説明

分析計の入口への大気圧イオン化インターフェースのため添加剤導入

本発明は、少なくとも一つの添加剤を導入し、質量分析計又はイオン移動度分析計により少なくとも一つの注目物質を分析する方法に関する。分析対象の物質はAPIインターフェースを介して注入される。添加剤は、噴射ガスに添加することにより導入される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
技術分野
本発明はイオン分析計の分野に関する。詳細には、本発明は、質量分析計又はイオン移動度分析計の入力における、大気圧でのイオン化インターフェースのための添加剤の導入に関する。これらの添加剤は、注目物質の同定を容易にし、これらの生成物に対する検出器の感度を高めるように設計される。
【0002】
先行技術
ESI(エレクトロスプレーイオン化法)、APCI(大気圧化学イオン化法)、及びAPPI(大気圧光イオン化法)を含むAPI(大気圧イオン化法)のようなインターフェースの開発によって、質量分析法、及びイオン移動度分析法(IMS)により種々の物質を含む液体試料を分析することが可能になった。質量分析法に生じる基本的な問題は、分析器に、溶離液の蒸発に起因する全ての溶媒蒸気を吸収する機能が無いことである。この溶離液は、例えばクロマトグラフシステム(HPLC)、キャピラリー電気泳動システム、又は溶液の直接注入によって供給することができる。ESI、APCI、及びAPPIは、圧力を、ほぼ大気圧から、約10−9バールの圧力(質量分析計内部の圧力)に下げることができる。イオン移動度分析計は主として蒸気分析専用に使用される。しかしながら、最近の研究により、APIインターフェースを組み込むことによる、クロマトグラフカラム、キャピラリー電気泳動システム、又はインターフェースへの直接注入によって供給される液体試料の分析が開示されている。この件に関する詳細情報は、D.WITTMER等による「Electrospray Ionization Ion Mobility Spectrometry」(Analytical Chemistry 66、1994年、2348〜2355頁)、及びC.WU等による「Electrospray Ionization High−Resolution Ion Mobility Spectrometry−Mass Spectrometry」(Analytical Chemistry 70 1998年、4929〜4938頁)に記載されている。APIインターフェースは、温和な条件でのイオン化法と考えられる。
【0003】
エレクトロスプレーイオン化法(ESI)は、高密度の電界を用いてイオンを生成することができるプロセスである。クロマトグラフカラムから溶離液が流入するキャピラリー管の出口に高い電位を印加する。この電界にスプレーガス(例えば、窒素又は空気を使用することができる)を適用すると、表面で帯電した液滴からなる塊が形成され、圧力勾配及び電位勾配を同時に通過する。液滴のサイズは溶媒の蒸発によって小さくなり、クーロン反発力が次第に大きくなって、液滴の小液滴への分裂を引き起こす。これらの連続的な分裂によって、気相に脱溶媒化されたイオンが形成される。次に、これらのイオン化された種は分析器に導入される。
APCIインターフェースによるイオン化では、化学イオン化を利用する。溶離液は、スプレーガスが循環する石英チューブを流れる。補助ガス及び加熱ブロックを使用して、溶媒及び溶媒に含まれる分子を、高速且つ効率的に確実にガス状態に変化させる。分析器の接地に対して数キロボルトの電位を持つ金属ニードル(コロナニードル)をチューブの出力の近傍に配置する。溶媒蒸気はコロナ放電によりイオン化され、続いて気相の生成物と反応する。ポジティブモードでは、通常窒素がスプレーガスとして使用される。ネガティブモードでは、窒素を空気に置き換えることができる。
【0004】
APPIインターフェースの場合、イオン化は、APCIの場合のようなコロナ放電によってではなく、光子により行なわれる。これらの光子はUVランプによって生成され、気相で存在する分子のイオン化を可能にする。
APIインターフェースによるイオン化は、酸性化合物又は塩基性化合物、及び一部のみがイオン化可能な分子にも同様に適用できる。このイオン化技術では、多くの場合、溶離液及び/又は試料に含まれる生成物に応じた陽性又は陰性の付加体が観察される。これらの付加体は偶然(例えば、特にメタノールを溶離液として使用する場合のナトリウムイオンの存在に起因して)得られるか、或いは、感度を高めるため又は更に特殊な検出を行うために意図的に得られる。
【0005】
イオン化がポジティブモードで行なわれる(生成されるイオンが正に帯電する)場合、ナトリウム系、カリウム系、又はアンモニウム系の生成物、或いは他の生成物(酸類など)を添加することにより付加体を形成する。イオン化がネガティブモードで行なわれる場合、有機溶媒(クロロホルム、ジクロロメタンなど)又は塩化物塩(塩化アンモニウム、塩化ナトリウムなど)、或いは酢酸塩(酢酸アンモニウムなど)が使用される。しかしながら、揮発性化合物を使用して、器具(イオン化チャンバ、質量分析計及びイオン移動度分析計)におけるイオン化の消滅、及び塵埃の堆積に起因する感度の低下を回避することが好ましい。
多くの場合、付加体は、一部のみがイオン化される化合物と、多数のイオンを生成する化合物とについて感度を高める(従って、定量的分析の性能を制限する)ため、ポジティブモード又はネガティブモードで使用される。
【0006】
S.GAO等による論文「Sensitivity Enhancement in Liquid Chromatography/Atmospheric Pressure Ionization Mass Spectrometry Using Derivatization and Mobile Phase Additives」(Journal of Chromatography B、Vol.825、Number 2、25 2005年10月、98〜110頁)は、クロマトグラフィーにおいて移動相で使用することにより、HPLC−MSに対する感度を高めることができる主要添加剤について記載している。添加剤は、検出対象のイオンの性質(陽イオン又は陰イオン)に応じて変化する。従って、塩基性化合物(例えば、アミン類)は、陽イオン中で検出される付加体を形成する酢酸(pH3〜4)、ギ酸(pH2〜3)、及びトリフルオロ酢酸(pH1〜2)を使用して分析することができる。カルボン酸基を持つ化合物(例えば、カルボン酸類)は、陰性にイオン化された付加体を形成する水酸化アンモニウムを使用することにより分析することができる。アルカリ塩又は他の金属塩類(Na、K、Liなど)を使用して、陽性の付加体(例えば、ニトラミン、フェノール)を形成できる他の生成物を分析することができる。Cl、Br、F、RCOO、CNなどを使用して、陰性の付加体を形成することができる。
【0007】
質量分析法に付加体を使用して、検出精度を向上させ、フラーレン類(G.KHAIRALLAH等による「Cyano Adduct Anions of Higher Fullerenes: Electrospray Mass Spectrometric Studies」(International Journal of Mass Spectrometry 194 2000年、 115〜120頁参照)又はポリ塩化パラフィン(Z.ZENCAK等による「Analysis of Chlorinated Paraffins by Chloride Enhanced APCI−MS」(Organohalogen Compounds、66 2004年、 310〜314頁参照)、或いはフェノール類(Y.CAI等による「Stabilization of Anionic Adducts in Negative Ion Electrospray Mass Spectrometry」(Analytical Chemistry、74 2002年、985〜991頁参照)、及び糖類(Y.CAI等による「Evaluation of the Role of Multiple Hydrogen Bonding in Offering Stability to Negative Ion Adducts in Electrospray Mass Spectrometry」(Journal of the American Society for Mass Spectrometry、13 2002年、1360〜1369頁参照)などの場合の構造上の情報を取得する。
【0008】
糖類の場合、J.ZHU等は、論文「Formation and Decomposition of Chloride Adduct Ions、[M+Cl]、 in Negative Ion Electrospray Ionization Mass Spectrometry」(Journal of the American Society for Mass Spectrometry、11 2000年、932〜941頁)において、種々の単糖類及びオリゴ糖類を含む試料の調製中に塩化リチウムを導入している。糖類に対する塩素イオンの親和性によって、エレクトロスプレー電源を備える質量分析計を使用して分析を行なっている間に圧倒的な数の[M+Cl]イオンが発生する。塩素付加体の形成と組み合わせて質量分析を行なうことにより、オリゴ糖類の構造を説明することができる。H.LIANG等は、論文「Sensitive and Selective LC/MS/MS Method for Determination of Endogenous Polyols in Human Nerve Tissues」(2004年、ASMS Conference、 Nashville、米国テネシー州、1〜9頁)において、糖類(果糖及びソルビトールなど)をHPLC/MS法及びHPLC/MS/MS法で検出及び同定するために塩化溶媒が有利であることを示している。H.LIANG等は、塩化生成物(ジクロロメチレン、クロロホルム、四塩化炭素、又は1−クロロブタンなど)の導入を、ポストカラムシステムにより行った場合と、移動相で行った場合とを比較している。ジクロロメタンを移動相に添加することによって、信号対雑音比が改善され、且つネガティブモードでAPCIインターフェースを使用したHPLC/MS/MS法による糖類の分析において、最大の再現性が実現されることが判明した。
【0009】
イオン移動度分析計は、主にガス試料の分析専用である。この件に関する詳細情報は、C.L.RHYKERD等による論文「Guide for the Selection of Commercial Explosive Detection Systems for Law Enforcement Applications」(NIJ Guide 100−99、米国司法省、National Institute of Justice、1999年)、及びY.YINON等による論文「Modern Method and Applications in Analysis of Explosives」(John WILEY & Sons、ISBN 0471965626、英国イーストボーン)から得ることができる。
【0010】
従って、ガス試料に含まれるエチレングリコールジニトラート(EGDN)の検出精度を高めるために、C.J.PROCTOR等は、微量のジクロロメタンを含む追加のガスをベクターガスに加えた。このシステムは、気相に含まれる化合物にのみ使用される(論文「Alternative Reagent Ions for Plasma Chromatography」(Analytical Chemistry、56(1984)、1794〜1797頁参照)。しかしながら、上述の最初の2つの論文の著者(D.WITTNER等、及びC.WU等)が指摘しているように、APIインターフェースをイオン移動度分析計に組み込んで、クロマトグラフカラム、キャピラリー電気泳動システム、又は直接導入システム(注入による)から供給できる液体試料を分析することができる。この場合、微量の添加剤を含むガスの追加は容易ではない。塩類(塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウムなど)が一般的に使用される。ニトラミン(HMX及びRDX)を含む液体試料を分析している間、G.R.ASBURY等は(論文「Analysis of Explosives Using Electrospray Ionization/Ion Mobility Spectrometry」(ESI/IMS)(Talanta 50 2000年、1291〜1298頁参照)、塩化ナトリウムを試料に加えて[M+Cl]イオンの形成を可能にした。上述のように、これらの付加体を使用してイオン移動度分析法による検出精度を高めることができた。提示された検出限界は45pg及び21pgにそれぞれ等しかった。塩化ナトリウムによって塵埃の堆積、及び分析計の腐食が生じる可能性が非常に高い。
【0011】
爆発物に対するESI−IMSの感度を高めるため、M.TAM等は(論文「Secondary Electrospray Ionization−Ion Mobility Spectrometry for Explosive Vapor Detection」(Analytical Chemistry、76(2004)、2741〜2747参照)、エレクトロスプレー2次イオン化(SESI)法を開発して不揮発性の添加剤を使用可能にし、これらの添加剤をエレクトロスプレーイオン源に注入される溶離液に加えて、付加体[M+Cl]を形成した。追加のガスを使用して既に蒸発させた試料をエレクトロスプレーイオン源ではなく、イオン移動度分析計の脱溶媒ゾーンに導入する。水性試料に含まれるRDXに対する感度が、ESI−IMSによる分析と比較して若干高くなる。質量分析計をESI−IMSと組み合わせて、検出イオンの質量に関する情報を取得することもできる。この件に関する更なる情報は、2番目の論文(C.WU等)、及びB.H.CLOWERS等による論文「Mass Analysis of Mobility−Selected Ion Populations Using Dual Gate、Ion Mobility、 Quadrupole Ion Trap Mass Spectrometry」(Analytical Chemistry、77 2005年、5877〜5885頁)に記載されている。
【0012】
しかしながら、これらの添加剤は、質量分析計及びイオン移動度分析計のイオン化チャンバにおけるバックグランドノイズの増大、イオン化の消滅、及び塵埃の堆積のような現象を回避するために、低い濃度でしか添加できないことに留意されたい(N.B.CECH等による「Practical Implications of some Recent Studies in Electrospray Ionization Fundamentals」(Mass Spectrometry Reviews 20 2001年、362〜387頁参照)。更に、クロマトグラフシステムの場合、機器(カラム、脱ガス装置、配管)が塩類によって著しく汚染される。この件に関する詳細情報は、S.KROMIDASによる論文「More Practical Problem Solving in HPLC」(Wiley−VCH、ISBN 3527311130、2005年)に記載されている。別の構成として、複数の添加剤を、クロマトグラフで分離する前に試料に直接添加する。これらの添加剤が試料を汚染し、誤差及び希釈の原因と成り得るという事実を別にして、これら添加剤は、通常クロマトグラフカラムによって選択されず、且つ直ぐに溶出する。その結果、イオン化チャンバの雰囲気中の添加剤濃度は一定にならず、従って、クロマトグラフカラムによって最も頻繁に選択される注目化合物に関する感度及び再現性が大幅に低下し得る。この場合、形成される付加体は最適ではない。理想的には、イオン化チャンバに導入される溶離液を、時間及び添加剤濃度に関して制御することにより、親和性の高い溶離液及び添加剤の混合物を得る必要がある。従って、ポストカラムシステムを使用できるが、これらのプロセスによって普通、溶出帯域が増大し、試料が希釈される。
【0013】
Z.ZENCAK等は、塩素付加体を使用してポリ塩化n−アルカンの混合物の分析の選択性及び感度を高めた。これらの分析は、CG−MS(Z.ZENCAK等による「Dichloromethane−Enhanced Negative Ion Chemical Ionization for the Determination of Polychlorinated n−Alkanes」(Analytical Chemistry、75 2003年、2487〜2492頁)、及びHPLC−MS(Z.ZENCAK等による「Chrolide−Enhanced Atmospheric Pressure Chemical Ionization Mass Spectrometry of Polychlorinated n−Alkanes」(Rapid Communications in Mass Spectrometry、18 2004年、2235〜2240頁)によって行なった。CG−MSによる分析の間、化学イオン化法を使用してイオンを生成し、ジクロロメタンを塩素源として使用する(メタン/ジクロロメタン混合物の使用)。このガスは、メタンと、既にガス状になっているジクロロメタンとを混合することにより得られる。次に、ティーを使用してガス混合物をトランスファーラインに導入する。バルブ系は、添加されるジクロロメタンの圧力を制御する。バルブ系は、質量分析計に注入される空気をこのトランスファーラインを通るように制限するポンプ系に接続される。HPLC−MSによる分析の間、著者らはクロロホルムを使用し、クロマトグラフによる分離を行なう前、又はクロマトグラフによる分離を行なった後で且つポストカラムシステムを使用して溶離液を質量分析計に導入する前に、移動相に直接クロロホルムを導入した。著者らは、質量分析計のイオン化チャンバに供給するために使用されるガスに添加剤を添加する可能性については全く述べていない。明らかに、著者らは、HPLC−MSによる分析にGC−MS分析システムを適合させることを着想しておらず、クロロホルムを移動相に直接添加するか、又はポストカラムシステムを用いて添加する手法を選択している。
【0014】
爆発物の検出精度を高めるために、塩素付加体が使用されることが多い。従って、C.S.EVANS等は(「A Rapid and Efficient Mass Spectrometric Method for the Analysis of Explosives」(Rapid Communications in Mass Spectrometry、16 2002年、1883〜1891頁)、ジクロロメタンをイオン化チャンバに導入し、ジクロロメタン蒸気を含む追加ガスをAPCIイオン源から注入することにより爆発物の検出精度を高めるシステムを使用した。明らかに、ガス中のジクロロメタンの濃度は制御することができず、制御することができるのは、追加ガス流だけである。質量分析計及びAPCIインターフェースをネガティブモードで使用する場合、10〜2.5ngで量が変化するRDXを含む1μLの容積の溶液を直接注入することにより、5mg/Lの検出可能濃度に対応する5ngの機器の検出限界を決定することができる。このシステムは、ESIインターフェースを使用するイオン化には使用されていない。更に、付加体は、帯電した電荷が分離する現象が生じる前に溶液中に形成されるので(N.B.CECH等による論文を参照)、添加剤を注目する生成物と高い親和性で混合することにより、最大の収率で付加体を製造することが好ましい。
【0015】
これらの種々の研究を参照すると、付加体の形成は多くの利点(同定、感度の向上など)をもたらすが、付加体の導入に使用される種々の方法によって多くの不利益(バックグランドノイズの増大、イオン化抑制現象、イオン化チャンバ、質量分析計、又はイオン移動度分析計内部での塵埃の堆積、HPLCの場合のクロマトグラフシステムの汚染など)がもたらされることが判明した。
【0016】
発明の概要
上述の問題を解決するために、API型イオン化チャンバ(ESI、APCI、又はAPPI)の中で、スプレーガスに、正確に制御された濃度且つ正確に制御された時間に添加剤を添加することが提案される。
本発明の目的は、正確な容量の添加剤をスプレーガスに直接注入することにより、最適条件下での付加体の形成を容易にすることである。従って、添加剤をスプレーガス中で蒸発させることにより、溶離液に含まれる注目生成物と添加剤との親和性を高める。添加剤は、試料を希釈することなく添加される。更に、試料を処理する必要が全くなく、これによって試料の操作を回避し、汚染の危険を小さくすることができる。システムは簡単な構造を有し、APCIイオン源又はAPPIイオン源、及びESIイオン源と等しく良好に作動するので、質量分析計、又はイオン移動度分析計に、装置を変更する必要なく使用することができる。このシステムを使用して陽イオン及び陰イオンを検出することができる。必要なのは、選択される検出モードに適合する添加剤を見付け出すことだけである。しかしながら、揮発性又はガス状のイオン化促進剤を使用する必要がある(クロロホルム、ジクロロメタン、ギ酸、アセトニトリルなど)。分離システム(HPLC又は電気泳動法)を使用して生成物の混合物の分析を行なう場合、添加剤の添加を経時的に制御することにより、注目する生成物がイオン化される瞬間にスプレーガスに添加剤を添加することが可能になるので、他の化合物のイオン化が抑制されることがない。濃度が制御された添加剤を添加することにより、最大信号を取得するために必要な量のみを添加することができる。複数の添加剤を同時に又は交互に導入することもできる。
【0017】
本発明の第1の目的は、質量分析計又はイオン移動度分析計を使用して少なくとも一つの注目物質を分析するために少なくとも一つの添加剤を導入する方法を提供することであり、本方法では、分析対象の物質は溶媒によって搬送され、大気圧イオン化インターフェースを介して分析装置の分析器に注入され、これにはスプレーガスも導入され、添加剤は、イオン化された物質により付加体を形成するように設計された化合物である。本方法は、添加剤の導入が、イオン化インターフェースに導入される前のスプレーガスに添加されることにより行なわれることを特徴とする。
【0018】
複数の注目物質は混合物の形態とすることができる。
添加剤は、最適条件下での付加体の形成を促進するように決定される濃度でスプレーガスに添加することができる。
添加剤は気体又は液体の形態とすることができる。
少なくとも2つの添加剤を同時に又は次々に導入することができる。
【0019】
本発明の第2の目的は、質量分析計又はイオン移動度分析計によって少なくとも一つの注目物質を分析するアセンブリを提供することであり、本アセンブリは、溶媒中を搬送される分析対象物質を導入する手段を含む大気圧イオン化インターフェースを備え、当該インターフェースは更にスプレーガスを導入する手段を含み、本アセンブリは、少なくとも一つの添加剤を導入することにより、イオン化された物質により付加体を形成する手段を更に備え、前記添加剤をスプレーガスに添加する手段と、結果として得られる混合物をスプレーガス導入手段まで搬送する手段とを備えることを特徴とする。
【0020】
添加手段を含むシステムは、最適条件下での付加体の形成を促進するように決定された濃度で添加剤をスプレーガスに添加することができるシステムとすることができる。
添加手段は、スプレーガスを供給する手段に接続される第1入力と、添加剤供給手段に接続される第2入力と、スプレーガス導入手段の位置まで混合物を搬送する手段に接続される出力とを有するティーを含むことができる。添加剤供給手段は、シリンジプランジャーによって作動する少なくとも一つのシリンジを含むことができる。添加剤供給手段は、更に、一又は複数の添加剤を収容する容器と、当該添加剤を一定の所定流量で、且つ1〜数バールの間で可変の圧力で、圧力下で循環するスプレーガスを供給する手段に接続される添加手段に導入するポンプとを含むことができる。
【0021】
添付図面を参照し、非制限的な一実施例として提示される以下の説明により、本発明に対する理解を深めることができ、また他の利点及び特定の特徴が明らかになる。
【実施例】
【0022】
本発明によれば、一又は複数の添加剤をスプレーガスに添加する。これにより、確実に添加剤と分析対象の化合物とが高い親和性で結合する。シリンジプランジャー又は添加剤を導入するために使用されるポンプからの流れを調整することにより直接導入される添加剤の量を制御することもできる。
添加する添加剤は時間的に制御することができ、この添加剤は、添加剤が必要なときのみ、手動制御により、又は自動装置を使用して(連続モード又は不連続モード)注入することができる。複数の添加剤を同時に又は交互に注入することもできる。
【0023】
図1は、分析装置の分析器の前面に配置された、本発明による非自動エレクトロスプレーイオン化インターフェースを備えるアセンブリを示す。
本アセンブリは、エレクトロスプレーノズル1を備え、このノズルの吐出口2はイオン化チャンバ3内で開口している。キャピラリー4はノズル1内に、ノズルの主軸に沿って配置される。キャピラリーは、分析対象の試料を含む溶離液を、ノズルの出口まで搬送する。流体接続部5は、キャピラリー4とノズル1の内壁の間の環状空間6へのアクセスを可能にする。チューブ7は、接続部5をティー8の出口に接続する。ティーの入口の一方は、スプレーガスシリンダ10に接続されるパイプ9に接続される。ティーの他方の入口は、シリンジプランジャー13に固定されるシリンジ12のニードルに接続されるパイプ11に接続される。
【0024】
イオン化チャンバ3は、分析器の入力14に対向するように配置され、ノズル1は分析器の入力に位置合わせされる。排出口15は、分析器の入力とイオン化チャンバの間に配置され、分析器に不要な生成物をポンプで排出する。
添加剤はシリンジ12に収容される。ノズル1を、分析器入力に近接配置される対向電極に対して高い電位にする。次に、キャピラリー4を通って送り込まれる溶離液がイオン化チャンバ3に向かって噴射され、溶離液はこのチャンバ内で、ガス状でスプレーガスによって搬送される添加剤と高い親和性で結合する。形成されたイオンは、エレクトロスプレーノズルと分析器の入力の間の電位差によって加速され、溶媒の正確な抽出を可能にする乾燥ガスの作用を受ける。
【0025】
図2は、分析装置の分析器の前面に配置された、本発明による非自動APCIイオン化インターフェースを備えるアセンブリを示す。
本アセンブリは、APCIノズル21を備え、このノズルの吐出口22はイオン化チャンバ23内に開口している。キャピラリー24はノズル21内に、ノズルの主軸に沿って配置される。キャピラリーは、分析対象の試料を含む溶離液をノズルの出口まで搬送する。第1流体接続部25は、キャピラリー24と、キャピラリー24を取り囲むチューブ41の内壁の間の環状空間26へのアクセスを可能にする。チューブ27は、接続部25をティー28の出口に接続する。ティーの入口の一方は、スプレーガスシリンダ30に接続されるパイプ29に接続される。ティーの他方の入口は、シリンジプランジャー33に固定されるシリンジ32のニードルに接続されるパイプ31に接続される。
【0026】
第2流体接続部45は、チューブ41とノズル21の内壁の間の環状空間へのアクセスを可能にする。パイプ49は、補助ガス、例えば窒素又は空気を収容するシリンダ50に接続部45を接続する。
イオン化チャンバ23は、分析器の入力34に対向するように配置され、ノズル21は分析器入力に位置合わせされる。排出口35が分析器の入力とイオン化チャンバの間に配置され、分析器に不要な生成物をポンプで排出する。
【0027】
シリンダ50から供給される補助ガスは、キャピラリー24を通してイオン化チャンバ23に導入される溶離液が流入するときに添加される。コロナニードル42をノズルの吐出口に配置する。ニードル42は、コロナ放電によって分子をイオン化する。イオンは乾燥ガスの作用によって脱溶媒化され、分析器に導入される。スプレーガスに添加剤を導入するシステムは、図1に示す事例と同じである。
【0028】
図3A及び3Bは、本発明によるAPIインターフェースを備える自動アセンブリの2つの動作状態を示している。これらの図は、添加剤導入システムのみを示している。一括して参照番号100で示されるインターフェースアセンブリの残りの部分は、ESIインターフェース(図1参照)又はAPCIインターフェース(図2参照)を含むことができる。
システムはティー108を含み、ティーの出口はチューブ107を介してイオン化インターフェースのノズルに接続される。ティー108の入口の一方は、パイプ109を介してスプレーガスシリンダ110に接続される。ティー108の他方の入口は、パイプ111を介してティー140の出口に接続される。ティー140は2つの入口を有し、各入口が1つの添加剤、すなわち容器120に収容される第1添加剤、及び容器220に収容される第2添加剤を導入できる。
【0029】
第1添加剤に対応する第1添加剤配管はソレノイドバルブ121を含み、当該バルブによりパイプ122の第1端部はパイプ123の第1端部と流体を連通させる(ポジションA)か、又はパイプ124の第1端部と流体を連通させる(ポジションB)。パイプ123の第2端部はティー140の第1入口に接続される。パイプ124の第2端部は、容器120に収容される添加剤に浸漬される。パイプ122の第2端部は、ポンプ113のシリンジ112に接続される。
第2添加剤に対応する第2添加剤配管はソレノイドバルブ221を含み、当該バルブによりパイプ222の第1端部はパイプ224の第1端部と流体を連通させる(ポジションA)か、又はパイプ223の第1端部と流体を連通させる(ポジションB)。パイプ223の第2端部はティー140の第2入口に接続される。チューブ224の第2端部は、容器220に収容される添加剤に浸漬される。パイプ222の第2端部は、ポンプ213のシリンジ212に接続される。
【0030】
ソレノイドバルブ121及び221がポジションAに位置するとき、ポンプ213は添加剤を容器220から吸引し、一方ポンプ113はティー140及び108を通してシリンジ112に収容された添加剤をスプレーガスに導入する。システムに分離部品を使用する場合、注入システムに接続されるタイマー(図3A及び3Bには示さず)を使用して、分析の開始時又は所定の遅延時間が経過した後にスプレーガスへの添加剤の混合を開始し、当該混合を必要な時点で停止する。シリンジ112に収容された添加剤をスプレーシステムにティー140及び108を通して添加する場合、ソレノイドバルブ221及び121をポジションBに切り替える(図3B参照)。すると、ポンプ212はシリンジ212に収容された添加剤をスプレーガスに混合し、一方ポンプ113は容器120から添加剤を吸引する。
従って、このシステムは、時間的に且つ濃度が制御された状態で連続的に動作することができ、当該システムを使用して一つ以上の添加剤を(容器120及び220に導入される添加剤に応じて)同時に又は交互に導入することができる。複数の添加剤を同時に添加することは、特定の付加体を形成することにより、又は単一のイオン種の形成を容易にすることにより、異なる物質の検出精度を向上させることができる。しかしながら、添加剤を交互に導入することは、特定の且つ異なる添加剤を必要とし且つ同時に導入されると阻害現象を引き起こすような手順で溶出された物質の検出精度を高めることができる。
【0031】
例えば、本発明を、HPLC−MS法を使用するニトラミン(HMX及びRDX)の検出及び同定に適用した。これら2つの化合物は、或るクラスの有機爆発物の一部を構成する。
APIインターフェースを用いたネガティブモードでの質量分析法と組み合わせた液体クロマトグラフィーを利用してニトラミンを分析する(上掲のY.YINON等による論文を参照)。ネガティブモードは、これらの化合物には電子が不足しているので最も適している。RDX及びHMXは熱不安定性化合物である。RDXは230℃から分解し始め、HMXは約280℃から分解し始めることが知られている。この主題に関する詳細な情報は、A.GAPEEV等による「Liquid Chromatography/Mass Spectrometric Analysis of Explosives:RDX Adduct Ions」(Rapid Communications in Mass Spectrometry、17 2003年、943〜948頁)を参照されたい。これらの生成物は劣化中に添加剤が無い状態で窒素化合物を放出し、これによって複数の付加体が形成される。
【0032】
劣化生成物の量によって変化するこの現象は、定量分析中に問題を生じさせる。更に、対応する信号は非常に強いものではなく、これによって検出限界が大きくなる(数十μg/L)。
ニトラミンの塩素との付加体を形成する性質を利用して、付加体の検出精度を高めた(再度Y.YINON等による論文を参照)。既知の一定量の塩素源を加えることにより、NOの存在下で形成される付加体を除去して塩素付加体によってのみ置き換えることにより、ニトラミンに対する検出器の感度を有意に高めることができる。
【0033】
これらの塩素付加体の他の利点は、これらの付加体が同位体の痕跡を残すことである。塩素同位体(35Cl及び37Cl)の相対的な天然同位体存在量によって、[M+35Cl]イオン及び[M+37Cl]イオンを検出することにより化合物の存在を確認することができる。
従って、塩素付加体の存在下又は不在下でのHMX及びRDXに対応する質量スペクトル線は、ESI−MS及びACPI−MSによるHMX及びRDXの分析中に検出されるイオンをまとめた表1に列挙されるイオンから構成される。

【0034】
イオン移動度分析計がAPIイオン源を備える場合、添加剤(ジクロロメタンなど)の存在を利用して、安定な且つ高密度の[RDX+X]イオンを取得し、よって検出限界を小さくすることができる。本発明は、APIタイプのイオン源を備えるこの種の検出器に完全に使用可能である。同じことが、質量分析計を、APIタイプのイオン源を備えるイオン移動度分析計に接続する場合に言える。検出感度、及び使い易さが向上することは明らかである。
【0035】
実施例1:エレクトロスプレーインターフェースを備えたHPLC−MS装置によるHMX及びRDXの検出と同定
使用するクロマトグラフシステムは、直列に作動し、メタノール及び超純水からなる2種混合物を送り出す2つのポンプと、脱ガス装置(移動相に溶解するガスを除去するための)と、自動試料交換装置と、クロマトグラフカラムと、自動注入ループ管とから構成される。このシステムは、エレクトロスプレーインターフェースを備えた「トリプル4重極」タイプの質量分析計(VARIAN製の1200Lタイプ)に接続される。検出はネガティブ検出モードで行なわれ、[M+35Cl]イオンのみが分析される。次に、合成空気(窒素79%及び酸素21%)をスプレーガスとして使用する。窒素を使用することもできる。
【0036】
表2は、ESIインターフェースを備えたHPLC−MS装置によるHMX及びRDXの検出に使用されるクロマトグラフ条件を含む。

【0037】
クロロホルムを塩素化添加剤として選択してニトラミンの検出を行なった。クロロホルムは、シリンジプランジャーに固定された1mLのシリンジに導入した。操作は手動で開始した。流量は、最小量の塩素化溶媒を消費しながら最大信号が得られるように調整した。10μg/LのHMX及びRDXに等しい濃度を持つ溶液を調製し、最適流量を求めた。この溶液をクロロホルムと同時に、注入量を増やしながらスプレーガス中に注入した。検出器の応答は、注入量が増大するとともに安定状態に達するまで増大した。最適なクロロホルムの流量は10μL/分であることが判明した。検出器の応答は、注入量に小さなばらつきが発生する場合もこの流量で一定になる。エレクトロスプレーインターフェースを用いるこれら全ての分析において、スプレーガスに含まれるクロロホルムの流量は10μL/分に固定した。
【0038】
図4は、10μg/LのHMX及びRDXをクロロホルム導入量を変化させながらスプレーガスに注入した場合の、クロマトグラフ信号の変化を示す。横軸は、μL/分の単位で表わされるクロロホルム流量Dを表わし、縦軸は、hits.sの単位で表わされる該当するピークの面積Aを表わす。
信号の安定性を、クロロホルムの存在下で検証した。これは、10μg/LのHMX及びRDXを含む水溶液を調製して行われた。この溶液は、アセトニトリル中1mg/mLに等しい濃度を持つHMX及びRDXの市販の標準溶液を開始溶液から作製した。超純水で希釈することにより、得られた溶液は、各ニトラミンについて10μg/Lの濃度を有する。この溶液を数回に亘って注入した。これらの種々の注入の間に、本発明に従ってクロロホルムをスプレーガスに混合した。異なる注入の間の検出器信号は安定していた(標準偏差に対し5%未満)。[HMX−H]、[HMX+NO−H]、[HMX+NNO−H]、[HMX+35Cl]、及び[HMX+37Cl]に対応するイオン強度を測定することにより、[HMX+Cl]イオンのみが検出されることが判明した。同時に、[RDX−H]、[RDX]、[RDX+NO−H]、[RDX+NO、[RDX+35Cl]、及び[RDX+37Cl]イオンに対応するイオン強度を測定することにより、[RDX+Cl]付加体のみが検出されることが判明した。
次に、2、5、及び10μg/Lに等しい濃度を持つ標準液を調製し、[HMX+35Cl]及び[RDX+35Cl]イオンを分析することにより各ニトラミンの検出限界を求めた。
【0039】
図5は、HMX(R=0.9936)及びRDX(R=0.9954)の較正直線を表わすグラフを示す。
得られる検出限界は、HMXの場合は0.02μg/Lに、RDXの場合は0.02μg/Lに等しい。使用する実験手順を考慮に入れると、検出可能な材料の量は、HMXの場合は2pgであり、RDXの場合は2pgである。
【0040】
実施例2:APCIインターフェースを備えたHPLC−MS装置によるHMX及びRDXの検出と同定
この実施例では、クロマトグラフシステムは、使用するクロマトグラフカラムを除いて実施例1において使用したものと全く同じである。APCIインターフェースの場合、最適流量が0.7〜1mL.min−1(mL/分)であるのに対し、エレクトロスプレーインターフェースを用いる場合の最適流量は100〜300μL.min−1(μL/分)で変化する。これらの流量の差は、エレクトロスプレーインターフェースの場合のクロマトグラフカラムの内径が、APCIインターフェースに使用されるカラムの内径よりも通常小さいことを意味する。本実施例では、APCIインターフェースを用いる場合に内径が4.6mmのカラムを選択し、エレクトロスプレーインターフェースを用いる場合に内径が2mmのカラムを選択した。前実施例と同じ方法で、ネガティブ検出モードで検出を行い、[M+35Cl]イオンのみを分析した。合成空気(窒素79%及び酸素21%)をスプレーガスとして使用し、乾燥ガスとして窒素を使用した。
【0041】
表3は、APCIインターフェースを備えたHPLC−MS装置によるHMX及びRDXの検出に使用されるクロマトグラフ条件を含む。

【0042】
本実施例でも、クロロホルムを塩素化添加剤として使用してニトラミンの検出を行なった。クロロホルムは、シリンジプランジャーに固定された1mLのシリンジに添加した。本実施例でも操作は手動で開始した。流量は、最小量の塩素化溶媒を消費しながら最大信号が得られるように調整した。10μg/LのHMX及びRDXの濃度を持つ溶液を調製して最適流量を求めた。
【0043】
図6は、APCIインターフェースによりクロロホルム導入量を変化させながら10μg/LのHMX及びRDXをスプレーガスに注入した場合の、クロマトグラフ信号の変化を示す。
この溶液は、流量を増やしながら同時にクロロホルムをスプレーガスに導入することにより注入された。検出器の応答は、クロロホルムの注入量が増大するとともに、安定状態に達するまで増大した。この場合、最適なクロロホルム流量は10μL/分であることが判明した。この流量では、検出器の応答は、注入量に小さなばらつきが発生する場合も一定であった。
APCIインターフェースを用いるこれら全ての分析において、スプレーガス中のクロロホルムの流量は10μL/分に固定された。次に、2、5、及び10μg/Lに等しい濃度を持つ標準液を調製し、[HMX+35Cl]及び[RDX+35Cl]イオンを分析することにより各ニトラミンの検出限界を求めた。
【0044】
図7は、HMX(R=0.9988)及びRDX(R=0.9996)に対応する較正直線を表わすグラフを示している。
得られた検出限界は、HMXの場合は0.17μg/Lに、RDXの場合は0.16μg/Lに等しい。使用する実験手順(100μLの注入ループ)を考慮に入れると、検出可能な材料の量は、HMXの場合は17pgであり、RDXの場合は16pgである。
【0045】
本発明の用途
本発明は、種々の化合物の検出及び同定を大幅に改善することができる。つまり、正確な容積の添加剤をスプレーガス中に直接注入し、ガス中で蒸発させることができるので、注目する生成物と添加剤が高い親和性で混合され、これにより最適条件下での付加体の形成が可能になる。
ポストカラムシステムを用いる場合とは異なり、試料を希釈することなく添加剤をスプレーガスに添加することができた。
【0046】
本システムは、APCIイオン源及びESIイオン源に、装置を変更する必要なく同じように適用することができる(APIインターフェースを備えた全てのタイプの質量分析計及びイオン移動度分析計に当てはまる)。従って、システムを完全に自動化し、プログラムすることができる。
このシステムを使用して、陽イオン及び陰イオンを検出することができる。必要なのは、選択される検出モードに適合する添加剤を見付け出すことだけである。しかしながら、イオン性及び揮発性製品を使用する必要がある(クロロホルム、ジクロロメタン、ギ酸、アセトニトリルなど)。
【0047】
前記生成物の分離を可能にするシステム(HPLC、電気泳動法など)を使用して生成物の混合物を分析する間に、添加される添加剤の量を時間的に制御することにより、注目する生成物のイオン化と同時に添加剤をスプレーガスに導入することが可能になり、これによって他の化合物のイオン化の抑制を回避することができる。添加剤を移動相に導入する場合に同じ処理を実行することはできない。
濃度が制御された添加剤を添加することにより、最大信号を取得するために必要な量のみを導入することができる。
【0048】
塩類を溶離液に添加して付加体を形成すると、多くの場合イオン化抑制現象が生じ、塵埃が分析計(イオン化チャンバ及び質量分析計)に堆積する。これらの塩は他の化合物のイオン化を阻止する可能性もある。更に、クロマトグラフシステムの場合、これらの塩によって設備(ポンプ、脱ガス装置、及びカラム)が非常に汚染される。本発明はこのような不利な面を排除できる。
本発明はまた、種々の物質の分析に使用することができ、これらの物質には、例えば農薬、糖類、トリアシルグリセロール類、脂肪族系酸及び芳香族カルボン酸、アミド類、アミノ酸、芳香族アミン類、フェノール類、フラーレン類、ポリ塩化アルカン類、及び非イオン界面活性剤が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】分析装置の分析器の前面に配置される、本発明による非自動エレクトロスプレーイオン化インターフェースを備えるアセンブリを示す。
【図2】分析装置の分析器の前面に配置される、本発明による非自動APCIイオン化インターフェースアセンブリを示す。
【図3】A及びBは、本発明による自動APIインターフェースを備えるアセンブリの2つの動作状態を示す。
【図4】エレクトロスプレーインターフェースを用いて、クロロホルム導入量を様々に変化させながら、スプレーガスに10μg/LのHMX及びRDXを注入する場合の、クロマトグラフ信号の変化を示す。
【図5】HMX及びRDXの較正直線を示すグラフである。
【図6】APCIインターフェースを用いて、クロロホルム導入量を様々に変化させながら、スプレーガスに10μg/LのHMX及びRDXを注入する場合の、クロマトグラフ信号の変化を示す。
【図7】HMX及びRDXの較正直線を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析計又はイオン移動度分析計を使用して少なくとも一つの注目物質を分析するために少なくとも一つの添加剤を導入する方法であって、分析対象の物質が、溶媒中を搬送され、大気圧でのイオン化インターフェースを介して分析装置の分析器に注入されて、このインターフェースにはスプレーガスも導入され、添加剤は、イオン化された物質により付加体を形成するように設計された化合物であり、添加剤の導入が、イオン化インターフェースに導入する前のスプレーガスに添加することにより行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
最適条件下での付加体の形成を促進するように決定された濃度で添加剤をスプレーガスに添加することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
添加剤がガス又は液体の形態であることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも2つの添加剤を同時に導入することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2つの添加剤を次々に導入することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
質量分析計又はイオン移動度分析計によって少なくとも一つの注目物質を分析するためのアセンブリであって、大気圧でのイオン化インターフェース(1、21)を備え、イオン化インターフェースが、溶媒中を搬送される分析対象物質を導入する手段(4、24)を含み、インターフェースが更に、スプレーガスを導入する手段(5、25)を含み、アセンブリが更に、少なくとも一つの添加剤を導入して、イオン化された物質により付加体を形成する手段を備えており、アセンブリが、前記添加剤をスプレーガスに添加する手段(8、28)を含むシステムと、結果として得られる混合物をスプレーガスの導入手段まで搬送する手段(7、27)とを備えることを特徴とする、アセンブリ。
【請求項7】
添加手段を含むシステムが、最適条件下での付加体の形成を促進するように決定された濃度で添加剤をスプレーガスに添加することができるシステムであることを特徴とする、請求項6記載のアセンブリ。
【請求項8】
添加手段がティー(8、28)を含み、ティーが、スプレーガスを供給する手段(9、10;29、30)に接続される第1入力と、添加剤供給手段(11、12、13;31、32、33)に接続される第2入力と、混合物をスプレーガス導入手段(5、25)まで搬送する手段(7、27)に接続される出力とを有することを特徴とする、請求項6又は7記載のアセンブリ。
【請求項9】
添加剤供給手段が、シリンジプランジャー(13;33;113、213)によって作動される少なくとも一つのシリンジ(12;32;112、212)を備えることを特徴とする、請求項8記載のアセンブリ。
【請求項10】
添加剤供給手段が、ポンプ(113、213)によって作動される一つのシリンジ(112、212)を含むことを特徴とする、請求項8記載のアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−524036(P2009−524036A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550773(P2008−550773)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050553
【国際公開番号】WO2007/082941
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(502124444)コミッサリア タ レネルジー アトミーク (383)
【Fターム(参考)】