説明

分枝状オレフィン留分を含む炭化水素ブレンドの水素化による高オクタン価を持つ炭化水素ブレンドの製造方法

分枝状C8、C12およびC16オレフィン留分を含む炭化水素ブレンドの水素化による高オクタン価を持つ炭化水素ブレンドの製造方法であって、前記ブレンドをそのまま、または実質的に分枝状C8オレフィン留分を含む一方と実質的に分枝状C12およびC16オレフィン留分を含む他方との2つのストリームに分留して、単一の水素化ゾーンまたは2つの並置された水素化ゾーンへそれぞれ送り込むこと、また前記単一水素化ゾーンにより製造されたストリームの分留により得られた、あるいは実質的に分枝状C8オレフィン留分を含む前記分留ストリームが供給された前記水素化ゾーンにより得られた実質的に飽和C8炭化水素を含むストリームのみが、前記単一水素化ゾーンまたは実質的に分枝状C8オレフィン留分を含む前記分留ストリームが供給された前記水素化ゾーンへ少なくとも部分的に還流されること、並びに前記単一水素化ゾーンから製造されたストリームの分留により得られた、または前記水素化ゾーンから得られた高オクタン価を持つ炭化水素ブレンドが、実質的に分枝状C12およびC16オレフィン留分を含む分留ストリームにより供給されることを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソブテンを含む炭化水素留分の選択的二量化により任意に得られた分枝状C8、C12およびC16オレフィン留分を含む炭化水素ブレンドの水素化による高オクタン価を持つ炭化水素ブレンドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中の精油所は現在、「低環境負荷燃料」の製造(芳香族、オレフィン類、硫黄および低揮発物の内容物の低減を特徴とする)方法に取り組んでいる、すなわち、精油所自体の稼働に対する燃料の製造の影響を最少化することに努めている。
【0003】
MTBEおよびアルキル化製品は精油所の今後の需要を充足させるための最適の化合物であるが、MTBEの使用は不利な法的規制により現在は抑制されており、他方でアルキル化製品には適用上の制限がある。
【0004】
MTBEの低い生分解性および毒性の懸念からのMTBEに対する継続的な攻勢の結果として、この化合物はカリフォルニア及び米国の多くのほかの州における燃料(世界市場のおよそ50%)として禁止されている。今後の改質燃料中のMTBEの使用を(他のアルキルエーテル類の使用と共に)予想することが困難であるだけでなく、このエーテルを除去することは精油所にとって重大な問題を惹起するであろう。なぜならば、MTBEはその高オクタン価機能に加えて、環境にとって最も有害な製品(硫黄、芳香族、ベンゼンなど)の希釈作用も発揮するからである。
【0005】
アルキル化製品は疑いもなく改質燃料用として理想的な化合物であり、それらは高オクタン価と低揮発性を組み合わせると共にオレフィン類、芳香族および硫黄を全く含まないゆえに、今後の環境規則から想定されるあらゆる要件を充足することができる。
【0006】
アルキル化の別の利点は、それが例えばそれ自身を結合するイソブタンなどのイソパラフィン炭化水素を強酸により触媒された液相における高オクタン価の飽和C7-C9炭化水素を生じるオレフィン類(プロピレン、ブタン、ペンタンおよび関連ブレンド)との反応により活性化できることにある。
【0007】
しかし、アルキル化製品を現在利用できるよりもさらに増産することは、大型のアルキル化装置の建設が必要であろう。これは、その希少性のためであり、アルキル化製品が、現在市場に広範に利用可能である商品ではないが、それをつくる精油所において自家消費に使用されるガソリンの成分を形成するためである。
【0008】
これはアルキル化製品の大量使用に対する大きな制限を意味する、つまり、従来の方法において使用されてきた触媒(塩酸および硫酸)が新しい環境規制により使用できないからである。問題とされるのは、特に人口の多い地域における塩酸の強い特性が作用する方法、腐食性の強い硫酸による方法、さらに処分しにくい大量の酸泥の発生などである。
【0009】
固体酸触媒による代案的方法も開発されてはいるが、それらの商業的適用性の実証が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この問題に対処するためには、C3およびC4オレフィンの選択的二量化により得られるような純炭化水素製品に対する手段を講じるべきであろう。すなわち、それらはそのオクタン価特性(高いリサーチオクタン価(RON)およびモータオクタン価(MON)の双方)の結果として、現在の環境要件により適合できるガソリンを得るために極めて重要な組成物とみなされている。
【0011】
オリゴマー化(しばしばまちがって重合化とも呼ばれる)方法は、低沸点C3-C4オレフィンをいわゆる「ポリマー」ガソリンに転換するために1930年代から1940年代に精油所において広く使用された方法である。オリゴマー化される代表的なオレフィン類は、主に使用方法に応じて(C6)二量体またはやや高級なオリゴマーを生じるプロピレンと、主に(C8)二量体を生じるが常に相当量の高オリゴマー(C12+)を伴うイソブテンである。
【0012】
この方法は、高オクタン価(RONおよそ97)のみならず、製品の純オレフィン特性による高いセンシティビリティーを有するガソリンの製造をもたらす(該方法の詳細については、J.H.ゲイリー、G.E.ハントヴェルク著、「石油精製:テクノロジーとエコノミックス」第三版、M.Dekker, ニューヨーク(1994) 250を参照すること)。製品のオレフィン特性は該方法に対する明白な限界を示している。すなわち、これらのブレンドの水素化は必ず製品のオクタン価特性の顕著な低下を惹起するため、その活性が失われる。
【0013】
イソブテンのオリゴマー化に注目するならば、この反応は一般に固体(珪藻土など)に担持された燐酸、カチオン交換酸性樹脂、H2SO4または硫酸誘導体などの液酸、シリコアルミナ、混合酸化物、ゼオライト、フッ素化または塩素化アルミナなどの酸触媒により実施される。
【0014】
その産業的発展を阻害した二量化の主問題は、反応速度の制御におけるむずかしさである。反応器における温度制御の困難に加えて、これらの全触媒群の高活性のために、増大する鎖状構造に対するイソブテンの付加反応を制限して、その結果として二量体に対する高選択性を特徴とする高品質製品を得ることが事実上極めて困難である。
【0015】
二量化反応においては、実際にイソブテンの三量体(選択性 15-60%)および四量体(選択性 2-10%)などの重質オリゴマーの過度の割合が形成される。四量体はあまりに高沸点のために完全にガソリン留分外であり、そのためガソリンに対する収率のおける正味ロスを意味する。三量体(またはそれらの水素化誘導体)については、それらの濃度を大幅に低減すべきである。なぜならば、それらは改質ガソリンの最終沸点に関する今後の技術仕様(further specification)の限度での沸点(170-180°C)により特徴づけられるからである。
【0016】
より高い選択性を達成することにより品質の良い製品(二量体成分> 80-85質量%)を得るために、触媒の活性を緩和して反応速度を制御できる、異なる方法を用いることができる。
*含酸素化合物(三級アルコールおよび/またはアルキルエーテルおよび/または一級アルコール)は、管式および/または断熱式反応器を用いてチャージ中に供給されたイソブテンに対してサブ化学量論的分量(substoichiometric quantity)で使用できる(01/06/1995のIT-MI95/A001140、 15/05/1997のIT-MI97/A001129、 05/08/1999のIT-MI99/A001765)。
*三級アルコール(テルブチル・アルコールなど)は、管式および/または断熱式反応器を用いてチャージ中に供給されたイソブテンに対してサブ化学量論的分量で使用できる(27/05/1994のIT-MI94/A001089).
*代案的には、製品の分離後に得られた炭化水素ストリームの少なくとも一部と新規チャージを混合させることによりチャージを適切に改質して、イソブテン成分を最適化し(20質量%未満)、3以上の線状オレフィン/イソブテン比を用いることができる。この場合には温度上昇を制御できる管式または「沸点反応器」などの反応器を用いることが、高い選択性を得るための基本である(26/05/2000のIT-MI2000/A001166)。
【0017】
したがってこれらの方法を用いて、イソブテンの二量化およびイソブテン/n-ブテンの共二量化をオリゴマーに対して有利にすると共に、高温度により有利となる線状ブテンのオリゴマー化・重合化反応の開始を避けることができる。
【0018】
次に二量化製品は好ましくは水素化されて、高いオクタン価および低い選択性を有する完全飽和最終製品となる。説明のために、イソブテンの二量化により得られた製品のいくつかのオクタン価および関連沸点を下表に示す。
【表1】

オレフィンの水素化は、一般に2つの触媒群を用いて行われる。
*ニッケルベースの触媒(20-80質量%)
*貴金属ベースの触媒(Ptおよび/またはPd)、0.1-1質量%の金属成分上に担持される。
【0019】
両群に対して適用された操作条件は極めて類似している。しかし、ニッケル触媒の場合には、それらがオレフィン分解を促進する大きな傾向を有するゆえに、より高い水素/オレフィン比について配慮しなければならない。ニッケルベースの触媒は安価であるが、硫化物の存在により容易に害される。それらが許容できる最大硫黄量は、貴金属ベースの触媒により許容されるおよそ10 ppmに対して1 ppm である。したがって、使用すべき触媒タイプの選択は、水素化すべき特定チャージにより影響される。
【0020】
オレフィンの水素化については、広範な操作条件が適用できる。蒸気相および液相のいずれでも操作できるが、液相での操作条件が好ましい。反応器構造は断熱式固定床反応器、管式反応器、攪拌式反応器あるいはカラム式反応器から選択できるが、好ましい構造は1以上の触媒床(中間冷却により分離)から任意に構成できる断熱式反応器である。
【0021】
水素圧力は好ましくは5 MPa以下、より好ましくは1-3 MPaである。反応温度は、好ましくは30-200°Cの範囲である。オレフィン・ストリームの供給空間速度は好ましくは20 h-1、より好ましくは 0.2-5 h-1である。該反応から生じる熱は、一般に水素化生成物自身の一部を還流させてオレフィン・チャージを希釈する(飽和生成物/オレフィン量の比は15以下)ことにより制御される。
【0022】
製品中の残留オレフィン分量は、製品自身の使用量によって決まる。イソブテン(ガソリン成分として使用できる)の二量化から得られる下記の平均組成を有するブレンドの場合には、1%以下の残留オレフィン分量を許容可能とみなすことができる。
C8: 80-95質量%
C12: 5-20質量%
C16: 0.1-2質量%
【0023】
但し、上記組成を持つ留分の水素化は単純な操作ではなく、一連の要因を考慮しなければならない。
*水素化速度は鎖長さに反比例する。C8オレフィン二量体の水素化は、実際にC12オレフィンの水素化に必要な温度(100-200°C)に比べて、はるかに低い温度(100-140°C)で行われる。C16オレフィンの場合には、さらに高い温度が必要である。単一留分の中では、末端二重結合を持つオレフィンの水素化が最も容易である。したがって、反応温度はC12およびC16オレフィンの転換を最大化すべく選択しなければならない。いずれの場合も、これらのオレフィンを完全に除去するような条件下で操作することは容易でない。
*水素化反応は極度の発熱性であるため、断熱式反応器における温度上昇を制限するためにオレフィン・チャージは一般に水素化生成物により希釈される。
*最も普遍的な水素化触媒(ニッケルまたはパラジウムをベースとする)は、重質オレフィンおよび硫化物などの種々の有害物を受けることによって、失活する傾向がある。オレフィンの炭素原子数が多いほど、水素化速度が低下する、さらにこれらのオレフィンが触媒に付着してコークを形成することにより、触媒の活性が低下する場合が多い。他方で硫化物については、この種のチャージ中の硫黄の存在は実際的に不可避であるため(必ず1 ppm以上であり、FCCおよびコーキングからのチャージにおけるよりも高い)、ニッケル触媒は使用しにくく、貴金属ベースの触媒が好ましい。特に硫化物に富むチャージの場合には、例えばNi/Coおよび/またはNi/Moなどの水素処理反応において使用されるバイメタル触媒も考慮することができる。
【0024】
したがって、効率的な温度管理がこの種の方法の重要点である。反応器内の温度は、実際に重質オレフィンの水素化を速度的に維持するために実際に十分に高くなければならないが、同時にオレフィンの分解現象または触媒の劣化(金属の焼結)を惹起し得る過度の増加は回避しなければならない(反応の発熱性のため)。
【0025】
反応器内の温度制御は、一般にオレフィン・チャージを水素化生成物により希釈して(比率範囲は一般に0.5-20)行われるが、図1には従来の水素化の模式が示されている。
【0026】
例えば蒸気分解またはコーキングまたはFCC装置から、あるいはイソブタンの脱水素化から得られるイソブテンを含むストリーム(1)は反応器(R1)へ送られ、そこでイソブテンは選択的に二量体に転換される。
【0027】
前記反応器からの流出物(2)は分離カラム(C1)へ送られ、そこで基本的に非転換イソブテン、線状オレフィンおよび飽和C4製品(nブタンおよびイソブタン)を含むストリーム(3)が塔頂で除去されるが、二量体および高級オリゴマーからなるオレフィン・ストリーム(4)は底から除去されて、飽和生成物(5)および水素(6)と共に水素化反応器(R2)へ供給される。反応器からの流出物(7)は安定化カラム(C2)へ送られ、そこから非転換水素(8)が塔頂で回収されるが、水素化製品(9)は底で得られる。このストリーム(10)の一部はプラントから出るが、残りのストリームは反応器へ還流される。
【0028】
このプラント構成は、単一オレフィン類の水素化の場合(転換率99%以上)にはあてはまるが、イソブテンの二量化製品の場合のように、炭化水素鎖および極めて異なる反応速度を有するオレフィンがある場合には有効でない。この場合には、実際にC12およびC16オレフィンを完全に転換することがむずかしいため、全工程の実行可能性に対して不利に作用する。実際にC12およびC16オレフィンの水素化が完全でないならば、それらは反応器へ還流されるが、二重の悪影響を及ぼすことになる。
*それがプラント仕様外へ送られるまで、製品中に蓄積される傾向がある(総オレフィン>1質量%)。
*これらのオレフィンは触媒に付着して炭素質堆積物を形成して触媒活性が低下させる傾向が最も強い化合物であるため、触媒寿命が減少する。
【0029】
同様の状況は、水素化反応器内で完全には転換されない有害物(硫化物など)の存在によっても惹起され得る。
【0030】
そこで我々が発見した方法は従来の水素化よりも経済的により有利であり、全C8-C16留分を反応器へ還流させることを構想しているが、それは反応条件をより緩和させて触媒寿命を高めることができるからである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の目的、すなわち分枝状C8、C12およびC16オレフィン留分を含む炭化水素ブレンドの水素化による高オクタン価を持つ炭化水素ブレンドの製造方法は、前記ブレンドをそのまま、または実質的に分枝状C8オレフィン留分を含む一方と実質的に分枝状C12およびC16オレフィン留分を含む他方との2つのストリームに分留して、単一の水素化ゾーンまたは2つの並置された水素化ゾーンへそれぞれ送り込むこと、また前記単一水素化ゾーンにより製造されたストリームの分留により得られた、あるいは実質的に分枝状C8オレフィン留分を含む前記分留ストリームが供給された前記水素化ゾーンにより得られた実質的に飽和C8炭化水素を含むストリームのみが、前記単一水素化ゾーンまたは実質的に分枝状C8オレフィン留分を含む前記分留ストリームが供給された前記水素化ゾーンへ少なくとも部分的に還流されること、並びに前記単一水素化ゾーンから製造されたストリームの分留により得られた、または前記水素化ゾーンから得られた高オクタン価を持つ炭化水素ブレンドが、実質的に分枝状C12およびC16オレフィン留分を含む分留ストリームにより供給されることを特徴とする。
【0032】
処理すべき炭化水素ブレンドに含まれるC8、C12およびC16オレフィン留分が、好ましくはイソブテンの二量化から得られるイソブテンのオリゴマーとされる。
【0033】
前記オレフィン留分に加えて、処理すべき炭化水素ブレンドが、少量のC9-C11および分枝状C13-C15オレフィン留分も含むことができる。
【0034】
特に、実質的に分枝状C8-C16オレフィンからなるブレンドが、好ましくは本発明にしたがって処理されるが、その場合には分枝状C12オレフィンは3-20質量%、分枝状C16オレフィンは0.5-5質量%であり、残りのパーセントを占めるのは分枝状C8オレフィンである。
【0035】
並置された2つの水素化ゾーンを採用するならば、実質的に分枝状C8オレフィン留分を含む前記分留ストリームが供給された前記水素化ゾーンから得られた実質的に飽和C8炭化水素を含むストリームの一部が、実質的に分枝状C12およびC16オレフィン留分を含む分留ストリームが供給された前記水素化ゾーンへ送られるべきである。
【0036】
本発明は、高オクタン価ブレンドをそれがオレフィン形状または水素化形状のいずれかである場合に分留することにより実施できるのであり、いずれの場合でもそれを適用することにより、C8-C16オレフィン・ストリームの水素化工程を技術的により簡略にすることができる。
【0037】
転換を最大化する必要がないため、より緩和な反応が利用できる、さらに重質炭化水素および残留オレフィンが反応器へ還流されないという事実のゆえに、触媒寿命を高めることができる。
【0038】
具体的には、オレフィン形状のブレンドの分留の場合に本発明に基づく方法は、下記工程から構成できる。
a)C4 留分中に含まれるイソブテンを二量化する工程(FCC、コーキング、蒸気分解、イソブテンの脱水素化);
b)前記二量化反応器から出る生成物を第1の蒸留カラムへ送り込み、該カラムの塔頂からC4 製品が回収されること、同時に副留分として分枝状C8オレフィンに富むストリームと底部生成物として分枝状C12およびC16オレフィンに富むストリームを得る工程;
c)第1の反応器において既に飽和したC8製品自身の一部を用いてオレフィン・チャージを希釈して、副留分として得られた分枝状C8オレフィンに富むストリームを適切な触媒により水素化する工程;
d)分枝状C12およびC16オレフィンに富むストリームを既に飽和したC8製品の残留部分と共に第2の反応器において適切な触媒により水素化して、飽和した高オクタン価炭化水素ブレンドを得る工程。
【0039】
第2反応器へ送られるC8製品の量をカラムの副留分として除去された量に等しく維持するならば、水素化製品に二量化工程から出るオレフィン製品の炭化水素(C8に対する選択性)と同じ分布を持たせることができる。
【0040】
副留分として除去される分枝状C8オレフィンに富むストリームは、C8よりも高い炭化水素化合物を実質的に含まないことができる。
【0041】
この場合をより明確に示すために、簡略化された方法の模式が図2に示されている。
【0042】
イソブテンを含むC4ストリーム(1)は反応器(R1)へ送られ、そこでイソブテンは選択的に二量体に転換される。前記反応器からの流出物(2)は分離カラム(C1)へ送られ、そこで基本的に非転換イソブテン、線状オレフィンおよび飽和C4製品(nブタンおよびイソブタン)を含むストリーム(3)が塔頂で除去されるが、C8オレフィン(4)は副留分として回収され、一方で高級オリゴマー(C12およびC16)が濃縮されているストリーム(5)は底で除去される。
【0043】
前記副留分(4)は、飽和C8製品の一部および新規水素(7)と共に、第1水素化反応器(R2)へ送られる。一方で、飽和C8製品の残留部分および新規水素(11)は、新規水素(6)および重質炭化水素(5)に富むオレフィン・ストリームと共に第2の水素化反応器(R3)へ送られる。この反応器の出口で得られるストリーム(13)はプラント製品を形成する。
【0044】
一方で、分留されるのが水素化ブレンドであるならば、本発明に基づく方法は下記工程から構成できる。
a)C4 留分中に含まれるイソブテンを二量化する工程(FCC、コーキング、蒸気分解、イソブテンの脱水素化);
b)前記二量化反応器から出る生成物を第1の蒸留カラムへ送り込み、該カラムの塔頂からC4 製品が回収され、一方でC8-C16オレフィン・ブレンドが底から回収される工程;
c)飽和した炭化水素ストリームを用いてオレフィン・チャージを希釈してC8-C16オレフィン・ブレンドを適切な触媒により水素化する工程;
d)炭化水素製品を過剰な水素を回収する1以上の蒸留カラムへ送り込み、前記水素化反応器へ還流されるC8オレフィンに富む飽和ストリームと高オクタン価炭化水素ブレンド(C12オレフィンも含む)を得る工程。
【0045】
反応器へ還流されたC8オレフィンに富む飽和ストリームは、C8より高級な炭化水素化合物を実質的に含まないことができる。
【0046】
水素化反応器へ還流されたC8オレフィンに富む飽和ストリームは、水素化反応器の入り口でのオレフィン・ストリームに対して、好ましくは0.1-10の質量比にある。
【0047】
この新規の構成をより明確に表すために、図3に簡略化された模式が示されている。
【0048】
イソブテンを含むストリーム(1)は反応器(R1)へ送られ、そこでイソブテンは選択的に二量体に転換される。前記反応器からの流出物(2)は分離カラム(C1)へ送られ、そこで基本的に非転換イソブテン、線状オレフィンおよび飽和C4製品(nブタンおよびイソブタン)を含むストリーム(3)が塔頂で除去されるが、二量体および高級オリゴマーからなるストリーム(4)は底で除去される。この底部ストリーム(4)は、還流された生成物(9)および新規水素(5)と共に、水素化反応器(R2)へ送られる。反応器からの流出物(7)は第2の蒸留カラム(C2)へ送られ、そこから非転換水素(10)が塔頂から回収され、底からの重質C12-C16炭化水素(8)を含む製品および副留分として反応器(R2)へ還流される純粋なC8ストリーム(9)が得られる。
【0049】
任意には水素化反応器の流出物を分離するために、2つの蒸留カラムの使用を想定する方法が用いられる。
【0050】
両方の構成において、採用された水素化触媒は好ましくはニッケルまたは貴金属をベースとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
本発明をより良く説明するためにいくつかの実施例が以下に示されるが、それらは本発明の範囲を決して限定するものではない。
【実施例】
【0052】
例1
本例は、本発明の可能な方法の適用を示している。イソブテンの選択的二量化により得られた下記組成を持つ炭化水素留分を、飽和C8炭化水素からなるストリームと水素ストリーム(比率1:1)と共に、水素化反応器(中間冷却を備えた断熱式)へ送った。
C8オレフィン: 90質量%
C12オレフィン: 9.5質量%
C16オレフィン: 0.5質量%
【0053】
担持されたパラジウムをベースとする市販触媒を用いて、空間速度1 h-1(時間あたりの触媒量に対するオレフィン量)、水素圧力3 MPaおよび初期温度140°Cでの液相における操作により、パスあたり下記の転換物を得ることができた。
転換C8オレフィン: 99.9%
転換C12オレフィン: 93.0%
転換C15オレフィン: 60.0%
総転換オレフィン: 99.1%
【0054】
次に、反応流出物を蒸留カラムへ送り、その塔頂から過剰水素および飽和C8ストリーム(C12<0.5質量%)を回収したが、反応生成物は底で回収した。これらの条件で操作し、1質量%以下の残留オレフィンを含む水素化製品を得ることができた。
【0055】
例2
この例では、オレフィン・ストリームの留分からなる本発明に基づく方法の別の使用が説明される。イソブテンの選択的二量化により得られた下記組成を持つ炭化水素留分を分留カラムへ送り、
C8オレフィン: 90質量%
C12オレフィン: 9.5質量%
C16オレフィン: 0.5質量%
そこで下記の2つの留分に分離した。
頂部(86%)
C8オレフィン: 99.5%
C12オレフィン: 0.5%
底部(14%)
C8オレフィン: 28.6%
C12オレフィン: 67.9%
C16オレフィン: 3.5%
【0056】
塔頂で回収されたC8オレフィン(総オレフィンの86%)を、飽和C8製品からなるストリームおよび水素ストリーム(比率1:1)と共に、第1の水素化反応器(中間冷却を備えた断熱式)へ送った。
【0057】
担持されたパラジウムをベースとする市販触媒を用いて、空間速度2 h-1、水素圧力3 MPaおよび初期温度130°Cでの液相における操作により、パスあたりC8オレフィンの95%を回収した。
カラムの底部生成物を水素化されたC8製品の残留部分(C8炭化水素の合計90%を有する最終ストリームが得られるべく、カラム塔頂で除去されるオレフィン質量に等しい)に合流させて、第2の水素化反応器へ送り、ここで担持されたパラジウムをベースとする市販触媒を用いて、空間速度1 h-1、水素圧力3 MPaおよび温度140°Cでの液相における操作により、パスあたり下記の転換物を得ることができた。
転換C8オレフィン: 99.9%
転換C12オレフィン: 93.0%
転換C15オレフィン: 60.0%
総転換オレフィン: 95.5%
【0058】
これらの条件で操作し、1質量%以下の残留オレフィンを含む水素化製品を得ることができた。
【0059】
例3(比較例)
本例では、従来の水素化模式を用いて、製品からオレフィンを完全に除去するために如何に多くの激烈な反応条件が必要であるかを示している。この場合には、実際に反応熱を制御するために、製品の一部が反応器へ還流されるため、残留オレフィン含量を最少化しなければならない。
【0060】
その組成が実施例1および2と同じオレフィン・ブレンドの水素化を、C12および C16オレフィンの99%以上の転換物が得られるように、常に担持されたパラジウムをベースとする市販触媒を用いて、空間速度0.5 h-1、水素圧力3 MPaおよび温度150°Cで、液相において実施した。
【0061】
この場合には、方法は前記実施例に比べて経済的にはるかに不利であった(触媒量が多く、かつ温度が高い)。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、従来の水素化の模式を示す。
【図2】図2は、本発明の方法についての簡略化された模式を示す。
【図3】図3は、本発明の別の方法についての簡略化された模式を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分枝状C8、C12およびC16オレフィン留分を含む炭化水素ブレンドの水素化による高オクタン価を持つ炭化水素ブレンドの製造方法であって、前記ブレンドをそのまま、または実質的に分枝状C8オレフィン留分を含む一方と実質的に分枝状C12およびC16オレフィン留分を含む他方の2つのストリームに分留して、単一の水素化ゾーンまたは2つの並置された水素化ゾーンへそれぞれ送り込むこと;前記単一水素化ゾーンにより製造されたストリームの分留により得られた、あるいは実質的に分枝状C8オレフィン留分を含む前記分留ストリームが供給された前記水素化ゾーンにより得られた実質的に飽和C8炭化水素を含むストリームのみが、前記単一水素化ゾーンまたは実質的に分枝状C8オレフィン留分を含む前記分留ストリームが供給された前記水素化ゾーンへ少なくとも部分的に還流されること;並びに前記単一水素化ゾーンから製造されたストリームの分留により得られたまたは前記水素化ゾーンから得られた、高オクタン価を持つ炭化水素ブレンドが、実質的に分枝状C12およびC16オレフィン留分を含む分留ストリームにより供給されることを特徴とする方法。
【請求項2】
分枝状C8、C12およびC16オレフィン留分が、イソブテンのオリゴマーである、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
分枝状C8、C12およびC16オレフィン留分が、イソブテンの二量化から得られるイソブテンのオリゴマーである、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
分枝状C8、C12およびC16オレフィン留分を含む炭化水素ブレンドが、少量の分枝状C9-C11およびC13-C15オレフィン留分を含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
実質的に分枝状C8オレフィン留分を含む前記分留ストリームが供給された前記水素化ゾーンから得られた実質的に飽和C8炭化水素を含むストリームの一部が、実質的に分枝状C12およびC16オレフィン留分を含む前記分留ストリームが供給された前記水素化ゾーンへ送られる、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
以下の工程:
a)C4 留分中に含まれるイソブテンを二量化する工程;
b)前記二量化反応器から出る生成物を第1の蒸留カラムへ送り込み、該カラムの塔頂からC4 製品が回収され、同時に副留分として分枝状Cオレフィンに富むストリームと底部生成物として分枝状C12およびC16オレフィンに富むストリームを得る工程;
c)第1の反応器において既に飽和したC製品自身の一部を用いてオレフィン・チャージを希釈して、副留分として得られた分枝状Cオレフィンに富むストリームを適切な触媒により水素化する工程;及び
d)分枝状C12およびC16オレフィンに富むストリームを既に飽和したC製品の残留部分と共に第2の反応器において適切な触媒により水素化して、飽和した高オクタン価炭化水素ブレンドを得る工程、
を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
副留分として除去される分枝状Cオレフィンに富むストリームがCよりも高級な炭化水素化合物を実質的に含まない、請求項1又は6記載の製造方法。
【請求項8】
以下の工程:
a)C4 留分中に含まれるイソブテンを二量化する工程;
b)前記二量化反応器から出る生成物を第1の蒸留カラムへ送り込み、該カラムの塔頂からC4 製品が回収され、一方でC8-C16オレフィン・ブレンドが底から回収される工程;
c)飽和した炭化水素ストリームを用いてオレフィン・チャージを希釈してC-C16オレフィン・ブレンドを適切な触媒により水素化する工程;及び
d)炭化水素製品を、過剰な水素を回収する1以上の蒸留カラムへ送り込み、前記水素化反応器へ還流されるCオレフィンに富む飽和ストリームと高オクタン価炭化水素ブレンドを得る工程、を含む、請求項1又は3記載の製造方法。
【請求項9】
水素化反応器へ還流されたCオレフィンに富む飽和ストリームが、水素化反応器の入り口でのオレフィン・ストリームに対して0.1-10の質量比にある、請求項1又は8記載の製造方法。
【請求項10】
反応器へ還流されたC生成物に富む飽和ストリームが、Cより高級な炭化水素化合物を実質的に含まない、請求項1又は8記載の製造方法。
【請求項11】
水素化触媒が、ニッケルまたは貴金属をベースとする、請求項6又は8記載の製造方法。
【請求項12】
ブレンドが実質的に分枝状C-C16オレフィンからなり、分枝状C12オレフィンが、3-20質量%、分枝状C16オレフィンが、0.5-5質量%であり、さらに残りのパーセントが分枝状Cオレフィンである、請求項1記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−508404(P2007−508404A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530138(P2006−530138)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011362
【国際公開番号】WO2005/040312
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(503431448)スナムプロジェッティ ソシエタ ペル アチオニ (6)
【Fターム(参考)】