説明

分岐状重合体の製造方法および分岐状重合体含有分散液

【課題】分子量分布が狭い分岐状重合体を生産性よく製造する方法を提供する。また、分子量分布が狭い分岐状重合体を含む分散液を提供する。
【解決手段】(A)1分子中に2個以上のラジカル重合性基を有する有機化合物と(B)ラジカル重合開始剤{(A)成分のラジカル重合性基のモル数に対して10〜500モル部}とを、(C)乳化剤の存在下もしくは非存在下に、(D)水中に分散させた状態でラジカル重合させて分岐状重合体を製造し、また分岐状重合体含有分散液を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分岐状重合体の製造方法および分岐状重合体含有分散液に関する。詳しくは、本発明は、分子量分布が狭い分岐状重合体を生産性よく製造する方法、および分子量分布の狭い分岐状重合体を含有する分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分岐状重合体の製造方法としては数多くの方法が提案されている。例えば、特許文献1にはイソブチレンをカチオン重合触媒の存在下に重合させた後、ジビニルベンゼンとエチルスチレンを滴下して、カチオン重合触媒の存在下に重合して、分岐状重合体を製造する方法が提案されている。また、本発明者は、先に、ラジカル重合性基を2個以上有する有機化合物を含む単量体と高濃度のラジカル重合触媒を有機溶剤の中で重合して分岐状重合体を製造する方法を提案した(特許文献2参照)。この方法に従えば、多種多様な分岐状重合体を製造することができる。しかし、この方法は、副反応である架橋反応を防止するために、多量の有機溶剤を使用して単量体濃度を低く保たなければならない等の生産面での制約があり、分岐状重合体を大量生産する方法としては満足できるものではなかった。また、この方法で得られた分岐状重合体は分子量分布が広く、用途によっては使用できない場合があるなどという問題点があった。
【特許文献1】特開平5−331243号公報
【特許文献2】特開2005−120288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、分子量分布が狭い分岐状重合体を生産性よく製造する方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、分子量分布が狭い分岐状重合体を含む分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、1分子中にラジカル重合性基を2個以上有する有機化合物(単量体)と高濃度のラジカル重合触媒を水中に分散させた状態でラジカル重合することにより、単量体濃度を高めた状態で重合反応を進行させることができ、その結果、得られた分岐状重合体は狭い分子量分布を有し、品質が揃っていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は下記の構成を有するものである。
(I)分岐状重合体の製造方法
(I-1) (A)1分子中に2個以上のラジカル重合性基を有する有機化合物と(B)ラジカル重合開始剤{(A)成分のラジカル重合性基のモル数に対して10〜500モル部}とを、(C)乳化剤の存在下もしくは非存在下に、(D)水中に分散させた状態でラジカル重合させることを特徴とする、分岐状重合体の製造方法。
(I-2) (A)成分中のラジカル重合性基がビニル基である(I-1)に記載の製造方法。
(I-3) (A)成分および(B)成分に加えて、さらに(E)1分子中に1個のラジカル重合性基を有する有機化合物を混在させて、ラジカル重合させることを特徴とする(I-1)または(I-2)に記載の製造方法。
(I-4) (D)水の量が、(A)成分と(B)成分の合計重量部100重量部に対して30〜2000重量部である(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載の製造方法。
【0006】
(II)分岐状重合体含有分散液
(II-1) (A)1分子中に2個以上のラジカル重合性基を有する有機化合物と(B)ラジカル重合開始剤{(A)成分のラジカル重合性基のモル数に対して10〜500モル部)とを、(C)乳化剤の存在下もしくは非存在下に、(D)水中に分散させた状態でラジカル重合させることによって得られる分岐状重合体含有分散液。
(II-2) (A)成分および(B)成分に加えて、さらに(E)1分子中に1個のラジカル重合性基を有する有機化合物を混在させて、ラジカル重合させることによって得られる、(II-1)に記載する分岐状重合体含有分散液。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、分子量分布が狭い分岐状重合体を生産性よく製造することができる。また、本発明の製造方法は、有機溶剤中でラジカル重合する方法に比べて、モノマー濃度を高めた状態で重合させることができ、結果として分岐重合体の含有割合が高い分散液が得られる。また、本発明の分岐状重合体分散液は、分岐重合体濃度が高いにもかかわらず、分岐状重合体が安定に分散されており、保存安定性がよいという特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(I)分岐状重合体の製造方法
1.(A)成分
本発明において(A)成分として使用される有機化合物は、1分子中に2個以上のラジカル重合性基を有する有機化合物である。このような有機化合物としては、好ましくはラジカル重合性基としてビニル基を有するものであり、具体的には、以下の(A1)〜(A12)に示した有機化合物が例示される。
【0009】
(A1)ビニル系炭化水素:
イソプレン、ブタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2―ポリブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン等の脂肪族ビニル系炭化水素;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の脂環式ビニル系炭化水素;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン等の芳香族ビニル系炭化水素。
【0010】
(A2)カルボキシル基含有ビニル系有機化合物:
マレイン酸モノアリル、フマル酸モノビニル、マレイン酸モノビニル、イタコン酸モノビニル等。
【0011】
(A3)硫黄含有ビニル系有機化合物:
ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン、ジビニルスルフォキサイド、ジアリルジサルファイド等。
【0012】
(A4)燐含有ビニル系有機化合物:
ジアリルフェニルホスフェイト等。
【0013】
(A5)ヒドロキシル基含有ビニル系有機化合物:
ジビニルグリコール(1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール)等。
【0014】
(A6)含窒素ビニル系有機化合物:
ジアリルアミン、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルシアヌレート、1−シアノブタジエン、メチレンビスアクリルアミド、ビスマレイミド等。
【0015】
(A8)ハロゲン元素含有ビニル系有機化合物:
クロロプレン、ジアリルアミンハイドロクロライド等。
【0016】
(A9)ビニルエステル、アリルエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル、ビニルケトン:
マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、アジピン酸ジビニル、アジピン酸ジアリル、マレイン酸ジビニル、イタコン酸ジビニル、ジビニルエーテル、ジアリルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジビニルケトン、ビニルアクリレート、ビニルメタアクリレート、ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等。
【0017】
(A10)(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸アリル:
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラペンタ(メタ)アクリレート、アルコキシチタントリ(メタ)アクリレート等。
【0018】
(A11)ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物:
ポリエチレングリコール(分子量300)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)ジアクリレート等。
【0019】
(A12)ビニル基含有有機ケイ素化合物:
ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン等。
【0020】
これらのうち好ましいものは、上記(A1)群に属する芳香族ビニル系炭化水素化合物、(A9)群に属するビニルエステル、アリルエステル、ビニルエーテル、およびビニルケトン、(A10)群に属するエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、並びに(A11)群に属するポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物であり、特に好ましいのは、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタアクリレート、フタル酸ジアリルである。
【0021】
2.(E)成分
本発明においては、上記のような(A)成分に加えて、(E)成分として1分子中に1個のラジカル重合性基を有する有機化合物を混在させてもよい。このような有機化合物としては、好ましくは(A)成分と同様にラジカル重合性基としてビニル基を有するものであり、具体的には、下記(E1)〜(E13)に挙げられる有機化合物が例示される。
(E1)ビニル系炭化水素:
ビニルシクロヘキサン、エチリデンビシクロヘプテン等脂環式ビニル系炭化水素;スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン等。
【0022】
(E2)カルボキシル基含有ビニル系有機化合物:
アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸等。
【0023】
(E3)硫黄含有ビニル系化合物、ビニル系硫酸モノエステル化物:
ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、メチルビニルスルフォネート、スチレンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸。
【0024】
(E4)燐酸基含有ビニル系有機化合物:
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェートやフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル燐酸モノエステル;2−アクリロイルオキシエチルホスホン酸等の(メタ)アクリル酸アルキルホスホン酸類。
【0025】
(E5)ヒドロキシル基含有ビニル系有機化合物:
ヒドロキシスチレン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、庶糖アリルエーテル等。
【0026】
(E6)含窒素ビニル系有機化合物:
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリルアミン、モルホリノエチル(メタ)アリルアミン、N,N−ジメチルアミノスチレン、ビニルイミダゾール、アミノチアゾール、アミノイミダゾール等のアミノ基含有ビニル系単量体:(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジベンジルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N−メチルN−ビニルアセトアミド等のアミド基含有ビニル系単量体。
【0027】
(E7)エポキシ基含有ビニル系有機化合物:
グルシジル(メタ)アクリレート、p−ビニルフェニルグリシジルエーテル等。
【0028】
(E8)ハロゲン元素含有ビニル系有機化合物:
塩化ビニル、塩化ビニリデン、1−クロロプロピレン、ジクロロエチレン、アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン等。
【0029】
(E9)ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン:
酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソプロペニルアセテート、メチル4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルエチルエーテル、イソブチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニル2−メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、ビニル2−ブトキシエチルエーテル、3,4−ジヒドロ1,2−ピラン、2−ブトキシ−2’−ビニロキシジエチルエーテル、ビニル2−エチルメルカプトエチルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルフェニルケトン、p−ビニルジフェニルサルファイド、ビニルエチルサルファイド等。
【0030】
(E10)(メタ)アクリル酸エステル:
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、2−メルカプトエチル(メタ)アクリレート等。
【0031】
(E11)ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系有機化合物:
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物モノ(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド30モル付加物モノ(メタ)アクリレート等。
【0032】
これらのうちで好ましいものは、(E1)群に属する脂肪族ビニル系炭化水素、(E2)群に属するカルボキシル基含有ビニル系有機化合物、(E6)群に属する含窒素ビニル系有機化合物、(E6)群に属するアミド基含有ビニル系有機化合物、(E8)群に属するハロゲン元素含有ビニル系有機化合物、(E9)群に属するビニルエステル、ビニルエーテル、およびビニルケトン、並びに(E10)群に属する(メタ)アクリル酸エステルである。特に好ましくは、スチレン、エチルスチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸、フマル酸、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、塩化ビニル、アリルクロライド、酢酸ビニル、ビニルエチルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0033】
これらの(E)成分の量は、通常、(A)成分100モルに対して0〜800モルの範囲内である。(E)成分を用いる場合は、その使用量は、(A)成分100モルに対して好ましくは50〜700モルの範囲内であり、より好ましくは100〜600モルの範囲内である。
【0034】
3.(B)成分
本発明において(B)成分として使用されるラジカル重合開始剤は、(A)成分を重合させるための触媒である。また(B)成分は、本発明の分岐状重合体を高度に分岐させる働きもする。このような(B)成分としては、(B1)アゾ化合物系重合開始剤、(B2)有機過酸化物系重合開始剤、および(B3)有機過酸化物系重合開始剤と還元剤とを併用したレドックス重合開始剤が挙げられる。
【0035】
(B1)アゾ化合物系重合開始剤
アゾ化合物系重合開始剤としては、油溶性アゾ重合開始剤及び水溶性アゾ重合開始剤等が使用できる。
【0036】
油溶性アゾ重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサン1−カーボニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾニトリル系化合物:(2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド等のアゾアミド系化合物;ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、ジエチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のジアルキル2,2’−アゾビスイソブチレート:2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等が挙げられる。
【0037】
これらのうちで好ましいものはアゾニトリル系化合物およびジアルキル2,2’−アゾビスイソブチレートであり、特に好ましいものは、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、ジエチル2,2’−アゾビスイソブチレートである。
【0038】
水溶性アゾ重合開始剤としては、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、
および2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド
が例示される。
【0039】
(B2)有機過酸化物系重合開始剤
有機過酸化物系重合開始剤としては、油溶性パーオキサイド重合開始剤及び水溶性パーオキサイド重合開始剤がある。
【0040】
(i) 油溶性パーオキサイド重合開始剤
油溶性パーオキサイド重合開始剤としては、メチルエチルパーオキサイド、メチルイソブチルパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド:1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド:イソブチリルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド:ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシヘキサン)、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン等ジアルキルパーオキサイド:(1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオペンタノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテトラフタレート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−ブチルパーオキシトリメチルアジペート等のアルキルパーエステル;(ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニロイル)ヘキサン、ジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート等のパーカーボネートが挙げられる。
【0041】
これらのうちで好ましいものは、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイドおよびアルキルパーエステルであり、特に好ましいものは、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイドおよびt−ブチルパーオキシベンゾエートである。
【0042】
(ii) 水溶性パーオキサイド重合開始剤
水溶性パーオキサイド重合開始剤としては、例えば、過酸化水素、過酢酸、並びに過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩が挙げられる。好ましいものは、過酸化水素水、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムである。
【0043】
(B3)有機過酸化物系重合開始剤と還元剤とを併用したレドックス重合開始剤
レドックス重合開始剤としては、油溶性レドックス重合開始剤及び水溶性レドックス重合開始剤が用いられる。
【0044】
(i)油溶性レドックス重合開始剤
油溶性レドックス重合開始剤としては、t−ブチルヒドロキシパーオキサイド、クメンヒドロキシパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド等の油溶性パーオキサイド重合開始剤と還元剤との組み合わせが挙げられる。還元剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第三アミン、ナフテン酸塩、メルカプトエタノール、ラウリルメルカプタン等のメルカプタン、トリエチルアルミニウム、トリエチルホウ素、ジエチル亜鉛等の有機金属化合物が挙げられる。これらのなかで、油溶性パーオキサイド重合開始剤と還元剤の好ましい具体的な組み合わせの例としては、クメンヒドロペルオキシド−トリエチルアルミニウム、ベンゾイルパーオキサイド−トリエチルアミン等が挙げられる。
【0045】
(ii)水溶性レドックス重合開始剤
水溶性レドックス重合開始剤としては、過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、及び過酸化水素等の水溶性パーオキサイド重合開始剤と還元剤との組み合わせが挙げられる。還元剤としては、2価鉄塩、亜硫酸水素ナトリウム、アルコール、ジメチルアニリン等が挙げられる。これらのなかで、水溶性パーオキサイド重合開始剤と還元剤の好ましい具体的な組み合わせの例としては、過酸化水素−2価鉄塩、過硫酸塩−亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0046】
これらの(B)成分の使用量(総量)は、(A)成分のラジカル重合性基のモル数(100モル%)に対して、10〜500モル部の範囲内である。好ましくは30〜200モル部の範囲内であり、さらに好ましくは50〜170モル部の範囲内である。(B)成分の使用量が10モル部未満となると、本発明の分岐状重合体の製造途中で、分子状重合体が架橋してゲル化してしまう傾向がある。また、500モル部を越えると分岐状重合体の重合度があがらず、所望の高分子重合体を得ることが難しくなる傾向がある。
【0047】
4.(C)成分
本発明の製造方法において、必要に応じて(C)成分として乳化剤を使用することができる。当該乳化剤(C)は、必要に応じて使用される成分であり、(A)成分と(B)成分あるいは(A)成分と(B)成分と(E)成分を乳化状態で水中に分散させるか、または(A)成分と(B)成分あるいは(A)成分と(B)成分と(E)成分の中に水を乳化分散させる働きをする。
【0048】
従って(A)成分と(B)成分との反応生成物、または(A)成分と(B)成分と(E)成分との反応生成物が自己乳化作用を有する場合は、(C)成分は使用しなくてもよい。
【0049】
このような(C)成分としては、脂肪酸石けん、ロジン酸石けん、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム;アルキル硫酸アンモニウム、アルキル硫酸トリエタノールアミン、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等の非イオン系界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン系界面活性剤等が例示される。
【0050】
(C)成分を用いる場合、その使用量は特に限定されないが、通常は、(A)成分と(B)成分あるいは(A)成分と(B)成分と(E)の合計量100重量部に対して0〜200重量部の範囲内で使用される。(C)成分を使用する場合は、その使用量は、好ましくは0.1〜100重量部の範囲内であり、より好ましくは10〜100重量部の範囲内である。
【0051】
5.(D)成分
本発明において(D)成分として水が使用される。当該成分は、本発明の製造方法において必須の成分である。(D)成分としては、特に制限されないが、イオン交換水または純水が例示される。
【0052】
このような(D)成分の配合量としては、特に制限されないが、(A)成分と(B)成分または(A)成分と(B)成分と(E)成分の合計量100重量部に対して、通常は、30〜3000重量部、好ましくは50〜2000重量部、より好ましくは100〜1500重量部を例示することができる。
【0053】
6.その他の成分
本発明の製造方法において、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、上記(A)〜(E)以外の成分を用いることもできる。かかる成分として、制限されないが、例えば懸濁剤、ラジカル重合性抑制剤などを挙げることができる。
【0054】
懸濁剤は、(A)成分と(B)成分または(A)成分と(B)成分と(E)成分を水中に分散させるための助剤として用いることができる。懸濁剤として、例えば、部分けん化ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリアルキレンオキサイド等の従来公知の懸濁剤を挙げることができる。
【0055】
ラジカル重合性抑制剤としては、一般のラジカル重合反応に使用されている従来公知のラジカル重合性抑制剤を挙げることができる。このようなラジカル重合抑制剤としては、ヒドロキノン、デュロキノン、ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン、2,5−ジ−t−ブチルベンゾキノン、2,6−ジ−t−ブチルベンゾキノン、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、フェノチアジンが例示できる。
【0056】
さらに本発明の製造方法における重合反応には必要に応じて有機溶剤を存在させることができる。
【0057】
有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶剤;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素系溶剤;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエステル系またはエステルエーテル系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤混合溶剤が挙げられる。
【0058】
これらのうち好ましいのは、芳香族炭化水素系溶剤、ハロゲン系、特に塩素系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤等であり、特に好ましいものはベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル、テオラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等である。
【0059】
本発明の重合反応を有機溶剤の存在下で行う場合、有機溶剤の使用量は(D)成分100重量部に対して0〜100重量部である。好ましくは10〜50重量部、より好ましくは10〜50重量部である。
【0060】
本発明の製造方法は、前述する(A)成分と(B)成分を、(C)成分の存在下もしくは非存在下に、(D)成分に分散させた状態でラジカル重合させるか、または(A)成分と(B)成分と(E)成分を、(C)成分の存在下もしくは非存在下に、(D)成分に分散させた状態でラジカル重合させることによって実施される。
【0061】
この重合反応の条件は、特に制限されないが、通常、常圧、加圧密閉下、または減圧下で行われる。好ましくは常圧で行われる。重合反応の温度は好ましくは50〜200℃、より好ましくは70〜150℃である。
【0062】
以上のような本発明の製造方法で得られる分岐状重合体の分子量は、数平均分子量(Mn)が通常、1,000〜1,000,000の範囲内であり、好ましくは1,000〜800,000の範囲内であり、より好ましくは1,000〜700,000の範囲内である。なお、分岐状重合体の数平均分子量の測定方法としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法があり、また重量平均分子量の測定方法としては、膜浸透圧法、静的光散乱法、低角度光散乱法等が挙げられる。好ましくは静的光散乱法である。
【0063】
分岐状重合体の分子量分布は、数平均分子量(Mw)と質量平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)から評価することができる。本発明の製造方法で得られる分岐状重合体の数平均分子量(Mw)と質量平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は3以下であることが好ましい、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.8以下、特に好ましくは1〜1.8の範囲を挙げることができる。
【0064】
以上のような、本発明の分岐状重合体の製造方法に従えば、分子量分布の狭い高分岐状重合体を生産性よく製造することができる。また、本発明の製造方法は、環境汚染を引き起こす有機溶媒を使用しないか、または使用しても少量で足りるので、環境保全に有用な方法である。
【0065】
(II)分岐状重合体含有分散液
本発明の分岐状重合体含有分散液は、前述する分岐状重合体が水中に懸濁分散または乳化分散するか、または分岐状重合体中に水が懸濁分散または乳化分散してなるものである。好ましくは上記分岐状重合体が水中に懸濁分散または乳化分散してなるもの、より好ましくは分岐状重合体が水中に乳化分散してなるものである。
【0066】
本発明の水分散液は、(A)1分子中に2個以上のラジカル重合性基を有する有機化合物と(B)ラジカル重合開始剤{(A)成分のラジカル重合性基のモル数に対して10〜500モル%)とを、または(A)1分子中に2個以上のラジカル重合性基を有する有機化合物および(E)1分子中に1個のラジカル重合性基を有する有機化合物と(B)ラジカル重合開始剤{(A)成分のラジカル重合性基のモル数に対して10〜500モル%)とを、(C)乳化剤の存在下もしくは非存在下に、(D)水中に分散させた状態でラジカル重合させてなることを特徴とする。
【0067】
ここで、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分および(E)成分については、上記(I)で説明したものと同様なものが例示される。またこれらの成分の配合割合、重合方法も前述の通りである。さらに、ラジカル重合に際して上記(A)〜(E)成分に加えて、前述する他の成分(例えば、懸濁剤、ラジカル重合抑制剤、有機溶剤など)を用いることもできる。
【0068】
本発明の分散液は、上記のラジカル重合反応によって生成した分岐状重合体が水中に安定に分散しているか、または当該分岐状重合体中に水が安定に分散していることを特徴とする。好ましくは分岐状重合体が水中に安定に分散してなる水分散液である。なお、当該分散の態様として、各成分に応じて懸濁分散および乳化分散のいずれの態様をとることができる。好ましくは乳化分散である。
【0069】
本発明の分岐状重合体の分散液は、そのまま一般の産業用素材として使用できる。また、一般の産業用素材の物理特性改質剤とか中間原料として使用できる。例えば、本発明の分岐状重合体の水分散液をそのまま水系エマルジョン塗料に配合して水系エマルジョン塗料の物理特性改質剤として使用できる。また、本発明の分岐状重合体の分散液を原液とし、これに分岐状重合体の修飾用単量体を加えて化学反応させて、化学粉飾(Chemical modification)された分岐状重合体を製造することができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例にて説明する。実施例中、「部」とあるのは重量部であり、「%」とあるのは重量%を示す。また、実施例中、分岐状重合体の分子量および化学構造は以下の方法で測定した。
【0071】
○分子量
数平均分子量(Mn)はゲルパ−ミュエ−シェンクロマトグラフィ(GPC)により測定した。重量平均分子量(Mw)は光散乱検出器を用いて静的光散乱法によって測定した。ここで、光散乱検出器は、多角度光散乱検出器(昭和電工株式会社製、商品名、Wyatt DAWN EOS&mini DA)を使用した。
【0072】
○化学構造
核磁気共鳴スペクトル分析(プロトンNMR分析)と元素分析によって分析した。
【0073】
実施例1
還流冷却器を備えたナス型フラスコに、エチレングリコールジメタクリレート0.20 g (1 mmol)、α−メチルスチレン0.28 g(2.36 mmol)、ジエチル2,2’-アゾビスイソブチレート0.51 g ( 2mmol)、およびドデシル硫酸ナトリウムの0.1mol/lの水溶液10mlを入れて均一に混合した。次いで、攪拌しながら昇温し、還流下、80℃で2時間攪拌した。
【0074】
得られた重合体の水分散液(重合体の水エマルジョン)から1mlを取り出し、これを透明なガラス容器に入れて30日間静置した。その後、この重合体の水エマルジョンを観察したところ、重合体の沈降は認められなかった。このことからこの重合体の水エマルジョンは安定であることが分かった。
【0075】
また残りの水分散液(重合体の水エマルジョン)を、多量のメタノール中に投入し、析出した重合体を濾別して乾燥した。得られた重合体を分析したところ、この重合体はエチレングリコールジメタクリレートとα-メチルスチレンとの共重合体であり、その数平均分子量(Mn)は、3.2 ×104であり、その重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)、すなわち分子量分布は1.5であった。重合体の収量は0.404gであり、モノマー(エチレングリコールジメタクリレート、α−メチルスチレン)と開始剤(ジエチル2,2’-アゾビスイソブチレート)の総重量を基準にした収率は42%であった。
【0076】
実施例2
還流冷却器を備えたナス型フラスコに、エチレングリコールジメタクリレート0.20g(1 mmol)、α-メチルスチレン0.24 g(2 mmol)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート0.46 g(2 mmol)、およびドデシル硫酸ナトリウムの0.1 mol/lの水溶液10 mlを入れて均一に混合した。次いで、攪拌しながら昇温し、還流下、70℃で3時間撹拌した。
【0077】
斯くして得られた重合体の水分散液(重合体の水エマルジョン)を多量のメタノール中に投入し、析出した重合体を濾別して乾燥した。重合体の収量は0.37 gであり、モノマー(エチレングリコールジメタクリレート、α−メチルスチレン)と開始剤(ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート)の総重量を基準にした収率は44%であった。また、数平均分子量(Mn)は4.1 × l04であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)、すなわち分子量分布は 1.5であった。
【0078】
また、プロトンNMRによる構造解析から、この重合体は、開始剤断片が重合体末端基として多数組み込まれていることが判明した。開始剤断片であるメトキシプロトンの化学シフトは3.5ppmであった。このことから、この重合体は、高度に分岐された重合体であることが判明した。
【0079】
実施例3
還流冷却器を備えたナス型フラスコに、アクリル酸エチル0.40 g (4mmol)、ジビニルベンゼン0.11 g(0.8 mmol)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート0.92 g (4 mmol)、トルエン2mlおよび水7mlを入れて均一に混合した。次いで、これを還流下、80℃で1時間、撹拌した。斯くして得られた重合体の水分散液(重合体の水エマルジョン)を、多量のメタノール混合物中に投入して重合体を析出させ、重合体を濾別し乾燥した。
【0080】
得られた重合体を分析したところ、この重合体はアクリル酸エチルとジビニルベンゼンとの共重合体であり、その数平均分子量(Mn)は、5.0×l03であり、その重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)、すなわち分子量分布は1.5であった。重合体の収量は0.45 gであり、モノマー(アクリル酸エチル、ジビニルベンゼン)と開始剤(ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート)の総重量を基準にした収率は33%であった。
【0081】
また、プロトンNMRによる構造解析から、この重合体は、開始剤断片が重合体末端基として多数組み込まれていることが判明した。開始剤断片であるメトキシプロトンの化学シフトは3.5ppmであった。このことから、この重合体は、高度に分岐された重合体であることが判明した。
【0082】
実施例4
還流冷却器を備えたナス型フラスコに、フタル酸ジアリル0.88 g (3.6 mmol)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート0.41 g (1.8 mmol)、トルエン1mlおよび水10mlを入れ、還流下、80℃で4時間撹拌した。斯くして得られた重合体の水分散液(重合体の水エマルジョン)を、その後、多量の水−メタノール混合物中に注入して、重合体を析出させ、得られた重合体を濾別し乾燥した。収量は0.73 gであり、モノマー(フタル酸ジアリル)と開始剤(ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート)の総重量を基準にした収率は59%であった。数平均分子量(Mn)は 2.3×l03であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)、すなわち分子量分布は1.9であった。
【0083】
また、プロトンNMRによる構造解析から開始剤断片(ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレートの分解残渣)がポリマ−末端基として多数組み込まれていることが分かった。このことから、この重合体は高度に分岐された重合体であることが分かった。
【0084】
比較例1
実施例2において、ドデシル硫酸ナトリウムの0.1mol/lの水溶液10mlの代わりにトルエン10mlを使用した以外は実施例1と同様にしてエチレングリコールジメタクリレートとα−メチルスチレンとの共重合体を製造した。得られた重合体を分析(核磁気共鳴スペクトル分析、元素分析)したところ、この重合体はエチレングリコールジメタクリレートとα−メチルスチレンとの共重合体であり、その数平均分子量(Mw)は、2.1×103であり、その重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)、すなわち分子量分布は3.2であった。
【0085】
また、プロトンNMRによる構造解析から、この重合体は、開始剤断片が重合体末端基として多数組み込まれていることが判明した。開始剤断片であるメトキシプロトンの化学シフトは3.5ppmであった。このことから、この重合体は、高度に分岐された重合体であることが判明した。
【0086】
比較例2
実施例3において、水7mlの代わりにトルエン7mlを使用した以外は、実施例3と同様にして分岐状重合体を製造した。即ち、還流冷却器を備えたナス型フラスコに、アクリル酸エチル0.40 g (4mmol)、ジビニルベンゼン0.11 g(0.8 mmol)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート0.92 g (4 mmol)、およびトルエン9mlを入れて均一に混合した。次いで、還流下、80℃で1時間、撹拌した。その後、得られた重合体の水分散液(重合体の水エマルジョン)をメタノール中に投入して、重合体を析出させ、重合体を濾別し乾燥した。収量は0.45 gであり、モノマー(アクリル酸エチル、ジビニルベンゼン)と開始剤(ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート)の総重量を基準にした収率は33%であった。数平均分子量(Mw)は2.7×10であった。また、その重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)、すなわち分子量分布は3.3であった。また、プロトンNMRによる構造解析から、この重合体は、開始剤断片が重合体末端基として多数組み込まれていることが判明した。開始剤断片であるメトキシプロトンの化学シフトは3.5ppmであった。このことから、この重合体は、高度に分岐された重合体であることが判明した。
【0087】
比較例3
実施例4において水10mlの代わりにトルエン10mlを使用した以外は、実施例4と同様にして分岐状重合体を製造した。具体的には、還流冷却器を備えたナス型フラスコにフタル酸ジアリル0.88 g (3.6 mmol)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート0.41 g (1.8 mmol)、およびトルエン11mlを入れ、還流下、80℃で4時間、撹拌した。その後、重合体の水分散液(重合体の水エマルジョン)を多量の水−メタノール混合物中に注入し、重合体を析出させ、重合体を濾別し乾燥した。収量は0.12 gであり、モノマー(フタル酸ジアリル)と開始剤(ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート)の総重量を基準にした収率は10%であった。
【0088】
また、数平均分子量(Mw)は8 × l0であった。プロトンNMRによる構造解析から、開始剤断片がポリマ−末端基として多数組み込まれていることが分かった。このことから、高度に分岐された重合体であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の製造方法によれば、狭い分子量分布を有する分岐状重合体を生産性よく製造できる。そして、得られた分岐状重合体は、例えば、分子鎖密度が比較的低い疎な内部空間と、分子鎖密度が密にパッキングした表面からなる分子形態をとる。また、三次元構造を有する分岐状重合体特有の特性を有し、例えば、分子量が大きくなっても、粘度の増加の度合いが小さい等の特性を有する。したがって、本発明の製造方法によって調製される分岐状重合体は、このような特性を要求される用途、例えば、染料、顔料、薬物等のキャリア、熱可塑性樹脂の物理特性改質剤、半導体封止剤の応力緩和剤等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に2個以上のラジカル重合性基を有する有機化合物と(B)ラジカル重合開始剤{(A)成分のラジカル重合性基のモル数に対して10〜500モル部}とを、(C)乳化剤の存在下もしくは非存在下に、(D)水中に分散させた状態でラジカル重合させることを特徴とする、分岐状重合体の製造方法。
【請求項2】
(A)成分中のラジカル重合性基がビニル基である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
(A)成分および(B)成分に加えて、さらに(E)1分子中に1個のラジカル重合性基を有する有機化合物を混在させて、ラジカル重合させることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
(D)水の量が、(A)成分と(B)成分の合計重量部100重量部に対して30〜2000重量部である請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
(A)1分子中に2個以上のラジカル重合性基を有する有機化合物と(B)ラジカル重合開始剤{(A)成分のラジカル重合性基のモル数に対して10〜500モル部)とを、(C)乳化剤の存在下もしくは非存在下に、(D)水中に分散させた状態でラジカル重合させることによって得られる分岐状重合体含有分散液。
【請求項6】
(A)成分および(B)成分に加えて、さらに(E)1分子中に1個のラジカル重合性基を有する有機化合物を混在させて、ラジカル重合させることによって得られる、請求項5に記載する分岐状重合体含有分散液。

【公開番号】特開2008−38110(P2008−38110A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218231(P2006−218231)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】