説明

分析センサを含む反応パウチ

反応装置は、可撓性の流体不透過性パウチと、パウチ内の材料特性の可逆測定をリアルタイムでin situで行う分析センサとを含む。センサは、パウチに一体接続させたり、または接続しないようにすることができる。分析センサは、パウチ内またはパウチ上に配置することのできる応答要素と、パウチ外に配置することのできる処理要素と、応答要素と処理要素との間で情報を伝達する手段とを含むのが好ましい。伝達手段は、1つ以上の電気、光学、磁気、核および機械的手段を含むことができる。パウチは、単一で用いたり、または、材料のライブラリの作成に用いることのできる組み合わせ配列のパウチの構成材とすることができる。本方法は、パウチ内の材料の特性変化をモニターするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分析センサを含む可撓性パウチを有する反応装置である。パウチ内の材料の特性変化をモニターする方法である。本反応装置および方法は、化学、物理、生物合成を行いモニタリングするのに有用である。
【背景技術】
【0002】
単一反応容器を用いるときや、ライブラリの構成材の組み合わせ配列を作成するのに多数の反応容器を用いるときに、物理または化学反応の結果を素早くスクリーニングすることは望ましい特徴である。リアルタイムスクリーニング、すなわち、反応容器内で生じる材料特性の変化を求めることが最終的な目標である。
【0003】
化学化合物の1次元配列は知られており(国際公開第99/42605号パンフレット)、化合物は細長い支持体(ストリング)で合成されて、各成分が現れる周波数が識別のために用いられる。国際公開第99/32705号パンフレットには、異なる化合物を含有することを目的としたパウチのストリングが記載されている。パウチは、流体を透過可能なマイクロフィラメントポリプロピレンから構成されていて、ライブラリ要素をパウチ表面に取り付けることのできるよう放射線処理もされている。
【0004】
化学組成物の配列を合成するのに特に魅力的なやり方は、モノマー化学種を、適切な光重合開始剤と共に封止パッケージに予めパックしておいて、モノマーを重合することである。例えば、米国特許第5,804,610号明細書には、予備粘弾性組成物をパッケージング材料と混合してから透過エネルギーにより重合する粘弾性組成物(例えば、ホットメルト接着剤のような接着剤)を調製する方法が教示されている。しかしながら、重合した組成物の化学および物理特性の決定は、合成が完了した後になされる。
【0005】
センサを用いて、封止されたパウチ状システムの中にある材料の特性を求めることが知られている。例えば、国際公開第00/10504号パンフレットには、血液貯留容器の壁に取り付けられるマイクロポーラス膜センサを用いることが記載されている。この膜には、容器内のpHの変化に応答する受食性物質で充填可能なポアがある。パウチ内の液体のpHが大幅に下がると、ポア内の物質が腐食して、ポアが広がって、血液製剤の一部がポアを通って、含まれる空間へと通過して、目視検出可能となる。国際公開第92/19764号パンフレットは、集めた輸血体液についての増殖監視装置に関するものである。特に、この装置には、可撓性の血液採取袋または微生物成長媒体を含む試料袋が含まれている。袋の内壁に取り付けられたセンサを用いて、袋の中の微生物汚染を非侵襲的に検出する。この発明はまた、輸血直前に血液採取袋内の微生物成長を検出する方法にも関する。センサを用いて、蛍光系染料の放出された蛍光を外部からモニタリングすることにより、患者に輸血される体液の採取袋における微生物の成長をモニターする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡潔に述べると、本発明は、可撓性の流体不透過性パウチと、さらにパウチ内の材料特性の可逆測定をリアルタイムでin situで行う分析センサとを含む反応装置を提供するものである。センサは、パウチに一体接続させたり、または接続しないようにすることができる。分析センサは、パウチ内またはパウチ上に配置することのできる応答要素と、パウチ外に配置することのできる処理要素と、応答要素と処理要素との間で情報を伝達する手段とを含むのが好ましい。伝達手段は、機械的要素、例えば、ワイヤまたは光ファイバケーブルとしたり、音波、化学放射線、核放射線または磁気のような放射線要素とすることができる。パウチは、単一で用いたり、または材料のライブラリの作成に用いることのできる組み合わせ配列のパウチの構成材とすることができる。パウチは自立形であるのが好ましい。反応装置は、化学、物理および生物合成物、ブレンドおよび処方中の成分、中間体および生成物の特性のリアルタイムでの連続測定に特に有用である。
【0007】
より具体的には、各反応装置は、反応パウチと、パウチ内の1箇所以上の場所で変化が生じる際に、例えば、材料の物理または化学特性における変化をモニタリングする1つ以上の分析センサとを含んでいる。色、濁度、蛍光等といった化学または物理的性質である可逆生物学的特性のモニタリングが、本発明の範囲内に含まれるものと考えられる。分析センサは、化学、物理または生物情報(出力)を電気または電磁信号に変換するパウチ内またはパウチ上にある応答要素と、電気または電磁信号を使用可能な情報に変換する処理要素とを含む。応答要素と伝達要素は、パウチ内部に配置させたり(フリーフロートまたは取付)、またはパウチの内壁、あるいはパウチの壁の一部または全てとすることができる。あるいは、応答要素をパウチの端部で封止することもできる。応答要素は、1つ以上の外部電極によりアドレスしたり、または遠隔アドレスすることができる。応答要素は、可撓性、再使用可能性、非劣化性、廃棄性および低コストのうちの1つ以上の特性を有しているのが好ましい。
【0008】
他の態様において、本発明は、
a)可撓性の封止された流体不透過性の1つ以上の反応成分を含むパウチを含む反応装置を提供する工程であって、反応装置はまた、パウチ内の材料の特性の可逆測定をリアルタイムでin situで行う測定プロトコルで操作する分析センサを含み、分析センサが、化学または物理情報(出力)を電気または電磁信号に変換するパウチ内またはパウチ上にある応答要素と、電気または電磁信号を使用可能な情報に変換する処理要素と、応答要素と処理要素との間の情報を伝送する手段とを含む工程と、
b)パウチを制御された環境に露出して、反応成分を相互作用させて、ブレンド、反応生成物および処方のうちの1つ以上を形成する工程と、
c)センサの応答要素と処理要素にパウチ内で生じた材料特性の変化をモニターさせる工程と、
d)任意で、処理情報を用いて制御された環境と測定プロトコルの一方または両方を修正する工程と
を含む反応装置に含まれるパウチの内容物の材料特性の変化をリアルタイムでin situで可逆的にモニタリングする方法を提供する。
【0009】
分析センサを用いて、パウチ内の反応成分、中間体および生成物の物理、化学および生物学的特性のうちの1つまたは複数の特性をモニターすることができる。
【0010】
本発明の反応装置は、従来の反応容器に比べて優れた特性を有しており、次のような利点を与える。時間のかかる抽出および精製手順なしでパウチ反応物質、中間体および生成物を素早く評価できる。反応進行のモニタリングをリアルタイムでin situで行えるため、例えば、ポリマー硬化の程度のモニタリングにおける等、反応最適化が促進される。プロセス条件下で基礎的な反応速度論を検討することができる。温度、結晶周波数等のような可逆特性をモニタリングすることができる。工程間評価を行って、例えば、製造プロセスを制御された状況下においたままとすることができる。
【0011】
本明細書において、
「化学放射線」とは、電磁放射線のことを意味し、好ましくはUV(紫外線)、マイクロ波およびIR(赤外線)である。
「フィルム」とはパウチへと作成するのに好適なシート状材料のことを意味する。
「可撓性」とは、10cm、好ましくは1cm、より好ましくは1または2mm、最も好ましくは0.25mm以下の直径のロッド周囲で曲がることを意味する。
「フリーフロート」とは、少なくとも一方向に自由に動くことを意味する。
特性の「in situ」測定とは、応答要素がパウチの中身と物理接触することを意味する。
「パウチ」とは、可撓性の封止または封止されていない、フィルムで作成された好ましくは自立形の袋、パッケージまたは反応容器のことを意味し、好ましくは中の材料に不活性で、封止すると、周囲環境において流体不透過性であり、相容性のある材料の組み合わせを用いることができるが、単体構造であるのが好ましい。
「リアルタイム」とは、事象そのものと実質的に同時に実施される測定のことを意味する。
「可逆」とは、パウチの材料の特性値の増減の両方をリアルタイムで測定可能なことを意味する。
「単体構造」とは、隔膜が存在していて、隔膜を異なる材料とすることができる場合を除いて1種類の材料から作成されていることを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、反応容器として可撓性パウチまたはパウチの配列を用いて反応、中間体および生成物特性のin situでのリアルタイムセンシングを行うものである。本発明は、当該の材料特性に応答する分析センサを各パウチに組み込むものである。
【0013】
これらの材料特性は、これらに限られるものではないが、熱電対、インターデジタル変換器(IDT)、表面音波デバイス(SAW)および水晶微量天秤(QCM)を含む音響センサをはじめとする数多くの異なるセンサにより測定することができる。これらのデバイスは公知で利用可能であり、質量、密度、モジュラス、導電性、pH等といった広範囲の材料特性に応答可能である。
【0014】
特に、安価な使い捨てセンサは、銅回路パターンをポリマーフィルム(マイクロフレックス(Microflex)(商標)、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニー(3M Company,St.Paul,MN)に蒸着させることにより作成可能な応答要素を有するものである。これらのセンサを製造するのに有用な方法および材料については、米国特許第5,227,008号明細書、同第6,071,597号明細書および同第6,177,357号明細書を参照のこと。
【0015】
米国特許第5,227,008号明細書は、レジストをラミネートする工程と、所望の画像が得られるまでレジストを希釈水溶液で現像する工程と、架橋レジストにより覆われていないポリマーフィルムの部分を約50℃〜約120℃の温度で濃縮塩基によりエッチングする工程と、ポリマーフィルムからレジストをストリッピングオフする工程とを含む、ポリマーフィルムのエッチングが、マスクとして水性処理可能な架橋フォトレジストを用いて、一部を濃縮水性塩基により溶解することによりなされる可撓性回路の製造プロセスに関する。
【0016】
米国特許第6,071,597号明細書は、a)少なくとも1層のポリマー誘電体材料と、b)その上を覆う少なくとも1層の導電性材料と、c)少なくとも1つの回路トレースとを含み、前記各誘電体層と前記各導電性層は2つの主面を有しており、少なくとも1層が少なくとも1つのアパーチャを有する誘電体層または導電層から選択され、少なくとも1層の前記誘電体層が、前記誘電体層の少なくとも一主面の少なくとも一部にコートされたダイヤモンド状カーボン、水素化ダイヤモンド状カーボン、機能性ダイヤモンド状カーボン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、二酸化ケイ素および三フッ化ホウ素からなる群より選択される材料を有しており、前記材料のヤング係数が約100〜約200Gpa、45MHz〜20GHzの誘電率が約8〜約12であり、ビッカース硬さが約20000〜約9000kg/mm2である可撓性印刷回路に関する。
【0017】
米国特許第6,177,357号明細書は、a)レジストを、ポリマーフィルム層と銅の薄層とを含む可撓性基材にラミネートする工程と、b)前記レジストの少なくとも一部を露光して前記露光部分を架橋する工程と、c)前記薄銅層の真上にある回路を所望の厚さまでめっきする工程と、d)架橋レジストにより覆われていない前記ポリマーフィルムの部分を濃縮塩基により約70℃〜約120℃の温度でエッチングする工程と、e)前記ポリマーフィルムから希釈塩基溶液により前記レジストをストリップオフする工程と、f)前記薄銅層をエッチングして回路を得る工程とを含む、ポリマーフィルムのエッチングが、マスクとしてUV硬化性の100%活性液体フォトレジストを用いて、濃縮水性塩基により部分を溶解することによりなされる、可撓性印刷回路を製造するプロセスに関する。
【0018】
本発明の反応装置および方法は、化学放射線硬化、好ましくはUV硬化と、熱硬化重合の両方に適用可能である。一実施形態において、コネクタの配列を、パウチの一端を通して、パウチの中身と直接接触させてIDTにより封止することができる。コネクタは、図1a、2aおよび3aに図示する通り、外部に配置させることができる。本実施形態は、例えば、励磁波長でモノマーが大きな吸収断面を有することが予測されるUV硬化重合反応において反応を進行可能なUV開始重合に好適である。パウチの厚い部分にはあまりUV光に露光せず、徐々に硬化する。これは、パウチの端部に近いポリマーが中心より硬いUV硬化アクリレートで特に顕著である。
【0019】
例えば、水を温度制御媒体として用いることのできる他の実施形態において、センサをパウチに透過させる必要がないよう、無線周波数アンテナを検出要素に組み込むことができる。かかるアンテナは、遠隔アドレスでき、これによって、図1b、2bおよび3bに示すように、封止が問題となる状況ばかりでなく、外部コネクタを評価すべきパウチに取り付けるのが難しい、または時間がかかる場合にも有利である。
【0020】
パウチは単体または組み合わせ配列で本発明に有用であり、2001年2月22日出願の譲渡人の同時係属特許出願USSN第09/793,666号明細書(弁護士名簿番号第5597US002)に記載されている。
【0021】
より具体的には、可撓性パウチの形成は、様々なやり方、例えば、2つの長さの熱可塑性フィルムをデバイスの下部と各側端部に、液体形態充填封止機(例えば、テキサス州ヒューストンのジェネラルパッケージング(General Packaging,Houston TX)製型番70A2C)でヒートシールすることにより、または手動で開放端パウチを形成することにより行うことができる。また、単一長さのフィルムを折り畳み2つの端部で封止し、成分を充填し、残りの端部を封止することができる。あるいは、フィルムのチューブを一端で封止し、成分を充填し、対向端で封止することができる。パウチは有用な任意の形状とすることができるが、矩形または正方形表面を有するパウチが好ましい。特定のセンサでは、硬化性接着剤を用いて、コネクタまたはセンサ周囲でパウチを封止するのが望ましい。
【0022】
通常、成分をパウチに入れた後、ヒートシールして成分を完全に囲む。封止温度は、通常、パウチを形成するのに用いるフィルムの軟化点より高く融点より低い。封止前にパウチから空気の大部分を除去するのが好ましい。これは、例えば、真空排気または機械的圧縮によりなされる。封止は、フィルムを横切るように、および長さ方向に多数のパウチを形成する数多くの異なる構成に影響される可能性がある。例えば、側端の封止に加えて、封止はまた、フィルム中心下に形成することもでき、上端および下端の封止に際してフィルムは2つのパッケージを形成する。パッケージは中央封止により互いに取り付けられたままとしたり、または個々のパウチへと切断することができる。他の実施形態において、追加の成分を加えるために、1つまたは複数のパウチを元のパウチの内側に含めることができ、これは係留パウチと呼ばれる。これは、初期成分の充填中に含めることのできる追加の成分を1つ以上の小さな分離係留パウチへと予備封止するか、あるいは、小さな内部パウチとして元のパウチ内側に組み込むことができる。係留パウチは、フリーフロートさせたり、または主たるパウチの1つ以上の端部に予備封止させることができる。追加の成分を含有した係留パウチは、主たるパウチより容易に破裂して、追加の成分を主たる成分と接触させる材料で作成することができる。主たるパウチより薄い材料の係留パウチを形成したり、低融点でラミネートされたパウチを用いると、係留パウチの破裂が促される。前者の場合、係留パウチは、混練または圧縮のような機械的攪拌により破裂させることができる。後者の場合、好ましくは機械的攪拌と高温を組み合わせて係留パウチを破裂させることができる。変形実施形態において、係留パウチは、化学エネルギー(またはその他の種類のエネルギー)で分解して、パウチを破裂させ中身を放出する材料で作成することができる。変形実施形態において、主たるパウチに隔膜を装着させると、保管のためにパウチの完全性を損なうことなく、追加の成分を充填するためにパウチへ再封止可能に入れることができる。
【0023】
パウチは、特定の実施形態においてUVまたはIR透過性の可撓性フィルムを含んでいるのが好ましい。熱可塑性フィルムは、例えば、イリノイ州ロックフォードのハンツマンパッケージング(Huntsman Packaging,Rockford IL)といった多くの商業源より入手可能である。用いる特定の熱可塑性フィルムは、パウチ内に含まれる成分および製品の組成および融点に大きく依存しており、フィルムの軟化点は、通常、125℃未満である。単一層または多層ラミネートパウチは、ポリオレフィン、ポリジエン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテル、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミン、ポリシクロオレフィン、ポリホスファジン、ポリアセテートおよびポリアクリレートのホモ−およびコポリマーのような可撓性熱可塑性ポリマーフィルムで作成することができる。好ましい熱可塑性フィルム材料としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVF)、ポリビニルアセテート(PVA)、エチレンおよび酢酸ビニルのコポリマー、フッ化ビニリデン、塩化ビニル、テトラフルオロエチレンおよびプロピレンが挙げられる。フィルムのシートは、上述した通り市販されており、パッケージ構成材を作成するのに有用である。本発明の単一または組み合わせライブラリに用いることのできるかかるパウチは、例えば、米国特許第5,902,654号明細書に開示されている。予備粘弾性組成物(例えば、予備接着組成物)をパッケージング材料と混合してから透過エネルギーにより重合する粘弾性組成物(例えば、ホットメルト接着剤のような接着剤)を調製する方法は、米国特許第5,804,610号明細書および同第5,932,298号明細書に開示されている。オレフィンモノマーと、モノマーの重合を媒介する遷移金属種を含む触媒系のパッケージ重合を含むプロセスは、米国特許第5,902,654号明細書に開示されている。このプロセスは、様々な更なる処理なしで得られるポリマーを用いる方法を提供するものである。本発明に有用なその他のフィルムとしては、金属フィルム、例えば、銅とアルミニウムのホイルや、周期律表の2、3、4、5、6、7および8族の任意の金属、およびポリマーフィルム、金属ホイル、紙材料、綿、羊毛、ガラスファイバーおよびポリマーファイバーのような織および不織テキスタイル材料を組み合わせた複合体材料が挙げられる。
【0024】
主たるパウチに用いるフィルムの厚さは、約5μm〜3mm、好ましくは25〜250μm、より好ましくは50〜150μmである。フィルムの厚さもまた、パウチの成分が受ける温度または条件に応じて異なり、高温および低温用に用いるフィルムが厚いと機械的な操作が必要である。係留パウチは、同じまたは異なる材料から形成することができ、主たるパウチと同じ厚さ、またはそれより薄くすることができ、好ましくは約1μm〜1mm、より好ましくは5〜150μm、最も好ましくは15〜50μmである。パウチのサイズは、任意の所望の寸法とすることができる。
【0025】
しかしながら、当業者であれば、パウチの寸法により、パウチ内の反応条件を制御可能であることが分かるであろう。例えば、バルク反応だと、質量が集中するために、溶液または懸濁反応よりも小さな寸法のパウチが必要である。これは、反応種の濃度が高く、一般的な化学反応中に生成される熱エネルギーを除去するために広い表面積が必要であることによる。一方、溶液および懸濁反応には、低濃度の反応種が含有されており、熱エネルギーの除去に必要される表面積はそれより狭い。バルク反応の主たるパウチの寸法は異なるが、通常、約100cm×100cm未満、好ましくは約20cm×20cm、より好ましくは約13cm×7cm、さらには2cm×1cm以下である。このサイズの係留パウチは、同じ制約条件に接合し、主たるパウチ内で装着できれば任意のサイズとしてよい。当業者であれば、係留パウチから添加された追加の成分の種類によって主たるパウチのサイズが指示されることが分かるであろう。例えば、追加の成分が触媒の場合、必要とされる係留パウチのサイズは、例えば、1cm×1cmと非常に小さいサイズであり、係留パウチが溶液重合用にコモノマーを含有している場合には、係留パウチは、例えば、50cm×50cm以下、好ましくは10cm×10cm以下と非常に大きくしてもよく、最も好ましくは約4cm×5cm〜約5mm×5mmである。
【0026】
成分を含有するパウチは、単体で用いたり、または互いに線状および/または水平に取り付けられたり、または互いに物理的に分離させることができる。封止後、反応ゾーンへと搬送して、各パウチに同じまたは異なる反応条件および休止時間を与える。これによって、個々のライブラリに包含できる反応の範囲および数が実質的に増大する。反応ゾーンは、恒温水浴のように単純なものとしたり、または制御された温度の超音波浴のように精密なものとすることができる。一般的に、各パウチの反応時間は、用いる反応ゾーンの長さにより制御することができる。長い反応時間には長い反応ゾーンが必要となる。パウチ内の成分の混合は、これらに限られるものではないが、機械的攪拌、例えば、混練ローラまたは封止浴内の制御された圧力勾配変化または超音波攪拌によりなされる。
【0027】
より具体的には、反応ゾーンは、化学または物理反応を開始および促進し、かつ/または温度を制御するのに用いる液体、ガス状または固体浴とすることができる。化学または物理反応によるような本発明のライブラリ配列の形成は、これらに限られるものではないが、熱、機械または超音波エネルギーをはじめとする化学放射線を含む様々なエネルギー手段により促すことができる。反応ゾーン浴としては、水浴、対流オーブン、塩浴および流動床が例示されるがこれらに限られるものではない。反応ゾーン通過後、パウチは任意で分離して、様々な評価を行ったり、後の評価や分析のために保管しておくことができる。
【0028】
本発明の一実施形態において、分離された自立形パウチは、1つ以上の反応ゾーンへ手動で配置したり取り出すことができる。本実施形態において、プロセスは機械的に連続していないが、個々のパウチに異なる反応ゾーン条件および休止時間を与えることができるという点で、得られた生成物に以降の実施形態と同じ制約条件を与えることができる。
【0029】
好ましい変形実施形態において、主たるパウチは、互いに一時的に間隔のあいた、別個の自立形の自己指示形要素とすることができる。それらは、例えば、ピンまたはクランプにより別個に、反応ゾーンを通して搬送される可動ベルトまたはトラックのような搬送装置に支持または留められる。これは、反応ゾーンの条件(例えば、温度、放射エネルギー、機械エネルギー、超音波エネルギー等)を変更し、反応ゾーンで費やす時間を変えることにより連続プロセスとすることができ、反応条件は所望であれば個々のパウチのそれぞれで変えることができる。
【0030】
最も好ましい実施形態において、パウチは、1つ以上の端部で線状および/または水平に互いに結合させることができる。上述した通り、それらを搬送装置に支持または留めることができる。本実施形態において、パウチはまた、互いに一時的に間隔をあけて、ローラ、ベルトをはじめとする様々な手段により、またはスプールへと巻き付けることにより、反応ゾーンを通して搬送させることができる。ここでもまた連続プロセスとすることができ、反応ゾーンの条件および費やす時間は、所望であれば個々のパウチでそれぞれ変えることができる。
【0031】
本発明に有用な分析センサとしては、調査されている試料の化学、物理または生物学的特性を反映する分析情報を与える任意の測定デバイスが挙げられる。測定可能な機械的特性としては、密度、歪、力、トルク、圧力、粘度、表面張力、温度、熱流速、キャパシタンス、誘電率、複素インピーダンス、色、屈折率(RI)、波長、熱伝導性およびレオロジーおよびモルホロジー特性が例示されるがこれらに限られるものではない。
【0032】
測定可能な化学的特性としては、濃度、反応速度、結合定数、種の有無、種の同一性、反応物質、中間体および生成物の定量、分子量、多分散性、pHおよび含水量が例示されるがこれらに限られるものではない。
【0033】
多くの応答要素が本発明において有用であり、例えば、圧電素子、電気化学デバイス、光学プローブ、熱量デバイス、サーミスタ/熱電対、インターデジタル変換器、抵抗素子、ホール抵抗(磁気能力)デバイス、熱導電性デバイス(例えば、1つのヒータと1つの温度センサが近くにある)および片持ちばりプローブが挙げられるがこれらに限られるものではない。様々な伝達手段が利用可能であり、例えば、電気、光学、磁気、核および機械的手段が挙げられる。より具体的には、ワイヤ、光ファイバケーブル、電波方式認識(RFID)、音波、化学放射線、核放射線および磁気を用いて応答および処理要素間で情報を伝達することができる。
【0034】
図1aは、可撓性パウチ20と分析センサ30とを含む本発明の反応装置10の透視図である。分析センサ30は、応答要素12と、処理要素16と、応答要素12と処理要素16の間で情報を物理的に伝達する(ワイヤ、光ファイバーケーブル等により)伝達手段18とを含んでいる。パウチ20は、端部24またはその近傍にシール22を有している。パウチ20を使用する前に、材料を入れるためにシール22の一方または両方を開けることができる。伝達手段18のコネクタ14はパウチ20の外側に配置することができる。コネクタ14は、応答要素12と処理要素16の間で情報を伝達するのに任意の好適な手段により処理要素16と連通している。応答要素12は、シール22でのみパウチ20に取り付けて、パウチ20内でフリーフロートさせたり、あるいは、1つ以上のポイント(図示せず)でパウチ20の内壁26に取付けることもでき、この場合には、パウチ20内部に部分的または完全に固定してもよい。
【0035】
図1bは、可撓性パウチ20と分析センサ30とを含む本発明の反応装置10の透視図である。分析センサ30は、応答要素12と、処理要素16と、応答要素12と処理要素16の間で情報を伝達する伝達手段(図示せず)とを含んでいる。パウチ20は、端部24またはその近傍にシール22を有している。パウチ20を使用する前に、材料をパウチ20に入れるためにシール22の一方または両方を開けることができる。応答要素12は、パウチ24の端部近傍のシール22でのみパウチ20に取り付けて、パウチ20内でフリーフロートさせたり、あるいは、1つ以上のポイントでパウチ20の内壁26に取付けることもでき、この場合には、パウチ20内部に部分的または完全に固定してもよい。応答要素12は、処理要素16により遠隔アドレスすることができる。応答要素12から処理要素16へ情報を遠隔伝達する伝達手段(図示せず)としては、例えば、音波、化学放射線、核放射線および磁気のような多くの公知の形態のエネルギーを挙げることができる。
【0036】
図2aは、可撓性パウチ50と分析センサ60とを含む本発明の反応装置40の透視図である。分析センサ60は、応答要素42と、処理要素46と、応答要素42と処理要素46の間で情報を伝達する伝達手段48とを含んでいる。パウチ50は、端部54またはその近傍にシール52を有している。パウチ50を使用する前に、材料をパウチ50に入れるためにシール52の一方または両方を開けることができる。伝達手段48のコネクタ44は、外側、任意で、パウチ50の内側に配置されており、シール58を通過する。コネクタ44は、応答要素42と処理要素46の間で情報を伝達するのに任意の好適な手段により処理要素46と連通している。伝達手段48は、ワイヤまたは光ファイバーケーブルのような機械的要素を含んでいる。応答要素42は、シール58でパウチ50本体に取付けられており、そうでない場合はパウチ50内でフリーフロートさせたり、または1つ以上のポイント(図示せず)でパウチ20の内壁56に取り付けることもできる。
【0037】
図2bは、可撓性パウチ50と分析センサ60とを含む本発明の反応装置40の透視図である。分析センサ60は、応答要素42と、処理要素46と、応答要素42と処理要素46の間で情報を伝達する伝達手段(図示せず)とを含んでいる。パウチ50は、端部54またはその近傍にシール52を有している。パウチ50を使用する前に、材料をパウチ50に入れるためにシール52の一方または両方を開けることができる。応答要素42はパウチ50内側でフリーフロートである。応答要素42は、処理要素46により遠隔アドレスされる。応答要素42から情報を遠隔伝達する伝達手段(図示せず)としては、例えば、音波、化学放射線、核放射線および磁気のような多くの公知の形態のエネルギーを挙げることができる。
【0038】
図3aは、可撓性パウチ80と分析センサ90とを含む本発明の反応装置70の透視図である。分析センサ90は、応答要素72と、処理要素76と、応答要素72と処理要素76の間で情報を伝達する伝達手段78とを含んでいる。パウチ80は、端部84またはその近傍にシール82を有している。パウチ80を使用する前に、材料をパウチ80に入れるためにシール82の一方または両方を開けることができる。処理要素72は、シール88でパウチ80およびコネクタ74に取り付けることができる。伝達手段78のコネクタ74は、外側、任意で、パウチ80の内側に配置されており、シール88を通過する。コネクタ74は、応答要素72と処理要素76の間で情報を伝達するのに任意の好適な手段により処理要素76と連通している。伝達手段78は、ワイヤまたは光ファイバーケーブルのような機械的要素を含んでいる。応答要素72はシール88でパウチ80に取り付けられている。
【0039】
図3bは、可撓性パウチ80と分析センサ90とを含む本発明の反応装置70の透視図である。分析センサ90は、応答要素72と、処理要素76と、応答要素72と処理要素76の間で情報を伝達する伝達手段(図示せず)とを含んでいる。パウチ80は、端部84またはその近傍にシール82を有している。パウチ80を使用する前に、材料をパウチ80に入れるためにシール82の一方または両方を開けることができる。応答要素72はパウチ80の内壁86に取り付けられている。応答要素72は、処理要素76により遠隔アドレスされる。応答要素72から処理要素76へ情報を遠隔伝達する伝達手段(図示せず)としては、例えば、音波、化学放射線、核放射線および磁気のような多くの公知の形態のエネルギーを挙げることができる。
【0040】
図4aは、可撓性パウチ110と分析センサ120とを含む本発明の反応装置100の透視図である。分析センサ120は、応答要素102と、処理要素106と、応答要素102と処理要素106の間で情報を伝達する伝達手段108とを含んでいる。パウチ110は、端部114またはその近傍にシール112を有している。パウチ110を使用する前に、材料をパウチ110に入れるためにシール112の一方または両方を開けることができる。応答要素102は接在しており、パウチ110の本体の一部を形成している。コネクタ104は、パウチ110の外側に位置しており、任意で、応答要素102の内側に組み込むことができる。応答要素102は、周囲シール118の周りでパウチ110本体に封止されている。コネクタ104は、シール118で応答要素102に取り付けられており、応答要素102と処理要素106の間で情報を伝達するのに任意の好適な手段により処理要素106と連通している。伝達手段108は、ワイヤまたは光ファイバーケーブルのような機械的要素を含んでいる。
【0041】
図4a1は、線4a’−4a’に沿った図4aの断面図であり、パウチ110、応答要素102およびその周囲シール118、応答要素102のコネクタ104とを示している。
【0042】
図4bは、可撓性パウチ110と分析センサ120とを含む本発明の反応装置100の透視図である。分析センサ120は、応答要素102と、処理要素106と、応答要素102と処理要素106の間で情報を伝達する伝達手段(図示せず)とを含んでいる。パウチ110は、端部114またはその近傍にシール112を有している。パウチ110を使用する前に、材料をパウチ110に入れるためにシール112の一方または両方を開けることができる。応答要素102は接在しており、シール118でパウチ110の本体の一部を形成している。応答要素102は、処理要素106により遠隔アドレスされる。応答要素102から処理要素106へ情報を遠隔伝達する伝達手段(図示せず)としては、例えば、音波、化学放射線、核放射線および磁気のような多くの公知の形態のエネルギーを挙げることができる。
【0043】
本発明は、有機、無機および生物材料の合成、ブレンドまたは処方中に、成分、中間体および生成物の化学、物理および生物学的特性をリアルタイムでin situで可逆モニタリングするのに有用である。例えば、有機合成、光化学、ポリマー合成および生物学的生成物の合成において単一種またはライブラリの作成に用いることができる。鎖状または水平配列のライブラリ試料を、好ましくは0.5gの量から商業的に有用な量までで、可撓性の不透過性、封止可能または封止されたパウチに提供することができる。
【0044】
本方法は、市販材料の大量生産に適用可能である。従って、この技術は、処方を含有する第1のパウチに続いて、異なる処方を含有する第2のパウチ等の手動による作成に用いることができる。各パウチへのモノマー等のような反応物質の充填が、自動分配システムを用いて変更可能であり、パウチを接続できる自動化プロセスを利用できるのが好ましい。成分を混合するかかる自動化方法は、例えば、米国特許第5,902,654号明細書に開示されている。
【0045】
本発明の目的および利点を以下の実施例によりさらに説明するが、これらの実施例に挙げられた特定の材料および量、その他条件および詳細は本発明を不当に限定するものではない。
【実施例】
【0046】
本発明をさらに、以下の実施例によりさらに例証する。ただし、これは本発明の範囲を限定することを意図するものではない。実施例において、部、比率およびパーセンテージは全て、特に断らない限り、重量基準である。材料は全て、特に断らない限り、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Company,Milwaukee,WI)より入手可能である。
【0047】
用語
IDT−インターデジタル変換器
w−重量平均分子量
n−数平均分子量
PD−多分散性(=Mn/Mw
IBA−イソボルニルアクリレート
THFA−テトラヒドロフルフリルアクリレート
2−EHA−2−エチルヘキシルアクリレート
IOTG−イソオクチルチオグリコレート
F−周波数
QCM−水晶微量天秤
g−ガラス転移温度
D−電気消失
【0048】
実施例1
米国特許第5,227,008号明細書に従って、厚さ18μmの銅を厚さ1.5μmのニッケルタイ層を覆うように厚さ0.05mmのポリイミドフィルムに蒸着し、金の薄層(0.75μm)でカバーすることにより、46対のフィンガーを75μmのピッチで含むインターデジタル変換器(IDT)を作成した。これらの可撓性センサを、IDTが内側を指すようにし、チューブの外側に延びるよう電極を取り付けて、ポリエチレン袋チューブ(直径4.5cm×厚さ0.15mm、カタログ番号206T23、イリノイ州シカゴのマックマスターカー(McMaster Carr,Chicago IL))の10cm部分の一端に挿入した(図1a参照)。米国特許第6,294,270号明細書に例証されたエポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーを含む熱硬化性接着剤で電極の下部を横切るようにチューブを熱封止し、同時に、パウチの下端を形成し、パウチ内に応答要素を埋め込んだ。パウチにIBA、THFAおよび2−EHAを下記の表1に示すように様々な比率で充填した。紫外線(UV)開始剤(ダロキュア(Darocur)1173、ニューヨーク州テリータウンのチバスペシャルティケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown NY))および電荷移動剤(イソオクチルチオグリコレート、マサチューセッツ州レキシントンのハンプシャーケミカルズ(Hampshire Chemicals,Lexington,MA))をそれぞれ0.8vol%と0.25vol%で添加した。N2を5分間流して開放パウチを脱気し、残りの開放端をヒートシールした。
【0049】
パウチを氷水に浸漬してから、UV光(350nmブラックライト、マサチューセッツ州ダンバースのオスラムシルバニア(Osram Sylvania,Danvers MA))に約10cmの距離で2時間50分露光して、重合を完了した。IDTの電極に、AC電位を与え、測定中、その周波数(F)を30Hzから1MHzに増大させた。得られた信号の消失(D)をモニターし、入力周波数Fの関数として記録した。各試料について、周波数が増大するにつれて、消失が増大し、最大に達してから下降した。この最大消失が生じた周波数(Fmax)は、各試料について著しく異なった。比較のために、パウチの内容物の小部分を取り出し、10℃/分で示差走査熱量測定(DSC)トレースを記録することにより、各試料のガラス転移温度(Tg)をex situで評価した。表1に、各パウチからとった代表的な試料の特性を記録してある。
【0050】
【表1】

【0051】
gとlog(Fmax)の間の逆の関係は、消失測定からの近似熱化学データの能力を示すものである。このデータによれば、本発明の能力が示されており、異なるコポリマーの有用な化学および物理特性が評価される。
【0052】
実施例2
インターデジテーティッド電極を含有するオープンポリエチレンパウチを実施例1と同様に調製し、IBA、2−EHAおよびTHFAそれぞれ4mLおよび0.04vol%のダロキュア(Darocur)1173および0.025vol%のIOTGで充填し、ヒートシールした。モノマー混合物に365nm8W UV源(カリフォルニア州アップランドのUVP(UVP,Upland CA))を室温(25℃)で22分間照射した。様々な時間の間隔で、AC電位をIDT電極に印加することにより周波数依存キャパシタンスを測定した。異なる硬化時間について28KHzでのキャパシタンスの値を表2に記録してある。表2のデータは、反応時間の増えた試料のキャパシタンスにおける変化を示している。キャパシタンスの減少は、ポリマー硬化の増大、分子量の増大、粘度の増大および硬化の完全性に関係している。
【0053】
【表2】

【0054】
実施例3
6列(a〜fと記す)×4列(1〜4と記す)の配列で構成された24のIDTを実施例1に記載した通りにしてポリイミドシートに蒸着した。センサの配列を含むポリイミドシートを、実施例1に記載した通りにして、同じ熱硬化性接着剤でヒートシールして、IDTをポリエチレンに向けるようにして約4.5cm×4.5cm×0.15mm厚さ(実施例1のポリエチレン袋チューブから作成したもの)ポリエチレンシートと結合した。3つの端部をまず封止して、IBA、THFAおよび2−EHAそれぞれ4mLで充填された開放端パウチを形成した。開始剤(ダロキュア(Darocur)1173)および電荷移動剤(IOTG)をそれぞれ0.4vol%で添加した。N2を5分間流して開放パウチを脱気し、パウチの開放端をヒートシールした。
【0055】
パウチを氷水に浸漬してから、UV光(350nmブラックライト、マサチューセッツのオスラムシルバニア(Osram Sylvania,MA))に約10cmの距離で5分露光して、重合を行った。
【0056】
実施例1に記載した通りに、各IDTの電気特性を測定した。結果を下記の表3に記録してある。位置3bは信号を生成しなかったことに注意されたい。
【0057】
【表3】

【0058】
表3のデータは、パウチ内の異なる空間位置について、28kHzでのキャパシタンスの値に変化を示している。本実施例は、反応容器内でセンサの配列を用いて取り込まれた特性のスペクトル分布の独特な理解を示すものである。
【0059】
実施例4
実施例1と同様に、10cm片のポリエチレン袋チューブ(直径4.5cm×厚さ0.5mm)の開放端の一方に、テフロン(TEFLON)(ポリテトラフルオロエチレン)コートのkタイプの熱電対(コネチカット州スタムフォードのオメガエンジニアリング(Omega Engineering,Stamford CT))を配置した。チューブの端部をヒートシールして、熱電対周囲の開口部を少量の5分エポキシ(マサチューセッツ州ダンバースのデブコン(Devcon,Danvers MA))を用いて封止した。パウチを防湿箱(カリフォルニア州ホーソーンのバキュームアトモスフィア(Vacuum Atmospheres,Hawthorne,CA))に入れ、熱電対を871Aデジタル温度計(オメガエンジニアリング(Omega Engineering))に取り付けた。パウチの開放端を通して、5.61g(50.0mmol)の1−オクテン、100.0μL(1.00μmol、トルエン中0.01M)エチレン−ビス−インデニル二塩化ジルコニウム(マサチューセッツ州ニューベリーポートのストレムケミカル(Strem Chemical,Newburyport MA))の後、0.58ml(1.00mmol、トルエン中1.7M)メチルアルモキサン(ルイジアナ州バトンルージュのエルベマーレ(Albemarle,Baton Rouge LA))を添加した。パウチの開放端を即時にヒートシールし、パウチの内容物の温度をモニターし時間の関数として記録した。下記の表4に、これらの試験について記録された時間対温度データを報告してある。
【0060】
【表4】

【0061】
表4のデータは、反応時間が長くなるに伴って、パウチの内容物の温度が増大し、反応完了に際して減少したことを示している。本実施例は、リアルタイムの可逆連続モニタリングを実証するものである。
【0062】
実施例5
ポリエチレンチューブ内部に輪を保持する結晶を配置し、チューブ外に配置されたプローブに直接ねじ留めすることによって、水晶(SC−501−1)、プローブ(TPS−550)およびモニター(PM−710、カリフォルニア州サンタフェスプリングスのマックステック(Maxtec, Santa Fe Springs CA))を利用してQCM機器を10cm×4.5cm×0.15mm厚さのポリエチレン袋チューブ(実施例1と同様に)片の側壁の一つに封止した。結晶をカバーするチューブの片をメスを用いて慎重に切り離した。チューブの一端をヒートシールして閉じ、99.8%の2−EHAおよび0.2%のエサキュア(Esacure)KB1光開始剤(ペンシルバニア州ウエストチェスターのサートマー(Sartomer,West Chester PA))30.0gの溶液を加えた。パウチの開放端に配置され溶液に入れられた18ゲージのニードルを用いて、溶液をN2で20分間ストリップした。ニードルを取り去り、チューブの開放端を即時にヒートシールして閉じた。QCMを周波数モニターに取り付け、パウチをUV光源に露光した。QCM共振振動数を様々な時間間隔で測定した。表5に示してある。
【0063】
【表5】

【0064】
表5のデータは、重合の初期熱からの密度の減少による初期増加後、モノマーからポリマーへの変換が増大するにつれて結晶の周波数が減少し、これは、周波数が連続的にモニターされ、連続的に応答性があったことを示している。
【0065】
実施例6
実施例1に記載したポリエチレン袋チューブ(直径4.5cm×厚さ0.5mm)の10cm片の開放端の1つに、拡散反応プローブ(カタログ番号R200−REF−VIS/NIR、フロリダ州ダニーデンのオーシャンオプティックス(Ocean Optics,Dunedin FL))を入れた。インパルスヒートシーラを用いてチューブの端部をプローブ近傍でヒートシールし、82518RTVシリコーンゴムシーラント(コネチカット州ロッキーヒルのロックタイト(Loctite,Rocky Hill CT))を用いてプローブを封止した。チューブの開放端に、3.2g(30mmol)の2−イソプロピルアニリン、2.18g(15mmol水性40%)のグリオキサール、30mlのエタノールおよび0.05gのギ酸を添加した。チューブの開放端をヒートシールして閉じ、パウチを暗所にて容器に入れ迷光を防いだ。光源(LS−1タングステンハロゲンランプ、フロリダ州ダニーデンのオーシャンオプティックス(Ocean Optics,Dunedin FL)を拡散反射プローブの励起端に取り付け、分光計(SD2000、100マイクロメートルスリット、600ライン/mm、フロリダ州ダニーデンのオーシャンオプティックス(Ocean Optics,Dunedin FL)を拡散反射プローブの測定端に取り付けた。パウチの内容物間の反応が進行するにつれて、混合物の可視光透過スペクトルを5時間にわたって様々な時間でモニターした。619nmでの源補正相対透過率の値の形態のデータをコンピュータにより記録した。表6に表で示してある。
【0066】
【表6】

【0067】
表6のデータによれば、反応の間に、光学透過率の相対値は最大で開始され、平衡状態に達するまで反応が進行にするつれて減少し、袋内側の反応の光学特性は連続的にモニターされ連続的に応答したことを示している。
【0068】
実施例7
中央周波数5kHzの電気ブザー(70dB PCピエゾ型番273−074、テキサス州フォートワースのラジオシャック(Radio Shack,Fort Worth TX)を9ボルトの電池およびスイッチに接続した。この組立品をポリエチレン袋チューブ(直径4.5cm×厚さ0.15mm、カタログ番号2062T23、イリノイ州シカゴのマックマスターカー(McMaster Carr,Chicago IL))の一部の内側に入れ、ヒートシールした。このデバイスを同じポリエチレン袋チューブの他の片の内側に入れ、一端をヒートシールした。外側チューブに100gの99.8%の2−EHAと0.2%のエサキュア(Esacure)KB−1光開始剤を充填し、窒素を流して5分間脱気してから、残りの端部を封止した。
【0069】
ブザーをオンにし、試料に365nm 8W UV源(UVP、カリフォルニア州アップランド(Upland CA))を30秒間バーストで5分間照射した。各バースト後、UV源をオフにし、ブザーから可聴の信号を10秒間、試料から2インチ離したところに保持されたマイクロホン(D660S、テネシー州ナッシュビルのAKGアコースティックス(AKG Acoustics,Nashville TN))を通して、ミキサー(ユーロラック(Eurorack)型番MX802A−ULN、ワシントン州エドモンドのベーリンガー(Behringer,Edmonds WA))を通して変換し、マイクロソフトサウンドレコーダ(Microsoft Sound Recorder)v5.0を用いてラップトップコンピュータにデジタル化した。データを高速フーリエ変換した。ブザー対時間の最大出力周波数を下記の表7に記録してある。
【0070】
【表7】

【0071】
データによれば、自由に流れる液体からゴム状ポリマー状態までの遷移が示されている。これは、外部の処理要素と遠隔通信し、パウチ内の材料特性に関してリアルタイムの情報を戻すフリーフロート応答要素を含むセンサを用いることを実証した。
【0072】
本発明の様々な修正および変更は、本発明の範囲および目的から逸脱することなしに当業者には明白であり、本発明はここに規定した説明のための実施形態に不当に限定されないものと理解されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1a】パウチの一端で封止された応答要素と、信号を有用な情報へと変換する処理要素と、応答要素と処理要素との間で情報を伝送する物理伝送手段とを有する三成分分析センサを含む本発明の反応装置の一実施形態の斜視図である。
【図1b】パウチの一端で封止された遠隔アドレスされた応答要素を含む分析センサを含む本発明の反応装置の一実施形態の斜視図である。
【図2a】パウチの内側に取り付けられた応答要素の一端を有する三成分分析センサを含む本発明の反応装置の一実施形態の斜視図である。
【図2b】パウチの内部でフリーフロートの遠隔アドレスされた応答要素を含む分析センサを含む本発明の反応装置の一実施形態の斜視図である。
【図3a】パウチの壁の内側に取り付けられた応答要素を有する三成分分析センサを含む本発明の反応装置の一実施形態の斜視図である。
【図3b】パウチの壁の内側に取り付けられた遠隔アドレス応答要素を含む分析センサを有する本発明の反応装置の一実施形態の斜視図である。
【図4a】パウチ本体内に(パウチ本体のパッチ近傍に)組み込まれた応答要素を有する三成分分析センサを含む本発明の反応装置の一実施形態の斜視図である。
【図4a1】線4a’−4a’に沿った図4aの断面図である。
【図4b】パウチ本体内に(パウチ本体のパッチ近傍に)組み込まれた遠隔アドレスされた応答要素を含む分析センサを有する本発明の反応装置の一実施形態の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体不透過性の可撓性パウチと、前記パウチ内の材料特性の可逆測定をリアルタイムでin situで行う分析センサとを含む反応装置。
【請求項2】
前記センサが前記パウチと一体接続されている、請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記センサが前記パウチ内にあり、前記パウチに一体接続されていない、請求項1に記載の反応装置。
【請求項4】
前記分析センサが、応答要素と、処理要素と、前記応答要素と前記処理要素との間で情報を伝達する手段とを含む、請求項1に記載の反応装置。
【請求項5】
前記応答要素が前記パウチ本体の一部である、請求項4に記載の反応装置。
【請求項6】
前記応答要素が前記パウチの壁に取り付けられている、請求項5に記載の反応装置。
【請求項7】
前記応答要素が前記パウチに取り付けられていない、請求項5に記載の反応装置。
【請求項8】
前記応答要素が前記パウチ本体の端部で封止されている、請求項4に記載の反応装置。
【請求項9】
前記応答要素が前記パウチ外に配置された1つ以上の電極によりアドレスされている、請求項4に記載の反応装置。
【請求項10】
前記応答要素が遠隔アドレスされている、請求項4に記載の反応装置。
【請求項11】
前記伝送手段が、電気および光学要素の一方または両方を含む、請求項4に記載の反応装置。
【請求項12】
前記伝送手段が、機械および放射線要素の一方または両方を含む、請求項4に記載の反応装置。
【請求項13】
前記放射線要素が、音波、化学放射線、核放射線および磁気からなる群より選択される放射線を与える、請求項12に記載の反応装置。
【請求項14】
前記パウチが1つ以上の反応成分、中間体および反応生成物をさらに含む、請求項1に記載の反応装置。
【請求項15】
前記分析センサが、前記パウチ内の1つ以上の反応成分、中間体および反応生成物の選択された材料特性に応答する、請求項14に記載の反応装置。
【請求項16】
前記分析センサが物理特性をモニターする、請求項15に記載の反応装置。
【請求項17】
前記分析センサが化学特性をモニターする、請求項15に記載の反応装置。
【請求項18】
前記モニターされる化学特性がポリマー硬化である、請求項17に記載の反応装置。
【請求項19】
前記分析センサが生物学的特性をモニターする、請求項15に記載の反応装置。
【請求項20】
前記分析センサが使い捨てである、請求項1に記載の反応装置。
【請求項21】
前記応答要素が、熱電対、インターデジタル変換器(IDT)および音響センサ(SAW、QCM)からなる群より選択される、請求項4に記載の反応装置。
【請求項22】
前記分析センサの前記応答要素が可撓性である、請求項4に記載の反応装置。
【請求項23】
前記応答要素が、金属回路パターンが蒸着された可撓性ポリマーフィルムを含む、請求項4に記載の反応装置。
【請求項24】
前記パウチが熱可塑性フィルムを含む、請求項1に記載の反応装置。
【請求項25】
a)1つ以上の反応成分を含む可撓性の封止された流体不透過性のパウチを含む反応装置を提供する工程であって、前記反応装置はまた、前記パウチ内の材料の特性の可逆測定をリアルタイムでin situで行う測定プロトコルで操作する分析センサを含み、前記分析センサが、化学または物理情報(出力)を電気または電磁信号に変換する応答要素と、電気または電磁信号を使用可能な情報に変換する前記パウチ内またはパウチ上にある処理要素と、前記応答要素と前記処理要素との間の情報を伝送する手段とを含む工程と、
b)前記パウチを制御された環境に露出して、前記反応成分を相互作用させて、反応ブレンド、生成物および処方のうちの1つ以上を形成する工程と、
c)前記センサの前記応答要素と前記処理要素に前記パウチ内で生じた材料特性の変化をモニターさせる工程と、
d)任意で、前記処理情報を用いて前記制御された環境と前記測定プロトコルの一方または両方を修正する工程と
を含む反応装置中における内容物の材料特性の変化をモニタリングする方法。
【請求項26】
前記パウチが封止されている、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記パウチが自立形である、請求項25に記載の方法。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4a】
image rotate

image rotate

【図4b】
image rotate


【公表番号】特表2006−500205(P2006−500205A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537675(P2004−537675)
【出願日】平成15年8月20日(2003.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2003/026053
【国際公開番号】WO2004/027417
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
TEFLON
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】