説明

分岐配管部材とそれを使用した衛生洗浄装置

【課題】低コストで作業性の高い分岐配管部材を提供すること。
【解決手段】主流路を内設した胴部311の途中に分岐流路を内設した分岐部316を備えた本体310と、主流路の一方の接続口312に設置された袋ナット320と、分岐流路の接続口に固定金具331を介して接続された接続ホース330とを含み、本体の他方の接続口313の外周には接続ねじ315とフランジ317を備え、本体の胴部311の両面にフランジ317の外周以上に突出した保持部318を形成することにより、簡単な構造で分岐配管部材300を構成することが可能となりコスト低減ができ、ねじの締め付け作業時に保持部318を工具で保持しながらねじの締め付け作業を行うことができるので、締め付け作業時の供回りを防止して確実な締め付けを行うことが可能となり、施工精度を向上することで水漏れ等の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衛生洗浄装置に水道水を供給する分岐配管部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、1個の給水源を分岐して2個の器具に給水する分岐配管部材としては、給水源である止水栓にT字形の分岐接続金具を袋ナット使用したねじで接続し、主流路に接続する器具は袋ナットを介して接続し、分岐流路に接続する器具は容易に着脱ができるクイック接続具を介して接続している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、特許文献1に記載された従来の分岐配管部材を示すものである。図6に示すように、給水源となる止水栓1の接続口2には接続ねじが形成されており、分岐配管部材3の袋ナット4を介して接続固定される。分岐配管部材3の主流路側には、接続口5に接続ねじが形成されたねじ変換ソケット6が取り付けられており、主流路側に接続する器具とは袋ナットを介して接続される構成となっている。一方、分岐流路側の接続口7は、クイック接続具8を介して分岐流路側に接続される配管9が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−182108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、流路の分岐に使用する部材の数が多く、また構造が複雑であるためコストアップに繋がるものである。また、接続時の作業もねじの接続とクイック接続の2種類の接続作業を行う必要があり作業ミスが発生しやすく、漏水等の不具合が発生することが懸念されるものである。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、分岐配管部材を簡単な構造とすることにより、低コストで作業性を向上することができ、しかも作業ミスが発生しにくく安全性と安定性の高い分岐配管部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の分岐配管部材は、主流路を内設した胴部の途中に主流路より分岐した分岐流路を内設した分岐部を備えた略T字状の本体と、本体の主流路の一方の接続口に回転自在に設置された袋ナットと、分岐流路の接続口に固定金具を介して接続された接続ホースとを含み、本体の他方の接続口の外周には接続ねじと、接続ねじの外径より大きい円形のフランジを備え、本体の胴部の両面にフランジの外周以上に突出した平面を有する保持部が形成されたものである。
【0008】
これにより、簡単な構造で分岐配管部材を構成することが可能となりコスト低減ができる。また、分岐流路の接続口には接続ホースが予め固定金具を介して接続されているため施工時の施工ミスの発生を抑制することができ。しかも、主流路の両端に設けられたねじの締め付け作業を行うときに、本体の胴部に形成された保持部を工具で本体を保持しながらねじの締め付け作業を行うことができるので、締め付け作業時の供回りを防止して確実な締め付けを行うことが可能となり、水漏れ等の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の分岐配管部材は、低コストと作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における分岐配管部材を使用した衛生洗浄装置の斜視図
【図2】図1に示すA部の詳細を示す側面図
【図3】本発明の実施の形態1における分岐配管部材の斜視図
【図4】本発明の実施の形態1における分岐配管部材の平面図
【図5】本発明の実施の形態1における分岐配管部材の側面図
【図6】従来の分岐配管部材の一部を断面にした正面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、主流路を内設した胴部の途中に前記主流路より分岐した分岐流路を内設した分岐部を備えた略T字状の本体と、前記本体の前記主流路の一方の接続口に回転自在に設置された袋ナットと、前記分岐流路の接続口に固定金具を介して接続された接続ホースと、を含み、前記本体の他方の接続口の外周には接続ねじと、前記接続ねじの外径より大きい円形のフランジを備え、前記本体の前記胴部の両面に前記フランジの外周以上に突出した平面を有する保持部が形成されたことを特徴とする、分岐配管部材である。
【0012】
これにより、簡単な構造で分岐配管部材を構成することが可能となりコスト低減ができる。また、分岐流路の接続口には接続ホースが予め固定金具を介して接続されているため施工時の施工ミスの発生を抑制することができる。しかも、主流路の両端に設けられたねじの締め付け作業を行うときに、本体の胴部に形成された保持部を工具で本体を保持しながらねじの締め付け作業を行うことができるので、締め付け作業時の供回りを防止して確実な締め付けを行うことが可能となり、水漏れ等の発生を抑制することができる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記保持部は前記フランジの前記接続ねじ側の端部より、前記分岐流路の少なくとも中心を超える範囲まで形成されたものである。
【0014】
これにより、分岐流路の接続口に接続された接続ホースのどちら側からでも工具で保持部を保持することが可能となり、主流路の両端に設けられた両方のねじの締め付け作業時に保持部を保持することが可能となり、締め付け作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0015】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明における分岐配管部材を使用して、前記分岐配管部材の前記接続ホースを給水接続部に接続した衛生洗浄装置である。
【0016】
これにより、衛生洗浄装置の洗浄水の給水を分岐流路に接続した接続ホースを介して行うことができるため、衛生洗浄装置の設置作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は第1の実施の形態における分岐配管部材を使用した衛生洗浄装置の外観の斜視図を示し、図2は図1のA部の詳細を示す分岐配管部材周辺の側面図を示し、図3は分岐配管部材の斜視図を示し、図4は本発明の分岐配管部材の平面図を示し、図5は分岐配管部材の側面図を示すものである。
【0019】
<1>分岐配管部材を使用した衛生洗浄装置の構成
図1に示すように、分岐配管部材を使用した衛生洗浄装置100は、便器200の上面に載置されており、便器200の上面後部には便器を洗浄する洗浄水を貯溜するロータンク210が設置されている。
【0020】
衛生洗浄装置100は、便器200上面に固定された本体110と、本体110前部に起倒自在に枢支された便蓋120と便座130を主構成部材として構成されている。
【0021】
なお、本実施の形態においては衛生洗浄装置100の本体110の設置側を後方、便座130の設置側を前方とし、後方に向かって右側を右側、後方に向かって左側を左側として各構成要素の配置を説明する。
【0022】
本体110の左側には本体110と一体に袖部140が突出して形成されており、袖部140の上面には衛生洗浄装置100の各機能を操作する複数の操作スイッチ141と表示装置142が設置されている。
【0023】
本体110の前面部には着座センサ111が設置されている。この着座センサ111は反射型の赤外線センサであり、人体から反射された赤外線を検出することにより便座130上に使用者が存在することを検知する。
【0024】
本体110の後方下部には使用者の局部を洗浄する洗浄水を給水する給水接続部112が設けられている。図1および図2に示すように、給水接続部112には、水道管220に接続され通水および止水が操作を行う止水栓230とロータンク210に接続された給水管240との間に接続された分岐配管部材300の接続ホース330が水密に接続されており、衛生洗浄装置100に水道水を供給できるようになっている。
【0025】
本体110の内部には、人体局部を洗浄する洗浄手段(図示せず)、洗浄後の局部を乾燥する乾燥装置(図示せず)、排便時の臭気を脱臭する脱臭装置(図示せず)、それらの機能を制御する制御部(図示せず)等が設置されており、制御部は着座センサ111の検知信号と操作スイッチ141の操作に基づいて衛生洗浄装置100の各機能の制御を実施する。
【0026】
<2>分岐配管部材の構成
図3に示すように、分岐配管部材300は、銅合金を鋳造により成型した本体310と、銅合金製の袋ナット320と、PET繊維を内蔵したPVC製の接続ホース330を主構成部材としている。
【0027】
本体310は主流路を内設した略円筒状の胴部311には両端に接続口を備え、一方の端部に開口した入水接続口312には本体310に嵌め込んだCリング(図示せず)で六角形状の袋ナット320が回転自在に係止されており、他方の端部に開口した出水接続口313の外周には接続ねじ315が形成されている。
【0028】
胴部311の中間部には主流路と連通する分岐流路を内設した分岐部316が略直角に交差する方向に形成されている。分岐部316の先端部には分岐開口(図示せず)が開口しており、外周を細く形成した接続部(図示せず)の外周には複数の円環状の突起(図示せず)が形成されており、接続部の外周に沿って挿入された接続ホース330の抜け落ちを防止する形状となっている。接続部に挿入した接続ホース330の外周には固定金具331が嵌装され、プレスによるかしめ加工により、接続ホース330は本体310の容易に抜け落ちないように装着されている。
【0029】
出水接続口313の外周に設けられた接続ねじ315の元の部分には接続ねじ315の
外周よりも大きい直径のフランジ317が本体310と一体に成型されており、異物により接続ねじ315が損傷を受けることを防止する構成となっている。
【0030】
図4に示すように、フランジ317と連続して胴部311の両面にフランジ317の外周以上に突出した平面を備えた保持部318が一体に形成されている。保持部318の幅は胴部311の直径の半分以上を有し、長さ方向の寸法は図5の中心線Dで示すように、分岐部316の中心を超える長さとなっている。保持部318は分岐配管部材300と止水栓230および給水管240との接続作業時にねじの締め付けを行う際に、保持部318工具で保持することにより本体310の供回りを防止することができる。
【0031】
<3>分岐配管部材の設置方法
図2に示すように、分岐配管部材300を設置する場合には、最初の段階として、分岐配管部材300と止水栓230との接続を行う。この場合、分岐配管部材300の入水接続口312と止水栓230の接続口(図示せず)の間にパッキン(図示せず)を介装して分岐配管部材300の袋ナット320を締め付けることにより分岐配管部材300を止水栓230に固定する。この締め付け作業時に図2の矢印Bの方向からスパナやプライヤ等の工具で本体310の保持部318を保持することにより、本体310の供回りを防止して所定の角度を維持する。
【0032】
次に、分岐配管部材300と給水管240との接続を行う。この場合も分岐配管部材300の出水接続口313と給水管240の接続口(図示せず)の間にパッキン(図示せず)を介装して給水管240の袋ナット241を締め付けることにより分岐配管部材300と給水管240を接続する。この締め付け作業時に図2の矢印Cの方向からスパナやプライヤ等の工具で本体310の保持部318を保持することにより、本体310の供回りを防止して所定の角度を維持する。
【0033】
分岐配管部材300と止水栓230および給水管240との接続作業が終了した時点で、接続ホース330を衛生洗浄装置100の給水接続部112に接続する。給水接続部112との接続はクイック接続具(図示せず)を介して行う。
【0034】
上記のように、本実施の形態における分岐配管部材300は簡単な構造および少ない部材で構成されており、しかも接続ホース330が予め接続された状態であり、低コストでかつ設置作業の時間を短縮することができるものである。
【0035】
しかも本体310に保持部318を備え、保持部318を相当の大きさに形成することにより、入水接続口312と出水接続口313の接続に伴う両方の締め付け作業時に本体310を確実に保持することができるので施工精度を高めることが可能となり、接続部からの水漏れ等の異常の発生を抑制することができるとともに、施工の作業性を向上することができる。
【0036】
また、本実施の形態の分岐配管部材300を使用して衛生洗浄装置100の設置を行うことにより、設置作業を簡単な作業で短時間実施することができるとともに、高精度の設置状態を得ることができる。
【0037】
なお、本実施の形態は、接続ホース330または固定金具331の直径がフランジ317の直径よりも小さい場合の内容であるが、接続ホース330または固定金具331の直径がフランジ317の直径よりも大きい場合は、接続ホース330または固定金具331の大きい方の外周以上に突出した平面を有する保持部318を形成することで、同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明にかかる分岐配管部材は、低コストと作業性を向上することが可能となるので、水以外の配管部材等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0039】
100 衛生洗浄装置
112 給水接続部
300 分岐配管部材
310 本体
311 胴部
316 分岐部
315 接続ねじ
317 フランジ
318 保持部
320 袋ナット
330 接続ホース
331 固定金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主流路を内設した胴部の途中に前記主流路より分岐した分岐流路を内設した分岐部を備えた略T字状の本体と、
前記本体の前記主流路の一方の接続口に回転自在に設置された袋ナットと、
前記分岐流路の接続口に固定金具を介して接続された接続ホースと、を含み、
前記本体の他方の接続口の外周には接続ねじと、前記接続ねじの外径より大きい円形のフランジを備え、前記本体の前記胴部の両面に前記フランジの外周以上に突出した平面を有する保持部が形成されたことを特徴とする、
分岐配管部材。
【請求項2】
前記保持部は前記フランジの前記接続ねじ側の端部より、前記分岐流路の少なくとも中心を超える範囲まで形成された、
請求項1に記載の分岐配管部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の分岐配管部材を使用して、前記分岐配管部材の前記接続ホースを給水接続部に接続した構成の、
衛生洗浄装置。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−215256(P2012−215256A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81452(P2011−81452)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】