説明

分散型照明装置における熱分散

ある範囲の大気条件の下において、光源から離れた点における光の放射を維持できる装置。上記装置は流体を加熱および分散することができ、このようにすることにより、光の放射を妨害する凝結および氷が生成されるのを防止する。上記装置は光源と発光体とを備え、両者の間に延びる光コンジットおよび流体コンジットを有する。このような装置を使用する方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の発明は、分散型照明装置周りに熱を分散するための、特に、風力タービンの羽根内に取り付けられる分散型照明装置のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンは空間内に突き出ており、暗い場所では見るのが困難であるため、航空機にとって危険要因になる可能性があることは既知である。したがって、照明装置は、風力タービン内に取り付けるために開発されてきた。これらの照明装置は風力タービンを極めて見やすくする。
【0003】
既知の風力タービン用の照明装置は分散型照明装置の形体であってもよい。分散型照明装置は、光源からの光を、光ファイバケーブルに沿って前方に、その光を放射できる遠隔位置にまで案内することにより照明を提供する。好ましくは、これは照明装置には好都合である(例えば、電源が電気エネルギーをワイヤに沿って電球にまで伝達する場合)。なぜなら、これにより、風力タービン構造体周りの電気配線の必要性を低減し、これにより、タービンが照明装置と衝突する危険性を低減するからである。これはまた、重量を低減する。
【0004】
しかし、作動中において、このような装置は、装置が受ける天候条件の変化から生じる問題に遭遇する。特に、分散型照明装置上に水蒸気が凝結し、光の放射を妨害する可能性がある。温度が十分に低い場合、凝結した水蒸気が凍る。いずれにしても、この結果、風力タービンの可視性は低下し、危険になる。
【0005】
凝結および凍結プロセスは、湿度および圧力、ならびに分散型照明装置と大気との間の温度差等の大気条件に依存する。例えば、寒い朝には、装置の外側に露が生成されることがある。暑い日には、装置の内側または外側に凝結が発生することがある。
【0006】
この凝結および/または凍結が特に問題になるのは、これが分散型照明装置の近辺に局所的に発生する場合である。これは、分散型照明装置自体の表面だけでなく、風力タービンの構成要素(例えば、透明カバー)の近辺も含む。凝結および/または凍結が局所的構成要素上に発生する場合、分散型照明システムからの光の放射は妨害される可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この点から、本発明は光源、発光体および光源と発光体との間で光を伝達する光コンジットを備える分散型照明装置を提供することに関し、分散型照明装置は光源と発光体との間を伝達する流体コンジット(conduit)を備えることにより、装置は、装置周りの熱の分散を可能にして、水蒸気局所的凝結および/または氷の局所的生成を防止することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この結果、本発明は、有利には、従来の分散型照明装置の利点の全てを達成する風力タービンを照明する装置を提供し、これについてさらに、装置が使用中に受ける悪条件の下でそれら利点を達成できることである。本発明は、システム内に既に存在する熱エネルギーを利用することにより、これをエネルギー効率の高い方法で達成する。
【0009】
好ましくは、分散型照明装置はダクトを備え、このダクトは流体コンジットおよび光コンジットの両方を備える。
【0010】
有利には、これにより、光源と発光体との間に1つの構成要素だけを配置すればよいため、取り付けが容易になる。
【0011】
好ましくは、分散型照明装置は結合型光コンジットを形成するように組み合わせされた複数の光コンジットを備え、結合型光コンジットは流体コンジットとして作用できる開口を画定する。
【0012】
有利には、これにより、材料を効果的に使用することができる。したがって、装置は低コストで軽量化できる。
【0013】
好ましくは、光ファイバは光コンジットとして使用される。
【0014】
これらは極めて減衰の少ない光コンジットを実現し、これにより、光を1つの場所から別の場所に効率的に伝達できる。
【0015】
好ましくは、分散型照明装置は流体媒体を加熱する加熱手段を備える。
【0016】
これにより、装置内の流体媒体が氷の生成を防止する温度にまで上昇できることを保証できる。
【0017】
好ましくは、光源は電源を備える。
【0018】
有利には、電源を備えることにより、光源にパワーを供給するだけでなく、光源が加熱手段として機能できる。
【0019】
好ましくは、光源は一群の発光ダイオードを備える。
【0020】
有利には、一群のLEDが使用される理由は、それらが耐久性を有し、衝撃に耐えるからである。
【0021】
好ましくは、分散型照明装置は光源と発光体との間に別の流体コンジットを備え、これにより、流体媒体は光源と発光体との間を循環できる。
【0022】
有利には、これにより、閉ループ周りに熱を分散できる。これは、流体媒体が大気から供給される必要がなく、実際には、必要に応じて装置の一部として設けることができることを意味する。これは熱損失の減少につながる。
【0023】
好ましくは、分散型照明装置は流体媒体の循環を生成するための流体推進手段を備える。
【0024】
有利には、これにより、高温流体が発光体に移送される。
【0025】
好ましくは、流体推進手段はファンを備える。
【0026】
好ましくは、流体媒体は空気である。
【0027】
この結果、装置は装置の周辺から流体媒体を取り込むことができる。これは、費用効果の高い手段である。
【0028】
好ましくは、発光体はレンズを備える。
【0029】
有利には、これにより、所定の方法で放射された光を放散または集束し、必要とされる最大限で可視となる。
【0030】
好ましくは、レンズは黒色吸収体を備える。
【0031】
有利には、これらはレンズが赤外線を吸収する効率を増加し、レンズの加熱を助ける。
【0032】
好ましくは、分散型照明装置は回転羽根に沿って取り付けられ、遠心力作用により流体媒体を駆動して、流れを生成する。
【0033】
有利には、これは装置に一部として設けられるべき流体駆動手段の必要性を無くし、その結果、製造および組立コストを低減させる。
【0034】
好ましくは、分散型照明装置は、航空機の翼先端に取り付けるのに適し、発光体は翼の先端に向かってまたは翼の先端に配置される。
【0035】
本発明の別の態様によれば、分散型照明装置周りに熱を分散させて水蒸気の局所的凝結および/または氷の局所的生成を防止する方法が提供される。分散型照明装置は光源、発光体および光源と発光体との間で光を伝達する光コンジットを備え、分散型照明装置は光源と発光体との間を伝達する流体コンジットを備え、上記方法は光源において流体媒体を加熱するステップと、流体媒体を流体コンジットに沿って発光体の方向に推進させるステップとを備える。
【0036】
本発明のさらに別の態様によれば、光源、発光体および光源と発光体との間で光を伝達する光コンジットを備える分散型照明装置を備える翼が提供され、分散型照明装置は光源と発光体との間を伝達する流体コンジットを備えることにより、分散型照明装置は装置自体の周りの熱分散を可能にして、水蒸気の局所的凝結および/または氷の局所的生成を防止する。
【0037】
本発明のさらに別の態様によれば、風力タービン用のタービン羽根が提供され、タービン羽根は、光源、発光体および光源と発光体との間で光を伝達する光コンジットを備える分散型照明装置を備え、分散型照明装置は光源と発光体との間を伝達する流体コンジットを備えることにより、分散型照明装置は装置自体の周りの熱分散を可能にし、水蒸気の凝結および/または氷の局所的生成を防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
次に、本発明の一実施形態が、図面を参照して、単に例の目的で説明される。
【0039】
図1参照すると、分散型照明装置100の構成が示されている。光は光源1から光コンジット2に沿って伝搬し、羽根先端のレンズ3に達する。羽根先端のレンズ3は、装置100自体からの光4がこのレンズから放射されるため、発光体として作用する。言い換えると、分散型照明装置を見る観測者は、羽根先端のレンズ3からの照射光だけを見る。
【0040】
光源1は、電源5、LEDクラスタ6およびファイバ放射光学系7を備えて示されている。電源5は一群の発光ダイオード(LED)6に接続され、LEDから光を放射させる。LEDから放射される光は、ファイバ放射光学系7により集光され、光コンジット2内に誘導される。
【0041】
図2は、風力タービン(図示せず)の羽根8内に取り付けられた図1の分散型照明装置を示す。発光体3はタービン羽根の先端9に配置され、これにより、空間の最も遠くまで延びる、タービン上の点の可視性を向上させる。光源1は羽根8の根本10の方向に位置付けされる。光コンジット2は羽根8の長さに沿って光源1から発光体3まで延びる。
【0042】
図3を参照すると、光コンジット2は、平行に配置された多数の個別の光コンジット2a〜2eを備えるものとして見ることができ、各コンジットが光を誘導する。これらコンジットは結合されて、光コンジット2の全長にわたって延びる開口11を画定する。開口11により、空気が光源1の周りから、光コンジット2に沿って、発光体3にまで流れることができる。空気12を開口11に沿って発光体3にまで推進させるファン13が設けられる。装置を密閉して、空気が光源1と発光体3との間を循環できるようにすることもできる。
【0043】
発光体12の表面上に氷も凝結も生成されず、放射体を覆うことなく、風力タービンの可視性を低下させないことが重要である。しかし、風力タービンは、氷の生成および凝結を低減する可能性の高い条件下で作動すると予測される。
【0044】
したがって、作動中は、流体媒体12は電源5により加熱され、電源5から推進されて、流体コンジット11に沿って、発光体3にまで流れる。発光体3の位置では、高温の流体媒体11が熱エネルギーを発光体3にまで移送し、これにより、装置を露点より高い温度に維持し、発光体3を妨害する凝結(したがって、氷)が生成されるのを防止する。流体媒体12が発光体3に達すると、流体12は光コンジットの周辺周りを通って電源にまで戻り、再加熱される。
【0045】
暖かい空気を光源周りから発光体にまで分散することにより、装置は効果的に、高温部分から低温部分に熱を移動できる。
【0046】
光コンジット10a〜eは太いコアの光ファイバから製造される。
【0047】
本明細書に述べる本発明の実施形態は、本発明の範囲を限定すると理解すべきではない。ここに記載される実施形態に関する多数の変形例が、本発明の範囲から逸脱することなく可能であり、このような変形例は当業者には明らかであろう。
【0048】
例えば、流体は空気である必要はない。低粘性および低密度の任意の流体が適する。流体は周囲から供給されても、また提供されてもよく、この場合、装置は密閉され、流体が漏れ出すのを防止する必要がある。
【0049】
本発明では、流体媒体を加熱するのを電源に頼る必要はなく、電気加熱素子などの加熱手段を追加して設けてもよい。
【0050】
結合された多数の光コンジットで構成された結合型コンジットを使用する場合、高温流体は光源から発光体まで開口中を流れ、その後、流体が発光体を加熱すると、結合型コンジットの外側を戻ることができる。
【0051】
逆もまた可能である。この場合は、高温流体は光源から発光体まで結合型コンジットの外側を流れてもよく、その後、流体が発光体を加熱すると、開口を通って戻ってもよい。結合型コンジットを密閉する手段を設けて、加熱された流体が漏れ出すのを防止することもできる。
【0052】
本発明を、風力タービンの羽根に関して説明してきたが、本発明は航空機の翼内の取り付けにも同様に適合する。このような取り付けは、航空機の翼の先端に配置された発光体を有する着陸灯として使用するのに特に適する。
【0053】
本発明の流体推進手段は必ずしもファンである必要はない。例えば、回転するタービン羽根において、空気は電源から羽根の先端まで、いずれにせよ遠心力作用によって強制的に送られる傾向にある。これはまた、本発明の範囲内の許容できる推進手段である。
【0054】
本発明はヘリコプターの回転羽根内に取り付けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】1つの可能な実施形態による本発明の構成を示す図である。
【図2】風力タービン羽根内に取り付けられた図1の実施形態を示す。
【図3】図1の実施形態の細部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源、発光体および前記光源と前記発光体との間で光を伝達する光コンジットを備える分散型照明装置であって、
前記分散型照明装置は前記光源と前記発光体との間を伝達する流体コンジットを備えることにより、前記装置は、装置周りの熱の分散を可能にして、水蒸気の局所的凝結および/または氷の局所的生成を防止することができる、分散型照明装置。
【請求項2】
ダクトを備え、前記ダクトは前記流体コンジットおよび前記光コンジットの両方を備える、請求項1に記載の分散型照明装置。
【請求項3】
結合型光コンジットを形成するように組み合わされた複数の光コンジットを備え、前記結合型光コンジットは、前記流体コンジットとして作用できる開口を画定している、請求項1または2に記載の分散型照明装置。
【請求項4】
流体媒体を加熱するための加熱手段を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の分散型照明装置。
【請求項5】
前記分散型照明装置は前記光源と前記発光体との間に別の流体コンジットを備え、これにより、流体媒体は前記光源と前記発光体との間を循環できる、先行する請求項のいずれか1項に記載の分散型照明装置。
【請求項6】
前記分散型照明装置は流体媒体の前記循環を生成するための流体推進手段を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の分散型照明装置。
【請求項7】
前記分散型照明装置は回転羽根に沿って取り付けられ、遠心力作用により流体媒体を駆動して流れを生成できる、先行する請求項のいずれか1項に記載の分散型照明装置。
【請求項8】
分散型照明装置周りに熱を分散させて水蒸気の凝結および/または氷の局所的生成を防止する方法であって、
前記分散型照明装置は光源、発光体および前記光源と前記発光体との間で光を伝達する光コンジットを備え、前記分散型照明装置は前記光源と前記発光体との間を伝達する流体コンジットを備え、
前記方法は前記光源において流体媒体を加熱するステップと、前記流体媒体を前記流体コンジットに沿って前記発光体の方向に推進させるステップとを備える、方法。
【請求項9】
光源、発光体および前記光源と前記発光体との間で光を伝達する光コンジットを備える分散型照明装置を備える翼であって、
前記分散型照明装置は前記光源と前記発光体との間を伝達する流体コンジットを備え、これにより、前記分散型照明装置は装置自体の周りの熱分散を可能にして、水蒸気の局所的凝結および/または氷の局所的生成を防止する、翼。
【請求項10】
風力タービン用のタービン羽根であって、前記タービン羽根は、光源、発光体および前記光源と前記発光体との間で光を伝達する光コンジットを有する分散型照明装置を備え、
前記分散型照明装置は前記光源と前記発光体との間を伝達する流体コンジットを備え、これにより、前記分散型照明装置は装置自体の周りの熱分散を可能にし、水蒸気の局所的凝結および/または氷の局所的生成を防止する、タービン羽根。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−546166(P2008−546166A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524598(P2008−524598)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050396
【国際公開番号】WO2008/007142
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(390038014)ビ−エイイ− システムズ パブリック リミテッド カンパニ− (74)
【氏名又は名称原語表記】BAE SYSTEMS plc
【Fターム(参考)】