説明

分岐管取付配管部材と分岐管取付工法

【課題】 土被りを地表下600mmとした浅層埋設された既設管に消火栓などを取り付けたしても、消火栓の上端を地表から確実に150mm以上離間させることを容易にする分岐管取付配管部材と分岐管取付工法を提供する。
【解決手段】 既設管Aを水密に抱持可能な割り形状かつ略T字形状を有していて、この略T字形状の足部分の途中に消火栓9を取り付け可能な開口部が形成されていると共に、足部分の端部に既設管Aを穿孔する穿孔機3を水密に取り付け可能な開口部が形成されている分岐管取付配管部材。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は分岐管取付配管部材と分岐管取付工法に関し、詳しくは、既設の水道管などに消火栓などを取り付け可能な分岐管を設置するための分岐管取付配管部材と分岐管取付工法に関する。
【0002】
【従来の技術】水道管などの既設の土中埋設管途中から分岐管を新たに取り付けたり、消火栓、空気弁などを取り付けたりする際には、水道管の流れを停止することなく工事を行う、いわゆる不断水工法が実施される。この不断水工法により消火栓などを取り付ける場合は、既設の配管に割形をしたT字管を取り付けると共に、このT字管の開口部分に弁と、更に穿孔機を接続することにより穿孔し、弁を閉鎖した状態で穿孔機に代えて消火栓を接続し、弁を開放状態にする。消火栓を取り付ける場合、既設管に対する穿孔位置は既設管の直上であり、従って、消火栓を既設管の真上に取り付けることになる。そして、消火栓の位置から一定範囲外の周辺を覆土すると共に、消火栓の直上部分のみ地表からホース等が接続可能に開口された構成とされる。
【0003】ところで、近時、工事期間の短縮化、工数低減を図る等の意図から、既設管の内、比較的小口径の水道管(例えば、呼び径75〜300mm)については、浅層での埋設(例えば、これまでの配管上部からの土被り1200mmから600mmへの変更。但し消火栓、空気弁などの上端は地表から150mm以上離間していること。)が検討されており、土圧などによる強度面での技術的課題は既に解決されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の工法により消火栓を取り付けるのでは、たとえ既設管の土被りを地表下600mmとしたとしても、消火栓の高さが400mm以上あり、更には不断水工法に必要な開閉弁を取り付けたり等すると、到底、消火栓の上端を地表から150mm以上離間させることはできない。更に、消火栓および開閉弁を改良したとしても、いずれの呼び径の配管に対して確実に消火栓の上端を地表から150mm以上離間させることは難しい。
【0005】そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑みて、土被りを地表下600mmとした浅層埋設された既設管に消火栓などを取り付けたしても、消火栓の上端を地表から150mm以上離間させることを容易にする分岐管取付配管部材と分岐管取付工法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的は各請求項記載の発明により達成される。すなわち、本発明に係る分岐管取付配管部材の特徴構成は、既設管を水密に抱持可能な割り形状かつ略T字形状を有していて、この略T字形状の足部分の途中に消火栓を取り付け可能な開口部が形成されていると共に、前記足部分の端部に前記既設管を穿孔する穿孔機を水密に取り付け可能な開口部が形成されていることにある。
【0007】この構成によれば、消火栓を取り付け可能な開口部に消火栓などを取り付けた場合、従来技術のように既設管の真上に取り付けるのではなく、既設管を抱持させることにより既設管の側方位置に取り付けることになるので、消火栓の上端の位置を低く押さえることができ、土被り深さを150mm以上に確保することが容易となる。
【0008】穿孔機を水密に取り付け可能な前記開口部に、前記消火栓に向けて水流を誘導する整流機が取り付けられていることが好ましい。
【0009】この構成によれば、取り付けられた消火栓から勢い良く水流を放出させる場合に、乱流の生じるのを極力少なくでき、水流を高い強度で放出できるように誘導できて都合がよい。
【0010】更に、本発明に係る分岐管取付工法の特徴構成は、既設管に対して請求項1又は2の分岐管取付配管部材を水密に抱持させ、略T字形状をした前記分岐管取付配管部材の足部分端部の開口部に、作業弁および穿孔機を水密になるように取り付け、前記作業弁を開口してから、前記穿孔機を挿入して駆動し、これにより前記既設管の一部を切断して開口し、ついで切断片を取り除き、前記作業弁を閉鎖して前記穿孔機を取り外すことにある。
【0011】この構成によれば、消火栓を取り付けるに当たり、既設管を抱持させることにより既設管の側方位置に取り付けることになるので、消火栓の上端の位置を低く押さえることができ、土被りを地表下600mmとした浅層埋設された既設管に消火栓などを取り付けたしても、消火栓の上端を地表から150mm以上離間させることを容易にする分岐管取付工法を提供することができる。
【0012】前記既設管の一部を切断した開口部に、防食機能を付加することが好ましい。
【0013】この構成によれば、切断された活性度の高い切断・新鮮面を防食することにより、この部分の耐久性を高めることができて都合がよい。防食機構を付加する方法としては、銅あるいは銅合金などの耐食性の高い金属製ブッシュを、ブッシングツール等の治具を用いて切断個所に挿入し、この金属製ブッシュで切断個所を覆う方法などを採用することができる。もっとも、既設管が樹脂製管の場合は、特に防食機能を付加する必要はない。
【0014】穿孔機を水密に取り付け可能な前記開口部に、前記作業弁に代えて、既設管からの水流を一定方向に誘導する整流機を取り付けることが好ましい。
【0015】この構成によれば、消火栓を取り付けた場合などに、消火栓から放出させる水流に乱流の発生を極力少なくして、高い強度で放出されるように誘導できて都合がよい。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、土中に埋設されている既設管A(図1の紙面に対して垂直方向に配設されている)の側方に、開口部を有するように略T字状をした配管部材1を取り付ける共に、前記開口部側に作業用弁2と穿孔機3を取付け、ハンドル4を操作して穿孔機3の先端に取り付けられているカッター5を既設管Aに接近させた状態を示す。
【0017】T字状配管部材1は、二つ割りになっていて、既設管Aを抱持すると共にボルト6、ナット7のような固着具を用いて既設管Aに嵌着される。既設管Aを穿孔するに伴い、漏水しないように、二つ割り構造の開口部分にはパッキン8が挿入されていて、水密に構成されている(既設管が配設される方向である、紙面に垂直な方向に対しては、図示はしないが既設管の円周方向に接するパッキンがT字状配管部材内部1に配設されている)。このT字状配管部材1は、二つ割りに限定されるものではなく、三つ割り、その他の割り数であってもよく、要は既設管を水密に抱持できればよい。
【0018】更に、T字状配管部材1の内、T字の足に相当する個所の途中には、上方に向けて消火栓9がフランジ10,11を介して接続可能に構成されていて、消火栓9の取付け位置を既設管Aに対して低くなるよう配慮されている。つまり、従来の技術では、既設管Aの上部が穿孔されて、この位置に消火栓が取り付けられるようになっていたため、消火栓の取付け位置が嵩高なものとならざるを得なかったが、本実施形態のT字状配管部材1では、既設管Aの側方位置から立ち上げるようにしているため、全体を低い姿勢に維持できるのである。
【0019】穿孔機3は、T字状配管部材1の足部分の端部に、作業用弁2とフランジ12,13を介してボルト14、ナット15により接続されていて、ハンドル4の手動操作によりカッター5を既設管Aに接近させると共に、カッター5による穿孔が手動あるいはガソリンエンジン駆動方式あるいは電動機などにより、操作されるようになっている。そして、カッター5による穿孔が終了すると、切断された既設管の切断片は円筒状をしたカッター5の内側に受け取られるようになっていて、ハンドル4を逆回転されてカッター5を引き戻すと共に、既設管の切断片もT字状配管部材1の外側に搬送されるようになっている。尚、図番21は消火栓に内蔵されている球状バルブ(図示略)を開閉するための手動レバーである。
【0020】穿孔が終了すると、作業用弁2が閉鎖され、穿孔機3が外される。そして、図2に示すように、作業用弁2の内周面を通して、開口部に防食機能を付加する方法の一例として用いられる銅製のブッシュ16が既設管Aの切断面を防食すべく挿入され、切断面に装着・被覆される。この銅製ブッシュ16の装着方法は、例えば、銅製ブッシュ16を先端に取り付けたブッシュ挿入機であるブッシングツール(図示略)を、前述の穿孔機3を用いたと同様に、フランジ12に取り付けて行うことができる。
【0021】すなわち、作業弁2を開放後、ブッシングツールの一方の先端に取り付けられ、内部にポリウレタン発泡樹脂を抱持した円筒状の銅製ブッシュ16を、ブッシングツールの他端側に設けられているハンドルを回転することによって、T字状配管部材1内部に送り込む。穿孔された開口部に銅製ブッシュ16を挿入していくと、銅製ブッシュ16の後端側に設けられている張出部が穿孔された開口部に当接し、進行が停止する。そして、ポリウレタン発泡樹脂の中心位置に挿通されている軸を回転させることにより、ポリウレタン発泡樹脂の先端面を覆う円板を手前側に引っ張り、ポリウレタン発泡樹脂を圧縮して半径方向に張り出させ、その張出し圧力によって銅製ブッシュの先端の縁を塑性変形させて、穿孔された開口部の外側縁を覆わせる。その後、ポリウレタン発泡樹脂の中心位置に挿通されている軸を逆回転させて、ポリウレタン発泡樹脂の変形を元の状態に復帰させ、次いで、ハンドルを逆回転させることにより、銅製ブッシュのみを開口部に残してポリウレタン樹脂と共に、ブッシングツールを引き戻し、作業用弁2を閉鎖してブッシングツールを取り外す。
【0022】このようにすることにより、消火栓9が既設管Aの真上ではなく、側方位置に設置されることになるので、消火栓9の上端の位置を低く押さえることができ、土被り深さを150mm以上に確保することが容易かつ確実となる。
【0023】更に、ブッシングツールに替えて、図3に示すように、フランジ12に整流機取付治具17を取り付けることが好ましい。そして、図4に示すように、作業用弁2を開放し、穿孔機3あるいはブッシングツールを挿入したと同様にして、T字状配管部材1内部に整流機取付治具17を、他端側に設けられたハンドル19を回転させて送り込む。既に取り付けられている消火栓9の直下近傍に到達した段階で、進行が止められて整流機18を配置すると共に、ハンドル19を更に回転させて軸だけを元に戻す。
【0024】つまり、整流機取付治具17におけるハンドル19と整流機18の接続構造は、図3の部分拡大図(丸円)に示すように、ハンドル軸19aと整流機18の右端部は雌ネジ部19bにより螺着されていると共に、整流機18の外周に整流機取付治具17の内周とが雄ネジ部18aにより螺着されて構成されている。その結果、ハンドル19の時計方向周りの回転により、整流機18は整流機取付治具17の内部を進行され、やがて図4に示す位置で停止させられる。停止された段階から更にハンドル19を回転させると、雌ネジ部19bでの螺着が解除され、ハンドル軸19aだけが整流機取付治具17の内部を逆に進行して手前側に戻される。尚、図番22,23は、水密を確保するためのOリングである。
【0025】最後に、整流機取付治具17および作業用弁2を取り外す(図5)。図5に示すように整流機18を配置すると、消火栓9から勢い良く水流を放出させる場合に、水流が円滑になるよう誘導でき、乱流の生じるのを極力少なくできて都合がよい。
【0026】本管に分岐管を設ける必要性が生じた場合には、上記した整流機を取り外して、この個所から容易に分岐管を接続することができる。その場合、作業用弁2を取り付けた後、整流機を取り付けたと逆手順を辿り整流機を取り外すと共に、更に分岐管をこれに接続するようにし、作業用弁2を開放して通水する。
【0027】〔別実施の形態〕
(1)上記実施形態の分岐管取付配管部材を用いた分岐管取付工法は、ダクタイル鋳鉄製、鋼鉄製などの金属管、塩化ビニール、ポリエチレン製などの樹脂管などに適用可能である。
【0028】(2)上記実施形態の分岐管取付配管部材を用いた分岐管取付工法について、既設管に対して行う例を示したが、この既設管は、古くから配設されているものに限られず、新たに配管を敷設する際しても、敷設後に、配管の上方付近に別の配管が配設されている等、消火栓、空気弁などの敷設工事が行い難い個所にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る配管部材を既設管に取付け穿孔する状態を説明する部分断面図
【図2】図1に示す穿孔終了後に防食用ブッシュを取り付けた状態を説明する断面図
【図3】図1の配管部材に整流機能付栓を取り付けた状態を示す断面図
【図4】図1に示す配管部材内に整流機を取り付けた状態を示す断面図
【図5】図1に示す配管部材内に整流機を設置完了状態を示す断面図
【符号の説明】
2 作業用弁
3 穿孔機
9 消火栓
17 整流機取付治具
18 整流機
A 既設管

【特許請求の範囲】
【請求項1】 既設管を水密に抱持可能な割り形状かつ略T字形状を有していて、この略T字形状の足部分の途中に消火栓を取り付け可能な開口部が形成されていると共に、前記足部分の端部に前記既設管を穿孔する穿孔機を水密に取り付け可能な開口部が形成されている分岐管取付配管部材。
【請求項2】 穿孔機を水密に取り付け可能な前記開口部に、前記消火栓に向けて水流を誘導する整流機が取り付けられている請求項1の分岐管取付配管部材。
【請求項3】 既設管に対して請求項1又は2の分岐管取付配管部材を水密に抱持させ、略T字形状をした前記分岐管取付配管部材の足部分端部の開口部に、作業弁および穿孔機を水密になるように取り付け、前記作業弁を開口してから、前記穿孔機を挿入して駆動し、これにより前記既設管の一部を切断して開口し、ついで切断片を取り除き、前記作業弁を閉鎖して前記穿孔機を取り外す分岐管取付工法。
【請求項4】 前記既設管の一部を切断した開口部に、防食機能を付加する請求項3の分岐管取付工法。
【請求項5】 穿孔機を水密に取り付け可能な前記開口部に、前記作業弁に代えて、既設管からの水流を一定方向に誘導する整流機を取り付ける請求項3又は4の分岐管取付工法。

【図2】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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