説明

分子量調節用アルキルフェノールおよび特性が改良されたポリカーボネート組成物

本発明は、ポリカーボネートの分子量の調節のためのアルキルフェノールの使用、並びに前記ポリカーボネートから作られ、熱安定剤、離型剤、および光安定剤の群から選択される添加剤を含む組成物に関する。本発明は、更に成形物品の製造への前記組成物の使用並びにそれによって得られる成形物品にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートの分子量の調節へのアルキルフェノールの使用並びに熱安定剤、離型剤および光安定剤の群から選択される添加剤を有する上記ポリカーボネートの組成物、成形品の製造へのその使用並びにそれから得られる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートは、工業用熱可塑性樹脂の群に属する。これは、電気電子分野に様々な用途、例えばランプのハウジング材、および特定の機械的特性が要求される用途がある。別の広い使用分野は、光データ記憶媒体、例えば様々なCDおよびDVDフォーマット並びにブルーレイディスクおよびHD−DVD、および押出用途、例えばポリカーボネートシート、ディフューザーシートおよび別のディスプレイ用途または水筒、更に自動車分野における光学的用途、例えばグレージング、プラスチックのカバー、ディフュージングスクリーンまたはロングフィールドランプ(long field lapms)用の光伝導素子(light conductor elements)およびランプカバーである。
【0003】
良好な熱特性および機械特性、例えばビカー温度(加熱撓み温度)、ガラス転移温度および衝撃強さが上記用途にほぼ常に必ず要求される。
【0004】
ポリマーでは、上記特性が分子量に依存することが知られている。一般的に、上記特性は、分子量が増加すると増加し、極限値に近づく。しかしながら、この関連で、分子量それ自体だけでなく、分子の不均質ファクター(inhomogeneity factor)U=(Mw/Mn)−1が重要である。高い不均質ファクターは、ポリカーボネートの熱特性および機械特性に悪影響を及ぼす。同様に、分子量は、粘度(溶液および溶融粘度)に直接の影響力を有し、従って、所定の加工温度におけるポリマー溶融物の流動性に影響力を有する。しかしながら、高分子量生成物は流動しにくく、従って、非常に短いサイクル時間でしか加工できない。従って、この手段は、比較的低い分子量で必要な機械特性および加熱撓み温度も満たすのに適していない。更に、低分子量化合物およびオリゴマーがポリマーの熱特性および機械特性に悪影響を及ぼすことも知られている。
【0005】
ポリカーボネートの製造用の連鎖停止剤として、アルキルフェノール、特にp−tert−ブチルフェノール(以下、単純にBUPと云う。)が知られている(EP−A 1,249,463およびWO 2004/063249)。しかしながら、上記文献は、所定の分子量分布を有するポリカーボネートの製造へのアルキルフェノールの使用を記載していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、低分子量化合物およびオリゴマーの含量および高分子量含有物が減少させられ、すなわち、不均質ファクターU=(Mw/Mn)−1が小さくなり、同時に熱特性(ビカー温度)および機械特性(例えばノッチ付き衝撃強さ、特に低温におけるノッチ付き衝撃強さ)が改良された、所定の分子量分布を有するポリカーボネートを製造することである。
【0007】
更に、本発明の目的は、改良された加熱撓み温度およびノッチ付き衝撃強さを有する芳香族ポリカーボネート組成物を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
意外なことに、ポリカーボネートの連続製造用の、分子量および従って粘度を調節するために使用されるアルキルフェノールの群の連鎖停止剤、特にp−tert−ブチルフェノールが、GPCカーブのコース、すなわち分子量分布、に決定的な影響力を有し、従って避ける必要のある低分子量化合物およびオリゴマーの含量にも決定的な影響力を有することがわかった。分子量分布の制御された改良、すなわち狭い分布または低い不均質ファクターU=(Mw/Mn)−1、およびその調節のためのこの手段および界面法による連続法における連鎖停止剤の性質への依存性は、これまで未知であった。これは、射出成形部品または押出部品の機械性能および熱性能に関する重要な基準を示す。このようにして得られるポリカーボネートから製造される本発明によるポリカーボネート組成物並びにそれから得られる射出成形部品および押出品は、著しく改良された熱特性(ガラス転移温度Tgおよびビカー温度)および機械特性(特に低温における、靱性、鋼球押込温度(ball indentation temperature)およびノッチ付き衝撃強さ)を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ポリカーボネートのGPCカーブの比較を示すグラフ
【0010】
従って、本発明は、それぞれの分子量範囲に対して下記不均質ファクター:
平均分子量(重量平均)18,000g/mol〜22,000g/molの低粘度PCに関しては、Uは1.08〜1.18、好ましくは1.10〜1.16、
平均分子量(重量平均)22,000g/mol超〜26,000g/molの中粘度PCに関しては、Uは1.18〜1.60、好ましくは1.20〜1.55、特に好ましくは1.20〜1.50、
平均分子量(重量平均)26,000g/mol超〜40,000g/molの高粘度PCに関しては、Uは1.30〜1.75、好ましくは1.30〜1.75、特に好ましくは1.35〜1.60、特に1.35〜1.55
を有する直鎖または分枝ポリカーボネートの製造に関する連続界面法における、一般式(1)
【化1】

〔式中、R1およびR2は、互いに独立して、水素、C1〜C18−アルキル、C6〜C12−アリール、フェニル−C1〜C6−アルキルまたはナフチル−C1〜C6−アルキルであり、R1およびR2は同時に水素ではない。〕
のアルキルフェノールの使用を提供する。
【0011】
式1において、R1およびR2は、互いに独立して、好ましくは、水素または炭素原子を1〜8個、特に好ましくは1〜4個有するアルキルであり、但し、R1およびR2は同時に水素ではない。tert−ブチルフェノールまたはn−ブチルフェノールがより特に好ましく、特にp−tert−ブチルフェノールである。
【0012】
本発明との関連で、熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、ホモポリカーボネートとコポリカーボネートの両方であり、既知の方法で、ポリカーボネートは直鎖であっても分枝されていてもよい。
【0013】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネートを含む本発明の熱可塑性ポリカーボネートおよびコポリカーボネート(いずれも単純に用語ポリカーボネートにまとめる。)は、上記分子量M(重量平均Mw、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定、ポリカーボネート較正によって決定される。)を有する。分子量は数平均Mnによって記載することも可能であり、これは同様に事前のポリカーボネートの較正後のGPCによって測定される。
【0014】
従って、ポリカーボネート組成物PCの分子量分布の尺度としての不均質ファクターU=(Mw/Mn)−1は、様々な分子量範囲に関して測定されうる。
【0015】
本発明は、更に、
(A)式Iのアルキルフェノールを末端基として有する上記ポリカーボネートであって、不均質ファクターが分子量範囲に依存して上記値を有するポリカーボネート、並びに
(B)熱安定剤、離型剤および光安定剤からなる群から選択される少なくとも1種類の添加剤
を含有する組成物も提供する。
【0016】
本発明の組成物は、概して、成分(B)の添加剤を0.001〜1wt.%、好ましくは0.005〜0.8wt.%、特に好ましくは0.04〜0.5wt.%(組成物全体に対する。)含有する。
【0017】
トリス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイル−ビスホスホナイト、トリイソオクチルホスフェート、オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロプリオネート(octadecyl 3−(3,5−di−tert−butyl−4−hydroxyphenyl)proprionate)(Irganox 1076)、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト(Doverphos S−9228)、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト(ADK STAB PEP−36)またはトリフェニルホスフィンが熱安定剤として好ましく好適である。それらは単独で使用されるかまたは混合物(例えばIrganox B 900)で使用される。
【0018】
ペンタエリトリトールテトラステアレート、グリセロールモノステアレート、ステアリルステアレートまたはプロパンジオールステアレートが離型剤として好ましく好適である。それらは単独で使用されるかまたは混合物で使用される。
【0019】
ベンゾトリアゾール、トリアジン、ベンゾフェノール、シアノアクリレート、桂皮酸エステルまたはオキサルイミドが光安定剤として好ましく好適である。それらは単独で使用されるかまたは混合物で使用される。
【0020】
本発明によって使用されるポリカーボネートの製造は、原則として、既知の方法でジフェノール、炭酸誘導体および要すれば分枝剤から行われる。
【0021】
ポリカーボネート合成の方法は、一般的に知られており、多数の刊行物に記載されている。EP−A 0 517 044、WO 2006/072344、EP−A 1 609 818、WO 2006/072344およびEP−A 1 609 818およびそれらに列挙されている文献が、例えばポリカーボネートの製造に関する界面法および溶融法を記載している。
【0022】
しかしながら、非常に良好なノッチ付き衝撃強さおよび改良された加熱撓み温度を有するポリカーボネートを連続法で得るために合成中にいずれの手段を行わなければならなかったのかは先行技術から推測できない。特に、不均質ファクターUに対する連鎖停止剤の影響の徴候は知られていなかった。
【0023】
いわゆる界面法による比較的狭い分子量分布を有する芳香族ポリカーボネートまたはコポリカーボネートの製造のための連続法において、本発明によると、アルカリ性水溶液(または懸濁液)で最初に反応容器に導入されるビスフェノール(または種々のビスフェノールの混合物)の二ナトリウム塩のホスゲン化は、第2の相を形成する不活性有機溶媒または、好ましくは溶媒混合物、の存在下において行われる。主に有機相中に存在する、生成されるオリゴカーボネートは、好適な触媒を用いて縮合を受けて有機相中に溶解された所望の分子量を有するポリカーボネートを生じる。この有機相を最後に分離し、そこからポリカーボネートを様々なワークアップ工程によって、好ましくは脱蔵押出機または押出蒸発器によって、単離する。非常に良好なノッチ付き衝撃強さおよび改良された加熱撓み温度の生成物を得るための決定的な工程は、この連続プロセスを可能な最も狭いポリカーボネートの分子量分布、すなわち、低い不均質ファクター、が合成中に、特別なワークアップ、例えば沈殿またはスプレー蒸発、なしに既に得られるように行うことからなる。これは、本発明による連鎖停止剤の好適な選択によって達成され、低い不均質ファクターをもたらす。
【0024】
ポリカーボネートの製造に好適なジヒドロキシアリール化合物は、式(2)
HO−Z−OH (2)
〔式中、Zは、C原子を6〜30個有し、1以上の芳香核を含んでいてもよく、置換されていてもよく、脂肪族もしくは脂環式基またはアルキルアリールまたはヘテロ原子をブリッジメンバーとして含んでいてもよい芳香族基である。〕
のジヒドロキシアリール化合物である。
【0025】
好ましくは、式(2)中、Zは、式(3)
【化2】

〔式中、
およびRは、互いに独立して、H、C〜C18−アルキル、C〜C18−アルコキシ、ハロゲン、例えばClもしくはBr、またはそれぞれ任意に置換されていてもよいアリールもしくはアラルキル、好ましくはHまたはC〜C12−アルキル、特に好ましくはHまたはC〜C−アルキル、より特に好ましくはHまたはメチルであり、
Xは、単結合、−SO−、−CO−、−O−、−S−、C−〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデンまたはC〜C12−アリーレンであって、任意にヘテロ原子を含む別の芳香環と縮合していてもよいものである。〕
の基である。
【0026】
好ましくは、Xは、単結合、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−または−SO−であり、Xは、特に好ましくは単結合、イソプロピリデンまたは酸素である。
【0027】
本発明によって使用されるポリカーボネートの製造に好適なジフェノールは、例えばヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼン、およびそれらのアルキル化、核アルキル化および核ハロゲン化化合物である。
【0028】
好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルエタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタンおよび1,3−ビス[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼンである。
【0029】
特に好ましいジフェノールは、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(BPA)、4,4’−ジヒドロキシジフェニル(DOD)および2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンである。
【0030】
これらおよび別の好適なジフェノールは、例えばUS−A−2 999 835、3 148 172、2 991 273、3 271 367、4 982 014および2 999 846、ドイツ国公開特許1 570 703、2 063 050、2 036 052、2 211 956および3 832 396、フランス国特許明細書1 561 518、モノグラフ“H.Schnell,Chemistry and Physics of Polycarbonates,Interscience Publishers,ニューヨーク 1964年,28頁以降;102頁以降”および“D.G.Legrand,J.T.Bendler,Handbook of Polycarbonate Science and Technology,Marcel Dekker New York 2000年,72頁以降”に記載されている。
【0031】
ホモポリカーボネートの場合、1種類のジフェノールのみが使用され、コポリカーボネートの場合、2種類以上のジフェノールが使用される。使用されるジフェノールは、別のあらゆる薬品および合成に添加される補助物質と同様に、その合成、取り扱いおよび貯蔵由来の不純物で汚染されていてもよい。しかしながら、できるだけ純粋な原料を用いることが好ましい。
【0032】
NaOH、1種類以上のビスフェノールおよび水の水相がこのプロセスに使用され、ビスフェノールの合計に関するこの水溶液の濃度(ナトリウム塩として計算せずにフリーフェノールとして計算する。)は、Mwが45,000よりも大きいポリカーボネートについては、1〜30wt.%、好ましくは3〜25wt.%、特に好ましくは3〜8wt.%、Mwが45,000よりも小さいポリカーボネートについては12〜22wt.%であることが可能である。この関連で、高い濃度では、溶液を加熱することが必要である。ビスフェノールを溶解するために使用される水酸化ナトリウムは、固体として使用されても水酸化ナトリウム水溶液として使用されてもよい。水酸化ナトリウム溶液の濃度は、必要とされるビスフェノレート溶液の標的濃度に依存するが、概して、5〜25wt.%、好ましくは5〜10wt.%であるか、またはより高い濃度が選択され、この溶液は次に水で希釈される。次の希釈を伴うプロセスでは、濃度15〜75wt.%、好ましくは25〜55wt.%(要すれば加熱する。)の水酸化ナトリウム溶液を使用する。ビスフェノール1molあたりのアルカリ含量は、ビスフェノールの構造に大きく依存するが、一般的に、アルカリ0.25mol/ビスフェノール1mol〜アルカリ5.00mol/ビスフェノール1mol、好ましくはアルカリ1.5〜2.5mol/ビスフェノール1molであり、ビスフェノールAを単独のビスフェノールとして使用する場合、アルカリ1.85〜2.15molである。1種類よりも多くのビスフェノールを使用する場合、それらは共に溶解されてもよい。しかしながら、ビスフェノールを別々に最適なアルカリ相中に溶解し、これらの溶液を別々に計量添加するかまたは組み合わされた形態で反応に供給することが有利である。更に、ビスフェノールを水酸化ナトリウム溶液にではなく、追加のアルカリが供給される希ビスフェノール溶液に溶解することが有利である。溶解操作は、固体ビスフェノール(通常フレークまたは顆粒(prill)の形態)から出発しても、更に溶融ビスフェノールから出発してもよい。用いられる水酸化ナトリウムまたは水酸化ナトリウム溶液は、アマルガム法によって製造されていてもいわゆるメンブラン法(membrane process)によって製造されていてもよい。いずれの方法も長い間使用されており、当業者によく知られている。メンブラン法由来の水酸化ナトリウム溶液が好ましく使用される。
【0033】
このように製造される水相は、反応に対して不活性であり第2の相を形成するポリカーボネート用の溶媒を含有する有機相と共にホスゲン化される。
【0034】
ホスゲンの導入後または導入中に要すれば行われるビスフェノールの計量添加は、ホスゲンまたはその直接副生成物、クロロ炭酸エステル、が反応溶液に存在するまで行ってもよい。
【0035】
ポリカーボネートのビスフェノールおよびホスゲンからのアルカリ媒体中での合成は、発熱反応であり、−5℃〜100℃、好ましくは15℃〜80℃、より特に好ましくは25℃〜65℃の温度範囲で行われ、適切な場合、溶媒または溶媒混合物に依存して、加圧下で行うことが必要である。
【0036】
有機相は、1種類の溶媒を含有していても数種類の溶媒の混合物を含有していてもよく、混合物が好ましい。好適な溶媒は、塩素化炭化水素(脂肪族および/または芳香族)、好ましくは塩化メチレン、トリクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタンおよびクロロベンゼンおよびそれらの混合物である。しかしながら、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエンもしくはm/p/o−キシレン、または芳香族エーテル、例えばアニソール、を単独で、混合物でまたは塩素化炭化水素に加えてもしくは塩素化炭化水素との混合物で使用してもよい。合成の別の態様は、ポリカーボネートを溶解せずに単に膨潤させるだけの溶媒を使用する。従って、溶媒との組み合わせでポリカーボネートの非溶媒を単に使用してもよい。この場合、溶媒パートナーが第2の有機相を形成する場合、水相に可溶性の溶媒、例えばテトラヒドロフラン、1,3/1,4−ジオキサンまたは1,3−ジオキソランを更に溶媒として使用してもよい。しかしながら、塩化メチレンとクロロベンゼンとの混合比(重量比)60:40〜55:45の混合物が好ましい。
【0037】
反応混合物を生成するこれらの2つの相は、反応を加速するために混合される。これは、剪断力、すなわちポンプもしくは撹拌、によるエネルギーの導入によって、またはスタティックミキサーによってまたはノズルおよび/もしくはダイアフラムによる乱流の発生によって行われる。これらの手段の組み合わせもまた使用され、しばしば更に一連の時間または装置で繰り返し使用される。アンカー、プロペラおよびMIGスターラーなど、例えばUllmann,“Encyclopedia of Industrial Chemistry”,第5版,第B2巻,251頁以降に記載されているもの、がスターラーとして好ましく使用される。遠心ポンプ、しばしば更に多段式(2〜9段式が好ましい。)がポンプとして用いられる。使用されるノズルおよび/またはダイアフラムは、穿孔ダイアフラムまたはその位置が狭まったパイプ片または更にベンチュリノズルもしくはレフォス(Lefos)ノズルである。
【0038】
ホスゲンは、ガス状または液体の形態で導入されても溶媒に溶解されていてもよい。用いられるビスフェノールの合計に対して使用される過剰のホスゲンは、3〜100mol%、好ましくは5〜50mol%である。この場合、水相のpHは、ホスゲンの計量添加中および計量添加後は、水酸化ナトリウム溶液の1回または数回の補給または相当するビスフェノレート溶液の補給によって、アルカリの範囲に、好ましくは8.5〜12に保持されるが、触媒の添加後は、好ましくは10〜14にされるべきである。ホスゲン化中の温度は25℃〜85℃、好ましくは35℃〜65℃であり、使用される溶媒に依存して、加圧下で操作することも可能である。
【0039】
ホスゲンの計量添加は、上記有機相と水相との混合物に直接行っても、更に完全にもしくは部分的に、上記相の混合前に、2つの相の一方に行って、次に対応する別の相と混合してもよい。ホスゲンは、更に、上記2相の合成混合物のリサイクル部分ストリームに完全にまたは部分的に計量添加してもよく、この部分ストリームは好ましくは触媒の添加前にリサイクルされる。別の態様では、上記水相を、ホスゲンを含む有機相と混合し、次に1秒〜5分、好ましくは3秒〜2分のドゥエル時間(dwell time)の後に上記リサイクル部分ストリームに添加するか、または2相、上記水相とホスゲンを含む有機相と、を上記リサイクル部分ストリームに直接混合する。これらの態様のいずれにおいても、上記pH範囲が観測され、適切な場合、水酸化ナトリウム溶液1回もしくは数回の補給または相当するビスフェノレート溶液の補給によって維持される。温度範囲も同様に、必要に応じて冷却または希釈によって、維持されなければならない。
【0040】
ポリカーボネート合成は連続的に行われる。従って、反応は、ポンプ循環リアクターで行っても、チューブリアクターで行っても、撹拌タンクカスケードで行っても、それらの組み合わせで行ってもよく、既に言及した混合容器を使用することによって、合成混合物が完全に反応すると、すなわち、ホスゲンもしくはクロロ炭酸エステル由来の加水分解性塩素を含まなくなると、水相と有機相とができるだけ単純に分離することを確実にするようにする。
【0041】
分子量の調節に必要とされる式1の一官能価連鎖停止剤もしくはその混合物を、それ自体でもしくはそのクロロ炭酸エステルの形態で、ビスフェノレートと共に反応に供給するかまたはホスゲンもしくはクロロ炭酸末端基が反応混合物中に存在する限りかもしくは、連鎖停止剤として酸塩化物およびクロロ炭酸エステルの場合、生成されるポリマーの十分なフェノール性末端基が利用可能な限り、合成の所望の時点において添加する。しかしながら、好ましくは、連鎖停止剤は、ホスゲン化後に、ホスゲンがもはや存在しないが触媒がまだ計量添加されていない位置または時点において添加されるか、または触媒の前に、触媒と共にもしくは触媒と平行して計量添加される。
【0042】
用いられる連鎖停止剤の量は、用いられる特定のジフェノールのモルに対して0.5mol%〜10mol%、好ましくは1mol%〜8mol%、特に好ましくは2mol%〜6mol%である。連鎖停止剤の添加は、ホスゲン化の前、間または後に、好ましくは塩化メチレンとクロロベンゼンとの溶媒混合物中の溶液として行われうる(8〜15wt.%強度)。
【0043】
界面合成において使用される触媒は、第3級アミン、特にトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、N−エチルピペリジン、N−メチルピペリジンまたはN−i/n−プロピルピペリジン、特に好ましくはトリエチルアミンおよびN−エチルピペリジンである。触媒は、合成に単独で添加しても混合物で添加しても更に同時に連続して、要すれば更にホスゲン化の前に添加してもよいが、ホスゲンの導入後の計量添加が好ましい。触媒の計量添加は、実質的に、不活性溶媒中で、好ましくはポリカーボネート合成の不活性溶媒中で、または更に水溶液として、第3級アミンの場合、酸、好ましくは無機酸、特に塩化水素酸、とのアンモニウム塩として行われうる。数種類の触媒を使用するかまたは触媒の全量の部分量を計量添加する場合、もちろん、異なる計量添加方法を様々な位置または様々な時間において行うことも可能である。使用される触媒の総量は、用いられるビスフェノールのモルに対して、0.001〜10mol%、好ましくは0.01〜8mol%、特に好ましくは0.05〜5mol%である。
【0044】
ホスゲンの導入後、有機相と水相とを、適切な場合、分枝剤、ビスフェノレートと共に計量添加されない場合、連鎖停止剤および触媒を添加する前のある時間にわたって、完全に混合することが有利である。そのような反応後の時間がそれぞれの計量添加後に有利である。これらの撹拌後の時間は、挿入される場合、10秒〜60分、好ましくは30秒〜40分、特に好ましくは1〜15分である。従って、上記はドゥエルリアクター(dwell reactors)において行われる。
【0045】
完全に反応し、クロロ炭酸エステルを高々痕跡量(2ppm未満)しか含まない少なくとも2相の反応混合物を、相の分離のために澄ませる。この水性アルカリ相を、水相として完全にまたは部分的にポリカーボネート合成に戻すか、または廃水処理に供給する。廃水処理では溶媒および触媒含有物を分離し、リサイクルする。ワークアップの別の変形では、有機不純物、特に溶媒およびポリマー残留物、を分離した後、要すれば(例えば水酸化ナトリウム溶液の添加による)所定のpHへの調節後に、塩を分離し、例えば塩素アルカリ電気分解に供給し、水相を要すれば合成にフィードバックする。
【0046】
今度は、ポリマーを含む有機相を、アルカリ性、イオン性または触媒性のあらゆる汚染から精製しなければならない。
【0047】
要すればセトリングタンク、撹拌槽、コアレッサーまたはセパレータまたはこれらの手段の組み合わせを通るフローによってアシストされる1以上の澄まし操作−−能動混合容器または受動混合容器を使用するある状況の下でそれぞれの分離工程または分離工程のいくつかに要すれば水を計量添加することが可能である−−後であっても、有機相は、微小液滴の水性アルカリ相および触媒(通常第3級アミン)の含有物を含む。
【0048】
このアルカリ水相の粗分離後に、有機相を、希酸、例えば無機酸、カルボン酸またはヒドロキシカルボン酸および/またはスルホン酸、で1回または数回洗浄する。水性無機酸、特に塩化水素酸、亜リン酸およびリン酸またはこれらの酸の混合物が好ましい。これらの酸の濃度は、0.001〜50wt.%、好ましくは0.01〜5wt.%であるべきである。
【0049】
脱塩水または蒸留水を用いて有機相を更に繰り返し洗浄する。有機相、適切な場合、水相の一部と分散している、をセトリングタンク、撹拌槽、コアレッサーまたはセパレータまたはこれらの手段の組み合わせを用いる個々の洗浄工程の後に分離する。要すれば能動混合容器または受動混合容器を使用して洗浄工程と洗浄工程との間に洗浄水を計量添加することが可能である。
【0050】
酸、好ましくはポリマー溶液がベースとする溶媒中に溶解されている酸を、要すればこれらの洗浄工程同士の間または更に洗浄後に添加することが可能である。好ましくは、塩化水素ガスおよびリン酸または亜リン酸(これらは要すれば混合物として使用してもよい。)がここで使用される。
【0051】
最終分離操作後に、このようにして得られる精製ポリマー溶液は、水を5wt。%以下、好ましくは1wt.%未満、より特に好ましくは0.5wt.%未満含むはずである。
【0052】
ポリマーは、熱、真空または加熱共留ガス(heated entraining gas)を用いる溶媒の蒸発によって溶液から単離されうる。
【0053】
ポリマー溶液の濃縮および適切な場合、更にポリマーの単離を溶媒の留去によって、要すれば過熱および降下によって、行う場合、「フラッシュ法(flash process)」と云われ、更に“Thermische Trennverfahren”,VCH Verlagsanstalt 1988,114頁参照;この代わりに蒸発させられる溶液と共に加熱キャリアガスをスプレーする場合、「スプレー蒸発/スプレー乾燥」と云われ、一例としてVauck,“Grundoperationen chemischer Verfahrenstechnik”,Deutscher Verlag fuer Grundstoffindustrie 2000年,第11版,690頁に記載されている。これらの方法は全て特許文献およびテキストブックに記載されており、当業者によく知られている。
【0054】
熱による溶媒の除去(留去)または産業的により有効なフラッシュ法では、高度濃縮ポリマー溶融物が得られる。既知のフラッシュ法では、わずかに高い圧力のもとでポリマー溶液を常圧での沸点よりも高い温度に繰り返し加熱し、次に、常圧に対して過熱されているこの溶液を低圧(例えば常圧)下の容器に降下させる。この関連で、濃縮段階、すなわち、過熱の加熱段階を大きくなりすぎるようにせず、好ましくは2〜4段階プロセスを選択することが有利である。
【0055】
溶媒の残留物は、このようにして得られる高度濃縮ポリマー溶融物から、脱蔵押出機(devolatilization extruders)(BE−A 866 991、EP−A 0 411 510、US−A 4 980 105、DE−A 33 32 065)、薄膜式蒸発器(thin film evaporators)(EP−A 0 267 025)、流下液膜式蒸発器(falling film evaporators)または押出蒸発器を使用するかまたは摩擦圧縮(friction compacting)(EP−A 0 460 450)によって、要すれば更に共留剤、例えば窒素もしくは二酸化炭素、の添加を伴うかまたは真空を使用(EP−A 0 039 96、EP−A 0 256 003、US−A 4 423 207)して溶融物から直接、または代わりに更に次の結晶化(DE−A 34 29 960)および固相中の溶媒の残留物の加熱(US−A 3 986 269、DE−A 20 53 876)によって除去されうる。
【0056】
可能であれば、溶融物の直接紡糸および次のグラニュール化によって、または紡糸が大気中もしくは液体、通常水、の下で行われる溶融押出機を使用することによって、グラニュールを得る。押出機を使用する場合、押出機の前に、要すればスタティックミキサーを使用して、またはこの押出機におけるサイド押出機(side extruder)を通じて、溶融物に添加剤を添加してもよい。
【0057】
冷却、紡糸、グラニュール化および次のガスもしくは液体を伴うグラニュールの輸送または運搬、および次の貯蔵を、要すれば完全混合またはホモジナイズプロセスの後に、静電荷が存在する可能性があるにもかかわらず、不純物、例えばダスト、機械からの磨耗材料、エアロゾル様滑剤、および別の液体、並びに使用されるウォーターバスまたは使用される可能性のある冷却システム由来の塩、がポリマー、ストランドまたはグラニュールの表面にできるだけ付着しないように設定する。
【0058】
このようにして得られる材料を、スプレー蒸発に関して記載したように、グラニュールに加工し、要すれば添加剤と共に提供する。
【0059】
添加剤の添加は、耐用年数を長くするかもしくは色を長持ちさせる役割を果たす(安定剤)か、加工を簡単にする役割を果たす(例えば離型剤、流動助剤、帯電防止剤)か、またはポリマーの特性をあるストレスに曝すのに適合させる役割を果たす(耐衝撃性改良剤、例えばゴム;防炎加工剤、着色剤、グラスファイバー)。
【0060】
これらの添加剤をポリマー溶融物に、個々に添加しても、所望の混合物で添加しても、いくかの異なる混合物で添加してもよく、特にポリマーの単離中にまたはグラニュールの溶融後に直接いわゆる配合工程で添加する。この関連で、添加剤またはその混合物は、ポリマー溶融物に固体として、すなわちパウダーとして、または溶融物として添加されうる。別のタイプの計量添加は、添加剤または添加剤混合物のマスターバッチまたはマスターバッチ混合物の使用である。
【0061】
好適な添加剤は、例えば“Additives for Plastics Handbook,John Murphy,Elsevier,オックスフォード1999年”、“Plastics Additives Handbook,Hans Zweifel,Hanser,ミュンヘン2001年”またはWO 99/55772,15〜25頁に記載されている。
【0062】
常套の添加剤は、例えば充填剤、成分Bと異なる紫外線安定剤、成分Bと異なる熱安定剤、帯電防止剤、顔料、成分Bと異なる離型剤、流動助剤および防炎加工剤である。例えば、アルキルおよびアリールホスファイト、ホスフェートまたはホスファン、低分子量カルボン酸エステル、ハロゲン化合物、塩、チョーク、石英粉、グラスファイバー、カーボンファイバーおよびそれらの組み合わせが用いられうる。
【0063】
更に、着色剤、例えば有機染料もしくは顔料、または無機顔料、赤外線吸収剤を、単独で、混合物でまたは更に安定剤、ガラス(中空)ビーズ、無機充填剤または有機もしくは無機散乱顔料との組み合わせで添加してもよい。
【0064】
本発明によるポリカーボネートおよびポリカーボネート組成物を、常套の機械、例えば押出機または射出成形マシーンにおいて常套の方法で加工して所望の形態の物品、またはフィルムもしくはシートもしくはボトルを生じる成形品を生じてもよい。
【0065】
このようにして得られる本発明による分子量分布が狭いポリカーボネートおよびこのポリカーボネートから得られるポリカーボネート組成物は、押出品(シート、フィルムおよびそれらのラミネート、例えばカード使用およびチューブ用のもの)および成形物品(ボトル)、特に透明セクター、特に光学用途の分野における使用のためのもの、例えばシート、マルチウォールシート、自動車および建築用グレージング、拡散またはカバースクリーン、ランプカバー、プラスチックのカバースクリーン、光伝導素子または光データ記憶媒体、例えばオーディオCD、CD−R(W)、DVD、DVD−R(W)、さまざまな読み取り専用もしくは追記型および要すれば更に書換可能な態様のミニディスク、および近視野光(near−field optics)用データキャリアの製造に用いられうる。更に、E/EおよびIT分野用の物体、例えばハウジング部品またはカバーの製造にも用いられうる。別の光学用途は、レンズ、コリメーター、LEDおよびLEDイルミネーションユニット中の導光体である。
【0066】
ポリカーボネート組成物は、特にコンパウンド、ブレンドおよび熱特性および機械特性が利用される部品、例えばハウジング、E/E分野における物体、例えばプラグ、スイッチ、パネル、ソケットおよびランプカバー、自動車分野における物体、例えばソケット、ランプカバーおよびグレージング、医療分野における物体、例えばダイアライザー、コネクタおよびタップ、および包装、例えばボトルおよび容器、の製造に使用される。
【0067】
本願は、同様に、本発明によるポリマーからの押出品および成形部品または成形品も提供する。
【0068】
本発明によるポリカーボネート成形組成物の別の可能な用途は、建築、乗物および航空機の多くの部分において、およびヘルメット用のシールドとして必要とされることが知られているセイフティスクリーン(safety screens)である。ディスプレイまたは電気モーター用の押出フィルムおよび溶媒膜(solvent film)、更にスキーホイル(ski foils)の製造。下記成形品、例えば水筒、の製造(例えば米国特許第2 964 794号参照。)。透明シート、特に中空シート、例えば建物、例えばステーション、温室および照明設備、を覆うためのシートの製造。信号機のハウジングまたは交通標識の製造用。フォーム(foams)の製造用(例えば、DE−B 1 031 507参照。)。フィラメントおよびワイヤーの製造用(例えば、DE−B 1 137 167およびDE−A 1 785 137参照。)。照明用の所定量のグラスファイバーを有する半透明プラスチックとして(例えば、DE−A 1 554 020参照。)。小型精密射出成形品、例えばレンズホルダー、の製造用。このために、所定量のグラスファイバーを有するポリカーボネートであって、任意に更にMoSを総重量に対して約1〜10wt.%含んでいてもよいポリカーボネートを使用する。光学用途、例えば光学記録媒体(CD、DVD)、安全メガネまたは写真用カメラおよびフィルムカメラ用のレンズ(例えば、DE−A 2 701 173参照。)。光送信機、特に光伝導ケーブルとして(例えば、EP−A1 0 089 801参照。)導電体およびプラグハウジングおよびプラグコネクタ用の電気絶縁材料として。有機光伝導体用のキャリア材料として。ランプ、例えばサーチライト、例えばいわゆる「ヘッドランプ」または散乱光スクリーンまたはランプカバーの製造用。医療用途、例えば酸素供給器、ダイアライザー用。食料品用途、例えばボトル、テーブルウェアおよびチョコレート型用。燃料および滑剤との接触が起こりうる自動車分野における用途用。スポーツ用品、例えばスラロームポール用。家庭用品、例えばキッチンシンクおよびレターボックスハウジング用。ハウジング、例えば配電盤(electrical distribution cabinets)、電気設備、屋内電気器具用。家庭用品、電気電子機器の部品。オートバイおよび安全ヘルメットの製造用。自動車部品、例えばグレージング、ダッシュボード、車体部品および衝撃吸収剤。別の用途に関しては、例えば肥育用ステーブルドア(fattening stable door)および動物の檻。
【実施例】
【0069】
実施例1〜8
【0070】
それぞれ分子量分布が異なる様々なポリカーボネートを連続界面法において製造した。
【0071】
反応を、塩化メチレン52.2wt.%およびクロロベンゼン47.5wt.%、および水で構成される溶媒混合物を含有するエマルジョンにおいて連続的に行う。p−tert−ブチルフェノール(BUP)およびフェノール(PHE)を連鎖停止剤として用いる。N−エチルピペリジン(EPP)またはトリエチルアミン(TEA)を触媒として使用する。生成するポリカーボネート溶液を、水相を分離した後、塩化水素酸を用いる酸性条件下で洗浄し、次に中性条件下でディスク型分離器(disc separators)を用いて完全脱塩水を用いて塩がなくなるまで洗浄する。このようにして洗浄されるポリカーボネート溶液を、多段階の熱による予備蒸発においてポリカーボネートの濃度60〜70wt.%に濃縮する。残留溶媒を脱蔵押出機によって蒸発させ、生じるポリカーボネートを溶融ストランドとして得て、これをウォーターバスにおける冷却後にグラニュール化に供給した。
【0072】
下記反応条件を満たした(%で示される数字は、特に明記しない限り、重量%である。)。
・Naビスフェノレート溶液:処理量650.0kg/時間、濃度14.65%
・ホスゲン:49.2kg/時間
・溶媒:526.0kg/時間
・水酸化ナトリウム溶液1:8.34kg/時間、濃度32.0%
・水酸化ナトリウム溶液2:20.9kg/時間、濃度32.0%
・連鎖停止剤BUP:22.0kg/時間(溶媒中11%)
・触媒EPP:25.3kg/時間(溶媒中3%)
・ホスゲン/ビスフェノールA(BPA):BPAの物質量に対して119.3mol%
・EPP/BPA:BPAの物質量に対して1.6mol%
・BUP/BPA:BPAの物質量に対して3.8mol%
・反応温度:36℃
・ポリカーボネート濃度:16.5%
・V数(粘度数):ISO 1628−1に準拠して測定して25.5+/−0.5cm/g
・3段階手順
【0073】
一連の実験で、溶媒、触媒および連鎖停止剤の影響および対応する組み合わせを、その他は同一の反応条件のもとで調査した。目標粘度(またはV数)に到達するように連鎖停止剤を添加した。
【0074】
下記連続反応条件を実現した:上記反応条件のもとで実施例1〜5のポリカーボネートを製造し、実施例6〜8のポリカーボネートは100倍高い処理量で行ったこと以外実施例1〜5の製造と同様に製造した。溶媒、連鎖停止剤および触媒を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
TgをISO 11357に準拠して測定し、HDTをISO 75に準拠して測定する。溶液粘度ηrelを塩化メチレン中(ポリカーボネート0.5g/L)で25℃において測定する。窒素含量をAntek法によって測定する。ポリカーボネート中のフェノール性OHの測定(末端基測定)を四塩化チタンTiClとの錯形成の後に光度的に行う(ビスフェノールAを用いて較正。)。
【0077】
ポリカーボネート中の加水分解性塩素の測定(末端基測定)を、4−(4−ニトロベンジル)−ピリジンとの反応の後に光度的に行う(ビスフェノールAのビスクロロ炭酸エステルを用いて較正。)。
【0078】
下記熱特性および機械特性を有する表2に列挙されるポリカーボネートをここで得た。
【0079】
【表2】

【0080】
条件4および5(それぞれ連鎖停止剤としてフェノールを用いる条件)は、条件1〜3(いずれの場合も連鎖停止剤としてp−tert−ブチルフェノールを用いる。)と比較して非常に低いビカー温度(約144℃)を示す。他方、連鎖停止剤としてBUPを用いる本発明による条件は、連続操作において高いビカー温度(約147℃)を与える。
【0081】
図1(GPCカーブの比較)から分かるように、末端基としてのBUPを有するポリカーボネートは、非常に狭い分子量分布を示す(不均質性U=1.26)。この関連で、別の「狭い」カーブのコースが低い分子量Mと高い分子量Mの領域において見られる。このことは、図1中に矢印によって示される。
【0082】
実施例6〜8
【0083】
実施例6〜8のポリカーボネートの製造を、100倍高い処理量を用いること以外、実施例1〜5の製造と同様に行った。
実施例6:PC1(本発明による)−PC2(比較)
実施例7:PC3(本発明による)−PC4(比較)
実施例8:PC5(本発明による)−PC6(比較)
【0084】
結果を表3にまとめる。
【0085】
【表3】

【0086】
本発明によって製造されるポリカーボネートが低温において比較のポリカーボネートよりも非常に良好なノッチ付き衝撃強さを有することが分かった。
【0087】
実施例9:
【0088】
ポリカーボネート組成物の製造への実施例6由来のポリカーボネートの使用。
【0089】
PC1(連鎖停止剤としてBUP)およびPC2(連鎖停止剤としてPHE)を二軸押出機において混合し、熱安定剤としてトリフェニルホスフィン0.025wt.%および離型剤としてペンタエリトリトールテトラステアレート0.4wt.%と共にコンパウンドに配合した。
【0090】
上記コンパウンドは、表4に示される値を示した。
【0091】
【表4】

【0092】
PC1を含有する本発明による組成物がPC2を含有する組成物と比較して高いビカー温度と高い鋼球押込温度(BIT)の両方を有することがはっきりと分かる。
【0093】
実施例10:
【0094】
PC9(比較):
分枝ポリカーボネートを、連鎖停止剤としてのフェノールおよび更に分枝剤としてのイサチンビスクレゾール(IBC)0.3wt.%を用いて実施例4と同様に製造した。この相対溶液粘度は1.31であった。
【0095】
PC10(本発明による):
分枝ポリカーボネートを、連鎖停止剤としてのBUPおよび更に分枝剤としてのIBC 0.3wt.%を用いて実施例6と同様に製造した。この相対溶液粘度は1.31であった。
【0096】
試験結果PC9:
ビカー温度149.6℃
HDT−A:128.2℃
HDT−B:142.0℃
【0097】
試験結果PC10:
ビカー温度152.4℃
HDT−A:130.2℃
HDT−B:144.7℃
【0098】
本発明によるポリカーボネートPC10は、いずれの場合もPC9よりも高い加熱撓み温度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

〔式中、
R1およびR2は、互いに独立して、水素、C1〜C18−アルキル、C6〜C12−アリール、フェニル−C1〜C6−アルキルまたはナフチル−C1〜C6−アルキルであり、R1およびR2は同時に水素ではない。〕
のアルキルフェノールの、所定の不均質ファクターを有する直鎖または分枝ポリカーボネートの製造のための連続界面法における使用であって、それぞれの分子量範囲に対する不均質ファクターが
平均分子量(重量平均)18,000〜22,000g/molの低粘度ポリカーボネートに関して、Uが1.08〜1.18であり、
平均分子量(重量平均)22,000〜26,000g/molの中粘度ポリカーボネートに関して、Uが1.18〜1.60であり、
平均分子量(重量平均)26,000〜40,000g/molの高粘度ポリカーボネートに関して、Uが1.30〜1.75である、
使用。
【請求項2】
平均分子量(重量平均)が18,000〜22,000g/molの低粘度ポリカーボネートに関して、不均質ファクターUが1.10〜1.16である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
平均分子量(重量平均)が22,000〜26,000g/molの中粘度ポリカーボネートに関して、不均質ファクターUが1.20〜1.50である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
平均分子量(重量平均)が26,000〜40,000g/molの高粘度ポリカーボネートに関して、不均質ファクターUが1.35〜1.60である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
平均分子量(重量平均)が22,000〜26,000g/molの中粘度ポリカーボネートに関して、不均質ファクターUが1.20〜1.50である、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
平均分子量(重量平均)が26,000〜40,000g/molの高粘度ポリカーボネートに関して、不均質ファクターUが1.35〜1.55である、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
該式(1)の化合物がp−tert−ブチルフェノールまたはn−ブチルフェノールである、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
(A) 請求項1に記載の式(I)のアルキルフェノールを末端基として有するポリカーボネートであって、不均質ファクターが分子量範囲に依存して下記値
平均分子量(重量平均)18,000〜20,000g/molの低粘度ポリカーボネートに関して、Uが1.08〜1.18であり、
平均分子量(重量平均)22,000〜26,000g/molの中粘度ポリカーボネートに関して、Uが1.18〜1.60であり、
平均分子量(重量平均)26,000〜40,000g/molの高粘度ポリカーボネートに関して、Uが1.30〜1.75である、
を有する、ポリカーボネート、
(B) 熱安定剤、離型剤および光安定剤からなる群から選択される少なくとも1種類の添加剤
を含有する組成物。
【請求項9】
0.001〜1wt.%(組成物全体に対する。)含有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
0.005〜0.8wt.%(組成物全体に対する。)含有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
該熱安定剤、離型剤および光安定剤が、トリス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイル−ビスホスホナイト、トリイソオクチルホスフェート、ペンタエリトリトールテトラステアレート、グリセロールモノステアレート、ステアリルステアレート、プロパンジオールステアレート、オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロプリオネート、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、トリフェニルホスフィン、ベンゾトリアゾール、トリアジン、ベンゾフェノール、シアノアクリレート、桂皮酸エステルおよびオキサルイミドからなる群の少なくとも1種類から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
トリフェニルホスフィンおよびペンタエリトリトールテトラステアレートを含有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
コンパウンドおよびブレンドの製造への請求項8に記載の組成物の使用。
【請求項14】
成形品の製造への請求項8に記載の組成物の使用。
【請求項15】
請求項8に記載の組成物から得られる成形品。

【図1】
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【公表番号】特表2011−511869(P2011−511869A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546235(P2010−546235)
【出願日】平成21年1月31日(2009.1.31)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000646
【国際公開番号】WO2009/100828
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】