説明

分散染料組成物

【課題】ポリエステル系繊維材料のような疎水性繊維材料の染色用の分散染料組成物であって、高温における染料の分散性に優れ、緩染効果が得られ、オリゴマーによるトラブルを解決できる分散染料組成物を提供する。
【解決手段】スルホン酸塩基を有する二塩基酸を15〜65モル%の量で含有する二塩基酸成分と分子量900〜3500のポリエチレングルコールを含有する二価アルコール成分とを重縮合させて得られた、分子量が3000〜30000であり、分子中にポリオキシエチレン鎖を10〜40質量%の量で有するポリエステル共重合体と、分散染料とを含有する分散染料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散染料とポリエステル共重合体とを含む分散染料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維材料及びポリエステル繊維材料とその他の繊維材料との複合材料からなるポリエステル系繊維材料の染色には分散染料が使用されている。
【0003】
分散染料は、水に不溶又は難溶であるので、水中に安定に分散されるように、分散剤と併用して用いられる。このような分散剤としては、従来、リグニンスルホン酸のホルマリン縮合物やナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物などが使用されている。しかし、これらの分散剤は、分散染料を常温の水中に安定に分散させる効果しか有しておらず、ポリエステル系繊維材料を染色する通常の100〜140℃程度の高温条件下で、分散染料が染色浴中で凝集し、その結果、染色物に色ムラが生じるといった問題が生じることがあった。さらに、染料はそれぞれ染め足が異なるという特性を有するので、均染性を得るために染料の染着速度を制御することが必要となる。
【0004】
このような問題から、従来、ポリエステル系繊維材料を染色する場合には、高温での分散性を向上させるために、また染料の染着速度を制御する(すなわち緩染効果を得る)ために、分散均染剤を使用するのが必須である。
【0005】
さらに、ポリエステル系繊維材料の染色における主なトラブルの1つにオリゴマーによるトラブルが挙げられる。ポリエステル系繊維材料は、通常100〜140℃の高温条件下で染色されるが、その際にポリエステル系繊維材料からオリゴマーが繊維表面あるいは染色浴中に溶出し、様々なトラブルを発生させる。具体的には、ポリエステル系繊維材料や染色機本体、熱交換器等の機器にオリゴマーが付着し、繊維製品としての品位が低下したり、染色工程の昇温や冷却などの操作が制御し難くなったりすることがある。
【0006】
このようなオリゴマーによるトラブルを解決するために、これまで染色浴中あるいは染色後の還元洗浄浴中にオリゴマー除去剤を添加する方法がとられている。
【0007】
例えば、特開2000−154466号(特許文献1)には、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルのスルホン酸塩、及びアクリル酸もしくはメタクリル酸ポリマーなどのカルボキシル基含有ポリマーやそれらの塩からなるオリゴマー除去剤を染色浴に添加して、オリゴマーの付着によるトラブルを防止する方法が開示されている。
【0008】
特開2001−159083号(特許文献2)には、ホスホン酸キレート剤、ホスホン酸塩系キレート剤、ポリカルボン酸系キレート剤及びポリカルボン酸塩系キレート剤からなる群から選択された1種又は2種以上を有効成分として含有する染色助剤を染色浴に添加して、ポリエステル分解物の悪影響を減殺する方法が開示されている。
【0009】
また、特開2001−295136号(特許文献3)には、多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物とアルキルもしくはアルケニル脂肪酸とのエステル化物、又は多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物とそれらのアルキルもしくはアルケニル脂肪酸を含有する天然動植物油脂とのエステル交換反応により得られるエステル化物を含むオリゴマー防止剤を染色工程で染色浴中に添加して、オリゴマーの溶出を防止する方法が開示されている。しかしながら、これらのオリゴマー除去剤や防止剤の添加によってもポリエステルオリゴマーの除去効果は低く、特に酸性浴では十分なオリゴマーの除去効果が得られてないのが現状である。
【0010】
そして、分散染料によるポリエステル系繊維材料の染色には、上述のように高温における分散染料の分散性向上や緩染効果を目的として分散均染剤を併用し、また、オリゴマーによるトラブルを防止あるいは抑制するためにはオリゴマー除去剤をさらに併用するといったように、それぞれの問題に対しておのおの薬剤を併用して対応している状況であり、染色作業に手間が掛かり、複数の薬剤を併用することでコストがかかっているのが現状である。
【0011】
【特許文献1】特開2000−154466号公報
【特許文献2】特開2001−159083号公報
【特許文献3】特開2001―295136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することのできる分散染料組成物に関し、とりわけ、ポリエステル系繊維材料のような疎水性繊維材料を染色する際に用いられる分散染料組成物であって、高温における染料の分散性に優れ、緩染効果が得られるのみならず、さらにはオリゴマーによるトラブルをも解決することのできる分散染料組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、スルホン酸塩基を有する二塩基酸を特定の量で含む二塩基酸成分とポリエチレングルコールを特定の量で含む二価アルコール成分とを重縮合させたポリエステル共重合体を含む分散染料組成物を使用することにより、染色工程における高温での分散性が向上し、緩染効果が得られ、さらにはオリゴマーによる問題を解決することができることを見出し、この知見に基づき本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明は、スルホン酸塩基を有する二塩基酸を15〜65モル%の量で含有する二塩基酸成分と分子量900〜3500のポリエチレングルコールを含有する二価アルコール成分とを重縮合させて得られた、分子量が3000〜30000であり、分子中にポリオキシエチレン鎖を10〜40質量%の量で有するポリエステル共重合体と、分散染料とを含有することを特徴とする分散染料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の分散染料組成物に含有されているポリエステル共重合体は、スルホン酸基を有していることからアニオン性であり、またポリマーであることから分散染料の分散性に優れ、染色工程において染色浴が高温となっても分散不良を生じない。また、このポリエステル共重合体は、特にポリエスエテル繊維との親和性に優れているため、ポリエステル系繊維材料表面で染料を保持し、染着速度を制御する、すなわち緩染効果を発揮する。
【0016】
さらに、このポリエステル共重合体は、ポリエステルオリゴマーとの親和性がよいのみならず、ポリエステル繊維との親和性に優れている一方で分子量が制御されているためにポリエステル繊維から容易に脱離しやすいという特性を有している。そのため、ポリエステル系繊維材料表面あるいは染色浴中のポリエステルオリゴマーを水中に安定に保持させることができ、さらにオリゴマーの繊維材料や染色機への再付着を生じさせないため、染色工程において好適に使用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の好ましい実施の形態について説明するが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではなく、本発明の精神と実施の範囲内において様々な変形が可能であることを理解されたい。
【0018】
本発明の分散染料組成物は、分散染料と、スルホン酸塩基を有する二塩基酸を15〜65モル%含有する二塩基酸成分と分子量900〜3500のポリエチレングルコールを含有する二価アルコール成分とを重縮合させたポリエステル共重合体とを含有する。
【0019】
スルホン酸塩基を有する二塩基酸の好ましいものとしては、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホフタル酸の金属塩及びそれらのジメチルエステル、ジエチルエステル、ジフェニルエステル等のエステル誘導体が挙げられる。ここで、金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が挙げられるが、特にナトリム塩、カリウム塩が好ましい。
【0020】
そして、これらのスルホン酸塩基を有する二塩基酸の二塩基酸成分中の含有量は、15〜65モル%の範囲にある。スルホン酸塩基を有する二塩基酸が二塩基酸成分中の15モル%未満であると、分散染料の分散性、緩染性、ポリエステルオリゴマーの除去性に劣る。これは、スルホン酸基の含有量が少ないと分散染料やポリエステルオリゴマーの分散性に劣り、繊維材料に分散染料の凝集物やオリゴマーが再付着したりし、また染料の先着速度の制御が十分でなくなるためと考えられる。一方、65モル%を超えると、ポリエステル共重合体の重縮合反応が困難になってくる。
【0021】
共重合に使用される二塩基酸成分中に含まれる、スルホン酸塩基を有する二塩基酸以外の二塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸等の芳香族カルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、コハク酸等の脂肪族のカルボン酸が挙げられ、それらの酸無水物あるいはそれらと低級アルコールもしくはグリコール類とのエステル誘導体を使用することもできる。
【0022】
また、前記ポリエステル共重合体を合成するためのもう一方の原料である二価アルコール成分は、分子量900〜3500のポリエチレングリコールを含有する。ポリエチレングリコールの分子量が900未満の場合にはオリゴマーの除去性が劣る傾向にあり、分子量が3500を超える場合には分散染料の分散性が悪くなる傾向にある。そして、前記ポリエステル共重合体中には、前記ポリエチレングリコールに由来するポリオキシエチレン鎖を10〜40質量%有されている。ポリオキシエチレン鎖の含有量が10質量%未満であるとオリゴマーの除去性が劣る傾向にあり、一方ポリオキシエチレン鎖の含有量が40質量%を超えると分散染料の分散性不足や染色加工中に起泡性が高くなるなどのトラブルの要因が多くなる傾向にある。
【0023】
ポリエステル共重合体の合成に用いられる二価アルコール成分中に含まれるポリエチレングリコール以外の成分としては、エチレングリコールが好ましいが、その他炭素数3以上のアルキレングルコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の脂肪族又は芳香族のジオール化合物などを用いることができる。
【0024】
さらに、本発明の分散染料組成物に用いられるポリエステル共重合体は、分子量が3000〜30000である。本発明においては、分子量が3000未満であるとオリゴマーの除去性が低下してくる傾向にあり、これはポリエステル系繊維材料への親和性が低くなるからであると考えられる。また、分子量が30000を超えると、ポリエステル共重合体が高粘度となり、分散染料組成物の調製が困難になったり、ポリエステル共重合体のポリエステル系繊維材料への残留量が多くなって、後の仕上げ工程に悪影響が生じることが懸念される。
【0025】
上記のようにスルホン酸塩基を有する二塩基酸の含有量、分子量900〜3500のポリエチレングリコールに由来するポリオキシエチレン鎖の含有量及び分子量を満足するポリエステル共重合体を含有する本発明の分散染料組成物は、分散染料の分散性、緩染性及びオリゴマーの除去性に優れており、その結果、ポリエステル系繊維材料や染色機への染料凝集物やオリゴマーの再付着が少なく、品位が良好な染色物を得ることができるという特徴を有している。なお、このようなポリエステル共重合体の製造方法には、特に制限はなく、エステル交換法、直接重合法などの従来から行われている方法を用いることができる。
【0026】
本発明の分散染料組成物に含有される分散染料としては、従来公知の分散染料を制限なく用いることができ、例えば、ベンゼンアゾ系、複素環アゾ系、ジスアゾ系、アントラキノン系、キノリン系、ニトロ系、クマリン系、メチン系、アミノケトン系等の分散染料を挙げることができる。
【0027】
本発明の分散染料組成物は、前記分散染料とポリエステル共重合体を、水もしくは水と低級アルコールとの混合溶媒に分散させたのち、コロイドミルやサンドミルあるいはディスパーなどの分散器あるいは粉砕器を用いて、好ましくは平均粒径1μm以下となるように分散して調製することができる。
【0028】
本発明の分散染料組成物においては、分散染料とポリエステル共重合体との配合割合は質量比で1:3〜8:1とするのが好ましく、1:3〜3:1とするのがさらに好ましい。この質量比が1:3より小さい場合はポリエステル共重合体の使用量に見合う効果が得られず、質量比が8:1を超えた場合はポリエステル共重合体による分散性、緩染性及びオリゴマーの除去性が不十分となるおそれがある。
【0029】
本発明の分散染料組成物においては、分散染料とポリエステル共重合体との配合割合が前述した如き質量比にあるのが好ましいが、かかる配合割合にあるこれらの成分の分散染料組成物中における濃度は、適宜選択することができ、前記ポリエステル共重合体の濃度が5〜50質量%となるように調整することが好ましい。ポリエステル共重合体の濃度が5質量%未満である場合には分散染料組成物中の分散染料の濃度が低くなるため輸送等のコストの面で不利となることがあり、ポリエステル共重合体の濃度が50質量%を超える場合には分散染料組成物の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難となる場合がある。なお、分散染料組成物には、さらに、分散剤、分散均染剤、防腐剤等の従来公知の成分を添加することができる。
【0030】
本発明の分散染料組成物を用いて染色することができるポリエステル系繊維材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレト、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びそれらの共重合物からなるポリエステル繊維材料や、これらのポリエステル繊維材料とその他の合成繊維材料や天然繊維材料、再生繊維材料との複合繊維材料が挙げられ、その形態としては糸、編み物、織物、不織布などが挙げられる。
【0031】
染色の方法としては、従来公知の方法を特に制限なく適用することができ、染色浴中に分散染料組成物を分散染料濃度が所要量となるように混合し、この染色浴を用いる液流染色、チーズ染色、ビーム染色、オーバーマイヤー染色、高圧噴射染色などの浸染法を挙げることができる。
【0032】
なお、本発明において、分子量は、重量平均分子量を意味し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、機器:HLC−8120(東ソー(株)製)、カラム:GF310HQ(Shodex社製)を用い、移動相に50%(v/v)アセトニトリル水を用いて、ポリスチレンスルホン酸ソーダを標準物質として測定したものである。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0034】
合成例1
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール57g、分子量1000のポリエチレングリコール86g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら、150℃から230℃まで約3時間かけて昇温してエステル交換反応を行い、メタノールを系外に留出させた。次いで、チタン酸テトラブチル0.1gを加えて徐々に減圧していき、内圧を約10kPaとし、250℃で2時間反応させてポリエステル共重合体314gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約27質量%であり、分子量は12000であった。
【0035】
合成例2
反応容器に、テレフタル酸ジメチル155.2g(0.8モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩59.2g(0.2モル)、エチレングルコール58g、分子量2000のポリエチレングリコール131g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体340gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約38質量%であり、分子量は22000であった。
【0036】
合成例3
反応容器に、テレフタル酸ジメチル135.8g(0.7モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩88.8g(0.3モル)、エチレングルコール54g、分子量1000のポリエチレングリコール136g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体350gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約38質量%であり、分子量は5000であった。
【0037】
合成例4
反応容器に、テレフタル酸ジメチル97g(0.5モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩148g(0.5モル)、エチレングルコール61g、分子量2000のポリエチレングリコール38g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体280gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約13質量%であり、分子量は9000であった。
【0038】
合成例5
反応容器に、テレフタル酸ジメチル77.6g(0.4モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩177.6g(0.6モル)、エチレングルコール60、分子量1000のポリエチレングリコール39g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体290gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約13質量%であり、分子量は3000であった。
【0039】
合成例6
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール61g、分子量3000のポリエチレングリコール83g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体315gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約26質量%であり、分子量は18000であった。
【0040】
合成例7
反応容器に、1,8−ナフタレンジカルボン酸129.6g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール57g、分子量1000のポリエチレングリコール85g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体343gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約24質量%であり、分子量は25000であった。
【0041】
合成例8
反応容器に、無水マレイン酸58.8g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール58g、分子量1000のポリエチレングリコール68g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体267gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約25質量%であり、分子量は7000であった。
【0042】
合成例9
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、1,4−ブタンジオール83g、分子量1000のポリエチレングリコール83g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体337gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約24質量%であり、分子量は10000であった。
【0043】
合成例10
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、ネオペンチルグリコール96g、分子量1000のポリエチレングリコール83g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体350gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約23質量%であり、分子量は28000であった。
【0044】
合成例11
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、ビスフェノールSのエチレンオキサイド2モル付加体310g、分子量1000のポリエチレングリコール83g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体564gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約14質量%であり、分子量は30000であった。
【0045】
合成例12
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・カリウム塩124.8g(0.4モル)、エチレングルコール57g、分子量1000のポリエチレングリコール86g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体320gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約26質量%であり、分子量は13000であった。
【0046】
合成例13
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、スルホテレフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール57g、分子量1000のポリエチレングリコール86g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体314gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約27質量%であり、分子量は13000であった。
【0047】
合成例14
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、スルホテレフタル酸ジメチル・カリウム塩124.8g(0.4モル)、エチレングルコール57g、分子量1000のポリエチレングリコール86g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体320gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約26質量%であり、分子量は14000であった。
【0048】
合成例15
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、4−スルホフタル酸ジエチル・ナトリウム塩129.6g(0.4モル)、エチレングルコール57g、分子量1000のポリエチレングリコール86g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体297gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約28質量%であり、分子量は8000であった。
【0049】
合成例16
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、4−スルホフタル酸ジエチル・カリウム塩136.0g(0.4モル)、エチレングルコール57g、分子量1000のポリエチレングリコール86g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体303gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約27質量%であり、分子量は9000であった。
【0050】
比較合成例1
反応容器に、テレフタル酸ジメチル174.6g(0.9モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩29.6g(0.1モル)、エチレングルコール58g、分子量1000のポリエチレングリコール74g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体272gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約26質量%であり、分子量は20000であった。
【0051】
比較合成例2
反応容器に、テレフタル酸ジメチル58.2g(0.3モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩207.2g(0.7モル)、エチレングルコール60g、分子量2000のポリエチレングリコール90g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら、150℃から230℃まで約3時間かけて昇温してエステル交換反応を行い、メタノールを系外に留出させた。次いで、チタン酸テトラブチル0.1gを加えて徐々に減圧していったところ、内圧が約30kPaとなったときに攪拌ができなくなり、その後の反応を継続することができなかった。
【0052】
比較合成例3
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール56g、分子量800のポリエチレングリコール83g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体310gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約26質量%であり、分子量は9000であった。
【0053】
比較合成例4
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール61g、分子量4000のポリエチレングリコール83g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体315gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約26質量%であり、分子量は12000であった。
【0054】
比較合成例5
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール62g、分子量2000のポリエチレングリコール24g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら、150℃から230℃まで約3時間をかけて昇温してエステル交換反応を行い、メタノールを系外に留出させた。次いで、チタン酸テトラブチル0.1gを加えて徐々に減圧していったところ、内圧が約40kPaとなったときに攪拌ができなくなり、その後の反応を継続することができなかった。
【0055】
比較合成例6
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール49g、分子量1000のポリエチレングリコール218g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体438gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約48質量%であり、分子量は16000であった。
【0056】
比較合成例7
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール57g、分子量1000のポリエチレングリコール83g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら、150℃から230℃まで約3時間をかけて昇温してエステル交換反応を行い、メタノールを系外に留出させた。次いで、チタン酸テトラブチル0.1gを加えて徐々に減圧していき、内圧が約30kPaとなったところで反応を終了させ、冷却してポリエステル共重合体312gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約26質量%であり、分子量は2300であった。
【0057】
比較合成例8
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール57g、分子量1000のポリエチレングリコール83g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら、150℃から230℃まで約3時間をかけて昇温してエステル交換反応を行い、メタノールを系外に留出させた。次いで、チタン酸テトラブチル0.1gを加えて、徐々に減圧していき内圧を約9kPaとし、250℃で5時間反応させてポリエステル共重合体311gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約26質量%であり、分子量は34000であった。
【0058】
合成例及び比較合成例のポリエステル共重合体の合成結果を表1にまとめて示す。
【表1】

【0059】
実施例1〜16及び比較例1〜9
合成例及び比較合成例で得られたポリエステル共重合体30g、ベンゼンアゾ系の分散染料(C.I.Disperse Red 167)30g及び水40gを混合し、撹拌した後、サンドミルで平均粒径1μm以下になるまで分散染料を微粒子化し、液状の分散染料組成物を得た。なお、比較例9においては、ポリエステル共重合体30gに代えて水30gを用いた(水の合計70g)。
【0060】
得られた分散染料組成物の評価を以下のようにして行った。
染料分散性試験
染色時の染料分散性を比較するために、カラーペット(日本染色機械製)を用い、そのホルダーに精練を施したポリエステルニットを巻き付け、上下を輪ゴムで止めたものを、実施例1〜16又は比較例1、3、4、6、7、8の分散染料組成物を用いて下記の条件で染色した後、ポリエステルニット上に残るケーシングスポットの程度を肉眼で観察して、染料分散性を5級(ケーシングスポットなし)から1級(ケーシングスポット多い)の5段階で評価した。結果を表2に示す。
【0061】
染色浴
分散染料組成物 3%o.w.f.
(分散染料の濃度に換算すると0.9%o.w.f.)
80%酢酸 1g/L
染色温度×時間:115℃×1分
浴比=1:30
【0062】
緩染性試験
染色時の緩染性を比較するために、ミニカラー((株)テクサム技研製)を用い、実施例1〜16又は比較例1、3、4、6、7、8の分散染料組成物を用いて下記条件に調整した染色浴に、精練を施したポリエステルニットを入れて、2℃/分の速度で昇温した。染色浴の温度が85℃、100℃、115℃、130℃となった時のポリエステルニットの染色の様子を目視にて観察し、ポリエステル共重合体無添加の分散染料組成物の場合と比較して、染着速度を評価した。評価は、○(無添加より緩染)、×(無添加と同等)の2段階で、染着速度の緩やかなものを良と判断し、評価した。結果を表2に示す。
【0063】
染色浴
分散染料組成物 3%o.w.f.
(分散染料の濃度に換算すると0.9%o.w.f.)
80%酢酸 1g/L
染色温度×時間:130℃×30分
浴比=1:20
【0064】
加工適性試験
染色時の加工適性を比較するために、高温高圧液流染色機:MINI−JET D−100((株)テクサム技研製)を用い、実施例1〜16又は比較例1、3、4、6、7、8の分散染料組成物を添加した下記条件の処理浴に、ポリエステルポンジを入れて3℃/分の速度で昇温したときの60〜130℃までの泡の状態を、ポリエステル共重合体無添加の分散染料組成物の場合と比較して評価した。評価は、○(無添加と同等)、△(無添加より泡立ち多い)、×(無添加より著しい泡立ち)の3段階で、泡立ちの少ないものを良と判断し、評価した。結果を表2に示す。
【0065】
処理浴
分散染料組成物 3%o.w.f.
(分散染料の濃度に換算すると0.9%o.w.f.)
80%酢酸 1g/L
浴比=1:30
【0066】
オリゴマー除去性試験
染色時のオリゴマー除去効果を比較するために、実施例1〜16又は比較例1、3、4、6、7、8の分散染料組成物を添加した下記の条件で染色したポリエステルサテン織物を、1,4−ジオキサンを用いて抽出して、その抽出液の286nmにおけるUV吸光度を測定することにより、布帛1g当たりのオリゴマーの付着量を算出した。結果を表2に示す。
【0067】
染色浴
分散染料組成物 3%o.w.f.
(分散染料の濃度に換算すると0.9%o.w.f.)
80%酢酸 1g/L
染色温度×時間:130℃×30分
浴比=1:15
【0068】
残留性試験
染色布へのポリエステル共重合体の残留性を比較するために、前記オリゴマー除去性試験と同様の染色条件で染色したポリエステルサテン織物を120℃で1分間乾燥した後、180℃で30秒間加熱処理した。その後、室温まで冷却した後、生地上に水滴を1滴滴下して、水滴が完全に生地表面から浸透するまでの時間を測定した。吸水性のないものほどポリエステル重合体の残留がないと判断する。得られた結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
表2の結果のように、本発明の分散染料組成物は、高温での染料分散性と緩染性が優れており、オリゴマーを低減することができる。また、加工時の泡立ちが少なく、加工した後のポリエステル系繊維材料へのポリエステル共重合体の残留もほとんどないことから、加工適性を備えていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の分散染料組成物を用いれば、染料の凝集物やオリゴマーの付着による加工時の問題が解決でき、また緩染性も発揮することから、加工欠点のない良好な品位の繊維製品が得られ、また加工時の泡立ちも少ないために加工時のトラブルも軽減されるので、繊維製品の染色加工などを経済的に行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸塩基を有する二塩基酸を15〜65モル%の量で含有する二塩基酸成分と分子量900〜3500のポリエチレングルコールを含有する二価アルコール成分とを重縮合させて得られた、分子量が3000〜30000であり、分子中にポリオキシエチレン鎖を10〜40質量%の量で有するポリエステル共重合体と、分散染料とを含有することを特徴とする分散染料組成物。

【公開番号】特開2009−120646(P2009−120646A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293309(P2007−293309)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】