説明

分散したカーボンナノチューブを含むポリマー材料

【課題】(1)99〜20重量部の一種または複数のポリマーと、(2)0.1〜80重量部のカーボンナノチューブと、(3)0.05〜80重量部のA/B/C、B/Cおよび/またはC/B/Cブロックコポリマーの中から選択される少なくとも一種の分散剤とから成る、ポリマー材料中にカーボンナノチューブが分散したポリマー材料。
【解決手段】(a)各ブロックが共有結合によって互いに結合しているか、共有結合を介してブロックの一方に結合し且つ別の共有結合を介して他方のブロックに結合した中間分子を介して互いに結合し、(b)Cはポリマー材料と化学的および/または物理的に相互作用し、(c)Bはポリマー材料およびCブロックと非混和性で、そのガラス転移温度Tgはポリマー材料の使用温度よりも低く、(d)Aはポリマー材料、BブロックおよびCブロックと非混和性で、そのTgまたはその融点TmはBのTgより高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンナノチューブを含むポリマー材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(CNT)はその極めて高い機械特性およびその極めて高い長さ/直径比によって、補強材のような大きな利点を有する材料である。さらに、その電気および熱特性によって、カーボンナノチューブが混和された材料の導電性を変えるのに用いることもできる。
【0003】
カーボンナノチューブは巻かれたグラファイトシートで作られ、その先端はフラーレン類似構造を有する五角形および六角形から成る半球で終わっている。
カーボンナノチューブはSWNT(単一壁ナノチューブ)とよばれる単一シートか、MWNT(多重壁ナノチューブ)とよばれる複数の同心シートから成ることは知られている。一般に、SWNTはMWNTより製造が難しい。
【0004】
下記文献には20重量%以下のCNTを含むポリマー組成物が開示されている。
【特許文献1】欧州特許第692,136号公報
【0005】
この組成物は熱可塑性または熱硬化性であり、ポリマーとCNTとを溶融混合して製造される。しかし、ポリマーマトリクス中のCNTの分散が均一でなく、所望の機械的および/または電気的特性が不十分であることが分かっている。
CNTを混和したポリマー材料中でのCNTの分散を改良して、より均一な材料を得ることに対する需要があるが、この需要は満たされていない。
下記文献にはCNTを官能化してポリマーマトリクス中でのCNTの分散性を改良する方法が提案されている。
【特許文献2】欧州特許第1,359,121号公報
【特許文献3】欧州特許第1,359,169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的はポリマー材料中でのCNTの分散を改良して、より均一な材料を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の対象は、下記の(1)〜(3)からなるポリマー材料にある:
(1)99〜20重量部の一種または複数のポリマー、
(2)0.1〜80重量部のカーボンナノチューブおよび
(3)0.05〜80重量部のA/B/C、B/Cおよび/またはC/B/Cブロックコポリマーの中から選択される少なくとも一種の分散剤、
ここで、
(a)各ブロックが共有結合によって互いに結合しているか、共有結合を介してブロックの一方に結合し且つ別の共有結合を介して他方のブロックに結合した中間分子を介して互いに結合し、
(b)Cはポリマー材料と化学的および/または物理的に相互作用し、好ましくはポリマー材料と混和性があり、
(c)Bはポリマー材料およびCブロックと非混和性で、そのガラス転移温度Tgはポリマー材料の使用温度よりも低く、
(d)Aはポリマー材料、BブロックおよびCブロックと非混和性で、そのTgまたはその融点TmはBのTgより高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
「ポリマー(一種または複数)」とは任意タイプの一種または複数のポリマー、すなわち、リジッドまたはエラストマーの、非晶質、結晶および/または半結晶な、熱可塑性または熱硬化性の、ホモポリマーまたはコポリマーをベースにした任意の組成物を意味する。この組成物は一種または複数の各種ポリマーと、ポリマーに通常添加される種々の添加剤、アジュバントおよび/または充填剤、例えば安定化剤、可塑剤、重合触媒、染料、顔料、潤滑剤、難燃剤、強化材および/または充填材および重合溶剤との混合物にすることもできる。
【0009】
上記ポリマーはエポキシドおよび/またはグリシジルまたはエーテルタイプ、モノカルボン酸、ジカルボン酸またはポリカルボン酸タイプ(飽和または不飽和、芳香族または非芳香族)の官能基または酸由来の官能基、例えば無水物、エステル、アミドおよび/またはイミド、ビニルまたは芳香族ビニルタイプ等の官能基を含むポリマーにすることもできる。以下に示すポリマーの定義は所定ポリマーが上記官能基のいくつかを含む場合、重複しうることは理解できよう。
【0010】
熱硬化性ポリマーとは三次元ネットワークを形成するように種々の長さのポリマー鎖が共有結合によって互いに結合した材料と定義できる。例としてはシアノアクリレート、ビスマレイミドおよび硬化剤によって架橋されたエポキシ樹脂がある。
シアノアクリレートの中ではモノマーCH2=C(CN)COORの重合(Rは各種の基にすることができる)で得られる熱硬化性材料である2−シアノアクリル酸のエステルが挙げられる(硬化剤の添加は不要)。
【0011】
ビスマレイミド型の熱硬化性樹脂の例としては下記を挙げることができる:
メチレンジアニリン+ベンゾフェノンジアンヒドリド+ナディクイミド
メチレンジアニリン+ベンゾフェノンジアンヒドリド+フェニルアセチレン
メチレンジアニリン+無水マレイン酸+マレイミド。
【0012】
熱硬化性材料は熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤との反応で得られるものが好ましい。これはオキシラン基を有するオリゴマーと硬化剤との反応で得られる任意の化合物と定義できる。このエポキシ樹脂の反応によって得られる架橋物質は三次元網を形成し、この三次元網の密度は使用する樹脂と硬化剤の種類に依存する。
【0013】
「エポキシタイプのポリマー」とは開環によって重合可能な少なくとも二つのオキシラン型官能基を有する任意の有機化合物を意味する。この「エポキシポリマー」という用語には室温(23℃)またはそれ以上の温度で液体である任意のエポキシ樹脂が含まれる。このエポキシ樹脂はモノマー状またはポリマー状でよく、また、脂肪族、脂環式化合物、複素環式化合物または芳香族でよい。エポキシ樹脂の例としてはレゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ブロモビスフェノールFジグリシジルエーテル、m−アミノフェノールトリグリシジルエーテル、テトラグリシジルメチレンジアニリン、(トリヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、フェノールホルムアルデヒドノボラックポリグリシジルエーテル、オルトクレゾールノボラックポリグリシジルエーテルおよびテトラフェニルエタンテトラグリシジルエーテルを挙げることができる。これらの樹脂の少なくとも2つの混合物を使うこともできる。
【0014】
一分子当たり少なくとも1.5個のオキシラン基、好ましくは2〜4個のオキシラン基を有するエポキシ樹脂が好ましい。また、少なくとも一つの芳香環を有するエポキシ樹脂、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルが好ましい。
【0015】
硬化剤は室温または室温以上の温度で反応するエポキシ樹脂の硬化剤として一般に使用されている硬化剤である。例としては以下のものを挙げることができるが、下記のものに限定されるものではない。
(1)酸無水物、特に無水コハク酸、
(2)芳香族または脂肪族ポリアミン、特にジアミノジフェニルスルホン(DDS)、メチレンジアニリン、および、4,4'−メチレンビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)(MCDEA)
(3)ジシアンジアミドと、その誘導体、
(4)イミダゾール、
(5)ポリカルボン酸、
(6)ポリフェノール
【0016】
エポキシドおよび/またはグリシジル官能基を有するポリマーの例としてはエチレンと一種または複数の不飽和エポキシドとの共重合または一種または複数の不飽和エポキシドをポリエチレンにグラフトして得られるエチレンと少なくとも一種の不飽和エポキシドとのコポリマーが挙げられる。グラフトは過酸化物の存在下で溶融体中の溶媒相またはポリエチレンに行うことができる。グラフト化方法自体は当業者に公知である。エチレンと不飽和エポキシドとの共重合では、200〜2500バールの圧力で通常操作するラジカル重合法を用いることができる。
【0017】
「ポリエチレン」とはエチレンのホモポリマーおよびコポリマーを意味する。
エチレンのコモノマーとしては下記(1)〜(4)を挙げることができる:
(1)α−オレフィン、好ましくは3〜30個の炭素原子を有するα−オレフィン(例としてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル-1-ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセンおよび1−トリアコンテンが挙げられ、これらのα−オレフィンは単独または2種類以上の混合物で使用できる)
(2)不飽和カルボン酸のエステル、例えばアルキル基が24個以下の炭素原子を含むアルキル(メタ)アクリレート(アルキルアクリレートまたはメタクリレートの例としては特にメチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる)
(3)飽和カルボン酸ビニルエステル、例えば酢酸ビニルまたはプロピオン酸ビニル等
(4)ジエン、例えば1,4−ヘキサジエン。
ポリエチレンは上記コモノマーの複数を含むことができる。
【0018】
ポリエチレンは複数のポリマーの混合物にすることができるが、少なくとも50mol%、好ましくは75mol%のエチレンを含むのが有利であり、密度は0.86〜0.98g/cm3にすることができ、MFI(190℃、2.16kgでの粘度指数)は20〜1000g/10分であるのが有利である。
ポリエチレンの例としては下記を挙げることができる:
(1)低密度ポリエチレン(LDPE)
(2)高密度ポリエチレン(HDPE)
(3)直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)
(4)超低密度ポリエチレン(VLDPE)
【0019】
(5)メタロセン触媒を用いて得られるポリエチレン、すなわち、ジルコニウムまたはチタンとこの金属に結合した2つの環状アルキル分子とで構成されるモノサイト触媒の存在下でエチレンとαオレフィン(例えばプロピレン、ブテン、ヘキセンまたはオクテン)とを共重合して得られるポリマー。メタロセン触媒は一般に金属に結合した2つのシクロペンタジエン環で構成される。この触媒は共触媒または活性剤としてのアルミノオキサン、好ましくはメチルアルミノオキサン(MAO)と一緒に用いられることが多い。シクロペンタジエンが結合する金属としてハフニウムを用いることもできる。他のメタロセンはIVA、VAおよびVIA族の遷移金属を含むことができる。ランタニド系列の金属を用いることもできる:
【0020】
EPR(エチレン−プロピレン−ゴム)エラストマー
EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン)エラストマー
ポリエチレンとEPRまたはEPDMとの混合物、および
60重量%以下、好ましくは2〜40重量%の(メタ)アクリレートを含むことができるエチレン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマー。
グラフト化方法自体は当業者に公知である。
【0021】
不飽和エポキシドの例としては特に下記が挙げられる:
(1)脂肪族グリシジルエステルおよびエーテル、例えばアリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、グリシジルマレエート、グリシジルイタコネート、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレート、
(2)脂環式グリシジルエステルおよびエーテル、例えば2−シクロヘキシ−1−エン−グリシジルエーテル、ジグリシジルシクロヘキセン−4,5−カルボキシレート、グリシジルシクロヘキセン−4−カルボキシレート、グリシジル2−メチル−5−ノルボルネン−2−カルボキシレートおよびジグリシジルエンド−シス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシレート。
【0022】
エポキシドおよび/またはグリシジル官能基を有するポリマーは上記のポリマーをさらに含み、一種または複数のモノマーのいくつかはエポキシドおよび/またはグリシジル官能基が、エポキシドおよび/またはグリシジル官能基を有するモノマーと共重合可能な不飽和モノマー、特に(メタ)アクリルエステル、例えばエチレン/メチルメタクリレート/グリシジル/(メタ)アクリレートターポリマーで置換されている。
【0023】
エポキシドおよび/またはグリシジル官能基を有するポリマーはエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/不飽和エポキシドコポリマーにすることができる。このコポリマーには40重量%以下、好ましくは5〜40重量%のアルキル(メタ)アクリレートと10重量%以下、好ましくは0.1〜8重量%以下の不飽和エポキシドが含まれるのが有利である。不飽和エポキシドはグリシジル(メタ)アクリレートであるのが有利である。
【0024】
アルキル(メタ)アクリレートをメチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートおよび2−エチルへキシルアクリレートから選択するのが有利である。アルキル(メタ)アクリレートの量は20〜35%にするのが好ましい。MFIは5〜100g/10分(190℃、2.16kg)、融点が60〜110℃であるのが有利である。このコポリマーはモノマーをラジカル重合して得ることができる。
【0025】
エポキシド官能基を有する市販のポリマーの例としては、本出願人によるロタダー(LOTADER、登録商標)GMA(エチレン/メチルメタクリレート/グリシジルメタクリレートターポリマー)が挙げられる。
酸および/または酸無水物を有するポリマーの例としては、不飽和カルボン酸無水物がグラフトされたポリオレフィン、および、例えばラジカル重合で得られたオレフィンと不飽和カルボン酸無水物とのコポリマー、特に上記定義の、エチレンをベースにしたものが挙げられる。
【0026】
不飽和カルボン酸無水物は無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリル琥珀酸、シクロヘキシ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、4−メチレンシクロヘキシ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、x−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,2−ジカルボン酸の中から選択することができる。無水マレイン酸を用いるのが有利である。全部または一部の無水物を、一種または複数の不飽和カルボン酸、例えば(メタ)アクリル酸で置換しても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0027】
エチレンと不飽和カルボン酸無水物とのコポリマー、すなわち不飽和カルボン酸無水物がグラフトされていないものは、エチレンと不飽和カルボン酸無水物と、任意成分としての、グラフトされるエチレンコポリマーの所で挙げたコモノマーの中から選択することができる別のモノマーを含むコポリマーである。
【0028】
エチレン/無水マレイン酸コポリマーおよびエチレン/一種または複数のアルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸コポリマーを用いるのが有利である。これらのコポリマーは一般に0.2〜10重量%の無水マレイン酸と、0〜40重量%、好ましくは5〜40重量%のアルキル(メタ)アクリレートとを含む。MFIは20〜100(190℃、2.16kg)である。アルキル(メタ)アクリレートは既に述べた通りのものである。融点は80〜120℃である。
【0029】
このようなコポリマーは200〜2500barにすることができる圧力でラジカル重合によって調製するか、顆粒の形で市販されている。このようなコポリマーは例えば、GALA社(米国ヴァージニア州)の水中切断技術または低温粉砕を用いたミクロ造粒によって粉末にすることもできる。
【0030】
エステル型の酸由来の官能基を有するポリマーの例としては、特に下記文献に記載の(アルキル)アクリレート型のポリマーまたはアクリルポリマー、一種または複数のアルキル(アルキル)アクリレートのホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【非特許文献1】カークオスマ(kirk-Othmer) 化学技術百科辞典、第4版、第1巻、第292〜293頁
【非特許文献2】カークオスマ(kirk-Othmer) 化学技術百科辞典、第4版、第16巻、第475〜478頁
【0031】
さらに、アルキル(アルキル)アクリレートの比率が少なくとも50mol%であるという条件で、一種または複数のアルキル(アルキル)アクリレートと、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンおよびイソプレンの中から選択される少なくとも一種のモノマーとのコポリマーも挙げられる。
【0032】
エステル型の酸由来の官能基を有するポリマーの例としては、さらに、飽和カルボン酸の一種または複数のビニルエステルに由来の単位を含むポリマー、例えば酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルが挙げられる。例えば、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、特に商品名EVATANE(登録商標)、ELVAX(登録商標)およびULTRATHENE(登録商標)で市販されているものが挙げられる。
【0033】
アミド官能基を有するポリマーの例としては下記(a)および(b)の縮合:
(a)アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸(PA−11)および12−アミノドデカン酸(PA−12)のような1種または複数のアミノ酸またはカプロラクタム(PA−6)、エナントラクタムおよびラウリラクタム等の1種または複数のラクタム;
(b)ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等のジアミンと、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカンジカルボキシル酸等の二酸との1種または複数の塩または混合物
で得られるポリマー、または、
(c)これらの所定のモノマーの混合物が挙げられ、カプロラクタムとラウリルラクタムとの縮合によってコポリアミド、例えばPA−6/12が挙げられる。
【0034】
6〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンと9〜12個の炭素原子を有する脂肪族二酸との縮合で得られる脂肪族ポリアミドの例としては下記を挙げることができる:
ヘキサメチレンジアミンと1,12−ドデカンジオン酸の縮合で得られるPA−6,12。
【0035】
6〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンと9〜12個の炭素原子を有する脂肪族二酸とアミノ酸との縮合で得られる脂肪族ポリアミドの例としては下記を挙げることができる:
カプロラクタムとヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とラウリルラクタムとの縮合で得られるPA−6/6,6/12。
【0036】
アミド官能基を有するポリマーは可塑化することができる。可塑剤は一般に、n−ブチルベンゼンスルホンアミド(BBSA)、エチルトルエンスルホンアミドまたはn−シクロヘキシルトルエンスルホンアミド等のベンゼンスルホンアミド誘導体、パラヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシルおよびパラヒドロキシ安息香酸−2−デシルヘキシル等のヒドロキシ安息香酸のエステル、オリゴエチレンオキシテトラヒドロフルフリルアルコール等のテトラヒドロフルフリルアルコールのエステルまたはエーテル、クエン酸またはオリゴエチレンオキシマロネート等のヒドロキシマロン酸のエステルの中から選択される。特に好ましい可塑剤はn−ブチルベンゼンスルホンアミド(BBSA)である。可塑剤は重縮合中または重縮合後にポリアミドに導入することができる。可塑剤の比率は一般にアミド官能基を有するポリマーの30重量%以下にすることができる。
【0037】
アミド官能基を有するポリマーはポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むコポリマー(PEBA)にすることもできる。このコポリマーは特に下記(1)〜(3)のような反応性末端基を有するポリアミドブロックと反応性末端基を有するポリエーテルブロックとの共重縮合で得られる:
(1)ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックと、ジカルボン酸鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
(2)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオールとよばれる脂肪族ジヒドロキシル化α,ω−ポリオキシアルキレンブロックをシアノエチル化および水素化して得られるジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
(3)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオール(この場合に得られる生成物を特にポリエーテルエステルアミドという)。
【0038】
ジカルボン鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば、連鎖制限剤のジカルボン酸の存在下でのポリアミド先駆体の縮合で得られる。
ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば、連鎖制限剤のジアミンの存在下でのポリアミド先駆体の縮合で得られる。
【0039】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むポリマーはランダムに分散する単位を含んでいてもよい。このポリマーはポリエーテルとポリアミドブロック先駆体との同時反応で製造される。例えば、ポリエーテルジオールと、ポリアミド先駆体と、連鎖制限剤の二酸とを反応させることができる。基本的に種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するポリマーが得られ、さらに各成分がランダムに反応し、ポリマー鎖中に分散した成分を含むことがある。
【0040】
ポリエーテルジアミンと、ポリアミド先駆体と、連鎖制限剤の二酸とを反応させることもできる。基本的に種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するポリマーが得られ、さらに各成分がランダムに反応し、ポリマー鎖中に分散した成分を含むことがある。
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むこれらのコポリマー中のポリエーテルブロックの量は一般にコポリマーの10〜70重量%である。
【0041】
ポリエーテルジオールブロックをそのまま用い、カルボキシ末端を有するポリアミドブロックと共重縮合するか、アミノ化してポリエーテルジアミンに変換し、カルボキシ末端を有するポリアミドブロックと縮合する。また、ポリエーテルジオールブロックをポリアミド先駆体および連鎖制限剤と混合してランダムに分散した単位を有するポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むポリマーにすることもできる。
【0042】
アミド官能基を有する市販のポリマーとしては、例えば脂肪族ポリアミドであるナイロン(NYLON、登録商標)、グリルアミド(GRILAMID、登録商標)およびリルサン(RILSAN、登録商標)およびPEBAであるペバックス(PEBAX、登録商標)およびベスタミド(VESTAMID、登録商標)が挙げられる。
【0043】
ポリウレタンはポリエーテルジオールの残基であるポリエーテルのソフトブロックと少なくとも一種のジイソシアネートと少なくとも一種の短いジオールとの反応で得られるリジッドなブロック(ポリウレタン)とからなる。鎖延長剤の短いジオールはポリエーテルエステルの説明の所で挙げたグリコールの中から選択できる。ポリウレタンブロックとポリエーテルブロックはイソシアネート官能基とポリエーテルジオールのOH基との反応で得られる連結部を介して結合される。
【0044】
さらに、例えばジイソシアネート単位と、非晶質ポリエステルジオールから得られる単位と、鎖延長剤の短いジオールから得られる単位とからなるポリエステルウレタンを挙げることもできる。これは可塑剤を含むことができる。
市販の熱可塑性ポリウレタンの例としてはElastogran Bayer社の製品エラストルラン(ELASTOLLAN、登録商標)が挙げられる。
【0045】
エーテル官能基を有するポリマーの例としては、ポリオキシアルキレン、特にポリオキシメチレン(POM)、ポリ(プロピレン−オキシドエチレン−オキシド)ブロックを有するコポリマー、および、酸化ポリフェニレン(PPO)が挙げられる。
【0046】
ヒドロキシル官能基を末端に有するポリエーテル、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、および、ポリエーテルエステルであるポリアルキレングリコールおよび、ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーであるポリエーテルエステルが挙げられる。これらはポリエーテルジオールの残基であるポリエーテルのソフトブロックと少なくとも一種のジイソシアネートと少なくとも一種の短いジオールとの反応で得られるリジッドなセグメント(ポリエステルブロック)とからなる。ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとは、酸の酸官能基とポリエーテルジオールのOH官能基との反応で生じるエステル結合を介して結合されている。鎖延長剤の短いジオールはネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、式:HO(CH2nOHの脂肪族グリコール(ここで、nは2〜10の整数)から成る群の中から選択できる。この二酸は8〜14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸であるのが有利である。50mol%以下の芳香族ジカルボン酸を少なくとも一種の別の8〜14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸で置換および/または20mol%以下を2〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸で置換することができる。
【0047】
芳香族ジカルボン酸の例としては下記のものが挙げられる:テレフタル酸、イソフタル酸、ビベンゾイン酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ジフェニレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、エチレンビス(p−安息香)酸、1,4−テトラメチレンビス(p−オキシ安息香)酸、エチレンビス(パラ−オキシ安息香)酸および1,3−トリメチレンビス(p−オキシ安息香)酸。グリコールの例としては下記が挙げられる:エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,8−オクタメチレングリコール、1,10−デカメチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノール。ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーは例えばPEG、PPG、PTMGのようなポリエーテルジオールに由来のポリエーテル単位、テレフタル酸のようなジカルボン酸単位、グリコール単位(エタンジオールまたは1,4−ブタンジオール)を有するコポリマーである。ポリエーテルと二酸との連鎖によってソフトセグメントが形成され、ブタンジオールのグリコールと二酸との連鎖によってコポリエーテルエステルのリジッドセグメントが形成される。このようなコポリエーテルエステルは例えば下記文献に記載されている。これらのポリエーテルエステルは熱可塑性エラストマーであり、可塑剤を含んでいてもよい。
【特許文献4】欧州特許第402,883号公報
【特許文献5】欧州特許第405,227号公報
【0048】
エーテル官能基を有する市販のポリマーとしては、例えばPOMであるアルコン(ALCON、登録商標)、ホスタホルム(HOSTAFORM)、ブロックポリエーテルエステルであるアルニテル(ARNITEL、登録商標)、ヒョトレル(HYTREL、登録商標)およびロモド(LOMOD、登録商標)およびブロックポリエーテルエステルアミドであるペバックス(PEBAX、登録商標)およびベスタミド(VESTAMID、登録商標)が挙げられる。
【0049】
ビニル官能基を有するポリマーは特にビニルモノマー、例えば塩化ビニルに由来のホモポリマーとコポリマーの両方である。ビニルポリマーの例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化PVC等が挙げられる。
【0050】
芳香族ビニル官能基を有するポリマーは特に不飽和エチレンを有する芳香族モノマー、例えばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−エトキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、3−tert−ブチルスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレンおよび1−ビニルナフタレンに由来のホモポリマーとコポリマーの両方である。スチレンポリマーの例としてはポリスチレン(PS)、エラストマーで改質したポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマー、エラストマーで改質したSAN、特にABS、例えばスチレンおよびアクリロニトリルをポリブタジエンまたはブタジエン−アクリロニトリルコポリマー主鎖にグラフト(グラフト重合)して得られるABSおよびSAN/ABS混合物、ポリ(α−メチルスチレン)およびポリクロロスチレンが挙げられる。
【0051】
上記エラストマーは例えばEPR(エチレン−プロピレンゴムまたはエチレン−プロピレンエラストマー)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴムまたはエチレン−プロピレン−ジエンモノマーエラストマー)、ポリブタジエン、アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、ポリイソプレンおよびイソプレン/アクリロニトリルコポリマーにすることができる。
【0052】
耐衝撃性ポリスチレンは(i)ポリスチレンを、エラストマー、例えばポリブタジエン、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー、ポリイソプレンまたはイソプレン/アクリロニトリルコポリマーと混合するか、(ii)スチレンをポリブタジエンまたはブタジエン/アクリロニトリルコポリマー主鎖にグラフト(グラフト重合)して得ることができる。
【0053】
上記スチレンポリマーでは、スチレンモノマーの一部をスチレンモノマーと共重合可能な不飽和モノマー、特に(メタ)アクリルエステルで置換することができる。
【0054】
スチレンコポリマーの例としてはスチレン/クロロスチレンコポリマー、スチレン/プロピレンコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、スチレン/イソプレンコポリマー、スチレン/塩化ビニルコポリマー、スチレン/酢酸ビニルコポリマー、スチレン/アルキルアクリレート(メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレートまたはフェニルアクリレート等)コポリマー、スチレン/アルキルメタクリレート(メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、フェニルメタクリレート等)コポリマー、スチレン/メチルクロロアクリレートコポリマーおよびスチレン/アクリロニトリル/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーが挙げられる。これらのコポリマーのコモノマー含有率は一般に20重量%以下にする。
【0055】
芳香族ビニル官能基を有する市販のポリマーとしては例えば無水マレイン酸含有率が低いFINAPRENE(登録商標)(SBS &SBR)、KRALON(登録商標)(ABS)、KRATON(登録商標)(SBS &SEBS)、LACORAN(登録商標)(ABS)、LACQRENE(登録商標)(PSおよび衝撃改質PS)、LACQSAN(登録商標)(SAN)およびDYLARC(登録商標)(SMA)(ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸))および無水マレイン酸含有率が高いポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)が挙げられる。
【0056】
少なくとも一種のカルボン酸または無水カルボン酸官能基を有する官能化ポリオレフィンも挙げられる。
官能化ポリオレフィンは反応性単位(官能価)を有する官能化されていないポリオレフィンポリマーにすることができる。官能化されていないポリオレフィンは一般にα−オレフィンまたはジオレフィンのホモポリマーまたはコポリマー、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−オクテンまたはブタジエンである。例としては下記を挙げることができる:
(1)エチレンのホモポリマーおよびコポリマー、特にLDPE、HDPE、LLDPE(直鎖低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)およびメタロセンポリエチレン、
(2)プロピレンのホモポリマーまたはコポリマー、
(3)エチレン/α−オレフィンコポリマー、例えばエチレン/プロピレン、EPR(エチレン−プロピレン−ゴム)およびエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)、
【0057】
(4)スチレン/エチレン−ブチレン/スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレンブロックコポリマー(SIS)またはスチレン/エチレン−プロピレン/スチレン(SEPS)ブロックコポリマー。
(5)エチレンと、アルキル(メタ)アクリレート(例えばメチルアクリレート)等の不飽和カルボン酸の塩またはエステルまたは酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステルの中から選択される少なくとも1種の化合物とのコポリマー。コモノマーの比率は40重量%以下にすることができる。
(6)上記ポリオレフィンの少なくとも2種の混合物、例えばEPRまたはEPDMコポリマーと混合したポリプロピレン。必要に応じて混合中に可塑化または架橋することができる。
【0058】
官能化されていないポリオレフィンはプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーおよびエチレンのホモポリマーまたはエチレンと、ブテン、ヘキセン、オクテンまたは4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン型のコモノマーとのコポリマーの中から選択される。例えば、PP、高密度PE、中密度PE、直鎖低密度PE、低密度PEおよび超低密度PEが挙げられる。これらのポリエチレンは「チーグラー」型の触媒または最近ではいわゆる「メタロセン」触媒によって「ラジカル」法で製造されることは当業者に知られている。
【0059】
官能化されていないポリオレフィンは非晶質ポリ(α−オレフィン)(APAO)の中から選択することもできる。エチレン、プロピレン、ブテンまたはヘキセン由来のAPAOを用いるのが好ましい。ブテン含有率の高いエチレンプロピレンブテンコポリマー、または、プロピレン含有率の高いエチレンプロピレンブテンコポリマー、またはブテンホモポリマーまたはコポリマーを用いるのが有利である。
反応性単位または官能価は酸または無水物官能基である。例としては上記ポリオレフィンに(メタ)アクリル酸等のカルボン酸またはそれに対応する塩またはエステルあるいは無水マレイン酸等の無水カルボン酸をグラフトまたは共重合または3元共重合化したものが挙げられる。官能化ポリオレフィンは例えばPE/EPR混合物であり、その重量比は広範囲、例えば40/60〜90/10に変えることができる。この混合物に例えば0.01〜5重量%のグラフト化度で無水物、特に無水マレイン酸を共グラフト化する。
【0060】
官能化ポリオレフィンは無水マレイン酸を例えば0.01〜5重量%のグラフト化度でグラフトした下記の(コ)ポリマーの中から選択することができる。
(1)PE,PP,例えば35〜80重量%のエチレンを含むエチレンとプロピレン、ブテン、ヘキセンまたはオクテンとのコポリマー、
(2)エチレン/α−オレフィンコポリマー例えばエチレン/プロピレンコポリマー、EPR(エチレン−プロピレン−ゴム)およびエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)コポリマー。
【0061】
(3)スチレン/エチレン−ブチレン/スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン/エチレン−プロピレン/スチレンブロックコポリマー(SEPS)。
(4)40重量%以下の酢酸ビニルを含むエチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマー。
(5)40重量%以下のアルキル(メタ)アクリレートを含むエチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマー。
(6)40重量%以下のコモノマーを含むエチレン/酢酸ビニル(EVA)およびアルキル(メタ)アクリレートターポリマー。
【0062】
官能化ポリオレフィンはエチレンと、少なくとも一種の下記モノマーのコポリマーまたはターポリマーにすることもできる:アルキル(メタ)アクリレートまたは飽和カルボン酸ビニルエステルおよび無水マレイン酸または(メタ)アクリル酸等の無水物。
この型の官能化ポリオレフィンの例としてはエチレンが好ましくは少なくとも60重量%で、ターモノマー(官能基)が例えば0.1〜10重量%のコポリマーである下記のコポリマーが挙げられる:
【0063】
(1)エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸または無水マレイン酸コポリマー、
(2)エチレン/酢酸ビニル/無水マレイン酸コポリマー、
(3)エチレン/酢酸ビニルまたはアルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸または無水マレイン酸コポリマー。
「アルキル(メタ)アクリレート」はC1〜C12のアルキルメタクリレートおよびアクリレートを示し、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレートおよびエチルメタクリレートの中から選択することができる。
【0064】
上記の官能化されたまたは官能化されていないオレフィンコポリマーはランダムまたはブロックで共重合でき、線形または分岐した構造を有することができる。
これらのポリオレフィンの分子量、MFI指数および密度は広範囲に変えることもできることは当業者には理解できよう。MFI(メルトフローインデックス)はASTM規格1238に準じて測定される。
【0065】
官能化ポリオレフィンはα−オレフィン単位と反応性極性官能基、例えばカルボン酸または無水カルボン酸官能基を有する単位とを有する任意のポリマーの中から選択される。このようなポリマーの例としてはエチレン/アルキルアクリレート/無水マレイン酸、例えば本出願人の製品ロタダー(LOTADER、登録商標)または無水マレイン酸がグラフトされたポリオレフィン、例えば本出願人の製品オレバック(OREVAC、登録商標)とのターポリマーならびにエチレン/アルキルアクリレート/(メタ)アクリル酸またはエチレン/酢酸ビニル/無水マレイン酸、例えば本出願人の製品オレバック(OREVAC、登録商標)とのターポリマーが挙げられる。
【0066】
フルオロポリマーも挙げることができる。フルオロポリマーとは鎖中に重合を開始できるビニル基と、このビニル基に直接結合した少なくとも一つのフッ素原子、フルオロアルキル基またはフルオロアルコキシ基とを有する化合物の中から選択される少なくとも一種のモノマーを含む任意のポリマーを意味する。
【0067】
このモノマーの例としてはフッ化ビニル;フッ化ビニリデン(VF2);トリフルオロエチレン(VF3);クロロトリフルオロエチレン(CTFE);1,2−ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン(TFE);ヘキサフルオロプロピレン(HFP);ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)等のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル);ペルフルオロ(1,3−ジオキソール);ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)(PDD);式CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2X(ここでXはSO2F、CO2H、CH2OH、CH2OCNまたはCH2OPO3H)の化合物; 式CF2=CFOCF2CF2SO2F)の化合物; 式F(CF2nCH2OCF=CF2(ここでnは1、2、3、4または5)の化合物; 式R1CH2OCF=CF2(ここでR1は水素またはF(CF2zで、zは1、2、3または4)の化合物; 式R3OCF=CH2(ここでR3はF(CF2Z-で、zは1、2、3または4)の化合物;ペルフルオロブチルエチレン(PFBE);3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンを挙げることができる。
上記のフルオロポリマーの中では、フッ化ビニリデンホモポリマーおよびコポリマーが好ましい。
【0068】
本発明の組成物に含まれるポリマーの例としては特に、本出願人の製品LOTADER(登録商標)、LOTRYL(登録商標)、EVATANE(登録商標)、ELVALLOY(登録商標)、OREVAC(登録商標)、PEBAX(登録商標)およびRILSAN(登録商標)、および、デュポン社の製品HYTREL(登録商標)およびGEプラスチック社の製品NORYL(登録商標)ポリマーが挙げられるが、少なくとも一種の上記ポリマーおよび/または上記の意味を有する少なくとも一種のポリプロピレンをベースにした木材および/またはリグニンを充填した化合物も挙げられる。
【0069】
カーボンナノチューブは任意の型すなわち官能化された、または、官能化されていないCNT、MWNT、SWNTにすることができる。
このカーボンナノチューブの形状因子(L/D)は5以上、好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上である。
カーボンナノチューブは0.4〜50nmの直径を有し、その長さは直径の100〜100000倍である。
本発明の好ましい実施例では、カーボンナノチューブは多重壁ナノチューブ(MWNT)の形で、直径が5〜30nmで、長さが0.3μm以上である。
カーボンナノチューブの量は、ポリマー材料の全重量の0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部であるのが有利である。
【0070】
ジブロックB/CのCはスチレンおよびメチルメタクリレートのような短鎖のメタクリレートの中から選択される少なくとも一種のモノマーの重合で得られる。Cはメチルメタクリレートモノマーから成るのが好ましく、すなわち、少なくとも50重量%のメチルメタクリレート、好ましくは少なくとも75重量%のメチルメタクリレートを含むのが好ましい。このCブロックを構成する他のモノマーはアクリル系のモノマーであってもなくてもよく、反応性モノマーであってもなくてもよい。「反応性モノマー」とは一種または複数のポリマーが熱硬化性型で且つ硬化剤を含む場合に、一種または複数のポリマーの少なくとも一つの官能基または硬化剤の化学基と反応可能な化学基を意味し、例としてはオキシラン基、アミン基またはカルボキシル基等の反応性官能基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。反応性モノマーは(メタ)アクリル酸またはこの酸に加水分解可能な他の任意のモノマーにすることができる。Cブロックを構成できる他のモノマーとしてはグリシジル(メタ)アクリレートおよびtert-ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。Cブロックは少なくとも60%がシンジオタクティックPMMAから成るのが好ましい。
【0071】
BのTgは0℃以下、好ましくは−20℃以下にする。
エラストマブロックBを合成するのに用いられるモノマーはブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエンから選択されるジエンにすることができる。このBはポリジエン、特にポリブタジエン、ポリイソプレンおよびこれらのランダムコポリマーまたは部分的または完全に水素化されたポリジエン類の中から選択するのが好ましい。ポリブタジエンの中ではTgが最も低いもの、例えば1,4−ポリブタジエン(約−90℃)を使用するのが有利である(1,2−ポリブタジエン(約0℃)よりTgが低い)。Bブロックは水素化されていてもよい。この水素化は通常の方法に従って行える。
【0072】
エラストマブロックBの合成に用いるモノマーは以下のようなアルキル(メタ)アクリレートにすることができる(アクリレートの名称の後に、得られるTg値をカッコ中に示す):エチルアクリレート(−24℃)、ブチルアクリレート(−54℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(−85℃)、ヒドロキシエチルアクリレート(−15℃)および2−エチルヘキシルメタクリレート(−10℃)。ブチルアクリレートを用いるのが好ましい。BとCは非相溶であるという条件から、このアクリレートはCブロックのアクリレートとは相違する。
Bブロックは主としてポリ(1,4−ブタジエン)から成るのが好ましい。
【0073】
B/Cジブロックは10,000〜500,000g/mol、好ましくは20,000〜200,000g/molの数平均分子量を有するのが好ましい。B/CジブロックはCを5〜95%、好ましくは15〜85%含むのが好ましい。
【0074】
トリブロックC/B/CのCは、一般に、B/CジブロックのCブロックと同じモノマーおよび任意成分としてのコポリマーから形成される。トリブロックC/B/Cの二つのCブロックは互いに同一でも異っていてもよい。また、同じモノマーで、分子量が異なるものにすることもできる。このトリブロックC/B/CのCブロックはジブロックB/CのCブロックと同一でも、異なっていてもよい。このBブロックはジブロックB/CのBブロックと同じモノマーおよび任意成分としてのコモノマーから形成される。このC/B/CトリブロックのBブロックはジブロックB/Cと同一でも異なっていてもよい。
【0075】
このC/B/Cトリブロックは一般に10,000〜500,000g/mol、好ましくは20,000〜200,000g/molの数平均分子量を有する。このC/B/CトリブロックのCおよびBは下記組成を有するのが好ましい(全体で100重量%):
C:10〜80%、好ましくは15〜70%、
B:90〜20%、好ましくは85〜30%
【0076】
A/B/CトリブロックのCはジブロックB/CのCブロックと同じモノマーおよびコモノマーから成る。このA/B/CトリブロックのCブロックと、C/B/Cトリブロックの各Cブロックと、B/CジブロックのCブロックとは互いに同一でも異なっていてもよい。BブロックはジブロックB/CのBブロックと同じモノマーおよびコモノマーからなる。A/B/Cトリブロックと、C/B/Cトリブロックと、B/Cジブロックとの各Bブロックは互いに同一でも異なっていてもよい。
AのTgまたはTmは23℃以上、好ましくは50℃以上であるのが好ましい。Aブロックの例として芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレンまたはビニルトルエンから得られるもの、アルキル鎖が1〜18の炭素原子を有するアクリル酸および/またはメタクリル酸のアルキルエステルから得られるものを挙げることができる。後者の場合、AとCは互いに非相溶であるというその条件から、アクリレートはCブロックのものとは相違する。
【0077】
A/B/Cトリブロックは10,000〜500,000g/mol、好ましくは20,000〜200,000g/molの数平均分子量を有する。このA/B/Cトリブロックは下記重量組成を有するのが好ましい(全体で100%):
C:10〜80%、好ましくは15〜70%、
B:2〜80%、好ましくは5〜70%、
A:10〜88%、好ましくは15〜85%。
【0078】
Aブロックは任意の重合手段、特に制御されたラジカル重合によって製造できる。制御されたラジカル重合は周知である。すなわち、従来のラジカル重合ではラジカルの寿命が短く、反応性が高く、中間単位の立体化学性が無い等の理由で制御された構造を有するポリマーおよびコポリマーを作ることはできなかった。「制御されたラジカル重合」とは従来のラジカル重合において開始、生長反応、停止および移動の中から選択される少なくとも一つの段階が制御されるラジカル重合を意味する。制御の例としては、生長するマクロラジカルの可逆的非活性化を挙げることができる。この可逆的非活性化は反応媒体中にニトロオキシドを添加して行うことができる。難分解性ラジカル(persistent radical)の例はTEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ)で、このTEMPOはマクロラジカルを捕獲し、一般に、多分散性が極めて狭いホモポリマーが得られる。すなわち、このラジカルはラジカル重合にリビング特性を与える。また、ニトロオキシド官能基に対してα位に水素を有するβ−ホスホリル化分子を挙げることもできる。
【0079】
本発明のポリマー材料中で分散剤として用いるB/C、A/B/CおよびC/B/Cブロックコポリマーは、アニオン重合、例えば下記文献に記載の方法、または、ラジカル重合、特に制御されたラジカル重合を用いて製造することができる。
【特許文献6】欧州特許第EP 524,054号公報
【特許文献7】欧州特許第EP 749,987号公報
【0080】
分散剤の比率は99〜65重量部のポリマーに対して1〜35重量部であるのが有利である。
分散剤の比率は92〜68重量部のポリマーに対して8〜32重量部であるのがさらに有利である。
【0081】
本発明の一実施例では、分散剤はC/B/CおよびA/B/Cブロックコポリマーの他に、コア−シェルコポリマー(E)、官能化エラストマー、A/Bブロックコポリマーおよび/またはATBNまたはCTBN反応性ゴムの中から選択される少なくとも一種のポリマーを含む。
【0082】
A/BジブロックのAとBブロックは互いに非相溶性で、これらはA/B/CトリブロックのAブロックおよびBブロックと同じモノマーおよびコモノマーから成る。このAおよびBブロックは、熱硬化性材料の衝撃改質剤の他のブロックコポリマーに存在する他のAおよびBブロックと同一でも異なっていてもよい。
A/Bジブロックは一般に10,000〜500,000g/mol、好ましくは20,000〜200,000g/molの数平均分子量を有するのが好ましい。A/BジブロックのBは5〜95重量%、好ましくは15〜85重量%を含むのが好ましい。
【0083】
コア−シェルコポリマー(E)はエラストマーのコアと、少なくとも一種の熱可塑性のシェルとからなる細かな粒子の形をしており、その粒径は一般に1μm以下、好ましくは50〜500nmである。コアの例としてはイソプレンまたはブタジエンのホモポリマー、イソプレンと30mol%以下のビニルモノマーとのコポリマー、ブタジエンと30mol%以下のビニルモノマーとのコポリマーを挙げることができる。ビニルモノマーはスチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリルまたはアルキル(メタ)アクリレートにすることができる。
【0084】
コア材料の他の群はアルキル(メタ)アクリレートのホモポリマーおよびアルキル(メタ)アクリレートと30mol%以下のビニルモノマーとのコポリマーがある。アルキル(メタ)アクリレートはアクリル酸ブチルであるのが好ましい。ビニルモノマーはスチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、ブタジエンまたはイソプレンにすることができる。コポリマー(A)のコアは全体または一部が架橋されていてもよい。そのためにはコア製造中に少なくとも二官能性モノマーを加えるだげでよく、このモノマーはポリオールポリ(メタ)アクリルエステル、例えばブチレンジ(メタ)アクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレートから選択することができる。二官能性モノマーの他の例としてはジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ビニルアクリレートおよびビニルメタクリレートが挙げられる。また、重合中にグラフトまたはコモノマーとして官能性不飽和モノマー、例えば不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドを導入することによってコアを架橋することもできる。例としては無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸およびグリシジルメタクリレートが挙げられる。
【0085】
シェルはスチレンまたはアルキルスチレン、メタクリル酸メチルのホモポリマーまたは少なくとも70mol%のこれらモノマーと他方のモノマー、酢酸ビニルおよびアクリロニトリルの中から選択される少なくとも一種のコモノマーとから成るコポリマーである。このシェルはその重合中にグラフトまたはコモノマー、例えば官能性不飽和モノマー、例えば不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドを導入することによって官能化することもできる。例としては無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸およびグリシジルメタクリレートを挙げることができる。コア―シェルコポリマー(E)の例としてはポリスチレンのシェルを有するものおよびPMMAのシェルを有するコア−シェルコポリマー(E)が挙げられる。また、二つのシェル、すなわち、ポリスチレンのシェルとその外側のもう一つのPMMAのシェルを有するコア−シェルコポリマー(E)もある。これらのコポリマー(E)の例およびその製造方法は下記文献に記載されている。
【0086】
【特許文献8】米国特許第4,180,494号明細書
【特許文献9】米国特許第3,808,180号明細書
【特許文献10】米国特許第4,096,202号明細書
【特許文献11】米国特許第4,260,693号明細書
【特許文献12】米国特許第3,287,443号明細書
【特許文献13】米国特許第3,657,391号明細書
【特許文献14】米国特許第4,299,928号明細書
【特許文献15】米国特許第3,985,704号明細書
【0087】
コアは(A)の70〜90重量%でシェルが10〜30重量%であるのが好ましい。
コポリマー(E)の例としては、(i)少なくとも93mol%のブタジエンと、5mol%のスチレンと、0.5〜1mol%のジビニルベンゼンとから成る75〜80部のコアと、(ii) 同じ重量の本質的にポリスチレンからなる内側シェルとPMMAからなる外側シェルとの25〜20部の2層のシェルとからなるものが挙げられる。
【0088】
本発明の第2の実施例では、分散剤が少なくとも一種のA/B/Cブロックコポリマーと、少なくとも一種のA/Bブロックコポリマーとから成る。この衝撃改質剤は5〜80%のジブロックA/Bと、95〜20%のトリブロックA/B/Cとから成るのが好ましい。
【0089】
この組成の利点は、合成で得られたA/B/Cを精製する必要がないという点にある。すなわち、このA/B/Cトリブロックは一般にA/Bジブロックから合成され、反応ではA/BとA/B/Cの混合物が得られ、それからS/B/Mを分離するので精製は不要である。
【0090】
本発明の第3の実施例では、分散剤が少なくとも一種のA/B/Cブロックコポリマーと、少なくとも一種のコア−シェルコポリマー(E)とから成る。コア−シェルコポリマーのA/B/Cに対する比率は5〜1に対して1〜4、好ましくは3〜1に対して1〜2である。
【0091】
本発明の第4の実施例では、分散剤が少なくとも一種のA/B/Cブロックコポリマーと、少なくとも一種の反応性ゴムATBNまたはCTBNとから成る。反応性ゴムのA/B/Cに対する比率は5〜1に対して1〜4、好ましくは3〜1に対して1〜2である。
【0092】
ATBN、CTBNは下記を意味する:
CTBN:カルボキシル末端を有するブタジエンとアクリロニトリルとのランダムコポリマー、
ATBN:アミノ末端を有するブタジエンとアクリロニトリルとのランダムコポリマー
これらの化合物はカルボキシル基またはアミン基で終わるブタジエンとアクリロニトリルをベースにしたオリゴマである。ブタジエンは非常に低いTgを有し、衝撃強度を良くするのに好ましい。
【0093】
好ましい実施例ではA/B/Cトリブロックの一部をA/Bジブロックに代えることができ、その比率はA/B/Cトリブロックの70重量%までである。
A/B/Cトリブロックの全部または一部をC/A/B/A/CまたはC/B/A/B/Cペンタブロックに代えても本発明の範囲を逸脱するものではない。これらは二官能性開始剤を使用する以外は上記のジ−またはトリブロックからアニオン重合で製造することができる。これらのペンタブロックの数平均分子量はA/B/Cトリブロックと同じ範囲内にある。二つのCブロック全体または二つのBまたはAブロック全体の比率はA/B/CトリブロックのA、BおよびCの比率と同じ範囲内にある。
【0094】
本発明で特に好ましい分散剤
ABC1
これはAがポリスチレンで、Bがポリブタジエンで、CがPMMAであるA/B/Cトリブロックコポリマーで、22重量%のポリスチレンと、9重量%のポリブタジエンと、69重量%のポリメチルメタクリレートとからなり、数平均分子量が27,000g/molのポリスチレンブロックを作り、続いて11,000g/molのポリブタジエンブロックを作り、さらに数平均分子量が84,000g/molのポリメチルメタクリレートブロックを作るアニオン重合によって得られる。この化合物を上記欧州特許第EP 524,054号および上記欧州特許第EP 749,987号に記載の方法で製造した。この化合物は三つのガラス転移点:−90℃、95℃および130℃を有している。
【0095】
ABC2
これはAがポリスチレンで、Bがポリブタジエンで、CがPMMAであるA/B/Cトリブロックコポリマーで、12重量%のポリスチレンと、18重量%のポリブタジエンと、70重量%のポリメチルメタクリレートとからなり、数平均分子量が14,000g/molのポリスチレンブロックを作り、続いて数平均分子量が22,000g/molのポリブタジエンブロックを作り、続いて85,000g/molのポリメチルメタクリレートブロックを作るアニオン重合で得られる。この化合物を上記欧州特許第EP 524,054号および上記欧州特許第EP 749,987号に記載の方法で製造した。この化合物は三つのガラス転移点:−90℃、95℃および130℃を有する。
【0096】
ABC3
これはAがポリスチレンで、Bがポリブタジエンで、CがPMMAであるA/B/Cトリブロックコポリマーで、24重量%のポリスチレンと、26重量%のポリブタジエンと、50重量%のポリメチルメタクリレートとからなり、数平均分子量が21,000g/molのポリスチレンブロックを作り、続いて数平均分子量が22,000g/molのポリブタジエンブロックを作り、続いて43,000g/molのポリメチルメタクリレートブロックを作るアニオン重合で得られる。この化合物を上記欧州特許第EP 524,054号および上記欧州特許第EP 749,987号に記載の方法で製造した。この化合物は三つのガラス転移点:−90℃、95℃および130℃を有する。
【0097】
ABC4
このコポリマーはAおよびCブロックが同じPMMAで、BブロックがブチルアクリレートのホモポリマーであるA/B/Cである。このコポリマーは制御されたラジカル重合で得られる。ブチルアクリレートの数平均分子量は22,000g/molで、コポリマー全体の重量平均分子量は140,000g/molである。
【0098】
ABC5
このトリブロックコポリマーはAとCのブロックが同一のメチルメタクリレート(MMA)/ジメチルアクリルアミド(DMA)コポリマーで、BブロックがブチルアクリレートホモポリマーであるA/B/Cである。
【0099】
例としては、下記のものが挙げられる:
(a)PA、PPE/PA、PS、ABS、PMMAおよびPCをベースにしたポリマー材料の場合は、本発明ではABC1〜ABC3型の分散剤が特に好ましい。
(b)エポキシベースのポリマー材料の場合は、本発明ではABC1〜ABC5型の分散剤が特に好ましい。
(c)PVDFベースのポリマー材料の場合は、本発明ではABC1〜ABC3またはABC4型の分散剤が特に好ましい。
【0100】
混合方法は最終化合物中に存在するポリマーの種類に応じて、ゴム、ポリマーおよび液体で使用されている種々の方法を使用でき、インターナルミキサ、単軸または二軸スクリュー押出機、Bussコニーダー、ウルトラ渦(ultraturax)型の混合機、超音波混合機、その他当業者に公知の任意型の混合機を使用できる。
【0101】
上記組成物は一種または複数のポリマー材料と一種または複数の分散剤とCNTとを直接混合して得られるか、下記文献に記載のようにマスターバッチを用いて希釈して得ることができる。
【特許文献16】国際特許第WO 91/03,057号公報
【特許文献17】米国特許第5,646,990号明細書
【特許文献18】欧州特許第EP 692,136号公報
【特許文献19】米国特許第5,591,382号明細書
【特許文献20】米国特許第5,643,502号明細書
【特許文献21】米国特許第5,651,922号明細書
【特許文献22】米国特許第6,221,283号明細書
【0102】
マスターバッチはCNTおよび一種または複数の分散剤から形成するか、所定の量のポリマー材料を含むことができ、希釈樹脂はマスターバッチの組成物中で用いるものと同じである必要はない。
熱硬化性ポリマー材料の場合は、分散剤の使用量に応じて、反応混合物にCNTを単に添加することによって下記文献に記載の操作条件を再現することができる。
【特許文献23】国際特許出願第WO 91/01 92415号
【0103】
分散剤の比率が低い(≦10重量%)本発明の熱硬化性材料を通常の攪拌反応器を用いて製造することができる。熱硬化性ポリマーを反応器に導入し、流体になる温度で数分加熱する。次ぎに一種または複数のブロックコポリマーを含む分散剤を加え、流体になる温度で完全に溶けるまで混合する。混合時間は加えたコポリマーの種類に依存する。次ぎに硬化剤を加え、均一混合物が得られるまで、流体になる温度でさらに5分間混合する。エポキシ−硬化剤反応で混合物が硬化を開始するので、できるだけ短時間で行う必要がある。得られた混合物を型に入れ、型中で硬化させる。
【0104】
10重量部以上の分散剤を含む熱硬化性材料を作る場合には、先ず衝撃改質剤を10重量%含む熱硬化性樹脂/分散剤予備混合物を以下の方法に従って作る:先ず、熱硬化性ポリマーを流体になる十分な温度で数分間加熱した後に、分散剤を加え、流体になる温度で完全に溶けるまで混合する。こうして得られた予備混合物に、所望量にするのに必要な追加の量の分散剤をカレンダまたは2軸ミキサーを使用して流体になる温度で1時間混合する。得られた熱硬化性樹脂/衝撃分散剤系を冷却し、凍結粉砕し、硬化剤を加える。最終混合物を所望の硬化温度で型でプレス成形する。
【0105】
本発明のポリマー材料は、多数の分野、特に電子工学の分野(温度および構造に応じて伝導体、半導体または絶縁体になる)、機械の分野、例えば複合材料の補強材(カーボンナノチューブは鋼より100倍強く、1/6の軽さ)、電気機械の分野(電荷の注入で伸縮できる)で従来技術のCNTを含むポリマー材料の代わりに使用できるのが有利である。例としては、例えば電子部品の包装、燃料ラインの製造、静電防止被覆、コーテング、サーミスター、スーパーキャパシター用電極、その他の用途に用いられる材料を挙げることができる。
【実施例】
【0106】
以下の材料を使用した:
エポキシポリマー
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)である。これは383g/molの分子量を有し、1エポキシ基当たりの水酸基の平均数がn=0.075である、チバガイギー社からLY556の名称で市販のものである。
硬化剤
芳香族ジアミンのアミン硬化剤の4,4'−メチレンビス(3−クロロ−2,6− ジエチルアニリン)で、Lonza社からLONZACURE M−CDEAの名称で市販されている。この化合物の特徴は融点が87〜90℃で、分子量が380g/molである点にある。
【0107】
粒子分散剤
これはABC3型のA/B/Cトリブロックコポリマーである。
【0108】
炭素粒子
下記文献に記載の方法に従って得られるカーボンナノチューブを用いる。
【特許文献24】国際特許第03/002456 A2号
【0109】
これらのナノチューブは直径が10〜30nmで、長さが0.4μm以上である。これらは多重壁(MW)型で、非精製、非官能化で、全部または98%以上が分離形状である、すなわち凝集していない。
【0110】
化合物の調製
2gのDGEBAを135℃で加熱し、液化した後に、440mgのABC3トリブロックを添加し、135℃で攪拌下に3時間放置する。次いで、44mgのCNTを添加し、この温度で攪拌を12時間維持する。次いで、2gのMCDEA硬化剤を添加し、135℃で5分間攪拌する。次いで、化合物を型に入れ、型中で135℃で5時間硬化させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)99〜20重量部の一種または複数のポリマーと、
(2)0.1〜80重量部のカーボンナノチューブと、
(3)0.05〜80重量部のA/B/C、B/Cおよび/またはC/B/Cブロックコポリマーの中から選択される少なくとも一種の分散剤と、
からなるポリマー材料であって、
(a)各ブロックが共有結合によって互いに結合しているか、共有結合を介してブロックの一方に結合し且つ別の共有結合を介して他方のブロックに結合した中間分子を介して互いに結合し、
(b)Cはポリマー材料と化学的および/または物理的に相互作用し、好ましくはポリマー材料と混和性があり、
(c)Bはポリマー材料およびCブロックと非混和性で、そのガラス転移温度Tgはポリマー材料の使用温度よりも低く、
(d)Aはポリマー材料、BブロックおよびCブロックと非混和性で、そのTgまたはその融点TmはBのTgより高い、
ことを特徴とするポリマー材料。
【請求項2】
上記ブロックコポリマーのCブロックの少なくとも60重量%がシンジオタクチックPMMAから成る請求項1に記載のポリマー材料。
【請求項3】
上記ブロックコポリマーのCブロックが反応性モノマー、好ましくはグリシジル(メタ)アクリレートおよび/またはtert-ブチル(メタ)アクリレートを含む請求項1または2に記載のポリマー材料。
【請求項4】
上記ブロックコポリマーのBブロックのTgが0℃以下、好ましくは−20℃以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項5】
ブロックコポリマーのBブロックが主として1,4−ポリブタジエンからなる請求項5に記載のポリマー材料。
【請求項6】
ブロックBのジエンが水素化される請求項4〜6のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項7】
Bブロックがポリブチルアクリレートからなる請求項4に記載のポリマー材料。
【請求項8】
AブロックのTgまたはTmが23℃以上、好ましくは50℃以上である請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項9】
Aがポリスチレンである請求項8に記載のポリマー材料。
【請求項10】
上記分散剤の数平均分子量が10,000〜500,000g/mol、好ましくは20,000〜200,000g/molである請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項11】
99〜65重量%の一種または複数のポリマーに対して1〜35%の分散剤である請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項12】
CNTの比率がポリマー材料の全重量の0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部である請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項13】
CNTの直径が0.4〜50nmで、長さが直径の100〜100,000倍で、好ましくは多重壁ナノチューブ(MWNT)の形で、その直径が5〜30nmで、長さが0.3μm以上である請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項14】
分散剤が少なくとも一種のC/B/CまたはA/B/Cブロックコポリマーと、コア−シェルコポリマー(E)、官能化エラストマー、A/Bブロックコポリマー(Aブロックの数平均分子量は好ましくは10,000〜500,000g/mol)およびATBNまたはCTBN反応性ゴムの中から選択される少なくとも一種のポリマーとを含む請求項1〜13のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項15】
分散剤が少なくとも一種のA/B/Cブロックコポリマーおよび少なくとも一種のA/Bブロックコポリマーおよび/または少なくとも一種のコア−シェルコポリマー(E)および/または少なくとも一種のATBNまたはCTBN反応性ゴムとを含み、必要に応じてさらにA/Bブロックコポリマーを含む請求項14に記載のポリマー材料。
【請求項16】
A/B/Cトリブロックの全部または一部をC/A/B/A/Cおよび/またはC/B/A/B/Cペンタブロックで置換した請求項1〜15のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項17】
上記ポリマーがリジッドまたはエラストマーの非晶質、結晶性および/または半結晶性の熱可塑性または熱硬化性のホモポリマーまたはコポリマーまたは混合物であり、必要に応じてさらに一種または複数の添加剤、アジュバントおよび/または充填剤、例えば安定化剤、可塑剤、重合触媒、染料、顔料、潤滑剤、難燃剤、強化材および/または充填材および重合溶剤を含み、エポキシドおよび/またはグリシジルまたはエーテル型、モノカルボン酸、ジカルボン酸またはポリカルボン酸型(飽和または不飽和、芳香族または非芳香族)の官能基、または、酸由来の官能基、例えば無水物、エステル、アミドおよび/またはイミド、ビニルまたは芳香族ビニル型等の官能基を含む請求項1〜16のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項18】
上記ポリマーがPA、PPE/PA、PS、ABS、PMMA、PC、エポキシベースのポリマーおよび/またはPVDFベースのポリマーの中から選択される請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載のポリマー材料の製造方法であって、上記ポリマー材料と、分散剤と、CNTとを直接混合するか、マスターバッチを用いた稀釈によって混合し、上記マスターバッチはCNTと分散剤とから成るか、必要に応じて一定量のポリマー材料を含み、稀釈用のポリマーは必ずしもマスターバッチ組成物で用いられるものと同じである必要はない、ことを特徴とする製造方法。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか一項に記載のポリマー材料の、電子部品の包装、燃料ラインの製造、静電防止用被覆、サーミスター、スーパーキャパシター用電極等での使用。

【公表番号】特表2008−534764(P2008−534764A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504797(P2008−504797)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000708
【国際公開番号】WO2006/106214
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【Fターム(参考)】