説明

分析用デバイス、およびこれを使用する分析装置

【課題】固体成分を移送した際や、サンプル溶液の一部を移送した際に、残った溶液が後追いで流入してくることを防ぐことができる分析用デバイスを提供する。
【解決手段】サンプル溶液を溶液成分と固体成分に分離する分離室10と、分離された固体成分32を一定量保持する保持流路13と、保持流路に連結される混合室16と、保持流路と分離室の間に連結された溢流流路12と、分離室内に残るサンプル溶液を排出するサンプル溢流室17と、分離室とサンプル溢流室を連結する連結通路14を備え、分離された溶液成分31が毛細管力により溢流流路を優先的に充填した後、分離された固体成分が溢流流路を経て保持流路に移送され所定量の固体成分を計量する。保持流路内の固体成分は遠心力によって混合室へ移送され、同時に分離室内に残留するサンプル溶液は連結通路のサイフォン効果によって、サンプル溢流室に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的流体を光学的に分析する分析用デバイス、およびその分析用デバイスを用いる分析装置に関するものであり、より詳細には、光学的分析装置で生物学的流体の成分測定に使用する分析用デバイスにおける、溶液成分または固体成分の採取方法に関し、具体的には血液中の血漿成分または血球成分を採取する方法である。
【背景技術】
【0002】
従来、生物学的流体を光学的に分析する方法として、液体流路を形成したマイクロデバイスを用いて分析する方法が知られている。マイクロデバイスは、回転装置を使って流体の制御をすることが可能であり、遠心力を利用してサンプル溶液の計量、固体成分の分離、分離された流体の移送分配等を行うことができるため、種々の生物化学的な分析を行うことが可能である。
【0003】
遠心力を利用してサンプル溶液を移送する方法としては、図23に示すように、大型流体室81と、大型流体室81に連結されると共に、大型流体室81に対して半径方向外方に配置された計量室82と、計量室82に連結された溢流室83と、計量室82に対して半径方向外方に配置された受容室84と、計量室82から受容室84に液体を供給するための毛細管連結手段85とを、有する回転分析用デバイスがある。
【0004】
毛細管連結手段85は、毛細管構造を有するサイフォン86を含み、サイフォン86の肘状屈曲部分が、回転分析用デバイスの中心から、計量室82の半径方向最内方点と実質的に同じ距離になるように位置付けられており、回転分析用デバイスの回転中は毛細管力が遠心力に比べて小さいため、液体/空気の界面は回転分析用デバイスの軸線と同じ軸線を有し、且つ回転分析用デバイスの中心から計量室82の半径方向最内方点までの距離に等しい長さの半径を持つ回転円筒体の形状と合致して計量室82は、サンプル溶液で充填され、過剰なサンプル溶液は、溢流室83に流れ込む。
【0005】
回転分析用デバイスを止めると、計量室82内に充填されたサンプル溶液は、毛細管力で毛細管連結手段85に流入し、再度回転させることで、サイフォンが始動し、計量室82内に存在する液は、受容室84に排出される(特許文献1)。
【0006】
このとき、サンプル溶液に固体成分がある場合、計量室82または受容室84で遠心分離を行い、固体成分を沈殿させた後、半径方向内方に位置する部分にサイフォン構造を有する毛細管を連結させておけば、サンプル溶液中の溶液成分だけを、次のプロセスに移送することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平5−508709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の構成では、遠心分離した後、毛細管を連結する位置を調整するだけで、サンプル溶液中の溶液成分だけを移送することはできるが、固体成分は外周方向に沈殿しているため、サイフォンによる移送では、固体成分、もしくは高濃度の固体成分溶液を移送することができないという課題を有していた。
【0009】
また、サイフォン構造を有する毛細管で溶液成分のみを移送した場合に、残された溶液が回転の停止と共に、再び毛細管内に流入し、次の回転によって毛細管内の溶液が再び移送されるため、液量のばらつきや、毛細管内への固体成分の流入などによって測定精度に影響をあたえるという課題も有していた。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、固体成分、もしくは高濃度の固体成分溶液の移送を行なうことができ、かつ、サンプル溶液の一部を移送した際に、残った溶液が後追いで流入してくることを防ぐことができる分析用デバイス、およびこれを用いた分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するため、本発明の分析用デバイスは、分析すべきサンプル溶液が収納され、前記サンプル溶液を内部で移送可能な分析用デバイスにおいて、前記サンプル溶液を収容するための液体収容室と、前記液体収容室と連通し、毛細管力によって前記液体収容室から前記サンプル溶液を移送し、前記サンプル溶液の一部を保持するための保持流路と、外力によって移送された前記保持流路内のサンプル溶液を保持するための液体保持室と、該分析用デバイスを軸心回りに回転させる際、前記液体収容室に対して前記軸心より外側に位置し、サイフォン構造を有する毛細管流路を介して前記液体収容室と連結されているサンプル溢流室と、を備えた、ことを特徴としたものである。
【0012】
本発明の分析用デバイスは、前記外力が、分析用デバイスの回転によって発生する遠心力である、ことを特徴としたものである。
【0013】
本発明の分析用デバイスは、前記分析用デバイスにおいて、前記外力が、前記保持流路の液分離位置に設けられている空気孔からのガスの導入によって発生する圧力である、ことを特徴としたものである。
【0014】
本発明の分析用デバイスは、前記分析用デバイスにおいて、前記液体収容室が、前記サンプル溶液を、溶液成分と、固体成分に、該分析用デバイスの回転によって発生する遠心力を用いて分離するための分離室を有するものであり、前記保持流路は、前記連結通路を介して前記分離室から前記サンプル溶液のうちの分離された溶液成分のみを移送する、ことを特徴としたものである。
【0015】
本発明の分析用デバイスは、前記分析用デバイスにおいて、前記保持流路は、その流路の体積によって保持される溶液を計量する、ことを特徴としたものである。
【0016】
本発明の分析用デバイスは、前記分析用デバイスにおいて、前記液体収容室が、前記サンプル溶液を、溶液成分と、固体成分に、該分析用デバイスの回転によって発生する遠心力を用いて分離するための分離室を有するものであり、前記分離室にて分離された前記固体成分の一部を保持するための保持流路と、前記保持流路と前記分離室の間に設けられた、前記分離室と連結通路で連結される溢流流路と、前記溢流流路に連結される溢流室とを、さらに備えた、ことを特徴としたものである。
【0017】
本発明の分析用デバイスは、前記分析用デバイスにおいて、前記保持流路および前記溢流流路が、液体の毛管流を生成する毛管寸法を有し、前記溢流流路の前記溢流室との前記結合部における前記溢流流路の開口面積が、前記保持流路の開口面積よりも大きい、ことを特徴としたものである。
【0018】
本発明の分析用デバイスは、前記分析用デバイスにおいて、前記分離室と連結し、前記分離室内の前記サンプル溶液の、分離された溶液成分の一部を保持するための溶液成分保持流路と、前記溶液成分保持流路内に充填された溶液成分を保持し、その溶液成分と試薬を混合/反応させて、その混合した液の吸光度や濁度を測定するための測定セルとを、さらに備えた、ことを特徴としたものである。
【0019】
本発明の分析装置は、前記分析用デバイスが装着される分析装置であって、前記分析用デバイスをその軸心周りに回転させる回転駆動手段を備え、前記液体収容室にサンプル溶液が収容された前記分析用デバイスを回転させることにより、前記サンプル溶液を前記液体収容室の外周部に移送させ、その後に、前記分析用デバイスの回転を停止することで、前記液体収容室から毛細管力によって、前記保持流路に前記サンプル溶液を吸い出して保持し、さらに、前記液体収容室から毛細管力によって前記サンプル溢流室と連結しているサイフォン構造を有する毛細管流路に、前記サンプル溶液を吸い出して保持し、前記分析用デバイスを回転させることで、前記保持流路内に充填されたサンプル溶液を液体保持室に移送させ、前記液体収容室内のサンプル溶液を、前記毛細管流路のサイフォン構造によって、前記サンプル溢流室内に排出させる、ことを特徴とするものである。
【0020】
本発明の分析装置は、前記分析用デバイスが装着される分析装置であって、前記分析用デバイスを軸心周りに回転させる回転駆動手段と、前記分析用デバイス内の液を移送するためのガス導入機構を備え、液体収容室にサンプル溶液が収容された前記分析用デバイスを回転させることにより、前記サンプル溶液を前記液体収容室の外周部に移送させ、その後に、前記分析用デバイスの回転を停止することで、前記液体収容室から毛細管力によって前記保持流路に前記サンプル溶液を吸い出して保持し、さらに、前記液体収容室から毛細管力によって前記サンプル溢流室と連結しているサイフォン構造を有する毛細管流路に前記サンプル溶液を吸い出して保持し、前記ガス導入機構を、前記保持流路の液分離位置に設けられている空気孔と、前記液体収容室の内周部に設けられている空気孔とに連結し、前記ガス導入機構から空気孔を介してガスを導入することで、前記保持流路内に充填されたサンプル溶液を、前記液分離位置で切り離して前記液体保持室に移送させ、前記液体収容室内のサンプル溶液を前記毛細管流路のサイフォン構造によって、前記サンプル溢流室に排出する、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる分析用デバイス、および分析装置によれば、遠心分離した後の固体成分、もしくは高濃度固体成分溶液を、必要量だけ移送することができる。また、サンプル溶液の一部を移送した際に、残った溶液が後追いで流入してくることを防ぐことができ、分析用デバイスの測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1における分析用デバイス101の構成を示す模式図
【図2】本発明の実施の形態1における分析用デバイス101が装着される分析装置 1000の構成を示す図
【図3】前記実施の形態1における分析用デバイス101のマイクロチャネル構成を 示す平面図
【図4】前記実施の形態1における分析用デバイス101の注入/分離過程を説明す るための図
【図5】前記実施の形態1における分析用デバイス101の計量過程および測定セル 充填過程を説明するための図
【図6】本発明の実施の形態2における分析用デバイス201のマイクロチャネル構成を示す平面図
【図7】前記実施の形態2における分析用デバイス201の注入/分離過程を説明す るための図
【図8】前記実施の形態2における分析用デバイス201の計量過程および測定セル 充填過程を説明するための図
【図9】本発明の実施の形態3における分析用デバイス301のマイクロチャネル構 成を示す平面図
【図10】前記実施の形態3における分析用デバイス301の注入/分離過程を説明するための図
【図11】前記実施の形態3における分析用デバイス301の計量過程および測定セ ル充填過程を説明するための図
【図12】本発明の実施の形態4における分析用デバイス401のマイクロチャネル構成を示す平面図
【図13】前記実施の形態4における分析用デバイス401の注入/分離過程を説明するための図
【図14】前記実施の形態4における分析用デバイス401の計量過程および測定セル充填過程を説明するための図
【図15】本発明の実施の形態5における分析用デバイス501のマイクロチャネル構成を示す平面図
【図16】前記実施の形態5における分析用デバイス501の注入/分離過程を説明するための図
【図17】前記実施の形態5における分析用デバイス501の計量過程を説明するための図
【図18】前記実施の形態5における分析用デバイス501の混合/測定セル充填過程を説明するための図
【図19】本発明の実施の形態6における分析用デバイス601のマイクロチャネル構成を示す平面図
【図20】前記実施の形態6における分析用デバイス601の注入/分離過程を説明するための図
【図21】前記実施の形態6における分析用デバイス601の計量過程を説明するための図
【図22】前記実施の形態6における分析用デバイス601の混合/測定セル充填過程を説明するための図
【図23】従来例の遠心力を利用したサンプル溶液の分離・移送方法を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の分析用デバイスの実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0024】

(実施の形態1)
以下、本発明の請求項1、請求項2、および請求項5に対応する実施の形態1による分析用デバイス101、およびこれを用いた分析装置ついて、図1〜図5を用いて、説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態1による分析用デバイス101の構成を示す模式図である。 図1において、本実施の形態1による分析用デバイス101は、マイクロチャネル4a、4bを有する基板1と、平坦な基板2と、両方の基板1および2を、相互に接着する接着層3とで構成されている。また、5は、両方の基板1、2を張り合わせることにより形成されるマイクロチャネルのうちのマイクロチャネル4a内に充填された反応溶液である。
【0026】
上記基板1に形成されるマイクロチャネル4a、4bは、凹凸のあるマイクロチャネルパターンを射出成形により作製しており、分析すべきサンプル溶液を、分析用デバイス101内に注入し、上記マイクロチャネル4a、4bを通して内部で該サンプル溶液を移送することが可能となっている。
【0027】
本実施の形態1では、マイクロチャネル4aに透過光6aを照射して、検査すべきサンプル溶液と試薬との反応状態を光学的に分析する。測定時には、マイクロチャネル4a内にサンプル溶液と試薬とを反応させた反応溶液5が充填され、反応溶液5は、サンプル溶液と試薬の反応の割合で吸光度が変化するため、光源部6からマイクロチャネル4aに透過光を照射し、受光部7にてその透過光の光量を測定することで、反応溶液5を透過した光量の変化を測定することができ、これにより、反応状態を分析することができる。
【0028】
本実施の形態1では、上記基板1および基板2の厚みは、1mm〜5mmで形成しているが、これは特に制限されるものではなく、マイクロチャネル4a、4bを形成可能な厚みであればよい。また、基板1および基板2の形状についても、特に制限されるものではなく、用途目的に応じた形状、例えば、ディスク状、扇形状、シート状、板状、棒状、その他複雑な形状の成形物などの形状をとることが可能である。
【0029】
本実施の形態1では、基板1および基板2の材料として、易成形性、高生産性、低価格の面からプラスチックを使用しているが、これは、ガラス、シリコンウェハ、金属、セラミックなど、接合できる材料であれば、特に制限されるものではない。
【0030】
本実施の形態1では、マイクロチャネル4a、4bを有する基板1および基板2には、毛細管現象を利用して溶液を移送する場合に、必要に応じてマイクロチャネル4a、4b内に親水処理を行っており、これを施せば、マイクロチャネル内の粘性抵抗を減らし流体移動をしやすくすることができる。
【0031】
本実施の形態1では、プラスチック材料を用いているため、表面に親水処理を行っているが、ガラス等の親水性材料を用いたり、成形時に界面活性剤、親水性ポリマー、シリカゲルの如き親性粉末などの親水化剤を添加させて材料表面に親水性を付与させたりしてもかまわない。また、親水性処理の方法としては、プラズマ、コロナ、オゾン、フッ素等の活性ガスを用いた表面処理方法や、界面活性剤による表面処理が挙げられる。ここで、親水性とは水との接触角が90度未満のことをいい、より好ましくは接触角40度未満である。
【0032】
本実施の形態1では、接着剤を用いて基板1と基板2を接合しているが、両方の基板1、2は、使用する材料に応じて溶融接合や陽極接合などの接合方法で接合するようにしてもよい。
【0033】
図2は、本実施の形態1の分析用デバイス101が装着される分析装置1000の構成を示す模式図である。図2において、本実施の形態1の分析用デバイス101は、本実施の形態1における分析装置1000の回転駆動手段であるモータ102の上に装着され、モータ102を駆動することにより、分析用デバイス101を軸心周りに回転させることができる。分析用デバイス101は、回転によって発生する遠心力を用いて該デバイス内の液を移送させたり、遠心分離させたりすることができる。本実施の形態1では、ディスク形状の分析用デバイスを分析装置に装着しているが、扇形状や、その他の形状のものを、複数個同時に装着するようにしてもよい。
【0034】
また、分析装置1000は、分析用デバイス101をモータ102によりC方向に回転駆動しながら、レーザ光源103よりレーザ光を分析用デバイス101に向けて照射する。レーザ光源103は、トラバースモータ104で駆動される送りねじ105に螺合しており、サーボコントロール回路106が、レーザ光源103を任意の測定箇所に配置できるように、トラバースモータ104を駆動して、レーザ光源103を径方向に移動できる。
【0035】
分析用デバイス101の上部には、レーザ光源103から照射したレーザ光のうち、分析用デバイス101を透過した透過光の光量を検出するフォトディテクタ107、フォトディテクタ107の出力のゲインを調整する調整回路108、調整回路108の出力をA/D変換するA/D変換器109、A/D変換されたデータを処理する透過光量信号処理回路110、透過光量信号処理回路110で得られたデータを保存するメモリー113、これらを制御するCPU111、そして分析された結果を表示する表示部112を有している。
【0036】
次に、本実施の形態1の分析用デバイス101のマイクロチャネル構成、およびサンプル溶液の移送プロセスについて詳細に説明する。
【0037】
図3は本実施の形態1の分析用デバイス101のマイクロチャネル構成を示す平面図である。また、図4(a),(b)は本実施の形態1の分析用デバイス101の注入/分離過程を説明するための図、図5(a),(b),(c)は本実施の形態1の分析用デバイス101の計量過程、および測定セル28の充填過程を説明するための図である。
【0038】
図3、図4、図5に示すように、本実施の形態1の分析用デバイス101のマイクロチャネル構成は、分析するために必要な量のサンプル溶液を注入/収容するための液体収容室9と、サンプル溶液を、溶液成分と固体成分とに、分析用デバイスの回転によって発生する遠心力を用いて分離するための分離室10と、分離室10にて分離された固体成分の一部が移送され、これを保持するための保持流路13と、保持流路13と分離室10との間において、分離室10のサンプル溶液を移送するための連結通路11により連結される溢流流路12と、溢流流路12内に充填されたサンプル溶液が排出される溢流室15と、保持流路13内に充填された固体成分を保持し、その固体成分と試薬を混合/反応させて、その混合した液の吸光度、濁度、または細胞の個数を測定するための測定セル28とで構成されている。
【0039】
ここで、本実施の形態1では、測定セル28内に、固体成分と反応させるための試薬が担持されている。また、本実施の形態1では省略しているが、保持流路13と測定セル28との間には、サンプル溶液を試薬と反応させる試薬反応室や、攪拌を行うための攪拌室等を設けてもよい。
【0040】
本実施の形態1では、液体収容室9、分離室10、溢流室15、測定セル28の深さを0.3mm〜2mmで形成しているが、これは、サンプル溶液の量や、吸光度を測定するための条件(光路長、測定波長、サンプル溶液の反応濃度、試薬の種類等)によって調整可能である。
【0041】
液体収容室9は分離室10と連結しており、図4(a)に示すように注入口8からあらかじめ計量された量のサンプル溶液を注入/収容し、分析用デバイス101を回転させて遠心力を発生させることで、図4(b)に示すように、サンプル溶液を分離室10に移送することができる。
【0042】
さらに、本実施の形態1では、分離室10にサンプル溶液を一定量保持させるための計量機能を設けていないが、サンプル溶液注入前の工程を減らすために、分離室10にサンプル溶液を計量するための計量機能、例えば分析用デバイスを回転させた時に、分離室の必要量を保持できる液面位置から溢流流路を介して溢流室に過剰な液を流出させるような構成、または分離室から分析用デバイスの外部まで連通して形成される毛細管流路を設け、サンプル溶液をその毛細管流路の毛細管力によって吸引し、その毛細管流路の体積によってサンプル溶液を計量し、遠心力によって毛細管流路内のサンプル溶液を分離室へ移送するような構成を設けてもよい。
【0043】
本実施の形態1では、液体収容室9と分離室10を同じ深さにして連結しているが、注入時にサンプル溶液が分離室10へ流入するのを防ぐために、分離室10に空気孔を設け、深さ50μm〜200μmの毛細管流路で連結してもよい。
【0044】
分離室10は、分離室10の半径方向最外方位置より、連結通路11を介して溢流流路12と連結している。
【0045】
連結通路11は、通路幅を0.5mm〜2mm、深さを50μm〜200μmで形成しているが、これは、分析用デバイスの回転停止時に発生する毛細管力によって、連結通路11内にサンプル溶液を充填できるのであれば、特にこれに限定されるものではない。
【0046】
本実施の形態1の構成では、分析用デバイス101を回転させて、サンプル溶液を液体収容室9から分離室10に移送させた際に、連結通路11と溢流流路12との連結位置を超えて、該サンプル溶液が分離室10から流出しないように、あらかじめ計量されるサンプル溶液の量から、分離室10の大きさ、連結通路11と溢流流路12の連結位置等を最適化して、サンプル溶液の流出を防ぐ必要がある。本実施の形態1では、この点に関して、連結通路11は、分離室10が一定量のサンプル溶液を保持する時の液面よりも内周位置まで形成しているため、図4(b)に示すように、遠心力によって液体収容室9から移送されたサンプル溶液は、分離室10および連結通路11内に保持される。
【0047】
分離室10内に保持されたサンプル溶液は、高速回転で数分間回転させることで、図4(b)に示すように、溶液成分31と、固体成分32に分離することが可能である。例えば、血液の場合、回転数を4000rpm〜6000rpmに設定し、1分〜5分回転させることで、血漿と、血球もしくは高ヘマトクリット血液(血球成分の比率が高い血液)とに、分離することができる。
【0048】
分離室10は、連結通路11と溢流流路12を介して保持流路13に連結しており、溢流流路12は溢流流路12よりも外周方向にある溢流室15と連結し、保持流路13は保持流路13よりも外周方向にある測定セル28と連結している。
【0049】
保持流路13および溢流流路12の深さは50μm〜200μmで形成されており、分析用デバイスの回転を停止すると、毛細管力によって、分離室10内の分離された固体成分もしくは高濃度の固体成分溶液を保持流路13および溢流流路12内に充填する。
【0050】
その際に、まず、連結通路11内で分離されている溶液成分31の全てが毛細菅力により溢流流路12に移送されるが、溢流室15の深さが深く形成されているので、溶液成分31は溢流室15内へは移送せず、溢流流路12と溢流室15の間の結合部30内に保持される。その後、連結通路11と分離室10で分離されている固体成分32が溢流流路12を経由して保持流路13へ移送される。
【0051】
本実施の形態1における構成では、図4(b)に示すように、サンプル溶液を分離室10で遠心分離した際に、溢流流路12と分離室10をつなぐ連結通路11の内周部分に溶液成分31が存在するため、溶液成分31がそのまま保持流路13に流入すると、固体成分の濃度が低下し、測定精度のばらつきを生じる要因となる。そこで、本実施の形態1では、図5(a)に示すように、溢流流路12と保持流路13の分岐点において、溢流流路12と溢流室15との結合部30における溢流流路12の開口面積を保持流路13の開口面積よりも大きくすることで、溶液成分31が優先して溢流流路12に流入するようにしている。ここで、溢流流路12の保持流路13に対する開口面積の比率は、1.5倍〜5倍が望ましい。1.5倍以下では、保持流路13へ溶液成分31が流入する可能性があり、5倍以上では、溢流流路12の面積が大きくなりすぎるため、必要以上に固体成分32が充填されて、固体成分32のロスが大きくなってしまう可能性があるためである。
【0052】
本実施の形態1では、連結通路11と保持流路13の間に溢流流路12を設けており、さらに、このような構成において、保持流路13と溢流流路12の分岐点における該2つの流路の各開口面積を、溢流流路12の開口面積が保持流路13の開口面積より大きいものとすることにより、溶液成分31を保持流路13に比し優先して溢流流路12に流入させることができる。ただし、これは、連結通路11から保持流路13を介して溢流流路12を設けることも可能である。
【0053】
保持流路13および溢流流路12は、その流路の体積によって溶液を計量することができるため、固体成分32は、一定の深さを有する保持流路13および溢流流路12の開口面積を調整することで、その各々の保持する許容体積が決定され、必要な液量を保持することが可能である。すなわち、溢流流路12の許容体積は、これが、連結通路11内に存在する溶液成分31を全て収容でき、且つ少なくとも収容する溶液成分31の0.5倍以上の量の固体成分32を流入できるように設計することで、溶液成分31が保持流路13に流入するのを抑制することができる。
【0054】
保持流路13に充填された液は、分析用デバイスを回転させて遠心力を加えることで、空気孔19から空気が混入して保持流路13と溢流流路12の境界に圧力がかかり、繋がっていた液は空気孔19の位置、すなわち保持流路13と溢流流路12の境界で破断し、空気孔19から空気孔20の間に充填されていた液が測定セル28に流入する。
【0055】
同様に、溢流流路12に充填された液も、空気孔18と空気孔19の位置で破断し、空気孔18の位置から空気孔19の位置間に充填されていた液が溢流室15に流入し、空気孔18の位置から分離室10の間に充填されていた液は、遠心力によって分離室10内に戻される。
【0056】
図5(b)に示すような状態に保持流路13が満たされた後、分析用デバイス101を再度回転させることで、保持流路13内に保持されている固体成分は、図5(c)に示すように遠心力で測定セル28に移送され、一方、溢流流路12に充填されていたサンプル溶液は溢流室15に移送される。
【0057】
測定セル28内に流入した固体成分は、回転の加減速や、回転停止中の液の拡散によって測定セル28内に担持されている試薬と混合されるが、振動などの外的な力を用いて混合することも可能である。
【0058】
測定セル28内にて試薬と混合された固体成分内に含まれる分析すべき成分は、その試薬との反応状態を吸光度測定などによって測定することで、サンプル溶液中の濃度を算出することができる。
【0059】
このような本実施の形態1の分析用デバイス101、および分析装置によれば、分析すべきサンプル溶液が収納され、サンプル溶液を内部で移送可能な分析用デバイスにおいて、サンプル溶液を、溶液成分と、固体成分とに、該分析用デバイスの回転によって発生する遠心力を用いて分離するための分離室10と、分離室にて分離された固体成分の一部が移送され、これを保持するための保持流路13と、保持流路と前記分離室との間に設けられた、分離室のサンプル溶液を移送するための連結通路11により連結される溢流流路12とを備え、分離室で分離され、かつ連結通路に存在する溶液成分が溢流流路を優先的に流入した後に、分離室で分離された固体成分が連結通路を経由して溢流流路に充填され、その後に、溢流流路に流入した固体成分の一部が優先的に保持流路に流入させて保持されるものとし、さらに、溢流流路内に充填されたサンプル溶液が排出される溢流室15を備え、該溢流室は、結合部30を介して溢流流路と接続され、連結通路から溢流流路へのサンプル溶液の移送は、溢流流路と溢流室との間の結合部における溢流流路の開口面積が、保持流路の開口面積より大きく、毛細管力によりなされるものとしたので、溢流流路の開口面積が保持流路の開口面積より大きいものとすることにより、溶液成分を保持流路に比し優先して溢流流路に流入させて排出でき、また、保持流路および溢流流路の開口面積を調整することで、各流路が保持する許容体積を決定でき、遠心分離した後の固体成分、もしくは高濃度固体成分溶液を、必要量だけ保持流路に移送することができ、分析用デバイスの測定精度を向上させることができる効果がある。
【0060】
(実施の形態2)
以下、本発明の請求項1、請求項3、および請求項5に対応する実施の形態2による分析用デバイス201、およびこれを用いた測定装置について、図6〜図8を用いて、説明する。
【0061】
なお、本実施の形態2による分析用デバイス201の主な構成、および該分析用デバイスが装着される分析装置1000の構成については、実施の形態1におけると同様であり、ここでは説明を省略する。
【0062】
図6は、本実施の形態2の分析用デバイス201のマイクロチャネル構成を示す平面図である。また、図7(a),(b)は本実施の形態2の分析用デバイス201の注入/分離過程を説明するための図、図8(a),(b),(c)は本実施の形態2の分析用デバイス201の計量過程、および測定セル28の充填過程を説明するための図である。
【0063】
図6、図7、図8に示すように、本実施の形態2の分析用デバイス201のマイクロチャネル構成は、分析するために必要な量のサンプル溶液を注入/収容するための液体収容室9と、サンプル溶液を、溶液成分と固体成分とに、分析用デバイス201の回転によって発生する遠心力を用いて分離するための分離室10と、分離室10にて分離された固体成分の一部が移送され、これを保持するための保持流路13と、保持流路13と分離室10との間において、分離室10のサンプル溶液を移送するための連結通路11により連結される溢流流路12と、溢流流路12内に充填されたサンプル溶液が排出される溢流室15と、保持流路13内に充填された固体成分を保持し、その固体成分と試薬を混合/反応させて、その混合した液の吸光度、濁度、または細胞の個数を測定するための測定セル28とで構成されている。
【0064】
ここで、本実施の形態2では、測定セル28内に、固体成分と反応させるための試薬が担持されている。また、本実施の形態2では省略しているが、保持流路13と測定セル28との間には、サンプル溶液を試薬と反応させる試薬反応室や、攪拌を行うための攪拌室等を設けてもよい。
【0065】
また、本実施の形態2では、液体収容室9、分離室10、溢流室15、測定セル28の深さを0.3mm〜2mmで形成しているが、これは、サンプル溶液の量や吸光度測定するための条件(光路長、測定波長、サンプル溶液の反応濃度、試薬の種類等)によって調整可能である。
【0066】
液体収容室9は分離室10と連結しており、図7(a)に示すように注入口8からあらかじめ計量された量のサンプル溶液を注入/収容し、分析用デバイス201を回転させて遠心力を発生させることで、図7(b)に示すように、サンプル溶液を分離室10に移送することができる。
【0067】
さらに、本実施の形態2では、分離室10にサンプル溶液を一定量保持させるための計量機能を設けていないが、サンプル溶液注入前の工程を減らすために、分離室10にサンプル溶液を計量するための計量機能、例えば分析用デバイスを回転させた時に、分離室の必要量を保持できる液面位置から溢流流路を介して溢流室に過剰な液を流出させるような構成、または分離室から分析用デバイスの外部まで連通して形成される毛細管流路を設け、サンプル溶液をその毛細管流路の毛細管力によって吸引し、その毛細管流路の体積によってサンプル溶液を計量し、遠心力によって毛細管流路内のサンプル溶液を分離室へ移送するような構成、を設けてもよい。
【0068】
本実施の形態2では、液体収容室9と分離室10を同じ深さにして連結しているが、注入時にサンプル溶液が分離室10へ流入するのを防ぐために、分離室10に空気孔を設け、液体収容室9と分離室10とを、深さ50μm〜200μmの毛細管流路で連結してもよい。
【0069】
分離室10は、分離室10の半径方向最外方位置より、連結通路11を介して溢流流路12および保持流路13と連結している。
【0070】
連結通路11は、通路幅を0.5mm〜2mm、深さを50μm〜200μmで形成しているが、これは、特にこれに限定されるものではない。
【0071】
本実施の形態2の構成では、分析用デバイス201を回転させて、液体収容室9から分離室10に移送させた際に、連結通路11と溢流流路12の連結位置を超えて、サンプル溶液が分離室10から流出しないように、あらかじめ計量されるサンプル溶液の量から、分離室10の大きさ、連結通路11と溢流流路12の連結位置等を最適化して、サンプル溶液の流出を防ぐ必要がある。本実施の形態2では、この点に関して、連結通路11は、分離室10が一定量のサンプル溶液を保持する時の液面よりも内周位置まで形成しているため、図7(b)に示すように、遠心力によって液体収容室9から移送されたサンプル溶液は、分離室10および連結通路11内に保持される。
【0072】
分離室10内に保持されたサンプル溶液は、高速回転で数分間回転させることで、図7(b)に示すように、溶液成分31と固体成分32に分離することが可能である。例えば、血液の場合、回転数を4000rpm〜6000rpmに設定し、1分〜5分回転させることで、血漿と、血球もしくは高ヘマトクリット血液(血球成分の比率が高い血液)とに、分離することができる。
【0073】
溢流流路12は溢流流路12よりも外周方向にある溢流室15と連結し、保持流路13は保持流路13よりも外周方向にある測定セル28と連結している。
【0074】
保持流路13および溢流流路12の深さは50μm〜200μmで形成されており、保持流路13および溢流流路12への溶液の充填は、吸引力によって行われる。
【0075】
本実施の形態2における構成では、図7(b)に示すように、サンプル溶液を分離室10で遠心分離した際に、溢流流路12と分離室10をつなぐ連結通路11の内周部分に溶液成分31が存在するため、溶液成分31がそのまま保持流路13に流入すると、固体成分の濃度が低下し、測定精度のばらつきを生じる要因となる。そこで、本実施の形態2では、図8(a)に示すように、溢流室15に設けた空気孔29と、吸引ポンプ(図示省略)をチューブなどの連結手段(図示省略)によって接続し、その吸引ポンプの駆動によって、溢流流路12および連結通路11内の空気を吸引し、その吸引によってできる圧力差によって連結通路11内に存在する溶液成分31を溢流流路12の溢流室15との結合部30に優先して移送する。その後、測定セル28に設けた空気孔33に、吸引ポンプをチューブなどの連結手段によって接続し、空気孔33から同様に吸引することで、分離室10内の固体成分32を保持流路13に充填することができる。このとき、空気孔19、空気孔29は密閉されることが好ましい。
【0076】
保持流路13および溢流流路12は、その流路の体積によって溶液を計量することができるため、固体成分32は、一定の深さを有する保持流路13および溢流流路12の開口面積を調整することで許容体積が決定され、必要な液量を保持することが可能である。すなわち、溢流流路12の許容体積は、連結通路11内に存在する溶液成分31を全て収容でき、且つ少なくとも収容する溶液成分31の0.5倍以上の量の固体成分32が流入できるように設計することで、溶液成分31が保持流路13に流入するのを抑制することができる。
【0077】
保持流路13に充填された液は、分析用デバイス201を回転させて遠心力を加えることで、空気孔19から空気が混入して保持流路13と溢流流路12の境界に圧力がかかり、繋がっていた液は空気孔19の位置、すなわち保持流路13と溢流流路12の境界で破断し、空気孔19から測定セル28の間に充填されていた液が測定セル28に流入する。
【0078】
同様に、溢流流路12に充填された液も、空気孔19の位置で破断し、空気孔19の位置から溢流室15の間に充填されていた液が、溢流室15に流入し、空気孔19の位置から分離室10の間に充填されていた液は、遠心力によって分離室10内に戻される。
【0079】
図8(b)に示すような状態に保持流路13が満たされた後、分析用デバイス201を再度回転させることで、保持流路13内に保持されている固体成分は、図8(c)に示すように遠心力で測定セル28に移送され、一方、溢流流路12に充填されていたサンプル溶液は溢流室15に移送される。
【0080】
測定セル28内に流入した固体成分は、回転の加減速や、回転停止中の液の拡散によって測定セル28内に担持されている試薬と混合されるが、振動などの外的な力を用いて混合することも可能である。
【0081】
測定セル28内にて試薬と混合された固体成分内に含まれる分析すべき成分は、その試薬との反応状態を吸光度測定などによって測定することで、サンプル溶液中の濃度を算出することができる。
【0082】
このような本実施の形態2の分析用デバイス201、およびこれを用いた分析装置によれば、サンプル溶液を、溶液成分と固体成分とに、該分析用デバイスの回転によって発生する遠心力を用いて分離するための分離室10と、分離室にて分離された固体成分の一部が移送され、これを保持するための保持流路13と、保持流路と分離室との間において、前記分離室のサンプル溶液を移送するための連結通路により連結される溢流流路12とを備え、分離室で分離され、かつ連結通路に存在する溶液成分31が溢流流路を優先的に流入した後に、前記分離室で分離された固体成分32が連結通路を経由して溢流流路に充填され、その後に、前記溢流流路に流入した固体成分の一部が優先的に保持流路に流入させて保持されるものとし、さらに溢流流路内に充填されたサンプル溶液が排出される溢流室15を備え、該溢流室は、結合部30を介して溢流流路と接続され、連結流路から溢流流路へのサンプル溶液の移送は、溢流室に設けられた空気孔29から吸引ポンプによって溢流流路および連結通路内の空気が吸引され、その吸引によってできる圧力差によって、連結通路に存在する溶液成分が優先して溢流流路の溢流室との結合部に移送されることにより、連結通路に存在する溶液成分を排出でき、また、保持流路および溢流流路の開口面積を調整することで、各流路が保持する許容体積を決定でき、遠心分離した後の固体成分、もしくは高濃度固体成分溶液を、必要量だけ移送することができ、分析用デバイスの測定精度を向上させることができる効果がある。
(実施の形態3)
以下、本発明の請求項6、請求項7、請求項9、および請求項10に対応する実施の形態3による分析用デバイス301、およびこれを用いた測定装置について、図9〜図11を用いて、説明する。
【0083】
なお、本実施の形態3による分析用デバイス301の主な構成、および分析用デバイスが装着される分析装置については、実施の形態1で説明した内容と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0084】
図9は本実施の形態3による分析用デバイス301のマイクロチャネル構成を示す平面図である。また、図10(a),(b)は本実施の形態3における分析用デバイス301の注入/分離過程を説明するための図、図11(a),(b)は本実施の形態3における分析用デバイス301の計量過程、および測定セル28の充填過程を説明するための図である。
【0085】
図9に示すように、本実施の形態3の分析用デバイス301のマイクロチャネル構成は、分析するために必要な量のサンプル溶液を注入/収容するための液体収容室9と、サンプル溶液を、溶液成分と、固体成分とに、分析用デバイス301の回転によって発生する遠心力を用いて分離するための分離室10と、分離室10にて分離された溶液成分の一部が移送され、これを保持するための保持流路13と、分離室10内に残るサンプル溶液を排出するためのサンプル溢流室17と、分離室10とサンプル溢流室17を連結する連結通路14と、保持流路13内に充填された溶液成分を保持し、その溶液成分と試薬を混合/反応させて、その混合した液の吸光度や濁度を測定するための測定セル28とで構成されている。
【0086】
ここで、本実施の形態3では、測定セル28内に、溶液成分と反応させるための試薬が担持されている。また、本実施の形態3では省略しているが、保持流路13と測定セル28との間には、サンプル溶液を試薬と反応させる試薬反応室や、攪拌を行うための攪拌室等を設けてもかまわない。
【0087】
本実施の形態3では、液体収容室9、分離室10、サンプル溢流室17、測定セル28の深さを0.3mm〜2mmで形成しているが、これは、サンプル溶液の量や吸光度測定するための条件(光路長、測定波長、サンプル溶液の反応濃度、試薬の種類等)によって調整可能である。
【0088】
液体収容室9は分離室10と連結しており、図10(a)に示すように注入口8からあらかじめ計量された量のサンプル溶液を注入/収容し、分析用デバイス301を回転させて遠心力を発生させることで、図10(b)に示すように、サンプル溶液を分離室10に移送することができる。
【0089】
本実施の形態3では、分離室10にサンプル溶液を一定量保持させるための計量機能を設けていないが、サンプル溶液注入前の工程を減らすために、分離室10にサンプル溶液を計量するための計量機能、例えば分析用デバイスを回転させた時に、分離室の必要量を保持できる液面位置から溢流流路を介して溢流室に過剰な液を流出させるような構成、または分離室から分析用デバイスの外部まで連通して形成される毛細管流路を設け、サンプル溶液をその毛細管流路の毛細管力によって吸引し、その毛細管流路の体積によってサンプル溶液を計量し、遠心力によって毛細管流路内のサンプル溶液を分離室へ移送するような構成、を設けてもよい。
【0090】
本実施の形態3では、液体収容室9と分離室10を同じ深さにして連結しているが、注入時にサンプル溶液が分離室10へ流入するのを防ぐために、分離室10に空気孔を設け、深さ50μm〜200μmの毛細管流路で連結してもよい。
【0091】
分離室10は、分離されたサンプル溶液の溶液成分が存在する位置より、連結通路11を介して保持流路13と連結するとともに、分離室10の半径方向最外方位置より外方位置に、サイフォン形状を有する連結通路14を介してサンプル溢流室17と連結している。
【0092】
連結通路11および連結通路14は、通路幅を0.5mm〜2mm、深さを50μm〜200μmで形成しているが、これは、分析用デバイスの回転停止時に発生する毛細管力で連結通路11および連結通路14内をサンプル溶液で充填できるのであれば、特にこれに制限されるものではない。
【0093】
本実施の形態3の構成では、分析用デバイス301を回転させて、液体収容室9から分離室10に移送させた際に、連結通路11と保持流路13の連結位置、および連結通路14のサイフォンの屈曲点を超えて、サンプル溶液が分離室10から流出しないように、あらかじめ計量されるサンプル溶液の量から、分離室10の大きさ、連結通路11と保持流路13の連結位置、連結通路14のサイフォンの屈曲点位置等を最適化して、サンプル溶液の流出を防ぐ必要がある。このため、本実施の形態3では、連結通路11は、分離室10が一定量のサンプル溶液を保持する時の液面よりも内周位置まで形成しており、連結通路14も、分離室10が一定量のサンプル溶液を保持する時の液面よりも内周位置にサイフォンの屈曲点を形成しており、これにより、図10(b)に示すように、遠心力によって液体収容室9から移送されたサンプル溶液は分離室10および連結通路11、連結通路14内に保持される。
【0094】
分離室10内に保持されたサンプル溶液は、高速回転で数分間回転させることで、図10(b)に示すように、溶液成分31と固体成分32に分離することが可能である。例えば、血液の場合、回転数を4000rpm〜6000rpmに設定し、1分〜5分回転させることで、血漿と、血球もしくは高ヘマトクリット血液(血球成分の比率が高い血液)とに、分離することができる。
【0095】
分離室10は、連結通路11を介して、保持流路13に連結しており、保持流路13は保持流路13よりも外周方向にある測定セル28と連結している。
【0096】
保持流路13の深さは50μm〜200μmで形成されており、分析用デバイス301の回転を停止すると、毛細管力によって、分離室10内の分離された溶液成分を保持流路13内に充填する。
【0097】
保持流路13は、その流路の体積によって溶液を計量することができるため、溶液成分31は、一定の深さを有する保持流路13の開口面積を調整することで、許容体積が決定され、必要な液量を保持することが可能である。
【0098】
保持流路13に充填された液は、分析用デバイスを回転させて遠心力を加えることで、空気孔18から空気が混入して保持流路13と連結通路11の境界に圧力がかかり、繋がっていた液は空気孔18の位置、すなわち保持流路13と連結通路11の境界で破断し、空気孔18から空気孔19の間に充填されていた液が測定セル28に流入する。
【0099】
図11(a)に示すような状態で保持流路13が満たされた後、分析用デバイスを再度回転させることで保持流路13内に保持されている溶液成分は、図11(b)に示すように、遠心力で測定セル28に移送される。
【0100】
ここで、本実施の形態3では、分離室10内に残留しているサンプル溶液が、保持流路13内の液を測定セル28に移送した後、分析用デバイスの回転を停止させた時に、毛細管力によって再び保持流路13に流入して、次の回転時に測定セル28へ再度流入し、測定セル28内の液の混合比がかわるのを防ぐために、連結通路14のサイフォン効果によって、分離室10内のサンプル溶液をサンプル溢流室17に排出している。
【0101】
測定セル28内に流入した溶液成分は、回転の加減速や、回転停止中の液の拡散によって測定セル28内に担持されている試薬と混合されるが、振動などの外的な力を用いて混合することも可能である。
【0102】
測定セル28内にて試薬と混合された溶液成分内に含まれる分析すべき成分は、その試薬との反応状態を吸光度測定などによって測定することで、サンプル溶液中の濃度を算出することができる。
【0103】
このような本実施の形態3による分析用デバイス301、およびこれを用いた分析装置によれば、サンプル溶液を収容するための液体収容室9と、液体収容室と連通し、毛細管力によって液体収容室からサンプル溶液を移送し、サンプル溶液の一部を保持するための保持流路13と、分析用デバイスの回転によって発生する遠心力によって移送された保持流路内のサンプル溶液を保持するための測定セル28と、該分析用デバイスを軸心回りに回転させる際、液体収容室に対して前記軸心より外側に位置し、サイフォン構造を有する連結通路14を介して液体収容室と連結されているサンプル溢流室17とを備えたものとしたので、遠心分離した後の液体成分を、必要量だけ移送することができる。また、サンプル溶液の一部を移送した際に、残った溶液が後追いで流入してくることを防ぐことができ、分析用デバイスの測定精度を向上させることができる効果が得られる。
(実施の形態4)
以下、本発明の請求項6、請求項8、請求項9、および請求項10に対応する実施の形態4による分析用デバイス401、およびこれを用いた測定装置について、図12〜図14を用いて、説明する。
【0104】
なお、本実施の形態4による分析用デバイス401の主な構成、および分析用デバイスが装着される分析装置については、前記実施の形態1で説明した内容と同じであるため、ここでの説明は省略する。
【0105】
図12は本実施の形態4における分析用デバイス401のマイクロチャネル構成を示す平面図である。また、図13(a),(b)は本実施の形態4における分析用デバイス401の注入/分離過程を説明するための図、図14(a),(b)は本実施の形態4における分析用デバイス401の計量過程、および測定セル充填過程を説明するための図である。
【0106】
図12に示すように、本実施の形態4の分析用デバイス401のマイクロチャネル構成は、分析するために必要な量のサンプル溶液を注入/収容するための液体収容室9と、サンプル溶液を、溶液成分と固体成分とに、分析用デバイスの回転によって発生する遠心力を用いて分離するための分離室10と、分離室10にて分離された溶液成分の一部が移送され、これを保持するための保持流路13と、分離室10内に残るサンプル溶液を排出するためのサンプル溢流室17と、分離室10とサンプル溢流室17を連結する連結通路14と、保持流路13内に充填された溶液成分を保持し、その溶液成分と試薬を混合/反応させて、その混合した液の吸光度や濁度を測定するための測定セル28とで構成されている。
【0107】
ここで、本実施の形態4では、測定セル内に溶液成分と反応させるための試薬が担持されている。また、本実施の形態4では省略しているが、保持流路13と測定セル28の間には、サンプル溶液を試薬と反応させる試薬反応室や、攪拌を行うための攪拌室等を設けてもよい。
【0108】
本実施の形態4では、液体収容室9、分離室10、サンプル溢流室17、測定セル28の深さを0.3mm〜2mmで形成しているが、サンプル溶液の量や吸光度測定するための条件(光路長、測定波長、サンプル溶液の反応濃度、試薬の種類等)によって調整可能である。
【0109】
液体収容室9は分離室10と連結しており、図13(a)に示すように注入口8からあらかじめ計量された量のサンプル溶液を注入/収容し、分析用デバイスを回転させて遠心力を発生させることで、図13(b)に示すように、サンプル溶液を分離室10に移送することができる。
【0110】
本実施の形態4では、分離室10にサンプル溶液を一定量保持させるための計量機能を設けていないが、サンプル溶液注入前の工程を減らすために、分離室10にサンプル溶液を計量するための計量機能、例えば分析用デバイスを回転させた時に、分離室の必要量を保持できる液面位置から溢流流路を介して溢流室に過剰な液を流出させるような構成、または分離室から分析用デバイスの外部まで連通して形成される毛細管流路を設け、サンプル溶液をその毛細管流路の毛細管力によって吸引し、その毛細管流路の体積によってサンプル溶液を計量し、遠心力によって毛細管流路内のサンプル溶液を分離室へ移送するような構成を設けてもかまわない。
【0111】
本実施の形態4では、液体収容室9と分離室10を同じ深さにして連結しているが、注入時にサンプル溶液が分離室10へ流入するのを防ぐために、分離室10に空気孔を設け、深さ50μm〜200μmの毛細管流路で連結してもよい。
【0112】
分離室10は、分離されたサンプル溶液の溶液成分が存在する位置より、連結通路11を介して保持流路13と連結するとともに、分離室10の半径方向最外方位置より外方位置に、サイフォン形状を有する連結通路14を介してサンプル溢流室17と連結している。
【0113】
連結通路11および連結通路14は、通路幅を0.5mm〜2mm、深さを50μm〜200μmで形成しているが、分析用デバイスの回転停止時に発生する毛細管力で連結通路11および連結通路14内をサンプル溶液で充填できるのであれば特に制限はない。
【0114】
分析用デバイス401を回転させて、液体収容室9から分離室10に移送させた際に、連結通路11と保持流路13の連結位置、および連結通路14のサイフォンの屈曲点を超えて、サンプル溶液が分離室10から流出しないように、あらかじめ計量されるサンプル溶液の量から、分離室10の大きさ、連結通路11と保持流路13の連結位置、連結通路14のサイフォンの屈曲点位置等を最適化して、サンプル溶液の流出を防ぐ必要がある。本発明では、連結通路11は、分離室10が一定量のサンプル溶液を保持する時の液面よりも内周位置まで形成しており、連結通路14も、分離室10が一定量のサンプル溶液を保持する時の液面よりも内周位置にサイフォンの屈曲点を形成しているため、図13(b)に示すように、遠心力によって液体収容室9から移送されたサンプル溶液は分離室10および連結通路11、連結通路14内に保持される。
【0115】
分離室10内に保持されたサンプル溶液は、高速回転で数分間回転させることで、図13(b)に示すように、溶液成分31と固体成分32に分離することが可能である。例えば、血液の場合、回転数を4000rpm〜6000rpmに設定し、1分〜5分回転させることで、血漿と血球もしくは高ヘマトクリット血液(血球成分の比率が高い血液)に分離することができる。
分離室10は、連結通路11を介して、保持流路13に連結しており、保持流路13は保持流路13よりも外周方向にある測定セル28と連結している。
【0116】
保持流路13の深さは50μm〜200μmで形成されており、分析用デバイスの回転を停止すると、毛細管力によって、分離室10内の分離された溶液成分を保持流路13内に充填する。
【0117】
保持流路13は、その流路の体積によって溶液を計量することができるため、溶液成分31は、一定の深さを有する保持流路13の開口面積を調整することで許容体積が決定され、必要な液量を保持することが可能である。
【0118】
保持流路13に充填された液は、分析用デバイスの回転を停止させた状態で、空気孔18にガス導入機構(図示省略)を接続し、空気孔18からのガスの導入によって、保持流路13と連結通路11の境界に圧力がかかり、繋がっていた液は空気孔18の位置、すなわち保持流路13と連結通路11の境界で破断し、空気孔18から測定セル28の間に充填されていた液が測定セル28に流入する。ここで、ガス導入機構は圧縮ポンプや、高圧ガスボンベなどの空気や窒素などのガスを送り出すことができるガス発生源と、そのガス発生源と分析用デバイスを接続するための配管から構成されており、分析用デバイスの空気孔18に脱着可能である。
【0119】
図14(a)に示すような状態で保持流路13が満たされた後、分析用デバイス内へのガスの導入によって、保持流路13内に保持されている溶液成分は、図14(b)に示すように、ガスの圧力で測定セル28に移送される。
【0120】
ここで、本実施の形態4では、分離室10内に残留しているサンプル溶液が、保持流路13内の液を測定セル28に移送した後、分析用デバイス内へのガスの導入を停止させた時に、毛細管力によって再び保持流路13に流入して、次の回転やガス導入時に測定セル28へ再度流入し、測定セル28内の液の混合比がかわるのを防ぐために、連結通路14のサイフォン効果によって、分離室10内のサンプル溶液をサンプル溢流室17に排出している。
【0121】
測定セル28内に流入した溶液成分は、回転の加減速や、回転停止中の液の拡散によって測定セル28内に担持されている試薬と混合されるが、振動などの外的な力を用いて混合することも可能である。
【0122】
測定セル28内にて試薬と混合された溶液成分内に含まれる分析すべき成分は、その試薬との反応状態を吸光度測定などによって測定することで、サンプル溶液中の濃度を算出することができる。
【0123】
このような本実施の形態4による分析用デバイス401、およびこれを用いた分析装置によれば、サンプル溶液を収容するための液体収容室9と、液体収容室と連通し、毛細管力によって液体収容室からサンプル溶液を移送し、サンプル溶液の一部を保持するための保持流路13と、保持流路の液分離位置に設けられている空気孔18からのガスの導入によって発生する圧力差によって移送された持流路内のサンプル溶液を保持するための測定セル28と、該分析用デバイスを軸心回りに回転させる際、液体収容室に対して軸心より外側に位置し、サイフォン構造を有する連結通路14を介して液体収容室9と連結されているサンプル溢流室17とを備えたものとしたので、遠心分離した後の液体成分を、必要量だけ移送することができる。また、サンプル溶液の一部を移送した際に、残った溶液が後追いで流入してくることを防止でき、分析用デバイスの測定精度を向上させることができる効果が得られる。
(実施の形態5)
以下、本発明の請求項4、請求項11、および請求項12に対応する実施の形態5による分析用デバイス、およびこれを用いた測定装置について、図15〜図18を用いて、説明する。
【0124】
なお、本実施の形態5の分析用デバイス501の主な構成、および該分析用デバイスが装着される分析装置については、実施の形態1におけると同様であり、ここでは説明を省略する。
【0125】
図15は本実施の形態5における分析用デバイス501のマイクロチャネル構成を示す平面図である。また、図16(a),(b)は本実施の形態5における分析用デバイス501の注入/分離過程を説明するための図、図17(a),(b)は本実施の形態5における分析用デバイス501の計量過程を説明するための図、図18(a),(b),(c)は本実施の形態5における分析用デバイス501の混合/測定セル充填過程を説明するための図である。
【0126】
図15に示すように、本実施の形態5の分析用デバイス501のマイクロチャネル構成は、分析するために必要な量のサンプル溶液を注入/収容するための液体収容室9と、サンプル溶液を、溶液成分と固体成分とに、分析用デバイスの回転によって発生する遠心力を用いて分離するための分離室10と、分離室10にて分離された固体成分の一部が移送され、これを保持するための保持流路13と、保持流路13と分離室10の間において、分離室10のサンプル溶液を移送するための連結通路11により連結される溢流流路12と、溢流流路12内に充填されたサンプル溶液が排出される溢流室15と、分離室10内に残るサンプル溶液を排出するためのサンプル溢流室17と、分離室10とサンプル溢流室17を連結する連結通路14と、固体成分を希釈または特定の試薬/抗体と反応させるための変性剤を含む希釈液を注入/収容するための希釈液収容室22と、希釈液を一定量保持するための計量室23と、保持流路13からの固体成分と希釈液とを混合/攪拌するための混合室16と、その混合した液を保持し、その混合した液の吸光度、濁度、または細胞の個数を測定するための測定セル28とで構成されている。
【0127】
ここで、本実施の形態5では省略しているが、混合室16と測定セル28の間には、サンプル溶液を試薬と反応させる試薬反応室や、攪拌を行うための攪拌室等を設けてもかまわない。
【0128】
本実施の形態5では、液体収容室9、分離室10、サンプル溢流室17、溢流室15、希釈液収容室22、計量室23、希釈液溢流室24、混合室16、測定セル28の深さを0.3mm〜2mmで形成しているが、サンプル溶液の量や吸光度測定するための条件(光路長、測定波長、サンプル溶液の反応濃度、試薬の種類等)によって調整可能である。
【0129】
また、液体収容室9は分離室10と連結しており、図16(a)に示すように注入口8からあらかじめ計量された量のサンプル溶液を注入/収容し、分析用デバイスを回転させて遠心力を発生させることで、図16(b)に示すように、サンプル溶液を分離室10に移送することができる。
【0130】
本実施の形態5では、分離室10にサンプル溶液を一定量保持させるための計量機能を設けていないが、サンプル溶液注入前の工程を減らすために、分離室10にサンプル溶液を計量するための計量機能、例えば分析用デバイスを回転させた時に、分離室の必要量を保持できる液面位置から溢流流路を介して溢流室に過剰な液を流出させるような構成、または分離室から分析用デバイスの外部まで連通して形成される毛細管流路を設け、サンプル溶液をその毛細管流路の毛細管力によって吸引し、その毛細管流路の体積によってサンプル溶液を計量し、遠心力によって毛細管流路内のサンプル溶液を分離室へ移送するような構成を、設けるようにしてもよい。
【0131】
また、本実施の形態5では、液体収容室9と分離室10を同じ深さにして連結しているが、注入時にサンプル溶液が分離室10へ流入するのを防ぐために、分離室10に空気孔を設け、深さ50μm〜200μmの毛細管流路で連結してもよい。
【0132】
また、分離室10は、分離室10の半径方向最外方位置より、連結通路11を介して溢流流路12と連結するとともに、分離室10の半径方向最外方位置より外方位置に、サイフォン形状を有する連結通路14を介してサンプル溢流室17と連結している。
【0133】
また、連結通路11および連結通路14は、通路幅を0.5mm〜2mm、深さを50μm〜200μmで形成しているが、これは、分析用デバイスの回転停止時に発生する毛細管力で、連結通路11および連結通路14内をサンプル溶液で充填できるのであれば、特に制限されるものではない。
【0134】
本実施の形態5の構成では、分析用デバイス501を回転させて、液体収容室9から分離室10に移送させた際に、連結通路11と溢流流路12の連結位置、および連結通路14のサイフォンの屈曲点を超えて、サンプル溶液が分離室10から流出しないように、あらかじめ計量されるサンプル溶液の量から、分離室10の大きさ、連結通路11と溢流流路12の連結位置、連結通路14のサイフォンの屈曲点位置等を最適化して、サンプル溶液の流出を防ぐ必要がある。このため、本実施の形態5では、連結通路11は、分離室10が一定量のサンプル溶液を保持する時の液面よりも内周位置まで形成しており、連結通路14も、分離室10がサ一定量のサンプル溶液を保持する時の液面よりも内周位置にサイフォンの屈曲点を形成しているため、図16(b)に示すように、遠心力によって液体収容室9から移送されたサンプル溶液は分離室10および連結通路11、連結通路14内に保持される。
【0135】
分離室10内に保持されたサンプル溶液は、高速回転で数分間回転させることで、図16(b)に示すように、溶液成分31と固体成分32に分離することが可能である。例えば、血液の場合、回転数を4000rpm〜6000rpmに設定し、1分〜5分回転させることで、血漿と血球もしくは高ヘマトクリット血液(血球成分の比率が高い血液)に分離することができる。
【0136】
分離室10は、連結通路11と溢流流路12を介して、保持流路13に連結しており、溢流流路12は溢流流路12よりも外周方向にある溢流室15と連結し、保持流路13は保持流路13よりも外周方向にある混合室16と連結している。
【0137】
保持流路13および溢流流路12の深さは50μm〜200μmで形成されており、分析用デバイスの回転を停止すると、毛細管力によって、分離室10内の分離された固体成分もしくは高濃度の固体成分溶液を保持流路13および溢流流路12内に充填する。
【0138】
その際に、まず、連結通路11内で分離されている溶液成分31の全てが毛細菅力により溢流流路12に移送されるが、溢流室15の深さが深く形成されているので、溶液成分31は、溢流室15内へは移送せず、溢流流路12と溢流室15の間の結合部30内に保持される。その後、連結通路11と分離室10で分離されている固体成分32が溢流流路12を経由して保持流路13へ移送される。
【0139】
本実施の形態5では、図16(b)に示すように、サンプル溶液を分離室10で遠心分離した際に、溢流流路12と分離室10をつなぐ連結通路11の内周部分に、溶液成分31が存在するため、そのまま保持流路13に流入すると、固体成分の濃度が低下し、測定精度のばらつき要因となるため、図17(a)に示すように、溢流流路12と保持流路13の分岐点において、溢流流路12と溢流室15との結合部30における溢流流路12の開口面積を保持流路13の開口面積よりも大きくすることで溶液成分31が優先して溢流流路12に流入するようにしている。ここで、溢流流路12の保持流路13に対する開口面積の比率は、1.5倍〜5倍が望ましい。1.5倍以下では、保持流路13へ溶液成分31が流入する可能性があり、5倍以上では、溢流流路12の面積が大きくなりすぎるため、必要以上に固体成分32が充填されて、固体成分32のロスが大きくなってしまう可能性がある。
【0140】
本実施の形態5では、連結通路11と保持流路13の間に溢流流路12を設けているが、保持流路13と溢流流路12の分岐点における開口面積を本実施の形態と同じように溢流流路12の開口面積を保持流路13の開口面積より大きくすることで、優先して溶液成分31を溢流流路12に流入させることができるため、連結通路11から保持流路13を介して溢流流路12を設けることも可能である。
【0141】
保持流路13および溢流流路12は、その流路の体積によって溶液を計量することができるため、固体成分32は、一定の深さを有する保持流路13および溢流流路12の開口面積を調整することで許容体積が決定され、必要な液量を保持することが可能である。溢流流路12の許容体積は、連結通路11内に存在する溶液成分31を全て収容でき、且つ少なくとも収容する溶液成分31の0.5倍以上の量の固体成分32が流入できるように設計することで、溶液成分31が保持流路13に流入するのを抑制することができる。
【0142】
保持流路13に充填された液は、分析用デバイスを回転させて遠心力を加えることで、空気孔19から空気が混入して保持流路13と溢流流路12の境界に圧力がかかり、繋がっていた液は空気孔19の位置、すなわち保持流路13と溢流流路12の境界で破断し、空気孔19から空気孔20の間に充填されていた液が混合室16に流入する。
【0143】
同様に、溢流流路12に充填された液も、空気孔18と空気孔19の位置で破断し、空気孔18の位置から空気孔20の間に充填されていた液が溢流室15に流入し、空気孔18の位置から分離室10の間に充填されていた液は、遠心力によって分離室10内に戻される。
【0144】
図17(b)に示すように保持流路13が満たされた後、分析用デバイスを再度回転させることで保持流路13内に保持されている固体成分は、図18(a)に示すように、遠心力で混合室16に移送される。
【0145】
ここで、本実施の形態5では、分離室10内に残留しているサンプル溶液が、保持流路13内の液を混合室16に移送した後、分析用デバイスの回転を停止させた時に、毛細管力によって再び保持流路13に流入して、次の回転時に混合室16へ再度流入し、混合室16内の液の混合比がかわるのを防ぐために、連結通路14のサイフォン効果によって、分離室10内のサンプル溶液をサンプル溢流室17に排出している。
【0146】
希釈液収容室22は計量室23と連結しており、図16(a)に示すように注入口21から希釈液を注入/収容し、分析用デバイスを回転させることで、図16(b)に示すように、希釈液を計量室23に移送することができる。
【0147】
本実施の形態5では、希釈液収容室22と計量室23を同じ深さにして連結しているが、希釈液を注入時に、希釈液が計量室23へ流入するのを防ぐために、深さ50μm〜200μmの毛細管流路で希釈液収容室22と計量室23を連結することで、希釈液の流入を抑制することが可能である。
【0148】
計量室23は、計量室23より半径方向内方に配置された希釈液溢流室24の流入口に、希釈液溢流室24に近接する計量室23の半径方向内方に位置する溢流口から毛細管流路25を介して連結され、計量室23の半径方向最外方に位置する場所から連結通路26を介して混合室16に連結されている。希釈液溢流室24には、希釈液が流入しやすいように空気孔が設けられており、混合室16にも、希釈液が連結通路26を流れやすいように空気孔が設けられている。
【0149】
連結通路26は、分析用デバイスの回転中心から希釈液溢流室24の流入口と、毛細管流路25の界面までの距離より内方に配置される曲管を備えたサイフォン形状である。本発明では、毛細管流路25および連結通路26の幅を0.5mm〜2mm、深さを50μm〜200μmで形成しているが、毛細管力で連結通路26内を希釈液で充填できるのであれば特に制限はない。
【0150】
このように計量室23と混合室16を連結することで、希釈液収容室22内に収容された希釈液を分析用デバイスの回転によって計量室23に移送・充填させても、図16(b)に示すように、連結通路26内の希釈液は、分析用デバイスの回転中心から希釈液溢流室24の流入口と、毛細管流路25の界面までの半径方向の距離に相当する位置までしか充填されない。計量室23の充填完了後に分析用デバイスを停止させると、図17(a)に示すように、連結通路26内は毛細管力が働き、混合室16の入口まで希釈液で満たされる。このとき、希釈液は混合室16の深さが深く、毛細管力が連結通路26の毛細管力に比べて極めて小さいため、混合室16内には流入しない。
【0151】
図17(b)に示すような状態で保持流路13と連結通路26が満たされた後、分析用デバイスを再度回転させることで保持流路13内に保持されている固体成分、および計量室23内に保持されている希釈液は、図18(a)に示すように、遠心力およびサイフォン効果で混合室16に移送され、溢流流路12に充填されていたサンプル溶液は溢流室15に、分離室10に保持されていたサンプル溶液はサンプル溢流室17にそれぞれ移送される。
【0152】
混合室16内に流入した固体成分および希釈液は、サイフォン形状を有する連結通路27を介して測定セル28に連結しているため、混合室16内に保持され、希釈された固体成分は回転の加減速や、回転停止中の液の拡散によって混合される。
【0153】
連結通路27は、通路幅を0.5mm〜2mm、深さを50μm〜200μmで形成しているが、毛細管力で連結通路27内を液で充填できるのであれば特に制限はない。
【0154】
混合された液は、図18(b)に示すように、回転の停止とともに、混合された液体で連結通路27が満たされ、再度回転をさせることで、図18(c)に示すように、混合室16内の液を測定セル28に移送することができる。
【0155】
サンプル溶液が血液であれば、混合室16で、希釈液と血球成分を混合することで、血球細胞が破壊されて溶血し、血球内のヘモグロビンが希釈液と混合される。希釈されたヘモグロビンは測定セルにて吸光度を測定することで、血液中のヘモグロビン濃度を算出することができる。
【0156】
このような本実施の形態5による分析用デバイス501、およびこれを用いた分析装置によれば、実施の形態1の分析用デバイスにおいて、保持流路と連通し、固体成分と、希釈溶液または試薬溶液とを混合するための混合室16と、混合室と連通し、希釈溶液または前記試薬溶液を収容する希釈液収容室22とを、さらに備えたものとしたので、実施の形態1と同様のプロセスにより、遠心分離した後の固体成分、もしくは高濃度固体成分溶液を、必要量だけ保持流路に移送することができ、さらに、保持流路に移送した固体成分を希釈溶液または試薬溶液と混合して測定セル28に移送することができる。また、サンプル溶液の一部を移送した際に、残った溶液が後追いで保持流路に流入してくることを防止でき、分析用デバイスの測定精度を向上させることができる効果がある。
(実施の形態6)
以下、本発明の請求項4、請求項11、請求項12、および請求項13に対応する実施の形態6による分析用デバイス601、およびこれを用いた測定装置について、図19〜図22を用いて、説明する。
【0157】
なお、本実施の形態6による分析用デバイス601の主な構成、および該分析用デバイスが装着される分析装置については、実施の形態1におけると同様であり、ここでは説明を省略する。
【0158】
図19は本実施の形態6の分析用デバイス601のマイクロチャネル構成を示す平面図である。また、図20(a),(b)は本実施の形態6における分析用デバイス601の注入/分離過程を説明するための図、図21(a),(b)は本実施の形態6における分析用デバイス601の計量過程を説明するための図、図22(a),(b),(c)は本実施の形態6における分析用デバイス601の混合/測定セル充填過程を説明するための図である。
【0159】
図19に示すように、本実施の形態6の分析用デバイス601のマイクロチャネル構成は、分析するために必要な量のサンプル溶液を注入/収容するための液体収容室9と、サンプル溶液を、溶液成分と固体成分とに、分析用デバイスの回転によって発生する遠心力を用いて分離するための分離室10と、分離室10にて分離された溶液成分の一部が分離室10に連結された連結通路34を介して移送され、これを保持するための溶液成分保持流路36と、溶液成分保持流路36内に充填された溶液成分を保持し、その溶液成分と試薬を混合/反応させて、その混合した液の吸光度や濁度を測定するための測定セル37と、分離室10にて分離された固体成分の一部が移送され、これを保持するための保持流路13と、保持流路13と分離室10の間において、分離室10のサンプル溶液を移送するための連結通路11により連結される溢流流路12と、溢流流路12内に充填されたサンプル溶液が排出される溢流室15と、分離室10内に残るサンプル溶液を排出するためのサンプル溢流室17と、分離室10とサンプル溢流室17を連結する連結通路14と、固体成分を希釈または特定の試薬/抗体と反応させるための変性剤を含む希釈液を注入/収容するための希釈液収容室22と、希釈液を一定量保持するための計量室23と、固体成分と希釈液を混合/攪拌するための混合室16と、その混合した液を保持し、その混合した液の吸光度、濁度、または細胞の個数を測定するための測定セル28とで構成されている。
【0160】
ここで、本実施の形態6では、測定セル内に溶液成分と反応させるための試薬が担持されている。また、本実施例では省略しているが、混合室16と測定セル28の間、および溶液成分保持流路36と測定セル37の間には、サンプル溶液を試薬と反応させる試薬反応室や、攪拌を行うための攪拌室等を設けてもかまわない。
【0161】
本実施の形態6では、液体収容室9、分離室10、サンプル溢流室17、溢流室15、希釈液収容室22、計量室23、希釈液溢流室24、混合室16、測定セル28、測定セル37の深さを0.3mm〜2mmで形成しているが、サンプル溶液の量や吸光度測定するための条件(光路長、測定波長、サンプル溶液の反応濃度、試薬の種類等)によって調整可能である。
【0162】
液体収容室9は分離室10と連結しており、図20(a)に示すように注入口8からあらかじめ計量された量のサンプル溶液を注入/収容し、分析用デバイスを回転させて遠心力を発生させることで、図20(b)に示すように、サンプル溶液を分離室10に移送することができる。
【0163】
本実施の形態6では、分離室10にサンプル溶液を一定量保持させるための計量機能を設けていないが、サンプル溶液注入前の工程を減らすために、分離室10にサンプル溶液を計量するための計量機能、例えば分析用デバイスを回転させた時に、分離室の必要量を保持できる液面位置から溢流流路を介して溢流室に過剰な液を流出させるような構成、または分離室から分析用デバイスの外部まで連通して形成される毛細管流路を設け、サンプル溶液をその毛細管流路の毛細管力によって吸引し、その毛細管流路の体積によってサンプル溶液を計量し、遠心力によって毛細管流路内のサンプル溶液を分離室へ移送するような構成を、設けるようにしてもよい。
【0164】
本実施の形態6では、液体収容室9と分離室10を同じ深さにして連結しているが、注入時にサンプル溶液が分離室10へ流入するのを防ぐために、分離室10に空気孔を設け、深さ50μm〜200μmの毛細管流路で連結してもよい。
【0165】
分離室10は、分離されたサンプル溶液の溶液成分が存在する位置より、連結通路34を介して溶液成分保持流路36と連結するとともに、分離室10の半径方向最外方位置より、連結通路11を介して溢流流路12と連結し、更には分離室10の半径方向最外方位置より外方位置に、サイフォン形状を有する連結通路14を介してサンプル溢流室17と連結している。
【0166】
連結通路11、連結通路34、および連結通路14は、通路幅を0.5mm〜2mm、深さを50μm〜200μmで形成しているが、分析用デバイスの回転停止時に発生する毛細管力で連結通路11、連結通路34、および連結通路14内をサンプル溶液で充填できるのであれば特に制限はない。
【0167】
本実施の形態6の構成では、分析用デバイス601を回転させて、液体収容室9から分離室10に移送させた際に、連結通路11と溢流流路12の連結位置、連結通路34と溶液成分保持流路36の連結位置、および連結通路14のサイフォンの屈曲点を超えて、サンプル溶液が分離室10から流出しないように、あらかじめ計量されるサンプル溶液の量から、分離室10の大きさ、連結通路11と溢流流路12の連結位置、連結通路34と溶液成分保持流路36の連結位置、連結通路14のサイフォンの屈曲点位置等を最適化して、サンプル溶液の流出を防ぐ必要がある。このため、本実施の形態6では、連結通路11および連結通路34は、分離室10が一定量のサンプル溶液を保持する時の液面よりも内周位置まで形成しており、また、連結通路14も、分離室10がサ一定量のサンプル溶液を保持する時の液面よりも内周位置にサイフォンの屈曲点を形成しており、これにより、図20(b)に示すように、遠心力によって液体収容室9から移送されたサンプル溶液は、分離室10および連結通路11、連結通路34、連結通路14内に保持される。
【0168】
分離室10内に保持されたサンプル溶液は、高速回転で数分間回転させることで、図20(b)に示すように、溶液成分31と固体成分32に分離することが可能である。例えば、血液の場合、回転数を4000rpm〜6000rpmに設定し、1分〜5分回転させることで、血漿と、血球もしくは高ヘマトクリット血液(血球成分の比率が高い血液)とに、分離することができる。
【0169】
分離室10は、連結通路11と溢流流路12を介して、保持流路13に連結しており、連結通路34を介して、溶液成分保持流路36に連結しており、溢流流路12は溢流流路12よりも外周方向にある溢流室15と連結し、保持流路13は保持流路13よりも外周方向にある混合室16と連結し、溶液成分保持流路36は溶液成分保持流路36よりも外周方向にある測定セル37と連結している。
【0170】
保持流路13および溢流流路12の深さは50μm〜200μmで形成されており、分析用デバイスの回転を停止すると、毛細管力によって、分離室10内の分離された固体成分もしくは高濃度の固体成分溶液を保持流路13および溢流流路12内に充填する。
【0171】
その際に、まず、連結通路11内で分離されている溶液成分31の全てが毛細菅力により溢流流路12に移送されるが、溢流室15の深さが深く形成されているので、溶液成分31は、溢流室15内へは移送せず、溢流流路12と溢流室15の間の結合部30内に保持される。その後、連結通路11と分離室10で分離されている固体成分32が溢流流路12を経由して保持流路13へ移送される。
【0172】
本実施の形態6では、図20(b)に示すように、サンプル溶液を分離室10で遠心分離した際に、溢流流路12と分離室10をつなぐ連結通路11の内周部分に、溶液成分31が存在するため、そのまま保持流路13に流入すると、固体成分の濃度が低下し、測定精度のばらつき要因となるため、図21(a)に示すように、溢流流路12と保持流路13の分岐点において、溢流流路12と溢流室15との結合部30における溢流流路12の開口面積を保持流路13の開口面積よりも大きくすることで溶液成分31が優先して溢流流路12に流入するようにしている。ここで、溢流流路12の保持流路13に対する開口面積の比率は、1.5倍〜5倍が望ましい。1.5倍以下では、保持流路13へ溶液成分31が流入する可能性があり、5倍以上では、溢流流路12の面積が大きくなりすぎるため、必要以上に固体成分32が充填されて、固体成分32のロスが大きくなってしまう可能性がある。
【0173】
本実施の形態6では、連結通路11と保持流路13の間に溢流流路12を設けているが、保持流路13と溢流流路12の分岐点における開口面積を本実施の形態と同じように溢流流路12の開口面積を保持流路13の開口面積より大きくすることで、優先して溶液成分31を溢流流路12に流入させることができるため、連結通路11から保持流路13を介して溢流流路12を設けることも可能である。
【0174】
保持流路13および溢流流路12は、その流路の体積によって溶液を計量することができるため、固体成分32は、一定の深さを有する保持流路13および溢流流路12の開口面積を調整することで許容体積が決定され、必要な液量を保持することが可能である。溢流流路12の許容体積は、連結通路11内に存在する溶液成分31を全て収容でき、且つ少なくとも収容する溶液成分31の0.5倍以上の量の固体成分32が流入できるように設計することで、溶液成分31が保持流路13に流入するのを抑制することができる。
【0175】
溶液成分保持流路36の深さは50μm〜200μmで形成されており、分析用デバイスの回転を停止すると、毛細管力によって、分離室10内の分離された溶液成分を溶液成分保持流路36内に充填する。
【0176】
溶液成分保持流路36は、その流路の体積によって溶液を計量することができるため、溶液成分31は、一定の深さを有する溶液成分保持流路36の開口面積を調整することで許容体積が決定され、必要な液量を保持することが可能である。
【0177】
保持流路13に充填された液は、分析用デバイスを回転させて遠心力を加えることで、空気孔19から空気が混入して保持流路13と溢流流路12の境界に圧力がかかり、繋がっていた液は空気孔19の位置、すなわち保持流路13と溢流流路12の境界で破断し、空気孔19から空気孔20の間に充填されていた液が混合室16に流入する。
【0178】
同様に、溢流流路12に充填された液も、空気孔18と空気孔19の位置で破断し、空気孔18の位置から空気孔20の位置間に充填されていた液が溢流室15に流入し、空気孔18の位置から分離室10の間に充填されていた液は、遠心力によって分離室10内に戻される。
【0179】
さらには、溶液成分保持流路36に充填された液も、空気孔35の位置で破断し、空気孔35の位置から測定セル37の間に充填されていた液が測定セル37に流入し、空気孔35の位置から分離室10の間に充填されていた液は、遠心力によって分離室10内に戻される。
【0180】
図21(b)に示すように保持流路13および溶液成分保持流路36が満たされた後、分析用デバイスを再度回転させることで保持流路13内に保持されている固体成分、および溶液成分保持流路36内に保持されている溶液成分は、図21(a)に示すように、遠心力でそれぞれ混合室16と、測定セル37に移送される。
ここで、本実施の形態6では、分離室10内に残留しているサンプル溶液が、保持流路13内の液を混合室16に移送した後、および溶液成分保持流路36内の液を測定セル37に移送した後、分析用デバイスの回転を停止させた時に、毛細管力によって再び保持流路13および溶液成分保持流路36に流入して、次の回転時に混合室16および測定セル37へ再度流入し、混合室16および測定セル37内の液の混合比がかわるのを防ぐために、連結通路14のサイフォン効果によって、分離室10内のサンプル溶液をサンプル溢流室17に排出している。
希釈液収容室22は計量室23と連結しており、図20(a)に示すように注入口21から希釈液を注入/収容し、分析用デバイスを回転させることで、図20(b)に示すように、希釈液を計量室23に移送することができる。
【0181】
本実施の形態6では、希釈液収容室22と計量室23を同じ深さにして連結しているが、希釈液を注入時に、希釈液が計量室23へ流入するのを防ぐために、深さ50μm〜200μmの毛細管流路で希釈液収容室22と計量室23を連結することで、希釈液の流入を抑制することが可能である。
【0182】
計量室23は、計量室23より半径方向内方に配置された希釈液溢流室24の流入口に、希釈液溢流室24に近接する計量室23の半径方向内方に位置する溢流口から毛細管流路25を介して連結され、計量室23の半径方向最外方に位置する場所から連結通路26を介して混合室16に連結されている。希釈液溢流室24には、希釈液が流入しやすいように空気孔が設けられており、混合室16にも、希釈液が連結通路26を流れやすいように空気孔が設けられている。
【0183】
連結通路26は、分析用デバイスの回転中心から希釈液溢流室24の流入口と、毛細管流路25の界面までの距離より内方に配置される曲管を備えたサイフォン形状である。本実施の形態6では、毛細管流路25および連結通路26の幅を0.5mm〜2mm、深さを50μm〜200μmで形成しているが、これは、毛細管力で連結通路26内を希釈液で充填できるのであれば、特に制限されるものではない。
【0184】
このように、計量室23と、混合室16を連結することで、希釈液収容室22内に収容された希釈液を分析用デバイスの回転によって計量室23に移送・充填させても、図20(b)に示すように、連結通路26内の希釈液は、分析用デバイスの回転中心から希釈液溢流室24の流入口と、毛細管流路25の界面までの半径方向の距離に相当する位置までしか充填されない。計量室23の充填完了後に分析用デバイスを停止させると、図21(a)に示すように、連結通路26内は毛細管力が働き、混合室16の入口まで希釈液で満たされる。このとき、希釈液は混合室16の深さが深く、毛細管力が連結通路26の毛細管力に比べて極めて小さいため、混合室16内には流入しない。
【0185】
図21(b)に示すように、保持流路13、溶液成分保持流路36、連結通路26が満たされた後、分析用デバイスを再度回転させることで保持流路13内に保持されている固体成分、溶液成分保持流路36内に保持されている溶液成分、および計量室23内に保持されている希釈液は、図22(a)に示すように、遠心力およびサイフォン効果でそれぞれ混合室16、測定セル37に移送され、溢流流路12に充填されていたサンプル溶液は溢流室15に、分離室10に保持されていたサンプル溶液はサンプル溢流室17にそれぞれ移送される。
【0186】
測定セル37内に流入した溶液成分は、回転の加減速や、回転停止中の液の拡散によって測定セル37内に担持されている試薬と混合されるが、振動などの外的な力を用いて混合することも可能である。
【0187】
測定セル37内にて試薬と混合された溶液成分内に含まれる分析すべき成分は、その試薬との反応状態を吸光度測定などによって測定することで、サンプル溶液中の濃度を算出することができる。
【0188】
混合室16内に流入した固体成分および希釈液は、サイフォン形状を有する連結通路27を介して測定セル28に連結しているため、混合室16内に保持され、希釈された固体成分は回転の加減速や、回転停止中の液の拡散によって混合される。
【0189】
連結通路27は、通路幅を0.5mm〜2mm、深さを50μm〜200μmで形成しているが、毛細管力で連結通路27内を液で充填できるのであれば特に制限はない。
【0190】
混合された液は、図22(b)に示すように、回転の停止とともに、混合された液体で連結通路27が満たされ、再度回転をさせることで、図22(c)に示すように、混合室16内の液を測定セル28に移送することができる。
【0191】
サンプル溶液が血液であれば、混合室16で、希釈液と血球成分を混合することで、血球細胞が破壊されて溶血し、血球内のヘモグロビンが希釈液と混合される。希釈されたへモグロビンは測定セルにて吸光度を測定することで、血液中のヘモグロビン濃度を算出することができる。
【0192】
このような本実施の形態6による分析用デバイス601、およびこれを用いた分析装置によれば、上記実施の形態1の分析用デバイスにおいて、保持流路と連通し、前記固体成分と、希釈溶液または試薬溶液とを混合するための混合室16と、混合室と連通し、希釈溶液または前記試薬溶液を収容する希釈液収容室22とを、さらに備えたものとし、さらに、分離室と連結し、分離室内の前記サンプル溶液の、分離された溶液成分の一部を保持するための溶液成分保持流路36と、該溶液成分保持流路内に充填された溶液成分を保持し、その溶液成分と試薬を混合/反応させて、その混合した液の吸光度や濁度を測定するための測定セル37とを備えたものとしたので、実施の形態1および実施の形態4と同様のプロセスにより、遠心分離した後の固体成分、もしくは高濃度固体成分溶液を、必要量だけ保持流路に移送するとともに液体成分を測定セル37に移送することができ、さらに、保持流路に移送した固体成分を希釈溶液または試薬溶液と混合して測定セル28に移送することができる。また、サンプル溶液の一部を移送した際に、残った溶液が後追いで保持流路に流入してくることを防止でき、分析用デバイスの測定精度を向上させることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明にかかる分析用デバイス、およびその分析用デバイスを用いる分析装置は、遠心分離した後の固体成分、もしくは高濃度固体成分溶液を必要量だけ移送することができるという効果や、サンプル溶液の一部を移送した際に、残った溶液が後追いで流入してくることを防ぐという効果を有し、光学的分析装置で生物学的流体の成分測定に使用する分析用デバイスにおける溶液成分または固体成分の採取方法等として有用である。
【符号の説明】
【0194】
1 基板
2 基板
3 接着層
4a マイクロチャネル
5 反応溶液
6 光源部
6a 透過光
7 受光部
8 注入口
9 液体収容室
10 分離室
11 連結通路
12 溢流流路
13 保持流路
14 連結通路
15 溢流室
16 混合室
17 サンプル溢流室
18 空気孔
19 空気孔
20 空気孔
21 注入口
22 希釈液収容室
23 計量室
24 希釈液溢流室
25 毛細管流路
26 連結通路
27 連結通路
28 測定セル
29 空気孔
30 結合部
31 溶液成分
32 固体成分
33 空気孔
34 連結通路
35 空気孔
36 溶液成分保持流路
37 測定セル
81 大型流体室
82 計量室
83 溢流室
84 受容室
85 毛細管連結手段
86 サイフォン
101、201、301、401、501、601 分析用デバイス
102 モータ
103 レーザ光源
104 トラバースモータ
105 送りねじ
106 サーボコントロール回路
107 フォトディテクタ
108 調整回路
109 A/D変換器
110 透過光量信号処理回路
111 CPU
112 表示部
113 メモリー
1000 分析装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析すべきサンプル溶液が収納され、前記サンプル溶液を内部で移送可能な分析用デバイスにおいて、
前記サンプル溶液を収容するための液体収容室と、前記液体収容室と連通し、毛細管力によって前記液体収容室から前記サンプル溶液を移送し、前記サンプル溶液の一部を保持するための保持流路と、外力によって移送された前記保持流路内のサンプル溶液を保持するための液体保持室と、該分析用デバイスを軸心回りに回転させる際、前記液体収容室に対して前記軸心より外側に位置し、サイフォン構造を有する毛細管流路を介して前記液体収容室と連結されているサンプル溢流室と、を備えた、ことを特徴とする分析用デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の分析用デバイスにおいて、前記外力が、分析用デバイスの回転によって発生する遠心力である、ことを特徴とする分析用デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の分析用デバイスにおいて、前記外力が、前記保持流路の液分離位置に設けられている空気孔からのガスの導入によって発生する圧力である、ことを特徴とする分析用デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載の分析用デバイスにおいて、前記液体収容室が、前記サンプル溶液を、溶液成分と、固体成分に、該分析用デバイスの回転によって発生する遠心力を用いて分離するための分離室を有するものであり、前記保持流路は、前記連結通路を介して前記分離室から前記サンプル溶液のうちの分離された溶液成分のみを移送する、ことを特徴とする分析用デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載の分析用デバイスにおいて、前記保持流路は、その流路の体積によって保持される溶液を計量する、ことを特徴とする分析用デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載の分析用デバイスにおいて、前記液体収容室が、前記サンプル溶液を、溶液成分と、固体成分に、該分析用デバイスの回転によって発生する遠心力を用いて分離するための分離室を有するものであり、前記分離室にて分離された前記固体成分の一部を保持するための保持流路と、前記保持流路と前記分離室の間に設けられた、前記分離室と連結通路で連結される溢流流路と、前記溢流流路に連結される溢流室とを、さらに備えた、ことを特徴とする分析用デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載の分析用デバイスにおいて、前記溢流室は、結合部を介して前記溢流流路と接続されており、前記保持流路および前記溢流流路が、液体の毛管流を生成する毛管寸法を有し、前記溢流流路の前記溢流室との前記結合部における前記溢流流路の開口面積が、前記保持流路の開口面積よりも大きい、 ことを特徴とする分析用デバイス。
【請求項8】
請求項6に記載の分析用デバイスにおいて、前記分離室と連結し、前記分離室内の前記サンプル溶液の、分離された溶液成分の一部を保持するための溶液成分保持流路と、前記溶液成分保持流路内に充填された溶液成分を保持し、その溶液成分と試薬を混合/反応させて、その混合した液の吸光度や濁度を測定するための測定セルとを、さらに備えた、ことを特徴とする分析用デバイス。
【請求項9】
請求項2に記載の分析用デバイスが装着される分析装置であって、前記分析用デバイスをその軸心周りに回転させる回転駆動手段を備え、前記液体収容室にサンプル溶液が収容された前記分析用デバイスを回転させることにより、前記サンプル溶液を前記液体収容室の外周部に移送させ、その後に、前記分析用デバイスの回転を停止することで、前記液体収容室から毛細管力によって、前記保持流路に前記サンプル溶液を吸い出して保持し、さらに、前記液体収容室から毛細管力によって前記サンプル溢流室と連結しているサイフォン構造を有する毛細管流路に、前記サンプル溶液を吸い出して保持し、 前記分析用デバイスを回転させることで、前記保持流路内に充填されたサンプル溶液を液体保持室に移送させ、前記液体収容室内のサンプル溶液を、前記毛細管流路のサイフォン構造によって、前記サンプル溢流室内に排出させる、ことを特徴とする分析装置。
【請求項10】
請求項3に記載の分析用デバイスが装着される分析装置であって、前記分析用デバイスを軸心周りに回転させる回転駆動手段と、前記分析用デバイス内の液を移送するためのガス導入機構を備え、液体収容室にサンプル溶液が収容された前記分析用デバイスを回転させることにより、前記サンプル溶液を前記液体収容室の外周部に移送させ、その後に、前記分析用デバイスの回転を停止することで、前記液体収容室から毛細管力によって前記保持流路に前記サンプル溶液を吸い出して保持し、さらに、前記液体収容室から毛細管力によって前記サンプル溢流室と連結しているサイフォン構造を有する毛細管流路に前記サンプル溶液を吸い出して保持し、前記ガス導入機構を、前記保持流路の液分離位置に設けられている空気孔と、前記液体収容室の内周部に設けられている空気孔とに連結し、前記ガス導入機構から空気孔を介してガスを導入することで、前記保持流路内に充填されたサンプル溶液を、前記液分離位置で切り離して前記液体保持室に移送させ、前記液体収容室内のサンプル溶液を前記毛細管流路のサイフォン構造によって、前記サンプル溢流室に排出する、ことを特徴とする分析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−174952(P2011−174952A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134876(P2011−134876)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【分割の表示】特願2006−212486(P2006−212486)の分割
【原出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】