説明

分岐コネクタ

【課題】 プリント基板を使用して、2本の電気伝送路を該プリント基板の両面上にそれぞれ1本ずつ形成することにより、電気伝送路の電気特性を安定化させるとともに小型化を図ることが可能な分岐コネクタを提供することを目的とする。
【解決手段】 分岐コネクタ1は、電線側コネクタ10と接続回路側コネクタ20とを備えている。接続回路側コネクタ20のプリント基板30には、表面及び裏面にそれぞれ1本ずつ、電気信号の伝送路である電気伝送路42(42a及び42b)が複数の分岐接続先をつなぐように配線パターンとして形成されている。プリント基板30の表面に形成された電気伝送路42aと、プリント基板30の裏面に形成された電気伝送路42bとは、プリント基板30を介して互いに平行に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号の分岐接続を行うため、例えば、車両の信号線の終端接続等に用いられる分岐コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
分岐コネクタは、例えば、電線接続用コネクタに使用される。接続用コネクタは、例えば、接続すべき電線の端部に取り付けられる複数の雌端子をハウジング内に組み込んだ電線側コネクタと、該雌端子に対応する雄端子を所定の接続パターンに接続した状態でケース内に組み込んだ分岐コネクタを使用した接続回路側コネクタとから構成され、電線側コネクタと接続回路側コネクタとを嵌合することにより、電線側コネクタに端部を接続された複数本の電線を一括して所定の接続パターンに接続することができるような構造になっている。
【0003】
従来、例えば、車載通信における分岐コネクタの構造は、バスバータイプの構造であり、近年の車載通信の高速化に伴い、制御信号、情報信号等の電気信号の波形歪が問題となっていた。この問題を解決するために、波形歪を抑制するため、電子部品(抵抗、コンデンサ等)を用いたフィルタ回路を挿入する必要があり、様々な分岐コネクタの構成が提案されている。
【0004】
例えば、バスバータイプの構造では、フィルタ回路を実装することが容易ではないことから、接続パターンが形成されているプリント基板上に、電子部品を実装してフィルタ回路を構成する分岐コネクタも提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−160938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の分岐コネクタにおいては、例えば、差動伝送路のような2本の電気伝送路をプリント基板上に形成する場合、プリント基板の一方の面のみを使用して、該一方の面上に並行する2本の電気伝送路を形成し、並行する2本の電気伝送路の間あるいは各電気伝送路の外側に、電子部品を実装していた。そのため、2本の電気伝送路の間に電子部品を実装する場合は、並行形状が崩れ、特性インピーダンス等の電気特性の変動を引き起こす可能性があった。
【0007】
また、各電気伝送路の外側に電子部品を実装する場合は、電気伝送路自体の電気特性の変動はないが、該電気伝送路に接続される例えばツイストペア線の2本の電線の間隔が広がり、ツイストペア線側の電気特性の変動を引き起こし、通信品質を悪化させる可能性もあった。また、後者の場合、ツイストペア線が接続される電線側コネクタが大型化してしまうという問題もあった。
【0008】
そこで、本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、プリント基板を使用して、2本の電気伝送路を該プリント基板の両面上にそれぞれ1本ずつ形成することにより、電気伝送路の電気特性を安定化させるとともに小型化を図ることが可能な分岐コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した従来の問題点を解決すべく下記の発明を提供する。
本発明の第1の態様にかかる分岐コネクタは、電気信号の分岐接続を行う分岐コネクタであって、分岐接続を行う2本の電気伝送路がそれぞれ1本ずつ表面及び裏面に形成され、複数の雄端子を表面に立設したプリント基板と、前記プリント基板の表面及び裏面に実装され、当該プリント基板の前記雄端子と当該プリント基板の前記電気伝送路とに電気的に接続する、当該電気伝送路と当該雄端子との間の電気信号の波形歪を抑制する電子部品と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第1の態様にかかる分岐コネクタの前記プリント基板の表面及び裏面のそれぞれの面において、前記雄端子に電気的に接続するランドの中心と、当該ランドに電気的に接続する前記電気伝送路との間の伝送距離が、すべての分岐接続先に対して略一定であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第2の態様にかかる分岐コネクタにおいて、前記分岐接続先毎にペアとなる前記プリント基板の表面の前記伝送距離と当該プリント基板の裏面の前記伝送距離が略一定であることを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第2または3の態様にかかる分岐コネクタにおいて、前記プリント基板の表面及び裏面のそれぞれの面において、隣接する前記ランド間隔が略一定であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第2乃至4のいずれか1つの態様にかかる分岐コネクタにおいて、同一の前記電気伝送路と電気的に接続されるすべての前記ランドが、当該電気伝送路の一方側に配置され、更に、前記分岐接続先毎にペアとなる2本の前記雄端子が、前記プリント基板の表面及び裏面に形成された2本の前記電気伝送路を挟んで互いに反対側に配置されるように、当該雄端子に電気的に接続する前記ランドが配置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第6の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第2乃至4のいずれか1つの態様にかかる分岐コネクタにおいて、前記プリント基板の表面及び裏面に形成された前記電気伝送路の一方側に、すべての前記雄端子に電気的に接続する前記ランドが配置され、前記分岐接続先毎にペアとなる2本の前記雄端子が互いに隣接するように、当該雄端子に電気的に接続する前記ランドが配置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第7の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第1乃至6のいずれか1つの態様にかかる分岐コネクタにおいて、前記雄端子に電気的に接続するランドが、当該雄端子に電気的に接続する前記電子部品の一方の端部のランドを兼ねていることを特徴とする。
【0016】
本発明の第8の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第1乃至7のいずれか1つの態様にかかる分岐コネクタにおいて、前記雄端子に電気的に接続するランドが、前記雄端子に隣接しかつ当該ランドとは直接電気的に接続していない前記電子部品との干渉を防止する形状を有していることを特徴とする。
【0017】
本発明の第9の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第1乃至8のいずれか1つの態様にかかる分岐コネクタを、車載ネットワーク通信の終端接続部として用いることを特徴とする。
【0018】
本発明の第10の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第1乃至9のいずれか1つの態様にかかる分岐コネクタを、車両の通信規格プロトコルであるFlex Rayを適用した信号線の終端接続部として用いることを特徴とする。
【0019】
本発明の第11の態様にかかる分岐コネクタは、上記の本発明の第1乃至10のいずれか1つの態様にかかる分岐コネクタにおいて、前記電気信号が、差動信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の分岐コネクタは、プリント基板を用いることにより、容易に電子部品を実装することができ、電気信号の波形歪を抑制することができる。また、プリント基板の両面にそれぞれ1本ずつ電気伝送路を形成することにより、2本の電気伝送路の間に電子部品が実装されることがないため、電気伝送路の電気特性を安定化させることができる。また、プリント基板の両面にそれぞれ1本ずつ電気伝送路を形成することにより、プリント基板の片面に電気伝送路を形成する場合に比較して、プリント基板の一面から透視した電気伝送路の形成領域が小さくなり、分岐コネクタ全体を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタを説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20の一例の概略側面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20の一例の表面側の概略平面図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20の一例の裏面側の概略平面図である。
【図5】(a)は、電子部品を実装するために設けられたレジスト層を説明するための分岐コネクタ20の部分断面図であり、(b)分岐コネクタ20の部分平面図である。
【図6】プリント基板30に実装された電子部品及びランドを説明するための拡大平面図である
【図7】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ220の一例の概略側面図である。
【図8】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ220の一例の表面側の概略平面図である。
【図9】本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ220の一例の裏面側の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本実施の形態における記述は、本発明にかかる分岐コネクタの一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における分岐コネクタの細部構成等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0023】
まず、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタについて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタを説明するための図である。図1に示すように、例えば、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20は、電線同士を接続するときに使用する電線側コネクタ11と接続回路側コネクタ14とを備えた電線接続用コネクタ1に使用される。
【0024】
電線側コネクタ11は、電線用単層ユニット12を複数層積層したものである。また、電線用単層ユニット12は、例えば成形性に優れたポリプロピレン等の材料で形成された扁平ハウジング内に、例えばツイストペア線等の差動伝送のような電気信号送信を行う電線に接続される雌端子を平面的に配列したものである。尚、符号13はカバー部材である。
【0025】
接続回路側コネクタ14は、電線側コネクタ11を収納する、例えば成形性に優れたポリプロピレン等の材料で形成されたアッパーケース15と、プリント基板30を備えた分岐コネクタ20と、アッパーケース15と協働して分岐コネクタ20を挟みこむ、例えば成形性に優れたポリプロピレン等の材料で形成されたロアケース16と、を備えている。
【0026】
分岐コネクタ20は、電気信号の分岐接続を行うための所定の接続パターン(電気伝送路)を表面及び裏面に形成したプリント基板30と、プリント基板30の表面に立設した電線側コネクタ11の雌端子と嵌合する複数の雄端子32と、を備えている。尚、プリント基板30の表面とはアッパーケース15側の面であり、プリント基板30の裏面とはロアケース16側の面である。また、プリント基板30の表面に立設した雄端子32は、プリント基板30の表面に対して垂直をなすように固定されている。
【0027】
上述したように本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20を備えた電線接続用コネクタ1は、電線側コネクタ11と接続回路側コネクタ14とを嵌合させることによって、即ち、電線側コネクタ11の雌端子と接続回路側コネクタ14の雄端子32とを嵌合させることによって、例えば、ツイストペア線等の差動伝送のような電気信号送信を行う電線を、電気信号の分岐接続を行う所定の接続パターン(電気伝送路)に一括して接続することができる。
【0028】
次に、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20の一例について、図2乃至図6を参照して説明する。
【0029】
図2は、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20の一例の概略側面図である。また、図3は、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20の一例の表面側の概略平面図であり、図4は、その分岐コネクタ20の裏面側の概略平面図である。また、図5は、電子部品を実装するために設けられたレジスト層を説明するための図で、(a)は、分岐コネクタ20の部分断面図であり、(b)分岐コネクタ20の部分平面図である。また、図6は、プリント基板30に実装された電子部品及びランドを説明するための拡大平面図である。尚、本明細書では、電気伝送路の分岐接続先数が5つの場合を例に挙げて説明する。
【0030】
図2乃至図6に示すように、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20において、プリント基板30には、表面及び裏面にそれぞれ1本ずつ、電気信号の伝送路である電気伝送路42(42a及び42b)が複数の分岐接続先をつなぐように配線パターンとして形成されている。プリント基板30の表面に形成された電気伝送路42aと、プリント基板30の裏面に形成された電気伝送路42bとは、プリント基板30を介して互いに平行に形成されている。ここで、プリント基板30を介して互いに平行とは、電気伝送路42aの幅中心位置と電気伝送路42bの幅中心位置との間の距離が、長手方向の任意の位置で略同一であることをいう。従って、電気伝送路は直線状であっても蛇行していても良い。
【0031】
電気信号を伝送する平行な2本の電気伝送路42a及び42bをプリント基板30の表面及び裏面にそれぞれ形成することにより、2本の電気伝送路42a及び42bの間に電子部品が実装されることがないため、電気伝送路42a及び42bの電気特性を安定化させることができる。特に、電気伝送路42a及び42bが差動信号を伝送する差動伝送路である場合に、信頼性の高い通信を行うことができる。
【0032】
また、電気伝送路42a及び42bに対応する形成領域が、プリント基板30の一面(例えば表面)から透視したときに、電気伝送路42a及び42bの一部がプリント基板30を介して重なり合うように形成することできる。その結果、プリント基板の表面に平行な2本の電気伝送路を形成する場合と比較して、プリント基板30全体を小型化することができる。その結果、分岐コネクタ20全体を小型化することができる。
【0033】
また、プリント基板30全体を小型化することにより、プリント基板30の表面に立設した雄端子32に嵌合する雌端子を備えた電線側コネクタ10も小型化することができ、例えば、図1に示すような電線接続用コネクタ1全体を小型化することもできる。
【0034】
また、プリント基板30には、電気伝送路42a及び42bのそれぞれの分岐接続先数に対応した本数の雄端子32(32a及び32b)が表面に立設している。即ち、電子部品50(図6参照)を介して電気伝送路42aに電気的に接続する5本の雄端子32aと、電子部品50を介して電気伝送路42bに電気的に接続する5本の雄端子32bとが、表面に立設している。また、プリント基板30には、5本の雄端子32aとそれぞれを電気的に接続した5つの基端部34が表面に、5本の雄端子32bとそれぞれを電気的に接続した5つの基端部34が裏面に設けられている。
【0035】
また、プリント基板30には、表面及び裏面に複数のランド40a〜40dが設けられている。尚、プリント基板30の表面のランド40a及び裏面のランド40cは、同一のスルーホールの両端に位置し、プリント基板30の表面のランド40d及び裏面のランド40bは、同一のスルーホールの両端に位置する。また、ランド40a及び40bは、電気伝送路42a及び42bに直接電気的に接続されるランドであり、ランド40c及び40dは、電気伝送路42a及び42bに直接電気的に接続されないランドである。ここで、直接電気的に接続するとは、他のランドや電気伝送路を介さずに電気的に接続することである。
【0036】
ランド40aは、該ランド40aの中心部に基端部34が位置するように設けられ、基端部34を介して雄端子32aに電気的に接続されている。また、ランド40bは、該ランド40bの中心部に基端部34が位置するように設けられ、基端部34を介して雄端子32bに電気的に接続されている。
【0037】
更に、すべてのランド40aは、各ランド40aの中心(スルーホールの中心)と電気伝送路42aとの間の伝送距離Laが略一定となるように設けられている。また、すべてのランド40bは、各ランド40bの中心(スルーホールの中心)と電気伝送路42bとの間の伝送距離Lbが略一定となるように設けられている。更に、分岐接続先毎にペアとなる伝送距離Laと伝送距離Lbとは同じ距離(La=Lb)であることが好ましい。また、更に、隣接するランド40a同士の間隔Waが略一定で、隣接するランド40b同士の間隔Wbが略一定となるように設けされていることが好ましい。更に、間隔Waと間隔Wbとは同じ間隔(Wa=Wb)であることが好ましい。
【0038】
また、すべてのランド40aは電気伝送路42aの−Y側に、すべてのランド40bは電気伝送路42bの+Y側になるように設けられている。更に、分岐接続先毎にペアとなる、雄端子32a(131a〜135a)及び32b(131b〜135b)が、2本の電気伝送路42a及び42bを挟んで互いに反対側に配置されるように、該雄端子32a(131a〜135a)及び32b(131b〜135b)に電気的に接続されているランド40a(141a〜145a)及び40b(141b〜145b)が配置されている。また、分岐接続先毎にペアとなる雄端子32a(131a〜135a)及び32b(131b〜135b)に電気的に接続されているランド40a(141a〜145a)及び40b(141b〜145b)のX方向の位置は、略同じである。
【0039】
プリント基板30に実装される電子部品50は、抵抗51及びインダクタンス52であり、すべての雄端子32a(131a〜135a)及び32b(131b〜135b)のそれぞれに対応して、抵抗51及びインダクタンス52の1組がそれぞれ実装されている。
【0040】
例えば、雄端子131aの場合においては、抵抗51及びインダクタンス52の一端が雄端子131aの基端部34と電気的に接続されているランド141aに電気的に接続され、抵抗51及びインダクタンス52の他端が電気伝送路42aに電気的に接続されることにより、電子部品50である抵抗51及びインダクタンス52が並列回路を構成し、雄端子131aと電気伝送路42aとの間の制御信号や情報信号等の電気信号の波形歪を抑制している。
【0041】
尚、雄端子131a以外の雄端子32a(132a〜135a)及び32b(131b〜135b)の場合も、雄端子131aと同様な構成になり、電子部品50である抵抗51及びインダクタンス52が、雄端子131a以外の雄端子32a(132a〜135a)及び32b(131b〜135b)と、電気伝送路42a及び42bとの間の制御信号や情報信号等の電気信号の波形歪を抑制している。
【0042】
電子部品50は、半田付け等により容易にプリント基板30に実装することができる。半田付けによって電子部品50をプリント基板30に実装する場合、図5(a)及び(b)に示すように、プリント基板30への電子部品50の実装に際しては、電子部品50を半田付けするのに必要な電気伝送路42aの最小領域72を実装必要領域としたとき、実装必要領域72以外の電気伝送路42aの領域をレジスト層60で覆い、半田付けの影響を受けないようにしても良い。尚、電気伝送路42bの場合も上述した電気伝送路42aと同様に、実装必要領域72以外の電気伝送路42bの領域をレジスト層60で覆い、半田付けの影響を受けないようにする。
【0043】
電子部品50と電気的に接続するランド40a及び40bは、図6に示すように、+Y方向側の辺が長辺で、長辺に対向する−Y方向側の辺が短辺となる異型の台形形状を有しており、ランド40a及び40bの中心部に、雄端子32aの基端部34及び雄端子32bの基端部34が位置している。
【0044】
即ち、各雄端子32a及び32bと電気的に接続する各ランド40a及び40bが、各雄端子32a及び32bに隣接しかつ各ランド40a及び40bと直接電気的に接続していない電子部品50との干渉を防止する形状を有している。例えば、ランド143aの場合、雄端子133aと電気的に接続するランド143aが、雄端子133aに隣接しかつランド143aと直接電気的に接続していない電子部品50、即ち、ランド142a及び144aと直接電気的に接続している電子部品50との干渉を防止する形状を有している。
【0045】
また、各雄端子32a及び32bと電気的に接続する各ランド40a及び40bは、各電子部品50の一端のランド、即ち、各抵抗51及び各インダクタンス52の一端のランドを兼ねている。これにより、各電子部品50の一端のランドが各雄端子32a及び32bと電気的に接続する各ランド40a及び40と一体化するので、各雄端子32a及び32bと各電子部品50との間の距離が短くなり、電子部品50によるノイズ除去の効果を向上させることができる。また、一体化によりランド全体の面積が小さくなることからプリント基板30全体の小型化を更に図ることができる。即ち、分岐コネクタ20の小型化を更に図ることができる。
【0046】
また、各雄端子32a及び32bと電気的に接続する各ランド40a及び40bが、各雄端子32a及び32bに隣接しかつ各ランド40a及び40bと直接電気的に接続していない電子部品50との干渉を防止する形状を有しているので、各雄端子32a及び32bが隣接する電子部品50に対してノイズの影響を与えることを防止するとともに、プリント基板30全体の小型化を更に図ることができる。
【0047】
尚、図2乃至図6において、各雄端子32a及び32bと電気的に接続する各ランド40a及び40bは、各電子部品50の一端のランドと一体化した形状であるが、各雄端子32a及び32bと電気的に接続する各ランド40a及び40bと各電子部品50の一端のランドとが別のランドであっても良く、上述したように電気信号を伝送する平行な2本の電気伝送路42a及び42bをプリント基板30の表面及び裏面にそれぞれ形成することにより、プリント基板30全体の小型化を図ることはできる。
【0048】
次に、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20の変形例である分岐コネクタ220について、図7乃至図9を参照して説明する。
【0049】
図7は、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ220の一例の概略側面図である。また、図8は、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ220の一例の表面側の概略平面図であり、図9は、その分岐コネクタ220の裏面側の概略平面図である。
【0050】
図2乃至図5に示した分岐コネクタ20と図7乃至図9に示した分岐コネクタ220との相違点について説明する。分岐コネクタ20は、プリント基板30において、すべてのランド40aは電気伝送路42aの−Y側に、すべてのランド40bは電気伝送路42bの+Y側になるように設けられている。更に、分岐接続先毎にペアとなる雄端子32a(131a〜135a)及び32b(131b〜135b)が、2本の電気伝送路42a及び42bを挟んで互いに反対側に配置されるように、該雄端子32a(131a〜135a)及び32b(131b〜135b)に電気的に接続されているランド40a(141a〜145a)及び40b(141b〜145b)が配置されている。また、分岐接続先毎にペアとなる雄端子32a(131a〜135a)及び32b(131b〜135b)に電気的に接続されているランド40a(141a〜145a)及び40b(141b〜145b)のX方向の位置は、略同じである。
【0051】
一方、分岐コネクタ220は、プリント基板230において、2本の電気伝送路242a及び242bの一方の側(図では−Y側)に、すべてのランド240a及び240bが設けられ、かつ、分岐接続先毎にペアとなる雄端子232a及び232bが互いに隣接するように、該雄端子232a及び232bに電気的に接続されているランド240a及び240bが設けられている。また、隣接する雄端子232a及び232bの間隔Wが略一定となるように設けられ、更に、ランド240a及び240bのY方向の位置が略同じになるように設けられている。
【0052】
尚、プリント基板230の表面のランド240a及び裏面のランド240cは、同一のスルーホールの両端に位置し、プリント基板230の表面のランド240d及び裏面のランド240bは、同一のスルーホールの両端に位置する。また、ランド240a及び240bは、電気伝送路242a及び242bに電気的に接続されるランドであり、ランド240c及び240bは、電気伝送路242a及び242bに電気的に接続されないランドである。
【0053】
また、半田付けによって電子部品50をプリント基板230に実装する場合、図5(a)及び(b)に示したプリント基板30の場合と同様に、電子部品50を半田付けするのに必要な電気伝送路242a及び242bの最小領域を実装必要領域としたとき、実装必要領域以外の電気伝送路242a及び242bの領域をレジスト層60で覆い、半田付けの影響を受けないようにしても良い。
【0054】
以上のことから、分岐コネクタ220の場合も、分岐コネクタ20の場合と同じような効果を得ることができる。また、分岐コネクタ20のプリント基板30の形状と比較すると、分岐コネクタ220のプリント基板230の形状は、Y方向に狭く、かつ、X方向に広い形状となる。そのため、X方向によりコンパクトな形状の分岐コネクタを使用する場合は、分岐コネクタ20を用いた方が好ましく、Y方向によりコンパクトな形状の分岐コネクタを使用する場合は、分岐コネクタ220を用いた方が好ましい。
【0055】
上述した本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ20及び220は、制御信号や情報信号等の電気信号の信頼性を必要とする、車両の通信プロトコルであるCAN等を適用した車載ネットワーク通信の終端接続部として用いことにより、車載ネットワーク通信のより高い信頼性を得ることができる。
【0056】
特に、次世代の自動車としてより安全性や快適性を要求されていることに伴う車両の制御システムのデータ量の増加や複雑化に対応する高速でかつ信頼性の高いネットワークを構築するための車両の通信プロトコルであるFlex Rayを適用した信号線の終端接続部として、本発明の実施形態にかかる分岐コネクタ1を用いることにより、車両の電子機器や電気機器間及び制御コントローラとの通信のより高い信頼性を得ることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 : 電線接続用コネクタ
11 : 電線側コネクタ
12 : 電線用単層ユニット
13 : カバー部材
14 : 接続回路側コネクタ
15 : アッパーケース
16 : ロアケース
20,220 : 分岐コネクタ
30,230 : プリント基板
32,32a,32b,232a,232b : 雄端子
34 : 基端部
40a,40b,40c,40d,240a,240b,240c,240d : ランド
42,42a,42b,242a,242b : 電気伝送路
50 : 電子部品
51 : 抵抗
52 : インダクタンス
60 : レジスト層
72 : 実装必要領域




【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号の分岐接続を行う分岐コネクタであって、
分岐接続を行う2本の電気伝送路がそれぞれ1本ずつ表面及び裏面に形成され、複数の雄端子を表面に立設したプリント基板と、
前記プリント基板の表面及び裏面に実装され、当該プリント基板の前記雄端子と当該プリント基板の前記電気伝送路とに電気的に接続する、当該電気伝送路と当該雄端子との間の電気信号の波形歪を抑制する電子部品と、
を備えていることを特徴とする分岐コネクタ。
【請求項2】
前記プリント基板の表面及び裏面のそれぞれの面において、前記雄端子に電気的に接続するランドの中心と、当該ランドに電気的に接続する前記電気伝送路との間の伝送距離が、すべての分岐接続先に対して略一定であることを特徴とする請求項1に記載の分岐コネクタ。
【請求項3】
前記分岐接続先毎にペアとなる前記プリント基板の表面の前記伝送距離と当該プリント基板の裏面の前記伝送距離が略一定であることを特徴とする請求項2に記載の分岐コネクタ。
【請求項4】
前記プリント基板の表面及び裏面のそれぞれの面において、隣接する前記ランド間隔が略一定であることを特徴とする請求項2または3に記載の分岐コネクタ。
【請求項5】
同一の前記電気伝送路と電気的に接続されるすべての前記ランドが、当該電気伝送路の一方側に配置され、更に、前記分岐接続先毎にペアとなる2本の前記雄端子が、前記プリント基板の表面及び裏面に形成された2本の前記電気伝送路を挟んで互いに反対側に配置されるように、当該雄端子に電気的に接続する前記ランドが配置されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の分岐コネクタ。
【請求項6】
前記プリント基板の表面及び裏面に形成された前記電気伝送路の一方側に、すべての前記雄端子に電気的に接続する前記ランドが配置され、前記分岐接続先毎にペアとなる2本の前記雄端子が互いに隣接するように、当該雄端子に電気的に接続する前記ランドが配置されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の分岐コネクタ。
【請求項7】
前記雄端子に電気的に接続するランドが、当該雄端子に電気的に接続する前記電子部品の一方の端部のランドを兼ねていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の分岐コネクタ。
【請求項8】
前記雄端子に電気的に接続するランドが、前記雄端子に隣接しかつ当該ランドとは直接電気的に接続していない前記電子部品との干渉を防止する形状を有していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の分岐コネクタ。
【請求項9】
車載ネットワーク通信の終端接続部として用いることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の分岐コネクタ。
【請求項10】
車両の通信規格プロトコルであるFlex Rayを適用した信号線の終端接続部として用いることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の分岐コネクタ。
【請求項11】
前記電気信号は、差動信号であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の分岐コネクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−185931(P2012−185931A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46662(P2011−46662)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】