対照サンプル(C1)、未知のDNAサンプル(C2)、A>G置換を保有する変異DNAサンプル(D3)及び非鋳型コントロール(N)について示される。
【0157】
増幅分析及びリアルタイムPCRテイクオフ値の結果は、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物(ユニバーサル・マスター・ミックス)がPCR及びリアルタイムPCRに最適であることを示す。
【0158】
融解分析は、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物(ユニバーサル・マスター・ミックス)及び参照方法を用いた場合の両方で、明確な融解温度(T融解)の確認を可能にした。具体的に、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物(ユニバーサル・マスター・ミックス)を用いて得たサンプルのT融解は、89℃で確認され、一方、参照方法を用いて得たものは、87℃で確認された。更に、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物(ユニバーサル・マスター・ミックス)を用いて得られた融解プロファイルは、異なるサンプル間で完全な重なりが認められた;参照方法を用いて得た融解プロファイルでは、この状態が見られなかった。
【0159】
融解曲線分析及び高分解能融解分析の結果は、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物(ユニバーサル・マスター・ミックス)が両方の用途に最適であることを示す。
【0160】
例10.定量的蛍光(QF)PCRの性能の比較
凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物(ユニバーサル・マスター・ミックス)を用いて得られた、具体的には最も一般的な常染色体及び性染色体の異常性の出生前診断についての、QFPCRにおける、性能及び結果を、参照方法を用いて得られたものと比較して評価した。QFPCR分析は、染色体に特異的なDNAマイクロサテライトの増幅、検出及び分析を含む。蛍光標識されたマーカーに特異的なプライマーは、個々のマーカーのPCR増幅に使用され、各マーカーのコピー数は、染色体のコピー数を示す。得られたPCR産物は、自動化された遺伝子分析器を用いて分析及び定量化できる。
【0161】
QFPCRプロトコル:
参照方法の増幅ミックス 7.5μl
プライマーセット 7.5μl
DNA 50ng
O 25μlまで
【0162】
組成物
プライマーセット 7.5μl
DNA 50ng
O 25μlまで
【0163】
QFPCR産物は、ソフトウェアジーンマーカーを用いて分析された。増幅産物それぞれのピーク高さ及びピーク面積比の分析は、凍結乾燥したすぐ使用できる増幅混合物(ユニバーサル・マスター・ミックス)が定量的蛍光用途に最適であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾固又は凍結乾燥した組成物であって、適切な溶媒を用いて希釈されるのに適したものであり、凍結乾燥及び55℃以下の温度での貯蔵に耐えるために安定化された核酸重合酵素を含んでなり、前記組成物は、核酸重合酵素濃度が0.01〜250ユニットの範囲にあり、濃度が50mM(17,115g/L)〜500mM(171,15g/L)のセロビオースと、緩衝剤とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記核酸重合酵素が、Taqポリメラーゼ、ホットスタートポリメラーゼ又はそれらの活性断片からなる群から選択されるDNAポリメラーゼであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
250mMのセロビオース及び2ユニットの核酸重合酵素を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
適切な溶媒を用いて希釈されるのに適した組成物であって、凍結乾燥及び55℃以下の温度での貯蔵に耐えるために安定化された核酸重合酵素を含んでなり、前記組成物は、核酸重合酵素濃度が0.01〜250ユニットの範囲にあり、、濃度が50mM〜500mMのセロビオース、緩衝剤、dNTPs、KCl及びMgClを含むことを特徴とする組成物。
【請求項5】
前記緩衝剤が、トリスHClであることを特徴とする請求項1又は4に記載の組成物。
【請求項6】
更に、下記成分(i−iii):
i.界面活性剤及び/又は非還元糖からなる群から選択される安定剤;
ii.β−メルカプトエタノール、及びDTTからなる群から選択される還元剤;並びに
iii.少なくとも1つのプローブであって、任意に標識化されたもの
の1種以上を含むことを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
核酸の増幅のための、請求項1又は4に記載の組成物の使用。
【請求項8】
前記増幅のプロセスが、自動で行われることを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項9】
PCR、リアルタイムPCR、融解曲線分析、高分解能融解分析、配列決定、定量的蛍光PCR、多重PCR、全ゲノム増幅又は等温増幅を行うための、請求項7又は8に記載の使用。
【請求項10】
a.請求項1に記載の組成物を水中又は緩衝剤中に再構成する工程と;
b.標的DNAに対して特異的なプライマーを加える工程と;
c.核酸鋳型を加える工程と;
d.KCl、MgCl、dNTPs、任意に標識化された少なくとも1つのプローブ、還元剤、及び更なる安定剤からなる群から選択される試薬の1種以上を加える工程と
を含むことを特徴とする核酸の増幅方法。
【請求項11】
a.請求項4に記載の組成物を水中又は緩衝剤中に再構成する工程と;
b.標的DNAに対して特異的なプライマーを加える工程と;
c.核酸鋳型を加える工程と;
d.任意に標識化された少なくとも1つのプローブ、還元剤、及び更なる安定剤を任意に加える工程と
を含むことを特徴とする核酸の増幅方法。
【請求項12】
a.請求項1又は4に記載の乾固又は凍結乾燥した組成物と;
b.前記組成物を再構成するための溶媒と
を含むことを特徴とする、すぐ使用できる製品。
【請求項13】
請求項1又は4に記載の組成物を備え、任意には再構成のための指示及びポリメラーゼ連鎖反応における前記酵素の使用を備えることを特徴とするDNAサンプルのPCR増幅用キット。
【請求項14】
凍結乾燥中及び55℃以下の温度での長期間の貯蔵中に核酸ポリメラーゼを保存するためのセロビオースの使用。
【請求項15】
前記核酸ポリメラーゼがDNAポリメラーゼであることを特徴とする請求項14に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18a】
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【図18b】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2012−527226(P2012−527226A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511278(P2012−511278)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056877
【国際公開番号】WO2010/133628
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511265899)センチネル シーエイチ ソシエタ ペル アチオニ (1)
【Fターム(参考)】