説明

分散アゾ染料

本発明が特許請求するのは、式(I):
【化1】


[式中、G及びGのそれぞれが、独立して、水素、(C〜C)−アルキル、トリフルオロメチル、ハロゲン、ニトロ、シアノ又は−SO−Tであるが、ここでTが、ハロゲン、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ、アリール又はアリールオキシであり、Kが、カップリング成分であり、そしてnが、1又は2である]の染料、それらを製造するための方法、それらの使用、及びそれらを含むインクジェット捺染のためのインキである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散染料の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
シアノメチルエステル基を含む分散染料は公知であり、たとえば以下の文献に記載がある:特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、及び特許文献11。それらの文献に開示されている染料はすべて、そのカップリング成分中にシアノメチルエステル基を有している。
【0003】
【特許文献1】英国特許第909,843号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第2130992号明細書
【特許文献3】英国特許第1,457,532号明細書
【特許文献4】英国特許第1,536,429号明細書
【特許文献5】仏国特許出願公開第1,531,147号明細書
【特許文献6】米国特許第3,776,898号明細書
【特許文献7】特開昭55−161857号公報
【特許文献8】英国特許第2,104,088号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第0 685 531A1号明細書
【特許文献10】国際公開第95/20014号パンフレット
【特許文献11】国際公開第2005/040283号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の発明者らは、意外なことには、以下において定義されるようなジアゾ成分中にシアノメチルエステル基を含む染料を使用すると、優れた湿潤堅牢性を有するポリエステルの染色物が得られることを見出した。
【0005】
本発明が特許請求するのは式(I)の染料である。
【化1】

[式中、
及びGのそれぞれが、独立して、水素、(C〜C)−アルキル、トリフルオロメチル、ハロゲン、ニトロ、シアノ又は−SO−Tであるが、ここでTが、ハロゲン、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ、アリール又はアリールオキシであり、
Kが、カップリング成分であり、そして
nが、1又は2である]
【0006】
カップリング成分Kは、分散染料の製造のために使用される、いかなるカップリング成分であってもよい。そのようなカップリング成分は文献に記載があり、当業者には公知である。
【0007】
好適なカップリング成分Kは、次式(IIa)のものである。
【化2】

[式中、
が、水素、ヒドロキシル、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキルスルホンアミノ又は(C〜C)−アシルアミノであり、
及びRのそれぞれが、独立して、水素;(C〜C)−アルキル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;(C〜C)−アルケニル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR,−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルケニル;−O−、−S−及び−NRからなる群から選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子によって介在された(C〜C)−アルキル;又は、−O−、−S−及び−NRからなる群から選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子によって介在され、かつヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;であり、
が、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ又はハロゲンであるか、又は、
とRとが一緒になって、(C〜C)−アルキレン;(C〜C)−アルキル、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキレン;(C〜C)−アルケニレン;又は(C〜C)−アルキル、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルケニレン;であり、
が、水素又は(C〜C)−アルキルであり、そして
が、水素又は(C〜C)−アルキルである]
【0008】
特に好ましいカップリング成分Kは、以下の基を有する式(IIa)に相当する。
が、水素、メチル、エチル、メチルスルホニルアミノ、アセチルアミノ又はプロピオニルアミノであり、
及びRのそれぞれが、独立して、水素;メチル;エチル;プロピル;ブチル;ヒドロキシ、シアノ、−COOCH、−COOC、−COOフェニル、−OCOCH、−OCOC、−OCOフェニル、メトキシ、エトキシ若しくはフェニルによって置換されたメチル、エチル、プロピル又はブチル;又はアリル;であり、そして
が、水素、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ又は塩素である。
【0009】
さらに特に好ましいカップリング成分Kは、次式(IIaa)に相当する。
【化3】

[式中、Rは、先に定義されたものである]
【0010】
さらに好適なカップリング成分Kは、次式(IIb)のものである。
【化4】

[式中、
が、水素、(C〜C)−アルキル又はトリフルオロメチルであり、そして
が、水素;(C〜C)−アルキル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;(C〜C)−アルケニル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルケニル;−O−、−S−及び−NRからなる群から選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子によって介在された(C〜C)−アルキル;又は、−O−、−S−及び−NRからなる群から選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子によって介在され、かつヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;である]
【0011】
さらに特に好ましいカップリング成分Kは、以下の基を有する式(IIb)に相当する。
が、メチルであり、そして
が、メチル又はエチルである。
【0012】
さらに好適なカップリング成分Kは、次式(IIc)のものである。
【化5】

[式中、
が、水素;(C〜C)−アルキル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;(C〜C)−アルケニル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルケニル;−O−、−S−及び−NRからなる群から選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子によって介在された(C〜C)−アルキル;又は、−O−、−S−及び−NRからなる群から選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子によって介在され、かつヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;である]
【0013】
さらに特に好ましいカップリング成分Kは、以下の基を有する式(IIc)に相当する。
が、メチル、エチル、ヒドロキシメチル又はヒドロキシエチルである。
【0014】
さらに好適なカップリング成分Kは、次式(IId)のものである。
【化6】

[式中、
10が、水素;(C〜C)−アルキル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;(C〜C)−アルケニル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルケニル;−O−、−S−及び−NRからなる群から選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子によって介在された(C〜C)−アルキル;又は、−O−、−S−及び−NRからなる群から選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子によって介在され、かつヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;であり、そして
11が、水素;(C〜C)−アルキル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;又はアリール;である]
【0015】
さらに特に好ましいカップリング成分Kは、以下の基を有する式(IId)に相当する。
10が、メチル又はエチルであり、そして
11が、メチル、エチル又はフェニルである。
【0016】
アルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル又はn−ブチルである。同じ論理がアルコキシ基にもあてはまり、好ましくはメトキシ、エトキシ又はプロポキシである。
【0017】
アルケニル基は、好ましくはビニル又はアリルであるが、ここでアルキレン基は、好ましくはメチレン、エチレン又はプロピレンである。
【0018】
アシル基は、好ましくはアセチル基であり、したがってアシルアミノ基は、好ましくはアセチルアミノであり、アシルオキシ基は好ましくはアセチルオキシである。
【0019】
好適なイミド基は、マレイミド、スクシンイミドであるが、特に好ましいのはフタルイミドである。
【0020】
−O−、−S−及び−NRからなる群から選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子によって介在された(C〜C)−アルキル基の例としては、−CH−O−CH−、−(CH−O−(CH−、−CH−S−CH−、−(CH−S−(CH−、−CH−NR7’−CH−、又は−(CH−NR7’−(CH−が挙げられるが、ここでR7’は水素又はメチルである。
【0021】
ハロゲンは、好ましくはフッ素、塩素又は臭素である。
【0022】
アリールは、好ましくはフェニル又はナフチルであり、その一方でアリールオキシは、好ましくはフェノキシ又はナフトキシである。
【0023】
アリール及びアリールオキシ基は、1、2又は3個の置換基によって置換されていてもよい。そのような置換基の例としては、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ、ハロゲン、シアノ及びニトロが挙げられる。
【0024】
本発明における好適な染料は、式(Ia)の染料である。
【化7】

[式中、G、G及びKは先に定義されたものである]
【0025】
式(Ia)の特に好ましい染料においては、G及びGのそれぞれが、独立して、水素、塩素、臭素、ニトロ又はシアノであり、Kが、式(IIa)、(IIb)、(IIc)又は(IId)のカップリング成分であるが、先に特に好ましいとして定義されたカップリング成分が好ましい。
【0026】
本発明におけるさらに好適な染料は、次式(Ib)の染料である。
【化8】

[式中、G、G及びKは先に定義されたものである]
【0027】
式(Ib)の特に好ましい染料においては、Gが、水素、塩素、臭素、ニトロ又はシアノであり、Gは、Gが水素の場合には水素又はニトロであり、Gがニトロ又はシアノである場合にはニトロであり、Gが塩素の場合には塩素又はニトロであり、Gが臭素の場合には臭素又はニトロであり、そして、Kが式(IIa)、(IIb)、(IIc)又は(IId)のカップリング成分であるが、先に特に好ましいとして定義されたカップリング成分が好ましい。
【0028】
本発明におけるさらに好適な染料は、次式(Ic)の染料である。
【化9】

[式中、G及びKは先に定義されたものである]
【0029】
式(Ic)の特に好ましい染料においては、Gがニトロであり、そしてKが、式(IIa)、(IIb)、(IIc)又は(IId)のカップリング成分であるが、先に特に好ましいとして定義されたカップリング成分が好ましい。
【0030】
特に好適な染料は、式(Iaa)の染料である。
【化10】

[式中、
及びGのそれぞれが、独立して、水素、塩素、臭素、ニトロ又はシアノであり、Rが、水素、メチル、エチル、メチルスルホニルアミノ、アセチルアミノ又はプロピオニルアミノであり、
及びRのそれぞれが、独立して、水素;メチル;エチル;プロピル;ブチル;ヒドロキシ、シアノ、−COOCH、−COOC、−COOフェニル、−OCOCH、−OCOC、−OCOフェニル、メトキシ、エトキシ若しくはフェニルによって置換されたメチル、エチル、プロピル又はブチル;又はアリル;であり、そして
が、水素、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ又は塩素である]
【0031】
さらに特に好適な染料は、式(Iba)の染料である。
【化11】

[式中、
が、水素、塩素、臭素、ニトロ又はシアノであり、
は、Gが水素の場合には水素又はニトロであり、Gがニトロ又はシアノの場合にはニトロであり、Gが塩素の場合には塩素又はニトロであり、そしてGが臭素の場合には臭素又はニトロであり、
が、水素、メチル、エチル、メチルスルホニルアミノ、アセチルアミノ又はプロピオニルアミノであり、
及びRのそれぞれが、独立して、水素;メチル;エチル;プロピル;ブチル;ヒドロキシ、シアノ、−COOCH、−COOC、−COOフェニル、−OCOCH、−OCOC、−OCOフェニル、メトキシ、エトキシ若しくはフェニルによって置換されたメチル、エチル、プロピル又はブチル;又はアリル;であり、そして
が、水素、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ又は塩素である]
【0032】
式(I)の化合物は、アゾ化合物を製造するための通常の方法で得ることができるが、たとえば、式(III):
【化12】

[式中、G、G及びnは先に定義されたものである]
のアミンをジアゾ化し、そして、式(IV):
H−K (IV)
[ここでKは、先に定義されたものである]
の化合物とカップリングさせる方法による。
【0033】
典型的には、式(III)のアミンを、酸性媒体たとえば酢酸、プロピオン酸又は塩酸の中で、ニトロソ化反応剤たとえばニトロシル硫酸、亜硝酸ナトリウム又は亜硝酸メチルを使用し、−10℃〜10℃の温度でジアゾ化させてもよい。式(IV)の化合物へのカップリングは、そのジアゾ化させたアミンを式(IV)の化合物に、文献に記載されており当業者に公知の条件下に添加することにより実施することができる。
【0034】
カップリングさせた後、式(I)の化合物は、その反応混合物から、濾過などの各種の好都合な手段によって回収してもよい。
【0035】
式(III)のシアノメチルエステル含有アミンは、市販されているか又は文献記載の出発物質から、当業者には公知であり文献にも記載されている各種の方法によって製造することができる。たとえば、テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Lett.)、2004、969〜972頁;ヘルベチカ・キミカ・アクタ(Helv.Chim.Acta)、1964、2444〜2448頁、及びシンセシス(Synthesis)、1995、1483〜1484頁に記載されている方法を使用して、式(IIIa)〜(IIIg)の化合物を調製することができる。
【化13】

【0036】
状況によっては、酸素及び/又は窒素上での反応から生じる、反応生成物の混合物が得られる。それらの混合物を直接使用することが可能であるが、その理由は、必要とされる選択された酸素が反応した反応生成物だけが、ジアゾ化及びカップリング反応をして、最終的な染料を形成するからである。
【0037】
式(IIIa)、(IIIb)、(IIId)、(IIIe)又は(IIIg)の化合物は、酢酸ナトリウムの存在下に、酢酸中で、1モル当量(化合物(IIIb)、(IIIe)及び(IIIg))又は2モル当量(化合物(IIIa)及び(IIId))の臭素を用いて処理することによって、モノ臭素化又はジ臭素化させることができる。
【0038】
式(IIIa)、(IIIb)、(IIId)、(IIIe)又は(IIIg)の化合物はまた、塩酸又は酢酸の混合物中で、1モル当量(化合物(IIIb)、(IIIe)及び(IIIg))又は2モル当量(化合物(IIIa)及び(IIId))の酸化剤たとえば過酸化水素を用いて処理することによって、モノ塩素化又はジ塩素化させることができる。
【0039】
このようにして、式(IIIh)〜(IIIq)の化合物を製造することができる。
【化14】

【0040】
式(IV)の化合物は公知であるか、又は当業者に公知の標準的な条件下で容易に製造される。
【0041】
式(I)の化合物は、合成織物材料、特にポリエステル織物材料及びそれと綿などのセルロース系材料との繊維ブレンド物を染色又は捺染するには有用であり、それらに優れた湿潤堅牢性を有する色を付与する。
【0042】
式(I)の染料を用いた、上記の繊維商品の染色は自体公知の方法で実施することができるが、好ましくは、水性分散体から、必要に応じてキャリヤーの存在下に、80〜110℃の間で、吸尽プロセスによるか、110〜140℃の染色オートクレーブ中でのHTプロセスによるか、又はいわゆる加熱固着プロセス(この場合は、染液を用いて商品をパジングし、次いで約180〜230℃で固着させる)による。
【0043】
上述の繊維商品は、式(I)の染料を捺染糊の中に組み入れ、そのペーストを用いて捺染した商品を、必要に応じてキャリヤーの存在下に、180〜230℃の間の温度でHTスチーム、加圧スチーム又は乾熱を使用して、その染料を固着させるという手段により、自体公知の方法において捺染することも可能である。
【0044】
式(I)の染料は、上述の用途に使用する染液又は捺染糊中では、可能な限り微細な分散体として存在させるべきである。
【0045】
そのような染料の微細な分散体は、自体公知の方法で、製造をしている際に得られた染料を、液状媒体中、好ましくは水中に分散剤と共に懸濁させ、その混合物を剪断力の作用に暴露させて元々存在していた粒子を機械的に微粉砕して、最適な比表面積を得て、染料の沈降が可能な限り低くなるようなレベルとする手段によって得られる。染料の粒子径は一般的には、0.5〜5μmの間、好ましくは約1μmである。
【0046】
使用する分散剤は、ノニオン性又はアニオン性とすることができる。ノニオン性分散剤としては、たとえば、アルキレンオキシドたとえば、エチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドと、アルキル化可能な化合物たとえば、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸、フェノール、アルキルフェノール、又はカルボン酸アミンとの反応生成物が挙げられる。アニオン性分散剤としては、たとえば、リグニン−スルホネート、アルキル−若しくはアルキルアリール−スルホネート、又はアルキルアリールポリグリコールエーテルサルフェートが挙げられる。
【0047】
ほとんどの使用方法においては、このようにして得られた染料配合物は、注入可能であるべきである。したがって、この場合には、染料と分散剤の含量が制限される。一般的には、分散体では、染料含量を50重量パーセントまで、分散剤含量を25重量パーセントまでとする。経済的な理由から、染料含量は通常、15重量パーセント未満に下げることはない。
【0048】
分散体にはさらに、その他の助剤、たとえば酸化剤又は殺菌剤としてはたらくものが含まれていてもよい。そのような薬剤は、当業者には周知である。
【0049】
そのようにして得られた染料分散体を使用して、捺染糊又は染液を極めて有利に調製することができる。
【0050】
ある種の使用分野においては、粉末配合物が好ましい。それらの粉末には、染料、分散剤、並びにその他の助剤たとえば、湿潤剤、酸化剤、保存剤又は除塵剤が含まれる。
【0051】
微細な染料配合物を調製するのに好ましい方法には、上述の液状の染料分散体から液体を除去することが含まれ、それには、真空乾燥、凍結乾燥、ローラー乾燥機上での乾燥などによるが、噴霧乾燥によるのが好ましい。
【0052】
さらに、式(I)の本発明の染料は、デジタルインクジェット捺染のためのインキにおいて、有利に使用することができる。
【0053】
したがって、本発明はさらに、式(I)の少なくとも1種の染料を含むインクジェット捺染のためのインキにも関する。
【0054】
デジタルインクジェット捺染において使用されるインキは通常水性インクであって、0.1%〜20%の分散剤をさらに含んでいる。有用な分散剤としては、たとえば、スルホン化若しくはスルホメチル化リグニン、芳香族スルホン酸のホルムアルデヒド縮合体、置換若しくは非置換のフェノール誘導体のホルムアルデヒド縮合体、ポリアクリレート又はそのコポリマー、スチレンオキシドポリエーテル、改質ポリウレタン、アルキレンオキシドと、アルキル化可能な化合物たとえば脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸、カルボキサミド、樹脂酸、又はさらには置換若しくは非置換フェノールとの反応生成物などが挙げられる。
【0055】
連続流動プロセスにおいて使用するインキは、電解質を添加することによって、0.5〜25mS/cmの範囲の導電性に調節することができる。
【0056】
有用な電解質としてはたとえば、硝酸リチウム、又は硝酸カリウムなどが挙げられる。
【0057】
それに加えて、本発明のインキには、典型的なインクジェット有機溶媒を、1〜60%、好ましくは5〜40重量%の全量でさらに含んでいてよい。
【実施例】
【0058】
実施例1
2−{4−[(2−シアノ−エチル)−エチル−アミノ]−フェニルアゾ}−5−ニトロ−安息香酸シアノメチルエステル
【化15】

3.3部の化合物(IIIb)、20部のプロピオン酸及び40部の酢酸を仕込み、冷却して5℃とした。温度を10℃未満に保ちながら、5.1部の40%(w/w)ニトロシル硫酸を添加した。そのジアゾ化混合物を、5〜10℃でさらに2時間撹拌した。別の容器に、2.7部の3−(エチル−フェニル−アミノ)−プロピオニトリル、100部のメタノール、1部のスルファミン酸及び100部の氷を仕込んだ。撹拌しながら、ジアゾ化混合物を徐々に加えてから、さらに300部の氷を加えた。その反応混合物を一夜撹拌し、その反応生成物を濾過により単離し、水を用いて洗浄し、そして乾燥させて、4.9部の2−{4−[(2−シアノ−エチル)−エチル−アミノ]−フェニルアゾ}−5−ニトロ−安息香酸シアノメチルエステルを得た。
λmax=496nm(DMF)。
【0059】
その水性分散体からポリエステル物質を染色すると、優れた湿潤堅牢性を有する赤色の色調が認められた。
【0060】
実施例1に説明した手順に従って、式(Iba)の本発明の染料[表1]を製造した(λmaxはDMF中で測定し、nmの単位で示す)。
【化16】

【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
実施例1に説明した手順に従って、式(Iaa)の染料[表2]を製造した(λmaxはDMF中で測定し、nmの単位で示す)。
【化17】

【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
【表5】

【0067】
実施例1に説明した手順に従って、式(Ica)の染料[表3]を製造した(λmaxはDMF中で測定し、nmの単位で示す)。
【化18】

【0068】
【表6】

【0069】
実施例1に説明した手順に従って、式(Iab)の染料[表4]を製造した(λmaxはDMF中で測定し、nmの単位で示す)。
【化19】

【0070】
【表7】

【0071】
実施例1に説明した手順に従って、式(Ibc)の染料[表5]を製造した(λmaxはDMF中で測定し、nmの単位で示す)。
【化20】

【0072】
【表8】

【0073】
実施例1に説明した手順に従って、式(Iac)の染料[表6]を製造した(λmaxはDMF中で測定し、nmの単位で示す)。
【化21】

【0074】
【表9】

【0075】
実施例1に説明した手順に従って、式(Iad)の染料[表7]を製造した(λmaxはDMF中で測定し、nmの単位で示す)。
【化22】

【0076】
【表10】

【0077】
実施例1に説明した手順に従って、式(Iae)の染料[表8]を製造した(λmaxはDMF中で測定し、nmの単位で示す)。
【化23】

【0078】
【表11】

【0079】
実施例137
実施例1に説明した手順に従った、式(Ibd)の染料。
【化24】

λmax=566nm(DMF)
【0080】
実施例138
4−(2−アセチルアミノ−4−ジアリルアミノ−5−メトキシ−フェニルアゾ)−3,5−ジシアノ−安息香酸シアノメチルエステル
【化25】

6.7部の実施例112の染料、3.2部のシアン化銅(I)、0.3部のイミダゾール、0.2部のヨウ化ナトリウム、及び25部のN−メチル−2−ピロリジノンを仕込み、60〜70℃で30分間加熱した。70部の2−プロパノールを滴下により加え、その反応液を一夜周囲温度で撹拌した。濾過により沈殿物を単離し、次いで600部の6%塩化鉄(II)水溶液の中で1時間撹拌した。その反応生成物を濾過し、200部の水を用いて洗浄し、そして乾燥させて、4.8部の4−(2−アセチルアミノ−4−ジアリルアミノ−5−メトキシ−フェニルアゾ)−3,5−ジシアノ−安息香酸シアノメチルエステルを得た。
λmax=614nm(DMF)。
【0081】
その水性分散体からポリエステル物質を染色すると、優れた湿潤堅牢性を有する青色の色調が認められた。
【0082】
実施例138に説明した手順に従って、式(Iag)の染料[表9]を製造した(λmaxはDMF中で測定し、nmの単位で示す)。
【化26】

【0083】
【表12】

【0084】
実施例138に説明した手順に従って、式(Ibe)の染料[表10]を製造した(λmaxはDMF中で測定し、nmの単位で示す)。
【化27】

【0085】
【表13】

【0086】
実施例163
実施例138に説明した手順に従って、式(Iah)の染料を、実施例135の染料から製造した。
【化28】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
及びGのそれぞれが、独立して、水素、(C〜C)−アルキル、トリフルオロメチル、ハロゲン、ニトロ、シアノ又は−SO−Tであるが、ここでTが、ハロゲン、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ、アリール又はアリールオキシであり、
Kが、カップリング成分であり、そして
nが、1又は2である]
で表される染料。
【請求項2】
Kが、式(IIa):
【化2】

[式中、
が、水素、ヒドロキシル、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキルスルホンアミノ又は(C〜C)−アシルアミノであり、
及びRのそれぞれが、独立して、水素;(C〜C)−アルキル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;(C〜C)−アルケニル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR,−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルケニル;−O−、−S−及び−NRからなる群から選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子によって介在された(C〜C)−アルキル;又は、−O−、−S−及び−NRからなる群から選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子によって介在され、かつヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;であり、
が、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ又はハロゲンであるか、又は、
とRとが一緒になって、(C〜C)−アルキレン;(C〜C)−アルキル、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキレン;(C〜C)−アルケニレン;又は(C〜C)−アルキル、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルケニレン;であり、
が、水素又は(C〜C)−アルキルであり、そして
が、水素又は(C〜C)−アルキルである]であるか、
又は式(IIb):
【化3】

[式中、
が、水素、(C〜C)−アルキル又はトリフルオロメチルであり、そして
が、水素;(C〜C)−アルキル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;(C〜C)−アルケニル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルケニル;−O−、−S−及び−NRからなる群から選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子によって介在された(C〜C)−アルキル;又は、−O−、−S−及び−NRからなる群から選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子によって介在され、かつヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;である]であるか、
又は式(IIc):
【化4】

[式中、
が、水素;(C〜C)−アルキル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;(C〜C)−アルケニル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルケニル;−O−、−S−及び−NRからなる群から選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子によって介在された(C〜C)−アルキル;又は、−O−、−S−及び−NRからなる群から選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子によって介在され、かつヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;である]であるか、
又は式(IId):
【化5】

[式中、
10が、水素;(C〜C)−アルキル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;(C〜C)−アルケニル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルケニル;−O−、−S−及び−NRからなる群から選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子によって介在された(C〜C)−アルキル;又は、−O−、−S−及び−NRからなる群から選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子によって介在され、かつヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−COONR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ、イミド基若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;であり、そして
11が、水素;(C〜C)−アルキル;ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、−COOR、−SONR、−SO、(C〜C)−アシルオキシ、(C〜C)−アシルアミノ若しくはアリールによって置換された(C〜C)−アルキル;又はアリール;である]である請求項1に記載の染料。
【請求項3】
式(Ia):
【化6】

[式中、G、G及びKは、請求項1において定義されたものである]
の、請求項1又は2に記載の染料。
【請求項4】
式(Ib):
【化7】

[式中、G、G及びKは先に定義されたものである]
の、請求項1又は2に記載の染料。
【請求項5】
式(Ic):
【化8】

[式中、G及びKは先に定義されたものである]
の、請求項1又は2に記載の染料。
【請求項6】
式(Iaa):
【化9】

[式中、
及びGのそれぞれが、独立して、水素、塩素、臭素、ニトロ又はシアノであり、
が、水素、メチル、エチル、メチルスルホニルアミノ、アセチルアミノ又はプロピオニルアミノであり、
及びRのそれぞれが、独立して、水素;メチル;エチル;プロピル;ブチル;ヒドロキシ、シアノ、−COOCH、−COOC、−COOフェニル、−OCOCH、−OCOC、−OCOフェニル、メトキシ、エトキシ若しくはフェニルによって置換されたメチル、エチル、プロピル又はブチル;又はアリル;であり、そして
が、水素、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ又は塩素である]
の、請求項1に記載の染料。
【請求項7】
式(Iba):
【化10】

[式中、
が、水素、塩素、臭素、ニトロ又はシアノであり、
は、Gが水素の場合には水素又はニトロであり、Gがニトロ又はシアノの場合にはニトロであり、Gが塩素の場合には塩素又はニトロであり、そしてGが臭素の場合には臭素又はニトロであり、
が、水素、メチル、エチル、メチルスルホニルアミノ、アセチルアミノ又はプロピオニルアミノであり、
及びRのそれぞれが、独立して、水素;メチル;エチル;プロピル;ブチル;ヒドロキシ、シアノ、−COOCH、−COOC、−COOフェニル、−OCOCH、−OCOC、−OCOフェニル、メトキシ、エトキシ若しくはフェニルによって置換されたメチル、エチル、プロピル又はブチル;又はアリル;であり、そして
が、水素、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ又は塩素である]
の、請求項1に記載の染料。
【請求項8】
式(III):
【化11】

[式中、G、G及びnは、請求項1において定義されたものである]
のアミンのジアゾ化、及び式(IV):
H−K (IV)
[式中、Kは請求項1において定義されたものである]
の化合物へのカップリングを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の染料を製造するための方法。
【請求項9】
合成織物材料又はそれらの繊維のブレンド物を染色又は捺染するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の染料の使用。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の式(I)の少なくとも1種の染料を含む、インクジェット捺染のためのインキ。

【公表番号】特表2010−520311(P2010−520311A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557734(P2008−557734)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052027
【国際公開番号】WO2007/101828
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(503412791)ダイスター・テクスティルファルベン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・ドイッチュラント・コマンデイトゲゼルシャフト (40)
【Fターム(参考)】