説明

分析方法及び分析装置

【課題】重合体粒子の組成を高感度で分析できる分析方法及び分析装置を提供すること。
【解決手段】基板と、該基板内部に形成された2以上の流路と、2以上の流路が合流する合流流路とを備えた分析チップを用いて、以下の工程(A)及び(B)を実施することを特徴とする分析方法、(A)1つの流路に重合体粒子の分散物(1A)を送液し、他の少なくとも1つの流路に前記重合体の良溶媒(2A)を送液して、1Aと2Aとが共に送液される合流流路を形成する工程、(B)前記合流流路中において、良溶媒(2A)側に溶解した重合体の濃度を分析する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析方法及び分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロチップを用いて複数元素を同時に高感度に分析する分析方法及び装置が開示されている(特許文献1)。この発明では、マイクロチップ流路の出口が開口として形成され、その開口から溢れ出た測定対象液が基板の平坦な表面にとどまって分析試料となる分析部を備えている。このマイクロチップを使用して分析部に測定対象試料を好ましくは乾燥させた後、1次X線を全反射の条件で入射させて蛍光X線を検出している。
また、化学分析が求められる対象は広範囲にわたっており、重金属を含まない被検試料も多い。広く有機化合物を被検試料とする分析方法及びそのために使用する装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−64901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、特定の工程を実施しない場合に比べて、重合体粒子の組成を高感度で分析できる分析方法及び分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、以下の(1)及び(5)に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である(2)〜(4)とともに以下に記載する。
(1)基板と、該基板内部に形成された2以上の流路と、2以上の流路が合流する合流流路とを備えた分析チップを用いて、以下の工程(A)及び(B)を実施することを特徴とする分析方法、
(A)1つの流路に重合体粒子の分散物(1A)を送液し、他の少なくとも1つの流路に前記重合体の良溶媒(2A)を送液して、分散物(1A)と良溶媒(2A)とが隣接して送液される合流流路を形成する工程
(B)前記合流流路中において、良溶媒(2A)側の流路に溶解した重合体の濃度を分析する工程
(2)(B)工程において、分析が、光分析、電気化学分析、磁気共鳴分析よりなる群から選ばれた、(1)に記載の分析方法、
(3)重合体が、2種以上のモノマー単位を有する共重合体である、(1)又は(2)に記載の分析方法、
(4)(B)工程において、分析が、熱レンズ顕微鏡を備えた光分析である、(1)ないし(3)いずれか1つに記載の分析方法、
(5)基板と、該基板内部に形成された2以上の流路と、2以上の流路が合流する合流流路とを有する分析チップ、及び、該合流流路内に熱レンズを形成することができる励起光と該合流流路内に送液される被検試料を吸収するプローブ光とを備えた熱レンズ顕微鏡、を備えたことを特徴とする分析装置。
【発明の効果】
【0006】
上記(1)に係る発明によれば、(A)及び(B)の工程を実施しない場合に比べて、重合体粒子の組成を高感度で分析できる分析方法を提供することができた。
上記(2)に係る発明によれば、光分析、電気化学分析、磁気共鳴分析以外を用いる場合に比べて、重合体粒子の組成をより確実に分析できる分析方法を提供することができた。
上記(3)に係る発明によれば、共重合体でない場合に比べて、重合体粒子の組成を高感度で分析することができた。
上記(4)に係る発明によれば、熱レンズ顕微鏡を備えた光分析以外を用いる場合に比べて、より高感度で重合体粒子の組成を検出できる分析方法を提供することができた。
上記(5)に係る発明によれば、該合流流路内に熱レンズを形成することができる励起光と該合流流路内に送液される被検試料を吸収するプローブ光とを備えた熱レンズ顕微鏡を有しない場合に比べて、重合体粒子の組成を高感度で分析できる分析装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の分析方法に使用する分析チップの一例を示す概念平面図である。
【図2】図1に示す分析チップにおける合流流路の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の分析方法は、基板と、該基板内部に形成された2以上の流路と、2以上の流路が合流する合流流路とを備えた分析チップを用いて、以下の工程(A)及び(B)を実施することを特徴とする。
(A)1つの流路に重合体粒子の分散物(A1)を送液し、他の少なくとも1つの流路に前記重合体の良溶媒(A2)を送液して、分散物(A1)と良溶媒(A2)とが隣接して送液される合流流路を形成する工程
(B)合流流路中において、良溶媒(A2)流路側に溶解した重合体の濃度を分析する工程
【0009】
本実施形態の分析方法には、基板と、該基板内部に形成された2以上の流路と、2以上の流路が合流する合流流路とを備えた分析チップを用いる。合流流路は1つであることが好ましい。
ここで使用する基板は、流路の加工に適し、分析に使用する検出手段に障害をもたらさない材料であればよい。光分析を使用する場合には、検出光(プローブ光)を透過する材料であればよく、ガラス、プラスチックが例示できる。紫外線を被検物質の検出光として使用する場合には、検出光の波長の紫外線を透過する材料であることが好ましく、石英ガラスが例示できる。
【0010】
この基板の内部に2以上の流路とこれらが合流した合流流路を形成するためには、機械的方法やフォトレジストを使用したエッチングなどが使用できる。流路は基材表面に所定の形状と深さを有する凹部を形成した後、基材表面を同じ平板により蓋をした状態で貼り合わせて形成することができる。また、別法として、2枚の基板の両側に重ね合うような形状を有する凹部を形成して、これらを貼り合わせることにより流路及び合流流路を形成してもよい。
【0011】
図1は、本実施形態の分析方法に使用する分析チップの一例を示す概念平面図である。
この分析チップ10は、基板20の内部に第1の微小流路L1及び第2の微小流路L2、並びに、これらの合流流路L4を備えている。
基板の外部には、第1の流路L1及び第2の流路L2に送液するための送液手段が設けられている。詳しくは、図1に示す分析チップ10は、重合体粒子の分散物1Aを送液する第1の流路L1と、前記重合体の良溶媒2Aを送液する第2の流路L2と、流路L1、L2それぞれの終端部に連結されており、分散物1Aと良溶媒2Aとが合流して、隣接し並列に送液される合流流路L4とを備えている。流路L1の上流側における端部には分散物1Aが収容されたマイクロシリンジ11が、流路L2の上流側における端部には良溶媒2Aが収容されたマイクロシリンジ12が、連結されている。合流流路L4の排出口には、合流流路L4の排出口から排出された廃液容器14が置かれている。
なお、合流流路L4の終端に2つの分岐流路を設けて、分散物1Aと良溶媒2Aとを再度分離することもできる。
【0012】
図2は、上記の分析チップにおける合流流路の拡大平面図である。
図2において、流路L1と流路L2が合流して、これらの合流流路L4を形成している。流路L1及びL2の幅は、それぞれ、D1及びD2であり、合流流路L4の幅はD4である。重合体粒子の分散物(1A)と前記重合体の良溶媒(2A)とは、合流流路L4において、隣接した層流を形成して送液されている。分散物1A中に粒子として分散された重合体粒子の一部は、良溶媒2A側に拡散し、膨潤状態を経て、良溶媒2Aに溶解する。良溶媒2A中のこの重合体の濃度は、例えば、吸光分析することができる。図2においては、流路L1と流路L2とが合流する合流点からそれぞれX1及びX2だけ下流の2箇所x1及びx2で吸光分析を行っている。
【0013】
本実施形態に使用する分析チップにおいて、流路及び合流流路の幅や深さは特に制限されないが、マイクロスケールの複数の流路(チャンネル)、例えば、数μm以上数千μm以下の幅の流路を有する反応装置であることが好ましい。
流路及び合流流路の断面形状は問わないが、円形又は多角形であることが好ましく、長方形であることが、分光分析の検出の観点からはより好ましい。
マイクロリアクターの流路は、マイクロスケールであるので、寸法及び流速がいずれも小さく、レイノルズ数は2,300以下である。したがって、マイクロスケールの流路を有する分析チップは、通常の反応装置のような乱流支配ではなく層流支配の装置である。
ここで、レイノルズ数(Re)は、以下の式にて定義される。
Re=uL/ν
(u:流速、L:代表長さ、ν:動粘性係数)
レイノルズ数(Re)がおおよそ2,300以下である場合に、層流支配となる。
【0014】
また、レイノルズ数(Re)がおおよそ2,300以下である場合、合流流路において隣接して送液される液体を層流支配の場とすることができる。
層流支配のもとにおいて、2種類以上の異なる液体を隣接して送液する場合には、2種類以上の異なる液体よりなる層流の界面に当たる領域において、液体中の物質の濃度差による拡散が生じ、その結果、濃度差に基づく物質の移動が生じる。また、拡散速度は分子量又は粒子径の大きいものほど遅い。
層流を反応の場とすると、例えば、2液を混合する場合には、2液の界面に当たる領域の相互拡散により混合することができる。また、マイクロスケールの空間では比表面積が大きいため、このような界面での拡散混合を行う場合に有利である。
本実施形態の分析方法は、このようなマイクロスケールの空間において界面での拡散を利用するため、重合体粒子の分散物の状態を、リアルタイムで分析するのに好適である。
【0015】
本実施形態の分析方法は、2つの工程(A)及び(B)を必須工程として有する。
工程(A)は、1つの流路に重合体粒子の分散物(A1)を送液し、他の少なくとも1つの流路に重合体の良溶媒(A2)を送液して、分散物(1A)と良溶媒(2A)とが隣接して送液される合流流路を形成する工程、である。
【0016】
また、本実施形態において、分散物A1の単位時間当たりの送液量(送液速度)V1及び良溶媒2Aの単位時間当たりの送液量(送液速度)V2は、下記式(1)で表される条件を満たすように、それぞれをマイクロリアクターに送液することが好ましい。
1≦(V2/V1)≦10 (1)
上記範囲であると、高い分析精度を得ることができる。
また、下記式(2)で表される範囲であることがより好ましい。
1≦(V2/V1)≦5 (2)
【0017】
本実施形態において、1つの流路に送液する重合体粒子の分散物(1A)の分散媒体は任意に選択できるが、水分散物であることが好ましい。また、重合体粒子は、架橋されておらず、良溶媒に可溶であることが好ましい。重合体粒子の形状は、良溶媒に可溶であれば、直鎖状でも分岐状でも樹枝状でも構わない。
【0018】
重合体の種類も多岐にわたるが、有機化合物の単量体から誘導される付加重合系でも重縮合系でもよい。付加重合系重合体には、エチレン性不飽和化合物に由来する重合体が代表的である。重合体粒子の分散物は、懸濁重合、乳化重合等の方法で製造することができる。また、溶液中で予め重合又は重縮合した重合体を、水中に粒子として分散することもできる。重合体粒子は、どちらの場合にも、10nmから10μmまでの範囲の直径を有することができる。
【0019】
エチレン性不飽和化合物に由来する重合体としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体が例示できる。
重縮合系重合体には、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエステル・ポリアミド系等多岐にわたる。ポリエステル系重合体には、ジオール(誘導体)とジカルボン酸(誘導体)との重縮合物が含まれる。
【0020】
これらの重合体に対する良溶媒とは、重合体を室温においてよく溶解する溶媒であり、好ましくは10gの溶媒に2g以上の重合体を溶解することが好ましく、10gの溶媒に5g以上の重合体を溶解することがより好ましい。この良溶媒は、疎水性の有機溶媒であることが好ましく、水と自由に混和しない溶媒であることがより好ましく、水に微溶であることが特に好ましい。
本実施形態において、水に微溶である良溶媒とは、室温において、水100gに対する溶解度が、10〜0.1gであることが好ましく、3〜0.3gであることがより好ましい。
重合体に対する良溶媒は、特定の重合体毎に選択することができる。
【0021】
スチレン−アクリル酸エステル共重合体に対する良溶媒としては、ケトン系溶媒、ハロゲン化炭化水素、エステル系溶媒を使用することができ、いずれも、芳香族基を有しない有機溶媒が好ましく使用することができる。
ケトン系溶媒には、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン、ジ−n−プロピルケトンが例示できる。
ハロゲン化炭化水素としては、クロロホルム、ジクロロエチレンが例示できる。
エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミルが例示できる。
本実施態様において、ケトン系溶媒及びハロゲン系溶媒を良溶媒として好ましく使用することができ、クロロホルムをより好ましく使用することができる。
【0022】
図2は、図1に示した分析チップにおいて、合流流路近傍を示す拡大平面図である。
流路L1の幅をD1とし、流路L2の幅をD2とし、合流流路L4の幅をD4として示す。
上記の式(1)の関係を満たすためには、1≦(D2/D1)≦10の関係にあることが好ましい。
また、D2/D1が、下記式(3)で表される範囲であることが好ましい。
1≦(D2/D1)≦5 (3)
【0023】
図2は、水中に分散された重合体粒子が、分散物側の流路から良溶媒側の流路に移行して良溶媒中に溶解する様子を模式的に示している。
流路L1中から送液された重合体粒子a1の分散物と流路L2中から送液された前記重合体の良溶媒は、合流流路L4において互いに隣接する流路L41及びL42内で層流を形成する。図2において、模式的に示すように、流路L41中の重合体粒子は両層流の界面から良溶媒側に移動した重合体粒子a2となり、この移動した重合体粒子a1は、良溶媒中で送液される間に膨潤した重合体粒子a3を経由して、最終的には良溶媒に溶解した重合体a4となる。
【0024】
合流流路L4における重合体粒子の分散物側の流路L41と良溶媒側の流路L42とは隣接するが、その配置は任意に選択することができる。すなわち、両流路L41とL42とは、水平方向に隣接して配置されていてもよく、鉛直方向に隣接して配置されていてもよい。例えば比重の大きい良溶媒を使用する場合には、良溶媒側の流路L42を鉛直方向下方に配置し、比重の小さい分散物を上方に配置することが重力の影響を少なくするためには好ましい。
【0025】
工程(A)に引き続いて、工程(B)として、良溶媒(2A)側の流路に溶解した重合体の濃度を分析する。図2に模式的に示したように、合流流路L4中で、第1の流路L1と第2の流路L2とが合流する合流点の下流において、重合体粒子の分散物(1A)側の流路L41から隣接する流路L42中の良溶媒(2A)に溶解した重合体a4の濃度を光学分析することができる。
一般に、分析には、光分析、電気化学分析、磁気共鳴分析よりなる群から選ばれた手法を用いることができる。
重合体の濃度は、光分析、好ましくは吸光分析により求めることが好ましい。例えば、スチレン−アクリル酸エステルの共重合体を被検試料とする場合には、フェニル基に基づく吸光度を波長266nmの紫外光により定量することができる。
図2において、検出光の位置を合流点からの距離x1及びx2で示している。検出光は流路L41と流路L42を流れる層流の界面に平行に配置することが好ましい。
【0026】
光分析には、熱レンズ顕微鏡を使用することができる。
熱レンズ顕微鏡(Thermal Lens Microscope:TLM)は、公知である。熱レンズ顕微鏡の操作原理は、測定試料中の良溶媒の吸収波長に合わせた波長の励起光と、良溶媒が吸収を有さず、かつ、被検試料の重合体が吸収を有する検出光の2本の光源(レーザ光など)を用いる。良溶媒により吸収された励起光のエネルギーが熱として放出されると、レーザの強度分布及び熱拡散により焦点付近に光軸に垂直な温度勾配を生成する。この場合、温度変化が微小な場合には屈折率変化が温度変化に比例するため、屈折率分布が生じ、この屈折率分布が過渡的な光学レンズとして作用し、この効果を熱レンズ効果と呼んでいる。この熱レンズ効果により、流路L42内を流れる重合体の濃度を従来得られなかった低濃度領域でも検出することが可能となる。
【0027】
その他の熱レンズ顕微鏡の詳細な内容については、例えば特開2000−356611号公報及び同2002−82078号公報に記載されている。
なお、熱レンズ顕微鏡は、マイクロ化学技研(株)により市販されており、本実施例においてもこれを使用した。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
(使用した分析装置)
縦30mm、横70mmの石英ガラスチップ板に、図1に示すような、2つの流路L1及びL2とこれらの流路が合流する合流流路L4を形成した。合流流路の幅は200μm、深さは70μmとした。流路L1に1Aとして、スチレン−n−ブチルアクリレート共重合体粒子(St/Ac樹脂粒子;下記)の水分散液を、また流路L2に2Aとして、良溶媒であるクロロホルムをマイクロシリンジから送液した。V2/V1の値が液合流部の容量比が、80/20=4となるように送液した。合流流路において、流路L1の流路幅を40μmとして、流路L2の流路幅を160μmとして送液した。
なお、単位時間当たりのクロロホルムの送液量は、0.16ml/分であった。
【0029】
なお、上記のSt/Ac樹脂の水分散液は下記の処方により乳化重合したものであった。
St−Ac樹脂分散液の調整
・スチレン 370質量部
・n−ブチルアクリレート 30質量部
・アクリル酸 4質量部
・ドデカンチオール 24質量部
・四臭化炭素 4質量部
【0030】
以上を混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤(三洋化成工業(株)製:ノニポール400)6質量部及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)10質量部をイオン交換水560質量部に溶解したものに、フラスコ中で分散し、乳化し、10分ゆっくりと混合しながら、これに過硫酸アンモニウム4質量部を溶解したイオン交換水50質量部を投入し、窒素置換を行った後、前記フラスコ内を撹拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。こうして、体積平均粒径が180nm、ガラス転移点が55℃、重量平均分子量(Mw)が15,800、比重は1.18である樹脂粒子を分散させてなる無定形高分子分散液(樹脂粒子濃度:30%)を調製した。
【0031】
検出器である熱レンズ顕微鏡(マイクロ化学技研(株)、ITLM−40)に上記分析チップ10をセットし、合流後25mm及び40mm部下流の2箇所においてクロロホルム液中のSt/Ac重合体の吸光度を測定した。
なお本実施例においては、上記熱レンズ顕微鏡を改造し、波長266nmの熱レンズ信号を検出光源とし、スポット径を1μmとした。
熱レンズの励起光源をUVレーザー(サイバーレーザー製SPICA266)として、波長266nmのプローブ光により吸光度を測定した。ポリスチレン単体での樹脂分散液(樹脂濃度30%)を1としたときのSt/Ac樹脂分散液の吸光度比を算出したところ合流後25mmのn=5の算出結果は0.50、0.52、0.52、0.49、及び0.53であった。同様に40mm部での算出結果は0.87、0.83、0.86、0.85、及び0.86であった。
【0032】
上の測定結果から、合流後25mm、40mmのそれぞれn=5でのStの算出値に大きなバラツキが少ないことより、分散液の共重合樹脂の組成が均一であることが確認された。また、合流後25mm、40mmの2箇所での算出値にバラツキが少ないことより分散粒子の径が均一であることも確認された。。
【0033】
(実施例2)
合流流路の幅を150μm、深さを70μmとした以外は実施例1と同様にしたところ、合流後25mmのn=5の算出結果は0.35、0.33、0.28、0.30、及び0.35であった。同様に40mm部での算出結果は0.44、0.46、0.47、0.46、及び0.49であった。
上の測定結果から、合流後25mm、40mmのそれぞれn=5でのStの算出値に大きなバラツキが少ないことより、分散液の共重合樹脂の組成が均一であることが確認された。また、合流後25mm、40mmの2箇所での算出値にバラツキが少ないことより分散粒子の径が均一であることも確認された。
【0034】
(実施例3)
2/V1の値が液合流部の容量比が、50/50=1となるように送液し、合流流路において、流路L1の流路幅を100μmとして、流路L2の流路幅を100μmとして送液した以外は実施例1と同様にしたところ、合流後25mmのn=5の算出結果は0.25、0.26、0.26、0.24、及び0.25であった。同様に40mm部での算出結果は0.28、0.26、0.24、0.25、及び0.27であった。
上の測定結果から、合流後25mm、40mmのそれぞれn=5でのStの算出値に大きなバラツキが少ないことより、分散液の共重合樹脂の組成が均一であることが確認された。また、合流後25mm、40mmの2箇所での算出値にバラツキが少ないことより分散粒子の径が均一であることも確認された。
【符号の説明】
【0035】
10:分析チップ
11、12:マイクロシリンジ
14:廃液容器
20:基板
1A:重合体粒子の分散物
2A:良溶媒
P1、P2:ピストン
L1:第1の流路
L2:第2の流路
L4:合流流路
1:第1の流路幅
2:第2の流路幅
4:合流流路幅
1、X2:合流点からの距離
a1:重合体粒子
a2:重合体粒子
a3:膨潤した重合体粒子
a4:溶解した重合体
x1、x2:プローブ光の透過点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板内部に形成された2以上の流路と、2以上の流路が合流する合流流路とを備えた分析チップを用いて、以下の工程(A)及び(B)を実施することを特徴とする分析方法。
(A)1つの流路に重合体粒子の分散物(1A)を送液し、他の少なくとも1つの流路に前記重合体の良溶媒(2A)を送液して、分散物(1A)と良溶媒(2A)とが隣接して送液される合流流路を形成する工程
(B)前記合流流路中において、良溶媒(2A)側の流路に溶解した重合体の濃度を分析する工程
【請求項2】
(B)工程において、分析が、光分析、電気化学分析、磁気共鳴分析よりなる群から選ばれた、請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
重合体が、2種以上のモノマー単位を有する共重合体である、請求項1又は2に記載の分析方法。
【請求項4】
(B)工程において、分析が、熱レンズ顕微鏡を備えた光分析である、請求項1ないし3いずれか1つに記載の分析方法。
【請求項5】
基板と、該基板内部に形成された2以上の流路と、2以上の流路が合流する合流流路とを有する分析チップ、及び、
該合流流路内に熱レンズを形成することができる励起光と該合流流路内に送液される被検試料を吸収するプローブ光とを備えた熱レンズ顕微鏡、を備えたことを特徴とする
分析装置。

【図1】
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【図2】
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