説明

分泌型MLuc7ルシフェラーゼおよびその使用

【課題】 感度を向上させる、少ない細胞数または低い基質濃度を用いるためのMLuc7の使用に関する。
【解決手段】 分泌型MLuc7ルシフェラーゼのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列ならびに活性および使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分泌型MLuc7ルシフェラーゼのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列ならびに活性および使用、ならびに分泌型ルシフェラーゼの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ルシフェラーゼ
発光とは、可視スペクトル範囲内での光子の放出を指し、その放出は、励起エミッター分子による。蛍光とは対照的に、エネルギーは、より短い波長の放射線の形で外部からここに供給されることはない。
【0003】
化学発光と生物発光の間は区別される。化学発光とは、励起分子を生じ、励起電子が基底状態に戻る時、その分子自体が発光を示す化学反応を指す。この反応が酵素によって触媒される場合には、これは生物発光と呼ばれる。反応に関与する酵素は、一般的に、ルシフェラーゼと呼ばれる。
【0004】
発光性生物の概説は、Wilson & Hastings、1998に見出すことができる。
【0005】
ルシフェラーゼはペルオキシダーゼ、またはモノオキシゲナーゼおよびジオキシゲナーゼである。光放出生成物についての出発物質である酵素基質は、ルシフェリンと呼ばれる。それらは種によって異なる。系の量子収率は、変換される基質分子1個あたり0.1〜0.9光子の間である。
【0006】
ルシフェラーゼは、それらの起源またはそれらの酵素的特性に基づいて分類することができる。同様に、ルシフェラーゼは、それらの基質特異性によってお互い区別することができる。最も重要な基質としては、セレンテラジンおよびルシフェリン、ならびにその2つの物質の誘導体も挙げられる。
【0007】
ルシフェラーゼ基質
いくつかのルシフェラーゼ基質の構造は、例として下に示されている:
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
分泌型ルシフェラーゼ
宿主生物によってサイトゾルから周囲培地へ組換え型または野生型タンパク質の形で放出されるルシフェラーゼは、分泌型ルシフェラーゼと呼ばれる。表1は分泌性ルシフェラーゼの概要を示す:
【0011】
【表1】

【0012】
同様に、分泌型Lu164ルシフェラーゼは、Markovaら、2004に記載されている。
【0013】
レポーター系
レポーター遺伝子または指標遺伝子は、一般的に、遺伝子産物が簡単な生化学的または組織化学的方法を用いて容易に検出することができる遺伝子を指す。レポーター遺伝子の少なくとも2つの型が区別される。
1.耐性遺伝子。耐性遺伝子とは、抗生物質を始めとする物質に対する耐性を発現によって細胞に与える遺伝子を指し、それらの物質は増殖培地に存在すると、耐性遺伝子を欠く場合には、細胞死を引き起こすものである。
2.レポーター遺伝子。レポーター遺伝子の産物は、融合型または非融合型指標として遺伝子操作に用いられる。最もよく用いられるレポーター遺伝子としては、β−ガラクトシダーゼ(Alamら、1990)、アルカリホスファターゼ(Yangら、1997;Cullenら、1992)、ルシフェラーゼ、および他の発光タンパク質(Shinomura、1985;Phillips GN、1997;Snowdowneら、1984)が挙げられる。
【0014】
発光とは、可視スペクトル範囲内での光子の放出を指し、その放出は、励起エミッター分子による。蛍光とは対照的に、エネルギーは、より短い波長の放射線の形で外部からここに供給されることはない。
【0015】
化学発光と生物発光の間は区別される。化学発光とは、励起分子を生じ、励起電子が基底状態に戻る時、その分子自体が発光を示す、化学反応を指す。この反応が酵素によって触媒される場合には、これは生物発光と呼ばれる。反応に関与する酵素は、一般的に、ルシフェラーゼと呼ばれる。
【0016】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼ
驚くべきことに、メトリディア・ロンガ(Metridia longa)から新しいルシフェラーゼをスクリーニングしたとき、その生化学的および物理化学的特性が以前に同定されたルシフェラーゼとは明らかに異なる新しいルシフェラーゼ(以下、MLuc7と呼ぶ)を同定およびクローン化した。これらの特性は下に記載されている。
【0017】
動態(Kinetics)
分泌型MLuc7ルシフェラーゼが発現したとき、驚くべきことに、それは、生物発光反応の時間分解能(動態)が改変されることが見出された。動態の違いは、試験した基質について基質非依存性であり、図8および図9に示されている。図10は、MLuc7およびLu164についての生物発光反応の経過を示す。MLuc7の実質的により速い動態は明らかに目に見える。MLuc7は、Lu164と比較して、数秒後でも、1秒あたりに測定されうる発光の減少を示す。60秒後、300秒間の積分シグナルの70〜80%がすでに記録されている。Lu164は、1秒あたりの生物発光シグナルの実質的により遅い減少を示し、結果として、300秒後でもバックグラウンドに対して測定可能である明瞭なシグナルを生じる。それゆえに、MLuc7は、以前に記載されたメトリディア・ロンガの分泌型ルシフェラーゼとは動態学的に異なる。驚くべきことに、この特性によって、動態学的区別が可能であるので、MLuc7を他のセレンテラジン依存性またはセレンテラジン非依存性ルシフェラーゼと組み合わせて利用することができる。
【0018】
活性
分泌型MLuc7ルシフェラーゼが発現したとき、驚くべきことに、それは、動態学的特性の変化によって生物発光反応の活性分布が変化することが見出された。生物発光反応の開始時点において、1秒あたりに測定されうるMLuc7活性は、Lu164のそれより明らかに高い。このより高い生物発光によって、より少数の細胞、MLuc7発現のより低い活性化、またはより低い基質濃度で、バックグラウンドシグナルより明らかに上の測定値が可能となるので、用いられる測定方法のより高い感度が可能となる。
【0019】
本発明は、感度を向上させる、少ない細胞数または低い基質濃度を用いるためのMLuc7の使用に関する。
【0020】
動態学的評価
MLuc7の動態学的特性の変化によって、生物発光の差別化された動態学的評価が可能となる。(例えば)300秒間に渡る連続測定に関して、様々な間隔を評価に用いることができる。図13は、各場合10秒間の間隔についての生物発光シグナル合計を示す。MLuc7は、最初の60秒以内に(正確な時間は、用いられるルシフェラーゼおよび基質の量に依存する)Lu164より明らかに高い生物発光を示す。この期間後、MLuc7の生物発光は、Lu164のそれより速く減少し、結果として、Lu164はより高い生物発光シグナルを生じることになる。それゆえに、測定ウィンドウを選択することによってルシフェラーゼ間を区別することが可能である。図14は、選択された実験条件下での300秒間の時間についてのMLuc7およびLu164ルシフェラーゼの生物発光合計を示す。
【0021】
図15は、各場合60秒間の間隔についての生物発光シグナル合計を示す。ここでもまた、ルシフェラーゼは、測定ウィンドウを選択することによって区別することができる。それゆえに、測定間隔の長さおよび選択が特定の実験条件に適応することができ、柔軟な形で用いることができる。示されたデータによって、総測定時間もまた、柔軟な形で選択することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開0242470号パンフレット
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Alam J, Cook JL. Reporter genes: application to the study of mammalian gene transcription. Anal Biochem. 1990 Aug 1; 188 (2): 245-54
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、MLuc7の生物発光活性の測定値の動態学的評価に関する。
【0025】
本発明は、Lu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、およびLu52の生物発光活性の測定値の動態学的評価に関する。
【0026】
本発明は、分泌型ルシフェラーゼの生物発光活性の測定値の動態学的評価に関する。
【0027】
本発明は、本発明によるタンパク質の生物発光活性の測定値の動態学的評価に関する。
【0028】
多重化
分泌型MLuc7ルシフェラーゼが発現したとき、驚くべきことに、それは、その特性の変化に起因して、多重反応に特に適していることが見出された。MLuc7ルシフェラーゼは、他のルシフェラーゼと比較して明らかにより速い動態を示し、それによって、他の発光性または非発光性測定方法(読み出し)との組合せが可能となる。
【0029】
発光性測定方法を組み合わせるために、発光系は、お互い阻害してはならず、または特定のシグナルより多い光を放射してはならない。(例えば、基質を加えることにより)第1の系を活性化した後、発光は、第2の反応を開始できるようになる前に、出発レベルに戻っていなければならない。これはまた、両方の系が非依存的な基質を用いる場合にも必要である。Mluc7は、その速い動態によって、測定間の時間を著しく短縮する。反応の不活性化は必要でない。MLuc7ルシフェラーゼは分泌型ルシフェラーゼであるので、それを(例えば、ホタルルシフェラーゼなどの)細胞内の系と組み合わせてもよい。
【0030】
他のメトリディア・ロンガのルシフェラーゼもまた、ホタルルシフェラーゼなどの細胞内の系と組み合わせることができる。しかしながら、これは、残存する生物発光を低レベルまで低下させるために不活性化段階を必要とする。
【0031】
本発明は、MLuc7と1つまたは複数のレポーター遺伝子または測定技術(読み取り)との組合せが用いられる多重反応混合物におけるMLuc7の使用に関する。本発明はまた、複数の標的遺伝子を測定するための反応混合物におけるMluc7の使用に関する。
【0032】
本発明は、Lu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、およびLu52と1つまたは複数のレポーター遺伝子または測定技術(読み取り)との組合せが用いられる多重反応混合物におけるLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、およびLu52の使用に関する。本発明はまた、複数の標的遺伝子を測定するための反応混合物におけるLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、およびLu52の使用に関する。
【0033】
本発明は、分泌型ルシフェラーゼと1つまたは複数のレポーター遺伝子または測定技術(読み取り)との組合せが用いられる多重反応混合物における分泌型ルシフェラーゼの使用に関する。本発明はまた、複数の標的遺伝子を測定するための反応混合物における分泌型ルシフェラーゼの使用に関する。
【0034】
本発明は、本発明によるタンパク質と1つまたは複数のレポーター遺伝子または測定技術(読み取り)との組合せが用いられる多重反応混合物における本発明によるタンパク質の使用に関する。本発明はまた、複数の標的遺伝子を測定するための反応混合物における本発明によるタンパク質の使用に関する。
【0035】
基質特異性
MLuc7基質特異性を、標準条件下で様々なセレンテラジンをアッセイすることによって試験した。この試験では、CHO細胞のLu164、Lu22、およびMLuc7ルシフェラーゼでの一過性トランスフェクションからの上清を用いた。選択された条件下で、基質セレンテラジンnおよびセレンテラジンcbは、Lu164によるよりMLuc7による変換の方が乏しくなり、基質セレンテラジンfはLu164によるよりMlucによる方が良く変換される。結果は、反応を最適化することができること、または基質および反応条件に基づいてルシフェラーゼを用いることができることを一例として実証している。ホタルルシフェリンおよびウミホタルルシフェリンの基質がすべての3つのルシフェラーゼによって基質として用いられることは、選択された反応条件下で、たとえあったとしてもほんのわずかな程度にすぎない。
【0036】
本発明は、MLuc7による生物発光を生じるための異なる基質の使用および組合せに関する。
【0037】
本発明は、Lu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、およびLu52による生物発光を生じるための異なる基質の使用および組合せに関する。
【0038】
本発明は、分泌型ルシフェラーゼによる生物発光を生じるための異なる基質の使用および組合せに関する。
【0039】
本発明は、本発明によるタンパク質による生物発光を生じるための異なる基質の使用および組合せに関する。
【0040】
温度依存性
MLuc7反応の温度依存性を、10℃から50℃の間の温度で生物発光反応を測定することによって試験した。この試験では、CHO細胞のMLuc7での一過性トランスフェクションからの上清を用いた。結果は、MLuc7生物発光反応が反応温度の関数であることを示す。この依存性は、レポーター遺伝子適用において反応を最適化して適応させるためにも、様々な生物発光系を区別して組み合わせるためにも用いることができる。
【0041】
本発明は、MLuc7に関する測定方法を開発して最適化するための温度依存性の使用および組合せに関する。
【0042】
本発明は、Lu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、およびLu52に関する測定方法を開発して最適化するための温度依存性の使用および組合せに関する。
【0043】
本発明は、分泌型ルシフェラーゼに関する測定方法を開発して最適化するための温度依存性の使用および組合せに関する。
【0044】
本発明は、本発明によるタンパク質に関する測定方法を開発して最適化するための温度依存性の使用および組合せに関する。
【0045】
イオン濃度の関数としての生物発光反応
イオン濃度の関数としてのMLuc7反応を、1mMから400mMの間のKCl濃度で生物発光反応を測定することによって試験した。この試験では、CHO細胞のMLuc7での一過性トランスフェクションからの上清を用いた。結果は、MLuc7生物発光反応が反応媒質におけるイオン濃度の関数であることを示す。この依存性は、レポーター遺伝子適用において反応を最適化して適応させるためにも、様々な生物発光系を区別して組み合わせるためにも用いることができる。
【0046】
本発明は、MLuc7に関する測定方法を開発し、最適化し、用いるための生物発光反応のイオン依存性の使用および組合せに関する。
【0047】
本発明は、Lu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、およびLu52に関する測定方法を開発し、最適化し、用いるための生物発光反応のイオン依存性の使用および組合せに関する。
【0048】
本発明は、分泌型ルシフェラーゼに関する測定方法を開発し、最適化し、用いるための生物発光反応のイオン依存性の使用および組合せに関する。
【0049】
本発明は、本発明によるタンパク質に関する測定方法を開発し、最適化し、用いるための生物発光反応のイオン依存性の使用および組合せに関する。
【0050】
MLuc7ルシフェラーゼの同定
メトリディア・ロンガ種の生物発光活性を研究するために、標本を白海(White Sea)(生物学的基地カレリヤ(Kartesh)、ロシア)で採取し、液体窒素中に保存した。他の動物種または植物種による混入を防ぐために、メトリディア・ロンガの発生段階Vの200個の標本を同定し、上記のように保存した。「ノープリウス(Naupilus)」形態および成体形態の他に、メトリディア・ロンガのさらに5つの発生形態が記載されており、増加する発生段階におけるCIからCVまでの形態がその命名によって記載されている。選択および同定を、双眼顕微鏡およびホールピペットを用いて行った。標本は、生物学的調査基地「カレリヤ」(ロシア)の領域の白海で採取した。
【0051】
メトリディア・ロンガ個体は、とりわけそれらの発生段階によって異なる深度で見出すことができる。この依存性は図19にプロットされている。
【0052】
季節、塩類含有量、温度、および食糧供給(組成および多様性)による変動に加えて、他の因子もまた、メトリディア・ロンガの生息地に影響する。これらの因子が生物発光性タンパク質の代謝過程または発現に影響するかどうかは現在、わかっていない。生物発光性タンパク質の発生段階特異的発現についても推測できるにすぎないが、予想されることではある。
【0053】
それゆえに、選択された発生段階の個体の特定研究は、他の発生段階において明らかにより低い程度で発現し、または全く発現せず、それゆえに、制限を付けるだけで発現クローン化に利用しやすい生物発光性タンパク質の同定をもたらすことができる。
【0054】
本発明は、新しい生物発光性タンパク質を同定するための特定の発生段階の生物発光性生物の研究に関する。
【0055】
RNAを、製造会社の使用説明書に従ってStraight A’s mRNA単離キット(Novagen)を用いることにより、メトリディア・ロンガから単離した。単離されたポリA mRNAを、製造会社の使用説明書に従って、PowerScript逆転写酵素(Clontech)およびSMART cDNAライブラリー構築キット(Clontech)を用いて、cDNAへ転写した。用いられた発現ベクターはpTriplEx2ベクター(Clontech)であり、cDNA断片は、SfiI A−B切断部位へ組み込まれた。
【0056】
得られた発現ベクターを、エレクトロポレーションを用いて大腸菌(E.coli)XL1−Blueに形質転換した。大腸菌形質転換体を標準条件下で培養した。
【0057】
非増幅cDNAライブラリーを、1プレートあたり約1500コロニーのコロニー密度で蒔き、標準条件下で一晩、インキュベートした。乾いたニトロセルロース膜を当てることによって、細菌プレートのコピーを作製した。レプリカを標準条件下でインキュベートした。滅菌ガラス棒を用いてレプリカプレートからコロニーを採取し、LB培地に移した。培養物を、標準条件下で1(600nmにおける)の最適密度までインキュベートした。この後、1mMの最終濃度までIPTGを加えることによって遺伝子発現を誘導し、続いて、37℃で1時間、インキュベートした。3mlの誘導された細菌培養物を遠心分離によって収集し、ペレットを250μlのSM緩衝液(100mM NaCl、10mM MgCl2、50mM Tris−HCl pH7.5、0.01%ゼラチン)に再懸濁した。その後、細菌を0℃で超音波処理によって破壊した。その後、粗抽出物を試験した。
【0058】
この目的を達成するために、セレンテラジン(天然)を10μMの最終濃度まで加え、生物発光をルミノメータで決定した。生物発光陽性クローンのcDNAを、製造会社の使用説明書に従ってALFexpress IIシステム(TermoSequenase Cy5ダイターミネーターキット(GE Healthcare))を用いて配列決定した。
【0059】
驚くべきことに、この方法を用いて、MLuc7と呼ばれる、発生段階Vのメトリディア・ロンガのルシフェラーゼを同定することが可能であった。
【0060】
本発明は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する分泌型MLuc7ルシフェラーゼに関する。同様に、本発明は、配列番号1に示される核酸分子に関する。
【0061】
本発明はまた、分泌型MLuc7ルシフェラーゼの機能的等価物に関する。機能的等価物は、匹敵する物理化学的または生化学的特性を有するタンパク質である。
【0062】
同様に、本発明は、MLuc7タンパク質の機能性断片、およびそのような断片をコードする核酸に関する。
【0063】
同様に、本発明は、MLuc7タンパク質の突然変異体、およびそのような突然変異体をコードする核酸に関する。
【0064】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、「ハイコンテントスクリーニング」(HCS)技術についてのレポーター遺伝子として適している。HCSは、細胞分析のための現代の顕微鏡技術についての一般名称である。HCS方法は、細胞レベルまたは細胞下レベルで複数のパラメータを定量的に記録することを特徴とする。
【0065】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、細胞系、特に、受容体、イオンチャネル、輸送体、転写因子、または誘導系についてのレポーター遺伝子として適している。
【0066】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、細菌系および真核生物系、特に、哺乳動物細胞、細菌、酵母、バキュロ(bakulo)、植物におけるレポーター遺伝子として適している。
【0067】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、生物発光系または化学発光系、特にルシフェラーゼ、オキシゲナーゼ、ホスファターゼを含む系と組み合わせた、細胞系についてのレポーター遺伝子として適している。
【0068】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、生物発光系または化学発光系、特に発光タンパク質およびイオン指示薬、特にエクオリン、クリチン(clytin)、オベリン(obelin)、ベロビン(berovin)、およびボリノプシン(bolinopsin)を含む系と組み合わせた、細胞系についてのレポーター遺伝子として適している。
【0069】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、マーカータンパク質として、特にFACS(蛍光活性化セルソーター)ソーティングにおけるマーカータンパク質として適している。
【0070】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、融合タンパク質として、特に、受容体、イオンチャネル、輸送体、転写因子、プロテイナーゼ、キナーゼ、ホスホジエステラーゼ、ヒドロラーゼ、ペプチダーゼ、トランスフェラーゼ、膜タンパク質、糖タンパク質として適している。
【0071】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、固定化、特に、抗体、ビオチン、磁気支持体または磁化可能支持体による固定化に適している。
【0072】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、エネルギー移動系、特に、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer))系、BRET(生物発光共鳴エネルギー移動(bioluminescence resonance energy transfer))系、FET(電界効果トランジスタ(field effect transistors))系、FP(蛍光偏光(fluorescence polarisation))系、HTRF(均一時間分解蛍光(homogeneous time−resolved fluorescence))系に適している。
【0073】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、基質またはリガンド、特に、プロテアーゼ、キナーゼ、トランスフェラーゼ、輸送体、イオンチャネルおよび受容体についての基質またはリガンドを標識するのに適している。
【0074】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、細菌系における発現に、特に、力価を決定するのに、生化学系、特にプロテイナーゼおよびキナーゼについての基質として適している。
【0075】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、マーカーとして、特に、抗体に結合した、酵素に結合した、受容体に結合した、イオンチャネルおよび他のタンパク質に結合したマーカーとして適している。
【0076】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、薬理学的薬物スクリーニング、特にHTS(高処理量スクリーニング)におけるレポーター遺伝子として適している。
【0077】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、検出系、特に、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、免疫組織化学法、ウェスタンブロット、共焦点顕微鏡法についての検出系の構成要素として適している。
【0078】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、相互作用、特に、タンパク質−タンパク質相互作用、DNA−タンパク質相互作用、DNA−RNA相互作用、RNA−RNA相互作用、RNA−タンパク質相互作用を分析するためのマーカーとして適している(DNA:デオキシリボ核酸;RNA:リボ核酸)。
【0079】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、トランスジェニック生物、特に、マウス、ラット、ハムスターおよび他の哺乳動物、霊長類、魚類、虫、植物における発現に関するマーカーまたは融合タンパク質として適している。
【0080】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、胚発生を分析するためのマーカーまたは融合タンパク質として適している。
【0081】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、結合媒介物、特に、ビオチン、NHS(N−ヒドロキシスルホスクシンイミド)、CN−Brを介するマーカーとして適している。
【0082】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、核酸、特に、DNA、RNAに結合したレポーターとして適している。
【0083】
分泌型MLuc7ルシフェラーゼは、タンパク質またはペプチドに結合したレポーターとして適している。
【0084】
結合したMLuc7タンパク質の核酸またはペプチドは、プローブとして、特に、ノーザンブロット、サザンブロット、ウェスタンブロット、ELISA、核酸配列決定反応、タンパク質分析、チップ分析についてのプローブとして適している。
【0085】
MLuc7タンパク質は、薬理学的製剤、特に、感染病原体、抗体、小分子の標識として適している。
【0086】
MLuc7タンパク質は、地質学的研究、特に、海、地下水、および川の流れに関する地質学的研究に適している。
【0087】
MLuc7タンパク質は、発現系、特に、インビトロ翻訳系、細菌系、酵母系、バキュロ系、ウイルス系、真核生物系における発現に適している。
【0088】
本発明はまた、MLuc7タンパク質を、特に、野生型タンパク質として、融合タンパク質として、突然変異を誘発されたタンパク質として、精製することに関する。
【0089】
本発明はまた、化粧品、特に、入浴剤、ローション、セッケン、ボディペイント、練り歯磨き、ボディパウダーの分野におけるMLuc7の使用に関する。
【0090】
本発明はまた、染色、特に、食材、入浴剤、インク、織物、プラスチックの染色のためのMluc7の使用に関する。
【0091】
本発明はまた、紙、特に、グリーティングカード、紙製品、壁紙、手工芸品の染色のためのMluc7の使用に関する。
【0092】
本発明はまた、液体、特に、水鉄砲、噴水、飲料、氷についての液体の染色のためのMluc7の使用に関する。
【0093】
本発明はまた、おもちゃ、特に、フィンガーペイント、メーキャップ、水鉄砲の製造のためのMluc7の使用に関する。
【0094】
本発明は、本発明によるベクターを有する生物に関する。
【0095】
本発明は、本発明によるポリペプチドを発現する生物に関する。
【0096】
本発明は、MLuc7の機能的等価物を発現する生物に関する。
【0097】
本発明は、細菌、真核細胞、またはインビトロ発現系において本発明による蛍光ポリペプチドを発現させる方法に関する。
【0098】
本発明はまた、本発明によるポリペプチドを精製/単離する方法に関する。
【0099】
本発明は、本発明による蛍光タンパク質に対する抗体によって免疫学的に認識される5個を超える連続したアミノ酸を有するペプチドに関する。
【0100】
本発明は、マーカー遺伝子およびレポーター遺伝子としての、特に薬理学的薬物スクリーニングおよび診断法のための、本発明による蛍光タンパク質の使用に関する。
【0101】
本発明は、配列番号2に示されるアミノ酸配列および配列番号1に示されるヌクレオチド配列を有する分泌型MLuc7ルシフェラーゼに関する。
【0102】
本発明によれば、MLuc7タンパク質は、その配列が、配列番号2に示される配列およびその機能性断片を含むことを特徴とする。
【0103】
本発明はさらに、配列番号1に示される配列およびその機能性断片を含む、タンパク質をコードする核酸分子に関する。
【0104】
前の段落で記載された核酸を含む組換えRNAまたはDNAベクターは、本発明の一部である。
【0105】
細菌、真核細胞、またはインビトロ翻訳系において本発明によるポリペプチドを発現させる方法は、本発明の一部である。
【0106】
マーカーまたはレポーター遺伝子としての、そのうえ、1つまたは複数の他のマーカーまたはレポーター遺伝子も組み合わせた、本発明による核酸の使用は、本発明の一部である。
【0107】
同様に、マーカーまたはレポーター遺伝子としての、そのうえ、1つまたは複数の他のマーカーまたはレポーター遺伝子タンパク質も組み合わせた、本発明によるタンパク質の使用は、本発明の一部である。
【0108】
分泌性ルシフェラーゼの突然変異体および誘導体
図3は、ルシフェラーゼMLu7、メトリディアルシフェラーゼ(Lu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、およびLu52)、およびガウシアルシフェラーゼのアラインメントを示す。MLuc7ルシフェラーゼは、分析された他のルシフェラーゼより明らかに短いポリペプチドである。同様に、ルシフェラーゼLu22およびガウシアルシフェラーゼは、明らかにより短いポリペプチドを含む。
【0109】
本発明は、発光反応の動態学的特性が変化している、ルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼの突然変異体または誘導体に関する。
【0110】
本発明は、改変または欠失がルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼのアミノ酸23〜78位の領域にある、発光反応の動態学的特性が変化している突然変異体または誘導体に関する。
【0111】
本発明は、改変または欠失がルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼのアミノ酸23〜78位の領域にある、発光反応の変化した生化学的または物理化学的特性を有する突然変異体または誘導体に関する。
【0112】
本発明は、改変または欠失がルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼのアミノ酸13〜88位の領域にある、発光反応の動態学的特性が変化している突然変異体または誘導体に関する。
【0113】
本発明は、改変または欠失がルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼのアミノ酸13〜88位の領域にある、発光反応の変化した生化学的または物理化学的特性を有する突然変異体または誘導体に関する。
【0114】
本発明は、改変または欠失がルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼのアミノ酸33〜68位の領域にある、発光反応の動態学的特性が変化している突然変異体または誘導体に関する。
【0115】
本発明は、改変または欠失がルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼのアミノ酸33〜68位の領域にある、発光反応の変化した生化学的または物理化学的特性を有する突然変異体または誘導体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】pcDNA3−MLuc7構築物のベクターマップを示す図である。
【図2】pASM−MLuc7構築物のベクターマップを示す図である。
【図3】アミノ酸レベルでの様々な分泌型ルシフェラーゼのアラインメントを示す図である。
【図4】Lu164、Lu22、およびMLuc7ルシフェラーゼの基質特異性を示す図である。
【図5】MLuc7ルシフェラーゼの温度依存性を示す図である。
【図6】反応緩衝液における塩化カルシウム濃度へのMLuc7ルシフェラーゼの依存性を示す図である。
【図7】一定量のMLuc7および異なるセレンテラジン濃度でのMLuc7の生物発光測定値を示す図である。
【図8】3つの異なるセレンテラジンでのMLuc7生物発光反応の動態を示す図である。
【図9】3つの異なるセレンテラジンでのLu164生物発光反応の動態を示す図である。
【図10】1.5秒間の積分時間による、300秒間の測定についてのMLuc7(黒色)およびLu164(灰色)の生物発光測定の結果を示す図である。
【図11】一定基質濃度および細胞上清の希釈による減少性Mluc7濃度でのMLuc7の生物発光測定の結果を示す図である。
【図12】一定基質濃度および細胞上清の希釈による減少性Lu164濃度でのLu164の生物発光測定の結果を示す図である。
【図13】各場合10秒間の積分時間の区分におけるMluc7およびLu164生物発光測定値の動態学的評価の結果を示す図である。
【図14】300秒間の積分時間によるMluc7およびLu164の生物発光測定値の動態学的評価の結果を示す図である。
【図15】各場合60秒間の積分時間の区分におけるMluc7およびLu164生物発光測定値の動態学的評価の結果を示す図である。
【図16】発生段階の関数としてメトリディア・ロンガ種の個体により好まれる水深を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0117】
本発明は特に、以下に関する:
1.以下からなる群より選択される核酸分子:
a)配列番号2により開示されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子;
b)配列番号1に示された配列を含む核酸分子;
c)相補鎖がa)またはb)の核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、ルシフェラーゼをコードする核酸分子;核酸分子のストリンジェントなハイブリダイゼーションは、例えば、68℃で0.2×SSC(1×標準生理食塩水−クエン酸=150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)を含む水溶液中で行うことができる(Sambrookら、1989);
d)遺伝暗号の縮重によりc)の下の核酸分子とは異なる核酸分子;
e)配列が配列番号1と少なくとも70%、75%、80%、85%、95%、98%、99%同一であり、タンパク質産物がルシフェラーゼである核酸分子;
f)配列が配列番号1と少なくとも65%同一であり、ルシフェラーゼをコードする核酸分子;
g)機能性ルシフェラーゼをコードする、a)〜f)に記載の核酸分子の断片。
【0118】
2.発光タンパク質をコードする配列の5’側に機能性プロモーターを含む、ポイント1に記載の核酸。
【0119】
3.ポイント2に記載の核酸を含む、組換えDNAまたはRNAベクター。
【0120】
4.ポイント3に記載のベクターを含む、生物。
【0121】
5.ポイント1に記載の核酸分子の部分配列と同一または相補的である10個を超える連続したヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチド。
【0122】
6.ポイント1に記載の核酸配列によりコードされるポリペプチド。
【0123】
7.細菌、真核細胞、またはインビトロ発現系においてポイント6に記載のルシフェラーゼポリペプチドを発現させる方法。
【0124】
8.ポイント6に記載のルシフェラーゼポリペプチドを精製/単離する方法。
【0125】
9.MLuc7ルシフェラーゼに対する抗体によって免疫学的に認識される5個を超える連続したアミノ酸を有するペプチド。
【0126】
10.マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子としての、ポイント1〜3に記載のルシフェラーゼをコードする核酸の使用。
【0127】
11.マーカーまたはレポーターとしての、ポイント6に記載のルシフェラーゼの使用。
【0128】
12.ポイント6に記載のルシフェラーゼを特異的に認識する抗体。
【0129】
13.MLuc7ルシフェラーゼに加えて少なくとも1つのさらなるレポーター遺伝子が用いられる、ポイント10または11に記載の使用。
【0130】
14.さらなる(1つまたは複数の)レポーター遺伝子が分泌型および/または細胞性ルシフェラーゼである、ポイント13に記載の使用。
【0131】
15.さらなる(1つまたは複数の)レポーター遺伝子が分泌型ルシフェラーゼである、ポイント14に記載の使用。
【0132】
16.さらなる(1つまたは複数の)レポーター遺伝子がホタルルシフェラーゼまたはメトリディア・ロンガ生物由来のルシフェラーゼである、ポイント14に記載の使用。
【0133】
17.さらなる分泌型ルシフェラーゼが、Lu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、およびLu52からなる群より選択されるルシフェラーゼである、ポイント15に記載の使用。
【0134】
18.発光測定値が動態学的に評価される、ポイント10、11、または13に記載の方法。
【0135】
19.複数の標的タンパク質が測定される、ポイント10、11、13、または18に記載の方法。
【0136】
20.発光反応の動態学的特性が変化している、ルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼからなる群より選択されるルシフェラーゼの突然変異体または誘導体。
【0137】
21.ルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼからなる群より選択されるルシフェラーゼの突然変異体または誘導体であって、アミノ酸23〜78位の領域における改変または欠失を有し、発光反応の動態学的特性が変化している、突然変異体または誘導体。
【0138】
22.ルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼからなる群より選択されるルシフェラーゼの突然変異体または誘導体であって、アミノ酸23〜78位の領域における改変または欠失、および発光反応の変化した生化学的または物理化学的特性を有する、突然変異体または誘導体。
【0139】
23.ルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼからなる群より選択されるルシフェラーゼの突然変異体または誘導体であって、アミノ酸13〜88位の領域における改変または欠失を有し、発光反応の動態学的特性が変化している、突然変異体または誘導体。
【0140】
24.ルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼからなる群より選択されるルシフェラーゼの突然変異体または誘導体であって、アミノ酸13〜88位の領域における改変または欠失、および発光反応の変化した生化学的または物理化学的特性を有する、突然変異体または誘導体。
【0141】
25.ルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼからなる群より選択されるルシフェラーゼの突然変異体または誘導体であって、アミノ酸13〜68位の領域における改変または欠失を有し、発光反応の動態学的特性が変化している、突然変異体または誘導体。
【0142】
26.ルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼからなる群より選択されるルシフェラーゼの突然変異体または誘導体であって、アミノ酸13〜68位の領域における改変または欠失、および発光反応の変化した生化学的または物理化学的特性を有する、突然変異体または誘導体。
【0143】
ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列
配列番号1(MLuc7−ヌクレオチド配列−コーディング)
【0144】
【化3】

【0145】
これは以下のアミノ酸配列を生じる:
配列番号2(MLuc7−アミノ酸配列)
【0146】
【化4】

【0147】
配列番号3(Lu164−ヌクレオチド配列−コーディング)
【0148】
【化5】

【0149】
これは以下のアミノ酸配列を生じる:
配列番号4(Lu164−アミノ酸配列)
【0150】
【化6】

【0151】
配列番号5(MLuc7−ヌクレオチド配列−クローン化配列)
【0152】
【化7】

【0153】
図面の説明
図1 図1はpcDNA3−MLuc7構築物のベクターマップを示す。
【0154】
図2 図2はpASM−MLuc7構築物のベクターマップを示す。
【0155】
図3 図3はアミノ酸レベルでの様々な分泌型ルシフェラーゼのアラインメントを示す。
【0156】
図4 図4はLu164、Lu22、およびMLuc7ルシフェラーゼの基質特異性を示す。X軸:セレンテラジン、Y軸:相対光単位(RLU)。各場合、CHOの一過性トランスフェクションからの同量の分泌型ルシフェラーゼを用いて、活性を決定した。セレンテラジンを並行して加え、これに続いて、測定を開始した。
【0157】
図5 図5はMLuc7ルシフェラーゼの温度依存性を示す。X軸:℃での温度、Y軸:相対光単位(RLU)。各場合、CHOの一過性トランスフェクションからの同量の分泌型ルシフェラーゼを用いて、活性を決定した。示された温度は反応温度に対応する。60秒間の生物発光測定値の積分がプロットされている。
【0158】
図6 図6は、反応緩衝液における塩化カルシウム濃度へのMLuc7ルシフェラーゼの依存性を示す。X軸:mMでのKCl濃度、Y軸:相対光単位(RLU)。各場合、CHOの一過性トランスフェクションからの同量の分泌型ルシフェラーゼを用いて、活性を決定した。示された濃度は、反応緩衝液におけるKClの濃度に対応する。60秒間の生物発光測定値の積分がプロットされている。
【0159】
図7 図7は、一定量のMLuc7および異なるセレンテラジン濃度でのMLuc7の生物発光測定値を示す。X軸:μMでのセレンテラジン濃度。Y軸:相対光単位(RLU)。
【0160】
図8 図は、3つの異なるセレンテラジンでのMLuc7生物発光反応の動態を示す。X軸:秒での時間。Y軸:相対光単位(RLU)。黒色:天然セレンテラジン、薄い灰色:セレンテラジンf、濃い灰色:セレンテラジンi。
【0161】
図9 図は、3つの異なるセレンテラジンでのLu164生物発光反応の動態を示す。X軸:秒での時間。Y軸:相対光単位(RLU)。黒色:天然セレンテラジン、薄い灰色:セレンテラジンf、濃い灰色:セレンテラジンi。
【0162】
図10 図10は、1.5秒間の積分時間による、300秒間の測定についてのMLuc7(黒色)およびLu164(灰色)の生物発光測定の結果を示す。X軸:秒での時間。Y軸:相対光単位(RLU)。
【0163】
図11 図11は、一定基質濃度および細胞上清の希釈による減少性Mluc7濃度でのMLuc7の生物発光測定の結果を示す。X軸:秒での時間。Y軸:相対光単位(RLU)。四角形:希釈因子(非希釈上清から始まる)の表示および割り当て。
【0164】
図12 図12は、一定基質濃度および細胞上清の希釈による減少性Lu164濃度でのLu164の生物発光測定の結果を示す。X軸:秒での時間。Y軸:相対光単位(RLU)。四角形:希釈因子(非希釈上清から始まる)の表示および割り当て。
【0165】
図13 図13は、各場合10秒間の積分時間の区分におけるMluc7およびLu164生物発光測定値の動態学的評価の結果を示す。X軸:秒での時間。Y軸:相対光単位(RLU)。
【0166】
図14 図14は、300秒間の積分時間によるMluc7およびLu164の生物発光測定値の動態学的評価の結果を示す。X軸:秒での時間。Y軸:相対光単位(RLU)。
【0167】
図15 図15は、各場合60秒間の積分時間の区分におけるMluc7およびLu164生物発光測定値の動態学的評価の結果を示す。X軸:秒での時間。Y軸:相対光単位(RLU)。
【0168】
図16 図16は、発生段階の関数としてメトリディア・ロンガ種の個体により好まれる水深を示す。X軸:メートル(m)での水深;Y軸:発生段階;黒色棒:25〜65m、灰色棒:10〜25m、白色棒:0〜10m。図は海洋データセンター(National Oceanographic Data Center)(USA)の情報による。
【実施例】
【0169】
例1
構築物の調製および使用
下記の構築物を調製するために用いられたベクターは、恒常的発現用のpcDNA3.1(+)プラスミド(Clontech)であった。細胞内cAMP濃度の変化を検出するために、MLuc7 cDNAをpASMベクターへクローン化した。pASMベクターは、cAMP濃度に応じてプロモーター活性を制御するcAMP応答性エレメント(CRE)を含む。前記ベクターの誘導体をpASM−MLuc7と呼んだ。pcDNA3ベクターの誘導体をpcDNA3−MLuc7と呼んだ。クローン化反応を、分子生物学的標準方法を用いて行った。真核生物系でMLuc7を発現させるためにpcDNA3−Mluc7ベクターおよびpASM−MLuc7ベクターを用いた。
【0170】
図1はpcDNA3−Mluc7ベクターのプラスミドマップを示す。
【0171】
図2はpASM−MLuc7ベクターのプラスミドマップを示す。
【0172】
例2
真核生物発現
一過性実験においてCHO細胞に発現プラスミドpcDNA3−MLuc7、pcDNA3−Lu164、およびpcDNA3(cDNA挿入断片を含まない)をトランスフェクトすることにより、恒常的真核生物発現を行った。この目的を達成するために、DMEM−F12培地中1ウェルあたり10,000個の細胞を、96ウェルマイクロタイタープレートに蒔き、37℃で一晩、インキュベートした。トランスフェクションを、Fugene 6キット(Roche)を用い、製造会社の使用説明書に従って行った。トランスフェクトされた細胞をDMEM−F12培地中、37℃で一晩、インキュベートした。基質の添加後、イメージング系を用いて生物発光を測定した。希釈された上清を以下の組成を有する緩衝液A(pH7.4)中で測定した:130mM NaCl、5mM KCl、20mM Hepes、1mM MgCl2×6H2O、および5mM NaHCO3。
【0173】
トランスフェクトされた細胞を2mg/mlジェネテシンで選択し、クローンおよび上清の生物発光活性をそれぞれ決定することにより安定な細胞系を調製した。
【0174】
例3
配列比較
分泌型ルシフェラーゼの配列を比較し示すことができるように、アミノ酸配列アラインメントを行った。図3は、アミノ酸レベルでの分泌型ルシフェラーゼのアラインメントを示す。ウミホタルルシフェラーゼについては、その他のルシフェラーゼとの配列同一性が低すぎるため、アラインメントに含めなかった。
文献/特許
【0175】
【表2】

【0176】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる群より選択される核酸分子:
a)配列番号2により開示されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子;
b)配列番号1に示された配列を含む核酸分子;
c)相補鎖がa)またはb)の核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、ルシフェラーゼをコードする核酸分子;
d)遺伝暗号の縮重によりc)の下の核酸分子とは異なる核酸分子;
e)配列が配列番号1と少なくとも95%同一であり、タンパク質産物がルシフェラーゼである核酸分子;
f)配列が配列番号1と少なくとも65%同一であり、ルシフェラーゼをコードする核酸分子;
g)機能性ルシフェラーゼをコードする、a)〜f)による核酸分子の断片。
【請求項2】
発光タンパク質をコードする配列の5’側に機能性プロモーターを含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
請求項2に記載の核酸を含む、組換えDNAまたはRNAベクター。
【請求項4】
請求項3に記載のベクターを含む、真核細胞もしくは原核細胞、または非ヒト生物。
【請求項5】
請求項1に記載の核酸分子の部分配列と同一または相補的である、10個を超える連続したヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1に記載の核酸配列によりコードされるポリペプチド。
【請求項7】
細菌、真核細胞、またはインビトロ発現系において請求項6に記載のルシフェラーゼポリペプチドを発現させる方法。
【請求項8】
請求項6に記載のルシフェラーゼポリペプチドを精製/単離する方法。
【請求項9】
MLuc7ルシフェラーゼに対する抗体によって免疫学的に認識される、5個を超える連続したアミノ酸を有するペプチド。
【請求項10】
マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子としての、請求項1から3に記載のルシフェラーゼをコードする核酸の使用。
【請求項11】
マーカーまたはレポーターとしての、請求項6に記載のルシフェラーゼの使用。
【請求項12】
請求項6に記載のルシフェラーゼを特異的に認識する抗体。
【請求項13】
MLuc7ルシフェラーゼに加えて少なくとも1つのさらなるレポーター遺伝子が用いられる、請求項10または11に記載の使用。
【請求項14】
さらなる1つまたは複数のレポーター遺伝子が分泌型および/または細胞性ルシフェラーゼである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
さらなる1つまたは複数のレポーター遺伝子が分泌型ルシフェラーゼである、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
さらなる1つまたは複数のレポーター遺伝子がホタルルシフェラーゼまたはメトリディア・ロンガ(Metridia longa)生物由来のルシフェラーゼである、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
さらなる分泌型ルシフェラーゼが、Lu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、およびLu52からなる群より選択されるルシフェラーゼである、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
発光測定値が動態学的に評価される、請求項10、11、または13に記載の方法。
【請求項19】
複数の標的タンパク質が測定される、請求項10、11、13、または18に記載の方法。
【請求項20】
発光反応の動態学的特性が変化している、ルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼからなる群より選択されるルシフェラーゼの突然変異体または誘導体。
【請求項21】
ルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼからなる群より選択されるルシフェラーゼの突然変異体または誘導体であって、アミノ酸23〜78位の領域における改変または欠失を有し、発光反応の動態学的特性が変化している、突然変異体または誘導体。
【請求項22】
ルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼからなる群より選択されるルシフェラーゼの突然変異体または誘導体であって、アミノ酸23〜78位の領域における改変または欠失、および発光反応の変化した生化学的または物理化学的特性を有する、突然変異体または誘導体。
【請求項23】
ルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼからなる群より選択されるルシフェラーゼの突然変異体または誘導体であって、アミノ酸13〜88位の領域における改変または欠失を有し、発光反応の動態学的特性が変化している、突然変異体または誘導体。
【請求項24】
ルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼからなる群より選択されるルシフェラーゼの突然変異体または誘導体であって、アミノ酸13〜88位の領域における改変または欠失、および発光反応の変化した生化学的または物理化学的特性を有する、突然変異体または誘導体。
【請求項25】
ルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼからなる群より選択されるルシフェラーゼの突然変異体または誘導体であって、アミノ酸13〜68位の領域における改変または欠失を有し、発光反応の動態学的特性が変化している、突然変異体または誘導体。
【請求項26】
ルシフェラーゼLu164、Lu22、LuAL、Lu39、Lu45、Lu16、Lu52、およびガウシアルシフェラーゼからなる群より選択されるルシフェラーゼの突然変異体または誘導体であって、アミノ酸13〜68位の領域における改変または欠失、および発光反応の変化した生化学的または物理化学的特性を有する、突然変異体または誘導体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2010−517543(P2010−517543A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548603(P2009−548603)
【出願日】平成20年1月26日(2008.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000624
【国際公開番号】WO2008/095622
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(504132087)アクザム ソシエタ ペル アチオニ (5)
【Fターム(参考)】