説明

分析方法および装置

【課題】反応容器を逐次交換しながら、それに点着されている検体の分析を次々と行う分析装置において、処理能力を上げる。
【解決手段】反応容器20を導入、排出可能な分析装置1を用い、かつ検体点着から前記導入までの必要時間Ta、およびこの導入から分析完了までの必要時間Tbが予め分かっている反応容器20を用いて分析を行う分析方法において、一つの反応容器20に点着がなされた後に、該反応容器20と換えられる次の反応容器20を用いる新たな分析の要求がなされたとき、時間T=Ta1+Tb1−Tc−Ta2を示す通知を発生させる。ただし、Ta1、Tb1はそれぞれ前記一つの反応容器に関する時間Ta、Tbであり、Ta2は前記次の反応容器に関する時間Ta、そしてTcは前記一つの反応容器20における点着から前記要求までの経過時間である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分析装置、特に詳細には、試薬部分に検体が点着される反応容器を用いて検体の分析を行う分析装置に関するものである。
【0002】
また本発明は、そのような分析装置を用いて行われる分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、被験物質を含有する可能性のある検体(試料)を担体に保持させ、免疫学的測定等のアッセイ法を用いてこの被験物質について簡便かつ迅速に検査するアッセイ用デバイスが数多く開発されており、体外診断薬や毒物等の検査のための各種デバイスも市販されている。このようなデバイスの一例として、特許文献1に示すようなイムノクロマトグラフ法を利用したものが挙げられる。イムノクロマトグラフ法を利用したデバイスを用いる場合は、検体溶液を担体に保持させた後、早いものであれば約5〜10分間静置するだけで検査結果が得られる。そのため、免疫学的検査等のアッセイ法を用いた検査手法は、簡便かつ迅速な検査手法として、例えば病院における臨床検査や研究室における検定試験等で広く採用されている。
【0004】
特に、医院や診療所あるいは在宅医療等の診療現場においては、臨床検査の専門家によらず簡便に検査を行うPOCT(Point of Care Testing)診療向けの分析装置として、イムノクロマトグラフ分析装置(イムノクロマトリーダー)が多く用いられている。このイムノクロマトグラフ分析装置は、装填されたデバイスの試薬の呈色状態を高感度に測定して、目視判定困難な低呈色状態においても高感度かつ信頼性の高い検査を行うことを可能とする。特許文献2には、この種の分析装置の一例が示されている。
【0005】
上述したような分析方法においては、極く微量の被験物質を高感度で検出可能とすることが求められている。そのような要求に応える分析方法として、例えば特許文献3に示される増幅(増感)処理を行うものが公知となっている。この方法は、担体上に被験物質を展開した後に、洗浄液を送液することによって、担体上の反応部位に特異的な結合により捕捉した標識物質以外を洗浄し、その後増感液を担体上に送液して増感することにより、微量の被験物質を高感度で検出可能としたものである。
【0006】
なお上記増感処理は、必要に応じて行うことができる。すなわち、通常の処理で試薬の呈色状態が測定できた場合はそこで測定を終了し、通常の処理では呈色状態が測定不可能であった場合は、さらに増感処理を行ってから呈色状態を測定するようにしてもよい。
【0007】
上に述べた担体は、一般にカートリッジ、パッケージ、検査キットなどと称される反応容器内に保持して使用されることが多く、特許文献4にはその種の反応容器の一例が示されている。
【0008】
また、この種の反応容器を用いる分析装置の一つとして、特許文献5に示されるように、反応容器を導入、排出可能な構成を有し、受け入れた一つの反応容器内の検体に関する分析が完了したならそれを排出し、また別の反応容器を受け入れて次の分析を行う、というものが広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−139297号公報
【特許文献2】特開2009−133813号公報
【特許文献3】特開2009−287952号公報
【特許文献4】特開2007−101364号公報
【特許文献5】特開2007−175005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上に述べたように反応容器を1つずつ交換しながら受け入れて順次分析を行う構成は、前述の増感処理がなされる反応容器を用いるイムノクロマトグラフ分析装置においても適用可能である。
【0011】
しかし増感処理を行う場合は、それを行わない場合と比べて、検体点着から分析完了までに要する時間が長くなるので、反応容器を1つずつ交換しながら受け入れて順次分析を行うようにすると、スループットつまり時間当たりの分析処理数を上げることが難しくなる。
【0012】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、反応容器を1つずつ交換しながら受け入れて順次分析を行うように構成された分析装置において、時間当たりの分析処理数を上げることができる分析方法を提供することを目的とする。
【0013】
また本発明は、そのような分析方法を実施することができる分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による分析方法は、反応容器を1つずつ交換しながら分析装置に入れて順次分析を行う際、検体点着から分析完了までの間で最後の一定時間だけ反応容器を分析装置内に配置しておけばよい場合があることに着目して得られたものであり、そのような場合に点着は分析装置の外で行うようにし、そして、スループットを最大にできる最適な点着タイミングが操作者に分かるようにしたものである。
【0015】
すなわち本発明による分析方法は、より具体的には、
試薬を保持した反応容器を導入、排出可能な分析装置を用いるとともに、
前記反応容器として、分析装置の外でなされる試薬への検体点着から前記導入までの必要時間Ta、およびこの導入から分析完了までの必要時間Tbが予め分かっているものを用い、
分析装置の外で前記試薬に検体を点着してから反応容器を分析装置に導入させ、
検体と試薬との反応状態を分析装置内で検出し、その反応状態に基づいて該検体に関する分析を行う分析方法において、
一つの反応容器に点着がなされた後に、該反応容器と換えられる次の反応容器を用いる新たな分析の要求がなされたとき、時間T=Ta1+Tb1−Tc−Ta2
(ただし
Ta1、Tb1はそれぞれ前記一つの反応容器に関する時間Ta、Tb、
Ta2は前記次の反応容器に関する時間Ta、
Tcは前記一つの反応容器における点着から前記要求までの経過時間)
を示す通知を発生させることを特徴とするものである。
【0016】
一方、本発明による一つの分析装置は、
試薬を保持した反応容器を導入、排出可能な構造を有する分析装置であって、
前記反応容器として、分析装置の外でなされる試薬への検体点着から前記導入までの必要時間Ta、およびこの導入から分析完了までの必要時間Tbが予め分かっているものが適用され、
分析装置の外で試薬に検体を点着してから導入された反応容器に関して、検体と試薬との反応状態を検出し、その反応状態に基づいて該検体に関する分析を行う分析装置において、
反応容器に点着がなされた時点を入力するための点着タイミング入力手段と、
分析の要求を入力するための分析要求入力手段と、
前記一つの反応容器における点着から前記要求が入力されるまでの経過時間Tcを測定する計時手段と、
前記分析の要求が入力されたとき、時間T=Ta1+Tb1−Tc−Ta2を求める演算手段と、
(ただし
Ta1、Tb1はそれぞれ前記一つの反応容器に関する時間Ta、Tb、
Ta2は前記次の反応容器に関する時間Ta、
Tcは前記一つの反応容器における点着から前記要求までの経過時間)
この時間Tを示す通知を発生させる通知手段とが設けられたことを特徴とするものである。
【0017】
なお本発明の分析装置は、上述の通り分析装置内に有る一つの反応容器が次の反応容器と換えられ、それらの反応容器を用いて次々と分析を行うものであるが、反応容器をセットする部分は1箇所に限られるものではなく、同様の部分が2箇所以上設けられて、それらの部分において並列的に分析を行うように構成されても構わない。
【0018】
また上記分析要求入力手段としては、装置操作者の操作を受けて電気信号を入力させる一般的なスイッチや、あるいは装置操作者の声等の音声を受けたときそれを電気信号に変換して入力させる音声入力手段等を適用することができる。
【0019】
また、上記演算手段や通知手段は、分析装置本体内に設けられてもよいし、あるいは分析装置本体と別体にして設けられてもよい。
【0020】
また上記通知手段としては、前記時間Tを数字で示す表示手段が用いられることが望ましい。そしてそのような表示手段は、上記時間Tを数字で示した後、その数字を漸次カウントダウンして示すように構成されることが望ましい。そのカウントダウンは、通常は1秒単位が好ましいが、それ以外の例えば1分単位でも、さらには1秒より細かい時間単位でも構わない。
【0021】
また上記通知手段として、前記時間Tが経過した時点でその旨を示す表示または警報を発する手段を適用することもできる。さらには、時間Tを直接示さずに、算出した時間Tと現在時刻に基づいて次の反応容器の点着時刻を何時何分と示すようにしても構わない。
【0022】
他方、本発明の分析装置においては、前記時間Ta1、Tb1およびTa2のうちの少なくとも1つを示す情報を入力する条件入力手段が設けられることが望ましい。
【0023】
さらに、本発明の分析装置においては、導入された反応容器に示されている前記時間TaおよびTbの情報を読み取る条件読取手段が設けられることが望ましい。
【0024】
また、本発明による別の分析装置は、
検体を点着した試薬を保持した反応容器を導入および排出可能な構造を有し、導入した反応容器の増感処理を行う分析装置であって、
導入した第一の反応容器における検体の点着時刻、
前記点着時刻から増感処理開始までに必要な時間、
第一の反応容器の次に分析装置に導入する第二の反応容器における検体の点着時点から増感処理開始までに必要な時間、
および第一の反応容器における増感処理に必要な時間、
を用いて、第一の反応容器における増感処理と第二の反応容器における増感処理とが連続的に行われる、第二の反応容器における検体の点着時点を求める演算手段と、
前記演算手段によって求められた点着時点に基づく通知情報を発生させる通知手段と、
を具備することを特徴とするものである。
【0025】
なお上記の「連続的に行われる」とは、第一の反応容器における増感処理に続いて次の第二の反応容器における増感処理が、タイムラグ無く、あるいは測定時間に大きな影響を与えない程度の若干のタイムラグの後に行われることを指すものである。
【0026】
また上記通知情報は、点着時点を何分何秒後と示すような情報であってもよいし、あるいはその何分何秒後の時刻を示すような情報であってもよい。
【発明の効果】
【0027】
図8は、反応容器が次々と交換され、それらを用いて順次分析が行われるときの処理の流れを示したタイムチャートである。このチャートにおいて細い矢印で示す部分が本発明における時間Ta、つまり検体点着から、分析装置への反応容器導入までの必要時間であり、太い矢印で示す部分が本発明における時間Tb、つまり反応容器導入から分析完了までの必要時間である。
【0028】
ここで、使用順がn番目の反応容器を本発明における一つの反応容器と考えると、それと取り換えられる使用順(n+1)番目の反応容器が本発明における次の反応容器になる。このチャートから分かる通り、時間T=Ta1+Tb1−Tc−Ta2は、(n+1)番目の反応容器を用いる新たな分析の要求を出してからこの時間T後に(n+1)番目の反応容器に点着を行えば、時間Tb1の終わりと時間Tb2の始まりが一致することになる時間である。このことは、n番目の反応容器に対する分析が終了する時点が、ちょうど(n+1)番目の反応容器を分析装置に導入すべき時点と一致する、ということを意味する。
【0029】
したがって、一つの反応容器に点着がなされた後に、該反応容器と取り換えられる次の反応容器を用いる新たな分析の要求がなされたとき、上記時間Tを示す通知を発生させれば、その時間T後に次の反応容器に点着を行えばよいことが装置使用者に分かるようになる。そこで、その時間T後に次の反応容器に点着を行えば、図8において太い矢印が全て時間を置かずに並ぶことから分かる通り、分析装置内に不必要に長く反応容器が収められることが無くなって、分析のスループットを最大限まで高めることが可能になる。
【0030】
具体的に、例えばTaおよびTbが全ての反応容器において共通で、Ta:Tb=2:1であるとき、本発明によれば、点着後直ちに反応容器を分析装置に導入して分析完了時点で反応容器を取り出す場合と比べてスループットは略3倍まで高められる。なおこれは、分析の回数がある程度多くて、その回数全部の分析に要する時間に対して、1番目の分析における時間Taが極めて短いことを前提とする。
【0031】
また、本発明による分析装置は前述したように、反応容器に点着がなされた時点を入力するための点着タイミング入力手段と、分析の要求を入力するための分析要求入力手段と、前記一つの反応容器における点着から前記要求が入力されるまでの経過時間Tcを測定する計時手段と、前記分析の要求が入力されたとき、時間T=Ta1+Tb1−Tc−Ta2を求める演算手段と、この時間Tを示す通知を発生させる通知手段とが設けられたものであるので、この分析装置によれば上述した本発明の分析方法を実施することができる。
【0032】
なお、本発明の分析装置において特に上記通知手段として、時間Tを数字で示した後、その数字を漸次カウントダウンして示す表示手段が用いられた場合は、装置操作者がその表示を見ながら次の反応容器に点着するタイミングを明確に把握可能となる。
【0033】
また、本発明の分析装置において特に、前記時間Ta1、Tb1およびTa2のうちの少なくとも1つを示す情報を入力する条件入力手段が設けられた場合は、反応容器が分析装置内に導入されているか否かに拘わらず、それらの時間の値を前記Tの値を求めるために利用できるようになる。
【0034】
他方、本発明の分析装置において特に、導入された反応容器に示されている前記時間TaおよびTbの情報を読み取る条件読取手段が設けられた場合は、それらの時間の値を前記Tの値を求めるために利用できるようになる。ただし、条件読取手段以外の方法でTaおよびTbを取得せず、導入された反応容器におけるTaおよびTbを、導入された反応容器以外の反応容器のTaおよびTbとしても用いる場合は、その時間TaおよびTbの値が、導入された反応容器以外の反応容器においても共通であることが前提となる。
【0035】
なお本発明は、前述したように増感処理を分析装置内で行い、点着からこの増感処理開始まで反応容器を分析装置の外に配しておく場合に限らず、検体点着から分析完了までの間において、点着直後の所定期間は反応容器を分析装置の外に配しておき、その所定期間が過ぎたなら反応容器を分析装置の中に導入して分析を行うようにした場合一般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態による分析装置を示す斜視図
【図2】上記分析装置の一部破断側面図
【図3】上記分析装置の電気的構成を示すブロック図
【図4】上記分析装置の一部を示す正面図
【図5】上記分析装置に用いられたカートリッジの一状態を示す一部破断平面図
【図6】上記カートリッジの別の状態を示す一部破断平面図
【図7】上記カートリッジのさらに別の状態を示す一部破断平面図
【図8】本発明の効果を説明する説明図
【図9】上記分析装置の操作部を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態によるクロマトグラフ分析装置1の斜視形状を、図2はその一部破断側面形状を、そして図3はその電気的構成を示すものである。まず図1および図2を参照して、本装置の基本構成について説明する。
【0038】
それらの図に示されるようにクロマトグラフ分析装置1は、前面に開口10aを有する筐体10と、筐体10の上面に配置された表示部11と、この表示部11に表示されたメニューの操作を行うための操作部12と、電源スイッチ13と、イムノクロマトグラフ用カートリッジ(検査用反応容器)20を装置内部に導入、装填するためのカートリッジ装填部14とを有している。また筐体10の内部には、カートリッジ装填部14を図2中で左右方向に移動自在に案内するレール15と、後述する洗浄液ポット27および増感液ポット28をそれぞれ押し潰すための押圧部30、34と、カートリッジ20から情報を取得する第1の測定部40および第2の測定部50とを有している。
【0039】
上記カートリッジ装填部14は、レール15に沿って自動あるいは手動により移動自在とされている。そして、その大部分が開口10aを通過して筐体10の外に出されたとき、その上に、後述するようにして検査溶液(検体)が供給されたカートリッジ20が載置される。その後このカートリッジ装填部14は、図2に示すように筐体10の内部に押し込まれ、それによりカートリッジ20がクロマトグラフ分析装置1の内部に取り込まれる。
【0040】
図4は、上記押圧部30、34の部分を、図2中の左方側から見た状態を示す正面図である。なおここでは、カートリッジ20を破断して示してある。以下、この図4を参照して、押圧部30、34について説明する。押圧部30は、軸31aの周りをシーソー状に回動自在とされたアーム31と、このアーム31の先端下部に固定された押圧片32と、アーム31の後端下側に配置されたカム33とを有している。カム33は、モータ38によって回転される駆動軸39に、例えば図示外の電磁クラッチ等を介して接断自在に連結されている。このカム33が回転するとアーム31の後端が押し上げられて先端の押圧片32が下降動する。もう一つの押圧部34もアーム35、押圧片36およびカム37を有して、押圧部30と同様に構成されている。
【0041】
ここで押圧部30の押圧片32と、押圧部34の押圧片36はそれぞれ、カートリッジ20が筐体10の中の所定位置に配置されたとき、カートリッジ内部に配置されている洗浄液ポット27、増感液ポット28の直上位置に来るように配設されている。
【0042】
図5は、上記カートリッジ20の上面部を破断して示す平面図であり、以下、この図5も参照してカートリッジ20について説明する。カートリッジ20は、テストラインA、テストラインBおよびコントロールラインCを有する不溶性担体21と、不溶性担体21を収容するカートリッジケース22と、不溶性担体21に検体溶液を点着するためにケース上面に形成された溶液注入口23と、不溶性担体21の検査部位(テストラインA、BおよびコントロールラインCの部分)を観察するための観察窓24とを備えている。カートリッジケース22の上面には情報表示部25が設けられている。なおカートリッジ装填部14にも、上記観察窓24とほぼ整合する観察窓14aが設けられている。
【0043】
上記不溶性担体21は、固定化された標識物質を有するものである。またテストラインAおよびBはそれぞれ、被験物質に対する特異的結合物質が試薬として固定されたものであり、コントロールラインCは測定の終了時を判断するためのものである。なお本実施形態におけるカートリッジ20は、一例としてインフルエンザに対する陽性・陰性を分析するためのものである。
【0044】
またこのカートリッジ20の内部には、不溶性担体21を間に挟む状態にして、送液用不溶性担体72および吸収用不溶性担体73が配設されている。そして送液用不溶性担体72の上方位置には前述した洗浄液ポット27が固定され、不溶性担体21のコントロールラインC側の端部の上方位置には増感液ポット28が固定されている。
【0045】
第1の測定部40は、カートリッジ20の観察窓24を通して検査部位(テストラインA、BおよびコントロールラインCの部分)の呈色状態を測定するものである。第1の測定部40は、図2に示すようにカメラ42および光源44を備え、カートリッジ20が分析装置1に装填された際に、これらがカートリッジ20の下方から観察窓24に対向するように構成されている。そして、第1の測定部40によって取得された検査部位における光学的情報に基づいて、該検査部位の呈色状態として光学濃度および色度が算出される(この点については後述する)。
【0046】
なお上記光学濃度は、カートリッジ20の検査部位に入射した入射光の強度をI、検査部位からの反射光の強度をIとしたとき、下記式で定義する。
【0047】
光学濃度=−log10(I/I)
また色度は、色相と彩度を数量的に表示したものであり、カメラで読み取ったRGB輝度信号から算出する。色度の表色系としては、一般的なCIE表色系を用いることができる。
【0048】
カメラ42は、例えば複数のフォトダイオードがライン状に配列された構成、あるいはエリアセンサからなるイメージセンサを有するもので、受光光量に応じた出力を生じる。カメラ42の受光範囲は、カートリッジ20の長手方向に延びた帯状範囲とされている。光源44は、例えばLEDが内蔵されたモジュールであり、白色光を発するように構成されている。なお光源44は、後述する増感処理の前後の色度の区別が付けば、例えば単色光を発するものであってもよい。また光源44は、複数のモジュールから構成される場合は、異なる波長の単色光を発する複数のモジュールを用いて構成することもできる。光源44から発せられる光は、カートリッジ20の長手方向の所定範囲を照明可能とされている。
【0049】
一方、第2の測定部50は、カートリッジ20の情報表示部25に照明光を照射し、情報表示部25に表示された情報を取得するものである。情報表示部25は、手書きまたはシール添付等により検査に関する情報が表示される。検査に関する情報とは例えば、被験物質を採取した患者に関する情報(氏名、年齢および性別等)および、検査に使用される試料・試薬に関する情報(検査対象となる被験物質、洗浄液および増感液等の名称、試薬への検体点着から分析装置導入までの必要時間、分析装置への導入から分析完了までの必要時間等)等が挙げられる。情報を取得する方法は特に制限されず、情報表示部25をそのまま画像化したり、バーコード化された情報から読み取ったりすることができる。
【0050】
この第2の測定部50は、図2に示すようにカメラ52および光源54を備え、カートリッジ20が分析装置1に装填された際に、これらがカートリッジ20の上方から情報表示部25に対向するように構成されている。そして、第2の測定部50によって取得された検査に関する情報と検査結果とが紐付けされて管理される。カメラ52および光源54の具体的な構成は、前述したカメラ42および光源44とそれぞれ同様である。
【0051】
次に、本装置の電気的な構成について図3を参照して説明する。先に説明した表示部11、操作部12、モータ38等を含む押圧機構30、34、カメラ42、52(各々光源44、54を含む)は、同図に示す制御部80によって動作が制御される。また、本分析装置1は、例えば100〜240Vの商用電源を利用して作動可能であり、その商用電源を受け入れて12Vの直流電流に変換する電源部100と、この12Vの直流電流が入力される切替部101とを有している。また本分析装置1は、それとともに二次電池であるバッテリ102でも駆動可能とされており、このバッテリ102も上記切替部101に接続されている。切替部101は、商用電源が接続されているときは電源部100から供給される12Vの直流電流を、そして商用電源が接続されていないときはバッテリ102から供給される12Vの直流電流を各電装部品において使用するように切替を行う。
【0052】
また切替部101には、バッテリ102の残留電力量を検出する電池残量検出手段としてのバッテリ容量監視ユニット103が接続されている。一般に電池はその化学特性から、容量が低下してくると内部抵抗が大きくなって端子電圧が低下する特性があるので、その端子電圧を測定することで残留電力量を検出することができる。バッテリ容量監視ユニット103はこうしてバッテリ102の残留電力量を検出し続け、その残留電力量を示す信号を制御部80に入力する。
【0053】
次に、本実施形態の分析装置1の作用について説明する。まず、具体的な測定の操作手順について説明する。
《第1段階》
この第1段階においては、まず図5に示すように、例えば分析装置1の外においてカートリッジ20の溶液注入口23から検体溶液90が点着され、不溶性担体21上に展開される。その後このカートリッジ20は、所定の時間分析装置1の外に配され、その後、前述の通りにして分析装置1内に導入、装填される。
《第2段階》
ここでは、まず図2、4に示した押圧部30が駆動されて、そのアーム31の先端が下降動され、押圧片32がカートリッジ20内の洗浄液ポット27を外部から押し潰す。それにより図6に示すように、洗浄液ポット27に貯えられていた洗浄液91が不溶性担体21の検査部位を洗浄する。このとき洗浄液91は、送液用不溶性担体72で十分に拡がってから、不溶性担体21、吸収用不溶性担体73の順に送液される。
【0054】
次に、図2、4に示した押圧部34が駆動されて、そのアーム35の先端が下降動され、押圧片36がカートリッジ20内の増感液ポット28を外部から押し潰す。それにより図7に示すように、増感液ポット28に貯えられていた増感液92が不溶性担体21の検査部位に送液されて、増感処理がなされる。なおこの増感液92および上記洗浄液91については、前述した特許文献3に詳しい開示がなされており、本発明においてもそれらを適用することができる。
【0055】
この増感処理がなされた後、カートリッジ20の検査部位の像が、図3に示すカメラ42によって取得される。同図に示す制御部80は、こうして取得された像の光学濃度および色度を算出し、それらの値を、あるいはそれらの値から判定される疾患の有無等の検査結果を表示部11に表示させる。その後カートリッジ20は、分析装置1から取り出される。
【0056】
次に、分析のスループットを高めるようにした点について説明する。まず、図1、3に示した操作部12について、図9を参照して説明する。この操作部12は、テストボタン12a、モードボタン12b、次ボタン12c、点着ボタン12d、入力ボタン12eおよび上下ボタン12fを有している。また操作部12には、これらのボタンの他に、エラーが検出されたこと、分析結果が出たこと、装置が分析可能状態になったことなどを示すランプ等が適宜設けられるが、それらの詳しい説明は省略する。
【0057】
上記テストボタン12aは、分析動作の開始を指示するためのボタンである。モードボタン12bは、いくつかの分析モード、例えばある分析専用のカートリッジ20のみを受け付けるモードや、別の分析を行うカートリッジ20も受け付けるモードを選択するためのボタンであり、上下ボタン12fはこれらのモードの選択を行い、また入力ボタン12eは選択されたモードの設定を行う。
【0058】
先に述べた通り本実施形態におけるカートリッジ20は、インフルエンザに対する陽性・陰性を分析するためのものである。そしてこの陰性を判断するためには15分が必要であるが、分析装置1内にカートリッジ20を導入して行う前述の増感処理は、5分を要するだけである。つまり、それよりも前の10分間は、テストラインAおよびBを監視するだけの時間である。そうであるのに、もしカートリッジ20を点着直後から分析装置1内に導入して分析を行えば、分析装置1が1検体当たり15分間使用されるので、1時間に4検体しか分析できないことになる。
【0059】
インフルエンザに対する陽性・陰性を判定するために本実施形態のような分析装置1を用いることの意義は、自動判定による分析結果の客観性確保に加えて、分析の所要時間短縮ということが挙げられる。しかし、実際の病院にあっては10〜20件/時間、医院にあっては5〜10件/時間程度の検査依頼が有ることが多いので、4検体/時間という処理能力ではそれらの検査依頼に応えることができない。そこで、このような検査依頼に応えるためには、同じ分析装置が例えば病院では2〜7台、医院では2〜3台程度必要になってしまう。
【0060】
それに対して本実施形態によれば、1台の分析装置1を用いるだけで上述のような検査依頼にも対応可能となっている。以下、その点について説明する。本実施形態においては、分析装置1の外でなされる検体点着後、10分間はカートリッジ20を分析装置1の外に配しておく。つまり本実施形態では、検体点着からカートリッジ20の装置内導入までの必要時間Ta=10分であり、したがってこの導入から分析完了までの必要時間Tb=5分となる。本実施形態では一例として、一連のインフルエンザ検査では同じカートリッジ20が使用されようになっているので、上記Ta=10分、Tb=5分は全ての分析において共通である。
【0061】
インフルエンザ検査を行う装置使用者は、一つのカートリッジ20に対して検体点着を行うと、その時点で図9の点着ボタン12dを押して点着がなされた時点を入力する。つまり本実施形態では、この点着ボタン12dが点着タイミング入力手段を構成している。このカートリッジ20が、最初に分析に供されるものである場合は、点着から10分が経過したところで、そのカートリッジ20が分析装置1内に導入される。
【0062】
その後引き続き次のカートリッジ20を用いて新たな分析を行いたい場合、装置使用者は次ボタン12cを押して、その要求が有ることを分析装置1に入力する。すなわち本実施形態ではこの次ボタン12cが、分析の要求を入力するための分析要求入力手段を構成している。
【0063】
図3に示した制御部80は、本発明における計時手段も構成するものであり、上記点着ボタン12dが押されてから次ボタン12cが押されるまでの時間Tcを計時する。また制御部80は、本発明における演算部も構成するものであって、次ボタン12cが押されると、前述した時間T=Ta1+Tb1−Tc−Ta2を求める。ここで本実施形態においてはTa1=Ta2=10分、そしてTb1=5分であるので、T=5分−Tcである。
【0064】
上記Ta1=Ta2=10分、Tb1=5分という値は、例えば使用前のカートリッジ20を一旦分析装置1に導入させ、図2に示した第2の測定部50によりカートリッジ20の情報表示部25に記録されている情報を読み取ることにより、制御部80に入力することができる。そうする場合は、測定部50が本発明における条件読取手段となる。あるいは、条件読取手段として外付けのバーコードリーダ等を設けておき、使用されるカートリッジ20から逐一Ta、Tbの値を読み取って、それを制御部80に入力させてもよい。この後者の方法は、Ta1とTa2の値が互いに異なるような場合にも対応可能である。なお、この後者の方法を採用する場合は、表示部11に例えば「外付けリーダで試薬コードを読んで下さい。」といった表示を出させるのが望ましい。
【0065】
制御部80は、上記T=5分−Tcの値を表示部11に表示させる。つまり本実施形態ではこの制御部80および表示部11が、本発明における通知手段を構成している。このとき表示部11には、まず、例えば「残り時間:X分Y秒 次の点着:A分B秒」という表示がなされる。ここで「次の点着:A分B秒」が上記Tの値であり、「残り時間:X分Y秒」は、その時点で既に検体点着がなされているカートリッジ20に関する分析が終了するまでの時間を示すものである。
【0066】
その後制御部80は、上記A分B秒の値を例えば1秒ずつカウントダウンして、その値を表示部11に表示させる。そして制御部80は、このカウントダウンした値がゼロになったとき、つまり次の分析要求がなされてから時間Tが経過した時点で、表示部11に例えば「残り時間:X分Y秒 次の点着:0分0秒 点着して下さい。」という表示を出させるとともに、図示外のブザーを鳴動させ、装置使用者に点着を促す。
【0067】
それにより装置使用者は、次のカートリッジ20に検体を点着するとともに、点着ボタン12dを押して制御部80に点着タイミングを入力させる。こうして入力された点着タイミングは、さらに別のカートリッジ20が使用される際に、上記と同様にして時間Tを求めるために利用される。
【0068】
制御部80は、分析装置1内に有るカートリッジ20に対する分析が終了すると、つまり上記「X分Y秒」の表示が「0分0秒」になった時点で、表示部11に例えば「処理終了しました。プリントします。カートリッジを交換して下さい。」という表示を出させるとともに、前記ブザーを鳴動させ、カートリッジ20の交換を促す。それにより装置使用者は、分析が完了したカートリッジ20を分析装置1から排出させ、それに換えて次のカートリッジ20を分析装置1内に導入させる。なおこのカートリッジ20の導入、排出は、前述のカートリッジ装填部14を作動させて行われる。また、分析装置1にプリント手段が付与されていれば、それにより、分析結果がプリントアウトされる。
【0069】
以上の通りにして各カートリッジ20に検体点着を行い、そしてカートリッジ20の交換を逐次行うことにより、カートリッジ20が分析装置1内に有る時間は基本的に、図8に示すように互いに連続するようになる(カートリッジ交換に要する短い時間は無視する)。それにより、インフルエンザ検査等のスループットが高められる。本実施形態では具体的に、分析の回数がある程度多くて、全分析に要する時間に対して1番目の分析における時間Taが無視できるほどに小さいならば、全分析工程を通してカートリッジ20を分析装置1内に配置しておく場合と比べて、スループットは略3倍まで高められる。
【0070】
以上、カートリッジ20を1箇所のみにおいて受け付けるように構成された分析装置1について説明したが、本発明は、カートリッジ20を複数箇所において受け付けて、複数のカートリッジ20に対する分析を並行して行うように構成された分析装置に対しても同様に適用可能である。すなわち、そのような構成においても、カートリッジ20を受け付ける各箇所において、カートリッジ20を1つずつ交換して受け入れるのであれば、本発明を適用することによりスループットの向上が実現される。
【0071】
なお、上記測定に関わる事項について、以下簡単に説明する。
【0072】
(検体溶液)
本発明の分析装置を用いて分析することのできる検体溶液としては、被験物質(天然物、毒素、ホルモンまたは農薬等の生理活性物質あるいは環境汚染物質等)を含む可能性のあるものである限り、特に限定されるものではなく、例えば、生物学的試料、特には動物(特にヒト)の体液(例えば、血液、血清、血漿、髄液、涙液、汗、尿、膿、鼻水、または喀痰)若しくは排泄物(例えば、糞便)、臓器、組織、粘膜や皮膚、それらを含むと考えられる搾過検体(スワブ)、うがい液、または動植物それ自体若しくはそれらの乾燥体を後述の希釈液で希釈したもの等を挙げることができる。
【0073】
検体溶液はそのままで、あるいは、検体溶液を適当な抽出用溶媒を用いて抽出して得られる抽出液の形で、さらには、この抽出液を適当な希釈剤で希釈して得られる希釈液の形、若しくは抽出液を適当な方法で濃縮した形で用いることができる。
【0074】
(標識物質)
本発明で使用することができる標識物質としては、一般的なイムノクロマトグラフ法で用いられるような金属微粒子(または金属コロイド)、着色ラテックス粒子、酵素など、有色で視認できる、または、反応により検査できるようになる標識物であれば特に限定されることなく用いることができるが、標識物質を触媒とした金属イオンの還元反応によって、標識物質への金属の沈着でシグナルを増感する場合には、その触媒活性の観点から金属微粒子が好ましい。
【0075】
その金属微粒子の材料としては、金属単体、金属硫化物、その他金属合金、または金属を含むポリマ−粒子標識を用いることができる。粒子(またはコロイド)の平均粒径は、1nm〜10μmの範囲にあることが好ましい。ここで、平均粒径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)により実測された複数の粒子の径(粒子の最長径)の平均値である。より詳細には、金コロイド、銀コロイド、白金コロイド、鉄コロイド、水酸化アルミニウムコロイド、およびこれらの複合コロイドなどが挙げられ、好ましくは、金コロイド、銀コロイド、白金コロイド、およびこれらの複合コロイドであることが望ましい。特に、金コロイドと銀コロイドが適当な粒径において、金コロイドは赤色、銀コロイドは黄色を示し視認度が高いという観点からより好ましい。金コロイドを用いることにより、銀イオン含有化合物を用いた増感工程を行うことにより増感の前後で標識の色度が変化する(金コロイドは赤く呈色し、増感後は還元された銀イオンが金コロイドに沈着し黒くなる)ため、後述するようにこの変化を検査のエラー判定に用いることができるようになる。金属コロイドの平均粒径としては、約1〜500nmが好ましく、さらには1〜100nmがより好ましい。
【0076】
(特異的結合物質)
特異的結合物質としては、被検物質に対して親和性を持つものならば特に限定されることはなく例えば、被験物質が抗原である場合には当該抗原に対する抗体、被験物質がたんぱく質、金属イオンまたは低分子量有機化合物である場合にはこれらに対するアプタマー、被験物質がDNAやRNAなど核酸である場合にはこれらに対して相補的な配列を持つDNAやRNA等の核酸分子、被験物質がアビジンである場合にはビオチン、被験物質が特定のペプチドの場合にはこれに特異的に結合する錯体、等を挙げることができる。また、上記した例では特異的結合物質と被験物質との関係を入れ換えることもでき、例えば被験物質が抗体である場合には当該抗体に対する抗原を、特異的結合物質として用いることもできる。さらに、上記のような被検物質に対して親和性を持つ物質を一部に含有する化合物等を特異的結合物質として用いることもできる。
【0077】
上記抗体としては具体的に、その被験物質によって免疫された動物の血清から調製する抗血清、抗血清から精製された免疫グロブリン画分、その被験物質によって免疫された動物の脾臓細胞を用いる細胞融合によって得られるモノクローナル抗体、あるいは、それらの断片[例えば、F(ab’)2、Fab、Fab’、またはFv]を用いることができる。これらの抗体の調製は、常法により行なうことができる。
【0078】
(不溶性担体)
不溶性担体21の材料は、多孔性であることが好ましく、例えば、ニトロセルロース膜、セルロース膜、アセチルセルロース膜、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜、ナイロン膜、ガラス繊維、不織布、布、または糸等が好ましく挙げられる。
【0079】
クロマトグラフ担体には、被験物質に対する特異的結合物質を固定化させて検査ラインや所望によりコントロール部位が作製される。特異的結合物質は、特異的結合物質をクロマトグラフ担体の一部に物理的または化学的結合により直接固定化させてもよいし、特異的結合物質をラテックス粒子などの微粒子に物理的または化学的に結合させ、この微粒子をクロマトグラフ担体の一部にトラップさせて固定化させてもよい。
【0080】
(増感液)
増感液は、含まれる薬剤が標識物質や被験物質の触媒作用によって反応することにより、呈色あるいは発光する化合物などを生じ、シグナルの増感を起こすことができる溶液である。例えば、金属標識上で、物理現像により金属銀の析出を起こす銀イオン溶液である。詳細には、写真化学の分野での一般書物(例えば、「改訂写真工学の基礎-銀塩写真編-」(日本写真学会編、コロナ社)、「写真の化学」(笹井明、写真工業出版社)、「最新処方ハンドブック」(菊池真一他、アミコ出版社))に記載されているような、いわゆる現像液を用いることができる。例えば、増感液として銀イオン含有化合物を含む物理現像液を用いれば、銀イオンの還元剤により液中の銀イオンを、現像の核となるような金属コロイド等を中心に還元させることができる。
【0081】
また別の例としては、酵素反応を用いた例がある。例えば、ペルオキシダーゼ標識と過酸化水素の作用により色素となる、フェニレンジアミン化合物とナフトール化合物の溶液などが挙げられる。さらに、非特許文献「臨床検査 Vol.41 no.9 p.1020 H−POD系を利用した染色」に記載されているような、西洋わさびペルオキシダーゼ検出の発色基質などでもよい。また、特開2009−156612号公報に記載の発色基質は特に好ましく用いることができる。なお、酵素の代わりに白金微粒子などの金属触媒を用いる系でもよい。
【0082】
別の酵素を用いた例としては、アルカリホスファターゼを標識とし、5−ブロモ−4クロロ−3−インドリル−リン酸二ナトリウム塩(BCIP)を基質として発色させるような系もある。以上、呈色する反応を代表に挙げたが、一般的にエンザイムイムノアッセイで用いられるような、酵素と基質の組み合わせであればなんでも良く、化学発光する基質であっても、蛍光を発する基質であってもよい。
【0083】
(銀イオン含有化合物)
銀イオン含有化合物としては、有機銀塩、無機銀塩、もしくは銀錯体を用いることができる。好ましくは、水などの溶媒に対して溶解度の高い銀イオン含有化合物であり、硝酸銀、酢酸銀、乳酸銀、酪酸銀、チオ硫酸銀などが挙げられる。特に好ましくは硝酸銀である。銀錯体としては、水酸基やスルホン基など水溶性基を有する配位子に配位された銀錯体が好ましく、ヒドロキシチオエーテル銀等が挙げられる。無機銀塩、もしくは銀錯体は、銀として一般に0.001モル/m〜0.2モル/m、好ましくは0.01モル/m〜0.05モル/m含有されることが好ましい。
【0084】
(銀イオンの還元剤)
銀イオンの還元剤は、銀イオンを銀に還元することができれば、無機・有機のいかなる材料、またはその混合物でも用いることができる。
【0085】
無機還元剤としては、Fe2+、V2+、Ti3+、などの金属イオンで原子価の変化し得る還元性金属塩、還元性金属錯塩を好ましく挙げることができる。無機還元剤を用いる際には、酸化されたイオンを錯形成するか還元して、除去するか無害化する必要がある。例えば、Fe2+を還元剤として用いる系では、クエン酸やEDTAを用いて酸化物であるFe3+の錯体を形成し、無害化することができる。本系ではこのような無機還元剤を用いることが好ましく、より好ましくはFe2+の金属塩が好ましい。
【0086】
なお、上記実施形態においては、呈色状態の増感方法として銀イオン含有化合物を還元剤で還元することにより標識物質を増感させる方法を用いたが、本発明における増感方法はこれに限定されない。増感液は、含まれる薬剤が標識物質や被験物質の触媒作用によって反応することにより、呈色あるいは発光する化合物などを生じ、シグナルの増感を起こすことができる溶液であればよく、例えば上記したような酵素を用いた用液などが挙げられる。
【0087】
また上記実施形態においては、アッセイ法としてイムノクロマトグラフ法について説明したが、本発明で適用するアッセイ法はこれに限定されない。いわゆる免疫反応を用いない系でもよく、例えば、抗体を用いずにDNAやRNAなどの核酸で被験物質を捕捉する系でもよいし、さらには被験物質に対する親和性を持つ別の小分子やペプチド、たんぱく質、錯体形成物質等、によって被験物質を捕捉する系であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 クロマトグラフ分析装置
10 筐体
11 表示部
12 操作部
13 電源スイッチ
14 カートリッジ装填部
20 イムノクロマトグラフ用カートリッジ
21 不溶性担体
22 カートリッジケース
23 溶液注入口
26 シート材
27 洗浄液ポット
28 増感液ポット
30、34 押圧部
32、36 押圧片
33、37 カム
38 モータ
40、50 測定部
87、88 刃
80 制御部
90 検体溶液
91 洗浄液
92 増感液
102 バッテリ
103 バッテリ容量監視ユニット
A、B テストライン
C コントロールライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を保持した反応容器を導入、排出可能な分析装置を用いるとともに、
前記反応容器として、分析装置の外でなされる試薬への検体点着から前記導入までの必要時間Ta、およびこの導入から分析完了までの必要時間Tbが予め分かっているものを用い、
分析装置の外で前記試薬に検体を点着してから反応容器を分析装置に導入させ、
検体と試薬との反応状態を分析装置内で検出し、その反応状態に基づいて該検体に関する分析を行う分析方法において、
一つの反応容器に点着がなされた後に、該反応容器と換えられる次の反応容器を用いる新たな分析の要求がなされたとき、時間T=Ta1+Tb1−Tc−Ta2を示す通知を発生させることを特徴とする分析方法。
(ただし
Ta1、Tb1はそれぞれ前記一つの反応容器に関する時間Ta、Tb、
Ta2は前記次の反応容器に関する時間Ta、
Tcは前記一つの反応容器における点着から前記要求までの経過時間)
【請求項2】
試薬を保持した反応容器を導入、排出可能な構造を有する分析装置であって、
前記反応容器として、分析装置の外でなされる試薬への検体点着から前記導入までの必要時間Ta、およびこの導入から分析完了までの必要時間Tbが予め分かっているものが適用され、
分析装置の外で前記試薬に検体を点着してから導入された反応容器に関して、検体と試薬との反応状態を検出し、その反応状態に基づいて該検体に関する分析を行う分析装置において、
反応容器に点着がなされた時点を入力するための点着タイミング入力手段と、
分析の要求を入力するための分析要求入力手段と、
前記一つの反応容器における点着から前記要求が入力されるまでの経過時間Tcを測定する計時手段と、
前記分析の要求が入力されたとき、時間T=Ta1+Tb1−Tc−Ta2を求める演算手段と、
この時間Tを示す通知を発生させる通知手段とが設けられたことを特徴とする分析装置。
(ただし
Ta1、Tb1はそれぞれ前記一つの反応容器に関する時間Ta、Tb、
Ta2は前記次の反応容器に関する時間Ta、
Tcは前記一つの反応容器における点着から前記要求までの経過時間)
【請求項3】
前記通知手段として、前記時間Tを数字で示す表示手段が設けられたことを特徴とする請求項2記載の分析装置。
【請求項4】
前記表示手段が、前記時間Tを数字で示した後、その数字を漸次カウントダウンして示すものであることを特徴とする請求項3記載の分析装置。
【請求項5】
前記通知手段として、前記時間Tが経過した時点でその旨を示す表示または警報を発する手段が設けられたことを特徴とする請求項2から4いずれか1項記載の分析装置。
【請求項6】
前記時間Ta1、Tb1およびTa2のうちの少なくとも1つを示す情報を入力する条件入力手段が設けられたことを特徴とする請求項2から5いずれか1項記載の分析装置。
【請求項7】
導入された反応容器に示されている前記時間TaおよびTbの情報を読み取る条件読取手段が設けられたことを特徴とする請求項2から6いずれか1項記載の分析装置。
【請求項8】
検体を点着した試薬を保持した反応容器を導入および排出可能な構造を有し、導入した反応容器の増感処理を行う分析装置であって、
導入した第一の反応容器における検体の点着時刻、
前記点着時刻から増感処理開始までに必要な時間、
第一の反応容器の次に分析装置に導入する第二の反応容器における検体の点着時点から増感処理開始までに必要な時間、
および第一の反応容器における増感処理に必要な時間、
を用いて、第一の反応容器における増感処理と第二の反応容器における増感処理とが連続的に行われる、第二の反応容器における検体の点着時点を求める演算手段と、
前記演算手段によって求められた点着時点に基づく通知情報を発生させる通知手段と、
を具備する分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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