説明

分注プローブ、洗浄装置及び分注プローブの洗浄方法

【課題】洗剤洗浄を行う領域を、液体の流路のうち試料が付着する領域に限定することで洗浄及び洗剤液の使用量を削減し、同時に洗浄時間の短縮化を図ること及び流路中に生じるダンパ効果を抑えて分注精度の向上を図ること。
【解決手段】液体の吸引又は吐出の少なくともいずれかを行う分注プローブ本体20の流路2aの一部に縮流部22が設けられ、分注プローブ本体20の側壁には内端が縮流部22に開口し、外端が側壁外面で開口して洗剤液導入管路4に接続される洗剤導入孔23が少なくとも1つ形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注プローブ、洗浄装置及び分注プローブの洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分析装置では、検体や試薬(合わせて以下、試料と呼ぶ)をある容器から他の容器に分注するため、分注プローブやシリンジが用いられている。異なる試料を同一の分注プローブで吸引、吐出する場合において、試料が切り替わる際、前の試料とのコンタミネーションによる分析精度の悪化を回避するために、分注プローブ内部及び外部をイオン交換水等の洗浄液によって洗浄する。さらに、より強力に洗浄を行う場合には、洗剤液を含有する洗浄液による洗浄も行っている。また、洗剤液を含有する洗浄液を用いた洗浄を行った後は、洗剤液を含まない洗浄液により流路内に残留した洗剤成分を洗い流すことによって、洗剤成分による試料の変性を回避することを行っている。
【0003】
ここで、分析装置における分注プローブ洗浄のために洗剤液を流すものとして、特許文献1には、分注プローブに接続された配管の途中に分岐部を設け、分岐部の一方の配管を洗浄液供給部に接続すると共に、分岐部の他方の配管を洗剤液タンクおよびそれを送液するためのポンプ等を接続した洗剤供給機構が提案されている。この特許文献1に記載の洗剤供給機構では、まず、洗浄ポジションで分注プローブ内に洗浄液を流す。次に、洗浄サイクルの任意のタイミングで洗剤液を送液するためのポンプを駆動することにより、洗浄液に洗剤液を混合した洗剤希釈液をプローブへ送液して分注プローブ内を洗浄する。
一方、特許文献2には、配管および弁を組み合わせることにより、分注動作のサイクル内において洗剤液を配管を通じて分注プローブへ導入するものも提案されている。この技術では、分注動作のサイクル内で、規定量の洗剤液を、電磁弁によって隔離された配管の一部に保持する。試料吐出後に洗浄ポジションにおいて前記電磁弁を開放し、洗剤希釈液による分注プローブ内部の洗浄を行う。
【特許文献1】特開2002−62303号公報
【特許文献2】特開平10−104240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1あるいは特許文献2に記載されたものでは、分注プローブ先端のみならずそれに通じる洗浄を必要としない配管も一時的には洗剤液で満たされる。そのため、分注プローブ先端同様に、分注プローブに通じる配管についてもイオン交換水等の洗浄液によってリンスする必要がある。その結果、洗剤液が付着する配管長が長くなる分、リンスに必要な洗浄液の量が増大し、それにしたがって排水も増加する。また、洗浄後のリンスにかかる時間もより長時間を要する。一方、配管長を短縮するために分注プローブの直近に電磁弁やポンプ等の追加部材を設けることも考えられるが、この場合、装置構成の複雑化を招く。
【0005】
さらに前述した従来技術では、試料秤量用のシリンジあるいはポンプと分注プローブの間に洗剤を供給するための分岐が設けられ、洗剤供給用ポンプへの配管が続いている。そのため、試料秤量用のシリンジあるいはポンプと分注プローブを直接つなぐ場合と比較して、分岐部から洗剤供給用ポンプや電磁弁までの配管の長さの分、配管のダンパ効果による圧力損失が大きく、分注精度が悪化するという問題がある。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、洗剤洗浄を行う領域を、液体の流路のうち試料が付着する領域に限定することで洗浄水及び洗剤液の使用量を削減し、同時に洗浄時間の短縮化を図ることにある。また、第2の目的は、流路中に生じるダンパ効果を抑えて分注精度の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の分注プローブは、液体の吸引又は吐出の少なくともいずれかを行う分注プローブ本体の流路の一部に縮流部が設けられ、前記分注プローブ本体の側壁には内端が前記縮流部に開口し、外端が側壁外面で開口して洗剤供給部に接続される洗剤導入孔が少なくとも1つ形成されていることを特徴としている。
この発明によれば、分注プローブに流体を送液している状態では前記分注プローブ本体に設けられた縮流部にベンチュリー効果によって負圧が発生する。そして前記洗剤導入孔にはこの負圧によって分注プローブ本体外部から内部方向への吸引力が生じる。この吸引力によって分注プローブ本体の流路内に洗剤供給部から洗剤液の吸い込みが可能になる。
【0008】
また、本発明の分注プローブは、前記分注プローブ本体の外周には前記洗剤導入孔を閉塞または開放するシャッタが設けられ、該シャッタには前記洗剤導入孔と連通可能な接続孔が少なくとも1つ形成され、該接続孔には前記洗剤供給部に接続されるチューブを取り付け可能な接続管が挿入されていることを特徴としている。
この発明によれば、シャッタによって洗剤導入孔が閉塞されているときは洗剤導入孔を介した洗剤液の出入りは遮断されている。さらに、シャッタによって洗剤導入孔を閉塞した場合、洗剤導入孔内端からシャッタまでの距離が短いことで、試料の吸引あるいは吐出の際に流路にかかる圧力が配管の壁に吸収されるダンパ効果が少なくなり、もって分注精度の向上を図ることができる。また、連通孔の外端に形成された突出部によってチューブとの接続が容易になる。
【0009】
また、本発明の分注プローブでは、前記シャッタが、前記分注プローブ本体の外周に嵌合するリングにより構成され、該リングには、該リングが前記分注プローブ本体に対して軸方向あるいは周方向へ相対移動することにより前記洗剤導入孔と連通可能な前記連通孔が形成されていることを特徴としている。
この発明によれば、前記シャッタを前記分注プローブ本体に対して相対移動させることにより、前記洗剤導入孔と前記連通孔を介して前記分注プローブの内部と洗剤供給部との連通が可能になる。
【0010】
また、本発明の分注プローブでは、前記分注プローブ本体に、前記シャッタの可動域を制限するためのストッパが設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、シャッタがストッパによって規定される範囲のみでスライドし、さらに、このストッパによって洗剤導入孔と連通孔の位置決めが正確になされる。
【0011】
また、本発明の分注プローブでは、前記ストッパに、前記シャッタを付勢する付勢部材の少なくとも一部を収納する収納部が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、ストッパに付勢部材収納部を設けているため、ストッパと収納部とを別々に設ける場合に比べて、省スペース化及び軽量化が図れる。
【0012】
本発明の洗浄装置では、請求項2〜5のいずれか1項に記載の分注プローブの少なくとも先端の外周を洗浄する洗浄処理部が設けられ、該洗浄処理部には前記シャッタと接触可能な押圧部が設けられ、前記分注プローブが前記洗浄処理部にセットされた際に前記押圧部が前記シャッタを押圧して該シャッタを前記分注プローブ本体に対して相対移動させて前記連通孔を前記洗剤導入孔に連通させることを特徴としている。
この発明によれば、前記分注プローブ本体が前記洗浄処理部にセットされた際に、押圧部の押圧力によって前記シャッタが前記分注プローブ本体に対して相対的にスライドし、シャッタの連通孔と洗剤導入孔とが連通する。
【0013】
本発明の洗浄方法は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分注プローブの流路に洗浄液を流し、その際前記縮流部で生じる負圧を利用し、前記洗剤導入孔を介して前記洗剤供給部から洗剤液を前記分注プローブ内に吸い込み、前記分注プローブの前記洗剤導入孔から前記分注プローブの先端までの流路に前記洗剤液と前記洗浄液が混合された洗剤希釈液を流すことを特徴としている。
この発明によれば、前記洗剤導入孔において前記洗剤液と前記洗浄液が混合され、その結果生じた洗剤希釈液は前記洗剤導入孔から前記分注プローブ先端の限定された領域に送液され、プローブ先端から排出される。
【0014】
本発明の洗浄方法は、前記分注プローブの流路に洗浄液を供給しながら閉塞していた前記洗剤導入孔を開放して前記分注プローブ内に前記洗剤液を吸い込むことを特徴としている。
この発明によれば、前記分注プローブはまず洗浄液のみによって洗浄され、次に前記洗剤導入孔から前記洗剤液が供給され、前記分注プローブの限定された領域が洗剤希釈液によって洗浄される。
【0015】
本発明の洗浄方法は、前記分注プローブの流路内に洗浄液を供給しながら、開放していた前記洗剤導入孔を閉塞して、前記流路内に洗剤液が吸い込まれるのを停止させることを特徴としている。
この発明によれば、洗剤希釈液によって洗浄された前記分注プローブは、前記洗剤導入孔が閉塞された後、洗浄液のみによって洗浄され、前記分注プローブの内部に残留した洗剤成分が洗い流される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、洗剤希釈液を送液する領域を、分注プローブ内の洗剤導入孔以降に限定することで、分注プローブ内の試薬付着領域を洗浄するという効果を維持しながら、洗浄に要する洗浄水及び洗剤液の消費量を削減することができる。さらに、洗剤洗浄が行われる面積を減少することにより、洗浄に係る時間が短縮され、装置の実分析能力(サンプル数/時間)を向上させることができる。
また、上述したように、分注プローブ内部の流路に縮流部と洗剤導入孔とを設けたことにより、洗剤液は縮流部に生じた負圧によって分注プローブ内部へと供給されるため、洗剤液を送液するためのポンプあるいはシリンジ等の機器を必要としない簡便な構成とすることができる。
【0017】
さらに、洗剤導入孔外端を閉塞できるシャッタを備えることにより、分注プローブによって試料を吸引あるいは吐出している状態においてはシャッタによって洗剤導入孔外端部で洗剤供給流路を遮断することができ、洗剤導入部を分注プローブと秤量装置との間の分岐部に設ける場合と比較して、試料の吸引あるいは吐出のために流路を陰圧あるいは陽圧にした際に配管のダンパ効果によって生じる圧力損失が低減され、その結果分注精度が高く保たれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る分注プローブ、洗浄装置について図1から図6を参照して説明する。図1は、本実施形態の洗浄装置の概略構成を示す構成図である。また、図2は、本実施形態の洗浄装置に備えられている分注プローブの要部を示す縦断面図である。また、図3は、本実施形態の分注プローブの洗剤導入の作用を示す縦断面図である。また、図4及び図5は本実施形態の分注プローブの動作を説明するための説明図である。また、図6は、本実施形態の洗浄装置における分注プローブの洗浄工程を説明するためのフローチャートである。
【0019】
本実施形態に係る洗浄装置1は、図1に示すように、分注プローブ2を備える。分注プローブ2の内孔は液体流路2aになっている。分注プローブ2は試料をある容器から他の容器に分注するものである。分注プローブ2は、その基端部が上側、先端部が下側となるように配置されて使用される。図1において分注プローブ2に付したL1は、この分注プローブ2によって吸引可能な最大容量を吸引した場合の試料の液面が到達する位置を表す。分注プローブ2の中間部であって前記位置L1よりも上側部分には、洗剤導入管路4の一端が接続されている。洗剤導入管路4の他端は洗剤液タンク5に接続されている。洗剤液タンク5には洗剤液5aが格納されている。
【0020】
分注プローブ2の基端部には洗浄液管路6の一端が接続されている。また、洗浄液管路6の他端は試料秤量装置7に接続されている。さらに、洗浄液管路6の中間には電磁弁8が設けられている。電磁弁8には3つのポート8a、8b、8cが設けられている。ポート8aは洗浄液管路6を介して分注プローブ2側に接続され、ポート8bは洗浄液管路6を介して試料秤量装置7側へ接続されている。さらに、ポート8cは洗浄液導入管路9を介して洗浄液タンク11に接続されている。洗浄液導入管路9の中間には洗浄液タンク11内の洗浄液11aをポート8c側へ送るための洗剤液送出ポンプ10が設けられている。また、符号12は洗浄槽である。
【0021】
分注プローブ2は、図2に示すように分注プローブ本体20と、分注プローブ本体20の外周に取り付けられた円筒状のホルダ21と、分注プローブ本体20に形成される洗剤導入孔23を閉塞又は開放するシャッタ25とを備える。分注プローブ本体20は、分注プローブ内筒20aとその外側に配置される分注プローブ外筒20bとからなっている。また、分注プローブ内筒20aの長さ方向中間部であって、前記位置L1よりも上側には、縮流部22が設けられている。分注プローブ内筒20aの縮流部22の最も縮径している部分には、洗剤導入管24の一端が貫通され、洗剤導入管24の他端は分注プローブ外筒20bを通過して外面まで達している。洗剤導入管24の内孔は、洗剤導入管路4を介して洗剤液タンク5に接続され、分注プローブ本体20内に洗剤液5aを導入する洗剤導入孔23として機能する。
【0022】
分注プローブ本体20の縮流部22に対応する外周部には、シャッタ25が上下動可能に設けられている。シャッタ25は分注プローブ本体20に嵌合するシャッタリング部25aと、シャッタリング部25aの下端に連結されたシャッタフランジ部25bとを備える。さらに、シャッタリング部25aには洗剤導入孔23と連通可能な連通孔26が形成されている。さらに、連通孔26には接続管27の一端が挿入されている。接続管27の他端はシャッタリング部25aの外壁から突き出して突出部28になっている。突出部28には前記洗剤導入管路4が接続される。
【0023】
ホルダ21の下端内周には凹部30が形成され、この凹部30には、コイルバネ29の一端側(上部)が収納されている。コイルバネ29の下端はシャッタフランジ部25bに当接し、このシャッタフランジ部25bを下方へ押圧している。また、ホルダ21の下端は、シャッタ25が上方へ移動するときその移動限界位置を定める上部ストッパ31になっている。分注プローブ外筒20bの外周であって、ホルダ21の下端21aよりも下方位置には下部ストッパ32が取り付けられている。下部ストッパはシャッタ25が下方へ移動するとき、このシャッタ25に当接して、その移動限界位置を定めるものである。
【0024】
ここで、シャッタ25が上方へ移動して上部ストッパ31に当接するとき、連通孔26が洗剤導入孔23と連通し、シャッタ25が下方へ移動して下部ストッパ32に当接するとき、連通孔26が洗剤導入孔23と連通しないようになっている。
【0025】
シャッタリング部25aと分注プローブ外筒20bの間には、分注プローブ外筒20bに嵌合するゴムシール34a、34b、34cが介装されている。ゴムシール34a、34bは洗剤導入管24の分注プローブ外筒20b側開口部を挟むように配設されている。さらに、ゴムシール34b、34cはシャッタ25が下部ストッパ32に接する状態において、接続管27のシャッタリング部25aの内壁側開口部を挟むように配設されている。
【0026】
図5に示すように、洗浄槽12の上面には穴が形成され、この穴にはピン40がその下端が上下動可能に嵌入されている。ピン40は、穴の奥部に設けられたスプリング43によって、上方へ付勢されている。また、ピン40は、洗浄槽12の上面に取り付けられたキャップ44と、ピン40に嵌合されたEリング41によって上方への抜け止めがなされている。スプリング43のバネ定数は前記コイルバネ29のバネ定数よりも大きくなるように設定されている。
【0027】
以上説明した、本実施形態の洗浄装置の作用について、図3から図6を参照しながら説明を行う。
通常の試料吸引動作あるいは試料吐出動作においては、分注プローブ2に設けられたシャッタ25はコイルバネ29の付勢力によって下方へ押圧されて下部ストッパ32に押し付けられている。そのため、洗剤導入管24と接続管27は連通していない。この状態では、洗剤導入管24と接続管27を介した洗剤液5aの供給は抑制される。この状態で、電磁弁8が操作されて電磁弁8のポート8aとポート8bが連通される。さらに図示しないマニュプレータ操作により分注プローブ2が試料吸引位置へ移動される(ステップS1)。次に、試料秤量装置7によって分注プローブ2の先端からの試料吸引(ステップS2)が行われる。続いて、マニュプレータ操作により分注プローブ2が試料吐出位置へ移動される(ステップS3)。そこで、試料秤量装置7によって分注プローブ2の先端からの試料吐出が行われる(ステップS4)。
【0028】
次に、洗浄工程に移る。すなわち、マニュプレータにより分注プローブ2がプローブ洗浄位置へ移動される(ステップS5)。次に、図4に示すように、分注プローブ2が洗浄槽12に向かって降下する(ステップS6)。次に、電磁弁8を操作し、ポート8aとポート8cを連通すると共に、洗浄液送出ポンプ10によって洗浄液タンク11内の洗浄液11aを洗浄液導入管路9と洗浄液管路6を介して分注プローブ2に送り、その先端から吐出開始させる(ステップS7)。
【0029】
次に、降下中の分注プローブ2のシャッタフランジ部25bは、洗浄槽12に設けられたピン40と接触する。続けて、分注プローブ2はさらに降下するが、分注プローブ2のシャッタ25は、ピン40によって降下が阻止される。ここで、コイルバネ29のばね定数よりスプリング43のばね定数を大に設定しているので、先にコイルバネ29が変形する。これにより、シャッタ25は、分注プローブ本体20に対して相対的に押し上げられ、次に、図示しないプローブ位置センサによって分注プローブ2が規定位置まで降下したことが検出されると、そのときのプローブ位置センサから発せられる検出信号に基づいて分注プローブ2の降下が停止される(ステップS8)。分注プローブの降下停止と略同時に、シャッタフランジ部25bが上部ストッパ31と接触する。
【0030】
なお、上記分注プローブ2の降下が停止する前にシャッタ25が上部ストッパ31に当接する場合には、当接後スプリング43が弾性変形し、ピン40が必要以上にシャッタ25を押し上げて損傷させるのを未然に防止する。
【0031】
図3に示すように、前記シャッタフランジ部25bが上部ストッパ31と接触すると、洗剤導入管24と接続管27が連通し、シャッタが開放される(ステップS9)。このとき、分注プローブ内筒20aの内部を洗浄液11aが流れることによって、縮流部22にベンチュリー効果による負圧が発生する。この負圧によって、洗剤液タンク5から、洗剤導入管路4と接続管27と洗剤導入管24を介して洗剤液5aが分注プローブ内筒20aの内部へ供給される。供給された洗剤液5aは洗浄液11aと混合されて、分注プローブ内筒20aの内部を先端側へ流れる。これにより、前記洗剤液5aを用いた洗浄が行われる。
【0032】
この洗剤液5aを用いた洗浄が終わると、図5に示すように、マニュプレータ操作により分注プローブ2を上昇させる(ステップS10)。このときピン40によるシャッタフランジ部25bへの押し付けが弱まる。その結果、コイルバネ29の付勢力によってシャッタ25を下部ストッパ32に当接するまで押圧して移動させる。このシャッタ25の移動によって洗剤導入管24と接続管27の連通が解除され、シャッタ25は再び洗剤導入孔を閉塞する(ステップS11)。この結果、洗剤液タンク5からの分注プローブ2内への洗剤液供給が断たれる。その後も、分注プローブ2内への洗浄液供給が続けられ、洗剤液は洗い流される。
【0033】
そして、上昇中の分注プローブ2が規定位置まで来ると、図示しないプローブ位置センサによってその旨が検出され、該プローブ位置センサから発せられる出力信号に基づいて洗浄液11aの吐出が終了する(ステップS12)。その後、洗浄液送出ポンプ10が停止されたことに伴って発せられる信号に基づき、分注プローブ2の上昇が停止させられる(ステップS13)。ここで、洗浄工程が終了し、後続の分析工程、分注工程あるいは終了工程に引き継がれる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る洗浄装置によれば、分注プローブ2の洗浄工程において、分注プローブ内筒20aの内部に洗浄液11aを送液する際、縮流部22に生じる負圧を利用して分注プローブ2内に洗剤液5aを吸い込み、分注プローブ2の先端部から中間部の領域に対して洗剤液5aを含有する洗浄液11aで洗浄する。したがって、洗剤液5aは洗剤導入孔23よりも基端部側以降には供給されないため、洗剤液5aが付着する領域は、液体の流路のうち試料が付着する領域に限定される。これにより洗浄液11a及び洗剤液5aの使用量を削減し、同時に洗浄時間の短縮化が可能になる。また、シャッタ25を洗剤導入孔23の外端部分にて閉塞可能に配設したことで、余分な配管によって生じるダンパ効果による圧力損失を抑えて分注精度の向上が可能になる。
【0035】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る洗浄装置について図7から図8を参照して説明する。図7は本発明の第2実施形態の要部を示す縦断面図である。また、図8は本発明の第2実施形態の要部を示す分解斜視図である。なお、以下に説明する各実施形態において、上述した第1実施形態に係る洗浄装置の構成要素と同一構成要素には同一符号を付けて、その説明を省略する。
本実施形態の分注プローブ50は、リング状のシャッタ51が分注プローブ本体20に対して周方向へ相対移動可能かつ軸方向へは相対移動不能となるように嵌合されている。また、シャッタ51には洗剤導入孔23と連通可能な連通孔26が形成されている。さらにシャッタ51の外周には、傾斜突条部52が螺旋状をなすように形成されている。また、シャッタ51とホルダ21には、コイルバネ53が介装され、このコイルバネ53によってシャッタはホルダ21に対し図8のX方向に付勢されている。なお、54、55は夫々ホルダ21およびシャッタ51に形成されたバネ系合部であり、前記コイルバネ53の端部を係止するものである。また、ホルダ21の一部の下面には、傾斜突条部52の上端に当接することで、シャッタの周方向の回転運動を規制する周方向ストッパ56が形成されている。シャッタ51と分注プローブ本体20の間にはゴムシール57が介装されている。ゴムシール57には、洗剤導入孔23を形成するように穴が開けられている。
【0036】
上記構成の洗浄槽によれば、シャッタ51は、コイルバネ53の弾性復元力によって図中X方向へ付勢され、傾斜突条部52の上端が周方向ストッパ56に当接している。このとき、洗剤導入管24と連通孔26は連通しておらず、洗剤導入孔23と連通孔26を介した洗剤液タンク5からの洗剤液5aの移動は遮断されている。
【0037】
そして、洗浄工程で、分注プローブ50が洗浄槽12に向かって降下すると、ピン40が傾斜突条部52に突き当たる。続けて分注プローブ50がさらに降下すると、ピン40による押圧力のうち水平方向の分力によって傾斜突条部52をY方へ回転させることとなり、結局シャッタ51が同方向へ回転される。シャッタ51が回転した結果、洗剤導入管24と接続管27は連通状態となり、シャッタ51が洗剤導入管24を開放する。
【0038】
洗浄後、分注プローブ50が上昇すると、ピン40の傾斜突条部52への押圧力は随時弱くなり、その都度コイルバネ53によってシャッタ51が図中X方向へ回転される。その結果、連通孔26が洗剤導入孔23からずれてしまい、シャッタ51が洗剤導入孔23を閉塞する。
【0039】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る洗浄装置について図9を参照して説明する。図9は本発明の第3実施形態の要部を示す拡大縦断面図である。
本実施形態に係る分注プローブ60が前述した第1実施形態と異なるところとは、分注プローブ本体20をプローブ内筒20aのみで構成し、分注プローブ内筒20aの縮流部22の外周に洗剤導入管24に代えてパッキン61を配設した点である。
【0040】
分注プローブ内筒20aに設けられた開口とパッキン61に設けられたパッキン孔63によって、洗剤導入孔23が構成される。
このような構成でも第1、第2実施形態と同様に、シャッタ25に形成された連通孔26を洗剤導入孔23に連通させることで、縮流部22を流れる洗浄液に、負圧を利用して洗剤液5aを混入させることができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0042】
たとえば、本実施形態では分注プローブ本体20として分注プローブ内筒20aと分注プローブ外筒20bを採用したが、これに限らず、単一の管材からなる中空のプローブ本体を採用してもよい。
【0043】
また、本実施形態では分注プローブ2、50、60の縮流部22に洗剤導入孔23を一つ備えた構成を採用したが、これに限らず、複数の洗剤導入孔23を備えた構成としてもよい。
【0044】
また、本実施形態ではシャッタ25、51に連通孔26を一つ備えた構成を採用したが、これに限らず、複数の連通孔を備えた構成としてもよい。
【0045】
また、本実施形態ではシャッタ25を付勢する付勢部材としてコイルバネ29を採用したが、これに限らず、ゴム製リング等の弾性体や、気体等の弾性流体を封入したサスペンション装置による付勢、あるいはソレノイドによってシャッタ25の移動量を制御する構成を採用してもよい。
【0046】
また、本実施形態ではシャッタリング部25aと分注プローブ外筒20bの間に配設されたシール材としてゴムシール34を用いたが、これに限らず、金属製リングやプラスチック製リングを採用してもよい。また、ゴムシール34a、34b、34cは分注プローブ外筒20bに固定されているが、これに限らず、ゴムシール34a、34b、34cはシャッタリング部25a側に固定してもよい。
【0047】
また、本実施形態では分注プローブ2の先端を洗浄する洗浄処理部として洗浄容器12aを採用したが、これに限らず、分注プローブ2の先端から吐出される溶液を受ける廃液容器、または分注プローブ2の先端から吐出される溶液を廃液容器まで送液する配管を備えた廃液受け口、さらには分注プローブ外部洗浄機能を提供するための洗浄液供給口および洗浄液排出口が備えられた洗浄処理装置等の別の廃液処理あるいは洗浄処理装置を採用してもよい。
【0048】
また、本実施形態では、水吐出開始(ステップS7)はプローブ降下開始(ステップS6)の後に開始する方法を採用しているが、これに限らず、ステップS6とステップS7が同時に開始される方法を採用してもよい。
【0049】
また、本実施形態では、洗浄液にイオン交換水を採用しているが、これに限らず、滅菌水、蒸留水、緩衝液等を洗浄液としてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、プローブ降下終了後、洗剤導入孔23から分注プローブ2の先端部までの領域の内壁のみを洗浄する方法を採用しているが、これに限らず、洗浄槽12に、少なくとも分注プローブ2の先端部から中間部までの領域の外壁に洗剤液5aあるいは洗浄液11aを供給する装置を有する洗浄槽によって分注プローブ2を洗浄する方法を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態の洗浄装置の全体を示す構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態の分注プローブの要部を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の分注プローブの洗剤導入の作用を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の洗浄装置の一部を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態の洗浄装置の一部の作用を説明する斜視図である。
【図6】本発明の洗浄処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態の要部を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態の要部を示す分解斜視図である。
【図9】本発明の第3実施形態の要部を示す拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 洗浄装置
2 分注プローブ
2a 溶液流路(流路)
4 洗剤導入管路(チューブ)
5 洗剤液タンク(洗剤供給部)
5a 洗剤液
9 洗浄液導入管路
12 洗浄槽(洗浄処理部)
20 分注プローブ本体
22 縮流部
23 洗剤導入孔
24 洗剤導入管
25 シャッタ
25a シャッタリング部(リング)
26 連通孔
27 接続管
28 突出部
29 コイルバネ(付勢部材)
30 凹部(収納部)
31 上部ストッパ
32 下部ストッパ
40 ピン(押圧部)
50 分注プローブ
51 シャッタ
53 コイルバネ(付勢部材)
60 分注プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の吸引又は吐出の少なくともいずれかを行う分注プローブ本体の流路の一部に縮流部が設けられ、前記分注プローブ本体の側壁には内端が前記縮流部に開口し、外端が側壁外面で開口して洗剤供給部に接続される洗剤導入孔が少なくとも1つ形成されていることを特徴とする分注プローブ。
【請求項2】
前記分注プローブ本体の外周には前記洗剤導入孔を閉塞または開放するシャッタが設けられ、該シャッタには前記洗剤導入孔と連通可能な連通孔が少なくとも1つ形成され、該連通孔の外端には前記洗剤供給部に接続されるチューブを取り付け可能な接続管が挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の分注プローブ。
【請求項3】
前記シャッタは、前記分注プローブ本体の外周に嵌合するリングにより構成され、該リングには、該リングが前記分注プローブ本体に対して軸方向あるいは周方向へ相対移動することにより前記洗剤導入孔と連通可能な前記連通孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の分注プローブ。
【請求項4】
前記分注プローブ本体には前記シャッタの可動域を制限するためのストッパが設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の分注プローブ。
【請求項5】
前記ストッパには、前記シャッタを付勢する付勢部材の少なくとも一部を収納する収納部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の分注プローブ。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の分注プローブの少なくとも先端の外周を洗浄する洗浄処理部が設けられ、該洗浄処理部には前記シャッタと接触可能な押圧部が設けられ、前記分注プローブが前記洗浄処理部にセットされた際に前記押圧部が前記シャッタを押圧して該シャッタを前記分注プローブ本体に対して相対移動させて前記連通孔を前記洗剤導入孔に連通させることを特徴とする洗浄装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の分注プローブの流路に洗浄液を流し、その際前記縮流部で生じる負圧を利用し、前記洗剤導入孔を介して前記洗剤供給部から洗剤液を前記分注プローブ内に吸い込み、前記分注プローブの前記洗剤導入孔から前記分注プローブの先端までの流路に前記洗剤液と前記洗浄液が混合された洗剤希釈液を流すことを特徴とする分注プローブの洗浄方法。
【請求項8】
前記分注プローブの流路に洗浄液を供給しながら、閉塞していた前記洗剤導入孔を開放して前記分注プローブ内に前記洗剤液を吸い込むことを特徴とする請求項7に記載の分注プローブの洗浄方法。
【請求項9】
前記分注プローブの流路内に洗浄液を供給しながら、開放していた前記洗剤導入孔を閉塞して前記流路内に洗剤液が吸い込まれるのを停止させることを特徴とする請求項7または8に記載の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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