説明

分注器及びそれに使用される分注量固定具

【課題】分注量設定部が設定された位置からずれることによる分注量のずれをなくす。
【解決手段】分注器300は、シリンダ10と、移動に伴って設定された分注量を容器から排出させるようにシリンダ10内に配置されたピストン20と、ピストン10とともに移動する柱状部材30と、分注量を設定するためにシリンダ10に付された目盛り26に従って柱状部材30の任意位置に固定される分注量設定部40とを備える。柱状部材30は、ストッパ35を有する。分注量固定具60は、柱状部材30のストッパ35と柱状部材30に固定される分注量設定部40の下端との間に配置されるスペーサを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定された分注量を分注するための分注器及びそれに使用される分注量固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
設定された分注量を分注するための分注器として、図1に示す形式の分注器が知られ、オートビュレットとも呼ばれている。このような分注器は、例えば、東京硝子器械株式会社から入手することができる。分注器100は、容器の上部に取り付けて使用される。分注器100は、フランジ25を有するシリンダ10と、移動に伴って設定された分注量を容器200から排出させるようにシリンダ10内に配置されたピストン20と、ピストン20とともに移動する柱状部材30と、分注量を設定するためにシリンダ10に付された目盛り16に従って柱状部材30の任意位置に固定される分注量設定部40とを備えている。分注量設定部40は、一般的に、ねじ45によって柱状部材30に固定される。
【0003】
分注の際は、まず、容器200に分注対象の液体を入れた後に容器200の口部に分注器100を取り付け、目盛り16上の所望の分注量を指すように分注量設定部40を柱状部材30に固定する。その後、操作部36を掴んで、分注量設定部40がシリンダ10のフランジ25に当接する位置まで持ち上げた後に操作部36を自由にする。すると、ピストン20が降下しながら、分注量設定部40によって設定されている分注量だけ容器内200の液体がノズル50を通して排出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような分注器では、分注量設定部40がねじ45によって柱状部材30に固定されるが、操作時に分注量設定部40がフランジ25に当たると分注量設定部40が移動してしまうことがある。すると、設定されている分注量がずれてしまい、設定されていた分注量分の液体を分注することができない。
本発明は、上記の課題認識を基礎としてなされたものであり、分注量設定部が設定された位置からずれることによる分注量のずれをなくすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の側面は、設定された分注量を分注するための分注器に係り、該分注器は、シリンダと、移動に伴って設定された分注量を容器から排出させるように前記シリンダ内に配置されたピストンと、前記ピストンとともに移動する柱状部材と、分注量を設定するために前記シリンダに付された目盛りに従って前記柱状部材の任意位置に固定される分注量設定部と、前記柱状部材に設けられたストッパと前記柱状部材に固定される前記分注量設定部の下端との間に配置されるスペーサとを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の第2の側面は、設定された分注量を分注するための分注器において使用される分注量固定具に係り、前記分注器は、シリンダと、移動に伴って設定された分注量を容器から排出させるように前記シリンダ内に配置されたピストンと、前記ピストンとともに移動する柱状部材と、分注量を設定するために前記シリンダに付された目盛りに従って前記柱状部材の任意位置に固定される分注量設定部とを備え、前記柱状部材は、ストッパを有し、前記分注量固定具は、前記柱状部材の前記ストッパと前記柱状部材に固定される前記分注量設定部の下端との間に配置されるスペーサを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の第3の側面は、設定された分注量を分注するための分注器に係り、該分注器は、シリンダと、移動に伴って設定された分注量を容器から排出させるように前記シリンダ内に配置されたピストンと、前記ピストンとともに移動する柱状部材と、分注量を設定するために前記シリンダに付された目盛りに従って前記柱状部材の任意位置に固定される分注量設定部とを備え、前記柱状部材は、複数の溝を有し、前記分注量設定部は、前記柱状部材に固定される際に前記複数の溝の少なくも1つと係合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、分注量設定部が設定された位置からずれることによる分注量のずれをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0010】
図2は、本発明の好適な実施形態の分注器の概略構成を示す図である。図2に示す分注器は、分注器本体300と、分注器本体300とともに使用される分注量固定具60とを備えている。分注器本体300は、一般的には、分注器又はオートビュレットとも呼ばれ、例えば、東京硝子器械株式会社から入手することができる。
分注器は、分注器本体300を容器の上部に取り付けて使用される。分注器本体300は、フランジ25を有するシリンダ10と、移動に伴って設定された分注量を容器200から排出させるようにシリンダ10内に配置されたピストン20と、ピストン20とともに移動する柱状部材30と、分注量を設定するためにシリンダ10に付された目盛り16に従って柱状部材30の任意位置に固定される分注量設定部40とを備えている。分注量設定部40は、一般的に、ねじ45によって柱状部材30に固定される。柱状部材30の下端等の位置にはストッパ35が取り付けられている。ストッパ35は、例えば、柱状部材30の下端にねじ込まれるねじとして構成されうる。
【0011】
分注の際は、まず、容器200に分注対象の液体を入れた後に容器200の口部に分注器100を取り付け、目盛り16上の所望の分注量を指すように分注量設定部40を柱状部材30に固定する。その後、操作部36を掴んで、分注量設定部40がシリンダ10のフランジ25に当接する位置まで持ち上げた後に操作部36を自由にする。すると、ピストン20が降下しながら、分注量設定部40によって設定されている分注量だけ容器内200の液体がノズル50を通して排出される。
分注量固定具60は、柱状部材30に設けられたストッパ35と柱状部材30に固定される分注量設定部40の下端との間に配置されるスペーサ60を含みうる。スペーサ60の厚さは、特定の分注量となるように分注量設定部40が位置決めされた状態において、ストッパ35と分注量設定部40の下端との間隙を埋めるように決定される。このようなスペーサ60を配置することにより、分注器本体300の操作の際、より詳しくは、分注のために分注量設定部40をシリンダ35のフランジに当接させた際に、分注量設定部40が移動して分注量の設定がずれることが防止される。
【0012】
スペーサ60は、例えば、ストッパ60を柱状部材40から取り外した状態で柱状部材40に取り付けられうる。この場合、スペーサ60が柱状部材40に取り付けられた後に、ストッパ60が再び柱状部材40に取り付けられる。
【0013】
スペーサ60には、ねじ等の固定部材65が設けられることが好ましい。スペーサ60の厚さで決定される分注量以外の分注量が設定される場合には、スペーサ60と分注量設定部40の下端との間には隙間が生じる。したがって、スペーサ60が自由な状態では、分注量設定部40をシリンダ35のフランジに当接させた際に、分注量設定部40が移動して分注量の設定がずれてしまう問題がある。そこで、このような場合には、ねじ等の固定部材65によってスペーサ60を柱状部材40に固定することによって、分注量設定部40のずれの問題を緩和することができる。
図3及び図4は、柱状部材30及び分注量設定部40の改良例を概略的に示す図である。改良された柱状部材30’は、複数の溝420を有する。また、改良された分注量設定部60’は、柱状部材30’に設けられた複数の溝420の少なくとも1つと係合する溝を有する。
【0014】
分注量設定部60’は、ピン406で回動可能に連結された2つの係合部材401、402を有する。係合部材401、402は、柱状部材30’に設けられた複数の溝420の少なくとも1つと係合する溝401a、402aを有する。係合部材401、402は、ねじ等の固定部材405によって、柱状部材30’を締め付けるように固定される。固定部材405は、例えば、係合部材401、402からそれぞれ延びた対向部403、404間の間隔を縮めるように対向部403、404に取り付けられうる。係合部材401、402が柱状部材30’を締め付けた状態で固定されることによって、柱状部材30’の溝420と係合部材401、402の溝とが係合して、柱状部材30’に対する係合部材401、402の移動(すなわち、分注量設定部60’の移動)が規制される。柱状部材30’の溝420、並びに、係合部材401、402の溝の間隔は、設定すべき分注量の精度(分解能)に応じて決定されうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一般的な分注器の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の好適な実施形態の分注器の概略構成を示す図である。
【図3】柱状部材及び分注量設定部の改良例を概略的に示す図である。
【図4】分注量設定部の改良例を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0016】
10 シリンダ
16 目盛り
20 ピストン
30、30’ 柱状部材
35 ストッパ
36 操作部
40 分注量設定部
45 ねじ
50 ノズル
60、60’ スペーサ
65 固定部材
100 分注器
200 容器
300 分注器本体
401、402 係合部材
403、404 対向部
405 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された分注量を分注するための分注器であって、
シリンダと、
移動に伴って設定された分注量を容器から排出させるように前記シリンダ内に配置されたピストンと、
前記ピストンとともに移動する柱状部材と、
分注量を設定するために前記シリンダに付された目盛りに従って前記柱状部材の任意位置に固定される分注量設定部と、
前記柱状部材に設けられたストッパと前記柱状部材に固定される前記分注量設定部の下端との間に配置されるスペーサと、
を備えることを特徴とする分注器。
【請求項2】
設定された分注量を分注するための分注器において使用される分注量固定具であって、
前記分注器は、シリンダと、移動に伴って設定された分注量を容器から排出させるように前記シリンダ内に配置されたピストンと、前記ピストンとともに移動する柱状部材と、分注量を設定するために前記シリンダに付された目盛りに従って前記柱状部材の任意位置に固定される分注量設定部とを備え、前記柱状部材は、ストッパを有し、
前記分注量固定具は、前記柱状部材の前記ストッパと前記柱状部材に固定される前記分注量設定部の下端との間に配置されるスペーサを含むことを特徴とする分注量固定具。
【請求項3】
設定された分注量を分注するための分注器であって、
シリンダと、
移動に伴って設定された分注量を容器から排出させるように前記シリンダ内に配置されたピストンと、
前記ピストンとともに移動する柱状部材と、
分注量を設定するために前記シリンダに付された目盛りに従って前記柱状部材の任意位置に固定される分注量設定部と、
を備え、前記柱状部材は、複数の溝を有し、前記分注量設定部は、前記柱状部材に固定される際に前記複数の溝の少なくも1つと係合することを特徴とする分注器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−343150(P2006−343150A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167248(P2005−167248)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】